JP7439635B2 - ホール輸送材料及びホール輸送材料を用いた太陽電池 - Google Patents

ホール輸送材料及びホール輸送材料を用いた太陽電池 Download PDF

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Description

本発明は、ホール輸送材料及びホール輸送材料を用いた太陽電池に関する。
太陽電池には、シリコン系、化合物半導体、有機半導体などの素子を用いたものが一般的であるが、高い光捕集能に加え、薄膜化や低コスト化の可能なハイブリッド型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池)が注目されている。
非特許文献1には、透明導電膜付きガラス基板と、緻密な二酸化チタン(TiO2)膜からなるブロッキング層と、光によって励起して電子を発生するペロブスカイト化合物として臭化鉛(PbBr2)、ヨウ化鉛(PbI2)、メチルアミン臭化水素酸塩(CH5N・HBr:以下、「MABr」と略する場合がある)、及び、ホルムアミジンヨウ化水素酸塩(CH4N2・HI:以下、「FAI」と略する場合がある)を多孔質の二酸化チタン(TiO2)に積層させて形成される発電層と、ホール輸送層と、電極とを備えたペロブスカイト太陽電池が示されている。
この発電層は、混合ハロゲン化物(FAPbI3)0.85(MAPbBr3)0.15ペロブスカイト層として形成されている。
従来において、ホール輸送層に用いられるホール輸送材料として、下記一般式(A)に示す2,2',7,7'-テトラキス(N,N'-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン(2,2',7,7'-tetrakis(N,N'-di-p-methoxyphenylamine)-9,9'-spirobifluorene(一般呼称「Spiro-OMeTAD」、以下、本呼称を使用))が汎用されている。ペロブスカイト化合物の結晶が光を吸収することによって電子とホールを生じる。ホールは、ホール輸送材料により対向電極に輸送され、電子は光電極に移動するといったサイクルを繰り返すことで発電する。
Figure 0007439635000001
しかしながら、非特許文献1でも報告される通り、Spiro-OMeTADには、合成及び精製工程数が多く要求されるコストが高い、ホール移動度が比較的低い、ホール輸送材料として効率的かつ安定的に機能するためにはコバルト錯体等のドーパントを要する等の問題点があった。そのため、低コストに提供でき、かつ、効率的かつ安定的なホール輸送効果を奏するホール輸送材料の研究が進められている。そこで、非特許文献1では、新規なホール輸送材料として、アクセプター(以下、「A」という)部にカルバゾール環、ドナー(以下、「D」という)部にトリフェニルジメトキアミノ基を有し、これらがドナー-アクセプター-ドナー型(以下、「D-A-D型」という)構造に連結した下記一般式(B)に示すLD29と呼称される化合物が報告されている。かかるLD29をホール輸送材料として利用した太陽電池においてドーパントフリーでは変換効率が14.29%であったが、ドーパントとしてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、4-tert-ブチルピリジン(TBP)、コバルト錯体(FK209)を添加すると変換効率が18.0%に改善され、Spiro-OMeTADに匹敵する変換効率が得られている。
Figure 0007439635000002
LD29において、D部の窒素の不対電子がドナー性に大きく関与すると考えられる。LD29は、A部とD部の間にフェニル基が導入された構造(トリフェニルアミン)を有することからドナー性が低下し、その結果、HOMO-LUMO電荷分離が明確でなくなることから、LD29をホール輸送材料として使用する太陽電池において十分な太陽電池効率を得ることが難しい。また、効率的かつ安定的なホール輸送特性を発揮させるためには、コバルト錯体(FK209)等のドーパントを添加する必要がある。更に、コバルト錯体(FK209)等のドーパントを添加することで、太陽電池の作製に必要な工程数及びコストが増大し、太陽電池価格の高騰を招くとの問題もある。
また、非特許文献2において、下記一般式(C)に示すYN1と呼称される化合物が、非特許文献3において、下記一般式(D)に示すPTZ2と呼称される化合物が報告されている。何れの化合物もD-A-D型構造を有するものであるが、上記したLD29と同様の問題点がある。
Figure 0007439635000003
Figure 0007439635000004
Xuepeng Liu他著、"A star-shaped carbazole-based hole-transporting material with triphenylamine side arms for perovskite solar cells,"J.Mater.Chem.C., 2018, 6, 12912-12918(DOI:10.1039/c8tc04191a) Peng Xu他著、"D-A-D-Typed Hole Transport Materials for Efficient Perovskite Solar Cells: Tuning Photovoltaic Properties via the Acceptor Group"、ACS Appl. Mater. Interfaces 2018, 10, 23(DOI:10.1021/acsami.8b04003) Roberto Grisorio他著、"Molecular Tailoring of Phenothiazine-Based Hole-Transporting Materials for High-Performing Perovskite Solar Cells"、ACS Energy Lett. 2017, 2, 5, 1029-1034(DOI:10.21/acsenergylett.7b00054)
