JP7449741B2 - 水膨張性シラン架橋ゴム組成物、水膨張性シラン架橋ゴム成形体、及び止水材 - Google Patents

水膨張性シラン架橋ゴム組成物、水膨張性シラン架橋ゴム成形体、及び止水材 Download PDF

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Description

本発明は、水膨張性シラン架橋ゴム組成物、水膨張性シラン架橋ゴム成形体、及び止水材に関する。
光ケーブル、メタルケーブル等の通信ケーブルは、一般に、電柱等を利用した架空線方式、又は地下に埋める地中化方式で設置される。今後、無電柱化などの要請により通信ケーブルの地中化の需要が高まっていくものと考えられる。
両方式において、通信ケーブルの接続部は、水密性(止水性)を有するクロージャ(接続箱)で保護される。クロージャの一例を図1に示す。図1からわかるように、クロージャは箱本体11と蓋体12とからなり、箱本体11と蓋体12との接合面に、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)等の弾性体からなるガスケット22等を配置することにより封止されている。
ガスケット等による水密性を向上させるため、適度の吸水性を有する水膨張材(通常、水膨張性樹脂材料)を含ませたEPゴムを加硫した水膨張性EPゴム組成物を用いて、ガスケット等は形成されている。このようなEPゴム組成物としては、特許文献1~3に記載の組成物が知られている。
特許第4781052号公報 特開2003-327950号公報 特開平9-48965号公報
EPゴム組成物は、EPゴムを加熱して加硫(架橋)する加硫工程を経て製造されるため、EPゴムが加硫する温度まで加熱可能な加硫設備が必要である。しかも、EPゴムの加硫には通常長時間を要するため、生産性の点でも問題を有していた。
更に、従来の水膨張性EPゴム組成物は、繰り返し吸水排湿させると、膨張収縮、とりわけ収縮の度合い(再現性)が変動して、復元性が低下する問題がある。そのため、繰り返し水に浸かる、クロージャ等への使用を想定すると復元性が十分とは言えず、改善の余地がある。加えて、クロージャ等への使用を想定すると、膨張の度合い(再現性)の変動、すなわち膨張性の低下も抑制されていることが好ましい。
本発明は、上記の問題を克服し、繰り返しの吸水排湿による膨張性及び復元性の低下が抑制され、その上、生産性の問題にも対応した、水膨張性シラン架橋ゴム組成物を提供することを課題とする。さらに、本発明は、上記水膨張性シラン架橋ゴム組成物を成形してなる水膨張性シラン架橋ゴム成形体、及び上記水膨張性シラン架橋ゴム組成物を使用してなる止水材を提供することを課題とする。
本発明者らは、ゴムをシラン架橋法により架橋させて得られる水膨張性シラン架橋ゴム組成物について、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び排湿時体積収縮率差(Zw)を特定の範囲の値に設定することによって、水膨張性シラン架橋ゴム組成物及びその成形体(止水材)を高い生産性で製造することができ、しかも得られた水膨張性シラン架橋ゴム組成物及びその成形体が繰り返し湿潤乾燥されても再現性良く膨張収縮を繰り返して優れた膨張性及び復元性の低下を抑制できることを見出した。本発明者らは、この知見に基づき研究を重ね、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
(1)下記繰り返し性能試験により測定される、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)が15%以下であり、かつ繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)が5.0%以下である、水膨張性シラン架橋ゴム組成物。
<繰り返し性能試験>
水膨張性シラン架橋ゴム組成物で形成した試験片(厚さ:2mm×縦長さ:50mm×横長さ:20mm)を、25℃でイオン交換水(使用量は試験片1つに対して200ml)に浸漬して24時間吸水させ、その後、大気圧下、60℃、無風状態の環境に24時間放置して排湿させる工程を1サイクルとし、この吸水及び排湿工程を20サイクル行う。排湿時には、前記試験片を、前記試験片の最大面を下にして設置して放置する。
前記繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び前記繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)は、1サイクル後の試験片及び20サイクル後の試験片について各体積を測定し、下記式1又は下記式2により算出する。

式1:Yw=((a1-b1)/a1)×100
Yw:繰り返し吸水時体積膨張率差(%)
a1:1サイクル目吸水後体積(mm
b1:20サイクル目吸水後体積(mm

式2:Zw=((a2-c2)/a2)×100
Zw:繰り返し排湿時体積収縮率差(%)
a2:1サイクル目排湿後体積(mm
c2:20サイクル目排湿後体積(mm

(2)エチレンゴムを30~100質量%含むベースゴム100質量部に対し、デンプン・アクリル酸グラフト重合体部分金属塩、オレフィン-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール-アクリル酸共重合体、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸金属塩架橋物、ビニルエステル・エチレン系不飽和カルボン酸、ノニオン型ポリアルキレンオキシド、変性ポリアクリル酸架橋樹脂及びアクリル酸重合体部分金属塩架橋樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の水膨張材10~200質量部を含有し、前記ベースゴムがシラン架橋されてなる、(1)に記載の水膨張性シラン架橋ゴム組成物。
(3)前記水膨張材がノニオン型ポリアルキレンオキシドを含む(2)に記載の水膨張性シラン架橋ゴム組成物。
(4)無機フィラー3~100質量部と、前記水膨張材としてノニオン型ポリアルキレンオキシド15~60質量部とを含有する、(2)又は(3)に記載の水膨張性シラン架橋ゴム組成物。
(5)下記水膨張性シラン架橋性ゴム組成物のシラノール縮合硬化物からなる(1)~(4)のいずれか1項に記載の水膨張性シラン架橋ゴム組成物。
<水膨張性シラン架橋性ゴム組成物>
エチレンゴムを30~70質量%、ポリエチレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体の樹脂の少なくとも一方を合計で10~50質量%、スチレンエラストマーを5~20質量%、並びにオイルを5~20質量%含有するベースゴム100質量部に対し、無機フィラー3~100質量部と、前記ベースゴムにグラフト化反応したシランカップリング剤1.0~6.0質量部と、シラノール縮合触媒0.01~0.5質量部と、ノニオン型ポリアルキレンオキシド15~60質量部とを含む水膨張性シラン架橋性ゴム組成物。
(6)(1)~(5)のいずれか1項に記載の水膨張性シラン架橋ゴム組成物を成形してなる水膨張性シラン架橋ゴム成形体。
(7)(1)~(5)のいずれか1項に記載の水膨張性シラン架橋ゴム組成物を使用してなる止水材。
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方の意味で用いる。
本発明の水膨張性シラン架橋ゴム組成物及びその成形体は、繰り返しの吸水排湿によっても膨張性及び復元性の低下が抑制されている。また、その製造に、加硫工程及び特殊な加硫設備が不要であるため、生産性効率を高め、コスト削減も実現できる。
本発明の水膨張性シラン架橋ゴム組成物を用いることができる、クロージャの一例を示す斜視図である。
〔水膨張性シラン架橋ゴム組成物〕
本発明の水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、水膨張性を有するシラン架橋ゴム組成物である。
ここで、シラン架橋ゴム組成物とは、シラン架橋法により架橋されたゴムを含有する組成物(シラン架橋法により得られたゴム組成物)を意味する。シラン架橋法とは、通常、有機過酸化物の存在下で不飽和基を有するシランカップリング剤をゴムにグラフト化反応(単に、グラフト化反応ともいう。)させてシラングラフトゴムを得た後に、シラノール縮合触媒の存在下でシラングラフトゴムを水と接触させることにより、シランカップリング剤同士をシラノール縮合反応させて架橋したゴムを得る方法である。本発明においては、上記シラン架橋法以外の、シランカップリング剤を用いずに、有機過酸化物等を分解させて生じるラジカルによって重合体同士を直接架橋させる方法を、化学架橋法ということがある。
「水膨張性を有する」とは、水膨張性シラン架橋ゴム組成物が適量・十分な量の水を吸収、保持して、体積膨張状態を維持できる一方、体積膨張状態にある水膨張性シラン架橋ゴム組成物を乾燥(排湿)により体積膨張状態から元の状態(大きさ程度)まで排湿して収縮する(復元する)ことを意味する。ここで、十分量な水の吸収とは、実施例に記載の方法で測定される体積膨張率(Xw)が、好ましくは15%以上であることをいう。体積膨張率(Xw)については後述する。
本発明の水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、後述する繰り返し性能試験により測定される、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)が15%以下であり、かつ繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)が5.0%以下である。本発明では、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)をまとめて繰り返し吸水特性ということがある。
繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)は水膨張性シラン架橋ゴム組成物の膨張性の指標であり、一方、繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)は水膨張性シラン架橋ゴム組成物の復元性の指標である。
具体的には、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)は、水膨張性シラン架橋ゴム組成物について吸水(吸湿)及び排水(排湿)を1サイクルとして20サイクル繰り返した際の、吸水時の体積膨張率の差を表し、下記式1で算出される。この繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)は吸水及び排湿を1サイクルとして20サイクル繰り返した際の吸水時体積比率ということもできる。この吸水時体積膨張率差(Yw)が15%以下であれば、吸水/排湿を繰り返しても初期の吸水量を大きく低下させることなく膨張できる(吸水時の膨張体積が低下しすぎず、1回目の吸水時と近い膨張体積まで再現性よく膨張できる)。
一方、繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)は、水膨張性シラン架橋ゴム組成物について吸水及び排湿を1サイクルとして20サイクル繰り返した際の、排湿時の体積収縮率の差を表し、下記式2で算出される。この繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)は吸水及び排湿を1サイクルとして20サイクル繰り返した際の排湿時体積比率ということもできる。繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)が5%以下であれば、吸水/排湿を繰り返しても排湿時の収縮体積が小さくなりすぎない(1回目の排湿時と近い収縮体積にまで再現性よく復元できる)。
上記のように、本発明の水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、水の有無(吸水/排湿)に応じて体積を変化させることができ、さらに、吸水排湿を繰り返しても、膨張体積及び収縮体積をほぼ一定に維持できる。本発明の水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)を兼ね備えることから、両者による作用機能が相俟って、繰り返しの湿潤乾燥によっても膨張性及び復元性の低下を抑制できる。
本発明の水膨張性シラン架橋組成物は、上述のように、繰り返しの吸水排湿によっても繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)の低下が抑制されている。その理由は定かではないが、本発明の水膨張性シラン架橋組成物は、水膨張材がベースゴム中に均一に混合/分散され、保持されているため、水膨張材の性能の低下及び/又は膨張収縮の過程での水膨張材の流出(さらには、抜け落ちによる減肉)が抑制されていると考えられる。
このような特性を有する水膨張性シラン架橋ゴム組成物の用途は、後述するように特に制限されないが、その特性を効果的に利用できる点で、クロージャのガスケット等として好適に用いられる。すなわち、クロージャのガスケット等として用いると、水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、湿潤環境(高湿度(例えば85RH%)環境、水中環境等の水(分)と接触(暴露)状態となる環境)において、水との接触(吸水)により膨張して他の部材と密着して高い水密性を発揮できる。しかも、吸水及び排湿を繰り返しても各吸水時の膨張体積の変化が小さく、ガスケットのはめ込み不良(クロージャの凹部へのガスケットのはめ込み位置のズレ、凹部のごみ及び段差による隙間、締め込み不良、締め込み圧の不足等)がある場合でも、ほぼ均一な膨張により、高い水密性を発揮することができる。一方、乾燥環境(低湿度(例えば45RH%)環境等)においては、吸水した水分(湿気)をクロージャの外部に排出(放出)させることができる。更に、吸水及び排湿を繰り返しても各排湿時後の収縮体積の変化が小さく、水と接触する前の密着状態を維持できる。さらに、上述の性質を利用して、ガスケットの設置の際には、ガスケットを挟み込む圧縮率を小さくすることができ、ガスケット周囲の部品の変形又は破損を抑制しつつ、ガスケット自体の圧縮永久歪みを抑制して、長期にわたってクロージャの性能を維持することを可能とできる。
本発明において、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)は、13%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。その下限は、0%であることが理想的であるが、実際的には0.5%である。
繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)は、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましい。その下限は、0%であることが理想的であるが、実際的には0.5%である。
上記繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)は、繰り返し性能試験により、以下のようにして決定される。
<繰り返し性能試験>
水膨張性シラン架橋ゴム組成物で形成した試験片(厚さ:2mm×縦長さ:50mm×横長さ:20mm)を、25℃でイオン交換水(使用量は試験片1つに対して200ml)中に浸漬して24時間吸水させ、その後、大気圧下、60℃、無風状態の環境に24時間放置して排湿させる工程を1サイクルとし、この吸水及び排湿工程を20サイクル行う。排湿時には、試験片を、試験片の最大面を下にして設置して放置する。繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)は、1サイクル後の試験片及び20サイクル後の試験片について各体積を測定し、下記式1又は下記式2により算出する。

