以下、本発明の一実施形態に係る交通安全支援システムについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る交通安全支援システム1及びこの交通安全支援システム1が支援対象とする交通参加者が存在する対象交通エリア9の一部の構成を模式的に示す図である。
交通安全支援システム1は、対象交通エリア9を移動する人である歩行者4や移動体である四輪自動車2及び自動二輪車3等を個々の交通参加者として認識するとともに、この認識を介して生成した支援情報を各交通参加者へ通知し、各々の意思に基づいて移動する各交通参加者の間のコミュニケーション(具体的には、例えば各交通参加者の間の相互認識)や周囲の交通環境の認識を促すことによって対象交通エリア9における各交通参加者の安全かつ円滑な交通を支援する。
図1には、車道51、交差点52、歩道53、及び信号機54を交通インフラ設備として含む、市街地の交差点52付近を対象交通エリア9とした場合について説明する。図1には、車道51及び交差点52内を計7台の四輪自動車2及び計2台の自動二輪車3が移動し、また歩道53及び交差点52内を計3組の歩行者4が移動している場合を示す。また図1には、計3台のインフラカメラ56が設置されている場合を示す。
交通安全支援システム1は、個々の四輪自動車2とともに移動する車載装置群20(四輪自動車2に搭載された車載装置の他、四輪自動車2を運転する運転者が保有又は装着する携帯情報処理端末を含む)と、個々の自動二輪車3とともに移動する車載装置群30(自動二輪車3に搭載された車載装置の他、自動二輪車3を運転者が保有又は装着する携帯情報処理端末を含む)と、各歩行者4が保有又は装着する携帯情報処理端末40と、対象交通エリア9に設けられた複数のインフラカメラ56と、信号機54を制御する信号制御装置55と、これら車載装置群20,30、携帯情報処理端末40、インフラカメラ56、及び信号制御装置55等の対象交通エリア9に存在する複数の端末(以下、単に「エリア端末」ともいう)と通信可能に接続された協調支援装置6と、を備える。
協調支援装置6は、上述の複数のエリア端末に対し基地局57を介して通信可能に接続された1台又は複数台のコンピュータによって構成される。より具体的には、協調支援装置6は、複数のエリア端末に対し基地局57、ネットワークコア及びインターネットを介して接続されたサーバや、複数のエリア端末に対し基地局57及びMEC(Mulch-access Edge Computing)コアを介して接続されたエッジサーバ等によって構成される。
図2は、協調支援装置6及びこの協調支援装置6と通信可能に接続されている複数のエリア端末の構成を示すブロック図である。
対象交通エリア9における四輪自動車2に搭載される車載装置群20は、例えば、運転者による運転を支援する車載運転支援装置21、運転者に各種情報を通知する通知装置22、運転中の運転者の状態を検出する運転主体状態センサ23、自車と協調支援装置6や自車近傍の他車との間の無線による通信を行う車載通信装置24、及び運転者が所有又は装着する携帯情報処理端末25等を含む。
車載運転支援装置21は、外界センサユニット、自車状態センサ、ナビゲーション装置、及び運転支援ECU等を備える。外界センサユニットは、自車の周囲を撮影する車外カメラユニットと、電磁波を用いることによって車外の対象を検出するレーダユニットやライダー(Light Detection and Ranging(LIDAR))ユニット等の自車に搭載された複数の車載外界センサと、これら車載外界センサによる検出結果に対してセンサフュージョン処理を行うことにより自車の周囲の状態に関する情報を取得する外部認識装置と、を備える。自車状態センサは、車速センサ、加速度センサ、舵角センサ、ヨーレートセンサ、位置センサ、及び方位センサ等、自車の走行状態に関する情報を取得するセンサによって構成される。ナビゲーション装置は、例えば、GNSS(Global Navigation Satelite System)衛星から受信した信号に基づいて自車の現在位置を特定するGNSS受信機や、地図情報を記憶する記憶装置等を備える。
運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、車線逸脱抑制制御、車線変更制御、先行車追従制御、誤発進抑制制御、衝突軽減ブレーキ制御、及び衝突回避制御等の運転支援制御を実行する。また運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、運転者による安全な運転を支援するための運転支援情報を生成し、通知装置22へ送信する。
ここで運転支援ECUは、自車を中心とした所定の衝突軽減ブレーキ作動範囲内に自車と接触可能性のある移動体が存在することを条件として、自車と他の移動体との接触による被害が軽減されるように自車の制動装置を自動で操作する衝突軽減ブレーキ制御を開始する。また運転支援ECUは、自車を中心とした所定の衝突回避操舵作動範囲内に自車と接触可能性のある移動体が存在することを条件として、自車と他の移動体との接触が回避されるように自車の操舵装置を自動で操作する衝突回避制御を開始する。以下では、衝突軽減ブレーキ作動範囲や衝突回避操舵操作範囲をまとめて「ADAS作動範囲」ともいう。
運転主体状態センサ23は、運転中の運転者の運転能力と相関のある情報の経時データを取得する様々な装置によって構成される。運転主体状態センサ23は、例えば、運転中の運転者の視線の向きや開眼の有無等を検出する車内カメラや、運転者が装着するシートベルトに設けられ運転者の脈拍や呼吸の有無等を検出するシートベルトセンサや、運転者が把持するステアリングに設けられ運転者の皮膚電位を検出するステアリングセンサや、運転者と同乗者との間の会話の有無を検出する車内マイク等によって構成される。
車載通信装置24は、運転支援ECUによって取得した情報(外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報や、実行中の運転支援制御に関する制御情報等を含む)や、運転主体状態センサ23によって取得した運転主体に関する情報等を協調支援装置6へ送信する機能と、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信し、受信した協調支援情報を通知装置22へ送信する機能と、を備える。
通知装置22は、車載運転支援装置21から送信される運転支援情報や協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいて定められた態様でマンマシンインターフェース(以下、「HMI(Human Machine Interface)」との略称で表記する場合もある)を作動させることにより、運転者の聴覚、視覚、及び触覚等を通じ、運転者に各種情報を通知する様々な装置によって構成される。
図3Aは、四輪自動車に搭載される通知装置22の構成を示すブロック図である。なお図3Aには、通知装置22のうち、特に協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づく制御に関わるブロックのみを図示する。
通知装置22は、運転者が認知可能な態様で作動するHMI220と、協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいてHMI220を作動させるHMI制御装置225と、を備える。
HMI220は、運転者が聴覚によって認知可能な態様で作動する音響装置221と、運転者が視覚によって認知可能な態様で作動するヘッドアップディスプレイ222と、運転者が触覚によって認知可能な態様で作動するシートベルト制御装置223及び座席振動装置224と、を備える。
音響装置221は、運転者が着座する運転席のヘッドレストに設けられ、指向性のあるバイノーラルサウンドを発音させることが可能なヘッドレストスピーカ221aと、運転席や助手席の近傍に設けられたメインスピーカ221bと、を備える。これらヘッドレストスピーカ221aやメインスピーカ221bは、HMI制御装置225からの指令に応じた音を発音する。ヘッドアップディスプレイ222は、運転中の運転者の視野内(例えば、フロントガラス)に、HMI制御装置225からの指令に応じた映像を表示する。シートベルト制御装置223は、HMI制御装置225からの指令に応じて運転者が装着するシートベルトの張力を変化させる。座席振動装置224は、HMI制御装置225からの指令に応じた振幅及び/又は振動数で運転者が着座する座席を振動させる。
HMI制御装置225は、運転者の運転能力(特に、認知能力)を健全化させるために定められた態様でHMI220を作動させる健全化通知を行う健全化制御装置226と、運転者に対し身近に迫るリスクの存在を認知させるために定められた態様でHMI220を作動させるリスク通知を行うリスク通知制御装置227と、を備える。後に説明するように、協調支援装置6から四輪自動車2に送信される協調支援情報には、健全化制御装置226による健全化通知のオン/オフを設定するための健全化通知設定値に関する情報や、リスク通知制御装置227によるリスク通知のオン/オフや後述の通知モードの種類を設定するためのリスク通知設定値に関する情報や、運転者に対し身近に迫るリスクに関する情報(以下、「リスク情報」ともいう)等が含まれる。
健全化制御装置226に入力される健全化通知設定値は、健全化制御装置226による健全化通知をオフに設定する“0”、及び健全化制御装置226による健全化通知をオンにする“1”の何れかの値に設定される。
健全化制御装置226は、健全化通知設定値が“0”である場合、健全化通知をオフに設定する。すなわち健全化制御装置226は、健全化通知設定値が“0”である場合、HMI220を作動させない。なおこれは、リスク通知制御装置227によるHMI220の作動を妨げるものではない。
健全化制御装置226は、健全化通知設定値が“1”である場合、健全化通知をオンに設定する。より具体的には、健全化制御装置226は、例えばヘッドレストスピーカ221aやメインスピーカ221bによって運転者が興味、関心を引く楽曲を発音させることによって運転者の運転能力を健全化させる。なおこの際、運転者の覚醒度合いを高めるため、楽曲のBPM(Beats Per Minute)を変化させたり、低音を強調させたりしてもよい。
