JP7439651B2 - 積層フィルム - Google Patents

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本発明は、布や不織布のように表面に凹凸を有する材料に対する密着性、ハンドリング性、および触感に優れる積層フィルムに関する。
近年、フィルムとして用いるために必要な機械特性を備えつつ、さらに別の機能を有する単体のフィルムが要求されている。例えば、医療・衛生材料の分野では、フィルムとしての機械特性を備え、かつ表面の凹凸形状、伸縮性、および柔軟性を有する、布や不織布のような材料(以下、布等ということがある。)に対する密着性、ハンドリング性、および触感に優れるフィルムが望まれている。
これまでに、これらの特性を向上させるために種々の開発がなされており、例えば特許文献1には、粘着性を有する樹脂層に、その層厚みよりも粒径の大きな充填剤を分散含有させたフィルムが開示されている。このような態様とすることにより、充填剤が表面に突出するため、製造ライン等においてロール等への接着を軽減でき、フィルムのハンドリング性が向上する。また、特許文献2には、粒子と粘着性を有する樹脂で表面が形成されたフィルムが開示されている。このような態様とすることにより、表面に触れた際に、粒子により粘着層と肌との接触が抑えられるため、フィルムの触感が向上する。
特開平8-319465号公報 特開2019-31596号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、布等に対する密着性とハンドリング性との両立はできるものの、最表面が粘着層となって触感が低下する課題があった。また、特許文献2の技術では、布等に対する密着性と触感は良好であるものの、平坦物への密着性が強く、ハンドリング性に課題があった。
本発明は、係る従来技術の欠点を改良し、フィルムとして用いるために必要な機械特性を備え、布等に対する密着性、ハンドリング性、および触感に優れる積層フィルムを提供することを、その課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、下記の構成からなる。
(1) 両面で布に対する剥離強度が異なる積層フィルムであって、布に対する剥離強度が相対的に大きい面側の最外層をA層、高さが20μm以上である凸部を凸部Xとしたときに、A層の表面に凸部Xを有し、A層の表面全体に占める凸部Xの面積率が2%以上25%以下であり、A層の表面が樹脂と粒子で形成されており、A層の表面全体に占める粒子の面積率が5%以上35%以下であり、かつ、A層が粒子を含むことを特徴とする、積層フィルム。
(2) 布に対する前記A層の剥離強度が0.05N/cm以上0.40N/cm以下であり、かつ前記A層の静摩擦係数が0.5以上2.5以下であることを特徴とする、(1)に記載の積層フィルム。
(3) ポリエチレンテレフタレートフィルムに対する前記A層の剥離強度が0.01N/cm以上0.40N/cm以下であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の積層フィルム。
(4) ヤング率の最大値が0.05MPa以上2.00MPa以下であることを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載の積層フィルム。
(5) ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、および石油系樹脂を粘着性樹脂としたときに、前記A層が、少なくとも一種の粘着性樹脂を含むことを特徴とする、(1)~(4)のいずれかに記載の積層フィルム。
(6) 前記A層と反対側の最外層をB層としたときに、前記A層が、前記B層よりも多く前記粘着性樹脂を含むことを特徴とする、(1)~(5)のいずれかに記載の積層フィルム。
(7) 前記A層中の粒子の平均粒径が、前記A層の厚みよりも大きいことを特徴とする、(1)~(6)のいずれかに記載の積層フィルム。
本発明により、フィルムとして用いるために必要な機械特性を備え、かつ、布等に対する密着性、ハンドリング性、および触感に優れる積層フィルムを提供することができる。
ヤング率の測定方向を示す模式図である。 本発明の一実施態様に係る積層フィルムをA層側から観察したときの拡大上面図である。 図2の積層フィルムのI-I’断面図である。 図2とは異なる本発明の一実施態様に係る積層フィルムをA層側から観察したときの拡大上面図である。 図4の積層フィルムのI-I’断面図である。
本発明の積層フィルムは、両面で布に対する剥離強度が異なる積層フィルムであって、布に対する剥離強度が相対的に大きい面側の最外層をA層、高さが20μm以上である凸部を凸部Xとしたときに、A層の表面に凸部Xを有し、A層の表面全体に占める凸部Xの面積率が2%以上25%以下であり、A層の表面が樹脂と粒子で形成されており、A層の表面全体に占める粒子の面積率が5%以上35%以下であり、かつ、A層が粒子を含むことを特徴とする。フィルムとは、熱可塑性樹脂を主成分とするシート状の成型体をいい、積層フィルムとは、組成が異なる複数の層を有するフィルムをいう。なお、ここで「熱可塑性樹脂を主成分とする」とはフィルムを構成する全成分中、熱可塑性樹脂を50質量%より多く含むことをいう。
(積層フィルムの構成)
本発明の積層フィルムは、両面で布に対する剥離強度が異なることが重要である。「両面で布に対する剥離強度が異なる」とは、布に対する剥離強度が相対的に大きな面における布に対する剥離強度と、その反対側の面における布に対する剥離強度との差が、0.05N/cm以上であることをいう。このとき、布に対する剥離強度が相対的に大きな面側の最外層をA層、その反対側の最外層をB層とする。
布に対する剥離強度は、以下の手順により測定することができる。先ず、10mm×100mmの長方形状のフィルムサンプルを取得し、得られたフィルムサンプルをJIS L 0803:2011に準拠したポリエステル製の白布(以下、単に布ということがある。)上に置いて、2kg荷重のラミネートローラーを1往復させて両者を密着させる。その後、引張速度300mm/分で短辺側からフィルムサンプルを剥がし、JIS Z 0237:2009に規定する方法で布に対する剥離強度を測定する。
