JP7443483B2 - 有価物の回収方法 - Google Patents

有価物の回収方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7443483B2
JP7443483B2 JP2022204158A JP2022204158A JP7443483B2 JP 7443483 B2 JP7443483 B2 JP 7443483B2 JP 2022204158 A JP2022204158 A JP 2022204158A JP 2022204158 A JP2022204158 A JP 2022204158A JP 7443483 B2 JP7443483 B2 JP 7443483B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lithium
calcium
liquid
solid
carbonate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2022204158A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2023106309A (ja
Inventor
千尋 西川
奨太 田畑
亮栄 渡邊
暢之 劉
翔平 吉田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dowa Eco Systems Co Ltd
Original Assignee
Dowa Eco Systems Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dowa Eco Systems Co Ltd filed Critical Dowa Eco Systems Co Ltd
Priority to PCT/JP2023/000880 priority Critical patent/WO2023140198A1/ja
Priority to TW112101774A priority patent/TW202334445A/zh
Publication of JP2023106309A publication Critical patent/JP2023106309A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7443483B2 publication Critical patent/JP7443483B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/20Recycling
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02WCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO WASTEWATER TREATMENT OR WASTE MANAGEMENT
    • Y02W30/00Technologies for solid waste management
    • Y02W30/50Reuse, recycling or recovery technologies
    • Y02W30/84Recycling of batteries or fuel cells

Landscapes

  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)
  • Secondary Cells (AREA)

