JP7424621B2 - 被覆造粒種子 - Google Patents

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Description

本発明は、被覆造粒種子に関し、より詳細には吸引式の播種機やシード封入機に好適に使用される被覆造粒種子に関するものである。
これまで播種作業の省力化を図るために種々の播種機及び播種方式が提案され実用化されてきた。播種機としては、例えば、ロールに丸穴や溝を設け、ロールを回転させて種子を収容した上部ホッパーから種子を一定量ずつ繰り出すロール式播種機、円板の外周部に丸穴や切り欠きを設け、穴や切り欠きに入った種子を円板の回転により上部ホッパーから繰り出す回転目皿式播種機、丸穴を設けたベルトを回転させ、上部ホッパーから穴に種子を落下させて繰り出すベルト式播種機、真空ポンプあるいはブロワーによる負圧を利用し、回転円板の外周部に設けられた小孔あるいは放射状に配置されたノズルに、種子を吸着させて取り出し播種する吸引式播種機、加圧した空気(ジェットエア)を回転する播種セルに吹きつけて余分な種子をセル外に吹き飛ばし、残された一粒を播種する加圧噴射式播種機などが使用されている。
また播種方式としては、例えば、あらかじめ水溶性のテープに種子を封入したシードテープを圃場に敷設して播種する方式が行われている。この方式では、テープに種子を所定粒ずつ所定間隔で封入する際、所定粒の種子を保持してテープに封入する封入機が用いられている。
一方で、このような播種機や播種方式による播種を効率的にそして精度よく(1粒あるいは所定粒を正確に播種)行うために、多様な形状をした種子を被覆材によって被覆造粒し球形化することも行われている(例えば特許文献1,2)。
特開2000-37109号公報 特開2000-228902号公報
ところが、球状から大きく外れた種子を被覆材によって被覆造粒し球形化するには多くの被覆材が必要であり、造粒時間及び乾燥時間も長くかかる。加えて、球形化後の被覆種子の質量が大きくなると、吸引によって種子を保持する播種機やシード封入機の場合には種子の質量に対抗できるだけの吸引力が得られず種子の吸引及び保持が難しくなることがあった。また、被覆材量が多くなる、すなわち被覆層が厚くなると種子の発芽率は低下する傾向にあった。
そこで本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被覆材の使用量の抑制及び造粒時間や乾燥時間の短縮化が可能で、また発芽率を低下させることなく、吸引式の播種機や吸引式のシード封入機においても被覆造粒種子の吸引・保持が安定して行える被覆造粒種子を提供することにある。
前記課題を解決する本発明に係る被覆造粒種子は、種子の表面に被覆層を有する被覆造粒種子であって、下記式(1)から算出される形状係数SFo(%)が135以上220以下であることを特徴とする。なお、被覆造粒種子の形状係数SFoは、後述の実施例で説明する測定方法で測定した値である。
形状係数SFo(%)=Ao/Ac×100 ・・・・・・(1)
(式中、Ac:被覆造粒種子の投影面積,Ao:被覆造粒種子の投影像に外接する最小円の面積)
前記構成の被覆造粒種子において、下記式(2)から算出される形状係数SFi(%)が60以上80以下である構成としてもよい。なお、被覆造粒種子の形状係数SFiは、後述の実施例で説明する測定方法で測定した値である。
形状係数SFi(%)=Ai/Ac×100 ・・・・・・(2)
(式中、Ac:被覆造粒種子の投影面積,Ai:被覆造粒種子の投影に内接する最大円の面積)
また前記構成の被覆造粒種子において、前記被覆層が少なくとも2層の層構造を有する構成としてもよい。
そしてまた前記構成の被覆造粒種子において、前記被覆層の最外層がマイカを主成分とするものである構成としてもよい。
