JP7435076B2 - 動力分割式無段変速機 - Google Patents

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Description

本開示は、動力分割式無段変速機に係り、特に、無段変速機構と遊星歯車機構との組み合わせによる動力分割式無段変速機に関する。
無限変速機は、IVT(Infinity Variable Transmission )と呼ばれ、出力速度=0、つまり無限大の変速比{(入力速度/出力速度)=無限大}が可能になる変速比無限大変速機である。IVTの機能を有する無段変速機としては、連続可変トランスミッション(Continuously Variable Transmission:CVT)として、油圧式CVTが実用化されている。
また、入力軸の駆動力を、角速度やトルクを変化させて間欠的に出力軸に伝達する間欠駆動型駆動力伝達装置(Pulse Drive Transmission:PDT)が従来から知られている。PDTは、その一つの形態としての減速型PPD(Passive Pulse Drive)を含めて、IVTの機能を有する。
減速型PPDとして、特許文献1では、駆動源により回転駆動される入力軸、入力軸に同軸に配置される出力軸、回転に伴って大きさが変動する力を出力軸に加える手段としての弾性体を含む駆動力伝達装置が開示されている。ここで、弾性体は回転に伴って弾性エネルギを蓄積する期間と放出する期間とを有する周期反転ばねの作用をする。弾性体は、一端が入力軸に接続され他端が出力軸に接続される弾性ばねでもよく、一方軸に一方側磁石、他方軸に他方側磁石をそれぞれ配置した磁気ばねでもよい。
特許文献2には、磁気ばね型の周期反転ばね構造において、入力軸または出力軸のいずれかを当該軸として、当該軸に第二磁石と第三磁石を同軸上に配置し、第二磁石に対する第三磁石の位置を調整することで、第二磁石と第三磁石の間の位相制御を行うことが開示されている。この位相制御によって、当該軸の合成トルクの大きさを変更できる。
特開2018-040379号公報 特開2018-132071号公報
ベルトCVTと遊星歯車機構とを組み合わせて高性能なCVTがあるが、リバース動作を可能とし効率向上を図る等のために複数のクラッチやブレーキが必要になり、構造が複雑化する。また、油圧式無段変速機(Hydro-Static Transmission:HST)と呼ばれる油圧式CVTを用い、油圧式CVTと遊星歯車機構とを組み合わせることで高性能なIVTとできる。この場合は、油圧ポンプと油圧モータをそれぞれ独立制御可能とすることでクラッチやブレーキが不要な簡素な構造とでき、また、動力分配と動力合流において優れているが、油圧ポンプと油圧モータにより質量や体格が大きくなる。そこで、遊星歯車機構と組み合せられるIVTについて、ベルトCVTに比べ簡素な構造とし、油圧式CVTに比べ質量や体格を小さくできる動力分割式無段変速機が要望される。
本開示に係る動力分割式無段変速機は、動力が入力される動力入力軸と、動力が出力される動力出力軸と、無限変速機をIVTとして、1つ以上のIVTと、IVTの変速比を制御するIVT制御部と、遊星歯車機構と、ブレーキ部と、を備え、動力入力軸の動力がIVTと遊星歯車機構とに分流され、分流された動力の内でIVTを通った分流動力と他方の分流動力とが遊星歯車機構内で合流されて動力出力軸に伝達されるCVTモード、IVTを等速状態として遊星歯車機構を作動させないHiモード、IVTを切り離し状態とし遊星歯車機構を固定変速比とするLoモード、及び、Loモードの下でIVT出力軸をブレーキ部で係止し固定変速比でリバース動作及び回生動作を可能とする回生モードを有することを特徴とする。
本開示に係る動力分割式無段変速機において、間欠駆動型無段変速機をPDTとして、IVTはPDTであることが好ましい。PDTは、駆動源により回転駆動される入力軸、入力軸に同軸に配置される出力軸、回転に伴って大きさが変動する力を出力軸に加える手段としての弾性体を含み、ブレーキ部が1つで足りる簡素な構成である。これにより、ベルトCVTに比べると簡素な構造であり、油圧式CVTに比べると質量や体格が小さくできるIVTと、遊星歯車機構とを組み合わせた動力分割式無段変速機が可能になる。
本開示に係る動力分割式無段変速機において、PDTは、減速型PPDであり、IVT制御部はPPD制御部であり、IVT出力軸はPPD出力軸であることが好ましい。
本開示に係る動力分割式無段変速機において、減速型PPDは、回転に伴って大きさが変動する力をPPD出力軸に加える手段としての周期反転ばね部を含んでおり、PPD制御部は、周期反転ばね部の強度を制御するばね強度制御部であり、CVTモードは、周期反転ばね部の強度の制御によって、動力入力軸の動力に対する減速型PPDと遊星歯車機構への分流比を制御し、Hiモードは、周期反転ばねの強度を所定第一強度以上とすることで減速型PPDを等速状態とし、Loモードは、周期反転ばねの強度を所定第二強度以下とすることで減速型PPDを切り離し状態とすることが好ましい。
上記構成によれば、PDTは、周期反転ばね部を含む減速型PPDである。このように、減速型PPDは、動力を伝達する際に必ず周期反転ばねを介し、この周期反転ばねの強度(周期的なトルク脈動の振幅)を調整することで伝達エネルギを調節し無段変速を行う。例えば、周期反転ばねの強度の設定を所定第一強度以上として、動力入力軸から入力されるトルク以上にすると、周期反転ばねが作動できず、減速型PPDにおいて、PPD入力軸とPPD出力軸が等速で連れまわる等速状態となり、Hiモードが実現できる。逆に、例えば、周期反転ばねの強度の設定を所定第二強度以下のゼロにすると、PPD入力軸からPPD出力軸へ動力が伝達されず、PPD入力軸とPPD出力軸とが切り離し状態になり、Loモードが実現できる。このように減速型PPDにおいては、周期反転ばねの強度の設定によって、PPD入力軸とPPD出力軸との間において、あたかもクラッチがON/OFFするのと同じ機能が生じる。換言すれば、減速型PPDは、外部に特別なクラッチ部を設けることなく、周期反転ばねの強度の設定によって、クラッチ機能を発揮する。これによって、特別なクラッチ部を設ける必要がなく、ベルトCVTに比べ、簡素な構成によって、HiモードからLoモードまで幅広い変速域が可能になる。
