JP7431376B1 - 加熱済み調味用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、ビーフエキスと代替可能であり、かつ植物性食品に広く適用できる調味用組成物を提供することにある。【解決手段】上記目的は、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、かつ植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量は総量に対して60wt%以上である、加熱済み調味用組成物;植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、かつ植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量は総量に対して60wt%以上である、加熱済み調味用組成物と植物由来食材とを用いて調理することにより、植物性食品を得る工程を含む、植物性食品の製造方法などにより解決される。【選択図】なし

Description

本発明は、加熱済み調味用組成物に関する。詳しくは、本発明は、植物由来食材を用いた料理の味を調えることに適した加熱済み調味用組成物に関する。
食事の主菜としては、肉料理及び魚料理が嗜まれるのが一般的である。しかし、近年では、ベジタリアンと呼ばれる菜食主義者に加えて、肉類及び魚類だけでなく、乳製品及び卵を含む動物由来食材を一切食さないヴィーガン(Vegan)と呼ばれる完全菜食主義者の人口が増加している。ヴィーガンが食するのは、植物由来食材が用いられ、かつ動物由来食材が用いられていない植物性食品である。
動物由来食材に含まれるタンパク質、多価不飽和脂肪酸などの栄養素は、食品に味の深みを与える。特に肉類は、食感に特有の脂の香りが相俟って、コクがあり、独特の風味を醸し出す。それに対して、植物性食品は、動物由来食材を用いた食品と比べると、食感及び風味に物足りなさを感じるものが多い。
肉類を用いた食品としては、肉類そのものではなく、肉類の抽出物である肉エキスが用いられることがある。肉エキスの中でも、ビーフエキスは、牛肉特有のコク及び風味を食品に付与できる。ビーフエキスとは、牛肉を利用したコンビーフ、ボイルドビーフなどの肉加工品を製造する工程において副産物として産出される煮汁を原材料としたものである。ビーフエキスを用いて植物由来食材を調理することにより、得られる食品にコク及びビーフ風味を付与することができる。
ビーフエキスを代替するものとしては、タマネギなどの植物を苛性ソーダ溶液中に懸濁及び加熱還流したろ液に、小麦グルテン乾燥水解物、塩酸、リボース及び牛肉若しくは牛脂を添加し、次いで得られた混合物を加熱還流して得られる、pHが5.8である風味付与剤(例えば、特許文献1を参照)、(E)-6-ノネナールを含有することを特徴とする、植物性タンパク質含有食品に対する畜肉風味付与剤(例えば、特許文献2を参照)などが知られている。また、トマトピューレ及びリンゴシロップに加え、タンパク質加水分解物 40質量%及び酵母ペースト 27.0質量%を含むビーフタイプの風味調味料(例えば、特許文献3を参照)が知られている。
また、ビーフ風味以外の風味を付与するものとして、加水分解大豆タンパク、還元糖及び植物油とともに、水を45質量%で含む植物性豚肉風味料(例えば、特許文献4を参照);植物性油脂を80質量%以上で含むチーズ風シーズニングオイル(例えば、特許文献5を参照);及び唐辛子粉末及びニンニクペーストを含み、水を80質量%以上で含むキムチ風味付与用調味料(例えば、特許文献6を参照)が知られている。
昭56-5141号公告公報 特許第7011095号 特表2011-512805号公報 中国特許出願公開第112956673号明細書 特開2022-133196号公報 特開2016-13105号公報
しかし、ビーフエキスは肉類そのものではないものの、ビーフエキスを用いて作られた食品はヴィーガンに倦厭されている。また、特許文献1に記載の風味付与剤もまた、牛肉又は牛脂を用いているので、特許文献1に記載の風味付与剤を用いて得られた食品を、ヴィーガンは食することができない。
一方、特許文献2に記載の風味付与剤は、(E)-6-ノネナールを有効成分とする。しかし、(E)-6-ノネナールはウリのような青臭みがあり、薄味の植物性食品への使用には適していない。また、特許文献3に記載の風味調味料は、果物シロップ、タンパク質加水分解物及び酵母ペーストの組み合わせにより風味を付与するものであるところ、酵母ペーストは一部のヴィーガンに忌避されており、植物性食品への使用に適していない。
特許文献4~6に記載の調味料は、ビーフエキスと代替できるものではなく、さらに含有する成分のうち大半を水又は植物性油脂が占め、風味向上作用が弱い、又は独特の風味を有する。
そこで、本発明は、ビーフエキスと代替可能であり、かつ植物性食品に広く適用できる調味用組成物を提供することを、本発明が解決しようとする課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ね、数多くの成分を適宜組み合せて、様々な加工処理に供することにより、植物由来食材の風味を高め得る調味料を得ようと試行錯誤した。
そして、数々の検討を重ねた結果、遂に、植物性油脂及び野菜エキスの存在下で、植物タンパク質分解物と糖質とをメイラード反応が生じるように加熱処理して得たpHが4.50以上である加熱済み調味用組成物は、植物由来食材を加工して得た植物性食品にコク及びビーフ風味を付与することができ、該植物性食品の風味をより豊潤なものにできることを見出した。特に植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量が60wt%以上と大半を占めつつ、植物性油脂が含まれており、かつpHが4.50以上である加熱済み調味用組成物が、特許文献1に記載されているような牛肉又は牛脂を用いずとも、植物性食品にビーフ風味を付与できたという知見は、本発明者らによって初めて見出された驚くべき予想外の知見である。
このような知見の下で、本発明者らは、本発明の課題を解決するものとして、ビーフエキスに代替して、植物性食品の味を調えることができる調味用組成物を創作することに成功した。本発明はこのような本発明者らによって初めて得られた知見及び成功例に基づいて完成するに至った発明である。
したがって、本発明の各一態様によれば、以下のものが提供される:
[1]植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、かつ植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量が総量に対して60wt%以上である、加熱済み調味用組成物。
[2]前記加熱済み調味用組成物は、容器詰加熱済み調味用組成物である、[1]に記載の加熱済み調味用組成物。
[3]前記加熱済み調味用組成物は、動物由来食材及び酵母エキスを含まない加熱済み調味用組成物である、[1]に記載の加熱済み調味用組成物。
[4]前記植物タンパク質分解物は、小麦グルテン加水分解物、大豆タンパク質加水分解物及びトウモロコシタンパク質加水分解物からなる群から選ばれる少なくとも1種の植物タンパク質分解物である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物。
[5]前記糖質は、果糖、ブドウ糖及びショ糖並びにこれらを含む糖含有物からなる群から選ばれる少なくとも1種の糖質である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物。
[6]前記野菜エキスは、ヒガンバナ科野菜エキス及びアブラナ科野菜エキスからなる群から選ばれる少なくとも1種の野菜エキスである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物。
[7]前記野菜エキスは、タマネギエキス、ニンニクエキス、キャベツエキス及びハクサイエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種の野菜エキスである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物。
[8]前記植物性油脂は、ゴマ油、菜種油、大豆油及び米油からなる群から選ばれる少なくとも1種の植物性油脂である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物。
[9]前記加熱済み調味用組成物は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及びリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のpH調整剤をさらに含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物。
