JP7423026B1 - バイオフィルムを破壊するための溶液及びその製造方法 - Google Patents

バイオフィルムを破壊するための溶液及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】人体にやさしく、基質に付着した細菌等が産出するバイオフィルムを効果的に破壊する溶液とその製造方法を提供する。【解決手段】水(H2O)と重水素硫酸(D2SO4)からなり、pHが0.5以上4.0以下の、バイオフィルムを破壊するための溶液である。このバイオフィルムを破壊する溶液は、浸透性がよいので、バイオフィルムを効率的に破壊することができる。また、そのバイオフィルムを破壊するための溶液は、水(H2O)を用いて重水素硫酸(D2SO4)のpHが0.5以上4.0以下となるように希釈調製することによって得られる。【選択図】 図6

Description

この発明は、バイオフィルムを破壊するための溶液及びその製造方法に関する。
バイオフィルムは、基質に付着した細菌等が細胞外多糖類(EPS,extracellar polysaccharide)を分泌してできる細菌を取り囲む膜である。EPSは、細菌を守るバリヤーの役割、細菌が栄養分等を取り込む運搬経路の役割を果たし、環境変化や化学物質からバイオフィルム内部の細菌等を守る役割を果たしている。
その高次構造体のマトリックスであるバイオフィルム内には、閉じこめられた細菌等のミクロコロニーが点在している。そのコロニーには、細菌をはじめ、真菌、藻類、原生動物など多種多様な微生物が存在しうる。バイオフィルム内の菌等の数が一定以上になると、バイオフィルム内の細菌等は、バイオフィルムから放出されて、さらに別の部位でバイオフィルムは広がっていき、汚染、感染は広がっていく。
バイオフィルムは池とか川といった自然界の中や,建造物の排管の中といった環境中にも認められる。そして病院環境も例外ではない。バイオフィルムは環境以外の、人体の中でも形成され、特に医療の分野では慢性の難治性の感染症として関与し、医療上大きな問題となってきている
細菌等によるバイオフィルムの形成によって、薬剤の効果の大幅な低下のみならず、細菌等自体が薬剤に耐える力を獲得することもある。この耐薬剤性を獲得するメカニズムは、バイオフィルムが形成されることによって、物理的に抗菌薬がバイオフィルム内に浸透しにくくなること、マトリックスと抗菌薬が結合し、薬剤の効力が低下することが考えられている。また、バイオフィルム内の深層部が低栄養、低酸素状態になることで細菌等自体が休眠状態になってしまうことなどが挙げられている。
例えば、バイオフィルムを形成した緑膿菌では、抗生物質に対する耐性が浮遊細胞に比べて数百倍も上昇し、薬剤治療を困難にしている。また、歯科分野では、歯周ポケットに細菌がバイオフィルムを産出して、治療困難な歯周病の原因ともなっている。
バイオフィルムの形成を阻害する薬剤の開発は進められてきた。バイオフィルムが一度形成されると、感染症等の治療が困難になることから、形成されたバイオフィルムを破壊する薬剤も開発されている。特許文献1に記載の発明は、アクネ菌が産出するバイオフィルムを破壊することを目的とし、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸、グリチルリチン酸、イブプロフェンピコノール、スルファジアジン及びそれらの塩、エタノール、レゾルシン、イオウ、及び過酸化ベンゾイルからなる群から選ばれた少なくとも1種のアクネ菌バイオフィルム破壊成分とするものである。
特許文献2に記載の発明は、嚢胞性線維症患者におけるバイオフィルムの破壊方法に関するもので、単離されたかまたは組換え型の組込み宿主因子(IHF)ポリペプチド、またはそのそれぞれの断片もしくは等価物を用いている。
これらのバイオフィルム破壊のための薬剤は、特定の細菌等によって産出されるバイオフィルムの特性を考慮して発明されたものである。特許文献3に記載のバイオフィルムを破壊するための薬剤は、口臭抑制のためのもので、炭酸水素ナトリウムと次亜塩素酸を必須成分とするものである。この薬剤は、バイオフィルムの表層に存在するウォーターチャンネルという細菌等の栄養源である血液成分が通過できる分子量の比較的小さな無機材料(分子量200以内)の薬剤を用いることに特徴を有している。また、細菌等が多量に存在するバイオフィルムの中心部にはさらに小さなナノチャンネルという穴があり、分子量100以下の超低分子量の消毒剤等しか通過できないとされている。
