JP7438749B2 - 光学系の検査方法、プログラム、及び計測装置 - Google Patents

光学系の検査方法、プログラム、及び計測装置 Download PDF

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Description

本発明は、光学系の透過光から光学系内部の不良原因を推定する方法に関する。
複数パターンのレンズから構成される光学製品では、光軸からレンズがずれて配置されると光学性能が低下する。このため、そのずれを高精度に測定し、レンズを再調整したり、光学系の製造工程を見直したりする必要がある。
例えば、特許文献1では計測軸外における複数パターンの物体高座標から光束を照射して測定された波面収差量から光学系内部の偏芯量を計測する偏芯量計測方法が記載されている。その際、測定した波面データから所定の収差成分を抽出し、偏芯収差感度について連立1次方程式を解く必要がある。
また、特許文献2では参照波面と被検光学系の透過波面とにより生じる干渉縞に対して機械学習を用いてZernike Fittingを行う波面収差測定器が記載されている。
特許第5870234号 特開平6-235619号公報
光学系の不良解析を行う際、不良原因を探る方法の一つとして組み換え検討がある。組み換え検討という手法は、人の手で部品を良品と不良品で組み替えて原因を探るため、光学性能の不良原因の究明に多大な時間を要することとなる。
本発明は、機械学習により効率の良い解析でレンズの不良原因の推定が可能となるため、光学性能の不良原因の解析工数を削減し、レンズの組み換え検討時間を削減可能な、光学系の検査方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面としての光学系の検査方法は、被検物の光学系を測定して得られた前記被検物の第1の光学性能を取得するステップと、前記被検物の第1の光学性能を第1の識別器に入力して、それぞれが製造誤差を含む光学系サンプルの中から、複数のサンプルを抽出するステップと、前記複数のサンプルに対応する第2の識別器に関する情報を取得するステップと、前記複数のサンプルの第2の光学性能を前記第2の識別器に入力して、前記被検物における不良原因に関する情報を出力するステップと、を有し、前記光学系サンプルは、レンズ群の平行偏芯、レンズ群の傾き偏芯、レンズ群間隔、レンズの厚み、レンズ面形状の、少なくともいずれかを前記被検物の設計基準値に対して所定の範囲内でばらつかせて前記設計基準値に重畳することにより作成され、前記第1の識別器は、前記光学系サンプルのそれぞれの識別情報と、前記光学系サンプルのそれぞれの第1の光学性能とを用いた学習により、構築され、前記第2の識別器は、前記複数のサンプルの第2の光学性能と、該第2の光学性能に対応する第3の光学性能とを用いた学習により、構築されることを特徴とする。

本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
本発明によれば、機械学習により効率の良い解析でレンズの不良原因の推定が可能となるため、光学性能の不良原因の解析工数を削減でき、レンズの組み換え検討時間を削減できる。
本発明の波面収差計測装置の構成を示す図 本発明に用いるパソコンの構成を示す図 機械学習における第1の識別器の学習モデルの概念図 第1の識別器における入出力の概念図 機械学習における第2の識別器の学習モデルの概念図 第2の識別器における入出力の概念図 本発明における不良原因を推定するための光学系の検査方法を示すフローチャート 実施例1,2,5,6,7における透過波面の計算方法を説明するための図 実施例1における第1の識別器の構築方法を示すフローチャート 実施例1における類似誤差事例の抽出方法を示すフローチャート 実施例1における第2の識別器の構築方法を示すフローチャート 実施例2における第1の識別器の構築方法を示すフローチャート 実施例2における類似誤差事例の抽出方法を示すフローチャート 実施例2における第2の識別器の構築方法を示すフローチャート 実施例3,4における透過波面の計算方法を説明するための図 実施例5における光学伝達関数の推定方法を示すフローチャート 実施例5における第2の識別器の構築方法を示すフローチャート 実施例6における第1の識別器の構築方法を示すフローチャート 実施例6における第2の識別器の構築方法を示すフローチャート 実施例7における第1の識別器の構築方法を示すフローチャート 実施例7における第2の識別器の構築方法を示すフローチャート
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1は、波面収差計測装置10(測定装置)の概念図である。1,2は、透過波面を計測するための光束を出力する光源である。120は検査対象となる光学系で、複数パターンのレンズで構成される。各々のレンズは、レンズ単体の形状誤差や、光学系の偏芯や倒れなどの、いわゆる組立誤差を有している。4,5は波面センサで、光学系120を透過した光束の波面収差を(検出)計測する。6はパソコン、7は結像面である。取得された波面収差はUSBケーブルを通してパソコンへ取り込まれる。図1では、波面計測にシャックハルトマンセンサを用いた例を示しているが、これに限らず不図示のフィゾー干渉計等を用いることも可能である。
図2にパソコン6の構成を示す。パソコン6は、演算を行うCPU(演算部)21、演算結果を格納するメモリ22、情報入力用のキーボード23、情報選択用のマウス24、情報表示用のディスプレイ25で構成される。
図3は、機械学習によって構築される第1の識別器の入出力の構造を示す概念図である。
収集データの作成には光学系サンプルを用いる。光学系サンプルとは、被検物の設計基準値に製造誤差を重畳したサンプルを指す。被検物とは、不良解析の対象となる光学系を指す。製造誤差とは、光学系を構成するレンズ群(以降、レンズ群はレンズ単体も含む意である。)の持つ誤差量である。例えば、レンズ群の平行偏芯、レンズ群の傾き偏芯、レンズ群間隔、レンズの厚み、レンズ面形状を指す。これを想定の範囲内(所定範囲内)でばらつかせて設計基準値に重畳し、複数パターンの光学系サンプルを作成する。想定の範囲とは、内部素子の製造公差範囲の少なくとも1倍、多くとも5倍が好ましい。光学系サンプルには識別情報として番号を割り振る。これを光学系サンプル番号と呼び、入力データとして利用する。
更に、入力データを作成するために収集データを加工する。各光学系サンプルの光学性能を計算する。光学性能とは波面収差と、光線収差に関する情報、像面情報の少なくともいずれかの情報を含む。計算で得られた光学性能を入力データとして利用する。
入力データを機械学習に用いる具体的なアルゴリズムとしては、最近傍法、ナイーズベイズ法、決定木、サポートベクターマシンなどが挙げられる。また、学習するための特徴量、結合重み付け係数を自ら生成する深層学習(ディープラーニング)も挙げられる。適宜、上記アルゴリズムのうち利用できるものを用いて本実施形態に適用することができる。機械学習部は、入力層に入力される入力データに応じて、決定木を作成し、入力データに対する出力データを出力できるよう入力データの傾向を学習する。こうして第1の識別器が構築される。