本発明に係る被覆造粒種子は、従来のものに比べて球形化度が小さいので、被覆材の使用量の抑制及び造粒時間や乾燥時間の短縮化が可能である。また種子の発芽率を低下させることもない。さらに、所定の球形化度を有しているので、吸引式の播種機や吸引式のシード封入機においても所定粒の被覆造粒種子の吸引・保持が安定して行える。
また被覆層が少なくとも2層の層構造を有する場合、特に前記被覆層の最外層がマイカを主成分とするものである場合は、播種時や保存時、輸送時等における被覆層の崩壊・剥落が防止され、吸引式の播種機や吸引式のシード封入機において被覆造粒種子の吸引・保持がより安定して行える。
本発明者は、吸引式の播種機や吸引式のシード封入機において種子の播種漏れやシードテープへの封入漏れ、及び所定粒超の過剰な播種や封入を抑制すべく鋭意検討を重ねた結果、種子の被覆造粒が不十分な場合のみならず種子の被覆造粒が十分な場合すなわち被覆造粒種子が球形化された場合にも播種や封入に漏れや過剰供給といった不具合が生じるとの知見を得た。そして、被覆造粒種子の球形度を球形過ぎず異形過ぎない所定範囲とすることによって、種子の播種漏れやシードテープへの封入漏れ及び所定粒超の過剰な播種や封入が抑制されることを見出し本発明をなすに至った。
すなわち本発明の大きな特徴は、被覆造粒種子の前記式(1)から算出され形状係数SFoが135以上220以下であることにある。形状係数SFoは被覆造粒種子の球形化度の一つの指標であって、最小値100に近づくほど真球に近づく。形状係数SFoが220を超えるような被覆造粒が不十分な異形の被覆造粒種子では、吸引式の播種機やシード封入機では被覆造粒種子を十分に吸引・保持することが困難となることがある。一方、形状係数SFoが135未満であるような球形化の進んだ被覆造粒種子では、厚い被覆層が形成されて被覆造粒種子の質量が大きいことが多く、吸引式の播種機やシード封入機で被覆造粒種子を十分に吸引・保持することが困難となることがある。そこで本発明では被覆造粒種子の形状係数SFoを135以上220以下の範囲と定めた。形状係数SFoのより好ましい範囲は140以上200以下の範囲であり、さらに好ましい範囲は150以上180以下の範囲である。
また本発明の被覆造粒種子は、形状係数SFiが60以上80以下であるのが好ましい。形状係数SFoと同様に、形状係数SFiも被覆造粒種子の球形化度の一つの指標であるが、形状係数SFiは最大値100に近づくほど真球に近づく。形状係数SFiが60以上80以下であることで被覆造粒種子をより確実に吸引・保持するが可能となる。
被覆造粒種子の形状係数SFo及び形状係数SFiの制御は、後述する被覆造粒の工程において使用する被覆材の量や種類、粒径、造粒時間などによって行うことができる。例えば被覆造粒種子の形状は、被覆材の配合量を多くし造粒時間を長くすることによって球形に近づけることができる。
種子を被覆する被覆材としては従来公知のものが使用でき、例えば無機粉体に、必要によりバインダーや添加剤を配合したものが好適に使用できる。無機粉体としては、カオリン鉱物(カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロサイト等)、蛇紋石(クリソタイル、リザータイト、アンチコライト、アメサイト等)、モンモリロナイト鉱物(ナトリウムモンモリロナイト、カルシウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト等)、スメクタイト(サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、ハイデライト等)、パイロフィライト、タルク、蝋石、マイカ(白雲母、フェンジャイト、セリサイト、イライト等)、シリカ(クリストバライト、クォーツ等)、複鎖型粘土鉱物(パリゴルスカイト、セピオライト等)、石膏等の硫酸塩鉱物、ドロマイト、炭酸カルシウム、ギプサム、ゼオライト、沸石、凝灰石、バーミキュライト、ラポナイト、軽石、珪藻土、酸性白土、活性白土などが挙げられる。これらの無機粉体のうち1種を単独で、又は、2種以上を混合あるいは併用して用いることができる。無機粉体の平均粒径は、1μm以上100μm以下が好ましく、さらに好ましくは5μm以上50μm以下の範囲である。
