JP7419124B2 - 血管モデル - Google Patents

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Description

本明細書に開示される技術は、血管モデルに関する。
臨床でのカテーテル等を用いた治療または検査を模擬するために、実際の血管を模した血管モデル(模擬血管等)を備えたシミュレータが使用されている。このようなシミュレータ等に備える模擬血管等の形成材料として、例えば、多孔質体を備える点が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
臨床でのカテーテル等を用いた治療または検査では、血流速度や血液の粘性といった循環動態や、血管の閉塞状態等を把握するために、血管造影が用いられることがある。血管造影では、血管内に挿入されたカテーテルからX線透過度の低い造影剤を注入して、X線撮影を行う。術者は、得られたX線透視画像(静止画像または動画像、「シネ画像」とも呼ばれる)におけるコントラストの変化から、造影剤の流れの様子を観察することで、循環動態や血管状態を目視にて確認することができる。
血管モデルを使用したX線透視画像における造影剤の流れの様子を、実際の臨床上で確認される造影剤の流れの様子と近似させるべく、種々の血管モデルが提案されている。例えば、血管モデルと実際の人体との構造の違いにより、血管モデルを使用したX線透視画像にのみ造影剤が撮像される部分において、当該造影剤の濃度がX線透視画像に撮像されない濃度になるまで当該造影剤を希釈することにより、臨床上の造影剤の拡散像を模擬した血管モデル(模擬人体)が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2017-53897号公報 特開2012-68505号公報
従来の血管モデルでは、造影剤の流れを実際の臨床上でのX線透視下において観察される拡散像に近似させるべく向上の余地がある。
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本明細書に開示される血管モデルは、血管モデルであって、前記血管モデルの長軸方向に延びる流体流路を形成する流路形成部と、前記流路形成部に接続し、かつ、細孔を有する多孔質体により形成された拡散部と、を備え、前記拡散部は、内側部分と、前記内側部分の外側に位置する外側部分とを有し、前記長軸方向において、前記外側部分における流れ抵抗は、前記内側部分における流れ抵抗より高い。本血管モデルでは、上記流路形成部が、細孔を有する多孔質体により形成された拡散部を備える。このため、多孔質体の細孔から、流体流路を流れる流体(例えば、造影剤)を拡散させつつ外部へ排出することができる。換言すれば、多孔質体により形成された拡散部は、流体流路に流れ込んだ造影剤の圧力及び流速を分散させる拡散流路(緩衝流路)として機能する。拡散部に流れ込んだ造影剤は、拡散部において流れ抵抗の低い部分から外部へ排出される。本血管モデルでは、拡散部が、内側部分と、内側部分の流れ抵抗より高い流れ抵抗を有する外側部分とを有する。このため、拡散部に流れ込んだ造影剤は、まず、拡散部のうち流れ抵抗の低い内側部分に充填され、その後、流れ抵抗のより高い外側部分へと進入し、拡散部の外部へ排出される。このため、上記造影剤は、拡散部における外側部分の外表面全体から略均一に外部へ拡散、排出される。また、拡散部が有する外側部分の流れ抵抗が高いため、上記造影剤は外部へ排出される際に、より細かく拡散される。このため、本血管モデルでは、造影剤使用時に得られるX線透視画像において、実際の臨床上のX線透視画像で確認される造影剤の濃淡の様子(具体的には、造影剤が細動脈に沿って拡がったのち細静脈に拡散して消える様子)を模擬することができる。このため、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像を実際の臨床上で観察される造影像に近似させた血管モデルを提供することができる。
(2)上記血管モデルにおいて、前記拡散部は、前記多孔質体として、前記外側部分を構成する第1の多孔質体と、前記内側部分を構成する第2の多孔質体と、を備える構成としてもよい。換言すれば、本血管モデルにおいて、拡散部が、外側部分と内側部分とから構成される別体構成であってもよい。本血管モデルによれば、拡散部を容易に作製することができるとともに、外側部分および内側部分の組合せを容易に変更することができる。
(3)上記血管モデルにおいて、前記拡散部は、前記流路形成部における前記流体流路に開口する一端を有する、有底筒状体である構成としてもよい。本血管モデルによれば、拡散部は、流体流路に開口する一端を有しており、外形上閉塞している他端を有する、有底筒状体であるため、拡散部の末端においても、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像における造影剤の濃淡の様子を模擬できる。
(4)上記血管モデルにおいて、前記外側部分における多孔質体の孔径は、前記内側部分における多孔質体の孔径より小さい構成としてもよい。多孔質体の孔径が小さいほど、多孔質体における流れ抵抗は高くなる。このため、本血管モデルでは、外側部分における多孔質体の流れ抵抗は、内側部分における多孔質体の流れ抵抗より高い。このため、本血管モデルによれば、外側部分における多孔質体の孔径および内側部分における多孔質体の孔径を調整することにより、造影剤使用時に得られるX線透視画像において、実際の臨床上でのX線透視画像で確認される造影剤の濃淡の様子(具体的には、造影剤が細動脈に沿って拡がったのち細静脈に拡散して消える様子)を模擬することができる。このため、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像を実際の臨床上で観察される造影像に近似させた血管モデルを提供することができる。
(5)上記血管モデルにおいて、前記拡散部において、前記外側部分における多孔質体と前記内側部分における多孔質体との少なくとも一方の細孔には弾性体が充填されている構成としてもよい。本血管モデルでは、拡散部において、多孔質体(外側部分の多孔質体および/または内側部分の多孔質体)の細孔には弾性体が充填されているため、流体流路内の圧力が低い間は多孔質体の各細孔を封止し、造影剤の流入によって流体流路内の圧力が高まった際には多孔質体の各細孔を開放することができる。このため、造影剤をより細かく拡散および排出することができ、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像における造影剤の濃淡の様子(造影剤の拡散および消失像)を、実際の臨床上で観察される造影像により近づけることができる。また、拡散部に進入した造影剤は、弾性体の弾力により、より確実に拡散部の外部へと排出されるため、拡散部に造影剤が残存することを抑制し、ひいては、拡散部の再利用を可能とする。また、血管モデルを流体(水や生理食塩水等)に浸した湿潤状態で使用する場合において、血管モデルの周囲を満たす流体が、多孔質体の各細孔から流体流路内へと逆流することを抑制できる。