推定フェーズの入力データの準備には取得データが必要である。図1に記載の測定装置で透過波面または透過光を測定し、被検物の光学性能を得る。取得した光学性能が取得データとなる。
第1の識別器に入力されるデータ例を図4に示す。第1の識別器は、取得データを入力すると、光学系サンプル番号を出力する。出力データは光学系サンプルの識別情報となっており、番号をたどると、偏芯状態や光学性能が取得できる。この出力データは、取得データに類似している光学系サンプルを抽出するために利用される。
図5は、機械学習によって構築される第2の識別器の入出力の構造を示す概念図である。
収集データの作成には光学性能と光学伝達関数の関係の算出が必要となる。光学性能と光学伝達関数の関係の算出に必要な数の光学系サンプルから算出された光学性能と光学伝達関数を入力データとして利用する。入力データを機械学習に用いる具体的なアルゴリズムとしては、最近傍法、ナイーズベイズ法、決定木、サポートベクターマシンなどが挙げられる。また、学習するための特徴量、結合重み付け係数を自ら生成する深層学習(ディープラーニング)も挙げられる。適宜、上記アルゴリズムのうち利用できるものを用いて本実施形態に適用することが出来る。機械学習部は、入力層に入力される入力データに応じて、決定木を作成し、入力データに対する出力データを出力できるよう入力データの傾向を学習する。こうして第2の識別器が構築される。推定フェーズの入力データの準備には取得データが必要である。算出した光学性能が取得データとなる。
第2の識別器に入力されるデータ例を図6に示す。第2の識別器に取得データを入力すると、光学伝達関数を出力する。この出力データは、取得データに対する光学伝達関数を瞬時に求めるために利用される。
測定できる光学性能を利用して、光学性能の不良解析を行う実施例を以下に示す。
本実施例では、被検物の軸上の波面収差を用いて軸上の光学性能の劣化原因(不良原因)を推定する手法に関して述べる。
図7のフローチャートは、本実施例における不良原因を推定するための光学系の検査方法を示している。この検査方法に従う処理をコンピュータがコンピュータプログラムに従って実行することができる。
S101では、光学系サンプルを作成する。
S102では、S101で作成した複数パターンの光学系サンプルの軸上の波面収差(第1の光学性能)をそれぞれ計算する。
以下、図8を用いて波面収差の計算方法を説明する。軸上光130は、光学系120を経由して像点140に集光する光を示す。不図示の物点(図8では無限遠)から像点まで複数パターンの光線を追跡し、光学系120から出射される光線の光路長分布が透過波面160となる。収差が無い理想的な透過波面150と、実際の透過波面160との差が波面収差である。
図7に戻って、S103では、S102にて取得した波面収差を用いて第1の識別器を構築する。第1の識別器の構築に決定木を用いた手法に関して、図9を用いて説明する。S201では、S102にて取得した光学系サンプルの波面収差を入力する。S202では、識別情報として光学系サンプルに割り振られた番号を入力する。この番号を光学系サンプル番号とする。S203では、S201とS202にて入力した光学系サンプルの波面収差と光学系サンプル番号を紐付ける。S204では、作成した複数パターンの光学系サンプル全ての入力が終了するまで、S201からS203を繰り返す。S205では、多数の決定木を構築する。こうして第1の識別器が構築される。この第1の識別器に波面収差を入力すると、入力に類似している光学性能の傾向を持つ光学系サンプル番号が取得可能となる。
図7に戻って、S104では、被検物の光学情報を計測する。被検物の透過波面測定を行い、被検物の波面収差(第1の光学性能)を取得する。
S105では、S104にて取得した被検物の波面収差と、S103にて構築した第1の識別器とを用いて類似誤差事例を抽出する。類似誤差事例とは、被検物に近しい光学系の形態を持つ光学系サンプルを指す。類似誤差事例の抽出フローを図10に示す。S301では、S104にて取得した被検物の波面収差を第1の識別器に入力する。S302では、入力データに近しい学習データを機械学習にて分類する。S303では、分類された学習データから光学系サンプルを出力する。これにより、類似誤差事例を抽出することが可能となる。
図7に戻って、S106にて、各類似誤差事例の不良原因を抽出する。各類似誤差事例の持つ製造誤差と、被検物の各レンズ群における収差感度とを用いて計算を行い、各類似誤差事例のレンズ群ごとの波面収差(第2の光学性能)を取得する。取得した類似誤差事例のレンズ群の波面収差を用いて、第2の識別器を構築する。
第2の識別器の構築に決定木を用いた手法に関して、図11を用いて説明する。類似誤差事例の中から所定数の光学系サンプルを用いて、予め波面収差と光学伝達関数の関係を数値で求めておく必要がある。ここで、所定数とは、波面収差と光学伝達関数の関係を求めるのに十分な数であり、類似誤差事例の数より少ない。S401では、上記関係を求める際に用いた所定数の光学系サンプルの波面収差を入力する。S402では、上記関係を求める際に用いた所定数の光学系サンプルの光学伝達関数(第3の光学性能)を求める。S403では、S401とS402にて入力した波面収差と光学伝達関数を紐付ける。S404では、上記関係を求める際に用いたパラメータ全ての入力が終了するまでS401からS403を繰り返す。S405では、多数の決定木を構築する。こうして、第2の識別器が構築される。この第2の識別器に波面収差を入力すると、光学伝達関数が取得できる。第2の識別器に各類似誤差事例のレンズ群の持つ波面収差を各々入力し、それぞれの光学伝達関数を推定する。その結果から、各類似誤差事例の不良原因が抽出できる。
図7に戻って、S107では、S106にて取得した各不良原因に対応する製造誤差を被検物の設計基準値に単独で重畳させたときの光学性能(第4の光学性能)と、被検物の光学性能とを比較し、被検物に近しい光学性能の傾向を持つ不良原因を不具合と推定する。ここで述べる不具合とは、被検物の不良原因を指す。光学性能とは、波面収差と、光線収差、像面情報の少なくともいずれかの情報を含む。像面情報とは像面湾曲を含む。
S101に述べた製造誤差の想定の範囲内として、レンズ、レンズ群の公差範囲の少なくとも1倍、多くとも5倍が好ましいと記述したが、これに限らない。S102において、図8では軸上光のみを記述したが、これに限らない。S103において、本実施例では第1の識別器の構築に決定木を用いた手法を明記した。機械学習には様々な手法があるが、波面収差から被検物に類似している光学系サンプルを取得できるものであれば良く、本実施例は上述の手法に限定されるものではない。S106において、本実施例では第2の識別器の構築に決定木を用いた手法を明記した。機械学習には様々な手法があるが、波面収差から光学伝達関数を取得できるものであれば良く、本実施例は上述の手法に限定されるものではない。また、S106において、予め波面収差と光学伝達関数の関係を求める必要があるが、関係を求めることができれば手法は問わない。
以下に、本実施例に対応する実例を述べる。図8の物体側から1群G1、2群G2、3群G3で構成される光学系120と同じ光学系が被検物となった場合を示す。