そこで、上記従来技術の問題点を鑑み、優れたホール輸送特性を安定的に示すホール輸送材料の提供が求められていた。また、ホール輸送材料を安価に提供することが求められていた。更に、電池性能の高い太陽電池を安価で提供することが求められていた。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の知見を見出した。ホール輸送材料のドナー性に関与すると考えられるD部の窒素原子をA部に隣接させることで、HOMO-LUMOの電荷分離が明確となり、HOMO及びHOMO-1準位でD部に電子が集中し、LUMO準位でA部に電子が集中し、分子内で電子に顕著な偏りが生じる。このようにホール輸送材料を構成することにより優れたホール輸送特性を発揮することができる。更に、当該ホール輸送材料をペロブスカイト太陽電池等のホール輸送層に用いた場合、当該ホール輸送材料が優れたホール輸送特性を発揮し、初期実験において優れた電池性能を示す。これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
本発明は、ホール輸送材料に関するものであり、その特徴構成は下記一般式(I)、(II)、(III)、(IV)に示す化合物である点にある。
Figure 0007439635000005
Figure 0007439635000006
Figure 0007439635000007
Figure 0007439635000008
上記構成によれば、安定的かつ効率的にホールを捕捉し移動させることができる優れたホール輸送特性を有しているホール輸送材料を提供することができる。詳細には、本構成のホール輸送材料は、D-A-D型構造を有し、更にD部は、3,6-ビス[N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]-9H-カルバゾール-9-イル基等のD-A’-D型構造を有する。これにより、D部のカルバゾール環の窒素原子がA部に隣接する。かかる窒素原子の不対電子の作用で電子の移動がスムーズになりHOMO-LUMOの電荷分離がより明確になる。また、本構成のホール輸送材料は、A部に電子吸引性の高い置換基を導入したことからも、分子内でのHOMOとLUMOでの電子の局在化が顕著になる。してみると、HOMO及びHOMO-1準位でD部に電子が集中し、LUMO準位でA部に電子が集中する。このように、本構成のホール輸送材料は、分子内で電子に偏りがあるため優れたホール輸送特性を発揮することができる。
また、本構成のホール輸送材料は、深いHOMOエネルギー準位を有することから、ペロブスカイトのHOMO準位との配置を適切に調節でき、ホール輸送特性を向上させることができ、更に太陽電池効率を向上させ易いとの利点もある。
本構成のホール輸送材料は、可視光域でほとんど光吸収を示さず、かつ、~450 nm領域の光吸収強度が従来において汎用されるspiro-OMeTADよりも弱い。このため、本構成のホール輸送材料を用いた太陽電池は、ホール輸送材料による光吸収ロスを最低限に抑えることができ、高い光電変換効率を期待することができる。
本構成のホール輸送材料は、溶媒への溶解性の面でも優れた特性を有する。そのため、スピンコートによる塗布法等のウェットプロセス等をも利用することができ、太陽電池のホール輸送層を形成が容易となる。また、本実施形態に係るホール輸送材料は、非極性溶媒にも可溶であるため、安価かつ環境負荷の低い溶媒を用いて、太陽電池のホール輸送層を作製することが可能である。一方、従来において汎用されるspiro-OMeTADは、ホール輸送層を作製する際に、溶媒としてクロロベンゼンを用いるのが一般的である。しかしながら、クロロベンゼンは、分子内に塩素原子を含み、かつ、高価であることから、溶媒廃棄等の後処理を含めた設備として費用が嵩み、また、排気漏れ等による安全及び環境への負荷も大きいとの問題点がある。
また、本構成のホール輸送材料は、安価な原料により、短時間に少ない合成工程により合成することができ、かつ、簡単な精製工程により高純度品を提供できる。そのため、高価な試薬や煩雑な工程を要せず、合成や精製に要するコストを低減することができ、安価かつ高性能なホール輸送材料を提供することができる。
このように、本構成のホール輸送材料は、優れた特性を有することから、太陽電池のホール輸送材料として好適に利用することができる。
本発明は、太陽電池に関する発明をも含み、本発明に係る太陽電池の特徴構成は、透明導電膜を有する基板、電子を前記透明導電膜に受け渡し、かつ逆電子移動を防止するブロッキング層、光によって励起して前記電子を発生するペロブスカイト層を多孔質半導体に積層させて形成される発電層、前記ペロブスカイト層から発生したホールが通過し、前記本発明のホール輸送材料を有するホール輸送層、の順に積層される積層体と、前記透明導電膜を介して前記電子を放出する光電極、及び、前記ホール輸送層の表面に設けられた対向電極で構成される電極と、を備えている点にある。
本構成のように、優れたホール輸送特性を有するホール輸送材料を太陽電池のホール輸送層に用いることで、光電変換効率が向上し、太陽電池の電池性能の向上を図ることができる。また、安価かつ簡便に合成が可能であり、ドーパントを添加せずとも良好なホール輸送特性を実現することができるホール輸送材料を太陽電電池のホール輸送層に用いることで、太陽電池自体の価格の低減をも図ることが可能となる。