特開2021-165284号公報 特開2020-037595号公報 国際公開WO2010/004699号公報
バイオフィルムは、多糖、たんぱく質、核酸、脂質など多種多様な成分から構成されており、バイオフィルムが産出される各成分の量や生化学的性質は、菌種や菌株によって異なってくる。上記特許文献1及び2は、各細菌等の特性やバイオフィルムの特性に応じてバイオフィルムを破壊することを特徴としているので、バイオフィルム全般に適用できないという問題がある。上記特許文献3は、バイオフィルムが一般的に有するウォーターチャンネルやナノチャンネルを通過して薬剤を送り込むという技術思想ではあるが、特許文献3の記載によると、次亜塩素酸を主成分とする液は、塩素濃度を数百ppm程度にまで濃縮したものが必要であるため、使用後は直ちに洗い流さなければならない。
この発明の目的は、人体にやさしく、バイオフィルムを効果的に破壊する溶液とその製造方法を提供することである。
本発明(1)は、水(HO)と重水素硫酸(DSO)からなり、pHが0.5以上4.0以下の、バイオフィルムを破壊するための溶液である。
発明者らは、バイオフィルムの構造的特徴を研究し、バイオフィルム自体を効率的に破壊し、しかも人体にやさしい本発明の溶液を取得することに成功した。バイオフィルムである細胞外高分子物質(細胞外多糖類(EPS))は、多糖類とタンパク質から成り、そのほか、DNAや脂質や腐植物質といった巨大分子も含んでいる。菌体外多糖は一般に、単糖類と非炭水化物の置換基で構成されている。
重水素硫酸(DSO)を水(HO)で希釈し、pHを0.5以上2.0以下に調製された溶液は高い酸性の溶液であり、細胞外多糖類(EPS)を酸化し、バイオフィルムのウォーターチャンネルやナノチャンネルを容易に通って内部の細胞外多糖類を分解する機能を有する。また、水素イオン濃度を高めて低pHとする成分を重水素硫酸(DSO)とすることによって、人体にやさしく、バイオフィルムを効果的に破壊する溶液とすることができる。
希釈されたpHの上限は、4.0以下が好ましく、3.0以下、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下が順番により好ましい。本願のバイオフィルムを破壊する溶液は、pHが小さければ小さいほど細胞外多糖類(EPS)を分解する効能をより高く有するためである。pHの下限は、0.5以上であれば有効にバイオフィルムを分解できるので好ましい。pHの下限は、細胞に対する影響を考慮して、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1.0以上が順番により好ましい。
バイオフィルムの成分である多糖類は、グルコース等の単糖がいくつも連なった物質であり、この多糖類は、低pHの溶液により酸化水分解というメカニズムで分解されうる。特に、pHが2以下であれば多糖類は、その分解が効率的に行われる。また、重水素硫酸(DSO)とすることによって、細胞組織への副作用(ダメージ)が低減される。
本発明(2)は、水(HO)を用いて重水素硫酸(DSO)を希釈して、水(H2O)と重水素硫酸(D2SO4)からなり、pHが0.5以上4.0以下のバイオフィルムを破壊するための溶液の製造方法である。
本発明(2)のバイオフィルムを破壊するための溶液の製造方法は、水(HO)を用いて重水素硫酸(DSO)のpHが0.5以上4.0以下となるように希釈調製するだけなので、製造方法が簡便である。
本発明によれば、人体にやさしく、バイオフィルムを効果的に破壊する溶液とその製造方法を提供することができる。
バイオフィルム破壊液のpHを変化させて多糖類を分解する傾向を示す。 ハイビスカスの葉を用いた副作用の試験結果を示す。 ミュータンス菌を用いた実験1~3の写真を示す。 ミュータンス菌を用いた実験1の結果を示す。 ミュータンス菌を用いた実験2の結果を示す。 ミュータンス菌を用いた実験3の結果を示す。 Fn菌を用いた実験4の結果を示す。
