以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
実施の形態1.
まず、図1及び図2を用いて、本実施の形態に係るノイズ解析装置の構成例を説明する。図1には、ノイズ解析装置のハードウェア構成例が示され、図2には、実施の形態1に係るノイズ解析装置の構成例を説明するブロック図が示される。
図1を参照して、本実施の形態に係るノイズ解析装置の機能は、例えば、情報処理装置51による予め定められたノイズ解析プログラムの実行によって実現される。即ち、当該ノイズ解析プログラムが実行されると、図2に示されたノイズ解析機能部1に含まれる各ブロックの機能が、情報処理装置51による演算処理によって実現されることにより、本実施の形態に係るノイズ解析装置が構成される、又は、ノイズ解析方法が実行されることとなる。これにより、本実施の形態に係るノイズ解析技術を適用した観測ノイズのシミュレーションを実行することができる。
即ち、以下に示されるブロック図に記載された各ブロックの機能は、基本的には、プログラムの実行によるソフトウェア処理によって実現される。但し、任意のブロックの少なくとも一部の機能について、FPGA(Field Programmable Gate Array)、或いは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデジタル回路、又は、アナログ回路によって構成することも可能である。
図33には、情報処理装置51のハードウェア構成例が示される。
例えば、図33に示される様に、情報処理装置51は、CPU(Central Processing Unit)220と、メモリ230と、入出力(I/O)回路240とを含む様にコンピュータベースで構成される。CPU220、メモリ230及びI/O回路240は、バス250を経由して、相互にデータの授受が可能である。
メモリ230の一部領域には、ノイズ解析プログラムを含むプログラムが予め格納されており、CPU220が当該プログラムを実行することで、後述するノイズ解析を実行することができる。I/O回路240は、図示しない通信装置を介して、他の装置、例えば、図1中に示される情報表示装置52、情報処理装置53、及び、クラウド54との間で、信号及びデータを入出力する。
情報処理装置51での当該シミュレーションの結果として得られる観測ノイズ計算結果は、情報表示装置52に表示することができる。尚、図1では情報処理装置51及び情報表示装置52が別体であるが、両者は一体に構成されてもよい。
尚、観測ノイズ計算結果は、情報表示装置52に表示する他に、情報処理装置51に保存されてもよい。又、観測ノイズ計算結果の保存先は、シミュレーションを実行した情報処理装置51に限らず、情報処理装置51に有線又は無線のネットワークを経由して接続された他の情報処理装置53であってもよく、或いは、クラウド54であってもよい。
次に、図2を参照して、ノイズ解析機能部1は、スイッチング制御信号取得部3と、ノイズ伝達関数取得部4と、ターンオン過渡波形取得部21と、ターンオフ過渡波形取得部22とを備える。
ターンオン過渡波形取得部21は、スイッチング制御される半導体素子(ノイズ源)の時間軸上のターンオン過渡波形(電圧波形)を取得する。同様に、ターンオフ過渡波形取得部22は、当該半導体素子の時間軸上のターンオフ過渡波形(電圧波形)を取得する。
ここで、図3にノイズ解析対象の回路図の一例を示す。図3では、図示を簡略化するために、ケーブル、電源、及び、周辺回路の記載が省略されている。
図3を参照して、解析対象回路200は、入力正極端子201及び入力負極端子202の間に直列接続された、上アーム半導体素子101及び下アーム半導体素子102を有する。入力正極端子201及び入力負極端子202の間には、平滑用のキャパシタ204が接続される。
上アーム半導体素子101の高電位側端子は、入力正極端子201と接続され、下アーム半導体素子102の低電位側端子は、入力負極端子202と接続される。上アーム半導体素子101の低電位側端子と、下アーム半導体素子102の高電位側端子は、中間端子205と接続される。負荷203は、入力正極端子201及び中間端子205の間に接続される。図3の構成例では、上アーム半導体素子101は主にダイオードとして動作する一方で、下アーム半導体素子102が主にトランジスタとして動作する。
或いは、図3の構成において、負荷203を入力負極端子202及び中間端子205の間に接続することも可能である。この場合には、解析対象回路200において、上アーム半導体素子101が主にトランジスタとして動作する一方で、下アーム半導体素子102は主にダイオードとして動作する。
尚、解析対象回路200は、直列接続された上アーム半導体素子及び下アーム半導体素子のセット(アーム)を、入力正極端子201及び入力負極端子202の間に複数アーム分並列接続する様に構成することも可能である。又、各アームにおいて、直列接続される半導体素子の数は、2個に限らず任意の数とすることも可能である。
解析対象回路200において、上アーム半導体素子101及び下アーム半導体素子102の各々(以下、包括的に、単に「半導体素子」とも表記する)は、入力正極端子201及び入力負極端子202の間の直流電力と、負荷203に対して入出力される電力(直流電力又は交流電力)の間で所望の電力変換が実行される様に、スイッチング制御される。スイッチング制御により、半導体素子では、オフ状態からオン状態に遷移するターンオン、及び、オン状態からオフ状態に遷移するターンオフが繰り返し実行される。
図4~図6には、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形の例が示される。図4及び図5には、過渡波形として、電圧波形が示される。
図4には、t1で半導体素子(トランジスタとして動作)がターンオンされたときの、半導体素子(トランジスタとして動作)の端子間電圧Vtr(以下、トランジスタ電圧Vtrとも称する)及び半導体素子(ダイオードとして動作)の端子間電圧Vdi(以下、ダイオード電圧Vdiとも称する)の波形が示される。半導体素子(トランジスタとして動作)のオフ期間は、ダイオードの導通によりVdiがゼロの近傍である一方で、Vtr>0となってトランジスタが導通を阻止している。トランジスタのターンオンに応じて、Vtrが0に低下する一方で、ダイオードがオフすることによりVdiが上昇するが、この際に、Vtr及びVdiに生じる急峻な電圧変化がノイズ源となり得る。即ち、t1以降の電圧波形が、ターンオン過渡波形に相当する。
尚、t1はターンオン過渡波形における基準時刻であり、t1=0と定義される。又、図4ではt1をVtr、Vdiの電圧変化が始まる時刻に対応させて定めているが、半導体素子のゲート電圧の電圧変化が始まる時刻に対応させて、基準となるt1を定めてもよい。或いは、後述するスイッチング制御信号の変化が始まる時刻に対応させて、t1を定めることも可能である。
同様に、図5には、t2で半導体素子(トランジスタとして動作)がターンオフされたときの、半導体素子(トランジスタとして動作)の端子間電圧Vtr及び半導体素子(ダイオードとして動作)の端子間電圧Vdiが示される。トランジスタのオン期間には、Vtrがゼロの近傍である一方で、Vdi>0となってダイオードが導通を阻止している。トランジスタのターンオフに応じて、Vtrが0から上昇する一方で、ダイオードがオンすることによりVdiが0に低下するが、この際に、Vtr及びVdiに生じる急峻な電圧変化がノイズ源となり得る。即ち、t2以降の電圧波形が、ターンオフ過渡波形に相当する。
尚、t2はターンオフ過渡波形における基準時刻であり、t2=0と定義される。又、図5ではt2をVtr、Vdiの電圧変化が始まる時刻に対応させて定めているが、半導体素子のゲート電圧の電圧変化が始まる時刻に対応させて、基準となるt2を定めてもよい。或いは、後述するスイッチング制御信号の変化が始まる時刻に対応させて、t2を定めることも可能である。
図4及び図5に示される電圧変化が半導体素子のターンオン毎及びターンオフ毎にそれぞれ発生するので、シミュレーション結果又は実測データに基づいて、半導体素子のターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形を予め得ることができる。
例えば、実測データは、トリガ機能及びメモリ機能を有するオシロスコープ(図示せず)を用いて取得することができる。具体的には、半導体素子のターンオン又はターンオフをトリガとして、図4又は図5に示された実測波形をメモリすることによって、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形を得ることができる。
或いは、図6に示される様に、電流波形(例えば、トランジスタ電流Itr)を過渡波形とすることも可能である。図6には、一例として、図3の解析対象回路200内の下アーム半導体素子102(主に、トランジスタとして動作)の電流実測波形の一例が示される。電流波形についても、シミュレーション結果又は実測データ(オシロスコープ)に基づいて、過渡波形を予め定めることができる。この様に、ターンオン過渡波形取得部21及びターンオフ過渡波形取得部22によって取得されるターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形の各々は、必ずしも電圧波形である必要はなく、いずれか一方もしくは両方に電流波形を用いることも可能である。
