JP7424972B2 - 特定のdpp3エピトープに指向され、そしてそれに結合するdpp3バインダー、ならびに酸化ストレスに関連する疾患/急性病態の予防または治療におけるその使用 - Google Patents

特定のdpp3エピトープに指向され、そしてそれに結合するdpp3バインダー、ならびに酸化ストレスに関連する疾患/急性病態の予防または治療におけるその使用 Download PDF

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Description

本発明の分野
本発明の第一の主要な態様において、本発明の内容は、ジペプチジルペプチダーゼ3(DPP3)タンパク質またはその機能性誘導体に指向され、そしてそれに結合するバインダーである。
本発明の第一の主要な態様の別の実施形態において、前述のバインダーは、患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のために提供され、ここで、前記疾患または急性病態は酸化ストレスに関連する。
本発明の第一の主要な態様の別の実施形態において、前述のバインダーは、患者の疾患または急性病態の治療または予防における使用のために提供され、ここで、前記疾患または急性病態は酸化ストレスに関連し、かつ、ここで、前記疾患は、神経変性疾患、メタボリックシンドローム、心血管疾患、自己免疫疾患、炎症性肺疾患、腎疾患、肝疾患、消化器系疾患、ウイルス感染症、癌、炎症、敗血症、敗血症ショック、およびSIRSを含む群から選択される。
本発明の第二の主要な態様において、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーが提供され、さらにここで、前記バインダーは、配列番号2のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そして結合し、かつ、ここで、そのエピトープは、配列番号1で示されるDPP3に含まれる。
以下の文章は、本発明の上記の第二の主要な態様に言及する:
本発明の追加内容は、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合する前述のバインダーであって、ここで、前記バインダーは、配列番号3によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、かつ、ここで、前記バインダーは、配列番号3のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合し、かつ、ここで、そのエピトープは、配列番号1で示されるDPP3に含まれる。
本発明の追加内容は、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合する前述のバインダーであって、ここで、前記バインダーは、配列番号4によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、かつ、ここで、前記DPP3バインダーは、配列番号4のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そして結合し、かつ、ここで、そのエピトープは、配列番号1で示されるDPP3に含まれる。
本発明の追加内容は、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合する前述のバインダーであって、ここで、前記バインダーは、抗体もしくは抗体フラグメントまたは非Ig足場を含む群から選択され、かつ、ここで、そのエピトープは、配列番号1で示されるDPP3に含まれる。
本発明の第三の主要な態様において、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合する本発明の第二の主要な態様の上記バインダーは、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3(DPP3)バインダーであり、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、かつ、ここで、前記DPP3バインダーは、配列番号2のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する。
本発明の追加内容は、本発明の第三の態様による配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合する前述のバインダーであり、ここで、前記バインダーは、モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体フラグメントであり、かつ、ここで、重鎖の相補性決定領域(CDR)が以下の配列:
配列番号7、配列番号8、および/または配列番号9
を含み、軽鎖の相補性決定領域が以下の配列:
配列番号10、KVS、および/または配列番号11
を含む。
本発明の追加内容は、本発明の第三の態様による配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合する前述のバインダーであり、ここで、前記バインダーは、ヒト化モノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体フラグメントであり、ここで、その重鎖配列が以下の配列:
配列番号12
を含み、かつ、ここで、その軽鎖配列が以下の配列:
配列番号13
を含む。
本発明の追加内容は、患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合する前述のバインダーのいずれか1つであり、ここで、前記疾患または急性病態は、酸化ストレスに関連し、かつ、ここで、そのエピトープは、配列番号1で示されるDPP3に含まれる。
本発明の具体的な内容は、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダー、具体的には、ジペプチジルペプチダーゼ3(以下DPP3)バインダーであり、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、かつ、ここで、前記DPP3バインダーは、配列番号2の少なくとも3つのアミノ酸(aa)、好ましくは少なくとも4つのaaを認識し、そしてそれに結合する。
本発明の更なる内容は、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダー、具体的には、DPP3バインダーであり、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、かつ、ここで、患者の疾患または急性病態の予防または治療における(前記疾患または急性病態が酸化ストレスに関連することによる)使用のための、前記DPP3バインダーは、配列番号2の少なくとも3つのアミノ酸(aa)、好ましくは少なくとも4つのaaを認識し、そしてそれに結合する。
また、本発明の内容は、配列番号2によるエピトープに結合するバインダー、具体的には、抗DPP3抗体または抗DPP3抗体フラグメントでもあり、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質もしくはその機能性誘導体または配列番号2によるエピトープに結合する抗DPP3非Ig足場に含まれ、ここで、前記エピトープはDPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、かつ、ここで、前記抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場は、配列番号2の少なくとも3つのアミノ酸(aa)、好ましくは少なくとも4つのaaを認識し、そしてそれに結合する。
先の文脈に関連して、また、本発明の内容は、配列番号2によるエピトープに結合する本発明によるバインダー、具体的には、抗DPP3抗体または抗DPP3抗体フラグメントでもあり、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質もしくはその機能性誘導体または配列番号2によるエピトープに結合する抗DPP3非Ig足場に含まれ、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、かつ、ここで、患者の疾患または急性病態の予防または治療における(前記疾患または急性病態が酸化ストレスに関連することによる)使用のための、前記抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場は、配列番号2の少なくとも3つのアミノ酸(aa)、好ましくは少なくとも4つのaaを認識し、そしてそれに結合する。
本発明の更なる内容は、患者の疾患または急性病態の(前記疾患または急性病態が酸化ストレスに関連することによる)予防または治療の方法であって、DPP3に指向され、そしてそれに結合するバインダー、またはDPP3タンパク質もしくはその機能性誘導体に含まれるエピトープとしての配列番号2に指向され、そしてそれに結合するバインダー、あるいは、DPP3に結合する抗DPP3抗体または抗DPP3抗体フラグメント、またはDPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれるエピトープとしての配列番号2に指向され、そしてそれに結合する抗DPP3非Ig足場が、医薬的有効量で前記患者に投与されることを特徴とする。
本発明の内容は、さらに、患者の疾患または急性病態の予防または治療における(前記疾患または急性病態が酸化ストレスに関連することによる)使用のための、DPP3に指向され、そしてそれに結合するバインダー、またはDPP3タンパク質またはその機能性誘導体を含むエピトープとしての配列番号2に指向され、そしてそれに結合するバインダー、あるいは、DPP3に結合する抗DPP3抗体または抗DPP3抗体フラグメント、またはDPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれるエピトープとしての配列番号2に指向され、そしてそれに結合する抗DPP3非Ig足場を含む医薬組成物である。
本発明の別の対象は、患者の疾患または急性病態の予防または治療における(前記疾患または急性病態が、先に記載の酸化ストレスに関連することによる)使用のための、本発明のバインダー、または本発明によるDPP3バインダー、具体的には、DPP3に結合する抗DPP3抗体または抗DPP3抗体フラグメント、またはDPP3に結合する抗DPP3非Ig足場を含む医薬組成物であり、かつ、ここで、前記医薬組成物は、例えば、疾患または急性病態の治療方法で一次薬剤として使用され得る少なくとも1つの追加の医薬的に活性な薬物を含み、およびここで、前記治療は、副作用として酸化ストレスを誘発し、これにより、前記バインダー、DPP3バインダー、抗DPP3抗体もしくはDPP3に結合する抗DPP3抗体フラグメントまたはDPP3に結合する抗DPP3非Ig足場は、二次薬剤としての役割を果たし得、そしてそれは、前述の誘発された酸化ストレスを低減または調整する。
本発明の更なる実施形態は、患者の疾患または急性病態の予防または治療における(前記疾患または急性病態が、先に記載の酸化ストレスに関連することによる)使用のための、バインダー、または本発明によるDPP3バインダー、具体的には、抗DPP3抗体、DPP3に結合する抗DPP3抗体フラグメントまたはDPP3に結合する抗DPP3非Ig足場を含むキットであり、かつ、ここで、前記医薬組成物は、例えば、疾患または急性病態の治療方法で一次薬剤として使用され得る少なくとも1つの追加の医薬的に活性な薬物を任意選択で含み、およびここで、前記治療は、副作用として酸化ストレスを誘発し、これにより、前記DPP3バインダー、抗DPP3抗体もしくはDPP3に結合する抗DPP3抗体フラグメントまたはDPP3に結合する抗DPP3非Ig足場は、二次薬剤としての役割を果たし得、そしてそれは、前述の誘発された酸化ストレスを低減または調整する。
修飾抗DPP3抗体、フラグメント、足場
その上、本発明の内容は、薬剤としての使用のための、先に記載の本発明によるバインダー、またはDPP3に結合する抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメント、あるいはDPP3に結合する抗DPP3非Ig足場であり、ここで、前記バインダー、または抗体もしくは前記抗体フラグメント、あるいは、前記非Ig足場は、修飾されたバインダー、抗体もしくはフラグメント、あるいは足場である。
好ましい実施形態において、前記修飾された抗DPP3抗体もしくは修飾された抗DPP3フラグメント、または修飾された非Ig足場は、患者の疾患または急性病態の予防または治療に(前記疾患または急性病態が酸化ストレスに関連することにより)使用される。
さらに、本発明によると、本発明の前記修飾された抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメント、または修飾された非Ig足場は、DPP3の生理活性を調整する。
本発明の内容に関連して、DPP3生理活性は、酸化ストレス経路におけるDPP3酵素活性またはDPP3活性の調整と規定され得る。
本発明によると、本発明の前記修飾された抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメント、または修飾された非Ig足場は、DPP3の生理活性を促進し得る。
本発明の別の実施形態において、本発明の前記修飾された抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメント、または修飾された非Ig足場は、DPP3の生理活性を低減し得る。
本発明の内容に関連する別の具体的な実施形態において、先に記載の「修飾された」抗DPP3抗体もしくは修飾された抗DPP3抗体フラグメント、または修飾された非Ig足場は、DPP3の生理活性を少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは>50%、そして最も好ましくは100%妨げる、抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメント、または修飾された抗DPP3非Ig足場である。
具体的な実施形態において、本発明による修飾されたバインダー、または修飾された抗DPP3抗体もしくは修飾された抗DPP3抗体フラグメント、または修飾された抗DPP3非Ig足場は、患者の疾患または急性病態の予防または治療に使用され、ここで、前記疾患または急性病態は、酸化ストレスに関連する。
本発明の別の実施形態は、患者の疾患または急性病態の治療または予防における(前記疾患または急性病態が酸化ストレスに関連することによる)使用のための、先に記載のDPP3に結合するバインダー、または抗DDP3抗体、および/または抗DPP3抗体フラグメント、あるいは、DPP3に結合する抗DPP3非Ig足場を含むキットまたはアッセイである。
背景
ジペプチジルペプチダーゼ3(DPP3)
ジペプチジルペプチダーゼ3‐ジペプチジルアミノペプチダーゼIII、ジペプチジルアリールアミダーゼIII、ジペプチジルペプチダーゼIII、エンケファリナーゼBまたは赤血球アンギオテンシナーゼとしても知られており、省略名はDPP3、またはDPPIII‐は、エンケファリンやアンギオテンシンなどの生理活性ペプチドからジペプチドを除去するメタロペプチダーゼである。以下、「DPP3」という表現は、先に記載したジペプチジルペプチダーゼ3の省略形として、文章を通じて使用される。
DPP3は1967年にEllisとNuenkeにより、精製ウシ脳下垂体前葉抽出物で最初に同定され、その活性が測定された。EC3.4.14.4として登録されているこの酵素は約83kDaの分子量を有し、原核生物および真核生物で高度に保存されている(Prajapati & Chauhan 2011)。
DPP3のヒト変異体のアミノ酸配列を配列番号1に示す。DPP3は遍在的に発現される主に細胞質のペプチダーゼである。シグナル配列が存在しないにもかかわらず、膜での活性がいくつかの研究で報告されている(Lee & Snyder 1982)。
DPP3はM49ペプチダーゼファミリーに属する亜鉛依存性エキソペプチダーゼであり、様々な組成の3、4個~10個のアミノ酸のオリゴペプチドに対して広い基質特異性を有し、プロリンの後を切断することもできる。DPP3は、その基質(アンギオテンシンII、III、IV;アンギオテンシン1~7(Cruz-Diaz et al., 2016);LeuエンケファリンおよびMetエンケファリン;エンドモルフィン1および2など)のN末端からジペプチドを加水分解することが知られている。メタロペプチダーゼであるDPP3はpH8.0~9.0で最適な活性を有し、Co2+およびMg2+のような二価の金属イオンの添加によって活性化できる。DPP3の構造解析により、基質結合および加水分解に重要な以下のアミノ酸Glu316、Tyr318、Asp366、Asn391、Asn394、His568、Arg572、Arg577、Lys666およびArg669と共に触媒モチーフHELLGH(hDPP3、450~455)およびEECRAE(hDPP3、507~512)が明らかになった(Prajapati & Chauhan 2011およびKumar et al. 2016;番号はヒトDPP3の配列を示す(配列番号1を参照のこと))。基質結合および加水分解に関与するすべての既知のアミノ酸または配列領域を考慮すると、ヒトDPP3の活性部位は、アミノ酸316~669の間の領域と定義できる。
DPP3に関する最近の知見は、タンパク質代謝の一部を担う役割だけでなく、血圧制御、疼痛調節、炎症プロセス、および酸化ストレス調整でも役割を果たすことを示している(Prajapati & Chauhan 2011)。
DPP3はまた、いくつかの文献で有望なバイオマーカーであることも示されている。卵巣および子宮内膜腫瘍のホモジネートでDPP3活性が上昇することが示されている。DPP3活性は、これらの腫瘍の重症度/悪性度とともにさらに増加する(Simaga et al. 1998, 2003)。膠芽腫細胞株の免疫組織学検査およびウエスタンブロット分析もDPP3レベルの上昇を示した(Singh et al. 2014)。
DPP3は、有望な動脈リスクマーカー(US2011008805)およびリウマチ様関節症のマーカーであることも提唱されている(US2006177886)。特許出願WO2005106486は、細胞表面または細胞表面内にDPP3が遍在的に発現することから、DPP3の発現やあらゆる種類の疾患の診断マーカーとしての活性、ならびに治療剤としてのDPP3について記載している。EP1498480は、DPP3を含む加水分解酵素の潜在的な診断・治療用途について記載している。
関連従来技術は、次のようにしてさらにまとめることができる:
WO2005/106486は、心血管疾患、感染症、呼吸器疾患、癌、内分泌疾患、代謝疾患、胃腸疾患、炎症、血液病、筋骨格疾患、神経および泌尿器疾患を含めた疾患の治療に有用であり得る治療薬のためのスクリーニング方法を一般的な様式で記載している。スクリーニングの前記方法では、試験化合物を、DPP3ポリヌクレオチドと接触させ、前記試験化合物と前記DPP3ポリヌクレオチドとの間の結合を検出する。さらに、その文書は化合物を一般的な様式で記載しており、そしてそれは、DPP3に結合し、活性化および/またはその活性化を阻害し得る。さらに、本発明は、医薬組成物を記載しており、そしてそれは、斯かる化合物を含む。
Liu et al. 2007では、IMR‐32細胞における抗酸化応答エレメント(ARE)の活性化とDPP3およびSequestome1の過剰発現との関係を記載している。DPP3およびSequestome1の過剰発現は、Nrf2転座を刺激し、そして、AREによって転写的に調整されるタンパク質であるNAD(P)H:キノンオキシレダクターゼ1の高いレベルにつながった。
Hast et al. 2013では、Cancer Genome Atlasによって特徴づけられる178の扁平上皮細胞肺癌のゲノムプロファイルとKEAP1相互作用タンパク質のスペクトルの比較を記載し、そして、高いNrf2活性を有するが、Nrf2安定化突然変異を欠いている腫瘍におけるDPP3遺伝子の増幅およびmRNAの過剰発現を明らかにしている。彼らは、KEAP1における腫瘍誘発突然変異がNrf2阻害に関して低形質的(hypomorphic)であり、かつ、これらの変異体の存在下でのDPP3過剰発現がNrf2活性化をさらに促進することをさらに記載している。
DPP3の過剰発現
よって、従来技術によると、細胞内DPP3の過剰発現は、酸化ストレス調整と密接に係わることが知られている。DPP3は、約15,000の完全長ヒト発現cDNAから成るcDNAライブラリーの不偏性スクリーンにおいて抗酸化応答エレメント(ARE)の活性化因子として同定された(Lu et al. 2007)。
DPP3は、KEAP1結合部位に関してNrf2と競合することによってKEAP1‐Nrf2複合体を破壊する(Hast et al. 2013)。この破壊は、NRF2分解を妨げ、それに続いて核内へのNrf2の移動局在化およびARE活性化につながる。神経芽腫細胞(Lu et al. 2007)、HEK293T細胞(Hast et al. 2013)または乳癌細胞MCF7(Lu et al. 2017)におけるDPP3の過剰発現は、Nrf2仲介性転写を活性化する。DPP3の活性および不活性変異体は、MCF7細胞において過剰発現され、酸化ストレスに対して同じ調節効果を示した(Lu et al. 2017)。Hast et al. (2013)はまた、機能喪失効果:Nrf2仲介性転写がNrf2サイレンシングのレベルまで低減された、特定のsiRNAを使用するDPP3のサイレンシング、を示した。
DPP3は細胞内タンパク質として知られているが、DPP3活性は数種の体液、すなわち胎盤後血清(Shimamori et al. 1986)、精漿(Vanha-Perttula et al. 1988)、および脳脊髄液(CSF)(Aoyagi et al. 1993)で検出された。CSFでは、アルツハイマー病患者で測定したDPP3活性レベルが上昇した(AD, Aoyagi et al. 1993)。
DPP3は、膜DPP3、細胞内DPP3または循環DPP3として発現されることが知られている。
DPP3はいくつかの生物活性ペプチドを切断できるため、有望なバイオマーカーとして提案されているだけでなく、有望な治療標的としても提案されている。インフルエンザAウイルスは、複製のために宿主のDPP3レベルを変える(細胞培養研究、Meliopoulos et al. 2012)。エンケファリンおよび/またはアンギオテンシンの分解酵素は一般に、DPP3も含め、疼痛、循環器疾患(CVD)、およびがんの治療の標的として、また、対応する阻害剤は疼痛、精神疾患、およびCVDの有望な治療方法として、治療可能性をもつ(Khaket et al. 2012, Patel et al. 1993, Igic et al. 2007)。
DPP3の阻害
DPP3の活性は、様々な一般的なプロテアーゼ阻害剤(例えば、PMSF、TPCK)、スルフヒドリル試薬(例えば、pHMB、DTNB)、および金属キレート剤(EDTA、o‐フェナントロリン)で非特異的に阻害できる(Abramic et al. 2000 , EP2949332)。
DPP3活性は、様々な種類の化合物によってさらに特異的に阻害できる:内在性DPP3阻害物質はスピノルフィンというペプチドである。数種の合成スピノルフィン誘導体(例えばチノルフィン)が生成されており、様々な程度でDPP3活性を阻害することが示されている(Yamamoto et al. 2000)。公開されている他のDPP3のペプチド阻害剤はプロピオキサチンAおよびB(US4804676)、ならびにプロピオキサチンA類似体(Inaoka et al. 1988)である。
