JP7417730B2 - 蓄熱体、蓄熱体の製造方法、電子デバイス - Google Patents

蓄熱体、蓄熱体の製造方法、電子デバイス Download PDF

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Description

本発明は、蓄熱体、蓄熱体の製造方法、及び、電子デバイスに関する。
近年、蓄熱材、香料、染料、及び、医薬品成分等の機能性材料を内包したマイクロカプセルが注目されている。
例えば、特許文献1においては、蓄熱材を内包するマイクロカプセルが所定量含有された蓄熱性アクリル系樹脂組成物をシート状に成形及び硬化せしめてなる蓄熱性シート状成形体が開示されている。
特開2007-031610号公報
近年、電子デバイスの高機能化等に伴い、発熱量を抑制する方法として、蓄熱性向上のニーズが高まっている。本発明者らは、例えば電子デバイスのように、対象物が溝又は穴等の凹凸形状を表面に有する場合であっても、蓄熱体の塑性変形性が良好であり、凹凸形状に対する追従性に優れる蓄熱体であれば、対象物中の限られたスペースにより多くの蓄熱体を充填でき、結果として蓄熱性を更に向上できると想起した。
しかしながら、特許文献1に記載されているようなシート状の成形体では、凹凸が形成された部分に充填しようとすると、そのシート状成形体に折れ又はヒビが発生するため、凹凸形状に追従させ、より多くの蓄熱体を充填することが難しかった。
本発明は、上記実情に鑑みて、塑性変形性により優れ、凹凸形状に対する追従性が向上した蓄熱体を提供することを課題とする。また、本発明は、蓄熱体の製造方法、及び、電子デバイスを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
〔1〕 蓄熱材を内包するマイクロカプセルと樹脂とを含む蓄熱体であって、上記蓄熱体の全質量に対する上記蓄熱材の含有量が20~99質量%であり、上記蓄熱体が25℃で塑性体である、蓄熱体。
〔2〕 上記マイクロカプセルのカプセル壁が、ポリウレア、ポリウレタンウレア、及び、ポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含み、上記カプセル壁のガラス転移温度が150℃以上であるか、又は、上記カプセル壁がガラス転移温度を示さない、〔1〕に記載の蓄熱体。
〔3〕 上記ポリマーが、後述する式(Y)で表される構造を有する、〔2〕に記載の蓄熱体。
〔4〕 上記ポリマーが、芳香族又は脂環族ジイソシアネートと、1分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物と、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと、を反応させてなるポリマーである、〔2〕又は〔3〕に記載の蓄熱体。
〔5〕 上記マイクロカプセルのカプセル壁が、芳香族又は脂環族ジイソシアネートと1分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物とのアダクト体である3官能以上のポリイソシアネートA、並びに、芳香族ジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートからなる群から選択されるポリイソシアネートBを用いて形成されている、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の蓄熱体。
〔6〕 上記ポリイソシアネートA及び上記ポリイソシアネートBの合計含有量に対する上記ポリイソシアネートAの含有量が、20~98質量%である、〔5〕に記載の蓄熱体。
〔7〕 上記蓄熱体の押込弾性率が、0.1~3MPaである、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の蓄熱体。
〔8〕 上記樹脂の含有量が、上記蓄熱体の全体積に対して40体積%以下である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の蓄熱体。
〔9〕 上記マイクロカプセルの含有量に対する上記樹脂の含有量の体積比が、0.25~1である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の蓄熱体。
〔10〕 上記樹脂がシリコーン樹脂である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の蓄熱体。
〔11〕 上記シリコーン樹脂が、後述する式(Z)で表される構造を有する、〔10〕に記載の蓄熱体。
〔12〕 上記樹脂の粘度が5,000cP以上である、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の蓄熱体。
〔13〕 上記蓄熱体の空隙率が10体積%未満である、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の蓄熱体。
〔14〕 上記蓄熱材の分子量が500以下である、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の蓄熱体。
〔15〕 上記蓄熱材が、無機塩、脂肪族炭化水素、脂肪酸エステル系化合物、芳香族炭化水素系化合物、脂肪族アルコール、糖、及び、糖アルコールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の蓄熱体。
〔16〕 上記蓄熱材の融点が25℃超である、〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の蓄熱体。
〔17〕 潜熱容量が90J/mL以上である、〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の蓄熱体。
〔18〕 蓄熱体の全質量に対する蓄熱材の含有量が50~99質量%である、〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の蓄熱体。
〔19〕 樹脂と蓄熱材を内包するマイクロカプセルとを、上記樹脂及び上記マイクロカプセルの合計量に対する上記蓄熱材の量が20~99質量%となる割合で混合する混合工程、及び、上記混合工程で得られた混合物を混練する混練工程、を有し、上記混合工程において上記樹脂及び上記マイクロカプセルを混合してから上記混練工程が終了するまでの間に上記樹脂の硬化処理を施さない、〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の蓄熱体を製造する方法。
〔20〕 〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の蓄熱体を含む、電子デバイス。
本発明によれば、塑性変形性により優れ、凹凸形状に対する追従性が向上した蓄熱体を提供できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
後述する各種成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。例えば、後述するポリイソシアネートは、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
[蓄熱体]
本発明の蓄熱体は、蓄熱材を内包するマイクロカプセルと樹脂とを含み、蓄熱材の含有量が所定量であり、25℃で塑性体である。
本発明の蓄熱体は、塑性変形性により優れ、凹凸形状に対する追従性が向上しているため、本発明の蓄熱体によれば、対象物が凹凸形状を表面に有する場合であっても、対象物中の限られたスペースにより多くの蓄熱体を充填でき、蓄熱性を更に向上できる。これは、以下の理由によるものと推測される。
一般に、蓄熱体の蓄熱性を向上するために、蓄熱材の含有量を増やす方法が考えられる。しかしながら、蓄熱材の融点よりも低い温度では蓄熱材が固体になるため、蓄熱材の含有量が増えると蓄熱体の柔軟性が低下する。蓄熱体の柔軟性が低いと、熱を吸収する対象物が凹凸形状(例えば、深い溝形状など)を有する場合に、蓄熱体が対象物の凹凸形状に追随せず、高い蓄熱性を維持したまま蓄熱体を充填することが困難になると考えられる。例えば、特許文献1のようなシート形態の蓄熱体を対象物の凹凸形状に充填する場合、蓄熱体にヒビ又は割れが生じてしまい、充填が困難になることが推測される。
それに対して、本発明の蓄熱体は、塑性体であることから、充填が困難な形状に対しても追随して、蓄熱体を対象物に隙間なく充填できる。また、本発明の蓄熱体は、蓄熱材を20~99質量%という含有量で含み、蓄熱性を保ったまま変形できる。そのため、本発明の蓄熱体を対象物に充填することにより、対象物からの吸熱効率をより向上させることができると本発明者らは考えている。
本明細書において、蓄熱体が、塑性変形性に優れること、及び/又は、凹凸形状に対する追従性に優れることを、「本発明の効果が優れる」とも記載する。
本発明の蓄熱体は、25℃で塑性体である。塑性体とは、変形時に割れ及び/又はヒビを伴いにくく、塑性変形しやすい固体物を意味し、例えば、粘土状の物体が挙げられる。
本明細書においては、25℃における弾性率(押込弾性率)が3MPa以下である物体を、25℃で塑性体である物体とする。物体の弾性率(押込弾性率)は、ISO14577に従ってナノインデンターを用いて測定される。
蓄熱体の押込弾性率は、3MPa以下であれば特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、2MPa以下が好ましく、1.1MPa以下がより好ましい。
押込弾性率の下限値は特に制限されないが、ハンドリング性が向上する点で、0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましい。
以下の説明では、まず、蓄熱体に含まれる材料について詳述し、その後、蓄熱体の特性について詳述する。
本発明の蓄熱体は、マイクロカプセルに内包された形態で存在する蓄熱材を含む。蓄熱体は、マイクロカプセルに内包されていない形態で存在する蓄熱材を含んでいてもよい。
蓄熱材の少なくとも一部がマイクロカプセルに内包されて存在することにより、蓄熱体は、塑性体としての特性を実現しやすい点、温度に応じた相状態で蓄熱材が安定的に存在できる点、及び、高温時に液体となった蓄熱材が蓄熱組成物外に漏れ出るのを防止でき、蓄熱組成物の周辺の部材を汚染せず、且つ、蓄熱組成物の蓄熱能を維持できる点等の利点を有する。
<マイクロカプセル>
マイクロカプセルは、コア部と、コア部をなすコア材(内包されるもの(内包成分ともいう。))を内包するための壁部と、を有する。以下、マイクロカプセルの壁部を「カプセル壁」ともいう。
マイクロカプセルは、コア材(内包成分)として、蓄熱材を内包する。蓄熱材がマイクロカプセルに内包されているため、蓄熱材は温度に応じた相状態で安定的に存在できる。
(蓄熱材)
蓄熱材の種類は特に制限されず、温度変化に応じて相変化する材料を用いることができ、温度変化に応じた融解と凝固との状態変化を伴う固相-液相間の相変化を繰り返すことができる材料が好ましい。
蓄熱材の相変化は、蓄熱材自体が有する相変化温度に基づくことが好ましく、固相-液相間の相変化の場合、融点に基づくことが好ましい。
蓄熱材としては、例えば、蓄熱体の外部で発生した熱を顕熱として蓄え得る材料、蓄熱体の外部で発生した熱を潜熱として蓄え得る材料(以下、「潜熱蓄熱材」ともいう。)、及び、可逆的な化学変化に伴う相変化を生じる材料等のいずれでもよい。蓄熱材は、蓄えた熱を放出し得るものが好ましい。
なかでも、授受可能な熱量の制御のしやすさ、及び、熱量の大きさの点で、蓄熱材としては、潜熱蓄熱材が好ましい。
潜熱蓄熱材とは、蓄熱体の外部で発生した熱を潜熱として蓄熱する材料である。例えば、固相-液相間の相変化の場合、材料により定められた融点を相変化温度として融解と凝固との間の変化を繰り返すことで潜熱による熱の授受が行える材料を指す。
潜熱蓄熱材は、固相-液相間の相変化の場合、融点での融解熱及び凝固点での凝固熱を利用し、固体-液体間の相変化を伴って蓄熱し、また放熱できる。
潜熱蓄熱材の種類は特に制限されず、融点を有して相変化が可能な化合物から選択できる。
潜熱蓄熱材としては、例えば、氷(水);無機塩;パラフィン(例えば、イソパラフィン、ノルマルパラフィン)等の脂肪族炭化水素;トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸メチル(融点16~19℃)、ミリスチン酸イソプロピル(融点167℃)、及び、フタル酸ジブチル(融点-35℃)等の脂肪酸エステル系化合物;ジイソプロピルナフタレン(融点67~70℃)等のアルキルナフタレン系化合物、1-フェニル-1-キシリルエタン(融点-50℃未満)等のジアリールアルカン系化合物、4-イソプロピルビフェニル(融点11℃)等のアルキルビフェニル系化合物、トリアリールメタン系化合物、アルキルベンゼン系化合物、ベンジルナフタレン系化合物、ジアリールアルキレン系化合物、及び、アリールインダン系化合物等の芳香族炭化水素系化合物;ツバキ油、大豆油、コーン油、綿実油、菜種油、オリーブ油、ヤシ油、ひまし油、及び、魚油等の天然動植物油;鉱物油;ジエチルエーテル類;脂肪族アルコール;糖;並びに、糖アルコールが挙げられる。
潜熱蓄熱材としては、無機塩、脂肪族炭化水素、脂肪酸エステル系化合物、芳香族炭化水素系化合物、脂肪族アルコール、糖、又は、糖アルコールが好ましく、無機塩、脂肪族炭化水素、又は、脂肪酸エステル系化合物がより好ましく、脂肪族炭化水素が更に好ましい。
潜熱蓄熱材としては、蓄熱体が高い蓄熱量を有する点で、低分子であることが好ましい。より具体的には、分子量1000以下の化合物であることが好ましく、分子量500以下の化合物であることがより好ましい。下限は特に制限されず、例えば、18であり、適正な温度域とする点で、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、275以上が更に好ましい。
潜熱蓄熱材の融点は、蓄熱体の用途に応じて選択できるが、本発明の効果がより発現されやすい点で、0℃以上が好ましく、25℃超がより好ましく、30℃超が更に好ましい。
潜熱蓄熱材の融点の上限は、用途の放熱量によるが、汎用性により優れる点で、100℃未満が好ましく、80℃未満がより好ましい。
