JP7435508B2 - 配管詰まりの検知方法と検知装置 - Google Patents

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本発明は、汚水等の液体を流す排水管等の配管(以降、単に「配管」ともいう)内にコレステロール状に付着・堆積する固形物による配管詰まりの状況を常時監視し、配管閉塞による操業トラブルを事前に防止する配管詰まりの検知方法とその検知装置に関するものである。
たとえば、鉄鋼生産設備の一つである酸洗ラインのリンスタンク等から排出される汚水には、塩酸や油分の他、鉄粉、スラジ等の固形分が多量に含まれている。そのため、上記汚水を流す排水管内には、時間の経過とともに、上記固形分が配管内壁に付着・堆積して汚水の流れを阻害するようになる。そして、その付着・堆積量が過度となると、排出された汚水を流出させることが困難となり、最悪、設備停止を引き起こす。そこで、上記のような配管詰まりを事前に検知し、対策を取ることが望まれている。
配管詰まりを事前に検知する方法としては、例えば、放射線が物体を通過する際の吸収量が物体の厚さと密度により決まることを利用し、配管を挟んで線源と検出器を上下または左右に配設し、それらを配管に沿って移動させながら透過線量をパソコンに取り込み、データ処理して配管内部の閉塞状況を測定する方法が実用化されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、配管の内部に工業用ファイバースコープや内視鏡カメラを挿入したり、カメラを内蔵したカプセルやロボット等を挿入したりして、管内の詰まりや、破損、劣化の程度を把握する方法も知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、その他の技術としては、例えば、特許文献3には、ボイラ水を加熱する電熱管を内包するボイラ缶体内の水位を検出する水位検出筒をボイラ缶体と連絡管で接続して別に設置し、水位検出筒内もしくは水位検出筒近傍の連絡管内のボイラ水温度と、ボイラ缶体内下部もしくはボイラ缶体近傍の接続管内のボイラ水温度を測定し、上記2つの温度差が設定値以上となったときに配管詰まりが発生していると判定する方法が開示されている。
また、特許文献4には、液内に挿入した計測用導圧管を通して一定量の空気を液内にパージしたときに前記導圧管に発生する背圧を測定するエアパージ測定システムにおいて、上記導圧管の背圧変動時間波形を測定し、この背圧変動時間波形の周波数解析を行って得られたパワースペクトラムにおける高周波数成分の減衰により上記導圧管の詰まり状況を検知する方法が開示されている。
特開2000-156803号公報 特開2004-226162号公報 特開2016-164480号公報 特開2002-005772号公報
日鉄テクノロジー株式会社、非破壊検査(NDI)・計測サービス、https://www.nstec.nipponsteel.com/technology/ndi-measurement_service/ndi-measurement_service07/
しかしながら、上記非特許文献1に記載の放射線を用いる方法は、専任の技術者や専用の測定装置が必要となり、測定に多額の費用や時間が掛かる。また、配管内に内視鏡カメラ等を挿入する特許文献1や2の方法は、排水が流れている状態では検査できないため、酸洗ライン等の設備を停止し、汚水が流れていない状態としてからカメラを挿入する必要がある。しかも、両技術は、連続的に配管詰まりの状況を監視できるものではない。
また、上記特許文献3や4の方法は、配管詰まりを起こす前に配管詰まりの状況を確実に検知することができるとされている。しかしながら、両技術は、特殊な配管の詰まりを検知する技術であり、排水管の配管詰まりには適用することができない。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、汚水を流す排水管等の配管内の配管詰まりの状況を、連続的に監視可能で、かつ、配管詰まりの程度を定量的に把握することができる配管詰まりの検知方法を提案するとともに、その方法に用いる検知装置を提供することにある。