積層フィルムを「両面で布に対する剥離強度が異なる」態様とする方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、任意に選択した一方の最外層と他方の最外層とを、互いに組成の異なるものとする方法が挙げられる。より具体的には、任意に選択した一方の最外層における粘着性樹脂(後述)の含有量と、他方の最外層における粘着性樹脂の含有量とが異なる態様とする方法である。このような態様においては通常、粘着性樹脂の含有量の多い最外層側の表面が「布に対する剥離強度が相対的に大きい面」となり、粘着性樹脂の含有量の多い最外層がA層、その反対側の最外層がB層となる。このとき、A層における粘着性樹脂の含有量とB層における粘着性樹脂の含有量との差を大きくすることにより、両面の布に対する剥離強度の差を大きくすることができる。なお、A層における粘着性樹脂の含有量とは、A層の全構成成分を100質量%としたときの粘着性樹脂の含有量(質量%)をいい、B層における粘着性樹脂の含有量も同様に解釈する。
本発明の積層フィルムにおいては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、および石油系樹脂を粘着性樹脂とする。このような粘着性樹脂は、高分子材料に配合されると可塑化作用により粘着性を発現する。そのため、A層が、B層よりも多く粘着性樹脂を含むことにより、A層と布等との密着性が向上する。「A層が、B層よりも多く粘着性樹脂を含む」とは、A層における粘着性樹脂の含有量(質量%)がB層における粘着性樹脂の含有量(質量%)よりも大きいことをいう。
ロジン系樹脂とは、ロジン酸(アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸等)を主成分とする樹脂をいう。本発明のフィルムに用いることができるロジン系樹脂は、例えば、マツ科の植物の樹液である松脂等のバルサム類を集めてテレピン精油を蒸留した後に残る残留物として得ることができる。ロジン系樹脂の具体的としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン、およびこれらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合、その他の化学的修飾等により変性させた変性ロジン等が挙げられる。
石油系樹脂とは、ナフサ分解の副生油の一部(不飽和性の高いジエン類等)を重合して樹脂状としたものをいう。本発明のフィルムに用いることができる石油系樹脂としては、例えば、脂肪族系石油系樹脂、芳香族系石油系樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油系樹脂、およびこれらの水素添加物等が挙げられる。
テルペン系樹脂とは、テルペンモノマーの重合体、テルペンモノマーと他のモノマーの共重合体、およびこれらの誘導体をいう。テルペン系樹脂としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、およびジペンテン重合体等の他、テルペンフェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、および水素添加テルペン樹脂等の変性テルペン樹脂等が挙げられる。
A層における粘着性樹脂の含有量は、A層を構成する樹脂成分全体を100質量%としたときに、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。A層における粘着性樹脂の含有量が、A層を構成する樹脂成分全体を100質量%としたときに10質量%以上であることにより、フィルムは布等との密着性に優れたものとなる。一方、A層を構成する樹脂成分全体を100質量%としたときに50質量%以下であることにより、後述するフィルムの製造時の加工が容易となる。なお、本発明の効果を損なわない限り、A層における粘着性樹脂は複数種としてもよく、このような場合における粘着性樹脂の含有量は、該当する全成分を合算して算出するものとする。
本発明の積層フィルムにおけるA層は、布等に対する密着性および生産性の観点から、熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。熱可塑性エラストマーとは、ハードセグメント相とソフトセグメント相を有することにより、25℃でゴム弾性を有する一方で、一般的な熱可塑性の成形温度領域である100℃~300℃の温度領域ではハードセグメント相に流動性が発現することにより、一般の熱可塑性樹脂と同様の成形加工が可能となる高分子量体のことを指す。A層に用いることができる熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、およびポリアクリル系エラストマーなどを単独で又は複数組み合わせて用いることができる。中でも、得られるフィルムの布等に対する密着性の観点から、スチレン系エラストマーを用いることが好ましい。
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレンプロピレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体、およびスチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
本発明の積層フィルムは、A層が、B層よりも多く粘着性樹脂を含むことが好ましい。ここで、「A層が、B層よりも多く前記粘着性樹脂を含む」とは、A層を構成する樹脂成分全体を100質量%としたときのA層における粘着性樹脂の含有量(質量%)が、B層を構成する樹脂成分全体を100質量%としたときのB層における粘着性樹脂の含有量(質量%)よりも大きいことを意味する。このとき、B層は必ずしも粘着性樹脂を含まなくてもよい。粘着性樹脂は、布等への粘着性を向上させることができる反面、後述するB層において用いることができる樹脂に比べて機械強度の面で劣る。そのため、このような態様とすることにより、フィルムの機械特性と布等との密着性を容易に両立することができる。このとき、A層とB層との間には、本発明の効果を損なわない範囲で別の層が存在していてもよい。
本発明の積層フィルムにおけるB層は、積層フィルムの機械特性を維持しつつ柔軟性を向上させる観点から、ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることが好ましい。ここでポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類の単独重合体、又は異種ポリオレフィンとの共重合体をいい、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするとは、B層を構成する樹脂成分全体を100質量%としたときに、B層中にポリオレフィン系樹脂が50質量%より多く含まれることをいう。