このように健全化制御装置226は、運転者の運転能力を健全化させるためにHMI220を作動させることから、後述のリスク通知制御装置227によるリスク通知がオンに設定されている場合(すなわち、リスク通知設定値が“1”又は“2”である場合)、運転者が煩わしく感じないように、健全化通知をオフにしてもよい。また本実施形態では、健全化制御装置226は、ヘッドレストスピーカ221aやメインスピーカ221bを作動させることにより、主に運転者の聴覚を介してその運転能力を健全化させる場合について説明するが、本発明はこれに限らない。健全化制御装置226は、例えばシートベルト制御装置223や座席振動装置224を、作動させてもよい。
リスク通知制御装置227では、HMI220の作動対象装置及び作動態様の少なくとも何れかが異なる複数の通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。より具体的には、リスク通知制御装置227では、運転者に潜在的なリスクの存在を認知させることを目的とした気配通知モード、運転者に顕在化したリスクの存在及び/又はこのリスクの度合いを認知させることを目的としたアナログ通知モード、及び運転者に予測されるリスクを回避するために有益な情報を通知することを目的とした予測支援通知モードのうち少なくとも何れかの通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。このため、リスク通知制御装置227に入力されるリスク通知設定値は、リスク通知をオフに設定する“0”と、気配通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“1”と、アナログ通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“2”と、予測支援通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“3”と、気配通知モード及び予測支援通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“4”と、アナログ通知モード及び予測支援通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“5”と、の何れかの値に設定される。
リスク通知制御装置227は、リスク通知設定値が“0”である場合、リスク通知をオフに設定する。すなわちリスク通知制御装置227は、リスク通知設定値が“0”である場合、HMI220を作動させない。なおこれは、健全化制御装置226によるHMI220の作動を妨げるものではない。
リスク通知制御装置227は、リスク通知設定値が“1”である場合、通知モードを気配通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
リスク通知制御装置227は、リスク通知設定値が“2”である場合、通知モードをアナログ通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
リスク通知制御装置227は、リスク通知設定値が“3”である場合、通知モードを予測支援通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
リスク通知制御装置227は、リスク通知設定値が“4”である場合、通知モードを気配通知モード及び予測支援通知モードに設定するとともに、これら設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
またリスク通知制御装置227は、リスク通知設定値が“5”である場合、通知モードをアナログ通知モード及び予測支援通知モードに設定するとともに、これら設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
ここでリスク通知制御装置227は、通知モードが予測支援通知モードに設定されている場合、協調支援装置6から送信されるリスク情報に基づいて、運転者に対し身近に迫るリスクを回避するために有益なリスク回避支援情報を生成するとともに、このリスク回避支援情報を運転者が聴覚や視覚によって認知可能な態様でHMI220の音響装置221やヘッドアップディスプレイ222を作動させる。ここでリスク回避支援情報には、自車と接触する可能性がある交通参加者(以下、「リスク対象」ともいう)の位置に関する情報や、自車とリスク対象とが接触する可能性のある地点(以下、「リスク発生地点」ともいう)に関する情報や、運転者に対しリスク対象に対する注意を喚起する内容の情報が含まれる。
より具体的には、リスク通知制御装置227は、運転者が運転する四輪自動車の前方に不健全な状態のライダーが運転する自動二輪車が存在する場合、この自動二輪車との接触を回避するためのリスク回避支援情報として、「二輪の危険な右折に注意して下さい」といった内容のメッセージを音響装置221によって発音したりヘッドアップディスプレイ222に表示させたりする。またこの際、リスク通知制御装置227は、この自動二輪車との接触を回避するためのリスク回避支援情報として、この自動二輪車の現在位置や予測位置を指し示す矢印の画像をヘッドアップディスプレイ222によって表示させてもよい。
またリスク通知制御装置227は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、運転者に煩わしさを感じさせない態様でHMI220を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在を運転者に自然に認知させる。このように気配通知モードでは、リスク対象の存在を運転者に煩わしさを感じさせないよう自然に認知させるため、リスク通知制御装置227は、HMI220に含まれる複数の装置のうち、特に運転者の聴覚に訴えるヘッドレストスピーカ221aを作動させることが好ましい。より具体的には、リスク通知制御装置227は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、ヘッドレストスピーカ221aによって、リスク対象の位置又はリスク発生地点の位置へ向けられた指向性のあるバイノーラルサウンドによる耳慣れた効果音を小音量で発音させることにより、運転者の視線をリスク対象の位置又はリスク発生地点へ自然に向けさせる。
またリスク通知制御装置227は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、上述の気配通知モードとは異なる態様でHMI220を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在及びこのリスク対象に対するリスク度合いを運転者に強く認知させる。このようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在を運転者に強く認知させるため、リスク通知制御装置227は、気配通知モードで定められる態様よりも通知強度が高い態様でHMI220を作動させる。ここで通知強度とは、運転者の関心や注意を引き付ける強さをいう。より具体的には、リスク通知制御装置227は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、ヘッドレストスピーカ221aやメインスピーカ221bによって、気配通知モードの下で発音される効果音よりも大きな音量のブザー音やパルス音を発音させる。これらブザー音やパルス音は、気配通知モードの下で発音される効果音と比較して運転者にとって耳慣れない音でありかつ大音量であるため、気配通知モードの下で発音される効果音よりも通知強度が高い。
なお本実施形態では、リスク通知制御装置227は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、音響装置221を作動させる場合について説明するが、本発明はこれに限らない。リスク通知制御装置227は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、音響装置221を作動させる代わりに、シートベルト制御装置223を作動させ、シートベルトの張力を変化させたり、座席振動装置224を作動させ、座席を振動させたりしてもよい。このようにシートベルト制御装置223や座席振動装置224は、運転者の触覚に訴える態様で作動することから、気配通知モードの下で発音される効果音よりも通知強度が高い。またリスク通知制御装置227は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、音響装置221、シートベルト制御装置223、及び座席振動装置224を組み合わせて作動させてもよい。
また上述のようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在に加えて、このリスク対象に対するリスク度合いを運転者に強く認知させるため、リスク通知制御装置227は、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象に対するリスク度合い(例えば、リスク対象に対する衝突予測時間)に応じて通知強度を変化させることが好ましい。具体的には、リスク通知制御装置227は、リスク度合いが高くなるほど(すなわち、衝突予測時間が短くなるほど)、ブザー音の音量を大きくしたり、パルス音の音量を大きくしたり、パルス音の間隔を短くしたりし、通知強度を高くしてもよい。上述のようにシートベルト制御装置223を作動させる場合、リスク通知制御装置227は、リスク度合いが高くなるほどシートベルトの張力を大きくし、通知強度を高くしてもよい。また上述のように座席振動装置224を作動させる場合、リスク通知制御装置227は、リスク度合いが高くなるほど座席の振動の振幅を大きくし、通知強度を高くしてもよい。
またリスク通知制御装置227は、このようにリスク度合いに応じて通知強度を変化させる場合、上述の運転支援ECUによる衝突軽減ブレーキ制御や衝突回避操舵制御の実行が開始される時点、換言すればリスク対象が自車のADAS作動範囲に侵入する時点において、通知強度が最大になるようにHMI220を作動させることが好ましい。