更に、実測又はシミュレーションから得られた半導体素子のターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形については、当該過渡波形のデータベースを情報処理装置51,53及びクラウド54のいずれかに予め保存することができる。図2に示されたターンオン過渡波形取得部21及びターンオフ過渡波形取得部22は、当該データベースにアクセスすることにより、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形を取得することができる。
これにより、ターンオン過渡波形取得部21は、1回のターンオン時における時間軸上の電圧変化又は電流変化を示す情報を取得する。同様に、ターンオフ過渡波形取得部22は、1回のターンオフ時における時間軸上の電圧変化又は電流変化を示す情報を取得する。
尚、図3に例示した様な、トランジスタ及びダイオードを組み合わせた回路では、図4及び図5に示した様に、トランジスタがターンオンするとダイオードがターンオフし、トランジスタがターンオフするとダイオードがターンオンする。従って、半導体素子のターンオン過渡波形(図4)は、厳密には、Vtrのターンオン過渡波形とVdiのターンオフ過渡波形とを含むことになる。同様に、半導体素子のターンオフ過渡波形(図5)は、厳密には、Vtrのターンオフ過渡波形とVdiのターンオン過渡波形とを含むことになる。
又、トランジスタ及びダイオードの一方のみのノイズが支配的である場合には、トランジスタの過渡電圧波形又は過渡電流波形と、ダイオードの過渡電圧波形又は過渡電流波形との一方のみを、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形とすることも可能である。
尚、図3に示された解析対象回路200中には2個の半導体素子がノイズ源として存在しているが、図2では、説明を簡単にするために、1個のノイズ源(半導体素子)から出力されるノイズ解析のための構成を示している。
再び図2を参照して、スイッチング制御信号取得部3は、当該半導体素子のターンオン時刻及びターンオフ時刻の情報を含むスイッチング制御信号を取得する。スイッチング制御信号は、ノイズ源となる半導体素子のターンオン及びターンオフの発生時系列情報を含む。
例えば、図7に示される、半導体素子のオン期間及びオフ期間を指定するためのゲート信号を、スイッチング制御信号として用いることができる。
図7を参照して、ゲート信号は、半導体素子がオン状態に制御されるべき期間において「1」に設定される一方で、オフ状態に制御されるべき期間において「0」に設定される、時間領域のデータである。この場合には、スイッチング制御信号とされるゲート信号の値が「0」から「1」に変化した時刻がターンオン発生時刻に相当し、「1」から「0」に変化した時刻がターンオフ発生時刻に相当する。
尚、スイッチング制御信号の値は、「0」及び「1」のデジタル値に限定されるものではなく、オン状態の期間とオフ状態の期間とで異なる様に設定されるアナログ値であってもよい。この場合には、当該アナログ値と予め定められた閾値との大小関係が反転する時刻が、ターンオン時刻又はターンオフ時刻に相当することになる。
この様に、1個のノイズ源(半導体素子)に対して、1個のスイッチング制御信号が用意され、各スイッチング制御信号には、対応する半導体素子(ノイズ源)のターンオン発生時刻及びターンオフ発生時刻を示す、時間軸上の情報が含まれる。尚、半導体素子(トランジスタとして動作)のターンオン時刻が半導体素子(ダイオードとして動作)のターンオフ時刻であり、半導体素子(トランジスタとして動作)のターンオフ時刻が半導体素子(ダイオードとして動作)のターンオン時刻であると定義して、半導体素子(トランジスタとして動作)のみのスイッチング制御信号を用意してもよい。
具体的には、スイッチング制御信号には、1個の半導体素子(ノイズ源)について、複数回のターンオン発生時刻、及び、複数回のターンオフ発生時刻を示す時間軸上の情報が含まれる。又、スイッチング制御信号は、これらのターンオン発生時刻及びターンオフ発生時刻そのものを示す情報によって構成されてもよい。
この様に、複数回のターンオン発生時刻及びターンオフ時刻を含むことによって、半導体素子のオン期間長及びオフ期間長の変化を、スイッチング制御信号データに反映することができる。
再び図2を参照して、ノイズ解析機能部1は、フーリエ変換部23,24と、観測ノイズ計算部10とを更に備える。フーリエ変換部23は、ターンオン過渡波形取得部21によって取得されたターンオン過渡波形をフーリエ変換した、周波数領域のターンオンノイズ源スペクトルSPNonを出力する。同様に、フーリエ変換部24は、ターンオフ過渡波形取得部22によって取得されたターンオフ過渡波形をフーリエ変換した周波数領域のターンオフノイズ源スペクトルSPNoffを出力する。フーリエ変換部23及び24によって時間軸上の過渡波形データがフーリエ変換されたターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffは、スイッチング制御信号取得部3からのスイッチング制御信号、及び、ノイズ伝達関数取得部4からのノイズ伝達関数と共に、観測ノイズ計算部10へ入力される。
ここで、図8及び図9を用いて、過渡波形のフーリエ変換処理の一例を説明する。
図8には、図4に示された半導体素子のターンオン過渡波形(トランジスタ電圧Vtr)の折れ線近似例が示される。実測波形を用いる場合には、熱雑音又は外乱ノイズ等の影響を受けるため、図8中に実線で示された実測波形を、破線で示される様に折れ線近似して、当該折れ線近似された波形を、フーリエ変換の対象とすることが好ましい。
折れ線近似された波形は、ノイズ解析機能部1の内部で折れ線近似を自動的に実行することによって生成されてもよく、ターンオン過渡波形取得部21及びターンオフ過渡波形取得部22が取得するターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形について、折れ線近似されたものを予め準備してもよい。尚、折れ線近似に限らず、任意の回帰曲線で近似してもよい。
図9には、図8に示される、折れ線近似された波形をフーリエ変換した結果が示される。フーリエ変換は、通常は、複素数のスペクトルが得られるように計算される。図9は、各周波数でのスペクトルの絶対値をプロットしたものである。フーリエ変換は例えば次の式(1)で得られる。
式(1)において、N(f)は周波数fにおけるノイズ源スペクトルである。n(t)は、上述のt1及びt2をt=0と定義した時間軸上のターンオン過渡波形又はターンオフ過渡波形を示す、電圧値又は電流値である。w(t)は窓関数であり、Tは窓関数の時間幅である。
或いは、フーリエ変換部23,24では、式(1)と同等のフーリエ変換の計算結果が得られる、変形式又は近似式を用いることも可能である。尚、窓関数の時間幅Tの設定は任意であり、過渡波形のデータの時間長に対して、窓関数の時間幅Tの方が長い場合は、過渡波形のデータを外挿で補間してもよい。又、f=0、すなわち直流のノイズ源スペクトルを計算する必要はないが、f=0の場合には、式(1)で得られた値を2で割る必要がある。
フーリエ変換部23,24は、ターンオン及びターンオフのそれぞれの1回分の過渡波形(図4~図6)をフーリエ変換の対象としている。即ち、フーリエ変換部23,24でフーリエ変換の対象となる過渡波形(ターンオン及びターンオフ)の個数は、スイッチング制御信号から取得される複数回のターンオン発生時刻及び複数回のターンオフ発生時刻の個数よりも少ないことが理解される。
再び図2を参照して、図2の例では、フーリエ変換部23,24によって、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形を並列してフーリエ変換しているが、共通のフーリエ変換部によって、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形を順次フーリエ変換することも可能である。
観測ノイズ計算部10は、フーリエ変換部23,24からのターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffと、スイッチング制御信号取得部3からのスイッチング制御信号データと、ノイズ伝達関数取得部4からのノイズ伝達関数とを用いて、観測ノイズ計算結果RTNSを算出する。
図10には、図2に示された観測ノイズ計算部10の構成例を説明するブロック図が示される。
図10を参照して、観測ノイズ計算部10は、乗算部12,13と、合計計算部10Xとを含む。ノイズ伝達関数取得部4は、ターンオン時のノイズ伝達関数Gonと、ターンオフ時のノイズ伝達関数Goffとを取得する。即ち、図10の例では、ターンオン時及びターンオフ時で、ノイズ伝達関数が個別に設定される。
乗算部12は、ターンオンノイズ源スペクトルSPNonと、ターンオン時のノイズ伝達関数Gonとを乗算する。乗算部13は、ターンオフノイズ源スペクトルSPNoffと、ターンオフ時のノイズ伝達関数Goffとを乗算する。
ここで、ノイズ伝達関数とは、ノイズ源からノイズ観測点に至るまでの周波数領域の伝達関数を含むデータであり、例えば、電磁界解析又は回路解析によって予め求めることができる。当該ノイズ伝達関数は、例えば、ノイズ源に1[V]の電圧又は1[A]の電流を与えたときの、ノイズ観測点の電圧又は電流によって示される。ノイズ源及びノイズ観測点の位相差を考慮するためには、ノイズ観測点の電圧又は電流が複素数で示される必要がある。
