JP7436731B2 - 結合vベルトおよびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、複数のラップドVベルトが幅方向に連結した結合Vベルトおよびその製造方法に関する。
動力を伝達する伝動用ベルトとして、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルトなどの摩擦伝動ベルトが知られている。Vベルトには、摩擦伝動面が露出したゴム層であるローエッジ(Raw-Edge)タイプ(ローエッジVベルト)と、摩擦伝動面(V字状側面)が外被布で覆われたラップド(Wrapped)タイプ(ラップドVベルト)とがある。これらのVベルトは、一般産業用機械、農業機械に広く一般的に用いられている。
Vベルトは、単体で動力の伝達が可能な用途の場合は1本のみで用いられる。例えば、欧米などにある大規模な農場で使用される大型の農業機械における動作環境など、多軸で正回転と逆回転とを繰り返しながら、莫大な動力伝達を必要とする高負荷な動作環境では、複数のVベルトを同時に用いる必要が生じる。即ち、ベルト伝動機構のプーリに対して複数のVベルトを並列させた状態で巻き掛け(多本掛けして)、回転走行させる必要がある。
しかし、多本掛けした場合には、並列した複数のVベルト間において張力差が生じ、安定した動力伝達が損なわれる虞がある。更には、隣り合うVベルト同士の接触により、ベルトの内周側と外周側とが反転して逆構造となる現象である転覆が発生する虞がある。また、欧米などで利用される大型農業機械でのベルト伝動機構の走行レイアウトは、Vベルトを巻き掛けるプーリ同士の軸間距離が非常に長い。そのため、走行においてVベルトが大きく振れやすく、さらに複数のベルト長さが不揃いである場合は、加振される虞もある。
そのため、複数のVベルトを並列して走行させる環境では、Vベルトと同様の構成、あるいはVベルトに対応した構成を有する環状のVベルト部が、ベルト幅方向に複数連結されて構成された結合ベルト(結合Vベルト)が用いられる。この結合ベルトは、上記のベルト部が複数並列に並んだ状態でその複数のベルト部がタイバンド(布帛等の結合部材)で連結されて結合されたVベルトとして構成される。
結合されたVベルトについては、例えば、特開平10-274290号公報(特許文献1)の図1および2ならびに特開2001-241513号公報(特許文献2)の図2ではローエッジ結合Vベルトが開示されている。特開平4-351350号公報(特許文献3)の図1および特開2020-3061号公報(特許文献4)の図1ではラップド結合Vベルトが開示されている。これらの結合Vベルトによれば、Vベルトをプーリに多本掛けした場合に生じうる上述のような問題を解消しつつ、複数のV状突部によって大きな動力を伝達することができる。
その一方で、このような結合Vベルトを用いた多軸伝動が必要とされるベルト伝動機構において、ベルトの内周面だけでなくベルトの外周面(背面)によっても動力が伝達される場合がある。その伝動機構では、外周面(背面)での伝達性能を向上させるためには、外周面側にもVプーリと接触可能なV字状側面を有する摩擦伝動面を有するのが好ましい。
なお、両面伝達が可能なVベルト(通称:六角ベルト)については、単体のベルト(複数連結していないVベルト)が知られている。例えば、特開2016-200231号公報(特許文献5)には、内周側部分と、前記内周側部分の外周側に接する外周側部分とを備え、前記内周側部分の表面と前記外周側部分の表面とが互いに異なる摩擦係数を有する両面伝達用の伝達用ベルトが開示されている。特開2019-32078号公報(特許文献6)には、内周側の面と外周側の面との両面において、Vプーリと接触可能なV字状側面を有し、六角形状の断面を有する無端状のVベルトが開示されている。
特開平10-274290号公報 特開2001-241513号公報 特開平4-351350号公報 特開2020-3061号公報 特開2016-200231号公報 特開2019-32078号公報
しかし、特許文献1~4の結合Vベルトは、実用化されているものの、外周面によって動力を伝達できない一方で、特許文献5~6の六角ベルトでは、六角ベルトを幅方向に複数連結するには、製造上の難易度が高く、実用化はされていない。そのため、生産性に優れ、両面伝達が可能な結合Vベルトが求められている。
従って、本発明の目的は、高性能に両面伝達が可能で、かつ高容量の伝達が可能となる連結タイプの結合Vベルトおよびその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、本発明のVベルトにおいて用いるタイバンドとして、ベルト幅方向に短繊維が配向している短繊維含有ゴム層を含み、この短繊維含有ゴム層が、ベルト長手方向に延びる複数のリブ部を有するタイバンドを用いることにより、高性能に両面伝達が可能で、かつ高容量の伝達が可能となる連結タイプの結合Vベルトを提供できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の態様[1]としての結合Vベルトは、
複数本のラップドVベルト部およびタイバンドを含む、結合Vベルトであって、
各ラップドVベルト部の外周面が前記タイバンドで連結されており、
各ラップドVベルト部が、ベルト本体と、前記ベルト本体の外表面を被覆する外被布とを含み、
前記ベルト本体が、芯体を含む芯体層、前記芯体層のベルト外周側に積層された伸張ゴム層、および前記芯体層のベルト内周側に積層された圧縮ゴム層を含み、
前記タイバンドが、ベルト幅方向に短繊維が配向している短繊維含有ゴム層を含み、
前記短繊維含有ゴム層が、ベルト長手方向に延びる複数のリブ部を有する。
本発明の態様[2]は、前記態様[1]において、前記リブ部の配列ピッチが、前記ラップドVベルト部の配列ピッチよりも小さい態様である。
本発明の態様[3]は、前記態様[1]または[2]において、前記リブ部の配列ピッチが、隣接する前記ラップドVベルト部間の隙間の幅よりも大きい態様である。
本発明の態様[4]は、前記態様[1]~[3]のいずれかの態様において、前記タイバンドが、前記短繊維含有ゴム層と、布帛層とを含み、
前記布帛層が、前記短繊維含有ゴム層の内周面に積層された繊維構造体を含む態様である。
本発明の態様[5]は、前記態様[4]の繊維構造体が、ベルト幅方向に延びる複数の第1の糸状体と、ベルト幅方向と交差する方向に延びる複数の第2の糸状体とを含むスダレ織物であり、
前記第2の糸状体の配列密度が、前記第1の糸状体の配列密度よりも低い態様である。
本発明の態様[6]は、前記態様[1]~[5]のいずれかの態様において、前記リブ部の頂部中心が、隣接する前記ラップドVベルト部間の隙間に位置する態様である。
本発明の態様[7]は、前記態様[1]~[6]のいずれかの態様において、前記タイバンドの厚みが、前記ラップドVベルト部の厚みの0.3~0.7倍である態様である。
本発明には、態様[8]として、
複数本のラップドVベルト部前駆体をタイバンド前駆体で連結する連結工程、
連結した前記ラップドVベルト部前駆体および前記タイバンド前駆体を加熱および加圧して架橋成形する架橋成形工程、
得られた架橋成形体の外周側にリブ部を形成するリブ部形成工程を含む、前記態様[1]~[7]のいずれかの態様の結合Vベルトの製造方法も含まれる。
本発明では、上述のとおり、ベルト幅方向に短繊維が配向している短繊維含有ゴム層を含み、この短繊維含有ゴム層が、ベルト長手方向に延びる複数のリブ部を有するタイバンドを用いるため、高性能に両面伝達が可能で、かつ高容量の伝達が可能となる連結タイプの結合Vベルトを提供できる。さらに、このような結合Vベルトは、複数本のラップドVベルト部前駆体をタイバンド前駆体で連結し、架橋成形後に、外周部にリブ部を形成する製造方法によって簡便に製造できる。
図1は、切断した本発明の結合Vベルトの一例を示す概略部分断面斜視図である。 図2は、切断した本発明の結合Vベルトの他の例を示す概略部分断面斜視図である。 図3は、切断した本発明の結合Vベルトのさらに他の例を示す概略部分断面斜視図である。 図4は、切断した本発明の結合Vベルトの別の例を示す概略部分断面斜視図である。 図5は、図2の結合Vベルトに基づいた結合Vベルトの構造およびサイズを説明するための概略断面図である。 図6は、本発明の結合Vベルトを構成するラップドVベルト部の一例の概略断面図である。 図7は、本発明の結合Vベルトを構成するラップドVベルト部の他の例の概略断面図である。 図8は、結合Vベルト前駆体の連結および架橋成形工程を示す概略全体図である。 図9は、プレス用モールド内にラップドVベルト部前駆体およびタイバンド前駆体が嵌め込まれた状態を示す概略断面図である。 図10は、架橋成形体の外周側にリブ部を形成するリブ部形成工程を示す概略断面図である。 図11は、実施例のベルト走行試験の配置である多軸レイアウトを示す図である。
本発明の結合Vベルトは、ベルト幅方向に並ぶ複数のラップドVベルト部と、この複数のラップドVベルト部の各外周面を連結するためのタイバンド(結合部材)とを含む。このタイバンドは、ベルト幅方向に短繊維が配列(配向)している短繊維含有ゴム層(架橋ゴム組成物)を有している。この短繊維含有ゴムのベルト外周側には、ベルト長手方向に延びる複数のリブ部が形成されている。ラップドVベルト部は、慣用のラップド結合Vベルトと同一の構造であってもよい。
以下に、必要により添付図面を参照しつつ、本発明の結合Vベルトを詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一のまたは機能が共通する要素(または部材)には同じ符号を付す場合がある。
本発明の結合Vベルトの一例を図1に示す。図1に示すように、この結合Vベルト1(実施形態1)は、間隔をおいて平行に並んだ2本のラップドVベルト部2を備える。2本のラップドVベルト部2は、各外周面を、ベルト長手方向(周長方向、図中のA方向)に延びる複数のリブ部7aを有するタイバンド(結合部材)7で連結されている。タイバンド7は、ベルト幅方向(図中のB方向)に配向した短繊維7bを含有する架橋ゴム組成物(短繊維含有ゴム層)で形成されている。
前記リブ部7aにおけるベルト幅方向の断面形状は逆V字状(台形状)である。結合Vベルト1では、このような断面形状を有する複数のリブ部7aがベルト幅方向において並列して形成され、隣接するリブ部7aの間にV字状溝を形成している。タイバンド7の外周面では、このように間隔をおいて形成されたV字状溝にVプーリ(Vリブプーリ)が接触する。リブ部7aは、V字状溝の底部が、隣接するラップドVベルト部2間の隙間(連結部)に位置している。
各ラップドVベルト部2は、ベルト本体と、外被布6(織物、編物、不織布など)とで形成されている。前記ベルト本体は、ベルト外周側の伸張ゴム層3、ベルト内周側の圧縮ゴム層5、および前記伸張ゴム層3と圧縮ゴム層5との間に介在する芯体層4で形成されている。前記外被布6は、前記ベルト本体の周囲をベルト周方向の全長に亘って被覆している。すなわち、前記外被布6は、前記ベルト本体の外表面を被覆する。前記芯体層4には、ベルト長手方向に沿って延びる芯体4aが埋設されている。この例では、芯体4aは、ベルト幅方向(図中のB方向)に所定間隔で配列した心線(撚りコード)である。
図2で示す結合Vベルト(実施形態2)は、タイバンドが、複数のリブ部を有する短繊維含有ゴム層と、前記短繊維含有ゴム層の内周側に積層された布帛層との積層体で形成されていることを除いて、図1の結合Vベルトと同一態様の結合Vベルトである。すなわち、前記結合Vベルト11では、伸張ゴム層13、芯体14aが埋設された芯体層14、および圧縮ゴム層15で形成された無端状のベルト本体の周囲が外被布16で被覆されているラップドVベルト部12の各外周面が、タイバンド17で連結されている。前記タイバンド17は、ラップドVベルト部12の外周面と接する布帛層18と、短繊維含有ゴム層19とで形成されている。前記短繊維含有ゴム層19は、前記布帛層18の外周面に積層され、複数のリブ部19aを有し、かつベルト幅方向に配向した短繊維19bを含有する架橋ゴム組成物で形成されている。前記布帛層18は、経糸18aと緯糸18bとで形成されたスダレコードを含む。この結合Vベルトでは、タイバンドが布帛層を有することにより、隣接するラップドVベルト部間の連結部での輪断(タテ裂き)を抑制できる。
図3で示す結合Vベルト(実施形態3)は、タイバンドのVリブ部の構造が異なることを除いて、図1の結合Vベルトと同一態様の結合Vベルトである。すなわち、この結合Vベルト21では、伸張ゴム層23、芯体24aが埋設された芯体層24、および圧縮ゴム層25で形成された無端状のベルト本体の周囲が外被布26で被覆されているラップドVベルト部22の各外周面が、タイバンド27で連結されている。前記タイバンド27は、図1と同様に、ベルト長手方向に延びる複数のリブ部27aを有し、かつベルト幅方向に配向した短繊維27bを含有する架橋ゴム組成物(短繊維含有ゴム層)で形成されている。ただし、図1とは異なり、リブ部27aの頂部中心が、隣接するラップドVベルト部22間の隙間に位置している。この結合Vベルトでは、リブ部の構造を、リブ部の頂部中心が、隣接するラップドVベルト部間の隙間(連結部)に位置する構造に形成することにより、輪断を抑制できる。
図4で示す結合Vベルト(実施形態4)は、タイバンドのVリブ部の構造が異なることを除いて、図2の結合Vベルトと同一態様の結合Vベルトである。すなわち、この結合Vベルト31では、伸張ゴム層33、芯体34aが埋設された芯体層34、および圧縮ゴム層35で形成された無端状のベルト本体の周囲が外被布36で被覆されているラップドVベルト部32の各外周面が、タイバンド37で連結されている。前記タイバンド37は、図2と同様に、ラップドVベルト部32の外周面と接している。前記タイバンド37は、布帛層38と、短繊維含有ゴム層39とで形成されている。前記布帛層38は、経糸38aと緯糸38bとで形成されたスダレコードを含む。前記短繊維含有ゴム層39は、前記布帛層38の外周面に積層され、複数のリブ部39aを有し、かつベルト幅方向に配向した短繊維39bを含有する架橋ゴム組成物で形成されている。ただし、図2とは異なり、リブ部38aの頂部中心が、図3と同様に、隣接するラップドVベルト部32間の隙間(連結部)に位置している。この結合Vベルトでは、タイバンドが布帛層を有するとともに、リブ部の構造を、リブ部の頂部中心が、隣接するラップドVベルト部間の隙間(連結部)に位置する構造に形成することにより、輪断を高度に抑制できる。
ラップドVベルト部の本数は、図1~4に示されるような2本に限定されず、2本以上であればよく、例えば2~10本、好ましくは2~8本、さらに好ましくは2~6本である。隣接する各ラップドVベルト部は、長手方向に平行に揃えて並んでいればよく、図1~4に示されるように間隔をおいて並べる態様に限定されず、間隔をあけずに並べてもよい。生産性などの点から、隣接する各ラップドVベルト部は間隔をおいて並べるのが好ましい。
図5を用いて、本発明の結合Vベルトの構造およびサイズを説明する。図5は、図2と同様の概略断面図である。図5において、各記号は以下のように定義される。Hは、ベルト厚み(結合Vベルトの厚み)を示す。H1は、ラップドVベルト部の厚みを示す。H2は、ベルト背面のリブ部の高さを示す。H3は、タイバンド(T)の厚み(最大厚み部分の厚み)を示す。dは、タイバンド(T)のベース部(最小厚み部分)の厚みを示す。Wは、ベルト幅(結合Vベルトの幅)を示す。W1は、ラップドVベルト部の幅(上幅)を示す。P1はラップドVベルト部の配列ピッチ(隣接するラップドVベルト部のベルト幅方向中心間距離)を示す。P2は、リブ部の配列ピッチ(隣接するリブ部のベルト幅方向中心間距離、すなわちリブ谷部19dを挟んで隣接するリブ山部19cのピッチ)を示す。eは連結部の幅(隣接するラップドVベルト部の間隔または隙間)を示す。
間隔をおいて隣接する各ラップドVベルト部を並べる場合、隣接するラップドVベルト部の間隔(連結部の幅)(e)は、各ラップドVベルト部の配列ピッチ(P1)から各ラップドVベルト部の上幅(W1)を差し引いた寸法値であるが、例えば1.3~3.0mmである。タイバンドは、図1~4に示すように各ラップドVベルト部の外周面の全面に接触して、各ラップドVベルト部と一体化することにより複数のラップドVベルト部を連結する。
図5に示されるサイズについて、本発明の結合Vベルトの代表例であるA形、B形、およびC形の寸法を表1に示す。なお、表1中、括弧内の寸法は、タイバンドが繊維構造体を含む布帛層をさらに有しない場合[つまりタイバンドが短繊維含有ゴム層のみで形成されている場合(実施形態1および3)]に必要な寸法の最大値を示す。また、本願において、表1の数値は代表例の数値を示しているにすぎず、各寸法は、これらの数値に限定されない。
Figure 0007436731000001
ベルト幅方向の高い剛性(耐側圧性)とベルト内周側への屈曲性とのバランスを考慮すると、タイバンドの内部構造、ならびに芯体層のベルト厚み方向の位置にも依るが、タイバンドの厚み(H3)はラップドVベルト部の厚み(H1)よりも小さいことが好ましい。
ラップドVベルト部の厚み(H1)に対するタイバンドの厚み(H3)の比(H3/H1)は0.25~0.75程度の範囲から選択でき、例えば0.3~0.7、好ましくは0.3~0.6、さらに好ましくは0.4~0.6、より好ましくは0.4~0.5、最も好ましくは0.42~0.48であり、タイバンドの厚みはラップドVベルト部の厚みの半分程度が特に好ましい。H3/H1が小さすぎると、伝達性能が低下する虞がある。逆に、H3/H1が大きすぎると、耐久性が低下する虞がある。