融点が0℃以上の直鎖状の脂肪族炭化水素(直鎖状のパラフィン)としては、例えば、n-テトラデカン(融点6℃)、n-ペンタデカン(融点10℃)、n-ヘキサデカン(融点18℃)、n-ヘプタデカン(融点22℃)、n-オクタデカン(融点28℃)、n-ノナデカン(融点32℃)、n-エイコサン(融点37℃)、n-ヘンイコサン(融点40℃)、n-ドコサン(融点44℃)、n-トリコサン(融点48~50℃)、n-テトラコサン(融点52℃)、n-ペンタコサン(融点53~56℃)、n-ヘキサコサン(融点57℃)、n-ヘプタコサン(融点60℃)、n-オクタコサン(融点62℃)、n-ノナコサン(融点63~66℃)、n-トリアコンタン(融点66℃)、n-ヘントリアコンタン(融点67~69℃)、n-ドトリアコンタン(融点69℃)、n-トリトリアコンタン(融点70~72℃)、n-テトラトリアコンタン(融点73℃)、n-ペンタトリアコンタン(融点75℃)、及び、n-ヘキサトリアコンタン(融点77℃)が挙げられる。
なかでも、n-ヘプタデカン(融点22℃)、n-オクタデカン(融点28℃)、n-ノナデカン(融点32℃)、n-エイコサン(融点37℃)、n-ヘンイコサン(融点40℃)、n-ドコサン(融点44℃)、n-トリコサン(融点48~50℃)、n-テトラコサン(融点52℃)、n-ペンタコサン(融点53~56℃)、n-ヘキサコサン(融点60℃)、n-ヘプタコサン(融点60℃)、又は、n-オクタコサン(融点62℃)が好ましい。
蓄熱材として、直鎖状の脂肪族炭化水素を使用する場合、直鎖状の脂肪族炭化水素の含有量は、蓄熱材の含有量に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましい。上限としては、100質量%が挙げられる。
無機塩としては、無機水和塩が好ましい。無機水和塩としては、例えば、アルカリ金属の塩化物の水和物(例:塩化ナトリウム2水和物等)、アルカリ金属の酢酸塩の水和物(例:酢酸ナトリウム水和物等)、アルカリ金属硫酸塩の水和物(例:硫酸ナトリウム水和物等)、アルカリ金属のチオ硫酸塩の水和物(例:チオ硫酸ナトリウム水和物等)、アルカリ土類金属硫酸塩の水和物(例:硫酸カルシウム水和物等)、及び、アルカリ土類金属の塩化物の水和物(例:塩化カルシウム水和物等)が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては、脂肪族モノオール、及び、脂肪族ジオールが挙げられ、蓄熱性の点で脂肪族ジオールが好ましい。なかでも、1,6-ヘキサンジオール、又は、1,8-オクタンジオールがより好ましい。
糖及び糖アルコールとしては、キシリトール、エリスリトール、ガラクチトール、及び、ジヒドロキシアセトンが挙げられる。
蓄熱材は、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。蓄熱材を1種単独で又は融点の異なる複数使用することで、用途に応じて蓄熱性を発現する温度領域及び蓄熱量を調節できる。
蓄熱材の蓄熱作用を得たい中心温度に融点を持つ蓄熱材を中心に、その前後に融点を持つ蓄熱材を混合することで、蓄熱可能な温度領域を広げることができる。蓄熱材としてパラフィンを用いる場合を例に具体的に説明すると、蓄熱材の蓄熱作用を得たい中心温度に融点を持つパラフィンaを中心材料として用い、パラフィンaと、パラフィンaの前後に炭素数を有する他のパラフィンと、を混合することで、蓄熱体が広い温度領域(熱制御領域)を持つように設計できる。
また、蓄熱作用を得たい中心温度に融点を持つパラフィンaの含有量は特に制限されないが、蓄熱材全質量に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましい。上限としては、100質量%が挙げられる。
蓄熱材としてパラフィンを用いる場合、パラフィンを1種単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。融点の異なるパラフィンを複数使用する場合、蓄熱性を発現する温度領域を広げることができる。融点の異なるパラフィンを複数使用する場合は、吸熱性を低下させいないために、分岐鎖状のパラフィンを実質的に含まず、直鎖状のパラフィンのみの混合物が望ましい。ここで、分岐鎖状のパラフィンを実質的に含まないとは、分岐鎖状のパラフィンの含有量が、パラフィンの全質量に対して、5質量%以下であることを意味し、2質量%以下が好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
一方、電子デバイスに適用するための蓄熱材としては、パラフィンは実質的に1種類であることも好ましい。実質的に1種類であると、パラフィンが高純度で蓄熱体に充填されるため、電子デバイスの発熱体に対する吸熱性が良好となる。ここで、実質的に1種類のパラフィンとは、主たるパラフィンの含有量が、パラフィン全質量に対して95~100質量%であることを意味し、98~100質量%であることが好ましい。
複数のパラフィンを使用する場合には、主たるパラフィンの含有量は特に制限されないが、蓄熱性を発現する温度領域及び蓄熱量の点で、パラフィン全質量に対して、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましく、95~100質量%が更に好ましい。
なお、「主たるパラフィン」とは、含有される複数のパラフィンのうち、最も含有量の多いパラフィンのことを指す。
また、パラフィンの含有量は特に制限されないが、蓄熱材(好ましくは潜熱蓄熱材)全質量に対して、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましく、95~100質量%が更に好ましく、98~100質量%が特に好ましい。
また、パラフィンは、直鎖状のパラフィンが好ましく、分岐鎖状のパラフィンを実質的に含まないことがより好ましい。直鎖状のパラフィンを含み、分岐鎖状のパラフィンを実質的に含まないことで、蓄熱性がより向上するためである。この理由としては、直鎖状のパラフィンの分子同士の会合が、分岐鎖状のパラフィンによって阻害されることを抑制できるためと推測される。
蓄熱体中の蓄熱材の含有量は、蓄熱体全質量に対して、20~99質量%である。
なかでも、蓄熱体の蓄熱量が向上する点では、蓄熱体全質量に対して、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。蓄熱材の含有量が50質量%以上であると、吸熱量が90J/mL以上になりやすい。蓄熱材の含有量の上限は特に制限されないが、蓄熱体の強度及び本発明の効果がより優れる点では、蓄熱体全質量に対して、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましく、60質量%以下が特に好ましい。
また、蓄熱体中の蓄熱材の含有量は、蓄熱体全体積に対して、20体積%以上が好ましい。なかでも、蓄熱体の蓄熱量が向上する点で、蓄熱体全質量に対して、40体積%以上がより好ましく、55体積%以上が更に好ましく、60体積%以上が特に好ましい。蓄熱材の含有量の上限は特に制限されないが、蓄熱体の強度及び本発明の効果がより優れる点で、蓄熱体全体積に対して、99体積%以下が好ましく、90体積%以下がより好ましく、75体積%以下が更に好ましく、70体積%以下が特に好ましく、65体積%以下が最も好ましい。
(他の成分)
マイクロカプセルのコア材としては、上述した蓄熱材以外の他の成分が内包されていてもよい。マイクロカプセルにコア材として内包し得る他の成分としては、例えば、溶剤、及び、難燃剤等の添加剤が挙げられる。
コア材に占める蓄熱材の含有量は特に制限されないが、蓄熱体の蓄熱性がより優れる点で、コア材全質量に対して、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましい。
マイクロカプセルは、コア材として、溶剤を内包していてもよい。
この場合の溶剤としては、融点が、蓄熱体が使用される温度領域(熱制御領域;例えば、発熱体の動作温度)から外れている既述の蓄熱材が挙げられる。即ち、溶剤は、熱制御領域において液体の状態で相変化しないものを指し、熱制御領域内において相転移を起こして吸放熱反応が生じる蓄熱材と区別される。
コア材に占める溶剤の含有量は特に制限されないが、コア材全質量に対して、30質量%未満が好ましく、10質量%未満がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、0質量%が挙げられる。
マイクロカプセルにコア材として内包し得る他の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、ワックス、及び、臭気抑制剤等の添加剤が挙げられる。
(カプセル壁(壁部))
マイクロカプセルは、コア材を内包するカプセル壁を有する。
マイクロカプセルにおけるカプセル壁を形成する材料は特に制限されず、例えば、ポリマーが挙げられ、より具体的には、ポリウレタンウレア、ポリウレタン、ポリウレア、メラミン樹脂、及び、アクリル樹脂が挙げられる。
カプセル壁を薄くでき、蓄熱部材の蓄熱性がより優れる点で、カプセル壁は、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、又は、メラミン樹脂を含むことが好ましく、ポリウレア、ポリウレタンウレア、及び、ポリウレタンからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含むことがより好ましい。
なお、ポリウレタンとはウレタン結合を複数有するポリマーであり、ポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物が好ましい。
また、ポリウレアとはウレア結合を複数有するポリマーであり、ポリアミンとポリイソシアネートとの反応生成物が好ましい。
また、ポリウレタンウレアとはウレタン結合及びウレア結合を有するポリマーであり、ポリオールと、ポリアミンと、ポリイソシアネートとの反応生成物が好ましい。なお、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させる際に、ポリイソシアネートの一部が水と反応してポリアミンとなり、結果的にポリウレタンウレアが得られることがある。
マイクロカプセルのカプセル壁は、ウレタン結合を有することが好ましい。ウレタン結合を有するカプセル壁は、例えば、上述したポリウレタンウレア又はポリウレタンを用いて得られる。
ウレタン結合は、運動性の高い結合であるので、カプセル壁に熱可塑性をもたらすことができる。また、カプセル壁の柔軟性を調節しやすい。そのため、例えば蓄熱体の製造時の乾燥時間を長くすると、マイクロカプセルが変形しながら互いに結合しやすくなる。その結果、マイクロカプセルが細密充填構造を形成しやすくなるので、蓄熱体の空隙率をより低減できる。
また、マイクロカプセルは、変形する粒子として存在していることが好ましい。
マイクロカプセルが変形する粒子である場合、マイクロカプセルが壊れずに変形でき、蓄熱体中におけるマイクロカプセルの充填率を向上させることができる。結果、蓄熱体における蓄熱材の量を増やすことが可能になり、より優れた蓄熱性を実現できる。
なお、マイクロカプセルが壊れずに変形するとは、変形量の程度は問わず、個々のマイクロカプセルに外圧が与えられていない状態での形状から変形することを意味する。マイクロカプセルに生じる変形としては、蓄熱体内においてマイクロカプセル同士が互いに押され合った場合に、球面同士が接触して平面状、又は一方が凸状で他方が凹状である接触面ができる変形が含まれる。
マイクロカプセルが変形する粒子となり得る点で、カプセル壁を形成する材料としては、ポリウレタンウレア、ポリウレタン、又は、ポリウレアが好ましく、ポリウレタンウレア、又は、ポリウレタンがより好ましく、ポリウレタンウレアが更に好ましい。
上述したように、ポリウレタン、ポリウレア、及び、ポリウレタンウレアは、ポリイソシアネートを用いて形成されることが好ましい。
ポリイソシアネートとは、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であり、芳香族ポリイソシアネート、及び、脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート、4-クロロキシリレン-1,3-ジイソシアネート、2-メチルキシリレン-1,3-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、及び、4,4’-ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、及び、水素化キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
なお、上記では2官能の芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートを例示したが、ポリイソシアネートとしては、3官能以上のポリイソシアネート(例えば、3官能のトリイソシアネート、及び、4官能のテトライソシアネート)も挙げられる。
より具体的には、ポリイソシアネートとしては、上記の2官能のポリイソシアネートの3量体であるビューレット体又はイソシアヌレート体、トリメチロールプロパン等のポリオールと2官能のポリイソシアネートとの付加体、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の重合性基を有するポリイソシアネート、及び、リジントリイソシアネートも挙げられる。
ポリイソシアネートについては「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社発行(1987))に記載されている。
なかでも、ポリイソシアネートとしては、3官能以上のポリイソシアネートが好ましい。
3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、3官能以上の芳香族ポリイソシアネート、及び、3官能以上の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
3官能以上のポリイソシアネートとしては、2官能のポリイソシアネートと分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物(例えば、3官能以上の、ポリオール、ポリアミン、又はポリチオール等)とのアダクト体(付加物)である3官能以上のポリイソシアネート(アダクト型である3官能以上のポリイソシアネート)、及び、2官能のポリイソシアネートの3量体(ビウレット型又はイソシアヌレート型)も好ましい。
アダクト型である3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、タケネート(登録商標)D-102、D-103、D-103H、D-103M2、P49-75S、D-110N、D-120N、D-140N、D-160N(以上、三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)L75、UL57SP(住化バイエルウレタン株式会社製)、コロネート(登録商標)HL、HX、L(日本ポリウレタン株式会社製)、P301-75E(旭化成株式会社製)、及び、バーノック(登録商標)D-750(DIC株式会社製)が挙げられる。