式1:Yw=((a1-b1)/a1)×100
Yw:繰り返し吸水時体積膨張率差(%)
a1:1サイクル目吸水後体積(mm
b1:20サイクル目吸水後体積(mm

式2:Zw=((a2-c2)/a2)×100
Zw:繰り返し排湿時体積収縮率差(%)
a2:1サイクル目排湿後体積(mm
c2:20サイクル目排湿後体積(mm

繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)は、いずれもベースゴムの組成(成分及び含有量)、無機フィラーの添加の有無及び添加量、水膨張材の種類及び添加量、シランカップリング剤の添加量、有機化酸化物の添加量等を調整することにより、上記範囲とすることができる。
繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)15%以下を達成するための条件は使用する材料等にもよるので一義的に定めることは難しいが、一般的には、以下の傾向にある。
ベースゴムの成分として、エチレンゴム等の柔らかいゴムを採用すると達成できる傾向にある。水膨張材を多く含有させることが好ましく、水膨張材の含有量を多くすると繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)は上昇する傾向にある。無機フィラーを多く含有させることが好ましく、無機フィラーの含有量を多くすると吸水時体積膨張率差(Yw)は低下する傾向にある。
繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)5.0%以下を達成するための条件は使用する材料等にもよるので一義的に定めることは難しいが、一般的には、以下の傾向にある。
ベースゴムの成分として、エチレンゴム等の柔らかいゴムを採用すると達成できる傾向にある。水膨張材を多く含有させることが好ましく、水膨張材の含有量を多くすると繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)は上昇する傾向にある。無機フィラーを多く含有させることが好ましく、無機フィラーの含有量を多くすると吸水時体積膨張率差(Yw)は低下する傾向にあるが、多すぎると上昇する傾向にある。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、上記特性を示すシラン架橋ゴム組成物であればその成分等については特に限定されない。水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、ベースゴムのシラン架橋物と水膨張材とを含有していることが好ましい。水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、ベースゴムのシラン架橋物と水膨張材とに加えて、無機フィラーを含有することがより好ましい。
本発明の水膨張性シラン架橋ゴム組成物について、その成分、調製に用いる成分、調製方法及び用途等の好ましい形態を以下に詳細に説明する。
<ベースゴム>
ベースゴムは、後述する有機過酸化物から発生したラジカルの存在下において、シランカップリング剤のグラフト化反応部位とグラフト化反応可能な部位(例えば、炭素鎖の不飽和結合部位、水素原子を有する炭素原子)を主鎖中又はその末端に有しているゴムを含有していれば、特に限定されない。
ベースゴムは、エチレンゴムを含有することが好ましい。
ベースゴムは、エチレンゴムに加えて、ポリエチレン樹脂及び/又はエチレン-α-オレフィン共重合体の樹脂、スチレンエラストマー、並びにオイルの少なくとも1種又はそれらの組合せを含有していてもよい。ポリエチレン樹脂スチレンエラストマー、及びオイルを組合せて用いることにより、優れた吸水性及び排湿性に加えて、排湿時及び吸水時の外観に優れた組成物を得ることができる。本発明において、シラン架橋法に起因する外観不良の発生防止と、吸水状態において発生する外観不良の発生防止とを可能として、優れた外観を達成できる。シラン架橋法に起因する外観不良は、シランカップリング剤同士の縮合等により形成されるブツ等による肌荒れであり、排湿状態において観察される。吸水状態において発生する外観不良は、組成物の表面が膨張して、又は組成物の成分が表面にブリードアウトして部分的に形成された凸部(突出部)による肌荒れである。この凸部は排湿時には消失する点で、シラン架橋法に起因するブツとは異なる。外観不良、特に、吸水時の外観不良が生じた場合、均一な表面状態でないため繰り返しの吸水排湿によりで止水性が保てない場合がある。さらに、外観不良が生じると、該当部分の除去が必要となる場合があり、歩留まりが悪くなることがある。
以下に、ベースゴムの成分について説明する。
- エチレンゴム -
エチレンゴムは、エチレン性不飽和結合を有する化合物を共重合して得られる共重合体からなるゴム(エラストマーを含む)であれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。エチレンゴムとしては、好ましくは、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、エチレンとα-オレフィンとジエンとの三元共重合体からなるゴムが挙げられる。三元共重合体のジエン構成成分は、共役ジエン構成成分であっても非共役ジエン構成成分であってもよく、非共役ジエン構成成分が好ましい。
α-オレフィンとしては、炭素原子数3~12の各α-オレフィンが好ましく、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等が挙げられる。共役ジエンの具体例としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられ、ブタジエン等が好ましい。非共役ジエンの具体例としては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン等が挙げられ、エチリデンノルボルネンが好ましい。
エチレンとα-オレフィンとの共重合体からなるゴムとして、例えば、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-ブテンゴム、エチレン-オクテンゴム等が挙げられる。エチレンとα-オレフィンとジエンとの三元共重合体からなるゴムとしては、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-ブテン-ジエンゴム等が挙げられる。なかでも、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-ブテンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム及びエチレン-ブテン-ジエンゴムが好ましく、エチレン-プロピレンゴム及びエチレン-プロピレン-ジエンゴムがより好ましい。
エチレンゴムは、共重合体中のエチレン構成成分量(エチレン含有量という)が50~75質量%が好ましく、55~72質量%がさらに好ましい。エチレン含有量が上記範囲内であると、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)15%以下及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)5.0%以下を達成しやすい。エチレン含有量の測定方法は、ASTM D3900に記載の方法に準拠して、測定される値である。
エチレンゴムの含有量は、特に限定されないが、ベースゴム100質量%中、30~100質量%であることが好ましい。水膨張性シラン架橋ゴム成形体の吸水後の外観を、突出部、ヌメリ等がない滑らかなものとする観点からは、30~70質量%がより好ましい。
- ポリエチレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体の樹脂 -
ポリエチレン樹脂としては、エチレン(CH=CH)に由来する構成成分(-CH-CH-)を含む重合体の樹脂であればよく、公知のものを使用することができる。ポリエチレン樹脂は、エチレンの単独重合体、エチレンと5mol%以下のα-オレフィレン単量体との共重合体、及びエチレンと官能基に炭素原子、酸素原子、及び水素原子だけを持つ1mol%以下の非オレフィン単量体との共重合体からなる各樹脂が包含される。ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンが好ましい。ポリエチレン樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
エチレン-α-オレフィン共重合体の樹脂としては、エチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィンとの共重合体(上述のエチレンゴム、上述のポリエチレン樹脂に該当するものを除く)の樹脂が挙げられる。
吸水後の外観を突出部のない滑らかなものとする観点からは、ポリエチレン樹脂を用いることが好ましい。
ポリエチレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体の樹脂の含有量は、特に限定されないが、ベースゴム100質量%中、これらの合計が、10~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることがさらに好ましく、10~40質量%であることがよりさらに好ましく、10~20質量%が特に好ましい。ベースゴム中の、ポリエチレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体の樹脂のそれぞれの含有率は、上記合計含有率を満たす範囲内で適宜に設定される。ここで、ポリエチレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体樹脂の少なくとも一方を含有するとは、ポリエチレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体の樹脂のいずれか一方のみを含有する態様と、ポリエチレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体の樹脂とを含有する態様とを含む。これらの樹脂のいずれか一方のみを含有する場合には、その含有量が上記合計含有量の範囲内にあればよい。
- スチレンエラストマー -
スチレンエラストマーとしては、分子内に芳香族ビニル化合物を構成成分とする重合体からなるものをいう。このようなスチレンエラストマーとしては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック共重合体及びランダム共重合体、又は、それらの水素添加物等が挙げられる。このようなスチレンエラストマーとしては、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、水素化SIS、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水素化SBS、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、水素化スチレン-ブタジエンゴム(HSBR)、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン/ブタジエン/(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン/ブタジエン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/イソプレン/(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン/イソプレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/エチレン/ブタジエン/(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン/エチレン/ブタジエン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/プロピレン/イソプレン/(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン/プロピレン/イソプレン/無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。スチレン系エラストマーは、1種を単独で用いても2種以上を用いてもよい。
スチレンエラストマーの含有量は、特に限定されないが、ベースゴム100質量%中、5~60質量%以下であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましく、5~20質量%が特に好ましい。
- オイル -
ベースゴムが含有しうるオイル成分は、特に限定されないが、有機油が挙げられる。ベースゴムが有機油を含有していると、ブツ及び/又は突出部の発生を抑制して優れた吸水前及び吸水後の外観を有する水膨張性シラン架橋ゴム組成物を製造することができる。
有機油として、パラフィンオイル又はナフテンオイルが好ましく、機械強さの点でパラフィンオイルがより好ましい。
オイルの含有量は、特に限定されないが、ベースゴム100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、3~25質量%であることがさらに好ましく、5~20質量%が特に好ましい。
上記成分を含むベースゴムは、シラン架橋物の形態で水膨張性シラン架橋ゴム組成物中に含有されている。ベースゴムのシラン架橋物は、後述するように、シランカップリング剤がベースゴムにグラフト化反応したシラン架橋性ゴムが、シランカップリング剤を介して架橋したシラン架橋ゴムを含んでいる。ベースゴムのシラン架橋物の一形態は、シラン架橋ゴムと、無機フィラーとを含有する。
<水膨張材>
水膨張材は、水膨張性シラン架橋ゴム組成物に水膨張性を付与する。さらには、圧縮永久歪みを小さくする場合がある。加えて、水膨張材を添加したことにより、後述する製造方法におけるシラン架橋(シラノール縮合反応)の際に、水を取り込みやすい状態になり成形後のシラン架橋が容易になる場合がある。
水膨張材は、水を分子内に取り込みゲル化して膨張し、水が除かれると収縮する樹脂材料であれば特に限定されない。水膨張材として、通常の水膨張性樹脂を使用することができる。
水膨張材としては、デンプン、セルロース等の多糖類化合物、(メタ)アクリル酸を含む重合体等が挙げられる。例えばデンプン・アクリル酸グラフト重合体部分金属塩、オレフィン-無水マレイン酸共重合体(例えば、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体)、ポリビニルアルコール-アクリル酸共重合体、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸金属塩架橋物、ビニルエステル・エチレン系不飽和カルボン酸、ノニオン型ポリアルキレンオキシド、変性ポリアクリル酸架橋樹脂、及びアクリル酸重合体部分金属塩架橋樹脂(例えば、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋樹脂)が挙げられる。水膨張材は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明において、水膨張材等の化合物や重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で化学構造の一部を変更した化合物、誘導体等を包含する。
水膨張材としては、ノニオン型ポリアルキレンオキシドが、優れた吸水後の外観を有する組成物とでき、体積膨張率及び塩水の吸収性に優れる点で好ましい。
デンプン・アクリル酸グラフト重合体部分金属塩は、デンプンにアクリル酸をグラフト反応させた重合体について、そのアクリル酸を部分的に金属塩としたものである。塩を形成する金属としては、アルカリ金属が好ましく、ナトリウムがより好ましい。デンプン・アクリル酸グラフト重合体部分金属塩としては、デンプン・アクリル酸グラフト重合体部分ナトリウム塩等が挙げられる。
オレフィン-無水マレイン酸共重合体を形成するオレフィンとしては、エチレン、イソブチレン等である。オレフィン-無水マレイン酸共重合体は、塩でもよく、変性物でもよい。
ポリビニルアルコール-アクリル酸共重合体は、架橋されていてもよい。
カルボキシメチルセルロースは、セルロースの水酸基をカルボキシメチル化したものであり、ナトリウム塩であることが好ましい。
ポリアクリル酸金属塩架橋物は、ポリアクリル酸金属塩の架橋物である。塩を形成する金属としては、アルカリ金属が好ましく、ナトリウムがより好ましい。ポリアクリル酸金属塩架橋物としては、ポリアクリル酸ナトリウム架橋物等が好ましい。
ビニルエステル・エチレン系不飽和カルボン酸は、ビニルエステルとエチレン系不飽和カルボン酸の共重合体である。
ノニオン型ポリアルキレンオキシドとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリアルキレンオキシドを主鎖とする架橋物が好ましい。
水膨張材は、市販の水膨張材を使用することができる。
水膨張材は、架橋したもの、変性したものでもよい。架橋及び/又は変性した水膨潤材は、水膨潤材の分野で、一般的に用いられる架橋方法、変性方法によって製造することができる。
上記水膨張材は、熱可塑性の水膨張材であることが好ましい。上記具体例のうち、熱可塑性の水膨張材としては、ノニオン型ポリアルキレンオキシド等が挙げられる。
突出部の形成を抑制し、吸水後の外観の良い組成物を得る観点からは、熱可塑性の水膨張材を用いることが好ましい。上記突出部は、水膨張材が組成物の表面に露出した場合に、露出した水膨張材が吸水によって膨張することによって組成物表面に形成される。しかし、熱可塑性の水膨張材は、組成物中に均一に分散されやすく、吸水時に組成物が均一に膨張するため、突出部の原因となりにくい。
さらに、別の観点から検討すると、水膨張材は、イオン性吸水性水膨張樹脂、非イオン性(ノニオン性)吸水性水膨張樹脂でもよい。電解質の影響を受けにくい点からは、非イオン性吸水性水膨張樹脂が好ましい。非イオン性吸水性水膨潤樹脂を用いると、水(イオン交換水)及び電解質を含む液のいずれをも大きな差なく吸水できる、水膨張性シラン架橋ゴム組成物とすることができ、好ましい。
イオン性吸水性水膨張樹脂としては、特に制限されないが、ポリカルボン酸塩系樹脂、ポリアクリル酸塩系樹脂、カルボキシメチルセルロース系樹脂、ポリスルホン酸塩系樹脂等が挙げられる。
非イオン性吸水性水膨張樹脂としては、特に制限されないが、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリオキシアルキレン系樹脂等が挙げられる。