オレフィン類の単独重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。異種ポリオレフィンとの共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体などが挙げられる。中でも、得られるフィルムのヤング率を容易に後述する好ましい範囲とする観点から、本発明のフィルムにおけるB層は、ポリエチレンを主成分とすることが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリオレフィン系樹脂やその他の樹脂を複数組み合わせて用いてもよい。
B層は、その効果を損なわない限り充填剤を含んでもよい。充填剤とは、諸性質を改善するために加えられる物質、あるいは増量、増容、又は製品のコスト低減などを目的として添加する不活性物質をいう。充填剤の種類は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、無機の充填剤および/又は有機の充填剤を使用することができる。また、本発明の効果を損なわない限り、充填剤は1種類であっても複数種類を混合したものであってもよい。得られるフィルムのヤング率を容易に後述する好ましい範囲とする観点から、充填剤は無機充填剤であることが好ましく、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの金属硫酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、酸化ケイ素(シリカ)、アルミノシリケート、マイカ、タルク、カオリン、クレー、およびモンモリロナイト等の複合酸化物のうち少なくとも1種類を用いることがより好ましく、汎用性やコストの観点から、炭酸カルシウムを単独で又は他の充填剤と組み合わせて用いることがさらに好ましい。
B層における充填剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、得られるフィルムのヤング率を容易に後述する好ましい範囲とする観点から、基材層の樹脂成分全体を100質量部としたときに、5質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上150質量部以下であることがより好ましい。また、B層は、本発明の効果を損なわない範囲で前述した成分以外の成分を含有してもよい。このような成分としては、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線安定化剤、艶消し剤、抗菌剤、消臭剤、耐候剤、抗酸化剤、イオン交換剤、着色顔料、および染料等が挙げられる。
(凸部X)
本発明の積層フィルムは高さが20μm以上である凸部を凸部Xとしたときに、A層の表面に凸部Xを有し、A層の表面全体に占める凸部Xの面積率が2%以上25%以下であることが重要である。このような形態とすることにより、平坦なフィルムや凹凸を有さない材料(以下、平坦物ということがある。)へA層を接触させた際に、A層表面の凸形状により両者の接触面積を小さくすることができる。その結果、積層フィルムのA層は平坦物への粘着性が低いものとなり、積層フィルムのハンドリング性が向上する。一方で、布等に対する密着性については、積層フィルムA層の表面の凸部Xが布等の凹凸形状とかみ合うため、平坦物への密着性ほど低下しない。
A層の表面全体に占める凸部Xの面積率を2%以上とすることで、平坦部への密着性を低減することができる。一方、A層の表面全体に占める凸部Xの面積率を25%以下とすることで、凸部Xの量が過剰とならず布等への密着性が良好となる。上記観点から、A層の表面全体に占める凸部Xの面積率の好ましい範囲は10%以上20%以下である。A層の表面全体に占める凸部Xの面積率を好ましい範囲とする方法としては、後述するA層の表面全体に占める粒子の面積率を調節する方法や、A層中に含有させる粒子の量を調節する方法がある。より具体的には、A層の表面全体に占める粒子の面積率を高くすることや、A層中に含有させる粒子の量を増やすことにより、A層の表面全体に占める凸部Xの面積率を高くすることができる。
次に、表面全体に占める凸部Xの面積率の測定方法について説明する。先ず、積層フィルムの測定対象とする表面をスパッタにより金属コーティングし、表面形状測定機能を有するレーザー電子顕微鏡により、金属コーティングされた表面の任意の位置を観察する。得られた画像の高さ方向の位置データを1μm毎に取得したときに、その分布が最も多い位置をベース面とし、ベース面を基準として20μm以上の高さを有する部分を凸部Xとする。得られた画像の凸部Xそれぞれについて、凸部Xを完全に囲みかつ面積が最も小さくなるように正方形又は長方形を描いて、正方形の場合は1辺の長さを2乗した値、長方形の場合は長辺と短辺の長さの平均値を2乗した値を凸部Xの面積とし、その総和を求める。次いで、凸部Xの面積の総和を観察画像面積で割った値を百分率で表した値を視野における凸部Xの占有面積率とする。この測定を、観察位置を変えて10回行い、凸部Xの占有面積率の平均値を求め、これを表面全体に占める凸部Xの面積率(%)とする。
本発明の積層フィルムは、A層の布等に対する密着性と触感とを両立する観点から、A層の表面が樹脂と粒子で形成されており、A層の表面全体に占める粒子の面積率が5%以上35%以下であることが重要である。ここで、「A層の表面が樹脂と粒子によって形成されている」とは、A層において、フィルム面積に占める樹脂部分と粒子部分の合計面積が90%以上100%以下であることをいう。A層の表面全体に占める粒子の面積率を5%以上とすることにより、粒子による突起の存在によって指でA層に触れたときに樹脂と指との接触が妨げられるため樹脂によるべたつきが抑えられ、触感が向上する。一方、A層の表面全体に占める粒子の面積率を35%以下とすることにより、樹脂による粘着性が保たれ、布等に対する密着性を発現することができる。上記観点から、A層の表面全体に占める粒子の面積率の好ましい範囲は6%以上30%以下であり、より好ましくは15%以上30%以下である。
A層の表面を樹脂と粒子によって形成する方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、搬送中の積層フィルムの上に粒子を自由落下又はエアースプレーすることにより、表面に粒子を付着させる方法が挙げられる。別の方法として、粒子を除く粘着層を得るための成分を溶媒に溶かし、これに粒子を添加して、予め作製したフィルムに塗布して溶媒を除去する方法等も挙げられる。