[10][1]~[3]のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物と植物由来食材とを原料として含む、植物性食品。
[11][1]~[3]のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物と植物由来食材とを用いて調理することにより、植物性食品を得る工程を含む、植物性食品の製造方法。
[12]植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、かつ植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量が総量に対して60wt%以上である、加熱済みビーフ風味付与用組成物。
[13]植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、かつ植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量が総量に対して60wt%以上である加熱済み組成物と植物由来食材とを用いて調理する工程を含む、植物性食品への風味付与方法。
本発明によれば、ビーフエキスに代替して、植物性食品の味を調えることができる。また、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂からなることができ、その場合は成分が全て動物由来食材ではないことから、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物を使用したものは依然として植物性食品であり得る。そこで、本発明によれば、ベジタリアン及びヴィーガンの食事の用に供される、嗜好性の高い植物性食品を製造することができる。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は加熱処理して得られ、さらに簡便な製造方法によって得られるものであることから、長期保存に適し、工業的規模で大量に製造することができるものである。
以下、本発明の各態様の詳細について説明するが、本発明は、本項目の事項によってのみに限定されず、本発明の目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、調味料を含む食品の分野の当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている推測及び理論は、本発明者らのこれまでの知見及び経験によってなされたものであることから、本発明はこのような推測及び理論のみによって拘泥されるものではない。
「組成物」は、通常用いられている意味のものとして特に限定されないが、例えば、2種以上の成分が組み合わさってなる物が挙げられる。「食材」及び「(原)材料」は、組成物を製造する際に使用(添加)される物を意味し、成分と同意義である。「食材」及び「(原)材料」は、組成物においては使用前と比べて質的及び/若しくは量的に維持又は変化した状態で存在し得る。
「含有量」は、濃度及び添加量(使用量)と同義であり、組成物の全体量に対する成分の量の割合を意味する。ただし、成分の含有量の総量は、100%を超えることはない。「w/v%」は「%(w/v)」と同義である質量体積パーセント濃度を表し、「vol%」は「%(v/v)」と同義である体積パーセント濃度を表し、「wt%」は「%(w/w)」と同義である質量パーセント濃度を表す。なお、成分の含有量は、市販品を用いる場合は、市販品に含まれる成分の量であることが好ましいが、市販品自体の量であってもよい。
「風味」は、口に含んだ際に口腔内から鼻へ抜ける香り(レトロネーザル)、口に含んだ際に舌で感じる味(呈味)又はその両方を意味する。
「食品」は、食料品、飲料品又はその両方を意味する。「加工食品」は、食材を調理して得られる食品を意味する。「植物性食品」は主として植物由来食材が用いられ、かつ動物由来食材が用いられていない加工食品を意味する。
「容器詰」は、シーリング可能な気密容器若しくは密封容器の中に充填又は収容されることを意味する。気密容器は、通常の取扱い、運搬又は保存状態において、固形又は液状の異物が侵入せず、内容物の損失又は蒸発を防ぐことができる容器をいう。密封容器は、通常の取扱い、運搬又は保存状態において、気体の侵入しない容器をいう。
「含む」は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である)が、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。要素としては、成分、工程、条件、パラメーターなどの制限事項などが挙げられる。
「及び/又は」との用語は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
「ppb」は、通常知られている意味のとおりの単位であり、具体的には1ppbは1/10であり、グラム換算では1ng/gである。
「メイラード反応」は、アミノ化合物と糖質とが反応して褐色物質を生成する反応をいう。
数値範囲の「~」は、その前後の数値を含む範囲であり、それらの含まれる限界値の一方を除いた範囲もまた含まれる。例えば、「0w/v%~100w/v%」は、0w/v%以上、100w/v%以下、及び0w/v%以上100w/v%以下のいずれであってもよい。「超過」及び「未満」は、その前の数値を含まずに、それぞれ下限及び上限を意味し、例えば、「1超過」は1より大きい数値であり、「100未満」は100より小さい数値を意味する。「約」は、その用語に続く数量の±10%以内の量を意味する。例えば、「約100」は、100±10%、すなわち、90~110を意味する。
整数値の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
[加熱済み調味用組成物の概要]
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含む。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、植物由来食材を用いて得られる植物性食品に対して、コク、ビーフ風味又はその両方を付与することができる。すなわち、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物を使用した植物性食品は、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物を使用していない植物性食品よりも、コク及び/又はビーフ風味が優れている。このような、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が有する、植物性食品に対して、コク及び/又はビーフ風味を付与する作用を「風味付与作用」ともよぶ。ただし、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、しょうゆ、ポン酢などの通常の調味料と同様に、味を調えるために使用されればよく、風味付与作用が発現するように使用されることが好ましい。
[植物タンパク質分解物]
植物タンパク質分解物は、植物タンパク質を含む原料を酸、アルカリ、酵素などによって加水分解したものである。植物タンパク質を含む原料は特に限定されないが、例えば、小麦、大麦、米、トウモロコシなどの穀類、大豆、エンドウなどの豆類、ジャガイモ、サツマイモなどの芋類などが挙げられる。
植物タンパク質分解物は、植物タンパク質を含む原料の加水分解物であれば特に限定されないが、例えば、市販品として容易に入手可能である、小麦グルテン加水分解物、大豆タンパク質加水分解物及びトウモロコシタンパク質加水分解物が好ましく、ペプチドが豊富であり、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物の風味付与作用を強めることから、微生物により処理した小麦グルテン加水分解物がより好ましい。植物タンパク質分解物の形状は、液体状、固体状、ペーストなどの半固体状のいずれでもよいが、例えば、糖質とよく混ざり合うことから液体状であることが好ましい。植物タンパク質分解物は、これらの1種の単独でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
植物タンパク質分解物は、植物タンパク質を含む原料を酸、アルカリ、酵素又は発酵によって加水分解することにより得てもよいし、市販されているものを利用してもよい。植物タンパク質分解物は、例えば、植物タンパク質を含む原料を、麹菌などの微生物を用いた処理に供することにより得ることができる。また、植物タンパク質を含む原料は、加水分解処理に供する前に、脱アミド化処理などの前処理に供してもよい。植物タンパク質分解物の市販品としては、例えば、小麦グルテン加水分解物としては「発酵うまみ調味液」(キッコーマン食品社製)、大豆タンパク質加水分解物としては「濃口味液」(味の素社製)、トウモロコシタンパク質加水分解物としては、「アミシンC」(新進社製)などが挙げられる。