<有機過酸化物>
有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、触媒としてシランカップリング剤のグラフト化反応部位とベースゴムとのラジカル反応(ゴムからの水素ラジカル引き抜き反応を含む)によるグラフト化反応を生起させる働きをする。
有機過酸化物としては、ラジカルを発生させるものであれば、特に制限はなく、例えば、一般式:R-OO-R、R-OO-C(=O)R、RC(=O)-OO(C=O)Rで表される化合物が好ましい。ここで、R~Rは各々独立にアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。各化合物のR~Rのうち、いずれもアルキル基であるもの、又は、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド等を挙げることができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3が好ましい。有機過酸化物は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
有機過酸化物の分解温度は、130~195℃であるのが好ましく、150~185℃であるのが特に好ましい。
本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、1分間のうちある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に半分分解反応を起こす温度(1分間半減期温度)を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
有機過酸化物は、水膨張性シラン架橋ゴム組成物の調製時に、後述する配合量で使用することが好ましい。
<無機フィラー>
無機フィラーは、特に制限されないが、その表面に、シランカップリング剤のシラノール縮合可能な反応部位と水素結合又は共有結合等により、化学結合しうる部位を有するものを好ましく用いることができる。この無機フィラーにおける、シランカップリング剤のシラノール縮合可能な反応部位と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
このような無機フィラーとしては、例えば、水和水、水酸基あるいは結晶水を有する化合物のような金属水和物等が挙げられる。金属水和物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、さらには炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカなどのほか、水和水等を有する、水和ケイ酸アルミニウム、水和ケイ酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の無機酸塩又は無機酸化物等が挙げられる。無機フィラーとしては、金属水和物以外にも、例えば、窒化ほう素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ等)、カーボンブラック、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛が挙げられる。無機フィラーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
無機フィラーは、これらの中でも、金属水和物、タルク、クレー、シリカ、カーボンブラックからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤は、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下で、ベースゴムのグラフト化反応可能な部位にグラフト化反応しうるグラフト化反応部位(基又は原子)と、シラノール縮合可能な反応部位(加水分解して生成する部位を含む。例えばシリルエステル基等)とを、少なくとも有するものであればよい。このようなシランカップリング剤として、末端に加水分解性基を有する加水分解性シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤は、末端に、アミノ基、グリシジル基又はエチレン性不飽和基を含有する基と加水分解性基を含有する基とを有しているものがより好ましく、さらに好ましくは末端にエチレン性不飽和基を含有する基と加水分解性基を含有する基とを有しているシランカップリング剤である。エチレン性不飽和基を含有する基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基、p-スチリル基等が挙げられる。またこれらのシランカップリング剤とその他の末端基を有するシランカップリング剤を併用してもよい。
シランカップリング剤としては、不飽和基を有するシランカップリング剤が挙げられ、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)クリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシランを挙げることができる。
末端にグリシジル基を有するものとしては、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記シランカップリング剤の中でも、末端にビニル基とアルコキシ基を有するシランカップリング剤がさらに好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
シランカップリング剤は、そのままの形態で用いてもよいし、溶剤で希釈した形態で用いてもよい。シランカップリング剤は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
<シラノール縮合触媒>
シラノール縮合触媒は、ベースゴムにグラフト化反応したシランカップリング剤を水分の存在下で縮合反応させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介して、ゴム同士が架橋される。その結果、加硫設備を用いなくとも優れた引張強度や小さな圧縮永久歪みを有し、必要により高温、高速で成形可能となり、従来の架橋EPゴムの製造方法よりも短時間で水膨張性シラン架橋ゴム組成物が得られる。
シラノール縮合触媒としては、特に限定されず、例えば、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が挙げられる。一般的なシラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物等が用いられる。これらの中でも、特に好ましくは、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物である。
<その他の添加剤>
水膨張性シラン架橋ゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、樹脂組成物において、一般的に使用されている各種の添加剤等を含有することができる。例えば、酸化防止剤、及びカーボンブラック等を挙げることができる。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、ベースゴムのシラン架橋物、シランカップリング剤、シラノール縮合触媒、水膨張材、及び、必要により無機フィラーを、通常、後述する製造方法において説明する含有量で含有する。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物の好ましい一態様は、エチレンゴムを30~100質量%含むベースゴム100質量部に対し、デンプン・アクリル酸グラフト重合体部分金属塩、オレフィン-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール-アクリル酸共重合体、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸金属塩架橋物、ビニルエステル・エチレン系不飽和カルボン酸、ノニオン型ポリアルキレンオキシド、変性ポリアクリル酸架橋樹脂及びアクリル酸重合体部分金属塩架橋樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の水膨張材10~200質量部を含有し、上記ベースゴムがシラン架橋されてなる水膨張性シラン架橋ゴム組成物である。この態様によれば、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)15%以下及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)5.0%以下を実現できる。その上、吸水体積膨張率(Xw)を15%以上とでき、及び圧縮永久歪みを低減することができる。上記態様において、水膨張材としてノニオン型ポリアルキレンオキシドを選択することがより好ましい。上記態様において、水膨張材としてノニオン型ポリアルキレンオキシド15~60質量部と、無機フィラー3~100質量部とを含有すると、さらに好ましい。この態様によれば、塩水に対しても繰り返し吸水時体積膨張率差(Ys)15%以下及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zs)5.0%以下を実現できる。
上記好ましい態様は、次のように表すこともできる。すなわち、エチレンゴムを30~100質量%含むベースゴムのシラン架橋物と、シラン架橋前のベースゴム100質量部に対し、デンプン・アクリル酸グラフト重合体部分金属塩、オレフィン-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール-アクリル酸共重合体、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸金属塩架橋物、ビニルエステル・エチレン系不飽和カルボン酸、ノニオン型ポリアルキレンオキシド、変性ポリアクリル酸架橋樹脂及びアクリル酸重合体部分金属塩架橋樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の水膨張材10~200質量部とを含有する水膨張性シラン架橋ゴム組成物である。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物の別の好ましい一態様は、エチレンゴムを30~70質量%、ポリエチレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体の樹脂を合計で10~50質量%、スチレンエラストマーを5~20質量%、及びオイルを5~20質量%含有するベースゴム100質量部に対し、無機フィラー3~100質量部と、前記ベースゴムにグラフト化反応したシランカップリング剤1.0~6.0質量部と、シラノール縮合触媒0.01~0.5質量部と、ノニオン型ポリアルキレンオキシド15~60質量部とを含む水膨張性シラン架橋性ゴム組成物のシラノール縮合硬化物からなる水膨張性シラン架橋ゴム組成物である。この態様によれば、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)10%以下及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)2.0%以下を実現できる。さらに、塩水に対しても繰り返し吸水時体積膨張率差(Ys)10%以下及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zs)2.0%以下を実現できる。その上、圧縮永久歪みを小さくでき、かつ、吸水後の外観を優れたものとできる。
上記水膨張性シラン架橋ゴム組成物の別の好ましい一態様は、次のように表すこともできる。すなわち、エチレンゴムを30~70質量%、ポリエチレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体の樹脂を合計で10~50質量%、スチレンエラストマーを5~20質量%、及びオイルを5~20質量%含有するベースゴム100質量部に対し、有機過酸化物0.01~0.6質量部と、無機フィラー3~100質量部と、前記ベースゴムにグラフト化反応しうるグラフト化反応部位とシラノール縮合可能な反応部位とを有するシランカップリング剤1.0~6.0質量部と、シラノール縮合触媒0.01~0.5質量部と、ノニオン型ポリアルキレンオキシド15~60質量部とを溶融混合して、架橋させてなる水膨張性シラン架橋ゴム組成物である。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物の製造方法の詳細については、後述する。
<水膨張性シラン架橋ゴム組成物の特性等>
上述の通り、水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)が15%以下(好ましくは10%以下)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)が5.0%以下である。
上記特性に加えて、水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、以下の特性を有することが好ましい。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、上記繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)をイオン交換水に代えて、5%塩水を用いて測定した、塩水使用時の繰り返し吸水時体積膨張率差(Ys)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zs)が、それぞれ、30%以下及び8.0%以下であることが好ましい。このような水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、一般的には膨張しにくい条件である塩水下でも十分に繰り返し膨張収縮することができ、水質の変化による膨張性及び復元性への影響を受けにくい点で好ましい。
繰り返し吸水時体積膨張率差(Ys)は、15%以下であることがより好ましい。繰り返し吸水時体積膨張率差(Ys)の下限は、0%であることが理想的であるが、実際的には0.5%である。
繰り返し排湿時体積収縮率差(Zs)は、5.0%以下であることがより好ましく、3%以下であることがより好ましい。繰り返し排湿時体積収縮率差(Zs)の下限は、0%であることが理想的であるが、実際的には0.5%である。
繰り返し吸水時体積膨張率差(Ys)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zs)は、上述の繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)と同様の方法で調整できるが、特に、水膨張材の種類及び添加量を調整することにより、上記範囲とすることができる。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物についての、実施例に記載の方法で測定される体積膨張率(Xw)は、15%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。このような体積膨張率(Xw)を示す水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、水を吸収して体積が大きく膨張するため、その膨張圧によって他の部材に対して密着しやすくなる(高密着性を実現する)点で好ましい。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物についての、実施例に記載の体積膨張率(Xw)の測定方法において、イオン交換水に代えて、5%塩水を用いた際の体積膨張率(Xs)は、特に制限されないが、15%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。このような水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、膨張しにくい条件である塩水下でも十分に膨張することができ、水質の変化による膨張性への影響を受けにくい点で好ましい。例えば、クロージャに使用した場合、水質の変化による水密性の変動を抑制することができる。
体積膨張率(Xw)及び(Xs)は、水膨張材の種類及び配合量を制御することにより、上記範囲に調整することができる。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物についての、実施例に記載の方法で測定される圧縮永久歪みは、特に制限されないが、35%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましい。このような水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、圧縮によってもつぶれにくい弾性を示すので、ガスケット、パッキン等として用いると、装着時だけでなく、吸水及び排湿を繰り返しても高いシール性能を維持して、高い止水性を発現する点で好ましい。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物の硬度は、特に制限されないが、ショアA硬さで60以下であることが好ましい。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、耐熱性を有することも好ましい。耐熱性は、シラン架橋の形成、無機フィラーの添加などにより、付与することができる。
水架橋性シラン架橋ゴム組成物は、加硫工程を行わずに架橋を形成して製造することができる。このため、製造時間の短縮が可能であり、効率よく製造することができる。
水架橋性シラン架橋ゴム組成物は、材料の混合時間(特に、後述するドライブレンドの時間)の短縮が可能である。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、水及び塩水への24時間浸漬後の吸水量が0.5g/g以上であることが好ましく、1.0g/g以上であることがより好ましい。上限は、特に限定されないが、2.0g/gが実際的である。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、水及び塩水への24時間浸漬後、24時間排出(乾燥)後の排湿量が0.5g/g以上であることが好ましく、1.0g/g以上であることがより好ましい。上限は、特に限定されないが、2.0g/gが実際的である。
上記吸水量は、JISK7223高吸水性樹脂の吸水量試験方法に準拠した、下記の方法により、また、排湿量は下記の方法により測定することができる。