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、従来の鉛蓄電池、ニッカド二次電池などに比較して軽量、高容量、高起電力の二次電池であり、パソコン、電気自動車、携帯機器などの二次電池として使用されている。例えば、リチウムイオン二次電池の正極には、コバルトおよびニッケルなどの有価物が、コバルト酸リチウム(LiCoO)、三元系正極材(LiNiCoMn(x+y+z=1))などとして使用されている。
リチウムイオン二次電池は、今後も使用の拡大が予想されていることから、製造過程で発生した不良品又は使用機器および電池の寿命などに伴い廃棄されるリチウムイオン二次電池からリチウムなどの有価物を回収することが、資源リサイクルの観点から望まれている。リチウムイオン二次電池からリチウムなどの有価物を回収する際には、リチウムイオン二次電池に使用されている種々の金属又は不純物を分離して回収することが、回収物の価値を高める点から重要である。
リチウムイオン二次電池の焙焼物の破砕物からリチウムを回収する手法としては、例えば、リチウムイオン二次電池の廃棄物を焙焼して得られた電池滓から、リチウムを回収する方法であって、アルミン酸リチウムを含有する前記電池滓を、酸性溶液中に浸出させる浸出工程と、浸出工程で得られる浸出後液のpHを上昇させて中和すると共に固液分離して、リチウム溶液を得る中和工程と、を含むリチウム回収方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、本発明者は、既に、リチウムイオン二次電池から有価物を回収する有価物の回収方法であって、リチウムイオン二次電池を750℃以上の温度で熱処理することにより、熱処理物を得る熱処理工程と、前記熱処理物を破砕した破砕物を分級することにより、前記有価物を含む、粗粒産物と細粒産物とを得る破砕・分級工程と、前記細粒産物を水に浸けることにより、水浸出スラリーを得る水浸出工程と、前記水浸出スラリーに湿式磁選を行うことにより、前記水浸出スラリーを、磁着物と非磁着物スラリーとに選別する湿式磁選工程と、前記湿式磁選で回収される非磁着物スラリーおよび/又は非磁着物スラリーを固液分離して得た非磁着物に酸性溶液を添加し、pHを0以上3.5以下として非磁着物を浸出した後に固液分離して酸浸出液と酸浸出残渣を得る酸浸出工程と、を含む有価物の回収方法を提案している(例えば、特許文献2参照)。
特開2019-160429号公報 特許第6948481号公報
しかしながら、上記特許文献1の従来技術では、回収した炭酸リチウム中のホウ素品位が1ppm以上となる場合がある。リチウムイオン二次電池を焙焼して得られる電池滓には、電解質に由来するホウ素が含まれ、電池滓を酸浸出した場合、ほとんど全量が酸性溶液に移行することを本発明者は知見した。この酸性溶液から回収した炭酸リチウム中に含まれるホウ素はホウ酸塩として含まれるが、このホウ素の含有により、回収した炭酸リチウムを使用したリチウムイオン二次電池の充放電に関する性能に悪影響を与えるおそれがあることを本発明者は知見した。
また、特許文献1のように中和工程で水酸化ナトリウムを用いる場合、リチウム溶解液に多量のナトリウムが溶解するため、リチウム溶解液から回収される炭酸リチウムには0.5質量%以上のナトリウムが含有される場合があり、リチウムイオン二次電池に使用可能な品質の炭酸リチウムを回収できない場合があることを本発明者は知見した。また、酸浸出工程における酸性溶液として硫酸を用いる場合、リチウム溶解液に硫酸イオンが含まれるためにその液から回収される炭酸リチウムには0.5質量%以上のSOが含有される場合があり、リチウムイオン二次電池に使用可能な品質の炭酸リチウムを回収できない場合があることを本発明者は知見した。また、コバルト又はニッケル等も浸出し中和工程で水酸化物の沈殿を形成するが、この残渣量が多くなり多量のリチウムを残渣側にロスする場合があることを本発明者は知見した。
上記特許文献2の従来技術には、イオン交換樹脂によりカルシウムを吸着除去できるという記載があるが、イオン交換樹脂によりカルシウムを吸着除去する場合、リチウムもイオン交換樹脂に吸着されることがあり、更にイオン交換樹脂ではカルシウムの吸着除去が十分ではないことを本発明者は知見した。
また、特許文献2では中和工程でアルカリとして消石灰を用いているが、中和工程で得られた液のpHがアルカリであるために空気中のCOを吸収して液中のカルシウムイオンが炭酸カルシウムとして析出し、この炭酸カルシウムがイオン交換樹脂に通水されることで樹脂塔の閉塞トラブルが発生し、カルシウム吸着除去量の低下が生じる場合があることを本発明者は知見した。
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、リチウムイオン二次電池からホウ素品位1ppm未満かつカルシウム品位100ppm以下である高品質な炭酸リチウムを高回収率で回収できる有価物の回収方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下のとおりである。即ち、
<1> リチウムイオン二次電池からホウ素品位1ppm未満かつカルシウム品位100ppm以下である炭酸リチウムを回収する有価物の回収方法であって、
前記リチウムイオン二次電池を660℃以上の温度で熱処理することにより、熱処理物を得る熱処理工程と、
前記熱処理物を破砕した破砕物を分級することにより、前記有価物を含む、粗粒産物と細粒産物とを得る破砕・分級工程と、
前記細粒産物を水に浸けることにより細粒産物スラリーとするスラリー化工程と、
前記細粒産物スラリーを湿式磁選することにより、磁着物と非磁着物スラリーとに選別する湿式磁選工程と、
前記非磁着物スラリーおよび/又は前記非磁着物スラリーを固液分離して得た非磁着物に硫酸を添加し、pHを0以上3.5以下として非磁着物を浸出した後に固液分離して酸浸出液と酸浸出残渣を得る酸浸出工程と、
前記酸浸出液を水酸化カルシウムで中和する中和工程と、
前記中和工程で得られた液を固液分離する中和ケーク固液分離工程と、
前記中和ケーク固液分離工程で得られた液に対してCOを添加する炭酸カルシウム晶析工程と、
前記炭酸カルシウム晶析工程で得られた液を固液分離する炭酸カルシウム固液分離工程と、
前記炭酸カルシウム固液分離工程後に、キレート樹脂によりカルシウムを吸着除去するカルシウム吸着除去工程と、
を含むことを特徴とする有価物の回収方法である。
<2> 前記炭酸カルシウム晶析工程におけるCOの添加量が、前記中和ケーク固液分離工程で得られた液のカルシウムイオンに対するモル比で0.1以上、かつリチウムイオンに対するモル比で0.5以下である、前記<1>に記載の有価物の回収方法である。
<3> 前記キレート樹脂がイミノジ酢酸基を有するキレート樹脂である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の有価物の回収方法である。
<4> 前記炭酸カルシウム晶析工程後に、炭酸カルシウム晶析工程で得られた液に含まれるリチウムを電気透析により濃縮する第1の濃縮工程を含む、前記<1>に記載の有価物の回収方法である。
<5> 前記カルシウム吸着除去工程後に、カルシウム吸着除去後液に含まれるリチウムを電気透析により濃縮する第2の濃縮工程を含む、前記<1>に記載の有価物の回収方法である。
<6> 前記第1又は第2の濃縮工程後の濃縮液に炭酸を添加して炭酸リチウムを晶析する炭酸リチウム晶析工程を含む、前記<4>から<5>のいずれかに記載の有価物の回収方法である。
<7> 前記炭酸リチウムを温水で洗浄して硫酸品位およびナトリウム品位がいずれも0.5質量%以下である炭酸リチウムを得る、前記<6>に記載の有価物の回収方法である。
<8> 前記炭酸リチウムのカリウム品位が50ppm以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の有価物の回収方法である。
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、リチウムイオン二次電池からホウ素品位1ppm未満かつカルシウム品位100ppm以下である高品質な炭酸リチウムを高回収率で回収できる有価物の回収方法を提供することができる。
図1は、第1の実施形態に係る有価物の回収方法の処理の流れの一例を示す図である。 図2は、第2の実施形態に係る有価物の回収方法の処理の流れの一例を示す図である。
(有価物の回収方法)
本発明の有価物の回収方法は、熱処理工程と、破砕・分級工程と、スラリー化工程と、湿式磁選工程と、酸浸出工程と、中和工程と、中和ケーク固液分離工程と、炭酸カルシウム晶析工程と、炭酸カルシウム固液分離工程と、カルシウム吸着除去工程とを含み、濃縮工程および炭酸リチウム晶析工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の有価物の回収方法によると、リチウムイオン二次電池からホウ素品位1ppm未満かつカルシウム品位100ppm以下である高品質な炭酸リチウムを高回収率で回収できる。また、前記有価物の回収方法によると、少ない工程数でかつ短時間で効率よく高品質な炭酸リチウムを回収することができる。
本発明の有価物の回収方法は、リチウムイオン二次電池から有価物を回収するための方法である。
ここで、有価物とは、廃棄せずに取引対象たりうる価値のあるものを意味し、例えば、各種金属などが挙げられる。リチウムイオン二次電池における有価物としては、例えば、高品位の炭素(C)濃縮物、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などが挙げられる。これらの中でも、ホウ素品位1ppm未満かつカルシウム品位10ppm未満である高品質な炭酸リチウムが該当する。
-リチウムイオン二次電池-
リチウムイオン二次電池としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウムイオン二次電池の製造過程で発生した不良品のリチウムイオン二次電池、使用機器の不良、使用機器の寿命などにより廃棄されるリチウムイオン二次電池、寿命により廃棄される使用済みのリチウムイオン二次電池などが挙げられる。
リチウムイオン二次電池の形状、構造、大きさ、および材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
リチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラミネート型、円筒型、ボタン型、コイン型、角型、平型などが挙げられる。
また、リチウムイオン二次電池の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バッテリーセル、バッテリーモジュール、バッテリーパックなどが挙げられる。ここで、バッテリーモジュールは、単位電池であるバッテリーセルを複数個接続して一つの筐体にまとめたものを意味し、バッテリーパックとは、複数のバッテリーモジュールを一つの筐体にまとめたものを意味する。また、バッテリーパックは、制御コントローラー又は冷却装置を備えたものであってもよい。
リチウムイオン二次電池としては、例えば、正極と、負極と、セパレーターと、電解質および有機溶剤を含有する電解液と、正極、負極、セパレーター、および電解液を収容する電池ケースである外装容器と、を備えたものなどが挙げられる。なお、リチウムイオン二次電池は、正極および負極などが脱落した状態であってもよい。
--正極--
正極としては、正極活物質を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
正極の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状、シート状などが挙げられる。
---正極集電体---
正極集電体としては、その形状、構造、大きさ、および材質などに、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
正極集電体の形状としては、例えば、箔状などが挙げられる。
正極集電体の材質としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン、タンタルなどが挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好ましい。
正極材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウムを含有する正極活物質を少なくとも含み、必要により導電剤と、結着樹脂とを含む正極材などが挙げられる。
正極活物質としては、例えば、LMO系と称されるマンガン酸リチウム(LiMn)、LCO系と称されるコバルト酸リチウム(LiCoO)、3元系およびNCM系と称されるLiNiCoMn(x+y+z=1)、NCA系と称されるLiNiCoAl(x+y+z=1)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、コバルト・ニッケル酸リチウム(LiCo1/2Ni1/2)、チタン酸リチウム(LiTiO)などが挙げられる。また、正極活物質としては、これらの材料を組合せて用いてもよい。
導電剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、金属炭化物などが挙げられる。
結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレン、アクリロニトリル、エチレンオキシド等の単独重合体又は共重合体、スチレン-ブタジエンゴムなどが挙げられる。
--負極--
負極としては、カーボン(C)を含有する負極活物質を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
負極の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状、シート状などが挙げられる。
---負極集電体---
負極集電体としては、その形状、構造、大きさ、および材質などに、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
負極集電体の形状としては、例えば、箔状などが挙げられる。
負極集電体の材質としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン、タンタルなどが挙げられる。これらの中でも、銅が好ましい。
負極活物質としては、カーボン(C)を含有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グラファイト、ハードカーボン等の炭素材料などが挙げられる。また、負極活物質としては、チタネイト、シリコンなどの非炭素材料がカーボンに組合せて用いてられていてもよい。
また、リチウムイオン二次電池の外装容器(筐体)の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレススチール、樹脂(プラスチック)などが挙げられる。
以下、本発明の有価物の回収方法における各工程について、詳細に説明する。
<熱処理工程>
熱処理工程は、リチウムイオン二次電池を熱処理することにより、熱処理物を得る工程である。熱処理物(焙焼物)とは、リチウムイオン二次電池を熱処理して得られたものを意味する。
熱処理工程における熱処理を行う手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の焙焼炉により対象物を加熱することにより熱処理を行うことができる。
焙焼炉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロータリーキルン、流動床炉、トンネル炉、マッフル炉等のバッチ式炉、キュポラ、ストーカー炉などが挙げられる。
熱処理に用いる雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大気雰囲気、不活性雰囲気、還元性雰囲気、低酸素雰囲気などが挙げられる。
大気雰囲気(空気雰囲気)とは、酸素が約21体積%、窒素が約78体積%の大気(空気)を用いた雰囲気を意味する。
不活性雰囲気とは、窒素又はアルゴンからなる雰囲気を例示できる。
還元性雰囲気とは、例えば、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気中にCO、H、HS、SOなどを含む雰囲気を意味する。
低酸素雰囲気とは、酸素分圧が11%以下である雰囲気を意味する。
<<熱処理の条件>>
対象物を熱処理(加熱)する条件(熱処理条件)としては、対象物の各構成部品を、後述する破砕・分級工程において分離して破砕可能な状態とすることができる条件であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、熱処理条件としては、例えば、熱処理温度、熱処理時間などが挙げられる。
熱処理温度とは、熱処理時の対象物であるリチウムイオン二次電池の温度のことを意味する。熱処理温度は、熱処理中の対象物に、カップル、サーミスタなどの温度計を差し込むことにより、測定することができる。