一方、ベルト外周側への屈曲性(ベルトの逆曲げ性)を確保する点からは、各ラップドVベルト部の内部構造(特には芯体層のベルト厚み方向の位置)にも依るが、上幅(W)に対するVベルト部厚み(H1)の比(H1/W)が比較的小さい薄形Vベルト(H1/Wが例えば0.5~0.7)が好ましい。この薄形Vベルトにおいて、一般用Vプーリ(Vリブプーリ)に適合するベルト形(代表例)は、A形、B形、およびC形である。
本発明の結合Vベルトは、ベルト外周側(背面側)のタイバンドがベルト長手方向に延びる特定のリブ部を有することにより、背面でも高容量で高効率な伝動が可能となることを特徴とする。そのため、背面従動プーリ(Vリブプーリ)のV字状側面(摩擦伝動面)と接触できる断面V字状溝の接触面積を大きくすると、ベルト外周面に高容量で高効率な伝動が可能になる。しかし、接触面積を大きくすると、耐側圧性が不足して亀裂が入り易くなって耐久性能が低下することがある。そのため、両特性のバランスを取るために、ベルト背面のリブ部を設計することが重要となる。
ベルト背面のリブ部の高さ(H2)は、例えば0.5~10mm、好ましくは0.7~6mm、さらに好ましくは1~5mm、より好ましくは1.5~4mm、最も好ましくは2~3mmである。
ベルト背面のリブ部の配列ピッチ(P2)は、例えば1.5~19mm、好ましくは2~13mm、さらに好ましくは3~10mm、より好ましくは3.5~7mm、最も好ましくは3.8~5mmである。
さらに、耐側圧性と屈曲性とを両立させる点と、ベルト背面での伝達性能(ベルト外周側摩擦伝動面の、背面従動プーリとの接触面積およびくさび効果)の確保と輪断抑制とを両立させる点とを考慮すると、リブ部の配列ピッチ(P2)は、ラップドVベルト部の配列ピッチ(P1)よりも小さいことが好ましい。また、リブ部の配列ピッチ(P2)は、連結部の幅(e)、すなわち、隣接するラップドVベルト部間の隙間の幅よりも大きいことが好ましい。リブ部は、結合Vベルトのサイズ(ベルト形)がA形、B形、およびC形と大きくなるほど(伝動容量が大きくなるほど)、そのボリューム(断面積)が相似的に大きくなるように形成される。ラップドVベルト部の厚み(H1)に対するリブ部の高さ(H2)の比、ならびにリブ部の配列ピッチ(P2)に対するラップドVベルト部の配列ピッチ(P1)の比(P1/P2)を適切に設定し、全体的にバランスのとれた形とする必要がある。
ベルト厚み方向の長さ比として、ラップドVベルト部の厚み(H1)に対するリブ部の高さ(H2)の比(H2/H1)は、例えば0.1~0.5(例えば0.15~0.35)、好ましくは0.12~0.4(例えば0.19~0.33)、さらに好ましくは0.21~0.32、より好ましくは0.25~0.3である。比H2/H1が小さすぎると、ベルト背面での伝達性能が低下する虞がある。逆に、比H2/H1が大きすぎると、耐屈曲性が低下する虞がある。
リブ部に対するラップドVベルト部の配列ピッチ比(P1/P2)は、1~8(特に1.5~7)程度の範囲から選択できる。比P1/P2は、生産性などの点で、整数であることが好ましく、例えば2~6、好ましくは3~5の整数、さらに好ましくは3.5~4.5、より好ましくは4である。P1/P2が小さすぎると、ベルト背面での伝達性能が低下する虞があり、逆に、P1/P2が大きすぎると、耐側圧性が低下する虞がある。
ラップドVベルトの厚み(H1)は、例えば4~20mm、好ましくは5~15mm、さらに好ましくは6~12mm、より好ましくは7~10mm、最も好ましくは8~9mmである。
タイバンドの厚み(H3)は、例えば2~10mm、好ましくは2.5~7mm、さらに好ましくは3~6mm、より好ましくは3.5~5mm、最も好ましくは3.8~4.7mmである。
複数のリブ部の断面形状は、ベルト幅方向に間隔をおいてベルト長手方向に延びる複数の断面V字状溝により無端状に形成された逆V字形(台形)断面であれば、特に制限はなく、任意に形成可能である。前記逆V字形(台形)断面の左右の両側面(逆V字状側面)が摩擦伝動面である。
この摩擦伝動面を介して駆動される背面従動プーリにおいては、ベルト背面の複数のリブ部と対向する外周部分が、プーリ幅方向に間隔をおいて周長方向に延びる複数の断面V字状の突条により無端状に形成されたV字形(逆台形)断面である。当該背面従動プーリは、前記V字形(逆台形)断面の左右の両側面(V字状側面)がベルトと接触する摩擦伝動面となるように構成されたプーリ(本願では「Vリブプーリ」と称する)である。
〈ラップドVベルト部〉
タイバンド(結合部材)に連結されるラップドVベルト部(以下「Vベルト部」とも称する)は、特に制限されない。当該ラップドVベルト部は、図1~4に示すVベルト部のように、慣用のVベルト部、すなわち、芯体(心線)を含む芯体層(接着ゴム層)と、この芯体層のベルト外周側に積層された伸張ゴム層と、前記芯体層のベルト内周側に積層された圧縮ゴム層とを含み、無端状でV字状断面を有するVベルト部であればよい。なお、前記V字状断面の左右の両側面(V字状側面)が摩擦伝動面である。なお、V字状断面において、ベルト幅が広い側を外周側、ベルト幅が狭い側を内周側とする。V字状側面のV角度(α1)は、ベルト厚み方向に対して、例えば35~45°、好ましくは36~44°、さらに好ましくは37~43°、より好ましくは38~42°、最も好ましくは39~41°(特に40°)である。
慣用のラップドVベルト部としては、例えば、摩擦伝動面を含めて前記V字状断面の周囲をベルト周長方向の全長に亘って外被布(カバー布)で覆ったラップドVベルト部であれば、特に制限されるものではない。
農業機械などの用途においては、伝動面の高い摩擦係数や、排ワラ、石、木材などの巻き込みなどによるストレスまたは衝撃によってベルトや伝動機構全体が損傷し易い。そのため、Vベルト部として、伝動面の摩擦係数が小さく適度なスリップでストレスまたは衝撃を緩和可能なラップドVベルトがよく利用される。このような高負荷用途では、座屈変形(ディッシング)を防ぐため、ベルト幅方向の高い剛性(耐側圧性)も求められる。そのため、Vベルト部としては、例えば、特開2020-3061号公報(特許文献4)に記載の耐側圧性に優れたラップドVベルト部、すなわち、圧縮ゴム層が、ゴム硬度の異なる2種類の圧縮ゴム層を含む積層構造を有し、かつ各層のゴム硬度が調整されたラップドVベルト部などであってもよい。耐側圧性に優れたVベルト部を前記タイバンドと組み合わせると、輪断(タテ裂き)抑制効果をより一層向上できる。
詳しくは、図6に、本発明の結合Vベルトを構成するVベルト部の一例の概略断面図(タイバンドを省略し、Vベルト部のみをクローズアップした図面)を示す。図6に示すラップドVベルト部41は、ベルト外周側から、伸張ゴム層43、芯体44aが架橋ゴム組成物中に埋設された芯体層(接着ゴム層)44、第1圧縮ゴム層45a、第2圧縮ゴム層45bが順次積層された無端状のベルト本体と、このベルト本体の周囲をベルト周方向の全長に亘って被覆している外被布46(織物、編物、不織布など)とで形成されている。なお、後述する図7に示すラップドVベルト部のように、圧縮ゴム層の内周面(内周側の表面)と外被布との間に補強布層をさらに含んでいてもよい。
これらの例では、芯体は、ベルト幅方向に所定の間隔で配列した心線(撚りコード)である。また、芯体層は、芯体が埋設された架橋ゴム組成物(接着ゴム層)で形成されているが、芯体層は、芯体を含んでいればよく、伸張ゴム層と圧縮ゴム層との界面に配設された芯体のみで形成されていてもよい。本願では、芯体層が芯体のみで形成されている場合、ベルト本体中で間隔をおいて配設された芯体を芯体層と称する。このような芯体層は、芯体が伸張ゴム層と圧縮ゴム層との界面に配設された形態だけでなく、伸張ゴム層と圧縮ゴム層との界面に配設された芯体の一部または全部が製造の過程で伸張ゴム層または圧縮ゴム層中に埋設された形態も含む。
[圧縮ゴム層および伸張ゴム層]
各Vベルト部を構成する圧縮ゴム層は、図1~4に示すような単層(一層)であってもよく、図6に示すような2種類のゴム層を含む積層構造を有し、かつ各層のゴム硬度や強度が調整されたゴム層であってもよい。
これらのうち、耐側圧性と屈曲性とを両立させる点からは、Vベルト部は、圧縮ゴム層が、芯体層側に積層された第1圧縮ゴム層と、この第1圧縮ゴム層よりもゴム硬度が低く、かつベルト内周側に積層された第2圧縮ゴム層とを含む二層以上の積層構造を有する態様が好ましい。なお、積層構造に関しては、圧縮ゴム層と伸張ゴム層とは、同一の態様にする必要はなく、異なる態様であってもよい。
耐側圧性と生産性とのバランスを考慮すると、圧縮ゴム層は二層構造(第1圧縮ゴム層と第2圧縮ゴム層)であり、かつ伸張ゴム層は単層構造であるのが特に好ましい。
(単層構造)
伸張ゴム層が単層構造の場合、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のゴム硬度Hsは、例えば60~90°程度の範囲から選択でき、好ましくは72~80°、より好ましくは73~78°、さらに好ましくは74~78°、最も好ましくは75~77°である。ゴム硬度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞がある。逆に、ゴム硬度が大きすぎると、屈曲性が低下する虞がある。
なお、本願において、各ゴム層のゴム硬度は、JIS K6253(2012)(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-硬さの求め方-)に規定されているスプリング式デュロメータ硬さ試験に準拠して、タイプAデュロメータを用いて測定された値Hs(タイプA)である。各ゴム層のゴム硬度は、単にゴム硬度と記載する場合がある。詳細には、各ゴム層のゴム硬度は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
圧縮ゴム層および伸張ゴム層の引張強度は、ベルト幅方向において、例えば12~20MPa、好ましくは13~18MPa、さらに好ましくは14~17MPaである。引張強度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞がある。逆に、引張強度が大きすぎると、屈曲性が低下する虞がある。
なお、本願において、各ゴム層の引張強度は、JIS K6251(2017)に準拠した方法で測定できる、各ゴム層の引張強さTの値である。詳細には、各ゴム層の引張強度は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
(二層構造)
耐側圧性を向上させるために、圧縮ゴム層を二層構造とする場合は、芯体層側に配置される第1圧縮ゴム層と伸張ゴム層とを高硬度のゴム層とするのが好ましい。第1圧縮ゴム層および伸張ゴム層のゴム硬度Hsは、それぞれ、例えば80~100°程度の範囲から選択でき、好ましくは85~95°、より好ましくは87~94°、さらに好ましくは90~93°、最も好ましくは92~93°である。ゴム硬度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞がある。逆に、ゴム硬度が大きすぎると、プーリ溝とのフィット性や屈曲性が低下する虞がある。
一方、第2圧縮ゴム層のゴム硬度Hsは、前述の圧縮ゴム層が単層構造の場合で示したゴム硬度Hsと同程度であればよい。
さらに、第1圧縮ゴム層と第2圧縮ゴム層とのゴム硬度Hsの差[(第1圧縮ゴム層のゴム硬度)-(第2圧縮ゴム層のゴム硬度)]は、例えば1°以上(特に5°以上)であればよく、好ましくは5~30°(例えば7~27°)、より好ましくは10~25°(例えば12~20°)、さらに好ましくは14~20°(例えば15~19°)、最も好ましくは14~18°(特に15~17°)である。前記ゴム硬度Hsの差が小さすぎると、屈曲性が低下する虞がある。
第1圧縮ゴム層の引張強度は、ベルト幅方向において、例えば25~50MPa、好ましくは25~40MPa、さらに好ましくは26~35MPa、最も好ましくは28~32MPaである。引張強度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞がある。逆に、引張強度が大きすぎると、屈曲性が低下する虞がある。第2圧縮ゴム層の引張強度は、前述の圧縮ゴム層が単層構造の場合で示した引張強度と同程度であればよい。
なお、伸張ゴム層の引張強度も、好ましい範囲も含めて、圧縮ゴム層の引張強度と対応して同様の範囲から選択できる。
第1圧縮ゴム層の平均厚み(図6中のL2)は、圧縮ゴム層全体の平均厚み(図6中のL1)に対して、例えば95~30%程度の範囲から選択でき、好ましくは90~50%、より好ましくは85~55%、さらに好ましくは80~60%、より好ましくは75~70%である。この比率(L2/L1)は、圧縮ゴム層が第1圧縮ゴム層および第2圧縮ゴム層のみからなる場合(二層構造の場合)の比率であってもよい。比率(L2/L1)が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞がある。逆に、比率(L2/L1)が大きすぎると、屈曲性が低下する虞がある。
(圧縮ゴム層における他のゴム層)
圧縮ゴム層は、第1圧縮ゴム層および第2圧縮ゴム層に加えて、ゴム硬度の異なる他のゴム層をさらに含んでいてもよい。他のゴム層は、単層であってもよく、複数の層であってもよい。また、他のゴム層は、第1圧縮ゴム層の上下面、第2圧縮ゴム層の下面のいずれの面に積層されていてもよい。他のゴム層の平均厚み(複数の他のゴム層が存在する場合は合計厚み)は、圧縮ゴム層全体の平均厚みに対して、例えば30%以下であってもよく、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。すなわち、圧縮ゴム層は、第1圧縮ゴム層および第2圧縮ゴム層を主要な層として含むのが好ましい。第1圧縮ゴム層と第2圧縮ゴム層との合計の平均厚みは、圧縮ゴム層全体の平均厚みに対して、例えば70%以上であってもよく、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。圧縮ゴム層は第1圧縮ゴム層および第2圧縮ゴム層のみからなるのが特に好ましい。
(圧縮ゴム層全体および伸張ゴム層の厚み)
圧縮ゴム層全体の平均厚みは、例えば1~12mm、好ましくは2~10mm、さらに好ましくは2.5~9mm、より好ましくは3~8mmである。伸張ゴム層全体の平均厚みは、例えば0.5~10mm(例えば0.5~1.5mm)、好ましくは0.6~5mm(例えば0.7~1mm)である。
(圧縮ゴム層および伸張ゴム層の架橋ゴム組成物)
圧縮ゴム層および伸張ゴム層は、それぞれ、ラップドVベルトのゴム組成物として慣用的に利用されている架橋ゴム組成物で形成されていてもよい。架橋ゴム組成物は、ゴム成分を含む架橋ゴム組成物であってもよく、組成物の組成を適宜調整することにより、圧縮ゴム層および伸張ゴム層をそれぞれ構成する各層、特に、第1圧縮ゴム層および第2圧縮ゴム層のゴム硬度などを調整できる。ゴム硬度などの調整方法としては、特に限定されない。組成物を構成する成分の組成および/または種類を変えてゴム硬度を調整してもよく、簡便性などの点から、短繊維やフィラーの割合および/または種類を変えてゴム硬度を調整するのが好ましい。
(A)ゴム成分
圧縮ゴム層および伸張ゴム層の架橋ゴム組成物に含まれるゴム成分(A)としては、公知の加硫または架橋可能なゴムおよび/またはエラストマーから選択できる。ゴム成分(A)としては、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム(CR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム);水素化ニトリルゴム(水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマーを含む)などの前記ジエン系ゴムの水添物など]、オレフィン系ゴム[例えば、エチレン-α-オレフィン系ゴム(エチレン-α-オレフィンエラストマー)、ポリオクテニレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴムなど]、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。これらのゴム成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらのうち、架橋剤および架橋促進剤が拡散し易い点から、エチレン-α-オレフィンエラストマー[エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)などのエチレン-α-オレフィン系ゴム]、クロロプレンゴムが汎用される。特に、ゴム成分(A)を高負荷環境で用いる場合、機械的強度、耐候性、耐熱性、耐寒性、耐油性、接着性などのバランスに優れる点から、クロロプレンゴム、EPDMが好ましい。さらに、前記特性に加えて、耐摩耗性にも優れる点から、クロロプレンゴムが特に好ましい。クロロプレンゴムは、硫黄変性タイプであってもよく、非硫黄変性タイプであってもよい。
ゴム成分(A)がクロロプレンゴムを含む場合、ゴム成分(A)中のクロロプレンゴムの割合は、例えば50質量%以上(特に80~100質量%程度)であってもよく、100質量%(クロロプレンゴムのみ)が特に好ましい。
(B)短繊維