発明者は、上記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた。その結果、排水管等の配管に流入する汚水等の液体の流量を配管外部において別途に測定し、該測定値から上記配管に配管詰まりが全くないとしたときの配管内の液面レベルを計算し、この値と実測した配管内の液面レベルとを比較することで、配管内の詰まりの程度を把握することができることに想到し、本発明を開発するに至った。
上記知見に基づく本発明は、配管に流入する液体の流量を測定し、該測定流量から配管に詰まりが全くないとしたときの配管内の液面レベルAを算出するとともに、上記配管の一部を透光性として配管内を流れる液体の液面レベルBを測定し、上記液面レベルAと液面レベルBとを比較することにより配管内の詰まり状況を把握する配管詰まりの検知方法を提案する。
また、本発明は、配管に流入する液体の流量を測定する流量計と、上記流量から配管に詰まりがまったくないときの配管内の液面レベルAを算出する演算機1と、上記配管の一部を透光性とし、該透光性の配管内を流れる液体の液面レベルBを測定する液面レベル検出装置と、上記液面レベルAと液面レベルBとを比較し、配管内の詰まり状況を把握する演算機2とを有する配管詰まりの検知装置を提供する。
本発明によれば、排水管内の詰まりの発生状況を、生産設備を停止することなく、連続的に検知することができるので、排管詰まりを事前に把握し、操業トラブルの発生を確実に防止することが可能となる。
酸洗ラインのリンスタンクの排水系統の一例を説明する図である。 図1の排水系統に本発明を適用した説明図である。 本発明の光学式水位計を説明する図である。 配管詰まりを検知する方法を説明する図である。 本発明の配管詰まりを検知するフロー図である。 水面レベルAを算定するのに使用する水理特性曲線図である。
以下、本発明について説明する。
図1は、一例として、製鉄所の酸洗ラインのリンスタンクから排出される汚水の排水系統を示した図である。酸洗ラインでは、洗浄水供給配管1から新しい洗浄水2が、操業時には、通常、10~50m/hrの流量でリンスタンク3に補給されるとともに、洗浄に使用された汚れを含む汚水4は、リンスタンク3からオーバーフローして、リンスタンク下部に設置されたパン5に回収されて排水管6に流れ込み、排水タンク7へと排出される。
一般に、上記排水管6には、外径が約200mm程度の塩化ビニル管が使用されているが、上記リンスタンク3から流れ出た汚水4中には、酸洗に使用した酸の他、油分や鉄粉、酸洗で生じたスラジ等が多量に含まれているため、上記汚水中に含まれる異物が排水管6内に付着・堆積し、配管詰まりを引き起こす。配管詰まりを起こすと、酸洗ラインを停止して、詰まりを洗浄・除去したり、新たな排水管を設けたりすることが必要となる。そのため、排水管の詰まり状況は、常時、監視することが必要とされる。
しかしながら、先述したように、従来技術では、上記のようない排水管内の詰まり状況を連続的に測定し、把握することは難しい。
そこで、本発明は、配管に流入する汚水の流量を配管外において別途に測定し、該測定流量から配管に詰まりが全くないとしたときの配管内の水面レベルAを算出するとともに、上記配管の一部を透光性として配管内を流れる汚水の水面レベルBを水位計で実測し、上記算出した水面レベルAと実測した水面レベルBとを比較することにより配管内の詰まり状況を把握する方法を提案する。
図2は、上記図1に示した酸洗ラインの排水系統に、本発明を適用した例を模式的に示したものである。新たな洗浄水をリンスタンクに補給する配管1には、補給される洗浄水2の流量を測定する電磁式流量計8を設置し、補給される洗浄水の流量を、常時、測定するようにしている。そして、上記測定した流量データは演算機1(9)に送られ、上記新たに補給される洗浄水2がそのまま配管つまりが全くない排水管6に流れ込んだとしたとき、すなわち、鋼板により持ち去られる水量はゼロで、補給される洗浄水の流量=汚水量と仮定したときの、排水管内の水面レベルAを算出する。