熱処理における温度(熱処理温度)としては、660℃以上であり、700℃以上1,080℃以下が好ましく、750℃以上900℃以下がより好ましい。熱処理温度を660℃以上とすることにより、外装容器などに用いられるアルミニウム(Al)部材を熔融し、他リチウムイオン二次電池構成物から分離でき、一方正極集電体に用いられる箔状Alを脆化して後工程の破砕工程および分級工程で細粒産物に回収することにより、この細粒産物中のAlを中和工程でのホウ素除去に利用できる。また、熱処理温度を660℃以上とすることによって、正極活物質に含まれるコバルト酸化物およびニッケル酸化物のメタルへの還元が生じる。また、これらのメタルを後段の磁選において磁着し易い粒径まで成長させることができる。この粒径増加はより高温度で熱処理するほど生じやすい。また、正極活物質中のLiがLiFやLiOなどに分解することで、磁着物側(コバルト酸化物に未分解の正極活物質が巻き込まれて回収される場合がある)へのリチウムのロスを低減できる。
また、リチウムイオン二次電池の外装容器には、熱処理温度より高い融点を有する材料が用いられることが好ましい。
リチウムイオン二次電池の外装容器に熱処理温度より低い融点を有する材料が用いられる場合は、酸素濃度が11vol%以下の低酸素雰囲気下、又は、少なくとも焙焼中のリチウムイオン二次電池内部(特に、リチウムイオン二次電池の外装容器内に配置された正極集電体と負極集電体)において酸素濃度が11vol%以下となるように、熱処理することが好ましい。
また、低酸素雰囲気の実現方法としては、例えば、リチウムイオン二次電池、正極、又は負極を、酸素遮蔽容器に収容し熱処理してもよい。酸素遮蔽容器の材質としては、熱処理温度以上の融点である材質であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱処理温度が800℃である場合は、この熱処理温度よりも高い融点を有する鉄、ステンレス鋼などが挙げられる。
リチウムイオン二次電池又は積層体中の電解液燃焼によるガス圧を放出するために、酸素遮蔽容器には開口部を設けることが好ましい。開口部の開口面積は、開口部が設けられている外装容器の表面積に対して12.5%以下となるように設けることが好ましい。開口部の開口面積は、開口部が設けられている外装容器の表面積に対して6.3%以下であることがより好ましい。開口部は、その形状、大きさ、および形成箇所などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記酸素遮蔽容器にリチウムイオン二次電池を収容した状態で熱処理することで、負極活物質のカーボンを燃焼させることなく残存させることができ、炭素の回収率を向上できる。
リチウムイオン二次電池を熱処理する時間(熱処理時間)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1分間以上5時間以下が好ましく、1分間以上2時間以下がより好ましい。熱処理時間はリチウムを含む化合物が所望の温度まで到達する熱処理時間であればよいが、昇温速度を緩やかにすることで正極活物質の分解を促進し、磁着物側へのリチウムのロスを低減できる。加えて、後述の非磁着物の酸浸出における酸使用量を低減できる。また、昇温した後に、温度を保持する時間は短くても構わない。熱処理時間が5時間を超えると、炭素の燃焼によるロスが生じ、分級工程で粗粒産物に回収される銅などの金属が酸化し有価物としての品質が低下し、また熱処理にかかる燃料および電力コストが上昇するため、熱処理時間は5時間以下が好ましい。
熱処理時間が、上記好ましい時間であると、熱処理にかかるコストおよび生産性の点から有利である。
また、本発明の有価物の回収方法においては、熱処理温度を660℃以上とすることによって、外装容器由来のアルミニウムを溶融させて分離することができる。
また、本発明の有価物の回収方法においては、熱処理工程によって、正極活物質が十分に分解され、水に溶けやすい炭酸リチウムおよび酸化リチウムの形態となり、水での浸出率が高くなる一方、外装容器、正極集電体等に含まれるアルミニウムが反応して水に難溶なアルミン酸リチウム(LiAlO)も生じる。この場合でも、酸浸出工程においてアルミン酸リチウムを溶解することができるので、高い回収率でリチウム(Li)を回収することができる。
<破砕・分級工程(破砕処理)>
破砕・分級工程(破砕処理)には、熱処理物(リチウムイオン二次電池を熱処理したもの)を破砕することにより、破砕物を得る処理を含む。
破砕処理としては、熱処理物(焙焼物)を破砕して破砕物を得ることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、破砕物とは、熱処理物を破砕したものを意味する。
破砕処理としては、例えば、熱処理物を衝撃により破砕して破砕物を得ることが好ましい。また、リチウムイオン二次電池の外装容器が熱処理中に溶融しない場合には、熱処理物に衝撃を与える前に、切断機により熱処理物を切断する予備破砕しておくことがより好ましい。
破砕処理は湿式で行ってもよい。この場合、破砕時のカーボン、コバルト、ニッケル等の正極および負極活物質の飛散によるロスを防止でき、このロスを防ぐための集塵装置を削減できる。また、破砕処理時点において熱処理物中の全ての水溶性リチウムを水中に回収可能である。
衝撃により破砕を行う方法としては、例えば、回転する打撃板により熱処理物を投げつけ、衝突板に叩きつけて衝撃を与える方法、回転する打撃子(ビーター)により熱処理物を叩く方法などが挙げられ、例えば、ハンマークラッシャーなどにより行うことができる。また、衝撃により破砕を行う方法としては、例えば、セラミックなどのボールにより熱処理物を叩く方法でもよく、この方法は、ボールミルなどにより行うことができる。また、衝撃による破砕は、例えば、圧縮による破砕を行う刃幅、刃渡りの短い二軸破砕機等を用いて行うこともできる。
更に、衝撃により破砕を行う方法としては、例えば、回転させた2本のチェーンにより、熱処理物を叩いて衝撃を与える方法なども挙げられ、例えば、チェーンミルなどにより行うことができる。
衝撃により熱処理物を破砕することで、正極集電体(例えば、アルミニウム(Al))の破砕が促進されるが、形態が著しく変化していない負極集電体(例えば、銅(Cu))は、箔状などの形態で存在する。そのため、破砕・分級工程において、負極集電体は切断されるにとどまるため、後述する破砕・分級工程において、正極集電体由来の有価物(例えば、アルミニウム)と負極集電体由来の有価物(例えば、銅(Cu))とを、効率的に分離できる状態の破砕物を得ることができる。
破砕処理における破砕時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、リチウムイオン二次電池1kgあたりの破砕時間としては、1秒間以上30分間以下が好ましく、2秒間以上10分間以下がより好ましく、3秒間以上5分間以下が特に好ましい。
<破砕・分級工程(分級処理)>
破砕・分級工程(分級処理)は、破砕物を分級することにより、有価物を含む、粗粒産物と細粒産物とを得る処理を含む。
分級処理としては、破砕物を分級して粗粒産物(篩上物)と細粒産物(篩下物)を得ることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
分級方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、振動篩、多段式振動篩、サイクロン、JIS Z8801の標準篩などを用いて行うことができる。分級により、銅(Cu)、鉄(Fe)等を粗粒産物中に分離でき、リチウム、コバルト、ニッケル、又は炭素を細粒産物中に濃縮できる。
分級処理は湿式で行ってもよい。この場合、破砕時のカーボン、コバルト、ニッケル等の正極および負極活物質の飛散によるロスを防止でき、このロスを防ぐための集塵装置を削減できる。分級前に前記飛散防止のために破砕物を調湿してもよい。調湿方法としては水を霧状に噴霧することを用いてもよい。こうすることで、破砕物に水を散水する際のカーボン、コバルト、ニッケルの飛散を防ぐことができる。
分級の粒度(分級点、篩の目開き)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。分級により、銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)等を粗粒産物中に分離し、炭素(C)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)等を細粒産物中に濃縮することを目的とする場合は、分級の粒度としては、0.15mm以上2.4mm以下が好ましく、0.3mm以上1.7mm以下がより好ましい。分級の粒度が2.4mm以下であると、細粒産物中への銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)等の混入を抑制できる。分級の粒度が0.15mm以上であると、粗粒産物中への炭素(C)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)等の混入を抑制できる。
また、分級方法として篩を用いる場合に、篩上に解砕促進物として、例えば、ステンレス球又はアルミナボールを載せて分級を行うことにより、大きな破砕物に付着している小さな破砕物を、大きな破砕物から分離させることにより、大きな破砕物と小さな破砕物を、より効率的に分離することができる。こうすることにより、回収する金属の品位を更に向上させることができる。
なお、破砕処理と分級処理は、同時進行で行うこともできる。例えば、熱処理工程で得られた熱処理物を破砕しながら、破砕物を粗粒産物と細粒産物とに分級する破砕・分級工程(破砕および分級)として行ってもよい。
なお、粗粒産物と細粒産物との分級を複数回繰り返してもよい。この再度の分級により、各産物の不純物品位を更に低減することができる。
例えば、細粒産物のコバルト(Co)およびニッケル(Ni)の品位を高める観点から、例えば、1.2mm超、0.3mm以上1.2mm以下、の各分級点で2段の篩分けを行うことによって、1段目では銅又は鉄などのコバルトおよびニッケルよりも平均粒径が大きいリチウムイオン二次電池の構成部材を篩上に分離でき、2段目の篩上には負極集電体の銅や正極集電体のアルミニウムとの単体分離が不十分なコバルトおよびニッケルが回収され、2段目の篩下にはコバルト、ニッケルおよびカーボンが回収される。この2段目の篩上を再度破砕しコバルトおよびニッケルとアルミニウムの単体分離を促進したうえで再度篩い分けし篩下にコバルトおよびニッケルを回収してもよい。
<スラリー化工程>
スラリー化工程は、前記破砕・分級工程で得られた細粒産物を水に浸けることにより細粒産物スラリーとする工程である。
前記スラリー化工程としては、前記破砕・分級工程において回収した細粒産物を水に浸けてスラリーを得ることができる工程であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記破砕工程又は分級工程を湿式で行う場合は、前記破砕工程又は分級工程をスラリー化工程としてもよい。
細粒産物を浸出させる水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、工業用水、水道水、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などが挙げられる。これらの中でも、製造コストが比較的低く、かつ炭酸リチウムの不純物となるカリウムの濃度が低いことから、イオン交換水を用いることが好ましい。
ここで、スラリー化工程における細粒スラリー化手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単に細粒産物を水に投入しておく手法、細粒産物を水に投入して攪拌する手法、細粒産物を水に投入して、超音波を当てながら緩やかに攪拌する手法、細粒産物に水を添加する方法、細粒産物に水を霧状に噴霧して調湿したうえで水に投入する方法、などが挙げられる。細粒産物を水に投入して攪拌する手法が好ましく、細粒産物に水を霧状に噴霧して調湿したうえで水に投入する方法、がより好ましい。この方法により、細粒産物の発塵を防ぎながら磁選が可能となる。
スラリー化工程における固液比は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5%以上67%以下が好ましく、10%以上40%以下がより好ましい。固液比が5%未満であると、浸出液に溶解するリチウムの濃度が低下し、リチウムの回収率および濃縮効率が低下し易い。固液比が67%を超えると、リチウムの水への浸出率が低下する場合があり、スラリーを希釈せずに次工程に送液した場合、配管の閉塞等の問題を生じる場合があり、また後述の湿式磁選工程にスラリーを供給した場合、磁着物へのコバルト・ニッケルの回収率および非磁着物への炭素の回収率が低下する(つまりコバルトおよびニッケルと炭素の分離成績が低下する)場合がある。
スラリー化工程におけるスラリーの攪拌速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、400rpmとすることができる。
スラリー化工程における攪拌時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1時間とすることができる。
<湿式磁選工程>
湿式磁選工程は、細粒産物スラリーを湿式磁選することにより、磁着物と非磁着物スラリーとに選別する。なお、「非磁着物スラリー」とは、非磁着物を含む懸濁液を意味する。
前記湿式磁選工程としては、湿式磁選により、細粒産物スラリーを、磁着物と非磁着物スラリーとに選別できる工程であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明においては、磁着物としてコバルトおよびニッケルを非磁着物スラリーから分離することで、酸浸出時にコバルトおよびニッケルに消費される分の酸および中和剤の使用量を低減できる。
磁着物はコバルトおよびニッケル品位が高く、また、不純物品位が低い。このため、湿式磁選工程で得られたコバルトおよびニッケルを酸浸出、中和、溶媒抽出などの追加のCoおよびNiの濃縮工程を必要とせず、そのまま、二次電池の製造材料を得るための原料(例えば、硫酸コバルト、硫酸ニッケルなど)、又はコバルトおよびニッケルの製錬原料として利用できる。
また、磁着物中のリチウムは、これら二次電池の製造材料を得るプロセス、又はコバルトおよびニッケルの製錬原料を得るプロセスで炭酸リチウムもしくは水酸化リチウムとして回収してもよい。磁着物中のリチウムを回収することにより、リチウムイオン二次電池に含まれていたリチウムのうち10質量%以上を炭酸リチウムもしくは水酸化リチウムとして回収できる。
ここで、磁着物とは、磁力(磁界)を発生させる磁力源(例えば、磁石、電磁石など)が発生させた磁力により、当該磁力源との間で引力を生じて、当該磁力源側に吸着可能なものを意味する。磁着物としては、例えば、強磁性体の金属などが挙げられる。強磁性体の金属としては、例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などが挙げられる。
非磁着物とは、上記磁力源が発生させた磁力では、当該磁力源側に吸着されないものを意味する。前記非磁着物としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができる。また、金属の非磁着物としては、例えば、常磁性体又は半磁性体の金属などが挙げられる。常磁性体又は半磁性体の金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などが挙げられる。
湿式磁選工程は、特に制限はなく、公知の湿式の磁力選別機(磁選機)などを用いて行うことができる。
本発明で用いることができる湿式の磁力選別機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドラム型磁選機、高勾配磁選機などが挙げられる。
湿式磁選工程を行う際の湿式磁選の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
湿式磁選工程では、例えば、磁着物としてコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、コバルトと一体化しているマンガン(Mn)などが回収される。
ここで、破砕・分級工程で得られた細粒産物を磁選する際に、例えば、乾式で磁選した場合、粒子間の付着水分により粒子の凝集が生じ、負極集電体由来金属粒子および細粒産物に10%以上含まれる負極活物質微粒子とコバルトおよびニッケル粒子を十分に分離できない場合がある。このため、本発明では、湿式磁選工程において、負極活物質由来の物質と負極集電体由来金属を非磁着物スラリーに分離し、コバルトおよびニッケルを磁着物として回収することが好ましい。
湿式磁選に供給するスラリーの固液比は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5%以上67%以下が好ましく、10%以上40%以下がより好ましい。固液比が5%未満であると、湿式磁選機内でのコバルトおよびニッケルの磁着物として回収率が低下することがある。固液比が67%を超えると、スラリー供給時のポンプの閉塞などの問題が生じやすく、またコバルトおよびニッケル(磁着物)とカーボン等の非磁着物の分離成績が低下することがある。
スラリーはスラリー化工程で得られた細粒産物スラリーをそのまま供給してもよく、スラリー化工程で得られた細粒産物スラリーを沈降分離等の固液分離により濃縮もしくは希釈し固液比を調整してもよい。また、細粒産物スラリーに水を加えて希釈し固液比を調整してもよい。
スラリーの供給方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、タンク内のスラリーを攪拌しながらポンプで供給してもよい。
