JP7445456B2 - ナイロン4繊維およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、湿式紡糸により製造され、耐熱性が向上したナイロン4繊維およびその製造方法に関する。
ナイロン4(ポリアミド4)樹脂は、樹脂中のアミド結合の密度が高い点、生分解性を有する点、バイオ由来で製造することができる点などから注目されているが、樹脂の分解温度と融点が近接しているため、溶融紡糸による繊維化が困難である。
ナイロン4樹脂の繊維化については、様々な取り組みがされており、例えば、特許文献1(国際公開第2015/186364号)では、ポリアミド4をイオン液体に溶解してイオン液体溶解液とした後、該イオン液体溶解液を湿式若しくは乾湿式紡糸又はゲル紡糸することにより、ポリアミド4繊維を得ることが記載されている。
この文献では、ポリアミド4樹脂をイオン液体に溶解することで繊維化が可能となり、機械特性に優れたポリアミド4繊維を得ることが記載されている。
また、特許文献2(特開2019-137934号公報)では、ナイロン4を溶媒に溶解させ、紡糸用溶液を得る工程と、前記紡糸用溶液を用いて乾式紡糸し、未延伸繊維を得る工程と、前記未延伸繊維を延伸し、ナイロン4繊維を得る工程と、を含み、前記ナイロン4は、重量平均分子量が550,000以上であり、前記紡糸用溶液は、溶解している前記ナイロン4の濃度が15質量%以上であり、前記延伸する工程における延伸温度が180℃以上240℃以下であり、且つ、延伸倍率が4倍以上である、ことを特徴とする、ナイロン4繊維の製造方法が開示されている。
この文献では、原料を溶媒に溶解させた状態で口金(ノズル)から吐出させ、熱雰囲気中で溶媒を蒸発させて繊維状にする、乾式紡糸により紡糸することにより、高い強度及び弾性率を有するナイロン4繊維を製造することができる。
国際公開第2015/186364号 特開2019-137934号公報
しかしながら、特許文献1では、非常に高価なイオン液体を用いる必要があり、工業的に不利であるだけでなく、廃液処理などの問題もある。また、得られた繊維についても、強度には優れるものの、ナイロン4が本来有する耐熱性をさらに向上させるという試みについては何ら開示されていない。
また、特許文献2では、湿式紡糸と比較して乾式紡糸の優位性が高く、湿式紡糸では繊維内部に多くのボイドが発生して延伸することができないことが記載されているが、乾式紡糸では、ナイロン4繊維の結晶化熱量を向上させることができない。
そこで、本発明の目的は、耐熱性に優れたナイロン4繊維およびその製造方法を提供することにある。
本発明者等は上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、ナイロン4樹脂に対して、特定の酸解離定数を有する第1の酸と第2の酸とを組み合わせて紡糸原液を調製すると、驚くべきことに、特許文献2では否定された湿式紡糸でも、良好に紡糸・延伸することが可能であること、そして、得られるナイロン4繊維の結晶化熱量を向上することができること、を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の態様で構成されうる。
〔態様1〕
ナイロン4樹脂と、酸解離定数が2.80以上(好ましくは2.80~6.00、より好ましくは2.80~4.30)の第1の酸と、第1の酸より大きな酸解離定数を有する第2の酸とを少なくとも含む紡糸原液を、水および/または極性有機溶剤を含む凝固浴に吐出する工程と、
前記吐出糸を延伸させる工程と、を備えている、ナイロン4繊維の製造方法。
〔態様2〕
態様1の製造方法において、第2の酸の酸解離定数(pKa)が、第1の酸の酸解離定数をpKaとする場合、(pKa+0.01)~(pKa+3.00)[好ましくは(pKa+0.01)~(pKa+3.00)、より好ましくは(pKa+0.10)~(pKa+2.50)、さらに好ましくは(pKa+0.30)~(pKa+1.50)]である、ナイロン4繊維の製造方法。
〔態様3〕
