JP7443807B2 - サーボプレス装置の粉末成形方法 - Google Patents

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本発明はサーボモータを駆動源とするパンチの加圧により成形加工を行うサーボプレス装置の粉末成形方法に関する。
プレス装置にはパンチの駆動源としてサーボモータを用いるサーボプレス装置がある。このようなサーボプレス装置を用いた成形方法では、加圧成形後の成形体を成形型から抜き出す際に、成形体の割れが発生する場合がある。そのため、成形体の割れを防止することを目的として、サーボモータにより駆動制御される上パンチによって加圧後の成形体に荷重をかけながら、成形型から抜出を行うホールドダウンという方法がある。
特許文献1には、サーボモータを駆動源としてパンチ及びダイスを制御する粉末成形用サーボプレス装置において、成形体の高さ寸法、重量、圧縮比の設定条件から前記パンチ及び前記ダイスについての成形動作線図を自動作成した後、ティーチングモード運転における前記成形動作線図による試験打ちで成形体を作成し、成形体重量検出器から得た試験打ち成形体の実重量、成形体高さ寸法検出器から得た前記試験打ち成形体の実寸法の少なくともいずれかが許容範囲外である場合、所定の自動修正のための式を用いて、許容範囲外となっている重量、高さ寸法についての成形動作条件を自動修正する、サーボプレス装置の成形条件自動修正方法が開示されている。
特開2005-118846号公報
しかしながら、原料粉の雰囲気湿度等に起因して、成形型へ充填した原料粉の充填密度が毎回異なる場合がある。そのため、特許文献1の方法では、原料粉の充填密度の変動に対応するホールドダウン動作を行うことができず、成形体の抜出時に成形体の割れが発生するという問題があった。
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、粉末を加圧して成形加工する粉末成形方法において、成形型から抜出する際に発生する成形体の割れを防ぐことができる、サーボプレス装置の粉末成形方法を提供する。
一実施形態にかかるサーボプレス装置の粉末成形方法は、サーボモータを駆動源とするパンチの加圧により成形加工を行う粉末成形用サーボプレス装置の粉末成形方法であって、ダイスにより形成される成形型に原料粉を投入するステップと、パンチにより原料粉を所定の高さに加圧成形するステップと、パンチにかかる荷重を検出する荷重検出部により加圧成形時の荷重を検出し、成形荷重を得るステップと、成形荷重に応じて成形体に対するホールドダウン荷重の許容範囲を求めるステップと、パンチの上下方向の動作を制御する制御部により、成形体に対する荷重をホールドダウン荷重の許容範囲内に制御しながらパンチを動作させるステップと、許容範囲内のホールドダウン荷重を成形体にかけながら成形体をダイスから抜き出すステップと、を備える。
本発明により、粉末を加圧して成形加工する粉末成形方法において、成形型から抜出する際に発生する成形体の割れを防ぐことができる、サーボプレス装置の粉末成形方法を提供することができる。
実施の形態1にかかるサーボプレス装置の主要部を例示した図である。 実施の形態1にかかる粉末成形過程におけるパンチとダイスの成形動作、及び動作線図を例示した図である。 実施の形態1にかかる成形荷重、ホールドダウン荷重及び除荷量の関係を例示したグラフである。 ホールドダウン荷重の変動による成形体の割れを例示した図である。
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
まず、サーボプレス装置の一例について説明する。複雑な形状を有する機械部品等を製造する粉末冶金法では、プレス装置を用いて磁性材料等の粉末材料を所望の形状に加圧成形し、得られた成形体を加熱して焼結することにより焼結体が製造される。
このようなプレス装置にはサーボモータを駆動源とするサーボプレス装置があり、サーボプレス装置は主にダイスと、ダイスに上から嵌合する上パンチと、ダイスに下から嵌合する下パンチと、粉体供給機と、各部を駆動するサーボモータを有する。