又、後述する様に、ノイズ源及びノイズ観測点が複数ある場合には、ノイズ伝達関数のデータは、ノイズ源とノイズ観測点の組み合わせそれぞれについてのノイズ伝達関数を含む。ノイズ観測点で観測する対象は、電圧、電流に限らず、電界、磁界であってもよいが、本明細書では、電界、磁界の場合を省略して、電圧、電流をノイズとして説明する。
ノイズ伝達関数のデータは、ノイズ源及びノイズ観測点のポートを有するSパラメータのデータであってもよく、Sパラメータの変換計算を行うことで、ノイズ源に1[V]の電圧又は1[A]の電流を与えたときのノイズ観測点の電圧又は電流を導出したものを、ノイズ伝達関数取得部4によって得られるノイズ伝達関数として用いてもよい。
尚、複数のノイズ源及び複数のノイズ観測点のポートを有するSパラメータを用いる場合には、1つのSパラメータのデータから、ノイズ源及びノイズ観測点の組み合わせのそれぞれに対してノイズ伝達関数を導出してもよい。Sパラメータの変換を行う際には、ノイズ源に直列又は並列に任意のインピーダンスを与えてもよく、例えば、1[V]の電圧に直列にターンオン時の半導体素子の抵抗を与えてもよく、1[A]の電流に並列にターンオフ時の半導体素子の静電容量を与えてもよい。
或いは、Sパラメータの代わりに、Sパラメータとの相互変換が可能なYパラメータ、Zパラメータ、又は、Fパラメータを用いて、ノイズ伝達関数を設定することも可能である。
図10に示される様に、ターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffが、ターンオン時のノイズ伝達関数Gon及びターンオフ時のノイズ伝達関数Goffとそれぞれ乗算されることでターンオン観測ノイズとターンオフ観測ノイズが計算される。更に、これらのターンオン観測ノイズとターンオフ観測ノイズをスイッチング制御信号のデータに基づき合計加算することで、観測ノイズが計算される。
図11には、図10に示された合計計算部10Xの構成例を説明するブロック図が示される。
図11を参照して、合計計算部10Xは、時間範囲設定部14と、位相変換部14a,14bと、乗算部15,16と、加算部17,18とを有する。
時間範囲設定部14は、スイッチング制御信号取得部3からのスイッチング制御信号から、指定されたノイズ解析対象期間(開始時間Tstr~終了時間Tend)に含まれる、第1回~第N回(N:自然数)のターンオン発生時刻及びターンオフ発生時刻を抽出する。これにより、スイッチング制御信号から、第i回(i:1~N)のターンオン時刻ton(i)と、第i回(i:1~N)のターンオフ時刻toff(i)が得られる。尚、ノイズ解析対象期間は任意に設定することが可能であり、スイッチング制御信号取得部3によって取得されたスイッチング制御信号に対応する時間領域の一部又は全部とすることができる。
以下では、説明を簡単にするために、同数(N個ずつ)のターンオン時刻及びターンオフ時刻が抽出される例を説明するが、実際には、ノイズ解析対象期間の最端のパルスからターンオン時刻及びターンオフ時刻の一方のみが抽出されることで、ターンオン時刻及びターンオフ時刻の数に差異が生じるケースも有り得る。
位相変換部14aは、第i回目のターンオン時刻ton(i)=tとして、ターンオン時刻の違いによって生じる位相の違いをノイズ源スペクトルに与えるために、exp(-j・2πft)を算出する。同様に、位相変換部14bは、第i回目のターンオフ時刻toff(i)=tとして、ターンオフの時間差を位相差で表現するために、exp(-j・2πft)を算出する。ターンオン時刻ton(i)及びターンオフ時刻toff(i)のそれぞれに対応して算出されたexp(-j・2πft)は、「複数の位相差情報」の一実施例に対応する。これらの位相差情報をノイズ源スペクトルに乗算することで、複数回ずつのターンオン時刻及びターンオフ時刻それぞれにおける位相変化をノイズ源スペクトルに含めることができる。
乗算部15は、乗算部12の出力値(ターンオン観測ノイズ)と、位相変換部14aからの複数回のターンオン時刻の位相差情報のそれぞれとの乗算結果を出力する。これにより、第i回(i:1~N)のターンオン時刻ton(i)のそれぞれに対応するターンオン観測ノイズNSon(i)が算出される。
同様に、乗算部16は、乗算部13の出力値(ターンオフ観測ノイズ)と、位相変換部14bからの複数回のターンオフ時刻の位相差情報のそれぞれとの乗算結果を出力する。これにより、第i回(i:1~N)のターンオフ時刻toff(i)に対応するターンオフ観測ノイズNSoff(i)が算出される。
ターンオン観測ノイズNSon(i)及びターンオフ観測ノイズNSoff(i)は、ノイズ源スペクトル(ターンオンノイズ源スペクトルSPNon又はターンオフノイズ源スペクトルSPNoff)がターンオン時刻ton(i)及びターンオフ時刻toff(i)のそれぞれに対応する位相差情報によってそれぞれ位相変換された複数のノイズ源スペクトルと、ノイズ伝達関数(Gon又はGoff)との乗算値である「複数の乗算値」の一実施例に対応する。尚、図10,図11において、乗算部12,13と、乗算部15,16との位置(乗算の前後)を入れ替えても、同様の「複数の乗算値」を算出することが可能であり、乗算部12,13,15,16によって「第1乗算部」の機能が実現される。
加算部17は、乗算部15からのターンオン観測ノイズNSon(i)と、乗算部16からのターンオフ観測ノイズNSoff(i)とを加算して、第i回のパルス(即ち、1回のターンオン及びターンオフ)の観測ノイズNS(i)を算出する。これにより、i=1~N、即ち、第1回~第N回のパルスのそれぞれ観測ノイズNS(1)~NS(N)が算出される。
加算部18は、加算部17によって算出された観測ノイズNS(1)~NS(N)を加算することによって、観測ノイズ計算結果RTNSを出力する。観測ノイズ計算結果RTNSは、図9に例示したノイズ源スペクトルと同様の、各周波数でのノイズ強度(例えば、雑音電圧[dBV])のデータの集合として示される。
尚、この際に、複数回のパルス間での重み付けを変えて加算することも可能である。例えば、重み付け係数kw(i)を導入して、加算部17からの観測ノイズNS(i)及び重み付け係数kw(i)の乗算値を加算部18で合計することも可能である。一例として、重み付け係数kw(i)は、ノイズ解析対象期間の中央部で値が大きく、端部で値が小さくなる様に設定することができる。
図11において、スイッチング制御信号取得部3は「第1取得部」の一実施例に対応し、ノイズ伝達関数取得部4は「第2取得部」の一実施例に対応する。又、加算部17,18によって「第1加算部」の機能が実現される。又、ターンオン時刻ton(i)及びターンオフ時刻toff(i)は、半導体素子の複数回のスイッチングが起こる「複数の発生時刻」に対応する。
図11に示された観測ノイズ計算結果RTNSは、時間範囲設定部14によって設定された1個のノイズ解析対象期間に対応して算出される。従って、時間範囲設定部14が複数のノイズ解析対象期間を設定すると、当該複数のノイズ解析対象期間毎に観測ノイズ計算結果RTNSを算出することが可能である。この場合には、算出された複数の観測ノイズ計算結果RTNSの統計計算(平均値、最大値、最小値等の算出)を実行する機能を更に具備して、統計計算で得られた結果を、最終的な観測ノイズ計算結果RTNSとして、ノイズ解析機能部1(図2)から出力することも可能である。
尚、図11の構成例において、加算部17及び18のそれぞれによる加算の順序を入れ替えても、同じ観測ノイズ計算結果RTNSが得られることについて確認的に記載する。即ち、加算部18によるN回分の加算演算結果に対して、加算部17によるターンオンノイズ及びターンオフノイズの加算演算を実行する構成とすることも可能である。
図12には、複数個のノイズ源(半導体素子)からの観測ノイズを計算するための観測ノイズ計算部11の構成例が示される。例えば、図3に例示した解析対象回路200において、半導体素子101及び102のそれぞれを別個のノイズ源として観測ノイズを計算する際に、図12に示された観測ノイズ計算部を適用することができる。
図12に示される様に、観測ノイズ計算部11は、各ノイズ源に対応して設けられた合計計算部10X(図11と同様の構成)と、加算部19とを有する。各合計計算部10Xからは、加算部18の出力として、ノイズ源毎に観測ノイズ計算結果が算出される。
加算部19は、ノイズ源毎に設けられた合計計算部10Xからの観測ノイズ計算結果を加算して、複数のノイズ源からの観測ノイズの合計値を、観測ノイズ計算結果RTNSとして出力する。これにより、任意の個数のノイズ源に対応して、観測ノイズ計算結果RTNSを求めることが可能である。即ち、加算部19は「第2加算部」の一実施例に対応する。
以上説明した様に、実施の形態1に係るノイズ解析技術によれば、フーリエ変換の対象となる時間幅を最小限のパルス数(代表的には、1回分)に抑えた上で、オン期間長及びオフ期間長が変化する情報を含む複数のパルスでの半導体素子のターンオン及びターンオフをノイズ源とするノイズ解析を行うことができる。これにより、複数のパルスを直接フーリエ変換の対象としてフーリエ変換の所要時間を増大することなく、半導体素子のオン期間長及びオフ期間長が変化する挙動を反映させて、ノイズ解析を高速かつ正確に実行することが可能となる。
以上では、1個又は複数個のノイズ源に対するノイズ解析に係る基本構成を説明したが、以下では、実施の形態1に係るノイズ解析技術の変形例及び詳細な具体例について適宜説明する。
図13には、図10と対比される、観測ノイズ計算部10(図2)の構成の変形例が示される。
図13を参照して、ノイズ伝達関数取得部4は、ターンオン時及びターンオフ時に共通に設定されるノイズ伝達関数Gcmnを取得してもよい。この場合には、観測ノイズ計算部10は、合計計算部10Yと、乗算部12Yとを有する様に構成することができる。