態様1または2の製造方法において、第1の酸および第2の酸の少なくとも一方は、C1-6飽和脂肪族モノカルボン酸、C2-7飽和脂肪族ジカルボン酸、C3-6不飽和脂肪族モノカルボン酸、C4-7不飽和脂肪族ジカルボン酸、C7-13芳香族カルボン酸、C2-6ヒドロキシカルボン酸、C1-6ハロゲン化カルボン酸、およびC3-6ポリカルボン酸からなる群から選択される、ナイロン4繊維の製造方法。
〔態様4〕
態様1から3のいずれか一態様の製造方法において、第1の酸および第2の酸の少なくとも一方は、グリコール酸、乳酸、クエン酸、アクリル酸、およびマロン酸からなる群から選択される、ナイロン4繊維の製造方法。
〔態様5〕
態様1から4のいずれか一態様の製造方法において、凝固浴が、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ギ酸エステル、および酢酸エステルのいずれか1種または2種以上の混合物を含む、ナイロン4繊維の製造方法。
〔態様6〕
態様1から5のいずれか一態様の製造方法において、凝固浴における湿延伸倍率が1.5~7.0倍(特に2.5~5.5倍)であり、乾熱延伸倍率が1.1~15倍(好ましくは1.1~10倍)である、ナイロン4繊維の製造方法。
〔態様7〕
ナイロン4樹脂を含むナイロン4繊維であって、示差走査熱量測定装置により測定される結晶化熱量が、80J/g以上(好ましくは88J/g以上、より好ましくは95J/g以上)である、ナイロン4繊維。
〔態様8〕
態様7のナイロン4繊維において、融点が267℃以上(好ましくは267~350℃であってもよく、より好ましくは268~320℃、さらに好ましくは269~300℃)である、ナイロン4繊維。
本発明では、ナイロン4樹脂と、第1の酸と第2の酸とを組み合わせて紡糸原液を形成することにより、効率よくナイロン4繊維を得ることができる。ナイロン4繊維は、特定の結晶化熱量を有しており、繊維の耐熱性を向上することができる。
本発明のナイロン4繊維は、ナイロン4樹脂および後述する特定の紡糸溶媒を少なくとも含む紡糸原液を湿式紡糸することにより得られる。
(ナイロン4樹脂)
ナイロン4樹脂は、分子鎖内に(-NH-(CH-CO-)ユニットを繰り返し単位として有する限り特に限定されず、公知または慣用の樹脂を用いることができる。例えば、ナイロン4樹脂は、モノマーとして2-ピロリドンを用い、これを開環重合することにより得ることができる。
2-ピロリドンは、N-メチロール化合物やγ-アミノ酸誘導体を出発物質として合成することができ、特に、バイオ由来では、バイオマスを発酵させて得られたグルタミン酸から、脱炭酸によりγ-アミノ酪酸を得て、これを閉環して、2-ピロリドンを得ることができる。ナイロン4樹脂は、必要に応じて他のモノマー成分が共重合されていてもよい。
ナイロン4樹脂は、本発明のナイロン4繊維を得ることができる限り、必要に応じて他の成分と組み合わせて用いられてもよい。他の成分としては、各種添加剤、他のポリマー成分(例えば、ナイロン4以外のポリアミドや、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、レーヨンなどの繊維形成性樹脂)などが挙げられる。添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤(例えば着色顔料)、平滑剤、可塑剤、抗菌剤、防かび剤および消臭剤などの添加剤が挙げられる。
(ナイロン4繊維の製造方法)
本発明では、ナイロン4繊維の製造方法は、ナイロン4樹脂と、酸解離定数が2.80以上の第1の酸と、第1の酸より大きな酸解離定数を有する第2の酸とを少なくとも含む紡糸原液を、水および/または極性有機溶剤を含む凝固浴に吐出する工程と、
前記吐出糸を延伸させる工程と、を備えている。
(紡糸原液)
紡糸原液は、酸解離定数が2.80以上の第1の酸と、第1の酸より大きな酸解離定数を有する第2の酸とを用いることにより、ナイロン4樹脂が分解することを抑制しつつ、均一に溶解された紡糸原液を得ることができる。
酸解離定数が高い、いわゆる弱酸を用いることによりナイロン4樹脂が分解することを抑制することができ、さらに、第1の酸および第2の酸として組み合わせることにより、理由は定かではないが、弱酸であってもナイロン4樹脂を均一に溶解することが可能である。なお、紡糸原液では、第1の酸および第2の酸として組み合わせることによりナイロン4樹脂を均一に溶解することができるが、本発明で用いられる紡糸原液では、酸解離定数が2.80以上の別の酸をさらに含むことを否定するものではない。