(6)上記血管モデルにおいて、前記拡散部において、前記外側部分における多孔質体と前記内側部分における多孔質体との両方の細孔には弾性体が充填されており、前記外側部分における多孔質体の細孔に充填された弾性体の弾性率は、前記内側部分における多孔質体の細孔に充填された弾性体の弾性率より高い構成としてもよい。弾性体の弾性率が高いほど、弾性体が充填された多孔質体における流れ抵抗は高くなる。このため、本血管モデルによれば、外側部分を構成する多孔質体と、内側部分を構成する多孔質体とにおける流れ抵抗が互いに略同等である場合において、外側部分における流れ抵抗は、内側部分における流れ抵抗より高い。このため、本血管モデルによれば、外側部分における弾性体の弾性率および内側部分における弾性体の弾性率を調整することにより、造影剤使用時に得られるX線透視画像において、実際の臨床上でのX線透視画像で確認される造影剤の濃淡の様子(具体的には、造影剤が細動脈に沿って拡がったのち細静脈に拡散して消える様子)を模擬することができる。このため、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像を実際の臨床上で観察される造影像に近似させた血管モデルを提供することができる。
(7)上記血管モデルにおいて、前記流路形成部は、前記血管モデルの長軸方向に延びる管状体であり、前記拡散部は、前記管状体の先端部に設けられている構成としてもよい。本血管モデルによれば、拡散部は、流路形成部(管状体)の先端部に設けられているため、流路形成部の先端部側で、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像における造影剤の濃淡の様子を模擬できる。
(8)上記血管モデルにおいて、前記流路形成部は、前記血管モデルの長軸方向に延びる管状体であり、前記拡散部は、前記管状体が分岐する分岐部に設けられている構成としてもよい。本血管モデルによれば、拡散部は、流路形成部(管状体)が分岐する分岐部に設けられているため、分岐部で、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像における造影剤の濃淡の様子を模擬できる。
(9)上記血管モデルにおいて、前記流路形成部は、多孔質体により形成されている構成としてもよい。本血管モデルによれば、流路形成部を多孔質体により形成することによって、多孔質体の細孔から流体流路を流れる流体を拡散させつつ外部へ排出する拡散部として機能させることができる。
(10)上記血管モデルにおいて、前記拡散部における管内圧力は、前記流路形成部の管内圧力より低い構成としてもよい。本血管モデルによれば、血管モデルに供給された造影剤が、流路形成部において外部へ排出することを低減し、拡散部まで造影剤を行きわたらせ、ひいては、拡散部において造影剤を一定の濃度(流量)まで拡散させ、排出させることができる。このため、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像を実際の臨床上で観察される造影像血管に近似させた血管モデルを提供することができる。
(11)上記血管モデルにおいて、前記血管モデルの外周面の少なくとも一部分は、弾性素材によりコーティングされている構成としてもよい。本血管モデルによれば、コーティングによって、血管モデルの弾性率を調整することができる。
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、血管モデル備えるシミュレータ、それらの製造方法等の形態で実現することができる。
第1実施形態における心臓シミュレータ1の構成を概略的に示す説明図である。 第1実施形態における心臓血管モデル10の一部分(図1のX1部)の構成を概略的に示す説明図である。 第1実施形態における心臓血管モデル10の一部分(図1のX2部)の断面構成を拡大して示す説明図である。 第1実施形態における心臓血管モデル10の一部分(図1のX1部、図2)の断面構成を拡大して示す説明図である。 第2実施形態における心臓血管モデル10aの一部分(図1のX1部に相当する部分)の断面構成を拡大して示す説明図である。 造影剤CAの拡散の様子を示す説明図である。 第3実施形態における心臓血管モデル10bの一部分(図1のX1部に相当する部分)の断面構成を拡大して示す説明図である。 変形例における心臓シミュレータが備える心臓血管モデル10cの一部分(図1のX1部に相当する部分)の断面構成を拡大して示す説明図である。 他の変形例における心臓血管モデル10dの一部分(図1のX2部に相当する部分)の断面構成を拡大して示す説明図である。 他の変形例における心臓シミュレータ1eの構成を概略的に示す説明図である。
A.第1実施形態:
A-1.心臓シミュレータ1の構成:
図1は、第1実施形態における心臓シミュレータ1の構成を概略的に示す説明図であり、図2は、第1実施形態における心臓血管モデル10の一部分(図1のX1部)の構成を概略的に示す説明図である。図3は、第1実施形態における心臓血管モデル10の一部分(図1のX2部)の断面構成を拡大して示す説明図であり、図4は、第1実施形態における心臓血管モデル10の一部分(図1のX1部、図2)の断面構成を拡大して示す説明図である。
心臓シミュレータ1は、心臓と心臓の表面を巡る血管を再現するシミュレータであり、心臓血管モデル10と心臓モデル20とを備えている。より具体的には、心臓シミュレータ1は、心臓モデル20と、心臓モデル20の表面S1に配置された心臓血管モデル10とにより構成されている。このような心臓シミュレータ1によれば、心臓血管モデル10に対して造影剤を使用した際に得られるX線透視画像において、実際の臨床上でのX線透視画像で確認される造影剤の濃淡の様子を模擬することができる。なお、各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が図示されている。X軸は心臓モデル20の左右方向(幅方向)に対応し、Z軸は心臓モデル20の高さ方向に対応し、Y軸は心臓モデル20の奥行き方向に対応する。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を「上方向」または「基端側」ともいい、基端側の端部を「基端部」または単に「基端」ともいう。同様に、Z軸負方向を「下方向」または「先端側」ともいい、先端側の端部を「先端部」または単に「先端」ともいう。なお、本実施形態において、心臓血管モデル10は、心臓に血液を供給するための血管である冠動脈のうち、左冠動脈を模擬した形状のみを図示しており、右冠動脈の図示を省略している。