なかでも、アダクト型の3官能以上のポリイソシアネートとしては、三井化学株式会社製のタケネート(登録商標)D-110N、D-120N、D-140N、D-160N、又は、DIC株式会社製のバーノック(登録商標)D-750が好ましい。
イソシアヌレート型の3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、タケネート(登録商標)D-127N、D-170N、D-170HN、D-172N、D-177N、D-204(三井化学株式会社製)、スミジュールN3300、デスモジュール(登録商標)N3600、N3900、Z4470BA(住化バイエルウレタン)、コロネート(登録商標)HX、HK(日本ポリウレタン株式会社製)、デュラネート(登録商標)TPA-100、TKA-100、TSA-100、TSS-100、TLA-100、TSE-100(旭化成株式会社製)が挙げられる。
ビウレット型の3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、タケネート(登録商標)D-165N、NP1100(三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)N3200(住化バイエルウレタン)、デュラネート(登録商標)24A-100(旭化成株式会社製)が挙げられる。
また、ポリイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートも好ましい。
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとしては、式(X)で表される化合物が好ましい。
式(X)中、nは繰り返し単位数を表す。繰り返し単位数としては、1以上の整数を表し、本発明の効果がより優れる点で、nは1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましい。
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含むポリイソシアネートとしては、例えば、ミリオネート(商標)MR-100、ミリオネートMR-200、及び、ミリオネートMR-400(いずれも東ソー株式会社製)、WANNATE PM-200、及び、WANNATE PM-400(いずれも万華ジャパン株式会社製)、コスモネート(登録商標)M-50、コスモネートM-100、コスモネートM-200、及び、コスモネートM-300(いずれも三井化学株式会社製)、並びに、ボラネート(登録商標)M-595(ダウケミカル株式会社製)が挙げられる。
ポリオールとは、2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物であり、例えば、低分子ポリオール(例:脂肪族ポリオール、芳香族ポリオール)、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、及び、ヒドロキシ基含有アミン系化合物が挙げられる。
なお、低分子ポリオールとは、分子量が300以下のポリオールを意味し、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及び、プロピレングリコール等の2官能の低分子ポリオール、並びに、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、及び、ソルビトール等の3官能以上の低分子ポリオールが挙げられる。
マイクロカプセルが変形する粒子となり得る点で、上記ポリオールとしては、1級アルコール基を有するポリオール、低分子ポリオールが好ましい。
なお、ヒドロキシ基含有アミン系化合物としては、例えば、アミノ化合物のオキシアルキル化誘導体等として、アミノアルコールが挙げられる。アミノアルコールとしては、例えば、エチレンジアミン等のアミノ化合物のプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイド付加物である、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、及び、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]エチレンジアミン等が挙げられる。
ポリアミンとは、2つ以上のアミノ基(第1級アミノ基又は第2級アミノ基)を有する化合物であり、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3-プロピレンジアミン、及び、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族多価アミン;脂肪族多価アミンのエポキシ化合物付加物;ピペラジン等の脂環式多価アミン;並びに、3,9-ビス-アミノプロピル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ-(5,5)ウンデカン等の複素環式ジアミンが挙げられる。
なかでも、カプセル壁に含まれるポリマーは、蓄熱体を高温環境下に曝しても蓄熱量を維持できる点で、下記式(Y)で表される構造を有することが好ましい。
式(Y)で表される構造は、上述した式(X)で表される化合物をポリイソシアネートの原料として使用した場合に、得られるポリマー中に含まれる構造に該当する。
式(Y)中、nは、繰り返し単位数を表し、1以上の整数を表す。nは、1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましい。
なかでも、カプセル壁に含まれるポリマーは、蓄熱体を高温環境下に曝しても蓄熱量を維持できる点で、芳香族又は脂環族ジイソシアネートと、1分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物と、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと、を反応させてなるポリマーであることが好ましい。
なお、上記芳香族又は脂肪族ジイソシアネートとしては、耐熱性の点で、芳香族ジイソシアネートが好ましい。また、1分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物としては、3官能以上のポリオールが好ましく、3官能以上の低分子ポリオールがより好ましい。
特に、カプセル壁に含まれるポリマーは、芳香族又は脂環族ジイソシアネートと1分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物とのアダクト体である3官能以上のポリイソシアネートA(以下、単に「ポリイソシアネートA」ともいう。)、並びに、芳香族ジイソシアネート及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートからなる群から選択されるポリイソシアネートB(以下、単に「ポリイソシアネートB」ともいう。)を用いて形成されることが好ましい。
つまり、カプセル壁は、上記ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBを用いて形成される、上記ポリマー(ポリウレア、ポリウレタンウレア、及び、ポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種のポリマー)を含むカプセル壁であることが好ましい。
上記ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBを用いてカプセル壁を形成することにより、蓄熱体のヒートサイクル耐性を向上させることができる。
ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBを用いてカプセル壁を形成することにより、蓄熱体のヒートサイクル耐性が向上する詳細なメカニズムは明らかではないが、本発明者らは以下の理由によるものと推測している。
ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBを用いて形成されるカプセル壁以外のカプセル壁では、加熱及び冷却を繰り返すヒートサイクル試験を行った後、蓄熱体にマイクロカプセルとともに含まれる樹脂(特にシリコーン樹脂)が、上記カプセル壁を通過して、蓄熱材と混合する可能性が考えられる。樹脂が蓄熱材と混合すると、蓄熱材が変質(結晶性が低下)し、結果として、蓄熱体の蓄熱性が低下することが予想される。それに対して、ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBを用いて形成されるカプセル壁は、耐熱性が高く、ヒートサイクル試験後における樹脂の通過を抑制し、蓄熱材の変質を抑え、蓄熱体の蓄熱性を維持できるものと、本発明者らは推測している。
また、上記ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBを用いてカプセル壁を形成することにより、高温条件下におけるマイクロカプセルの破壊を抑制できる。
なお、ポリイソシアネートAとして、ポリオールとポリイソシアネートとのアダクト体を用い、ポリイソシアネートBとを反応させた場合、ポリオールと、ポリイソシアネートとの反応生成物と同様、結果的にポリウレタンウレアが得られることが多い。
ポリイソシアネートBとしては、芳香族ジイソシアネートを単独で用いてもよいし、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを単独で用いてもよいし、両者を混合して用いてもよい。なかでも、ポリイソシアネートBとしては、芳香族ジイソシアネート及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの混合物が好ましい。
上記混合物においては、芳香族ジイソシアネートに対する、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの質量比(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの質量/芳香族ジイソシアネートの質量)は特に制限されないが、0.1~10が好ましく、0.5~2がより好ましく、0.75~1.5が更に好ましい。
ポリイソシアネートBの粘度は特に制限されないが、100~1000mPa・sが好ましい。
なお、上記粘度は、25℃でレオメーターを用いて測定される粘度である。
ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBを併用する場合、それぞれの含有量は特に制限されないが、ヒートサイクル耐性がより優れる点で、ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBの合計含有量に対するポリイソシアネートAの含有量が、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましく、85質量%以下であることが特に好ましい。
下限値は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBの含有量に対するポリイソシアネートAの含有量が、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが更に好ましい。
カプセル壁のガラス転移温度(Tg)は特に制限されないが、150℃以上であるか、又は、カプセル壁がガラス転移温度を示さないことが好ましい。つまり、カプセル壁を構成する材料のガラス転移温度が150℃以上であるか、又は、カプセル壁を構成する材料がガラス転移温度を示さないことが好ましい。
なお、カプセル壁がガラス転移温度を示す場合、その温度は、耐熱性がより優れる点で、160℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上が更に好ましい。カプセル壁がガラス転移温度を示す場合、その温度の上限は特に制限されないが、カプセル壁の熱分解温度以下である場合が多く、250℃以下となることが多い。
なかでも、耐熱性がより優れる点で、カプセル壁がガラス転移温度を示さないことが好ましい。
なお、カプセル壁がガラス転移温度を示さないとは、25℃から後述するカプセル壁の熱分解温度から5℃引いた温度(熱分解温度-5℃)までに、カプセル壁(カプセル壁を構成する材料)がガラス転移温度を示さないことを意味する。つまり、「25℃」~「(熱分解温度(℃)-5℃)」までの範囲においてガラス転移温度を示さないことを意味する。
カプセル壁のガラス転移温度を150℃以上にするか、又は、カプセル壁がガラス転移温度を示さないようにする方法は特に制限されず、マイクロカプセルを製造する際の原料を適宜選択することにより、調整できる。例えば、ポリウレア及びポリウレタンウレアは高いガラス転移温度を示す性質があるため、カプセル壁をポリウレア又はポリウレタンウレアで構成する方法が挙げられる。また、カプセル壁を構成する材料中の架橋密度を増やす方法も挙げられる。更に、カプセル壁を構成する材料中に、芳香環基(例えば、ベンゼン環基)を導入する方法も挙げられる。
カプセル壁のガラス転移温度を測定する方法としては、以下の方法が挙げられる。
マイクロカプセルと酢酸エチルとを混合して、混合液を25℃で24時間撹拌する。その後、混合液をろ過し、得られた残渣を60℃で48時間真空乾燥することで、内部に何も内包されていないマイクロカプセル(以後、単に「測定材料」ともいう。)が得られる。つまり、ガラス転移温度の測定対象である、カプセル壁材料が得られる。
次に、熱重量示差熱分析装置TG-DTA(装置名:DTG-60、(株)島津製作所)を用いて、得られた測定材料の熱分解温度を測定する。なお、熱分解温度とは、大気雰囲気の熱重量分析(TGA)において、測定材料を一定の昇温速度(10℃/min)で室温から昇温し、加熱前の測定材料の質量に対し、5質量%減量した時の温度(℃)である。
次に、測定材料のガラス転移温度を、示差走査熱量計DSC(装置名:DSC-60a Plus、(株)島津製作所)を用いて、密閉パンに測定材料を入れ、昇温速度5℃/minで25℃~(熱分解温度(℃)-5℃)の範囲で加熱することにより、測定する。カプセル壁のガラス転移温度としては、2サイクル目の昇温時に測定された値を使用する。
カプセル壁の熱分解温度は特に制限されないが、耐熱性がより優れる点で、200℃以上が好ましく、220℃以上がより好ましく、230℃以上が更に好ましい。