植物タンパク質分解物の含有量は、糖質と反応して、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が風味付与作用を発揮し得る量であればよく、特に限定されないが、例えば、糖質とのメイラード反応を十分に行うこと、及び植物タンパク質分解物自体の呈味の観点から、加熱済み調味用組成物の総量に対して、30wt%~80wt%であることが好ましく、40wt%~80wt%であることがより好ましく、45wt%~70wt%であることがさらに好ましく、50wt%~65wt%であることがなおさらに好ましい。これらの量は無塩可溶性固形分が21%~29%である植物タンパク質分解物の量を表す。無塩可溶性固形分が21%~29%の範囲内にない植物タンパク質分解物を用いる場合は、無塩可溶性固形分換算で、上記量に相当する量を用いればよい。
[糖質]
糖質は、炭水化物から食物繊維を除いたものであり、単糖、二糖以上が結合したオリゴ糖及び多糖、並びに糖アルコールなどが挙げられる。
単糖は、1個の糖分子からなるものであり、例えば、トレオース、エリスリトールなどの四炭糖、アラビノース、キシロース、リボース、リブロース、キシルロースなどの五炭糖、グルコース(ブドウ糖)、プシコース、ガラクトース、フルクトース(果糖)、マンノースなどの六炭糖、アルドヘプトース、ヘプツロースなどの七単糖、オクツロースなどの八単糖などが挙げられる。
オリゴ糖は、2個以上から10個程度の単糖分子が結合した化合物をいい、例えば、乳糖、マルトオリゴ糖、ラクチュロース、パラチノース、パラチノースオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラフィノース、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、トレハロース、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ビートオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、スクロース(ショ糖)、マルトース、シクロデキストリンなどが挙げられる。
多糖は、10個以上の単糖分子が結合した化合物をいい、例えば、セルロース、デンプン、加工デンプン、ガラクタン、グリコーゲン、デキストランなどが挙げられる。
糖アルコールは、糖分子のカルボニル基が還元された多価アルコールであり、例えば、還元麦芽糖(マルチトール)、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、還元澱粉糖化物などが挙げられる。
糖質は、上記した糖及び/又は糖アルコールを含む糖含有物であってもよい。糖含有物は、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グラニュ糖(グラニュー糖)、上白糖、メープルシロップ、ハチミツ、コーンシロップなどが挙げられる。
糖質は、植物タンパク質分解物とメイラード反応が起きるものであれば特に限定されず、上記したものの1種を単独で,又は2種以上を組み合わせて使用できる。糖質は、例えば、糖質自体の呈味及び植物タンパク質分解物との反応性の観点から、単糖及びオリゴ糖並びにこれらを含む糖含有物が好ましく、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物の風味付与作用を強めることから、果糖、ブドウ糖及びショ糖、並びにこれらを含む果糖ブドウ糖液糖、グラニュ糖、メープルシロップなどの糖含有物であることがより好ましい。
糖質は、当業者により通常知られている方法によって製造したものでもよいし、市場に流通しているものであってもよい。糖質の市販品としては、例えば、果糖ブドウ糖液糖としては「ニューフラクト55」(昭和産業社製)、液状ブドウ糖としては「KG-25-70」(昭和産業社製)、果糖としては「純果糖」(加藤化学社製)、ショ糖としては「ばら印のグラニュ糖」(大日本明治製糖社製)、メープルシロップとしては「ケベックメープルシロップ」(クインビーガーデン社製)などが挙げられる。糖質の形状は、液体状、固体状、ペーストなどの半固体状のいずれでもよいが、例えば、植物タンパク質分解物とよく混ざり合うことから液体状であることが好ましい。糖質は、上記したものの1種の単独でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
糖質の含有量は、植物タンパク質分解物と反応し、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が風味付与作用を発揮し得る量であればよく、特に限定されないが、例えば、植物タンパク質分解物とのメイラード反応を十分に行うこと、及び糖質自体の呈味の観点から、加熱済み調味用組成物の総量に対して、5wt%~40wt%であることが好ましく、10wt%~35wt%であることがより好ましく、15wt%~35wt%であることがさらに好ましく、20wt%~30wt%であることがなおさらに好ましい。これらの量はBrixが73%以上である液糖又は固形糖の量を表す。Brixが73%未満である糖質を用いる場合は、Brix換算で、上記量に相当する量を用いればよい。
また、植物タンパク質分解物と糖質とは、メイラード反応が起きて、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が風味付与作用を発揮するために、それらの含有量は一定の関係性にあることが好ましい。植物タンパク質分解物の含有量(A)と糖質の含有量(B)との比(([A]/[B])は、例えば、0.05~10であることが好ましく、0.1~8であることがより好ましく、0.5~5であることがさらに好ましい。
[野菜エキス]
野菜エキスは、野菜をそのまま、又は乾燥して、細断、粉砕、すりおろし、ペースト化などの破砕処理に供すること、野菜を搾汁すること、野菜を水及びエタノールなどの溶媒で抽出することなどの加工処理に供して得られる、野菜に含まれる成分を含む野菜加工物である。
野菜の種類は、特に限定されない。一方、本発明者らは、野菜エキスの原料となる野菜が硫黄化合物を多く含む野菜であることにより、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が好ましい風味付与作用を発揮することを見出している。これは、肉の加熱香気成分として、メチオニン、システイン、シスチンといった硫黄を含む含硫アミノ酸又は含硫ペプチドが加熱されて生じる含硫芳香性化合物が知られていることとよく一致する。そこで、野菜の種類は、例えば、硫黄化合物を多く含む野菜であることが好ましい。したがって、野菜エキスは、硫黄化合物を多く含む野菜のエキスであることが好ましく、ヒガンバナ科野菜エキス及びアブラナ科野菜エキスであることがより好ましく、タマネギエキス、ニンニクエキス、キャベツエキス及びハクサイエキスであることがさらに好ましい。
野菜エキスは、当業者により通常知られている方法によって製造したものでもよいし、市場に流通しているものであってもよい。野菜エキスを製造する方法としては、野菜を水に加えて煮出す方法、野菜を磨り潰す方法、野菜を乾燥し、その後水戻しを行う方法などが挙げられる。野菜エキスの市販品としては、例えば、タマネギエキスとしては「たまねぎエキス」(東海物産社製)、ニンニクエキスとしては「おろしニンニクKN0」(あさの社製)、キャベツエキスとしては「きゃべつエキス」(東海物産社製)、ハクサイエキスとしては「はくさいエキス」(東海物産社製)などが挙げられる。野菜エキスの形状は、液体状、固体状、ペーストなどの半固体状のいずれでもよいが、例えば、植物タンパク質分解物及び糖質とよく混ざり合うことから液体状であることが好ましい。野菜エキスは、上記したものの1種の単独でもよいし、2種以上の組合せでもよい。野菜エキスは、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物に過剰な香りを付与しないために、タマネギエキス、キャベツエキス及びハクサイエキスであることがより好ましい。