ペロブスカイト太陽電池の模式断面図である。 ペロブスカイト太陽電池の上方からの斜視図である。 ペロブスカイト太陽電池の発電説明図である。 ペロブスカイト太陽電池の作製手順を示す説明図である。 ホール輸送材料の好適例の1つであるYCN-1の構造の詳細説明を示す図。 実施例1において合成を行ったホール輸送材料(YCN1)の合成スキームを示す図である。 実施例2において合成を行ったホール輸送材料(PTZ3)の合成スキームを示す図である。 YCN-1をホール輸送材料として備えた太陽電池の性能評価-1を行った実施例4の結果を示すグラフであって、電圧電流特性を示す。 PTZ3をホール輸送材料として備えた太陽電池の性能評価-2を行った実施例5の結果を示すグラフであって、電圧電流特性を示す。
以下に、本発明の実施形態に係るホール輸送材料を用いたペロブスカイト太陽電池10(太陽電池の一例。以下、「太陽電池10」と記載する。)の実施形態について、図面に基づいて説明する。太陽電池10は、有機及び無機のハイブリッド化合物で生成されるペロブスカイト層44を備えて構成されている。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
(本実施形態に係る太陽電池の基本構成)
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る太陽電池10は、透明基板21及び透明導電膜22を有する基板2と、基板2上に設けられ、電子を透明導電膜22に受け渡し、且つホール輸送層5と透明導電膜22とを分離して電子とホールとの再結合(逆電子移動)を防止するブロッキング層3と、ブロッキング層3上に設けられ、光によって励起して電子を発生するペロブスカイト層44を多孔質半導体41に積層させて形成される発電層4と、発電層4上に設けられペロブスカイト層44で発生したホールが通過するホール輸送層5とで構成される積層体11を備えている。また、ブロッキング層3の表面に設けられ、透明導電膜22を介して電子を放出する光電極61と、ホール輸送層5の表面に設けられ、電子を受け取る対向電極62とで構成される電極6を備えている。なお、電極6の配置は、例えば透明導電膜22に導線接続して光電極61を形成するなど、電子の受け渡しが可能なものであれば特に限定されない。また、太陽電池10の耐久性を高めるため、対向電極62を透明基板21などで保護しても良い。
透明基板21は、光透過性を有するもので構成される。例えば、透明ガラス基板、すりガラス状の半透明ガラス基板、透明樹脂基板等を適用することができる。また、透明導電膜22は、例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ(TO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)やアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)などを用いることができる。
ブロッキング層3及び多孔質半導体41は、金属酸化物が適しており、例えば、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5)、二酸化スズ(SnO2)や酸化アルミニウム(Al2O3)などが用いられる。特に、ペロブスカイト層44を積層するための表面積を多く確保できる二酸化チタン(TiO2)の焼結体として構成することが好ましい。また、ブロッキング層3は、一部が透明導電膜22に延出して形成され、透明導電膜22が区画される。更に、ブロッキング層3は、電子が積層方向に通過することができるが、横方向への移動がし難いように緻密な絶縁層31を形成している。つまり、ブロッキング層3から侵入した電子は、透明導電膜22の積層方向に円滑に移動して光電極61に供給されると共に、絶縁層31によって対向電極62への移動が防止されるので短絡しない。
ペロブスカイト層44は、鉛及びハロゲン元素Xで構成される化合物(PbX2、X=ハロゲン元素)と、メチルアンモニウムアイオダイド(CH3NH3I:以下、「MAI」と略する場合がある)とを反応させて生成される。具体的には、多孔質半導体41の孔内部に鉛及びハロゲン元素Xを含む溶液42を浸透・乾燥させた後、MAIの混合溶液43に浸漬して、ペロブスカイト層44を形成するペロブスカイト化合物(X=Iの場合、CH3NH3 PbI3)の結晶が速やかに生成される。なお、ハロゲン元素Xは、ヨウ素、臭素や塩素などを用いることができるが、形態安定性の高いヨウ素を用いることが好ましい。また、MABrと0.2Mの臭化鉛(PbBr2)、FAIとヨウ化鉛(PbI2)を利用した混合カチオン-混合ハライド((FAPbI3)1-x(MAPbBr3)x)としてもよい。例えば、(FAPbI3)0.85(MAPbBr3)0.15等を好適に用いることができる。
ホール輸送層5には、後述するホール輸送材料を用いる。電極6は、例えば、金、白金、銀、銅等の金属の単体や合金、あるいはフッ素ドープ酸化スズ(FTO)やスズドープ酸化インジウム(ITO)といった酸化物導電体などを用いることができる。
ここで、図3に基づいて太陽電池10が発電する原理について説明する。透明基板21に太陽光や室内光等の光が入射すると、この入射光はほとんど吸収されることなく基板2やブロッキング層3を透過して、大部分が発電層4に到達する。そして、発電層4に到達した入射光がペロブスカイト層44に照射されると、このペロブスカイト層44は光エネルギーを吸収して励起する。この励起により、ペロブスカイト層44のエネルギー準位が多孔質半導体41である金属酸化物の伝導帯電位よりも所定レベル以上高くなると、ペロブスカイト層44から多孔質半導体41へと電子が注入される。注入された電子は、ブロッキング層3を経て光電極61で集電される。