図2に戻り、携帯情報処理端末25は、例えば、四輪自動車2の運転者が装着するウェアラブル端末や、運転者が保有するスマートフォン等によって構成される。ウェアラブル端末は、心拍数、血圧及び血中酸素飽和度等の運転者の生体情報を測定し、この生体情報の測定データを協調支援装置6へ送信する機能や、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信し、この協調支援情報に応じたメッセージを、画像、音声、警告音、及び振動等によって運転者に通知する機能を備える。またスマートフォンは、運転者の位置情報、移動加速度、及びスケジュール情報等の運転者に関する情報を協調支援装置6へ送信する機能や、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信し、この協調支援情報に応じたメッセージを、画像、音声、警告音、メロディ、及び振動等によって運転者に通知する機能を備える。
対象交通エリア9における自動二輪車3に搭載される車載装置群30は、例えば、ライダーによる運転を支援する車載運転支援装置31、ライダーに各種情報を通知する通知装置32、運転中のライダーの状態を検出するライダー状態センサ33、自車と協調支援装置6や自車近傍の他車との間の無線による通信を行う車載通信装置34、及びライダーが所有又は装着する携帯情報処理端末35等を含む。
車載運転支援装置31は、外界センサユニット、自車状態センサ、ナビゲーション装置、及び運転支援ECU等を備える。外界センサユニットは、自車の周囲を撮影する車外カメラユニットと、電磁波を用いることによって車外の対象を検出するレーダユニットやライダーユニット等の自車に搭載された複数の車載外界センサと、これら車載外界センサによる検出結果に対してセンサフュージョン処理を行うことにより自車の周囲の状態に関する情報を取得する外部認識装置と、を備える。自車状態センサは、車速センサ、及び5軸又は6軸の慣性計測装置等、自車の走行状態に関する情報を取得するセンサによって構成される。ナビゲーション装置は、例えば、GNSS衛星から受信した信号に基づいて現在位置を特定するGNSS受信機や、地図情報を記憶する記憶装置等を備える。
運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、車線維持制御、車線逸脱抑制制御、車線変更制御、先行車追従制御、誤発進抑制制御、及び衝突軽減ブレーキ制御等の運転支援制御を実行する。また運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、ライダーによる安全な運転を支援するための運転支援情報を生成し、通知装置32へ送信する。
ここで運転支援ECUは、自車を中心とした所定の衝突軽減ブレーキ作動範囲(以下、四輪自動車2に対して定義される用語と合わせて「ADAS作動範囲」ともいう)内に自車と接触可能性のある移動体が存在することを条件として、自車と他の移動体との接触による被害が軽減されるように自車の制動装置を自動で操作する衝突軽減ブレーキ制御を開始する。
ライダー状態センサ33は、運転中のライダーの運転能力と相関のある情報を取得する様々な装置によって構成される。ライダー状態センサ33は、例えば、ライダーが着座するシートに設けられライダーの脈拍や呼吸の有無等を検出するシートセンサや、ライダーが装着するヘルメットに設けられ、ライダーの脈拍、呼吸の有無、及び皮膚電位等を検出するヘルメットセンサ等によって構成される。
車載通信装置34は、運転支援ECUによって取得した情報(外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報や、実行中の運転支援制御に関する制御情報等を含む)や、ライダー状態センサ33によって取得したライダーに関する情報等を協調支援装置6へ送信する機能と、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信し、受信した協調支援情報を通知装置32へ送信する機能と、を備える。
通知装置32は、車載運転支援装置21から送信される運転支援情報や協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させることにより、ライダーの聴覚、視覚、及び触覚等を通じ、ライダーに各種情報を通知する様々な装置によって構成される。
図3Bは、自動二輪車に搭載される通知装置32の構成を示すブロック図である。なお図3Bには、通知装置32のうち、特に協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づく制御に関わるブロックのみを図示する。
通知装置32は、ライダーが認知可能な態様で作動するHMI320と、協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいてHMI320を作動させるHMI制御装置325と、を備える。
HMI320は、ライダーが聴覚によって認知可能な態様で作動するヘッドマウントスピーカ321と、ライダーが視覚によって認知可能な態様で作動するヘッドアップディスプレイ322と、を備える。
ヘッドマウントスピーカ321は、ライダーが装着するヘルメットに設けられ、指向性のあるバイノーラルサウンドを発音させることが可能となっている。ヘッドマウントスピーカ321は、HMI制御装置325からの指令に応じた音を発音する。ヘッドアップディスプレイ322は、運転中のライダーの視野内(例えば、ヘルメットのシールド)に、HMI制御装置325からの指令に応じた映像を表示する。
HMI制御装置325は、ライダーの運転能力(特に、認知能力)を健全化させるために定められた態様でHMI320を作動させる健全化通知を行う健全化制御装置326と、ライダーに対し身近に迫るリスクの存在を認知させるために定められた態様でHMI320を作動させるリスク通知を行うリスク通知制御装置327と、を備える。後に説明するように、協調支援装置6から自動二輪車3に送信される協調支援情報には、健全化制御装置326による健全化通知のオン/オフを設定するための健全化通知設定値に関する情報や、リスク通知制御装置327によるリスク通知のオン/オフや通知モードの種類を設定するためのリスク通知設定値に関する情報や、ライダーに対し身近に迫るリスクに関するリスク情報等が含まれる。
健全化制御装置326に入力される健全化通知設定値は、健全化制御装置326による健全化通知をオフに設定する“0”、及び健全化制御装置326による健全化通知をオンにする“1”の何れかの値に設定される。
健全化制御装置326は、健全化通知設定値が“0”である場合、健全化通知をオフに設定する。すなわち健全化制御装置326は、健全化通知設定値が“0”である場合、HMI320を作動させない。なおこれは、リスク通知制御装置327によるHMI320の作動を妨げるものではない。
健全化制御装置326は、健全化通知設定値が“1”である場合、健全化通知をオンに設定する。より具体的には、健全化制御装置326は、例えばヘッドマウントスピーカ321によってライダーが興味、関心を引く楽曲を発音させることによってライダーの運転能力を健全化させる。なおこの際、ライダーの覚醒度合いを高めるため、楽曲のBPMを変化させたり、低音を強調させたりしてもよい。
このように健全化制御装置326は、ライダーの運転能力を健全化させるためにHMI320を作動させることから、後述のリスク通知制御装置327によるリスク通知がオンに設定されている場合(すなわち、リスク通知設定値が“1”又は“2”である場合)、ライダーが煩わしく感じないように、健全化通知をオフにしてもよい。
リスク通知制御装置327では、HMI320の作動対象装置及び作動態様の少なくとも何れかが異なる複数の通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。より具体的には、リスク通知制御装置327では、ライダーに潜在的なリスクの存在を認知させることを目的とした気配通知モード、ライダーに顕在化したリスクの存在及び/又はこのリスクの度合いを認知させることを目的としたアナログ通知モード、及びライダーに予測されるリスクを回避するために有益な情報を通知することを目的とした予測支援通知モードのうち少なくとも何れかの通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。このため、リスク通知制御装置327に入力されるリスク通知設定値は、リスク通知をオフに設定する“0”と、気配通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“1”と、アナログ通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“2”と、予測支援通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“3”と、気配通知モード及び予測支援通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“4”と、アナログ通知モード及び予測支援通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“5”と、の何れかの値に設定される。
リスク通知制御装置327は、リスク通知設定値が“0”である場合、リスク通知をオフに設定する。すなわちリスク通知制御装置327は、リスク通知設定値が“0”である場合、HMI320を作動させない。なおこれは、健全化制御装置326によるHMI320の作動を妨げるものではない。
リスク通知制御装置327は、リスク通知設定値が“1”である場合、通知モードを気配通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
リスク通知制御装置327は、リスク通知設定値が“2”である場合、通知モードをアナログ通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