また、A層の表面全体に占める粒子の面積率を好ましい範囲とするための方法としては、例えば、搬送中の積層フィルムの上に粒子を自由落下又はエアースプレーする方法においては、積層フィルムの搬送速度や単位時間当たりに自由落下させる又は噴き付ける粒子の量を調節する方法が挙げられる。また、粒子を除く粘着層を得るための成分を溶媒に溶かし、これに粒子を添加して、予め作製したフィルムに塗布して溶媒を除去する方法においては、溶液に含有させる粒子の量を調整する方法や溶液の粘度を調整する方法が挙げられる。
前者の方法を用いる場合、より具体的には、単位時間当たりに自由落下させる又は噴き付ける粒子の量を一定に保ちつつ積層フィルムの搬送速度を遅くすることや、積層フィルムの搬送速度を一定に保ちつつ単位時間当たりに自由落下させる又は噴き付ける粒子の量を多くすることにより、A層の表面全体に占める粒子の面積率を大きくすることができる。後者の方法を用いる場合、より具体的には、添加する粒子の量を増やすことや、溶液の粘度を下げることにより、A層の表面全体に占める粒子の面積率を大きくすることができる。
A層の表面全体に占める粒子の面積率は、以下のようにして求めることができる。先ず、走査型電子顕微鏡で、観察視野に粒子が5個以上20個以下含まれる倍率でA層の表面を観察し、観察視野内の粒子の個数を数える。次いで、得られた粒子の個数と粒子の平均粒径から算出した粒子面積(粒子半径の2乗と円周率との積)を求め、これを観察視野に占める粒子の面積とする。得られた粒子の面積を観察視野全体の面積で除して得られる値を百分率で表し、これを表面に占める粒子の面積の割合とする。観察位置を変えて同様の測定を10回行い、その平均値をA層の表面全体に占める粒子の面積率とする。
なお、ここでいう粒子の平均粒径および粒子半径は以下の方法で測定する。先ず、走査型電子顕微鏡を用いて、A層の表面を10個の粒子が観察できる倍率で観察し、観察された各粒子ついて、粒子を完全に囲み、かつ面積が最も小さくなるように正方形又は長方形を描いて、正方形の場合は1辺の長さ、長方形の場合は長辺と短辺の長さの平均値を該粒子の粒子径とする。次いで、得られた粒子径の平均値を求め、これを粒子の平均粒径とし、平均粒径を2で除した値を粒子半径とする。このとき、走査型電子顕微鏡の仕様により「10個の粒子が観察できる倍率」への調整が不可能な場合は、少なくとも10個の粒子が観察できる最も低い倍率で観察し、視野の中央に近いものから10個の粒子を選定することができる。
A層の表面を形成する粒子の平均粒径は、A層の布等に対する密着性と触感とを両立する観点から、8μm以上160μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以上80μm以下である。A層の表面を形成する粒子の平均粒径を8μm以上とすることで、粒子による突起の存在によって指でA層に触れたときに樹脂と指との接触が妨げられて触感が向上する。一方、最表面に占める粒子の面積を160μm以下とすることにより、樹脂による粘着性が保たれ、布等に対する密着性を良好とすることができる。
A層の表面を形成する粒子としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されるものではなく、無機粒子、有機粒子のいずれでもよく、また、有機粒子と無機粒子を組み合わせても、複数種類の無機粒子や複数種類の有機粒子を組み合わせてもよい。無機粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、および酸化チタン等が挙げられる。また、本発明のフィルムに用いることができる有機粒子としては、ポリエチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、およびエポキシ樹脂等が挙げられる。
粒子の形状に関しても、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、球状、塊状、棒状、および扁平状等のいずれであってもよく、必要に応じて異なる形状のものを併用することもできる。
本発明の積層フィルムにおいては、A層が粒子を含むことが重要である。A層が粒子を含むことにより、A層の表面に凸部Xを形成することが可能となり、フィルムのハンドリング性が向上する。A層中の粒子の平均粒径は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、製膜安定性の観点から、20μm以上80μm以下であることが好ましく、40μm以上80μm以下であることがより好ましい。A層中の粒子の平均粒径が20μm以上であれば、A層の表面に高さが20μm以上の凸部を容易に形成することができる。一方、A層中の粒子の平均粒径が80μm以下であれば、フィルムの製膜がより安定する。
さらに、A層の表面に凸部Xを容易に形成する観点から、A層中の粒子の平均粒径が、A層の厚みよりも大きいことが好ましい。ここで、A層の厚みは以下の手順により定めることができる。先ず、ミクロトームを用いてナイフ傾斜角度3°でフィルム面に垂直な方向(以下、厚み方向ということがある。)にフィルムを切断する。次いで、走査型電子顕微鏡を用いてA層の断面を観察し、粒子が存在しない箇所において走査型電子顕微鏡の測長機能でA層の厚みを測定する。サンプリング位置を変えて同様の測定を10回行い、得られた10箇所の厚みの平均値をA層の厚みとする。
また、A層中の粒子の平均粒径は、以下の手順により定めることができる。先ず、表面が樹脂である凸部Xを、その頂点を含むように、ミクロトームを用いてナイフ傾斜角度3°で厚み方向と平行に切断する。次いで、走査型電子顕微鏡を用いて凸部Xの断面を観察し、A層中の最も大きな粒子について粒子を完全に囲みかつ面積が最も小さくなるように正方形又は長方形を描いて、正方形の場合は1辺の長さ、長方形の場合は長辺と短辺の長さの平均値を該粒子の粒子径とする。サンプリング位置を変えて同様の測定を10回行い、得られた10個の粒子の粒子径より求めた平均値をA層中の粒子の平均粒径とする。なお、A層中の粒子が2個以上凝集している場合は、凝集体全体を完全に囲みかつ面積が最も小さくなるように正方形又は長方形を描いて、同様に粒子径を求めることとする。
A層に含まれる粒子は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されるものではなく、無機粒子、有機粒子のいずれでもよく、また、有機粒子と無機粒子を組み合わせても、複数種類の無機粒子や複数種類の有機粒子を組み合わせてもよい。A層に含まれる粒子として用いることができる有機粒子や無機粒子は、前述したA層の表面を形成する粒子と同様のものを好適に用いることができ、形状についても同様である。このとき、A層の表面を形成する粒子とA層に含まれる粒子は、本発明の効果を損なわない限り、成分や平均粒径が同じものであっても互いに異なるものであってもよい。