本開示に係る動力分割式無段変速機において、周期反転ばね部は、減速型PPDに関するPPD入力軸側に設けられた入力側磁石、及び、PPD出力軸側に設けられ且つ入力側磁石に向かい合った出力側磁石の間の磁気ばねを含むことが好ましい。
本開示に係る動力分割式無段変速機において、遊星歯車機構は、サンギアに動力入力軸、リングギアにPPD出力軸及びブレーキ部、キャリアに動力出力軸が接続される2K-H型、リングギアに動力入力軸、サンギアにPPD出力軸及びブレーキ部、キャリアに動力出力軸が接続される別の2K-H型、及び、共線図において、3軸の回転方向が同じで、両端が動力入力軸とPPD出力軸、中央が動力出力軸となる配置である方式、のいずれか1であることが好ましい。上記構成によれば、動力分割式無段変速機において、遊星歯車機構の選択の自由度が向上する。
上記構成の動力分割式無段変速機によれば、遊星歯車機構と組み合わせられるIVTについて、ベルトCVTに比べ簡素な構造とし、油圧式CVTに比べ重量やサイズを小さくできる。
実施の形態に係る動力分割式無段変速機のブロック図である。 無限変速機として、間欠駆動型無段変速機の種類系統図である。 無限変速機として減速型PPDを用いた動力分割式無段変速機のブロック図である。 図3における周期反転ばね部として用いられる弾性ばねの例を示す図である。 図3における周期反転ばね部として用いられる磁気ばねの例を示す図である。 図5の磁気ばねの分解図である。 図5の磁気ばねの断面図である。 周期反転ばね部として磁気ばねを用いる減速型PPDの構成図である。 図8のワンウェイクラッチ(One Way Clutch:OWC)の動作説明図である。図9(a)は、OWCを用いない場合のPPD出力軸(=ばね部出力軸)の出力特性で、横軸が時間で縦軸にばね部出力軸の回転速度を取り、PPD出力軸(=ばね部出力軸)の回転速度変化を示す図である。(b)から(d)は、OWCを用いた場合についての特性図である。(b)は(a)の回転速度に応じたOWCの係合動作を示す図であり、(c)は、(a)に対応する図で、OWCがある場合のばね部出力軸の回転速度変化を示す図であり、(d)は、OWCがある場合のPPD出力軸の回転速度変化を示す図である。 減速型PPDの周期反転ばね部に磁気ばねを用いる場合の動力分割式無段変速機のブロック図である。 図10を具体化して示す動力分割式無段変速機の構成図である。 図11の動力分割式無段変速機のCVTモードの場合の動作イメージ図である。 図12の変形例として、減速型PPDの前後に固定変速機を接続する場合の構成図である。 図12に対応する共線図である。 150kWのEVシステムにおいて、図12の動力分割式無段変速機についての出力動力の等高線図である。 図15に対応し、減速型PPDが負担する負荷の等高線図である。 図15、図16に基づいて、出力動力に対する減速型PPDの負荷の比率分布を示す図である。 図11の動力分割式無段変速機のHiモードの場合の動作イメージ図である。 図11の動力分割式無段変速機のLoモードの場合の動作イメージ図である。 図11の動力分割式無段変速機の回生モードの場合の動作イメージ図である。 動力分割式無段変速機の変形例を示す図である。 図13の変形例に対し、サンギア軸とリングギア軸の接続先を入れ替える構成例を示す図である。 3K型の遊星歯車機構を用いる変形例を示す図である。 K-H-V型の遊星歯車機構を用いる変形例を示す図である。
以下に図面を用いて本開示に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下に述べる形状、材質等は、説明のための例示であって、動力分割式無段変速機の仕様等により、適宜変更が可能である。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、実施の形態に係る動力分割式無段変速機9のブロック図である。動力分割式無段変速機9は、車両に搭載され、動力入力軸12から入力される動力を、2系統に分割し、動力出力軸14に伝達可能な無段変速機である。動力入力軸12には、図示しない車両搭載用の回転電機から動力が入力される。動力出力軸14から出力された動力は、車両の車軸に伝達される。
動力入力軸12から入力された動力は、IVTと呼ばれる無限変速機13への分流動力、及び、遊星歯車機構18への分流動力の2系統に分流される。無限変速機13をIVT13と示して、動力入力軸12は、IVT13と遊星歯車機構18にまたがって延び、遊星歯車機構18においては遊星歯車機構入力軸22となり、IVT13においてはIVT入力軸20となる。動力入力軸12から入力された動力は、IVT入力軸20を経由してIVT13側に分流され、また、IVT出力軸24を経由して遊星歯車機構18側に出力される。
IVT制御部37は、IVT13の変速比を制御する制御手段である。ブレーキ部26は、IVT出力軸24を固定する場合に用いる固定手段である。ブレーキ部26を用いる場合については後述する。
遊星歯車機構18は、遊星歯車機構入力軸22から出力される分流動力と、IVT13を通ってIVT出力軸24から出力される分流動力とを合流させる。合流された動力は、動力出力軸14から出力される。図1では、1つのIVT13が示されているが、伝達する動力の大きさによっては、2つ以上のIVT13を用いてもよい。