一方、上記リンスタンク3から流出した使用済みの洗浄水4(汚水)を排水タンク7に流す排水管6は、排水管の途中の一部、例えば長さ1mを、透光性の配管Pで置換し、その置換部を挟んで両側サイドには、光源10aと受光器10bから構成される光学式水位計10が設置されており、図3に示したように、光源10aから発せられた光を受光器10bで受光し、得られた光の強度レベル画像を画像処理して2値化し、透光性の配管部分の水面レベルBを測定する。ここで、上記透光性配管P内の水面レベルBは、非置換部の排水管内の水面レベルと同じである。
ここで、上記透光性の配管Pを設置する位置は、配管内の水面レベルが測定できる箇所であれば特に制限はないが、水面レベルが安定して測定できる、配管が水平もしくは水平に近い部分か、所定の勾配を有する部分に設置することが好ましい。なお、上記所定の勾配は、水面レベルが測定可能であれば上限はないが、5/100(100mで5m下がる)以下であることが好ましい。
次いで、上記水位計10で実測した水面レベルBのデータ値は、演算機2(11)に送られ、上記演算機1(9)で算出した水面レベルAの値とを比較することで、配管内の詰まり発生状況を評価する。上記の配管内の詰まりの発生状況を評価する方法としては、図4に示したように、同じ流量であっても、配管内にスラジ等12が堆積していると水面レベルが上昇し、その上昇量は配管詰まりの程度に依存することを利用して、水面レベルAと水面レベルBの差から配管詰まりの程度を評価するのが最も簡便である。ただし、上記水面レベルの上昇量は、配管詰まりの発生程度によっても異なるので、これらを考慮して、評価するのが好ましい。
上記一連の配管詰まりの検知フローを図5に示した。なお、上記配管詰まりの発生状況の評価においては、新たに補給する洗浄水の流量が一定である場合は問題ないが、上記流量が操業条件に応じて時間とともに変化するような場合には、配管内を流れる汚水の流量も時間とともに変化するので、水面レベルAの値は、流量計8から水位計10が設置されている場所まで汚水が到達する時間(遅れ時間)を考慮した値とする必要がある。
なお、上記新たに補給される洗浄水の流量から、配管詰まりが全くないとしたときの排水管内の水面レベルAを算出する方法としては、例えば、円形断面の等流計算に広く使われているManning(マニング)の公式(下記の(1)式)を用いることができる。
Q=V・A
V=1/n・R2/3・I1/2 ・・・・・・(1)
ここで、Q:流量(m/s)
V:流速(m/s)
A:排水管内の流水の断面積(m
A:1/8・(θ-sinθ)・d
θ:排水管内の流水の水面と管中心とのなす角(rad.)
d:排水管の内径(m)
n:粗度係数(-)
R:径深(m)(=A/P)
P:潤辺長(流水が配管内壁と接する長さ)(m)
P=1/2・θ・d
I:動水勾配(分数または少数)
ここで、上記マニングの公式を用いて、水面レベルAを求める簡便な方法について、動水勾配が5%で、内径dが200mmの塩化ビニル管製の排水管内に、汚水が30m/hr(0.0083m/s)で流れるときの水面レベルAを求める方法を例にとって説明する。
上記の塩化ビニル管内を流れる満管流時の流量Qfull(m/s)は、塩化ビニル管内壁の粗度指数nを0.010と仮定したとき、上記マニングの公式を用いて計算すると、Qfull=0.0953m/sが得られる。
そこで、上記Qfullと、水量計で測定した新たに補充した洗浄水の流量Qとの比(Q/Qfull)を求めると、Q/Qfull=0.0871が得られる。
一方、マニングの公式を用いて計算した、粗度指数n=0.010のときの満管流時に対する流量比を示した水理特性曲線は、図6に示したように公知であり、この図からQ/Qfull=0.0871のときのh/hfullを読み取ると、約0.2である。ここで、上記hは流量Qが30m/hrの時の水面レベルA、hfullは満管流時の水面レベル(=管内径d)である。