[吸水量]
室温25℃でイオン交換水(純水)又は塩水5%(使用量はシートサンプル1つに対して200ml)に、水膨張性シラン架橋ゴム組成物を2mm×20mm×50mmに成形したシートサンプルを24時間浸漬後、イオン交換水又は塩水から取り出してすぐに、質量を計量する。
W=(e1-d1)/d1
W:吸水量(g/g)
d1:試料の質量(g)
e1:試料を所定時間浸漬し、水切りした後の質量(g)

[排湿量]
室温25℃でイオン交換水(純水)又は塩水5%(使用量はシートサンプル1つに対して200ml)に、水膨張性シラン架橋ゴム組成物を2mm×20mm×50mmに成形したシートサンプルを24時間浸漬後、イオン交換水又は塩水から取り出し、大気圧下、室温25℃、無風状態の環境に24時間放置、質量を計量する。排湿時には、前記シートサンプルを、シートサンプルの最大面を下にして設置して放置する。
Zw=(e2-d2)/d2
Zw:排湿量(g/g)
d2:試料の質量(g)
e2:試料を所定時間乾燥した後の質量(g)
<用途>
水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、膨潤性及び/又は耐水性が要求される製品、部品等の材料として使用することができる。このような製品、部品、部材等としては、例えば、パッキン、ガスケット等のシール材、止水材、止水に用いる装置の構成部材、水密性が要求される装置の構成部材(例えば、クロージャの端面板及びバックル)等が挙げられる。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、部材の接合面に配置して、止水材として用いることもできる。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、例えば、クロージャの構成部材として使用することができる。
クロージャの一例を図1に示す。図1に示すクロージャ1は、箱本体11と蓋体12とからなる。箱本体11及び蓋体12は、それぞれ内部が直方形状の空洞となっている直方体の一面を取って開口部を設けた箱状である。箱本体11は、底面、正面(面A)、正面に対峙する裏面、及び左右側面を有する。蓋体12は、天面、正面、正面に対峙する裏面、及び左右側面を有する。図1では、箱本体11と蓋体12とはそれぞれの開口部が相対するようにして示されている。箱本体11において、底面に対して鉛直方向を上下方向という。箱本体11は、そのA面に、通信ケーブル等をクロージャ内部に通すための貫通孔(図示せず)を有する2つの端面板21を有し、内部にケーブル接続分岐部(図示せず)を有する。箱本体11と蓋体12との接合面にはガスケット22が配されている。箱本体11と蓋体12とをガスケット22を介して接合させて、箱本体11の両側面上方に設けたバックル留め部24に、蓋体12の両側面に設けられた、可撓性を有するバックル23を係合させて閉じることによりクロージャ1内部を外部から遮断する。本発明の水膨張性シラン架橋ゴム組成物を、端面板21、ガスケット22、バックル23等に使用すると、ベースゴムがもともと有する弾性を利用した密着性に加えて、水を吸収した際には、体積が膨張することによる膨張圧により他の部材との密着性がより高まり、クロージャ1内部への水の浸入を防ぐことができる。加えて、水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、繰り返しの湿潤乾燥による膨張性及び復元性の低下が抑制されているので、クロージャを使用しても、水密性が低下しにくい。
[水膨張性シラン架橋ゴム成形体]
本発明の水膨張性シラン架橋ゴム成形体は、本発明の水膨張性シラン架橋ゴム組成物を成形してなるものであればよく、特に限定されない。水膨張性シラン架橋ゴム成形体の形状は、その用途に応じて設定することができる。成形のタイミングは特に限定しないが、シラン架橋前に行うことが好ましい。水膨張性シラン架橋ゴム成形体の製造方法及びその成形方法については後述する。
水膨張性シラン架橋ゴム成形体は、本発明の水膨張性シラン架橋ゴム組成物と同様の特性を示す。
成形体の例としては、上記水膨張性シラン架橋ゴム組成物の用途で説明した、部材等が挙げられる。例えば、クロージャのガスケット等とすることが好ましい。
また、水膨張性シラン架橋ゴム成形体は止水材とすることも好ましい。
[製造方法]
以下、本発明の水膨張性シラン架橋ゴム組成物及び水膨張性シラン架橋ゴム成形体について、製造方法に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物の製造方法は、シラン架橋法であって、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)が15%以下であり、かつ繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)が5.0%以下である、水膨張性シラン架橋ゴム組成物が得られる方法であれば、特に制限されない。好ましくは、有機過酸化物の存在下でベースゴムにシランカップリング剤をグラフト化反応させて、シラングラフトゴムを得た後に、シラノール縮合触媒の存在下でシラングラフトゴムを水と接触させて、シラン架橋反応させる製造方法である。水膨張材は前記シラン架橋反応前に混合されればどの段階で混合されてもよい。また、必要に応じて無機フィラーを配合してもよい。
上記グラフト化反応は、ベースゴムとシランカップリング剤のグラフト化反応部位とを反応させて行う。具体的な反応条件としては、後述する工程(a)の溶融混合条件が挙げられる。グラフト化反応は、無機フィラーの存在下で行うことが好ましい。
シラングラフトゴムと水との接触は、通常の方法により行うことができる。水と接触することにより、シラングラフトゴムにグラフト化反応したシランカップリング剤のシラノール縮合可能な反応部位がシラノール基となり、シラノール基が脱水縮合することにより、架橋が形成される。
このようにして、水膨張性シラン架橋ゴム組成物を得ることができる。
水膨張性シラン架橋ゴム成形体の製造方法は、上記の水膨張性シラン架橋ゴム組成物の製造方法において、シラン架橋の前に成形工程を有する以外は、上記水膨張性シラン架橋ゴム組成物の製造方法と同じである。
以下では、水膨張性シラン架橋ゴム成形体の製造方法の好ましい態様について説明をするが、成形工程以外の工程は、水膨張性シラン架橋ゴム組成物の製造方法と共通である。
水膨張性シラン架橋ゴム成形体の製造方法の好ましい一態様は以下の通りである。
工程(1):ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0~250質量部と、ベースゴムにグラフト化反応しうるグラフト化反応部位とシラノール縮合可能な反応部位とを有するシランカップリング剤1~15質量部と、有機過酸化物0.01~0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001~0.5質量部と、水膨張材10~200質量部とを溶融混合して、溶融混合物として水膨張性シラン架橋性ゴム組成物を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた水膨張性シラン架橋性ゴム組成物を成形して成形体を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた成形体を水と接触させて水膨張性シラン架橋ゴム成形体を得る工程
前記工程(1)を行うにあたり、下記工程(a)においてベースゴムの全部を溶融混合する場合には、前記工程(1)は、下記工程(a)及び工程(c)を有し、下記工程(a)でベースゴムの一部を溶融混合する場合には、前記工程(1)は、下記工程(a)、工程(b)及び工程(c)を有する。
工程(a):ベースゴムの全部又は一部と、シランカップリング剤と、有機過酸化物と、無機フィラーを含む場合には無機フィラーとを有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):ベースゴムの残部とシラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):シランマスターバッチと、シラノール縮合触媒又は前記触媒マスターバッチと、水膨張材とを溶融混合して、水膨張性シラン架橋性ゴム組成物を調製する工程
ここで、混合するとは、均一な混合物を得ることをいう。
上記態様では、水膨張材を工程(c)において混合しているが、上述の通り、水膨張材は、工程(a)又は(b)において混合してもよい。
ここで、シランマスターバッチ(シランMB)(シラングラフトゴム組成物ともいう)は、シラングラフトゴムを含有する組成物であり、ベースゴムからなる態様と、ベースゴムと必要に応じて他の成分を含む態様を包含する。シラングラフトゴムを工程(a)等により合成する場合には、シラングラフトゴム組成物は、有機過酸化物の分解物、未反応のシランカップリング剤、シランカップリング剤の縮合物等の未反応物若しくは副生物を含有していてもよい。
シラン架橋性ゴム組成物は、シラングラフトゴム組成物とシラノール縮合触媒とを含有する組成物である。これらに加えてさらに水膨張材を含むシラン架橋性ゴム組成物を、水膨張性シラン架橋性ゴム組成物という。
さらに、水膨張性シラン架橋ゴム組成物は、水膨張性シラン架橋性ゴム組成物のシラン架橋物(シラノール縮合硬化物)をいう。
水膨張性シラン架橋ゴム組成物の製造方法において、「ベースゴム」とは、水膨張性シラン架橋ゴム成形体又は水膨張性シラン架橋ゴム組成物を形成するためのベースゴムである。したがって、水膨張性シラン架橋ゴム成形体又は水膨張性シラン架橋ゴム組成物の製造方法においては、工程(1)で得られる水膨張性シラン架橋性ゴム組成物に100質量部のベースゴムが含有されていればよい。工程(1)におけるベースゴムの配合量100質量部は、工程(a)及び工程(b)で溶融混合されるベースゴムの合計量である。
工程(1)において、ベースゴム中の各成分の含有量は、上記した通りである。
ベースゴムは、工程(a)において、好ましくは80~99質量部、より好ましくは94~98質量部が配合され、工程(b)において、好ましくは1~20質量部、より好ましくは2~6質量部が配合される。
工程(1)において、水膨張材の配合量は、ベースゴム100質量部に対して、10~200質量部が好ましく、20~100質量部がより好ましい。水膨張材の配合量を上記範囲とすることにより、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)を上記範囲とできる。塩水の吸収の観点からは、10~80質量部とすることが好ましい。
工程(1)において、有機過酸化物の配合量は、特に限定されず、ベースゴム100質量部に対して、0.01~0.6質量部が好ましく、0.1~0.5質量部がより好ましい。有機過酸化物の配合量をこの範囲内にすることにより、適切な範囲でグラフト化反応を行うことができ、十分な引張強度を有し、圧縮永久歪みの小さい水膨張性シラン架橋ゴム組成物を、ゲル状のブツも発生することなく外観不良を抑制しつつ得ることができる。
工程(1)において、無機フィラーを添加する場合には、無機フィラーの配合量は、特に限定されず、ベースゴム100質量部に対して、1~250質量部が好ましく、1~200質量部がより好ましく、3~100質量部がさらに好ましい。無機フィラーの配合量を上記範囲とすることにより、シランカップリング剤の揮発を抑制して、グラフト化反応及び架橋を十分に進行させつつ、ゴム本来の特性を維持することができる。繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)及び小さい圧縮永久歪みの両立の観点からは、10~90質量部であることが好ましい。体積膨張率(Xw)を高める観点からは、100質量部以下が好ましい。
工程(1)において、シランカップリング剤の配合量は、特に限定されず、ベースゴム100質量部に対して、1~15質量部であり、好ましくは1.0~6.0質量部である。