前記架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(A)に加えて短繊維(B)をさらに含んでいてもよい。短繊維(B)を構成する繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド繊維[例えば、ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維などの脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン繊維)、アラミド繊維など]、ポリアルキレンアリレート系繊維[例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのC2-4アルキレンC8-14アリレート系繊維など]、ビニルアルコール系繊維(ポリビニルアルコール繊維、エチレン-ビニルアルコール共重合体繊維、ビニロン繊維など)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;セルロース系繊維(綿、麻などのセルロース繊維、セルロース誘導体の繊維など)、羊毛などの天然または半合成繊維;炭素繊維などの無機繊維などが挙げられる。これらの短繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらの短繊維のうち、合成繊維や天然繊維、特に、エチレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレートなどのC2-4アルキレンC8-14アリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、ポリアミド繊維(アラミド繊維など)などの合成繊維、綿繊維などのセルロース繊維、炭素繊維などの無機繊維などが汎用される。中でも剛直で高い強度およびモジュラスの繊維、例えば、ポリエステル繊維(特に、ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリエチレンナフタレート系繊維)、ポリアミド繊維(特に、アラミド繊維)、セルロース繊維(特に綿繊維)が好ましい。アラミド繊維は、高い耐摩耗性をも有している。そのため、短繊維は、少なくともアラミド繊維などの全芳香族ポリアミド繊維を含むのが好ましい。アラミド繊維の割合は、短繊維中1質量%以上(例えば5~100質量%)であってもよい。アラミド繊維は、商品名「コーネックス」、「ノーメックス」、「ケブラー(登録商標)」、「テクノーラ」、「トワロン(登録商標)」などの市販品であってもよい。
短繊維(B)の平均繊維径は、例えば2μm以上、好ましくは2~100μm、より好ましくは3~50μm(例えば5~50μm)、さらに好ましくは7~40μm、より好ましくは10~30μmである。短繊維の平均長さは、例えば1~20mm、好ましくは1.5~10mm、さらに好ましくは2~5mm、より好ましくは2.5~4mmである。
なお、本願において、短繊維(B)の平均繊維径および平均長さは、例えば、ランダムに選択した10本の短繊維について、走査型電子顕微鏡などを用いて繊維径および長さをそれぞれ測定し、相加平均値を算出することにより求めることができる。
前記架橋ゴム組成物中の短繊維(B)の分散性や接着性の観点から、短繊維(B)は、慣用の方法で接着処理(または表面処理)されていてもよい。表面処理の方法としては、慣用の表面処理剤を含む処理液などで処理する方法などが挙げられる。表面処理剤としては、例えば、レゾルシン(R)とホルムアルデヒド(F)とゴムまたはラテックス(L)とを含むRFL液[例えば、レゾルシン(R)とホルムアルデヒド(F)とが縮合物(RF縮合物)を形成し、前記ゴムまたはラテックス(L)として、例えば、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むRFL液]、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、シランカップリング剤、架橋ゴム組成物(例えば、表面シラノール基を含み、ゴムとの化学的結合力を高めるのに有利な含水珪酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンなどを含む架橋ゴム組成物など)などが挙げられる。これらの表面処理剤は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよく、短繊維を同一または異なる表面処理剤で複数回に亘り処理してもよい。
短繊維(B)は、プーリからの押圧に対するベルトの圧縮変形を抑制するため、ベルト幅方向に配向して圧縮ゴム層および/または伸張ゴム層中に埋設されていてもよい。
短繊維(B)の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して50質量部以下程度の範囲から選択でき、例えば30質量部以下、好ましくは10~30質量部である。短繊維(B)の割合が多すぎると、ゴム硬度が高すぎて屈曲性が低下する虞がある。
圧縮ゴム層が二層構造である場合、第1圧縮ゴム層において、短繊維の割合は、ゴム成分(第1のゴム成分)100質量部に対して、例えば5~50質量部、好ましくは10~30質量部、さらに好ましくは15~25質量部、より好ましくは18~22質量部である。第2圧縮ゴム層において、短繊維の割合は、ゴム成分(第2のゴム成分)100質量部に対して、例えば30質量部以下、好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。圧縮ゴム層が単層である場合、伸張ゴム層の短繊維の割合は、圧縮ゴム層の短繊維の割合と同一であってもよい。圧縮ゴム層が二層構造である場合、伸張ゴム層の短繊維の割合は、第1圧縮ゴム層の短繊維の割合と同一であってもよい。
(C)フィラー
前記架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(A)に加えてフィラー(C)をさらに含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなどが挙げられる。フィラーは、補強性フィラーを含む場合が多く、このような補強性フィラーは、カーボンブラック、補強性シリカなどであってもよい。なお、通常、シリカの補強性は、カーボンブラックの補強性よりも小さい。これらのフィラーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。本開示では、耐側圧性を向上させるため、補強性フィラーを含むのが好ましく、カーボンブラックを含むのが特に好ましい。
カーボンブラックの平均粒径(個数平均一次粒径)は、例えば5~200nm、好ましくは10~150nm、さらに好ましくは15~100nmである。補強効果が高い点から、カーボンブラックは小粒径であってもよく、カーボンブラックの平均粒径は、例えば5~38nm、好ましくは10~35nm、さらに好ましくは15~30nmである。小粒径のカーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF-HM、ISAF-LM、HAF-LS、HAF、HAF-HSなどが例示できる。SAF、ISAFおよびHAFは、従来のカーボンブラックの分類であり、いずれもハードカーボンと称される小粒径のカーボンブラックに相当する。詳細には、SAFの平均粒径は19nm、ISAFの平均粒径は22nm、HAFの平均粒径は28nmである。これらのカーボンブラックは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
なお、本願において、カーボンブラックの平均粒径は、例えば、ランダムに選択した10個の一次粒子について、透過型電子顕微鏡などを用いて粒径を測定し、相加平均値を算出することにより求めることができる。
フィラー(C)(特に、カーボンブラック)の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して、例えば10~100質量部、好ましくは12~80質量部、さらに好ましくは15~70質量部、より好ましくは20~60質量部である。
圧縮ゴム層が二層構造である場合、第1圧縮ゴム層において、フィラー(特に、カーボンブラック)の割合は、ゴム成分(第1のゴム成分)100質量部に対して、例えば10~100質量部、好ましくは20~80質量部、さらに好ましくは30~70質量部、より好ましくは40~60質量部である。第2圧縮ゴム層において、フィラー(特に、カーボンブラック)の割合は、ゴム成分(第2のゴム成分)100質量部に対して、例えば5~80質量部、好ましくは10~60質量部、さらに好ましくは15~50質量部、より好ましくは20~40質量部である。圧縮ゴム層が単層である場合、伸張ゴム層のフィラーの割合は、圧縮ゴム層のフィラーの割合と同一であってもよい。圧縮ゴム層が二層構造である場合、伸張ゴム層のフィラーの割合は、第1圧縮ゴム層のフィラーの割合と同一であってもよい。
圧縮ゴム層および伸張ゴム層のいずれの層においても、カーボンブラックの割合は、フィラー全体に対して例えば50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。フィラー全体に対するカーボンブラックの割合が少なすぎると、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のゴム硬度が低下する虞がある。
(D)他の添加剤
前記架橋ゴム組成物は、必要に応じて、他の添加剤(D)として、架橋剤(または加硫剤)、共架橋剤(架橋助剤)、架橋促進剤、架橋遅延剤、金属酸化物(酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、軟化剤(パラフィンオイル、ナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤または加工助剤(例えば、ステアリン酸などの脂肪酸、ステアリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、ステアリン酸アマイドなどの脂肪酸アマイド、ワックス、パラフィンなど)、接着性改善剤[例えば、レゾルシン-ホルムアルデヒド共縮合物(RF縮合物)、アミノ樹脂(窒素含有環状化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサアルコキシメチルメラミン(ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミンなど)などのメラミン樹脂、メチロール尿素などの尿素樹脂、メチロールベンゾグアナミン樹脂などのベンゾグアナミン樹脂など)、これらの共縮合物(レゾルシン-メラミン-ホルムアルデヒド共縮合物など)など]、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、可塑剤[脂肪族カルボン酸系可塑剤(アジピン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤など)、芳香族カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤など)、オキシカルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エーテル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤など]、着色剤、粘着付与剤、滑剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。なお、金属酸化物は、架橋剤として作用してもよい。また、接着性改善剤において、レゾルシン-ホルムアルデヒド共縮合物およびアミノ樹脂は、レゾルシンおよび/または窒素含有環状化合物(メラミンなど)とホルムアルデヒドとの初期縮合物(プレポリマー)であってもよい。
架橋剤としては、ゴム成分(A)の種類に応じて慣用の成分が使用でき、例えば、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛など)、有機過酸化物(ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイドなど)、硫黄系架橋剤などが例示できる。硫黄系架橋剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、塩化硫黄(一塩化硫黄、二塩化硫黄など)などが挙げられる。これらの架橋剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。ゴム成分がクロロプレンゴムである場合、架橋剤として金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化亜鉛など)を使用してもよい。なお、金属酸化物は、他の架橋剤(硫黄系架橋剤など)と組み合せて使用してもよく、金属酸化物および/または硫黄系架橋剤は、単独でまたは架橋促進剤と組み合わせて使用してもよい。
架橋剤の割合は、架橋剤およびゴム成分(A)の種類に応じて、固形分換算で、ゴム成分(A)100質量部に対して例えば1~20質量部程度の範囲から選択できる。例えば、架橋剤としての金属酸化物の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して、例えば1~20質量部、好ましくは3~17質量部、さらに好ましくは5~15質量部、より好ましくは7~13質量部である。架橋剤としての金属酸化物と硫黄系架橋剤とを組み合わせる場合、硫黄系架橋剤の割合は、金属酸化物100質量部に対して、例えば0.1~50質量部、好ましくは1~30質量部、さらに好ましくは3~10質量部程度である。有機過酸化物の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して例えば1~8質量部、好ましくは1.5~5質量部、さらに好ましくは2~4.5質量部である。
共架橋剤(架橋助剤または共加硫剤co-agent)としては、公知の架橋助剤、例えば、多官能(イソ)シアヌレート[例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)など]、ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエンなど)、不飽和カルボン酸の金属塩[例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなどの(メタ)アクリル酸多価金属塩]、オキシム類(例えば、キノンジオキシムなど)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジンなど)、多官能(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート]、ビスマレイミド類(脂肪族ビスマレイミド、例えば、N,N’-1,2-エチレンジマレイミド、N,N′-ヘキサメチレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)シクロヘキサンなどのアルキレンビスマレイミド;アレーンビスマレイミドまたは芳香族ビスマレイミド、例えば、N,N’-m-フェニレンジマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレジマレイミド、4,4’-ジフェニルメタンジマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ジフェニルエーテルジマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンジマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼンなど)などが挙げられる。これらの架橋助剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの架橋助剤のうち、多官能(イソ)シアヌレート、多官能(メタ)アクリレート、ビスマレイミド類(N,N’-m-フェニレンジマレイミドなどのアレーンビスマレイミドまたは芳香族ビスマレイミド)が好ましく、ビスマレイミド類を用いる場合が多い。架橋助剤(例えば、ビスマレイミド類)の添加により架橋度を高め、粘着摩耗などを防止できる。
ビスマレイミド類などの共架橋剤(架橋助剤)の割合は、固形分換算で、ゴム成分(A)100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.5~8質量部、さらに好ましくは1~5質量部、より好ましくは2~4質量部である。
圧縮ゴム層が二層構造である場合、第1圧縮ゴム層において、共架橋剤の割合は、ゴム成分(第1のゴム成分)100質量部に対して、例えば0.5~10質量部、好ましくは1~8質量部、さらに好ましくは1.5~5質量部、より好ましくは2~4質量部である。第2圧縮ゴム層において、共架橋剤の割合は、ゴム成分(第2のゴム成分)100質量部に対して、例えば10質量部以下、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。圧縮ゴム層が単層構造である場合、伸張ゴム層の共架橋剤の割合は、圧縮ゴム層の共架橋剤の割合と同一であってもよい。圧縮ゴム層が二層構造である場合、伸張ゴム層の共架橋剤の割合は、第1圧縮ゴム層の共架橋剤の割合と同一であってもよい。