サーボプレス装置を用いた成形動作は、粉体供給機を用いてダイスと下パンチにより構成される空洞部分(成形型)に原料粉を充填することから始まる。次に、原料粉をダイスの面位置まで充填した後、上パンチが下降することにより成形荷重をかけて加圧成形する。さらに、加圧成形後の成形体に対して、上パンチが成形荷重より小さな荷重をかけながらダイスが下降するホールドダウン動作により、成形型から成形体を抜き出す。以上のサイクルを繰り返すことにより、連続成形を行う。
しかしながら、ホールドダウン動作を行った場合でも、原料粉の粉末条件、成形条件等によっては、成形体の抜出時に成形体の割れが発生することがあった。そこで、実施の形態1にかかるサーボプレス装置では、この割れの発生を防ぐ動作を行う。そこで、図1はサーボプレス装置の主要部を例示した図を示す。
図1に示す実施の形態1にかかるサーボプレス装置の主要部は、ダイス1と、上パンチ2と、下パンチ3と、上ラム4と、ダイス駆動用サーボモータ5と、上パンチ駆動用サーボモータ6と、荷重検出部7と、制御部8とを有する。ダイス1と上パンチ2と下パンチ3は成形型を構成するものである。ダイス1はダイス駆動用サーボモータ5により初期位置と充填位置と成形位置との間を上下方向に移動し、上パンチ2は上パンチ駆動用サーボモータ6により待機位置とホールドダウン位置と下死点との間を上下方向に移動し、下パンチ3は固定されて動かないパンチである。これらが動作することにより、成形型内に充填した原料粉を圧縮し、成形体9を得る。
そして、本実施形態にかかるサーボプレス装置は、上パンチ2の上下方向の動作を制御する制御機構を備えている。また、この制御機構により、本実施形態にかかるサーボプレス装置は、加圧後の成形体9に荷重をかけながら、成形型から抜出を行うホールドダウン動作を行うことができる。当該制御機構は、上ラム4と、上パンチ駆動用サーボモータ6と、荷重検出部7と、制御部8とを有する。
上パンチ2の駆動源である上パンチ駆動用サーボモータ6は、電気信号を受けて回転力を出力するロードセル内蔵の電動サーボモータが好ましい。そして上パンチ駆動用サーボモータ6は、上パンチ2に取り付けられた上ラム4を介して上パンチ2を上下方向に動作させる。上パンチ駆動用サーボモータ6は、荷重の代用値として制御油圧力を得られる油圧サーボモータであってもよい。
荷重検出部7は、成形型で成形体9を成形した際の上パンチ2にかかる成形荷重σ11を検出し、その検出値を制御部8へフィードバックする。制御部8は荷重検出部7により検出された個々の成形荷重σ11に基づいて、抜出時に成形体9の割れが発生しないホールドダウン荷重の許容範囲にある適切なホールドダウン荷重HD12を求める。そして、制御部8は求められたホールドダウン荷重HD12に対応するように、上パンチ2の目標位置を演算してその情報を上パンチ駆動用サーボモータ6へ出力し、上パンチ駆動用サーボモータ6の回転を制御することにより上ラム4を介して上パンチ2を目標位置へ上昇させる。なお、制御部8には、後述するように既知のデータ或いは実験により求めたデータが予め記憶されており、このデータを利用して適切なホールドダウン荷重HD12を求めることができる。これにより、上パンチ2の加圧量を減じてホールドダウン動作を行う。
次に、本実施形態にかかるサーボプレス装置の粉末成形方法について説明する。ここで、図2に実施の形態1にかかる粉末成形過程におけるパンチとダイス1の成形動作、及び動作線図を例示した図を示す。図2に示すように、本実施形態にかかるサーボプレス装置の粉末成形方法は、ステップS1の原料粉充填、ステップS2の加圧成形、ステップS3の除荷及び抜出、ステップS4の完了の工程を有する。
ステップS1では、ダイス1により形成される成形型に原料粉10を投入する。この時、ダイス1は初期位置から充填位置に上昇し、上パンチ2は待機位置にあり、下パンチ3は常に固定位置にある。ステップS2では、上パンチ2が待機位置から下死点に下降して原料粉10を所定の高さに加圧成形する。この時、ダイス1は充填位置から成形位置に下降する。さらに、上パンチ2にかかる荷重を検出する荷重検出部7により、加圧成形時に上パンチ2にかかる成形荷重σ11を検出し、制御部8において成形荷重σ11を記憶する。