(布に対するA層の剥離強度と静摩擦係数)
本発明の積層フィルムは、布に対する密着性、ハンドリング性、触感、および生産性の観点から、布に対するA層の剥離強度が0.05N/cm以上0.40N/cm以下であり、かつA層の静摩擦係数が0.5以上2.5以下であることが好ましい。布に対するA層の剥離強度を0.05N/cm以上とすることで、布等に対する密着性を十分に確保でき、A層と布等が接するように積層フィルムを布等に貼り付けたときに剥離が発生しにくくなる。一方、布に対するA層の剥離強度を0.40N/cm以下とすることで、A層の密着性が過剰となってA層が平坦部に密着することを防ぐことができるため、積層フィルムのハンドリング性が向上する。上記観点から、A層の布に対する剥離強度のより好ましい範囲は0.10N/cm以上0.30N/cm以下である。
また、A層の静摩擦係数を2.5以下とすることにより、A層を指で触ったときのべたつきが抑えられ、触感が向上する。一方、A層の静摩擦係数を0.5以上とすることにより、積層フィルムをロール状に巻いた際に巻きズレの発生を抑制できる。上記観点から、A層の静摩擦係数のより好ましい範囲は、0.5以上2.0以下である。布に対するA層の剥離強度とA層の静摩擦係数を好ましい範囲とする方法としては、A層の表面全体に占める粒子の面積率を変える方法やA層中に含有させる粒子の量を変える方法がある。より具体的には、A層の表面全体に占める粒子の面積率を大きくする又はA層中に含有させる粒子の多くすることにより、布に対するA層の剥離強度を低く、A層の静摩擦係数を小さくすることができる。
布に対するA層の剥離強度は、A層側を測定面(白布と接触させる面)として、前述した布に対する剥離強度の測定方法により測定することができる。また、A層の静摩擦係数は以下の方法によって測定することができる。フィルムを63mm(幅方向)×63mm(長手方向)の正方形サイズにカットして測定サンプルとする。次いで、PETフィルム(“ルミラー”S10、東レ株式会社製)を相手材として、JIS K 7125:1999に規定する方法でフィルムと相手材の静摩擦係数を測定する。このとき、滑り片の全質量は100gfとなるように調整する。同様の測定を5回行い、得られた値の平均値を布に対するA層の静摩擦係数とする。なお、長手方向や幅方向を特定することができない場合は、特に方向を定めることなく同サイズの正方形サイズのサンプルを用いて測定するものとする。ここで長手方向とは製造工程でフィルムが走行する方向(ロールの場合は巻き方向)をいい、幅方向とは、フィルム面内で長手方向と直交する方向をいう。
(ポリエチレンテレフタレートフィルムに対するA層の剥離強度)
本発明の積層フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムということがある。)に対するA層の剥離強度は0.01N/cm以上0.40N/cm以下であることが好ましい。PETフィルムに対するA層の剥離強度を0.01N/cm以上とすることで、積層フィルムをロール状に巻き取った際の巻きズレを軽減できる程度に、A層の平坦部への密着性を確保できる。一方、PETフィルムに対するA層の剥離強度を0.40N/cm以下とすることで、A層の平坦部への密着性が抑えられ、積層フィルムの製造工程においてロールなどの平坦部への密着が抑制されるため、ハンドリング性が向上する。上記観点から、PETフィルムに対するA層の剥離強度のより好ましい範囲は0.01N/cm以上0.30N/cm以下である。
PETフィルムに対するA層の剥離強度を好ましい範囲とする方法としては、A層の表面全体に占める粒子の面積率を変える方法やA層中に含有させる粒子の量を変える方法がある。より具体的には、A層の表面全体に占める粒子の面積率を大きくする又はA層中に含有させる粒子の多くすることにより、PETフィルムに対するA層の剥離強度を小さくすることができる。
PETフィルムに対するA層の剥離強度は、前述の布に対するA層の剥離強度の測定方法において、相手材を白布からPETフィルム(“ルミラー”S10、東レ株式会社製)とすること以外は同様の方法で測定することができる。
(ヤング率の最大値)
本発明の積層フィルムは、機械特性を維持し、布等に密着させた際の布等に対する追従性を確保するために、ヤング率の最大値が0.05MPa以上2.00MPa以下であることが好ましい。積層フィルムのヤング率の最大値を0.05MPa以上とすることにより、フィルムとしての機械特性が確保されるためハンドリング性が向上する。一方、積層フィルムのヤング率の最大値を2.00MPa以下とすることにより、布等に対する追従性が向上する。上記観点から、ヤング率の最大値のより好ましい範囲は、0.05MPa以上1.00MPaである。
積層フィルムのヤング率の最大値を調整する方法としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、基材層における充填剤の含有量を調節する方法、基材層とA層の厚み比(基材層の厚み/A層の厚み)を調節する方法、基材層やA層の樹脂組成を調節する方法等が挙げられる。具体的には、基材層における充填剤の含有量を増やしたり、基材層の厚み/A層の厚みを大きくしたりすることによりヤング率を高くすることができる。
積層フィルムのヤング率の最大値の測定方法について、ヤング率の測定方向を示す模式図である図1を用いて説明する。先ず、積層フィルム1より100mm(幅方向)×10mm(長手方向)サイズの長方形状の測定サンプルを用意し、引張り強度200mm/分、温度23℃、湿度65%RHの条件で、ASTM-D882:1990に準拠して幅方向(図1における2-2’)のヤング率を測定する。同様の測定を5回繰り返し、得られた値の平均値を幅方向のヤング率とする。続いて、幅方向からフィルム面内で時計回りに15°回転させた方向(図1における3-3’)が測定方向となるように同様に試料を切り出して同様に測定を行う。以後、図1に記載のように時計回りに15°ずつ測定方向をずらし(図2における4-4’→8-8’(長手方向))、同様にヤング率を測定する。こうして得られた7方向のヤング率の値を比較し、最も大きい値をフィルムのヤング率の最大値とする。なお、幅方向や長手方向を特定できない場合においては、最初の測定方向を任意に定め、同様の手順によりフィルムのヤング率の最大値を決定することができる。
(フィルムの製造方法)