以下、図及び表を参照して、本発明の最良の実施形態を説明する。
本発明の殺菌用溶液は、水(HO)を用いて重水素硫酸(DSO)のpHを調製して作られたものである。重水素硫酸(DSO)は、Cambridge Isotope Laboratories, Inc.のものを用いた。水(HO)は、水道水を用いた。本発明のバイオフィルムを破壊するための溶液は、これら2つの物質から構成されるものであるが、pH値に影響を与えない、若しくは影響が少ない微量成分を添加してもよい。pHの測定は、堀場製作所製のモデルMETRO-51を用いた。
(pHを変化させて多糖類を分解する実験)
実際の細胞外多糖類(EPS)の代わりの多糖類として、水あめと植物性ゼリーを用いて、多糖類が本発明によってどのように分解されるのかを調べるための予備試験を行った。水あめは、加藤産業株式会社製のもの(商品名「Kanpy 水あめ」)を用い、植物性ゼリーは、COOP製(製造者:伊那食品工業株式会社)のもの(商品名「コープアガー」)を用いた。
水あめは、デンプンを酸や糖化酵素で糖化して作られた粘液状の甘味料であり、ブドウ糖、麦芽糖、デキストリンなどの混合物で、主成分は麦芽糖である。コープアガーは、寒天を主原料とする植物性ゼリーの素である。コープアガーの原材料は、ブドウ糖、寒天、こんにゃく粉、増粘剤(ローカストビーンガム、キサンタンガム)、乳酸カルシュウムである。両原料共に基本原料は、多糖類である。
水あめとコープアガーとを混合した試験品に、各種pH値に調製されたバイオフィルム破壊液等を加え、その混合液の粘度を測定した。粘度の測定は、リオン株式会社製の「ビスコテスタ(高粘度タイプ)VT-06」を用いた。
まず、水あめとコープアガーとを34:5の比率で、ビーカー内で混合し、その粘度を、ビスコテスタ(高粘度タイプ)VT-06で測定したところ、粘度は460dPa・Sであった。試験に供する水あめとコープアガーとの混合物(被試験体)重量を150gとして秤量して準備した。水(HO)を用いて重水素硫酸(DSO)のpHを調製して準備した試験液のpHは、pH=0.5、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0であった。加えて、重水素硫酸(DSO)を加えていない水道水のままのpH=7.0の試験液も準備した。被試験体150gに試験液4ccを加えて、ビスコテスタ(高粘度タイプ)VT-06で測定したところ、下記表1の結果となった。試験を行ったときの室温は25度C、湿度は63%であった。
Figure 0007423026000002
図1は、表1の測定結果を折れ線グラフにしたものである。このグラフを見ると、pH6からpHが下がるにつれて粘度も下がっているのがわかる。この試験結果により、低pHの溶液によって多糖類が酸化水分解されていることを明確に示している。pH=0.5の場合は、pH=7.0の場合に比べて、多糖類が分解されて、粘度が1/3近くにまで減少している。
図2は、本バイオフィルム破壊液の安全性を調べた実験結果を示す。1枚のハイビスカスの葉を中央の葉脈を境にして左右に分割し、一方の葉表面にpH=0.5に調製した硫酸(HSO)を用いて濡らし、他方にpH=0.5に調製した重水素硫酸(DSO)を用いて濡らし、20時間経過後を観察した。図2(A)は、硫酸(HSO)を用いて濡らして20時間経過後の葉表面の状態を示している。点線で囲んだ白く斑点状になっている部分は葉の細胞が死んでいる部分である。図2(B)は、重水素硫酸(DSO)を用いて濡らして20時間経過後の葉表面の状態を示している。図2(A)と比べて、点線で囲んだ白く斑点状になっている部分が大幅に少なく、本バイオフィルム破壊液の安全性が高いことを示している。