IVT13として、PDTと呼ばれる間欠駆動型無段変速機15を用いることができる。図2は、間欠駆動型無段変速機15をPDT15と示して、PDT15の種類を示す種類系統図である。PDT15は、アクティブパルスドライブ(Active Pulse Drive:APD)と、パッシブパルスドライブ(Passive Pulse Drive:PPD)とに分けられる。パッシブパルスドライブをPPDとして、PPDは、増速型PPDと、減速型PPD16とに分けられる。増速型PPDを除いて、他の種類のPDT15は、IVT13として用いることが可能である。以下では、PDT15として、減速型PPD16を用いる場合について述べる。
図3は、PDT15として減速型PPD16を用いる場合の動力分割式無段変速機10のブロック図である。IVT入力軸20は、減速型PPD16の入力軸となり、IVT出力軸24は減速型PPD16の出力軸になるので、以下では、特に断らない限り、IVT入力軸20をPPD入力軸20と呼び、IVT出力軸24をPPD出力軸24と呼ぶ。また、IVT制御部37は、減速型PPD16の減速比を制御する手段となるので、以下では、特に断らない限り、IVT制御部37をPPD制御部38と呼ぶ。
減速型PPD16は、PPD入力軸20とPPD出力軸24との間に、周期反転ばね部28及びワンウェイクラッチ(One Way Clutch:OWC)30を備える。以下では、特に断らない限り、ワンウェイクラッチ30を、OWC30と呼ぶ
周期反転ばね部28は、PPD入力軸20及びPPD出力軸24側の回転に伴って、弾性エネルギを蓄積する期間と放出する期間とを有する弾性体である。周期反転ばね部28における弾性エネルギの蓄積及び放出により、PPD入力軸20が動力を受けて回転すると、ばね部出力軸23に間欠的にエネルギが伝達される。OWC30は、周期反転ばね部28の出力軸であるばね部出力軸23とPPD出力軸24の間に設けられ、ばね部出力軸23の回転速度がPPD出力軸24の回転速度を超える場合には、係合するクラッチである(図9参照)。これにより、PPD出力軸24の回転を駆動する動力伝達を通し、PPD出力軸24の回転を阻害する動力伝達を通さないようにでき、動力の伝達方向が一方向となる。
PPD制御部38は、ばね強度制御部であり、周期反転ばね部28の強度を調整することで、PPD入力軸20からばね部出力軸23に伝達されるエネルギを制御して無段変速を行う。例えば、周期反転ばね部28の強度の設定を所定第一強度以上として、動力入力軸12から入力されるトルク以上にすると、周期反転ばね部28における弾性エネルギの蓄積・放出ができず、周期反転ばね部28が作動しない。この場合は、減速型PPD16において、PPD入力軸20とばね部出力軸23は、等速で連れまわる等速状態となる。逆に、例えば、周期反転ばね部28の強度の設定を所定第二強度以下のゼロにすると、PPD入力軸20からばね部出力軸23へエネルギが伝達されない。この場合は、PPD入力軸20とばね部出力軸23とが切り離し状態となる。
このように減速型PPD16においては、PPD制御部38の制御によって、周期反転ばね部28の強度の設定を行うことで、PPD入力軸20とばね部出力軸23との間において、あたかもクラッチがON/OFFするのと同じ機能を生じさせることができる。換言すれば、減速型PPD16は、外部にOWC30とは別のクラッチ部を設けることなく、周期反転ばね部28の強度の設定制御によって、自律的にクラッチ機能を発揮する。これは、周期反転ばね部28の機能に起因する内在的作用であるので、内在的クラッチ32と呼ぶ。内在的クラッチ32は機能的な概念であるので、実体的なブロック図や構造図には図示されない。このように、減速型PPD16の周期反転ばね部28は内在的クラッチ32の作用を有するので、ベルトCVTに比べ、簡素な構成によって、幅広い変速域が可能になる。
周期反転ばね部28は、一端がPPD入力軸20に接続され他端がばね部出力軸23に接続される弾性ばねでもよく、PPD入力軸20に入力側磁石、ばね部出力軸23に出力側磁石をそれぞれ配置した磁気ばねでもよい。PPD制御部38によって周期反転ばね部28の強度の設定が可能な構成例として、弾性ばねを用いる周期反転ばね部40を図4に示し、磁気ばねを用いる周期反転ばね部60を図5~図8に示す。
図4の周期反転ばね部40は、回転体42と、ケース44とを含む。回転体42は、回転軸Mを中心として回転する回転体で、回転軸Mから外れた軸を結ぶクランク部42aと、当該軸から角度で180度ずれた軸を結ぶクランク部42bとを有するクランク構造を有する。ケース44は、回転軸Mを中心とする円筒状の部材で、ケース回転軸46を備え、内部に、回転体42、弾性体48、弾性体保持部50、及び、保持部52を収容する。
弾性体48は、クランク部42aに対応する第1弾性体48a、及び、クランク部42bに対応する第2弾性体48bを含む。第1弾性体48a及び第2弾性体48bは、弾性力を発生させる部材で、同じ弾性特性を有する。ここで、第1弾性体48a及び第2弾性体48bには、弾性ばねが用いられる。弾性ばねは、弾性力を発生する部材であればよく、例えば、つるまきばね等のスプリング、ゴム等を用いることができる。
弾性体保持部50は、第1弾性体48aに対応する第1弾性体保持部50a、及び、第2弾性体48bに対応する第2弾性体保持部50bを含む。第1弾性体保持部50a及び第2弾性体保持部50bは、ケース44の内径よりも小さな外径を有する円筒状の部材で、回転軸Mに沿って並べて配置される。
ここで、第1弾性体48aの一端は、第1弾性体保持部50aの内面に固定され、他端は、クランク部42aに固定され、第2弾性体48bの一端は、第2弾性体保持部50bの内面に固定され、他端は、クランク部42bに固定される。
保持部52は、ケース44と弾性体保持部50との間に配置され、弾性体保持部50をケース44に保持する部材である。保持部52は、第1弾性体保持部50aに対応する第1保持部52a、及び、第2弾性体保持部50bに対応する第2保持部52bを含む。第1保持部52a及び第2保持部52bは、第1弾性体保持部50aと第2弾性体保持部50bとが回転軸Mを中心として相対的に回転可能なように、ケース44に保持する手段である。ここでは、第1保持部52aは、第1弾性体保持部50aをケース44に完全に固定する接着剤等であり、第2保持部52bは、第2弾性体保持部50bをケース44に対し相対的に回転可能かつ固定可能なラッチ機構等とする。ケース44は、第1保持部52a及び第2保持部52bに共通であるので、第2保持部52bは、第1保持部52aに対して相対的に回転可能且つ固定可能な機能を有する。これにより第2保持部52bは、第2弾性体保持部50bを第1弾性体保持部50aに対し、回転軸Mを中心とした位相角度を変更し、変更した位相角度で固定できる。