以下に本発明の積層フィルムを製造する方法について、A層とB層の2層構成の積層フィルムを例に挙げて具体的に説明する。但し、本発明のフィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
本発明のフィルムを構成する各層(A層、B層)を得るための溶融樹脂組成物を得る方法としては、各成分を溶融混練することにより組成物を製造する溶融混練法を用いることが好ましい。溶融混練を行うための混合機については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸又は二軸押出機などの公知の混合機を用いることができる。中でも生産性の観点から、単軸又は二軸押出機の使用が好ましい。
このとき、最終的に得られる積層フィルムを、A層の布に対する剥離強度が相対的に大きいものとするために、A層を得るための溶融樹脂組成物は粒子を含み、さらにB層より多く粘着性樹脂を含むことが好ましい。また、A層の表面に凸部Xを容易に形成するため、A層を得るための溶融樹脂組成物における粒子は、最終的に得られる積層フィルムのA層の厚みよりも粒子径の大きい粒子を含むことも好ましい。さらに、A層を得るための溶融樹脂組成物は、布等に対する密着性および生産性の観点から、熱可塑性エラストマーを含むことが好ましく、B層を得るための溶融樹脂組成物は、最終的に得られる積層フィルムの機械特性を維持しつつ柔軟性を向上させる観点から、ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることが好ましい。
次に、上記した方法により得られた各層を得るための溶融樹脂組成物を公知の積層装置により積層させ、インフレーション法、チューブラー法、Tダイキャスト法などの公知の製膜法により、無配向フィルムを製造することができる。さらに、機械特性向上、軽量化、および透湿性向上の観点から、必要に応じて得られた無配向フィルムを一軸又は二軸延伸してもよい。延伸はロールの周速差を用いて行うことや、テンターオーブン等により行うことが可能である。
また、その他の方法として、B層に相当するシートにTダイ等を用いてA層を得るための組成物を押出してA層を形成させる方法、公知の溶媒等で溶液化したA層を得るための組成物をB層に塗布して乾燥する方法(以下、コーティング法ということがある。)、B層に相当するシートとA層を得るためのシートを個別に製膜してから熱ラミネートする方法等を用いることもできる。なお、このような方法を用いる場合も、フィルムを適宜延伸することができる。
その後、こうして得られた表面に粒子を付着させる前の積層フィルムのA層側に、粒子を自由落下させることや噴き付けることにより、A層の表面が樹脂と粒子で形成され、本発明の積層フィルムを得ることができる。このとき、A層の表面全体に占める粒子の面積率が5%以上35%以下となるように搬送速度や単位時間当たりに自由落下させる又は噴き付ける粒子の量を調整する。
その後、本発明の積層フィルムは、必要に応じて幅方向両端部のエッジ部分を切断除去した上で、中間製品ロール又は最終製品ロールとして巻き取られる。中間製品ロールとして巻き取られた場合は、さらに中間製品ロールよりフィルムを巻き出し、所望の幅となるように長手方向と平行に切断して巻き取ることで、最終製品ロールを得ることができる。なお、一本の中間製品ロールから得る最終製品ロールは、一本であっても複数本であってもよい。
このようにして得られた本発明の積層フィルムについて、図2、3を参照しながら具体的に説明する。図2は、本発明の一実施態様に係る積層フィルムをA層側から観察したときの拡大上面図であり、図3は図2の積層フィルムのI-I‘断面図である。図2、3に示す積層フィルム1は、布に対する剥離強度が相対的に大きい面側の最外層であるA層9と、その反対側の最外層であるB層10とで構成される。A層9の表面には、高さが20μm以上である凸部である凸部X11が存在し、A層9の表面全体に占める凸部Xの面積率は2%以上25%以下である(図3の符号12はベースライン、符号13はベースラインからの高さが20μmである位置を示す線を表す。)。この凸部X11は、主に、A層9が布等に接するように積層フィルムと布等を貼り合わせた際に、布等の凹凸形状とかみ合うため布等への密着性を向上させる役割を担う。この凸部X11は、主に図3に示すようにA層中に含まれる粒子14(以下、単に粒子14ということがある。)によって形成される。また、A層9の表面は、樹脂15と表面に付着した粒子16(粒子14がA層9より突出している場合は、粒子14、樹脂15、および粒子16)によって形成されており、A層9の表面全体に占める表面に付着した粒子16の面積率(粒子14がA層9より突出している場合は、粒子14と粒子16の面積率)が5%以上35%以下である。樹脂15は製造過程で溶融押出されたものであり、その中に粘着性樹脂等を含むことで布等への密着性を向上させることができる。表面に付着した粒子16は主に、指でA層に触れたときに粘着性のある樹脂部分と指との接触を妨げ、触感を向上させる役割を担う。
また、コーティング法としては、具体的には次のような方法を用いることができる。先ず、A層を得るための組成物を得るために、粒子以外のA層を得るための成分を公知の溶媒(例えば、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)等)で溶解した後、粒子を加える。次に、B層上に粒子を含む当該溶液を塗布し、オーブンで溶媒を乾燥除去することでA層を形成する。溶液の塗布方式は特に限定されないが、例えば、バーコート方式、コンマコート方式、スリットダイコート方式、及びグラビアコート方式等を好適に用いることができる。
コーティング法を用いて得られた本発明の積層フィルムについて、図4、5を参照しながら具体的に説明する。図4は、図2とは異なる本発明の一実施態様に係る積層フィルムをA層側から観察したときの拡大上面図であり、図5は図4の積層フィルムのI-I‘断面図である。
図4、5に示す積層フィルム1は、布に対する剥離強度が相対的に大きい面側の最外層であるA層9と、その反対側の最外層であるB層10とで構成される。A層9の表面には、高さが20μm以上である凸部である凸部X11が存在し、A層9の表面全体に占める凸部X11の面積率は2%以上25%以下である(図5の符号12はベースライン、符号13はベースラインからの高さが20μmである位置を示す線を表す。)。この凸部X11は、主に図5に示すようにA層中に含まれる粒子14によって形成される。また、A層9の表面は、樹脂15とA層から突出した粒子17(以下、単に粒子17ということがある。)によって形成されており、A層9の表面全体に占める粒子17の面積率が5%以上35%以下である。樹脂15は製造過程で塗布されたものであり、その中に粘着性樹脂等を含むことで布等への密着性を向上させることができる。粒子17は主に、指でA層に触れたときに粘着性のある樹脂部分と指との接触を妨げ、触感を向上させる役割を担う。