図1に示すように、本実施形態において、心臓血管モデル10は、導入部100と、主枝部110と、側枝部120と、接続部130と、分岐部140と、拡散部160とにより構成されている。なお、以下の説明において、主枝部110と側枝部120とをまとめて「枝部110,120」ということがある。
主枝部110は、冠動脈における主要な血管を模擬している。図2および図3に示すように、主枝部110は、内腔110Lを有する管状体である。換言すれば、主枝部110は、心臓血管モデル10(具体的には、主枝部110)の長軸方向に延びる流体流路を形成している。すなわち、後述の導入部100に供給された流体は、当該流体流路を流れる。内腔110Lは、後述の拡散部160の内腔160Lに連通している。主枝部110の形成材料は、X線透過性を有する軟性素材であれば、特に限定されない。当該軟性素材として、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、シリコン等の合成樹脂を挙げることができる。主枝部110の形成材料は、好ましくはPVAである。PVAは、良好な親水性を有するため、液体内に浸漬された主枝部110の物性や触感を、実際の人体の血管の物性や触感に近似させることができるためである。なお、複数の主枝部110の形成材料は、互いに同じ種類であってもよく、また、異なる種類であってもよい。主枝部110は、特許請求の範囲における流路形成部の一例であり、内腔110Lは、特許請求の範囲における流体流路の一例である。
導入部100は、基端側において開口し、先端側において主枝部110に接続する管状体である。なお、心臓血管モデル10を備える心臓シミュレータ1の使用時には、導入部100から、流体(模擬血液や造影剤)を加圧しながら供給することにより、当該流体を心臓血管モデル10全体へと拡散させる。導入部100は、上述の主枝部110と同様に、X線透過性を有する軟性素材により形成されている。
側枝部120は、主枝部110から伸びる微細な血管を模擬している。側枝部120は、一端に開口部(図示せず)を有し、他端に外形上閉塞している閉塞部を有する有底管状体である。側枝部120は、上述の主枝部110と同様に、X線透過性を有する軟性素材により形成されている。本明細書において、「外形上閉塞している」とは、見かけ上において、端部が閉ざされ塞がれていることを意味する。すなわち、機能的に閉塞していることを意味するものではなく、当該端部から流体を排出することが可能である。
接続部130は、一の主枝部110と、他の枝部110,120とを接続する部分である。接続部130において、一の主枝部110の内腔110Lと、他の枝部110,120の内腔(例えば、他の主枝部110の内腔110L)とは、連通している。この接続は種々の手段で実現でき、例えば、各枝部110,120をクリップ等の留置具で留めることで実現してもよく、各枝部110,120を接着剤で固定することで実現してもよく、各枝部110,120を合成樹脂で覆うことで実現してもよい。接続部130は、一または複数の分岐部140を含んでいる。分岐部140は、実際の人体と同様に、一の主枝部110が、一または複数の枝部110,120へと分岐する部分である。
拡散部160は、内腔160Lを有する有底筒状体である(図2および図3参照)。内腔160Lは、主枝部110と接続する接続部分CPにおいて、一端が主枝部110における内腔110Lに連通(開口)しており、他端は外形上閉塞している。本実施形態において、拡散部160は、主枝部110の先端部に設けられている。換言すれば、拡散部160は、主枝部110(心臓血管モデル10)の先端部において外形上閉塞している内腔160Lを有する有底筒状体である。
図4を用いて、拡散部160の詳細構成を説明する。図4に示すように、拡散部160は、内側部161と、内側部161の外側に位置する外側部163とにより構成されている。
内側部161は、一端が開口し、他端が外形上閉塞している内腔160Lを有する有底筒状体である。換言すれば、内腔160Lは、主枝部110の内腔110Lに面する面(開口を有する一端)を除き、内側部161の内側面S60によって画定されている。上述の通り、内腔160Lは、主枝部110の内腔110Lに連通している。内側部161は、複数の細孔を有する内側多孔質体P61により形成されている。内側多孔質体P61としては、例えば、ナイロン不織布等の不織布や、例えばポリウレタンフォーム、ポリアミドフォーム、ポリエチレンフォーム、シリコンフォーム、ゴムスポンジ等の発泡体等を挙げることができる。本実施形態において、内側多孔質体P61の孔径は、例えば、0.01mm以上、5.00mm以下であり、より好ましくは、0.5mm以上、1.5mm以下である。ここで、内側多孔質体P61や、後述の外側多孔質体P63等の多孔質体における細孔の孔径や、多孔質体を構成する材料に依存する水はけの良さは、後述の流れ抵抗に影響を及ぼす。すなわち、多孔質体の孔径については、多孔質体の孔径が小さいほど、流体が多孔質体内に進入し、多孔質外へと排出する際に、流れ抵抗はより高くなる。換言すれば、多孔質体の孔径が小さいほど、流れ抵抗はより高くなる。また、多孔質体を構成する材料に依存する水はけの良さについては、多孔質体を構成する材料が、多孔質体内に供給された流体が、より容易に多孔質体外に排出可能な材料であるほど、流れ抵抗はより低くなる。換言すれば、多孔質体が、水はけの良い材料により構成されているほど、流れ抵抗はより低くなる。本実施形態の内側多孔質体P61において、各細孔の密度は、基端側(図4のZ軸正方向)から先端側(図4のZ軸負方向)にかけて略一定である。内側多孔質体P61は、特許請求の範囲における第2の多孔質体の一例である。
外側部163は、上述の通り、内側部161の外側に位置し、外側面S63を有する有底筒状体である。本実施形態において、外側部163の内側面S62は、内側部161の外側面S61に接触している。外側部163は、外側多孔質体P63により形成されている。より具体的には、外側多孔質体P63は、内側多孔質体P61と同様の材料であり、上述の不織布や発泡体等である。本実施形態において、外側多孔質体P63の孔径は、内側多孔質体P61の孔径より小さく、例えば、0.01mm以上、1.00mm以下であり、より好ましくは、0.2mm以上、0.5mm以下である。外側多孔質体P63の孔径は、外側多孔質体P63から排出される造影剤が、X線透視画像で確認されない濃度(流量)まで拡散、排出されるよう調整されることが好ましい。本実施形態の外側多孔質体P63において、各細孔の密度は、基端側(図4のZ軸正方向)から先端側(図4のZ軸負方向)にかけて略一定である。また、本実施形態において、内側部161と外側部163とは、別体に構成されている。このような拡散部160は、外側多孔質体P63で形成された外側部163の内部に、内側多孔質体P61で形成された内側部161を配置することにより、構成することができる。外側多孔質体P63は、特許請求の範囲における第1の多孔質体の一例である。