合計計算部10Yは、図11に示された合計計算部10Xの構成から、乗算部12,13が削除された構成を有する。更に、乗算部12Yは、図11の加算部18の出力値と、ノイズ伝達関数Gcmnとを乗算する様に構成される。これにより、図11において、Gon=Goff=Gcmnとした観測ノイズ計算結果RTNSを得ることができる。
尚、図11の構成において、Gon=Goff=Gcmnを乗算部12,13に入力しても上記同様の観測ノイズ計算結果RTNSを得ることが可能であるが、図13の構成とすることで、乗算演算を1回減少することができるので、ノイズ解析時間の短縮を図ることができる。
図14には、図2に示されたノイズ解析機能部1の変形例が示される。
図2の構成では、ノイズ解析機能部1にフーリエ変換部23,24を設けることによってターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形をターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffを取得していた。
これに対して、図14の変形例では、ノイズ解析機能部1に対して、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形を予めフーリエ変換して得られたターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffが入力される。
この場合には、ターンオンノイズ源スペクトル取得部25及びターンオフノイズ源スペクトル取得部26が、ノイズ解析機能部1に入力されたターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffを取得する。図14では、ターンオンノイズ源スペクトル取得部25及びターンオフノイズ源スペクトル取得部26は「第3取得部」の一実施例に対応する。
取得されたターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffは、観測ノイズ計算部10に対して入力されることで、図10又は図13の構成によって観測ノイズ計算結果RTNSを算出することができる。
或いは、図2及び図14を統合して、ノイズ解析機能部1に対して入力されるターンオンノイズ源データ及びターンオフノイズ源のデータが、過渡波形(時間領域)及びスペクトル(周波数領域)のいずれであるかを自動判定する機能を設けることも可能である。この場合には、当該自動判定の結果に従って、図2のフーリエ変換部23,24を経由する経路及びバイパスする経路を選択して、ターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffを観測ノイズ計算部10に入力する構成とすることができる。これにより、ノイズ解析における、ターンオンノイズ源データ及びターンオフノイズ源データとして、過渡波形(時間領域)及びスペクトル(周波数領域)の両方を許容することが可能となる。
尚、図4及び図5では、t1及びt2をゼロ時刻として基準とした過渡波形を例示したが、過渡波形のデータを入力する時点では、t1及びt2とゼロ時刻との間にずれが生じる場合があってもよい。この様な場合には、図15に示される構成を適用するとこで、過渡波形からターンオンの発生時刻もしくはターンオフの発生時刻を自動的に検出して、時刻ずれの補正処理を自動的に実行することも可能である。
図15を参照して、ターンオン過渡波形取得部21によって取得されたターンオン過渡波形(例えば、図4)は、時刻ずれ検出機能部27aに入力される。時刻ずれ検出機能部27aは、過渡波形データの最初の時刻(図4における原点の時刻)における電圧値(又は、電流値)を初期値として格納する。更に、時刻ずれ検出機能部27aは、以降の各時刻において、当該時刻における電圧値(又は、電流値)と初期値との差分を予め定められた閾値と比較して、差分の絶対値が閾値よりも大きくなると、ターンオンの発生を検出する。当該閾値は、例えば、図4のt1近傍において、ターンオンが検知されるように定めることができる。
時刻ずれ検出機能部27aは、ゼロ時刻(原点相当の時刻)と、ターンオンの検出時刻との時間差を時刻ずれ量τとして検出する。時刻ずれ量τは、基準となるゼロ時刻よりも遅くターンオンが発生したときに正値(τ>0)とすることを想定しているが、一方で、当該ゼロ時刻よりも早くターンオンが発生したときには負値(τ<0)とすることで対応できる。
時刻ずれ補正機能部28aは、ターンオン過渡波形取得部21によって取得されたターンオン過渡波形の時間軸データを、時刻ずれ検出機能部27aによって検出された時刻ずれ量τに従って補正したターンオン過渡波形をフーリエ変換部23に入力する。
同様に、ターンオフ過渡波形取得部22によって取得されたターンオフ過渡波形(例えば、図5)に対しても、時刻ずれ検出機能部27a及び時刻ずれ補正機能部28aと同様の、時刻ずれ検出機能部27b及び時刻ずれ補正機能部28bが設けられる。即ち、時刻ずれ検出機能部27bは、ゼロ時刻(原点相当の時刻)と、ターンオフの検出時刻との時間差を時刻ずれ量τとして検出する。尚、ターンオンに係る時刻ずれ量τ(時刻ずれ検出機能部27a)と、ターンオフに係る時刻ずれ量τ(時刻ずれ検出機能部27b)とについて、説明を簡略化するための同じ記号で表記しているが、実際には、両者は異なる値となり得るものである。ターンオフに係る時刻ずれ量τについても、基準となるゼロ時刻よりも遅くターンオフが発生したときに正値(τ>0)とする一方で、当該ゼロ時刻よりも早くターンオフが発生したときに負値(τ<0)とすることができる。
この様な構成とすることにより、ターンオン時刻及びターンオフ時刻をゼロ時刻とする電圧波形又は電流波形を入力しなくても、ターンオン時刻又はターンオフ時刻との時間ずれ量を自動的に補正して、ターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffを得るための過渡波形データを得ることができる。
或いは、図16に示される様に、時刻ずれ補正機能部28a,28bは、フーリエ変換部23,24の後段に配置することも可能である。この場合には、時刻ずれ補正機能部28a,28bは、時刻ずれ検出機能部27a,27bによって検出された時刻ずれ量τに従って、フーリエ変換部23,24の出力に対して、exp(-j・2πf(-τ))=exp(j・2πfτ)を乗算する様に構成される。図16の構成例を用いても、図15と同様のターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffを得ることが可能である。
例えば図11では、ターンオン時刻ton(i)及びターンオフ時刻toff(i)のそれぞれに対応して算出されたexp(-j・2πft)を周波数領域で乗算することで位相変換を実行したが、図34に示される構成によって、時間領域において位相変換を実行する変形例も可能である。
図34は、時間領域で位相変換を実行する変形例を説明するブロック図である。
図34を参照して、ターンオン過渡波形取得部21によって取得されたターンオン過渡波形は、位相変換部14cに入力される。位相変換部14cは、時間範囲設定部14によって抽出されたターンオン時刻ton(i)を受けて、ターンオン時刻ton(i)にそれぞれ対応する時間差に従って時間軸上でシフトされたターンオン過渡波形を出力する。この様にして、時間領域で位相差が反映されたターンオン過渡波形(波形データ)が、フーリエ変換部23に入力される。フーリエ変換部23は、位相変換部14cから出力された、各ターンオン時刻ton(i)のターンオン過渡波形(波形データ)をフーリエ変換する。
同様に、ターンオフ過渡波形取得部22によって取得されたターンオフ過渡波形は、位相変換部14dに入力される。位相変換部14dは、時間範囲設定部14によって抽出されたターンオフ時刻toff(i)を受けて、ターンオフ時刻toff(i)にそれぞれ対応する時間差に従って時間軸上でシフトされたターンオフ過渡波形を出力する。フーリエ変換部24は、位相変換部14dからの、時間領域で位相差が反映された各ターンオフ時刻toff(i)のターンオフ過渡波形(波形データ)をフーリエ変換する。
図11に示された合計計算部10Xは、位相変換部14a,14b及び乗算部15,16に代えて、図34の構成を適用して、フーリエ変換部23,24の出力に、乗算部12,13によってノイズ伝達関数Gon,Goffを乗算することで、ターンオフ観測ノイズNSoff(i)及びターンオン観測ノイズNSon(i)を算出する様に変形することができる。
図34の変形例によって位相差情報による位相変換を時間領域で実行しても、ターンオン及びターンオフを含むパルス全体をフーリエ変換の対象としなくてよいので、フーリエ変換の対象となる時間ステップ数の削減には一定の効果を享受することができる。但し、位相変換後にフーリエ変換することで、ターンオン及びターンオフの発生回数分のフーリエ変換が必要になるので、周波数領域での乗算によって位相変換を実行する方が、フーリエ変換の演算負荷の削減効果は高くなる。
次に、ノイズ伝達関数がSパラメータである場合を例示して、図17~図21を用いてノイズ伝達関数の結線例を説明する。上述の様に、ノイズ伝達関数は、ノイズ源からノイズ観測点に至るまでの伝搬経路における周波数領域でのノイズの伝達関数を意味する。
図17には、ノイズ源及びノイズ観測点が2個ずつのときの結線図が第1の例として示される。