S101にて、光学系サンプルを作成する。光学系120の設計基準値に想定の範囲内の製造誤差を重畳し、複数パターンの光学系サンプルを作成する。本実例では光学系サンプルを3000本作成した。
S102にて、作成した光学系サンプルの波面収差を算出する。
S103にて、各光学系サンプル番号と計算で求めた波面収差を紐付けし、第1の識別器の構築を行う。この第1の識別器に波面収差を入力すると、光学系サンプル番号が出力され、出力された光学系サンプルの偏芯状態や光学性能を取得できる。
S104にて、被検物の光学情報を測定する。測定には軸上の透過波面を測定できる測定器を用いる。本実例では、シャックハルトマンセンサを用いた図1のような測定装置を使用した。取得した被検物の波面収差を表1に示す。
S105にて、S104で取得した被検物の波面収差を用いて類似誤差事例を抽出する。表1の数値をS103にて構築した第1の識別器に入力する。得られた類似誤差事例を表2に示す。光学系サンプル番号の列には抽出した類似誤差事例の光学系サンプル番号、「分類結果 確率」の列には、入力に対する各光学系サンプルの類似度を、1を最大として出力している。本実例では、光学系サンプル番号2725が作成した光学系サンプルの中で最も被検物の光学系に類似していると示されている。
S106にて、各類似誤差事例の持つ製造誤差と、被検物の各レンズ群における収差感度を用いて計算を行い、各類似誤差事例のレンズ群ごとの波面収差を取得する。取得した類似誤差事例の波面収差を用いて各々が光学伝達関数にどの程度影響しているかを機械学習にて求める。そのための第2の識別器を構築する。類似誤差事例の中から所定数の光学系サンプルを用いて、予め波面収差と光学伝達関数の関係を数値で求めておく必要がある。算出した波面収差と光学伝達関数を紐付けする。これにより類似誤差事例の任意の光学系サンプルの波面収差を入力することでそれに対応する光学伝達関数が取得可能となる。この第2の識別器に、算出して得た各類似誤差事例のレンズ群ごとの波面収差を入力し、各々が光学伝達関数にどの程度影響しているか取得する。光学伝達関数への影響が最も大きいレンズ群を各類似誤差事例の不良原因と推定する。これより得られた不良原因を表3に示す。
S107にて、被検物の不具合を推定する。S106にて得られた各不良原因に対応する製造誤差を被検物の設計基準値に一つずつ重畳させたときの光学性能と、被検物の光学性能とを比較し、被検物に近しい光学性能の傾向を持つ不良原因を不具合と推定する。本実例では、周辺の光学性能の傾向を比較した。その結果、本実例では1群G1の平行偏芯が不具合であると推定できた。
本手法を用いることで、軸上の波面収差の情報を利用した解析で、軸上の光学性能の劣化原因を推定することが可能となる。これにより、不具合の当たりをつけられるようになるため、従来の組み換え検討より工数削減が見込める。
実施例1では、被検物の軸上の光学性能の劣化原因を推定するために波面収差の情報を用いる手法に関して述べた。本実施例では、被検物の光線収差の情報を用いて軸上の光学性能の劣化原因を推定する手法に関して述べる。
図7のフローチャートは、本実施例における不良原因を推定するための光学系の検査方法を示している。この検査方法に従う処理をコンピュータがコンピュータプログラムに従って実行することができる。
S101は、実施例1と同じため省略する。
S102では、S101で作成した複数パターンの光学系サンプルの軸上の光線収差(第1の光学性能)をそれぞれ計算する。光線収差は波面収差からの換算で容易に取得可能である。そのため、実施例1と同じ計算方法で波面収差を算出した後、光線収差へ換算する方法が好ましい。
S103では、S102にて取得した光線収差を用いて第1の識別器を構築する。第1の識別器の構築に決定木を用いた手法に関して、図12を用いて説明する。S501では、S102にて取得した光学系サンプルの光線収差を入力する。S502では、識別情報として光学系サンプルに割り振られた番号を入力する。この番号を光学系サンプル番号とする。S503では、S501とS502にて入力した光学系サンプルの光線収差と光学系サンプル番号を紐付ける。S504では、作成した複数パターンの光学系サンプル全ての入力が終了するまで、S501からS503を繰り返す。S505では、多数の決定木を構築する。こうして第1の識別器が構築される。この第1の識別器に光線収差を入力すると、入力に類似している光学性能の傾向を持つ光学系サンプル番号が取得可能となる。
図7に戻って、S104では、被検物の光学情報を計測する。被検物の透過波面測定を行い、被検物の光線収差(第1の光学性能)を取得する。
S105では、S104にて取得した被検物の光線収差と、S103にて構築した第1の識別器とを用いて類似誤差事例を抽出する。類似誤差事例とは、被検物に近しい光学系の形態を持つ光学系サンプルを指す。類似誤差事例の抽出フローを図13に示す。S601では、S104にて取得した被検物の光線収差を第1の識別器に入力する。S602では、入力データに近しい学習データを機械学習にて分類する。S603では、分類された学習データから光学系サンプルを出力する。これにより、類似誤差事例を抽出することが可能となる。
図7に戻って、S106にて、各類似誤差事例の不良原因を抽出する。各類似誤差事例の持つ製造誤差と、被検物の各レンズ群における収差感度とを用いて計算を行い、各類似誤差事例のレンズ群ごとの光線収差(第2の光学性能)を取得する。取得した類似誤差事例のレンズ群の光線収差を用いて、第2の識別器を構築する。第2の識別器の構築に決定木を用いた手法に関して、図14を用いて説明する。類似誤差事例の中から所定数の光学系サンプルを用いて、予め光線収差と光学伝達関数の関係を数値で求めておく必要がある。ここで、所定数とは、波面収差と光学伝達関数の関係を求めるのに十分な数であり、類似誤差事例の数より少ない。S701では、上記関係を求める際に用いた所定数の光学系サンプルの光線収差を入力する。S702では、上記関係を求める際に用いた所定数の光学系サンプルの光学伝達関数(第3の光学性能)を求める。S703では、S701とS702にて入力した光線収差と光学伝達関数を紐付ける。S704では、上記関係を求める際に用いたパラメータ全ての入力が終了するまでS701からS703を繰り返す。S705では、多数の決定木を構築する。こうして、第2の識別器が構築される。この第2の識別器に光線収差を入力すると、光学伝達関数が取得できる。第2の識別器に各類似誤差事例のレンズ群の持つ光線収差を各々入力し、それぞれの光学伝達関数を推定する。その結果から、各類似誤差事例の不良原因が抽出できる。
図7に戻って、S107では、S106にて取得した各不良原因に対応する製造誤差を被検物の設計基準値に単独で重畳させたときの光学性能(第4の光学性能)と、被検物の光学性能とを比較し、被検物に近しい光学性能の傾向を持つ不良原因を不具合と推定する。ここで述べる不具合とは、被検物の不良原因を指す。光学性能とは、波面収差と、光線収差、像面情報の少なくともいずれかの情報を含む。像面情報とは像面湾曲を含む。
S102において、光線収差を求める情報として、波面収差から換算する方法を示したが、光線収差が求められる手法であれば良く、本発明を上述の手法に限定するものではない。