シラノール縮合触媒の配合量は、特に限定されず、ベースゴム100質量部に対して、0.0001~0.5質量部であり、好ましくは0.01~0.5質量部である。シラノール縮合触媒の含有量が0.0001~0.5質量部であると、シランカップリング剤の縮合反応による架橋反応がほぼ均一に進みやすく、圧縮永久歪みが小さく、排湿時の外観に優れた水膨張性シラン架橋ゴム成形体とすることができる。
工程(a)において、ベースゴムの全部又は一部と、シランカップリング剤と、有機過酸化物と、必要により無機フィラーとを、上記含有量で、混合機に投入し、有機過酸化物の分解温度以上の温度に加熱しながら溶融混練して、シランマスターバッチを調製する。
上記成分を溶融混合(溶融混練、混練りともいう)する温度は、有機過酸化物の分解温度以上、好ましくは有機過酸化物の分解温度+(1~80)℃の温度である。溶融混合の温度は、一義的に定めることは難しいが、一例を挙げると、80~250℃が好ましく、100~240℃がより好ましい。この分解温度はベースゴムが溶融してから設定することが好ましい。その他の条件は適宜設定することができる。例えば、混合時間は、上記溶融温度でシランカップリング剤のベースゴムへのグラフト化反応が十分に進行する時間であればよく、例えば、5分~1時間が好ましい。
混合方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば、特に限定されない。混合装置は、例えば無機フィラーの含有量に応じて適宜に選択される。混練装置として、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられる。
工程(a)において、各成分の混合順は特に限定されず、どのような順で混合してもよい。
工程(a)においては、各成分を一度に溶融混錬することもできるが、上記各成分を、下記工程(a-1)及び(a-2)により、(溶融)混合することが好ましい。
工程(a-1):少なくとも無機フィラー及びシランカップリング剤を混合して混合物を調製する工程
工程(a-2):工程(a-1)で得られた混合物と、ベースゴムの全部又は一部とを、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上の温度において、溶融混合する工程
工程(a-1)において、無機フィラーと前混合されたシランカップリング剤は、無機フィラーの表面を取り囲むように存在し、その一部又は全部が無機フィラーに吸着又は結合する。すなわち、無機フィラーの表面(化学結合しうる部位)に(シラノール縮合可能な加水分解性シリル基を介して)強い結合でシランカップリング剤が結合又は吸着した無機フィラーと、表面に弱い結合でシランカップリング剤が結合又は吸着した無機フィラーとを調製できる。弱い結合としては、水素結合による相互作用、イオン、部分電荷若しくは双極子間での相互作用、吸着による作用等が挙げられ、強い結合としては、無機フィラー表面の化学結合しうる部位との化学結合等が挙げられる。この結合により、後の工程(a-2)での溶融混合の際にシランカップリング剤の揮発をより低減できる。また、無機フィラーに吸着又は結合しないシランカップリング剤が縮合して溶融混合が困難になることも防止できる。
このような混合条件として、好ましくは、有機過酸化物の分解温度未満の温度、より好ましくは室温(25℃)で、有機過酸化物と無機フィラーとシランカップリング剤との混合を行う。混合時間は、好ましくは1~10分程度に設定できる。
工程(a-1)において、無機フィラーとシランカップリング剤との混合方法は特に限定されないが、湿式処理、乾式処理等の混合方法が挙げられる。本発明においては、無機フィラー、好ましくは乾燥させた無機フィラー中にシランカップリング剤を、加熱又は非加熱で加え混合する乾式処理が好ましい。
また、工程(a-1)の混合においては、有機過酸化物が存在していてもよい。工程(1)において、有機過酸化物を混合する方法としては、特に限定されず、上記混合物とベースゴムとを溶融混合する際に、存在していればよい。また、有機過酸化物は、他の成分と混合させたものでもよいし、単体でもよい。
工程(a-1)の混合においては、上記分解温度未満の温度が保持されている限り、ベースゴムが存在していてもよい。
上記前混合する混合方法においては、次いで、工程(a-1)で得られた混合物とベースゴムの全部又は一部とを、有機過酸化物の分解温度以上に加熱しながら、溶融混練する(工程(a-2))。
工程(a)においては、シラノール縮合触媒を実質的に混合せずに上述の各成分を混練することが好ましい。これにより、シランカップリング剤の縮合反応を抑えることができ、溶融混合しやすく、また射出成形の際に所望の形状を得ることができる。ここで、「実質的に混合せず」とは、不可避的に存在するシラノール縮合触媒をも排除するものではなく、シランカップリング剤のシラノール縮合による上述の問題が生じない程度に存在していてもよいことを意味する。例えば、工程(a)において、シラノール縮合触媒は、ベースゴム100質量部に対して0.01質量部以下であれば存在していてもよい。
このようにして、工程(a)を行い、シランマスターバッチ(シランMBともいう)が調製される。このシランMBは、後述するように、工程(1)で調製される溶融混合物(水膨張性シラン架橋性ゴム組成物)の製造に、好ましくは、シラノール縮合触媒又は後述する触媒マスターバッチとともに、用いられる。シランMBは、後述の工程(2)により成形可能な程度にシランカップリング剤がベースゴムにグラフト化反応したシラン架橋性ゴム(シラングラフトゴム)を含有している。
上記製造方法において、次いで、工程(a)でゴムの一部を溶融混合する場合には、ベースゴムの残部とシラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒マスターバッチ(触媒MBともいう)を調製する工程(b)を行う。したがって、工程(a)でベースゴムの全部を溶融混合する場合は、工程(b)を行わなくてもよく、また他の樹脂とシラノール縮合触媒とを混合してもよい。ここで、工程(b)においてシラノール縮合触媒と混合するゴムをキャリアゴムという。
キャリアゴムとしてのゴムとシラノール縮合触媒との混合割合は、特に限定されないが、好ましくは、工程(1)における上記含有量を満たすように、設定される。
混合は、均一に混合できる方法であればよく、ゴムの溶融下で行う混合(溶融混合)が挙げられる。溶融混合は上記行程(a)の溶融混合と同様に行うことができる。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
工程(b)において、ベースゴムの残部に代えて、又は、加えて他のゴム成分若しくは樹脂成分をキャリアゴムとして用いることができる。キャリアゴムが他のゴム成分又は樹脂成分である場合、工程(a)においてシラン架橋を早く促進させることができるうえ、成形中にブツが生じにくい点で、他のゴム成分又は樹脂成分の含有量は、ベースゴム100質量部に対して、好ましくは1~50質量部、より好ましくは2~30質量部、さらに好ましくは4~20質量部である。
また、工程(b)において、無機フィラーを用いてもよい。この場合、無機フィラーの含有量は、特には限定されないが、キャリアゴム100質量部に対し、350質量部以下が好ましい。無機フィラーの含有量が多いとシラノール縮合触媒が分散しにくく、架橋反応が進行しにくくなる。
このようにして調製される触媒MBは、シラノール縮合触媒及びキャリアゴム、所望により添加される無機フィラーの混合物である。
この触媒MBは、シランMBとともに、工程(1)で調製される水膨張性シラン架橋性ゴム組成物の製造に、用いられる。
上記好ましい製造方法において、次いで、シランMBと、シラノール縮合触媒又は触媒MBと水膨張材を混合して、溶融混合物を得る工程(c)を行う。
混合方法は、上述説明のように均一な溶融混合物を得ることができれば、どのような混合方法でもよい。
溶融混合を行うに先立って、シランMBと、シラノール触媒又は触媒MBと、水膨潤材とをドライブレンドすることができる。このような混合条件として、好ましくは10~60℃、より好ましくは室温近傍(20~25℃)で、これらの成分の混合を行う。混合時間は、使用する原料の種類、配合量、装置等により異なるため一義的に定めることは難しいが、好ましくは1~10分程度に設定できる。比較的短時間でドライブレンドを行っても、溶融混合後に、均一な溶融混合物を得ることができる。
混合は、工程(a)の溶融混合と基本的に同様である。混合は、ベースゴムやその他樹脂成分が溶融する温度で行う。混合温度は、ベースゴム又はキャリアゴムの溶融温度に応じて適宜に選択される。工程(c)において、混合温度は、例えば、好ましくは100~230℃、より好ましくは120~200℃である。その他の条件、例えば混合(混練)時間は適宜設定することができる。
工程(c)においては、シラノール縮合反応を避けるため、シランMBとシラノール縮合触媒が混合された状態で高温状態に長時間保持されないことが好ましい。
この工程(c)は、シランMBとシラノール縮合触媒と水膨張材とを混合して溶融混合物を得る工程であればよく、シラノール縮合触媒及びキャリアゴムを含有する触媒MBとシランMBと水膨張材とを溶融混合する工程であるのが好ましい。
このようにして、工程(a)~(c)(工程(1))、すなわち水膨張性シラン架橋性ゴム組成物の製造方法を行い、溶融混合物として、水膨張性シラン架橋性ゴム組成物が製造される。
この水膨張性シラン架橋性ゴム組成物中に含有されるシラン架橋性ゴムは、シランカップリング剤がベースゴムにグラフト化反応したシラン架橋性ゴムである。このシラン架橋性ゴムにおいて、シランカップリング剤のシラノール縮合可能な反応部位は、無機フィラーと結合又は吸着していてもよいが、後述するようにシラノール縮合していない。したがって、シラン架橋性ゴムは、無機フィラーと結合又は吸着したシランカップリング剤がベースゴムにグラフト化反応した架橋性ゴムと、無機フィラーと結合又は吸着していないシランカップリング剤がベースゴムにグラフト化反応した架橋性ゴムとを少なくとも含む。また、シラン架橋性ゴムは、無機フィラーが結合又は吸着したシランカップリング剤と、無機フィラーが結合又は吸着していないシランカップリング剤とを有していてもよい。また、シランカップリング剤と未反応のゴム成分を含んでいてもよい。
グラフト化率は、有機過酸化物の種類又は含有量、シランカップリング剤の種類、密閉型ミキサーの使用等によって、所定の範囲に設定できる。
工程(1)により得られるシラン架橋性ゴムは、シランカップリング剤がシラノール縮合していない未架橋体である。実際的には、工程(c)で溶融混合されると、一部架橋(部分架橋)は避けられないが、得られる水膨張性シラン架橋性ゴム組成物について、少なくとも工程(2)で成形可能な成形性が保持されたもの(未架橋状態又は部分架橋状態)とする。
工程(1)において、工程(a)~(c)は、同時又は連続して行うことができる。
本発明の水膨張性シラン架橋ゴム成形体の製造方法は、次いで、工程(2)及び工程(3)を行う。
本発明の水膨張性シラン架橋ゴム成形体の製造方法において、得られた溶融混合物を成形して成形体を得る工程(2)を行う。この工程(2)は、溶融混合物を成形できればよく、本発明の製品の形態に応じて、適宜に成形方法及び成形条件が選択される。成形方法は、押出機を用いた押出成形、射出成形機を用いた射出成形、プレス成形機を用いたプレス成形、その他の成形機を用いた成形が挙げられる。射出成形が特に好ましい。
また、工程(2)は、工程(c)と同時に又は連続して、行うことができる。すなわち、工程(c)の溶融混合の一実施態様として、溶融成形の際、例えば射出成形の際に、又は、その直前に、シランMBとシラノール縮合触媒又は触媒MBと水膨張材との成形原料を溶融混合する態様が挙げられる。例えば、ドライブレンド等のペレット同士を常温又は高温で混ぜ合わせて成形機に導入(溶融混合)してもよいし、混ぜ合わせた後に溶融混合し、再度ペレット化をして成形機に導入してもよい。より具体的には、成形材料を射出成形機内で溶融混練し、次いで、所望の形状に成形する一連の工程を採用できる。このようにして、水膨張性シラン架橋性ゴム組成物の成形体が得られる。この成形体は、一部架橋は避けられないが、工程(2)で成形可能な成形性を保持する未架橋状態又は部分架橋状態にある。したがって、この発明の水膨張性シラン架橋ゴム成形体は、工程(3)を実施することによって、架橋又は最終架橋された成形体とされる。