一方、ペロブスカイト層44で発生したホールは、ホール輸送層5を経由して対向電極62へ到達し、ここで外部負荷7を経由してきた電子と再結合する。つまり、光電極61と対向電極62との間に電位勾配が生じるので、両極間に外部負荷7を接続することによって、電力を供給することができる。
(本実施形態に係る太陽電池10の作製手順)
本実施形態に係る太陽電池10の作製手順を、図4に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。また、Michael Saliba他著、“Correction to “How to Make over 20% Efficient Perovskite Solar Cells in Regular (n-i-p) and Inverted (p-i-n) Architectures””、Chem. Mater., 2018, 30, 4193-4218等の公知技術を参照して作製することができる。
まず、透明基板21の上に透明導電膜22を形成して基板2を作製する。透明導電膜22は、例えば、CVD(化学的気相成長法)やスパッタリングなどにより透明基板21上に積層される。次いで、レーザースクライブを施して透明導電膜22を部分的に除去し絶縁層31が入る凹部221を形成した後、洗浄する。次いで、基板2上の全面に、ALD法(原子層堆積法)やSPD法(スプレー熱分解法)などによりブロッキング層3を形成する。ブロッキング層3は、好ましくは、TiO2緻密層として形成される。次いで、マスキングを施した基板2及びブロッキング層3上の中央付近に、ナノ粒子焼結層である多孔質半導体41を形成する。好ましくはTiO2の多孔質層(p-TiO2)として形成される。この多孔質半導体41は、ナノ粒子ペーストを溶媒によって希釈し、例えば、4000rpm~6000rpmの回転速度のスピンコート法で塗布・乾燥した後、マスキングを取り除いて450℃~550℃で加熱し、焼結形成される。
例えばPbI2のN,N-ジメチルホルムアミド溶液42を調製し、多孔質半導体41上に滴下後、例えば、5000rpm~8000rpmの回転速度のスピンコートにより孔(p-TiO2)内部への浸透と余分な溶液の除去を行う。60℃~120℃(好ましくは70℃~90℃)で乾燥させてPbI2層を形成する。
MAI(CH3NH3I)のイソプロピルアルコール溶液43(2~20mg/ml)に、基板2・ブロッキング層3・ヨウ化鉛が浸透した多孔質半導体41を0℃~80℃(好ましくは常温)で浸漬する(MAI浸漬法)。PbI2とMAIが反応によりペロブスカイト化合物[(CH3NH3)PbI3(MAPbI3)]をペロブスカイト層44として多孔質半導体41の孔内部及び上部に形成した後、純イソプロピルアルコール溶液で灌ぎ、60℃~120℃(好ましくは70℃~100℃)で乾燥させる。混合カチオン-混合ハライド((FAPbI3)1-x(MAPbBr3)x)系のペロブスカイト化合物についても同様にして調製することができる。
本実施形態に係るホール輸送材料を、例えば、クロロベンゼン溶液60~90mg/ml(若干の添加物を含む。)として調製する。これを滴下し、スピンコート法により余分な溶液の除去を行い、乾燥させることでホール輸送層5を形成する。PbI2層形成からホール輸送層5形成までの工程は、グローブボックスなど乾燥窒素雰囲気下で行うことが好ましい。最後に、真空蒸着法などによって、金などの薄膜をブロッキング層3及びホール輸送層5の表面に付着させ、電極6を形成する。
上記の作製手順では、ペロブスカイト層44を形成するペロブスカイト化合物を2ステップによって結晶成長制御したものであるが、これを1ステップで行ってよい。例えば、ペロブスカイト((CH3NH3 )PbI3)溶液をスピンコート法により、多孔質半導体41の孔内部に浸透させる。スピン中にトルエンを滴下し、微小結晶を析出させて表面を鏡面化する(貧溶媒析出法)。続いて、本実施形態に係るホール輸送材料によりホール輸送層5を形成してもよい。
(本実施形態に係るホール輸送材料)
本実施形態に係るホール輸送材料は、下記化学式モデル(1)に示すように、D-A-D型構造を有し、更に、D部自体がD-A’-D型の構造を有する。
Figure 0007439635000009
A部には電子吸引性の高い基が導入され、例えば、ベンゾチアジアゾール基、フェノチアジン環、及び、カルバゾール環等が好適に導入される。A部のベンゾチアジアゾール基、フェノチアジン環、及び、カルバゾール環の窒素原子は、水素原子の他、適当な基により置換されていてもよい。適当な基は、好ましくは、4-アルコキシフェニル基やビス(4-アルコキシフェニル)アミノ基等である。特に好ましくは、4-メトキシフェニル基やビス(4-メトキシフェニル)アミノ基である。なお、4-アルコキシフェニル基やビス(4-アルコキシフェニル)アミノ基中のアルコキシ基は、メトキシ基の他、エトキシ基、プロポシキ基、ブトキシ基等であってもよい。
D部は、D-A’-D型構造を有する。D-A’-D型構造中のA’は、上記A部と同様に電子吸引性の高い基であり、好ましくは、ベンゾチアジアゾール基、フェノチアジン環、及び、カルバゾール環等であり、特に好ましくはカルバゾール環である。D-A’-D型構造中のDは、好ましくは、ビス(4-アルコキシフェニル)アミノ基等であり、特に好ましくは、ビス(4-メトキシフェニル)アミノ基である。なお、ビス(4-アルコキシフェニル)アミノ基中のアルコキシ基は、メトキシ基の他、エトキシ基、プロポシキ基、ブトキシ基等であってもよい。D部は、好ましくは、3,6-ビス[N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]-9H-カルバゾール-9-イル基である。
A部とD部は、D部構成するD-A’-D型構造のA’の窒素がA部に隣接するように連結されている。
〔本実施形態に係るホール輸送材料の好適例〕