S103において、本実施例では第1の識別器の構築に決定木を用いた手法を明記した。機械学習には様々な手法があるが、光線収差から被検物に類似している光学系サンプルを取得できるものであれば良く、本発明を上述の手法に限定するものではない。
S106において、本実施例では第2の識別器の構築に決定木を用いた手法を明記した。機械学習には様々な手法があるが、光線収差から光学伝達関数を取得できるものであれば良く、本発明を上述の手法に限定するものではない。また、S106において、予め光線収差と光学伝達関数の関係を求める必要があるが、関係を求めることができれば手法は問わない。
以下に、本実施例に実例を述べる。図8の物体側から1群G1、2群G2、3群G3で構成される光学系120と同じ光学系が被検物となった場合を示す。
S101にて、光学系サンプルを作成する。光学系120の設計基準値に想定の範囲内の製造誤差を重畳し、複数パターンの光学系サンプルを作成する。本実例では光学系サンプルを3000本作成した。
S102にて、作成した光学系サンプルの光線収差を算出する。
S103にて、各光学系サンプル番号と計算で求めた光線収差を紐付けし、第1の識別器の構築を行う。この第1の識別器に光線収差を入力すると、光学系サンプル番号が出力され、出力された光学系サンプルの偏芯状態や光学性能を取得できる。
S104にて、被検物の光学情報を測定する。測定には軸上の透過波面を測定できる測定器を用いる。本実例では、シャックハルトマンセンサを用いた図1のような測定装置を使用した。測定された透過波面から被検物の光線収差を算出し、取得した被検物の光線収差を表4に示す。
S105にて、S104で取得した被検物の光線収差を用いて類似誤差事例を抽出する。表4の数値をS103にて構築した第1の識別器に入力する。得られた類似誤差事例を表5に示す。光学系サンプル番号の列には抽出した類似誤差事例の光学系サンプル番号、「分類結果 確率」の列には、入力に対する各光学系サンプルの類似度を、1を最大として出力している。本実例では、光学系サンプル番号2が作成した光学系サンプルの中で最も被検物の光学系に類似していると示されている。
S106にて、各類似誤差事例の持つ製造誤差と、被検物の各レンズ群における収差感度を用いて計算を行い、各類似誤差事例のレンズ群ごとの光線収差を取得する。取得した類似誤差事例の光線収差を用いて各々が光学伝達関数にどの程度影響しているかを機械学習にて求める。そのための第2の識別器を構築する。類似誤差事例の中から所定数の光学系サンプルを用いて、予め光線収差と光学伝達関数の関係を数値で求めておく必要がある。算出した光線収差と光学伝達関数を紐付けする。これにより類似誤差事例の任意の光学系サンプルの光線収差を入力することでそれに対応する光学伝達関数が取得可能となる。この第2の識別器に、算出して得た各類似誤差事例のレンズ群ごとの光線収差を入力し、各々が光学伝達関数にどの程度影響しているか取得する。光学伝達関数への影響が最も大きいレンズ群を各類似誤差事例の不良原因と推定する。これより得られた不良原因を表6に示す。
S107にて、被検物の不具合を推定する。S106にて得られた各不良原因に対応する製造誤差を被検物の設計基準値に一つずつ重畳させたときの光学性能と、被検物の光学性能とを比較し、被検物に近しい光学性能の傾向を持つ不良原因を不具合と推定する。本実例では、周辺の光学性能の傾向を比較した。その結果、本実例では2群G2の平行偏芯が不具合であると推定できた。
本手法を用いることで、軸上の光線収差の情報を利用した解析で、軸上の光学性能劣化の原因を推定することが可能となる。これにより、不具合の当たりをつけられるようになるため従来の組み換え検討より工数削減が見込める。
実施例1、2では被検物の軸上の光学性能の劣化原因の推定に関して述べた。本実施例では、被検物の軸外の光学性能の劣化原因を軸外の波面収差の情報を用いて推定する手法を示す。
図7のフローチャートは、本実施例における不良原因を推定するための光学系の検査方法を示している。この検査方法に従う処理をコンピュータがコンピュータプログラムに従って実行することができる。
S101は、実施例1と同じため省略する。
S102では、S101で作成した複数パターンの光学系サンプルの軸外の波面収差(第1の光学性能)をそれぞれ計算する。
以下、図15を用いて波面収差の計算方法を説明する。軸外光131は、光学系121を経由して像点141に集光する光を示す。不図示の物点(図15では無限遠)から像点まで複数パターンの光線を追跡し、光学系121から出射される光線の光路長分布が透過波面161となる。収差が無い理想的な透過波面151と、実際の透過波面161との差が波面収差である。
S103は実施例1と同じため省略する。
S104では、被検物の光学情報を計測する。被検物の透過波面測定を行い、波面収差を取得する。
S105からS107は、実施例1と同じため省略する。
S102において、図15では軸外光1本のみを記述したが、これに限らない。
以下に、本実施例に対応する実例を述べる。図15の物体側から1群g1、2群g2、3群g3で構成される光学系121と同じ光学系が被検物となった場合を示す。
S101にて、光学系サンプルを作成する。光学系121の設計基準値に想定の範囲内の製造誤差を重畳し、複数パターンの光学系サンプルを作成する。本実例では光学系サンプルを3000本作成した。
S102にて、作成した光学系サンプルの波面収差を算出する。
S103にて、各光学系サンプル番号と計算で求めた波面収差を紐付けし、第1の識別器の構築を行う。この第1の識別器に波面収差を入力すると、光学系サンプル番号が出力され、出力された光学系サンプルの偏芯状態や光学性能を取得できる。
S104にて、被検物の光学情報を測定する。測定には軸外の透過波面を測定できる測定器を用いる。本実例では、シャックハルトマンセンサを用いた図1のような測定装置を使用した。取得した被検物の波面収差を表7に示す。
S105にて、S104で取得した被検物の波面収差を用いて類似誤差事例を抽出する。表7の数値をS103にて構築した第1の識別器に入力する。得られた類似誤差事例を表8に示す。光学系サンプル番号の列には抽出した類似誤差事例の光学系サンプル番号、「分類結果 確率」の列には、入力に対する各光学系サンプルの類似度を、1を最大として出力している。今回だと、光学系サンプル番号2895が作成した光学系サンプルの中で最も被検物の光学系に類似していると示されている。
S106にて、各類似誤差事例の持つ製造誤差と、被検物の各レンズ群における収差感度を用いて計算を行い、各類似誤差事例のレンズ群ごとの波面収差を取得する。取得した類似誤差事例の波面収差を用いて各々が光学伝達関数にどの程度影響しているかを機械学習にて求める。そのための第2の識別器を構築する。類似誤差事例の中から所定数の光学系サンプルを用いて、予め波面収差と光学伝達関数の関係を数値で求めておく必要がある。算出した波面収差と光学伝達関数を紐付けする。これにより類似誤差事例の中から任意の光学系サンプルの波面収差を入力することでそれに対応する光学伝達関数が取得可能となる。この第2の識別器に、算出して得た各類似誤差事例のレンズ群ごとの波面収差を入力し、各々が光学伝達関数にどの程度影響しているか取得する。光学伝達関数への影響が最も大きいレンズ群を各類似誤差事例の不良原因と推定する。これより得られた不良原因を表9に示す。