野菜エキスの含有量は、植物タンパク質分解物及び糖質のメイラード反応に関与し、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が風味付与作用を発揮し得る量であればよく、特に限定されないが、例えば、野菜エキス自体の呈味の観点から、加熱済み調味用組成物の総量に対して、0.5wt%~35wt%であることが好ましく、1wt%~30wt%であることがより好ましく、2.0wt%~20wt%であることがさらに好ましく、3.0wt%~25wt%であることがなおさらに好ましい。これらの量は、Brixが5%~40%である野菜エキスの量を表す。それぞれの野菜エキスについて、Brixがこれらの範囲内にない野菜エキスを用いる場合は、Brix換算で、上記量に相当する量を用いればよい。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が風味付与作用を発揮するために、植物タンパク質分解物の含有量と野菜エキスの含有量とは一定の関係性にあることが好ましい。植物タンパク質分解物の含有量(A)と野菜エキスの含有量(C)との比(([A]/[C])は、例えば、0.5~40であることが好ましく、1~30であることがより好ましく、1.5~25であることがさらに好ましく、1.5~15であることがなおさらに好ましい。
[植物性油脂]
植物性油脂は、植物由来の油脂をいう。植物性油脂は、野菜エキスなどの成分と相俟って肉の脂肪香を醸し出し、さらに植物タンパク質分解物と糖質とのメイラード反応に関与して、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が風味付与作用を発揮すると考えられる。
植物性油脂が由来する植物は、菜種、大豆、ヒマワリ種子、綿実、落花生、米糠、米、コーン、サフラワー、オリーブ、ゴマ、ラッカセイ、ベニバナ、シソ、ヒマワリ、胡麻、アマ、カカオ、ヤシ、アブラヤシ、沙羅双樹、ブドウ種子、エゴマ、藻類、ナッツ類などが挙げられる。植物性油脂は、植物に由来する油脂を、水素添加、分別、エステル交換などの加工処理に供した加工油であってもよい。植物性油脂は、例えば、ゴマ油、菜種油、大豆油、米油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油などが挙げられるが、食用油脂として一般的に用いられ、かつ植物性油脂自体の呈味の観点から、ゴマ油、菜種油、大豆油及び米油であることが好ましく、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が優れた風味付与作用を発揮するためには、ゴマ油がより好ましい。
植物性油脂は、当業者により通常知られている方法によって製造したものであってもよいし、市場に流通しているものであってもよい。植物性油脂の形状は、液体状、固体状、ペーストなどの半固体状のいずれでもよいが、例えば、植物タンパク質分解物及び糖質とよく混ざり合うことから液体状であることが好ましい。植物性油脂は、上記したものの1種の単独でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
植物性油脂の含有量は、植物タンパク質分解物及び糖質のメイラード反応に関与し、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が風味付与作用を発揮し得る量であればよく、特に限定されないが、例えば、植物性油脂自体の呈味の観点から、加熱済み調味用組成物の総量に対して、0.005wt%~20wt%であることが好ましく、0.01wt%~10wt%であることがより好ましく、0.03wt%~5wt%であることがさらに好ましく、0.1wt%~2wt%であることがなおさらに好ましい。
また、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が風味付与作用を発揮するために、植物タンパク質分解物の含有量と植物性油脂の含有量とは一定の関係性にあることが好ましい。植物タンパク質分解物の含有量(A)と植物性油脂の含有量(D)との比(([A]/[D])は、例えば、5~10,000であることが好ましく、10~5,000であることがより好ましく、20~2,000であることがさらに好ましく、30~500であることがなおさらに好ましい。
[加熱済み調味用組成物]
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂に加えて、その他の成分を含むことができる。その他の成分は特に限定されないが、例えば、食品及び調味料に使用される成分が挙げられ、pH調整剤、香辛料、増粘剤、着色料、保存料、酸化防止剤などが挙げられる。
pH調整剤は特に限定されないが、例えば、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂の混合物を加熱処理によるメイラード反応に供する場合、得られる組成物のpHが低くなる傾向にあることから、アルカリ剤であることが好ましい。アルカリ剤は特に限定されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸塩などが挙げられるが、食品の製造に一般的に用いられている炭酸ナトリウムが好ましい。pH調整剤は、これらの1種の単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
その他の成分は、具体的には、液体成分としては、水、しょうゆ、甘味成分(みりんなど)、酸味成分(食酢、りんご、ゆず、レモンといった香酸柑橘など)、酒類成分(ワイン、清酒など)、果汁(りんご果汁など)などが挙げられ;固形成分としては、食塩、穀類成分(パン粉、小麦粉、オートミールなど)、香辛料(生姜、唐辛子、こしょう、バジル、オレガノ、ジンジャー、ミックススパイスなど)、増粘剤(カラギーナンなどの増粘多糖類など)、化学調味料(グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムなど)、フレーバー、味噌、カレー粉などが挙げられる。
ただし、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、植物性食品に適用される場合は、肉、卵、乳製品などの動物由来食材及び酵母エキスを含まないことが好ましい。「動物由来食材及び酵母エキスを含まない」とは、動物由来食材及び酵母エキス(これらを合わせて動物由来食材等ともよぶ。)以外の成分とともに動物由来食材等を含む原料や製造工程などによって不可避的に動物由来食材等が混入される場合を除き、意図的に含有させないことを意味する。したがって、「動物由来食材及び酵母エキスを含まない」場合は、仮に動物由来食材等が含まれていても極微量であることを意味し、例えば、この場合は動物由来食材等の含有量は0質量%~0.1質量%であることが好ましい。
その他の成分は、上記したものの1種の単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。その他の成分の含有量は、本発明の課題を解決し得る限り、適宜設定することができる。ただし、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が風味付与作用を発揮するために、その他の成分の含有量は、加熱済み調味用組成物の総量に対して、30wt%以下であることが好ましく、0wt%~25wt%であることがより好ましく、0wt%~15wt%であることがより好ましく、0wt%~10wt%であることがさらに好ましく、0wt%~5wt%であることがなおさらに好ましい。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、風味付与作用を発揮するために、含有する成分のうち、植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスが大部分を占める。具体的には、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物において、加熱済み調味用組成物の総量に対して、植物タンパク質分解物の含有量、糖質の含有量及び野菜エキスの含有量の合計量は60wt%以上であり、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が優れた風味付与作用を発揮するという観点から、65wt%~99.9wt%であることが好ましく、75wt%~99.7wt%であることがより好ましく、85wt%~99.5wt%であることがさらに好ましく、90wt%~99.5wt%又は95wt%~99.5wt%であることがなおさらに好ましい。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物の形状は特に限定されないが、例えば、食材によく混ざり合うことから、液体状であることが好ましい。したがって、本発明の好ましい態様は、加熱済み液体状調味用組成物である。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、pHが4.50以上であればよく、例えば、優れた風味付与作用を発揮するためには、4.50~6.40であることが好ましく、4.50~6.20であることが好ましく、4.55~6.00であることがさらに好ましい。また、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、加熱前のpHが5.00~7.50であることが好ましく、5.50~7.00であることがより好ましい。本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、このようなpHを有するために、pH調整剤をさらに含むことが好ましい。pH調整剤の含有量は、0.01wt%~10wt%であることが好ましく、0.5wt%~5wt%であることがより好ましい。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、加熱処理によって、植物性油脂及び野菜エキスの存在下で、植物タンパク質分解物及び糖質との間でメイラード反応が起きてなるものであることにより、植物性食品に対して、コク、ビーフ風味といった風味を付与することができる。メイラード反応の条件は、メイラード反応が起きるような加熱処理条件であればよい。