リスク通知制御装置327は、リスク通知設定値が“3”である場合、通知モードを予測支援通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
リスク通知制御装置327は、リスク通知設定値が“4”である場合、通知モードを気配通知モード及び予測支援通知モードに設定するとともに、これら設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
またリスク通知制御装置327は、リスク通知設定値が“5”である場合、通知モードをアナログ通知モード及び予測支援通知モードに設定するとともに、これら設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
ここでリスク通知制御装置327は、通知モードが予測支援通知モードに設定されている場合、協調支援装置6から送信されるリスク情報に基づいて、ライダーに対し身近に迫るリスクを回避するために有益なリスク回避支援情報を生成するとともに、このリスク回避支援情報をライダーが聴覚や視覚によって認知可能な態様でHMI320のヘッドマウントスピーカ321やヘッドアップディスプレイ322を作動させる。ここでリスク回避支援情報には、自車と接触する可能性があるリスク対象の位置に関する情報や、リスク発生地点に関する情報や、ライダーに対しリスク対象に対する注意を喚起する内容の情報が含まれる。
より具体的には、リスク通知制御装置327は、ライダーが運転する自動二輪車の前方に不健全な状態の運転者が運転する四輪自動車が存在する場合、この四輪自動車との接触を回避するためのリスク回避支援情報として、「四輪の危険な右折に注意して下さい」といった内容のメッセージをヘッドマウントスピーカ321によって発音したりヘッドアップディスプレイ322に表示させたりする。またこの際、リスク通知制御装置327は、この四輪自動車との接触を回避するためのリスク回避支援情報として、この四輪自動車の現在位置や予測位置を指し示す矢印の画像をヘッドアップディスプレイ322によって表示させてもよい。
またリスク通知制御装置327は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、ライダーに煩わしさを感じさせない態様でHMI320を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在をライダーに自然に認知させる。このように気配通知モードでは、リスク対象の存在をライダーに煩わしさを感じさせないよう自然に認知させるため、リスク通知制御装置327は、HMI320に含まれる複数の装置のうち、特にライダーの聴覚に訴えるヘッドマウントスピーカ321を作動させることが好ましい。より具体的には、リスク通知制御装置327は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、ヘッドマウントスピーカ321によって、リスク対象の位置又はリスク発生地点の位置へ向けられた指向性のあるバイノーラルサウンドによる耳慣れた効果音を小音量で発音させることにより、ライダーの視線をリスク対象の位置又はリスク発生地点へ自然に向けさせる。
またリスク通知制御装置327は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、上述の気配通知モードとは異なる態様でHMI320を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在及びこのリスク対象に対するリスク度合いをライダーに強く認知させる。このようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在をライダーに強く認知させるため、リスク通知制御装置327は、気配通知モードで定められる態様よりも通知強度が高い態様でHMI320を作動させる。より具体的には、リスク通知制御装置327は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、ヘッドマウントスピーカ321によって、気配通知モードの下で発音される効果音よりも大きな音量のブザー音やパルス音を発音させる。これらブザー音やパルス音は、気配通知モードの下で発音される効果音と比較してライダーにとって耳慣れない音でありかつ大音量であるため、気配通知モードの下で発音される効果音よりも通知強度が高い。
また上述のようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在に加えて、このリスク対象に対するリスク度合いをライダーに強く認知させるため、リスク通知制御装置327は、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象に対するリスク度合い(例えば、リスク対象に対する衝突予測時間)に応じて通知強度を変化させることが好ましい。具体的には、リスク通知制御装置327は、リスク度合いが高くなるほど(すなわち、衝突予測時間が短くなるほど)、ブザー音の音量を大きくしたり、パルス音の音量を大きくしたり、パルス音の間隔を短くしたりし、通知強度を高くしてもよい。
またリスク通知制御装置327は、このようにリスク度合いに応じて通知強度を変化させる場合、上述の運転支援ECUによる衝突軽減ブレーキ制御の実行が開始される時点、換言すればリスク対象が自車のADAS作動範囲に侵入する時点において、通知強度が最大になるようにHMI320を作動させることが好ましい。
図2に戻り、対象交通エリア9における歩行者4が所有又は装着する携帯情報処理端末40は、例えば、歩行者4が装着するウェアラブル端末や、歩行者4が保有するスマートフォン等によって構成される。ウェアラブル端末は、心拍数、血圧及び血中酸素飽和度等の歩行者4の生体情報を測定し、この生体情報の測定データを協調支援装置6へ送信したり、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信したりする機能を備える。またスマートフォンは、歩行者4の位置情報、移動加速度、及びスケジュール情報等の歩行者4に関する歩行者情報を協調支援装置6へ送信したり、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信したりする機能を備える。
また携帯情報処理端末40は、受信した協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させることにより、歩行者の聴覚、視覚、及び触覚等を通じ、歩行者に各種情報を通知する通知装置42を備える。
図3Cは、携帯情報処理端末40に搭載される通知装置42の構成を示すブロック図である。なお図3Cには、通知装置42のうち、特に協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づく制御に関わるブロックのみを図示する。
通知装置42は、歩行者が認知可能な態様で作動するHMI420と、協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいてHMI420を作動させるHMI制御装置425と、を備える。
HMI420は、歩行者が聴覚によって認知可能な態様で作動するスピーカ421と、歩行者が触覚によって認知可能な態様で作動する加振装置424と、を備える。
スピーカ421は、HMI制御装置425からの指令に応じた音を発音する。加振装置424は、HMI制御装置425からの指令に応じた態様で振幅及び/又は振動数で携帯情報処理端末40の本体を振動させる。
後に説明するように、協調支援装置6から歩行者が所有する携帯情報処理端末40に送信される協調支援情報には、HMI制御装置425によるリスク通知のオン/オフや通知モードの種類を設定するためのリスク通知設定値に関する情報や、歩行者に対し身近に迫るリスクに関するリスク情報等が含まれる。
HMI制御装置425では、HMI420の作動対象装置及び作動態様の少なくとも何れかが異なる複数の通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。より具体的には、HMI制御装置425では、歩行者に潜在的なリスクの存在を認知させることを目的とした気配通知モード、及び歩行者に顕在化したリスクの存在及び/又はこのリスクの度合いを認知させることを目的としたアナログ通知モードのうち少なくとも何れかの通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。このため、HMI制御装置425に入力されるリスク通知設定値は、HMI制御装置425によるリスク通知をオフに設定する“0”と、HMI制御装置425によるリスク通知をオンに設定するとともに通知モードを気配通知モードに設定する“1”と、HMI制御装置425によるリスク通知をオンに設定するとともに通知モードをアナログ通知モードに設定する“2”と、の何れかの値に設定される。
HMI制御装置425は、リスク通知設定値が“0”である場合、リスク通知をオフに設定する。すなわちHMI制御装置425、リスク通知設定値が“0”である場合、HMI420を作動させない。
HMI制御装置425は、リスク通知設定値が“1”である場合、通知モードを気配通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でリスク通知をオンにする。
またHMI制御装置425は、リスク通知設定値が“2”である場合、通知モードをアナログ通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
ここでHMI制御装置425は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、歩行者に煩わしさを感じさせない態様でHMI420を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在を歩行者に自然に認知させる。より具体的には、HMI制御装置425は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、加振装置424を作動させることにより、携帯情報処理端末40の本体を所定の振幅及び周波数の下で振動させる。