ここで、回転体42は、図3のPPD入力軸20に対応し、ケース回転軸46は、図3のばね部出力軸23に対応する。そして、第2保持部52bの回転及び固定は、PPD制御部38の制御の下で行われる。
図5に、磁気ばねを有する周期反転ばね部60の斜視図を示す。図6は、図5の分解図であり、図7は図5の断面図である。周期反転ばね部60は、回転体62と、ケース64とを含む。回転体62は、回転軸Mを中心として回転する回転体で、円柱形状のロータ62aと、その中心に貫通して固定された軸とを有する。ケース64は、回転軸Mを中心とする円筒状の部材で、ケース回転軸66を備え、内部に、回転体62、磁石68、磁石保持部70、保持部72を収容する。磁気ばねを有する周期反転ばね部60は、ロータ62aに設けられた入力側磁石、及び、磁石保持部70に設けられ且つ入力側磁石に向かい合った出力側磁石の間に働く磁気ばねを用いる。
磁石68は、回転体62のロータ62aの外周部に配置されるロータ磁石68Rと、ロータ62aの外周部と所定の隙間を介してロータ62aの外径側に配置される第1磁石68a及び第2磁石68bとを含む。ロータ磁石68Rは入力側磁石に対応し、第1磁石68a及び第2磁石68bは出力側磁石に対応する。図5、図6の例では、ロータ磁石68R、第1磁石68a、第2磁石68bは、いずれも、周方向に沿って、等間隔で4つの永久磁石が配置され、4つの永久磁石は、周方向に沿って極性を反転させながら、N,S,N,Sの順に配置される。
第1磁石68aは所定の隙間を介してロータ磁石68Rに対向して配置され、第2磁石68bは所定の隙間を介してロータ磁石68Rに対向して配置される。これにより、ロータ磁石68Rと第1磁石68aとの間に磁気ばね力が働く第1磁気ばね67a、及び、ロータ磁石68Rと第2磁石68bとの間に磁気ばね力が働く第2磁気ばね67bが形成される。第1磁気ばね67a、及び、第2磁気ばね67bは、ロータ磁石68Rと第1磁石68aとの間の磁極間距離、及び、ロータ磁石68Rと第2磁石68bとの間の磁極間距離がそれぞれ変化することで、磁気エネルギの蓄積と放出が行われる。図4で述べた弾性体48との対比で述べれば、ロータ磁石68Rと第1磁石68aとの間の第1磁気ばね67aは、第1弾性体48aに対応し、ロータ磁石68Rと第2磁石68bとの間の第2磁気ばね67bは、第2弾性体48bに対応する。
磁石保持部70は、第1磁石68aを保持する第1磁石保持部70a、及び、第2磁石68bを保持する第2磁石保持部70bを含む。第1磁石保持部70a及び第2磁石保持部70bは、ケース44の内径よりも小さな外径を有する円筒状の部材で、回転軸Mに沿って並べて配置される。
保持部72は、ケース64と磁石保持部70との間に配置され、磁石保持部70をケース64に保持する部材である。保持部72は、第1磁石保持部70aを保持する第1保持部72a、及び、第2磁石保持部70bを保持する第2保持部72bを含む。第1保持部72a及び第2保持部72bは、第1磁石保持部70aと第2磁石保持部70bとが回転軸Mを中心として相対的に回転可能なように、ケース64に保持する手段である。図5では、相対的な回転を示すための目盛がケース64に設けられ、目盛を指す目安線が第1磁石保持部70aに設けられる。この例では、第2保持部72bは、第2磁石保持部70bをケース64に完全に固定する接着剤等であり、第1保持部72aは、第1磁石保持部70aをケース64に対し相対的に回転可能かつ固定可能なラッチ機構等とする。
ケース64は、第1保持部72a及び第2保持部72bに共通であるので、第2保持部72bは、第1保持部72aに対して相対的に回転可能且つ固定可能な機能を有する。したがって第2保持部72bは、保持している第2磁石保持部70bを、第1保持部72aが保持している第1磁石保持部70aに対し、回転軸Mを中心とした位相角度を変更し、変更した位相角度で固定できる。換言すれば、第2保持部72bは、第2磁石保持部70bに保持されている第2磁石68bを、第1磁石保持部70aに保持されている第1磁石68aに対し、回転軸Mを中心とした位相角度を変更し、変更した位相角度で固定できる。
ここで、回転体62は、図3のPPD入力軸20に対応し、ケース回転軸66は、図3のばね部出力軸23に対応する。そして、第1保持部72aの回転及び固定は、PPD制御部38の制御の下で行われる。
周期反転ばね部60において、PPD入力軸20から動力が入力されると、第1磁気ばね67a及び第2磁気ばね67bを介してばね部出力軸23にトルクが周期的に与えられる。ばね部出力軸23に与えられるトルクは、第1磁気ばね67aを介して与えられるトルクと、第2磁気ばね67bを介して与えられるトルクの総和である。
PPD制御部38によって、第1保持部72aを第2保持部72bに対して相対的に回転させて固定すると、第1磁石68aは、第2磁石68bに対し、回転軸Mを中心とした位相差を変更して固定される。位相差の変更によって、第1磁気ばね67aを介してばね部出力軸23に与えられるトルクが変化し、第1磁気ばね67aを介して与えられるトルクと、第2磁気ばね67bを介して与えられるトルクの総和も変更される。
例えば、第1磁石68aと第2磁石68bの位相差を180度とする。位相差が180度とは、ロータ磁石68Rに向い合う第1磁石68aの極性と第2磁石68bの極性が互いに逆極性であることである。ロータ磁石68RのN極に対し、第1磁石68aがS極で対向している場合は、第2磁石68bがN極でロータ磁石68RのN極に対向している関係のときに、第1磁石68aと第2磁石68bの位相差は180度である。この場合、第1磁気ばね67aを介してばね部出力軸23に与えられるトルクと、第2磁気ばね67bを介してばね部出力軸23に与えられるトルクは、互いに打ち消し合い、ばね部出力軸23に与えられるトルクの大きさはゼロである。