S107にて、被検物の不具合を推定する。S106にて得られた各不良原因に対応する製造誤差を被検物の設計基準値に一つずつ重畳させたときの光学性能と、被検物の光学性能とを比較し、被検物に近しい光学性能の傾向を持つ不良原因を不具合と推定する。本実例では、軸上の光学性能の傾向を比較した。その結果、本実例では3群g3の平行偏芯が不具合と推定できた。
本手法を用いることで、軸外の波面収差の情報を利用した解析で、軸外の光学性能劣化の原因を推定することが可能となる。これにより、不具合の当たりをつけられるようになるため従来の組み換え検討より工数削減が見込める。
実施例3では、被検物の軸外の光学性能の劣化原因を波面収差の情報を用いて推定する手法に関して述べた。本実施例では、被検物の光線収差の情報を用いて軸外の光学性能の劣化原因を推定する手法に関して述べる。
図7のフローチャートは、本実施例における不良原因を推定するための光学系の検査方法を示している。この検査方法に従う処理をコンピュータがコンピュータプログラムに従って実行することができる。
S101は、実施例1と同じため省略する。
S102では、S101で作成した複数パターンの光学系サンプルの軸外の光線収差(第1の光学性能)をそれぞれ計算する。光線収差は波面収差からの換算で容易に取得可能である。そのため、実施例1と同じ計算方法で波面収差を算出した後、光線収差へ換算する方法が好ましい。
S103は、実施例2と同じため省略する。
S104では、被検物の光学情報を計測する。被検物の透過波面の測定を行い、光線収差を取得する。
S105からS107は、実施例2と同じため省略する。
S102において、光線収差を求める情報として、波面収差から換算する方法を示したが、光線収差が求められる手法であれば良く、本発明を上述の手法に限定するものではない。
下記に、本実施例に対応する実例を述べる。図15の物体側から1群g1、2群g2、3群g3で構成される光学系121と同じ光学系が被検物となった場合を示す。
S101にて、光学系サンプルを作成する。光学系121の設計基準値に想定の範囲内の製造誤差を重畳し、複数パターンの光学系サンプルを作成する。本実例では光学系サンプルを3000本作成した。
S102にて、作成した光学系サンプルの光線収差を算出する。
S103にて、各光学系サンプル番号と計算で求めた光線収差を紐付けし、第1の識別器の構築を行う。この第1の識別器に光線収差を入力すると、光学系サンプル番号が出力され、出力された光学系サンプルの偏芯状態や光学性能を取得できる。
S104にて、被検物の光学情報を測定する。測定には軸外の透過波面を測定できる測定器を用いる。本実例では、シャックハルトマンセンサを用いた図1のような測定装置を使用した。測定された透過波面から被検物の光線収差を算出し、取得した被検物の光線収差を表10に示す。
S105にて、S104で取得した被検物の光線収差を用いて類似誤差事例を抽出する。表10の数値をS103にて構築した第1の識別器に入力する。得られた類似誤差事例を表11に示す。光学系サンプル番号の列には抽出した類似誤差事例の光学系サンプル番号、「分類結果 確率」の列には、入力に対する各光学系サンプルの類似度を、1を最大として出力している。本実例では、光学系サンプル番号555が作成した光学系サンプルの中で最も被検物の光学系に類似していると示されている。
S106にて、各類似誤差事例の持つ製造誤差と、被検物の各レンズ群における収差感度を用いて計算を行い、各類似誤差事例のレンズ群ごとの光線収差を取得する。取得した類似誤差事例の光線収差を用いて各々が光学伝達関数にどの程度影響しているかを機械学習にて求める。そのための第2の識別器を構築する。類似誤差事例の中から所定数の光学系サンプルを用いて、予め光線収差と光学伝達関数の関係を数値で求めておく必要がある。算出した光線収差と光学伝達関数を紐付けする。これにより類似誤差時後方の任意の光学系サンプルの光線収差を入力することでそれに対応する光学伝達関数が取得可能となる。この第2の識別器に、算出して得た各類似誤差事例のレンズ群ごとの光線収差を入力し、各々が光学伝達関数にどの程度影響しているか取得する。光学伝達関数への影響が最も大きいレンズ群を各類似誤差事例の不良原因と推定する。これより得られた不良原因を表12に示す。
S107にて、被検物の不具合を推定する。S106にて得られた各不良原因に対応する製造誤差を被検物の設計基準値に一つずつ重畳させたときの光学性能と、被検物の光学性能とを比較し、被検物に近しい光学性能の傾向を持つ不良原因を不具合と推定する。本実例では、軸上の光学性能の傾向を比較した。その結果、本実例では1群g1の倒れが不具合と推定できた。
本手法を用いることで、軸外の光線収差の情報を利用した解析で、軸外の光学性能劣化の原因を推定することが可能となる。これにより、不具合の当たりをつけられるようになるため従来の組み換え検討より工数削減が見込める。
実施例1から4では、被検物の光学性能の劣化原因の推定手法に関して述べた。本実施例では、被検物の収差情報からその収差発生時の光学伝達関数を推定する手法を示す。
図16のフローチャートは、本実施例における光学伝達関数を推定する推定方法を示している。この推定方法に従う処理をコンピュータがコンピュータプログラムに従って実行することができる。
S801では、収差情報と光学伝達関数の関係を計算する。ここで述べる収差情報には、波面収差か光線収差の少なくともいずれかの情報を含む。収差情報を用いて、その収差発生時の光学伝達関数がどの程度劣化するか計算で求める。
S802では、識別器を構築するが、これは第2の識別器である。本実施例では、決定木を用いて第2の識別器を構築する手法について、図17を用いて説明する。第2の識別器を構築するにあたって、S901では収差情報を入力する。S902では、光学伝達関数を入力する。S903では、S901とS902にて入力した収差情報と光学伝達関数を紐付ける。S904では、作成した複数パターンある収差情報と光学伝達関数の関係を全て入力終了するまでS901からS903を繰り返す。S905では、多数の決定木を構築する。こうして第2の識別器が構築される。この第2の識別器に、収差情報を入力すると、光学伝達関数が取得可能となる。
S803では、第2の識別器に収差情報を入力する。
S804では、入力に対しての光学伝達関数を機械学習で第2の識別器から推定する。
S805では、入力に対する光学伝達関数が出力される。
S802において、第2の識別器の構築に本実施例では決定木を用いた手法を明記した。機械学習には様々な手法があるが、収差情報から光学伝達関数を取得できるものであれば良く、本発明を上述の手法に限定するものではない。
以下に本実施例に対応する実例を示す。図8の物体側から1群G1、2群G2、3群G3で構成される光学系120と同じ光学系が被検物となった場合を示す。
S801にて、光学伝達関数を知りたい光学系における、収差情報と光学伝達関数の関係を算出する。
S802にて、光学伝達関数を求めるための第2の識別器を構築する。S801にて算出した光学系の収差情報と光学伝達関数の関係を決定木による機械学習で紐付けし、傾向を学習する。
S803にて、S802にて構築した第2の識別器に光学伝達関数を求めたい光学系の収差情報を入力する。本実例では、表13に示す収差情報を入力した。ここに示すコマ収差はZernike係数を用いてコマ成分を示した。