図17に示される様に、ノイズ伝達関数81は、4つのポートPrt1~Prt4を有し、ポートPrt1~Prt4は、第1ノイズ源71、第2ノイズ源72、第1ノイズ観測点73、第2ノイズ観測点74にそれぞれ接続される。第1ノイズ源71及び第2ノイズ源72は、例えば、図3に例示された解析対象回路200内の上アーム半導体素子101及び下アーム半導体素子102にそれぞれ対応する。尚、ポートの数は、4つに制限されるものではなく、任意の数とすることができる。
図18には、ノイズ源及びノイズ観測点がそれぞれ単一であるときの結線図が第2の例として示される。
図18では、ノイズ伝達関数81は、2つのポートPrt1,Prt2を有し、ポートPrt1は、第1ノイズ源71と接続されるとともに、ポートPrt2は、第1ノイズ観測点73と接続される。
ノイズ解析の対象とするべき、ノイズ源及びノイズ観測点の間の伝達関数を予め導出して、ノイズ伝達関数取得部4によって当該伝達関数のデータを読み出すことにより、ノイズ解析に用いるノイズ伝達関数(Gon,Goff,Gcmn)を取得することができる。
図19には、中継点を介して伝達関数が2つに分割されるときの結線図が第3の例として示される。
図19に示される様に、第1ノイズ源71及び第1ノイズ観測点73の間の伝達関数は、第1ノイズ源71及び中継点82の間の第1ノイズ伝達関数81aと、第1ノイズ観測点73及び中継点82の間の第2ノイズ伝達関数81bとに分割される。即ち、図19では、第1ノイズ源71及び第1ノイズ観測点73の間が中継点82を介して2個の伝搬経路に分割されており、第1ノイズ伝達関数81a及び第2ノイズ伝達関数81bは、当該2個の伝搬経路の伝達関数にそれぞれ相当する。
第1ノイズ伝達関数81a及び第2ノイズ伝達関数81bの各々は、2つのポートPrt1,Prt2を有する。第1ノイズ伝達関数81aのポートPrt1及びPrt2は、第1ノイズ源71及び中継点82とそれぞれ接続される。第2ノイズ伝達関数81bのポートPrt1及びPrt2は、中継点82及び第1ノイズ観測点73とそれぞれ接続される。
図20には、複数の中継点を介して伝達関数が2つに分割されるときの結線図が第4の例として示される。
図20に示される様に、第1ノイズ源71及び第1ノイズ観測点73の間の伝達関数は、第1ノイズ源71及び中継点83,84の間の第1ノイズ伝達関数81aと、第1ノイズ観測点73及び中継点82,83の間の第2ノイズ伝達関数81bとに分割される。図20においても、第1ノイズ源71及び第1ノイズ観測点73の間は、中継点83,84を介して2個の伝搬経路に分割されており、第1ノイズ伝達関数81a及び第2ノイズ伝達関数81bは、当該2個の伝搬経路の伝達関数にそれぞれ相当する。
第1ノイズ伝達関数81a及び第2ノイズ伝達関数81bの各々は、3つのポートPrt1~Prt3を有する。第1ノイズ伝達関数81aにおいて、ポートPrt1は第1ノイズ源71と接続され、ポートPrt2は中継点83と接続され、ポートPrt3は中継点84と接続される。又、第2ノイズ伝達関数81bにおいて、ポートPrt1は中継点83と接続され、ポートPrt2は第1ノイズ観測点73と接続され、ポートPrt3は中継点84と接続される。
図19及び図20に例示した様に、解析すべきノイズ源及びノイズ観測点の間のノイズ伝達関数を複数に分割した場合には、図21の構成を適用することで、ノイズ解析機能部1で用いるノイズ伝達関数(Gon,Goff,Gcmn)を取得することができる。
図21を参照して、伝達関数統合部4Xは、図19及び図20での第1ノイズ伝達関数81a及び第2ノイズ伝達関数82aのデータを入力されて、両者を統合した伝達関数データによりノイズ伝達関数Gon,Goffを出力する。伝達関数統合部4Xが、ノイズ伝達関数取得部4の後段に配置されることで、分割された伝達関数を統合することによってノイズ解析機能部1で用いるノイズ伝達関数を取得することができる。
図21には、ターンオンノイズ源及びターンオフノイズ源に対するノイズ伝達関数が個別である図10の構成において、伝達関数統合部4Xが適用される例が示されている。同様に、ターンオンノイズ源及びターンオフノイズ源に対するノイズ伝達関数が共通である図13の構成においても、伝達関数統合部4Xを適用して、ノイズ伝達関数Gcmnを取得することが可能である。
ノイズ伝達関数を複数に分けることで、ノイズ伝達関数を区間ごとに個別に導出することが可能となる。これにより、一部の区間の設計が変更されても、変更された区間分のノイズ伝達関数のみを導出しなおせばよく、ノイズ伝達関数の全体を導出しなおす必要がなくなる。この結果、ノイズ伝達関数のデータを準備する負荷を削減できる。
尚、ノイズ伝達関数の分割数は2に限定されるものではなく、3つ以上の任意の複数に分割されてもよい。この場合にも、図20と同様に、解析すべきノイズ源及びノイズ観測点の間での分割された複数の伝搬経路のそれぞれの伝達関数を適宜統合することで、ノイズ解析機能部1で用いるノイズ伝達関数(Gon,Goff,Gcmn)を取得することができる。
尚、ノイズ伝達関数の各ポートと、ノイズ源、ノイズ観測点、又は、中継点との接続対応関係は、ノイズ解析プログラムが備える結線設定用のインターフェースにおいて、結線図或いは対応表で定義することが可能である。ノイズ伝達関数取得部4は、解析すべきノイズ源及びノイズ観測点の間の伝搬経路を上記インターフェースに入力し、更に、必要に応じて伝達関数統合部4Xを配置することで、ノイズ解析に用いるノイズ伝達関数(Gon,Goff,Gcmn)を取得することができる。
次に、ノイズ解析対象回路の他の例と、実施の形態1に係るノイズ解析装置で得られた観測ノイズ計算結果の例を更に説明する。
図22は、図3とは異なる、ノイズ解析対象の他の一例を説明する回路図である。
図22の例では、解析対象回路200は、図3と同様のアームを構成する上アーム半導体素子101及び下アーム半導体素子102を有する。上アーム半導体素子101及び下アーム半導体素子102は、出力正極端子301及び出力負極端子302の間に直列接続される。
上アーム半導体素子101及び下アーム半導体素子102の接続点に対応する中間端子205は、リアクトル304を介して、入力正極端子201と接続される。一方で、図3と同様に、入力負極端子202は、下アーム半導体素子102の低電位側端子と接続され、キャパシタ204は、入力正極端子201及び入力負極端子202の間に接続される。出力負極端子302は、入力負極端子202と共通に、下アーム半導体素子102の低電位側端子と接続される。
負荷303は、出力正極端子301及び出力負極端子302の間に接続される。図22の構成では、下アーム半導体素子102は主にトランジスタとして動作し、上アーム半導体素子101は主にダイオードとして動作する。図3でも説明した様に、解析対象回路200は、直列接続された上アーム半導体素子及び下アーム半導体素子のセットを複数アーム分備えていてもよく、直列接続される半導体素子の数は2個に限らず任意の数とすることができる。或いは、解析対象回路200は、DCDCコンバータであってもよく、ACDCコンバータであってもよい。
図23には、ノイズ解析対象の更に他の一例が示される。
図23の例では、解析対象回路200は、入力正極端子201及び入力負極端子202の間に並列接続された、第1アーム401、第2アーム402、及び、第3アーム403を有する。第1アーム401、第2アーム402、及び、第3アーム403の各々は、入力正極端子201及び入力負極端子202の間に直列接続された、上アーム半導体素子及び下アーム半導体素子で構成される。第1アーム401、第2アーム402、及び、第3アーム403のそれぞれにおいて、上アーム半導体素子及び下アーム半導体素子の接続点に相当する中間端子411~413は、交流負荷405に接続される。即ち、図23の解析対象回路200は、三相インバータとして動作する。
この様に、解析対象回路200は、DCAC変換を行うインバータであってもよく、インバータの相数は3相に限らず任意の相数とすることができる。又、各アームで直列接続される半導体素子の数は2個に限らず任意の個数とすることが可能である。
図24には、図23に示された解析対象回路(三相インバータ)のスイッチング制御に対する観測ノイズ計算結果の例が示される。ここでは、三相インバータの各相アームを構成する半導体素子(ノイズ源)は、交流波形を変調信号とするPWM制御によってスイッチング制御されるものとして、ノイズ解析を行った。又、PWM制御における各半導体素子のスイッチング周波数は10[kHz]とした。インバータのPWM制御では、各半導体素子のスイッチング制御信号は、図7に例示されたスイッチング制御信号と同様に、オン期間長及びオフ期間長が変化することが知られている。
図24には、観測ノイズ計算結果RTNSとして得られた、各周波数でのノイズ強度を示す雑音端子電圧[dBV]がプロットされており、図25には、図24中の0.1「MHz]~0.5[MHz]領域の拡大図が示される。
スイッチング周波数が10[kHz]に固定されるスイッチング制御では、オン期間長が一定である場合には、10[kHz]の整数倍でノイズスペクトルの山が生じるため、スペクトルには10[kHz]間隔で凹凸が生じることになる。
しかしながら、PWM制御が適用される三相インバータ(図23)を対象とする、実施の形態1に係るノイズ解析によれば、図25に示される様に、上述の様な10[kHz]間隔の凹凸は発生していない。
即ち、上述した実施の形態1によれば、図7に示されたゲート信号に含まれる複数のパルスを直接フーリエ変換の対象とすることなく、オン期間長及びオフ期間長の変化を伴うスイッチング制御に対するノイズ解析を実現できることが理解される。
実施の形態2.