上述の通り、本実施形態の拡散部160では、外側部163を形成する外側多孔質体P63の孔径は、内側部161を形成する内側多孔質体P61の孔径より小さい。このため、外側部163における流れ抵抗F63は、内側部161における流れ抵抗F61より高い。上述の通り、多孔質体の孔径が小さいほど、流れ抵抗はより高くなる。
心臓モデル20は、実際の心臓を模擬した外形を有している。心臓モデル20は、例えば、実際の心室を模擬するように略球体状に形成することができる。心臓モデル20の形成材料としては、例えば、弾性を有するゴムや、熱可塑性エラストマー(TPE)等の合成樹脂材料等が挙げることができる。また、心臓モデル20は、実際の心臓により近似させるために、上記合成樹脂材料等により形成された略球体の表面に、模擬心筋および模擬心膜(図示せず)を備えていてもよい。より具体的には、略球体の表面を覆うように模擬心筋を備え、模擬心筋の表面を覆うように模擬心膜を備えることができる。模擬心筋の形成材料としては、例えば、X線透過性を有する軟性素材の合成樹脂(例えば、PVA、シリコン等)等を挙げることができる。また、模擬心膜の形成材料としては、例えば、ナイロン不織布等の不織布や、ポリウレタンフォーム、ポリアミドフォーム、ポリエチレンフォーム、シリコンフォーム、ゴムスポンジ等の発泡体により形成された、複数の細孔を有する多孔質体や、X線透過性を有する軟性素材(例えば、PVA、シリコン等)の合成樹脂等を挙げることができる。
本実施形態の心臓シミュレータ1は、上述の心臓モデル20に心臓血管モデル10を固定することにより作製することができる。心臓血管モデル10を心臓モデル20に固定する方法としては、特に限定されないが、例えば、シール状の固定部材(図示せず)等により、固定することができる。固定部材の形成材料としては、例えば、X線透過性を有する軟性素材の合成樹脂(例えば、PVA、シリコン、ポリウレタン、カラギナンなどの多糖類等)等を挙げることができる。なお、固定部材の設置位置や、設置個数は任意に決定することができる。固定部材は、例えば、外力及び流体流路内の圧力が他の部位と比べて高い接続部130や分岐部140や、流体流路の先端に位置する側枝部120や、拡散部160が設けられる主枝部110の先端部等の各部において配置されることが好ましい。また、固定部材は、例えば、心臓血管モデル10(例えば、主枝部110)のうち、心臓モデル20の表面S1との接触部分を除く表面全体を覆うように配置されることが好ましい。心臓血管モデル10をより確実に心臓モデル20へと固定するためである。
A-2.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の心臓血管モデル10は、心臓血管モデル10の長軸方向に延びる内腔110Lを形成する主枝部110と、主枝部110に接続する拡散部160とを備えている。拡散部160は、内側部161と、内側部161の外側に位置する外側部163とを有している。内側部161は、細孔を有する内側多孔質体P61により形成されており、外側部163は、細孔を有する外側多孔質体P63により形成されている。長軸方向において、外側部163における流れ抵抗F63は、内側部161における流れ抵抗F61より高い。本実施形態の心臓血管モデル10では、主枝部110が、細孔を有する多孔質体P61,P63により形成された拡散部160を備える。このため、多孔質体P61,P63の細孔から、内腔110Lを流れる流体(例えば、造影剤)を拡散させつつ外部へ排出することができる。換言すれば、多孔質体P61,P63により形成された拡散部160は、内腔110Lに流れ込んだ造影剤の圧力及び流速を分散させる拡散流路(緩衝流路)として機能する。拡散部160に流れ込んだ造影剤は、拡散部160において流れ抵抗の低い部分から外部へ排出される。本実施形態の心臓血管モデル10では、拡散部160が、内側部161と、内側部161の流れ抵抗F61より高い流れ抵抗F63を有する外側部163とを有する。このため、拡散部160に流れ込んだ造影剤は、まず、拡散部160のうち流れ抵抗の低い内側部161に充填され、その後、流れ抵抗のより高い外側部163へと進入し、拡散部160の外部へ排出される。このため、上記造影剤は、拡散部160における外側部163の外側面S63全体から略均一に外部へ拡散、排出される。また、拡散部160が有する外側部163の流れ抵抗F63が高いため、上記造影剤は外部へ排出される際に、より細かく拡散される。このため、本実施形態の心臓血管モデル10では、造影剤使用時に得られるX線透視画像において、実際の臨床上のX線透視画像で確認される造影像の濃淡の様子(具体的には、造影剤が細動脈に沿って拡がったのち細静脈に拡散して消える様子)を模擬することができる。このため、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像を実際の臨床上で観察される拡散像に近似させた心臓血管モデル10を提供することができる。また、本実施形態の心臓血管モデル10は、拡散部160が、外側部163と内側部161とから構成される別体構成である。このため、拡散部160を容易に作製することができるとともに、外側部163および内側部161の組合せを容易に変更することができる。
また、本実施形態の心臓血管モデル10において、拡散部160は、主枝部110における内腔110Lに開口する一端を有する、有底筒状体である。本実施形態の心臓血管モデル10によれば、拡散部160は、内腔110Lに開口する一端を有しており、外形上閉塞している他端を有する、有底筒状体であるため、拡散部160の末端においても、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像における造影像の濃淡の様子を模擬できる。
また、本実施形態の心臓血管モデル10において、外側部163における外側多孔質体P63の孔径は、内側部161における内側多孔質体P61の孔径より小さい。多孔質体の孔径が小さいほど、多孔質体における流れ抵抗は高くなる。このため、本実施形態の心臓血管モデル10では、外側部163における外側多孔質体P63の流れ抵抗F63は、内側部161における内側多孔質体P61の流れ抵抗F61より高い。このため、本実施形態の心臓血管モデル10によれば、外側部163における外側多孔質体P63の孔径および内側部161における内側多孔質体P61の孔径を調整することにより、造影剤使用時に得られるX線透視画像において、実際の臨床上のX線透視画像で確認される造影像の濃淡の様子(具体的には、造影剤が細動脈に沿って拡がったのち細静脈に拡散して消える様子)を模擬することができる。このため、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像を実際の臨床上で観察される造影像に近似させた血管モデルを提供することができる。