湿式磁選で用いる磁選機の磁場強度は、500G以上20,000G以下が好ましく、1,000G以上10,000G以下がより好ましく、1,500G以上8,000G以下が特に好ましい。磁場強度が500G未満であると、微粒のコバルトおよびニッケルの粒子を磁着しにくく、コバルトおよびニッケルの磁着物への回収率が低下し易いことがある。一方、磁場強度が20,000Gを超えると、コバルトおよびニッケル以外の不純物の磁着物への回収率が増加し、磁着物中のコバルトおよびニッケル品位が低下することがある。
湿式磁選工程で回収した磁着物には水分が含まれるため、これを濾紙、フィルタープレス、又は遠心分離機などを用いて固液分離することや、風乾することや、乾燥機での加熱乾燥により水分を除去してもよい。
得られた磁着物を水洗後に固液分離してもよく、この場合、スラリー化工程で磁着物から除去できなかったフッ素を、例えば1%未満に低減できる。この水洗は、例えば、固液分離装置としてフィルタープレスを用いた場合は、フィルタープレス内の磁着物を含む濾室内に注水することで実施できる。水洗に用いる重量としては、酸浸出残渣1kgに対して水0.1kg以上を通水することが好ましく、水1kg以上を通水することが特に好ましい。
湿式磁選工程は複数回(多段)の湿式磁選を行ってもよい。例えば、1段目の湿式磁選工程で回収された磁着物に対し2段目の湿式磁選(精選)を行うことによって、磁着物のコバルト(Co)品位を向上できる。この場合、2段目の湿式磁選の条件は1段目と異なっていてもよく、1段目の湿式磁選よりもより磁着物の回収が難となる条件(例えば、低い磁場強度、高い磁選機ドラム回転数、高いフィード速度など)を設定することで、2段目の湿式磁選で回収される磁着物のコバルト(Co)品位を1段目の湿式磁選で回収される磁着物のコバルト(Co)品位よりも高めることができ、また非磁着物スラリーとして回収されるカーボン(C)の回収率を1段の湿式磁選を実施する場合に比べて向上できる。
また、別の例としては、1段目の湿式磁選工程で回収された非磁着物スラリーに対し2段目の湿式磁選(清掃選)を行うことによって、非磁着物スラリーのコバルト(Co)品位を低減できる。この場合、2段目の湿式磁選の条件は1段目と異なっていてもよく、1段目の湿式磁選よりもより磁着物の回収が易容易となる条件(例えば、高い磁場強度、低い磁選機ドラム回転数、低いフィード速度など)を設定することで、2段目の湿式磁選で回収される非磁着物スラリーのコバルト品位を1段目の湿式磁選で回収されるコバルト品位よりも低減でき、また磁着物として回収されるコバルトの回収率を1段の湿式磁選を実施する場合に比べて向上できる。湿式磁選で得られた非磁着物スラリーに水を加えてもよい。リチウム(Li)濃度の調整により、後述する中和工程に示すように、中和残渣へのリチウムのロスを防ぐことができる。
<酸浸出工程>
酸浸出工程は、前記非磁着物スラリーおよび/又は非磁着物スラリーを固液分離して得た非磁着物に硫酸を添加し、pHを0以上3.5以下として非磁着物を浸出した後に固液分離して酸浸出液と酸浸出残渣を得る。
得られた酸浸出液には、炭酸リチウムやフッ化リチウム、酸化リチウムなどの水溶性のリチウムおよび難水溶性のLiAlO(アルミン酸リチウム)由来のリチウムが溶解している。一方、得られた酸浸出残渣には、炭素(C)が高品位で濃縮するため、炭素(C)濃縮物として回収および利用することができる。
前記酸浸出液と酸浸出残渣(炭素濃縮物)は、例えば、濾紙、フィルタープレス、又は遠心分離機などを用いて固液分離する手法が好ましい。
前記酸浸出工程では酸性溶液として硫酸を用いる。添加する硫酸の濃度は、5質量%以上90質量%以下が好ましく、10質量%以上80質量%以下がより好ましい。このような濃度の硫酸を用いることで、酸浸出工程での酸性溶液(前記添加する硫酸由来の硫酸のほか、リチウムイオン二次電池の電解質のフッ素由来のフッ酸を含む)の発熱および浸出に用いるタンクの劣化を抑制できる。
前記酸浸出工程で用いる酸性溶液のpHは0以上3.5以下であり、0以上3以下がより好ましく、1以上3以下が更に好ましく、1.5以上2.5以下が特に好ましい。pHが3.5を超えると、濾過残渣中のアルミン酸リチウムが有効に溶解しない。ここで、酸性溶液のpHは酸浸出工程の終期のpHを意味する。酸性溶液のpHが0以上3.5以下であると、非磁着物中のリチウムを80%以上浸出でき、かつ炭素品位が80%以上の炭素濃縮物(酸浸出残渣)が得られる。pH0以上3以下では、pH0の場合と比べリチウムの酸浸出率を低下させることなく、酸の添加量を抑制してリチウムを浸出できることから好ましい。pHが1.5以上2.5以下では、pH0の場合と比べてリチウムの酸浸出率を低下させることなく浸出でき、かつ非磁着物スラリーに含まれる銅の浸出を抑制でき、より不純物濃度の小さい酸浸出液が得られ、特に好適である。なお、酸浸出残渣(炭素濃縮物)に含有される銅は製錬原料(還元剤)として用いる場合は問題を生じないことがあり、また酸浸出残渣に酸化剤を添加した酸浸出を実施することにより、銅を浸出液に除去し、より高品位の炭素濃縮物の回収が可能である。
pHが0未満であると、酸浸出液中の硫酸イオン濃度が高くなり、中和工程で生じる中和ケーク中へのリチウムのロスが大きくなる。
酸浸出液のリチウム濃度および硫酸イオン濃度は、中和工程での中和ケークの多量発生によるリチウムの共沈・吸着ロス低減のため、リチウム濃度は4,000mg/L未満、硫酸イオン濃度は60,000mg/L以下とすることが好ましい。
ここで、酸浸出工程における浸出手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単に非磁着物スラリーを酸に投入しておく手法、非磁着物スラリーを酸に投入して攪拌する手法、非磁着物スラリーを酸に投入して、攪拌する手法、非磁着物スラリーに酸を添加する方法、非磁着物スラリーに酸を添加した後に攪拌する方法などが挙げられる。酸浸出手法としては、例えば、非磁着物スラリーに酸を添加する方法が好ましく、非磁着物スラリーに酸を添加した後に攪拌する方法がより好ましい。非磁着物スラリーに酸を添加することで、非磁着物と酸が反応する際の発熱による局所的な温度上昇および突沸を抑制できる。
酸浸出工程における硫酸の攪拌速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、200rpmとすることができる。
酸浸出の際の液温は、0℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。酸浸出液にはリチウムイオン二次電池の電解液中の電解質であるLiPF(六フッ化リン酸リチウム)に由来するフッ素がフッ酸として溶解しており、酸浸出の際の液温を60℃以下とすることによって、有害かつ腐食性ガスであるフッ酸蒸気の発生を抑制できる。
酸浸出においては、酸化剤を添加してもよい。酸化剤を添加することで、銅等の酸に溶解しがたい不純物(例えば、銅)の溶解を促進し、炭素(C)濃縮物(酸浸出残渣)の炭素(C)品位をより向上できる。酸化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、過酸化水素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、ハロゲン、過マンガン酸塩、オゾン、空気などが挙げられる。
酸浸出工程における浸出時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1時間とすることができる。
酸浸出工程で得られた酸浸出残渣の炭素(C)品位は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
また、酸浸出残渣(炭素(C)濃縮物)を製錬の還元剤として用いる場合、リン(P)は鉄鋼製錬における忌避元素であり、フッ素(F)は製錬の排ガス処理に負荷を与える元素であることから、リンおよびフッ素は可能な限り酸浸出残渣(炭素(C)濃縮物)から除去することが好ましい。
更に、炭素(C)濃縮物は主な不純物として銅(Cu)を含む。この銅の分離は、分散剤によるカーボンの分散および銅の沈降、浮選による銅の尾鉱への回収、比重分離による銅の重産物への回収などにより行うことができる。
酸浸出工程で得られた酸浸出液のリチウム(Li)濃度の調整を目的とし、酸浸出液に水を加えてもよい。リチウム(Li)濃度の低減により、後述する中和工程に示すように、浄液残渣へのリチウム(Li)のロスを防ぐことができる。
酸浸出残渣は水洗してもよく、水洗後に固液分離してもよい。酸浸出残渣には酸性溶液が付着している場合があり、水洗することでこの酸性溶液の付着量を低減できる。例えば酸性溶液として硫酸を用いた場合は、酸浸出残渣を水洗後固液分離することで酸浸出残渣の硫酸品位を低減できる。この水洗は、例えば、固液分離装置としてフィルタープレスを用いた場合は、フィルタープレス内の酸浸出残渣を含む濾室内に注水することで実施できる。水洗に用いる重量としては、酸浸出残渣1kgに対して水0.1kg以上を通水することが好ましく、水1kg以上を通水することがより好ましい。
<中和工程>
中和工程は、前記酸浸出工程で得られた酸浸出液を水酸化カルシウムで中和する工程である。
中和工程は酸浸出液の中和とリチウム(Li)以外の不純物イオン(例えば、ホウ素イオン、フッ素イオン、硫酸イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、アルミニウムイオン、銅イオンなど)の固化(中和ケーク化)および固液分離による分離を目的とする。
硫酸イオンおよびアルミニウムイオンが含まれる酸浸出液中に水酸化カルシウムを添加すると、中和後液中のホウ素イオン濃度を0.1mg/L未満に低減できることを本発明者は知見した。このメカニズムとしては、硫酸アルミニウムと水酸化カルシウムのエトリンガイト生成反応や浸出液中のリンおよびアンモニアイオン(熱処理により生じた窒化アルミニウム由来と考えられる)と水酸化カルシウムによるヒドロキシアパタイト生成反応によりホウ素が除去されたと考えられる。ホウ素除去のために、アルミニウムイオンを500mg/L以上含むことが好ましく、1,000mg/L以上含むことがより好ましい。このアルミニウムイオン濃度は細粒産物中に含まれるアルミニウム(主に正極集電体由来)を酸浸出時に溶解することで調整できる。また、前記反応により中和後液中のリン濃度を1mg/Lまで低減でき、回収した炭酸リチウム中のリン品位を10ppm未満にできる。
中和工程は複数水準のpHでの中和および多段の固液分離を含んでいてもよい。例えば、一段目の中和をpH9で行った後に一段目の固液分離した液を、再度pH12までpH上昇(二段目の中和)させた後に二段目の固液分離を行ってもよい。
アルカリとしては、少なくとも水酸化カルシウム(Ca(OH);消石灰)を用い、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、アルミン酸カルシウム、リン酸カルシウムなどを2種類以上併用してもよい。前記アルカリの添加前に、硫酸アルミニウム、アルミン酸カルシウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物を添加することにより、アルカリを単独で使用した場合よりも更にホウ素の除去量を低減できる場合がある。アルカリの添加は固体で添加してもよく、スラリー状で添加してもよい。
硫酸イオンとカルシウムイオンが硫酸カルシウムを生成するため、固液分離で硫酸イオンを固体(硫酸カルシウム)として分離できる。
中和後のpHは10.5以上14以下が好ましく、11以上13以下がより好ましい。ここで、溶液のpHは中和工程の終期のpHを意味する。pHが10.5以上14以下であることにより、カルシウムイオンの溶存量を低減できる(後段の炭酸カルシウム晶析工程およびカルシウム吸着除去工程の負荷を低減できる)一方、このカルシウムイオンの低濃度条件にも関わらず酸浸出液中のホウ素を効率的に除去できる。このことに加え、炭酸リチウム晶析工程で添加したCOをCO 2-イオンとして安定的に吸収および溶存できる。また、マンガンイオンを高い除去率で沈殿として除去できる。
中和工程で得られたスラリーを固液分離して得られた液中のリチウム含有量は、細粒産物中に含まれていたリチウム含有量100質量%に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
中和工程で得られたスラリーもしくは該スラリーを固液分離して得られた液のリチウム濃度の調整を目的とし、これらスラリーもしくは液に水を加えてもよい。これらのリチウム(Li)濃度の低減により、リチウム(Li)のロスを防ぐことができる。
<中和ケーク固液分離工程>
中和ケーク固液分離工程は、前記中和工程で得られた中和後液を固液分離する工程である。
固液分離方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濾紙等を用いた吸引濾過、フィルタープレス等を用いた加圧濾過、又は遠心分離機等を用いた遠心分離などにより固液分離する手法が好ましく、これらの中でも、加圧濾過が特に好ましい。加圧濾過を用いることにより、吸引濾過等の他の濾過方法と比べケーク中の含水率を効率的に低減でき、中和ケーク中へのリチウムのロスを低減できる。また、加圧濾過機内の中和ケークに通水することで、中和ケーク中の含水中のリチウムを通水液に回収できる。
<炭酸カルシウム晶析工程>
炭酸カルシウム晶析工程は、前記中和ケーク固液分離工程で得られた液に対してCOを添加する工程である。
前記中和ケーク固液分離工程で得られた液には、カルシウムイオンが100mg/L~1,000mg/L程度含まれる。この溶存したカルシウムと空気中のCOが反応し、炭酸カルシウムが晶析し、この液にカルシウム吸着除去工程を実施した場合、樹脂塔の閉塞や樹脂表面での炭酸カルシウムの付着等に伴うカルシウム吸着除去効率の低下が生じる場合がある。
このため、前記炭酸カルシウム晶析工程では中和ケーク固液分離工程で得られた液に対しCOを添加してカルシウムを炭酸カルシウムとして晶析させ、カルシウムの溶存量を低下させる。
COの添加方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液に対し空気等のCOを含む気体を添加する方法、炭酸ナトリウム等の炭酸塩を添加する方法などが挙げられる。
COを含む気体を添加する方法としては、例えば、単に液を静置した状態でCOを含む気体中に放置する方法、液中にCOを含む気体を散気する方法、液中にCOを含むガスを吹き込みながら攪拌する方法などが挙げられる。
COの添加量は、前記中和ケーク固液分離工程で得られた液のカルシウムイオンに対するモル比で0.1以上、かつリチウムイオンに対するモル比で0.5以下であることが好ましく、カルシウムイオンに対するモル比で0.5以上、かつリチウムイオンに対するモル比で0.25以下であることがより好ましく、カルシウムイオンに対するモル比で0.8以上、かつリチウムイオンに対するモル比で0.1以下であることが特に好ましい。カルシウムイオンに対するモル比で0.1以上のCOを供給することで、カルシウムイオンを炭酸カルシウムとして晶析できる。また、リチウムイオンに対するモル比で0.5以下のCOを供給することで、炭酸カルシウム晶析工程、カルシウム吸着除去工程、第1の濃縮工程および第2の濃縮工程での炭酸リチウムの晶析を防ぐことができる。
<炭酸カルシウム固液分離工程>
炭酸カルシウム固液分離工程は、前記炭酸カルシウム晶析工程で得られた液を固液分離し、炭酸カルシウムを液から除去する工程である。
固液分離方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、濾紙等を用いた吸引濾過、フィルタープレス等を用いた加圧濾過、遠心分離機等を用いた遠心分離などで固液分離する手法が挙げられる。これらの中でも、加圧濾過が特に好ましい。加圧濾過を用いることにより、吸引濾過等の他の濾過方法と比べ中和ケーク中の含水率を効率的に低減でき、中和ケーク中へのリチウムのロスを低減できる。
<第1の濃縮工程>
本発明の有価物の回収方法においては、後述するカルシウム吸着除去工程の前に、炭酸カルシウム晶析工程で得られた液に含まれるリチウムを電気透析により濃縮する第1の濃縮工程を含むことが好ましい。
第1の濃縮工程を含むことにより、例えば、溶液に含まれるリチウム濃度を、炭酸リチウム晶析工程で炭酸リチウムとして容易に晶析可能とする濃度に高めることができる。
第1の濃縮工程では濃縮を電気透析により行うので、蒸発濃縮で行う場合と比べ炭酸リチウムの生産速度を同規模の設備で5倍以上に早めることができる。また、電気透析で回収された希薄液には少量のリチウムが溶存するが、前記リチウムを再度スラリー化工程に用いることで前記リチウムの回収および使用水量の削減が可能となる。
原料液中にカルシウムイオンが含まれる場合、電気透析装置のイオン交換膜にカルシウムイオンが吸着し膜を閉塞させる問題が生じる場合があるが、第1の濃縮工程を炭酸カルシウム分離工程後の液(カルシウムが10mg/L以下に低減された液)に適用することで、前記問題の発生を回避することができる。
電気透析に用いられるイオン交換膜はカルシウムを吸着・保持する場合がある。陽イオン交換膜は膜中に陽イオン交換基が固定されており、対イオンとして液中の陽イオンが吸着と乖離を繰り返しながら通過する。そのため、一定量の陽イオンは電気透析を行ってもイオン交換膜に保持されたままとなる。第1の濃縮工程をカルシウム吸着除去工程の前工程とすることで、このイオン交換膜に保持されたカルシウムイオンがリチウム溶液に混入した場合もカルシウム吸着除去工程でカルシウムイオン濃度を低減し、カルシウム品位が100ppm以下の炭酸リチウムを回収することが可能となる。
<カルシウム吸着除去工程>