またバインダーとしては、従来公知のものが使用できる。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、澱粉、ショ糖、セルロース・アセテート、セルロース・アセテート・プロピオネート、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、ゼラチン等が挙げら、これら1種又は2種以上を組み合わせて使用する。
また、必要により配合する添加剤としては、例えば、過酸化カルシウム等の発根・発芽促進剤、植物ホルモン、消毒・殺菌剤、農薬、肥料、造粒物の比重を大きくするための砂や鉄粉等の錘、魚等に食べられないようにするための着色剤や忌避剤、水硬性物質の硬化を促進させるための硬化促進剤等が挙げられる。
被覆層は単層であってもよいが、本発明の被覆造粒種子の被覆層は従来よりも薄いので播種時や輸送時、保管時などに外部衝撃等によって崩壊や剥落が生じないように少なくとも2層の層構造とするのが好ましい。そして最外層はマイカを主成分とするのがより好ましい。例えば、被覆層を2層構造とする場合、内層は、従来のような粘土鉱物を用いずに、鉱物粉体とバインダーとを主成分とするのが好ましい。鉱物粉体としては重炭酸カルシウムが好適に使用される。またバインダーとしては前述の例示のものがここでも使用されるが、セルロースなどの粉体状のものが好適に使用される。最外層はマイカを主成分とする、すなわち外層に占めるマイカの質量割合が50質量%超とする。具体的にはマイカにバインダーを混合したものが好ましい。使用するマイカとしては前述のものがここでも使用される。
使用するマイカの質量平均フレーク径は5μm以上500μm以下の範囲であることが好ましく、10μm以上200μm以下の範囲であることがより好ましい。質量平均フレーク径が500μmを超えると、均一かつ充分な外層を形成することができないおそれがあり、質量平均フレーク径が5μm未満であると、外層の強度を充分に確保することができないおそれがある。なお、マイカは薄片状であるので、その最大径の質量平均を以て「質量平均フレーク径」と定義する。マイカ類の厚さは、特に限定されるものではない。
被覆造粒される種子については、その形状及び種類に特に限定はなく、例えば(i)長さ2.0~5.0mm、幅0.5~2.0mm、且つ、厚さ0.3~0.5mmの長粒状の種子(例えば、レタス種子が挙げられる。)、(ii)直径1.0~3.0mmの略球状の種子(例えば、キャベツ種子が挙げられる。)及び(iii)直径1.5~4.0mmの偏平な卵円状の種子(例えば、ナス種子が挙げられる。)、並びに、他の任意の形状の種子が挙げられる。詳しくは、例えば野菜種子、草花種子、牧草種子、野草種子、穀物種子及び工芸作物種子が挙げられ、より具体的には以下のものが挙げられる。
野菜種子としては、例えばキュウリ、メロン、カボチャ等のウリ科の野菜種子;ナス、トマト等のナス科の野菜種子;エンドウ、インゲン等のマメ科の野菜種子;タマネギ、ネギ等のユリ科の野菜種子;カブ、ハクサイ、キャベツ、ハナヤサイ等のブラシカ属及びダイコンなどのアブラナ科の野菜種子;ニンジン、セロリ等のセリ科の野菜種子;ゴボウ、レタス、シュンギク等のキク科の野菜種子;シソ等のシソ科の野菜種子;ホウレンソウ等のアカザ科の野菜種子等が挙げられる。これらの中でも、被覆造粒種子が異形化すると特に不具合を生じる略球形状の種子であるユリ科、アブラナ科の野菜種子について本発明は好適に適用される。