本実施形態に係るホール輸送材料の好適例は、下記一般式(I)、(II)、(III)又は、(IV)に示す化合物である。以下、一般式(I)のホール輸送材料はYCN1と、一般式(II)のホール輸送材料はPTZ3と、一般式(III)のホール輸送材料はLD-Cと、一般式(IV)のホール輸送材料はLD-Dと呼称する場合がある。
Figure 0007439635000010
Figure 0007439635000011
Figure 0007439635000012
Figure 0007439635000013
本実施形態に係るホール輸送材料の好適例の1つであるYCN1について、その構造について図5を参照して詳細に説明する。図5(a)は上記〔背景技術〕の項で説明した非特許文献2(ACS Appl. Mater. Interfaces 2018, 10, 23)に記載のYN1の構造を、本実施形態のホール輸送材料との比較で示すものであり、図5(b)はYCN1の構造を示す。YN1は、D-A-D型構造を有し、一方、YCN1は、D-A-D型構造を有し、更に、D部自体がD-A’-D型の構造を有する。YCN1において、A部には電子吸引性の高いベンゾチアジアゾール基が導入され、D部のD-A’-D型構造においてA’は、A部と同様に電子吸引性の高い基であるカルバゾール環が導入され、当該カルバゾール環の3位と6位には、それぞれビス(4-メトキシフェニル)アミノ基がDとして導入されている。
〔本実施形態に係るホール輸送材料の合成方法〕
本実施形態に係るホール輸送材料の合成方法は、下記の実施例1~2に記載の合成方法を参照して容易に合成することができる。なお、実施例1は、ホール輸送材料の好適例である「YCN1」の合成方法の一例を、実施例2は「PTZ3」の合成方法の一例を示すものであるが、これらに限定するものではなく、適宜他の方法を用いて合成することができる。
本実施形態に係るホール輸送材料は、D-A-D型構造を有し、A部には、ベンゾチアジアゾール基、フェノチアジン環、及び、カルバゾール環等が電子吸引性の高い基が配置される。そして、D部には、3,6-ビス[N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]-9H-カルバゾール-9-イル基等のD-A’-D型構造を有する基が配置され、D部のA’の窒素原子がA部に隣接するように配置されている。例えば、A部を構成するベンゾチアジアゾール、フェノチアジン環やカルバゾール環等において、D部のA’を導入させる位置を臭素原子等のハロゲンにより置換し、これにD部を構成するN3,N3,N6,N6-テトラキス(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール3,6-ジアミン等の二級アミンを、バックワルド・ハートウィグ クロスカップリング(Buchwald-Hartwig Cross Coupling)等を利用して反応させることにより合成することができる。また、フェノチアジン環やカルバゾール環を構成する窒素原子に4-メトキシフェニル等の置換基が導入されていてもよく、例えば、クロスカップリング反応等を利用して導入することができる。
〔本実施形態に係るホール輸送材料の特性〕
本実施形態に係るホール輸送材料は、安定的かつ効率的にホールを捕捉し移動させることができる優れたホール輸送特性を有している。
詳細には、本実施形態に係るホール輸送材料は、D-A-D型構造を有し、更にD部は、3,6-ビス[N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]-9H-カルバゾール-9-イル基等のD-A’-D型構造を有する。これにより、D部のカルバゾール環の窒素原子がA部に隣接する。かかる窒素原子の不対電子の作用で電子の移動がスムーズになりHOMO-LUMOの電荷分離がより明確になる。また、本実施形態に係るホール輸送材料は、A部に電子吸引性の高い置換基を導入したことからも、分子内でのHOMOとLUMOでの電子の局在化が顕著になる。このように、本実施形態に係るホール輸送材料は、HOMO及びHOMO-1準位でD部に電子が集中し、LUMO準位でA部に電子が集中する。このように、分子内で電子に偏りがあるため優れたホール輸送特性を発揮することができる。
また、本実施形態に係るホール輸送材料は、深いHOMOエネルギー準位を有することから、ペロブスカイトのHOMO準位との配置を適切に調節でき、ホール輸送特性を向上させることができ、更に太陽電池効率を向上させ易いとの利点もある。
本実施形態に係るホール輸送材料は、可視光域でほとんど光吸収を示さず、また、~450 nm領域の光吸収強度が、先行技術の項で説明した汎用のspiro-OMeTADよりも弱い。このため、本実施形態に係るホール輸送材料を用いた太陽電池10は、ホール輸送材料による光吸収ロスを最低限に抑えることができ、高い光電変換効率を期待することができる。
本実施形態に係るホール輸送材料は、溶媒への溶解性の面でも優れた特性を有することから、スピンコートによる塗布法等のウェットプロセス等をも利用することができ太陽電池10のホール輸送層5を形成が容易となる。また、本実施形態に係るホール輸送材料は、非極性溶媒にも可溶であるため、安価かつ環境負荷の低い溶媒を用いて、太陽電池10のホール輸送層5を形成が可能である。一方、従来において汎用されるspiro-OMeTADは、ホール輸送層5を作製する際に、溶媒としてクロロベンゼンを用いるのが一般的である。しかしながら、クロロベンゼンは、分子内に塩素を含み、かつ、高価であることから、溶媒廃棄等の後処理を含めた設備として費用が嵩み、また、排気漏れ等による安全及び環境への負荷も大きいとの問題点がある。