実施の形態1では、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形を区別してノイズ解析機能部1に入力したが、実施の形態2では、ノイズ解析機能部1の内部で、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形を分離可能とする構成について説明する。
図26は、実施の形態2に係るノイズ解析装置の構成例を説明するブロック図である。
図26を参照して、実施の形態2に係るノイズ解析装置のノイズ解析機能部1は、図2に示された実施の形態1での構成と比較して、ターンオン過渡波形取得部21及びターンオフ過渡波形取得部22に代えて、過渡波形取得部20を備える点と、ターンオンターンオフ分離部29を更に備える点で異なる。
過渡波形取得部20は、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形の両方が含まれた過渡波形を取得する。即ち、実施の形態2では、ノイズ解析機能部1(ノイズ解析装置)に対して入力する過渡波形から、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形を抽出する処理が不要となる。
図27には、図26に示されたターンオンターンオフ分離部29の構成例が示される。
図27を参照して、ターンオンターンオフ分離部29は、ターンオン時刻検出部31と、ターンオフ時刻検出部32と、ターンオン過渡波形出力部33と、ターンオフ過渡波形出力部34とを有する。
ターンオン時刻検出部31は、過渡波形取得部20によって得られた過渡波形に含まれる、時間経過に応じて変化する電圧値(例えば、図4及び図5中のVtr)が、予め定められた閾値と交差する様に低下した時刻に対応して半導体素子のターンオン時刻を検出する。ターンオン過渡波形出力部33は、過渡波形取得部20によって得られた過渡波形から、ターンオン時刻検出部31によって検出されたターンオン時刻を含む一定期間の過渡波形を抽出して、ターンオン過渡波形を出力する。
ターンオフ時刻検出部32は、過渡波形取得部20によって得られた過渡波形に含まれる、時間経過に応じて変化する電圧値(例えば、図4及び図5中のVtr)が、予め定められた閾値と交差する様に上昇した時刻に対応して半導体素子のターンオフ時刻を検出する。ターンオフ過渡波形出力部34は、過渡波形取得部20によって得られた過渡波形から、ターンオフ時刻検出部32によって検出されたターンオフ時刻を含む一定期間の過渡波形を抽出して、ターンオフ過渡波形を出力する。
ターンオン過渡波形出力部33及びターンオフ過渡波形出力部34からは、図2に、ターンオン過渡波形取得部21及びターンオフ過渡波形取得部22によって取得されたのと同様のターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形がそれぞれ出力される。出力されたターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形は、図26のフーリエ変換部23及び24にそれぞれ入力される。或いは、ターンオン過渡波形出力部33及びターンオフ過渡波形出力部34から出力されたターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形は、図34の位相変換部14c,14dへ入力することもできる。
尚、過渡波形が、時間経過に応じて変化する電流値(例えば、図6中のItr)を含む場合には、ターンオン時刻検出部31は、閾値と交差する電流値の上昇に応じてターンオン時刻を検出する様に構成され、ターンオフ時刻検出部32は、閾値と交差する電流値の低下に応じてターンオフ時刻を検出する様に構成することができる。
再び図26を参照して、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形を取得するための構成以外は、実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
この様に、実施の形態2に係るノイズ解析技術によれば、ノイズ解析機能部1(ノイズ解析装置)に対して入力する過渡波形について、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形を分けて準備する工程を不要とすることができる。
実施の形態3.
一般的に、ノイズを実測するノイズ測定器の分解能帯域幅(Resolution Band Width)が、ノイズ源となる半導体素子のスイッチング周波数よりも高くなる程、測定ノイズは大きく現れることが知られている。実施の形態3では、ノイズ観測点で想定される分解能帯域幅を考慮したノイズ解析技術について説明する。
図28は、実施の形態3に係るノイズ解析装置の構成例を説明するブロック図である。
図28を図2と比較して、実施の形態3に係るノイズ解析装置のノイズ解析機能部1は、測定器パラメータ取得部5を更に備える点が異なる。
そして、観測ノイズ計算部10では、測定器パラメータ取得部5によって取得された、ノイズ観測点で想定される分解能帯域幅に係る情報を反映したノイズ解析を行うために、図29に示された構成を更に備える。代表的には、当該情報は、ノイズ観測点において用いられるノイズ測定器の分解能帯域幅を含む。ノイズ測定器としては、スペクトラムアナライザ、又は、EMI(Electro Magnetic Interference)レシーバ等を適用することができる。実施の形態3に係る図28のその他の部分の構成及び動作は、図2(実施の形態1)と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図29は、実施の形態3に係るノイズ解析において観測ノイズ計算部10に追加される機能を説明するためのブロック図である。
図29を参照して、実施の形態3に係る観測ノイズ計算部10は、重み付け演算機能部40を更に含む。重み付け演算機能部40は、窓関数計算部41と、重み付け係数設定部42と、乗算部43,44とを有する。
窓関数計算部41は、時間範囲設定部14(図11)からのノイズ解析対象期間の開始時間Tstr~終了時間Tendの情報に基づき、窓関数w(t)を設定する。窓関数w(t)は、ノイズ解析対象期間外ではw(t)=0に設定される。窓関数w(t)は、ノイズ解析対象期間の端部で値が小さく、中心部で値が大きくなるような形状で設定される。
更に、実施の形態3では窓関数w(t)の形状は、測定器パラメータ取得部5によって取得された分解能帯域幅に基づいて、ノイズ測定器等によるノイズ観測における周波数分解能と一致する様に設定される。例えば、予め定められた総合選択度特性に従って、窓関数w(t)をフーリエ変換したときに、直流成分が0[dB]となり、分解能帯域幅の半分の値の周波数の成分が、-6[dB]又は-3[dB]となるように、窓関数w(t)の形状を定めることができる。
重み付け係数設定部42には、窓関数計算部41によって設定された窓関数w(t)と、時間範囲設定部14(図11)からのノイズ解析対象期間内でのターンオン時刻ton(i)及びターンオフ時刻toff(i)とが入力される。
重み付け係数設定部42は、ターンオン時刻ton(i)のそれぞれにおける窓関数w(t)の値を、各ターンオン時刻における重み付け係数WGon(i)として出力する。同様に、重み付け係数設定部42は、ターンオフ時刻toff(i)のそれぞれにおける窓関数w(t)の値を、各ターンオフ時刻での重み付け係数WGoff(i)として出力する。
乗算部43は、ターンオン時刻ton(i)に係るターンオンノイズ源データに対して、対応する重み付け係数WGon(i)を乗算する。同様に、乗算部44は、ターンオフ時刻toff(i)に係るターンオフノイズ源データに対して、対応する重み付け係数WGoff(i)を乗算する。
図29において、ターンオンノイズ源データは、観測ノイズ計算部10の内部において、ターンオンノイズ源スペクトルSPNonに対してターンオン時刻ton(i)を区別するための情報(位相変換部14aの出力値)を反映した後のデータを包括するものである。同様に、ターンオフノイズ源データは、観測ノイズ計算部10の内部において、ターンオフノイズ源スペクトルSPNoffに対してターンオフ時刻toff(i)を区別するための情報(位相変換部14bの出力値)を反映した後のデータを包括するものである。
図29において、測定器パラメータ取得部5は「第4取得部」の一実施例に対応する。又、乗算部43,44によって「第2乗算部」の機能が実現される。
尚、重み付け係数WGon(i),WGoff(i)は、時間領域のノイズ源データに対して乗算されることによって、ターンオン観測ノイズNSon(i)及びターンオフ観測ノイズNSoff(i)に反映されてもよい。例えば、図34の構成において、位相変換部14c,14dに対して、ターンオン時刻ton(i)及びターンオフ時刻toff(i)のそれぞれにおける重み付け係数WGon(i),Goff(i)を入力することができる。そして、位相変換部14c、14dは、時間領域で位相差が付与されたターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形と、重み付け係数WGon(i)及びGoff(i)のそれぞれの乗算結果を、フーリエ変換部23及び24に対して出力することができる。
又、周波数領域で反映される重み付け係数WGon(i),Goff(i)について、乗算部43,44(第2乗算部)は、図29の例に対して、図11等に示された乗算部12,13,15,16(第1乗算部)と順序を入れ替えても、乗算部12,13,15,16によって算出される乗算値に対して、重み付け係数WGon(i),WGoff(i)を同様に反映することができる。即ち、これらの乗算値には、任意の過程にて、ノイズ伝達関数を乗算可能であることが、図11等での説明から明らかである。
この結果、加算部17では、i回目パルスの観測ノイズNS(i)について、窓関数w(t)の形状に対応した重み付け係数WGon(i),WGoff(i)が乗算された値を算出することができる。従って、最終的に算出される観測ノイズ計算結果RTNSについても、ノイズ解析対象期間内における各ターンオン時刻及び各ターンオフ時刻の位置を考慮した重み付けを伴って算出することができる。特に、実施の形態3では、重み付け係数の設定にノイズ測定器の分解能帯域幅を反映することで、当該分解能帯域幅を考慮した解析ノイズ計算結果を得ることができる。
尚、図29の構成例においても、加算部17及び18のそれぞれによる加算の順序を入れ替えても、同じ観測ノイズ計算結果RTNSが得られることについて確認的に記載する。即ち、加算部18によるN回分の加算演算結果に対して、加算部17によるターンオンノイズ及びターンオフノイズの加算演算を実行する構成とすることも可能である。
図30は、実施の形態3に係るノイズ解析による観測ノイズ計算結果の一例を示すスペクトル図である。図30には、30[MHz]以下では分解能帯域幅を9[kHz]とし、30[MHz]以上では分解能帯域幅を120[kHz]として得られた観測ノイズ計算結果RTNSがプロットされている。尚、ノイズ源となる半導体素子のスイッチング周波数は、図24と同様に10[kHz]としている。
図30に示される様に、分解能帯域幅がスイッチング周波数よりも高くなる30[MHz]以上の周波数領域では、ノイズが大きく現れる計算結果が得られている。この結果より、ノイズ測定器の分解能帯域幅の影響を考慮した、高精度のノイズ解析が可能となることが理解される。
尚、図29において、ノイズ測定のパラメータ(分解能帯域幅)を反映せずに窓関数w(t)を設定する構成を、実施の形態1又は2と組みわせることも可能である。この場合にも、ノイズ解析対象期間内における各ターンオン時刻及び各ターンオフ時刻の位置を考慮した重み付けを行うことで、ノイズ解析を高精度化することができる。
実施の形態4.