なお、酸解離定数は、(i) Brown, H.C. et al., in Braude, E.A. and F.C. Nachod Determination of Organic Structures by Physical Methods, Academic Press, New York, 1955.あるいは、(ii) Dawson, R.M.C. et al., Data for Biochemical Research, Oxford, Clarendon Press, 1959.、あるいは(iii) Dippy, J.F.J.; Hughes, S.R.C.; Rozanski, A. J. Chem. Soc. 1959, 2492.において記載されている値である。これらの文献は、(i)、(ii)、(iii)の優先順位で参照している。また、酸解離定数が複数存在する化合物については、第1段階の酸解離定数を採用している。
第1の酸の酸解離定数(pKa)は、好ましくは2.80~6.00、より好ましくは2.80~4.30であってもよい。
第2の酸の酸解離定数(pKa)は、好ましくは(pKa+0.01)~(pKa+3.00)、より好ましくは(pKa+0.10)~(pKa+2.50)、さらに好ましくは(pKa+0.30)~(pKa+1.50)であってもよい。
酸としては、酸性基を有するとともに、前記酸解離定数を満たし、ナイロン4を溶解することができる限り特に限定されず、有機酸が好ましく用いられ、カルボキシ基を有するカルボン酸であるのが特に好ましい。カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族モノまたはポリカルボン酸、芳香族モノまたはポリカルボン酸、飽和または不飽和のヒドロキシカルボン酸、飽和または不飽和のハロゲン化カルボン酸などが挙げられる。
なお、用いられる酸は、室温(25℃)において液状であってもよいし、固体状であってもよい。固体状である場合は、水などの溶媒を用いて水溶液などとして用いてもよい。
特にナイロン4に対する親和性を向上させる観点から、第1の酸および第2の酸の少なくとも一方(好ましくは、双方)は、飽和または不飽和の脂肪族または芳香族カルボン酸であってもよく、例えば、C1-6飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸など)、C2-7飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸など)、C3-6不飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸など)、C4-7不飽和脂肪族ジカルボン酸(フマル酸など)、C7-13芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸など)、C2-6ヒドロキシカルボン酸(グリコール酸、乳酸、クエン酸など)、C1-6ハロゲン化カルボン酸(モノクロロエタン酸、モノブロモエタン酸、モノヨードエタン酸など)、およびC3-6ポリカルボン酸(トリカルボン酸、テトラカルボン酸など)などから選択されてもよい。
溶解性を向上する観点から、第1の酸と第2の酸の少なくとも一方(好ましくは、双方)は、好ましくは、C3-6不飽和脂肪族モノカルボン酸、C2-7飽和脂肪族ジカルボン酸、C4-7不飽和脂肪族ジカルボン酸およびC2-6ヒドロキシカルボン酸から選択されてもよく、より好ましくはC3-6不飽和脂肪族モノカルボン酸、C2-7飽和脂肪族ジカルボン酸およびC2-6ヒドロキシカルボン酸から選択されてもよい。
特に好ましくは、第1の酸および第2の酸の少なくとも一方(好ましくは、双方)が、グリコール酸、乳酸、クエン酸、アクリル酸、およびマロン酸から選択されてもよい。
第1の酸と、第2の酸との割合は、酸の25℃での状態に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、双方とも液体である場合、第1の酸/第2の酸(質量比)として、例えば、90/10~10/90であってもよく、好ましくは、80/20~20/80、より好ましくは70/30~30/70であってもよい。