また、本実施形態に係るホール輸送材料は、安価な原料により、短時間かつ少ない合成工程により合成することができ、かつ、簡単な精製工程により高純度品を提供できる。そのため、高価な試薬や煩雑な工程を要せず、合成や精製に要するコストを低減することができ、安価かつ高性能なホール輸送材料を提供することができる。
このように、本実施形態に係る本構成のホール輸送材料は、優れた特性を有することから、太陽電池10のホール輸送材料として好適に利用することができる。
〔本実施形態に係る太陽電池10の特性〕
本実施形態に係る太陽電池10は、上記した通り優れた特性を有する本実施形態のホール輸送材料を用いて形成されたホール輸送層5を備える。詳細には、本実施形態に係るホール輸送材料は優れた安定的かつ効率的にホールを捕捉し移動させることができる優れたホール輸送特性を有している。特に、本実施形態に係るホール輸送材料は、HOMO-LUMOの電荷分離が明確であり、また、深いHOMOエネルギー準位を有することからペロブスカイトの価電子帯準位との配置を適切に調節でき、ホール輸送特性を向上させることができる。また、上記した通り、本実施形態に係るホール輸送材料は優れた光吸収特性を有する。したがって、本実施形態に係る太陽電池10は、優れた特性を有するホール輸送材料をホール輸送層5として用いることで、光電変換効率の向上、ひいては電池性能が向上する。
また、上記した〔先行技術〕の項にて説明した従来のSpiro-OMeTAD及びLD29等を、ホール輸送材料を使用する場合には、ホール輸送効率を向上させる機能を有するドーパントの添加を要した。一方、本実施形態のホール輸送材料はドーパントを添加せずとも良好なホール輸送特性を実現することができるとの利点がある。これにより、太陽電池10の作製に必要な工程数及びコストを低減できる。更に、上記の通り、本実施形態に係るホール輸送材料は、高価な試薬類や煩雑な工程を要せず、安価かつ簡便に合成が可能である。このようにコスト面においても優れた本実施形態のホール輸送材料を利用することにより、本実施形態に係る太陽電池10自体の価格低減を図ることが可能となる。
[その他の実施形態]
上記の実施形態では、本実施形態に係るホール輸送材料を用いた太陽電池10としてペロブスカイト太陽電池を例に示したが、このホール輸送材料をOPV(有機薄膜太陽電池)、有機EL、有機半導体を用いたデバイスなどに用いても良い。
本発明を、以下の実施例をもって詳細に説明する。
(実施例1)ホール輸送材料(YCN1)の合成
本実施例で合成を行ったホール輸送材料は、上記一般式(I)に示す「YCN1」と呼称するものであり、A部にベンゾチアジアゾール基を導入した化合物である。合成スキームを要約する図6に基づいて説明する。なお、YCN1は、上記〔背景技術〕の項で説明した非特許文献2(ACS Appl. Mater. Interfaces 2018, 10, 23)等の公知技術に基づいて合成することができる。
(工程1)~(工程4)N3,N3,N6,N6-テトラキス(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール3,6-ジアミン(N3,N3,N6,N6-tetrakis(4-methoxyphenyl)-9H-carbazole-3,6-diamine)4の合成
カルバゾール1を出発化合物として、図6に示す合成スキームの工程1~工程4に基づいてN3,N3,N6,N6-テトラキス(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール3,6-ジアミン4を合成することができる。また、N3,N3,N6,N6-テトラキス(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール3,6-ジアミン4は市販品を用いてもよい。
(工程5)YCN1(一般式(I))の合成
工程4で得られたN3,N3,N6,N6-テトラキス(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール3,6-ジアミン4、及び、4,7-ジブロモベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(4,7-dibromobenzo[c][1,2,5]thiadiazol)5、及び、ナトリウム-tert-ブトキシドをトルエンに溶解した。反応混合物をアルゴン雰囲気下で30分間脱気した。脱気後、Pd2(dba)3及びX-Phosを反応混合物に加えた。反応混合物はアルゴン雰囲気下で、130℃にて12時間還流した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却しジクロロメタンで抽出した後、水、飽和食塩水で洗浄し、有機層を分離、濃縮した。得られた粗生成物はカラムクロマトグラフィーで精製して紫色の固体化合物を得た。得られた化合物を1H NMRにて同定してYCN1の合成を確認した。
(実施例2)ホール輸送材料(PTZ3)の合成
本実施例で合成を行ったホール輸送材料は、上記一般式(II)に示す「PTZ3」と呼称するものであり、A部にフェノチアジン環を導入した化合物である。合成スキームを要約する図7に基づいて説明する。なお、PTZ3は、上記〔背景技術〕の項で説明した非特許文献3(ACS Energy Lett. 2017, 2, 5, 1029-1034)等の公知技術に基づいて合成することができる。
(工程6)~(工程7)3,7-ジブロモ-10-(4-メトキシフェニル)-10H-フェノチアジン(3,7-dibromo-10-(4-methoxyphenyl)-10H-phenothiazine)9の合成