架橋促進剤(加硫促進剤)としては、例えば、チウラム系促進剤[例えば、テトラメチルチウラム・モノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラム・ジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラム・ジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラム・ジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラム・ジスルフィドなど]、チアゾ-ル系促進剤[例えば、2-メルカプトベンゾチアゾ-ル、2-メルカプトベンゾチアゾ-ルの亜鉛塩、2-メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなど]、スルフェンアミド系促進剤[例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドなど]、グアニジン類(ジフェニルグアニジン、ジo-トリルグアニジンなど)、ウレア系またはチオウレア系促進剤(例えば、エチレンチオウレアなど)、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩類などが挙げられる。これらの架橋促進剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの架橋促進剤のうち、TMTD、DPTT、CBSなどが汎用される。
架橋促進剤の割合は、固形分換算で、ゴム成分(A)100質量部に対して15質量部以下(例えば0~15質量部)であってもよく、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.2~5質量部、さらに好ましくは0.3~3質量部、より好ましくは0.5~1.5質量部である。圧縮ゴム層が単層構造である場合、伸張ゴム層の架橋促進剤の割合は、圧縮ゴム層の架橋促進剤の割合と同一であってもよい。圧縮ゴム層が二層構造である場合、伸張ゴム層の架橋促進剤の割合は、第1圧縮ゴム層の架橋促進剤の割合と同一であってもよい。
軟化剤(ナフテン系オイルなどのオイル類)の割合は、固形分換算で、ゴム成分(A)100質量部に対して30質量部以下(例えば0~30質量部)であってもよく、例えば1~30質量部、好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは3~10質量部である。
圧縮ゴム層が二層構造である場合、第1圧縮ゴム層において、軟化剤の割合は、ゴム成分(第1のゴム成分)100質量部に対して、例えば1~30質量部、好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは3~10質量部である。第2圧縮ゴム層において、軟化剤の割合は、ゴム成分(第2のゴム成分)100質量部に対して、例えば20質量部以下、好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。圧縮ゴム層が単層構造である場合、伸張ゴム層の軟化剤の割合は、圧縮ゴム層の軟化剤の割合と同一であってもよい。圧縮ゴム層が二層構造である場合、伸張ゴム層の軟化剤の割合は、第1圧縮ゴム層の軟化剤の割合と同一であってもよい。
加工剤または加工助剤(ステアリン酸など)の割合は、固形分換算で、ゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以下(例えば0~10質量部)であってもよく、例えば0.1~5質量部、好ましくは0.5~3質量部、さらに好ましくは1~3質量部である。
老化防止剤の割合は、固形分換算で、ゴム成分(A)100質量部に対して、例えば0.5~15質量部、好ましくは1~10質量部、さらに好ましくは2.5~7.5質量部、より好ましくは3~7質量部である。
可塑剤の割合は、固形分換算で、ゴム成分(A)100質量部に対して30質量部以下(例えば0~30質量部)であってもよく、例えば0.5~20質量部、好ましくは1~10質量部、さらに好ましくは3~7質量部である。
圧縮ゴム層が二層構造である場合、第1圧縮ゴム層において、可塑剤の割合は、ゴム成分(第1のゴム成分)100質量部に対して、例えば20質量部以下、好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。第2圧縮ゴム層において、可塑剤の割合は、ゴム成分(第2のゴム成分)100質量部に対して、例えば1~30質量部、好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは3~10質量部である。圧縮ゴム層が単層構造である場合、伸張ゴム層の可塑剤の割合は、圧縮ゴム層の可塑剤の割合と同一であってもよい。圧縮ゴム層が二層構造である場合、伸張ゴム層の可塑剤の割合は、第1圧縮ゴム層の可塑剤の割合と同一であってもよい。
[芯体層]
芯体層は、芯体を含んでいればよく、前述のように、芯体のみで形成された芯体層であってもよいが、層間の剥離を抑制し、ベルト耐久性を向上できる点から、図1~4に示されるように、芯体が埋設された架橋ゴム組成物で形成された芯体層(接着ゴム層)であるのが好ましい。芯体が埋設された架橋ゴム組成物で形成された芯体層は、通常、接着ゴム層と称され、ゴム成分を含む架橋ゴム組成物で形成された層内に、芯体が埋設されていてもよい。接着ゴム層は、圧縮ゴム層と伸張ゴム層との間に介在して圧縮ゴム層と伸張ゴム層とを接着するとともに、接着ゴム層には芯体が埋設されているのが好ましい。
芯体層(特に、接着ゴム層)の平均厚みは、例えば0.2~5mm、好ましくは0.3~4mm、さらに好ましくは0.5~3.5mm、より好ましくは0.8~3mm、最も好ましくは1~2.5mmである。
(芯体層の架橋ゴム組成物)
芯体層(特に、接着ゴム層)を形成する架橋ゴム組成物のゴム硬度Hsは、例えば72~80°、好ましくは73~78°、さらに好ましくは75~77°である。ゴム硬度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞がある。逆に、ゴム硬度が大きすぎると、芯体の周囲の架橋ゴム組成物が剛直となって芯体が屈曲し難くなり、芯体層の発熱劣化(亀裂)、芯体の屈曲疲労などが生じて、芯体が剥離する虞がある。
芯体層を形成する架橋ゴム組成物を構成するゴム成分(A1)としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のゴム成分(A)として例示されたゴム成分を利用でき、好ましい態様も前記ゴム成分(A)における好ましい態様から選択できる。
芯体層の架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(A1)に加えて、フィラー(A2)をさらに含んでいてもよい。フィラー(A2)としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のフィラー(C)として例示されたフィラーを利用できる。前記フィラーのうち、カーボンブラック、補強性シリカが好ましく、カーボンブラックと補強性シリカとの組み合わせが特に好ましい。
芯体層において、フィラー(A2)の割合は、ゴム成分(A1)100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは10~80質量部、さらに好ましくは30~70質量部、より好ましくは40~60質量部である。カーボンブラックと補強性シリカとを組み合わせる場合、補強性シリカの割合は、カーボンブラック100質量部に対して、例えば10~200質量部、好ましくは30~100質量部、さらに好ましくは50~80質量部である。
芯体層の架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(A1)に加えて、他の添加剤(A3)をさらに含んでいてもよい。他の添加剤(A3)としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層の他の添加剤(D)として例示された添加剤を利用でき、架橋剤、架橋促進剤、加工剤または加工助剤、可塑剤、老化防止剤などを好ましく利用できる。他の添加剤(A3)の割合は、好ましい範囲も含めて圧縮ゴム層および伸張ゴム層の添加剤(D)の割合と同様の範囲から選択できる。
芯体層のゴム硬度Hsは、例えば60~90°程度の範囲から選択でき、好ましくは72~80°、より好ましくは73~78°、さらに好ましくは74~78°、最も好ましくは75~77°である。芯体層の引張強度は、ベルト幅方向において、例えば12~20MPa、好ましくは13~18MPa、さらに好ましくは14~17MPaである。
(A4)芯体
芯体層に含まれる芯体(A4)は、特に限定されないが、通常、ベルト幅方向に所定の間隔で配列した心線(撚りコード)である。心線は、ベルトの長手方向に延びて配設され、ベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に延びて配設されていてもよいが、生産性の点から、通常、ベルト長手方向に略平行に、所定のピッチで並列的に延びて螺旋状に配設されている。心線を螺旋状に配設する場合、ベルト長手方向に対する心線の角度は、例えば5°以下であってもよく、ベルト走行性の点から、0°に近いほど好ましい。また、隣接する芯体の中心間の距離であるピッチまたは間隔(特に、心線のスピンニングピッチ)は、1.0~3.6mmの範囲に設定されることが好ましく、1.2~3mmの範囲に設定されることがさらに好ましく、1.4~2.4mmの範囲に設定されることがより好ましい。
芯体(A4)は、芯体層を構成する接着ゴム中に埋設される場合、その一部が接着ゴムに埋設されていればよく、耐久性を向上できる点から、芯体層の表面に芯体が露出していない形態(芯体の全体が接着ゴム中に完全に埋設された形態)が好ましい。芯体(A4)としては、心線が好ましい。
心線を構成する繊維としては、例えば、前記圧縮ゴム層および伸張ゴム層の短繊維(B)を構成する繊維として例示された繊維などが挙げられる。前記繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記繊維のうち、高モジュラスの点から、エチレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレートなどのC2-4アルキレン-C8-14アリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、ポリアミド繊維(アラミド繊維など)などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維などが汎用され、ポリエステル繊維(特に、ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリエチレンナフタレート系繊維)、ポリアミド繊維(特に、アラミド繊維)が好ましい。
心線を構成する繊維はマルチフィラメント糸の形態であってもよい。マルチフィラメント糸の繊度は、例えば2000~10000デニール(特に4000~8000デニール)であってもよい。マルチフィラメント糸は、例えば100~5000本程度のフィラメントを含んでいてもよく、好ましくは500~4000本、さらに好ましくは1000~3000本のフィラメントを含む。
心線としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。心線の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば0.5~3mmであってもよく、好ましくは0.6~2.5mm、さらに好ましくは0.7~2mm、より好ましくは1.1~2mmである。
心線は、接着ゴム中に埋設させる場合、前記接着ゴムを形成する架橋ゴム組成物との接着性を向上させるため、表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、前記圧縮ゴム層および伸張ゴム層の短繊維(B)の表面処理剤として例示された表面処理剤などが挙げられる。前記表面処理剤は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよく、同一または異なる表面処理剤で複数回に亘り順次に処理してもよい。心線は、少なくともRFL液で接着処理するのが好ましい。
[外被布]
外被布(カバー布)は、慣用の布帛で形成されている。布帛としては、例えば、織布、編布(緯編布、経編布)、不織布などの布材などが挙げられ、これらのうち、平織、綾織、朱子織などの織布、交差角が90°を超え120°以下程度の織布、編布などが好ましく、一般産業用や農業機械用の伝動ベルトのカバー布として汎用されている織布[交差角が直角である平織布、交差角が90°を超え120°以下程度の平織布(広角度帆布)]が特に好ましい。さらに、耐久性が要求される用途では、布帛は、広角度帆布であってもよい。
布帛を構成する繊維としては、例えば、前記圧縮ゴム層および伸張ゴム層の短繊維(B)を構成する繊維として例示された繊維などが挙げられる。これらの繊維は、一種類の繊維を単独で使用した単独糸であってもよく、二種以上の繊維を組み合わせた複合糸(混紡糸など)であってもよい。
これらの繊維のうち、機械的特性および経済性に優れる点から、ポリエステル系繊維とセルロース系繊維との混紡糸が好ましい。
ポリエステル系繊維は、ポリアルキレンアリレート系繊維であってもよい。ポリアルキレンアリレート系繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリC2-4アルキレン-C8-14アリレート系繊維などが挙げられる。これらのポリエステル系繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。
セルロース系繊維には、セルロース繊維(植物、動物またはバクテリアなどに由来するセルロース繊維)、セルロース誘導体の繊維が含まれる。セルロース繊維としては、例えば、木材パルプ(針葉樹、広葉樹パルプなど)、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維(綿繊維(コットンリンター)、カポックなど)、ジン皮繊維(麻、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維(マニラ麻、ニュージーランド麻など)などの天然植物由来のセルロース繊維(パルプ繊維);ホヤセルロースなどの動物由来のセルロース繊維;バクテリアセルロース繊維;藻類のセルロースなどが例示できる。セルロース誘導体の繊維としては、例えば、セルロースエステル繊維;再生セルロース繊維(レーヨン、キュプラ、リヨセルなど)などが挙げられる。これらのセルロース系繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。これらのうち、綿繊維が好ましい。
ポリエステル系繊維とセルロース系繊維との質量割合は、例えば前者/後者=90/10~10/90、好ましくは80/20~20/80、さらに好ましくは70/30~30/70(特に60/40~40/60)である。
布帛を構成する糸の平均繊度は、例えば5~30番手、好ましくは10~25番手、さらに好ましくは15~23番手である。
布帛(原料布帛)の目付量は、例えば100~500g/m、好ましくは200~400g/m、さらに好ましくは250~350g/mである。
布帛(原料布帛)の平均厚みは、例えば0.1~1.5mm、好ましくは0.2~1mm、さらに好ましくは0.3~0.7mmである。
布帛(原料布帛)が織布の場合、布帛の糸密度(経糸および緯糸の密度)は、例えば60~100本/50mm、好ましくは70~90本/50mm、さらに好ましくは72~80本/50mmである。
外被布は、単層であってもよく、多層(例えば二~五層、好ましくは二~四層程度)であってもよいが、生産性などの点から、単層(1プライ)または二層(2プライ)が好ましい。
外被布は、ベルト本体との接着性を向上させるために、ゴム成分が付着した布帛であってもよい。ゴム成分が付着した外被布は、例えば、ゴム組成物を溶剤に溶かしたゴム糊をソーキング(浸漬)する処理、固形状のゴム組成物をフリクション(擦り込み)する処理などの接着処理を施した布帛であってもよい。接着処理は、布帛の少なくとも一方の表面を処理すればよく、少なくともベルト本体と接触する面を処理するのが好ましい。
外被布に付着させるゴム組成物を構成するゴム成分としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のゴム成分(A)として例示されたゴム成分を利用でき、好ましい態様も圧縮ゴム層および伸張ゴム層のゴム成分(A)と同様の態様から選択できる。
外被布に付着させるゴム組成物は、前記ゴム成分に加えて、フィラーをさらに含んでいてもよい。フィラーとしては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のフィラー(C)として例示されたフィラーを利用でき、好ましい態様およびフィラー中のカーボンブラックの割合も圧縮ゴム層および伸張ゴム層のフィラー(C)の割合と同様の態様から選択できる。
外被布に付着させるゴム組成物において、フィラー(特にカーボンブラック)の割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば5~80質量部、好ましくは10~75質量部、さらに好ましくは30~70質量部(特に40~60質量部)程度である。