本発明のシラン架橋ゴム組成物の成形に際しては、プレミックス機能を有しない成形機を用いることも可能である。これは、上述の通り、シラン架橋法としたことにより、ベースゴムと水膨張材とが均一に混合されやすいためである。
本発明の水膨張性シラン架橋ゴム成形体の製造方法においては、工程(2)で得られた成形体を水と接触させる工程(3)を行う。これにより、シランカップリング剤のシラノール縮合可能な反応部位が縮合して架橋反応が起こる。具体的には、シラノール縮合可能な反応部位が加水分解されてシラノールとなり、成形体中に存在するシラノール縮合触媒によりシラノールの水酸基同士が縮合する。こうして、シランカップリング剤がシラノール縮合して架橋した水膨張性シラン架橋ゴム成形体を得ることができる。
この工程(3)の処理自体は、通常の方法によって行うことができる。シランカップリング剤同士の縮合は、常温で放置するだけで進行する。したがって、工程(3)において、成形体を水に積極的に接触させる必要はない。
上記製造方法により得られる水膨張性シラン架橋ゴム成形体は、後述するように、シラン架橋性ゴムがシランカップリング剤を介して架橋したシラン架橋ゴムを含んでいる。この水膨張性シラン架橋ゴム成形体の一形態は、シラン架橋ゴムと、無機フィラーとを含有する。ここで、無機フィラーはシラン架橋ゴムのシランカップリング剤に結合していてもよい。このシラン架橋ゴムは、複数の架橋ゴムがシランカップリング剤により無機フィラーに結合又は吸着することにより、無機フィラー及びシランカップリング剤を介して結合(架橋)した架橋ゴムと、上記架橋性ゴムのシランカップリング剤のシラノール縮合可能な反応部位が加水分解して互いにシラノール縮合反応することにより、シランカップリング剤を介して架橋した架橋ゴムとを少なくとも含む。また、シラン架橋ゴムは、無機フィラー及びシランカップリング剤を介した結合(架橋)と、シランカップリング剤を介した架橋とが混在していてもよい。さらに、シランカップリング剤と未反応のゴム成分及び/又は架橋していないシラン架橋性ゴムを含んでいてもよい。
水膨張材は、シラン架橋ゴム中に分散している。
上記水膨張性シラン架橋ゴム成形体の製造方法によれば、優れた繰り返し吸水特性を有する水膨張性シラン架橋ゴム組成物を、製造することができる。さらに、上記特性に加えて、優れた吸水体積膨張率、圧縮永久歪、優れた吸水後の外観を兼ね備えた水膨張性シラン架橋ゴム成形体を製造することができる。
さらに、水膨張性シラン架橋ゴム成形体の製造方法は、上記ベースゴムを上記のシラン架橋法により、成形及び架橋するものであるから、架橋反応を行うに当たりEPゴムの加硫設備を不要とし、EPゴムの加硫法に対して生産性を高めることができる。
特に、本発明では、工程(3)における、水存在下でのシラノール縮合触媒を使用した縮合による架橋反応を、成形体を形成した後に行う。シラノール縮合触媒を使用した縮合反応は、水分のほとんど存在しない射出成形機内では進行しないため、工程(2)において水膨張性シラン架橋性ゴム組成物は流動性を有しており、高温での射出成形が可能になる。したがって、高温及び高速での成形も可能となる。
一方、成形後には、架橋反応が容易に進行しやすく、架橋を均一に行うことができる。これは、水膨張性シラン架橋性ゴム組成物は、水膨張材を含有しているため、水分を取り込みやすく、シランカップリング剤のシラノール縮合可能な反応部位が加水分解する機会が増やされているためと考えられる。
得られた水膨張性シラン架橋ゴム成形体は、すべての面から単位面積当たり均一に吸水、排湿できる。
さらに、上記製造方法において、シランカップリング剤を無機フィラーに混合すると、上記のように、シランカップリング剤同士の縮合反応(ブツの形成)が抑えられる等により、外観により優れたものとなる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
表1において、各例の含有量に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。
実施例1~19、比較例1~8は、下記成分を用いて、それぞれの諸元を表1に示す条件に設定して、実施した。
<エチレンゴム>
エチレンゴム1:「ノーデル3720P」(NORDEL(登録商標)、ダウ・ケミカル社製、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴム、エチレン含有量70質量%)
エチレンゴム2:「EP1045」(商品名、三井化学社製、エチレン-プロピレン-ゴム、エチレン含有量58質量%)
エチレンゴム3:「EP51」(商品名、JSR社製、エチレン-プロピレン-ゴム、エチレン含有量67質量%)
<ポリエチレン樹脂>
ポリエチレン樹脂1:「NUCG-7641」(商品名、NUC社製、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE))
<スチレンエラストマー>
スチレンエラストマー1:「セプトン4077」(商品名、クラレトレーディング社製、スチレンエラストマー(SEEPS))
<オイル>
オイル1:「ダイアナプロセスオイルPW90」(商品名、出光興産社製、パラフィン系プロセス油)
<有機過酸化物>
有機過酸化物1:「パーヘキサ25B」(商品名、日本油脂社製、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1分間の半減期温度179.8℃)
<無機フィラー>
無機フィラー1:「FK621」(商品名、神島化学社製、水酸化マグネシウム)
無機フィラー2:「ソフトン1200」(商品名、備北粉化工業社製、超微粒子重質炭酸カルシウム)
無機フィラー3:「サテントンSP-33」(商品名、BASF社製、焼成カオリン)
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤1:「KBM1003」(商品名、信越シリコーン社製、ビニルトリメトキシシラン)
<シラノール縮合触媒>
シラノール縮合触媒1:「アデカスタブOT-1」(商品名、ADEKA社製、ジオクチルスズジラウレート)
<水膨張材>
水膨張材1:「アクアコークTWB」(商品名、住友精化社製、ノニオン型ポリアルキレンオキシド)
水膨張材2:「アクアリックCS 6S」(商品名、日本触媒社性、変性ポリアクリル酸架橋樹脂)
水膨張材3:「サンフレッシュST-500MPSA」(商品名、三洋化成社製、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋樹脂)
(実施例1~19及び比較例1~4)
実施例1~19及び比較例1~4において、ベースゴムの一部(95質量部)を工程(a)で用い、ベースゴムの残部(5質量部)を工程(b)で触媒MBのキャリアゴムとして用いた。
無機フィラーと、シランカップリング剤と、有機過酸化物とを、表1のシランMB欄に示す質量比で、室温(25℃)下で、混合した。得られた混合物とベースゴムの一部とを、2Lバンバリーミキサー(日本ロール社製)を用いて、有機過酸化物の分解温度以上の温度(180℃)において5分間にわたり溶融混合した後、材料排出温度130℃で排出し、ペレット化してシランMBを得た(工程(a))。得られたシランMBは、ベースゴムにシランカップリング剤がグラフト化反応したシラン架橋性ゴムを含有している。
また、ベースゴムの残部とシラノール縮合触媒とを表1の触媒MB欄に示す質量比で、150℃でバンバリーミキサー(日本ロール社製)にて溶融混合し、材料排出温度130℃で排出して、触媒MBを得た(工程(b))。
工程(a)で得たシランMBと工程(b)で得た触媒MBと水膨張材とを室温で1分間ドライブレンドして、ドライブレンド物を得た。
-射出成形(射出製造)-
得られたドライブレンド物を、射出成形機(東芝EC220-i6A220ton(商品名)、東芝社製、シリンダ長さ:1600mm、内径:35mm)に2000g投入して、シリンダ温度170℃、射出速度60mm/sで充填し、保圧時間30秒~60秒、金型温度40℃で保圧して、水膨張性シラン架橋性ゴム組成物のシート体(縦:240mm、横:180mm、厚さ:4mm)を得た。シート体の成形に要した時間は3分であった。水膨張性シラン架橋性ゴム組成物の、円柱状体(直径:30mm、高さ:12mm)は、上記シート体を円状型で打ち抜き、3枚を重ねて得た。
このようにして得られた水膨張性シラン架橋性ゴム組成物のシート体及び円柱状体を温度25℃、湿度55%、12時間放置することにより、水と接触させて、ベースゴムがシランカップリング剤により架橋したシラン架橋ゴムと表1に示す含有量の無機フィラーと水膨張材とを含有する水膨張性シラン架橋ゴム組成物の成形体(シート成形品及び円柱状成形品)を得た。
(比較例5~7)
2Lバンバリーミキサー(日本ロール社製)を用いて、表1のシランMB欄に示すベースゴムの全部(100質量部)、無機フィラーを、表1に示す質量比で、室温(25℃)下で、混合した。得られた混合物を、2Lバンバリーミキサー(日本ロール社製)を用いて、180℃において5分間にわたり溶融混合した後、材料排出温度130℃で排出し、ペレット化してMBを得た。得られたMBは、常温の8インチロールで表1に示す質量比で有機過酸化物と混練し排出しペレット化した。このようにして得た有機過酸化物を含有するペレットと水膨張材を室温で1分間ドライブレンドして、ドライブレンド物を得た。
-射出成形(射出製造)-
得られたドライブレンド物を、射出成形機(東芝EC220-i6A220ton)に投入して、シリンダ温度170℃、射出速度60mm/sで射出し、保圧時間30秒~60秒、金型温度40℃で保圧して、水膨張性ゴム組成物のシート成形品(縦:240mm、横:180mm、厚さ:4mm)を得た。シート成形品の成形に要した時間は3分であった。水膨張性ゴム組成物の円柱状成形品(直径:30mm、高さ:12mm)は、シート成形品を円状型で打ち抜き、3枚を重ねて得た。
このようにして、架橋していない、水膨張性ゴム組成物の成形体(シート成形品及び円柱状成形品)を得た。
(比較例8)
表1のシランMB欄に示す成分を表1に示す質量比で、2Lバンバリーミキサー(日本ロール社製)を用いて、ベースゴムの全部(100質量部)、無機フィラーを、表1に示す質量比で、室温(25℃)下で、混合した。得られた混合物を、2Lバンバリーミキサー(日本ロール社製)を用いて、180℃において5分間にわたり溶融混合した後、材料排出温度130℃で排出し、ペレット化してMBを得た。得られたMBは、常温の8インチロールで有機過酸化物と混練し排出しペレット化した。このようにして得た有機過酸化物を含有するペレットと水膨張材とを、室温で1分間ドライブレンドして、ドライブレンド物を得た。
-射出成形(射出製造)-
得られたドライブレンド物を、射出成形機(東芝EC220-i6A220ton)に投入して、シリンダ温度190℃、射出速度60mm/sで射出し、保圧時間20分(加硫工程)、金型温度40℃で保圧して、水膨張性架橋ゴム組成物のシート成形品(縦:240mm、横:180mm、厚さ:2~4mm)を得た。シート成形品の成形に要した時間は50分であった。水膨張性架橋ゴム組成物の円柱状成形品(直径:30mm、高さ:12mm)、シート成形品を円状型で打ち抜き、3枚を重ねて得た。
このようにして、化学架橋ゴム組成物の成形体(シート成形品及び円柱状成形品)を得た。
<体積膨張率測定試験>
JIS K 7223に準拠して体積膨張率試験を行い、上記で得られた各シート成形品を構成するゴム組成物が水膨張性であるかを確認した。具体的には、シート成形品から横長さ20mm×縦長さ50mm×厚さ2mmの試験片を作製した。この試験片を、25℃のイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、試験片を取りだし浸漬後の厚さ(mm)、縦長さ(mm)、及び横長さ(mm)を測定して算出した浸漬後体積と、浸漬前の体積から、以下の式によって体積膨張率(Xw)を算出して、下記評価基準にて評価した。