加熱処理条件は、植物性油脂及び野菜エキスの存在下で、植物タンパク質分解物及び糖質の間でメイラード反応が起きる条件であれば特に限定されないが、例えば、加熱温度が80℃以上であり、かつ加熱時間が1時間以上である条件が好ましく、加熱温度が80℃~95℃であり、かつ加熱時間が1時間~24時間である条件がより好ましく、加熱温度が約90℃であり、かつ加熱時間が1.5時間~8時間である条件がさらに好ましく、加熱温度が約90℃であり、かつ加熱時間が2.5時間~7時間である条件がなおさらに好ましい。なお、加熱処理における温度は組成物の温度(品温)を意味し、時間は所定の温度に到達した時点を0時間とし、その温度を持続した時間(温度持続時間)を意味する。本発明の別の側面によれば、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、かつ植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量は総量に対して60wt%以上である調味用組成物を、加熱温度及び加熱時間が上記の範囲内である条件の加熱処理に供して、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物を得る工程を含む、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物の製造方法が提供される。
加熱処理条件は、メイラード反応が起きることによって増減する成分を指標にして設定してもよい。本発明者らは、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂の混合物を加熱処理に供することにより、加熱処理の前よりも5-ヘキセン酸メチル及び2-ビニルピラジンが増えることを確認している。そこで、加熱処理は、5-ヘキセン酸メチル及び/又は2-ビニルピラジンが増える条件で行うことが好ましい。例えば、加熱処理前の5-ヘキセン酸メチル及び2-ビニルピラジンの含有量がそれぞれ0.2ppb程度及び32ppb程度であることを考慮すれば、加熱処理は、5-ヘキセン酸メチルの含有量が0.5ppb以上になり、及び/又は2-ビニルピラジンの含有量が50ppb以上になるような条件が好ましく、5-ヘキセン酸メチルの含有量が1.0ppb以上になり、及び/又は2-ビニルピラジンの含有量が80ppb以上になるような条件がより好ましく、5-ヘキセン酸メチルの含有量が1.0ppb~5.0ppbになり、及び/又は2-ビニルピラジンの含有量が80ppb~300ppbになるような条件がさらに好ましい。なお、5-ヘキセン酸メチル(Methyl 5-hexenoate)は、CAS登録番号が2396-80-7であり、下記式(1)で示される化合物である。2-ビニルピラジン(2-Vinylpyrazine)は、CAS登録番号が4177-16-6であり、下記式(2)で示される化合物である。
(1)
(2)
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、シーリング可能な気密容器又は密封容器に充填した容器詰組成物であってもよい。容器は、気密容器又は密封容器であれば特に限定されないが、例えば、アルミ、スチールなどの金属、紙、PETなどのプラスチック、ガラスなどを素材とする、1層又は積層(ラミネート)のフィルム袋、レトルトパウチ、真空パック、成形容器、瓶、缶などの包装容器が挙げられる。容器詰組成物は、それ自体で独立して、流通におかれて市販され得るものである。なお、家庭内で食品を保存する目的で使用される蓋付き容器は密閉容器であり、気密容器及び密封容器、特に密封容器とは厳に区別される。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が有する風味付与作用は、該組成物を使用した植物性食品が、同一条件下で該組成物を使用しない植物性食品(コントロール)と比べて、コク、ビーフ風味又はその両方を強く感じられる作用であればよい。風味付与作用は、通常は植物性食品に感じられないビーフ風味を植物性食品へ付与する作用に加えて、植物性食品が通常有しないコクを有するように、又は本来有するコクをより豊潤なものになるように、植物性食品へコクを付与する作用を包含する。
風味付与作用は、後述する実施例に記載の方法により確認できる。例えば、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物を使用した植物性ブイヨンについて、評価項目「コク」及び「ビーフ風味」に対する官能評価を実施して、コントロールと比べて、「コク」を強く感じること及び「ビーフ風味」を強く感じることからなる群から選ばれる少なくとも1種の評価結果、好ましくは2種全ての評価結果が得られる作用であればよい。風味付与作用が強くなることにより、使用される植物性食品はより嗜好性の高いものとなる。この観点から、風味付与作用は、例えば、同様の官能評価を実施して、総合評価が「◎」又は「○」となる作用であることが好ましく、総合評価が「◎」となる作用であることがより好ましい。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物の使用態様は特に限定されず、植物性食品であっても、動物性食品であってもいずれでもよいが、風味付与作用を強く発現するために、植物性食品であることが好ましい。植物性食品は特に限定されないが、例えば、植物性ブイヨン、すき焼きわりした、ドレッシング、サラダ、しょうゆ、ソース、ケチャップ、たれ、つゆ、ポン酢、中華醤、スープ、麺類、めんつゆ、植物性パテ、植物性ミルク、料理酒、調味油などが挙げられる。ただし、植物性食品は、動物由来食材等を含まない。本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、植物性食品に適していることから、植物性食品に対する加熱済み調味用組成物であることが好ましく、菜食主義者及びヴィーガンに供する植物性食品に対する加熱済み調味用組成物であることがより好ましく、ヴィーガンに供する植物性食品に対する加熱済み調味用組成物であることがさらに好ましい。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物の使用量は、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物が供すべき食材及び作製される加工食品の種類及び量などに応じて適宜設定でき、特に限定されない。例えば、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、加工食品に対して、0.001wt%~20wt%であることが好ましく、0.01wt%~10wt%であることがより好ましく、0.1wt%~5wt%であることがさらに好ましい。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、通常知られているとおりの各成分を混ぜ合わせて調味料を製造する方法などが挙げられ、具体的には植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂、並びに必要に応じてその他の成分を、室温下又は加温下で撹拌処理などの混合手段に供して混合することを含む方法などを挙げることができる。その他の成分は、細断すること、粉砕すること、膨潤すること、加熱することなどの処理に予め供して、前処理したものであってもよい。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は、保存性を考慮すれば、加熱、ろ過などによる殺菌処理などの腐敗防止処理に供されたものであることが好ましい。ただし、メイラード反応に際して加熱処理を選択した場合は、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物を加熱済み組成物又は加熱殺菌済み組成物としてもよい。なお、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物をレトルト殺菌に供する場合は、例えば、常圧下又は加圧下で、100℃~130℃、好ましくは約120℃で、1分間~30分間、好ましくは約10分間で行うことができる。