図3~図6は、実際にストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)菌株を用いた実験結果を示している。ストレプトコッカス・ミュータンス菌は、通性嫌気性菌であり、グラム陽性の連鎖球菌である。不溶性、粘着性のあるグルカンを産出し歯の表面に粘着する。主に歯のう蝕の原因となる菌の一つである。培地は、THB(TODD-HEWITT BROTH)に2%(w/v)スクロースを添加したものを用いた。スクロースは、単糖であるグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)がα-1,2-グリコシド結合した糖であり、二糖類の1種である。THBはベクトン・ディッキンソン社製のものを用いた。スクロースは富士フイルム和光純薬社製「CASRN」を用いた。培養に用いたプレートは、Thermo scientificshaNunclon Delta Surface 96wellである。培養器は、PanasonicマルチガスインキュベーターMCO-5MUV-PJを用いた。培養は、37度C,COガス5%,Oガス5%、Nガス90%の雰囲気下で行った。
バイオフィルムの残存を測定する機器等について以下に説明する。染色は、0.1%の富士フイルム和光純薬株式会社製のクリスタルバイオレットを0.1%(w/v)となるように蒸留水に溶解したものを用いた。
撮影に用いた顕微鏡は、Life technologies社製のEVOS XL coreを用いた。吸光度測定器は、CORONA ELECTRIC社SH-1000 Labを用いた。データ処理ソフトウェアは「SF6」とし、吸光度波長は、590nmとした。
(「実験1:菌幡種と同時に添加」の手順)
ストレプトコッカス・ミュータンス菌を2%スクロース含有THBで希釈し、細胞培養用プレート(Thermo scientificshaNunclon Delta Surface 96well)に100μl播種したものを10個用意した。播種と同時に、重水素硫酸(DSO)を水(HO)で希釈し、pH=0.8、1.2、1.5、2.3、2.7、3.0、3.3、3.7、4.0に調製した試験液100mlを添加した。なお、播種した10個のうち1個については、試験液は添加しなかった。
その後、マルチガスインキュベーターで24時間培養してプレート底面にバイオフィルムを形成させた。培養後、プレートを蒸留水で洗浄し、0.1%クリスタルバイオレット溶液で10分間染色した。染色後は再び蒸留水で洗浄し、乾燥させた後に明視野倒立顕微鏡で観察し写真を撮影した。
その後、99.5%エタノール100μl(富士フイルム和光純薬株式会社製)でクリスタルバイオレットを抽出し、吸光度計グレーティングマイクロプレートリーダーを用いて590nmの波長で吸光度を測定した。
(「実験2:菌幡種24時間後(バイオフィルム形成後)の培地に添加」の手順)
ストレプトコッカス・ミュータンス菌を2%スクロース含有THBで希釈し、細胞培養用プレート(Thermo scientific社Nunclon Delta Surface 96well)に100μl播種したものを10個用意した。その後、マルチガスインキュベーターで24時間培養してプレート底面にバイオフィルムを形成させた。
重水素硫酸(DSO)を水(HO)で希釈し、pH=0.8、1.2、1.5、2.3、2.7、3.0、3.3、3.7、4.0に調製した試験液を、培養開始から24時間後(バイオフィルム形成後)に、培地を取り除かず、培養系に添加した。さらに24時間、マルチガスインキュベーターで培養した。培養後、プレートを蒸留水で洗浄し、0.1%クリスタルバイオレット溶液で10分間染色した。染色後は再び蒸留水で洗浄し乾燥させた後に明視野倒立顕微鏡を用いて観察し、写真を撮影した。
その後、99.5%エタノール100μl(富士フイルム和光純薬株式会社製)でクリスタルバイオレットを抽出し、吸光度計グレーティングマイクロプレートリーダーを用いて590nmの波長で吸光度を測定した。
(「実験3:菌幡種24時間後(バイオフィルム形成後)の培地を置換」の手順)
ストレプトコッカス・ミュータンス菌を2%スクロース含有THBで希釈し、細胞培養用プレート(Thermo scientific社Nunclon Delta Surface 96well)に100μl播種したものを10個用意した。その後、マルチガスインキュベーターで24時間培養してプレート底面にバイオフィルムを形成させた。