またHMI制御装置425は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、上述の気配通知モードとは異なる態様でHMI420を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク態様の存在及びこのリスク対象に対するリスク度合いを歩行者に強く認知させる。このようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在を歩行者に強く認知させるため、HMI制御装置425は、気配通知モードで定められる態様よりも通知強度が高い態様でHMI420を作動させる。より具体的には、HMI制御装置425は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、スピーカ421によってブザー音、パルス音、及びリスクが存在する旨のメッセージ等を発音させる。
また上述のようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在に加えて、このリスク対象に対するリスク度合いを歩行者に強く認知させるため、HMI制御装置425は、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象に対するリスク度合い(例えば、リスク対象に対する衝突予測時間)に応じて通知強度を変化させることが好ましい。具体的には、HMI制御装置425は、リスク度合いが高くなるほど(すなわち、衝突予測時間が短くなるほど)、ブザー音の音量を大きくしたり、パルス音の音量を大きくしたり、パルス音の間隔を短くしたり、メッセージの音量を大きくしたり、メッセージの内容を変化させたりし、通知強度を高くしてもよい。
図2に戻り、インフラカメラ56は、対象交通エリアにおける車道、交差点、及び歩道を含む交通インフラ設備や、これら車道、交差点、及び歩道等を移動する移動体や歩行者の画像を撮影し、得られた画像情報を協調支援装置6へ送信する。
信号制御装置55は、信号機を制御するとともに、対象交通エリアに設けられた信号機の現在の点灯色や点灯色を切り替えるタイミング等に関する信号機状態情報を協調支援装置6へ送信する。
協調支援装置6は、上述のような対象交通エリアに存在する複数のエリア端末から取得した情報に基づいて、各交通参加者の間のコミュニケーションや周囲の交通環境の認識を促すための協調支援情報を支援対象とする交通参加者毎に生成し、各交通参加者に通知することにより、対象交通エリアにおける交通参加者の安全かつ円滑な交通を支援するコンピュータである。なお本実施形態では、対象交通エリアに存在する複数の交通参加者のうち、協調支援装置6において生成した協調支援情報を受信し、受信した協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させる手段(例えば、車載装置群20,30、携帯情報処理端末40、通知装置22,32,42)を備える交通参加者を協調支援装置6の支援対象とする。
協調支援装置6は、対象交通エリアにおける人及び移動体を個々の交通参加者として認識する対象交通エリア認識ユニット60と、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている移動体の運転主体の運転能力と相関のある運転主体状態情報を取得する運転主体情報取得ユニット61と、対象交通エリアにおける交通参加者の将来を予測する予測ユニット62と、対象交通エリア認識ユニット60により支援対象として認識されている個々の交通参加者毎に健全化通知のオン/オフを設定する健全化通知設定ユニット63と、対象交通エリア認識ユニット60により支援対象として認識されている個々の交通参加者毎にリスク通知の通知モードを設定するリスク通知設定ユニット64と、対象交通エリア認識ユニット60により支援対象として認識されている個々の交通参加者毎に生成した協調支援情報を送信する協調支援情報通知ユニット65と、対象交通エリアの交通環境に関する情報が蓄積された交通環境データベース67と、予め登録された運転主体による過去の運転履歴に関する情報が蓄積された運転履歴データベース68と、を備える。
交通環境データベース67には、予め登録された対象交通エリアの地図情報(例えば、車道の幅、車線数、制限速度、歩道の幅、車道と歩道との間のガードレールの有無、及び横断歩道の位置等)や、対象交通エリアのうち特にリスクの高いハイリスクエリアに関するリスクエリア情報等、対象交通エリアにおける交通参加者の交通環境に関する情報が記憶されている。以下では、交通環境データベース67に記憶されている情報を登録交通環境情報ともいう。
運転履歴データベース68には、予め登録された運転主体の過去の運転履歴に関する情報が、この運転主体が所有する移動体の登録ナンバーと関連付けられた状態で記憶されている。このため、後述の対象交通エリア認識ユニット60により、認識している移動体の登録ナンバーを特定することができれば、この登録ナンバーに基づいて運転履歴データベース68を検索することにより、認識している移動体の運転主体の過去の運転履歴を取得することができる。以下では、運転履歴データベース68に記憶されている情報を登録運転履歴情報ともいう。
対象交通エリア認識ユニット60は、対象交通エリアにおける上記エリア端末(車載装置群20,30、携帯情報処理端末40、インフラカメラ56、及び信号制御装置55)から送信される情報、及び交通環境データベース67から読み込んだ登録交通環境情報に基づいて、対象交通エリアにおける人又は移動体である各交通参加者及びこの対象交通エリアにおける各交通参加者の交通環境を含む認識対象を認識するとともに、これら認識対象に関する認識情報を取得する。
ここで車載装置群20に含まれる車載運転支援装置21及び車載通信装置24から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される情報や、車載装置群30に含まれる車載運転支援装置31及び車載通信装置34から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される情報には、外界センサユニットによって取得した自車の周囲の交通参加者や交通環境に関する状態に関する情報や、自車状態センサやナビゲーション装置等によって取得した一交通参加者としての自車の状態に関する情報等が含まれている。また携帯情報処理端末40から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される情報には、位置や移動加速度等の一交通参加者としての歩行者の状態に関する情報が含まれている。またインフラカメラ56から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される画像情報には、対象交通エリアにおける車道、交差点、及び歩道等の交通インフラ設備の外観や、この対象交通エリアを移動する交通参加者の外観等、各交通参加者やその交通環境に関する情報が含まれる。また信号制御装置55から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される信号機状態情報には、信号機の現在の点灯色や点灯色を切り替えるタイミング等の各交通参加者の交通環境に関する情報が含まれる。また対象交通エリア認識ユニット60が交通環境データベース67から読み込む登録交通環境情報には、対象交通エリアの地図情報やリスクエリア情報等の各交通参加者の交通環境に関する情報が含まれる。
したがって対象交通エリア認識ユニット60では、これらエリア端末から送信される情報に基づいて、対象交通エリアにおける各交通参加者の対象交通エリアにおける位置、移動速度、移動加速度、移動の向き、移動体の車種、移動体の車格、移動体の登録ナンバー、歩行者の構成人数、及び歩行者の年齢層等を各交通参加者の認識情報(以下、「交通参加者認識情報」ともいう)を取得することができる。また対象交通エリア認識ユニット60では、これらエリア端末から送信される情報に基づいて、車道の幅、車線数、制限速度、歩道の幅、車道と歩道との間のガードレールの有無、信号機の点灯色及びその切り替えタイミング、並びにリスクエリア情報等を対象交通エリアにおける各交通参加者の交通環境の認識情報(以下、「交通環境認識情報」ともいう)を取得することができる。
従って本実施形態において、対象交通エリアにおける交通参加者及び交通環境を認識する認識手段は、対象交通エリア認識ユニット60と、四輪自動車2の車載装置群20に含まれる車載運転支援装置21、車載通信装置24及び携帯情報処理端末25と、自動二輪車3の車載装置群30に含まれる車載運転支援装置31、車載通信装置34及び携帯情報処理端末35と、歩行者4の携帯情報処理端末40と、インフラカメラ56と、信号制御装置55と、交通環境データベース67と、によって構成される。
対象交通エリア認識ユニット60は、以上のようにして取得した交通参加者認識情報及び交通環境認識情報を、運転主体情報取得ユニット61、予測ユニット62、健全化通知設定ユニット63、リスク通知設定ユニット64、及び協調支援情報通知ユニット65等へ送信する。
運転主体情報取得ユニット61は、対象交通エリアにおける上記エリア端末(特に、車載装置群20,30)から送信される情報及び運転履歴データベース68から読み込んだ登録運転履歴情報に基づいて、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている移動体の運転主体の現在の運転能力と相関のある運転主体状態情報及び運転主体特性情報を取得する。
より具体的には、運転主体情報取得ユニット61は、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている四輪自動車の運転主体が人である場合、この四輪自動車に搭載される車載装置群20から送信される情報を運転者の運転主体状態情報として取得する。また運転主体情報取得ユニット61は、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている自動二輪車の運転主体が人である場合、この自動二輪車に搭載される車載装置群30から送信される情報をライダーの運転主体状態情報として取得する。