カプセル壁の熱分解温度は、カプセル壁の5質量%減量した時の温度(℃)を意味する。測定方法は上述したガラス転移温度を測定する際に実施する熱重量示差熱分析装置TG-DTA(装置名:DTG-60、(株)島津製作所)を用いた方法が挙げられる。
マイクロカプセルにおけるカプセル壁の質量は特に制限されないが、コア部に含まれる蓄熱材全質量に対して、12質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。カプセル壁の質量が内包成分である蓄熱材に対して12質量%以下であることは、カプセル壁が薄壁であることを示す。カプセル壁を薄壁とすることで、蓄熱体中に占める蓄熱材を内包したマイクロカプセルの含量が高められ、結果、蓄熱部材の蓄熱性がより優れたものとなる。
また、カプセル壁の質量の下限は特に制限されないが、マイクロカプセルの耐圧性を保つ点で、蓄熱材全質量に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましい。
(マイクロカプセルの物性)
-粒径-
マイクロカプセルの粒径は特に制限されないが、体積基準のメジアン径(Dm)で1~80μmが好ましく、10~70μmがより好ましく、15~50μmが更に好ましい。マイクロカプセルの粒径は小さい方が、マイクロカプセル間の空隙をより少なくすることができ、マイクロカプセル同士の接触面積を広げることができるため、取り扱い時における欠陥の発生を更に抑制できる。その点で、マイクロカプセルの粒径は、体積基準のメジアン径(Dm)で40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましい。
マイクロカプセルの体積基準のメジアン径は、後述するマイクロカプセルの製造方法について説明した方法の乳化工程における分散の条件を変更することにより、制御できる。
ここで、マイクロカプセルの体積基準のメジアン径とは、粒径を閾値としてマイクロカプセル全体を2つに分けた場合に、大径側と小径側での粒子の体積の合計が等量となる粒径をいう。マイクロカプセルの体積基準のメジアン径は、マイクロトラックMT3300EXII(日機装株式会社製)を用いてレーザー回折・散乱法により測定される。
なお、マイクロカプセルの分取方法としては、蓄熱体を溶剤に24時間以上浸漬し、得られた水分散液を遠心分離することで単離したマイクロカプセルを得る方法がある。
-粒径分布-
マイクロカプセルの粒径分布は特に制限されないが、以下の式で算出されるマイクロカプセルの体積基準のメジアン径のCV(Coefficient of Variation)値(相関係数)が、10~100%であることが好ましい。
CV値=標準偏差σ/メジアン径×100
なお、標準偏差σは、上記のメジアン径の測定方法に従って測定されるマイクロカプセルの体積基準の粒径に基づいて算出される。
-壁の厚み-
マイクロカプセルのカプセル壁の厚み(壁厚)は、特に制限されないが、より薄い方が変形しやすく、空隙を少なくすること、及び/又は、マイクロカプセル同士の接触面積を広げることが容易になりやすいため、取り扱い時における欠陥の発生を更に抑制できる。具体的には、10μm以下が好ましく、本発明の効果がより優れる点で、0.20μm以下がより好ましく、0.15μm以下が更に好ましく、0.11μm以下が特に好ましい。一方で、ある程度の厚みがあることで、カプセル壁の強度が保つことができるため、壁厚は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。
壁厚は、任意の20個のマイクロカプセルの個々の壁厚(μm)を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により求めて平均した平均値をいう。
具体的には、蓄熱体の断面切片を作製し、SEMを用いてその断面を観察し、上述した測定方法により算出したメジアン径±10%の大きさのマイクロカプセルについて、20個のマイクロカプセルを選択する。それら個々の選択されたマイクロカプセルについて断面を観察して壁厚を測定し、20個のマイクロカプセルの平均値を算出することにより、マイクロカプセルの壁厚が求められる。
上述のマイクロカプセルの体積基準のメジアン径をDm[単位:μm]とし、上述のマイクロカプセルのカプセル壁の厚みをδ[単位:μm]とした場合、マイクロカプセルの体積基準のメジアン径に対するマイクロカプセルのカプセル壁の厚みの割合(δ/Dm)は、0.02以下が好ましく、0.0075以下がより好ましく、0.006以下が更に好ましく、0.005以下が特に好ましい。δ/Dmが0.0075以下であれば、蓄熱体の製造時にマイクロカプセルが変形しやすくなるので、蓄熱体の空隙率を特に低くできる。
δ/Dmの下限値は、マイクロカプセルの強度を維持できる点で、0.001以上が好ましく、0.0015以上がより好ましく、0.0025以上が更に好ましい。
-変形率-
マイクロカプセルの変形率は、特に制限されないが、変形率が大きい方が、カプセルの空隙率を低下することができる点で好ましい。ここで、マイクロカプセルの変形率とは、以下の手法により測定した値を意味する。
蓄熱体形成用組成物からマイクロカプセルを直接取り出すか、又は、蓄熱体から溶剤で溶出させることにより、粒径が平均値の±10%以内のマイクロカプセルを15個取り出す。このマイクロカプセルを内包成分が溶融する温度+5℃に設定したホットプレートで加温し、内包成分を溶融させる。内包成分が溶融した状態のマイクロカプセルに対して、押し込み硬度計を用いて、0.1mm角の平面圧子を接触させてから、最大押し込み荷重1mNで押し当てることにより平面圧子が沈み込む距離の最大値(最大押し込み深さ)を測定する。
上記の測定結果から、(最大押し込み深さ(単位:μm))/(マイクロカプセルのメジアン径Dm(単位:μm))×100の値を算出し、測定した15個分を平均した平均値を、マイクロカプセルの変形率とした。変形率が大きいほど、マイクロカプセルが大きく変形していることを表す。なお、押し込み硬度計としては、フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000型微小硬度計を使用できる。
マイクロカプセルの変形率としては、本発明の効果がより優れる点で、30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましい。特に、変形率が35%以上であると、効果がより優れる。上限については特に制限されないが、例えば、100%以下であり、製造時の取り扱いのし易さから、60%以下が好ましい。
マイクロカプセルの変形率は、例えば、マイクロカプセルのカプセル壁の厚み、マイクロカプセルの体積基準のメジアン径に対するマイクロカプセルのカプセル壁の厚みの割合(δ/Dm)、及び、カプセル壁を形成する材料によって、調整できる。
-マイクロカプセルの含有量-
蓄熱体中に占めるマイクロカプセルの含有量は特に制限されないが、蓄熱体の強度が向上する点、及び、蓄熱量が増大する点で、蓄熱体の全体積に対して、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、60質量%以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
また、蓄熱体中に占めるマイクロカプセルの体積含有率は、蓄熱体全体積に対して、蓄熱体の強度が向上する点、及び、蓄熱量が増大する点では、20体積%以上が好ましく、40体積%以上がより好ましく、45体積%以上が更に好ましく、50体積%以上が特に好ましく、55体積%以上が最も好ましい。上限は特に制限されず、例えば、99体積%以下であってもよい。塑性体としての特性が付与され、本発明の効果がより優れる点では、蓄熱体中に占めるマイクロカプセルの体積含有率は、蓄熱体全体積に対して、90体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましく、70体積%以下が更に好ましい。
(マイクロカプセルの製造方法)
マイクロカプセルの製造方法は特に制限されず、公知の方法が採用できる。
例えば、カプセル壁がポリウレタンウレア、ポリウレタン、又は、ポリウレアを含む場合、蓄熱材とカプセル壁材とを含む油相を、乳化剤を含む水相に分散して乳化液を調製する工程(乳化工程)と、カプセル壁材を油相と水相との界面で重合させてカプセル壁を形成し、蓄熱材を内包するマイクロカプセルを形成する工程(カプセル化工程)と、を含む界面重合法が挙げられる。
カプセル壁がメラミン樹脂を含む場合は、蓄熱材を含む油相を、乳化剤を含む水相に分散して乳化液を調製する工程(乳化工程)と、カプセル壁材を水相に添加し、乳化液滴の表面にカプセル壁材による高分子層を形成し、蓄熱材を内包するマイクロカプセルを形成する工程(カプセル化工程)を含むコアセルベーション法が挙げられる。
なお、カプセル壁材とは、カプセル壁を形成し得る材料を意味する。
以下では、界面重合法の各工程について詳述する。
界面重合法の乳化工程では、蓄熱材とカプセル壁材とを含む油相を、乳化剤を含む水相に分散して乳化液を調製する。なお、カプセル壁材には、ポリイソシアネートと、ポリオール及びポリアミンからなる選択される少なくとも1種の化合物とが少なくとも含まれることが好ましい。
乳化液は、蓄熱材とカプセル壁材とを含む油相を、乳化剤を含む水相に分散させることにより形成される。
油相は、少なくとも蓄熱材及びカプセル壁材を含み、必要に応じて、溶剤、及び/又は、添加剤等の他の成分を更に含んでいてもよい。油相に含んでもよい溶剤としては、分散安定性が優れる点で、非水溶性有機溶剤が好ましく、酢酸エチル、メチルエチルケトン、又はトルエンがより好ましい。
水相は、少なくとも水性媒体及び乳化剤を含むことが好ましい。
水性媒体としては、水、及び、水と水溶性有機溶剤との混合溶剤が挙げられ、水が好ましい。「水溶性」とは、25℃の水100質量%に対する対象物質の溶解量が5質量%以上であることを意味する。
水性媒体の含有量は特に制限されないが、油相と水相との混合物である乳化液全質量に対して、20~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~60質量%が更に好ましい。
乳化剤としては、分散剤、界面活性剤及びこれらの組み合わせが挙げられる。
分散剤としては、公知の分散剤が使用でき、ポリビニルアルコールが好ましい。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び、両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
乳化剤の含有量は、油相と水相との混合物である乳化液全質量に対し、0質量%超20質量%以下が好ましく、0.005~10質量%がより好ましく、0.01~10質量%が更に好ましく、1~5質量%が特に好ましい。
水相は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、及び、防腐剤等の他の成分を含んでいてもよい。
分散は、油相を油滴として水相に分散させること(乳化)をいう。分散は、油相と水相との分散に用いられる公知の手段(例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル、及び、その他の公知の分散装置)を用いて行うことができる。
油相の水相に対する混合比(油相質量/水相質量)は、0.1~1.5が好ましく、0.2~1.2がより好ましく、0.4~1.0が更に好ましい。
-カプセル化工程-
カプセル化工程では、カプセル壁材を油相と水相との界面で重合させてカプセル壁を形成し、蓄熱材を内包するマイクロカプセルを形成する。
重合は、好ましくは加熱下で行われる。重合における反応温度は、40~100℃が好ましく、50~80℃がより好ましい。また、重合の反応時間は、0.5~10時間程度が好ましく、1~5時間程度がより好ましい。
重合中に、マイクロカプセル同士の凝集を防止するためには、水性溶液(例えば、水、酢酸水溶液等)を更に加えてマイクロカプセル同士の衝突確率を下げることが好ましい。
また、充分な攪拌を行うことも好ましい。
更に、重合中に反応系に凝集防止用の分散剤を添加してもよい。
更に、必要に応じて、重合中に反応系にニグロシン等の荷電調節剤、又はその他任意の補助剤を添加してもよい。
<樹脂>
蓄熱体は、樹脂を含む。樹脂は、蓄熱体が塑性体としての性質を発現できる樹脂であることが好ましい。樹脂は、蓄熱体において、蓄熱材を内包するマイクロカプセル間に位置し、マイクロカプセル間の密着性を担保するバインダーとして機能する。また、樹脂は、蓄熱体が塑性変形する際に塑性変形するとともに、マイクロカプセルと樹脂との相互作用を維持し、蓄熱体にヒビ又は割れなどの空隙が導入されないようにする効果を担う。そのため、樹脂は、それ自身で塑性変形しやすい特性を有することが好ましく、マイクロカプセルと相互作用しやすい特性を有することが好ましい。
樹脂の種類は特に制限されず、公知の樹脂が挙げられる。
樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、ウレタンウレア樹脂、及び、(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、樹脂は、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。
シリコーン樹脂としては、例えば、ジメチルポリシロキサンからなるシリコーンオイル(KF-96シリーズ、信越化学工業(株)製)、変性シリコーンオイル、及び、シリコーングリース(Gシリーズ、及び、FHシリーズ、信越化学工業(株)製)が挙げられる。シリコーン樹脂は、単独で使用してもよいし、構造及び/又は分子量(重量平均分子量)が異なるものを混合して用いてもよい。
本発明の効果がより優れる点で、樹脂は実質的に架橋していないことが好ましい。本明細書において、樹脂が実質的に架橋していないとは、樹脂が架橋構造を実質的に有さないことを意味する。
架橋構造を実質的に有さない樹脂としては、例えば、主鎖を構成するシロキサン単位のうち、3個又は4個の酸素原子と結合するケイ素原子を有するシロキサン単位の含有量が、シロキサン単位の総量に対して1モル%以下であるシリコーン樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂における3個又は4個の酸素原子と結合するケイ素原子を有するシロキサン単位の含有量は、シロキサン単位の総量に対して1モル%以下が好ましく、0モル%がより好ましい。即ち、シリコーン樹脂は、直鎖であることがより好ましい。
なかでも、シリコーン樹脂は、下記式(Z)で表される構造を有することが好ましい。