フェノチアジン6を出発化合物として、図7に示す合成スキームの工程6~工程7に基づいて3,7-ジブロモ-10-(4-メトキシフェニル)-10H-フェノチアジン9を合成することができる。また、上記したACS Energy Lett. 2017, 2, 5, 1029-1034のScheme 1. Synthetic Sequence for Obtaining PTZ1 and PTZ2を参照することができる。
(工程8)PTZ3(一般式(II))の合成
丸底フラスコに、上記工程7で得られた3,7-ジブロモ-10-(4-メトキシフェニル)-10H-フェノチアジン9、実施例1の工程4で得られたN3,N3,N6,N6-テトラキス(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール3,6-ジアミン4、カリウム tert-ブトキシド(Potassium tert-butoxide)及び乾燥トルエンを量り入れ、15分間アルゴンにてガス置換を行った。ここに、X-Phos及び Pd2(dba)3を量り入れた。反応混合物はアルゴン気流下で24時間還流を行った。反応終了後放冷し、水に空けた。その後、トルエンで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、有機層を濃縮した。得られた粗生成物はシリカゲルを充てんしたカラムクロマトグラフィーにて精製して、淡黄色の固体化合物を得た。得られた化合物を1H NMRにて同定してPTZ3の合成を確認した。
(実施例3)太陽電池10の作製
以下、実施例3として、太陽電池10の作製例を示す。なお、上記したChem. Mater., 2018, 30, 4193-4218等の公知技術を参照して作製することができる。
一例をあげると、透明基板21にはフッ素ドープ酸化スズ(FTO)ガラス(23mm × 14mm × 3mm)を使用した。このFTOガラスにレーザースクライブを施してFTOを除去した凹部221を形成し、十分に洗浄した。次に、ブロッキング層3としてTiO2緻密膜を原子層堆積法(ALD)法により形成した。更に、マスキングを施したブロッキング層3上に、市販のTiO2ナノ粒子ペーストをエタノールで5倍に希釈した溶液を滴下し、スピンコートにより塗布し、マスキングを取り除いた後、70℃で乾燥させた。乾燥後、500℃で焼成することで、多孔質半導体41となるTiO2ナノ粒子層を形成した。焼成後、室温まで冷却した。
次に、ペロブスカイト層44を形成するペロブスカイト化合物の調製を行った。ペロブスカイト前駆体溶液はMAI(CH3NH3I)を秤量し、この中にあらかじめ調製しておいた1.4MのPbI2/ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を注入することで調製した。このときMAIとPbI2のモル比が1:1となるようにした。またDMSOで希釈することによって、それぞれの濃度が共に1.1Mになるように調製した(MAPbI3溶液)。
更に、ペロブスカイト組成を変更したペロブスカイト化合物の調製を行った。ペロブスカイト前駆体溶液として、MABrを0.2M、臭化鉛(PbBr2)を0.2M、FAI(CH4N2・HI)を1.09M、PbI2を1.15M秤量し、溶媒はN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)とDMSOの体積比が4:1になるようにして、室温で溶解させて調製した(混合カチオン-混合ハライド溶液:(FAPbI3)1-x(MAPbBr3)x溶液)。
ペロブスカイト層44の製膜は、上記した各溶液をTiO2多孔質膜上に滴下し、スピンコートにより塗布した。塗布完了後、100℃で60分間加熱を行い、続いて室温まで冷却した。
続いて、ホール輸送層5の調製を行った。ホール輸送材料としては、上記実施例1及び実施例2で合成したYCN1、及び、PTZ3をそれぞれ用いた。ホール輸送材料溶液は初めにストック溶液としてアセトニトリルにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)が1.8 Mとなるように添加して調製した。次にクロロベンゼンにホール輸送材料が所定濃度になるように調製した(YCN1は30 mM、PTZ3は50 mM)。更に、この溶液に対して4-tert-ブチルピリジン(TBP)が100 mM(YCN1)、165 mM(PTZ3)、LiTFSIが15 mM(YCN1)、25 mM(PTZ3)となるようにそれぞれ添加し、超音波に付すことで充分に拡散させた。なお、コバルト錯体(FK209)等のドーパントは添加しなかった。ホール輸送層5の製膜は、ホール輸送材料溶液をペロブスカイト膜上に滴下し、スピンコート法により形成した。
ホール輸送層5の製膜後、真空蒸着法で約100nmの金を製膜して、これを取り出して電極6とし、これを積層した。
(実施例4)太陽電池の性能評価-1
本実施例では、太陽電池10の性能評価を行った。ここでは、A部としてベンゾチアジアゾール基を有するホール輸送材料について検討した。
図8は、実施例1で取得したYCN1をホール輸送材料とし、実施例3に従って作製した太陽電池10の電池性能評価の結果を示すグラフである。比較例として、上記〔背景技術〕の項で説明した非特許文献2(ACS Appl. Mater. Interfaces 2018, 10, 23)のYN1についても同様に内部標準として評価を行った。図8は、電圧電流特性を示すグラフである。表1には、太陽電池10の電池性能の各パラメータを要約する。なお、以下において、短絡電流密度を「Jsc」、開放電圧を「Voc」、フィルファクターを「FF」、変換効率を「PCE」、直列抵抗を「Rs」と略する場合がある。FFとは、電流と電圧の積が最大となる点における最大出力Pmaxを(Voc×Jsc)で割って算出し、PCEは、(Voc×Jsc×FF÷入射光強度)で算出したものである。
Figure 0007439635000014