紡糸原液中、ナイロン4の濃度は、紡糸原液の質量に対して、例えば、1~40質量%であってもよく、好ましくは2~30質量%、より好ましくは3~25質量%であってもよい。
紡糸原液は、酸に対するナイロン4の溶解性を利用しているため、比較的低温下で紡糸原液とすることができる。紡糸原液の温度は、例えば、20~60℃であってもよく、好ましくは23~50℃、より好ましくは25~45℃であってもよい。このような低温で紡糸原液を調製できるため、ナイロン4の高温下での分解を抑制することができるだけでなく、紡糸工程を経済的に有利に進めることができる。
紡糸原液は、公知または慣用の方法により、紡糸口金から直接凝固浴に吐出される。紡糸口金の孔径は、要望する繊維径や、紡糸原液の粘度などに応じて、定義設定することが可能であり、特に限定されないが、単孔径として、例えば、0.01~3.00mmであってもよく、好ましくは0.05~2.00mm、より好ましくは0.08~1.00mmであってもよい。
(凝固浴)
凝固浴は、水および/または極性有機溶剤を含んでいる。凝固浴で用いられる極性有機溶剤は、吐出された吐出糸を凝固することができる限り特に限定されないが、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ギ酸エステル、酢酸エステル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
好ましくは、凝固浴は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ギ酸エステル、酢酸エステルのいずれか1種または2種以上の混合物であってもよい。
(延伸工程)
凝固浴に吐出された吐出糸は、凝固してから凝固浴において湿延伸されてもよいし(いわゆる湿式紡糸)、完全に凝固する前のゲル状の状態で凝固浴において湿延伸されてもよい(いわゆる湿式ゲル紡糸)。これらのうち、延伸倍率を高める観点から、湿式ゲル紡糸が好ましい。
凝固浴の温度は、ナイロン4の凝固を進行できる限り特に限定されないが、例えば、-15~30℃であってもよく、好ましくは-10~20℃、より好ましくは0~10℃であってもよい。
凝固浴で紡糸されたナイロン4繊維は、次いで固化浴から離浴後の繊維を必要に応じて湿延伸すればよい。繊維の機械的性能、膠着防止の点からは1.5~7.0倍、特に2.5~5.5倍の湿延伸を施すのが好ましい。
次いで、繊維を、例えば25℃以上、好ましくは180℃以下で乾燥すればよく、さらに乾熱延伸することにより繊維の機械的性能を高めることができる。乾熱延伸の延伸倍率は、例えば、1.1~15倍であってもよく、1.1~10倍程度とするのが好ましい。なお、乾熱延伸は、乾燥後の繊維に対して、複数の段階に分けて行ってもよく、乾熱延伸の延伸倍率は、乾燥後の繊維に対する全延伸倍率を示す。乾熱延伸温度は、例えば、80~250℃とするのが好ましい。
(ナイロン4繊維)
本発明のナイロン4繊維は、特定の紡糸原液を利用して湿式紡糸を行うため、延伸工程によりその結晶化熱量を向上することが可能である。
本発明のナイロン4繊維の結晶化熱量は、80J/g以上であり、好ましくは88J/g以上、より好ましくは95J/g以上であってもよい。結晶化熱量の上限は特に限定されないが、400J/g以下である。結晶化熱量が上記範囲であることにより、耐熱性に優れたナイロン4繊維を得ることができる。ここで、結晶化熱量は、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
本発明のナイロン4繊維は、特定の製造方法により製造するため、ナイロン4樹脂の耐熱性を向上することができ、その融点は、例えば、267℃以上であってもよく、好ましくは267~350℃であってもよく、より好ましくは268~320℃、さらに好ましくは269~300℃であってもよい。ここで、融点は、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
本発明のナイロン4繊維は、25℃雰囲気下における引張強度が5.0cN/dtex以上、例えば5.5~20.0cN/dtexであることが好ましく、9.0~20.0cN/dtexであることがより好ましい。ここで引張強度は、JIS L 1013試験法に準拠して測定される値である。