外被布に付着させるゴム組成物は、前記ゴム成分に加えて、可塑剤をさらに含んでいてもよい。可塑剤としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層の可塑剤として例示された可塑剤を利用でき、好ましい態様も圧縮ゴム層および伸張ゴム層の可塑剤と同様の態様から選択できる。
外被布に付着させるゴム組成物において、可塑剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば3~50質量部、好ましくは5~40質量部、さらに好ましくは10~30質量部(特に15~25質量部)である。
外被布に付着させるゴム組成物は、前記ゴム成分に加えて、短繊維および他の添加剤をさらに含んでいてもよい。短繊維としては、前記圧縮ゴム層および伸張ゴム層の項で例示された短繊維(B)を利用できる。他の添加剤としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層の他の添加剤(D)として例示された添加剤を利用できる。これらのうち、外被布に付着させるゴム組成物では、前記ゴム成分に加えて、架橋剤または加硫剤、架橋促進剤、加工剤または加工助剤、老化防止剤を含むのが好ましい。これらの添加剤のゴム成分に対する割合は、圧縮ゴム層および伸張ゴム層と同様の態様から選択できる。
外被布に付着させる架橋ゴム組成物のゴム硬度Hsは、例えば40~70°、好ましくは45~65°、さらに好ましくは50~60°である。外被布に付着させる架橋ゴム組成物の引張強度は、ベルト幅方向において、例えば5~20MPa、好ましくは10~15MPa、さらに好ましくは12~13MPaである。
外被布の平均厚み(多層の場合、各層の平均厚み)は、例えば0.4~2mm、好ましくは0.5~1.4mmである。外被布の厚みが薄すぎると、耐摩耗性が低下する虞がある。逆に、外被布の厚みが厚すぎると、ベルトの屈曲性が低下する虞がある。
[補強布層]
各ラップドVベルト部は、圧縮ゴム層の内周面(内周側の表面)と外被布との間に補強布層をさらに含んでいてもよい。図7に、補強布層を備えたラップドVベルト部の例を示す。この例では、ラップドVベルト部51は、図6のラップドVベルト部と同様に、伸張ゴム層53、芯体(心線)54aを埋設した芯体層(接着ゴム層)54、第1圧縮ゴム層55a、第2圧縮ゴム層55b、外被布56を備える。この例では、図6のラップドVベルト部とは異なり、第2圧縮ゴム層55bと外被布56との間に補強布層57が介在している。
補強布層も、前記外被布と同様に慣用の布帛で形成されている。布帛としては、外被布の項で例示した布帛から選択でき、好ましい態様も外被布の好ましい態様から選択できる。
補強布層は、圧縮ゴム層および外被布との接着性を向上させるために、ゴム成分が付着した布帛であってもよい。ゴム成分が付着した布帛は、例えば、ゴム組成物を溶剤に溶かしたゴム糊をソーキング(浸漬)する処理、固形状のゴム組成物をフリクション(擦り込み)する処理などの接着処理を施した布帛であってもよい。ゴム組成物としては、外被布に付着させるゴム組成物として例示されたゴム組成物を利用でき、好ましい態様も外被布と同様である。接着処理は、布帛の少なくとも一方の表面を処理すればよく、少なくとも圧縮ゴム層と接触する面を処理するのが好ましく、両面を処理するのが特に好ましい。
補強布層の平均厚みは、例えば0.4~2mm、好ましくは0.5~1.4mmである。補強布層の厚みが薄すぎると、耐摩耗性の向上効果が低下する虞がある。逆に、補強布層の厚みが厚すぎると、ベルトの屈曲性が低下する虞がある。
〈タイバンド(結合部材)〉
複数のラップドVベルト部の各外周面を連結するためのタイバンドは、ベルト幅方向に短繊維が配列(配向)している短繊維含有ゴム層(架橋ゴム組成物)を有する。前記短繊維含有ゴム層のベルト外周側に、ベルト幅方向に間隔をおいてベルト長手方向に延びる複数のリブ部が形成されている。短繊維含有ゴム層を有するタイバンドは、必要に応じて、前記短繊維含有ゴム層のベルト内周側に、布帛層をさらに備えていてもよい。
[リブ部の形状]
ベルト幅方向において並列して形成されている各リブ部の断面形状は、Vプーリ(Vリブプーリ)に嵌合可能なV字状溝を有する形状であれば特に限定されない。図3(実施形態3)に示すように、すべてのリブ部の断面形状が同一であってもよく、図1(実施形態1)に示すように、両端のリブ部の断面形状と他のリブ部の断面形状とが異なってもよい。前記リブ部は、ベルト幅方向の断面形状が逆V字形(台形)であるリブ部(台形状リブ部)を備えていればよく、台形状リブ部に加えて、略台形状リブ部をさらに備えていてもよい。略台形状リブ部は、ベルト幅方向に複数並ぶリブ部のうち、両端に位置するリブ部であってもよい。略台形状リブ部の形状としては、台形の一方の斜辺が底辺に垂直な辺である四角形(図1において、ベルト幅方向に並ぶリブのうち、両端に位置するリブ部の断面形状である四角形または直角台形)であってもよい。略台形状リブ部の形状としては、台形の少なくとも一方の斜辺が、台形の上底から下底に向かう途中から下底に垂直な辺となる五角形または六角形であってもよい。すなわち、結合VベルトはラップドVベルト部の幅に応じて切断して製造されるため、複数のリブ部の形状は、隣接するリブ部間で切断された形状であってもよく、リブ部が切断された形状(断面が前記直角台形または前記五角形である形状)であってもよい。リブ部の断面形状である台形の斜辺のVリブ角度(図5におけるα2)(逆V字状側面の角度)は、ベルト厚み方向に対して、例えば20~100°、好ましくは25~60°、さらに好ましくは30~50°、より好ましくは35~45°、最も好ましくは38~42°(特に40°)である。Vリブ角度(α2)は、図5に示されるP1およびP2の比(P1/P2)、ならびに図5に示されるH2およびH1の比(H2/H1)が前記範囲となるように調整してもよい。
各ラップドVベルト部間の連結部(タイバンドにおいて、ラップドVベルト部の外周面と接触しない領域であり、かつベルト幅方向に隣接するラップドVベルト部同士を連結する部分)は、図3に示すように、リブ山部(タイバンドの最大厚み部分)で形成されていてもよく、図1に示すように、リブ谷部(タイバンドの最小厚み部分)で形成されていてもよい。すなわち、図3に示すように、リブ部の頂部中心が隣接するラップドVベルト部間の隙間(連結部)に位置していてもよく、図1に示すように、V字状溝の底部が、隣接するラップドVベルト部間の隙間(連結部)に位置していてもよい。これらのうち、輪断防止の観点からは、図3に示すように、連結部がリブ山部で形成されているのが好ましい。
[短繊維含有ゴム層]
短繊維含有ゴム層は、ベルト幅方向に配列(配向)している短繊維を含有する。詳しくは、短繊維含有ゴム層の短繊維は、ベルト幅方向に略平行に配列していればよい。
なお、本願において、短繊維がベルト幅方向に配列していることは、短繊維が配列している方向とベルト幅方向とがなす角度が、ベルト長手方向から見て、全体的に概ね例えば20°以下(例えば0~10°)程度、好ましくは10°以下(例えば0~5°、特に略0°)であることを意味する。
また、本願において、短繊維含有ゴム層は、短繊維含有ゴム層における摩擦伝動面(リブ部の摩擦伝動面)の耐摩耗性、ならびにベルト幅方向の剛性(耐側圧性)とベルト長手方向に対する屈曲性(しなやかさ、プーリへの巻付き性)をバランスよく確保できる限り、ベルト幅方向に配列しない短繊維を含んでいてもよい。すなわち、短繊維含有ゴム層に含まれる短繊維は、必ずしもベルト幅方向に一直線に配向していなくてもよい。例えば、短繊維が配列している方向とベルト幅方向とがなす角度が、ベルト長手方向から見て、部分的に(例えばベルト厚み方向中央の層において)20°を上回る角度(例えば30°程度)であってもよい。当該角度は、ベルト厚み方向から見ると、全体的または部分的に20°を上回る角度(例えば30°程度)であってもよい。要するに、架橋ゴムシートの引張物性試験[JIS K6251(2017)]において、短繊維列理直角方向の切断時伸び(%)の方が短繊維列理方向の切断時伸び(%)よりも顕著に(例えば、10倍程度)大きくなるように、短繊維含有ゴム層としての架橋ゴム組成物が形成されていればよい。具体的には、短繊維含有ゴム層に含まれる短繊維のうち、ベルト幅方向に配列している短繊維の割合が、例えば80%以上であってもよく、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
短繊維含有ゴム層は、リブ部(リブ部の両側部の二つの傾斜面)が背面駆動時の摩擦伝動面を形成するという点では、機能上、圧縮ゴム層に相当する。しかし、好ましい態様の結合Vベルトにおいては、リブ部の配列ピッチ(P2)は、Vベルト部のベルト幅方向に沿った配列ピッチ(P1)よりも小さく、必然的に、リブ部のボリューム(断面積)はVベルト部のボリューム(断面積)よりも小さいため、リブ部の方が、Vベルト部よりも、軸荷重(側圧)を分散でき、座屈変形に対する剛性を確保し易いと云える。そのため、短繊維含有ゴム層は、各Vベルト部を構成する圧縮ゴム層と同様、単層(一層)であってもよいし、ゴム硬度の異なる2種類のゴム層を含む積層構造を有し、かつ各層のゴム硬度が調整されたゴム層であってもよい。短繊維含有ゴム層は、上記機能、特性面や生産性などを考慮すると、単層(一層)とするのが好ましい。
また、前述のように、リブ部の方が、Vベルト部よりも、軸荷重(側圧)を分散でき、座屈変形に対する剛性を確保し易い。そのため、短繊維含有ゴム層のゴム硬度は、二層で形成された圧縮ゴム層(第1圧縮ゴム層、第2圧縮ゴム層)の各層のゴム硬度の中間程度であってもよい。
短繊維含有ゴム層のゴム硬度Hsは、例えば70~95°程度の範囲から選択でき、好ましくは78~91°、より好ましくは80~90°、さらに好ましくは82~89°、最も好ましくは83~88°である。ゴム硬度が小さすぎると、耐側圧性および耐摩耗性が低下する虞がある。逆に、ゴム硬度が大きすぎると、屈曲性が低下する虞がある。
短繊維含有ゴム層の引張強度は、ベルト幅方向において、例えば12~35MPa、好ましくは13~30MPa、さらに好ましくは14~26MPa、より好ましくは15~20MPaである。引張強度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞がある。逆に、引張強度が大きすぎると、屈曲性が低下する虞がある。
短繊維含有ゴム層の平均厚みは、タイバンドが短繊維含有ゴム層のみで形成される場合と、タイバンドがさらに繊維構造体を含む布帛層で形成される場合とで、区別される。
図1に示すように、タイバンドが短繊維含有ゴム層のみで形成される場合(実施形態1)、短繊維含有ゴム層の平均厚みは、タイバンド(T)の厚み(H3)に等しく、例えば4.5~6.5mm、好ましくは4.6~6mmである。この場合、ベルト幅方向の剛性と輪断抑制(特に連結部での輪断抑制)との両立を考慮すると、ベース部(最小厚み部分)の厚み(d)は、少なくとも2mm程度(例えば1.8~2.3mm)は確保する必要がある。
図2に示すように、タイバンドが、短繊維含有ゴム層と、そのベルト内周側に積層された繊維構造体を含む布帛層で形成される場合(実施形態2)、短繊維含有ゴム層の平均厚みは、例えば3~5.3mm、好ましくは3~5mmである。
もっとも、短繊維含有ゴム層のみで形成されているタイバンド(実施形態1)において、短繊維含有ゴム層の厚み(特にベース部の厚みd)を必要以上に厚くすることなく(実施形態2での短繊維含有ゴム層の厚みと同水準まで薄く形成しつつ)、ベルト幅方向の剛性と連結部での輪断抑制との両立を図るためには、図3(実施形態3)に示すように、連結部をタイバンドの最大厚み部分(リブ山部)で形成するのが好ましい。
短繊維含有ゴム層は、組成物の組成を適宜調整することにより、ゴム硬度などを調整できる。ゴム硬度などの調整方法としては、特に限定されず、組成物を構成する成分の組成および/または種類を変えてゴム硬度を調整してもよい。簡便性などの点から、短繊維やフィラーの割合および/または種類を変えてゴム硬度を調整するのが好ましい。
短繊維含有ゴム層を形成する架橋ゴム組成物を構成するゴム成分(B1)としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のゴム成分(A)として例示されたゴム成分を利用でき、好ましい態様も前記ゴム成分(A)における好ましい態様から選択できる。
短繊維含有ゴム層の架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(B1)に加えて、短繊維(B2)をさらに含む。短繊維(B2)としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層の短繊維(B)として例示された短繊維などが挙げられる。前記短繊維のうち、アラミド繊維および/またはポリエステル繊維が好ましく、アラミド繊維とポリエステル繊維との組み合わせが特に好ましい。短繊維(B2)の平均繊維径および平均長さは、好ましい態様も含め、短繊維(B)の平均繊維径および平均長さから選択できる。短繊維(B2)の割合は、ゴム成分(B1)100質量部に対して、例えば1~50質量部、好ましくは5~30質量部、さらに好ましくは10~30質量部である。短繊維(B2)は、慣用の方法で接着処理(または表面処理)されていてもよい。接着処理の方法としては、前記圧縮ゴム層および伸張ゴム層の短繊維(B)の項で記載された方法から選択できる。
短繊維含有ゴム層の架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(B1)に加えて、フィラー(B3)をさらに含んでいてもよい。フィラー(B3)としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のフィラー(C)として例示されたフィラーなどが挙げられる。前記フィラーのうち、カーボンブラックが好ましい。フィラー(B3)の割合は、ゴム成分(B1)100質量部に対して、例えば5~80質量部、好ましくは10~60質量部、さらに好ましくは15~50質量部、より好ましくは20~40質量部である。
短繊維含有ゴム層の架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(B1)に加えて、他の添加剤(B4)をさらに含んでいてもよい。他の添加剤(B4)としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層の他の添加剤(D)として例示された添加剤を利用でき、架橋剤、架橋促進剤、加工剤または加工助剤、可塑剤、老化防止剤などを好ましく利用できる。ゴム成分(B1)100質量部に対する他の添加剤(B4)の各割合は、好ましい範囲も含めて圧縮ゴム層および伸張ゴム層の添加剤(D)の割合と同様の範囲から選択できる。
[布帛層]
輪断抑制の観点から、タイバンドは、図2(実施形態2)に示すように、ベルト内周側に、繊維構造体を含む布帛層をさらに有してもよい。布帛層を構成する繊維構造体としては、慣用の布帛を利用でき、例えば、スダレ織物、織布、網布、ネット(網状構造体またはメッシュ)などが挙げられる。これらのうち、輪断抑制とベルト長手方向に対する屈曲性(可撓性)とを両立でき、かつ生産性とのバランスにも優れる点から、スダレ織や平織などの織組織を有する織物または織布が好ましく、スダレ織物が特に好ましい。
スダレ織物の中でも、ベルト幅方向に作用する引張力に対する抵抗力をより向上できる点から、ベルト幅方向に延びる複数の糸状体を含むスダレ織物が好ましい。ベルト幅方向に延びる複数の第1の糸状体(糸条体)と、この複数の第1の糸状体よりも糸密度(配列密度)が低く、ベルト幅方向と交差する方向に延びる複数の第2の糸状体とを含むスダレ織物を用いるのが特に好ましい。
なお、本願において、ベルト幅方向に延びる糸状体は、ベルト幅方向に略平行に延びる糸状体を意味する。さらに「略平行」とは、糸状体が延びる方向とベルト幅方向とがなす角度が、例えば10°以下(例えば0~5°)程度、好ましくは3°以下(例えば0~1°、特に略0°)であることを意味する。
第1の糸状体の糸密度(ベルト長さ方向5cm当たりの糸本数)は、例えば10~300本/5cm、好ましくは50~200本/5cm、さらに好ましくは80~180本/5cm、より好ましくは100~170本/5cm、最も好ましくは120~150本/5cmである。
第2の糸状体の糸密度は、例えば1~30本/5cm、好ましくは2~10本/5cm、さらに好ましくは2~8本/5cm、より好ましくは3~7本/5cm、最も好ましくは4~6本/5cmである。
第1および第2の糸状体を構成する繊維としては、例えば、前記圧縮ゴム層および伸張ゴム層の短繊維(B)を構成する繊維として例示された繊維などが挙げられる。前記短繊維のうち、第1の糸状体としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維が好ましく、ポリアミド66繊維などの脂肪族ポリアミド繊維が特に好ましい。第2の糸状体としては、セルロース系繊維が好ましく、綿繊維などのセルロース繊維が特に好ましい。
第1の糸状体がポリエステル系繊維またはポリアミド系繊維である場合、第1の糸状体の繊度(マルチフィラメント糸などである場合は総繊度)は、例えば100~1000dtex、好ましくは200~800dtex、さらに好ましくは300~500dtexである。
第2の糸状体が綿繊維などのセルロース繊維である場合、第2の糸状体の太さ(番手)は、例えば5~100番手、好ましくは7~50番手、さらに好ましくは10~30番手程度である。
