JP7438087B2 - 火災リスク評価装置、火災リスク評価方法およびプログラム - Google Patents
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Description
本実施形態において、着目対象としてのターゲット1は、例えば建物内に配置される機器や設備といった物体である。いま、図2に例示するように、建物内に火災が発生したとき、火災源2からターゲット1に対して輻射熱q(例えば白抜き矢印参照)が伝達する。また、火災源2から放出される高温ガスにより高温領域(例えば図中の灰色を付した領域)が発生し、それによりターゲット1が加熱されることもある。本実施形態の評価装置10は、火災源2から放出される熱量により、ターゲット1が損傷することを着目事象とし、火災によるリスクを評価するために、ターゲット1に損傷が発生する確率である損傷発生確率(事象発生確率)Pdを算出する。
評価装置10は、図1に示すように、入力部12と、表示部14と、演算部16と、記憶部18とを備える。入力部12は、キーボード及びマウス、タッチパネル、またはオペレータからの発話を集音するマイク等の入力装置を含み、オペレータが入力装置に対して行う操作に対応する信号を演算部16へ出力する。入力部12には、記録媒体のデータを取得するUSB(Universal Serial Bus)端子等も含む。また、オペレータは、入力部12を介して、評価装置10により損傷発生確率Pdを算出するために必要な入力条件を入力する。表示部14は、ディスプレイ等の表示装置を含み、演算部16から出力される表示信号に基づいて、処理結果や処理対象の画像等、各種情報を含む画面を表示する。また、表示部14は、データを記録媒体で出力する記録装置を含んでもよい。また、評価装置10は、入力部12及び表示部14として、通信インターフェースを用いて、データの送信を行う通信部を含んでいてもよい。通信部は、外部機器と通信を行い取得した各種データ、プログラムを記憶部18に送り、保存する。通信部は、有線の通信回線で外部機器と接続しても、無線の通信回線で外部機器と接続してもよい。
オペレータにより入力部12を介して入力される入力条件について説明する。入力条件は、図1に示すように、解析条件のデータD1と、不確実さ分布のデータD2とを含む。解析条件のデータD1は、後述する火災解析シミュレーションを行う際に必要なる各種条件の情報であり、例えば、火災現場となる建物内の区画寸法、換気条件、室温といった情報が含まれる。解析条件は、これに限らず、火災解析シミュレーションに必要となる条件であればよい。不確実さ分布のデータD2は、発熱速度(HRR:Heat Release Rate。以下、単に「HRR」と称する)のピーク値HRRmに関する不確実さ分布のデータD21と、火災の消火に必要な消火時間tsに関する不確実さ分布のデータD22と、消火率λに関する不確実さ分布のデータD23とを含む。
HRRのピーク値に関する不確実さ分布のデータD21に関して、まず、発熱速度について説明する。HRRは、火災源2から伝達される熱量の大きさである。図3は、HRRの挙動の一例を示す説明図である。図3の横軸は、火災発生から経過時間(min)であり、縦軸は、HRRの値(kW)である。図3に例示するHRRの挙動データは、記憶部18に予め記憶されていてもよいし、ユーザーが入力部12を介して入力してもよい。図3に例示するようなHRRの挙動データは、火災を模擬した実験、解析または過去の火災事例の統計データ等に基づいて取得されるものであればよい。例えば、HRRの挙動データは、原子力発電プラントの火災PRA(Probabilistic Risk Assessment)ガイドとして知られているNUREG/CR-6850 Appendix Gを参照してもよい。HRRの挙動データは、上記実験、解析、火災事例の統計データ等に基づいて予め定められた数式により算出されてもよい。