ここで車載装置群20に含まれる運転主体状態センサ23及び車載通信装置24から運転主体情報取得ユニット61へ送信される情報には、運転中の運転者の視線の向き及び開眼の有無等の外観情報や、脈拍、呼吸の有無、及び皮膚電位等の生体情報や、会話の有無等の音声情報等に関する経時データであって、運転中の運転者の運転能力と相関のある情報が含まれる。また車載装置群30に含まれるライダー状態センサ33及び車載通信装置34から運転主体情報取得ユニット61へ送信される情報には、ライダーの脈拍、呼吸の有無、及び皮膚電位等の生体情報に関する経時データであって、運転中のライダーの運転能力と相関のある情報が含まれる。また車載装置群20,30に含まれる携帯情報処理端末25,35から運転主体情報取得ユニット61へ送信される情報には、運転者やライダー個人のスケジュール情報が含まれる。運転者やライダーは、例えば逼迫したスケジュールの下で移動体を運転している場合、焦りが生じてしまい、運転能力が低下する場合がある。このため運転者やライダー個人のスケジュール情報は、自身の運転能力と相関のある情報であるといえる。
運転主体情報取得ユニット61は、以上の手順によって取得した運転主体に対する運転主体状態情報及び運転履歴データベース68から読み込んだ登録運転履歴情報の両方又は何れかを用いることにより、運転中の運転主体の現在の運転能力と相関のある運転主体の運転に関する特性(例えば、急な車線変更の過多、及び急な加減速の過多等)に関する運転主体特性情報を取得する。
運転主体情報取得ユニット61は、以上のようにして取得した運転主体の運転主体状態情報及び運転主体特性情報を、予測ユニット62、健全化通知設定ユニット63、リスク通知設定ユニット64、及び協調支援情報通知ユニット65等へ送信する。
予測ユニット62は、対象交通エリアの中の一部の交通エリアを監視エリアとして抽出し、この監視エリアにおける複数の交通参加者の将来におけるリスクを、対象交通エリア認識ユニット60によって取得された交通参加者認識情報及び交通環境認識情報と、運転主体情報取得ユニット61によって取得された運転主体状態情報及び運転主体特性情報と、に基づいて予測する。より具体的には、予測ユニット62は、対象交通エリア認識ユニット60によって取得した交通参加者認識情報及び交通環境認識情報に基づいて監視エリアを模擬した仮想空間を構築するとともに、交通参加者認識情報、交通環境認識情報、運転主体状態情報、及び運転主体特性情報に基づく仮想空間上でのシミュレーションを行うことによって監視エリアにおける各交通参加者の将来を予測する。
ここで対象交通エリアは、例えば市町村単位で定められる比較的広範囲の交通エリアである。これに対し、監視エリアは、例えば交差点や特定施設の近傍等、四輪自動車が法定速度で移動した場合に数十秒程度で通過し得る交通エリアである。すなわち、監視エリアは、対象交通エリアより狭いが、各移動体に搭載される運転支援ECUによるADAS作動範囲よりも広い。
図4は、予測ユニット62の具体的な構成を示す機能ブロック図である。
予測ユニット62は、予測対象決定部622と、挙動推定部623と、シミュレーター626と、を備え、これらを用いることによって監視エリアにおける複数の予測対象の将来におけるリスクを予測する。
予測対象決定部622は、対象交通エリア認識ユニット60によって認識される複数の交通参加者の中から、監視エリア内に存在するN者(Nは、2以上の任意の整数)の交通参加者を抽出し、抽出した第1交通参加者、第2交通参加者、第3交通参加者、…、第N交通参加者を予測対象として決定する。
挙動推定部623は、対象交通エリア認識ユニット60によって取得される交通参加者認識情報及び交通環境認識情報(以下、これらをまとめて「認識情報」ともいう)並びに運転主体情報取得ユニット61によって取得される運転主体状態情報及び運転主体特性情報(以下、これらをまとめて「運転主体情報」ともいう)に基づいて、予測対象決定部622によって予測対象として決定された第1~第N交通参加者の中から移動体を特定するとともに、これら交通参加者として認識されている各移動体の運転主体が将来取りうる挙動を推定する。挙動推定部623では、これら運転主体が将来取りうる挙動は、複数のパターン挙動として予め定められており、認識情報及び運転主体情報のうち少なくとも認識情報を含む挙動推定入力とこれら予め定められた複数のパターン挙動の中の少なくとも1つとを関連付けることによって、各移動体の運転主体が将来取りうる挙動を推定する。
ここで運転主体が取りうるパターン挙動には、例えば、加速操作、減速操作、操舵操作、車線維持操作、周辺確認行為、及び車線変更操作等の運転主体の作為的な挙動の他、前方認知遅れ、後方認知遅れ、及び側方認知遅れ等の運転主体の不作為的な挙動も含まれる。
挙動推定部623は、上記挙動推定入力に基づき、他の交通参加者を含む周囲の交通環境を考慮の上、運転主体の運転能力の低下を予め定められた能力要素ごとに推定する運転能力推定部624と、この運転能力推定部624によって低下していると推定された能力要素と上述の複数のパターン挙動の中の少なくとも1つとを、交通環境を考慮して関連付ける関連付け部625と、を備え、これら運転能力推定部624及び関連付け部625を用いることによって、各移動体の運転主体が将来取りうる挙動を複数のパターン挙動の中から決定する。
ここで運転能力推定部624では、移動体を適切に運転するために運転主体が備えるべき運転能力を、認知能力、予測能力、判断能力、及び操作能力の少なくとも4つの能力要素に分ける。認知能力とは、運転主体が自車並びに自車の周囲の交通環境及び交通参加者の状態を適切に認知する能力である。予測能力とは、運転主体が自車並びに自車の周囲の交通環境及び交通参加者の変化を適切に予測する能力である。判断能力とは、運転主体が自車並びに周囲の交通環境及び交通参加者の状態に応じて適切に判断する能力である。また操作能力とは、運転主体が自車を適切に操作する能力である。運転主体が取りうる挙動は、低下する能力要素に応じて異なる。このため挙動推定部623では、以上のように挙動推定入力に基づいて運転主体の運転能力の低下を上記能力要素ごとに推定することにより、挙動推定入力と関連付けられるパターン挙動の数を絞り込むことができる。
挙動推定部623は、以上の手順により、複数の予測対象のうち対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている各移動体の運転主体の将来の挙動を推定する。
シミュレーター626は、認識情報に基づいて対象交通エリアを模擬した仮想空間を構築するとともに、この仮想空間上における認識情報及び運転主体情報に基づくシミュレーションを行うことによって予測対象として決定された第1~第N交通参加者の各々の将来の振る舞いと第1~第N交通参加者の各々の将来における発生し得る接触リスクを予測する。より具体的には、シミュレーター626では、第1~第N交通参加者に対する認識情報及び挙動推定部623によって各移動体の運転主体ごとに関連付けられるパターン挙動に基づくシミュレーションを、認識情報に基づいて構築した仮想空間上で行うことによって、予測対象として決定された第1~第N交通参加者の各々の現在から所定の予測時間先の将来までの間の振る舞いと、各々の現在から予測時間先の将来までの間における接触リスクと、を予測する。
図2に戻り、予測ユニット62は、以上の手順によって複数の予測対象に対する振る舞い及び接触リスクを予測した後、これら予測結果に関する情報(例えば、接触リスクが発生する地点の位置に関する情報、接触リスクに関与する当事者の位置、速度、及び移動軌跡等に関する情報、及び接触リスクが発生すると予測されるまでにかかる時間(すなわち、衝突予測時間))をリスク通知設定ユニット64や協調支援情報通知ユニット65へ送信する。
健全化通知設定ユニット63は、対象交通エリアに存在する複数の交通参加者のうち、対象交通エリア認識ユニット60によって支援対象かつ移動体として認識されている交通参加者を設定対象とし、個々の設定対象毎に健全化通知のオン/オフを設定する。なお後に詳述するように、上述の予測ユニット62によって発生すると予測される接触リスクの当事者となる交通参加者は、リスク通知設定ユニット64によるリスク通知の設定対象となる。このため健全化通知設定ユニット63の設定対象からは、リスク通知設定ユニット64の設定対象を除くことが好ましい。
より具体的には、始めに健全化通知設定ユニット63は、運転主体情報取得ユニット61から移動体である各設定対象の運転主体と関連付けられた運転主体状態情報及び運転主体特性情報を取得する。また健全化通知設定ユニット63は、取得した運転主体状態情報及び運転主体特性情報に基づいて、個々の設定対象毎にその運転主体の現在の健全度を算出する。また健全化通知設定知ユニット63は、各設定対象に対して算出した健全度が所定の健全度閾値未満である場合、その設定対象の運転主体は不健全な状態であると判断し、その設定対象の健全化通知をオンに設定するべく、その設定対象に対する健全化通知設定値を“1”に設定する。また健全化通知設定ユニット63は、各設定対象に対して算出した健全度が健全度閾値以上である場合、その設定対象の運転主体は健全な状態であると判断し、その設定対象の健全化通知をオフに設定するべく、その設定対象に対する健全化通知設定値を“0”に設定する。
健全化通知設定ユニット63は、以上のような手順によって対象交通エリア内における複数の設定対象に対する健全化通知をオン又はオフに設定する。健全化通知設定ユニット63によって各設定対象に対して設定された健全化通知設定値に関する情報は、協調支援情報通知ユニット65へ送信される。
リスク通知設定ユニット64は、予測ユニット62により対象交通エリアの中から抽出された監視エリアに存在する複数の交通参加者のうち、対象交通エリア認識ユニット60によって支援対象として認識されている交通参加者を設定対象とし、個々の設定対象毎にリスク通知の作動態様(すなわち、通知モードの種類、及びリスク通知のオン/オフ)を、予測ユニット62による予測結果、対象交通エリア認識ユニット60によって取得された認識情報、及び運転主体情報取得ユニット61によって取得された運転主体情報等に基づいて設定する。