DPP3は、フルオスタチン類およびベンズイミダゾール誘導体などの小分子によって
も阻害できる。フルオスタチンAおよびBはストレプトミセス属の種(Streptomyces sp.)TA‐3391で産生される抗生物質で、毒性はなく、DPP3活性を強く阻害する。これまでに20種の様々なベンズイミダゾール誘導体が合成され公開されている(Agic et al. 2007;Rastija et al. 2015)が、そのうち2種類の化合物1’および4’が最も強い阻害効果を示す(Agic et al. 2007)。いくつかのジペプチジルヒドロキサム酸は、さらにDPP3活性も阻害することを示した(Cvitesic et al., 2016)。
酸化ストレス
酸化ストレスは、フリーラジカルの過度生成に有利となる、反応性酸素種(以降ROS)/反応性窒素種(以降RNS)の全体的な発現と抗酸化物質との間の不均衡を反映する。このプロセスは、その生物学的機能の喪失および/または恒常性の不均衡を伴う生体分子の酸化につながり、そしてその発現は細胞および組織への潜在的な酸化損傷である。ROS/RNSの蓄積は、例えば、過酸化脂質や、タンパク質酸化や、DNA損傷(塩基損傷および鎖破壊を含む)などの多くの有害な影響をもたらす。さらに、いくつかの反応性酸化種は、酸化還元シグナル伝達における細胞メッセンジャーとして機能する。よって、酸化ストレスは、細胞シグナル伝達の正常な機構の破壊を引き起こす可能性がある。
「ROS」と「RNS」は、フリーラジカルおよび他の非ラジカル反応性誘導体を集合的に記載する用語であり、そしてそれはまた、酸化物質とも呼ばれる。ラジカルは、非ラジカル種より安定していないが、それらの反応性は一般的により強い。その外殻に1もしくは複数の不対電子を有する分子は、フリーラジカルと呼ばれる。フリーラジカルは、各フラグメントが別のラジカルを生じるようなラジカルの切断によって、1つの電子を保持するような化学結合の破壊によって分子から形成され、そしてまた、酸化還元反応によっても形成される。酸化ストレスに関連するフリーラジカルとしては、ヒドロキシル(OH・)、スーパーオキシド(O2・‐)、一酸化窒素(NO・)、二酸化窒素(NO2・)、ペルオキシル(ROO・)および脂質ペルオキシル(LOO・)が挙げられる。また、過酸化水素(H2O2)、オゾン(O3)、一重項酸素(1O2)、次亜塩素酸(HOCl)、亜硝酸(HNO2)、ペルオキシ亜硝酸(ONOO・)、三酸化二窒素(N2O3)、脂質ペルオキシド(LOOH)は、フリーラジカルでなく、一般的に酸化物質と呼ばれるが、生物において容易にフリーラジカル反応につながり得る。
ROSおよびRNSの形成は、細胞において2つの方法:酵素的反応と非酵素的反応、によって起こる。フリーラジカルを作り出す酵素反応としては、呼吸鎖、食作用、プロスタグランジン合成およびシトクロムP450系に伴うものが挙げられる。フリーラジカルは、有機化合物と酸素の非酵素的反応、ならびに電離放射線によって開始されるものから生成可能である。非酵素的方法はまた、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化(すなわち、好気性呼吸)中にも起こり得る。総説に関しては、Pham-Huy et al. 2008. Int J Biomed Sci 4 (2): 89-96を参照のこと。
酸化ストレスに関連する疾患
先に記載に照らして、および本発明の内容に関連して、酸化ストレスは、これだけに限定されるものではないが、神経変性疾患、メタボリックシンドローム、心血管疾患、自己免疫疾患、炎症性肺疾患、腎疾患、肝疾患、消化器系疾患、ウイルス感染症、癌、および炎症を含めた多くの疾患に係わり、これによりそれと関連する。
従来技術によると、細胞内のDPP3は、酸化ストレス調整と密接に係わることが知られている。DPP3は、約15,000の完全長ヒト発現cDNAから成るcDNAライブラリーの不偏性スクリーンにおいて抗酸化応答エレメント(ARE)の活性化因子として同定された(Lu et al. 2007;上記も参照のこと)。AREは、多くの細胞保護的抗酸化酵素およびスカベンジャーの発現を調整し、そして、酸化ストレスに対する内因性防御に貢献する。DPP3のこの抗酸化効果は、KEAP1‐Nrf2シグナル伝達経路を伴ったDPP3の干渉によるものである。Nrf2は、一連の抗酸化応答エレメント依存性遺伝子の基礎発現および誘発発現を制御して、酸化物質曝露の生理学的および病態生理学的転帰を調整する転写因子である。通常条件または非ストレス条件下では、Nrf2は、そのETGEモチーフおよびそのDLGモチーフを介してKelch様ECH結合タンパク質1(KEAP1)に結合する。このタンパク質クラスタ内で、Nrf2は、細胞質内に保持され、素早くユビキチン化され、そして、プロテアソームによって分解される。酸化ストレス下では、Nrf2は低下しないが、代わりに、それがDNAプロモーターに結合し、そして、一連の抗酸化応答エレメント(ARE)依存性遺伝子の発現を誘発する核に移行する。植物化合物および誘導体(CDDO、スルフォラファン)、治療薬(オルチプラツ、オーラノフィン)、環境物質(パラコート、ヒ素)、および内因性化学物質[NO、15d‐PGJ2、ニトロ脂肪酸、および4‐ヒドロキシノネナール(4‐HNE)]を含めたさまざまな化学物質が、Nrf2を通じてARE遺伝子を誘発する(Ma 2013)。
本発明の簡単な説明
上記に照らして、発明者らは、酸化ストレスがDPP3タンパク質またはその機能性誘導体に指向され、そしてそれに結合するバインダーによって低減または調整され得ることも驚いたことに、かつ、意外にも見出した。
発明者らはまた、酸化ストレスが配列番号2のエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーによって低減または調整され得ることも見出し、ここで、そのエピトープはDPP3タンパク質に含まれる。
そのうえ、当該発明者らは、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3(以降DPP3)バインダーを見出し、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、かつ、ここで、前記DPP3バインダーは、配列番号2の少なくとも3つのアミノ酸(aa)、好ましくは少なくとも4つのaaを認識し、そしてそれに結合する。
先の文脈に関連して、発明者らは、酸化ストレスが配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合する抗DPP3抗体または抗DPP3抗体フラグメントによって低減または調整され得ることを具体的に見出し、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、かつ、ここで、前記DPP3バインダーは、配列番号2の少なくとも3つのアミノ酸(aa)、好ましくは少なくとも4つのaaを認識し、そしてそれに結合するか、または抗DPP3非Ig足場は配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、かつ、ここで、前記DPP3バインダーは、配列番号2の少なくとも3つのアミノ酸(aa)、好ましくは少なくとも4つのaaを認識し、そしてそれに結合する。
よって、本発明は、疾患の疾患または急性病態の予防的治療方法または治療方法における使用のために、本明細書中に開示したバインダー、およびDPP3に結合する抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたはDPP3に結合する抗DPP3非Ig足場を提供し、ここで、前記患者の疾患または急性病態は酸化ストレスに関連する。
そのうえ、本明細書中に提供するバインダー、DPP3バインダー、具体的には、抗DPP3抗体、またはDPP3に結合する抗DPP3抗体フラグメントまたはDPP3に結合する抗DPP3非Ig足場について、発明者らは、以下でさらに説明されるそれぞれのバイオマーカー測定の方法によって測定されるとき、哺乳類細胞において迅速に酸化ストレスを低減または調整するDPP3に対するバインダーを見出した。
本発明の別の対象は、患者の疾患または急性病態の予防または治療の方法における(前記疾患または急性病態が酸化ストレスに関連することによる)使用のための、本発明のバインダー、本発明のDPP3バインダーを含む、具体的には、DPP3に結合する抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは本発明のDPP3に結合する抗DPP3非Ig足場を含む医薬組成物である。
したがって、本明細書中に開示する医薬組成物はまた、酸化ストレスによって媒介される、症状、または症候群、または病理および急性病態、ならびに疾患関連問題の予防または治療における使用のためにも提供される。
酸化ストレスに関連する疾患
先に触れたように、酸化ストレスの出現は、多くの疾患または障害に係わり、そしてそれは、本発明に従って、以下のものが挙げられる:
・神経変性疾患、ここで、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および多発性硬化症(MS)を含む群から選択され得る。
・メタボリックシンドローム、ここで、前記メタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性、肥満、高血糖、脂質異常症、高血圧、および糖尿病を含む群から選択され得る。
・心血管疾患、ここで、前記心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心不全、心血管虚血、脳虚血損傷、脳卒中、および心筋梗塞を含む群から選択され得る。
・自己免疫疾患、ここで、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスを含む群から選択され得る。
・炎症性肺疾患、ここで、前記炎症性肺疾患は、COPD、喘息を含む群から選択され得る。
・腎疾患、ここで、前記腎疾患は、腎毒性(薬物誘発性腎疾患)、急性腎傷害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、糖尿病性腎症、末期腎不全(ESRD)を含む群から選択され得る。
・肝疾患、ここで、前記肝疾患は、肝毒性、ウイルス性肝炎、肝硬変を含む群から選択され得る。
・消化器系疾患、ここで、前記消化器系疾患は、炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、胃炎、膵炎および消化性潰瘍を含む群から選択され得る。
・ウイルス感染症、前記ウイルス感染症は、血液由来肝炎ウイルス(B、C、およびD型)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザA型、エプスタイン‐バーウイルス、呼吸系合胞体ウイルスを含む群から選択され得る。
・癌、ここで、前記癌は、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膀胱癌、卵巣癌、皮膚癌、胃癌、肝臓癌を含む群から選択され得る。
・炎症、ならびに
・敗血症、敗血症ショック、およびSIRS。
上記に照らし、かつ、本発明の内容に関連して、疾患とそれらの酸化ストレスとの関連に関する詳細なリストを、以下の表1示す:
より詳細には、以下のとおりである:
酸化ストレスは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、鬱病、多発性硬化症、晩発性運動異常(TD)、てんかんおよび中枢神経系の急性疾患、例えば、脊髄損傷および/または脳傷害などを含めた神経学的障害および神経変性障害において重要であることが疑われる。ヒト脳は、多くの事実、例えば、(i)カテコールアミンの代謝;(ii)抗酸化物質の低下;(iii)遷移金属の存在;(iv)脳損傷/傷害の出現;およびまた(v)脳が、より多くの酸素を相対的に必要とする臓器であることおよび(vi)低レベルの抗酸化酵素を発現し、そしてそれが、ROSの形成に貢献することなどに起因して、酸化ストレスの被害を受け易い。脳における酸化還元の不均衡の結果として、最も影響を受ける構造の1つが脂質膜である(Rao and Balachandran 2002. Nutritional Neuroscience 5: 291-309)。これらの疾患の共通点は、ニューロンの酸化損傷であり、そしてそれが、疾患病因に影響する神経細胞の機能不全または死滅に関与しているであろう。
アルツハイマー病(AD)、最も蔓延している神経変性障害でもあり、行動、認識、および機能性の進行性低下を特徴とし、そしてそれは、毎日の生活行動を著しく害する。多数の実験および臨床試験では、酸化損傷がアルツハイマー病におけるニューロンの損失と認知症への進行に主要な役割を担っていることが実証された。アルツハイマー患者の脳で見られることが多い、毒性ペプチドであるβ‐アミロイド(β)の産生は、酸化ストレスに起因し、神経変性のプロセスにおいて重要な役割を果たしている。加えて、Aβタンパク質はNADPHオキシダーゼの活性化を介してフリーラジカル生成を直接開始する。そのうえ、炎症は、サイトカイン、ROSレベル、および細胞毒性の発現増加に関与し、その結果、ADの進行を悪化させる。総説に関しては、Liu et al. 2017. Oxidative Medicine and Cellular Longevity 2525967; Manoharan et al. 2016. Oxid Med Cell Longev 8590578を参照のこと。
ハンチントン病(HD)は、HTT遺伝子内のシトシン、アデニン、グアニン(CAG)反復の不安定な伸長に係わる進行性神経変性疾患である。HTT遺伝子のexon1内のCAG反復の伸長は、ポリグルタミン領域の延長につながる突然変異を生じさせ、そして、凝集に感受性を有するHTTタンパク質産物をもたらす。mHTT凝集体は、罹患者の脳内全体に蓄積され、そしてそれが、タンパク質品質の制御と転写プロセスを妨害し得る。それらの改変は、HDの異常な運動と認識的問題に潜在的に関与している。酸化損傷はHDの初期ステージにおいてそれほど多く報告されていないが、進行した場合に、それがHDの主要な機構の1つとして挙げられる。高い酸化ストレスがHD発症機序の後期ステージにおいて重要役割を担う。電子伝達鎖における障害およびミトコンドリア機能不全が、HDのROS媒介性原因病理論に係わる主要な機構である。酸化的リン酸化成分における機能不全がHD患者の脳組織において記録された。HD患者は、健常被験者と比較して、抗酸化状態の低減と同時に起こる酸化ストレスマーカーの増強されたレベルを示した。総説に関しては、Liu et al. 2017. Oxidative Medicine and Cellular Longevity 2525967; Manoharan et al. 2016. Oxid Med Cell Longev 8590578を参照のこと。
パーキンソン病(PD)は、高齢者の最も一般的な神経変性疾患であり、筋肉制御の進行性消失を特徴とする。PDは、60歳代に顕著であり、男性は女性に比べて、1.5~2倍その疾患に罹患しやすい。頭部損傷、病気、または環境有害物質への曝露がリスク因子として同定されている。この神経変性障害は、振戦、硬直、動作緩慢、およびバランス障害を特徴とする。PDはまた、認知障害、精神障害、自律神経障害、および知覚障害も引き起こす。PDの病理は、黒質緻密部におけるドーパミン作動性ニューロンのゆるやかで選択的な損失を特徴とする。酸化ストレスによるドーパミン代謝における不均衡は、この疾患に対する一因として認識されている。主要な病理所見としては、黒質におけるレーヴィ小体の存在およびその前面層の一部における神経細胞の損失が挙げられる。いくつかの試験では、PDに罹患している患者の脳における欠陥のある呼吸鎖およびミトコンドリアDNAの体細胞変異が報告され、そしてそれは、PDにおける酸化代謝の大規模な役割を示唆している。PDに罹患している患者の脳における高いドーパミン代謝は、脳における毒性ラジカル、例えば、ヒドロキシルなどの蓄積を構成する可能性がある。酸化還元活性形態のニューロンにおける鉄の蓄積は、この疾患の発症機序において決定的な役割を担っている。鉄の蓄積は、PDと診断された患者の黒質で報告されており、そしてそれは、PDの発症機序における鉄誘発性脂質過酸化反応の重要役割を示唆している。タンパク質酸化の2倍の増大は、健常被験者と比較した、PD患者の黒質において示された。脳における低下したグルタチオン含量によるヒドロキシルラジカルの蓄積がPD患者において報告された。抗酸化酵素および非酵素的抗酸化物質の低下した活性は、PDの進行に関与する可能性がある。総説に関しては、Liu et al. 2017. Oxidative Medicine and Cellular Longevity 2525967; Manoharan et al. 2016. Oxid Med Cell Longev 8590578を参照のこと。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、脊髄の前角における運動ニューロンの進行性損失を特徴とする。それは、明確に規定された、遺伝性の遺伝要素が存在するか否かにより家族性または特発性のいずれかに分類される。特発性ALS(sALS)は、50~60歳に典型的に現れる。sALSの発症は未知であり、よって、原因遺伝子および環境要因の同定は捉えどころがないままである。家族性ALSでは、その症例のうちの約20%はSOD1の突然変異から生じた。SOD1の機能はさまざまであり、そして、過度の過酸化物ラジカルの排除、細胞呼吸の調節、エネルギー代謝、および翻訳後修飾が挙げられる。SOD機能不全は抗酸化能力の損失につながる。そのうえ、高レベルのROSおよびROS関連損傷は、ALSで広く報告されてきた。高いROS損傷のマーカーはまた、特発性ALSに罹患している患者の生体液ならびに死後の組織で見られた。総説に関しては、Liu et al. 2017. Oxidative Medicine and Cellular Longevity 2525967を参照のこと。
多発性硬化症(MS)は、炎症プロセスおよび神経変性プロセスの両方が同時にそこで起こる中枢神経系(CNS)の多因子疾患である。疾患の間、炎症は低減するが、CNSの変性が進行する。MSにおける炎症成分は、軸索およびニューロンの欠損によるだけでなく、それがMSの初期ステージの変性カスケードを開始するという事実により重要である。小膠細胞の活性化の誘導とミトコンドリアの機能不全は、炎症プロセスにおいて特定の役割を果たす。Tリンパ球によって活性化された小膠細胞は、タンパク質分解酵素、サイトカイン、酸化生成物、およびフリーラジカルを放出する。ミトコンドリアの機能不全が反応性酸素種(ROS)の高い産生をもたらすこともまた重要であり、そしてそれは、ニューロンおよび膠細胞に有害である。その一方、酸化ストレスはミトコンドリアに損傷を与え、そしてそれは、軸索に沿ってアデノシン三リン酸の輸送を中断し、それに続いて、神経変性につながる。酸化ストレスは、軸索の生体エネルギーの調節不全、サイトカイン誘発性シナプス過興奮、異常な鉄蓄積、および酸化/抗酸化バランスに関連する。血清、赤血球CSF、唾液、および尿で評価された酸化ストレスのマーカーは、診断特性を有し得るが、それに対して、抗酸化物質は将来的に臨床適用し得る。総説に関しては、Adamczyk and Adamczyk-Sowa 2016. Oxidative Medicine and Cellular Longevity 1973834を参照のこと。
酸化ストレスは、メタボリックシンドロームおよび個々の要素病理、例えば、肥満、インスリン抵抗性、脂質異常症、耐糖能異常、および高血圧に関連する。メタボリックシンドロームは、世界保健機構の基準によって規定され(Alberti and Zimmet 1998. Diabet Med. 15:539-553; World Health Organization. 1999. Definition, diagnosis and classification of diabetes mellitus and its complications: report of a WHO Consultation. Part 1: diagnosis and classification of diabetes mellitus. Geneva, Switzerland: World Health Organization)、次の:(1)II型糖尿病;(2)空腹時血糖異常;(3)耐糖能異常または(4)標準空腹時グルコースレベル(<110mg/dL)に関して、抗インスリン血症(hyperinsulemic)下での調査でのバックグラウンド集団の最低四分線より低いグルコース摂取、正常血糖条件のうちの1つ、および次の:(1)血圧::≧140/90mmHg;(2)脂質異常症:トリグリセリド(TG):≧1.695mmol/Lおよび高密度リポタンパク質コレステロール(HDL‐C)≦0.9mmol/L(男性)、≦1.0mmol/L(女性);(3)中心性肥満:ウエスト:ヒップ比>0.90(男性);>0.85(女性)、またはボディーマスインデックス>30kg/m2;(4)微量アルブミン尿症:尿アルブミン排泄比≧20μg/分またはアルブミン:クレアチニン比≧30mg/gのうちの2つによって確定されたインスリン抵抗性の存在を必要とする。
増強された酸化ストレスは、メタボリックシンドロームとその要素病理において中心的役割を果たすものとして現れ、この疾患の進行の統一因子であり得る。そのうえ、酸化ストレスは、メタボリックシンドロームにおける微小血管および大血管合併症の主要な機構として同定された。総説に関しては、Hutcheson and Rocic 2012. Exp Diabetes Res. 2012:271028を参照のこと。
ミトコンドリアROS(優性スーパオキシドアニオン)の過剰産生が糖尿病および糖尿病合併症を伴うことを実証する証拠の大部分が存在する。グルコースがROS過剰産生を直接刺激し得ることが示唆され、高グルコース(HG)がNADPHオキシダーゼ活性化、NOシンターゼの脱共役およびキサンチンオキシダーゼの刺激を含めたミトコンドリアの様々な酵素カスケードを活性化することもまた示された。糖結合タンパク質はまた、ROS形成のプロモーターであもあり得、そして、これにより、さまざまな原因が糖尿病におけるROS過剰産生および酸化ストレスに関与し得ることも示唆される。総説に関しては、Pitocco et al. 2013. Int. J. Mol. Sci. 2013, 14, 21525-21550を参照のこと。
そのうえ、酸化ストレスは、高血圧、脂質異常症、アテローム性動脈硬化、心筋梗塞、狭心症、および心不全を含めた心血管疾患の発症機序および発症において重要な役割を果たす(Elahi et al. 2009. Oxidative Medicine and Cellular Longevity 2(5): 259-269)。心血管疾患のフリーラジカル媒介性発症機序に関する重要な概念の1つは、内皮機能不全であり、そしてそれにより、血管壁微環境の調整は害される。例えば、血管壁におけるROS活性は、アテローム性動脈硬化症の発症機序に対する主要原因である酸化LDLの形成に寄与すると考えられる。酸化ストレスはまた、低酸素症に続く、酸素再潅流損傷のため虚血カスケードにおいても役割を果たす。このカスケードとしては、脳卒中(Chen et al. 2011. Antioxidants and Redox Signaling 14(8): 1505-1517)と心筋梗塞(MI)(Hori and Nishida et al. 2009. Cardiovascular Research 81: 457-464)の両方が挙げられる。脳の虚血/再潅流の間、酸化物質の過剰産生、解毒系の不活性化、および抗酸化物質の消費を含めた複数の有害なプロセスが起こる。これらの変化は、脳組織の正常な抗酸化防御能力の破壊を引き起こす(Chen et al. 2011. Antioxidants and Redox Signaling 14(8): 1505-1517)。更なる総説に関しては、Elahi et al. 2009. Oxidative Medicine and Cellular Longevity 2(5): 259-269を参照のこと。