草花種子としては、例えばハボタン、ストック、アリッサム等のアブラナ科の草花種子、例えばロベリア等のキキョウ科の草花種子、例えばアスター、ジニア、ヒマワリ等のキク科の草花種子、例えばデルフィニウム等のキンポウゲ科の草花種子、例えばキンギョソウ等のゴマノハグサ科の草花種子、例えばプリムラ等のサクラソウ科の草花種子、例えばベゴニア等のシュウカイドウ科の草花種子、例えばサルビア等のシソ科の草花種子、例えばパンジー、ビオラ等のスミレ科の草花種子、例えばペチュニア等のナス科の草花種子、例えばユーストマ等のリンドウ科の草花種子等が挙げられる。
牧草種子としては、例えば、チモシー(オオアワガエリ)、イタリアンライグラス(ネズミムギ)、バーミューダグラス(ギョウギシバ)、オーツヘイ(燕麦)、スーダングラス、クレイングラス、フェスク、及び、オーチャードグラス(カモガヤ)の牧草種子が挙
げられる。
野草種子としては、例えば、アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)、クローバー(シロツメクサ)等のマメ科の野草種子、例えばメヒシバ等のイネ科の野草種子等が挙げられる。
穀物種子としては、例えば、イネ、オオムギ、コムギ、ダイズ、アワ、ヒエ及びキビが挙げられる。
工芸作物種子としては、例えば、テンサイなどのアカザ科種子、タバコなどのナス科種子、ナタネなどのアブラナ科種子、イグサ等のイネ科種子が挙げられる。
(被覆造粒)
被覆造粒種子は、例えば、種子に対して、傾斜回転パン型造粒機や流動層造粒機等の従来公知の造粒機を用いて、水及び/又はバインダーを噴霧しながら、無機粉体を徐々に供給すること、あるいは水を噴霧しながら無機粉体と粉体状のバインダーとの混合物を徐々に供給することにより製造される。撥水剤や農薬活性成分、顔料等も必要により無機粉体に混合しても構わない。また、造粒操作を繰り返して被覆層を積層構造としても構わない。そしてまた、長時間の輸送や保存を考慮した場合には、造粒後に被覆造粒種子を乾燥することが推奨される。被覆造粒種子を乾燥する場合の品温としては、種子に高温ストレスを与えないよう、50℃以下、詳しくは5℃~50℃の範囲が好ましい。乾燥装置としては、従来公知の乾燥装置を用いることができ、例えば流動層乾燥機やドラム乾燥機、静置式の棚型乾燥機などが好適に使用される。
被覆造粒種子の粒径については特に限定はなく、播種作業の作業性に応じて、また、種子の発芽を妨げない程度の大きさとなるように、種子の大きさや植物種に応じて適宜決定される。平均粒径としては通常1~20mmの範囲が好適である。具体的には、キャベツ、レタス、ハクサイ、ニンジンなどの野菜種子については、直径2.5~3.5mm;タマネギ及びネギ類、トマト、ナス等の大型の種子については、直径3.5~4.5mm;ユーストマ等の微細な種子については、直径1.0~1.7mmである。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(被覆材Aの作製)
重質炭酸カルシウム80質量部、ステアリン酸カルシウム10質量部、セルロース粉末7質量部、EVA粉末3質量部をそれぞれナウターミキサーに投入し、30分撹拌混合し、種子被覆用の被覆材Aを作製した。
(被覆材Bの作製)
マイカ97質量部と、EVA粉末3質量部とをナウターミキサーに投入し、30分撹拌混合し、種子被覆用の被覆材Bを作製した。
(被覆造粒種子E1の作製)
種子としてのニンジン(品種:愛美)の種子12kg(粒数:600万粒)を直径1500mmの遠心流動型の転動造粒機に投入し、回転撹拌させながら、水道水をスプレーで噴霧して、種子に吹きつけながら、被覆材Aを徐々に投入し、100粒の質量が1.3g~1.4gになるまで造粒した。次いで被覆材Bを0.1g/100粒の割合で種子に投入した。
そして、造粒機から造粒物を取り出し、設定35℃の通風乾燥機で乾燥した。
乾燥後の被覆造粒種子を篩にかけ、平均短径が2.50mm、平均長径が3.66mm、被覆倍率(被覆造粒種子の質量/元種子の質量)7.2の被覆造粒種子E1を得た。