より具体的には、リスク通知設定ユニット64は、対象交通エリア認識ユニット60によって取得された認識情報のうち監視エリアと関連する情報と、運転主体情報取得ユニット61によって取得された運転主体情報のうち監視エリアと関連する情報と、予測ユニット62による監視エリアに対する予測結果と、に基づいて、監視エリアに存在する個々の設定対象のリスク通知の作動態様を設定する。すなわち、リスク通知設定ユニット64は、個々の設定対象毎にリスク通知設定値を“0”、“1”、“2”、“3”、及び“4”のうちの何れかに設定する。
このようにリスク通知設定ユニット64では、監視エリアに存在する個々の設定対象毎にリスク通知の作動態様を設定するため、例えば予測ユニット62によって監視エリア内で複数の設定対象を当事者とする接触リスクの発生が予測された場合、この接触リスクに関与すると予測される複数の予測当事者に対し、それぞれ異なるタイミングでリスク通知をオン/オフにしたり、それぞれ同時に異なる通知モードでリスク通知を行ったりすることができる。以下では、このリスク通知設定ユニット64における、個々の設定対象毎に適したリスク通知の作動態様を設定する処理のことを「リスク通知最適化処理」ともいう。
図5は、リスク通知設定ユニット64におけるリスク通知最適化処理の概念を模式的に示す図である。なお以下では、リスク通知最適化処理の手順について、例えば予測ユニット62により2者(すなわち、第1の設定対象(移動体)及び第2の設定対象(移動体))を当事者とする2者間の接触リスクの発生が予測された場合を例に説明するが、本発明はこれに限らない。2者のうち何れか一方を歩行者とする接触リスクが予測される場合や、3者間の接触リスクの発生が予測された場合への一般化は容易であるので、説明を省略する。
また図5の左側は第1の設定対象におけるリスク通知の作動態様の遷移を模式的に示し、図5の右側は第2の設定対象におけるリスク通知の作動態様の遷移を模式的に示す。また図5の最上段の2本の矢印は、それぞれ予測ユニット62によって初めて接触リスクが発生すると予測されてから第1の設定対象と第2の設定対象とが接触するまでにかかる時間、すなわち衝突予測時間を概念的に示すものである。ただしこれら2本の矢印は、あくまでも衝突予測時間を概念的に示すものであるので、リスク通知設定ユニット64におけるリスク通知最適化処理は、予測ユニット62において衝突予測時間が明確に算出されていなければ実行できないことを意味するものではない。リスク通知設定ユニット64におけるリスク通知最適化処理は、予測ユニット62によって明確な衝突予測時間が算出される前の段階から実行可能である。また図5には、予測ユニット62によって接触リスクが発生すると初めて予測された時点では、第1の設定対象及び第2の設定対象のリスク通知はオフ(すなわち、リスク通知設定値は“0”)に設定されていた場合を示す。
リスク通知設定ユニット64は、予測ユニット62によって監視エリア内において複数の支援対象を当事者とする接触リスクの発生が予測された場合、初めに予測ユニット62によって予測される接触リスクの内容に基づいて、この接触リスクに関わる複数の予測当事者(図5の例では、第1の設定対象及び第2の設定対象)に対し優先度を設定する。この優先度は、後に詳述するようにリスク通知(特に、気配通知モードの下でのリスク通知)をオンに設定する順序を規定するものであり、優先度が高い設定対象に対しては、優先度が低い設定対象よりも先にリスク通知がオンに設定される。なお図5には、第1の設定対象の優先度を、第2の設定対象の優先度よりも高く設定した場合を図示する。
ここでリスク通知設定ユニット64は、予測される接触リスクの顕在化又は発生が回避され、かつこれら設定対象の間の交通流が乱れないように、個々の設定対象毎に優先度を設定する。より具体的には、リスク通知設定ユニット64は、予測ユニット62による予測結果、対象交通エリア認識ユニット60による認識情報、及び運転主体情報取得ユニット61による運転主体情報等を参照することにより、例えば接触リスクに関わる複数の予測当事者の中から接触リスクを誘発するリスク誘発者を特定し、このリスク誘発者に対しては、このリスク誘発者を除く他の予測当事者よりも優先度を高く設定してもよい。このようなリスク誘発者の優先度を高く設定し、他の設定対象よりも先にリスク通知をオンに設定することにより、他の設定対象に対するリスク通知をオンに設定する前にリスク誘発者の行動を改めさせることができるので、当初予測されていた接触リスクの顕在化又は発生を回避することができる。
ここでリスク誘発者とは、例えば上記のような接触リスクを誘発する可能性が高い行動(例えば、急な加速、急な減速、急な車線変更、割り込み、前走車又は後続車に対する車間距離を詰める行為、車線を跨いで走行し続ける行為、蛇行走行、逆走、信号無視、周囲の移動体よりも所定速度以上速い速度で走行する行為、周囲の移動体よりも所定速度以上遅い速度で走行する行為、制限速度よりも所定速度以上速い速度で走行する行為、制限速度よりも所定速度以上遅い速度で走行する行為、及び周囲の交通参加者の移動を妨げる行為)を行う者が挙げられる。
またリスク通知設定ユニット64は、個々の設定対象の交通環境に基づいて優先度を設定してもよい。より具体的には、複数の予測当事者のうち、自身を除く他の予測当事者の存在を認識しにくい交通環境に置かれている予測当事者に対しては、他の予測当事者よりも優先度を高くし、他の設定対象よりも先にリスク通知をオンに設定してもよい。これにより優先度が高く設定された設定対象の認知能力を向上させることができるので、当初予測されていた接触リスクの顕在化又は発生を回避することができる。
リスク通知設定ユニット64は、予測ユニット62によって接触リスクの発生が予測されたことに応じて、以上のような手順によって個々の設定対象毎に優先度を設定した以降、所定の周期で当初予測された接触リスクが顕在化したか否かを判定する。より具体的には、リスク通知設定ユニット64は、例えば予測ユニット62によって接触リスクが発生すると予測されている場合でありかつこの接触リスクに対する衝突予測時間が所定の顕在化閾値以上である場合(予測ユニット62により明確な衝突予測時間が算出されていない場合を含む)、接触リスクは顕在化していない(すなわち、接触リスクは潜在的である)と判定する。またリスク通知設定ユニット64は、例えば予測ユニット62によって算出される衝突予測時間が上記顕在化閾値未満になった場合、接触リスクは顕在化したと判定する。ここで衝突予測時間に対する閾値である顕在化閾値は、図5に示すように、ADAS作動範囲より広くなるように、換言すれば各々の移動体に搭載された運転支援ECUによって衝突軽減ブレーキ制御や衝突回避操舵制御等の実行が開始される衝突予測時間より長くなるように設定される。
またリスク通知設定ユニット64は、当初予測された接触リスクが顕在化したと判定する前の間、すなわち接触リスクは潜在的であると判定されている間は、優先度が高く設定された設定対象(図5の例では、第1の設定対象)から先に気配通知モードの下でのリスク通知を開始する。すなわち、リスク通知設定ユニット64は、優先度が高く設定された設定対象から先にリスク通知設定値を“1”又は“3”に設定する。これにより、この気配通知モードの下でのリスク通知を受けた設定対象の運転者は、自車と接触する可能性がある移動体(図5の例では、第2の設定対象)の存在を認知することにより、予測される接触リスクを回避する行動を行う場合がある。このようなリスク通知を受けた運転者が接触リスクを回避する行動を行った場合、予測ユニット62は、当初発生すると予測していた接触リスクは、これが顕在化する前に発生しないと予測する場合がある。
また、リスク通知設定ユニット64は、優先度が低く設定された設定対象(図5の例では、第2の設定対象)については、優先度が高く設定された設定対象において気配通知モードの下でのリスク通知を開始してから、所定時間後に気配通知モードの下でのリスク通知を開始する。すなわち、リスク通知設定ユニット64は、優先度が高く設定された設定対象に対するリスク通知設定値を“1”又は“3”に設定してから、所定時間後に優先度が低く設定された設定対象に対するリスク通知設定値を“1”又は“3”に設定する。なおリスク通知設定ユニット64は、優先度が低く設定された設定対象の交通流の乱れを防止するため、この優先度が低く設定された設定対象については、接触リスクが顕在化するまでの間、気配通知モードの下でのリスク通知を行わないようにしてもよい。また上述のように優先度が高く設定された設定対象に対して先行して気配通知モードの下でのリスク通知を行うことにより、接触リスクの発生が回避される場合があることから、リスク通知設定ユニット64は、優先度が高く設定された設定対象に対して気配通知モードの下でのリスク通知を開始した後、この設定対象の運転者が所定時間経過しても接触リスクを回避する行動を行わなかった場合、優先度が低く設定された設定対象において気配通知モードの下でのリスク通知を開始してもよい。
またリスク通知設定ユニット64は、当初予測された接触リスクが顕在化したと判定した後は、接触リスクに関わる全ての予測当事者に対し、アナログ通知モードの下でのリスク通知を開始する。すなわちリスク通知設定ユニット64は、接触リスクが顕在化したと判定した後は、全ての予測当事者に対するリスク通知設定値を、“2”又は“4”に設定する。上述のようにアナログ通知モードの下では、衝突予測時間が短くなるほど通知強度が高くなるので、接触リスクに関与する全ての予測当事者に対し身近に迫る接触リスクに対する危機感を持たせ、接触リスクを回避するための行動を起こさせることができる。
図2に戻り、協調支援情報通知ユニット65は、対象交通エリア認識ユニット60によって取得された認識情報と、運転主体情報取得ユニット61によって取得された運転主体情報と、予測ユニット62による予測結果と、健全化通知設定ユニット63によって設定された健全化設定値に関する情報と、リスク通知設定ユニット64によって設定されたリスク通知設定値に関する情報と、に基づいて、対象交通エリア認識ユニット60によって支援対象として認識されている個々の交通参加者に対し、周囲の交通参加者との間のコミュニケーションや周囲の交通環境の認識を促すための協調支援情報を生成し、生成した協調支援情報を各交通参加者へ送信する。