実施の形態1~3では、各ターンオン時刻ton(i)でのターンオンノイズ源スペクトルSPNonは共通とされ、かつ、各ターンオフ時刻toff(i)でのターンオフノイズ源スペクトルSPNoffも共通として、観測ノイズ計算結果RTNSの演算が実行されていた。
一方で、半導体素子のスイッチングに伴って発生するノイズ源スペクトルは、スイッチングされる電流(負荷電流)に依存して変化する。例えば、負荷電流が小さくなるとスイッチング時の半導体素子の電流変化が小さくなり、それに伴い半導体素子の電圧変化が始まる時刻や電圧変化の勾配が変化する。従って、実施の形態4では、半導体素子のターンオン時刻及びターンオフ時刻での負荷電流を更に反映したノイズ解析技術について説明する。
図31は、実施の形態4に係るノイズ解析装置の構成例を説明するブロック図である。
図31を参照して、実施の形態4に係るノイズ解析装置のノイズ解析機能部1は、図2に示された実施の形態1での構成と比較して、負荷電流波形取得部6を更に備える点で異なる。負荷電流波形取得部6は、ノイズ解析対象期間を含む時間範囲における負荷電流波形(時間軸)を取得する。
更に、実施の形態4では、ターンオン過渡波形取得部21及びターンオフ過渡波形取得部22は、負荷電流が異なる複数個ずつのターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形を取得する。図31では、J個(J:2以上の自然数)ずつのターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形が取得されて、それぞれがフーリエ変換部23,24に入力される。この結果、負荷電流レベルが異なる、J個ずつのターンオンノイズ源スペクトル及びターンオフノイズ源スペクトルが、観測ノイズ計算部10に入力される。
実施の形態4では、観測ノイズ計算部10内に、図32に示される、ノイズ源スペクトル補正部60の機能が追加される。
図32を参照して、ノイズ源スペクトル補正部60は、負荷電流値取得部61,62と、補間計算機能部65,66とを含む。
負荷電流値取得部61は、負荷電流波形取得部6によって取得された負荷電流波形(時間軸)と、時間範囲設定部14(図11)からのターンオン時刻ton(i)とが入力される。負荷電流値取得部61は、ターンオン時刻ton(i)のそれぞれにおける負荷電流波形の電流値を、各ターンオン時刻における負荷電流値X(i)として出力する。負荷電流値X(i)は、補間計算機能部65に入力される。
更に、補間計算機能部65には、異なるJ個の負荷電流値X1~XJのそれぞれにおけるターンオンノイズ源スペクトルがフーリエ変換部23から入力される。
補間計算機能部65は、負荷電流値X1~XJと、入力された負荷電流値X(i)の関係に基づき、負荷電流値X1~XJのそれぞれにおけるターンオンノイズ源スペクトルから、負荷電流値X(i)に対応するターンオンノイズ源スペクトルSPNonを出力する。
例えば、負荷電流値X1~XJのうちの、負荷電流値X(i)と最も近い2個の負荷電流値に対応するターンオンノイズ源スペクトルを用いた内挿又は外挿による線形補間によって、負荷電流値X(i)に対応するターンオンノイズ源スペクトルSPNonを求めることができる。
この結果、補間計算機能部65は、ターンオン時刻ton(i)の各々に対応して、当該タイミングでの負荷電流値X(i)に依存したターンオンノイズ源スペクトルSPNonを算出することができる。
同様に、負荷電流値取得部62には、負荷電流波形取得部6からの負荷電流波形(時間軸)と、時間範囲設定部14(図11)からのターンオフ時刻toff(i)とが入力される。負荷電流値取得部62は、ターンオフ時刻toff(i)のそれぞれにおける負荷電流波形の電流値を、各ターンオフ時刻における負荷電流値X(i)として出力する。負荷電流値X(i)は、補間計算機能部66に入力される。
更に、補間計算機能部66には、異なるJ個の負荷電流値X1~XJのそれぞれにおけるターンオフノイズ源スペクトルがフーリエ変換部24から入力される。
補間計算機能部66は、負荷電流値X1~XJと、入力された負荷電流値X(i)の関係に基づき、負荷電流値X1~XJのそれぞれにおけるターンオフノイズ源スペクトルから、負荷電流値X(i)に対応するターンオフノイズ源スペクトルSPNoffを出力する。
例えば、負荷電流値X1~XJのうちの、負荷電流値X(i)と最も近い2個の負荷電流値に対応するターンオフノイズ源スペクトルを用いた内挿又は外挿による線形補間によって、負荷電流値X(i)に対応するターンオフノイズ源スペクトルSPNoffを求めることができる。
この結果、補間計算機能部66は、ターンオフ時刻toff(i)の各々に対応して、当該タイミングでの負荷電流値X(i)に依存したターンオフノイズ源スペクトルSPNoffを算出することができる。尚、補間計算機能部65,66による補間計算は、上述の線形補間に限られるものではない。例えば、n次のスプライン補間(n:n>2の自然数)によって、負荷電流値X(i)毎のターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffを求めることも可能である。
この様に、実施の形態4では、ノイズ源スペクトル補正部60により、各ターンオン時刻ton(i)及び各ターンオフ時刻toff(i)において、ターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffを、各タイミングでの負荷電流に依存して算出することができる。
実施の形態4に係るノイズ解析技術では、ノイズ源スペクトル補正部60によって求められたターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffを用いて、実施の形態1~3で説明した観測ノイズ計算結果RTNSを導出する演算が実行される。この際には、図11等での1回目~N回目(i:1~N)のそれぞれの観測ノイズの計算で用いられるターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffは、負荷電流X(i)の違いによって異なり得ることになる。
この様に、実施の形態4に係るノイズ解析技術によれば、ノイズ源(半導体素子)からのノイズ強度の負荷電流依存性を考慮することが可能となるので、ノイズ解析を更に高精度化することができる。
尚、実施の形態2~4については、実施の形態1で変形例として説明した図13、図14、図21等と組み合わせることが可能である。
(ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算するノイズ解析装置及びノイズ解析方法)
実施の形態1~4では、半導体スイッチング素子のスイッチングによって生じるノイズの合計スペクトルとして、ノイズ伝達関数(Gon,Goff,Gcmn)の乗算を含んだ観測ノイズ計算結果RTNSが算出されるノイズ解析装置の例を説明した。しかしながら、PWM波形等で半導体素子のオン期間長及びオフ期間長が変化する挙動を反映するために、ターンオン及びターンオフをそれぞれ複数個含んだスイッチング複数周期分の過渡波形をフーリエ変換してノイズ解析を行うことで、フーリエ変換の対象となる時間幅が増大する課題を考慮すると、実施の形態1~4において、ノイズ伝達関数の乗算を含まない観測ノイズ計算結果RTNSが、上記合計スペクトルとして算出される構成としても、上記課題については解決できることが理解される。ノイズ伝達関数の乗算を含まない観測ノイズとは、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズに相当する。この場合には、算出された観測ノイズ計算結果RTNSに対して、ノイズ伝達関数(Gon,Goff,Gcmn)を乗算することで、実施の形態1~4と同様の観測ノイズ計算結果RTNSを得ることができる。
従って、上述の実施の形態1~4に係るノイズ解析装置については、ノイズ伝達関数の乗算要素を除く態様で、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算する様に動作しても、上述の効果が達成される。以下に説明する図35,図39~42に示されるノイズ解析機能部1Yに含まれる各ブロックの機能が、情報処理装置51による演算処理によって実現されることにより、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算するノイズ解析装置又はノイズ解析方法が実行されることとなる。
図35は、本実施の形態に係る、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算するノイズ解析装置の第1の構成例を説明するブロック図である。