培養開始から24時間後に、培地を除去し、プレートを蒸留水で洗浄した。重水素硫酸(DSO)を水(HO)で希釈し、pH=0.5、0.8、1.2、2.0、2.3、2.7、3.0、3.3、3.7に調製した試験液を、100mlずつ注入し、除去した培地を戻した。さらに24時間、マルチガスインキュベーターで培養した。培養後、プレートを蒸留水で洗浄し、0.1%クリスタルバイオレット溶液で10分間染色した。染色後は再び蒸留水で洗浄し乾燥させた後に明視野倒立顕微鏡を用いて観察し、写真を撮影した。
図3の上段は、実験1のミュータンス菌幡種と同時に試験液を添加し、培養したものを染色・洗浄した写真である。色が濃いほどより多くのバイオフィルムが残存していることを示している。pH=0.8、1.2、1.5の場合に白くなっており、バイオフィルム形成が大きく阻害・破壊されていることがわかる。
図3の中段は、実験2のミュータンス菌幡種24時間後(バイオフィルム形成後)の培地に試験液を添加し、さらに24時間培養したものを染色・洗浄した写真である。図3の下段は、実験3のミュータンス菌幡種24時間後(バイオフィルム形成後)の培地を試験液で置換し、さらに24時間培養したものを染色・洗浄した写真である。これらの写真を見ると、pH値が小さいものほど色が薄くなっており、より多くのバイオフィルムが破壊されていりことがわかる。
図4は、上記実験1で試験したサンプルの吸光度を測定した結果を示している。横軸がpH値で、縦軸が吸光度で、pH値が2.3よりも小さくなると急激に吸光度が小さくなり、バイオフィルムがほとんど形成されていないという結果であった。下記表2は、実験1のpHと吸光度のデータである。
Figure 0007423026000003
図5は、上記実験2で試験したサンプルの吸光度を測定した結果を示している。横軸がpH値で、縦軸が吸光度で、pH値が3.0よりも小さくなると徐々に吸光度が小さくなり、pH1.5から小さくなると急激に小さくなっている。pHが小さくなると、バイオフィルム破壊されていることを示している。下記表3は、実験2のpHと吸光度のデータである。
Figure 0007423026000004
図6は、上記実験3で試験したサンプルの吸光度を測定した結果を示している。横軸がpH値で、縦軸が吸光度で、pH値が2.3よりも小さくなると徐々に吸光度が小さくなり、pHが0.5まで顕著な減少傾向が続いている。pHが2.0よりも小さくなると、バイオフィルムが破壊されていることを明確に示している。下記表4は、実験3のpHと吸光度のデータである。
Figure 0007423026000005
ミュータンス菌は、糖を栄養源として酸を産生することから、菌の密集した局所でpH低下に耐えられるように耐酸性の性質がこのシステムにより活性化される。実験1~3に供したミュータンス菌は、酸性に対して抵抗力を有している。このようなシステムを有していないバイオフィルムを産出する菌が産出するバイオフィルムに対しては、当然に効果を有する。
ミュータンス菌は、クオラムセンシングシステムを有しており、特に厳しい環境でも耐えられる耐性を有している。クオラムセンシングシステムとは、菌の数が一定数を超えたときに、その密度を感知して、シグナル伝達が起こり、菌の生息に都合の良い活性が起こるシステムである。
ミュータンス菌は、糖を栄養源として酸を産生することから、菌の密集した局所でpH低下に耐えられるように耐酸性の性質がこのシステムで活性化される。また、菌の増殖に歯止めがかけられるように殺菌物質であるバクテリオンを産生し、菌量の調節を行う。
ミュータンス菌は、環境に適応するために遺伝子の取り込みが活性化され、厳しい環境でも生息できる性質を持つように変異しやすくする。
このように、ミュータンス菌では、低pH環境におかれても、このようなシステムを有しているため死滅させることが困難となり、pHが0.5以上2.0以下という低いpHが必要となる。
一方、ミュータンス菌のこのような耐酸性を有しない菌であって、バイオフィルムを形成する菌も存在する。例えば、口腔内に常在するFn菌(Fusobacterium nucleatum(フソバクテリウム・ヌクレアタム))である。この菌は、悪臭(口臭)の原因となる酪酸を生み出す菌で、歯周病の原因菌とされ、さらに近年、大腸においても発見され、大腸がんの原因菌とされている菌である。