これに対し、第1磁石68aと第2磁石68bの位相差が0度の場合は、ロータ磁石68Rに向い合う第1磁石68aの極性と第2磁石68bの極性が互いに同極性である。この場合、第1磁気ばね67aを介してばね部出力軸23に与えられるトルクと、第2磁気ばね67bを介してばね部出力軸23に与えられるトルクは、同じ大きさとなる。したがって、ばね部出力軸23に与えられるトルクの大きさは、第1磁気ばね67aを介してばね部出力軸23に与えられるトルクの2倍になる。
上記の弾性ばねを用いる周期反転ばね部40の図4の構成、磁気ばねを用いる周期反転ばね部60の図5、図6の構成、及び、これらに関するPPD制御部38の内容は、説明のための例示である。これ以外の周期反転ばね部28の構成、PPD制御部38の内容であってもよい。
このように、PPD制御部38の制御によって、第1磁石68aと第2磁石68bの間の位相差を変更し、第1磁気ばね67a及び第2磁気ばね67bを介してばね部出力軸23に与えられるトルクの大きさを調整できる。ひいては、ばね部出力軸23への伝達エネルギの大きさを調整できる。調整できる範囲は、第1磁気ばね67aを介してばね部出力軸23に与えられるトルクの2倍からゼロトルクの間である。このように、PPD制御部38の制御によって、PPD入力軸20とばね部出力軸23との間の伝達エネルギの大きさを調整して、減速型PPD16は無段変速を行うことができる。
減速型PPD16においては、周期反転ばね部28がエネルギ蓄積及び放出作用を有するので、ばね部出力軸23には脈動トルクが出力される。ばね部出力軸23に出力される脈動トルクの振幅の大きさは、周期反転ばね部28のばね特性であるばね強度で定まる。PPD制御部38の制御によって、第1磁石68aと第2磁石68bの間の位相差を変更することは、第1磁気ばね67a及び第2磁気ばね67bを全体として捉える周期反転ばね部28のばね強度を変更することに相当する。周期反転ばね部28のばね強度が強い場合には、ばね部出力軸23に出力される脈動トルクの振幅が大きく、ばね強度が弱い場合には、ばね部出力軸23に出力される脈動トルクの振幅が小さくなる。
ばね部出力軸23に出力される脈動トルクの振幅の大きさは、周期反転ばね部28がエネルギ蓄積及び放出作用を有するので、周期反転ばね部28のばね強度の設定によっては、計算上、PPD入力軸20から入力されるトルクより大きい場合がある。PPD制御部38による周期反転ばね部28のばね強度の設定が大きな値で、PPD入力軸20から入力されるトルクより大きい場合には、周期反転ばね部28のエネルギ蓄積及び放出作用が作動しない。ばね部出力軸23に出力されるトルクは、PPD入力軸20から入力されるトルクで制限され、ばね部出力軸23は、PPD入力軸20と磁気カップリングした状態となり、ばね部出力軸23は、PPD入力軸20と等速で回転する連れ回り状態になる。
一方、PPD制御部38による周期反転ばね部28のばね強度の設定が小さな値で、特に、ばね強度=ゼロである場合には、周期反転ばね部28を介したエネルギ伝達が行われず、PPD入力軸20とばね部出力軸23との間が切り離された状態になる。すなわち、減速型PPD16においては、PPD制御部38による周期反転ばね部28のばね強度の設定によって、PPD入力軸20とばね部出力軸23との間において、あたかもクラッチがON/OFFするのと同じ機能を生じさせることができる。この機能は、周期反転ばね部28が有する内在的クラッチ32の作用である。
図3の減速型PPD16は、周期反転ばね部28として、弾性ばねを用いる周期反転ばね部40を備えてもよく、磁気ばねを用いる周期反転ばね部60を備えてもよい。以下では、周期反転ばね部28として、磁気ばねを用いる周期反転ばね部60を備える場合について述べる。図8は、磁気ばねを用いる周期反転ばね部60と、OWC30とを含む減速型PPD17の構成図である。周期反転ばね部60には、PPD入力軸20とばね部出力軸23の間に内在的クラッチ32が含まれる。OWC30は、ばね部出力軸23とPPD出力軸24の間に設けられる。なお、OWC30は、一方向クラッチであることを示すために一方向ダイオードの記号の表記法も別枠内に図示した。
図9は、OWC30の動作説明図である。図9(a)は、OWCを用いない場合のばね部出力軸23の出力特性で、横軸が時間で縦軸にばね部出力軸23の回転速度を取り、ばね部出力軸23の回転速度変化を示す図である。OWC30を用いない場合には、ばね部出力軸23の出力はそのままPPD出力軸24の出力となるので、図9(a)は、OWC30を用いない場合のPPD出力軸24の出力特性に相当する。図9(b)から(d)は、OWCを用いた場合について、OWCの係合動作特性、ばね部出力軸23の出力特性、及びPPD出力特性を、それぞれの横軸の時間軸を揃えて示す図である。(b)は、OWC30の係合動作特性を示す図で、横軸に時間を取り、縦軸にOWC30の係合動作のON/OFFを取って、OWC30の係合動作の時間変化を示す。(c)は、(a)に対応する図で、OWC30がある場合のばね部出力軸23の出力特性で、横軸に時間を取り、縦軸にばね部出力軸23の回転速度を取って、ばね部出力軸23の回転速度変化を示す。(d)は、PPD出力軸24の出力特性図で、横軸に時間を取り、縦軸にPPD出力軸24の回転速度を取って、PPD出力軸24の回転速度変化を示す。