S804にて、S802で構築した第2の識別器が、入力に対する光学伝達関数を多数の決定木から推定する。
S805にて、推定結果を出力する。出力の表示例を表14に示す。2段目に推定された光学伝達関数が「prediction」の行に[[メリジオナル方向の光学伝達関数,サジタル方向の光学伝達関数]]の形式で表示されている。表示された数値を100倍すると単位が「%」になる。
本手法を用いることで、収差情報から光学伝達関数が推定可能となる。これにより、他の実施例に示すような光学性能の不良解析が可能となる。
本実施例では透過光の測定結果から得られる像面情報を用いて、光学性能の劣化原因を推定する手法に関して示す。像面情報には像面湾曲が含まれる。
図7のフローチャートは、本実施例における不良原因を推定するための光学系の検査方法を示している。この検査方法に従う処理をコンピュータがコンピュータプログラムに従って実行することができる。
S101は、実施例1と同じため省略する。
S102では、S101で作成した複数パターンの光学系サンプルの透過光から像面情報(第1の光学性能)をそれぞれ計算する。
S103では、S102にて取得した像面情報を用いて第1の識別器を構築する。第1の識別器の構築に決定木を用いた手法に関して、図18を用いて説明する。S351では、S102にて取得した光学系サンプルの像面情報を入力する。S352では、識別情報として光学系サンプルに割り振られた番号を入力する。この番号を光学系サンプル番号とする。S353では、S351とS352にて入力した光学系サンプルの像面情報と光学系サンプル番号を紐付ける。S354では、作成した複数パターンの光学系サンプル全ての入力が終了するまで、S351からS353を繰り返す。S355では、多数の決定木を構築する。こうして第1の識別器が構築される。この第1の識別器に像面情報を入力すると、入力に類似している光学性能の傾向を持つ光学系サンプル番号が取得可能となる。
図7に戻って、S104では、被検物の光学情報を計測する。被検物の透過光測定を行い、被検物の像面情報(第1の光学性能)を取得する。
S105では、S104にて取得した被検物の像面情報と、S103にて構築した第1の識別器とを用いて類似誤差事例を抽出する。
S106にて、各類似誤差事例の不良原因を抽出する。各類似誤差事例の持つ製造誤差と、被検物の各レンズ群における収差感度とを用いて計算を行い、各類似誤差事例のレンズ群ごとの像面情報(第2の光学性能)を取得する。取得した類似誤差事例のレンズ群の像面情報を用いて、第2の識別器を構築する。第2の識別器の構築に決定木を用いた手法に関して、図19を用いて説明する。類似誤差事例の中から所定数の光学系サンプルを用いて、予め像面情報と光学伝達関数の関係を数値で求めておく必要がある。ここで、所定数とは、像面情報と光学伝達関数の関係を求めるのに十分な数であり、類似誤差事例の数より少ない。S361では、上記関係を求める際に用いた所定数の光学系サンプルの像面情報を入力する。S362では、上記関係を求める際に用いた所定数の光学系サンプルの光学伝達関数(第3の光学性能)を求める。S363では、S361とS362にて入力した像面情報と光学伝達関数を紐付ける。S364では、上記関係を求める際に用いたパラメータ全ての入力が終了するまでS361からS363を繰り返す。S365では、多数の決定木を構築する。こうして、第2の識別器が構築される。この第2の識別器に像面情報を入力すると、光学伝達関数が取得できる。第2の識別器に各類似誤差事例のレンズ群の持つ像面情報を各々入力し、それぞれの光学伝達関数を推定する。その結果から、各類似誤差事例の不良原因が抽出できる。
S107では、S106にて取得した各不良原因に対応する製造誤差を被検物の設計基準値に単独で重畳させたときの光学性能(第4の光学性能)と、被検物の光学性能とを比較し、被検物に近しい光学性能の傾向を持つ不良原因を不具合と推定する。ここで述べる不具合とは、被検物の不良原因を指す。光学性能とは、波面収差と、光線収差、像面情報の少なくともいずれかの情報を含む。
S103において、本実施例では第1の識別器の構築に決定木を用いた手法を明記した。機械学習には様々な手法があるが、像面情報から被検物に類似している光学系サンプルを取得できるものであれば良く、本発明を上述の手法に限定するものではない。
S106において、本実施例では第2の識別器の構築に決定木を用いた手法を明記した。機械学習には様々な手法があるが、像面情報から光学伝達関数を取得できるものであれば良く、本発明を上述の手法に限定するものではない。また、S106において、予め像面情報と光学伝達関数の関係を求める必要があるが、関係を求めることができれば手法は問わない。
下記に、本実施例に対応する実例を述べる。図8の物体側から1群G1、2群G2、3群G3で構成される光学系120と同じ光学系が被検物となった場合を示す。
S101にて、光学系サンプルを作成する。光学系120の設計基準値に想定の範囲内の製造誤差を重畳し、複数パターンの光学系サンプルを作成する。本実例では光学系サンプルを3000本作成した。
S102にて、作成した光学系サンプルの像面情報を算出する。
S103にて、各光学系サンプル番号と計算で求めた像面情報を紐付けし、第1の識別器の構築を行う。この第1の識別器に像面情報を入力すると、光学系サンプル番号が出力され、出力された光学系サンプルの偏芯状態や光学性能を取得できる。
S104にて、被検物の透過光の測定を行い、被検物の像面情報を取得する。取得した被検物の像面情報を表15に示す。
S105にて、S104で取得した被検物の像面情報を用いて、類似誤差事例を抽出する。表15の数値をS103にて構築した第1の識別器に入力する。得られた類似誤差事例を表16に示す。光学系サンプル番号の列には抽出した類似誤差事例の光学系サンプル番号、「分類結果 確率」の列には、入力に対する各光学系サンプルの類似度を、1を最大として出力している。本実例では、光学系サンプル番号2617が作成した光学系サンプルの中で最も被検物の光学系に類似していると示されている。
S106にて、各類似誤差事例の持つ製造誤差と、被検物の各レンズ群における収差感度を用いて計算を行い、各類似誤差事例のレンズ群ごとの像面情報を取得する。取得した類似誤差事例の像面情報を用いて各々が光学伝達関数にどの程度影響しているかを機械学習にて求める。そのための第2の識別器を構築する。類似誤差事例の中から所定数の光学系サンプルを用いて、予め像面情報と光学伝達関数の関係を数値で求めておく必要がある。算出した像面情報と光学伝達関数を紐付けする。これにより類似誤差事例の任意の光学系サンプルの像面情報を入力することでそれに対応する光学伝達関数が取得可能となる。この第2の識別器に、算出して得た各類似誤差事例のレンズ群ごとの像面情報を入力し、各々が光学伝達関数にどの程度影響しているか取得する。光学伝達関数への影響が最も大きいレンズ群を各類似誤差事例の不良原因と推定する。これより得られた不良原因を表17に示す。
S107にて、被検物の不具合を推定する。S106にて得られた各不良原因に対応する製造誤差を被検物の設計基準値に一つずつ重畳させたときの光学性能と、被検物の光学性能とを比較し、被検物に近しい光学性能の傾向を持つ不良原因を不具合であると推定する。その結果、本実例では2群の倒れが不具合と推定出来た。