得られた被覆造粒種子E1の形状係数SFo,SFiを下記測定方法で測定した。また、シーダーテープ作製機における種子封入試験、折り濾紙及び圃場での発芽率を下記のようにして行った。結果を表1に合わせて示す。
(形状係数SFo,SFiの測定)
得られた被覆造粒種子から500粒を無作為抽出し、サタケ社製のグレインスキャナーを用いて被覆造粒種子の投影面積Ac、被覆造粒種子の投影像に外接する最小円の面積Ao、被覆造粒種子の投影像に内接する最大円の面積Aiを一度に測定しその平均値を算出した。そして下記式(1)及び(2)から形状係数SFo及び形状係数SFiをそれぞれ算出した。
形状係数SFo(%)=Ao/Ac×100 ・・・・・・(1)
(式中、Ac:被覆造粒種子の投影面積,Ao:被覆造粒種子の投影像に外接する最小円の面積)
形状係数SFi(%)=Ai/Ac×100 ・・・・・・(2)
(式中、Ac:被覆造粒種子の投影面積,Ai:被覆造粒種子の投影に内接する最大円の面積)
(シーダーテープ作製機における種子封入試験)
シーダーテープ作製機(青島薫益衣机械有限責任公司社製「hynt-bzj-Z300」,真空吸着式)に幅22mmのシーダーテープを装着し、被覆造粒種子1万粒を投入した。そして、被覆造粒種子をシーダーテープ内に6cm間隔で1粒ずつ封入するよう設定した。
次いで、被覆造粒種子の封入が完了したシーダーテープの長さ6mの区間、3箇所(第1区間~第3区間)を開封して、封入されていた被覆造粒種子の個数を確認した。
(折り濾紙による発芽試験)
15cm×60cmの長方形状の濾紙を幅2.5cmでジャバラ折りし、ジャバラの谷折り部(10列)のそれぞれに被覆造粒種子5粒を等間隔に置いた。そして、水15mLを濾紙に浸み込ませた後、蓋付き容器内に静置し、温度20℃の条件下で4日目、6日目、10日目の発芽率(%)を測定した。
(圃場での発芽試験)
徳沃科技社製の真空播種機「2BQS-8型蔬菜播種」を用いて播種間隔4.69cm、播種深度2.0cmで点播し、播種3~4週間後に、種子100粒(約4.56m)を1つの区画とし、3つの区画での発芽した苗の数を計測して発芽率(%)を算出した。
(比較例1)
(被覆材Cの作製)
焼成アタパルジャイト80質量部、ステアリン酸カルシウム20質量部、セピオライト3質量部をそれぞれナウターミキサーに投入し、30分撹拌混合し、種子被覆用の被覆材Cを作製した。
(被覆造粒種子C1の作製)
種子としてのニンジン(品種:愛美)の種子12kg(粒数:600万粒)を直径1500mmの遠心流動型の転動造粒機に投入し、回転撹拌させながら、水道水をスプレーで噴霧して、種子に吹きつけながら、被覆材Cを徐々に投入し、100粒の質量が3.4g~3.6gになるまで造粒した。
そして、造粒機から造粒物を取り出し、設定35℃の通風乾燥機で乾燥した。
乾燥後の被覆造粒種子を篩にかけ、平均短径が3.44mm、平均長径が4.13mm、被覆倍率(被覆造粒種子の質量/元種子の質量)12.9の被覆造粒種子C1を得た。
得られた被覆造粒種子C1の形状係数SFo,SFi、シーダーテープ作製機における種子封入試験、折り濾紙及び圃場での発芽率を実施例1と同様にして行った。結果を表1に合わせて示す。
(比較例2)
(被覆造粒種子C2の作製)
種子としてのニンジン(品種:愛美)の種子0.2kg(粒数:10万粒)を直径360mmの遠心流動型の転動造粒機に投入し、回転撹拌させながら、水道水をスプレーで噴霧して、種子に吹きつけながら、被覆材Aを徐々に投入し、100粒の質量が0.4~0.5gになるまで造粒した。次いで被覆材Bを0.05g/100粒の割合で種子に投入した。
そして、造粒機から造粒物を取り出し、設定35℃の通風乾燥機で乾燥した。
乾燥後の被覆造粒種子を篩にかけ、平均短径が1.78mm、平均長径が3.77mm、被覆倍率(被覆造粒種子の質量/元種子の質量)2.0の被覆造粒種子C2を得た。
得られた被覆造粒種子C2の形状係数SFo,SFi、シーダーテープ作製機における種子封入試験、折り濾紙及び圃場での発芽率を実施例1と同様にして行った。結果を表1に合わせて示す。