また、本実施形態の心臓血管モデル10において、主枝部110は、心臓血管モデル10の長軸方向に延びる管状体である。また、拡散部160は、主枝部110の先端部に設けられている。本実施形態の心臓血管モデル10によれば、拡散部160は、主枝部110(管状体)の先端部に設けられているため、主枝部110の先端部側で、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像における造影像の濃淡の様子を模擬できる。
B.第2実施形態:
図5は、第2実施形態の心臓シミュレータ1aが備える心臓血管モデル10aの一部分(図1のX1部に相当する部分)の断面構成を拡大して示す説明図である。以下では、第2実施形態の心臓シミュレータ1aの構成のうち、上述した第1実施形態の心臓シミュレータ1と同一の構成については、その説明を適宜省略する。
第2実施形態の心臓血管モデル10aは、拡散部160aにおいて、内側部161aおよび外側部163aにそれぞれ弾性体E1が充填されている点で、第1実施形態の心臓血管モデル10と異なっている。
上述したように、本実施形態の拡散部160aは、内側部161aと、内側部161aの外側に位置する外側部163aとにより構成されている。
内側部161aは、第1実施形態の内側部161と同様に、内腔160Lを有する有底筒状体であり、内腔160Lは、主枝部110の内腔110Lに連通している。本実施形態において、内側部161aは、内側多孔質体P61と、弾性を有する部材である弾性体E1とにより形成されている。より具体的には、内側部161aにおいて、内側多孔質体P61の各細孔には、弾性体E1が充填されている。弾性体E1としては、例えば、PVA、ポリウレタンを含むエラストマー、ゴム等の弾性材料を挙げることができる。本実施形態において、弾性体E1の弾性率は、例えば、0.01MPa以上、1.5MPa以下であり、より好ましくは、0.3MPa以上、0.5MPa以下である。ここで、弾性材料の弾性率は、上述の流れ抵抗に影響を及ぼす。すなわち、弾性材料の弾性率が大きいほど、流体が弾性材料を含む多孔質体内に進入し、弾性材料を含む多孔質外へと排出する際に、流れ抵抗はより高くなる。換言すれば、弾性体の弾性率が高いほど、流れ抵抗はより高くなる。本実施形態において、心臓血管モデル10aに供給された流体が、内側部161aから確実に排出されるために、弾性体E1の弾性率は、弾性体E1の弾性変形における応力が、当該流体の流体圧力より小さくなる値であることが好ましい。なお、弾性体E1の弾性率は、例えば、弾性材料の種類、溶媒中の弾性材料の濃度等により調整することができる。
外側部163aは、第1実施形態の外側部163と同様に、内側部161aの外側に位置する有底筒状体であり、外側部163aの内側面S62は、内側部161aの外側面S61に接触している。本実施形態において、外側部163aは、外側多孔質体P63と、弾性体E1とにより形成されている。より具体的には、内側部161aと同様に、外側部163aにおいて、外側多孔質体P63の各細孔には、弾性体E1が充填されている。本実施形態において、外側部163aに含まれる弾性体E1は、内側部161aに含まれる弾性体E1と同一の弾性材料であり、かつ、弾性体E1の弾性率も略同等である。
上述の拡散部160aは、例えば、次の方法により作成することができる。まず、内腔160Lと同径の内径を有する凹部を有し、かつ、当該凹部内に内腔160Lと同径の外径を有する芯金が配置された内側多孔質体P61と、内側多孔質体P61の外径と同径の内径を有する凹部を有する外側多孔質体P63とを準備する。次いで、外側多孔質体P63の凹部内へ、内側多孔質体P61を配置する(拡散部前駆体の作製)。このとき、内側多孔質体P61の凹部の開口部と、外側多孔質体P63の凹部の開口部とが、同じ方向に位置するよう配置する。このように作製された拡径部前駆体に、弾性体E1を充填する(拡散部160aの作製)。弾性体E1の充填は、例えば、拡径部前駆体に対して、溶媒等(例えば、水)に溶解させることにより液状としたPVA、ポリウレタンを含むエラストマー、ゴム等の弾性材料を流し込むことにより実施することができる。最後に、弾性体E1が充填された拡径部前駆体から芯金を除去することにより、拡散部160aを作製することができる。また、別の例として、上記液状とした弾性材料に、拡径部前駆体を浸漬することにより、拡径部前駆体に対する弾性体E1の充填を実施することとしてもよい。拡散部160aの作製方法は、上記方法に限定されず、例えば、まず、内側多孔質体P61と外側多孔質体P63とに、それぞれ、弾性体E1を充填し(内側部161aおよび外側部163aの作製)、外側部163aの凹部内に内側部161aを配置することにより作製することができる。
図6は、造影剤CAの拡散の様子を示す説明図である。図6(A)および(C)は、流体流路内の圧力が低い場合の拡散部160aの様子を表し、図6(B)は、流体流路内の圧力が高い場合の拡散部160aの様子を表している。なお、図6では、拡散部160aのうち内側部161aについて、造影剤CAの拡散の様子を示しているが、当該様子は、外側部163aについても同様である。本実施形態の内側部161aにおいて、内側多孔質体P61の細孔には弾性体E1が充填されている。このため、例えば、心臓血管モデル10aに模擬血液のみが供給され、心臓血管モデル10a内(例えば、主枝部110の内腔110L)の圧力が低い間は、図6(A)に示すように、弾性体E1が内側多孔質体P61の各細孔を封止状態としている。
また、心臓血管モデル10a内に造影剤CAが注入されることによって、心臓血管モデル10a内(例えば、主枝部110の内腔110L)の圧力が高まった際には、図6(B)に示すように、弾性体E1が図中において矢印を付した方向へと圧縮され、また、内側多孔質体P61が変形することで、内側多孔質体P61の各細孔との間に微細な空隙が生じ、内側多孔質体P61の各細孔を開放することができる。このため、図6(B)に示すように、開放された各細孔から、造影剤CAをより細かく拡散及び排出することができる。この結果、造影剤使用時に得られるX線透視画像における造影像の濃淡の様子(造影剤の拡散および消失像)を、実際の血管により近づけることができる。
さらに、造影剤CAの注入終了後は、再び心臓血管モデル10a内(例えば、主枝部110の内腔110L)の圧力が低くなるため、図6(C)に示すように、弾性体E1が内側多孔質体P61の各細孔を封止状態とする。このため、心臓シミュレータ1aおよび心臓血管モデル10a(血管モデル)を流体(水や生理食塩水等)に浸した湿潤状態で使用する場合において、血管モデルの周囲を満たす流体や造影剤CAが、内側多孔質体P61の各細孔から流体流路内(例えば、主枝部110の内腔110L)へと逆流することを抑制できる。また、本実施形態の内側多孔質体P61では、内側多孔質体P61内に進入した造影剤CAを、より確実に内側多孔質体P61の外部(すなわち、外側多孔質体P63)へと排出することができる。また、本実施形態の外側多孔質体P63においても、外側多孔質体P63内に侵入した造影剤CAを、より確実に外側多孔質体P63(すなわち、拡散部160a)へと排出することができる。すなわち、本実施形態では、拡散部160aの内部に造影剤CAが残存することを低減するため、拡散部160aが造影剤CAによって汚染されにくい。このため、拡散部160a(または、心臓血管モデル10a)の再利用が可能となる。