本発明の非限定的な具体的態様は、以下の成分(A)~(D)を含み、かつ特性(E)~(G)を備えた、加熱済み調味用組成物である。
成分(A)30wt%~80wt%である植物タンパク質分解物
成分(B)5wt%~40wt%である糖質
成分(C)0.5wt%~35wt%である野菜エキス
成分(D)0.005wt%~20wt%である植物性油脂
特性(E)pHが4.50以上
特性(F)加熱済み
特性(G)成分(A)~(C)の合計量が60wt%以上である
本発明の非限定的な別の具体的態様は、以下の成分(A)~(D)を含み、かつ特性(E)~(I)を備えた、加熱済み調味用組成物である。
成分(A)30wt%~80wt%である植物タンパク質分解物
成分(B)5wt%~40wt%である糖質
成分(C)0.5wt%~35wt%である野菜エキス
成分(D)0.005wt%~20wt%である植物性油脂
特性(E)pHが4.50以上
特性(F)加熱済み
特性(G)成分(A)~(C)の合計量が60wt%以上である
特性(H)成分(A)含有量([A])と成分(C)の含有量([C])との比([A]/[C])が0.5~40
特性(I)成分(A)含有量([A])と成分(D)の含有量([D])との比([A]/[D])が5~10,000
本発明の非限定的な別の具体的態様は、以下の成分(A)~(D)を含み、かつ特性(E)~(I)を備えた、加熱済み調味用組成物である。
成分(A)45wt%~70wt%である植物タンパク質分解物
成分(B)15wt%~35wt%である糖質
成分(C)2.0wt%~20wt%である野菜エキス
成分(D)0.03wt%~5wt%である植物性油脂
特性(E)pHが4.50以上
特性(F)加熱済み
特性(G)成分(A)~(C)の合計量が70wt%~99.7wt%である
特性(H)成分(A)含有量([A])と成分(C)の含有量([C])との比([A]/[C])が1.5~25
特性(I)成分(A)含有量([A])と成分(D)の含有量([D])との比([A]/[D])が20~2,000
[植物性食品]
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物と植物由来食材とを用いて、これらを常温にて、又は加熱して、調理することにより、コク、ビーフ風味といった風味が向上した、嗜好性の高い植物性食品が得られる。本発明の別の一態様は、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物と植物由来食材とを原料として含む、植物性食品である。本発明の別の一態様は、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物と植物由来食材とを用いて調理することにより、植物性食品を得る工程を含む、植物性食品の製造方法である。
植物由来食材は、一般に食材として使用される植物に由来するものであれば特に限定されないが、例えば、大根、タマネギ、長ネギ、ハクサイ、人参、牛蒡、れんこん、生姜、ニンニク、キャベツ、ピーマン、トマト、コーン、タケノコなどの野菜類;シソ、パセリ、セロリ、ニラ、ミツバなどの香辛野菜類;椎茸、マッシュルーム、エノキ、シメジなどのキノコ類;リンゴ、ナシ、キウイ、パイナップル、梅などの果実類;ゴマ、ナッツ、栗などの種実類;ひじき、昆布、ワカメなどの海藻類などが挙げられる。植物由来食材は、豆腐、油揚げ、コンニャク、大豆タンパクなどのように、植物の加工食品であってもよい。すなわち、植物由来食材は、植物をすりおろすこと、ペースト状にすること、粉砕すること、細切りすること、ダイス状、短冊状などの形状にカットすること、焼くこと、炒めることなどの加工処理に供されたものであってもよい。
植物性食品を調理する際には、砂糖、グラニュ糖といった糖類、ゴマ油、サラダ油といった油脂類、しょうゆ、コショウなどの調味料を用いてもよい。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物を利用して調理する方法は特に限定されず、使用する植物由来食材の種類及び量、得られる植物性食品の種類などに応じて適宜設定することができる。例えば、調理方法としては、炒める、揚げる、焼く、蒸す、電子レンジを用いて加熱すること、熱風により加熱すること、熱水中で加熱することなどの通常の加熱調理方法などが挙げられる。
本発明の一態様の植物性食品は、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物を用いて調理されていないものと比べて、コク、ビーフ風味又はその両方の風味が優れている。或いは、本発明の一態様の植物性食品は、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物に代えて相当量のビーフエキスを用いて調理されたものと比べて、コク、ビーフ風味又はその両方の風味が同程度である。例えば、ブイヨン系食品では、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物の0.2wt%量がビーフエキスの1wt%~2wt%量に相当し得る。また、すき焼やドレッシングでは、本発明の一態様の加熱済み調味用組成物の0.5wt%量がビーフエキスの2wt%量に相当し得る。
[本発明の別の態様]
植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、かつ植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量は総量に対して60wt%以上である加熱済み組成物は、植物性食品に対して、コク、ビーフ風味又はその両方を付与することができる。そこで、本発明の別の一態様は、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、かつ植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量は総量に対して60wt%以上である加熱済みビーフ風味付与用組成物である。また、本発明の別の一態様は、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、かつ植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量は総量に対して60wt%以上である、植物性食品に対する加熱済みビーフ風味付与用組成物である。
本発明の別の一態様は、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、かつ植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量は総量に対して60wt%以上である加熱済み組成物と植物由来食材とを用いて調理する工程を含む、植物性食品への風味付与方法である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
例1 調味用組成物の植物性食品への影響評価
[1-1.調味用組成物の調製]
表1~2に記載のとおりに、原材料を撹拌機により混合して得た混合物を、ウォーターバスを用いて、90℃にて4時間の加熱処理に供して、実施例1及び比較例1~3の調味用組成物を得た。小麦グルテン加水分解物としては「発酵うまみ調味液」(Brix 40.4%、塩分 16.0wt%、無塩可溶性固形分 24.4%;キッコーマン食品社製)を用いた。果糖ブドウ糖液糖としては「ニューフラクト55」(Brix 73.7%;昭和産業社製)を用いた。タマネギエキスとしては「たまねぎエキス」(Brix 10.0%、エキス分 8.7w/v%;東海物産社製)を用いた。ゴマ油としては「純正ごま油」(かどや製油社製)を用いた。炭酸ナトリウムとしては、「炭酸ソーダ」(高杉製薬社製)を用いた。水としては水道水を用いた。なお、表1~2中の各成分の単位は(g)である。
動物性原料を含まない「マギーブイヨン無添加アレルギー特定原材料等28品目不使用」(日本ネスレ社製)4gを、熱湯300mlに溶解して、植物性ブイヨンを得た。
実施例1及び比較例1~3の調味用組成物を、植物性ブイヨンに0.2wt%(0.6g)添加することにより、被験ブイヨンとして、実施例1及び比較例1~3のブイヨンを得た。
上記組成物を添加していない植物性ブイヨンを参考例1のブイヨンとし、植物性ブイヨンに「ビーフエキスN」(司食品工業社製)を1wt%(3g)及び2wt%(6g)添加したものをそれぞれ参考例2及び3のブイヨンとした。