繊維構造体は、ゴム成分(架橋ゴム組成物)などとの接着性を向上するために、慣用の接着処理または表面処理(例えば、接着成分を含む処理液などによる処理)が施されていてもよい。接着処理の方法としては、前記圧縮ゴム層および伸張ゴム層の短繊維(B)で記載された方法から選択できる。
繊維構造体の平均厚みは、例えば0.1~0.5mm、好ましくは0.2~0.3mm程度である。繊維構造体の厚みが薄すぎると、層間剥離や輪断の虞がある。繊維構造体の厚みが厚すぎると、ベルトの屈曲性が低下する虞がある。
繊維構造体の剥離の抑制に加えて、層間(ラップドVベルト部および/または短繊維含有ゴム層と繊維構造体との層間)剥離の抑制および輪断抑制(欠損の伝播抑制を含む)の観点から、布帛層は、繊維構造体がゴム成分(布帛層挟持ゴム)に埋設される(挟まれる)態様とするのが好ましい。当該態様は、架橋ゴム組成物中に繊維構造体が埋設する態様である。
布帛層の架橋ゴム組成物を構成するゴム成分(C1)としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のゴム成分(A)として例示されたゴム成分を利用でき、好ましい態様も前記ゴム成分(A)における好ましい態様から選択できる。
布帛層の架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(C1)に加えて、フィラー(C2)をさらに含んでいてもよい。フィラー(C2)としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のフィラー(C)として例示されたフィラーを利用できる。前記フィラーのうち、カーボンブラックが好ましい。フィラー(C3)の割合は、ゴム成分(C1)100質量部に対して、例えば5~80質量部、好ましくは10~70質量部、さらに好ましくは20~60質量部、より好ましくは30~50質量部である。
布帛層の架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(C1)に加えて、他の添加剤(C3)をさらに含んでいてもよい。他の添加剤(C3)としては、圧縮ゴム層および伸張ゴム層の他の添加剤(D)として例示された添加剤を利用でき、架橋剤、架橋促進剤、加工剤または加工助剤、可塑剤、老化防止剤などを好ましく利用できる。他の添加剤(C3)の割合は、好ましい範囲も含めて圧縮ゴム層および伸張ゴム層の添加剤(D)の割合と同様の範囲から選択できる。
布帛層の架橋ゴム組成物のゴム硬度Hsは、例えば40~80°、好ましくは50~70°、さらに好ましくは55~65°である。布帛層の架橋ゴム組成物の引張強度は、ベルト幅方向において、例えば5~30MPa、好ましくは10~25MPa、さらに好ましくは15~20MPaである。
布帛層は単独(単層)または2種以上組み合わせて(積層構造で)使用することができる。布帛層は、布帛層の外周面(全面)と短繊維含有ゴム層の内周面(全面)同士が一体化(接着)し、布帛層および短繊維含有ゴム層がタイバンドに付加される変形応力を分担するように構成される。布帛層は、布帛層が短繊維含有ゴム層とラップドVベルト部とを一体化させるための接着ゴム(バインダー)としての役割も担えるだけの構成であればよい。生産性なども考慮すると、布帛層は単独(単層)で使用するのが好ましい。
布帛層の平均厚みは、例えば0.4~1.4mm、好ましくは0.5~1mm程度である。布帛層の厚みが薄すぎると、層間剥離や輪断の虞がある。逆に、布帛層の厚みが厚すぎると、ベルトの屈曲性が低下する虞がある。
[変形例]
各リブ部の表面(特に、摩擦伝動面となる、リブ部の両側部の二つの傾斜面)が布帛(織布、編布、不織布などの繊維部材)で被覆されていてもよい。
〈結合Vベルトの製造方法〉
本発明の結合Vベルトの製造方法は、複数本のラップドVベルト部前駆体をタイバンド前駆体で連結する連結工程、連結した前記ラップドVベルト部前駆体および前記タイバンド前駆体を加熱および加圧して架橋成形する架橋成形工程、得られた架橋成形体の外周側にリブ部を形成するリブ部形成工程を含む。さらに、本発明の結合Vベルトの製造方法は、連結工程の前工程として、ラップドVベルト部前駆体(未架橋のラップドVベルト部)を製造する第1の前駆体形成工程、タイバンド前駆体(未架橋のタイバンド)を製造する第2の前駆体形成工程を含んでいてもよい。
[ラップドVベルト部前駆体を製造する第1の前駆体形成工程]
第1の前駆体としてのラップドVベルト部前駆体(未架橋のラップドVベルト部)は、例えば、特開平6-137381号公報、WO2015/104778号に記載の方法などによって製造できる。
以下、代表的な製造方法として、圧縮ゴム層が二層構造であり、かつ補強布層を含む態様を例に説明する。代表的な製造方法においては、巻付け工程、切断工程、スカイビング工程、およびカバー巻き工程を経て、ラップドVベルト部前駆体(未架橋のラップドVベルト部)を得ることができる。
巻付け工程では、マントルに、接着処理した補強布層用布帛と、圧延処理して得られた未架橋の第2圧縮ゴム層用シートと第1圧縮ゴム層用シートとを、順に積層した積層体を巻き付ける。そして、第1圧縮ゴム層用シートの外周に未架橋の接着ゴム層用シートを巻き付ける。その後、接着ゴム層用シートの外周に芯体を巻き付け、さらに芯体の外周に未架橋の伸張ゴム層用シートを巻き付けて環状の積層体を形成する。
切断工程では、得られた環状の積層体をマントル上で切断(輪切り)する。
スカイビング工程では、切断した環状積層体を一対のプーリに架け渡し、回転させながらV形状に切削加工する。
カバー巻き工程では、得られた未架橋ベルト本体に対して、その周囲を外被布前駆体で覆う。
[タイバンド前駆体を製造する第2の前駆体成形工程]
第2の前駆体としてのタイバンド前駆体(未架橋のタイバンド)は、以下の製造工程で作製する。
(短繊維含有ゴム層前駆体の調製)
短繊維含有ゴム層前駆体は、シート圧延工程、および調整工程を経て形成される。
シート圧延工程では、バンバリーミキサー等を用いて、短繊維を含有するゴム組成物を混練りし、得られた混練りゴムをカレンダーロール等で圧延する。そして、短繊維を圧延方向に配列(配向)させた未架橋ゴムシートを作製する。
調整工程では、得られた未架橋ゴムシートをタイバンドに必要な所定の寸法(長さ、幅)および配向方向になるように調整する。
この調整工程において、短繊維の配列方向がゴムシートの幅方向に対して平行な方向になるように配置された短繊維含有ゴム層前駆体(ゴム成分が未架橋状態の短繊維含有ゴム層)のシートを得ることができる。
図1(実施形態1)に示すように、タイバンドが短繊維含有ゴム層のみで形成されている結合Vベルトの場合は、この短繊維含有ゴム層前駆体がタイバンド前駆体として構成される。
(布帛層を含むタイバンド前駆体の調製)
タイバンドを構成する布帛層前駆体(布帛層挟持ゴムのゴム成分が未架橋の布帛層)は、予め接着処理されていてもよい布帛(繊維構造体)の両面に、未架橋の布帛層挟持ゴムシートを積層することで形成できる。この布帛層前駆体シートに短繊維含有ゴム層前駆体シートを重ね合わせる(繊維構造体を形成する第1の糸状体の延在方向、および短繊維の配列方向が、それぞれシートの幅方向に対し所定の向きになるように重ね合わせる)ことで、タイバンド前駆体を形成できる。
[複数本のラップドVベルト部をタイバンドで連結する連結工程]
複数本のラップドVベルト部をタイバンドで連結する代表的な工程を、図8および9を用いて説明する。図8に示すように、架橋成形するための装置60において、一対のプーリ64a,64bに巻き掛けられた状態で保持された未架橋の環状体(タイバンド前駆体および複数本のラップドVベルト部前駆体のセット)61が、一対のプーリ64a,64b間において、二対のプレス用モールド(内周側モールド62aと外周側モールド62bとを組み合わせた第1の一対のプレス用モールド、および内周側モールド63aと外周側モールド63bとを組み合わせた第2の一対のプレス用モールド)によって挟持されている。一対のプレス用モールドは、詳しくは、図9に示すように、ラップドVベルト部に対応する断面逆台形状の溝部を有する内周側モールド73と、内周側モールド73に対向する面が平坦な平盤である外周側モールド74とを組み合わせた構造を有している。一対のプレス用モールドにおいては、幅方向に並べられた複数本のラップドVベルト部前駆体71を、内周側モールド73に形成された溝部に嵌め込んだ後、その外周側の部分にタイバンド前駆体72がセットされる。このとき、短繊維含有ゴム層前駆体72aの短繊維の配列方向がベルト幅方向に延びるようにセットされる。図9のように、布帛層前駆体72bを含む場合は、繊維構造体を形成する第1の糸状体が、ベルト幅方向に対し所定の向きに延びるようにセットされる。
このようにセットされたタイバンド前駆体72および複数本のラップドVベルト部前駆体71は、外周側モールド74と内周側モールド73との間で挟まれて加圧および加熱される架橋成形工程(加硫工程)に供される。
[ゴム成分の架橋反応により各構成部材を一体化する架橋成形工程]
架橋成形工程では、プレス用モールド内で加圧および加熱することで、連結した前記ラップドVベルト部前駆体および前記タイバンド前駆体が所定の形状に成形されるとともに、各構成部材に含まれるゴム成分の架橋反応で各構成部材が一体化される。プレス用モールドに挟持された部位が架橋成形されると、図8において、一対のプーリ64a,64bを回転させて、環状体61の未架橋の部位をプレス用モールドに移動させ、この部位の架橋成形を行う。この操作を繰り返して環状体61が全周にわたって架橋成形されると、複数本のラップドVベルト部がタイバンドで連結して結合した架橋スリーブが形成される。
なお、架橋成形工程において、架橋温度は、ゴム成分の種類に応じて選択でき、例えば120~200℃、好ましくは150~180℃である。圧力は、ゴム成分の種類に応じて選択でき、例えば0.1~10MPa、好ましくは0.5~3MPa、さらに好ましくは0.9~1.5MPaである。なお、本願において、前記圧力は、プレス面圧に換算した数値である。
[ベルト外周側にリブ部(所定のリブ形状)を形成するリブ部形成工程]
図10に示すように、複数本のラップドVベルト部81がタイバンド82で連結して結合した架橋スリーブを、一対のVプーリ83間に巻き掛ける。そして、架橋スリーブを一定の張力下で走行させた状態で、複数のリブ部に対応する断面V字状の突条を周長方向に所定のピッチ(間隔)で設けた研削ホイール(グラインダ-)84を回転させつつ、架橋スリーブの外周面に押し付ける研削加工により、架橋スリーブの外周側に所定のリブ形状が形成される。なお、このとき、連結部がタイバンドの最小厚み部分(リブ谷部)で形成される態様とするか、連結部がタイバンドの最大厚み部分(リブ山部)で形成される態様とするかは、研削ホイールとVプーリとのセットを使い分けることで調整できる。
このようにして形成された架橋スリーブが、所定幅に切断されることにより、所定本数のラップドVベルト部を有し、かつ背面に複数(所定数)の逆V字形(台形)断面のリブ部を有する結合Vベルトを得ることができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で使用した使用材料の詳細、未架橋ゴムシートの作製方法、各物性の測定方法または評価方法を以下に示す。
[ゴム組成物の原材料]
クロロプレンゴム:DENKA(株)製「PM-40」
酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製「キョーワマグ30」
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
老化防止剤:精工化学(株)製「ノンフレックスOD-3」
カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
シリカ:エボニックジャパン(株)製、「ULTRASIL(登録商標)VN3」、BET比表面積175m/g
可塑剤:ADEKA(株)製「アデカサイザーRS-700」
架橋促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTT」
酸化亜鉛:正同化学工業(株)製「酸化亜鉛3種」
ナフテン系オイル:出光興産(株)製「NS-900」
N,N’-m-フェニレンジマレイミド:大内新興化学工業(株)製「バルノックPM」
アラミド短繊維:帝人(株)製「コーネックス短繊維」(平均繊維長3mm、平均繊維径14μmの繊維を、RFL液[レゾルシン2.6質量部、37%ホルマリン1.4質量部、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス(日本ゼオン(株)製)17.2質量部、水78.8質量部]で接着処理した固形分の付着率6質量%の短繊維)
ポリエステル短繊維:帝人(株)製「テトロン」(平均短繊維長3mm)
ナイロン短繊維:旭化成(株)製「ナイロン66」(平均短繊維長6mm)
綿短繊維(平均短繊維長6mm、平均繊維径15μm)
[心線]
アラミド繊維の撚りコード(平均線径1.190mm)
[ゴム組成物]
表2および3に示す配合のゴム組成物A~Gをバンバリーミキサーで混練りし、塊状の未架橋ゴム組成物を調製した。得られた未架橋ゴム組成物をカレンダーロールに通して所定厚みの圧延ゴムシートとして、各ゴム層を形成する未架橋ゴムシートを作製した。そして、それぞれのゴム組成物の架橋物(架橋ゴム)の硬度および引張強度を測定した結果も表2および3に示す。
Figure 0007436731000002
Figure 0007436731000003
[架橋ゴムのゴム硬度Hs]
各ゴム層用未架橋ゴムシートを温度160℃、時間30分でプレス加熱し、架橋ゴムシート(100mm×100mm×2mm厚み)を作製した。架橋ゴムシートを3枚重ね合わせた積層物を試料とし、JIS K6253(2012)に規定されているスプリング式デュロメータ硬さ試験に準拠して、タイプAデュロメータを用いて架橋ゴムシートの硬度を測定した。
[架橋ゴムの引張強度]
架橋ゴムのゴム硬度Hs測定のために作製した架橋ゴムシートを試料とし、JIS K6251(2017)に準じ、ダンベル状(5号形)に打ち抜いた試験片を作製した。短繊維を含む試料においては、短繊維の配列方向(列理平行方向)が引張方向となるようにダンベル状試験片を採取した。そして、試験片の両端をチャック(掴み具)で掴み、試験片を500mm/minの速度で切断するまで引っ張ったときに記録される最大引張力を試験片の初期断面積で除した値(引張強さT)を引張強度とした。
[外被布]
ポリエステル繊維と綿との混紡糸(ポリエステル繊維/綿=50/50質量比)の織布(120°広角織り、繊度は20番手の経糸と20番手の緯糸、経糸および緯糸の糸密度75本/50mm、目付量280g/m)と、表2のゴム組成物Bとを用いて、カレンダーロールの表面速度の異なるロール間にゴム組成物Bと織布とを同時に通過させた。そして、織布の織り目の間にまでゴム組成物Bを擦り込む方法でフリクション処理(織布表裏に対して各1回行う)して外被布の前駆体(ゴム付き織布)を調製した。
[布帛層]
表4に示す構造を有する布帛(繊維構造体)の両面に、表2のゴム組成物Cで形成された、未架橋の布帛層挟持ゴムシートを積層し、ロールに通して圧着することにより、前記布帛(繊維構造体)を挟持ゴムで挟み込んだ布帛層前駆体を調製した。
Figure 0007436731000004
[各供試体の概要]
各供試体(結合Vベルト)の概要を、後述する検証結果の表9~18中に記載の供試体順に以下に示す。
実施例1(圧縮ゴム層が単層で、布帛層を有さず、連結部がリブ谷部で形成される態様)
(ラップドVベルト部前駆体の作製)
圧縮ゴム層用シートおよび伸張ゴム層用シートとしては、表3のゴム組成物Eを用いた。マントルの外周に、圧縮ゴム層用シート、接着ゴム層用シート(ゴム組成物A)を順に巻き付けた。その外周に心線を螺旋状にスピニングし、さらに、伸張ゴム層用シートを順に巻き付けて、未架橋の環状積層体を形成し、前記実施形態に記載の方法(補強布層用布帛は使用せず)でラップドVベルト部前駆体を作製した。
(タイバンド前駆体の作製)
短繊維含有ゴム層用シートとしては、表3のゴム組成物Fを用い、前記実施形態に記載の方法で短繊維含有ゴム層前駆体(厚み4.6mm)を作製し、これをタイバンド前駆体とした。
(結合Vベルトの作製)
図8に示す架橋成形するための装置に、6本のラップドVベルト部前駆体とタイバンド前駆体をセットし、前記実施形態に記載の方法で、1.2MPaまで加圧して、温度160℃で加熱して、6本のラップドVベルト部[ARPM A形、断面寸法:幅(W1)13.2mm×厚み(H1)8.4mm、ベルト長さ122インチ]がタイバンドで連結して結合した架橋スリーブを作製した。そして、研削加工にて、架橋スリーブの外周側に所定のリブ形状(表1に示すA形であり、Hおよびdは括弧内の数値)を形成した。なお、このとき、タイバンドの連結部がリブ谷部(タイバンドの最小厚み部分)で形成されるようにした。得られた架橋スリーブを切断し、2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルト(図1に示す構造を有する結合Vベルト)を作製した。得られた結合Vベルトの寸法は、ベルト幅(W)が29.1mm、ベルト厚み(H)が13.0mm、ベルト長さが122インチであった。
実施例2(圧縮ゴム層が単層で、布帛層を有さず、連結部がリブ山部で形成される態様)