本発明のナイロン4繊維は、高温下における繊維物性の低下を防ぐことができ、100℃雰囲気下における引張強度が3.0cN/dtex以上、例えば3.2~20.0cN/dtexであることが好ましく、8.0~20.0cN/dtexであることがより好ましい。ここで引張強度は、JIS L 1013試験法に準拠して測定される値である。
また、本発明のナイロン4繊維は、25℃における弾性率が50cN/dtex以上、例えば55~100cN/dtexであることが好ましく、60~100cN/dtexであることがより好ましい。ここで弾性率は、JIS L 1013試験法に準拠して測定される値である。
本発明のナイロン4繊維は、高温下における繊維物性の低下を防ぐことができ、100℃雰囲気下における弾性率が55cN/dtex以上、例えば60~100cN/dtexであることが好ましく、65~100cN/dtexであることがより好ましい。ここで弾性率は、JIS L 1013試験法に準拠して測定される値である。
本発明のナイロン4繊維は、モノフィラメントであってもよく、マルチフィラメントであってもよい。また、複合繊維(例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型など)であってもよいが、非複合繊維であるのが好ましい。
本発明のナイロン4繊維の断面形状は、公知または慣用の形状であればよく、中実断面形状である円形断面であってもよく、異形断面(例えば、偏平状、楕円状、三角形などの多角形断面)であってもよい。また、中空断面形状などであってもよい。
本発明のナイロン4繊維の繊度は特に限定されず、用途に応じて、例えば単繊維繊度が0.1~500dtex程度の広い範囲から選ぶことができるが、一般的には、好ましくは1~100dtex、より好ましくは2~50dtexの範囲であってもよい。例えば、布帛に用いる場合、単繊維繊度が1~10dtexであってもよく、1~5dtexであってもよい。また、細繊度繊維が求められる場合は、例えば3dtex以下、好ましくは1dtex以下、より好ましくは0.5dtex以下であってもよい。
(繊維構造体)
本発明は、前記ナイロン4繊維を含む繊維構造体を包含する。繊維構造体としては、連続繊維(モノフィラメント、マルチフィラメント)、短繊維(カットファイバー)、糸類、紐類、ロープ類などの一次元構造体であってもよいし、前記ナイロン4繊維を含む織物、編物、不織布などの布帛であってもよい。繊維構造体は、ナイロン4繊維のみで構成されてもよいし、ナイロン4繊維と他の繊維などとを組み合わせて構成されていてもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定されるものではない。
[結晶化熱量]
TAインスツルメント社製示差走査熱量測定装置(DSCQ2000)を用い、繊維サンプル2mgを窒素下10℃/minの速度で昇温した際の、吸熱ピークにおける吸熱量ΔH(J/g)を測定した。
[融点]
TAインスツルメント社製示差走査熱量測定装置(DSCQ2000)を用い、繊維サンプル2mgを窒素下10℃/minの速度で昇温した際の、吸熱ピークの示す温度(℃)を測定し、融点とした。
[引張強度および弾性率]
JIS L 1013に準じ、25℃または100℃雰囲気下において、試長20cm、初荷重0.09cN/dtex、引張速度10cm/minの条件で破断強伸度及び弾性率(初期引張抵抗度)を求め、5点以上の平均値を採用した。
[繊度]
JIS L 1013「化学繊維フィラメント糸試験方法」に準じて、繊維の繊度を測定した。
[実施例1]
(ナイロン4樹脂)
特開平5-155851の実施例1に準拠し、2-ピロリジノン(関東化学株式会社製、純度:98.0%)600gに硫酸4.0gを添加し、アルゴン気流中、100℃の油浴中で撹拌した。次いで、外浴温度150℃、1mmHgにて減圧蒸留し、初留約10mLを採った後、本留約570gを得た。このようにして、あらかじめモノマーとしての2-ピロリジノンの精製を行った。