上述の通り、本実施形態の拡散部160aでは、外側部163aを形成する外側多孔質体P63の孔径は、内側部161aを形成する内側多孔質体P61の孔径より小さい。また、内側部161aおよび外側部163aに充填された弾性体E1の弾性率は略同等である。このため、外側部163aにおける流れ抵抗F63aは、内側部161aにおける流れ抵抗F61aより高い。
以上説明したように、本実施形態の心臓血管モデル10aは、拡散部160aにおいて、外側部163aにおける外側多孔質体P63と、内側部161aにおける内側多孔質体P61との両方の細孔に弾性体E1が充填されている。本実施形態の心臓血管モデル10aでは、拡散部160aにおいて、内側部161aおよび外側部163aの多孔質体P61,P63の細孔には弾性体E1が充填されているため、内腔110L内の圧力が低い間は多孔質体P61,P63の各細孔を封止し、造影剤CAの流入によって内腔110L内の圧力が高まった際には多孔質体P61,P63の各細孔を開放することができる。このため、造影剤CAをより細かく拡散および排出することができ、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像における造影像の濃淡の様子(造影剤の拡散および消失像)を、実際の臨床上で観察される造影像により近づけることができる。また、拡散部106aに進入した造影剤CAは、弾性体E1の弾力により、より確実に拡散部160aの外部へと排出されるため、拡散部160aに造影剤CAが残存することを抑制し、ひいては、拡散部160aの再利用を可能とする。また、心臓血管モデル10aを流体(水や生理食塩水等)に浸した湿潤状態で使用する場合において、心臓血管モデル10aの周囲を満たす流体が、多孔質体P61,P63の各細孔から内腔110L内へと逆流することを抑制できる。
C.第3実施形態:
図7は、第3実施形態の心臓シミュレータ1bが備える心臓血管モデル10bの一部分(図1のX1部に相当する部分)の断面構成を拡大して示す説明図である。以下では、第3実施形態の心臓シミュレータ1bの構成のうち、上述した第1実施形態および第2実施形態の心臓シミュレータ1,1aと同一の構成については、その説明を適宜省略する。
第3実施形態の心臓血管モデル10bは、拡散部160bを構成する外側部163bが、外側多孔質体P63bにより形成されているとともに、外側部163bに弾性体E3が充填されている点で、第2実施形態の心臓血管モデル10aと異なっている。
上述したように、本実施形態の拡散部160bは、内側部161aと、内側部161aの外側に位置する外側部163bとにより構成されている。
外側部163bは、第2実施形態の外側部163aと同様に、内側部161aの外側に位置する有底筒状体であり、外側部163bの内側面S62は、内側部161aの外側面S61に接触している。本実施形態において、外側部163bは、外側多孔質体P63bと、弾性体E3とにより形成されている。より具体的には、内側部161aと同様に、外側部163bにおいて、外側多孔質体P63bの各細孔には、弾性体E3が充填されている。本実施形態において、外側部163bを形成する外側多孔質体P63bは、内側部161aを形成する内側多孔質体P61と同一である。すなわち、外側多孔質体P63bの形成材料および孔径は、内側多孔質体P61の形成材料および孔径と、それぞれ同一または略同一である。一方、外側多孔質体P63bに充填された弾性体E3は、内側多孔質体P61に充填された弾性体E1と異なる。すなわち、弾性体E3は、弾性体E1と同様に、例えば、PVA、ポリウレタンを含むエラストマー、ゴム等の弾性材料であるが、弾性体E3の弾性率は、弾性材料の種類、溶媒中の弾性材料の濃度等が異なることにより、弾性体E1の弾性率と異なる。より具体的には、弾性体E3の弾性率は、弾性体E1の弾性率より高い。本実施形態において、弾性体E3の弾性率は、例えば、0.01MPa以上、1.5MPa以下であり、より好ましくは、0.3MPa以上、0.5MPa以下である。本実施形態において、弾性体E3の弾性率は、弾性体E1と同様に、心臓血管モデル10bに供給された流体が、外側部163bから確実に排出されるために、弾性体E3の弾性変形における応力が、当該流体の流体圧力より小さくなる値であることが好ましい。
上述の通り、本実施形態の拡散部160bでは、外側部163bを形成する外側多孔質体P63bの孔径は、内側部161aを形成する内側多孔質体P61の孔径と略同一である。一方、外側部163bに充填された弾性体E3の弾性率は、内側部161aに充填された弾性体E1の弾性率より高い。このため、外側部163bにおける流れ抵抗F63bは、内側部161aにおける流れ抵抗F61aより高い。
以上説明したように、本実施形態の心臓血管モデル10bは、拡散部160bにおいて、内側部161aにおける内側多孔質体P61と、外側部163bにおける外側多孔質体P63bとの両方の細孔に、それぞれ、弾性体E1,E3が充填されている。また、外側多孔質体P63の弾性率は、内側多孔質体P61の弾性率より高い。弾性体の弾性率が高いほど、弾性体が充填された多孔質体における流れ抵抗は高くなる。このため、本実施形態の心臓血管モデル10bによれば、外側部163bにおける流れ抵抗F63bは、内側部161aにおける流れ抵抗F61aより高い。このため、本実施形態の心臓血管モデル10bによれば、外側部163bにおける弾性体E3の弾性率および内側部161aにおける弾性体E1の弾性率を調整することにより、造影剤使用時に得られるX線透視画像において、実際の臨床上のX線透視画像で確認される造影像の濃淡の様子(具体的には、造影剤が細動脈に沿って拡がったのち細静脈に拡散して消える様子)を模擬することができる。このため、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像を実際の臨床上で観察される造影像に近似させた心臓血管モデル10bを提供することができる。
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
図8は、変形例における心臓シミュレータが備える心臓血管モデル10cの一部分(図1のX1部に相当する部分)の断面構成を拡大して示す説明図である。以下では、本変形例の心臓シミュレータの構成のうち、上述した第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態の心臓シミュレータ1,1a,1bと同一の構成については、その説明を適宜省略する。
本変形例の心臓血管モデル10cは、主枝部110cが、高い滑り性を有する本体部111と、本体部111よりも弾性率の高いコート層113とから構成されている点で、第1実施形態の心臓血管モデル10と異なっている。本体部111は、特許請求の範囲における流路形成部の一例である。