研削加工にて、架橋スリーブの外周側に所定のリブ形状を形成する工程で、連結部がリブ山部(タイバンドの最大厚み部分)で形成されるように変更したことを除いては、実施例1と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルト(図3に示す構造を有する結合Vベルト)を作製した。なお、得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)も実施例1と同じであった。
実施例3(圧縮ゴム層が二層で、布帛層を有さず、連結部がリブ谷部で形成される態様)
圧縮ゴム層を二層として、第2圧縮ゴム層用シートにゴム組成物E、第1圧縮ゴム層用シートおよび伸張ゴム層用シートに硬度が大きいゴム組成物Dを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で、2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトを作製した。なお、得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)も実施例1と同じであった。
実施例4(圧縮ゴム層が二層で、布帛層を有さず、連結部がリブ山部で形成される態様)
研削加工にて、架橋スリーブの外周側に所定のリブ形状を形成する工程で、連結部がリブ山部(タイバンドの最大厚み部分)で形成されるように変更したことを除いては、実施例3と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトを作製した。なお、得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)も実施例3と同じであった。
実施例5(圧縮ゴム層が単層で、布帛層を有し、連結部がリブ谷部で形成される態様)
カレンダーロールの表面速度が略同じロール間に布帛層挟持ゴムの圧延シートと布帛A(スダレ織物)を同時に通過させた。そして、スダレ織物が布帛層挟持ゴム(ゴム組成物C)に埋設される方法でスダレ織物の表裏両面に積層処理(スダレ織物の表裏に対して各1回行う)してゴム付きスダレ織物(厚み0.7mm)のシートを調製し、これを布帛層前駆体とした。
そして、タイバンド前駆体の作製において、短繊維含有ゴム層前駆体(厚み3.2mm)と布帛層前駆体とを重ね合わせたシート(厚み:3.9mm)を、タイバンド前駆体としたことを除いては、実施例1と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルト(図2に示す構造を有する結合Vベルト)を作製した(表1に示すA形)。得られた結合Vベルトの寸法は、ベルト幅(W)が29.1mm、ベルト厚み(H)が12.3mm、ベルト長さが122インチであった。
実施例6(圧縮ゴム層が単層で、布帛層を有し、連結部がリブ山部で形成される態様)
研削加工にて、架橋スリーブの外周側に所定のリブ形状を形成する工程で、連結部がリブ山部(タイバンドの最大厚み部分)で形成されるように変更したことを除いては、実施例5と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルト(図4に示す構造を有する結合Vベルト)を作製した。なお、得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)も実施例5と同じであった。
実施例7(圧縮ゴム層が二層で、布帛層を有し、連結部がリブ谷部で形成される態様)
圧縮ゴム層を二層として、第2圧縮ゴム層用シートにゴム組成物E、第1圧縮ゴム層用シートおよび伸張ゴム層用シートに硬度が大きいゴム組成物Dを用いたことを除いては、実施例5と同様の方法で、2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトを作製した。なお、得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)も実施例5と同じであった。
実施例8(圧縮ゴム層が二層で、布帛層を有し、連結部がリブ山部で形成される態様)
研削加工にて、架橋スリーブの外周側に所定のリブ形状を形成する工程で、連結部がリブ山部(タイバンドの最大厚み部分)で形成されるように変更したことを除いては、実施例7と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトを作製した。なお、得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)も実施例7と同じであった。
比較例1(圧縮ゴム層が単層で、タイバンドが平坦な布帛層で形成される態様)
タイバンド前駆体の作製において、前記外被布の前駆体として用いたゴム付き織布(布帛の種類:布帛B)をタイバンド前駆体とした。そして、プレス用モールドに複数本のラップドVベルト部前駆体とタイバンド前駆体をセットする際に、タイバンド前駆体中の織布を構成する糸の方向を、ベルト幅方向に対して斜め(経糸および緯糸の双方がベルト幅方向に対してそれぞれ30°、すなわち、ベルト長さ方向に対して双方の糸が左右対称)となるようにセットしたこと、およびベルト外周側に所定のリブ形状を形成する研削加工を行わなかったことを除いては、実施例1と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルト(従来慣用されているラップド結合Vベルト)を作製した。得られた結合Vベルトの寸法は、ベルト幅(W)が29.1mm、ベルト厚み(H)が9.1mm、ベルト長さが122インチであった。
比較例2(圧縮ゴム層が二層で、タイバンドが平坦な布帛層で形成される態様)
圧縮ゴム層を二層として、第2圧縮ゴム層用シートにゴム組成物E、第1圧縮ゴム層用シートおよび伸張ゴム層用シートに硬度が大きいゴム組成物Dを用いたことを除いては、比較例1と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトを作製した。なお、得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)も比較例1と同じであった。
比較例3(圧縮ゴム層が単層で、タイバンドが平坦な短繊維含有ゴム層で形成される態様)
短繊維含有ゴム層前駆体の仕上がり厚みが2.1mmに形成されるように圧延処理シートの厚みを変更し、ベルト外周側に所定のリブ形状を形成する研削加工を行わなかったことを除いては、実施例1と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルト(図1において、リブ部が形成されていない構造を有する結合Vベルト)を作製した。得られた結合Vベルトの寸法は、ベルト幅(W)が29.1mm、ベルト厚み(H)が10.5mm、ベルト長さが122インチであった。
比較例4(圧縮ゴム層が二層で、タイバンドが平坦な短繊維含有ゴム層で形成される態様)
圧縮ゴム層を二層として、第2圧縮ゴム層用シートにゴム組成物E、第1圧縮ゴム層用シートおよび伸張ゴム層用シートに硬度が大きいゴム組成物Dを用いたことを除いては、比較例3と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトを作製した。なお、得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)も比較例3と同じであった。
比較例5(圧縮ゴム層が単層で、タイバンドが平坦な布帛層と平坦な短繊維含有ゴム層との積層体で形成される態様)
タイバンド前駆体を短繊維含有ゴム層前駆体(厚み1.4mm)と、布帛A(スダレ織物)を含む布帛層前駆体とを重ね合わせたシート(厚み:2.1mm)とし、ベルト外周側に所定のリブ形状を形成する研削加工を行わないことを除いては、実施例5と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルト(図2において、リブ部が形成されていない構造を有する結合Vベルト)を作製した。得られた結合Vベルトの寸法は、ベルト幅(W)が29.1mm、ベルト厚み(H)が10.5mm、ベルト長さが122インチであった。
比較例6(圧縮ゴム層が二層で、タイバンドが平坦な布帛層と平坦な短繊維含有ゴム層との積層体で形成される態様)
圧縮ゴム層を二層として、第2圧縮ゴム層用シートにゴム組成物E、第1圧縮ゴム層用シートおよび伸張ゴム層用シートに硬度が大きいゴム組成物Dを用いたことを除いては、比較例5と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトを作製した。なお、得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)も比較例5と同じであった。
実施例9~12
リブ部の高さH2(ひいてはタイバンド全体の厚みH3)を表11および12に示すように(次第に薄くなるように)変更したことを除いては、実施例8と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトをそれぞれ作製した。なお、得られた各結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)はベルト厚みHを除いて、実施例8と同じであった。
実施例13~15
リブ部の高さH2(ひいてはタイバンド全体の厚みH3)を表11および12に示すように(次第に厚くなるように)変更したことを除いては、実施例4と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトをそれぞれ作製した。なお、得られた各結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)はベルト厚みHを除いて、実施例4と同じであった。
実施例17~20
リブ部の配列ピッチP2を表13および14に示すように変更したことを除いては、実施例8と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトをそれぞれ作製した。なお、得られた各結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)は、連結部でのリブ形状(山部、谷部)を除いて、実施例8と同じであった。
実施例16
リブ部の高さH2(ひいてはタイバンド全体の厚みH3)を表13および14に示すように変更したことを除いては、実施例17と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトを作製した。なお、得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)はベルト厚みHを除いて、実施例17と同じであった。
実施例21
布帛層有りを布帛層無しとしたうえで、リブ部の高さH2(ひいてはタイバンド全体の厚みH3)を表13および14に示すように変更したことを除いては、実施例20と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトを作製した。なお、得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)はベルト厚みHを除いて、実施例20と同じであった。
実施例22、比較例7
タイバンドを構成する短繊維含有ゴム層の有無を含め、タイバンドを構成するゴム層のゴム組成物の種類を表15および16に示すように変更したことを除いては、実施例8と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトをそれぞれ作製した。なお、得られた各結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)も実施例8と同じであった。
比較例8
タイバンドを構成する短繊維含有ゴム層の有無を含め、タイバンドを構成するゴム層のゴム組成物の種類を表15および16に示すように短繊維を含まないゴム組成物Eに変更したことを除いては、実施例4と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトを作製した。なお、得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)も実施例4と同じであった。
実施例23
布帛層を構成する布帛の種類を表17および18に示すように平織の織布(布帛C)に変更したことを除いては、実施例8と同様にして2本のラップドVベルト部を有する結合Vベルトを作製した。なお、布帛層前駆体については、実施例5と同様の方法でゴム付き平織物(厚み0.7mm)のシートを調製し、これを布帛層前駆体とした。また、結合Vベルトの作製においては、布帛(布帛C)を構成する糸の方向を、ベルト幅方向に対して斜め(経糸および緯糸の双方がベルト幅方向に対してそれぞれ30°、すなわち、ベルト長さ方向に対して双方の糸が左右対称)となるように配置した。得られた結合Vベルトの寸法(幅、厚み、長さ)も実施例8と同じであった。
[結合Vベルトの評価:項目、方法、基準]
表9~18に示す各供試体について、本課題を解決し得る結合Vベルトが得られたかどうかを見極めるために、ベルト背面での伝達性能(スリップ率)および耐久性能を検証した。
[伝達性能(スリップ率)]
(試験名)伝達性能(スリップ率)測定試験
(試験機)
試験には、図11に示す多軸レイアウトの多軸走行試験機を用いた。
該試験機は、表5に示す、駆動プーリ(Dr1)、従動プーリ(Dn2およびDn3)、テンションプーリ(Ten4)、およびアイドラープーリ(ID5)からなるレイアウトのプーリが駆動プーリ(Dr1)91、テンションプーリ(Ten4)94、従動プーリ(Dn3)93、従動プーリ(Dn2)92、アイドラープーリ(ID5)95の順で配置されている。該試験機は、種々の条件(負荷等)下での、伝達性能(スリップ率)および耐久性能(ベルトの故障の有無)を確認できるように構成されている。
Figure 0007436731000005
(試験方法)
各供試体の結合Vベルトを、後述の耐久性能を評価する走行の前後に、表6に示す負荷(従動プーリDn2に9.5kW、従動プーリDn3に23.0kW、合計32.5kW)がかかる状態で走行させた。そして、従動プーリ(背面従動プーリ)Dn2の回転数(rpm)を計測することにより、下記式に従ってスリップ率を算出した。なお、この計測における無負荷時の駆動プーリDr1、従動プーリDn2の回転数、および負荷時の駆動プーリDr1の回転数を表7に示した。
スリップ率(%)=[(K2-K1)/K1]×100
[式中、K1=R1/N1、K2=R2/N2であり、R1は無負荷運転時の駆動プーリの回転数(rpm)、N1は無負荷運転時の従動プーリの回転数(rpm)、R2は負荷運転時の駆動プーリの回転数(rpm)、N2は負荷運転時の従動プーリの回転数(rpm)を示す]
Figure 0007436731000006
Figure 0007436731000007
(判定基準)
高性能に両面伝達ができるか否かは、ベルト外周面(背面)が平坦状に形成されているラップド結合Vベルト(比較例1、2)と比べて、ベルト外周側(背面側)での伝達性能がどれほど向上したかという観点で判断できる。
ベルト外周側(背面側)での伝達性能の判定として、ベルト外周側の摩擦伝動面と背面従動プーリDn2との間のスリップ率の値を指標[スリップ率の値が小さいほど、ベルト外周側(背面側)での伝達性能に優れ、高性能に両面伝達が可能]とし、
スリップ率の値[走行前後(走行前、240Hr完走後)で値が大きい方](%)が、
0.5%以下の場合をa判定、
0.5%を上回り0.6%以下の場合をb判定、
0.6%を上回り0.7%以下の場合をc判定、
0.7%を上回る場合をd判定とした。
本用途(両面駆動が要求される結合Vベルト)での実使用に対する適正(結合Vベルトのベルト背面での伝達性能)の観点から、a~c判定のいずれかのベルトを合格レベルとした。
[耐久性能]
(試験名)耐久性能試験
(試験機)
試験には、前記の耐久性能伝達性能(スリップ率)測定試験と同様の多軸走行試験機を用いた。
(試験方法)
各供試体の結合Vベルトを、表8に示す条件で240時間走行させ、ベルトを目視で経過観察し、亀裂や剥離などの異常の有無、ベルトが破損するまでの時間を以下の基準で評価した。なお、走行中の負荷については、表6に示すように、従動プーリ(背面従動プーリ)Dn2に9.5kW、従動プーリDn3に23.0kW、合計32.5kWの負荷がかかる状態で行った。なお、実施例1~23および比較例7~8においてはDr1、Dn3にVプーリを用い、Dn2にVリブプーリを用い、Ten4、ID5には平プーリを用いた。比較例1~6においてはDr1、Dn3にVプーリを用い、Dn2、Ten4、ID5には平プーリを用いた。
Figure 0007436731000008
(判定基準)
各ベルトの耐久性能の判定として、
耐久性能試験を240Hr行うことができ、亀裂や剥離などの異常が見られなかった場合をa判定、
耐久性能試験を240Hr行うことができ、若干(結合Vベルトの性能に支障はない程度)の亀裂や剥離などの異常が見られた場合をb判定、
耐久走行時間が200Hr以上240Hr未満で、結合Vベルトの性能に支障が出るほどの異常(亀裂や剥離)が生じた場合をc判定、
耐久走行時間が200Hr未満で、結合Vベルトの性能に支障が出るほどの異常(亀裂や剥離)が生じた場合をd判定とした。
なお、「耐久走行時間」とは、耐久性能試験を行った時間を意味する。
本用途(両面駆動が要求される結合Vベルト)での実使用に対する適正(結合Vベルトの耐久性能)の観点から、a~c判定のいずれかのベルトを合格レベルとした。
(総合判定)