式(Z)中、R~Rは、各々独立にアルキル基又はアリール基を表す。nは、1以上の整数を表す。nが2以上の整数を表す場合、複数のRは同一でも異なっていてもよく、複数のRは同一でも異なっていてもよい。
~Rで表されるアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。上記アルキル基は、アリール基を有していてもよい。
~Rで表されるアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。上記アリール基は、アルキル基を有してもよい。
nは、10~5000の整数が好ましく、30~3000の整数がより好ましい。
樹脂の粘度は、本発明の効果がより優れる点で、10,000,000cP以下が好ましく、5,000,000cP以下がより好ましく、2,000,000cP以下が更に好ましく、1,000,000cP以下が特に好ましく、200,000cP以下が最も好ましい。また、樹脂の粘度は、ハンドリング時のべたつきを抑制する点で、1,000cP以上が好ましく、5,000cP以上がより好ましく、10,000cP以上が更に好ましい。
樹脂の粘度は、25℃でレオメーターを用いて測定できる。樹脂の市販品を使用する場合、その市販品のカタログ値として記載されている粘度の値を、樹脂の粘度として用いてもよい。
樹脂の分子量は特に制限されないが、揮発せず、柔らかすぎないようにする点で、大きい方が好ましいが、硬く変形させるのに強い力が不要な点では、小さい方が好ましい。
樹脂のガラス転移温度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、40℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、ハンドリング性が向上する点で、-200℃以上が好ましく、-100℃以上がより好ましい。
樹脂のガラス転移温度の測定方法は、以下の通りである。
樹脂のガラス転移温度を、示差走査熱量計DSC(装置名:DSC-60A Plus、(株)島津製作所)を用いて、密閉パンに樹脂を入れし、昇温速度5℃/minで25℃~(熱分解温度(℃)-5℃)の範囲で加熱することにより、測定する。樹脂のガラス転移温度としては、2サイクル目の昇温時に測定された値を使用する。
なお、樹脂として市販品を使用する際に、その市販品のカタログ値としてガラス転移温度が記載されている場合には、その値を樹脂のガラス転移温度として用いてもよい。
蓄熱体中における樹脂の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、蓄熱体の全質量に対して、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、蓄熱性により優れる点で、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下が更に好ましく、40質量%以下が特に好ましい。
また、樹脂の含有量は、蓄熱体の全体積に対して、80体積%以下が好ましく、蓄熱性により優れる点で、50体積%以下がより好ましく、40体積%以下が更に好ましく、30体積%以下が特に好ましい。下限は特に制限はないが、塑性体としての特性が付与され、本発明の効果がより優れる点で、5体積%以上が好ましく、10体積%以上がより好ましく、20体積%以上が更に好ましく、25体積%以上が特に好ましく、30体積%以上が最も好ましい。
マイクロカプセルの含有量に対する樹脂の含有量の体積比(樹脂の含有量/マイクロカプセルの含有量)は、本発明の効果がより優れる点、及び、蓄熱性により優れる点で、0.11~4が好ましく、0.25~1がより好ましく、0.33~0.67が更に好ましい。
樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
なかでも、粘度が1,000,000cP以下である樹脂(より好ましくはシリコーン樹脂)を含み、その樹脂の含有量が蓄熱体の全体積に対して25体積%以上である蓄熱体は、本発明の効果がより優れる点で好ましい態様の1つである。
また、蓄熱体に含まれる樹脂とマイクロカプセルのカプセル壁との組合せが、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、ウレタンウレア樹脂、及び、(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1つ(より好ましくは、シリコーン樹脂)を含む樹脂と、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、及び、メラミン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のポリマー(より好ましくは、ポリウレア、ポリウレタンウレア、及び、ポリウレタンからなる群より選択される少なくとも1種のポリマー)を含むカプセル壁との組合せであることが、好ましい。
上記の樹脂とカプセル壁との組合せは、樹脂が塑性変形しやすく、かつ、マイクロカプセルと樹脂との相互作用が良好であり、その結果、本発明の効果がより優れるためである。
<他の成分>
蓄熱体は、マイクロカプセル及び樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、熱伝導性材料、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、及び、防腐剤が挙げられる。
上記他の成分の含有量は、蓄熱体全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、0質量%が挙げられる。
なお、熱伝導性材料の「熱伝導性」については、熱伝導率が10Wm-1-1以上である材料が好ましい。なかでも、熱伝導性材料の熱伝導率としては、蓄熱体の放熱性が良好になる点で、50Wm-1-1以上がより好ましい。
熱伝導率(単位:Wm-1-1)は、フラッシュ法にて25℃の温度下、日本工業規格(JIS)R1611に準拠した方法により測定される値である。
蓄熱体の、充填前の形状としては、特に制限されない。シート状、フィルム状、板状、円筒状、球体状、及び、塊状等の形状から、蓄熱体の形状を自由に選択できる。蓄熱体として対象物に適用する際に、対象物の形状に対し追随して変形することで、蓄熱性能に優れた蓄熱体を得ることができる。
本発明の効果がより発現されやすい点で、対象物の蓄熱体を充填する表面の領域に段差を有する凹凸形状が形成されていることが好ましい。なかでも、凹凸形状の段差が0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることが更に好ましい。上限は特に制限されず、20mm以下であってよい。
<物性>
(厚み)
蓄熱体の厚みは特に制限されないが、0.1mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、100mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。なお、上記厚みは、蓄熱体を2つの平行な面で蓄熱体を挟んだときの最も短い距離を意味する。
ただし、蓄熱体が板状、シート状、又はフィルム状の場合においては、蓄熱体の厚みは、任意の点を5点接触式厚み計で測定し、5点の厚みを平均した平均値とする。
(潜熱容量(吸熱量))
蓄熱体の潜熱容量は特に制限されないが、蓄熱体の蓄熱性が高く、熱を発する発熱体の温度調節に好適である点で、90J/mL以上が好ましく、100J/mL以上がより好ましく、110J/mL以上が更に好ましく、120J/mL以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、例えば、500J/mL以下である。
潜熱容量は、示差走査熱量測定(DSC;Differential scanning calorimetry)の結果と蓄熱体の密度とから算出される値である。
なお、密度は、サンプルの質量及び体積から測定する。サンプルの質量は電子天秤で測定する。また、サンプルの体積は、サンプルがシート状である場合には、面積と厚みをノギス及び接触式厚み測定機等の測定機を用いて測定して計算し、サンプルが塊状である場合には、溶解及び膨潤しない溶媒(水及びアルコール等)にサンプルを浸漬して増加した体積から求める。
なお、限られた空間内で高い蓄熱量を発現するという点で考えた場合、蓄熱量は「J/mL(単位体積当たりの蓄熱量)」で捉えることが適切と考えられるが、電子デバイスの用途を考慮した場合は、電子デバイスの重さも重要となる。そのため、限られた質量内において高い蓄熱性を発現するという捉え方をすると、「J/g(単位質量当たりの蓄熱量)」で捉えることが適当な場合がある。この場合には、潜熱容量としては、100J/g以上が好ましく、110J/g以上がより好ましく、120J/g以上が更に好ましく、130J/g以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、例えば、500J/g以下である。
(空隙率)
蓄熱体の空隙率とは、蓄熱体中に占める空隙の体積率を意味する。ここで、空隙とは、蓄熱体の内部において、蓄熱体を構成する材料(固体及び液体)が存在せず、蓄熱体を構成する材料で囲まれている領域を意味する。空隙は、気体(主に空気)で満たされていることが多い。
蓄熱体の空隙率は、単位体積当たりの蓄熱量を向上させる点で、蓄熱体の全体積に対して、20体積%未満であることが好ましく、10体積%未満がより好ましく、5体積%以下が更に好ましい。蓄熱体の空隙率の下限は特に制限されないが、0体積%が挙げられる。取り扱い時における蓄熱体の欠陥の発生をより抑制できる点でも、空隙率は低い方が好ましい。
蓄熱体の空隙率を上記の範囲にする方法は特に制限されないが、塑性変形しやすく破断しにくい樹脂を使用する方法が挙げられる。
蓄熱体の空隙率は、X線CT(X-ray Computed Tomography)法を測定原理とする公知のX線CT装置によって得られる画像データに基づいて算出される。
具体的には、蓄熱体の面内方向の1mm×1mmの任意の領域について、X線CT法によって蓄熱体の膜厚方向に沿ってスキャニングして、気体(空気)と、それ以外(固体及び液体)と区別する。そして、膜厚方向に沿ってスキャニングして得られた複数のスキャニング層を画像処理して得られた3次元画像データから、スキャニングした領域に存在する気体(空隙部分)の体積と、スキャニングした領域の全体積(気体、固体及び液体の合計体積)と、を求める。そして、スキャニングした領域の全体積に対する、気体の体積の割合を、蓄熱体の空隙率(体積%)とする。
(マイクロカプセルのアスペクト比)
上述のとおり、蓄熱体に含まれるマイクロカプセルは、変形していてもよい。変形して空隙率を低下させる場合、マイクロカプセルのアスペクト比が、1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。
マイクロカプセルのアスペクト比の上限は特に制限されないが、例えば、10以下であってよい。
マイクロカプセルのアスペクト比は、蓄熱体のSEM断面画像から、以下の方法で求められる。上述した壁厚の測定方法と同様にSEM断面画像を得た後、得られた画像から20個のマイクロカプセルを選択する。選択された各マイクロカプセルの外周に外接する平行な2本の接線のうち、接線間距離が最大となるように選ばれる平行な2本の接線の距離を長辺の長さLとする。また、長さLを与える平行な2本の接線に直交し、且つ、マイクロカプセルの外周に外接する平行な2本の接線のうち、接線間距離が最大となるように選ばれる接線間距離を短辺の長さSとする。得られた長辺の長さL(μm)及び短辺の長さS(μm)から、以下の式を用いてアスペクト比を算出し、20個のマイクロカプセルの平均値を求める。
アスペクト比=L(μm)/S(μm)
マイクロカプセルのアスペクト比を上記の範囲内にする方法の一例としては、蓄熱体の空隙率を低下させる方法として記載した方法が挙げられる。
(マイクロカプセルの形状)
また、蓄熱体に含まれるマイクロカプセルは、他のマイクロカプセルとの接触等によって形成された平坦部又は凹部を有することが好ましい。
具体的には、以下の方法で観察される蓄熱体中のマイクロカプセルが、平坦部及び凹部を2ヶ所以上有することが好ましい。上述した壁厚の測定方法と同様な方法でSEM断面画像を得た後、20個のマイクロカプセルを選択する。次いで、SEM断面画像から、選択されたマイクロカプセルが、少なくとも2つ以上のマイクロカプセルが隣接してなる部分を形成しており、且つ、選択されたマイクロカプセルの外形において、隣接するマイクロカプセルの外形に沿って形成された直線状又は凹状の部分を2ヶ所以上有するとの条件を満たすか否かの確認を行う。選択された20個のマイクロカプセルのうち、上記の条件を満たすマイクロカプセルの個数は、5個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、20個が更に好ましい。
蓄熱体は、破断しにくいことが好ましい。本発明の効果がより優れる点で、破断伸度は、0.1%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、5%以上が更に好ましい。破断伸度の上限は、2000%以下が好ましい。
蓄熱体の破断伸度の測定方法は、JIS-C-2151に準じて測定する。具体的には、引張試験機を用いて、速度200mm/minで引っ張り、試料が切断(破断)したときの伸びから算出する。
破断伸び(%)=100×(L-Lo)/Lo
Lo:試験前の試料長さ、L:破断時の試料長さ
蓄熱体は、可逆的に成形できることが好ましい。可逆的に成形できるとは、一度切断された蓄熱体を練り直す等の処理により、再び一体化した蓄熱体に戻すことができることを意味する。蓄熱体が可逆的に成形できるためには、樹脂同士、及び/又は、マイクロカプセルのカプセル壁と樹脂との相互作用が強いことが好ましい。
<蓄熱体の製造方法>
蓄熱体の製造方法は特に制限されず、例えば、マイクロカプセルが分散した分散液(例えば、水分散液)と、粒子状の樹脂が分散した分散液(例えば、水分散液。いわゆる、ラテックス。)とを混合後、基材上又は型の中で乾燥させる方法、粉体状のマイクロカプセルと樹脂を混合する方法、及び、粉体状のマイクロカプセルと樹脂が分散した分散液を混合後、分散液中の溶媒を乾燥等で除去する方法が挙げられる。
粉体状のマイクロカプセルは、上述したマイクロカプセルが分散した分散液から、溶媒を除去してマイクロカプセルを回収する方法が挙げられる。上記溶媒を除去してマイクロカプセルを回収する方法は特に制限されず、例えば、マイクロカプセルが分散した分散液中のマイクロカプセルをデカンテーションにより回収する方法、及び、スプレードライヤーを用いてマイクロカプセルの分散液からマイクロカプセルの粉体を得る方法が挙げられる。