式3:Xw=((b3-a3)/a3)×100
Xw:体積膨張率(%)
a3:浸漬前体積(mm
b3:浸漬後体積(mm

- 評価基準 ―
体積膨張率(%)が、24時間後に35%以上であった場合を「A」、24時間後に15%以上35%未満であった場合を「B」、24時間後に15%未満であった場合を「C」とした。
上記体積膨張率試験の結果が評価「B」以上である場合に、本発明における「水膨張性」を示すシラン架橋ゴム組成物とする。
比較例2及び4は体積膨張率(Xw)が15%未満であり、十分な水膨張性を有していなかった。このため、比較例2及び4については、この試験以外の試験を行わなかった。
<繰り返し性能試験(吸水時体積膨張率差、排湿時体積収縮率差測定)>
JIS K 7223に準拠し、繰り返し性能試験を行った。上記において得られた各シート成形品から厚さ:2mm×縦長さ:50mm×横長さ:20mmの試験片を作成した。この試験片を、25℃のイオン交換水(使用量は試験片1つに対して200ml)に浸漬して24時間吸水させ、その後、大気圧下、60℃、無風状態の環境に24時間放置して排湿(乾燥)させる工程を1サイクルとし、この吸水-排湿を20サイクル(合計960時間)行った。1サイクル目の吸水後及び20サイクル目の吸水後(いずれもイオン交換水からの取出直後)の試験片の厚さ(mm)、縦長さ(mm)、横長さ(mm)をそれぞれ測定して算出した各吸水後体積値を用いて、下記式1により繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)を算出した。また、1サイクル目の乾燥後及び20サイクル目の乾燥後の試験片の厚さ(mm)、縦長さ(mm)、横長さ(mm)をそれぞれ測定して算出した各排湿体積値を用いて、下記式2により繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)を算出した。