図5および図6は、消火時間の不確実さ分布の一例を示す説明図である。図5は、電気盤を火災源とした火災の場合のデータであり、図6は、ケーブルを火災源とした火災の場合のデータである。図5、6の横軸は、火災発生から経過時間(min)であり、縦軸は、消火時間tsの累積確率である。図5、6に例示する消火時間tsの不確実さ分布のデータD22は、火災を模擬した実験、解析または過去の火災事例の統計データ等に基づいて等に基づいて取得されるものであればよいが、本実施形態では、原子力発電プラントの火災PRAガイドとして知られているNUREG-2169の中で過去の火災事例の統計データに基づいて取得されたデータを参照している。火災が発生した後に、火災発生を認知して報知するまでの時間、報知から消火活動を開始するまでの時間、消火活動を開始してから消火が完了するまでの時間は、状況に応じて変化する。そのため、図5、6に示すように、上記時間を総合した消火時間tsには、不確実さが含まれることになる。本実施形態では、図5、6に例示する消火時間tsの不確実さ分布のデータD22を入力条件の一つとする。
また、図5および図6では、消火率λの不確実さによる消火時間tsへの影響を例示している。消火率λは、単位時間あたりに火災が消火される割合である。消火率λは、火災を模擬した実験、解析または過去の火災事例の統計データ等に基づいて等に基づいて取得されるものであればよいが、本実施形態では、原子力発電プラントの火災PRAガイドとして知られているNUREG-2169の中で過去の火災事例の統計データに基づいて取得されたデータを参照している。図示するように、例えばλ=95%のように、消火率λを大きく設定した場合には、消火時間tsは相対的に短くなり、例えばλ=5%のように、消火率λを小さく設定した場合には、消火時間tsは相対的に長くなる傾向となる。特に、ケーブル火災を想定した図6に示す例では、過去の火災事例の統計データが比較的に少なく、消火率λによる消火時間tsのばらつきが大きくなる。本実施形態では、このような消火率λの不確実さ分布のデータD23を入力条件の一つとする。
図1に示す評価装置10の構成についての説明に戻る。演算部16は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の集積回路(プロセッサ)と、作業領域となるメモリとを含み、これらのハードウェア資源を用いて各種プログラムを実行することによって各種処理を実行する。具体的に、演算部16は、記憶部18に記憶されているプログラムを読み出してメモリに展開し、メモリに展開されたプログラムに含まれる命令をプロセッサに実行させることで、各種処理を実行する。演算部16は、火災によりターゲット1に損傷が発生する損傷発生確率Pdを算出する。演算部16は、取得部101と、計算条件設定部102と、解析部103と、確率計算部104とを有する。
記憶部18は、磁気記憶装置や半導体記憶装置等の不揮発性を有する記憶装置を備え、各種のプログラムおよびデータを記憶する。記憶部18は、解析プログラムと、HRRの挙動データとを含む。解析プログラムは、演算部16の各部の処理を実行するプログラムである。解析プログラムは、HRRのピーク値HRRmの不確実さ分布のデータD21とHRRの挙動データとに基づいて、複数のHRRの挙動パターンHPを作成するプログラム、解析条件に基づいて火災解析シミュレーションを行うプログラム、シミュレーション結果からターゲット損傷時間tdの不確実さ分布を算出するプログラム、消火率λを考慮した消火時間tsの不確実さ分布を算出するプログラム、ターゲット損傷時間tdの不確実さ分布および消火時間tsの不確実さ分布から損傷発生確率Pdを算出するプログラム等を含む。
2 火災源
10 評価装置
12 入力部
14 表示部
16 演算部
18 記憶部
101 取得部
102 計算条件設定部
103 解析部
104 確率計算部
104a 収束判定部
D1 解析条件のデータ
D2 不確実さ分布のデータ
D21 HRRのピーク値に関する不確実さ分布のデータ
D22 消火時間に関する不確実さ分布のデータ
D23 消火率に関する不確実さ分布のデータ
HP HRRの挙動パターン
HRRm HRRのピーク値
M マップ
P1 ターゲット損傷時間の累積確率
P2 消火時間の累積確率
Pd 損傷発生確率
R 距離
SA,SA1,SA2,SB,SB1,SB2 サンプリング点
td ターゲット損傷時間
ts 消火時間
Claims (8)
- 火災発生時の発熱速度のピーク値に関する不確実さ分布と、火災の消火に必要な消火時間の不確実さ分布とを取得する取得部と、