多くの実験的試験および臨床試験が、心不全(HF)におけるROSの増強された産生を実証し、酸化ストレスが心臓ならびに骨格筋でHFの病態生理に関与することを示した。ミトコンドリアが豊富な心筋の高い代謝活性は、これらの知見を直観的に明白に見えるようにした。酸化ストレスは、心筋の再形成および心不全の現在受け入れられている要素である、例えば、遺伝子発現および細胞死の変化などの単離された心臓細胞におけるプロセスを明確に活性化する。そのうえ、多くの試験が、心不全の進行に対する抗酸化物質の治療効果を実証した動物モデルで行われた。総説に関しては、Tsutsui et al. 2011. Am J Physiol Heart Circ Physiol 301: H2181-H2190を参照のこと。
過度の酸化ストレスが自己免疫疾患の発症機序において重要な役割を有すると考えられた。多くの試験が、TおよびBリンパ球が環境および遺伝的影響下で自家抗体およびROSの産生によって自己免疫疾患の発症機序に関与することを示した。酸化ストレスは、それが疾患経過で重要な役割を果たす自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、乾癬、および小児脂肪便症)に関係した。酸化ストレスは、全身性エリテマトーデス(SLE)において増強され、そして、それは、免疫系調節不全、細胞死シグナルの異常活性化およびプロセッシング、自己抗体産生機序、および致命的な合併症に寄与する。T細胞におけるミトコンドリアの機能不全は、非常に拡散性の炎症性脂質ヒドロペルオキシドの放出を促進し、そしてそれが、他の細胞内オルガネラおよび血流を通して酸化ストレスを拡散する。自己抗原の酸化修飾は、自己免疫を始動させ、そして、血清タンパク質の斯かる修飾の程度は、SLEにおける疾患活性および臓器障害と衝撃的な相関関係を示す(Perl 2013. Nat Rev Rheumatol. 9(11): 674-686)。関節リウマチ(RA)は、マクロファージの浸潤と活性化されたT細胞を伴った関節および関節の周りの組織の慢性炎症を特徴とする自己免疫疾患である。この疾患の発症機序は、炎症部位でのROSおよびRNSの産生による。RAは、酸化ストレスを誘発する病状の1つである。健常被験者と比べた‐RA患者の全血中のミトコンドリアROS産生および単球における五倍の増大は、酸化ストレスがRAの病原性の顕著な特徴であることを示唆する。フリーラジカルは関節損傷に間接的に関係する、なぜなら、それらはまた、RAの炎症性および免疫学的細胞応答において二次伝達物質として重要な役割を果たす。増大した酸化ストレスへのT細胞の曝露は、成長および死滅に関するものを含めた数個の刺激に対して不応性になり、そして、異常な免疫応答を永続させ得る。その一方、フリーラジカルは、関節軟骨を直接的に分解し、そして、そのプロテオグリカンを侵襲し、かつ、その合成を阻害した(総説に関しては、Quinonez-Flores et al. 2016. Biomed Res Int. 2016:6097417を参照のこと)。
現在、炎症性肺疾患、例えば、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などが全身性、かつ、局所的な慢性炎症および酸化ストレスを特徴とするという実質証拠が存在する。増強された気道酸化ストレスの重要な起源は、トリガー因子への曝露後の気道内への炎症細胞の動員である。これらの活性化された細胞は、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスファート(NADPH)オキシダーゼ経路を通じて陰イオンスーパーオキシドを産生し得る。機械的刺激および環境刺激に対応して生じる気道上皮細胞におけるミトコンドリアの機能不全もまた、陰イオンスーパーオキシドおよび気道酸化ストレスの形成に寄与し得る。喘息に罹患している対象は、より大きな全身および気道の増強された酸化ストレスを有し、そしてそれが、より悪い喘息重症度に関連する。喘息を伴った場合、COPDに罹患している対象は、気道の酸化ストレスおよびニトロソ化ストレスが増強された。COPDに罹患している患者は、気道上皮のニトロチロシンに関する免疫染色でより高い程度を有し、かつ、気道チオール代謝において、痰A中の炎症細胞の重大な不均衡もまた、COPDに罹患している患者について記載され、そしてそれは、下流の酸化還元転写変化および炎症誘発性事象に関連し得る。総説に関しては、Holguin 2013. Ann Am Thorac Soc 10 Supplement: S150-S157を参照のこと。
炎症性腸疾患(IBD)は、クオリティオブライフに劇的に影響を及ぼす胃腸(GI)管の不治の慢性炎症性腸障害である。クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)はIBDの主なタイプである。CDは、GI管のあらゆる領域で発生する可能性があり、そして、経壁炎症によって不連続なパターンで回腸および結腸に影響を与えるが、それに対し、UCは、継続的に結腸および直腸だけに影響し、かつ、粘液に限定される。実験モデルおよび臨床試験の両方からの蓄積データは、酸化ストレスシグナル伝達が複数のレベルの機能を通じて炎症性腸疾患の発生に関与することを示している。酸化ストレスはGI管の粘膜層の損傷につながり、細菌侵入は免疫応答を順に刺激し、そして、炎症性腸疾患を開始する。炎症の間、免疫細胞、例えば、白血球、単球、好中球などは、呼吸、プロスタグランジン、およびロイコトリエン代謝中のROS産生を増大させ、更なる組織損傷をもたらす。総説に関しては、Tian et al. 2017. Oxid Med Cell Longev 4535194を参照のこと。
セリアック病(CD)は、遺伝的に感受性を有する個人においてグルテンおよび関連プロラミンによって引き起こされる上部小腸の免疫型媒介性の慢性炎症性障害である。他の自己免疫条件において、環境、遺伝子、および免疫学的な要因がCDの発症機序に関与し得る。これに加えて、酸化ストレスもまたCDの発症機序に関係する。例えば、キサンチンオキシダーゼの活性化は、セリアック病患者の小腸粘膜におけるROS過剰産生の機構の1つである。総説に関しては、Patlevic et al. 2016. Integr Med Res 5: 250-258を参照のこと。
胃炎は、胃粘膜内層の炎症と規定され、そして、H.ピロリ(H. pylori)感染、NSAID使用、アルコール摂取、およびストレスを含めたいくつかの条件において生じる。消化性潰瘍疾患(PUD)は、近位GI管に生じ、多くの場合、慢性胃炎に関連している。胃十二指腸潰瘍は、最も一般的には慢性PUDと表される。胃炎および消化性潰瘍は、内因性および外因性の両方の複数の要因によって引き起こされ、フリーラジカルは、両条件に密接に係わっている。胃でのROSの蓄積に関与するいくつかの要因が存在する。低減された抗酸化酵素SODレベルおよび抗酸化ビタミン摂取は、胃十二指腸炎症性疾患に関連するROSの蓄積に関与する。エタノール誘発性胃炎は、増強されたスーパーオキシド産生に関連する。食細胞白血球は、慢性炎症、例えば、H.ピロリ誘発性胃炎およびIBDで観察されるものなどにおけるROSの主たる起源である。著しく多数の好中球および/またはマクロファージが、炎症の間、胃粘膜に浸潤し、大量のROSを産生する。総説に関しては、Bhattacharyya et al. 2014. Physiol Rev 94: 329-354を参照のこと。
酸化ストレスはまた、ウイルス性肝炎(A、B、およびC型)および肝硬変のような肝疾患において重要役割を担っている。C型肝炎が強い酸化ストレスに関連知ることは明確に立証されている。これは、ROSの直接測定、DNAの定量化、脂質およびタンパク質酸化生成物を含めたさまざまな技術を使用した慢性C型肝炎患者の肝臓組織および血清/血漿サンプルにおいて、ならびに全オキシダント/抗酸化状態または個々の抗酸化物質のレベルを評価することによって明らかにされた。慢性C型肝炎ウイルスキャリアの肝生検のスクリーニングは、酸素ラジカルおよびストレスマーカーであるマロンジアルデヒド(MDA)と4‐ヒドロキシノネナール‐(HNE)‐ならびに他のタンパク質付加物のレベルの有意な上昇を明らかにした。加えて、斯かる患者の血清/血漿は、
酸化ストレスマーカー、例えば、MDA、脂質ペルオキシド、タンパク質カルボニル含量またはチオレドキシンなどの幅広いアレイの高いレベルを特徴とする(総説に関して、Ivanov et al. 2017. Oncotarget, 2017, Vol. 8, (No. 3), pp: 3895-3932を参照のこと)。
慢性B型肝炎に罹患している患者は、明白な酸化ストレスの兆候を示す。これらの患者からの肝臓標本の酸素ラジカルのレベルは、健常な人々のレベルを超えている。B型肝炎に罹患している患者は、肝臓においてだけではなく、血漿/血清にも酸化ストレスの兆候を示す。慢性B型肝炎は、全オキシダント状態の増大と付随する総抗酸化状態の低減を伴う。これらの患者の血漿/血清はまた、H2O2を含めたROSの高いレベル、および脂質とタンパク質の酸化生成物を特徴とする。酸化ストレスは、慢性B型肝炎ウイルス感染症および高度な肝疾患の顕著な特徴であるだけではない;それはまた、急性および潜在性B型肝炎、ならびに無症候性HBV感染症でも観察される。潜在性B型肝炎感染症は、リンパ球におけるROSの増強されたレベルと結果的なDNA損傷を特徴とする。しかしながら、最も劇的な変化は、肝硬変に罹患し、かつ、急性慢性B型肝炎肝不全に罹患しているB型肝炎患者において記載された(総説に関して、Ivanov et al. 2017. Oncotarget, 2017, Vol. 8, (No. 3), pp: 3895-3932を参照のこと)。肝硬変は、慢性肝炎の多くの形態の合併症であって、線維症の後期ステージであり、そしてそこでは、再生結節形成が肝臓の線維帯に囲まれている。肝硬変では、酸化ストレスは反応性酸素種の過剰産生によって主に引き起こされ、そしてそれは、内皮の機能不全の主な決定要因であり、酸化物質と抗酸化酵素との間の崩れたバランスのためである。等モル濃度のNOの存在下での増強されたスーパーオキシド形成は、強力なROSおよび反応性窒素種の形成につながる。総説に関しては、Vairappan 2015. World J Hepatol 27; 7(3): 443-459を参照のこと。
肝毒性とは、化学的に引き起こされた肝臓障害を含意する。薬物誘発性肝損傷は急性および慢性肝疾患の原因である。薬物誘発性肝損傷は、すべての入院の5%、そして、すべての急性肝不全の50%に関与する。肝臓は、薬物毒性に関して最も頻繁に標的とされる臓器である。ラジカル種、具体的には、ROSおよびRNS、の産生は、薬物肝毒性の初期事象として、かつ、肝毒性の可能性の指標として示された。例えば、抗炎症薬、鎮痛剤、抗癌剤、および抗鬱剤などの多くの薬物が、細胞酸化物質および過酸化脂質の増大、肝臓の抗酸化物質の減少を含めた酸化ストレスを引き起こす場合があることを見出した(Li et al. 2015. Int. J. Mol. Sci. 16: 26087-26124)。900超の薬物が、肝損傷の病因に関係しており、それを全体として参照により本明細書に援用する(https://livertox.nlm.nih.gov/; Bjornsson 2016. Int. J. Mol. Sci. 17: 224)。
アルコール性肝障害(ALD)の発症機序では、エタノール代謝の直接的な因果関係もまた、ROS産生、ミトコンドリア損傷、および脂肪変性に関連するように見え、そしてそれは、急性および慢性アルコール曝露の共通した特性である(Li et al. 2015. Int. J. Mol. Sci. 16: 26087-26124)。
低減された腎臓機能に通じる急性腎傷害(AKI)および慢性腎疾患(CKD)の両方が、高い死亡率に関する相互依存するリスク因子である。未処置の時間が長かった場合、末期腎疾患(ESRD)は必然的な転帰である。急性および慢性腎疾患は、酸化ストレス、炎症、自食作用、および細胞死を制御する分子機序間の不均衡によって起こるものもある。非常に多くの研究では、酸化ストレスおよびその全身作用がAKIの発症において極めて重要な役割を担っていることが示唆された。最近の試験では、腎損傷に関する酸化ストレスのバイオマーカーとしての増強された尿チオレドキシン1(TRX1)発現が実証された。糖尿病性ネフロパシー(DN)は、糖尿病の破壊的な合併症であり、かつ、CKDの主な原因である。腎臓では、ミトコンドリア呼吸鎖とNADPHオキシダーゼ(NOX)がROSの主要な共通起源であり、NOXが、CKDにおける血管機能不全および線維症を促進することによって酸化ストレスを生じることが実証された。総説に関しては、Sureshbabu et al. 2015. Redox Biology 4: 208-214を参照のこと。
薬物誘発性腎傷害(ネフロパシー)は、臨床診療における深刻な問題であり、入院患者のうちの急性腎傷害(AKI)に関する症例の19%~26%を占める。そのうえ、AKIは、進行性慢性腎疾患または末期腎不全の高確率での発症に関連する苛酷条件を引き起こし、これにより、高い死亡率につながる。ほとんどの薬物が、1もしくは複数の一般的な発病機構によって中毒作用を発揮するネフロパシーを引き起こすことがわかった。これらには、変更された糸球体内血行動態、尿細管細胞毒性、炎症、クリスタルネフロパシー、横紋筋融解症、および血栓性細小血管障害が挙げられる。AKIとしては、急性腎尿細管壊死(ATN)や急性間質性腎炎が(AIN)が挙げられる。ATNの基本的な機構は酸化ストレスである。近位尿細管毒性は、例えば、ミトコンドリアの機能不全、リソソーム加水分解酵素阻害、リン脂質損傷、および高い細胞内カルシウム濃度などの直接的な腎臓への毒性効果に起因して発症し、有害な酸化ストレスを伴う反応性酸素種(ROS)の形成につながる(Hosohata 2016. Int. J. Mol. Sci. 17: 1826)。
腎臓に対して潜在的に有害(腎毒性)である薬物療法は、例えば、抗微生物剤(例えば、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン)、抗ウイルス剤(例えば、アシクロビル、ホスカルネット)または抗真菌剤(例えば、アンフォテセリンB)のような抗生物質、鎮痛剤、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン)、利尿剤、プロトンポンプ阻害薬、化学療法剤(例えば、シスプラチン)、造影剤、ACE阻害薬またはスタチンのような心血管作用薬、抗鬱剤、免疫抑制薬(例えば、シクロスポリンA)および抗ヒスタミン剤である(参考文献に関しては、Naughton 2008. Am Fam Physician. 2008;78 (6):743-750, Table 1; Hosohata 2016. Int. J. Mol. Sci. 17: 1826を参照のこと)。
発癌において、高反応性ヒドロキシルラジカルは酸化的DNA損傷を引き起こし、ペルオキシ亜硝酸は、酸化損傷とDNA塩基のニトロ化の両方を引き起こす。ROSによって引き起こされた突然変異の大部分が、グアニン修飾に関与すると思われ、そして、グアニン(G)→チミン(T)塩基転換を引き起こす。それが重要な遺伝子、例えば、癌遺伝子または癌抑制遺伝子などに関連する場合、癌の開始または進行が起こり得る。一般的に、癌細胞の高い代謝はROSの増大に関連する;しかしながら、斯かるレベルは、正常細胞にそれらがあるよりも、癌細胞において有害であることは少ない。例えば、ROSレベルはささやかな程度まで増大するが、発癌性細胞は新しい酸化還元バランスを誘発し、そして、細胞順応および増殖をもたらす。ミトコンドリアの呼吸鎖によっておよび細胞質のNox酵素によって作り出されるROSは特に重要である。実際には、Noxタンパク質は、現在、発癌性タンパク質であると考えられ、そして、ミトコンドリアの機能不全は腫瘍形成に関連する。酸化ストレスは、発癌のすべてのステージに関与し、そして、持続性または慢性酸化ストレスのレベルと腫瘍ステージとの間の用量依存的関連性がある。発癌プロセスの間、正常細胞は遺伝子発現における多くの構造変化および突然変異のため異常細胞に形質転換される。主題文献において、発癌は3つの主なステージ:開始、促進、および進行、によって記載されている。これらのすべてのステージが、ROSおよびRNSの関与に結び付いていると仮定された。ROSは、新生血管形成に関与する病態生理学的状態において重要な役割を有する。例えば、ROS産生酵素、例えば、NADPHオキシダーゼ(例えば、Nox:Nox1~5)などは、最終的に血管新生につながる酸化還元シグナル伝達経路を活性化する。総説に関しては、Kruk and Aboul-Einein 2017. Mini-Reviews in Medicinal Chemistry 17: 904-919; Sosa et al. 2013. Ageing Research Reviews 12: 376- 390を参照のこと。
前立腺癌は、男性で最も頻繁に診断される非皮膚性の悪性腫瘍である。これは多病巣性、領域タイプ(filed-type)の疾患であり、そしてそれは、腺起源の固形腫瘍を形成する。前立腺癌は、主に加齢に伴う疾患であり、ほとんどの症例が55歳を超える男性に起こる。ここ10年で、前立腺癌リスクと酸化ストレスとの関連性が認識され、そして、疫学的試験、実験的試験および臨床試験では、一般的に増強された酸化ストレスに向かう抗酸化‐酸化促進バランスのシフトに関連する、この疾患の発生および進行における酸化ストレス役割が明確に立証された。食事、炎症、ならびにNAD(P)Hオキシダーゼ、アンドロゲンシグナル伝達、ミトコンドリアDNA突然変異、経年変化、および酸化還元不均衡に関係する細胞機能の変化のような環境要因は、ROS産生を増強すること関与する推定機序である。この増強されたROSは、細胞増殖をさらに刺激し、体性DNA突然変異を引き起こすので遺伝的不安定性、細胞周期停止、老化を促進し、そして、癌細胞において、増強された血管新生および運動性を引き起こし得る。特に、前立腺癌においてROS産生を駆動する増強されたNox発現が、様々なシグナル伝達カスケードを調節することによって悪性表現型の発生につながる場合がある。総説に関しては、Khandrika et al. 2009. Cancer Lett. 282(2): 125-136; Kruk and Aboul-Einein 2017. Mini-Reviews in Medicinal Chemistry 17: 904-919; Sosa et al. 2013. Ageing Research Reviews 12: 376- 390を参照のこと。
乳癌細胞におけるROSの過剰産生としては:チミンおよび2‐デオキシ‐D‐リボースホスファートへのチミジンの分解につながるチミンホスホリラーゼの強い発現;エストロゲンの代謝および炎症において関与するラクトペルオキシダーゼへの17‐エストラジオールパノキシルラジカルの酸化、が挙げられる。フリーラジカルの増加に加えて、抗酸化物質の変化は乳癌リスクに関連し、例えば、SODおよびGPXレベルは、スーパーオキシドおよび過酸化水素の産生促進に対する応答として、健常な女性のものと比較して、乳癌患者の血液中ではより高いことがわかった。乳癌において、癌抑制遺伝子である乳癌遺伝子1(BRCA1)は、遺伝性乳癌の40~50%で変異しており、そして、散発性乳癌の30~40%にて不存在であったかもしくは低レベルで発現されていた。BRCA1は、DNAの再対合に関与するケアテイカー遺伝子であり、転写要因Nrf2およびNfκBの活性を制御することによって抗酸化反応に関与するいくつかの遺伝子を上方制御することができる。ROS産生に対するBRCA1の阻害作用は別として、BRCA1はまた、細胞におけるRNSの蓄積によるタンパク質ニトロ化のレベルも低減し、そして、それは最終的に酸化ストレスに対処するのを助けるDNA修復プロセスを促進する。総説に関しては、Nourazarian et al. 2014 Asian Pac J Cancer Prev, 15 (12): 4745-4751; Kruk and Aboul-Einein 2017. Mini-Reviews in Medicinal Chemistry 17: 904-919; Sosa et al. 2013. Ageing Research Reviews 12: 376- 390を参照のこと。
ヒト肺は、(生理学的な生化学的機構および正常細胞シグナル伝達経路に関与する)内因的に発生したROSおよびRNSに加えて、大気汚染酸化物質に継続的に晒される。タバコの喫煙が肺癌発生における主要なリスク要因であるというのが一般的に考えられている仮説である。臨床的研究と実験的研究は共に、肺癌におけるOSの重要な役割を一貫して示した。酸化ストレスの重要性、ならびに炎症、転写要因の活性化、およびDNA損傷に起因する悪性呼吸器疾患の発生増加とのその相関関係を支持する証拠が利用可能である。炎症の間、高められたROS産生が、シグナル伝達経路を開始することによって、DNA損傷、アポトーシスの阻害、および癌原遺伝子の活性化を引き起こす。炎症細胞はROSおよび他の反応性種を産生する際に特に効果的であり、これにより、酸化損傷を増強し、そして、発癌機構が促進される。ROSおよび他の酸化物質またはフリーラジカルを産生ために、呼吸器系に侵入するおよび肺胞に達する吸入粒子または繊維状粉塵の能力が、それらの病原性可能性に関与する主な要因になることが示唆された。(肺胞内に深く浸み込む)吸入可能粒状物質と大気汚染の他の成分(オゾン、一酸化窒素、すす、重金属、PAH)とタバコの煙との相乗機構が試験された。風媒粒子の多孔質表面は、ROSまたは損傷を与える他の酸化物質の増強された生成を触媒する好適な環境を提供し、そしてそれは、肺発癌の潜在的イニシエーターである。総説に関しては、Valavanidis et al. 2013. Int. J. Environ. Res. Public Health 10: 3886-3907; Kruk and Aboul-Einein 2017. Mini-Reviews in Medicinal Chemistry 17: 904-919; Sosa et al. 2013. Ageing Research Reviews 12: 376- 390を参照のこと。
結腸直腸癌(CRC)は、西洋諸国で最も発生率が高い、世界的に最も一般的な癌の1つである。結腸癌は、腸管の系列である上皮細胞に由来する。これらの細胞は、急速に分裂するので高い代謝速度を有し、そしてそれが、DNAの高い酸化に関与し得る潜在的要因と見られた。ヒト結腸直腸腫瘍(腺腫および(adenomasand)癌腫)が酸化ストレスの様々なマーカーの高いレベル、例えば、高レベルの