本発明の積層フィルムは、布や不織布のように表面に凹凸を有する材料に対する密着性、ハンドリング性、および触感に優れるため、布等に密着させて使用する医療材料や衛生材料に好適に使用することができる。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
[測定および評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示す条件で行った。
(1)布に対するA層の剥離強度
先ず、10mm(幅方向)×100mm(長手方向)の長方形状の積層フィルムサンプルを取得し、粘着性樹脂の含有量が多い層を下側にして、当該積層フィルムサンプルをJIS L 0803:2011に準拠したポリエステル製の白布(以下、単に布ということがある。)上に置いて、2kg荷重のラミネートローラーを1往復させて両者を密着させた。その後、引張速度300mm/分で短辺側からフィルムサンプルを剥がし、JIS Z 0237:2009に規定する方法で布に対する剥離強度を測定した。同様の測定を5回行い、得られた値の平均値を布に対するA層の剥離強度(N/cm)とした。なお、通常、A層を決定するには、両面の布に対する剥離強度を測定し、両者の差が0.05N/cm以上であることを確認した上で、布に対する剥離強度が相対的に大きい面側の最外層をA層と定める手順が必要であるが、本実施例および比較例においては、層組成から粘着性樹脂の含有量が多い層がA層に該当することが明らかであるため、当該手順は省略した。
(2)PETフィルムに対するA層の剥離強度
被着体である布を、PETフィルム(“ルミラー”(登録商標)S10、東レ株式会社製)とした以外は、(1)と同様に測定した。
(3)A層の厚み
先ず、ミクロトームを用いてナイフ傾斜角度3°で厚み方向と平行に積層フィルムを切断した。次いで、走査型電子顕微鏡を用いてA層の断面を観察し、粒子が存在しない箇所において顕微鏡の測長機能によりA層の厚みを測定した。その後、サンプリング位置を変えて同様の測定を9回行い、得られた合計10箇所におけるA層の厚みの平均値を、積層フィルムのA層の厚み(μm)とした。
(4)ヤング率の最大値
積層フィルムのヤング率の最大値の測定方法について、図1を用いて説明する。先ず、100mm(幅方向)×10mm(長手方向)の長方形状の積層フィルムサンプルを用意し、オリエンテック社製引張試験機(テンシロンタイプ)を用いて、引張り強度200mm/分、温度23℃、湿度65%RHの条件で、ASTM-D882:1990に準拠して幅方向(図1における2-2’)のヤング率を測定した。同様の測定を5回繰り返し、得られた値の平均値を幅方向のヤング率とした。続いて、幅方向からフィルム面内で時計回りに15°回転させた方向(図1における3-3’)が測定方向となるように同様に試料を切り出して同様に測定を行った。以後、図1に記載のように時計回りに15°ずつ測定方向をずらし(図1における4-4’→8-8’(長手方向))、同様にヤング率を測定した。こうして得られた7方向のヤング率の値を比較し、最も大きい値をヤング率の最大値(MPa)とした。
(5)A層の表面全体に占める凸部Xの面積率
積層フィルムのA層の表面をスパッタにより金属コーティングし、表面形状測定機能を有するレーザー電子顕微鏡により、金属コーティングされた表面の任意の位置を観察し、画像を表示させた。次いで、得られた画像の高さ方向の位置データを1μm毎に取得したときに、その分布が最も多い位置をベース面とし、ベース面を基準として20μm以上の高さを有する部分を凸部Xとした。その後、得られた画像の各凸部Xについて、凸部Xを完全に囲みかつ面積が最も小さくなるように正方形又は長方形を描いて、正方形の場合は1辺の長さを2乗した値、長方形の場合は長辺と短辺の長さの平均値を2乗した値を求め、これらの総和を観察画像における凸部Xの面積とした。この値を観察画像面積で割った値を当該観察画像における凸部Xの面積率とした。この測定を、観察位置を変えて10回行い、観察画像における凸部Xの面積率の平均値を求め、これをA層の表面全体に占める凸部Xの面積率(%)とした。
(6)A層中の粒子の平均粒径
表面が樹脂である凸部Xを、その頂点を含むように、ミクロトームを用いてナイフ傾斜角度3°で厚み方向と平行に切断した。次いで、走査型電子顕微鏡を用いて凸部Xの断面を観察し、A層中の最も大きな粒子について粒子を完全に囲みかつ面積が最も小さくなるように正方形又は長方形を描いて、正方形の場合は1辺の長さ、長方形の場合は長辺と短辺の長さの平均値を該粒子の粒子径とした。さらに、測定対象とする凸部Xを変えて同様の測定を9回行い、得られた10個の粒子の粒子径より平均値を求め、得られた値をA層中の粒子の平均粒径(μm)とした。なお、A層中の粒子が2個以上凝集していた場合は、凝集体全体を完全に囲みかつ面積が最も小さくなるように正方形又は長方形を描いて粒子径を求めた。
(7)A層の表面全体に占める粒子の面積率
先ず、走査型電子顕微鏡で、観察視野に粒子が5個以上20個以下含まれる倍率でA層の表面を観察し、観察視野内の粒子の個数を数えた。次いで、得られた粒子の個数と粒子の平均粒径から算出した粒子面積(粒子半径の2乗と円周率との積)を求め、これを観察視野に占める粒子の面積とした。得られた粒子の面積を観察視野全体の面積で除して得られる値を百分率で表し、これを観察視野におけるA層の表面に占める粒子の面積率とした。観察位置を変えて同様の測定を合計10回行い、観察視野におけるA層の表面に占める粒子の面積率の平均値を、A層の表面全体に占める粒子の面積率(%)とした。
なお、ここでいう粒子の平均粒径および粒子半径は以下の方法で測定した。先ず、走査型電子顕微鏡を用いて、A層の表面を10個の粒子が観察できる倍率で観察し、観察された各粒子について、粒子を完全に囲み、かつ面積が最も小さくなるように正方形又は長方形を描いて、正方形の場合は1辺の長さ、長方形の場合は長辺と短辺の長さの平均値を該粒子の粒子径とした。次いで、得られた粒子径の平均値を求め、これを粒子の平均粒径(μm)とし、平均粒径を2で除した値を粒子半径(μm)とした。
(8)A層の静摩擦係数