カルシウム吸着除去工程は、前記中和工程の後に、キレート樹脂を用いてカルシウムを吸着除去する工程である。
カルシウム吸着除去工程には複数の種類の樹脂塔を用いてもよい。
キレート樹脂と中和後液を接触させることで、中和後液に微量残存するカルシウムイオンをキレート樹脂に吸着させ除去できる。こうすることにより、炭酸リチウム中のカルシウム品位をより低減できる。キレート樹脂は陽イオン交換樹脂と比べ、リチウムからカルシウムをより選択的に分離できる。また、CO 2―イオンを供給せずにCa2+を除去する(カルシウム吸着除去後液を得る)ので、CO 2―イオンがCa吸着除去後液に溶存しない。その結果、炭酸リチウムを析出させずにカルシウム吸着除去後液をリチウム濃度5,000mg/Lを超えて濃縮することが可能となる。これにより、後述する第2の濃縮工程での不具合(例えば、イオン交換膜上への炭酸リチウムの析出又は閉塞)が生じないので、高濃縮倍率が実現できる。また、炭酸リチウム晶析工程前にリチウム濃度を高められるので、炭酸リチウム晶析工程での炭酸リチウムの回収にかかるコストおよび時間を低減できる。また、本発明では中和工程に消石灰を用いており、中和後液中のカルシウム濃度を1,000mg/L以下に抑制できる。更に、炭酸カルシウム晶析工程および炭酸カルシウム固液分離工程により、炭酸カルシウム固液分離工程後の液中のカルシウム濃度を10mg/L以下に抑制できる。このことから中和後液単位量当たりに使用するキレート樹脂量は少量であり、低コストで(経済的に)カルシウム除去が実施できる。
キレート樹脂としては、アミノリン酸基を有するキレート樹脂、又はイミノジ酢酸基を有するキレート樹脂が好ましく、イミノジ酢酸基を有するキレート樹脂が特に好ましい。中和後液中に銅イオンが一部残存する場合があるが、イミノジ酢酸基を有するキレート樹脂を用いることで銅イオンを吸着除去でき、カルシウム吸着除去後液中の銅イオン濃度を0.1mg/L未満とし、回収する炭酸リチウム中の銅品位を10ppm未満とすることができる。
キレート樹脂への通液速度は、SV0.5以上15以下が好ましく、SV1以上10以下がより好ましく、SV2以上5以下が特に好ましい。SV0.5以上15以下とすることで、カルシウム吸着除去後液中のカルシウム濃度を0.1mg/L未満にできる。
<第2の濃縮工程>
本発明の有価物の回収方法においては、前記カルシウム吸着除去工程の後に、カルシウム吸着除去後液に含まれるリチウムを電気透析により濃縮する第2の濃縮工程を含むことが好ましい。
第2の濃縮工程を含むことにより、例えば、溶液に含まれるリチウム濃度を、炭酸リチウム晶析工程で炭酸リチウムとして容易に晶析可能とする濃度に高めることができる。
第2の濃縮工程では濃縮を電気透析により行うので、蒸発濃縮で行う場合と比べ炭酸リチウムの生産速度を同規模の設備で5倍以上に早めることができる。また、電気透析で回収された希薄液には少量のリチウムが溶存するが、前記リチウムを再度スラリー化工程に用いることで前記リチウムの回収および使用水量の削減が可能となる。
第2の濃縮工程を実施する場合は、第2の濃縮工程前に前記カルシウム吸着除去工程で得られた液を一部用いて通液および電気透析し、膜を洗浄することが好ましい。電気透析に用いられるイオン交換膜はカルシウムを吸着・保持する場合がある。陽イオン交換膜は膜中に陽イオン交換基が固定されており、対イオンとして液中の陽イオンが吸着と乖離を繰り返しながら通過する。そのため、一定量の陽イオンは電気透析を行ってもイオン交換膜に保持されたままとなる。前記カルシウム吸着除去工程で得られた液を一部用いて通液および電気透析することで、イオン交換膜中のカルシウムをリチウムに置換できる。この洗浄により、第2の濃縮工程でのイオン交換膜由来のカルシウムの混入を防ぐことができる。
前記洗浄後のカルシウムを含む液は、カルシウム吸着除去工程に戻して処理することができる。
<炭酸リチウム晶析工程>
炭酸リチウム晶析工程では、炭酸リチウムとその他のリチウム塩(例えば、硫酸リチウムおよびフッ化リチウム)の溶解度の差を利用して炭酸リチウムを選択的に晶析させる。
前記カルシウム吸着除去工程後又は前記第2の濃縮工程後のリチウムを含む濃縮液に二酸化炭素(CO)を加えて行う。こうすることにより、リチウムを含む濃縮液中の炭酸リチウムがより析出しやすくなり、他の不純物(例えば、フッ素など)と結合したリチウム(例えば、フッ化リチウム)よりも炭酸リチウムが優先して析出するため、より品位の高い炭酸リチウムを回収することができる。
また、リチウムを含む濃縮液に二酸化炭素を加える手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二酸化炭素を含むガスの吹込みもしくは炭酸塩の添加により行うことができ、炭酸塩の添加が好ましく、炭酸ナトリウムの添加が特に好ましい。
二酸化炭素を供給した後のリチウムを含む濃縮液の炭酸イオン濃度としては、リチウム濃度1に対し炭酸イオン濃度2以上が好ましく、リチウム濃度1に対し炭酸イオン濃度3以上がより好ましく、リチウム濃度1に対し炭酸イオン濃度4以上32.3以下が特に好ましい。リチウム濃度1に対し炭酸イオン濃度が2未満であると、炭酸リチウムに加えて硫酸リチウムの析出量が増加し工業グレード(炭酸リチウム品位99.0%以上)の炭酸リチウムを晶析できないことがある。一方、リチウム濃度1に対し炭酸イオン濃度が32.3を超えると、炭酸イオンを溶解させるために添加した炭酸塩由来の金属が溶存した液を炭酸リチウムが含水し、炭酸リチウム中の炭酸塩由来の金属品位が過剰となることがある。
炭酸リチウム晶析中の液は攪拌し続けることが好ましい。攪拌することにより液の炭酸イオンおよび不純物イオン(例えば、フッ素イオンおよび硫酸イオン)の液中の濃度を均一化でき、また、炭酸リチウムの析出物の粒径を均一化でき、結果として不純物の結晶生成又は液の炭酸リチウム析出物中への巻き込みを低減できるため、炭酸リチウム回収物中の不純物品位を低減できる。
炭酸リチウム晶析時には、あらかじめもしくは晶析中に炭酸リチウムの結晶を添加した状態で晶析工程を開始もしくは継続してもよい。この結晶(種晶)添加により晶析回収される炭酸リチウムの粒度を向上および均質化できるため、結晶の含水分量を低減でき、含水成分由来の不純物品位を更に低減できる。
炭酸リチウム晶析工程は、リチウムを含む濃縮液を加熱しながら行うことが好ましい。リチウムを含む濃縮液を加熱することで炭酸リチウムの溶解度を低下させ、炭酸リチウムの回収量をより増やすことができる。
リチウムを含む濃縮液を加熱する手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電熱式のヒーター、又は加熱蒸気が通過する銅、ステンレス、テフロン(登録商標)等の配管により加熱する手法などが挙げられる。
例えば、リチウムを含む濃縮液を加熱して炭酸リチウムを析出させる際の溶液の温度としては、炭酸リチウムを析出させることが可能な温度であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、60℃以上105℃以下が好ましい。
<<有価物としての炭酸リチウムの回収>>
前記炭酸リチウム晶析工程で得られた炭酸リチウムを含むスラリーを固液分離し、炭酸リチウム(固体)と晶析後液を分離することで炭酸リチウムを回収できる。
固液分離方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濾紙等を用いた吸引濾過、フィルタープレス等を用いた加圧濾過、又は遠心分離機等を用いた遠心分離などにより固液分離する手法が好ましく、これらの中でも、加圧濾過が特に好ましい。加圧濾過を用いることにより、吸引濾過等の他の濾過方法と比べ炭酸リチウム中の含水率を効率的に低減できる。また、加圧濾過機内の炭酸リチウムケークに通水することで、炭酸リチウムケーク中の硫酸イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンを通水液に回収できる。
回収した炭酸リチウムは温水を供給して炭酸リチウムを洗浄(湯洗)することが好ましい。本発明で回収した炭酸リチウム中の硫酸分の混入は結晶(硫酸リチウム)ではなく炭酸リチウムの含水に含まれた硫酸イオンに起因するため、湯洗により除去可能であり、硫酸品位を更に低減できる。また、回収した炭酸リチウムイオン二次電池の構成部材由来のカリウムが含有されるが、このカリウムも湯洗により除去可能である。温水の温度は60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。温水温度が高いほど温水への炭酸リチウムの溶解量を低減でき、温水へのリチウムのロスを低減できる。
前記炭酸リチウムを温水で洗浄することにより、例えば、硫酸品位およびナトリウム品位がいずれも0.5質量%以下であり、かつカリウム品位が50ppm以下の炭酸リチウムが得られる。
炭酸リチウムを回収した後の晶析後液(晶析后液)にはリチウムイオンとフッ素イオンおよび硫酸イオンが含まれるが、これを再度中和工程に繰り返して処理することで、リチウムの回収率を更に向上できる。以上により、リチウムイオン二次電池から、ホウ素品位1ppm未満かつカルシウム品位100ppm以下である炭酸リチウムを回収できる。
<第1の実施形態>
ここで、図面を参照して、本発明の有価物の回収方法における実施形態の一例について説明する。図1は、本発明の有価物の回収方法の第1の実施形態における処理の流れの一例を示す図である。
まず、リチウムイオン二次電池(LIB;Lithium Ion Battery)に対して熱処理(熱処理工程)を行い、LIB熱処理物を得る。
次に、LIB熱処理物に対して、破砕および分級(破砕・分級工程)を行い、粗粒産物と細粒産物とを得る。ここで、粗粒産物として、銅(Cu)又は鉄(Fe)などを分離することができる。
続いて、細粒産物を水に浸けることにより、細粒産物スラリーを得る。
次に、細粒産物スラリーを湿式磁選することにより、磁着物と非磁着物スラリーとに選別する。磁着物にはニッケル(Ni)、コバルト(Co)、コバルトと一体化しているマンガン(Mn)が含まれる。
非磁着物スラリー中には、アルミン酸リチウム、炭素、銅(粗粒産物に回収できなかったもの)およびリチウム(水溶)が含まれる。
次に、非磁着物スラリーに硫酸を添加し非磁着物に含まれるアルミン酸リチウム中のリチウムを酸浸出した後、固液分離することにより、濾液(酸浸出液)と濾過残渣(炭素濃縮物)とに固液分離する。
次に、酸浸出液に水酸化カルシウムを添加して、フィルタープレスによる加圧濾過で固液分離し、リチウムを含む液(中和後液)とホウ素、フッ素、アルミニウム等の不純物を含む固化物に分離する。中和後液に対し炭酸ナトリウムを添加して炭酸カルシウム晶析を行った後、加圧濾過で固液分離する。炭酸カルシウム固液分離後液を電気透析で濃縮してリチウム濃縮液を得る。炭酸カルシウム晶析で除去しきれなかったリチウム濃縮液中の微量のカルシウムイオンをキレート樹脂でカルシウム吸着除去し、カルシウム吸着除去後液を得る。カルシウム吸着除去後液に種晶となる炭酸リチウムを添加し加熱した上で炭酸ナトリウムを添加して、リチウムを炭酸リチウム(LiCO)として晶析させて回収する。
第1の実施形態においては、リチウムイオン二次電池を熱処理し、破砕および分級して得た細粒産物を水に浸して細粒産物スラリーを得る。得られた細粒産物スラリーを湿式磁選し、得られた非磁着物スラリーに硫酸を加えて酸浸出した後、フィルタープレスで加圧濾過して固液分離して中和後液を回収する。得られた中和後液にCOを添加した後に固液分離してカルシウムを炭酸カルシウムとして除去した液を回収し、液中に残る微量のカルシウムイオンをキレート樹脂で吸着除去することによって、リチウムイオン二次電池から、ホウ素品位1ppm未満かつカルシウム品位100ppm以下である炭酸リチウムを回収できる。
<第2の実施形態>
図2は、本発明の有価物の回収方法の第2の実施形態における処理の流れの一例を示す図である。
まず、リチウムイオン二次電池(LIB;Lithium Ion Battery)に対して熱処理(熱処理工程)を行い、LIB熱処理物を得る。
次に、LIB熱処理物に対して、破砕および分級(破砕・分級工程)を行い、粗粒産物と細粒産物とを得る。ここで、粗粒産物として、銅(Cu)又は鉄(Fe)などを分離することができる。
続いて、細粒産物を水に浸けることにより、細粒産物スラリーを得る。
次に、細粒産物スラリーを湿式磁選することにより、磁着物と非磁着物スラリーとに選別する。磁着物にはニッケル(Ni)、コバルト(Co)、コバルトと一体化しているマンガン(Mn)が含まれる。
非磁着物スラリー中には、アルミン酸リチウム、炭素、銅(粗粒産物に回収できなかったもの)およびリチウム(水溶)が含まれる。
次に、非磁着物スラリーに硫酸を添加し非磁着物に含まれるアルミン酸リチウム中のリチウムを酸浸出した後、濾液(酸浸出液)と濾過残渣(炭素濃縮物)とに固液分離する。
次に、酸浸出液に水酸化カルシウムを添加して、フィルタープレスによる加圧濾過で固液分離し、リチウムを含む液(中和後液)とホウ素、フッ素、アルミニウム等の不純物を含む固化物に分離する。中和後液に対し炭酸ナトリウムを添加して炭酸カルシウム晶析を行った後、加圧濾過で固液分離する。炭酸カルシウム晶析で除去しきれなかった微量のカルシウムイオンをキレート樹脂でカルシウム吸着除去し、カルシウム吸着除去後液を得る。得られたカルシウム吸着除去後液を一部用いて通液および電気透析し、電気透析装置のイオン交換膜を洗浄した上で残りのカルシウム吸着除去後液を電気透析で濃縮してリチウム濃縮液を得る。リチウム濃縮液に種晶となる炭酸リチウムを添加し加熱した上で炭酸ナトリウムを添加して、リチウムを炭酸リチウム(LiCO)として晶析させて回収する。
第2の実施形態においては、リチウムイオン二次電池を熱処理し、破砕および分級して得た細粒産物を水に浸して細粒産物スラリーを得る。得られた細粒産物スラリーを湿式磁選し、得られた非磁着物スラリーに硫酸を加えて酸浸出した後、フィルタープレスで加圧濾過して固液分離して中和後液を回収する。得られた中和後液にCOを添加した後に固液分離してカルシウムを炭酸カルシウムとして除去した液を回収し、液中に残る微量のカルシウムイオンをキレート樹脂で吸着除去することによって、リチウムイオン二次電池から、ホウ素品位1ppm未満かつカルシウム品位100ppm以下である炭酸リチウムを回収できる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<熱処理>
外装ケース(筐体)がアルミニウム製(一部の部品に鉄を含む)である車載用リチウムイオン二次電池パック300kg(当該リチウムイオン二次電池は正極集電体がアルミニウム箔であり、負極集電体が銅箔であり、負極活物質が炭素材料であり、電解液はフッ素を含んでいた)に対して、図1の処理フローに示すように、熱処理工程、破砕工程、分級工程、磁選工程および湿式選別工程を行い、有価物を回収した。具体的には以下のとおりである。
前記リチウムイオン二次電池パックに対して、熱処理装置として炉内が円筒型の固定床炉(直径4,300mm×高さ6,500mm)を用いて、熱処理温度800℃(20℃から15分間かけて800℃に昇温後、2時間保持)、大気雰囲気下の条件で、熱処理を行った。熱処理においては、車載用リチウムイオン二次電池パックを、筐体由来のアルミニウムを回収するための受け皿の上に配置し、当該筐体由来のアルミニウムを溶融させて溶融物として、受け皿に回収した。
<破砕および分級>
次いで、破砕工程では、破砕装置として、ハンマークラッシャー(マキノ式スイングハンマークラッシャーHC-20-3.7、槇野産業株式会社製)を用い、50Hz(ハンマー周速38m/s)、出口部分のパンチングメタルの穴径10mmの条件で、熱処理を行ったリチウムイオン二次電池を破砕し、リチウムイオン二次電池の破砕物を得た。
続いて、篩目の目開きが1.2mmの篩(直径200mm、東京スクリーン株式会社製)を用いて、リチウムイオン二次電池の破砕物を篩分けした。篩分け後の1.2mmの篩上(粗粒産物)と篩下(細粒産物)をそれぞれ採取した。なお、リチウムイオン二次電池に含まれるリチウム含有量を100%としたときの、粗粒産物中へのリチウムのロス量は1%であり、99%が細粒産物中に回収できた。
<スラリー化および固液分離>
得られた細粒産物については、前記細粒産物50kgを250Lの水に浸けて、固液比20%、攪拌速度400rpm、浸出時間1時間の条件で、水にリチウムを浸出させて、細粒産物スラリーを得た。
<湿式磁選>
得られた細粒産物スラリーを、ドラム型磁選機(品名:WD L-8ラボモデル、エリーズマグネチックス株式会社製)を用いて、磁力:1500G、ドラム回転数45rpm、固液比20%、スラリー供給速度100L/h/minで湿式磁選を行い、磁着物(含水)と非磁着物スラリー250Lを回収した。磁着物(含水)は濾布(品名:PP934K、中尾フィルター工業株式会社製)を用いたフィルタープレスで0.6MPaの圧力で加圧濾過して磁着物(脱水)を得た。この磁着物(脱水)を乾燥機(品名:DRM620DD、アドバンテック東洋株式会社製)により105℃で24時間乾燥し、磁着物を得た。
<酸浸出>
非磁着物スラリー(250L)に対しては硫酸による酸浸出を行った。容量1,000LのFRP製タンク(製作品、直径1,084mm、高さ1,500mm)中の非磁着物スラリーに75%濃度の希硫酸および水を加えてpHを1.5に調整しながら、攪拌機(品名:スーパーアジテーター、型番:TTF-2V、トヨキ工業株式会社製)を用い攪拌速度200rpmで1時間攪拌してリチウムを浸出した。酸浸出後に浸出スラリーを濾布(品名:PP934K、中尾フィルター工業株式会社製)を用いたフィルタープレスで0.6MPaの圧力で加圧濾過し、リチウムを含む酸浸出液を回収した。酸浸出液中のリチウム濃度は3,400mg/L、硫酸イオン濃度は42,000mg/Lであった。フィルタープレス内の酸浸出残渣(25kg)に水25Lを通水して洗浄後、炭素濃縮物として回収した。フィルタープレス内の酸浸出残渣(30kg)に水30Lを通水して洗浄後、炭素濃縮物として回収した。