ステップS3では、記憶した成形荷重σ11に対応する適切な除荷量(R)とホールドダウン荷重HD12の許容範囲を求める。除荷量とホールドダウン荷重HD12の設定には、後述するように既知のデータ或いは実験により求めたデータ等を用いる。続いて、上パンチ2の上下方向の動作を制御する制御部8により、成形体9に対する荷重をホールドダウン荷重の許容範囲内に制御しながら、上パンチ2をホールドダウン位置へ上昇させる除荷動作を行う。
ステップS4では、上パンチ2により成形体9にホールドダウン荷重HD12をかけながら、ダイス1が成形位置から初期位置に下降する。ダイス1の下降が完了すると上パンチ2と下パンチ3に挟まれた成形体9が露出する。これにより、成形体9をダイス1から抜き出し、1サイクルの成形が完了する。その後、ステップS1の処理に戻り、次の原料粉充填の過程に移行する。
次に、ステップS3におけるホールドダウン荷重HD12の設定について、図3を参照して説明する。そこで、図3に実施の形態1にかかる成形荷重、ホールドダウン荷重及び除荷量の関係を例示したグラフを示す。ホールドダウン荷重HD12の設定には、既知のデータ或いは実験により求めたデータ等を用いる。例えば、実験によりデータを求める方法の具体的な一例について以下に説明する。
実験によりデータを得る方法は、例えば、以下のようなものでる。当該データ取得方法では、サーボプレス装置を用いて水準数の成形荷重(例えば、σ1、σ2、σ3)で加圧成形し、各成形荷重に対して水準数の除荷量を設定して除荷動作を行う。除荷量とは上パンチ2の上昇距離であり、除荷動作とは設定した除荷量の距離を上パンチ2が上昇する動作である。続いて、成形体9の抜出後に成形体9に割れが有るか否かを調べるとともに、除荷量の各水準に対応するホールドダウン荷重を読み取る。読み取ったホールドダウン荷重のうち、各成形荷重において割れが発生しないホールドダウン荷重の最大値を成形可能HD荷重上限とし、最小値を成形可能HD荷重下限とする。つまり、成形可能HD荷重の上下限値を得ることにより、成形荷重ごとに成形体9に割れが発生しない除荷量とホールドダウン荷重の許容範囲を求めることができる。このように、実験により求めたデータをプロットし、制御部8に記憶させる。記憶させるデータは数式であっても、テーブルデータであってもよい。
また、本発明において、ホールドダウン荷重HD12は成形型(ダイス1)の径方向の弾性変形回復により成形体9に加わる加圧方向の引張力より大きく、かつそのホールドダウン荷重HD12と成形型及び設備の加圧方向の弾性変形回復により成形体9に加わる力の和が成形体9の強度以下であることが好ましい。
特に、本発明が有効であるのは、各成形荷重に対応する成形可能HD荷重の上限値と下限値との中央値(例えば、R1の時にHD1、R2の時にHD2、R3の時にHD3)を用いた場合である。ステップS3におけるホールドダウン荷重HD12を当該中央値に設定することにより、粉末条件と成形条件によらず、良好な成形体を最も安定して得ることができる。
続いて、図3で示した成形可能HD荷重の範囲外において成形体9が割れる現象について説明する。そこで、図4にホールドダウン荷重の変動による成形体の割れを例示した図を示す。ここで、プレス装置を用いて成形加工する原料粉の中には、加圧成形後にスプリングバック現象を生じるものがある。スプリングバックは成形型の弾性変形であって、プレス成形において成形型から成形体を抜き出す際に、成形体内の残留応力が弾性回復することによって成形体が割れる原因となる。また、特にリアクトルコア等の磁性材原料粉末を成形する場合は、高面圧成形により成形型の弾性変形量が大きく、得られる成形体の強度が低いことから、割れが発生しやすい。
このような成形体の割れを防ぐために、ホールドダウン動作を行う。この動作では、成形型の弾性変形を取り除いた状態で成形体を抜き出し、スプリングバックを抑制することにより成形体の割れを防ぐことができる。