一酸化窒素(NO)、DNA中の8‐オキソdG、脂質ペルオキシド、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)、カタラーゼ(CAT)、およびDNA中のシトシンの減少したメチル化を有することがわかった。脂質修飾以外にもまた、発癌性組織における増強された白血球活性化も見られ、そしてそれは、更なる酸化ストレスに対する炎症細胞の起こり得る関与を示している。そのうえ、大腸癌患者の血漿中の抗酸化物質であるビタミンA、C、Eのレベルは、健常人と比較して、統計的に低いことが示された。総説に関しては、Perse 2013. BioMed Research International 725710; Kruk and Aboul-Einein 2017. Mini-Reviews in Medicinal Chemistry 17: 904-919; Sosa et al. 2013. Ageing Research Reviews 12: 376- 390を参照のこと。
工業国では、膀胱癌が、四番目に最も頻繁に生じる悪性腫瘍である。最近の研究では、この疾患の形成および発生における酸化ストレスおよびニトロソ化ストレスの関与が示された。酸化還元障害は、膀胱癌の開始および進行の両方に特徴的である。転写要因、例えば、核因子NF‐κBなど;転写要因:AP‐1、Nrf2、STAT3、ならびに低酸素誘導要因HIF‐1αの活性における変化が観察されている。加えて、試験では、MAPKカスケードの調整における酸化ストレスの役割および発癌構成膀胱におけるその関与が示された。一酸化窒素もまた、腫瘍生物学において重要な役割を果たす。非常に多くの研究が、膀胱癌がNOの増大した産生を特徴とすることを示す。発癌性生体外物質への曝露からその過剰産生がもたらされるROSとは対照的に、高レベルの酸化窒素は、炎症の間に産生される。持続したiNOS活性は、そのため、膀胱癌に特徴的でもある、炎症反応に関連する発癌において重要な役割を果たす。総説に関しては、Sawicka et al. 2015. Postepy Hig Med Dosw 69: 744-752を参照のこと。
卵巣癌は、癌による死亡のうちで五番目に多い死因;婦人科悪性腫瘍による最も多い死因であり、そして、二番目に一般的な診断婦人科悪性腫瘍である。卵巣癌の圧倒的多数は、卵巣表面上皮に由来する。転移癌は、単独細胞の分離または原発性腫瘍からの細胞の拡散と、それに続く腹膜の中皮内壁上への着床によって達成される。子宮内膜癌、卵巣癌および子宮頚癌は、 進行期におけるそれらの診断に起因して腫瘍学の重大な問題を構成する。研究所見は、酸化ストレスが卵巣癌の2つのサブタイプ:明細胞癌および子宮内膜症癌腫、の発癌において因果的役割を担うことを示した。証拠は、卵巣癌患者が低レベルの
循環抗酸化物質および高レベルの酸化ストレスを有することを示唆している。上皮性卵巣癌(EOC)組織および細胞が、主要な酸化促進酵素の発現増加および抗酸化酵素の発現低下を特徴とする酸化促進状態を表すことが報告された。具体的には、EOC細胞および組織は、iNOS、MPO、NAD(P)H酸化酵素の発現増大、ならびにNOレベルの増大を表した。そのうえ、EOC細胞は少ないアポトーシスを表した。
子宮内膜癌は、子宮内膜症疾患に関連することが報告され、内膜症性嚢胞における高レベルの遊離鉄ヘモシデリンまたはヘムは、酸化ストレス発生および慢性炎症に関与する主な要因と見なされる。
子宮頚癌は、徹底した研究の対象である世界中の女性において二番目に一般的な癌である。子宮頚部における酸化ストレスの関与を示唆したいくつかの実験研究では、転写要因AP‐1およびNFκBが阻害され得るか、頚部癌細胞において抗酸化物質が酸化還元バランスを変更し得るか、または細胞アポトーシスが誘発され得ることが示された。総説に関しては、Saed et al. 2017. Gynecologic Oncology 145: 595-602; Kruk and Aboul-Einein 2017. Mini-Reviews in Medicinal Chemistry 17: 904-919; Sosa et al. 2013. Ageing Research Reviews 12: 376- 390を参照のこと。
OSによって引き起こされた酸化損傷はまた、白血病にも関係し、そして、高いROS産生によって引き起こされる、低レベルの抗酸化物質、酸化修飾DNAおよび脂質は、慢性リンパ球性白血病患者の血清で見られた。そのうえ、慢性白血病細胞では、白血病癌の発症機序におけるROSの関与を確認するストレス応答性ヘモキシゲナーゼ‐1の上方制御によって細胞内OSに適合させることができることがわかった。慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic)のリンパ球におけるGSHの減少もまた、白血病B(leukemia B)患者において実証された。総説に関しては、Kruk and Aboul-Einein 2017. Mini-Reviews in Medicinal Chemistry 17: 904-919を参照のこと。
胃癌(GC)はヒト集団において最も頻度の高い疾患の1つである。それは、世界中で四番目に頻度の高い癌であり、そして、二番目に一般的な癌による死因である。胃癌の主なリスク因子は、細菌増殖によって引き起こされる慢性炎症である。例えば、ヒト胃における活性酵素および窒素種の生成を増強するヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)による感染症が胃癌の発生に重要であると考えられる。タンパク質酸化生成物は、GC患者において顕著に高かったことが示された。そのうえ、SODおよびカタラーゼの抗酸化能は、対照健常組織と比較して、胃癌組織において低いことがわかった。総説に関しては、Kruk and Aboul-Einein 2017. Mini-Reviews in Medicinal Chemistry 17: 904-919; Ma et al. 2013. Oxidative Medicine and Cellular Longevity 543760を参照のこと。
B型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)感染症、アルコール乱用、および非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、アフラトキシンB1、肥満、糖尿病、食習慣、および鉄蓄積を含めた肝臓の発癌に関与する多くの要因が存在する。一般に、酸化ストレスは、あらゆる危険因子または炎症性シグナルによっても引き起こされる可能性があり、肝臓の複数の細胞に影響する。肝損傷は、急性的または慢性炎症性プロセスのどちらでもあり得る。局所炎症環境では、多くのタイプの肝臓細胞、例えば、肝臓類洞内皮細胞(LSEC)、肝臓星細胞(HSC)、樹状細胞(DC)、およびクッパー細胞(KC)などが活性化される。これらの細胞は、酸化ストレスの産生にもつながり得る多くの種類の免疫伝達物質、サイトカイン、およびケモカインを産生する。近年、酸化ストレスと肝臓星細胞との相関に関する試験が増強してきた。これらの細胞は、肝線維形成のプロセスにおいて中心的な役割を担っており、フリーラジカルによる身体の活性化後のコラーゲン産生を誘発し得るが、それがROSとスーパオキシドアニオンによって生じ、そして、肝臓細胞に対する損傷をさらに誘発することが立証された。
HCCの症例の80%超が慢性HBVまたはHCV感染に関連することが知られている。通常、肝臓のHBV‐およびHCV関連慢性炎症および線維症は、酸化ストレスによって引き起こされ、そしてそれは、肝発癌の発症機序に寄与している。HBV感染症は、例えば、IL‐1、IL‐6、CXCL‐8、およびTNF‐αなどのさまざまな炎症誘発性サイトカインを産生するようなマクロファージの活性化をもたらす。斯かる持続的な異常なサイトカイン産生および結果として生じるROSの産生は肝発癌に影響する。HCVに誘発された酸化ストレスは、肝細胞癌腫(HCC)の発生に寄与する。そのうえ、慢性C型肝炎患者の酸化ストレスマーカーのレベルは、HCCの発生の確率と明確に相関し、かつ、肝移植を受けた慢性C型肝炎患者におけるHCC再発の予後予測マーカーとして役立つ可能性がある。発癌は、複数のROS媒介性プロセスによって調整される。総説に関しては、Wang et al. 2016. Oxidative Medicine and Cellular Longevity 7891574を参照のこと。
皮膚は、身体の主要な環境接触面であり、そしてそれは、多くの化学的突然変異誘発物質や癌原性物質に偶発的または職業的に晒される状態になる。皮膚癌は、主要かつ増加中の公衆衛生問題である。それは、診断されるすべての新規癌のうちの40%超を占める。皮膚癌の80%が基底細胞癌(BCC)からもたらされ;もう16%が扁平上皮癌(SCC)であり、そして4%がメラノーマである。多くの証拠では、UVがDNA損傷を引き起こし、結果としてDNA鎖が中断されるので、DNA架橋が検出されることが示された。皮膚癌における重要なプロセスは、カタラーゼ活性のメラノサイトと減少による過酸化水素の産生である。そのうえ、メラノーマに係わるいくつかの遺伝子の突然変異が酸化ストレスからもたらされることを示す知見が存在する。総説に関しては、Kruk and Aboul-Einein 2017. Mini-Reviews in Medicinal Chemistry 17: 904-919; Narendhirakannan. 2013. Ind J Clin Biochem 28(2):110-115を参照のこと。
感染中に生成される反応性種は、それらが任意の程度まで放出された時点で、疾患に関して重大な結果を生じ得る。酸化ストレスは、様々な臓器で有害な影響を開始し得る。酸化ストレスの発生は、低酸素症の過程で加速され得る。低酸素症は、感染症の既知の合併症である。低酸素症はある疾患に限ったものではない。インフルエンザ、ウイルス性肝炎、および結核はすべて、低酸素症が起こる感染症の例である。直接的な反応性酸素生成は金属によって開始され得る。一例では、鉄、銅、およびカドミウムは、過酸化水素がヒドロキシルラジカルと水酸化物陰イオンに変換されるフェントン反応によって酸化ストレスの発生を触媒し得る。重金属は、他の病状のような感染症に係わる生理学的プロセスに関与する。言及したように、ウイルス性肝炎によって損傷を受けた肝臓は、不完全な排出プロセスのため重金属に被害を受け易い。A、B、C、D、およびE型ウイルス性肝炎に罹患している患者に対する臨床試験では、銅および鉄の蓄積が患者の肝臓組織に対する酸化ストレスおよび酸化損傷の原因となることが実証された。肝炎のように、AIDSは、酸化恒常性の不均衡を伴う。体内の標的に関する酸化損傷の高いマーカーおよび反応性酸素種の蓄積は、HIV感染者で一般的である。血液抗酸化物質は、感染した個体において長期間にわたって還元される。総説に関しては、Pohanka 2013. Folia Microbiol 58:503-513を参照のこと。
敗血症および敗血症ショックは、成人の集中治療室における一番の死因にとどまっている。敗血症および敗血症ショックはグラム陰性菌とそれらのエンドトキシンによって主に引き起こされることは広く認識されている。エンドトキシンまたはリポポリサッカライド(LPS)は、グラム陰性細菌感染によって引き起こされる、宿主反応および炎症プロセスのトリガーとして重要な役割を有している。好中球やマクロファージによる酸素ラジカル、例えば、反応性酸素種(ROS)、NO(一酸化窒素)、およびペルオキシ亜硝酸などの産生は、前炎症性メディエーターの遺伝子発現を促進させる。ROSおよびRNSは、微生物病原体を直接破壊し得るこれらの白血球によって産生される抗微生物剤である。敗血症の間、ROSおよびRNSの過剰産生は、細胞膜の過酸化、タンパク質酸化およびDNA鎖切断によって、タンパク質、脂質、ならびにリポタンパク質、タンパク質酸化、そして、組織損傷をもたらすDNAを含めた様々な生体分子の保全を脅かす。これらの機構は、心筋抑制、肝細胞性機能不全、内皮機能不全、および血管のカテコールアミン反応低下をもたらす敗血症中の多臓器不全に寄与する。ROS産生の主要な起源として、ミトコンドリアは特にROS媒介性損傷の傾向がある。斯かる損傷は、ミトコンドリア内膜の不特定の高コンダクタンス透過性遷移孔の開口によって引き起こされるミトコンドリア透過性遷移を誘発し得る。ROS自体もまた、自食作用、アポトーシス、および壊死の誘発につながるシグナルを提供する。酸化的リン酸化の脱共役による過度のROS産生およびアデノシン三リン酸の減少は、壊死性細胞死を促進する。ミトコンドリアの膨張後のシトクロムcの放出は、カスパーゼを活性化し、そして、アポトーシス細胞死を開始させる。総説に関しては、Kaymak et al. 2011. FABAD J. Pharm. Sci. 36: 41-47を参照のこと。
よって、本発明の別の具体的な実施形態において、本明細書中に開示するDPP3バインダー、具体的には、(DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる)配列番号2によるエピトープに結合する、本明細書中に提供する抗DDP3抗体、および/または抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場は、患者の疾患または急性病態の予防または治療における(前記疾患または急性病態が酸化ストレスに関連することによる)使用のために提供され、前記疾患は、先に記載した神経変性疾患、メタボリックシンドローム、心血管疾患、自己免疫疾患、炎症性肺疾患、腎疾患、肝疾患、消化器系疾患、ウイルス感染症、癌、炎症、敗血症、敗血症ショック、およびSIRSを含む群から選択される。
別の具体的な実施形態において、前記疾患は、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および多発性硬化症(MS))、メタボリックシンドローム(インスリン抵抗性、肥満、高血糖、脂質異常症、高血圧および糖尿病を含む)、心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心不全、心血管虚血、脳虚血損傷/脳卒中および心筋梗塞)、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチおよび全身性エリテマトーデス)、炎症性肺疾患(例えば、COPD、喘息)、腎疾患(腎毒性(薬物誘発性腎疾患)、急性腎傷害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、糖尿病性腎症、末期腎不全(ESRD)を含む)、肝疾患(例えば、肝毒性、ウイルス性肝炎、肝硬変)、消化器系疾患(炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病;胃炎、膵炎および消化性潰瘍を含む)、ウイルス感染症(例えば、血液由来肝炎ウイルス(B、C、およびD型)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザA型、エプスタイン‐バーウイルス、呼吸系合胞体ウイルス)、癌(例えば、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膀胱癌、卵巣癌、皮膚癌、胃癌、肝臓癌)、ならびに炎症、敗血症、敗血症ショックおよびSIRSを含む群から選択される。
本発明の別の具体的な実施形態において、本明細書中に開示するDPP3バインダー、具体的には、(DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる)配列番号2によるエピトープに結合する、本明細書中に提供する抗DDP3抗体、および/または抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場は、急性病態の予防または治療における使用のために提供され、ここで、前記急性病態は、肝毒性および腎毒性を含む群から選択され得る。
アルコール摂取、タバコ煙への慢性的な曝露の結果として起こる毒性、およびまで様々な薬物療法の副作用としての毒性
本発明の内容に関連して、酸化ストレスおよびその後の毒性はまた、慢性的なアルコール摂取、タバコ煙への慢性的な曝露によって、および様々な薬物療法の副作用として誘発される(Deavall et al. 2012で概説される、以下の表2を参照のこと)。
アセトアミノフェン‐幅広く使用される鎮痛剤および解熱剤‐は、KEAP‐Nrf2シグナル伝達と関係がある薬物誘発性肝損傷の典型的な肝毒性物質である(Ma, 2013)。他の治療誘発性酸化ストレスとしては、オルチプラツとオーラノフィンが挙げられる(Ma, 2013)。
Figure 0007424972000003
本発明によると、当業者は、酸化ストレスの存在および程度が当該技術分野で知られている好適なバイオマーカーアッセイによって測定および定量化され得ることをよく知っている。これらのマーカーに関するそれぞれの例を以下に示すが、これらは、本発明による酸化ストレス計測の可能性を限定するものと解釈されないものとする:
評価のための酸化ストレスのマーカー:血清、赤血球、CSF、唾液、尿
フリーラジカルは、核酸、タンパク質、および脂質を含めた生物学的分子に損傷を与え得る。これらの反応の生成物は酸化ストレスのマーカーになり得る。血清は酸化ストレスの成分の評価のための最も一般的な材料である。それは、酸化還元反応のほとんどの酵素、基質、および生成物に関する推察を可能にする。これらの酵素としては、キサンチンオキシダーゼ、NOS、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、プロリルオリゴペプチダーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスファートオキシダーゼ1(NOX1)、およびNADPH依存性オキシダーゼが挙げられる。以下のものは酸化脂質損傷のマーカーである:例えば、アラキドン酸の過酸化脂質の生成物、マロンジアルデヒド(MDA)、蛍光過酸化脂質タンパク質共有結合付加物の形成および共役ジエンの増大を構成するイソプロスタン(IsoP‐プロスタグランジン様物質)、例えば、8‐イソ‐プロスタグランジン(F2α‐8‐イソ‐PGF2α)。酸化ストレスはタンパク質およびグリコキシデーションの酸化に関与する。以下のものはこの反応の結果である:グリコホル(glycophore)含有量、高度タンパク質酸化(AOPP)の総レベル、タンパク質カルボニル、ジチロシンレベル、N’‐ホルミルキヌレニン、および血清タンパク質チオール基のレベル低下。タンパク質酸化の他の特異的マーカーは、チロシン(ヒドロキシルラジカルのマーカー)および3‐ニトロチロシン(RNSのマーカー)である。さらに、3‐ニトロチロシンは、ペルオキシ亜硝酸誘発性細胞損傷の特異的マーカーである。血清における他の指標としては、キヌレニン、N’‐ホルミルキヌレニン、チオレドキシン、および8‐ヒドロキシ‐2’‐デオキシグアノシンが挙げられる。
ヒトの酸化ストレスに関するバイオマーカーのそれぞれの測定は、Ilaria Marrocco, Fabio Altieri, and Ilaria Peluso; Review Article: Measurement and Clinical Significance of Biomarkers of Oxidative Stress in Humans; Oxidative Medicine and Cellular Longevity Volume 2017 (2017), Article ID 6501046, 32頁にまとめられている。
そのうえ、本発明によると、当業者は、本明細書中に開示するDPP3バインダーによって影響を受けるDPP3の生理活性が、例えば、当該技術分野で知られている好適なアッセイを介した阻害、について計測され得ることをよくわかっている。それぞれの例を以下に示すが、これらはDPP3の生理活性の測定の可能性を限定するものと解釈されないものとする:
DPP3の阻害を検出および計測するための方法
バインダーによる液相アッセイにおけるDPP3活性の阻害は、以下のとおり測定され得る:抗DPP3抗体療法前後の患者の血液サンプル(例えば、血清、ヘパリン‐血漿、Li‐血漿、シトラート‐血漿、全血)を、液相アッセイにおいて特定のDPP3基質と共にインキュベートする。血液サンプル中の抑制DPP3抗体の抑制能力を測定するための特定の液相DPP3活性分析は、以下のステップを含む:
・200μlの50mM Tris‐HCl、pH7.5中の20μlの血液サンプルを黒色の非結合マイクロタイタープレート(96ウェル)内に追加する。これにより、当業者は、緩衝化条件、濃度およびpHなどを変更し得ることを認識している。
・蛍光発生基質Arg‐Arg‐βNA(20μl、2mM)を追加する。
・37℃にてインキュベーションし、そして、1時間にわたり、Twinkle LB970マイクロプレート蛍光光度計(Berthold Technologies GmbH)内の遊離βNAの生成を観察する。βNAの蛍光を、340nmにて励起し、そして、410nmにて発光を計測することによって検出する。
・様々なサンプルの増大した蛍光のスロープ(RFU/分単位)を計算する。
・抗DPP3抗体療法の前後にDPP3活性値を分析する。
それとは対照的に、固相法は、それぞれの結合事象が固相にて起こるアッセイである。バインダーによる固相法におけるDPP3活性の阻害は、以下のように測定され得る:抗DPP3抗体療法前後の患者の血液サンプル(例えば、血清、血漿、全血)を、固相による酵素捕捉活性アッセイ(ECA)のための固定された捕捉バインダーと接触させる。ECA用の捕捉バインダーとしては、最も阻害能の低いものを選択することが好ましい。捕捉バインダーは、50%未満、好ましくは40%未満、好ましくは30%未満、DPP3活性を阻害するべきである。可能性のある捕捉バインダーの阻害能を定量する特定の液相DPP3活性アッセイは実施例1に詳細に記載されている。
血液サンプル中の抑制DPP3抗体の抑制能力を測定するためのECAは、以下のステップを含む:
・完全長のDPP3に結合するが、好ましくは液相アッセイにおいてDPP3活性を50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは30%阻害する捕捉バインダーと、前記サンプルを接触させる。
・体液サンプルから前記捕捉バインダーに結合するDPP3を分離する。
・前記分離したDPP3にDPP3の基質を追加する。
・そのDPP3基質の転換を計測することによってDPP3活性を定量化する。
・抗DPP3抗体療法前後で計測したシグナルを評価し、およびDPP3活性値を分析する。
活性DPP3の定量方法は液相アッセイとして実施されても、または固相アッセイとして実施されてもよいが、DPP3活性の阻害は上記の手順に従って液体アッセイで定量されてもよい。
さらに別の実施形態において、捕捉または結合アッセイは、DPP3のプロテアーゼ活性を検出および/または定量するために実施され得る。例えば、DPP3タンパク質と反応するが、ペプチダーゼ活性を妨げない抗体が、固相上に固定されてもよい。試験サンプルを、固定抗体上を通過させ、そして、存在する場合、DPP3を抗体に結合させ、それ自体を検出のために固定する。次に、基質を加えてもよく、そして、反応生成物を検出して、試験サンプル中のDPP3の存在または量を示し得る。本記載の目的において、「固相」という用語または、その中またはその上でアッセイが実施され得る任意の材料または容器を含むように使用され得るが、多孔性材料、無孔性材料、試験管、ウェル、スライドなどに限定されるものではない。
そのうえ、本発明によると、当業者は、DPP3に対する本明細書中に開示するDPP3バインダーの結合親和力が当該技術分野で知られている様々な好適なアッセイによって計測され得ることをよく認識している。それぞれの例を以下に示したが、これらは、DPP3に対する本明細書中に開示するDPP3バインダーの結合親和力を計測する可能性を限定するものと解釈されてはならない:
配列番号2の配列によるエピトープに対する本発明のDPP3バインダーの結合親和力を計測するための方法
本発明による配列番号2によるエピトープへのDPP3バインダーの結合親和力は、実施例1に従って測定されてもよく、かつ、以下のようにさらに示される:
結合アッセイは、免疫化ペプチド(すなわち、配列番号2)に結合する抗体を検出および/または定量するために実施され得る。例えば、この免疫化ペプチドを、固相上に固定してもよい。試験サンプル(例えば、抗体溶液)を、その固定免疫化ペプチド上を通過させ、そして、結合した抗体を検出する。本説明の目的において、「固相」という用語はまたは、その中またはその上でアッセイが実施され得る任意の材料または容器を含むように使用され得るが、多孔性材料、無孔性材料、試験管、ウェル、スライドなどに限定されるものではない。
例示的な検出法:
‐固相と接触させる前に、抗体を標識し、そして、それぞれの標識(蛍光、化学発光、酵素など)を検出する。
‐サンプル‐抗体の特定のFc部分に対する標識二次抗体を使用する。二次抗体(例えば、抗ヒトIgG、抗マウスIgG)と共に、抗体が結合した固相をインキュベートし、そして、それぞれの標識(蛍光、化学発光、酵素など)を検出する。
‐固相結合の競合物質として標識抗体(例えば、標識AK1967)を使用する。
‐シグナルの減少によって結合親和力を定量する。
AK1967の特徴づけ (A)Octetを使用したAK1967‐DPP3結合解析の結合曲線および解離曲線。AK1967を仕込んだバイオセンサを、遺伝子組み換えGSTタグ付与ヒトDPP3の希釈系列中に浸し(100、33.3、11.1、3.7nM)、そして、結合および解離を観察した。 (B)血液細胞溶解物の希釈物のウエスタンブロット、および一次抗体としてのAK1967を用いたDPP3の検出。 (C)阻害抗体AK1967を用いた血球細胞からの天然DPP3の阻害曲線。特異的抗体によるDPP3の阻害は、濃度に依存し、15ng/mlのDPP3に対して分析したとき、~15ng/mlにてIC50を有する。 敗血症ショック誘発性心不全に罹患しているラットにおける酸化ストレスに対するAK1967の影響 (A)敗血症ショック状態のラットにおける心不全試験の実験計画。 (B)偽手術、CLPおよびCLP AK1967動物のDHE標識心筋の蛍光画像。 (C)DHE染色領域の定量化、および着目部分のパーセンテージ(ROIの%)としての表現。
本発明の更なる説明
循環、細胞内、膜DPP3に対するバインダー
本発明の別の実施形態において、本明細書中に開示する本発明のバインダー、およびPP3バインダー、具体的には、抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメント、または抗DPP3非Ig足場は、循環DPP3に結合することができ、これにより、循環DPP3に対する。
本発明のさらに別の実施形態において、本明細書中に開示する本発明のバインダー、およびDPP3バインダー、具体的には、抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメント、または抗DPP3非Ig足場は、細胞内DPP3に結合することができ、これにより、細胞内DPP3に対する。
本発明のさらに別の実施形態において、本明細書中に開示する本発明のバインダー、およびDPP3バインダー、具体的には、抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメント、または抗DPP3非Ig足場は、膜DPP3に結合することができ、これにより、膜DPP3に対する。
本発明の内容はまた、患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、本明細書中に開示する本発明のバインダーであるDPP3バインダー、具体的には、抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場でもあり、ここで、前記疾患または急性病態は酸化ストレスに関連しており、かつ、それにより、前記バインダー、具体的には、抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場であるDPP3バインダーは、配列番号2のエピトープに指向され、そしてそれに結合し、ここで、前記エピトープは、循環DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる。
本発明の内容はまた、患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、本明細書中に開示する本発明のバインダーであるDPP3バインダー、具体的には、抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場でもあり、ここで、前記疾患または急性病態は酸化ストレスに関連しており、かつ、それにより、前記バインダーであるDPP3バインダー、具体的には、抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場は、配列番号2のエピトープに指向され、そしてそれに結合し、ここで、前記エピトープは細胞内DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる。
本発明の内容はまた、患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための本明細書中に開示する本発明のバインダーであるDPP3バインダー、具体的には、抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場でもあり、ここで、前記疾患または急性病態は酸化ストレスに関連しており、かつ、それにより、前記DPP3バインダー、具体的には、抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場は、配列番号2のエピトープに指向され、そしてそれに結合し、ここで、前記エピトープは膜DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる。
本発明の内容はさらに、慢性もしくは急性疾患または急性病態に罹患している患者の酸化ストレスの調整および/または予防または治療のための方法であって、前記患者に医薬的有効量で本発明のバインダー、本発明のDPP3バインダー、具体的には、抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場を投与することを特徴とする方法である。本発明によると、前記患者は、酸化ストレスの調整および/または予防を必要としているか、または酸化ストレスの治療を必要としている患者である。
医薬組成物
本発明の別の対象は、患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、本明細書中に開示する本発明のバインダー、またはDPP3バインダーを含んでいる、具体的には、抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場を含んでいる医薬組成物であり、ここで、前記疾患または急性病態は、酸化ストレスに関連する。
本発明の別の実施形態において、前記医薬組成物は、溶液、好ましくは調整済み溶液である。
本発明の別の実施形態において、前記医薬組成物は、溶液、好ましくは7.4のpHにてPBSを含んでいる調整済み溶液である。
本発明の別の実施形態において、前記医薬組成物は、使用前に再構成される、乾燥状態で存在する。
本発明の別の実施形態において、前記医薬組成物は、使用前に再構成される、凍結乾燥状況で存在する。
投与経路
本発明の別の実施形態において、
患者の疾患または急性病態(ここで、前記疾患または急性病態は酸化に関連する)の予防および/または治療に使用される前記医薬組成物は、経口、経皮、皮下、皮内、舌下、筋肉内、動脈内、脳内、脳室内、静脈内、または中枢神経系(CNS)を介してもしくは腹腔内投与を介して投与される。
キット
本発明の別の実施形態は、患者の疾患または急性病態の予防または治療における(前記疾患または急性病態が酸化ストレスに関連することによる)使用のための、本明細書中に開示する本発明のバインダー、またはDPP3バインダーを含んでいる、具体的には、抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場を含んでいるキットまたはアッセイである。
具体的には結合抗体
本発明によると、「抗DPP3抗体」とは、DPP3に特異的に結合する抗体であり、「抗DPP3抗体フラグメント」とは、前記抗DPP3抗体のフラグメントであって、ここで、前記フラグメントはDPP3に特異的に結合する。「抗DPP3非Ig足場」は、DPP3に特異的に結合する非Ig足場である。
本発明の内容に関連して、「具体的には、DPP3に結合する」とはまた、同様に他の抗原に結合可能であってもよい。これは、この特異性が(それに対してバインダーが作製された)配列番号2によるエピトープを含有する他のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドと、そのバインダーが交差反応し得ること、を排除するものではないことを意味する。これは、具体的には、DPP3の機能性変異体を含み、そしてそれはまた、配列番号2によるエピトープも含む。これはまた、本発明による抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場の特異性にも関係する。
抗体
本発明による「抗体」は、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる1個以上のポリペプチドを含むタンパク質である。認識されている免疫グロブリン遺伝子としては、κ、λ、α(IgA)、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ(IgD)、ε(IgE)、およびμ(IgM)定常領域遺伝子、ならびに種々の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。全長免疫グロブリン軽鎖は一般に約25kDすなわち214アミノ酸長である。
全長免疫グロブリン重鎖は一般に約50kDすなわち446アミノ酸長である。軽鎖はNH2末端の可変領域(約110アミノ酸長)遺伝子とCOOH末端のκまたはλ定常領域遺伝子によってコードされる。重鎖も同様に、可変領域(約116アミノ酸長)遺伝子とそれ以外の定常領域遺伝子の1つによってコードされる。
抗体の基本的な構造単位は一般に、免疫グロブリン鎖の2つの同一の対からなり、各対はそれぞれ1本の軽鎖と1本の重鎖を有する四量体である。各対で軽鎖および重鎖の可変領域は抗原に結合し、定常領域はエフェクター機能を仲介する。免疫グロブリンは様々な他の形態(例えば、Fv、Fab、および(Fab’)2、ならびに二機能性ハイブリッド抗体および単鎖など)でも存在する(例えば、Lanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17:105,1987; Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:5879-5883, 1988; Bird et al., Science 242:423-426, 1988; Hood et al., Immunology, Benjamin, N.Y., 2nd ed., 1984; Hunkapiller and Hood, Nature 323:15-16,1986)。
免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の可変領域は、3つの超可変領域(相補性決定領域(CDR)ともいう)で遮られたフレームワーク領域を含む(Sequences of Proteins of Immunological Interest, E. Kabat et al., U.S. Department of Health and Human Services, 1983を参照のこと)。上述のように、CDRは主に抗原のエピトープへの結合に関与する。免疫複合体は、抗原に特異的に結合した抗体(モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体、あるいは機能性抗体フラグメントなど)の抗体である。
「キメラ抗体」は、異なる種に属する免疫グロブリン可変領域および定常領域遺伝子から一般に遺伝子工学によって軽鎖および重鎖遺伝子が構築された抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントをκ、γ1またはγ3などのヒトの定常セグメントに連結することができる。したがって、一例では、治療用キメラ抗体はマウス抗体由来の可変ドメインすなわち抗原結合ドメインとヒト抗体由来の定常ドメインすなわちエフェクタードメインからなるハイブリッドタンパク質であり(ただし他の哺乳動物種も使用できる)、あるいは可変領域を分子技術で作製することができる。キメラ抗体を作製する方法は当技術分野で周知である(例えば米国特許第5,807,715号を参照のこと)。「ヒト化」免疫グロブリンは、ヒトのフレームワーク領域とヒト以外の(マウス、ラット、または合成の)免疫グロブリン由来の1つ以上のCDRを含む免疫グロブリンである。CDRを提供するヒト以外の免疫グロブリンを「ドナー」と呼び、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンを「アクセプター」と呼ぶ。
本発明の一態様において、ヒト化免疫グロブリンのすべてのCDRはドナー免疫グロブリン由来である。定常領域は存在しなくてもよいが、存在する場合、それらはヒト免疫グロブリンの定常領域と実質的に同一でなければならず、すなわち少なくとも約85~90%(例えば約95%以上)同一でなければならない。したがって、ヒト化免疫グロブリンのすべての部分(おそらくCDRを除く)は天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。
本発明によると「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化免疫グロブリンすなわち抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークから得られるアミノ酸による限られた数の置換を有していてもよい。ヒト化または他のモノクローナル抗体は、抗原結合または他の免疫グロブリン機能に実質的に影響を及ぼさないさらなる保存的アミノ酸置換を有することもできる。保存的置換の例としては、例えばグリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシンが挙げられる。ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子工学によって構築できる(例えば米国特許第5,585,089号を参照のこと)。ヒト抗体は、軽鎖および重鎖遺伝子がヒトに由来する抗体である。ヒト抗体は当技術分野で公知の方法を用いて生成できる。ヒト抗体は、目的の抗体を分泌するヒトB細胞を不死化することによって作製できる。例えば、EBV感染によって、またはヒトB細胞を骨髄腫細胞またはハイブリドーマ細胞と融合させてトリオーマ細胞を作製することによって不死化を達成できる。ヒト抗体は、ファージ提示法で作製されてもよく(例えば、Dower et al., PCT Publication No. WO 91/17271; McCafferty et al., PCT Publication No. WO 92/001047; and Winter, PCT公開公報No. WO 92/20791を参照のこと)、あるいはヒト組み換えモノクローナル抗体ライブラリー(MorphoSysのウェブサイトを参照のこと)から選択されてもよい。ヒト免疫グロブリン遺伝子をもつ遺伝子導入動物を用いてヒト抗体を作製することもできる(例えば、Lonberg et al., PCT Publication No. WO 93/12227; and Kucherlapati, PCT公開公報WO 91/10741を参照のこと)。
したがって、本発明による抗DPP3抗体または抗DPP3抗体フラグメントは、当技術分野で公知の型を有していてもよい。例としては、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体またはその抗体フラグメントである、これだけに限定されるものではない。
モノクローナル抗体
本発明の具体的な実施形態において、抗DPP3抗体は、モノクローナル抗体またはそのフラグメントである。本発明の一実施形態において、抗DPP3抗体または抗DPP3抗体フラグメントは、ヒトまたはヒト化抗体またはそれらから誘導されたものである。具体的な一実施形態において、1もしくは複数の(マウス)CDRが、ヒト抗体または抗体フラグメント内に移植される。
好ましい態様において、本発明による抗体は、例えば典型的な全長免疫グロブリンであるIgGとして、または重鎖および/または軽鎖の少なくともFvドメインを含む抗体フラグメント(例えば化学結合された抗体(抗原結合フラグメント))として、組換えによって作製された抗体である。そのような抗体フラグメントとしては、Fab低分子化抗体(minibody)、単鎖Fab抗体、エピトープタグを有する一価のFab抗体(例えばFab-V5Sx2)などのFabフラグメント;CH3ドメインと二量体化された二価のFab(ミニ抗体);例えば異種のドメインを用いた多量体化によって(例えばdHLXドメインの二量体化によって)作製された二価のFabまたは多価のFab(例えばFab-dHLX-FSx2);例えばG以外のクラスに由来するF(ab’)2フラグメント、scFvフラグメント、多量体化された多価および/または多重特異性のscFvフラグメント、二価および/または二重特異性の二特異性抗体、BITE(登録商標)(二重特異性T細胞結合体(engager))、三機能性抗体、多価抗体;単一ドメイン抗体(例えば、ラクダまたは魚の免疫グロブリンに由来するナノ抗体(nanobody));ならびに他の多くのものが挙げられる。
非Ig足場
抗DPP3抗体または抗DPP3抗体フラグメントに加え、他の生体高分子足場、いわゆる非Ig足場が標的分子と複合することが当技術分野で周知であり、標的への特異性の高い生体高分子を作製するのに用いられている。例としては、アプタマー、シュピーゲルマー(spiegelmer)、アンチカリン類(anticalin)、およびコノトキシン類が挙げられる。
非Ig足場は、タンパク質足場であってもよく、それらはリガンドまたは抗原に結合できるため、抗体模倣物として用いられてもよい。非Ig足場は、テトラネクチンに基づく非Ig足場(例えば、US2010/0028995に記載);フィブロネクチン足場(例えば、EP1266025に記載);リポカリンに基づく足場(例えば、WO2011/154420に記載);ユビキチン足場(例えば、WO2011/073214に記載)、トランスフェリン足場(例えば、US2004/0023334に記載)、プロテインA足場(例えば、EP2231860に記載)、アンキリン反復に基づく足場(例えば、WO2010/060748に記載)、マイクロタンパク質(システインノットを形成するマイクロタンパク質が好ましい)足場(例えば、EP2314308に記載)、Fyn SH3ドメインに基づく足場(例えば、WO2011/023685に記載)、EGFR-Aドメインに基づく足場(例えば、WO2005/040229に記載)、およびKunitzドメインに基づく足場(例えば、EP1941867に記載)を含む群から選択されてもよい。非Ig足場は、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドアプタマーであってもよい。アプタマーは通常、それらを大規模なランダム配列プールから選択することによって作製され、オリゴヌクレオチド(DNA、RNA、またはXNA)の短鎖(Xu et al. 2010, Deng et al. 2014)またはタンパク質足場に結合された短い可変ペプチドドメインである(Li et al. 2011)。
フラグメントおよび融合タンパク質
別の態様において、抗DPP3抗体の型は、Fvフラグメント、scFvフラグメント、Fabフラグメント、scFabフラグメント、F(ab)2フラグメント、およびscFv-Fc融合タンパク質を含む群から選択される。別の好ましい態様において、抗体の型は、scFabフラグメント、Fabフラグメント、scFvフラグメント、および生体利用度が最適化されたそれらの複合体(PEG化フラグメント)を含む群から選択される。
モノクローナル/ポリクローナル抗体
本発明の内容に関連して、「抗体」という用語は一般に、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびにそれらの結合性フラグメント(特にFcフラグメントやいわゆる「単鎖抗体」(Bird et al. 1988))、キメラ抗体、ヒト化抗体(特にCDR移植抗体)、二重または四重特異性抗体(Holliger et al. 1993)を包含する。例えばファージ提示法などの技術によって選択される、試
料に含まれる目的の分子に特異的に結合する免疫グロブリン様タンパク質も包含される。これに関連し、「特異的結合」という用語は、目的の分子またはそのフラグメントに対する抗体を指す。抗体は、目的の分子またはその前記フラグメントに対する親和性がその目的分子を含有する試料に含まれている他の分子に対する親和性の好ましくは少なくとも50倍、より好ましくは100倍、最も好ましくは少なくとも1000倍である場合に特異的であると考えられる。抗体を作製する方法および所与の特異性を有する抗体を選択する方法は当技術分野で周知である。
本発明の具体的な実施形態において、配列番号2によるエピトープ(ここで、前記エピトープはDPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる)に結合する前記抗DPP3抗体または抗DPP3抗体フラグメントは、モノクローナル抗体またはそのモノクローナル抗体フラグメントである。本発明の一実施形態において、配列番号2によるエピトープ(ここで、前記エピトープはDPP3タンパク質または機能性誘導体に含まれる)に結合する抗DPP3抗体または抗DPP3抗体フラグメントは、ヒトまたはヒト化抗体またはそれらからの誘導体、あるいはヒト化抗体フラグメントまたはそれらからの誘導体である。
一実施形態において、1もしくは複数の(マウス)CDRがヒト抗体または抗体フラグメント内にに移植される。
修飾された抗DPP3抗体
具体的な実施形態において、本発明の前記DPP3バインダー、具体的には、前記抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場は、修飾されたDPP3バインダー、抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場である。
本発明の修飾されたDPP3バインダー、抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場は、阻害的に作用し、DPP3の阻害を検出および計測するための先に記載した方法によって測定される;すなわち、DPP‐3の生理活性に対するDPP3バインダーの影響を計測するとき、ほぼ100%、好ましくは少なくとも90%超、より好ましくは少なくとも80、70、60、50、40、30、20、または10%DPP3の生理活性を遮断し得る。
別の具体的な実施形態において、本発明の修飾されたDPP3バインダー、抗DPP3抗体、抗DPP3、抗体フラグメント、抗DPP3非Ig足場は、上方制御するように作用し、DPP3の阻害を検出および計測するための先に記載した方法によって測定されるとき;すなわち、DPP‐3の生理活性に対するDPP3バインダーの影響を計測するとき、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%超、より好ましくは少なくとも70%超、より好ましくは少なくとも80%超、より一層好ましくは少なくとも90%超、そしてより一層非常に好ましくは少なくとも95%DPP3の生理活性を高め得る。