図9(b)から(d)に示すように、ばね部出力軸23の回転速度がPPD出力軸24の回転速度V0未満では、OWC30の係合はOFFのままで、ばね部出力軸23の動力はPPD出力軸24に伝達されないが、ばね部出力軸23の回転速度がPPD出力軸24の回転速度V0以上となると、OWC30の係合がONし、ばね部出力軸23の動力は、回転速度V0で回転しているPPD出力軸24に伝達される。すなわち、OWC30を用いることで、ねじ部回転軸23の動力について、PPD出力軸24の回転を駆動する動力はPPD出力軸24に通し、PPD出力軸24の回転を阻害する動力はPPD出力軸24に通さないように、動力の伝達方向を一方向にできる。このように、OWC30は、周期反転ばね部60とは別のハードウエアとしての要素である。これに対し、内在的クラッチ32は、周期反転ばね部60が作動する場合に現れるクラッチ機能を示すもので、ハードウエアとしては現れない。
以下では、磁気ばねで構成される周期反転ばね部60を有する減速型PPD17を含む動力分割式無段変速機11の作用について、さらに詳細に説明する。
図10の動力分割式無段変速機11は、図3の動力分割式無段変速機10について、図8の減速型PPDの構成を盛り込んで書き直した構成図である。減速型PPD17は、磁気ばねで構成される周期反転ばね部60を有する。周期反転ばね部60は、PPD入力軸20側に設けられた入力側磁石と、入力側磁石に対向してばね部出力軸23側に設けられた出力側磁石の間の磁気ばねで構成される。内在的クラッチ32は、PPD入力軸20とばね部出力軸23との間で働く。図3の遊星歯車機構18については、動力分割式無段変速機11で用いられる遊星歯車機構19と示し、遊星歯車機構19は、サンギア、遊星歯車、キャリア、リングギアで構成される。サンギア軸82は、遊星歯車機構入力軸22に接続され、リングギア軸84はPPD出力軸24に接続され、キャリア軸86は、動力出力軸14に接続される。ブレーキ部26は、リングギア軸84と固定部34との間に設けられる。
図11は、図10を簡素化した動力分割式無段変速機11の構成図である。ここでは、円筒形の周期反転ばね部60について、半円筒形の部分の断面図として、遊星歯車機構入力軸22を形式的にPPD入力軸20に含ませて示すこととし、内在的クラッチ32の図示を省略した。
動力分割式無段変速機11は、動作モードとして、CVTモード、Hiモード、Loモード、回生モードを含む。動作モードの切替は、主として、PPD制御部38の制御による減速型PPD17の動作切替によって行われ、リバース動作及びキャリア軸86が正転の場合の回生動作の場合のみ、ブレーキ部26を固定部34に係止させる。以下に、動力分割式無段変速機11における各動作モードの内容について、図11に基づいて作成した動作イメージ図を用いて説明する。
図12は、CVTモードにおける動力分割式無段変速機11の動作イメージ図である。動作イメージ図は、動力入力軸12をINと示し、動力出力軸14をOUTと示し、PPD制御部38と内在的クラッチ32の図示を省略する。以下の各動作イメージ図においても同様である。なお、ブレーキ部26はCVTモードでは用いないので、図示を省略する。
CVTモードは、PPD制御部38によって周期反転ばね部60の強度を制御して、減速型PPD17の伝達エネルギの大きさを変更する。これによって、動力入力軸12の動力に対する減速型PPD17と遊星歯車機構19への分流比を制御し、所定の変速域内を無段変速するモードである。所定の変速域は遊星歯車機構19のギア比等で決まる。減速型PPD17は、IVTであるため減速比無限から等速まで変速できる。そのため動力分割式無段変速機11としては、リングギア軸84の固定時の遊星歯車の変速比から、サンギアとリングギアの等速回転時の変速比まで取ることが可能である。この際、図13に示すように、減速型PPD17を接続する前後にギア90,92を設けることで、変速域の幅は変更可能である。
図14に、共線図の一例を示す。共線図上でのサンギア軸82とキャリア軸86、リングギア軸84との間の距離比を4.5:1としている。このギア比の場合、減速比1から減速比5.5まで無段階に変速可能である。
動力入力軸12に動力を供給する動力源を回転電機とし、サンギア軸82から伝達するトルクをT(Nm)と置いた場合のトルクを図14中に示す。図14の場合、サンギア軸82から1360T(W)、リングギア軸84から942T(W)、Totalで2302T(W)がキャリア軸86から出力される。すなわち、動力分割式無段変速機11を遊星歯車機構19と減速型PPD17とを組み合わせて構成した場合、総出力の約59%をサンギア軸82が担っている。したがって、動力分割式無段変速機11を減速型PPD17の単体で構成する場合と比較して負荷が59%低減される。減速型PPD17はエネルギ変換を行うことで変速を行う装置であるため、大きな動力を伝達するためには大きなエネルギを蓄積できる弾性体が必要となり、動力分割式無段変速機11を減速型PPD17の単体で構成すると、全体の体格が増大する。動力分割式無段変速機11を遊星歯車機構19と減速型PPD17とを組み合わせて構成すると、減速型PPD17の負担が軽減されることで、動力分割式無段変速機11の大幅な小型化が期待できる。
図15~図17に、動力分割式無段変速機11として遊星歯車機構19と減速型PPD17とを組み合わせる技術を用いて150kWのEVシステムを構成した場合に、全体出力の内で減速型PPDが負担する出力を計算した結果を示す図である。これらの図で、横軸は、EVシステム車両の車速であり、縦軸は、EVシステム車両の動力源である回転電機の回転数である。この横軸縦軸の平面図を用いて、各種出力特性の等高線を示す。動力分割式無段変速機11の変速域は、変速比2.7-5.4の変速比幅2.0倍とし、回転電機は、最大15000回転/分まで回転可能である。
図15は、150kWのEVシステムにおいて、動力分割式無段変速機11の全体の出力動力について、変速比幅の範囲で、kW単位の等高線で示す図である。変速比幅の広い領域で、全体出力が150kWであることが分かる。
図16は、図15に対応し、減速型PPD17が負担する負荷について、変速比幅の範囲で、kW単位の等高線で示す図である。図16から、減速型PPD17が負担する負荷は、最大でも約75kWであることが分かる。