しかしながら、連続成形中においては、加圧雰囲気等の要因により成形型内に充填された原料粉の充填密度が変動するため、所望の形状に加圧成形するために必要な成形荷重とホールドダウン荷重は毎回変動する。したがって、このような変動を考慮せずに毎回一定の除荷動作により成形体の抜出を行った場合、ホールドダウン荷重の過不足が生じるため、成形体に割れが発生する可能性がある。
図4を参照して、抜出時においてホールドダウン荷重の過不足が生じた場合に成形体の割れが発生する現象について説明する。ここで、成形型(ダイス1と下パンチ3)の弾性変形量は、成形時の成形面圧(成形荷重と加圧面積を乗じた値)等によって決定され、成形面圧は粉末の充填密度と相関がある。しかし、温度、湿度等の加圧雰囲気の変化が粉末の流動状態に影響を与えるため、充填密度は成形サイクルごとに変動する。これに伴い、プレスに必要な荷重も変動する。
図4(a)は、例えば、成形可能HD荷重下限より小さいホールドダウン荷重で抜出する場合の成形体の状態を示す。ここで、成形型の弾性変形量は除荷量の分だけ回復するため、その弾性変形回復量は小さくなる。この場合、スプリングバックを十分に抑制することができず、剥離による成形体9の割れが発生する可能性がある。一方、図4(b)は、例えば、成形可能HD荷重上限より大きいホールドダウン荷重で抜出する場合を示す。この場合、弾性変形回復は大きくなるため、圧壊による成形体9の割れが発生する可能性がある。
ここで、成形体の割れを防ぐ1つの方法としては、連続成形中の原料粉の充填密度変動に対して、充填密度範囲ごとに範囲内における充填密度の代表値と一致する加圧量となるように加圧量のみを補正する方法がある。しかし、例えば、高面圧成形であり、得られる成形体強度が低いプレス成形においては、設定した充填密度範囲内のホールドダウン荷重の変動でも成形体に割れが発生する場合があった。
本発明による粉末成形用サーボプレス装置の粉末成形方法によれば、上パンチ2にかかる実際の成形荷重σ11を検出し、検出された成形荷重σ11に基づいて最適なホールドダウン荷重HD12を付与できるように、上パンチ2の除荷動作が制御される。そのため、成形サイクルごとの変動に応じた個々の成形荷重σ11を正確に検出することができ、成形型から抜出する際に発生する成形体の割れを防ぐことができる。したがって、粉末条件と成形条件によらず、良好な成形体9を安定して得ることができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
1 ダイス
2 上パンチ
3 下パンチ
4 上ラム
5 ダイス駆動用サーボモータ
6 上パンチ駆動用サーボモータ
7 荷重検出部
8 制御部
9 成形体
10 原料粉
11 成形荷重σ
12 ホールドダウン荷重HD

Claims (1)

  1. サーボモータを駆動源とするパンチの加圧により成形加工を行うサーボプレス装置の粉末成形方法であって、
    ダイスにより形成される成形型に原料粉を投入するステップと、
    予め設定された下死点に下降させた前記パンチにより前記原料粉を所定の高さに加圧成形するステップと、
    前記下死点で固定された前記パンチにかかる荷重を検出する荷重検出部により加圧成形時の荷重を検出し、成形荷重を得るステップと、
    前記成形荷重に応じて予め設定された成形体に対するホールドダウン荷重の許容範囲に対応した前記パンチの除荷量を求めるステップと、
    前記パンチの上下方向の動作を制御する制御部により、前記成形体に対する荷重を前記ホールドダウン荷重の許容範囲内に制御しながら前記パンチを前記除荷量に対応したホールドダウン位置に上昇させるステップと、
    前記ホールドダウン位置で前記パンチを維持しながら前記成形体を前記ダイスから抜き出すステップと、を備える、
    サーボプレス装置の粉末成形方法。
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