表1から明らかなように、本発明で規定する形状係数SFoを有する実施例1の被覆造粒種子E1では、シーダーテープ作製機の真空吸着による種子の封入は、設定間隔で1粒ずつ封入されていた。
これに対して、従来の被覆造粒種子に該当する形状係数SFoが124と小さい、すなわち球形化度の進んだ被覆造粒種子C1では、シーダーテープにおける種子の封入漏れが平均で1箇所発生した。これは元種子の表面に必要以上の被覆材が付着して被覆造粒種子の質量が大きくなって、シーダーテープ作製機において真空吸着による被覆造粒種子の吸着あるいは保持が難しかったためと考えられる。
また形状係数SFoが228と元種子の形状が大きく残存していた比較例2の被覆造粒種子C2では、封入漏れ及び2粒封入が発生した。これは被覆材による元種子の被覆が不十分でシーダーテープ作製機で1粒ずつ真空吸着することが難しかったためと考えられる。
(実施例2)
種子としてのニンジン(品種:紅ひなた)の種子14kg(粒数:850万粒)を直径1500mmの遠心流動型の転動造粒機に投入し、回転撹拌させながら、水道水をスプレーで噴霧して、種子に吹きつけながら、被覆材Aを徐々に投入し、100粒の質量が1.3g~1.4gになるまで造粒した。次いで被覆材Bを0.1g/100粒の割合で種子に投入した。
そして、造粒機から造粒物を取り出し、設定35℃の通風乾燥機で乾燥した。
乾燥後の被覆造粒種子を篩にかけ、平均短径が2.45mm、平均長径が3.90mm、被覆倍率(被覆造粒種子の質量/元種子の質量)7.2の被覆造粒種子E2を得た。
得られた被覆造粒種子E2の形状係数SFo,SFi、またシーダーテープ作製機における種子封入試験、折り濾紙での発芽率を実施例1と同様の方法で測定した。加えて、下記の土壌での発芽試験を行った。試験結果を表2に合わせて示す。
(土壌での発芽試験)
水分条件をpF3.0になるように調整した黒ボク土500gを14×22cmの蓋付角シャーレに入れ、深さ1.5cm、直径0.5cmの穴を100箇所空け、種子を1試験区当たり50粒づつ播種し、1枚の角シャーレに2試験区分とした。
播種後、穴を周囲の土で埋めて鎮圧後、温度20℃の条件下で6日目、8日目、10日目、14日目の発芽率(%)を測定した。
(比較例3)
(被覆造粒種子C3の作製)
種子としてのニンジン(品種:紅ひなた)の種子0.2kg(粒数:12万粒)を直径360mmの遠心流動型の転動造粒機に投入し、回転撹拌させながら、水道水をスプレーで噴霧して、種子に吹きつけながら、被覆材Cを徐々に投入し、100粒の質量が3.2g~3.4gになるまで造粒した。
そして、造粒機から造粒物を取り出し、設定35℃の通風乾燥機で乾燥した。
乾燥後の被覆造粒種子を篩にかけ、平均短径が3.41mm、平均長径が4.43mm、被覆倍率(被覆造粒種子の質量/元種子の質量)14.2の被覆造粒種子C3を得た。
得られた被覆造粒種子C3の形状係数SFo,SFi、またシーダーテープ作製機における種子封入試験、折り濾紙及び土壌での発芽試験を実施例2と同様の方法で測定した。結果を表2に合わせて示す。
表2から明らかなように、本発明で規定する形状係数SFoを有する実施例2の被覆造粒種子E2では、シーダーテープ作製機の真空吸着による種子の封入は、設定間隔で1粒ずつ封入されていた。
これに対して、従来の被覆造粒種子に該当する形状係数SFoが134と小さい、すなわち球形化度の進んだ被覆造粒種子C3では、シーダーテープにおける種子の封入漏れが平均で1.3箇所発生した。これは元種子の表面に必要以上の被覆材が付着して被覆造粒種子の質量が大きくなって、シーダーテープ作製機において真空吸着による被覆造粒種子の吸着あるいは保持が難しかったためと考えられる。
(実施例3~7)
(被覆材Dの作製)
重質炭酸カルシウム90質量部、セルロース粉末7質量部、EVA粉末3質量部をそれぞれタンブラーミキサーに投入し、30分撹拌混合し、種子被覆用の被覆材Dを作製した。