本課題を解決し得る結合Vベルトとしての総合的な判定(ランク付け)の基準は、上記2つの評価項目(伝達性能(スリップ率)、耐久性能)における判定の結果から、以下の通りとし、Cランク以上を合格とした。
ランクA:上記の評価項目で、すべてa判定であった場合は、実用上全く問題ないものと判断し、最良のランクとした。
ランクB:上記の評価項目で、c判定はないが、1つでもb判定があった場合は、実用上問題ないが、やや劣るランクとした。
ランクC:上記の評価項目で、d判定はないが、1つでもc判定があった場合は、実用上問題ないが、ランクBよりもやや劣るランクとした。
ランクD:上記の評価項目で、1つでもd判定があった場合は、本課題を解決するには不充分なランク(不合格)とした。
[検証結果]
得られた結合Vベルトを上記試験によって評価した結果を表9~18に示す。
Figure 0007436731000009
Figure 0007436731000010
(実施例1~8、比較例1~6)
実施例1~8の各結合Vベルトは上記耐久性能試験の打ち切り時間である240Hrまでに顕著な異常が見られず、完走した。実施例3、4、7、8のように、圧縮ゴム層において、芯体層側に高硬度のゴム層を設ける態様が耐久性(特にラップドVベルト部の耐久性)に効果を及ぼすことが判る。
さらに、実施例2、4、6、8のように、連結部がタイバンドの最大厚み部分(リブ山部)で形成される態様も、耐久性(特に連結部の耐久性)に効果を及ぼすことが判る。
さらに、実施例5~8のように、タイバンドがベルト内周側に繊維構造体(スダレ織物)を含む布帛層をさらに有する態様も、耐久性(特に連結部、および連結部を除くタイバンドの耐久性)に効果を及ぼすことが判る。
一方、ベルトの背面形状が平坦状(フラット)に形成された、比較例1~6の結合Vベルトも、比較例1(従来慣用なラップド結合Vベルト)を除いて、上記打ち切り時間までに顕著な異常が見られず、完走した(耐久性能はa判定またはb判定)。伝達性能(スリップ率)は、ベルト外周側(背面側)が布帛層(ゴム付き織布)で形成された態様(比較例2)では、耐久走行前は1.00%で、耐久走行後は1.30%でd判定(総合判定でもランクD)であった。ベルト外周側(背面側)が短繊維含有ゴム層で形成された態様(比較例3~6)では、耐久走行前は0.60%で、耐久走行後は0.71~0.73%でd判定(総合判定でもランクD)であった。
それに対し、実施例1~8の結合Vベルトの伝達性能(スリップ率)は、耐久走行前は0.40%で、耐久走行後は0.48~0.52%(a判定)で、a判定またはb判定(総合判定でもランクAまたはランクB)であった。すなわち、ベルトの背面が複数のリブ部を含むように形成された結合Vベルトは、ベルトの背面が平坦状に形成されたラップド結合Vベルトに比べて、ベルト外周側(背面側)でのスリップ率が抑制され、伝達性能が向上したと云える。従って、内周面側に加えて、外周面側にもVリブプーリと接触可能な逆V字状側面(摩擦伝動面)を有する連結タイプの結合Vベルトは、高性能に両面伝達が可能であり、かつ高容量の伝達が可能であると云える。
Figure 0007436731000011
Figure 0007436731000012
(実施例8~12)
ベルト厚み方向の長さ比である、H2/H1が0.30、H3/H1が0.46の実施例8のベルト(圧縮ゴム層が二層、布帛層有り、連結部がリブ山部で形成、リブ部の配列ピッチ3.975mm)をベースに、リブ部の高さ2.5mmを変更し、比較した。
リブ部の高さ(H2)が低くなると、ベルト背面でのスリップ率が増加する傾向が見られた。そして、実施例8に対して、リブ部の高さを1.1mmまで低くし、その結果、ラップドVベルト部の厚み(H1)に対するリブ部の高さ(H2)の比(H2/H1)が0.13まで小さくなるとともに、ラップドVベルト部の厚み(H1)に対するタイバンドの厚み(H3)の比(H3/H1)が0.30まで小さくなった実施例10では、合格レベルの伝達性能(スリップ率)を確保でき(b判定)、ランクBであった。実施例8に対して、さらにリブ部の高さを0.9mmまで低くし、H2/H1が0.11まで小さくなるとともに、H3/H1が0.27まで小さくなった実施例9では、実施例10よりもやや劣るが、合格レベルの伝達性能(スリップ率)を確保でき(c判定)、ランクCであった。
(実施例8、13~15)
ベルト厚み方向の長さ比である、H2/H1が0.30、H3/H1が0.46の実施例8のベルト(圧縮ゴム層が二層、連結部がリブ山部で形成、リブ部の配列ピッチ3.975mm)をベースに、タイバンドに布帛層を含まない構成(タイバンドの厚みがより増加する構成)に変更するとともに、リブ部の高さ2.5mmを変更し、比較した。
リブ部の高さ(H2)が高くなると、ベルト背面でのスリップ率は減少するものの、耐屈曲性が低下するためか、リブ部に亀裂が入り易くなり、耐久性能が低下する傾向が見られた。そして、実施例8に対して、リブ部の高さを2.9mmまで高くし、その結果、ラップドVベルト部の厚み(H1)に対するリブ部の高さ(H2)の比(H2/H1)が0.35まで大きくなるとともに、ラップドVベルト部の厚み(H1)に対するタイバンドの厚み(H3)の比(H3/H1)が0.60まで大きくなった実施例14では、合格レベルの耐久性能を確保でき(b判定)、ランクBであった。実施例8に対して、さらにリブ部の高さを3.8mmまで高くし、H2/H1が0.45まで大きくなるとともに、H3/H1が0.70まで大きくなった実施例15では、実施例14よりもやや劣るが、合格レベルの耐久性能を確保でき(c判定)、ランクCであった。
Figure 0007436731000013
Figure 0007436731000014
(実施例8、17~18)
リブ部に対するラップドVベルト部の配列ピッチ比(P1/P2)が4の実施例8のベルト(圧縮ゴム層が二層、布帛層有り、連結部がリブ山部で形成、リブ部の高さ2.5mm)をベースに、リブ部の配列ピッチ3.975mmを変更し、比較した。
リブ部の配列ピッチ(P2)が大きくなると、ベルト背面でのスリップ率が増加する傾向が見られた。そして、実施例8に対して、リブ部の配列ピッチを10.6mmまで大きくし、その結果、リブ部に対するラップドVベルト部の配列ピッチ比(P1/P2)が1.5まで小さくなった実施例18では、合格レベルの伝達性能(スリップ率)を確保でき(b判定)、ランクBであった。実施例8に対して、さらにリブ部の配列ピッチを15.9mmまで大きくし、P1/P2が1まで小さくなった実施例17では、実施例18よりもやや劣るが、合格レベルの伝達性能(スリップ率)を確保でき(c判定)、ランクCであった。
(実施例8、19~20)
リブ部に対するラップドVベルト部の配列ピッチ比(P1/P2)が4の実施例8のベルト(圧縮ゴム層が二層、布帛層有り、連結部がリブ山部で形成、リブ部の高さ2.5mm)をベースに、リブ部の配列ピッチ3.975mmを変更し、比較した。
リブ部の配列ピッチ(P2)が小さくなると、ベルト背面でのスリップ率は減少するものの、耐側圧性が低下するためか、リブ部に亀裂が入り易くなり、耐久性能が低下する傾向が見られた。そして、実施例8に対して、リブ部の配列ピッチを2.271mmまで小さくし、その結果、リブ部に対するラップドVベルト部の配列ピッチ比(P1/P2)が7まで大きくなった実施例19では、合格レベルの耐久性能を確保でき(b判定)、ランクBであった。実施例8に対して、さらにリブ部の配列ピッチを1.988mmまで小さくし、P1/P2が8まで大きくなった実施例20では、実施例19よりもやや劣るが、合格レベルの伝達性能(スリップ率)を確保でき(c判定)、ランクCであった。
(実施例16、21)
実施例16は、伝達性能(スリップ率)が下限付近である例であり、実施例8~15の中でリブ部の高さH2が最も低い(スリップ率が最も大きい)0.9mmと、実施例8、17~20の中でリブ部の配列ピッチP2が最も大きい(スリップ率が最も大きい)15.9mmとを組み合わせた例である。実施例9、17と同等に、耐久性能はa判定であったが、伝達性能(スリップ率)がぎりぎり合格レベルのc判定で、ランクCであった。
実施例21は、耐久性能が下限付近である例であり、実施例8~15の中でリブ部の高さH2が最も高い(耐久性能が最も劣る)3.8mmと、実施例8、17~20の中でリブ部の配列ピッチP2が最も小さい(耐久性能が最も劣る)1.988mmとを組み合わせた例である。実施例15、20と同等に、伝達性能(スリップ率)はa判定であったが、耐久性能がぎりぎり合格レベルのc判定で、ランクCであった。
(表11~14の結果まとめ)
実施例16のように、背面従動プーリ(Vリブプーリ)のV字状側面(摩擦伝動面)と接触できる断面V字状溝がベルト外周面に設けられることで、それらの接触面積が少ない構成(リブ部の高さ0.9mm、リブ部の配列ピッチ15.9mm)であっても、ベルト外周面(背面側)でのスリップ率が有効に抑制され(過度にスリップすることなく)、伝達性能(スリップ率)を確保できた。その結果、有効に両面駆動が可能であることが確認できた。
一方、背面従動プーリ(Vリブプーリ)のV字状側面(摩擦伝動面)と断面V字状溝との接触面積が大きくなる(リブ部の高さを高くするとともに、リブ部の配列ピッチを小さくする)構成では、リブ部に亀裂が入ることでの耐久性能の低下が懸念される。しかしながら、実施例21の構成(リブ部の高さ3.8mm、リブ部の配列ピッチ1.988mm)であっても、耐久性能の確保に有効であることが確認できた。
表11~14の結果から、リブ部の高さH2(0.9~3.8mm)とリブ部の配列ピッチP2(1.988~15.9mm)とを、広い範囲に亘って組み合わせた結合Vベルトにおいて、両面駆動に有効な合格レベルの水準での伝達性能(スリップ率)と耐久性能とを両立できると云える。
さらに、ベルト厚み方向の長さ比である、ラップドVベルト部の厚み(H1)に対するリブ部の高さ(H2)の比(H2/H1)が0.11~0.45程度、ラップドVベルト部の厚み(H1)に対するタイバンドの厚み(H3)の比(H3/H1)が0.27~0.7程度、ならびに、リブ部に対するラップドVベルト部の配列ピッチ比(P1/P2)が1~8程度、という観点でも、両面駆動に有効な合格レベルの水準での伝達性能(スリップ率)と耐久性能とを両立できると云える。
特に、H2/H1が0.13~0.35程度、H3/H1が0.3~0.6程度、P1/P2が1.5~7程度の範囲が、伝達性能(スリップ率)と耐久性能とのバランスの観点で好適な範囲と云える。
Figure 0007436731000015
Figure 0007436731000016
(実施例8、22、比較例7、8)
タイバンドを構成する短繊維含有ゴム層のゴム組成物の種類がゴム組成物Fである実施例8のベルト(圧縮ゴム層が二層、布帛層有り、連結部がリブ山部で形成、リブ部の高さ2.5mm、リブ部の配列ピッチ3.975mm)をベースに、タイバンドを構成する短繊維含有ゴム層の有無を含め、タイバンドを構成するゴム層のゴム組成物の種類を変更し、比較した。
短繊維の割合及び短繊維の種類が実施例8と異なる、短繊維含有ゴム層(ゴム組成物G)が布帛層の外周面に積層された構成のタイバンドを有する実施例22では、実施例8と同等に合格レベルのベルト性能[伝達性能(スリップ率)、耐久性能]を確保でき、総合判定でランクAとなった。
一方、短繊維を含有しないゴム層(ゴム組成物E)が布帛層の外周面に積層された構成のタイバンドを有する比較例7では、べルト背面での伝達性能(スリップ率)がc判定であった。しかしながら、耐久走行時間が200Hr未満でリブ部に亀裂が発生し、耐久性能がd判定となり、総合判定でランクDであった。
また、タイバンドに布帛層を有する実施例8に対し、布帛層を有さず、短繊維も含有しないゴム層(ゴム組成物E)のみで構成されたタイバンドを有する比較例8も、べルト背面での伝達性能(スリップ率)がc判定であった。しかしながら、耐久走行時間が200Hr未満でタイバンド部とラップドVベルト部とが層間剥離し、耐久性能がd判定となり、総合判定でランクDであった。
以上の結果から、タイバンドを短繊維含有ゴム層と、この短繊維含有ゴム層のベルト内周側に積層された繊維構造体を含む布帛層とで形成することは、合格レベルのベルト性能[伝達性能(スリップ率)、耐久性能]を確保できる効果がある点で、好適であると云える。
Figure 0007436731000017
Figure 0007436731000018
(実施例4、8、23)
布帛(繊維構造体)がスダレ織物(布帛A)である布帛層と短繊維含有ゴム層とでタイバンドが構成された実施例8のベルト(圧縮ゴム層が二層、連結部がリブ山部で形成、リブ部の高さ2.5mm、リブ部の配列ピッチ3.975mm)をベースに、タイバンドを構成する布帛層の有無を含め、タイバンドを構成する布帛層の布帛の種類を変更し、比較した。
布帛層を構成する布帛の種類が平織物(布帛C)である実施例23では、布帛がスダレ織物(布帛A)である実施例8と比べ、やや屈曲性が低下したためか、ベルト背面での伝達性能(スリップ率)がb判定で、耐久性能も若干(結合Vベルトの性能に支障はない程度の)層間剥離が見られb判定(総合判定でもランクB)となった。
また、布帛層を有さず、短繊維含有ゴム層(ゴム組成物F)のみでタイバンドを構成させた実施例4は、前述のように、べルト背面での伝達性能(スリップ率)が実施例8と同等のa判定、耐久性能がb判定(リブ部に亀裂が若干発生)で、総合判定もランクBであった。
以上の結果から、タイバンドに布帛層を含めることは必須ではないが、この布帛層中の布帛(繊維構造体)をスダレ織物(布帛A)で形成することは、合格レベルのベルト性能[伝達性能(スリップ率)、耐久性能]をより確実に確保できる効果がある点で、好適であると云える。
以上の全検証結果から、少なくとも、ベルト外周側(背面側)のタイバンドがベルト幅方向に短繊維が配向している短繊維含有ゴム層を含むとともに、短繊維含有ゴム層がベルト長手方向に延びる複数のリブ部を有することで、両面駆動に有効な合格レベルの水準での伝達性能(スリップ率)と耐久性能とを両立できる(高性能に両面伝達が可能であり、かつ高容量の伝達が可能である)ことが確認できた。ベルトの背面が平坦状に形成されたラップド結合Vベルト、あるいは、ベルトの背面が複数のリブ部を含むように形成されているが、タイバンドを構成するゴム層のゴム組成物に短繊維を含まない結合Vベルトは、上記二つの性能を両立することができない。
本発明の結合Vベルトは、両面駆動が要求される各種の摩擦伝動ベルトとして利用でき、例えば、コンプレッサー、発電機、ポンプなどの一般産業用機械;紡糸機、紡績機、織機、編機、染色仕上機などの繊維機械;耕耘機、田植え機、野菜移植機、トランスプランタ、バインダー、コンバイン、ビーンカッター、とうもろこし破砕機、馬鈴薯収穫機、ビート収穫機、野菜収穫機、草刈り機、脱穀機、籾すり機、精米機などの農業機械などに利用できる。なかでも、欧米などで利用される高負荷で大型の農業機械、例えば、耕耘機、バインダー、コンバイン、野菜収穫機、脱穀機、ビーンカッター、とうもろこし破砕機、馬鈴薯収穫機、ビート収穫機などに好適である。
1…結合Vベルト
2…ラップドVベルト部
3…伸張ゴム層
4…芯体層
4a…芯体
5…圧縮ゴム層
6…外被布
7…タイバンド
7a…リブ部
7b…短繊維

Claims (8)

  1. 複数本のラップドVベルト部およびタイバンドを含む、結合Vベルトであって、
    各ラップドVベルト部の外周面が前記タイバンドで連結されており、
    各ラップドVベルト部が、ベルト本体と、前記ベルト本体の外表面を被覆する外被布とを含み、
    前記ベルト本体が、芯体を含む芯体層、前記芯体層のベルト外周側に積層された伸張ゴム層、および前記芯体層のベルト内周側に積層された圧縮ゴム層を含み、
    前記タイバンドが、ベルト幅方向に短繊維が配向している短繊維含有ゴム層を含み、
    前記短繊維含有ゴム層が、ベルト長手方向に延びる複数のリブ部を有する、結合Vベルト。
  2. 前記リブ部の配列ピッチが、前記ラップドVベルト部の配列ピッチよりも小さい請求項1記載の結合Vベルト。
  3. 前記リブ部の配列ピッチが、隣接する前記ラップドVベルト部間の隙間の幅よりも大きい請求項1または2記載の結合Vベルト。
  4. 前記タイバンドが、前記短繊維含有ゴム層と、布帛層とを含み、
    前記布帛層が、前記短繊維含有ゴム層の内周面に積層された繊維構造体を含む請求項1または2記載の結合Vベルト。
  5. 前記繊維構造体が、ベルト幅方向に延びる複数の第1の糸状体と、ベルト幅方向と交差する方向に延びる複数の第2の糸状体とを含むスダレ織物であり、
    前記第2の糸状体の配列密度が、前記第1の糸状体の配列密度よりも低い請求項4記載の結合Vベルト。
  6. 前記リブ部の頂部中心が、隣接する前記ラップドVベルト部間の隙間に位置する請求項1または2記載の結合Vベルト。
  7. 前記タイバンドの厚みが、前記ラップドVベルト部の厚みの0.3~0.7倍である請求項1または2記載の結合Vベルト。
  8. 複数本のラップドVベルト部前駆体をタイバンド前駆体で連結する連結工程、
    連結した前記ラップドVベルト部前駆体および前記タイバンド前駆体を加熱および加圧して架橋成形する架橋成形工程、
    得られた架橋成形体の外周側にリブ部を形成するリブ部形成工程を含む、請求項1または2記載の結合Vベルトの製造方法。
JP2023120314A 2022-07-29 2023-07-24 結合vベルトおよびその製造方法 Active JP7436731B2 (ja)

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