[1-2.理化学分析方法]
実施例1及び比較例1~3の調味用組成物について、加熱前及び加熱後のpH及びBrix、並びに加熱後の色度を測定した。
pHは、ガラス電極式コンパクトpHメータ「LAQUAtwin-pH-33B」(堀場アドバンスドテクノ社製)を用いて測定した。Brix(%)は、ポケット糖度計「PAL-J」(アタゴ社製))を用いて、スクロース換算として測定した。色度は、分光測色計「CM-5」(コニカミノルタ社製)用いて、醤油の日本農林規格(JAS)に基づき、CIEL*a*b*法のL*値に0.6を乗じた値として測定した。
[1-3.官能評価方法]
官能評価は、食品の呈味の識別能力を有するパネル5名により、常温とした被験ブイヨンを匙にとり、喫食して口に含んだ際に舌で感じる味について、「コク」及び「ビーフ風味」の強度を6点採点方法(0が最も弱い、5が最も強い)で評価した。パネルの採点から平均値及び標準偏差(平均値±標準偏差)を算出した。なお、官能試験を実施するにあたり、該パネル(訓練期間:3~15年)に対して、ブイヨンの風味の討議並びに評価訓練を行った。具体的には、ブイヨンの風味及び香りの特性に対しては、パネル間で討議して、摺り合わせを行うことで、各パネリストが共通認識を持つようにした。また、官能試験の妥当性を担保するために、幾つかの被験ブイヨンを用いて、該パネルに評価訓練をさせ、各パネリストにおける評価の再現性を確認した。これらを行った後、該パネルを用いて、各被験ブイヨンについてブイヨンの風味の評価を行った。
「コク」は、持続性及び広がりをもって舌で感じる呈味をいい、味の厚みとも表現できる。「ビーフ風味」は、ビーフエキスに感じられるような牛肉の有する特有の肉質香をいう。
官能評価では、参考例1~3のブイヨンを指標として、「コク」及び「ビーフ風味」ともに、参考例1のブイヨンは0点とし、参考例2のブイヨンは3点及び参考例3のブイヨンを5点とした。このような指標を基に、パネルは被験ブイヨンについて、以下の基準により点数を付けた。
0:参考例1のブイヨンと差異が無い
1:参考例1のブイヨンと比べて、僅かに強く感じる
2:参考例1のブイヨンよりも強く感じるが、参考例2のブイヨンよりも弱い
3:参考例2のブイヨンと同程度である
4:参考例2のブイヨンよりも強く感じるが、参考例3のブイヨンよりも弱い
5:参考例3のブイヨンと同程度又はそれ以上である
総合評価として、「コク」の平均点が3.0点以上であり、かつ「ビーフ風味」の平均点が2.5点以上である被験ブイヨンを嗜好性の優れたブイヨンとして「◎」と評価し、「コク」の平均点が2.5点以上であり、かつ「ビーフ風味」の平均点が2.0点以上である被験ブイヨンを嗜好性の高いブイヨンとして「○」と評価し、「コク」の平均点が2.5点未満であり、又は「ビーフ風味」の平均点が2.0点未満である被験ブイヨンを嗜好性の劣るブイヨンとして「×」と評価した。
[1-4.官能評価結果]
実施例1及び比較例1~3の調味用組成物の理化学分析結果、並びにこれらを用いて作製した実施例1及び比較例1~3のブイヨンの官能評価結果を表1~2にそれぞれ示す。
表1~2に示すとおり、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含む実施例1の調味用組成物は、ビーフエキスを含まないにもかかわらず、植物性食品に対して、コク及びビーフ風味を付与して、嗜好性を高くできることがわかった。
例2 原材料のバリエーション評価
例1と同様にして、表1に示すとおりに、実施例2~13の調味用組成物及びブイヨンを作製した。また、例1と同様にして、実施例2~13の調味用組成物について理化学分析を行い、実施例2~13のブイヨンについて官能評価を行った。なお、大豆タンパク質加水分解物としては、「濃口味液」(Brix 47.8%、塩分 16.7wt%、無塩可溶性固形分 29.1%;味の素社製)を用いた。トウモロコシタンパク質加水分解物としては、「アミシンC」(Brix 37.7%、塩分 16.5wt%、無塩可溶性固形分 21.2%;新進社製)を用いた。液状ブドウ糖としては、「KG-25-70」(Brix 75.8%;昭和産業社製)を用いた。果糖としては、「純果糖」(加藤化学社製)を用いた。ショ糖としては、「ばら印のグラニュ糖」(大日本明治製糖社製)を用いた。メープルシロップとしては、「ケベックメープルシロップ」(Brix 約66%;クインビーガーデン社製)を用いた。おろしニンニクとしては、「おろしニンニクKN0」(Brix 26.7%;あさの社製)を用いた。キャベツエキスとしては、「きゃべつエキス」(Brix 9.6%、エキス分 8.4w/v%;東海物産社製)を用いた。ハクサイエキスとしては、「はくさいエキス」(Brix 8.7%、エキス分 8.2w/v%;東海物産社製)を用いた。菜種油としては、「菜種サラダ油」(ボーソー油脂社製)を用いた。大豆油としては、「日清大豆白絞油」(日清オイリオグループ社製)を用いた。米油としては、「健康こめ油」(J-オイルミルズ社製)を用いた。
実施例2~13の調味用組成物及びブイヨンについて、理化学分析及び官能評価を行った結果を表1に示す。表1に示すとおり、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂について種々の原材料を用いたとしても、これらを組み合わせて含むことにより、得られる調味用組成物は、植物性食品に対して、コク及びビーフ風味を付与して、嗜好性を高くできることがわかった。
例3 成分の割合の評価
例1と同様にして、表1~2に示すとおりに、実施例14~21の調味用組成物及びブイヨン並びに比較例4~5の調味用組成物及びブイヨンを作製した。また、例1と同様にして、実施例14~21及び比較例4~5の調味用組成物について理化学分析を行い、実施例14~21及び比較例4~5のブイヨンについて官能評価を行った。
実施例14~21の調味用組成物及びブイヨン並びに比較例4~5の調味用組成物及びブイヨンについて、理化学分析及び官能評価を行った結果を表1~2に示す。表1~2に示すとおり、少なくとも(A)植物タンパク質分解物と(C)野菜エキスとの割合((A)/(C))が2~20である場合、及び(A)植物タンパク質分解物と(D)植物性油脂との割合((A)/(D))が50~1,000である場合は、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含む調味用組成物は、植物性食品に対して、コク及びビーフ風味を付与して、嗜好性を高くできることがわかった。
例4 調味用組成物のpHの影響評価
例1と同様にして、表2に示すとおりに、実施例22~26の調味用組成物及びブイヨン並びに比較例6の調味用組成物及びブイヨンを作製した。また、例1と同様にして、実施例22~26及び比較例6の調味用組成物について理化学分析を行い、実施例22~26及び比較例6のブイヨンについて官能評価を行った。
実施例22~26の調味用組成物及びブイヨン並びに比較例6の調味用組成物及びブイヨンについて、理化学分析及び官能評価を行った結果を表2に示す。表2に示すとおり、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含む調味用組成物は、pHが4.50以上であることにより、植物性食品に対して、コク及びビーフ風味を付与して、嗜好性を高くできることがわかった。
例5 加熱処理条件の影響評価
例1と同様にして、表2に示すとおりに、実施例27~28の調味用組成物及びブイヨン並びに比較例7の調味用組成物及びブイヨンを作製した。また、例1と同様にして、実施例27~28及び比較例7の調味用組成物について理化学分析を行い、実施例27~28及び比較例7のブイヨンについて官能評価を行った。
実施例27~28の調味用組成物及びブイヨン並びに比較例7の調味用組成物及びブイヨンについて、理化学分析及び官能評価を行った結果を表2に示す。表2に示すとおり、加熱時間を2時間以上とすることにより、植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含む調味用組成物は、植物性食品に対して、コク及びビーフ風味を付与して、嗜好性を高くできることがわかった。それに対して、比較例7の結果が示すように、加熱しない場合は、コク又はビーフ風味を付与することができなかった。表1の実施例6及び7の結果を加味すれば、少なくとも加熱時間を2時間~24時間とすることにより、植物性食品に対して、コク及びビーフ風味を付与して、嗜好性を高くできる調味用組成物が得られることがわかった。
また、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS分析)により、加熱処理条件に応じて増減する成分を調べた結果、5-ヘキセン酸メチル及び2-ビニルピラジンが同定された。GC/MS分析は以下のとおりに実施した。