上記マイクロカプセルと樹脂とを混合して蓄熱体を製造する方法としては、樹脂と蓄熱材を内包するマイクロカプセルとを、樹脂及びマイクロカプセルの合計量に対する蓄熱材の量が20~99質量%となる割合で混合する混合工程、及び、混合工程で得られた混合物を混練する混練工程、を有し、混合工程において樹脂とマイクロカプセルとを混合してから混練工程が終了するまでの間に樹脂の硬化処理を施さない、製造方法が好ましい。
上記の樹脂の硬化処理を施さないとは、混合工程及び混練工程において、樹脂に対して架橋反応、並びに、重合反応(付加重合、及び、加水分解縮合を含む)等の反応が生じるように誘導する処理を行わないことを意味する。混合工程及び混練工程における上記の反応の有無は、マイクロカプセルと混合する前の樹脂及び蓄熱体に含まれる樹脂の粘度、分子量及び/又は組成を測定することにより、確認できる。
上記混合工程及び混練工程を有する蓄熱体の製造方法としては、例えば、押出機を用いてマイクロカプセルと樹脂とを溶融混練して、押出機より押し出されたストランドを切断することによってペレット化する方法が挙げられる。
なかでも、溶融混練中でのマイクロカプセルの破壊をより抑制できる点で、押出機内にて熱可塑性樹脂を溶融混練し、押出機内において熱可塑性樹脂の溶融物にマイクロカプセルを添加して更に溶融混練し、押出機より押し出されたストランドを切断して、ペレット状の蓄熱体を製造する方法が好ましい。
上記の方法は、複数の原料供給口を備える押出機を用いることにより実施できる。例えば、複数の原料供給口を備える押出機の第1の原料供給口から熱可塑性樹脂を供給して、バレル内において熱可塑性樹脂を溶融混練しながら移送する。また、第1の原料供給口よりも移送方向の下流側に位置する第2の原料供給口から、マイクロカプセルをバレル内に供給して、溶融混練した熱可塑性樹脂とマイクロカプセルとを混合する。続いて、押出機のバレル内において混合物を更に溶融混練し、バレルの下流側末端から混合物をストランドとして押し出す。押出機より押し出されたストランドを切断することにより、ペレット状の蓄熱体が得られる。
押出機としては公知の装置を使用でき、例えば、公知の押出成形機(例えば、二軸押出機)が挙げられる。
<蓄熱体の用途>
蓄熱体は、種々の用途に適用でき、例えば、電子デバイス(例えば、携帯電話(特に、スマートフォン)、携帯情報端末、パーソナルコンピューター(特に、携帯用のパーソナルコンピューター)、ゲーム機、及び、リモコン等);自動車(例えば、バッテリー(特に、リチウムイオン電池)、パワーIC(Integrated Circuit)等の制御装置、カーナビ、液晶モニター、LED(Light Emitting Diode)ランプ等);日中の急激な温度上昇又は室内での暖冷房時の温調に適した建材(例えば、床材、屋根材、及び、壁材等);寝具;並びに、不要な排出熱を蓄えて熱エネルギーとして利用する排熱利用システム、等の用途に用いることができる。
なかでも、電子デバイス(特に、携帯用の電子デバイス)に用いることが好ましい。この理由は以下の通りである。
電子デバイスの発熱による温度上昇を抑制する方法として、空気の流れによって熱を電子デバイスの外部に排出する方法、及び、ヒートパイプ又はヒートスプレッダ等の熱輸送部材によって電子デバイスの筐体全体に熱を拡散する方法が用いられてきた。しかしながら、近年の電子デバイスの薄型化及び防水性の点で、電子デバイスの気密性が向上しており、空気の流れによって熱を排出する方法を採用することが困難であるので、上記方法のなかでは、電子デバイスの筐体全体に熱を拡散する方法が用いられる。そのため、電子デバイスの温度上昇の抑制には、限界があった。
この問題に対して、電子デバイス内に上述の蓄熱体を導入することで、電子デバイスの気密性及び防水性を保ちつつ、電子デバイスの温度上昇を抑制できる。すなわち、蓄熱体によって、電子デバイス内に一定時間熱を溜められる部分ができるので、電子デバイス内の発熱体の表面温度を任意の温度域に保持できる。
[蓄熱部材]
蓄熱体は、他の部材と組み合わせて蓄熱部材として使用してもよい。例えば、保護膜(基材、膜)、着色層(基材、膜)、難燃性層(基材、膜)の上に蓄熱体を敷設し、その膜が無い方の面を変形させて充填させるような形式を行ってもよい。また、蓄熱体のハンドリング性を向上するために、仮基材上に蓄熱体を設置してなる蓄熱部材を作製し、蓄熱体が対象物に対向するように蓄熱部材と対象物とを重ね合わせた後、仮基材を取り除くことにより対象物に蓄熱体を充填する態様であってもよい。
以下、上述のように組合せで用いる場合の他部材の例について記述する。
<保護層>
保護層は、蓄熱体を保護する機能を有する部材である。
保護層は、蓄熱体と接触するように配置されていてもよいし、他の層を介して蓄熱体上に配置されていてもよい。
保護層を構成する材料は特に制限されず、樹脂が好ましく、耐水性、及び、難燃性がより良好となる点で、フッ素樹脂及びシロキサン樹脂からなる群から選択される樹脂がより好ましい。
フッ素樹脂としては、公知のフッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化3フッ化エチレン、及び、ポリテトラフルオロプロピレンが挙げられる。
フッ素樹脂は、単独のモノマーを重合したホモポリマーでもよいし、2種類以上を共重合したものでもよい。更には、これらのモノマーと他のモノマーとの共重合体でもよい。
共重合体としては、例えば、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとビニルエーテルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルとの共重合体、クロロトリフルオロエチレンとビニルエーテルとの共重合体、及び、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルとの共重合体が挙げられる。
フッ素樹脂としては、例えば、AGCコーテック社製のオブリガート(登録商標)SW0011F、SIFCLEAR-F101、F102(JSR社製)、KYNAR AQUATEC(登録商標)ARC、FMA-12(ともにアルケマ社製)が挙げられる。
シロキサン樹脂は、シロキサン骨格を有する繰り返し単位を有するポリマーであり、下記式(1)で表される化合物の加水分解縮合物が好ましい。
式(1) Si(X)(R)4-n
Xは、加水分解性基を表す。加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン基、アセトキシ基、及び、イソシアネート基が挙げられる。
Rは、非加水分解性基を表す。非加水分解性基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、及び、プロピル基)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、及び、メシチル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、及び、アリル基)、ハロアルキル基(例えば、γ-クロロプロピル基)、アミノアルキル基(例えば、γ-アミノプロピル基、及び、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピル基)、エポキシアルキル基(例えば、γ-グリシドキシプロピル基、及び、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基)、γ-メルカプトアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(γ-メタクリロイルオキシプロピル基)、並びに、ヒドロキシアルキル基(例えば、γ-ヒドロキシプロピル基)が挙げられる。
nは、1~4の整数を表し、3又は4が好ましい。
上記加水分解縮合物とは、式(1)で表される化合物中の加水分解性基が加水分解し、得られた加水分解物を縮合して得られる化合物を意図する。なお、上記加水分解縮合物としては、すべての加水分解性基が加水分解され、かつ、加水分解物がすべて縮合されているもの(完全加水分解縮合物)であっても、一部の加水分解性基が加水分解され、一部の加水分解物が縮合しているもの(部分加水分解縮合物)であってもよい。つまり、上記加水分解縮合物は、完全加水分解縮合物、部分加水分解縮合物、又は、これらの混合物であってもよい。
保護層を構成する樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
保護層としては、例えば、特開2018-202696号公報、特開2018-183877号公報、及び、特開2018-111793号公報に記載の、公知のハードコート剤を含む層又はハードコートフィルムを用いてもよい。また、蓄熱性の観点から、国際公開第2018/207387号及び特開2007-031610号公報に記載の、蓄熱性を有するポリマーを有する保護層を用いてもよい。これらの文献に記載の内容は、本明細書に取り込まれる。
保護層は、樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、熱伝導性材料、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、及び、防腐剤が挙げられる。
難燃剤としては、特に制限はなく、公知の材料を用いることができる。例えば、「難燃剤・難燃材料の活用技術」(シーエムシー出版)記載の難燃剤などを用いることでき、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、又は、無機系難燃剤が好ましく用いられる。電子用途でハロゲンの混入が抑制されることが望ましい場合は、リン系難燃剤又は無機系難燃剤が好ましく用いられる。
リン系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、及び、2―エチルヘキシルジフェニルホスフェート等のホスフェート系材料、その他芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩類、ホスフィン酸金属塩、並びに、赤リンが挙げられる。
また、難燃剤と併用して難燃助剤を含むことも好ましい。難燃助剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、亜リン酸、及び、22酸化4亜塩12ホウ素7水和物が挙げられる。
保護層の厚みは特に制限されないが、50μm以下が好ましく、0.01~25μmがより好ましく、0.5~15μmが更に好ましい。
厚みは、保護層を厚み方向と平行に裁断した裁断面をSEMで観察し、任意の点を5点測定し、5点の厚みを平均した平均値とする。
<難燃層>
蓄熱部材は、難燃層を有していてもよい。また、蓄熱体中に難燃成分を有してもよい。難燃層の位置は特に制限されず、保護層と一体となっていても、別の層として設けていてもよい。別の層として設ける場合には、上記保護層と上記蓄熱体との間に積層されていることが好ましい。また、保護層と一体となっている場合には、上記保護層が難燃性の機能を有していることを意味する。特に、潜熱蓄熱材がパラフィンのような燃えやすい材料の場合には、難燃性の保護層又は難燃層を有することで、蓄熱部材全体を難燃性とすることができる。
難燃性の保護層及び難燃層としては、難燃性であれば特に制限されないが、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、フッ素含有樹脂などの難燃性有機樹脂、ガラス膜などの無機素材から形成されることが好ましい。
難燃性の保護層を形成する方法としては、上記保護層の樹脂中に、難燃剤を混合して形成してもよい。難燃剤としては、上述した難燃剤、及び、シリカ等の無機粒子が好ましく挙げられる。無機粒子の量、種類は、面状及び/又は膜質によって、樹脂の種類を含めて調整できる。無機粒子のサイズは、0.01~1μmが好ましく、0.05~0.3μmがより好ましく、0.1~0.2μmが更に好ましい。
無機粒子の含有量は、保護層の全質量に対して、0.1~50質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましい。
難燃剤の含有量は、蓄熱量及び難燃性の観点から、保護層の全質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、1~5質量%が更に好ましい。また、難燃性の保護層の厚みは、蓄熱量及び難燃性の観点から、0.1~20μmが好ましく、0.5~15μmがより好ましく、0.5~10μmが更に好ましい。
<着色層>
蓄熱部材は、着色層を有していてもよい。また、蓄熱体中に着色成分を有してもよい。着色層を設けることにより、蓄熱体の色味が変化した際にも、蓄熱部材の見た目の色味変化を抑制できる。また、ハンドリング時のこすれ、又は、蓄熱体への水等の不純物の侵入を抑制でき、マイクロカプセルの物理的又は化学的変化を抑制でき、結果として、蓄熱体自体の色味変化も抑制できる。
着色層は、保護層と一体となっていてもよいし、蓄熱体と接触するように別の層として配置されていてもよい。
着色層は目的とする色相を得るため、着色剤を含むことが好ましい。
着色剤としては、顔料、及び、染料が挙げられ、耐候性に優れ、かつ、蓄熱部材の見た目の色味変化をより抑制できる点で、顔料が好ましく、黒色顔料がより好ましく、カーボンブラックが更に好ましい。なお、カーボンブラックを使用する場合、着色層の熱伝導性がより向上する。
顔料としては、従来公知の種々の無機顔料及び有機顔料が挙げられる。
具体的な無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び、硫酸バリウム等の白色顔料、並びに、カーボンブラック、チタンブラック、チタンカーボン、酸化鉄、及び、黒鉛等の黒色顔料が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、特開2009-256572号公報の段落0093に記載の有機顔料が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 177、179、224、242、254、255、264等の赤色顔料、C.I.Pigment Yellow 138、139、150、180、185等の黄色顔料、C.I.Pigment Orange 36、38、71等の橙色顔料、C.I.Pigment Green 7、36、58等の緑色顔料、C.I.Pigment Blue 15:6等の青色顔料、及び、C.I.Pigment Violet 23等の紫色顔料が挙げられる。