式1:Yw=((a1-b1)/a1)×100
Yw:繰り返し吸水時体積膨張率差(%)
a1:1サイクル目吸水後体積(mm
b1:20サイクル目吸水後体積(mm

式2:Zw=((a2-c2)/a2)×100
Zw:繰り返し排湿時体積収縮率差(%)
a2:1サイクル目排湿後体積(mm
c2:20サイクル目排湿後体積(mm

得られた繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)を、それぞれ下記評価基準にて評価した。

- 評価基準 ―
繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)が、10%以下であった場合を「A」、10%を越え15%以下であった場合を「B」、15%を越えた場合を「C」とした。
繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)が、2.0%以下であった場合を「A」、2.0%を越え5.0%以下であった場合を「B」、5.0%を越えた場合を「C」とした。
本発明において、繰り返し性試験(繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)、繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)測定)は、いずれも評価「B」が合格レベルである。
上記繰り返し性能試験において、イオン交換水に代えて5%の塩水を用いた以外は、上記繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)と同様にして繰り返し吸水時体積膨張率差(Ys)及び繰り返し排湿時体積収縮率差(Zs)を求め、上記と同様の評価基準で評価した。その結果を表1に併せて示した。この試験に合格することが好ましい。
<生産性>
生産性の指標として、高速成形への適性を以下の方法により評価した。
各実施例及び各比較例において、成形加工時間が、3分以下であった場合を「A」(高速成形可能)、3分を超え20分以下であった場合を「B」、20分を越えた場合を「C」とした。成形加工時間は、上記実施例及び比較例の各調製方法において、ドライブレンド物を射出成形機に投入してからシート形状にして射出成形機から排出されるまでの時間とした。
本発明において、生産性は、評価「B」が本発明の試験の合格レベルである。
- 評価基準 ―
A:成形加工時間3分以下
B:成形加工時間3分を超え20以下
C:成形加工時間20分越
各成形品について、好ましい特性として、吸水時の外観、及び圧縮永久歪みについても評価した。
<吸水時の外観試験>
上記で得られた各シート成形品を25℃のイオン交換水に24時間浸漬後し、吸水後の外観を目視で観察した。表面が変形なく滑らかで突出部がないものを「A」、シート面20mm×50mmに目視で確認できる突出部が1~15個のものを「B」、シート面20mm×50mmに目視で確認できる突出部が15個を超えたものを「C」とした。
本発明において、外観は評価「B」が本発明の試験の合格レベルである。
さらに、上記体積膨張率測定試験において、イオン交換水に代えて5%の塩水を用いた以外は、上記と同様にして塩水使用時の体積膨張率(Xs)を求め、上記と同様の評価基準で評価した。その結果を表1に併せて示した。
<圧縮永久歪み試験>
上記各例で調製した水膨張性シラン架橋ゴム組成物の成形体、水膨張性ゴム組成物の成形体及び化学架橋ゴム組成物の成形体について、下記の方法により圧縮永久歪みを評価した。
JIS K 6262 A法に基づき、実施例1~19並びに比較例1及び3で製造した円柱状体(未架橋体)、比較例5~7及び比較例8で製造した円柱状成形品を射出成形後24時間放置し、この成形品の圧縮永久歪を測定した。24時間放置後の、実施例1~19並びに比較例1及び3で製造した円柱状体は、シラノール縮合反応が進行し、水膨張性シラン架橋ゴム組成物の円柱成形品となっている。2枚の圧縮板とスペーサ(厚さは円柱状成形品の厚さの75%)を備えた圧縮装置を利用して、円柱状成形品の厚さ方向に25%分の圧縮を加え(圧縮率25%)、その状態で、23℃で22時間保持した。その後、常温(23℃)にて圧縮を開放し、30分間の放置後(最終的な温度は23℃)、円柱状成形品の厚さを測定した。
円柱状成形品の、圧縮前後の厚さから、以下の式によって、圧縮永久歪みを算出して、下記評価基準にて、評価した。
式4:CS=[(t-t)/(t-t)]×100
式4中、
CS:圧縮永久歪み(%)
:円柱状成形品の圧縮前の厚さ(元の厚さ)(mm)
:スペーサの厚さ(mm)
:円柱状成形品の圧縮後の厚さ(圧縮装置から取り外して、30分後の厚さ)(mm)
圧縮永久歪みが、25%以下であった場合を「A」、25%を超え35%以下であった場合を「B」、35%を超えた場合を「C」とした。
本発明において、圧縮永久歪は、評価「B」が本発明の試験の合格レベルである。
Figure 0007449741000001
Figure 0007449741000002
比較例2及び4は、上述のように、体積膨張率(Xw)が15%未満であり、十分な水膨張性を有していなかった。比較例1、3、5~7は、少なくとも、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)が15%を越え又は繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)が5.0%を越えていた。これらの水膨張性シラン架橋ゴム成形体又は水膨張性ゴム成形体をクロージャ等に用いると、繰り返しの湿潤乾燥により膨張性及び復元性が低下して水密性を保つことが難しいといえる。比較例8は、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)が5%であったが、繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)が6.0%であった。その上、加硫工程を有するため、成形性に劣っていた。比較例8で、繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)が6.0%となる理由は、EP架橋ゴムと水膨潤材との混合状態に劣り、水膨潤材が膨張収縮の過程で成形体から抜け落ちている(流出する)ためと考えられる。
これに対し、実施例1~19はいずれも、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)が15%以下かつ繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)が5.0%以下であった。これらの水膨張性シラン架橋ゴム成形体をクロージャ等に用いると、繰り返しの湿潤乾燥によっても膨張性及び復元性が低下しにくいので、水密性を維持できる。加えて、成形加工時間が20分以下であり、生産性に優れていた。
1 クロージャ
11 箱本体
12 蓋体
21 端面板
22 ガスケット
23 バックル
24 バックル留め部

Claims (6)

  1. エチレンゴムを30~100質量%含むベースゴム100質量部に対し、デンプン・アクリル酸グラフト重合体部分金属塩、オレフィン-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール-アクリル酸共重合体、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸金属塩架橋物、ビニルエステル・エチレン系不飽和カルボン酸、ノニオン型ポリアルキレンオキシド、変性ポリアクリル酸架橋樹脂及びアクリル酸重合体部分金属塩架橋樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の水膨張材10~200質量部を含有し、前記ベースゴムがシラン架橋されてなる、水膨張性シラン架橋ゴム組成物であって、
    下記繰り返し性能試験により測定される、繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)が15%以下であり、かつ繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)が5.0%以下である、水膨張性シラン架橋ゴム組成物。
    <繰り返し性能試験>
    水膨張性シラン架橋ゴム組成物で形成した試験片(厚さ:2mm×縦長さ:50mm×横長さ:20mm)を、25℃でイオン交換水(使用量は試験片1つに対して200ml)に浸漬して24時間吸水させ、その後、大気圧下、60℃、無風状態の環境に24時間放置して排湿させる工程を1サイクルとし、この吸水及び排湿工程を20サイクル行う。排湿時には、前記試験片を、前記試験片の最大面を下にして設置して放置する。
    前記繰り返し吸水時体積膨張率差(Yw)及び前記繰り返し排湿時体積収縮率差(Zw)は、1サイクル後の試験片及び20サイクル後の試験片について各体積を測定し、下記式1又は下記式2により算出する。

    式1:Yw=((a1-b1)/a1)×100
    Yw:繰り返し吸水時体積膨張率差(%)
    a1:1サイクル目吸水後体積(mm
    b1:20サイクル目吸水後体積(mm

    式2:Zw=((a2-c2)/a2)×100
    Zw:繰り返し排湿時体積収縮率差(%)
    a2:1サイクル目排湿後体積(mm
    c2:20サイクル目排湿後体積(mm
  2. 前記水膨張材がノニオン型ポリアルキレンオキシドを含む請求項1に記載の水膨張性シラン架橋ゴム組成物。
  3. 無機フィラー3~100質量部と、前記水膨張材としてノニオン型ポリアルキレンオキシド15~60質量部とを含有する、請求項1又は2に記載の水膨張性シラン架橋ゴム組成物。
  4. 下記水膨張性シラン架橋性ゴム組成物のシラノール縮合硬化物からなる請求項1~3のいずれか1項に記載の水膨張性シラン架橋ゴム組成物。
    <水膨張性シラン架橋性ゴム組成物>
    エチレンゴムを30~70質量%、ポリエチレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体の樹脂の少なくとも一方を合計で10~50質量%、スチレンエラストマーを5~20質量%、並びにオイルを5~20質量%含有するベースゴム100質量部に対し、無機フィラー3~100質量部と、前記ベースゴムにグラフト化反応したシランカップリング剤1.0~6.0質量部と、シラノール縮合触媒0.01~0.5質量部と、ノニオン型ポリアルキレンオキシド15~60質量部とを含む水膨張性シラン架橋性ゴム組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の水膨張性シラン架橋ゴム組成物を成形してなる水膨張性シラン架橋ゴム成形体。
  6. 請求項1~4のいずれか1項に記載の水膨張性シラン架橋ゴム組成物を使用してなる止水材。
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