この菌は、ミュータンス菌のようなクオラムセンシングシステムを有さないので、抗酸性はミュータンス菌よりも低く、pHがミュータンス菌と比べて高いpHを有するバイオフィルム破壊液でもバイオフィルムを破壊することができる。
図7は、実際にFn菌株を用いた実験結果を示している。培地は、THB(TODD-HEWITT BROTH)に2%(w/v)スクロースを添加したものを用いた。スクロースは、単糖であるグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)がα-1,2-グリコシド結合した糖であり、二糖類の1種である。THBはベクトン・ディッキンソン社製のものを用いた。スクロースは富士フイルム和光純薬社製「CASRN」を用いた。培養に用いたプレートは、Thermo scientificshaNunclon Delta Surface 96wellある。培養器は、PanasonicマルチガスインキュベーターMCO-5MUV-PJを用いた。培養は、37度C,COガス5%,Oガス5%、Nガス90%の雰囲気下で行った。
(「実験4:菌幡種と同時に添加」の手順)
Fn菌を2%スクロース含有THBで希釈し、細胞培養用プレート(Thermo scientificshaNunclon Delta Surface 96well)に100μl播種したものを10個用意した。播種と同時に、重水素硫酸(DSO)を水(HO)で希釈し、pH=0.5、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0に調製した試験液100mlを添加した。なお、播種した7個のうち1個については、試験液は添加しなかった。
その後、マルチガスインキュベーターで24時間培養してプレート底面にバイオフィルムを形成させた。培養後、プレートを蒸留水で洗浄し、0.1%クリスタルバイオレット溶液で10分間染色した。染色後は再び蒸留水で洗浄し、乾燥させた。
その後、99.5%エタノール100μl(富士フイルム和光純薬株式会社製)でクリスタルバイオレットを抽出し、吸光度計グレーティングマイクロプレートリーダーを用いて590nmの波長で吸光度を測定した。
図7は、上記実験4で試験したサンプルの吸光度を測定した結果を示している。横軸がpH値で、縦軸が吸光度で、pH値が4.5よりも小さくなると、pHが6.0のものと比べて吸光度が小さくなり、バイオフィルムが形成されにくくなるという結果であった。下記表5は、実験4のpHと吸光度のデータである。
Figure 0007423026000006
実験1~実験4の結果からわかるように、ミュータンス菌のような抗酸性の強い菌に対しては、pHが0.5~2,0に調整したバイオフィルム破壊液が好ましく、Fn菌のような抗酸性が高くない菌に対しては、pHを4.0以下に調製したものでも効果があるので、対象となる菌の種類によってpHを調整すれば良い。
実験1~実験4では、水と重水素硫酸の2成分によって構成されたバイオフィルムを破壊する溶液が用いられているが、他の成分、例えば界面活性剤、増粘剤、色素剤等の副成分を添加したものにおいても、主成分が水と重水素硫酸であり、pHが0.5~4である限りバイオフィルムを破壊することができる。
本発明のバイオフィルムを破壊するための溶液は、バイオフィルムを強力に破壊する機能を有することから、環境に発生するバイオフィルムのみならず、歯科分野や医科分野の治療に供することが出来る。また、医療分野に使用する医療機器に形成されたバイオフィルムを破壊して、より精密な洗浄に供することができる。

Claims (3)

  1. 水(HO)と重水素硫酸(DSO)からなり、pHが0.5以上4.0以下の、
    バイオフィルムを破壊するための溶液。
  2. 水(HO)を用いて重水素硫酸(DSO)を希釈して、水(HO)と重水素硫
    酸(DSO)からなり、pHが0.5以上4.0以下の、バイオフィルムを破壊する
    ための溶液を製造する方法。
  3. 請求項1のバイオフィルムを破壊するための溶液を用いて、バイオフィルムを破壊する
    方法。
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