図17は、図15、図16に基づいて、全体の出力動力に対する減速型PPD17が負担する負荷の比率分布を示す図である。比率分布は、変速比幅の範囲で、比率={(図16の減速型PPD17の出力)/(図15の全体出力)}で示す。図17から、全体出力に対する減速型PPD17の出力負担の比率は、最大でも約0.5であることが分かる。
これらの結果から、減速型PPD17に遊星歯車機構19を組み合わせて動力分割式無段変速機11を構成することで、減速型PPD17を介して伝達する出力は、EVシステムの全体出力に対し50%以下となり、減速型PPD17の出力負荷が軽減される。この出力負荷の軽減により、出力負荷を負担する減速型PPD17の台数は少数で済み、また、より小型となる。これをもとに試算すると、減速型PPD17単体で150kWの無段変速機を構成した場合と比較して、動力分割式無段変速機11における減速型PPD17の体積を約80%低減できる。このように、減速型PPD17に遊星歯車機構19を組み合わせて動力分割式無段変速機11を構成することで、小型・軽量化が図られる。さらに、磁気ばね型の減速型PPD17の構成部品の大部分が比較的高価なNd磁石であるので、体格低減だけでなく低コスト化も期待できる。
再び、動力分割式無段変速機11の動作モードの説明に戻り、図18は、Hiモードにおける動力分割式無段変速機11の動作イメージ図である。なお、ブレーキ部26はHiモードでは用いないので、図示を省略する。
Hiモードは、PPD制御部38の制御によって、周期反転ばね部60の強度(周期的なトルク脈動の振幅)を所定第一強度以上とすることで減速型PPD17を等速状態とするモードである。所定第一強度としては、動力入力軸12及びこれに接続されるPPD入力軸20に入力される動力源のトルク振幅が用いられる。周期反転ばね部60の強度をPPD入力軸20に入力されるトルク振幅以上に設定すると、周期反転ばね部60を作動させることができず、内在的クラッチ32の機能が働く。そして、減速型PPD17のPPD入力軸20とばね部出力軸23が等速で連れまわる状態(磁気カップリング状態)となる。Hiモードではこの内在的クラッチ32の機能を用い、減速型PPD17のPPD入力軸20とばね部出力軸23を等速で接続する。これにより遊星歯車機構19のリングギア軸84とサンギア軸82との回転に差が生じないため、遊星歯車機構19が作動せず、遊星歯車機構19全体が一体となって回転する。CVTモードからHiモードへの切り替えは、PPD制御部38による減速型PPD17の周期反転ばね部60の強度制御により行う。切替期間内はCVTモードであるため、CVTモードからHiモードへはシームレスに切替わる
図19は、Loモードにおける動力分割式無段変速機11の動作イメージ図である。ブレーキ部26はLoモードでは用いないので、図示を省略する。
Loモードは、PPD制御部38の制御によって、周期反転ばね部60の強度(周期的なトルク脈動の振幅)を所定第二強度以下とすることで減速型PPD17を等速状態とするモードである。所定第二強度としては、(トルク脈動の振幅)=ゼロが用いられる。周期反転ばね部60の強度をゼロに設定すると、周期反転ばね部28を介したエネルギ伝達が行われず、PPD入力軸20とばね部出力軸23との間が切り離された状態になる。すなわち、内在的クラッチ32がOFF状態となる。
内在的クラッチ32がON状態からOFF状態に移行中は、サンギア軸82からの駆動力とキャリア軸86の負荷により、リングギア軸84に負のトルクが作用するため、回転が低下する。減速型PPD17のOWC30の1つは逆転防止方向に設定されているため、この負トルクとOWC30とによりリングギア軸84の速度がゼロとなった状態となる。これにより、遊星歯車機構19は、リングギア軸84が固定、サンギア軸82が入力軸、キャリア軸86が出力軸の固定段減速機として動作する。なお、OWC30の係合方向の関係で、Loモードにおいては、車両の後退動作に対応するリバース動作、及び、キャリア軸86が正転している状態での回生動作ができない。しかし、車両の前進動作に対応する正転駆動、及びキャリア軸86が逆転している状態での回生動作については、Loモードにおいても可能である。Hiモードと同様にLoモードへの切替は、CVTモードを活用することでシームレスに切替わる。
図20は、回生モードにおける動力分割式無段変速機11の動作イメージ図である。回生モードはLoモードの下で、更に、ブレーキ部26を係止としてリングギア軸84を固定した状態である。これによりリングギア軸84に作用するトルクの正負によらず、常に固定段の固定変速比で遊星歯車機構19を動作させることができる。これによって、Loモードではできなかったリバース動作、及び、キャリア軸86が正転時の回生動作が可能である。切替時にLoモードを経由することで、他のモードと同様にシームレスな切替が可能である。
図21から図24は、動力分割式無段変速機11の変形例を示す図である。図21は、固定変速装置として、図13で述べたギア90,92に加えて、ギア94,96を設置する例であり、これにより変速比の設計自由度が増加し、減速型PPD17の動作特性が良好となる速度域を確保できる。
図22の上段は、図13で述べた構成である。図13で述べた構成では、サンギア軸82に動力入力軸12を接続し、リングギア軸84にPPD出力軸24を接続している。図22の下段の構成は、リングギア軸84に動力入力軸12を接続し、サンギア軸82にPPD出力軸24を接続する例である。この変更は、共線図が左右反転するだけで、図12と同様の動作が可能である。
遊星歯車機構18の分類は、図10、図11の遊星歯車機構19のように、内歯歯車または外歯歯車が合計で2つ、キャリア軸が1つからなる2K-H型の他に、すべて内歯歯車または外歯歯車で構成される3K型がある。図23に示す動力分割式無段変速機100は、3K型の遊星歯車機構102と減速型PPD17を組み合わせた構成を有する。