本体部111は、内腔110Lを有する管状体であり、長軸方向に延びる流体流路を形成している。本体部111の形成材料は、第1実施形態の主枝部110の形成材料と同様に、X線透過性を有する軟性素材とすることができる。コート層113は、本体部111をコーティングするように、本体部111の外周に配置されている。より具体的には、コート層113の内周面は、本体部111の外周面と接触している。コート層113の形成材料は、X線透過性を有し、かつ、本体部111の形成材料が有する弾性率より高い弾性率を有する弾性素材とすることができる。コート層113の形成材料として、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン(PU)、シリコン、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の合成樹脂を挙げることができる。なお、本変形例では、コート層113は、本体部111の外周面の全体に配置されているが、これに限定されず、本体部111の外周面の一部に配置されていてもよい。
本体部111へコート層113を配置する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法(例えば、ディップコーティング)を用いることができる。
本変形例の心臓血管モデル10cでは、柔軟性に富む主枝部110cが、本体部111と、本体部111の形成材料が有する弾性率より高い弾性率を有する弾性素材で形成されるコート層113とから構成されている。このため、コート層113によって、主枝部110cの弾性率を調整することができる。
図9は、他の変形例における心臓血管モデル10dの一部分(図1のX2部に相当する部分)の断面構成を拡大して示す説明図である。以下では、本変形例の心臓シミュレータの構成のうち、上述した第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態および変形例の心臓シミュレータ1,1a,1bと同一の構成については、その説明を適宜省略する。
本変形例の心臓血管モデル10dは、主枝部110dが、スリット110Sを備えている点で、第1実施形態の心臓血管モデル10と異なっている。主枝部110dは、特許請求の範囲における流路形成部の一例である。
上述したように、主枝部110dは、スリット110Sを備えている。本実施形態において、主枝部110dには、スリット110Sが形成されている。スリット110Sは、線状、くさび状、丸形状、または、多角形形状等の形状で、心臓モデルに沿うように形成されている。なお、スリット110Sの形成位置、形状および個数は、特に限定されない。
本変形例の心臓血管モデル10dでは、主枝部110dは、スリット110Sを備えている。このため、主枝部110dにおける管内圧力F10を調整することができる。すなわち、主枝部110dにおける管内圧力F10は、スリット110Sが形成されている部分において低くなる。例えば、実際の冠動脈における血液の流れ抵抗は、一般に、基端側において高く、先端側において低い。換言すれば、実際の冠動脈における主枝部の管内圧力は、一般に、基端側において高く、先端側において低い。このため、このような特徴を有する実際の冠動脈を模擬すべく、主枝部110dの基端側における管内圧力F10が、先端側における管内圧力F10より高くなるよう、スリット110Sを形成してもよい。例えば、主枝部110dの基端側に形成されるスリット110Sの個数を、先端側に形成されるスリット110Sの個数より少なくすることにより、上記特徴を模擬した主枝部110dを得ることができる。本明細書において、「管内圧力」とは、ヒトの血圧を模擬したものであり、例えば、主枝部110dに圧力計を繋ぎ、測定することができる。また、流体力学的に流速から概算で管内圧力を求めることもできる。
図10は、他の変形例における心臓シミュレータ1eの構成を概略的に示す説明図である。以下では、本変形例の心臓シミュレータ1eの構成のうち、上述した第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態および変形例の心臓シミュレータ1,1a,1bと同一の構成については、その説明を適宜省略する。
本変形例の心臓シミュレータ1eが備える心臓血管モデル10eでは、主枝部110eが拡散部160を備えていない点、および、側枝部120eが多孔質体により形成されている点で、第1実施形態の心臓血管モデル10と異なっている。側枝部120eは、特許請求の範囲における拡散部の一例である。
上述の通り、本変形例の主枝部110eは、内腔160Lを有する有底筒状体である。より具体的には、主枝部110eは、一体として、上述の主枝部110と同様の材料により形成されている。
本変形例の側枝部120eは、多孔質体により形成されている。換言すれば、本変形例では、側枝部120eが拡散部として機能している。このため、本変形例の心臓血管モデル10eは、側枝部120eを含む分岐部140において、拡散部が設けられている。側枝部120eは、第1実施形態の拡散部160と同様の構成を備えている。すなわち、側枝部120eは、内側多孔質体により形成された内側部と、外側多孔質体により形成された外側部とにより形成されている。内側多孔質体および外側多孔質体の形成材料および孔径は、上述の内側多孔質体P61および外側多孔質体P63と同様である。
本変形例の心臓血管モデル10eでは、側枝部120eが上述の拡散部により形成されていることにより、分岐部140が拡散部を含んでいる。このため、心臓血管モデル10eによれば、分岐部140で、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像における造影像の濃淡の様子を模擬できる。
第1の実施形態では、上記拡散部を備える血管モデルを心臓血管モデルに採用したが、これに限定されない。上記血管モデルを、脳血管モデル、肝臓血管モデル、下肢血管モデル等に採用してもよい。
第1実施形態の拡散部160は、有底筒状体であるとしたがこれに限定されず、他の形状であってもよい。また、第1実施形態では、拡散部160が内腔160Lを有する構成を採用したがこれに限定されない。例えば、拡散部160が内腔160Lを備えない構成、すなわち、拡散部160が多孔質体により形成される中実体である構成を採用してもよい。
第1実施形態の拡散部160は、多孔質体により形成された2層構造に限定されず、3層以上の多層構造が採用されていてもよい。このような構成において、当該多層構造における各層の流れ抵抗は、拡散部160の外側へ向かうほど高くなる構成を採用することが好ましい。一方、拡散部160に、単層構造が採用されてもよい。このような構成において、拡散部160の外側部分の孔径を、内側部分の孔径より小さくすることで、拡散部160における流れ抵抗を実現することができる。