<中和>
得られた酸浸出液をFRP製タンク(製作品、直径1,084mm、高さ1,500mm)内に準備した。これを攪拌機(品名:HP-5006、阪和化工機株式会社製)で攪拌した状態でスラリー濃度10%の消石灰スラリーおよび水を添加し、pH11.0に調整しながら1時間中和後、濾布(品名:PP934K、中尾フィルター工業株式会社製)を用いたフィルタープレスで0.6MPaの圧力の加圧濾過で固液分離してホウ素(B)、フッ素(F)、アルミニウム(Al)、およびSOを除去したLi溶液(中和後液)を500L得た。
<炭酸カルシウム晶析>
中和後液中のカルシウムイオン(370mg/L)に対しモル比で2.0、リチウムイオン(2,000mg/L)に対してモル比で0.06の炭酸ナトリウムを添加し、これを攪拌機(品名:スーパーアジテーター、型番:TTF-2V、トヨキ工業株式会社製)を用い攪拌速度200rpmで1時間攪拌後、濾布(品名:PP934K、中尾フィルター工業株式会社製)を用いたフィルタープレスで0.6MPaの圧力の加圧濾過で固液分離して炭酸カルシウムを除去したLi溶液(炭酸カルシウム晶析除去後液)を得た。
<濃縮>
炭酸カルシウム晶析除去後液(500L)を、電気透析装置(品名:AC-10、株式会社アストム製)を用いて5倍に濃縮した(濃縮後液100Lを得た)。
<カルシウム吸着除去>
濃縮後液(Ca濃度8mg/L、100L)をFRP製タンク(製作品、内径1,084mm、高さ1,500mm)に準備し、キレート樹脂塔(品名:スミキレートMC770、住化ケムテックス株式会社製)をSV=5で通水してカルシウム吸着除去後液(Ca濃度0.1mg/L未満(定量下限)、100L)を得た。
<粗炭酸リチウム晶析>
濃縮後液を90℃に加熱した状態で種晶となる炭酸リチウムを晶析量の10質量%分および炭酸ナトリウムを190g/L添加して1時間攪拌した後にフィルタープレスで固液分離し、粗炭酸リチウム晶析物と晶析後液を得た。
<品位および回収率の評価>
細粒産物、磁着物、炭素濃縮物(酸浸出残渣)、および炭酸リチウムの質量は、105℃で1時間乾燥後に電磁式はかり(品名:GX-8K、エー・アンド・デイ株式会社製)を用いて測定した。その後、乾燥後試料を王水(富士フイルム和光純薬株式会社製)に加熱溶解させ、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(品名:iCaP6300、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)により分析を行い、細粒産物、磁着物、炭素濃縮物、および炭酸リチウム中のフッ素以外の各種不純物の含有割合を求めた。
フッ素品位に関しては、JIS K0202:2008に基づきイオンクロマトグラフ法で分析した。
非磁着物スラリーに関しては、非磁着物スラリーを5Cろ紙で吸引ろ過して非磁着物(固体)と液に固液分離した。非磁着物は前記細粒産物、磁着物、炭素濃縮物、および炭酸リチウムの分析方法と同様にして品位を求めた。液は、フッ素以外の成分は直接高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(品名:iCaP6300、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用い、フッ素はイオンクロマトグラフ法により、各種不純物の含有割合(濃度)を求めた。
前記非磁着物中のリチウム品位(mg/kg)×非磁着物質量(kg)+液中のリチウム濃度(mg/L)×液量(L)で、非磁着物スラリー中のリチウムの含有量を求めた。この非磁着物スラリー中のリチウムの含有量を100%としたときの、酸浸出液中のリチウム回収量(酸浸出液中リチウム濃度×酸浸出液量)および炭酸リチウム中のリチウム回収量(炭酸リチウム中のリチウム品位×炭酸リチウム回収質量)の質量比(%)をリチウム回収率とした。
<実施例1の結果>
実施例1における、炭酸リチウムのホウ素品位は1ppm未満、カルシウム品位は44ppm、リン品位は10ppm未満、フッ素品位は100ppm未満、カリウム品位は57ppm、ナトリウム品位は3.5質量%、SO品位は2.0質量%であった。非磁着物スラリー中Li(100%)の酸浸出液中回収率は98%、粗炭酸リチウム中回収率は77%であった。
(実施例2)
<炭酸リチウムの湯洗>
実施例1の粗炭酸リチウム晶析において、フィルタープレス内の粗炭酸リチウム晶析物1に対し90℃の水2を通液して洗浄し、精炭酸リチウムを得た以外は、実施例1と同様の手順で実施し、実施例1と同様にして、炭酸リチウムの品位および回収率を評価した。
<実施例2の結果>
実施例2における、炭酸リチウムのホウ素品位は1ppm未満、カルシウム品位は49ppm、フッ素品位は100ppm未満、リン品位は10ppm未満、カリウム品位は10ppm未満、ナトリウム品位は0.01質量%、SO品位は0.01質量%であった。非磁着物スラリー中Li(100%)の酸浸出液中回収率は98%、精炭酸リチウム中回収率は69%であった。
(実施例3)
<熱処理>
外装ケース(筐体)がアルミニウム製(一部の部品に鉄を含む)である車載用リチウムイオン二次電池パック300kg(当該リチウムイオン二次電池は正極集電体がアルミニウム箔であり、負極集電体が銅箔であり、負極活物質が炭素材料であり、電解液はフッ素を含んでいた)に対して、図1の処理フローに示すように、熱処理工程、破砕工程、分級工程、磁選工程および湿式選別工程を行い、有価物を回収した。具体的には以下のとおりである。
前記リチウムイオン二次電池パックに対して、熱処理装置として炉内が円筒型の固定床炉(直径4,300mm×高さ6,500mm)を用いて、熱処理温度800℃(20℃から15分間かけて800℃に昇温後、2時間保持)、大気雰囲気下の条件で、熱処理を行った。熱処理においては、車載用リチウムイオン二次電池パックを、筐体由来のアルミニウムを回収するための受け皿の上に配置し、当該筐体由来のアルミニウムを溶融させて溶融物として、受け皿に回収した。
<破砕および分級>
次いで、破砕工程では、破砕装置として、ハンマークラッシャー(マキノ式スイングハンマークラッシャーHC-20-3.7、槇野産業株式会社製)を用い、50Hz(ハンマー周速38m/s)、出口部分のパンチングメタルの穴径10mmの条件で、熱処理を行ったリチウムイオン二次電池を破砕し、リチウムイオン二次電池の破砕物を得た。
続いて、篩目の目開きが1.2mmの篩(直径200mm、東京スクリーン株式会社製)を用いて、リチウムイオン二次電池の破砕物を篩分けした。篩分け後の1.2mmの篩上(粗粒産物)と篩下(細粒産物)をそれぞれ採取した。なお、リチウムイオン二次電池に含まれるリチウム含有量を100%としたときの、粗粒産物中へのリチウムのロス量は1%であり、99%が細粒産物中に回収できた。
<スラリー化および固液分離>
得られた細粒産物については、当該細粒産物50kgを250Lの水に浸けて、固液比20%、攪拌速度400rpm、浸出時間1時間の条件で、水にリチウムを浸出させて、細粒産物スラリーを得た。
<湿式磁選>
得られた細粒産物スラリーを、ドラム型磁選機(品名:WD L-8ラボモデル、エリーズマグネチックス株式会社製)を用いて、磁力:1500G、ドラム回転数45rpm、固液比20%、スラリー供給速度100L/h/minで湿式磁選を行い、磁着物(含水)と非磁着物スラリー250Lを回収した。磁着物(含水)は濾布(品名:PP934K、中尾フィルター工業株式会社製)を用いたフィルタープレスで0.6MPaの圧力で加圧濾過して磁着物(脱水)を得た。この磁着物(脱水)を乾燥機(品名:DRM620DD、アドバンテック東洋株式会社製)により105℃で24時間乾燥し、磁着物を得た。
<酸浸出>
非磁着物スラリー(250L)に対しては硫酸による酸浸出を行った。容量1,000LのFRP製タンク(製作品、直径1,084mm、高さ1,500mm)中の非磁着物スラリーに75%濃度の希硫酸および水を加えてpHを1.5に調整しながら、攪拌機(品名:スーパーアジテーター、型番:TTF-2V、トヨキ工業株式会社製)を用い攪拌速度200rpmで1時間攪拌してリチウムを浸出した。酸浸出後に浸出スラリーを濾布(品名:PP934K、中尾フィルター工業株式会社製)を用いたフィルタープレスで0.6MPaの圧力で加圧濾過し、リチウムを含む酸浸出液を回収した。酸浸出液中のリチウム濃度は3,400mg/L、硫酸イオン濃度は42,000mg/Lであった。フィルタープレス内の酸浸出残渣(25kg)に水25Lを通水して洗浄後、炭素濃縮物として回収した。フィルタープレス内の酸浸出残渣(30kg)に水30Lを通水して洗浄後、炭素濃縮物として回収した。
<中和>
得られた酸浸出液をFRP製タンク(製作品、直径1,084mm、高さ1,500mm)内に準備した。これを攪拌機(品名:HP-5006、阪和化工機株式会社製)で攪拌した状態でスラリー濃度10%の消石灰スラリーおよび水を添加し、pH11.0に調整しながら1時間中和後、濾布(品名:PP934K、中尾フィルター工業株式会社製)を用いたフィルタープレスで0.6MPaの圧力の加圧濾過で固液分離してホウ素(B)、フッ素(F)、アルミニウム(Al)、およびSOを除去したLi溶液(中和後液)を500L得た。
<炭酸カルシウム晶析>
中和後液中のカルシウムイオン(370mg/L)に対しモル比で2.0、リチウムイオン(2,000mg/L)に対してモル比で0.06の炭酸ナトリウムを添加し、これを攪拌機(品名:スーパーアジテーター、型番:TTF-2V、トヨキ工業株式会社製)を用い攪拌速度200rpmで1時間攪拌後、濾布(品名:PP934K、中尾フィルター工業株式会社製)を用いたフィルタープレスで0.6MPaの圧力の加圧濾過で固液分離して炭酸カルシウムを除去したリチウム溶液(炭酸カルシウム晶析除去後液)を得た。
<カルシウム吸着除去>
炭酸カルシウム晶析除去後液(Ca濃度4mg/L、500L)をFRP製タンク(製作品、内径1,084mm、高さ1,500mm)に準備し、キレート樹脂塔(品名:スミキレートMC770、住化ケムテックス株式会社製)をSV=5で通水してカルシウム吸着除去後液(Ca濃度0.1mg/L未満(定量下限)、500L)を得た。
<濃縮>
カルシウム吸着除去後液(475L)を、電気透析装置(品名:AC-10、株式会社アストム製)を用いて5倍に濃縮した(濃縮後液95Lを得た)。
<粗炭酸リチウム晶析>
濃縮後液を90℃に加熱した状態で種晶となる炭酸リチウムを晶析量の10質量%分および炭酸ナトリウムを190g/L添加して1時間攪拌した後にフィルタープレスで固液分離し、粗炭酸リチウム晶析物と晶析後液を得た。
<品位および回収率の評価>
細粒産物、磁着物、炭素濃縮物(酸浸出残渣)、および炭酸リチウムの質量は、105℃で1時間乾燥後に電磁式はかり(品名:GX-8K、エー・アンド・デイ株式会社製)を用いて測定した。その後、乾燥後試料を王水(富士フイルム和光純薬株式会社製)に加熱溶解させ、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(品名:iCaP6300、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)により分析を行い、細粒産物、磁着物、炭素濃縮物、および炭酸リチウム中のフッ素以外の各種不純物の含有割合を求めた。
フッ素品位に関しては、JIS K0202:2008に基づきイオンクロマトグラフ法で分析した。
非磁着物スラリーに関しては、非磁着物スラリーを5Cろ紙で吸引ろ過して非磁着物(固体)と液に固液分離した。非磁着物は前記細粒産物、磁着物、炭素濃縮物、および炭酸リチウムの分析方法と同様にして品位を求めた。液は、フッ素以外の成分は直接高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(品名:iCaP6300、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用い、フッ素はイオンクロマトグラフ法により、各種不純物の含有割合(濃度)を求めた。
前記非磁着物中のリチウム品位(mg/kg)×非磁着物質量(kg)+液中のリチウム濃度(mg/L)×液量(L)で、非磁着物スラリー中のリチウムの含有量を求めた。この非磁着物スラリー中のリチウムの含有量を100%としたときの、酸浸出液中のリチウム回収量(酸浸出液中リチウム濃度×酸浸出液量)および炭酸リチウム中のリチウム回収量(炭酸リチウム中のリチウム品位×炭酸リチウム回収質量)の質量比(%)をリチウム回収率とした。
<実施例3の結果>
実施例3における、炭酸リチウムのホウ素品位は1ppm未満、カルシウム品位は97ppm、リン品位は10ppm未満、フッ素品位は100ppm未満、カリウム品位は53ppm、ナトリウム品位は3.5質量%、SO品位は2.0質量%であった。非磁着物スラリー中Li(100%)の酸浸出液中回収率は98%、粗炭酸リチウム中回収率は77%であった。
(実施例4)
<電気透析装置のイオン交換膜の洗浄>
実施例3において、カルシウム吸着除去工程後および濃縮工程の前に、電気透析装置(品名:AC-10、株式会社アストム製)の濃縮液タンクおよび希薄液タンクにカルシウム吸着除去後液を10Lおよび15L加え、30分間電気透析を行った。電気透析装置のイオン交換膜中のカルシウムイオンとカルシウム吸着後液中のリチウムを交換してイオン交換膜を洗浄した以外は、実施例3と同様の手順で実施し、実施例1と同様にして、炭酸リチウムの品位および回収率を評価した。
<実施例4の結果>
実施例4における、炭酸リチウムのホウ素品位は1ppm未満、カルシウム品位は51ppm、リン品位は10ppm未満、フッ素品位は100ppm未満、カリウム品位は52ppm、ナトリウム品位は3.5質量%、SO品位は2.0質量%であった。非磁着物スラリー中Li(100%)の酸浸出液中回収率は98%、粗炭酸リチウム中回収率は74%であった。
(実施例5)
<炭酸リチウムの湯洗>
実施例4の粗炭酸リチウム晶析において、フィルタープレス内の粗炭酸リチウム晶析物1に対し90℃の水2を通液して洗浄し、精炭酸リチウムを得た以外は、実施例4と同様の手順で実施し、実施例1と同様にして、炭酸リチウムの品位および回収率を評価した。
<実施例5の結果>
実施例5における、炭酸リチウムのホウ素品位は1ppm未満、カルシウム品位は53ppm、フッ素品位は100ppm未満、リン品位は10ppm未満、カリウム品位は10ppm未満、ナトリウム品位は0.01質量%、SO品位は0.01質量%であった。非磁着物スラリー中Li(100%)の酸浸出液中回収率は98%、精炭酸リチウム中回収率は65%であった。
(比較例1)
実施例1において、酸浸出に塩酸を用いた以外は、実施例1と同様の手順で実施し、実施例1と同様にして、炭酸リチウムの品位および回収率を評価した。
<比較例1の結果>
比較例1における、炭酸リチウムのホウ素品位は4ppm、カルシウム品位は60ppm、フッ素品位は100ppm未満、カリウム品位は67ppm、ナトリウム品位は3.5質量%、SO品位は0.01質量%であった。非磁着物スラリー中Li(100%)の酸浸出液中回収率は98%、粗炭酸リチウム中回収率は85%であった。
(比較例2)
実施例1において、酸浸出時のpHを4とした以外は、実施例1と同様の手順で実施し、実施例1と同様にして、炭酸リチウムの品位および回収率を評価した。
<比較例2の結果>
比較例2における、炭酸リチウムのホウ素品位は3ppm、カルシウム品位は58ppm、カリウム品位は62ppmであった。非磁着物スラリー中Li(100%)の酸浸出液中回収率は29%、粗炭酸リチウム中回収率は11%であった。
(比較例3)
実施例1において、水酸化ナトリウムを用いて中和工程を行った以外は、実施例1と同様の手順で実施し、実施例1と同様にして、炭酸リチウムの品位および回収率を評価した。
<比較例3の結果>
比較例3における、炭酸リチウムのホウ素品位は6ppm、カルシウム品位は57ppm、カリウム品位は64ppm、フッ素品位は8,200ppmであった。非磁着物スラリー中Li(100%)の酸浸出液中回収率は98%、粗炭酸リチウム中回収率は86%であった。
(比較例4)
実施例1において、キレート樹脂に代えて陽イオン交換樹脂塔(品名:デュオライトC20SC、住化ケムテックス株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で実施し、実施例1と同様にして、炭酸リチウムの品位および回収率を評価した。
<比較例4の結果>
比較例4における、炭酸リチウムのホウ素品位は1ppm未満、カルシウム品位は660ppm、フッ素品位は100ppm未満、カリウム品位は59ppmであった。非磁着物スラリー中Li(100%)の酸浸出液中回収率は98%、粗炭酸リチウム中回収率は45%であった。
(比較例5)
実施例1において、炭酸カルシウム晶析工程を行わなかった以外は、実施例1と同様の手順で実施し、実施例1と同様にして、炭酸リチウムの品位および回収率を評価した。
<比較例5の結果>
比較例5における、炭酸リチウムのホウ素品位は1ppm未満、カルシウム品位は162ppm、フッ素品位は100ppm未満、カリウム品位は55ppmであった。非磁着物スラリー中Li(100%)の酸浸出液中回収率は98%、粗炭酸リチウム中回収率は77%であった。