抗DPP3抗体の合成
本発明による抗DPP3抗体を以下のとおり合成し得る。
免疫用のDPP3ペプチドを合成した(以下の表3参照)(JPT Technologies, Berlin, Germany)。ペプチドをウシ血清アルブミン(BSA)と結合するため、N末端にシステイン残基を追加した(選択されたDPP3配列にシステインが存在しない場合)。SulfoLink-Coupling Gel(Perbio-science, Bonn, Germany)を用いてペプチドをBSAに共有結合した。カップリング手順はPerbio社の説明書に従って実行された。組換えGST-hDPP3はUSBio製であった。
Balb/cマウスにGST-hDPP3またはDPP3ペプチド-BSA結合体を、0日目にそれぞれ84μgと100μg(TiterMax Gold Adjuvantで乳化)、14日目にそれぞれ84μgと100μg(フロイント完全アジュバントで乳化)、21日目と28日目にそれぞれ42μgと50μg(フロイント不完全アジュバントに溶解)、腹腔内(i.p.)注射した。49日目、生理食塩水に溶解したGST-hDPP3(42μg)またはDPP3ペプチド-BSA結合体(50μg)を動物に静脈内(i.v.)注射した。3日後、マウスを屠殺し、免疫細胞融合を行った。
免疫マウス由来の脾細胞と骨髄腫細胞株SP2/0の細胞を、50%ポリエチレングリコール1mlを用いて37℃にて30秒かけて融合させた。洗浄後、細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種した。HAT培地[20%ウシ胎仔血清およびHAT-Supplementを補充したRPMI 1640培地]で増殖させることによってハイブリッドクローンを選択した。1週間後、HAT培地をHT培地に替えて3回継代培養した後、通常の細胞培地に戻した。
融合の2週間後、まずIgG抗体に結合する組換えDPP3について細胞培養液上清をスクリーニングした。したがって、組換えGSTタグ付きDPP3(USBiologicals, Salem, USA)を96ウェルプレート(100ng/ウェル)に固定化し、50μl/ウェルの細胞培養液上清と共に室温で2時間保温した。プレートを洗浄した後、50μl/ウェルのPOD-ウサギ抗マウスIgGを添加し、室温で1時間保温した。
次の洗浄ステップの後、50μlの色素原溶液(3.7mMのo-フェニレンジアミンを[クエン酸塩/リン酸水素塩バッファー、0.012%H2O2]に溶解した液)を各ウェルに添加し、室温で15分間保温し、4Nの硫酸50μlを添加することにより発色反応を停止した。490mmで吸収を検出した。
陽性の試験微生物培養液を増殖のために24ウェルプレートに移した。再試験の後、選択された培養液を限界希釈法でクローン化および再クローン化し、アイソタイプを決定し
た。
GSTタグ付きヒトDPP3またはDPP3ペプチドに対する抗体を標準的な抗体作製方法(Marx et al., 1997)で作製し、プロテインAで精製した。抗体純度は、SDSゲル電気泳動分析に基づいて90%以上であった。
マウス抗体のヒト化
マウス抗体のヒト化は以下の手順で行われてもよい:
マウス由来の抗体をヒト化するには、フレームワーク領域(FR)および相補性決定領域(CDR)と抗原の構造的相互作用について抗体配列を解析する。構造モデリングに基づき、適切なヒト由来FRを選択し、そのヒトFRにマウスCDR配列を移植する。CDRまたはFRのアミノ酸配列に多様性を導入して、FR配列に関する種の転換によって消失した構造的相互作用を回復させてもよい。この構造的相互作用の回復は、ファージ提示ライブラリーを用いたランダムな手法で達成されてもよく、分子モデリングによって導かれる直接的な手法で達成されてもよい(Almagro JC, Fransson J., 2008. Humanization of antibodies. Front Biosci. 2008 Jan 1;13:1619-33)。
CDR移植抗体
本発明の他の態様において、提供する内容は、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するヒトCDR移植抗DPP3抗体またはその抗DPP3抗体フラグメントであり、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、かつ、ここで、前記ヒトCDR移植抗DPP3抗体またはその抗DPP3抗体フラグメントは、以下の:
配列番号5
を含む抗体重鎖可変領域(H鎖)を含み、および/または以下の:
配列番号6
を含む抗体軽鎖可変領域(L鎖)を更に含む。
別の態様における本発明の更なる内容は、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するヒトCDR移植抗DPP3抗体またはその抗DPP3抗体フラグメントであり、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、かつ、ここで、前記ヒトCDR移植抗DPP3抗体またはその抗DPP3抗体フラグメントは、以下の:
配列番号12
を含む抗体重鎖可変領域(H鎖)を含み、および/または以下の:
配列番号13
を含む抗体軽鎖可変領域(L鎖)を更に含む。
本発明の具体的な一実施形態において、本発明の内容は、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するヒトモノクローナル抗DPP3抗体またはそのモノクローナル抗DPP3抗体フラグメントであり、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、かつ、ここで、その重鎖は、以下の:
配列番号7、配列番号8または配列番号9
のうちの少なくとも1つのCDRを含み、およびここで、その軽鎖は、以下の:
配列番号8、KVSまたは配列番号11
のうちの少なくとも1つのCDRを含む。
先の文脈に関連して、可変領域は、定常領域の任意のサブクラスに接続されても(IgG、IgM、IgE、IgA)、または足場、Fabフラグメント、Fv、FabおよびF(ab)2のみに接続されてもよい。以下の実施例3では、IgG2a骨格を有するマウス抗体変異体が使用された。キメラ化およびヒト化のために、ヒトIgG1κ骨格が使用された。
エピトープ結合
エピトープ結合のために、相補性決定領域(CDR)のみが重要である。本発明のマウス抗DPP3抗体(AK1967)の重鎖および軽鎖のCDRは、重鎖に関して配列番号7、配列番号8および配列番号9、そして、軽鎖に関しては配列番号10、配列KVSおよび配列番号11に示されている。
エピトープ結合部位
本発明によると、本明細書中に提供するDPP3バインダー、具体的には、本明細書中に提供する抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントおよび抗DPP3非Ig足場は、配列番号1に指向され、そしてそれに結合し、かつ、ここで、前記DPP3バインダー、抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントおよび抗DPP3非Ig足場は、前記配列番号1の少なくとも3のaa、好ましくは少なくとも4つのaa、より好ましくは少なくとも5つのaa、より一層好ましくは少なくとも6つのaaを認識し、そしてそれに結合する。
本発明によると、本明細書中に提供するDPP3バインダー、具体的には、本明細書中に提供する抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントおよび抗DPP3非Ig足場は、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、かつ、ここで、前記DPP3バインダー、抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントおよび抗DPP3非Ig足場は、配列番号2の少なくとも3つのaa、好ましくは少なくとも4つのaa、より好ましくは少なくとも5つのaa、より一層好ましくは少なくとも6つのaaを認識し、そしてそれに結合する。
本発明の他の態様において、本明細書中に提供するDPP3バインダー、具体的には、本明細書中に提供する抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントおよび抗DPP3非Ig足場は、配列番号3によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、かつ、配列番号3による前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、およびここで、前記DPP3バインダー、抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントおよび抗DPP3非Ig足場は、配列番号3の少なくとも3つのaa、好ましくは少なくとも4つのaa、より好ましくは少なくとも5つのaa、より一層好ましくは6つのaaを認識し、そしてそれに結合する。
本発明の他の態様において、本明細書中に提供するDPP3バインダー、具体的には、本明細書中に提供する抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントおよび抗DPP3非Ig足場は、配列番号4によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、かつ、ここで、配列番号4による前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、および、ここで、前記DPP3バインダー、抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントおよび抗DPP3非Ig足場は、配列番号4の少なくとも3つのaa、好ましくは4つのaaを認識し、そしてそれに結合する。
DPP3の生理活性の阻害剤またはエフェクター
本発明の具体的な実施形態において、配列番号2によるエピトープ(ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる)に指向され、そしてそれに結合する、本明細書中に提供するDPP3バインダー、具体的には、本明細書中に提供する抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントおよび非Igの抗DPP3足場は、DPP3の生理活性の阻害剤またはエフェクターとして機能し得る。
よって、配列番号2によるエピトープ(ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる)に指向され、そしてそれに結合する、本明細書中に提供するDPP3バインダー、具体的には、本明細書中に提供する抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントおよび非Igの抗DPP3足場は、患者の疾患または急性病態の予防または治療において有用であり、ここで、前記疾患または急性病態は、本発明による酸化ストレスに関連する。
親和性
本発明の具体的な実施形態において、配列番号2によるエピトープ(ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる)に指向され、そしてそれに結合する、本明細書中に提供するDPP3バインダー、具体的には、本明細書中に提供する抗DPP3抗体、抗DPP3抗体フラグメントおよび非Igの抗DPP3足場は、先に記載のとおり配列番号2の配列によるエピトープに対する本発明のDPP3バインダーの結合親和力を計測する方法によって測定したときに、親和定数が少なくとも10‐7M‐1、好ましくは少なくとも10‐8M‐1であるようなDPP3に対する親和性を示し、より好ましくは親和定数は、少なくとも10‐9M‐1であり、最も好ましくは親和定数は少なくとも10‐10M‐1である。
その結果、当業者は、より高用量のバインダーを適用することによって低い親和性を代償し得ることを知っている;例えば、本発明の抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場、ならびにこの計測は、本発明の範囲外に導くものではない。
薬剤の併用
本発明の別の実施形態において、本明細書中に提供するDPP3バインダー、具体的には、本明細書中に提供する抗DPP3抗体もしくはその抗DPP3抗体フラグメント、または抗DPP3非Ig足場は、副作用として酸化ストレスを引き起こす少なくとも1つの追加薬物と組み合わせて使用され得る。
斯かる薬物は、原発病の予防または治療における使用のための一次薬剤として投与され、かつ、抗生物質(例えば、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン)、抗ウイルス薬(例えば、アシクロビル、ホスカルネット)または抗真菌薬(例えば、アンフォテセリンB)のような抗微生物薬、鎮痛剤、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン)、利尿剤、プロトンポンプ阻害薬、化学療法剤(例えば、シスプラチン)、造影剤、ACE阻害薬またはスタチンのような心血管作用薬、抗鬱剤、免疫抑制薬(例えば、シクロスポリンA)、ならびに抗ヒスタミン剤を含む群から選択され得る。その結果、かつ、本発明によると、DPP3に結合する、本明細書中に提供するDPP3バインダー、具体的には、本明細書中に提供する抗DPP3抗体もしくはその抗DPP3抗体フラグメント、またはDPP3非Ig足場は、二次疾患としての誘発された酸化ストレスおよび結果として生じる毒性の予防または治療において、組み合わせた状態でまたは単独の薬物として二次薬剤として使用され得る。
選択的/特異的バインダー
本発明の好ましい実施形態において、本明細書中に提供するDPP3バインダーは、医薬的に許容され、(DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる)配列番号2によるエピトープに対して選択的および/または特異的である。
本発明のより好ましい実施形態において、本明細書中に提供するDPP3バインダーは、
医薬的に許容され、(DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる)配列番号2によるエピトープに対して選択的および/または特異的な阻害バインダーである。
本発明の一態様において、DPP3の選択的/特異的阻害剤は、他のタンパク質/ペプチド/酵素に結合しないか、または他のタンパク質/ペプチド/酵素に結合されず、かつ、DPP3以外のその他の酵素/プロテアーゼ/ペプチダーゼを阻害しない。そのため、本発明の内容に関連して、DPP3生理活性の好ましい阻害剤は、DPP3に結合する特定の抗DPP3抗体、抗体フラグメントまたは非Ig足場である。
単一特異性抗体
本発明の内容に関連して、単一特異性抗DPP3抗体もしくは単一特異性抗DPP3抗体フラグメントまたは単一特異性抗DPP3非Ig足場は、標的DPP3内の少なくとも3つのアミノ酸、好ましくは少なくとも4つのaaを包含する1つの特定の領域に特異的に結合する前記抗体もしくは抗体フラグメントまたは非Ig足場である。
本発明の内容に関連して、単一特異性抗DPP3抗体もしくは単一特異性抗DPP3抗体フラグメントまたは単一特異性抗DPP3非Ig足場は、本発明による(DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる)配列番号2によるエピトープである標的と同じ抗原に対してすべてが親和性を有する抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場である。
別の具体的な実施形態において、単一特異性抗DPP3抗体も単一特異性抗DPP3抗体フラグメントまたは単一特異性抗DPP3非Ig足場は、本発明による(DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる)配列番号3によるエピトープである標的と同じ抗原に対してすべてが親和性を有する抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場である。
別の実施形態において、単一特異性抗DPP3抗体もしくは単一特異性抗DPP3抗体フラグメントまたは単一特異性抗DPP3非Ig足場は、本発明による(DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれる)配列番号4によるエピトープである標的と同じ抗原に対してすべてが親和性を有する抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場である。
単一特異性抗体はまた、一般的な生殖細胞からのそれらの製造以外の手段によって製造されてもよい。
先の文脈に関連して、本発明の範囲内の更に好ましい実施形態を以下に連続して付番する:
1.
配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、そして、ここで、前記バインダーは、配列番号2のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合し、かつ、ここで、前記エピトープは、配列番号1で含まれ、そしてそれは、DPP3のアミノ酸配列に対応する。
2.
実施形態1に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記バインダーは、配列番号3によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、かつ、ここで、前記バインダーは、配列番号3のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合し、およびここで、前記エピトープは、配列番号1で含まれ、そしてそれは、DPP3のアミノ酸配列に対応する。
3.
実施形態1または実施形態2に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記バインダーは、配列番号4によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、かつ、ここで、前記バインダーは、配列番号4のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合し、およびここで、前記エピトープは、配列番号1で含まれ、そしてそれは、DPP3のアミノ酸配列に対応する。
4.
実施形態1~3のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記バインダーは、抗体もしくは抗体フラグメントまたは非Ig足場を含む群から選択され、およびここで、前記エピトープは、配列番号1で含まれ、そしてそれは、DPP3のアミノ酸配列に対応する。
5.
実施形態1~4のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記バインダーは、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3(DPP3)バインダーであり、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、およびここで、前記DPP3バインダーは、配列番号2のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する。
6.
実施形態1~5のいずれか1項に記載の、配列番号2よるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記バインダーは、モノクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体フラグメントであり、およびここで、重鎖の相補性決定領域(CDR)が以下の配列:
配列番号7、配列番号8、および/または配列番号9
を含み、かつ、軽鎖の相補性決定領域が以下の配列:
配列番号10、KVSおよび/または配列番号11
を含む。
7.
実施形態1~6のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記バインダーは、ヒトモノクローナル抗体またはヒトモノクローナル抗体フラグメントであり、ここで、重鎖が以下の配列:
配列番号12
を含み、かつ、ここで、軽鎖が以下の配列:
配列番号13
を含む。
8.
実施形態1~7のいずれか1項に記載の、患者の疾患または急性病態の治療または予防における使用のための、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態は、酸化ストレスに関連する。
9.
患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、実施形態8に記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記疾患は、神経変性疾患、メタボリックシンドローム、心血管疾患、自己免疫疾患、炎症性肺疾患、腎疾患、肝疾患、消化器系疾患、ウイルス感染症、癌、炎症、敗血症、敗血症ショック、およびSIRSを含む群から選択される。
10.
患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、前記疾患または急性病態が、実施形態8または9に記載の酸化ストレスに関連し、およびここで、以下のとおり:
・前記神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および多発性硬化症(MS)を含む群から選択されてもよく、
・前記メタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性、肥満、高血糖、脂質異常症、高血圧、および糖尿病を含む群から選択されてもよく、
・前記心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心不全、心血管虚血、脳虚血損傷、脳卒中、および心筋梗塞を含む群から選択されてもよく、
・前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスを含む群から選択されてもよく、
・前記炎症性肺疾患は、COPD、喘息を含む群から選択されてもよく、
・前記腎疾患は、急性腎傷害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、糖尿病性腎症、末期腎不全(ESRD)を含む群から選択されてもよく、
・前記肝疾患は、ウイルス性肝炎、および肝硬変を含む群から選択されてもよく、
・前記消化器系疾患は、炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、胃炎、膵炎および消化性潰瘍を含む群から選択されてもよく、
・前記ウイルス感染症は、血液由来肝炎ウイルス(B、C、およびD型)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザA型、エプスタイン‐バーウイルス、呼吸系合胞体ウイルスを含む群から選択されてもよく、
・前記癌は、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膀胱癌、卵巣癌、皮膚癌、胃癌、肝臓癌を含む群から選択されてもよく、
・前記炎症、ならびに
・前記敗血症、前記敗血症ショック、および前記SIRS、
である。
11.