図8及び表1の結果より、YCN1の方が高い太陽電池特性を示すことが判明した。YCN1のD部は、3,6-ビス[N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]-9H-カルバゾール-9-イル基のD-A’-D型構造を有し、これにより、D部のカルバゾール環の窒素原子がA部に隣接している。かかる窒素原子の不対電子の作用によりドナー性が高まり、HOMO-LUMOの電荷分離がより明確になったことで、高い太陽電池性能を示したものと考えられる。また、比較例のYN1は、ドーパントとしてコバルト錯体(FK209)を添加することにより、そのホール輸送特性を発揮させて太陽電池特性を引き出しているのに対し、YCN1はコバルト錯体をドーパントとして添加しなくても高い太陽電池特性を示すことができる。したがって、YCN1を用いることにより、安価に太陽電池10を作製でき、コスト面で有利であることが理解できる。
(実施例5)太陽電池の性能評価-2
本実施例では、太陽電池10の性能評価を行った。ここでは、A部としてフェノチアジン環を有するホール輸送材料について検討した。
図9は、実施例2で取得したPTZ3をホール輸送材料とし、実施例3に従って作製した太陽電池10の電池性能評価の結果を示すグラフである。比較例として、上記〔背景技術〕の項で説明した非特許文献3(ACS Energy Lett. 2017, 2, 5, 1029-1034)のPTZ2についても同様に内部標準として評価を行った。図9、電圧電流特性を示すグラフである。表2には、太陽電池10の電池性能の各パラメータを要約する。
Figure 0007439635000015
図9及び表2の結果より、PTZ3の方が高い太陽電池特性を示すことが判明した。PTZもYCN1と同様、D部のカルバゾール環の窒素原子がA部に隣接していることから、ドナー性が高まり、HOMO-LUMOの電荷分離がより明確になったことで、高い太陽電池性能を示したものと考えられる。また、比較例のPTZ2は、ドーパントとしてコバルト錯体(FK209)を添加することにより、そのホール輸送特性を発揮させて太陽電池特性を引き出しているのに対し、PTZ3もYCN1と同様にはコバルト錯体をドーパントとして添加しなくても高い太陽電池特性を示すことができる。したがって、PTZ3を用いることにより、安価に太陽電池10を作製でき、コスト面で有利であることが理解できる。
PTZ3についてDFT計算を行ったところ、HOMO及びHOMO-1と、LUMOとにおいて電子の大きな偏りが認められた。なお、HOMOとHOMO-1では、エネルギー差が0.05eVと非常に小さいため、HOMOとHOMO-1を合わせてHOMOと考えることができる。してみると、分子全体としてみたとき、HOMOとLUMOでの電子の局在化が顕著であり、これによりPTZ3が良好なホール輸送特性を示すといえる。PTZ3は、D-A-D型の構造を持つホール輸送材料であるが、更にD部自体が、D-A’-D型の構造を有していると考えることができ、これにより電子の局在化が顕著になっていると考えることができる。したがって、実施例4にて良好なホール輸送特性を示したYCN1も同様の構造を有していることから、電子の局在化がホール輸送特性の向上に貢献していることが理解できる。
(実施例6)ホール輸送材料(LD-C、LD-D)の検討
本実施例では、実施例4及び5の結果に基づいて、YCN1及びPTZ3と同様に優れたホール輸送機能を有するホール輸送材料の検討を行った。
実施例4で検討したYCN1はベンゾチアジアゾール基を、実施例5で検討したPTZ3はフェノチアジン環をA部に有していることから、ベンゾチアジアゾール基及びフェノチアジン環と同様に高い電子吸引性を示すカルバゾール環をA部として有する化合物がホール輸送材料として優れた機能を有することが期待できる。そこで、LD-C(一般式(III))、及び、LD-D(一般式(IV))を設計した。LD-C及びLD-Dは、実施例1及び2、並び、〔背景技術〕の項で説明した非特許文献1(J.Mater.Chem.C., 2018, 6, 12912-12918)等の記載に基づいて合成することができる。
本発明は、有機及び無機のハイブリッド化合物で生成されるペロブスカイト化合物を備えたペロブスカイト太陽電池などに用いられるホール輸送材料として利用可能である。
2 基板
3 ブロッキング層
4 発電層
5 ホール輸送層
6 電極
10 太陽電池
11 積層体
21 透明基板
22 透明導電膜
41 多孔質半導体
44 ペロブスカイト層
61 光電極
62 対向電極

Claims (2)

  1. 下記一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)に示す化合物であるホール輸送材料。
    Figure 0007439635000016
    Figure 0007439635000017
    Figure 0007439635000018
    Figure 0007439635000019
  2. 請求項1に記載のホール輸送材料を用いた太陽電池であって、
    透明導電膜を有する基板、
    電子を前記透明導電膜に受け渡し、かつ逆電子移動を防止するブロッキング層、
    光によって励起して前記電子を発生するペロブスカイト層を多孔質半導体に積層させて形成される発電層、
    前記ペロブスカイト層から発生したホールが通過し、前記ホール輸送材料を有するホール輸送層、の順に積層される積層体と、
    前記透明導電膜を介して前記電子を放出する光電極、及び、前記ホール輸送層の表面に設けられた対向電極で構成される電極と、を備えている、太陽電池。
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