次いで、特開平5-9291の実施例1に準拠し、1Lのセパラブル4つ口フラスコに、撹拌羽根、セプタムキャップ、バルーン及びアルゴンバブラーを取り付けた三方コック並びに留去装置を取り付けて、上述した精製2-ピロリジノン500gを投入した。減圧-アルゴン置換を3回行い、アルゴン雰囲気とした後、アルゴン気流とし、フラスコを40℃の油浴中に浸漬し、100rpmにて撹拌させた。
次に、触媒としての水酸化カリウム70.4gを投入し、1mmHgまで減圧させ、30分間、減圧及び撹拌を行った後、湯浴温度を10分で10℃のペースで135℃まで昇温させ、反応に伴って共沸されるピロリドンと共に取り除いた。なお、昇温の際には、フラスコ全体をアルミ箔で覆い、保温を行った。続いて、アルゴン置換を行い、アルゴン気流とした後、油浴温度を40℃とし、留去装置を取り除いた。セプタムキャップからPFAキャニュラを刺し込み、開始剤として炭酸ガスを60mL/min(窒素ガス換算:75mL/min)にて93分撹拌させながらバブリングさせた。なお、60mL/minの流量で炭酸ガスを93分吹き込んだ場合、理想気体の状態方程式(pV=nRT)より、物質量nは0.228モルに相当する(p=1(atm);V=60×93/1000(L);R=0.082;T=298(K))。そして、この場合の炭酸ガスの質量は、モル質量が44.01g/molであるから、0.228×44.01≒10.0gと算出される。そして、炭酸ガスをバブリングさせた後、撹拌羽根を液面から上げて、アルゴン気流中、油浴温度40℃のまま、40時間放置させて開環重合して収率49%でナイロン4の固体を得た。
上記操作を複数回行うことによって得られた固体約500gを液体窒素中で細かく粉砕し、室温にて3Lの純水中で30分撹拌させた後、濾過した。濾液のpHが中性になるまで、撹拌-濾過を繰り返した。次いで、1Lの純水中に浸漬させながら10時間撹拌し、濾液のpHが中性であることを再確認した後、得られた固体をアセトンにて洗浄し、80℃、1mmHgにて48時間減圧乾燥させた。更に、卓上粉砕機(ラボネクスト株式会社製、「ミニスピードミルMS-05」)を用いて粉砕し、100メッシュの篩を通して分級した。得られた分級固体100g程度をイオン交換水1L中に入れ、約5分間煮沸し、放置冷却後に吸引ろ過を行った。上記工程をもう一度繰り返し、都度2回洗浄を行った。吸引ろ過後の塊を大まかにほぐし、適度に広げて、真空オーブン中で120℃、20分乾燥し、ナイロン4樹脂を得た。
(ナイロン4繊維)
上述したナイロン4樹脂5.5質量部と、第1の酸として富士フィルム和光純薬(株)製グリコール酸23.0質量部と、第2の酸として富士フィルム和光純薬(株)製アクリル酸71.5質量部とを、25℃の不活性ガス雰囲気下にて溶解し、紡糸原液を作製した。
次に得られた紡糸原液を、孔径0.2mm、ホール数20のノズルを通して5℃のエタノールよりなる固化浴中に湿式紡糸した。
次に、得られた固化糸をメタノール浴中にて3倍の湿延伸を行い、120℃の熱風で乾燥し230℃の熱風炉にて全延伸倍率が8倍になるように乾熱延伸を行い、単糸繊度が12dtexの繊維を得た。
紡糸原液に用いられた第1の酸および第2の酸と凝固浴の種類、得られたナイロン4繊維の物性を表1および2に示す。
[実施例2]
紡糸原液で用いる第1の酸として富士フィルム和光純薬(株)製クエン酸23.0質量部、第2の酸として富士フィルム和光純薬(株)製グリコール酸23.0質量部、水48.5質量部を用いる以外は、実施例1と同様にしてナイロン4繊維を得た。紡糸原液に用いられた第1の酸および第2の酸と凝固浴の種類、得られたナイロン4繊維の物性を表1および2に示す。
[実施例3]
紡糸原液で用いる第1の酸として富士フィルム和光純薬(株)製マロン酸、第2の酸としてアクリル酸を用いる以外は、実施例1と同様にしてナイロン4繊維を得た。紡糸原液に用いられた第1の酸および第2の酸と凝固浴の種類、得られたナイロン4繊維の物性を表1および2に示す。
[実施例4]
紡糸原液で用いる第1の酸としてマロン酸、第2の酸として富士フィルム和光純薬(株)製乳酸を用いる以外は、実施例1と同様にしてナイロン4繊維を得た。紡糸原液に用いられた第1の酸および第2の酸と凝固浴の種類、得られたナイロン4繊維の物性を表1および2に示す。
[比較例1]