したがって、洗浄水の流量Qが30m/hrの時の水面レベルAの値hは、200×0.2=40mmが得られる。
ただし、上記マニングの公式は飽くまで便宜的ものであり、また、粗度係数n(排管内壁の粗さを示す指数)は水深とともに変化する。そこで、本発明を適用するに当たっては、nを変数とした水理特性曲線を用いることが好ましい。また、予め配管詰まりがない状態で流量Qと水面レベルAとの関係を実測し、逆に、粗度・勾配係数(√I/n)を計算して、上記式から求めた流量Qと水面レベルAの関係を補正して精度を高めておくことが望ましい。
なお、図2には、新たに補給する洗浄水の水量を測定する流量計として電磁式流量計を用いた例を示したが、電磁式流量計に限定されるものではなく、例えば超音波式流量計や渦式流量計等、広い流量範囲を高い精度で測定できる流量計であれば、いずれを用いてもよい。
また、透光性の配管内を流れる汚水の水面レベルBを測定する水位計としては、本発明では、図2に示したように、光源と、CCDカメラ等の受光器から構成される光学式水位計を用いる。これは、水位計としては、光学式の他に、超音波式、レーザー式、電極式、静電容量式、フロート式等、種々のものがあるが、配管詰まりを起こした時に高圧洗浄等で固着したスラジ等を取り除く際に機器が破損したり、汚水によって機器が腐食したりするのを防止する観点から、配管外において水位を測定できるものであることが好ましいからである。また、光学式であれば、比較的メンテナンスも容易である。なお、光線の種類としては、高い測定精度が得られるものであれば特に制限はなく、可視光、紫外線、レーザー光線のいずれであってもよい。
また、排水管の一部を置換する透光性の配管としては、光を透過する材質からなり、所望の強度と耐食性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、透光性を有するFRP(強化繊維プラスチック)製の配管であれば好適に用いることができる。置換部の長さは、配管内の水位を測定できる長さであればよく、1m程度あれば十分である。
なお、上記実施形態では、酸洗ラインの排水系統に本発明を適用した例を示したが、本発明の配管詰まりの検知方法や、検知装置の適用先はこれに限定されるものではない。また、本発明は、配管内にコレステロール状に付着・堆積する固形物となり得る固形分を含む液体を流す配管であれば、いずれの配管に対しても適用することができる。
1:洗浄水供給配管
2:洗浄水
3:リンスタンク
4:汚水
5:パン
6:排水管
7:排水槽
8:電磁式流量計
9:演算機1
10:水位計
10a:光源
10b:受光器
11:演算機2
12:スラジ等の堆積物
P:透光性配管

Claims (2)

  1. 配管内に付着・堆積する固形分を含む液体を流す配管の、水面レベルが測定できる水平部分または勾配が5/100以下の部分において、
    配管に流入する液体の流量を測定し、該測定流量から配管に詰まりが全くないとしたときの配管内の液面レベルAを算出するとともに、上記配管の一部を透光性として配管内を流れる液体の液面レベルBを測定し、上記液面レベルAと液面レベルBとを比較することにより配管内の詰まり状況を把握する配管詰まりの検知方法。
  2. 配管内に付着・堆積する固形分を含む液体を流す配管の、水面レベルが測定できる水平部分または勾配が5/100以下の部分に設置された配管詰まりの検知装置であって、
    配管に流入する液体の流量を測定する流量計と、
    上記流量から配管に詰まりがまったくないときの配管内の液面レベルAを算出する演算機1と、
    上記配管の一部を透光性とし、該透光性の配管内を流れる液体の液面レベルBを測定する液面レベル検出装置と、
    上記液面レベルAと液面レベルBとを比較し、配管内の詰まり状況を把握する演算機2とを有する配管詰まりの検知装置。
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