さらに遊星歯車機構18として、内歯歯車または外歯歯車を1つ、キャリア軸を1つ、遊星歯車を1つ用いるK-H-V型が知られている。図24に示す動力分割式無段変速機104は、K-H-V型の遊星歯車機構106と減速型PPD17を組み合わせた構成を有する。
他にも複数の遊星歯車機構18があるが、共線図上で図14と同様の配置、すなわち、3軸の回転方向が同じで、両端が動力入力軸12とPPD出力軸24、中央が動力出力軸14となる配置である限り、上記の変形例と同様な作用効果を有する変形例を構成できる。
上記のように、動力分割式無段変速機11においては、減速型PPD17が内在的クラッチ32の機能を有するので、OWC30とは別に特別なクラッチ部を設ける必要がなく、従来のベルトCVTに比べ簡素な構造となる。また、減速型PPD17が簡素な構造であることから、HMTと比べ、質量増加や体格増加を抑制できる。
一般的に、減速型PPDは、効率面の課題に加え体格当りの伝達効率が低く、大きな動力伝達の場合は大型化する。上記のように、減速型PPD17を遊星歯車機構19と組み合わせることで、負担する動力が軽減されるので、動力分割式無段変速機11における減速型PPD17は小型で済む。動力分割式無段変速機11は、同じ性能を減速型PPD単体で構成する場合に比べ、より小型・高効率化が図れる。
さらに、減速型PPD17は、OWC30を用いているために、リバース動作や、キャリア軸86が正転している状態での回生動作ができないが、Loモードとすることで、遊星歯車機構19のみで動力伝達が可能なため、リバース動作も回生動作も可能となる。
9,10,11,100,104 動力分割式無段変速機、12 動力入力軸、13 無限変速機(IVT)、14 動力出力軸、15 間欠駆動型無段変速機(PDT)、16,17 減速型PPD、18,19,102,106 遊星歯車機構、20 PPD入力軸(IVT入力軸)、22 遊星歯車機構入力軸、23 ばね部出力軸、24 PPD出力軸(IVT出力軸)、26 ブレーキ部、28,40,60 周期反転ばね部、30 ワンウェイクラッチ(OWC)、32 内在的クラッチ、34 固定部、37 IVT制御部、38 PPD制御部、42,62 回転体、42a,42b クランク部、44,64 ケース、46,66 ケース回転軸、48,48a,48b 弾性体、50,50a,50b 弾性体保持部、52,72 保持部,52a,72a 第1保持部、52b,72b 第2保持部、62a ロータ、62b 軸、68 磁石、68R ロータ磁石(入力側磁石)、68a 第1磁石(出力側磁石)、68b 第2磁石(出力側磁石)、70 磁石保持部、70a 第1磁石保持部、70b 第2磁石保持部、82 サンギア軸、84 リングギア軸、86 キャリア軸、90,92,94,96 ギア。

Claims (6)

  1. 動力が入力される動力入力軸と、
    動力が出力される動力出力軸と、
    無限変速機をIVTとして、1つ以上の前記IVTと、
    前記IVTの変速比を制御するIVT制御部と、
    遊星歯車機構と、
    ブレーキ部と、
    を備え、
    前記動力入力軸の動力が前記IVTと前記遊星歯車機構とに分流され、分流された動力の内で前記IVTを通った分流動力と他方の分流動力とが遊星歯車機構内で合流されて前記動力出力軸に伝達されるCVTモード、前記IVTを等速状態として前記遊星歯車機構を作動させないHiモード、前記IVTを切り離し状態とし、前記遊星歯車機構の入出力軸のうちIVT出力軸が接続される軸を固定することで前記遊星歯車機構を固定変速比とするLoモード、及び、前記Loモードの下でIVT出力軸を前記ブレーキ部で係止し前記固定変速比でリバース動作及び回生動作を可能とする回生モードを有することを特徴とする動力分割式無段変速機。
  2. 間欠駆動型無段変速機をPDTとして、前記IVTは前記PDTであることを特徴とする請求項1に記載の動力分割式無段変速機。
  3. 逆転防止方向が設定されたワンウェイクラッチを更に備え、
    前記PDTは、減速型PPDであり、前記IVT制御部はPPD制御部であり、前記IVT出力軸はPPD出力軸であり、
    前記Loモードにおいて、前記ワンウェイクラッチを用いて前記遊星歯車機構の入出力軸のうち前記PPD出力軸が接続される軸を固定することを特徴とする請求項2に記載の動力分割式無段変速機。
  4. 前記減速型PPDは、回転に伴って大きさが変動する力を前記PPD出力軸に加える手段としての周期反転ばね部を含んでおり、
    前記PPD制御部は、前記周期反転ばね部の強度を制御するばね強度制御部であり、
    前記CVTモードは、前記周期反転ばね部の強度の制御によって、前記動力入力軸の動力に対する前記減速型PPDと前記遊星歯車機構への分流比を制御し、
    前記Hiモードは、前記周期反転ばねの強度を所定第一強度以上とすることで前記減速型PPDを等速状態とし、
    前記Loモードは、前記周期反転ばね部の強度を所定第二強度以下とすることで前記減速型PPDを切り離し状態とすることを特徴とする請求項3に記載の動力分割式無段変速機。
  5. 前記周期反転ばね部は、前記減速型PPDに関するPPD入力軸側に設けられた入力側磁石、及び、前記PPD出力軸側に設けられ且つ前記入力側磁石に向かい合った出力側磁石の間の磁気ばねを含むことを特徴とする請求項4に記載の動力分割式無段変速機。
  6. 前記遊星歯車機構は、
    サンギアに前記動力入力軸、リングギアに前記PPD出力軸及び前記ブレーキ部、キャリアに前記動力出力軸が接続される2K-H型、
    前記リングギアに前記動力入力軸、前記サンギアに前記PPD出力軸及び前記ブレーキ部、前記キャリアに前記動力出力軸が接続される別の2K-H型、
    及び、
    共線図において、3軸の回転方向が同じで、両端が前記動力入力軸と前記PPD出力軸、中央が前記動力出力軸となる配置である方式、
    のいずれか1であることを特徴とする請求項3に記載の動力分割式無段変速機。
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