本手法を用いて像面情報を利用した解析を行うことで、解析にかかる工数が減るため、被検物の光学性能の劣化原因mp推定を以前より効率良く行うことが可能となる。
本実施例では、不具合の推定精度の向上として、軸上と軸外の両方の収差情報を用いて任意の像高の不具合を推定する手法に関して述べる。以後述べる収差情報には、軸上と軸外の波面収差と、軸上と軸外の光線収差の少なくともいずれかを含む。
図7のフローチャートは、本実施例における不良原因を推定するフローを示している。この検査方法に従う処理をコンピュータがコンピュータプログラムに従って実行することができる。
S101は、実施例1と同じため省略する。
S102では、S101で作成した複数パターンの光学系サンプルの収差情報(第1の光学性能)をそれぞれ計算する。
S103では、S102にて取得した収差情報を用いて、第1の識別器を構築する。第1の識別器の構築に決定木を用いた手法に関して、図20を用いて説明する。S451では、S102にて取得した光学系サンプルの収差情報を入力する。S452では、識別情報として光学系サンプルに割り振られた番号を入力する。この番号を光学系サンプル番号とする。S453では、S451とS452にて入力した光学系サンプルの収差情報と光学系サンプル番号を紐付ける。S454では、作成した複数パターンの光学系サンプル全ての入力が終了するまで、S451からS453を繰り返す。S455では、多数の決定木を構築する。こうして第1の識別器が構築される。この第1の識別器に収差情報を入力すると、入力に類似している光学性能の傾向を持つ光学系サンプル番号が取得可能となる。
図7に戻って、S104では、被検物の任意の像高の透過波面測定を行い、被検物の収差情報(第1の光学性能)を計測する。
S105では、S104にて取得した被検物の収差情報と、S103にて構築した第1の識別器とを用いて類似誤差事例を抽出する。
S106にて、各類似誤差事例の不良原因を抽出する。各類似誤差事例の持つ製造誤差と、被検物の各レンズ群における収差感度とを用いて計算を行い、各類似誤差事例のレンズ群ごとの収差情報(第2の光学性能)を取得する。取得した類似誤差事例のレンズ群の収差情報を用いて、第2の識別器を構築する。第2の識別器の構築に決定木を用いた手法に関して、図21を用いて説明する。類似誤差事例の中から所定数の光学系サンプルを用いて、予め収差情報と光学伝達関数の関係を数値で求めておく必要がある。ここで、所定数とは、収差情報と光学伝達関数の関係を求めるのに十分な数であり、類似誤差事例の数より少ない。S461では、上記関係を求める際に用いた所定数の光学系サンプルの収差情報を入力する。S462では、上記関係を求める際に用いた所定数の光学系サンプルの光学伝達関数(第3の光学性能)を求める。S463では、S461とS462にて入力した収差情報と光学伝達関数を紐付ける。S464では、上記関係を求める際に用いたパラメータ全ての入力が終了するまでS461からS463を繰り返す。S465では、多数の決定木を構築する。こうして、第2の識別器が構築される。この第2の識別器に収差情報を入力すると、光学伝達関数が取得できる。第2の識別器に各類似誤差事例のレンズ群の持つ収差情報を各々入力し、それぞれの光学伝達関数を推定する。その結果から、各類似誤差事例の不良原因が抽出できる。
S107では、S106にて取得した各不良原因に対応する製造誤差を被検物の設計基準値に単独で重畳させたときの光学性能(第4の光学性能)と、被検物の光学性能とを比較し、被検物に近しい光学性能の傾向を持つ不良原因を不具合と推定する。
S103において、本実施例では第1の識別器の構築に決定木を用いた手法を明記した。機械学習には様々な手法があるが、収差情報から被検物に類似している光学系サンプルを取得できるものであれば良く、本発明を上述の手法に限定するものではない。
S106において、本実施例では第2の識別器の構築に決定木を用いた手法を明記した。機械学習には様々な手法があるが、収差情報から光学伝達関数を取得できるものであれば良く、本発明を上述の手法に限定するものではない。また、S106において、予め収差情報と光学伝達関数の関係を求める必要があるが、関係を求めることができれば手法は問わない。
以下に、本実施例に対応する実例を述べる。図8の物体側から1群G1、2群G2、3群G3で構成される光学系120と同じ光学系が被検物となった場合を示す。
S101にて、光学系サンプルを作成する。光学系120の設計基準値に想定の範囲内の製造誤差を重畳し、複数パターンの光学系サンプルを作成する。本実例では光学系サンプルを3000本作成した。
S102にて、作成した光学系サンプルの収差情報を算出する。
S103にて、各光学系サンプル番号と計算で求めた収差情報を紐付けし、第1の識別器の構築を行う。この第1の識別器に収差情報を入力すると、光学系サンプル番号が出力され、出力された光学系サンプルの偏芯状態や光学性能を取得できる。
S104にて、被検物の透過光の測定を行い、被検物の収差情報を取得する。取得した被検物の収差情報を表18に示す。
S105にて、S104で取得した被検物の収差情報を用いて類似誤差事例を抽出する。表18の数値をS103にて構築した第1の識別器に入力する。得られた類似誤差事例を表19に示す。光学系サンプル番号の列には抽出した類似誤差事例の光学系サンプル番号、「分類結果 確率」の列には、入力に対する各光学系サンプルの類似度を、1を最大として出力している。本実例では、光学系サンプル番号529が作成した光学系サンプルの中で最も被検物の光学系に類似していると示されている。
S106にて、各類似誤差事例の持つ製造誤差と、被検物の各レンズ群における収差感度とを用いて計算を行い、各類似誤差事例のレンズ群ごとの収差情報を取得する。取得した類似誤差事例の収差情報を用いて各々が光学伝達関数にどの程度影響しているかを機械学習にて求める。そのための第2の識別器を構築する。類似誤差事例の中から所定数の光学系サンプルを用いて、予め収差情報と光学伝達関数の関係を数値で求めておく必要がある。算出した収差情報と光学伝達関数を紐付けする。これにより類似誤差事例の任意の光学系サンプルの収差情報を入力することでそれに対応する光学伝達関数が取得可能となる。この第2の識別器に、算出して得た各類似誤差事例のレンズ群ごとの収差情報を入力し、各々が光学伝達関数にどの程度影響しているか取得する。光学伝達関数への影響が最も大きいレンズ群を各類似誤差事例の不良原因と推定する。これより得られた不良原因を表20に示す。
S107にて、被検物の不具合を推定する。S106にて得られた各不良原因に対応する製造誤差を被検物の設計基準値に一つずつ重畳させたときの光学性能と、被検物の光学性能とを比較し、被検物に近しい光学性能の傾向を持つ、不良原因を不具合であると推定する。その結果、本実例では2群G2の平行偏芯が不具合と推定でき来た。
本手法を用いることで、より多くの情報から不具合推定が可能となるため、以前より推定精度の向上が見込める。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。

光源 1,2
波面センサ 4,5
演算部 21
光学系 120

Claims (16)