患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態は、実施形態8~10のいずれか1項に記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記疾患は、敗血症、敗血症ショック、およびSIRSを含む群から選択される。
12.
患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態は、実施形態8に記載の酸化ストレスに関連し、、ここで、前記急性病態は、腎毒性および肝毒性を含む群から選択される。
13.
患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態は、実施形態8~12のいずれか1項に記載の酸化ストレスに関連し、ここで、バインダーは、配列番号2によるエピトープに結合する抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場であり、およびここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、そして、ここで、前記抗DPP3抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場は、少なくとも10‐7MのDPP3に対する結合親和力を示す。
14.
患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態は、実施形態8および12のいずれか1項に記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記急性病態は、薬物誘発性肝毒性またはアルコール誘発肝毒性である。
15.
患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態は、実施形態8に記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記急性病態は、薬物誘発性腎毒性である腎毒性である。
16.
患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態は、実施形態8~11のいずれか1項に記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記疾患は、心筋の酸化ストレスに関連する。
17.
患者の疾患または急性病態の治療または予防における(前記疾患または急性病態が、酸化ストレスに関連することによる)使用のための、実施形態1~7のいずれか1項に記載のバインダーを含む医薬組成物。
18.
実施形態1~16のいずれか1項に記載のバインダーを含むキット。
19.
患者の疾患または急性病態の治療または予防における使用のための、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に指向され、そしてそれに結合するバインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態は、酸化ストレスに関連する。
20.
患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のためのバインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、実施形態19に記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記疾患は、神経変性疾患、メタボリックシンドローム、心血管疾患、自己免疫疾患、炎症性肺疾患、腎疾患、肝疾患、消化器系疾患、ウイルス感染症、癌、炎症、敗血症、敗血症ショック、およびSIRSを含む群から選択される。
21.
患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のためのバインダーであって、前記疾患または急性病態が、実施形態19または20のいずれかに記載の酸化ストレスに関連し、およびここで、以下のとおり:
・前記神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および多発性硬化症(MS)を含む群から選択されてもよく、
・前記メタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性、肥満、高血糖、脂質異常症、高血圧、および糖尿病を含む群から選択されてもよく、
・前記心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心不全、心血管虚血、脳虚血損傷、脳卒中、および心筋梗塞を含む群から選択されてもよく、
・前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスを含む群から選択されてもよく、
・前記炎症性肺疾患は、COPD、喘息を含む群から選択されてもよく、
・前記腎疾患は、急性腎傷害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、糖尿病性腎症、末期腎不全(ESRD)を含む群から選択されてもよく、
・前記肝疾患は、ウイルス性肝炎、および肝硬変を含む群から選択されてもよく、
・前記消化器系疾患は、炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、胃炎、膵炎および消化性潰瘍を含む群から選択されてもよく、
・前記ウイルス感染症は、血液由来肝炎ウイルス(B、C、およびD型)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザA型、エプスタイン‐バーウイルス、呼吸系合胞体ウイルスを含む群から選択されてもよく、
・前記癌は、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膀胱癌、卵巣癌、皮膚癌、胃癌、肝臓癌を含む群から選択されてもよく、
・前記炎症、ならびに
・前記敗血症、前記敗血症ショック、および前記SIRS、
である。
22.
実施形態19~21のいずれか1項に記載のバインダーであって、ここで、前記バインダーは、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、かつ、ここで、前記バインダーは、配列番号2のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する。
23.
実施形態19~22のいずれか1項に記載のバインダーであって、ここで、前記バインダーは、配列番号3によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、かつ、ここで、前記バインダーは、配列番号3のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する。
24.
実施形態19~23のいずれか1項に記載のバインダーであって、ここで、前記バインダーは、配列番号4によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、かつ、ここで、前記DPP3バインダーは、配列番号4のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する。
25.
実施形態19~24のいずれか1項に記載のバインダーであって、ここで、前記バインダーは、抗体もしくは抗体フラグメントまたは非Ig足場を含む群から選択される。
26.
実施形態19~25のいずれか1項に記載のバインダーであって、ここで、前記バインダーは、モノクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体フラグメントであり、およびここで、重鎖の相補性決定領域(CDR)が以下の配列:
配列番号7、配列番号8、および/または配列番号9
を含み、かつ、軽鎖の相補性決定領域が以下の配列:
配列番号10、KVSおよび/または配列番号11
を含む。
27.
実施形態19~26のいずれか1項に記載のバインダーであって、ここで、前記バインダーは、ヒト化モノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体フラグメントであり、ここで、重鎖が以下の配列:
配列番号12
を含み、かつ、ここで、軽鎖が以下の配列:
配列番号13
を含む。
28.
実施形態19~27のいずれか1項に記載のバインダーであって、ここで、前記バインダーは、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3(DPP3)バインダーであり、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、およびここで、前記DPP3バインダーは、配列番号2のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する。
定義
本発明によると、「DPP3バインダー」は、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、およびここで、前記DPP3バインダーは、配列番号2のうちの少なくとも3つのaaまたは配列番号3または4に記載のそれぞれのその部分配列を認識し、そしてそれに結合する。
本発明によると、DPP3バインダーは、好ましくは、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合する、抗DPP3抗体、もしくは抗DPP3抗体フラグメント、または抗DPP3非Ig足場であり、ここで、前記エピトープは、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に含まれ、およびここで、前記DPP3バインダーは、配列番号2のうちの少なくとも3つaaまたは配列番号3または4によるそれぞれのその部分配列を認識し、そしてそれに結合する。
本発明の内容に関連して、DPP3タンパク質の「機能性誘導体」は、aaの欠失、aaの付加または特定のaaの変更によって配列番号1の配列と異なるが、天然DPP3タンパク質の生理活性と機能を維持するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を意味する。その結果、配列番号1の修飾のため、生理活性と機能は、ある程度影響され得るが、DDP3によって触媒される酵素的プロテアーゼ反応は、先に記載のまたは当業者によって一般的に知られている好適な生理活性アッセイによってアッセイするとき、依然として維持されている。
当業者は、ジペプチジルペプチダーゼ3(DPP3)抗体もしくは抗DPP3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場が、ジペプチジルペプチダーゼ3(DPP3)抗体もしくはジペプチジルペプチダーゼ3抗体フラグメントまたはDPP3非Ig足場と同義であることを理解しており、かつ、それぞれ、DPP3に結合する抗ジペプチジルペプチダーゼ3(DPP3)抗体もしくは抗ジペプチジルペプチダーゼ3抗体フラグメントまたは抗DPP3非Ig足場を意味する。
文章を通じて、「抗体」という用語は一般に、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびにそれらの結合性フラグメント(特にFcフラグメントやいわゆる「単鎖抗体」(Bird et al. 1988))、キメラ抗体、ヒト化抗体(特にCDR移植抗体)、二重または四重特異性抗体(Holliger et al. 1993)を包含する。例えばファージ提示法などの技術によって選択される、試料に含まれる目的の分子に特異的に結合する免疫グロブリン様タンパク質も包含される。
これに関連して、「特異的結合」という用語は、目的の分子またはそのフラグメントに対する抗体を指す。抗体は、目的の分子またはその前記フラグメントに対する親和性がその目的分子を含有する試料に含まれている他の分子に対する親和性の好ましくは少なくとも50倍、より好ましくは100倍、最も好ましくは少なくとも1000倍である場合に特異的であると考えられる。抗体を作製する方法および所与の特異性を有する抗体を選択する方法は当技術分野で周知である。
「酸化ストレスに関連する疾患」としては、本発明の内容に関連して、これだけに限定されるものではないが、神経変性疾患、メタボリックシンドローム、心血管疾患、自己免疫疾患、炎症性肺疾患、腎疾患、肝疾患、消化器系疾患、ウイルス感染症、癌、および炎症、敗血症、敗血症ショック、SIRSが挙げられる。
本発明の内容に関連して、神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および多発性硬化症(MS)を含む。
本発明の内容に関連して、メタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性、肥満、高血糖、脂質異常症、高血圧、および糖尿病を含む。
本発明の内容に関連して、心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心不全、心血管虚血、脳虚血損傷/脳卒中、および心筋梗塞を含む。
本発明の内容に関連して、自己免疫疾患は、関節リウマチおよび全身性エリテマトーデスを含む。
本発明の内容に関連して、炎症性肺疾患は、COPDおよび喘息を含む。
本発明の内容に関連して、腎疾患は、急性腎傷害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、糖尿病性腎症および末期腎不全(ESRD)を含む。
本発明の内容に関連して、肝疾患は、ウイルス性肝炎、および肝硬変を含む。
本発明の内容に関連して、消化器系疾患は、炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病;胃炎、膵炎および消化性潰瘍を含む。これに関連して、ウイルス感染症は、血液由来肝炎ウイルス(B、C、およびD型)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザA型、エプスタイン‐バーウイルスおよび呼吸系合胞体ウイルスを含む。
本発明の内容に関連して、癌は、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膀胱癌、卵巣癌、皮膚癌、胃癌および肝臓癌を含む。
「酸化ストレスに関連する急性病態」は、本発明の内容に関連して、酸化ストレスの発生に起因して発症、変化、または急速に悪化する症状を意味する。酸化ストレスに関連する急性病態は、発生が突然である。酸化ストレスに関連する急性病態は、未処置であれば、慢性症候群につながり得る。
対照的に、「慢性病態」または「慢性症候群」はそれぞれ、本発明の内容に関連して、長期間にわたって発症および悪化し、そして、治療されたとしても持続し得る病態または症状を意味する。
酸化ストレスは、フリーラジカルの過度生成に有利となる、反応性酸素種(ROS)/反応性窒素種(RNS)の全体的な発現と抗酸化物質との間の不均衡を反映する。このプロセスは、その生物学的機能の喪失および/または恒常性の不均衡を伴う生体分子の酸化につながり、そしてその発現は細胞および組織への潜在的な酸化損傷である。ROS/RNSの蓄積は、例えば、過酸化脂質や、タンパク質酸化や、DNA損傷(塩基損傷および鎖破壊を含む)などの多くの有害な影響をもたらす。さらに、いくつかの反応性酸化種は、酸化還元シグナル伝達における細胞メッセンジャーとして機能する。よって、酸化ストレスは、細胞シグナル伝達の正常な機構の破壊を引き起こす可能性がある。
「フリーラジカル」とは、本発明の内容に関連して、その外殻に1もしくは複数の不対電子を有する分子である。フリーラジカルは、各フラグメントが別のラジカルを生じるようなラジカルの切断によって、1つの電子を保持するような化学結合の破壊によって分子から形成され、そしてまた、酸化還元反応によっても形成される。酸化ストレスに関連するフリーラジカルとしては、ヒドロキシル(OH・)、スーパーオキシド(O2・‐)、一酸化窒素(NO・)、二酸化窒素(NO2・)、ペルオキシル(ROO・)および脂質ペルオキシル(LOO・)が挙げられる。また、過酸化水素(H2O2)、オゾン(O3)、一重項酸素(1O2)、次亜塩素酸(HOCl)、亜硝酸(HNO2)、ペルオキシ亜硝酸(ONOO・)、三酸化二窒素(N2O3)、脂質ペルオキシド(LOOH)は、フリーラジカルでなく、一般的に酸化物質と呼ばれるが、生物において容易にフリーラジカル反応につながり得る。
「一次薬剤」とは、前記疾患または病態の主原因に対して作用する薬剤を意味する。
「二次薬物療法」とは、対症的な方法で患者の病態を改善する薬物療法である;例えば、一次薬剤の投与によって誘発された酸化ストレスを低減または調節する。
本発明の内容に関連して、一般的に「生理活性」とは、その相互作用後に、インビボまたはインビトロにおいて、物質が生物または組織、臓器もしくは機能単位において呈する効果と規定される。
この点に関して、かつ、具体的には、本発明の内容に関連して、DPP3生理活性は、DPP3酵素活性度、または酸化ストレス経路におけるDPP3の活性調節と規定され得る。
Figure 0007424972000004
Figure 0007424972000005
1.実施例1
抗体の作製とDPP3結合能力の定量:数種のマウス抗体を作製し、ヒトDPP3への結合能力によって特異的結合アッセイでスクリーニングした(表3参照)。
1.1.方法:
‐免疫用のペプチド/結合体:
免疫用のDPP3ペプチドを合成した(以下の表3参照)(JPT Technologies, Berlin, Germany)。ペプチドをウシ血清アルブミン(BSA)と結合するため、N末端にシステイン残基を追加した(選択されたDPP3配列にシステインが存在しない場合)。SulfoLink-Coupling Gel(Perbio-science, Bonn, Germany)を用いてペプチドをBSAに共有結合した。カップリング手順はPerbio社の説明書に従って実行された。組換えGST-hDPP3はUSBio製であった(United States Biological, Salem, MA, USA)。
マウスの免疫化、免疫細胞融合およびスクリーニング
Balb/cマウスにGST-hDPP3またはDPP3ペプチド-BSA結合体を、0日目にそれぞれ84μgと100μg(TiterMax Gold Adjuvantで乳化)、14日目にそれぞれ84μgと100μg(フロイント完全アジュバントで乳化)、21日目と28日目にそれぞれ42μgと50μg(フロイント不完全アジュバントに溶解)、腹腔内(i.p.)注射した。49日目、生理食塩水に溶解したGST-hDPP3(42μg)またはDPP3ペプチド-BSA結合体(50μg)を動物に静脈内(i.v.)注射した。3日後、マウスを屠殺し、免疫細胞融合を行った。
免疫マウス由来の脾細胞と骨髄腫細胞株SP2/0の細胞を、50%ポリエチレングリコール1mlを用いて37℃にて30秒かけて融合させた。洗浄後、細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種した。HAT培地[20%ウシ胎仔血清およびHAT-Supplementを補充したRPMI 1640培地]で増殖させることによってハイブリッドクローンを選択した。1週間後、HAT培地をHT培地に替えて3回継代培養した後、通常の細胞培地に戻した。
融合の2週間後、まずIgG抗体に結合する組換えDPP3について細胞培養液上清をスクリーニングした。したがって、組換えGSTタグ付きDPP3(USBiologicals, Salem, USA)を96ウェルプレート(100ng/ウェル)に固定化し、50μl/ウェルの細胞培養液上清と共に室温で2時間保温した。プレートを洗浄した後、50μl/ウェルのPOD-ウサギ抗マウスIgGを添加し、室温で1時間保温した。次の洗浄ステップの後、50μlの色素原溶液(3.7mMのo-フェニレンジアミンを[クエン酸塩/リン酸水素塩バッファー、0.012%H2O2]に溶解した液)を各ウェルに添加し、室温で15分間保温し、4Nの硫酸50μlを添加することにより発色反応を停止した。490mmで吸収を検出した。陽性の試験微生物培養液を増殖のために24ウェルプレートに移した。再試験の後、選択された培養液を限界希釈法でクローン化および再クローン化し、アイソタイプを決定した。
‐マウスモノクローナル抗体の作製
GSTタグ付きヒトDPP3またはDPP3ペプチドに対する抗体を標準的な抗体作製方法(Marx et al., 1997)で作製し、プロテインAで精製した。抗体純度は、SDSゲル電気泳動分析に基づいて90%以上であった。
‐抗体の特徴づけ‐hDPP3および/または免疫化ペプチドへの結合
様々な抗体および抗体クローンによるDPP3/免疫化ペプチド結合の能力を分析するために、結合アッセイを実施した:
a)固相
遺伝子組み換えGSTタグ付与hDPP3(配列番号1)またはDPP3ペプチド(免疫化ペプチド、配列番号2)を、高結合マイクロタイタープレート表面(96ウェルポリスチレンマイクロプレート、Greiner Bio-One international AG, Austria、カップリングバッファー[50mMのTris、100mMのNaCl、pH7.8]中に1μg/ウェル、RTにて1時間)に固定した。5%のウシ血清アルブミンでのブロッキング後に、そのマイクロプレートを真空乾燥させた。
b)標識手順(トレーサー)
100μg(100μl)の様々な抗DPP3抗体(検出抗体、PBS、pH7.4中に1mg/ml)を、10μlのアクリジニウムNHS‐エステル(アセトニトリル中に1mg/ml、InVent GmbH, Germany; EP 0 353 971)と混合し、そして、室温で30分間インキュベートした。標識抗DPP3抗体を、Shodex Protein 5μm KW‐803(Showa Denko, Japan)を用いてゲル濾過HPLCによって精製した。精製した標識抗体を、アッセイバッファー(50mmol/lのリン酸カリウム、100mmol/lのNaCl、10mmol/lのNa2‐EDTA、5g/lのウシ血清アルブミン、1g/lのマウスIgG、1g/lのウシIgG、50μmol/lのアマスタチン、100μmol/lのロイペプチン、pH7.4)で希釈した。終濃度は、200μlあたり約5~7*106の相対光単位(RLU)の標識化合物(約20ngの標識抗体)であった。アクリジニウムエステル化学発光を、Centro LB960ルミノメータ(Berthold Technologies GmbH&Co. KG)を使用することによって計測した。
c)hDPP3結合アッセイ
そのプレートを、200μlの標識し、希釈した検出抗体(トレーサー)で満たし、2~8℃にて2~4時間インキュベートした。結合していないトレーサーを、350μlの洗浄液(20mMのPBS、pH7.4、0.1%のTriton X‐100)で4回洗浄することによって取り除いた。しっかり結合した化学発光を、Centro LB960ルミノメータ(Berthold Technologies GmbH&Co. KG)を使用することによって計測した。
抗体の特徴づけ-hDPP3阻害アッセイ
様々な抗体および抗体クローンによるDPP3阻害能を分析するために、既知の手順(Jones et al., 1982)でDPP3活性アッセイを行った。組換えGSTタグ付きhDPP3をアッセイバッファーに希釈(25ng/mlのGST-DPP3を[50mMのトリス-HCl(pH7.5)、100μMのZnCl2]に溶解)し、この溶液200μlを各抗体10μgと共に室温で保温した。1時間の前保温の後、蛍光発生基質Arg-Arg-βNA(20μl、2mM)を溶液に添加し、経時的な遊離βNAの生成を37℃でTwinkle LB 970マイクロプレート蛍光光度計(Berthold Technologies GmbH & Co. KG)を用いて監視した。340nmで励起し410nmで発光を測定することにより、βNAの蛍光を検出する。様々な試料の蛍光増加の勾配(RFU/分)を計算する。バッファー(対照)とGST-hDPP3の場合の勾配を活性100%とする。可能性のある捕捉バインダーの阻害能は、前記捕捉バインダーと共に保温することによるGST-hDPP3活性の低下(%)で定義される。
1.2.結果:
以下の表は、得られた抗体の選抜および相対光単位(RLU)でのそれらの結合率、ならびにそれらの相対阻害能(%;表3)を表す。以下に示したDPP3領域に対して得られたモノクローナル抗体を、遺伝子組み換えDPP3および/または免疫化ペプチドを結合するそれらの能力、ならびにそれらの阻害可能性によって選抜した。
GSTタグ付与された、完全長形態の遺伝子組み換えhDPP3に対して得られたすべての抗体が、固定したGSTタグ付与hDPP3に対して強い結合を示した。また、配列番号2のペプチドに対して得られた抗体もGST‐hDPP3に結合する。配列番号2抗体はまた、免疫化ペプチドに強く結合する。それらの抗体を、より詳細に特徴づけした(実施例2を参照のこと)。DPP3活性を70%阻害する能力を有するモノクローナル抗体AK1967を、見込みのある治療用抗体として選抜し、そしてまた、キメラ化やヒト化の鋳型としても使用した。
2.実施例2
配列番号2に対して得られた抗体を、より詳細に特徴づけした(エピトープマッピング、結合親和性、特異性、阻害可能性)。ここでは、配列番号2のクローン1967(「AK1967」)に関する結果を一例として示す。
2.1.方法:
‐DPP3上のAK1967エピトープの決定:
AK1967のエピトープマッピングのために、多くのNまたはC末端ビオチン化ペプチドを合成した(peptides & elephants GmbH, Hennigsdorf, Germany)。これらのペプチドとしては、CまたはN末端のいずれかから1つのアミノ酸を段階的に除去した、完全な免疫化ペプチド(配列番号2)またはそのフラグメントの配列が挙げられる(ペプチドの全リストに関して表5を参照のこと)。
a)固相
高結合96ウェルプレートを、カップリングバッファー(500mMのTris‐HCl、pH7.8、100mMのNaCl)中、1ウェルあたりの2μgのAvidin(Greiner Bio-One international AG, Austria)を用いてコートした。その後、プレートを洗浄し、そして、ビオチン化ペプチドの特定の溶液で満たした(10ng/ウェル;バッファー‐0.5%のBSAを含む1xPBS)。
b)標識手順(トレーサー)
抗DPP3抗体AK1967を、実施例1に従って化学発光標識で標識した。
c)ペプチド結合アッセイ
そのプレートを、200μlの標識し、希釈した検出抗体(トレーサー)で満たし、室温にて4時間インキュベートした。結合していないトレーサーを、350μlの洗浄液(20mMのPBS、pH7.4、0.1%のTriton X‐100)で4回洗浄することによって取り除いた。しっかり結合した化学発光を、Centro LB960ルミノメータ(Berthold Technologies GmbH&Co. KG)を使用することによって計測した。それぞれのペプチドへのAK1967の結合を、相対光単位(RLU)の評価によって決定した。AK1967の非特異的結合より有意に高いRLUシグナルを示すあらゆるペプチドを、AK1967バインダーと規定した。結合および非結合ペプチドの組み合わせ解析では、AK1967の特異的DPP3エピトープが明らかになった。
‐Octetを使用した結合親和力の測定:
実験を、Octet Red96(ForteBio)を使用することで実施した。AK1967を、動態グレードの抗ヒトFc(AHC)バイオセンサ上に捕捉した。次に、仕込まれたバイオセンサを、遺伝子組み換えGSTタグ付与ヒトDPP3の希釈系列中に浸した(100、33.3、11.1、3.7nM)。結合を120秒間観察し、続いて、解離を180秒間観察した。実験に使用したバッファーを表4に示す。動態解析を、1:1結合モデルおよび全体的適合を使用することで実施した。
Figure 0007424972000007
‐AK1967の結合特異性に関するウエスタンブロット分析:
ヒトEDTA血液からの血球細胞を、洗浄し(PBSで3x)、PBSで希釈し、そして、凍結‐融解サイクルを繰り返すことによって溶血させた。血液細胞溶解物は、250μg/mlの総タンパク質量濃度、および1 0μg/mlのDPP3濃度を有した。血球細胞溶解物(1:40、1:80、1:160および1:320)および精製遺伝子組換えヒトHis‐DPP3(31.25~500ng/ml)の希釈物を、SDS‐PAGEおよびウエスタンブロットにかけた。そのブロットを、1)阻害バッファー(5%の脱脂粉乳を含む1xPBS‐T)、2)一次抗体溶液(阻害バッファー中、AK1967 1:2,000)、および3)HRP標識二次抗体(ヤギ抗マウスIgG、阻害バッファー中、1:1,000)中でインキュベートした。結合した二次抗体をAmersham ECL Western Blotting Detection ReagentおよびAmersham Imager 600 UV(両方ともGE Healthcare製)を使用して検出した。
‐DPP3阻害アッセイ:
AK1967によるDPP3阻害能を分析するために、既知の手順(Jones et al., 1982)でDPP3活性アッセイを行った。組換えGSTタグ付きhDPP3をアッセイバッファーに希釈(50mMのトリス-HCl、pH7.5中の25ng/mlのGST-DPP3)し、そして、濃度を高めたAK1967を添加した。蛍光発生基質Arg-Arg-βNAを溶液に添加し、経時的な遊離βNAの生成を37℃でTwinkle LB 970マイクロプレート蛍光光度計(Berthold Technologies GmbH & Co. KG)を用いて監視した。340nmで励起し410nmで発光を測定することにより、βNAの蛍光を検出する。様々な試料の蛍光増加の勾配(RFU/分)を計算する。バッファー(対照)とGST-hDPP3の場合の勾配を活性100%とする。AK1967の阻害能は、前記抗体と共に保温することによるGST-hDPP3活性の低下(%)で定義される。得られたDPP3活性の低下を図1Cの阻害曲線に示す。
2.2.結果:
‐エピトープマッピング:
AK1967が結合するおよび結合しないペプチドの分析は、DPP3配列INPETG(配列番号3)がAK1967結合に必要なエピトープであることを明らかにした(表5を参照のこと)。
‐結合親和力:
AK1967は、2.2*10‐9Mの親和性で遺伝子組み換えGST‐hDPP3に結合する(更なる詳細に関しては表6を参照にこと、動態曲線に関しては図1Aを参照のこと)。
Figure 0007424972000009
‐特異性:
血球細胞の溶解物中で一次抗体としてAK1967と共に検出された唯一のタンパク質が、80kDaのDPP3であった(図1B)。その溶解物の総タンパク質量濃度は250μg/mlであったが、推定DPP3濃度は約10μg/mlである。溶解物中には25倍超の非特異的タンパク質が存在するにもかかわらず、AK1967はDPP3を特異的に結合および検出し、他の非特異的結合は起こさない。
‐阻害可能性:
AK1967は、約15ng/mlのIC50を用いた特定のDPP3活性アッセイにおいて、15ng/mlのDPP3を阻害する(図1C)。
3.実施例3
敗血症性ショックのモデルを用いてラットに心不全を誘発し、心筋における酸化ストレスに対するAK1967の影響を特徴づけた。
3.1.方法:
‐研究設計
研究の流れを以下の図2Aに示す。CLPまたは偽手術の後、動物を自由に水と餌に自由に到達できるようにして20時間休ませた。その後、ラットを麻酔し、気管切開をして動脈・静脈ラインを配置した。CLP手術の24時間後、AK1967または溶媒(生理食塩水)を2mg/kg投与した。安全対策として、循環動態を観血的に継続監視(t=0~3h)した。
‐敗血症ショックのCLPモデル
Centre d’elevage Janvier(France)から入手した雄ウィスターラット(2~3ヶ月齢、300~400g、群の大きさについては表7を参照のこと)を無作為に3つの群のうちの1つに割り当てた。すべての動物を塩酸ケタミン(90mg/kg)およびキシラジン(9mg/kg)で腹腔内(i.p.)麻酔した。多微生物性敗血症を誘発するため、盲腸結紮穿刺法(CLP)をRittirschのプロトコルを微修正して行った。腹側正中切開(1.5cm)を行い、盲腸を露出させた。次いで盲腸を回盲弁の直下で結紮し、18ゲージの針で1回穿刺した。次いで腹腔を二層で閉じ、補液蘇生(3ml/100g(体重)の生理食塩水を皮下注射)し、動物をケージに戻す。偽手術処置群の動物には盲腸穿刺をせずに手術を行った。
‐実験の時点と動物群
t=0(ベースライン)にて、すべてのCLP動物は、敗血症ショック状態にあり、心臓機能の低下(低血圧、低い短縮化率)を発症した。この時点で、AK1967(2mg/kg)または溶媒(生理食塩水)を注射し(i.v.;手術の5分後)、生理食塩水の輸液を開始した。下表に1つの対照群と2つのCLP群の概要を示す(表7)。実験の最後に動物を安楽死させ、臓器(例えば、心臓)を採取してさらに分析した。
‐心筋におけるROSのDHE標識
ジヒドロエチジウム(DHE;Sigma‐Aldrich)染色を、心筋におけるスーパオキシドアニオンのin situレベルを評価するために使用した。心室の心臓クリオスタット切片(7μm)を、暗所加湿チャンバー内でDHE(37μM)と共に30分間インキュベートした。Leica蛍光顕微鏡を用いたエチジウムブロマイドの蛍光画像の収集を、どのブロック組織であっても同一の設定下で実施した。染色部分を、IPLabソフトウェアを用いて計測し、そして、着目部分のパーセンテージ(ROIの%)として表現した。
3.2.結果:
CLP手術後の敗血症ショック誘発性心不全に罹患しているラットは、それらの心筋に多量の反応性酸素種(ROS)を生じているが、偽手術した動物は酸化ストレスをほとんど示さない(図2BおよびC)。AK1967を用いた疾患(CLP)動物の処置は、心筋における酸化ストレスレベルを健常(偽手術した)動物のレベルまで低減する。この強力なROS減少は、処置の3時間以内にのみ達成された(図2BおよびC)。
参考文献
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Figure 0007424972000014
Figure 0007424972000015
Figure 0007424972000016
Figure 0007424972000017
Figure 0007424972000018
配列表
配列番号1‐hDPP3 aa 1~737
Figure 0007424972000019
配列番号2‐hDPP3 aa 474~493(N‐Cys)‐追加のN末端システインを有する免疫化ペプチド
CETVINPETGEQIQSWYRSGE
配列番号3‐hDPP3 aa 477~482‐AK1967のエピトープ
INPETG
配列番号4‐hDPP3 aa 480~483
ETGE
配列番号5‐重鎖内のマウスAK1967の可変領域
Figure 0007424972000020
配列番号6‐軽鎖内のマウスAK1967の可変領域
Figure 0007424972000021
配列番号7‐重鎖内のマウスAK1967のCDR1
GFSLSTSGMS
配列番号8‐重鎖におけるマウスAK1967のCDR2
IWWNDNK
配列番号9‐重鎖内のマウスAK1967のCDR3
ARNYSYDY
配列番号10‐軽鎖内のマウスAK1967のCDR1
RSLVHSIGSTY
軽鎖内のマウスAK1967のCDR2
KVS
配列番号11‐軽鎖内のマウスAK1967のCDR3
SQSTHVPWT
配列番号12‐ヒト化AK1967‐重鎖配列(IgG1κ骨格)
Figure 0007424972000022
配列番号13‐ヒト化AK1967‐‐軽鎖配列(IgG1κ骨格)
本発明の態様の一部を以下に記載する。
1.配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3(DPP3)バインダーであって、そして、ここで、前記DPP3バインダーが、配列番号2のうちの少なくとも3つのアミノ酸、特に少なくとも4つのアミノ酸、より特に少なくとも5つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合し、およびここで、前記エピトープは配列番号1に含まれ、かつ、ここで、前記DPP3バインダーが、その親和定数が少なくとも10‐7M‐1であるようなDPP3に対する親和性を示す、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
2.項目1に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記DPP3バインダーが、配列番号3によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、およびここで、前記DPP3バインダーが、配列番号3のうちの少なくとも3つのアミノ酸、特に少なくとも4つのアミノ酸、より特に少なくとも5つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
3.項目1または2に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記DPP3バインダーが、配列番号4によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、およびここで、前記DPP3バインダーが、配列番号4のうちの少なくとも3つのアミノ酸、特に4つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
4.項目1~3のいずれかに記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記DPP3バインダーが、抗体もしくは抗体フラグメントまたは非Ig足場を含む群から選択される、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
5.項目1~4のいずれかに記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記DPP3バインダーが、単一特異性抗体もしくは単一特異性抗体フラグメントまたは単一特異性非Ig足場を含む群から選択される、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
6.項目1~5のいずれかに記載の、配列番号2よるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記DPP3バインダーが、モノクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体フラグメントであり、およびここで、重鎖の相補性決定領域(CDR)が、以下の配列:
配列番号7、配列番号8、および/または配列番号9
を含み、かつ、軽鎖の相補性決定領域(CDR)が、以下の配列:
配列番号10、KVSおよび/または配列番号11
を含む、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
7.項目1~6のいずれかに記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記DPP3バインダーが、ヒト化モノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体フラグメントであり、ここで、重鎖が以下の配列:
配列番号12
を含み、かつ、ここで、軽鎖が以下の配列:
配列番号13
を含む、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
8.患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、項目1~7のいずれかに記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、酸化ストレスに関連する、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
9.患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、項目1~6のいずれかに記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、項目7に記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記疾患が、神経変性疾患、メタボリックシンドローム、心血管疾患、自己免疫疾患、炎症性肺疾患、腎疾患、肝疾患、消化器系疾患、ウイルス感染症、癌、炎症、敗血症、敗血症ショック、およびSIRSを含む群から選択される、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
10.患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、項目1~6のいずれかに記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、項目7または8に記載の酸化ストレスに関連し、およびここで、以下のとおり:
・前記神経変性疾患が、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および多発性硬化症(MS)を含む群から選択されてもよく、
・前記メタボリックシンドロームが、インスリン抵抗性、肥満、高血糖、脂質異常症、高血圧、および糖尿病を含む群から選択されてもよく、
・前記心血管疾患が、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心不全、心血管虚血、脳虚血損傷、脳卒中、および心筋梗塞を含む群から選択されてもよく、
・前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスを含む群から選択されてもよく、
・前記炎症性肺疾患が、COPD、喘息を含む群から選択されてもよく、
・前記腎疾患が、急性腎傷害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、糖尿病性腎症、末期腎不全(ESRD)を含む群から選択されてもよく、
・前記肝疾患が、ウイルス性肝炎、および肝硬変を含む群から選択されてもよく、
・前記消化器系疾患が、炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、胃炎、膵炎および消化性潰瘍を含む群から選択されてもよく、
・前記ウイルス感染症が、血液由来肝炎ウイルス(B、C、およびD型)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザA型、エプスタイン‐バーウイルス、呼吸系合胞体ウイルスを含む群から選択されてもよく、
・前記癌が、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膀胱癌、卵巣癌、皮膚癌、胃癌、肝臓癌を含む群から選択されてもよく、
・前記炎症、
・前記敗血症、前記敗血症ショック、前記SIRS、
である、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
11.患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、項目1~6のいずれかに記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、項目7~9のいずれかに記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記疾患が、敗血症、敗血症ショック、およびSIRSを含む群から選択される、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
12.患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、項目1~6のいずれかに記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、項目7~9のいずれかに記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記疾患が、心筋の酸化ストレスに関連する、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
13.患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、DPP3タンパク質またはその機能性誘導体に指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、酸化ストレスに関連する、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
14.患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のためのジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、項目13に記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記疾患が、神経変性疾患、メタボリックシンドローム、心血管疾患、自己免疫疾患、炎症性肺疾患、腎疾患、肝疾患、消化器系疾患、ウイルス感染症、癌、炎症、敗血症、敗血症ショック、およびSIRSを含む群から選択される、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
15.患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のためのジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、項目13または14に記載の酸化ストレスに関連し、およびここで、以下のとおり:
・前記神経変性疾患が、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および多発性硬化症(MS)を含む群から選択されてもよく、
・前記メタボリックシンドロームが、インスリン抵抗性、肥満、高血糖、脂質異常症、高血圧および糖尿病を含む群から選択されてもよく、
・前記心血管疾患が、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心不全、心血管虚血、脳虚血損傷、脳卒中および心筋梗塞を含む群から選択されてもよく、
・前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスを含む群から選択されてもよく、
・前記炎症性肺疾患が、COPD、喘息を含む群から選択されてもよく、
・前記腎疾患が、急性腎傷害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、糖尿病性腎症、末期腎不全(ESRD)を含む群から選択されてもよく、
・前記肝疾患が、ウイルス性肝炎、および肝硬変を含む群から選択されてもよく、
・前記消化器系疾患が、炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、胃炎、膵炎および消化性潰瘍を含む群から選択されてもよく、
・前記ウイルス感染症が、血液由来肝炎ウイルス(B、C、およびD型)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザA型、エプスタイン‐バーウイルス、呼吸系合胞体ウイルスを含む群から選択されてもよく、
・前記癌が、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膀胱癌、卵巣癌、皮膚癌、胃癌、肝臓癌を含む群から選択されてもよく、
・前記炎症、
・前記敗血症、前記敗血症ショック、前記SIRS、
である、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。

Claims (16)

  1. 配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3(DPP3)バインダーであって、そして、ここで、前記DPP3バインダーが、配列番号2のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合し、ここで、前記エピトープは配列番号1に含まれ、ここで、前記DPP3バインダーが、その親和定数が少なくとも10‐7M‐1であるようなDPP3に対する親和性を示し、ここで、前記DPP3バインダーが、モノクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体フラグメントであり、およびここで、重鎖の相補性決定領域(CDR)が、以下の配列:
    配列番号7、配列番号8、および配列番号9
    を含み、かつ、軽鎖の相補性決定領域(CDR)が、以下の配列:
    配列番号10、KVS、および配列番号11
    を含む、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  2. 前記DPP3バインダーが、配列番号2のうちの少なくとも4つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する、請求項1に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  3. 前記DPP3バインダーが、配列番号2のうちの少なくとも5つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する、請求項2に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記DPP3バインダーが、配列番号3によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、およびここで、前記DPP3バインダーが、配列番号3のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  5. 前記DPP3バインダーが、配列番号3のうちの少なくとも4つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する、請求項4に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  6. 前記DPP3バインダーが、配列番号3のうちの少なくとも5つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する、請求項5に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記DPP3バインダーが、配列番号4によるエピトープに指向され、そしてそれに結合し、およびここで、前記DPP3バインダーが、配列番号4のうちの少なくとも3つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  8. 前記DPP3バインダーが、配列番号4のうちの4つのアミノ酸を認識し、そしてそれに結合する、請求項7に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記DPP3バインダーが、抗体もしくは抗体フラグメントまたは非Ig足場からなる群から選択される、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記DPP3バインダーが、単一特異性抗体もしくは単一特異性抗体フラグメントまたは単一特異性非Ig足場からなる群から選択される、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記DPP3バインダーが、ヒト化モノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体フラグメントであり、ここで、重鎖が以下の配列:
    配列番号12
    を含み、かつ、ここで、軽鎖が以下の配列:
    配列番号13
    を含む、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  12. 患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、酸化ストレスに関連する、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  13. 患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、請求項12に記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記疾患が、神経変性疾患、メタボリックシンドローム、心血管疾患、自己免疫疾患、炎症性肺疾患、腎疾患、肝疾患、消化器系疾患、ウイルス感染症、癌、炎症、敗血症、敗血症ショック、およびSIRSからなる群から選択される、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  14. 患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、請求項13に記載の酸化ストレスに関連し、およびここで、以下のとおり:
    ・前記神経変性疾患が、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および多発性硬化症(MS)からなる群から選択されてもよく、
    ・前記メタボリックシンドロームが、インスリン抵抗性、肥満、高血糖、脂質異常症、高血圧、および糖尿病からなる群から選択されてもよく、
    ・前記心血管疾患が、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心不全、心血管虚血、脳虚血損傷、脳卒中、および心筋梗塞からなる群から選択されてもよく、
    ・前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスからなる群から選択されてもよく、
    ・前記炎症性肺疾患が、COPD、喘息からなる群から選択されてもよく、
    ・前記腎疾患が、急性腎傷害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、糖尿病性腎症、末期腎不全(ESRD)からなる群から選択されてもよく、
    ・前記肝疾患が、ウイルス性肝炎、および肝硬変からなる群から選択されてもよく、
    ・前記消化器系疾患が、炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、胃炎、膵炎および消化性潰瘍からなる群から選択されてもよく、
    ・前記ウイルス感染症が、血液由来肝炎ウイルス(B、C、およびD型)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザA型、エプスタイン‐バーウイルス、呼吸系合胞体ウイルスからなる群から選択されてもよく、
    ・前記癌が、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膀胱癌、卵巣癌、皮膚癌、胃癌、肝臓癌からなる群から選択されてもよく、
    ・前記炎症、
    ・前記敗血症、前記敗血症ショック、前記SIRS、
    である、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  15. 患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、請求項12~14のいずれか1項に記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記疾患が、敗血症、敗血症ショック、およびSIRSからなる群から選択される、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
  16. 患者の疾患または急性病態の予防または治療における使用のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の、配列番号2によるエピトープに指向され、そしてそれに結合するジペプチジルペプチダーゼ3バインダーであって、ここで、前記疾患または急性病態が、請求項12~14のいずれか1項に記載の酸化ストレスに関連し、ここで、前記疾患が、心筋の酸化ストレスに関連する、ジペプチジルペプチダーゼ3バインダー。
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