Claims (8)

  1. リチウムイオン二次電池からホウ素品位1ppm未満かつカルシウム品位100ppm以下である炭酸リチウムを回収する有価物の回収方法であって、
    前記リチウムイオン二次電池を660℃以上の温度で熱処理することにより、熱処理物を得る熱処理工程と、
    前記熱処理物を破砕した破砕物を分級することにより、前記有価物を含む、粗粒産物と細粒産物とを得る破砕・分級工程と、
    前記細粒産物を水に浸けることにより細粒産物スラリーとするスラリー化工程と、
    前記細粒産物スラリーを湿式磁選することにより、磁着物と非磁着物スラリーとに選別する湿式磁選工程と、
    前記非磁着物スラリーおよび/又は前記非磁着物スラリーを固液分離して得た非磁着物に硫酸を添加し、pHを0以上3.5以下として非磁着物を浸出した後に固液分離して酸浸出液と酸浸出残渣を得る酸浸出工程と、
    前記酸浸出液を水酸化カルシウムで中和する中和工程と、
    前記中和工程で得られた液を固液分離する中和ケーク固液分離工程と、
    前記中和ケーク固液分離工程で得られた液に対してCOを添加する炭酸カルシウム晶析工程と、
    前記炭酸カルシウム晶析工程で得られた液を固液分離する炭酸カルシウム固液分離工程と、
    前記炭酸カルシウム固液分離工程後に、キレート樹脂によりカルシウムを吸着除去するカルシウム吸着除去工程と、
    を含み、
    前記炭酸カルシウム晶析工程におけるCOの添加量が、前記中和ケーク固液分離工程で得られた液のリチウムイオンに対するモル比で0.5以下であることを特徴とする有価物の回収方法。
  2. 前記炭酸カルシウム晶析工程におけるCOの添加量が、前記中和ケーク固液分離工程で得られた液のカルシウムイオンに対するモル比で0.1以上、かつリチウムイオンに対するモル比で0.25以下である、請求項1に記載の有価物の回収方法。
  3. 前記キレート樹脂がイミノジ酢酸基を有するキレート樹脂である、請求項1から2のいずれかに記載の有価物の回収方法。
  4. 前記炭酸カルシウム晶析工程後に、炭酸カルシウム晶析工程で得られた液に含まれるリチウムを電気透析により濃縮する第1の濃縮工程を含む、請求項1に記載の有価物の回収方法。
  5. 前記カルシウム吸着除去工程後に、カルシウム吸着除去後液に含まれるリチウムを電気透析により濃縮する第2の濃縮工程を含む、請求項1に記載の有価物の回収方法。
  6. 前記第1又は第2の濃縮工程後の濃縮液に炭酸を添加して炭酸リチウムを晶析する炭酸リチウム晶析工程を含む、請求項4から5のいずれかに記載の有価物の回収方法。
  7. 前記炭酸リチウムを温水で洗浄して硫酸品位およびナトリウム品位がいずれも0.5質量%以下である炭酸リチウムを得る、請求項6に記載の有価物の回収方法。
  8. 前記炭酸リチウムのカリウム品位が50ppm以下である、請求項1から2のいずれかに記載の有価物の回収方法。
JP2022204158A 2022-01-20 2022-12-21 有価物の回収方法 Active JP7443483B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2023/000880 WO2023140198A1 (ja) 2022-01-20 2023-01-13 有価物の回収方法
TW112101774A TW202334445A (zh) 2022-01-20 2023-01-16 有價物的回收方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022007276 2022-01-20
JP2022007276 2022-01-20