紡糸原液で用いる第1の酸として富士フィルム和光純薬(株)製ジフルオロ酢酸、第2の酸としてアクリル酸を用いる以外は、実施例1と同様にしてナイロン4繊維を得た。紡糸原液に用いられた第1の酸および第2の酸と凝固浴の種類、得られたナイロン4繊維の物性を表1に示す。
[比較例2]
紡糸原液で用いる第1の酸としてジフルオロ酢酸、第2の酸としてマロン酸を用いる以外は、実施例1と同様にしたところ、紡糸原液において、ナイロン4が分解し、紡糸することができなかった。
Figure 0007445456000001
Figure 0007445456000002
表1に示すように、実施例1~4では、特定の酸解離係数を有する第1の酸と第2の酸を組み合わせて紡糸原液を作製しているため、良好な可紡性を有するとともに、得られた繊維の結晶化熱量を高めることが可能である。一方、比較例1および2では、第1の酸の酸解離定数が低いため、第2の酸として弱酸を組み合わせた場合でも、比較例2では紡糸することができず、比較例1では紡糸は可能であったものの、結晶化熱量を高めることができない。
さらに、表1に示すように、実施例1~4では、いずれも融点が比較例1よりも高くなるだけでなく、引張強度および弾性率を比較例1と比べて大きく向上することが可能である。
また、表2に示すように、実施例1~4は、100℃における引張強度についても、25℃における比較例1の引張強度よりも高い値を示しており、耐熱性に優れている。
本発明のナイロン4繊維およびその繊維構造体は、その特性を生かして、各種産業資材として有用であり、土木用途、建築用途、農業用途、産業用途、工業用途、衣料用途、医療用途などの各種用途に使用することが可能である。特にナイロン4繊維は、生分解性を有するため、生分解性が求められる用途(例えば、植生マット材、手術用糸)などにおいても、有用に用いることができる。

Claims (9)

  1. 示差走査熱量測定装置により測定される結晶化熱量が80J/g以上であるナイロン4繊維の製造方法であって、
    ナイロン4樹脂と、酸解離定数が2.80以上の第1の酸と、第1の酸より大きな酸解離定数を有する第2の酸とを少なくとも含む紡糸原液を、水および/または極性有機溶剤を含む凝固浴に吐出する工程と、
    前記吐出糸を延伸させる工程と、を備えている、ナイロン4繊維の製造方法。
  2. 請求項1の製造方法において、第2の酸の酸解離定数(pKa)が、第1の酸の酸解離定数をpKaとする場合、(pKa+0.01)~(pKa+3.00)である、ナイロン4繊維の製造方法。
  3. 請求項1または2の製造方法において、第1の酸および第2の酸の少なくとも一方は、C1-6飽和脂肪族モノカルボン酸、C2-7飽和脂肪族ジカルボン酸、C3-6不飽和脂肪族モノカルボン酸、C4-7不飽和脂肪族ジカルボン酸、C7-13芳香族カルボン酸、C2-6ヒドロキシカルボン酸、C1-6ハロゲン化カルボン酸、およびC3-6ポリカルボン酸からなる群から選択される、ナイロン4繊維の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれか一項の製造方法において、第1の酸および第2の酸の少なくとも一方は、グリコール酸、乳酸、クエン酸、アクリル酸、およびマロン酸からなる群から選択される、ナイロン4繊維の製造方法。
  5. 請求項1から4のいずれか一項の製造方法において、凝固浴が、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ギ酸エステル、および酢酸エステルのいずれか1種または2種以上の混合物を含む、ナイロン4繊維の製造方法。
  6. 請求項1から5のいずれか一項の製造方法において、凝固浴における湿延伸倍率が1.5~7.0倍であり、乾熱延伸倍率が1.1~15倍である、ナイロン4繊維の製造方法。
  7. ナイロン4樹脂を含むナイロン4繊維であって、示差走査熱量測定装置により測定される結晶化熱量が、80J/g以上である、ナイロン4繊維。
  8. 請求項7のナイロン4繊維において、融点が267℃以上である、ナイロン4繊維。
  9. 請求項7または8のナイロン4繊維を含む繊維構造体。
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