第1実施形態の拡散部160においては、外側部163の内側面S62が、内側部161の外側面S61に接触している構成を採用したが、これに限定されず、外側部163の内側面S62と、内側部161の外側面S61とが接触していない構成、すなわち、内側部161と外側部163との間に空間が存在する構成を採用してもよい。
第1実施形態の拡散部160において、内側部161を形成する内側多孔質体P61と、外側部163を形成する外側多孔質体P63とが、異なる多孔質材料により形成されていてもよい。このような構成において、外側多孔質体P63には、内側多孔質体P61の形成材料より水はけの良い形成材料を用いることが好ましい。
第1実施形態の心臓血管モデル10において、主枝部110が、多孔質体により形成されていてもよい。このような構成の心臓血管モデルによれば、主枝部を多孔質体により形成することによって、多孔質体の細孔から内腔110Lを流れる流体を拡散させつつ外部へ排出する拡散部として機能させることができる。このような構成において、拡散部160における管内圧力F160(図4参照)が、主枝部110の管内圧力F10より低い構成とすることができる。心臓血管モデル10に供給された流体が、管内圧力の低い主枝部110において、過度に浸出することを抑制するためである。すなわち、このような構成の心臓血管モデルによれば、心臓血管モデル10に供給された造影剤が、主枝部110において外部へ排出することを低減し、拡散部160まで造影剤を行きわたらせ、ひいては、拡散部160において造影剤を一定の濃度(流量)まで拡散させ、排出させることができる。このため、実際の臨床現場において造影剤使用時に得られるX線透視画像を実際の臨床上で観察される造影像血管に近似させた血管モデルを提供することができる。上記管内圧力の調整は、例えば、主枝部110を形成する多孔質体の孔径を、拡散部160を形成する多孔質体の孔径より小さくすることにより実現することができる。
第2実施形態の拡散部160aにおいて、外側部163aにおける流れ抵抗F63aが、内側部161aにおける流れ抵抗F61aより大きい構成であればよく、例えば、内側部161aに充填されている弾性体と、外側部163aに充填されている弾性体とが、異なる弾性材料であってもよい。このような構成において、外側部163aに充填される弾性体の弾性率は、内側部161aに充填される弾性体の弾性率より高いことが好ましい。また、外側部163aにのみ弾性体E1が充填されている構成が採用されてもよい。
1:心臓シミュレータ 1a:心臓シミュレータ 1b:心臓シミュレータ 1e:心臓シミュレータ 10:心臓血管モデル 10a:心臓血管モデル 10b:心臓血管モデル 10c:心臓血管モデル 10d:心臓血管モデル 10e:心臓血管モデル 20:心臓モデル 100:導入部 110:主枝部 110L:内腔 110S:スリット 110c:主枝部 110d:主枝部 110e:主枝部 111:本体部 113:コート層 120:側枝部 120e:側枝部 130:接続部 140:分岐部 160:拡散部 160L:内腔 160a:拡散部 160b:拡散部 161:内側部 161a:内側部 163:外側部 163a:外側部 163b:外側部 E1:弾性体 E3:弾性体 P61:内側多孔質体 P63:外側多孔質体 P63b:外側多孔質体 S1:表面 S60:内側面 S61:外側面 S62:内側面 S63:外側面

Claims (11)

  1. 血管モデルであって、
    前記血管モデルの長軸方向に延びる流体流路を形成する流路形成部と、
    前記流路形成部に接続し、かつ、細孔を有する多孔質体により形成された拡散部と、を備え、
    前記拡散部は、内側部分と、前記内側部分の外側に位置する外側部分とを有し、
    前記長軸方向において、前記外側部分における流れ抵抗は、前記内側部分における流れ抵抗より高い、
    血管モデル。
  2. 請求項1に記載の血管モデルであって、
    前記拡散部は、前記多孔質体として、前記外側部分を構成する第1の多孔質体と、前記内側部分を構成する第2の多孔質体と、を備える、
    血管モデル。
  3. 請求項1または請求項2に記載の血管モデルであって、
    前記拡散部は、前記流路形成部における前記流体流路に開口する一端を有する、有底筒状体である、
    血管モデル。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の血管モデルであって、
    前記外側部分における多孔質体の孔径は、前記内側部分における多孔質体の孔径より小さい、
    血管モデル。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の血管モデルであって、
    前記拡散部において、前記外側部分における多孔質体と前記内側部分における多孔質体との少なくとも一方の細孔には弾性体が充填されている、
    血管モデル。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の血管モデルであって、
    前記拡散部において、前記外側部分における多孔質体と前記内側部分における多孔質体との両方の細孔には弾性体が充填されており、
    前記外側部分における多孔質体の細孔に充填された弾性体の弾性率は、前記内側部分における多孔質体の細孔に充填された弾性体の弾性率より高い、
    血管モデル。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の血管モデルであって、
    前記流路形成部は、前記血管モデルの長軸方向に延びる管状体であり、
    前記拡散部は、前記管状体の先端部に設けられている、
    血管モデル。
  8. 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の血管モデルであって、
    前記流路形成部は、前記血管モデルの長軸方向に延びる管状体であり、
    前記拡散部は、前記管状体が分岐する分岐部に設けられている、
    血管モデル。
  9. 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の血管モデルであって、
    前記流路形成部は、多孔質体により形成されている、
    血管モデル。
  10. 請求項3に記載の血管モデルであって、
    前記拡散部における管内圧力は、前記流路形成部の管内圧力より低い、
    血管モデル。
  11. 請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の血管モデルであって、
    前記血管モデルの外周面の少なくとも一部分は、弾性素材によりコーティングされている、
    血管モデル。
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