着色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を使用してもよい。また、顔料と染料を併用してもよい。
着色層中における着色剤(例えば、黒色顔料)の含有量は特に制限されないが、蓄熱部材の見た目の色味変化をより抑制できる点で、着色層全体積に対して、2~30体積%が好ましく、5~25体積%がより好ましい。
着色層は、バインダーを含んでいてもよい。
バインダーの種類は特に制限されず、公知の材料が挙げられ、樹脂が好ましい。
樹脂としては、耐水性、及び、難燃性がより良好となる点で、フッ素樹脂及びシロキサン樹脂からなる群から選択される樹脂が好ましい。耐水性が良好な、フッ素樹脂及びシロキサン樹脂からなる群から選択される樹脂を着色層が含むことで、マイクロカプセルの化学変化を抑制でき、蓄熱体の色味変化を抑制できる。
フッ素樹脂及びシロキサン樹脂の具体例は、上述の通りである。
着色層中におけるバインダーの含有量は特に制限されないが、蓄熱部材の見た目の色味変化をより抑制できる点で、着色層全体積に対して、50~98体積%が好ましく、75~95体積%がより好ましい。
着色層中におけるバインダーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
着色層は、着色剤及びバインダー以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、熱伝導性材料、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、及び、防腐剤が挙げられる。
着色層の厚みは特に制限されないが、0.1~100μmが好ましく、0.5~10μmがより好ましい。
厚みは、着色層を厚み方向と平行に裁断した裁断面をSEMで観察し、任意の点を5点測定し、5点の厚みを平均した平均値とする。
着色層の好適形態の1つとしては、着色層の膜厚が15μm以下であり、着色層の光学濃度が1.0以上である形態が挙げられる。光学濃度が上記範囲であれば、着色層を薄い場合でも、蓄熱部材の見た目の色味変化をより抑制できる。
上記光学濃度は、1.2以上が好ましい。上限は特に制限されないが、6.0以下が好ましい。
上記光学濃度の測定方法としては、X-rite eXact(X-Rite社製)を用いて、フィルタなし、濃度ステータスはISOステータスT、D50/2°で測定する。なお、光学濃度としては、XriteのOD値で、K値を採用する。
着色層は、蓄熱体の全面に設けてもよいし、一部に模様状に設けてもよい。
<他の部材>
蓄熱部材は、仮基材を有していてもよい。これにより、蓄熱部材の保管時及び搬送時等において、蓄熱体の傷付き等を抑制できる。仮基材としては、樹脂基材、金属基材、ガラス基材が挙げられるが、ハンドリング性がより向上する点で、樹脂基材が好ましく、例えば、ポリエステル基材(例:ポリエチレンテレフタレート基材、ポリエチレンナフタレート基材)、ポリオレフィン基材(例:ポリエチレン基材、ポリプロピレン基材)、及び、ポリウレタン基材が挙げられる。
仮基材は、剥離面を有する基材であることが好ましい。
蓄熱部材を使用する際には、蓄熱部材から仮基材を剥離することが好ましい。
[電子デバイス]
本発明の電子デバイスは、少なくとも上述の蓄熱体を有する。電子デバイスのより具体的な態様としては、上述の蓄熱部材と、発熱体とを有する電子デバイスが挙げられる。
蓄熱部材(蓄熱体、又は、蓄熱体及び保護層)については、上述した通りである。
<発熱体>
発熱体は、電子デバイスにおける発熱する場合がある部材であって、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、SRAM(Static Random Access Memory)及びRF(Radio Frequency)デバイス等のSoC(Systems on a Chip)、カメラ、LEDパッケージ、パワーエレクトロニクス、並びに、バッテリー(特にリチウムイオン二次電池)が挙げられる。
発熱体は、蓄熱部材と接触するように配置されていてもよいし、他の層(例えば、後述する熱伝導性材料)を介して蓄熱部材に配置されていてもよい。
<熱伝導性材料>
電子デバイスは、更に、熱伝導性材料を有していてもよい。
熱伝導性材料とは、発熱体から生じた熱を別の媒体に伝導する機能を有する材料を意味する。
熱伝導性材料の「熱伝導性」としては、熱伝導率が10Wm-1-1以上であることが好ましい。即ち、熱伝導性材料は、熱伝導率が10Wm-1-1以上である材料であることが好ましい。熱伝導率(単位:Wm-1-1)は、フラッシュ法にて25℃の温度下、日本工業規格(JIS)R1611に準拠した方法により測定される値である。
電子デバイスが有してもよい熱伝導性材料としては、例えば、金属板、放熱シート、及びシリコングリースが挙げられ、金属板、又は放熱シートが好ましく用いられる。
電子デバイスの好ましい態様の1つとしては、上述の蓄熱部材と、熱伝導性材料と、発熱体とを有する電子デバイスが挙げられる。
(金属板)
金属板は、発熱体の保護、及び、発熱体から生じた熱を蓄熱体に伝導する機能を有する。
金属板における発熱体が設けられた面とは反対側の面は、蓄熱体と接触していてもよいし、他の層(例えば、放熱シート、密着層、又は、基材)を介して蓄熱体が配置されていてもよい。
金属板を構成する材料としては、アルミニウム、銅、及び、ステンレスが挙げられる。
(放熱シート)
放熱シートは、発熱体から生じた熱を別の媒体に伝導する機能を有するシートであり、放熱材を有することが好ましい。放熱材としては、例えば、カーボン、金属(例えば、銀、銅、アルミニウム、鉄、白金、ステンレス、及びニッケル)、並びに、シリコンが挙げられる。
放熱シートの具体例としては、銅箔シート、金属皮膜樹脂シート、金属含有樹脂シート及び、グラフェンシートが挙げられ、グラフェンシートが好ましく用いられる。放熱シートの厚みは特に制限されないが、10~500μmが好ましく、20~300μmがより好ましい。
<ヒートパイプ、ベイパーチャンバー>
電子デバイスは、ヒートパイプ及びベイパーチャンバーからなる群より選択される熱輸送部材を更に有することが好ましい。
ヒートパイプ及びベイパーチャンバーはいずれも、金属等の材料で形成され、中空構造を有する部材と、その内部空間に封入される熱伝達媒体である作動流体とを少なくとも備え、高温部(蒸発部)において作動流体が蒸発(気化)して熱を吸収し、低温部(凝縮部)において気化した作動流体が凝縮して熱を放出する。ヒートパイプ及びベイパーチャンバーは、この内部での作動流体の相変化により、高温部に接触する部材から低温部に接触する部材に熱を輸送する機能を有する。
電子デバイスが蓄熱部材と、ヒートパイプ及びベイパーチャンバーからなる群より選択される熱輸送部材とを有する場合、蓄熱部材とヒートパイプ又はベイパーチャンバーとが接触していることが好ましく、蓄熱部材がヒートパイプ又はベイパーチャンバーの低温部に接触していることがより好ましい。
また、電子デバイスが蓄熱部材と、ヒートパイプ及びベイパーチャンバーからなる群より選択される熱輸送部材とを有する場合、蓄熱部材が有する本発明の蓄熱体に含まれる蓄熱材の相変化温度と、ヒートパイプ又はベイパーチャンバーが作動する温度領域とが重複していることが好ましい。ヒートパイプ又はベイパーチャンバーが作動する温度領域としては、例えば、それぞれの内部において作動流体が相変化可能な温度の範囲が挙げられる。
ヒートパイプは、管状部材と、その内部空間に封入された作動流体とを少なくとも有する。ヒートパイプは、管状部材の内壁に毛細管現象に基づく作動流体の流路となるウィック構造を有し、その内側に気化した作動流体の通路となる内部空間が設けられた断面構成を有することが好ましい。管状部材の形状としては、円管状、角管状及び偏平な楕円管状等の形状が挙げられる。管状部材は、屈曲部を有していてもよい。また、ヒートパイプは、管状部材がループ状に連結した構造を有するループヒートパイプであってもよい。
ベイパーチャンバーは、中空構造を有する平板状の部材と、その内部空間に封入された作動流体とを少なくとも有する。ベイパーチャンバーは、平板状部材の内面にヒートパイプと同様のウィック構造を有することが好ましい。ベイパーチャンバーでは、概ね、平板状部材の一方の主面に接触する部材から熱が吸収され、他方の主面に接触する部材に熱が放出されることで、熱が輸送される。
ヒートパイプ及びベイパーチャンバーを構成する材料は、熱伝導性が高い材料であれば特に制限されず、銅及びアルミニウム等の金属が挙げられる。
ヒートパイプ及びベイパーチャンバーの内部空間に封入される作動流体としては、例えば、水、メタノール、エタノール及び代替フロンが挙げられ、適用される電子デバイスの温度範囲に応じて適宜選択して使用される。
<他の部材>
電子デバイスは、保護層、蓄熱体、熱伝導性材料、発熱体、及び、上述した熱輸送部材以外の他の部材を含んでいてもよい。他の部材としては、基材、及び、密着層が挙げられる。
電子デバイスの具体例については、上述した通りであるので、その説明を省略する。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。
<実施例1>
(マイクロカプセル分散液の調製)
エイコサン(潜熱蓄熱材;融点37℃、炭素数20の脂肪族炭化水素)100質量部を60℃に加熱溶解し、酢酸エチル120質量部を加えた溶液Aを得た。
次に、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(アデカポリエーテルEDP-300、株式会社ADEKA製)0.1質量部を、攪拌している溶液Aに加えて溶液Bを得た。
更に、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物が溶解した溶液(バーノックD-750、DIC株式会社製)から溶媒を除去して固形分を取り出し、その固形分10質量部をメチルエチルケトン1質量部に溶解してなる溶液(合計11質量部)を、攪拌している溶液Bに加え、溶液Cを得た。
そして、水140質量部に乳化剤としてポリビニルアルコール(クラレポバール(登録商標)KL-318(株式会社クラレ製;PVA(Polyvinyl alcohol)))10質量部を溶解した溶液中に、上記の溶液Cを加えて、乳化分散した。乳化分散後の分散液に水250部を加え、得られた分散液を攪拌しながら70℃まで加温した。70℃で1時間攪拌を継続した後、分散液を30℃まで冷却した。冷却後の分散液に更に水を加えて濃度を調整し、ポリウレタンウレアのカプセル壁を有するエイコサン内包マイクロカプセル分散液を得た。
エイコサン内包マイクロカプセル分散液の固形分濃度は、19質量%であった。また、エイコサン内包マイクロカプセルのカプセル壁の質量は、内包されたエイコサンの質量に対して、10質量%であった。マイクロカプセルの体積基準でのメジアン径は20μmであった。また、マイクロカプセルのカプセル壁の厚みは、0.1μmであった。
また、得られた分散液から取り出されたマイクロカプセルの変形率を、押し込み硬度計としてフィッシャー・インストルメンツ社製HM2000型微小硬度計を用いて、上述の方法により測定した結果、マイクロカプセルの変形率は、41%であった。
上記バーノックD-750に含まれるトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物は、下記の構造式で表される「芳香族ジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体である3官能のポリイソシアネート」に該当する。
(マイクロカプセル粉体の調製)
エイコサン内包マイクロカプセル分散液(100質量部)に水(800質量部)を加えた。得られた混合液を、30分間攪拌後、80℃で4時間静置することにより、マイクロカプセルが凝集した上層と水相である下層とに分離した。マイクロカプセルに吸着していない乳化剤であるポリビニルアルコールは水相である下層に溶解していた。
水相である下層を除去した後、残った固形分(マイクロカプセル凝集物)に対して、水(800質量部)を添加し、分散液を30分間攪拌し、分散液を80℃で4時間静置して、マイクロカプセルが凝集した上層と水相である下層とに分離する処理を行い、続いて、水相である下層を除去した。マイクロカプセル凝集物である固形分に対するこれらの一連の操作を、計4回繰り返した後、得られたマイクロカプセル凝集物を不織布で包んだ。不織布で包まれたマイクロカプセル凝集物に対して、もみほぐしながら冷風を当てて乾燥させることにより、マイクロカプセル粉体を得た。
(蓄熱体の調製)
マイクロカプセル粉体(13.3質量部)に対して、シリコーン樹脂「KF-96H-1万cs」(信越化学工業(株)製、上記式(Z)で表される構造を有するシリコーン樹脂に該当する)(8.9質量部)を加え、混練することで蓄熱体1を調製した。
得られた蓄熱体の空隙率は、3体積%であった。また、蓄熱体の吸熱量は113J/mLであった。
<実施例2~6>
使用する材料の種類及び/又は量を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様の手順に従って、蓄熱体を作製した。
表1中、「KF-96H-10万cs」及び「KF-96H-100万cs」との表記は、その実施例において使用した信越化学工業(株)製のシリコーン樹脂を示す。これらのシリコーン樹脂はいずれも、上記式(Z)で表される構造を有するシリコーン樹脂に該当する。
<比較例1>
実施例1で調製したマイクロカプセル粉体(13.3質量部)に対して、ポリビニルアルコール(「クラレポバール(登録商標)KL-318」、株式会社クラレ製;PVA(Polyvinyl alcohol)))(13.3質量部)が水(26.6質量部)に溶解してなる水溶液を加えた。得られた混合物を、ミックスローターにて4時間攪拌し、蓄熱体形成用組成物1を得た。
その後、得られた蓄熱体形成用組成物1(5mL)を剥離フィルム上に滴下して、直径30mmの大きさの円形状の組成物膜を形成し、85℃で2時間乾燥した。乾燥した組成物膜を剥離フィルムより剥がして、円形シート状の蓄熱体を作製した。
<比較例2>
比較例1において、水溶液に含まれるポリビニルアルコールの含有量を8.9質量部にしたこと以外は、比較例1と同様の手順に従って、比較例2の蓄熱体を作製した。
<実施例7>
(マイクロカプセル分散液の調製)
エイコサン(潜熱蓄熱材;融点37℃、炭素数20の脂肪族炭化水素)100質量部を60℃に加熱溶解し、酢酸エチル120質量部を加えた溶液Aを得た。
次に、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(アデカポリエーテルEDP-300、株式会社ADEKA製)0.1質量部を、攪拌している溶液Aに加えて溶液Bを得た。