ここで協調支援情報通知ユニット65から各支援対象へ送信される協調支援情報には、健全化設定値に関する情報と、リスク通知設定値に関する情報と、各支援対象に対し身近に迫るリスクに関するリスク情報と、が含まれる。ここでリスク情報には、例えば予測ユニット62による予測結果や、各交通参加者の周囲に存在する交通参加者の位置に関する情報等が含まれる。
本実施形態に係る交通安全支援システム1によれば、以下の効果を奏する。
(1)交通安全支援システム1は、対象交通エリア9における交通参加者とともに移動する車載装置群20,30及び携帯情報処理端末40(以下、これらをまとめて「移動端末」ともいう)と、これら移動端末20,30,40と通信可能な協調支援装置6と、を備える。また交通安全支援システム1では、協調支援装置6によって、対象交通エリア9における各交通参加者及びその交通環境を含む認識対象に関する認識情報を取得し、さらにこの認識情報に基づくシミュレーションによって監視エリア内の予測対象の将来におけるリスクを予測することにより、個々の交通参加者に対する潜在的なリスクの存在を予測することができる。また交通安全支援システム1では、このような予測ユニット62による予測結果に基づいて個々の支援対象毎にリスク通知の作動態様を設定し、さらに個々の支援対象へその設定結果を送信することにより、個々の支援対象に対し潜在的に存在していたリスクが顕在化する前の段階で、個々の支援対象に対してリスク通知を行うことができるので、各支援対象は、余裕を持ってリスクを回避するための行動を行うことができるので、対象交通エリア9における複数の交通参加者による交通の安全性、利便性、及び円滑性を向上することができる。また交通安全支援システム1では、リスク通知設定ユニット64は、個々の支援対象毎にリスク通知の作動態様を設定することにより、個々の支援対象毎にリスク通知の作動態様を最適化することができるので、リスク通知を必要としない状態又は環境にある支援対象に対し過剰なリスク通知を行ってしまうことにより、交通流が乱れてしまうのを防止することができるので、交通の安全性とともに利便性及び円滑性も向上することができる。
(2)リスク通知設定ユニット64は、予測ユニット62により監視エリア内において複数の支援対象を当事者とする接触リスクの発生が予測された場合、この接触リスクの内容に基づいてこの接触リスクに関わる複数の予測当事者に対し優先度を設定し、また優先度が高い予測当事者に対しては、優先度が低い予測当事者よりも先にリスク通知をオンに設定する。これにより、例えば、同一の接触リスクに関与し得る複数の予測当事者の中において、この接触リスクの発生を未然に防ぐために効果的な予測当事者の優先度を高くし、先行してリスク通知を行うことにより、その後優先度の低い予測当事者に対してリスク通知を行う前に、接触リスクが顕在化又は発生するのを防ぐことができる。従って交通安全支援システム1によれば、リスク通知を行う対象を最小限にすることができるので、過剰なリスク通知によって交通流が乱れてしまうのを防止することができ、ひいては交通の安全性とともに利便性及び円滑性も向上することができる。
(3)リスク通知設定ユニット64は、接触リスクに関わる複数の予測当事者の中から、この接触リスクを誘発するリスク誘発者を特定し、このリスク誘発者に対しては、リスク誘発者を除く他の予測当事者よりも優先度を高く設定し、先行してリスク通知を行う。これにより、リスク誘発者による接触リスクを誘発する行動を未然に防ぐことができるので、その他の優先度の低い予測当事者に対してリスク通知を行う前に、接触リスクが顕在化又は発生するのを防止することができる。従って交通安全支援システム1によれば、リスク通知を行う対象を最小限にすることができるので、過剰なリスク通知によって交通流が乱れてしまうのを防止することができ、ひいては交通の安全性とともに利便性及び円滑性も向上することができる。
(4)リスク通知設定ユニット64は、予測ユニット62により監視エリア内において複数の支援対象を当事者とする接触リスクの発生が予測された場合において、接触リスクが顕在化するまでの間は、接触リスクに関わる複数の予測当事者の中から接触リスクの発生が回避されるように定めた予測当事者に対する通知モードを気配通知モードに設定する。これにより、予測される接触リスクが顕在化するのを未然に防ぐことができる。またリスク通知設定ユニット64は、予測される接触リスクが顕在化した後は、接触リスクに関わる全ての予測当事者に対する通知モードを気配通知モードよりも通知強度が高いアナログ通知モードに設定する。これにより、気配通知モードの下でのリスク通知だけでは接触リスクの顕在化を防ぐことができなかった場合であっても、気配通知モードよりも通知強度が高いアナログ通知モードの下で全ての予測当事者に対しリスク通知を行うことにより、接触リスクが発生してしまうのを防止することができる。よって交通安全支援システム1によれば、交通の安全性、利便性、及び円滑性を向上することができる。
(5)リスク通知設定ユニット64は、予測ユニット62による予測結果に基づいて接触リスクが発生するまでにかかる時間である接触予測時間を取得し、この接触予測時間が顕在化閾値未満になった場合、接触リスクが顕在化したと判定する。このようなタイミングで接触リスクが顕在化したと判定し、全ての予測当事者に対してアナログ通知モードの下でのリスク通知を行うことにより、各予測当事者は、余裕を持って接触リスクを回避するための行動を行うことができる。よって交通安全支援システム1によれば、交通の安全性、利便性、及び円滑性を向上することができる。
(6)通知装置22,32,42は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、上述の接触予測時間が短くなるほど通知強度を高くする。これにより通知装置22,32,42とともに移動する人(例えば、歩行者又は移動体の運転者)は、身近に迫る接触リスクの存在を認識し、この接触リスクを回避するための行動を行うことができる。よって交通安全支援システム1によれば、交通の安全性、利便性、及び円滑性を向上することができる。
(7)通知装置22,32は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、接触リスクが発生する場所又は接触リスクに関わる予測当事者の位置へ向けられた指向性を有するバイノーラルサウンドによる効果音を発音する。これにより、通知装置22,32とともに移動する人(例えば、移動体の運転者)にとって、煩わしさを感じさせない態様で、潜在的なリスクに対し注意を向けさせることができる。
(8)通知装置22,32は、この通知装置22,32とともに移動する移動体の運転者の運転能力を健全化させる健全化通知を実行可能であり、協調支援装置6は、対象交通エリア9内の複数の支援対象のうち、予測ユニット62によって予測される接触リスクの当事者を除く者を設定対象とし、認識情報に基づいて運転者の健全度を個々の設定対象毎に推定し、さらにこれら推定結果に基づいて個々の設定対象毎に健全化通知のオン/オフを設定する健全化通知設定ユニット63をさらに備える。これにより対象交通エリア9内を移動する移動体の運転者を健全化することができるので、この対象交通エリア9における交通の安全性、利便性、及び円滑性を向上することができる。
(9)予測ユニット62は、監視エリアを模擬した仮想空間をコンピュータによって構築するとともに、この仮想空間上における認識情報及び状態情報に基づくシミュレーションを行うことによって予測対象の将来を予測する。これにより、予測ユニット62では、監視交通エリアにおける各交通参加者とその周囲の交通環境を再現した上で、この監視交通エリアで生じうる事象を俯瞰的に監視することによって、予測対象に及ぼし得る様々なリスクを予測することができる。よって本発明によれば、交通の安全性、利便性、及び円滑性をさらに向上することができる。
(10)挙動推定部623は、認識情報及び運転主体状態情報のうち少なくとも認識情報を含む挙動推定入力と予め定められた複数の運転主体のパターン挙動の中の少なくとも1つとを関連付け、シミュレーター626は、挙動推定部623によって関連付けられるパターン挙動に基づくシミュレーションを仮想空間上で行うことによって予測対象の将来を予測する。交通安全支援システム1では、移動体の運転主体が将来取りうる挙動をパターン挙動として予め定めておくことにより、予測ユニット62では予測対象の将来を速やかに予測できるので、この予測ユニット62による予測結果に基づく協調支援情報も速やかに通知することができ、ひいては各交通参加者が将来生じうる連鎖リスクを回避する行動をとるための時間を確保することができる。よって交通安全支援システム1によれば、交通の安全性、利便性、及び円滑性をさらに向上することができる。
(11)挙動推定部623は、少なくとも認識情報を含む挙動推定入力に基づいて運転主体の運転能力の低下を能力要素ごとに推定する運転能力推定部624と、この運転能力推定部624によって低下していると推定された能力要素と予め定められた複数のパターン挙動の中の少なくとも1つとを関連付ける関連付け部625と、を備える。これにより関連付け部625では、挙動推定入力からパターン挙動を速やかに決定できるので、上述のように各交通参加者が将来生じうる連鎖リスクを回避する行動をとるための時間をさらに確保することができる。よって交通安全支援システム1によれば、交通の安全性、利便性、及び円滑性をさらに向上することができる。
(12)交通安全支援システム1において、運転能力推定部624は、運転主体が適切に移動体を運転するために備えるべき運転能力を、認知能力と、予測能力と、判断能力と、操作能力と、の少なくとも4つの能力要素に分けた上、運転主体の運転能力の低下をこれら4つの能力要素ごとに推定する。これにより挙動推定部623では、各能力要素の低下に応じた適切なパターン挙動を速やかに決定できるので、上述のように各交通参加者が将来生じうる連鎖リスクを回避する行動をとるための時間をさらに確保することができる。よって交通安全支援システム1によれば、交通の安全性、利便性、及び円滑性をさらに向上することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。