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2023106309A JP2023106309A (ja) 2023-08-01
JP7443483B2 true JP7443483B2 (ja) 2024-03-05

Family

ID=87473264

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022204158A Active JP7443483B2 (ja) 2022-01-20 2022-12-21 有価物の回収方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7443483B2 (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009270189A (ja) 2008-05-07 2009-11-19 Kee:Kk 高純度水酸化リチウムの製法
JP2021147706A (ja) 2020-03-13 2021-09-27 Dowaエコシステム株式会社 有価物の回収方法
JP2021172537A (ja) 2020-04-21 2021-11-01 Jx金属株式会社 水酸化リチウムの製造方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
PH31603A (en) * 1994-03-22 1998-11-03 Goro Nickels S A Process for the extraction and separation of nickel and/or cobalt.

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009270189A (ja) 2008-05-07 2009-11-19 Kee:Kk 高純度水酸化リチウムの製法
JP2021147706A (ja) 2020-03-13 2021-09-27 Dowaエコシステム株式会社 有価物の回収方法
JP2021172537A (ja) 2020-04-21 2021-11-01 Jx金属株式会社 水酸化リチウムの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2023106309A (ja) 2023-08-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6948481B2 (ja) 有価物の回収方法
WO2021182451A1 (ja) 有価物の回収方法
JP6748274B2 (ja) リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法
WO2021090571A1 (ja) リチウムの分離方法
US11482737B2 (en) Method for recovering valuable material from lithium ion secondary battery
US20230119544A1 (en) Method for concentrating valuable metal contained in lithium ion secondary battery
WO2013124399A1 (en) Metal ion recovery from battery waste using ammonia
WO2012025568A2 (en) Metal ion recovery from battery waste
JP6676124B1 (ja) リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法
JP6869444B1 (ja) リチウムの分離方法
JP7443483B2 (ja) 有価物の回収方法
WO2023140198A1 (ja) 有価物の回収方法
WO2021182452A1 (ja) リチウムの回収方法及びリチウムイオン二次電池の処理方法
WO2024014144A1 (ja) リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法
JP7403946B2 (ja) 精製リチウム化合物の製造方法及びリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法
EP3832781A1 (en) Method for recovering valuable material from lithium ion secondary battery
WO2024090313A1 (ja) リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法
WO2023243385A1 (ja) 再生正極材およびその製造方法、ならびに再生正極材の使用方法、再生正極、およびリチウムイオン二次電池
WO2022249615A1 (ja) 有価物の選別方法
JP2022164547A (ja) リチウムイオン二次電池からのリチウムの回収方法
US20240243381A1 (en) Method of separating valuable materials
JP2023183355A (ja) 再生正極材およびその製造方法、ならびに再生正極材の使用方法、再生正極、およびリチウムイオン二次電池
WO2024097221A1 (en) Lithium recovery

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221227

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20221227

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230404

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230529

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230829

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20231026

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240123

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240221

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7443483

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150