測定サンプルを20ml容ガラスバイアルに2g秤量し、そこにNaClを1g及び内部標準物質として1ppmに調製した2-オクタノンを100μL添加し分析用サンプルを調製した。香気成分の抽出はヘッドスペース-固相マイクロ抽出(HS-SPME)法を用いて行い、気相中の成分をSPMEファイバーに吸着させた。香気成分の抽出・導入はオートサンプラー「AOC5000」(島津製作所製)を用いて行い、GC/MS分析は「GCMS QP-2010Ultra」(島津製作所製)にて実施した。また含有濃度を算出するため、検量線作成用サンプルとして5-ヘキセン酸メチル(東京化成工業製)及び2-ビニルピラジン(東京化成工業製)の標準液を0.1~1,000ppbの濃度範囲で調製したものを同様の手法で分析した。香気成分の捕集・抽出、GC/MS分析条件は以下の通りにした。
[香気成分の捕集・抽出]
SPMEファイバー:Divinylbenzen/Carboxen/Polydimethylsiloxane(DVB/CAR/PDMS)(75mm、23Ga)
平衡化温度:40℃
平衡化時間:5分
吸着温度:40℃
吸着時間:20分
[GC/MS]
注入口温度:240℃
脱着時間:20分
注入モード:スプリットレス
キャリアガス:He
線速度:40 cm/sec
分析カラム:DB-WAX UI 60m×0.25mm×0.25μm(アジレントテクノロジー製)
オーブン温度:40℃(3分)→5℃/分→110℃→10℃/分→240℃(5分)
トランスファーライン温度:240℃
イオン源温度:240℃
イオン化モード:EI
測定モード:Scan
質量範囲:30-250m/z
上記でのGC/MS分析結果から、5-ヘキセン酸メチル(EIC:74m/z)、2-ビニルピラジン(106m/z)及び内部標準物質2-オクタノン(EIC:58m/z)のピーク面積値から5-ヘキセン酸メチル及び2-ビニルピラジンの内部標準面積比を算出した。サンプル中の含有量は、各標準液の分析結果から絶対検量線法を用いて求めた。
実施例1、実施例27~28及び比較例7の調味用組成物について5-ヘキセン酸メチル及び2-ビニルピラジンを測定した結果を表3に示す。表3に示すとおり、加熱処理により実施例1及び実施例27~28の調味用組成物において、5-ヘキセン酸メチル及び2-ビニルピラジンの含有量が増えることがわかった。この結果より、加熱処理の条件は、5-ヘキセン酸メチル及び/又は2-ビニルピラジンの含有量が増えることを指標とすることができる可能性がわかり、特に5-ヘキセン酸メチルの含有量が0.5ppb以上、及び/又は2-ビニルピラジンの含有量が50ppb以上になるような条件が良いことが示唆された。なお、使用した植物性ブイヨンにおいて、5-ヘキセン酸メチル及び2-ビニルピラジンはいずれも検出下限未満であった。
例6 植物性食品の嗜好性評価
植物性食品の一例として、実施例1の調味用組成物を用いたすき焼きわりしたにより、肉に代えて大豆タンパクを使用したすき焼きを調理した。
動物性原料を含まない「人形町今半すき焼わりした」(キノエネ醤油社製)に、実施例1の調味用組成物を0.5wt%になるように添加した被験わりしたを調製した。また、コントロ-ルとして、ビーフエキスを2wt%になるように添加した参考わりしたを調製した。
湯戻しした大豆タンパク(「大豆ミート」;不二製油社製)100g、タマネギ 25g、ネギ 25g、椎茸 35g、豆腐 50g及び白菜 60gを鍋に入れ、被験わりした又は参考わりしたを加えて加熱して、すき焼を調理した。
被験わりした及び参考わりしたを用いて調理したすき焼における大豆タンパクを食べ比べたところ、実施例1の調味用組成物を0.5wt%になるように添加した被験わりしたを用いて調理したすき焼は、コク及びビーフ風味、さらには味の厚み、総合的な風味が良好であり、ビーフエキスを添加した参考わりしたを用いて調理したすき焼と同程度であった。
植物性食品の別の一例として、実施例1の調味用組成物を用いて和風ごまドレッシングを調製した。
グラニュ糖 32.5g、すりごま 15g、濃口しょうゆ 15g、ゴマ油 15g、菜種サラダ油 30g及び食酢 7.5gを混合し、和風ごまドレッシングを調製した。
和風ごまドレッシングに実施例1の調味用組成物を0.5wt%になるように添加して被験ドレッシングを調製した。また、和風ごまドレッシングにビーフエキスを2wt%になるように添加して参考ドレッシングを調製した。
被験ドレッシング及び参考ドレッシングを食べ比べたところ、被験ドレッシングは、コク及びビーフ風味、さらには味の厚み、総合的な風味が良好であり、参考ドレッシングと同程度であった。
本発明の一態様の加熱済み調味用組成物は植物性食品へ好ましい風味を付与することができるものとして、及び本発明の一態様の植物性食品は好ましい風味を有するものとして、工業的生産が可能なものであり、かつ飲食店、家庭内での使用が可能なものであることから、様々なシーンで利用される調味料及び食品として有用なものである。本発明の一態様の植物性食品は、ベジタリアンやヴィーガンの食事の用に供されるものである。

Claims (11)

  1. 植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量は総量に対して60wt%以上であり、かつ酵母エキスを含まない、加熱済み調味用組成物であって、前記野菜エキスはタマネギエキス、ニンニクエキス、キャベツエキス及びハクサイエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種の野菜エキスである、前記加熱済み調味用組成物
  2. 前記加熱済み調味用組成物は、容器詰加熱済み調味用組成物である、請求項1に記載の加熱済み調味用組成物。
  3. 前記加熱済み調味用組成物は、動物由来食材を含まない加熱済み調味用組成物である、請求項1に記載の加熱済み調味用組成物。
  4. 前記植物タンパク質分解物は、小麦グルテン加水分解物、大豆タンパク質加水分解物及びトウモロコシタンパク質加水分解物からなる群から選ばれる少なくとも1種の植物タンパク質分解物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物。
  5. 前記糖質は、果糖、ブドウ糖及びショ糖並びにこれらを含む糖含有物からなる群から選ばれる少なくとも1種の糖質である、請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物。
  6. 前記植物性油脂は、ゴマ油、菜種油、大豆油及び米油からなる群から選ばれる少なくとも1種の植物性油脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物。
  7. 前記加熱済み調味用組成物は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及びリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のpH調整剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物。
  8. 請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物と植物由来食材とを原料として含む、植物性食品。
  9. 請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱済み調味用組成物と植物由来食材とを用いて調理することにより、植物性食品を得る工程を含む、植物性食品の製造方法。
  10. 植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量は総量に対して60wt%以上であり、かつ酵母エキスを含まない、加熱済みビーフ風味付与用組成物であって、前記野菜エキスはタマネギエキス、ニンニクエキス、キャベツエキス及びハクサイエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種の野菜エキスである、前記加熱済みビーフ風味付与用組成物
  11. 植物タンパク質分解物、糖質、野菜エキス及び植物性油脂を含み、pHが4.50以上であり、植物タンパク質分解物、糖質及び野菜エキスの合計量は総量に対して60wt%以上であり、かつ酵母エキスを含まない加熱済み組成物と植物由来食材とを用いて調理する工程を含む、植物性食品への風味付与方法であって、前記野菜エキスはタマネギエキス、ニンニクエキス、キャベツエキス及びハクサイエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種の野菜エキスである、前記植物性食品への風味付与方法
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