(被覆造粒種子E3~E7を作製)
種子としてのニンジン(品種:敬紅)の種子0.1kg(粒数:5.7万粒)を直径360mmの遠心流動型の転動造粒機に投入し、回転撹拌させながら、水道水をスプレーで噴霧して、種子に吹きつけながら、被覆材Dを徐々に投入し、被覆材Dの使用量が200,400,600,800,1100gになるまで造粒した。次いで被覆材Bを0.1g/100粒の割合で種子に投入した。
そして、造粒機から造粒物を取り出し、設定35℃の通風乾燥機で乾燥した。
乾燥後の被覆造粒種子を篩にかけて、表3に示す被覆造粒種子E3~E7を得た。
得られた被覆造粒種子E3~E7の形状係数SFo,SFi、またシーダーテープ作製機における種子封入試験、折り濾紙での発芽試験を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表4に合わせて示す。
(比較例4)
(被覆造粒種子C4を作製)
種子としてのニンジン(品種:敬紅)の種子0.1kg(粒数:5.7万粒)を直径360mmの遠心流動型の転動造粒機に投入し、回転撹拌させながら、水道水をスプレーで噴霧して、種子に吹きつけながら、被覆材Cを徐々に投入し、100粒の質量が3.2g~3.4gになるまで造粒した。
そして、造粒機から造粒物を取り出し、設定35℃の通風乾燥機で乾燥した。
乾燥後の被覆造粒種子を篩にかけて、表3に示す被覆造粒種子C4を得た。
得られた被覆造粒種子C4の形状係数SFo,SFi、またシーダーテープ作製機における種子封入試験、折り濾紙での発芽試験を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表4に合わせて示す。
表4に示すように、被覆材Dの使用量を変えて形状係数SFoを本発明で規定する範囲内で変えた実施例3~7の被覆造粒種子E3~E7では、シーダーテープ作製機の真空吸着による種子の封入は、被覆材Dを最も多く使用した実施例7の被覆造粒種子E7で平均した封入漏れがわずかに0.3箇所発生しただけであった。また、実施例3~7の被覆造粒種子E3~E7では、真空吸着による種子の2粒入りは発生しなかった。
これに対して、従来の被覆造粒種子に該当する形状係数SFoが133と小さい、すなわち球形化度の進んだ被覆造粒種子では、シーダーテープにおける種子の封入漏れが平均で1.3箇所発生した。これは元種子の表面に必要以上の被覆材が付着して被覆造粒種子の質量が大きくなって、シーダーテープ作製機において真空吸着による被覆造粒種子の吸着あるいは保持が難しかったためと考えられる。
本発明に係る被覆造粒種子は、吸引式の播種機や吸引式のシード封入機において所定粒の被覆造粒種子の吸引・保持が安定して行え、また被覆材の使用量の抑制及び造粒時間や乾燥時間の短縮化が可能である。

Claims (4)

  1. 種子の表面に被覆層を有する被覆造粒種子であって、
    下記式から算出される形状係数SFo(%)が135以上220以下である
    ことを特徴とする被覆造粒種子。
    形状係数SFo(%)=Ao/Ac×100 ・・・・・・(1)
    (式中、Ac:被覆造粒種子の投影面積,Ao:被覆造粒種子の投影像に外接する最小円の面積)
  2. 下記式から算出される形状係数SFi(%)が60以上80以下である請求項1記載の被覆造粒種子。
    形状係数SFi(%)=Ai/Ac×100 ・・・・・・(2)
    (式中、Ac:被覆造粒種子の投影面積,Ai:被覆造粒種子の投影に内接する最大円の面積)
  3. 前記被覆層が少なくとも2層の層構造を有する請求項1又は2に記載の被覆造粒種子。
  4. 前記被覆層の最外層がマイカを主成分とするものである請求項3記載の被覆造粒種子。
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