フィルムを63mm(幅方向)×63mm(長手方向)の正方形サイズにカットして測定サンプルとした。次いで、PETフィルム(“ルミラー”S10、東レ株式会社製)を相手材として、JIS K 7125:1999に規定する方法でフィルムと相手材の静摩擦係数を測定した。このとき、滑り片の全質量は100gfとなるように調整した。同様の測定を合計5回行い、得られた値の平均値を布に対するA層の静摩擦係数とした。
[A層の熱可塑性エラストマー]
(A1) スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(“Quintac”(登録商標)3520、日本ゼオン株式会社製)
[A層の粘着性樹脂]
(B1) テルペン系樹脂(PX-1250、ヤスハラケミカル株式会社製)
[A層の粒子]
(C1) 炭酸カルシウム粒子(BF-400、東洋ファインケミカル株式会社製)
[A層表面の粒子]
(D1) でんぷん粉(AS-100S、ニッカ株式会社製)
[B層のポリオレフィン系樹脂]
(E1) 低密度ポリエチレン(F200、住友化学株式会社製)
(F1) 粘着層溶液(トルエンとスチレン-イソプレン-スチレン共重合体および粘着性樹脂の混合体、GR-1025M-1、ビックテクノス株式会社製)
(G1) ポリエチレン粒子(XM-220、三井化学株式会社製)
(G2) ポリエチレン粒子(XM-330、三井化学株式会社製)
(実施例1)
B層およびA層表面の粒子付着前のA層(以下、粒子付着前のA層ということがある。)の原料をそれぞれ表1に記載の配合とし、シリンダー温度190℃のスクリュー径44mmの真空ベント付二軸押出機に供給して溶融混練して均質化した後にペレット化した。得られたペレットをそれぞれ単軸押出機(L/D=30 Lはスクリュー長さ、Dはスクリュー径を表す。)に供給し、供給部の温度150℃、それ以降の温度を200℃として溶融させて、ダイの上部に設置したフィードブロック内にてB層/粒子付着前のA層となるように積層した後、Tダイ(リップ間隙:1mm)より、30℃に温度制御した鏡面ドラム(表面粗さ:0.2s)上にシート状に吐出した。その際、シリコーンロールにてニップをし(ニップ圧:0.2MPa)、粒子付着前のA層とB層の積層フィルムを得た。次いで、散布量が表1に記載の1m当たりの質量となるように、粒子付着前のA層に表1に示すA層表面の粒子を散布して積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの物性および評価結果を表1に示す。
(実施例2~5、比較例1~3)
粒子付着前のA層およびB層の原料配合、A層表面の粒子の散布量を表1に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの物性および評価結果を表1に示す。
(実施例6)
各成分を表2に示す配合で混合し、A層を形成するための溶液を得た。次いで、塗工量が50g/m2となるように、バーコーターで当該溶液を厚み25μmのポリエチレンフィルム上に塗布し、80℃で1分間乾燥させて積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの物性および評価結果を表2に示す。
(実施例7~12、比較例4~7)
A層を形成するための溶液の組成を表2に記載の通りとしたこと以外は実施例6と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表2に示す。
Figure 0007439651000001
Figure 0007439651000002
本発明により、フィルムとして用いるために必要な機械特性を備え、かつ、布等に対する密着性、ハンドリング性、および触感に優れる積層フィルムを提供することができる。本発明の積層フィルムは、布等に対する密着性およびハンドリング性を必要とする用途、例えば、ベッド用シーツ、枕カバー、衛生ナプキンや紙おむつなどの吸収性物品のバックシートといった医療・衛生材料等に好ましく用いることができる。
1:積層フィルム
2-2’:幅方向
3-3’:フィルム面内で幅方向に対して時計回りに15°回転した方向
4-4’:フィルム面内で3-3’に対して時計回りに15°回転した方向
5-5’:フィルム面内で4-4’に対して時計回りに15°回転した方向
6-6’:フィルム面内で5-5’に対して時計回りに15°回転した方向
7-7’:フィルム面内で6-6’に対して時計回りに15°回転した方向
8-8’:長手方向
9:A層
10:B層
11:凸部X
12:ベースライン
13:ベースラインからの高さが20μmである位置を示す線
14:A層中に含まれる粒子
15:樹脂
16:表面に付着した粒子
17:A層から突出した粒子

Claims (7)

  1. 両面で布に対する剥離強度が異なる積層フィルムであって、
    布に対する剥離強度が相対的に大きい面側の最外層をA層、高さが20μm以上である凸部を凸部Xとしたときに、
    A層の表面に凸部Xを有し、
    A層の表面全体に占める凸部Xの面積率が2%以上25%以下であり、
    A層の表面が樹脂と粒子で形成されており、
    A層の表面全体に占める粒子の面積率が5%以上35%以下であり、
    かつ、A層が粒子を含むことを特徴とする、積層フィルム。
  2. 布に対する前記A層の剥離強度が0.05N/cm以上0.40N/cm以下であり、かつ前記A層の静摩擦係数が0.5以上2.5以下であることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. ポリエチレンテレフタレートフィルムに対する前記A層の剥離強度が0.01N/cm以上0.40N/cm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  4. ヤング率の最大値が0.05MPa以上2.00MPa以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、および石油系樹脂を粘着性樹脂としたときに、前記A層が、少なくとも一種の粘着性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. 前記A層と反対側の最外層をB層としたときに、前記A層が、前記B層よりも多く前記粘着性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の積層フィルム。
  7. 前記A層中の粒子の平均粒径が、前記A層の厚みよりも大きいことを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の積層フィルム。
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