前記ピーク値に関する不確実さ分布に基づいて、予め定められた前記発熱速度の挙動のピーク値を変更した複数の発熱速度の挙動パターンを作成する計算条件設定部と、
着目対象と火災源との距離と前記挙動パターンとに基づいて、前記挙動パターンごとに、前記着目対象に着目事象が発生するまでの時間である事象発生時間の不確実さ分布を算出する解析部と、
前記事象発生時間の不確実さ分布と前記消火時間の不確実さ分布とに基づいて、統計処理により、前記消火時間が前記事象発生時間よりも長くなる確率を、前記着目対象に前記着目事象が発生する事象発生確率として算出する確率計算部と
を備える火災リスク評価装置。 - 前記消火時間の不確実さ分布は、単位時間内に火災が消火される割合である消火率の不確実さ分布を考慮して算出される請求項1に記載の火災リスク評価装置。
- 前記確率計算部は、前記事象発生時間の不確実さ分布と前記消火時間の不確実さ分布とから、モンテカルロ法を用いたランダムサンプリングにより複数のサンプリング点を抽出し、すべての前記サンプリング点に対する前記消火時間が前記事象発生時間よりも長い前記サンプリング点の割合を前記事象発生確率として算出する請求項1または請求項2に記載の火災リスク評価装置。
- 前記事象発生時間の不確実さ分布は、前記事象発生時間の累積確率の分布であり、
前記消火時間の不確実さ分布は、前記消火時間の累積確率の分布であり、
前記確率計算部は、前記事象発生時間の前記累積確率と前記消火時間の前記累積確率とから複数のサンプリング点を抽出し、確率座標内にマッピングし、前記マッピングしたマッピング座標に基づいて、マップ内における前記消火時間が前記事象発生時間よりも長い領域の割合を前記事象発生確率として算出する請求項1または請求項2に記載の火災リスク評価装置。 - 前記着目対象は、火災現場に配置された物体であり、
前記着目事象は、前記物体に発生する損傷である
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の火災リスク評価装置。 - 前記着目対象は、火災現場内の所定位置であり、
前記着目事象は、前記所定位置での環境悪化リスクである
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の火災リスク評価装置。 - 火災リスク評価装置が火災発生時の発熱速度のピーク値に関する不確実さ分布と、火災の消火に必要な消火時間の不確実さ分布とを取得するステップと、
前記火災リスク評価装置が前記発熱速度のピーク値に関する不確実さ分布に基づいて、予め定められた前記発熱速度の挙動のピーク値を変更した複数の発熱速度の挙動パターンを作成するステップと、
前記火災リスク評価装置が着目対象と火災源との距離と前記挙動パターンとに基づいて、前記挙動パターンごとに、前記着目対象に着目事象が発生するまでの時間である事象発生時間の不確実さ分布を算出するステップと、
前記火災リスク評価装置が前記事象発生時間の不確実さ分布と前記消火時間の不確実さ分布とに基づいて、統計処理により、前記消火時間が前記事象発生時間よりも長くなる確率を、前記着目対象に前記着目事象が発生する事象発生確率として算出するステップと
を備える火災リスク評価方法。 - 火災発生時の発熱速度のピーク値に関する不確実さ分布と、火災の消火に必要な消火時間の不確実さ分布とを取得するステップと、
前記ピーク値に関する不確実さ分布に基づいて、予め定められた前記発熱速度の挙動のピーク値を変更した複数の発熱速度の挙動パターンを作成するステップと、
着目対象と火災源との距離と前記挙動パターンとに基づいて、前記挙動パターンごとに、前記着目対象に着目事象が発生するまでの時間である事象発生時間の不確実さ分布を算出するステップと、
前記事象発生時間の不確実さ分布と前記消火時間の不確実さ分布とに基づいて、統計処理により、前記消火時間が前記事象発生時間よりも長くなる確率を、前記着目対象に前記着目事象が発生する事象発生確率として算出するステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
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