更に、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(DIC(株)製「バーノックD-750」、ポリイソシアネートAに該当)(13.2質量部、固形分質量:9.9質量部)及びミリオネートMR-200(東ソー(株)製、ポリイソシアネートBに該当)(0.1質量部)を2-ブタノン(10質量部)に溶解してなる溶液を、攪拌している溶液Bに加えて、溶液Cを得た。
上記ミリオネートMR-200は、ジフェニルメタンジイソシアネート、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(いずれも式(X)で表される)の混合物に該当する。
そして、水(130質量部)にポリビニルアルコール(PVA-217E、(株)クラレ製)(7.8質量部)を溶解した溶液中に、上記の溶液Cを加えて、乳化分散した。乳化分散後の分散液に水250部を加え、分散液を攪拌しながら70℃まで加温した。70℃で1時間攪拌を継続した後、分散液を30℃まで冷却した。冷却後の分散液に更に水を加えて濃度を調整し、ポリウレタンウレアのカプセル壁を有するエイコサン内包マイクロカプセル分散液を得た。
エイコサン内包マイクロカプセル分散液の固形分濃度は、19質量%であった。また、エイコサン内包マイクロカプセルのカプセル壁の質量は、内包されたエイコサンの質量に対して、10質量%であった。マイクロカプセルの体積基準でのメジアン径は20μmであった。また、マイクロカプセルのカプセル壁の厚みは0.1μmであった。
また、得られた分散液から取り出されたマイクロカプセルの変形率を、押し込み硬度計としてフィッシャー・インストルメンツ社製HM2000型微小硬度計を用いて、上述の方法により測定した結果、マイクロカプセルの変形率は、43%であった。
(マイクロカプセル粉体の調製)
エイコサン内包マイクロカプセル分散液(100質量部)に水(800質量部)を加えた。得られた混合液を、30分間攪拌後、80℃で4時間静置することにより、マイクロカプセルが凝集した上層と水相である下層とに分離した。マイクロカプセルに吸着していない乳化剤であるポリビニルアルコールは水相である下層に溶解していた。
水相である下層を除去した後、残った固形分(マイクロカプセル凝集物)に対して、水(800質量部)の添加、30分間の攪拌、及び、80℃での4時間の静置によるマイクロカプセルが凝集した上層と水相である下層とに分離する処理、並びに、水相である下層を除去する操作からなる一連の工程を、4回繰り返した。得られたマイクロカプセル凝集物を不織布で包み、不織布で包まれたマイクロカプセル凝集物に対して、もみほぐしながら冷風を当てて乾燥させることにより、マイクロカプセル粉体を得た。
(蓄熱体の調製)
マイクロカプセル粉体(13.3質量部)に対して、シリコーン樹脂「KF-96H-1万cs」(信越化学工業(株)製)(8.9質量部)を加え、混練することで蓄熱体7を調製した。得られた蓄熱体の吸熱量は112J/mlであった。
<実施例8~20>
使用する材料の種類及び/又は量を表2のように変更したこと以外は、実施例7と同様の手順に従って、蓄熱体を作製した。
実施例8~20においては、ポリイソシアネートAの質量比(ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBの合計含有量に対するポリイソシアネートAの含有量の質量比)が表2又は表3に記載の数値となり、かつ、ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBの使用量の合計質量が実施例7と同じになるように、それぞれの使用量を調整した。
<評価>
実施例及び比較例にて得られたそれぞれの蓄熱体に関して、以下の評価を実施した。
(粘度)
用いた樹脂の粘度(単位:cP)は、25℃でレオメーターを用いて測定した。また、実施例1~6並びに比較例1及び2においては、蓄熱体の粘度及び密度から、蓄熱体の動粘度(単位:mm/s)を算出した。
(押込弾性率)
蓄熱体の押込弾性率を、ISO14577に従って25℃でナノインデンターを用いて測定した。
(空隙率の測定)
X線CT装置を用いて、上述した方法に従って蓄熱体の空隙率を算出した。
なお、比較例1及び2の蓄熱体については、剥離フィルムを剥離して得られる蓄熱体本体の空隙率のみをX線CT装置で解析した。
(吸熱量の測定)
得られた蓄熱体の吸熱量(潜熱容量)を、示差走査熱量測定より測定し、上述の方法で算出した。
(ヒートサイクル試験後の吸熱量の測定)
蓄熱体に対して、冷却した後、(1)-40℃で1時間保持、(2)1時間かけて85℃まで加温、(3)85℃で1時間保持、及び、(4)1時間かけて-40℃まで冷却からなる一連の処理を行った。上記の(1)~(4)を1サイクルとして300サイクル繰り返すことにより、蓄熱体に対するヒートサイクル試験を行った。
ヒートサイクル試験を実施した後の蓄熱体の吸熱量(潜熱容量)を、示差走査熱量測定より測定し、上述の方法で算出した。
(ハンドリング特性(べたつき))
各実施例及び各比較例で得られた蓄熱体と、表面に深さ1mmの段差を有する基材とを、蓄熱体が段差を有する表面と接するように、積層した。得られた積層体の蓄熱体側の表面を手で押し込んだ際の、積層体の手への付着性について、以下の指標に基づいて官能評価した。
0:べたつく感触は無い。
1:ややべたつく感触がある。
(塑性変形性(凹凸追従特性))
各実施例及び各比較例で得られた蓄熱体を用いて、厚みが10mmであるシート状の蓄熱体のサンプルを作製した。
作製された蓄熱体のサンプルと、表面に深さ1mmの段差を有する基材とを、蓄熱体サンプルが段差を有する表面と接するように、積層した。得られた積層体の蓄熱体サンプル側の表面を手で押し込み、さらにハンドローラーで5往復均した後、蓄熱体サンプルの表面及び変形の程度を目視で観察した。観察結果から、蓄熱体サンプルの塑性変形性について、以下の指標に基づいて、評価した。
0:表面に割れ及び/又は欠けがなく、かつ、塑性変形して段差に追従している。
1:表面にわずかに割れ及び/又は欠けがあるが、塑性変形して段差に追従している。
2:表面に割れ及び/又は欠けがややあるが、塑性変形して段差に追従している。
3:表面に割れ及び/又は欠けがかなりあるが、塑性変形して段差に追従している。
4:蓄熱体の割れが発生し、塑性変形せず、段差に追従していない。
表中、「マイクロカプセル」欄の「量[質量部]」欄は、蓄熱体の調製に使用したマイクロカプセルの使用量(質量部)を表す。
表中、「カプセル壁」欄の「原材料」欄、「ポリイソシアネートA」欄、及び、「ポリイソシアネートB」欄は、それぞれ、カプセル壁を形成する材料として使用した化合物を示し、「ガラス転移温度[℃]」欄は、各材料を用いて形成されたカプセル壁のガラス転移温度を示す。
表中、「D-750」はバーノックD-750を表し、「D-120N」は、タケネートD-120Nを表す。タケネートD-120Nは、以下の構造式に示すように、脂環族ジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体である3官能のポリイソシアネートに該当する。
表中、「MR-100」はミリオネートMR-100を表し、「MR-200」はミリオネートMR-200を表し、「MR-400」はミリオネートMR-400を表す。ミリオネートMR-100、ミリオネートMR-200、及び、ミリオネートM-400は、いずれも、ジフェニルメタンジイソシアネート、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(式(X)で表される化合物に該当)の混合物に該当する。
表中、「質量比(%))」は、ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBの合計含有量に対するポリイソシアネートAの含有量の質量比(単位:質量%)を表す。
表中、「蓄熱材」欄の「種類」欄、「分子量」欄及び「融点[℃]」欄は、それぞれ、マイクロカプセルが内包する蓄熱材の種類、分子量及び融点を示す。
表中、「樹脂」欄の「種類」欄は、蓄熱体の調製に使用した樹脂を表す。
表中、「樹脂」欄の「量[質量部]」欄は、蓄熱体の調製に使用した樹脂の使用量(質量部)を表す。
表中、「樹脂」欄の「動粘度[mm/s]」欄、及び、「粘度[cP]」欄は、蓄熱体の調製に使用した樹脂の動粘度及び粘度をそれぞれ示す。
表1~表3に示すように、本発明の蓄熱体は、所望の効果を示すことが確認された。
また、蓄熱材の含有量が、蓄熱体の全質量に対して60質量%以下である場合、本発明の効果がより優れることが確認された(実施例1~6の比較)。
また、蓄熱材の含有量が、蓄熱体の全質量に対して60質量%以上である場合、蓄熱体の蓄熱量が向上することが確認された(実施例1~6の比較)。
また、上記ポリイソシアネートA及び上記ポリイソシアネートBを用いてマイクロカプセルのカプセル壁を形成した場合、蓄熱体のヒートサイクル耐性が向上することが確認された(実施例1~20の比較)。
更に、ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBの合計含有量に対するポリイソシアネートAの含有量の質量比(ポリイソシアネートAの含有量/ポリイソシアネートA及びポリイソシアネートBの合計含有量)が、20質量%以上である場合、本発明の効果がより優れることが確認され、上記質量比が25質量%以上である場合、本発明の効果が更に優れることが確認された(実施例7~20の比較)。
また、粘度が1,000,000cP以下である樹脂を含み、その樹脂の含有量が蓄熱体の全体積に対して25体積%以上である蓄熱体は、本発明の効果がより優れることが確認された(実施例1~20の比較)。
更に、塑性変形性が良好な実施例1~20の蓄熱体を凹凸の多い部材に充填したところ隙間なく効率的に充填できた。

Claims (20)

  1. 蓄熱材を内包するマイクロカプセルと樹脂とを含む蓄熱体であって、
    前記蓄熱体の全質量に対する前記蓄熱材の含有量が20~99質量%であり、
    前記蓄熱体が25℃で塑性体である、蓄熱体。
    ただし、25℃で塑性体であるとは、25℃における押込弾性率が3MPa以下である物体を意味し、前記物体の押込弾性率は、ISO14577に従ってナノインデンターを用いて測定される数値である。
  2. 前記マイクロカプセルのカプセル壁が、ポリウレア、ポリウレタンウレア、及び、ポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含み、
    前記カプセル壁のガラス転移温度が150℃以上であるか、又は、前記カプセル壁がガラス転移温度を示さない、請求項1に記載の蓄熱体。
  3. 前記ポリマーが、下記式(Y)で表される構造を有する、請求項2に記載の蓄熱体。
    式(Y)中、nは1以上の整数を表す。
  4. 前記ポリマーが、芳香族又は脂環族ジイソシアネートと、1分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物と、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと、を反応させてなるポリマーである、請求項2又は3に記載の蓄熱体。
  5. 前記マイクロカプセルのカプセル壁が、芳香族又は脂環族ジイソシアネートと1分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物とのアダクト体である3官能以上のポリイソシアネートA、並びに、芳香族ジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートからなる群から選択されるポリイソシアネートBを用いて形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄熱体。
  6. 前記ポリイソシアネートA及び前記ポリイソシアネートBの合計含有量に対する前記ポリイソシアネートAの含有量が、20~98質量%である、請求項5に記載の蓄熱体。
  7. 前記蓄熱体の25℃における押込弾性率が、0.1~3MPaである、請求項1~6のいずれか1項に記載の蓄熱体。
  8. 前記樹脂の含有量が、前記蓄熱体の全体積に対して40体積%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の蓄熱体。
  9. 前記マイクロカプセルの含有量に対する前記樹脂の含有量の体積比が、0.25~1である、請求項1~8のいずれか1項に記載の蓄熱体。
  10. 前記樹脂がシリコーン樹脂である、請求項1~9のいずれか1項に記載の蓄熱体。
  11. 前記シリコーン樹脂が、下記式(Z)で表される構造を有する、請求項10に記載の蓄熱体。
    式(Z)中、R~Rは、各々独立にアルキル基又はアリール基を表す。nは、1以上の整数を表す。nが2以上の整数を表す場合、複数のRは同一でも異なっていてもよく、複数のRは同一でも異なっていてもよい。
  12. 前記樹脂の粘度が5,000cP以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の蓄熱体。
  13. 前記蓄熱体の空隙率が10体積%未満である、請求項1~12のいずれか1項に記載の蓄熱体。
  14. 前記蓄熱材の分子量が500以下である、請求項1~13のいずれか1項に記載の蓄熱体。
  15. 前記蓄熱材が、無機塩、脂肪族炭化水素、脂肪酸エステル系化合物、芳香族炭化水素系化合物、脂肪族アルコール、糖、及び、糖アルコールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の蓄熱体。
  16. 前記蓄熱材の融点が25℃超である、請求項1~15のいずれか1項に記載の蓄熱体。
  17. 潜熱容量が90J/mL以上である、請求項1~16のいずれか1項に記載の蓄熱体。
  18. 前記蓄熱体の全質量に対する前記蓄熱材の含有量が50~99質量%である、請求項1~17のいずれか1項に記載の蓄熱体。
  19. 樹脂と蓄熱材を内包するマイクロカプセルとを、前記樹脂及び前記マイクロカプセルの合計量に対する前記蓄熱材の量が20~99質量%となる割合で混合する混合工程、及び、
    前記混合工程で得られた混合物を混練する混練工程、を有し、
    前記混合工程において前記樹脂及び前記マイクロカプセルを混合してから前記混練工程が終了するまでの間に前記樹脂の硬化処理を施さない、
    請求項1~18のいずれか1項に記載の蓄熱体を製造する方法。
  20. 請求項1~18のいずれか1項に記載の蓄熱体を含む、電子デバイス。
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