  1. 被検物の光学系を測定して得られた前記被検物の第1の光学性能を取得するステップと、
    前記被検物の第1の光学性能を第1の識別器に入力して、それぞれが製造誤差を含む光学系サンプルの中から、複数のサンプルを抽出するステップと、
    前記複数のサンプルに対応する第2の識別器に関する情報を取得するステップと、
    前記複数のサンプルの第2の光学性能を前記第2の識別器に入力して、前記被検物における不良原因に関する情報を出力するステップと、を有し、
    前記光学系サンプルは、レンズ群の平行偏芯、レンズ群の傾き偏芯、レンズ群間隔、レンズの厚み、レンズ面形状の、少なくともいずれかを前記被検物の設計基準値に対して所定の範囲内でばらつかせて前記設計基準値に重畳することにより作成され
    前記第1の識別器は、前記光学系サンプルのそれぞれの識別情報と、前記光学系サンプルのそれぞれの第1の光学性能とを用いた学習により、構築され、
    前記第2の識別器は、前記複数のサンプルの第2の光学性能と、該第2の光学性能に対応する第3の光学性能とを用いた学習により、構築されることを特徴とする光学系の検査方法。
  2. 前記光学系サンプルを作成するステップを更に有することを特徴とする請求項1に記載の光学系の検査方法。
  3. 前記所定の範囲は、前記光学系を構成するレンズ群の製造公差範囲の1倍から5倍の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学系の検査方法。
  4. 前記第1の光学性能は、光学系の収差の情報と像面情報の、少なくともいずれかの情報を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学系の検査方法。
  5. 前記複数のサンプルの第2の光学性能は、前記複数のサンプルの製造誤差と、前記被検物の各レンズ群における収差感度とを用いて算出されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学系の検査方法。
  6. 前記第2の識別器は、前記複数のサンプルのうち所定数のサンプルの第2の光学性能と、該第2の光学性能に対応する第3の光学性能とに基づいて決定される、前記複数のサンプルの第2の光学性能と第3の光学性能の関係を求めることにより構築されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学系の検査方法。
  7. 前記第2の光学性能は、光学系の収差の情報と像面情報の、少なくともいずれかの情報を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学系の検査方法。
  8. 前記被検物における不良原因に関する情報を出力するステップでは、前記複数のサンプルに対応する前記第2の光学性能を前記第2の識別器に入力して、前記複数のサンプルに対応する第3の光学性能を出力することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学系の検査方法。
  9. 前記被検物における不良原因に関する情報を出力するステップでは、前記複数のサンプルに対応する前記第2の光学性能を前記第2の識別器に入力して、前記複数のサンプルに対応する第3の光学性能を求め、前記第3の光学性能に基づいて、前記被検物における不良原因を推定するための情報を出力することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学系の検査方法。
  10. 前記第3の光学性能は、光学伝達関数の情報であることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の光学系の検査方法。
  11. 前記複数のサンプルに対応する第4の光学性能と、前記被検物の光学性能とを比較することにより、前記情報に基づいて抽出される前記複数のサンプルの不良原因の中から、前記被検物の不具合を推定するステップを更に有することを特徴とする請求項または1に記載の光学系の検査方法。
  12. 前記第4の光学性能は、前記前記複数のサンプルの不良原因のそれぞれの製造誤差を前記被検物の設計基準値に単独で重畳させたときの光学性能であることを特徴とする請求項1に記載の光学系の検査方法。
  13. 前記収差の情報とは、波面収差または光線収差であることを特徴とする請求項またはに記載の光学系の検査方法。
  14. 前記像面情報は、像面湾曲を含むことを特徴とする請求項またはに記載の光学系の検査方法。
  15. コンピュータに、
    被検物の光学系を測定して得られた前記光学系の第1の光学性能を取得させるステップと、
    前記光学系の第1の光学性能を第1の識別器に入力して、それぞれが製造誤差を含む光学系サンプルの中から、複数のサンプルを抽出させるステップと、
    前記複数のサンプルに対応する第2の識別器に関する情報を取得させるステップと、
    前記複数のサンプルから算出される第2の光学性能を前記第2の識別器に入力して、前記被検物における不良原因に関する情報を出力させるステップと、を含む処理を実行し、
    前記光学系サンプルは、レンズ群の平行偏芯、レンズ群の傾き偏芯、レンズ群間隔、レンズの厚み、レンズ面形状の、少なくともいずれかを前記被検物の設計基準値に対して所定の範囲内でばらつかせて前記設計基準値に重畳することにより作成され
    前記第1の識別器は、前記光学系サンプルのそれぞれの識別情報と、前記光学系サンプルのそれぞれの第1の光学性能とを用いた学習により、構築され、
    前記第2の識別器は、前記複数のサンプルの第2の光学性能と、該第2の光学性能に対応する第3の光学性能とを用いた学習により、構築されることを特徴とするコンピュータプログラム。
  16. 透過波面を計測するための光束を出力する光源と、
    被検物である光学系と、
    前記透過波面を検出する波面センサと、
    前記波面センサからの出力を用いて演算を行う演算部と、を有し、
    前記演算部は、前記波面センサからの出力を用いて前記光学系の第1の光学性能を取得し、
    前記光学系の第1の光学性能を第1の識別器に入力して、それぞれが製造誤差を含む光学系サンプルの中から、複数のサンプルを抽出し、
    前記複数のサンプルに対応する第2の識別器に関する情報を取得し、
    前記複数のサンプルから算出される第2の光学性能を前記第2の識別器に入力して、前記被検物における不良原因に関する情報を出力し、
    前記光学系サンプルは、レンズ群の平行偏芯、レンズ群の傾き偏芯、レンズ群間隔、レンズの厚み、レンズ面形状の、少なくともいずれかを前記被検物の設計基準値に対して所定の範囲内でばらつかせて前記設計基準値に重畳することにより作成され
    前記第1の識別器は、前記光学系サンプルのそれぞれの識別情報と、前記光学系サンプルのそれぞれの第1の光学性能とを用いた学習により、構築され、
    前記第2の識別器は、前記複数のサンプルの第2の光学性能と、該第2の光学性能に対応する第3の光学性能とを用いた学習により、構築されることを特徴とする計測装置。
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