図35を参照して、本実施の形態に係るノイズ解析機能部1Yは、第1の構成例では、図2に示されたノイズ解析機能部1から、ノイズ伝達関数取得部4を除いた構成を有している。更に、図35の観測ノイズ計算部10は、図36に示される様に、図10及び図11の合計計算部10Xに代えて、合計計算部10Zを有する様に構成される。
図37には、図36に示された合計計算部10Zの構成が示される。
図37に示される様に、合計計算部10Zは、図11に示された合計計算部10Xと比較すると、ノイズ伝達関数取得部4からのノイズ伝達関数Gon,Goffを乗算するための乗算部12,13と、加算部17との配置が省略される点で異なる。
この結果、図37では、位相差情報が反映されたターンオンノイズ源スペクトルSPNon及びターンオフノイズ源スペクトルSPNoffに対して、ノイズ伝達関数Gon,Goffが乗算されることなく、i回目のターンオン観測ノイズNSon(i)及びi回目のターンオフ観測ノイズNSoff(i)の各々が、「位相変換された複数のノイズスペクトル」として算出される。
図37では、加算部18は、第1回から第N回のNSon(1)~NSon(N)の加算値ΣNSon(i)と、第1回から第N回のNSoff(1)~NSoff(N)の加算値ΣNSoff(i)とを個別に算出する。これにより、この結果、図37の合計計算部10Zでは、ターンオンノイズ源スペクトルに係るΣNSon(i)と、ターンオフノイズ源スペクトルに係るΣNSoff(i)とが、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズ計算結果RTNSとして算出される。この場合、ΣNSon(i)及びΣNSoff(i)が位相変換された複数のノイズスペクトルを加算した合計スペクトルに相当する。これに対して、実施の形態1~4では、ノイズ伝達関数が乗算され、かつ、位相変換された複数のノイズスペクトルを加算した合計スペクトルが、観測ノイズ計算結果RTNSとして算出されていることが理解される。図37中において矢印に斜線を付している様に、ターンオンに係るNSon(1)~NSon(N)と、ターンオフに係るNSoff(1)~NSoff(N)とは、加算部18の入力において別個に取り扱われており、この結果、加算部18からは、ΣNSon(i)とΣNSoff(i)とが個別に出力される。
又、図37の合計計算部10Zについては、図34の構成を適用した時間領域において位相変換を実行する変形例とすることも可能である。具体的には、図37の構成において、位相変換部14a,14b及び乗算部15,16を削除して、図34のフーリエ変換部23によってフーリエ変換されたN回分のターンオン観測ノイズNSon(i)と、フーリエ変換部24によってフーリエ変換されたN回分のターンオフ観測ノイズNSoff(i)とを加算部18に入力することで、同様のΣNSon(i)及びΣNSoff(i)を、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズ計算結果RTNSとして算出することができる。
同様に、ターンオン時及びターンオフ時に共通に設定されるノイズ伝達関数Gcmnを用いる図13の構成についても、図38に示される様に、ノイズ伝達関数の乗算を除くことで、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算するノイズ解析装置として動作させることができる。
図38を参照して、図35の観測ノイズ計算部10は、図13の構成から乗算部12Yを削除し、更に、合計計算部10Yに代えて、合計計算部10Y′を有する様に構成することができる。
合計計算部10Y′は、図37の合計計算部10Zにおいて、加算部18によって、第1回から第N回のNSon(1)~NSon(N)の加算演算と、第1回から第N回のNSoff(1)~NSoff(N)の加算演算とを実行し、更に、図11等と同様の加算部17を設けて、ターンオンノイズ及びターンオフノイズの加算演算を行うことによって構成できる。これにより、図37でのΣNSon(i)及びΣNSoff(i)の和に相当するΣNS(i)を、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズ計算結果RTNSとして出力することができる。この場合、ΣNS(i)が位相変換された複数のノイズスペクトルを加算した合計スペクトルに相当する。
この際にも加算部17及び18による加算の順序を入れ替えても、同じ観測ノイズ計算結果RTNSを算出することが可能である。即ち、加算部17によるターンオンノイズ及びターンオフノイズの加算演算によって「NSon(i)+NSoff(i)」をN回分算出した後に、加算部18によって、「NSon(1)+NSoff(1)」~「NSon(N)+NSoff(N)」の総和を求める構成としても、上記と同じΣNS(i)を、観測ノイズ計算結果RTNSとして算出することができる。
図38においても、図34の構成を適用した時間領域において位相変換を実行する変形例とすることが可能である。具体的には、位相変換部14a,14b及び乗算部15,16を削除して、図38の構成において、合計計算部10Y′への入力を、図34のフーリエ変換部23によってフーリエ変換されたN回分のターンオン観測ノイズNSon(i)と、フーリエ変換部24によってフーリエ変換されたN回分のターンオフ観測ノイズNSoff(i)とすることで、同様のΣNS(i)を、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズ計算結果RTNSとして算出することができる。
上述の様に、本実施の形態に係るノイズ解析機能部1Yによる観測ノイズ計算結果RTNS(即ち、ノイズ伝達関数の乗算を含まない合計スペクトル)は、例えば、ノイズ解析装置の外部において、ノイズ伝達関数(Gon,Goff,Gcmn)と乗算することで、実施の形態1~4と同様の観測ノイズ計算結果RTNSを得ることができる。即ち、図35~図42を用いて説明した、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算するノイズ解析装置と、実施の形態1~4でのノイズ伝達関数取得部4及び乗算要素(乗算部12,13,12Y)とによって、実施の形態1~4と同様のノイズ解析装置を構成することができる。
この様に、本実施の形態に係るノイズ解析装置は、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算する態様で構成しても、オン期間長及びオフ期間長が変化することで位相が変化する挙動を反映した合計スペクトルを、観測ノイズ計算結果RTNSとして出力することができる。この際に、フーリエ変換の対象となる時間幅の増大によるフーリエ変換の所要時間の増大を抑制して、ノイズ解析の高速化を実現することができる。
図39に示される、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算するノイズ解析装置の第2の構成例では、ノイズ解析機能部1Yは、図14に示されたノイズ解析機能部1からノイズ伝達関数取得部4を除いた構成を有する。これにより、観測ノイズ計算部10からは、ノイズ伝達関数(Gon,Goff,Gcmn)の乗算を含まない、位相変換された複数のノイズスペクトルの合計値(合計スペクトル)を、観測ノイズ計算結果RTNSとして算出することができる。
同様に、図40~図42に示される様に、実施の形態2~4に係るノイズ解析装置の構成を基に、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算するノイズ解析装置を構成することも可能である。
ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算するノイズ解析装置(図40)の第3の構成例では、ノイズ解析機能部1Yは、図26(実施の形態2)に示されたノイズ解析機能部1から、ノイズ伝達関数取得部4が除かれた構成を有する。これにより、ノイズ伝達関数(Gon,Goff,Gcmn)の乗算を含まない、位相変換された複数のノイズスペクトルを加算した合計スペクトルに相当する観測ノイズ計算結果RTNSを算出することができる。
又、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算するノイズ解析装置の第4の構成例(図41)では、ノイズ解析機能部1Yは、図28(実施の形態3)に示されたノイズ解析機能部1から、ノイズ伝達関数取得部4が除かれた構成を有する。これにより、図35、図39及び、図40と同様に、ノイズ伝達関数(Gon,Goff,Gcmn)の乗算を含まない、位相変換された複数のノイズスペクトルを加算した合計スペクトルに相当する観測ノイズ計算結果RTNSを算出することができる。
同様に、ノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算するノイズ解析装置の第5の構成例(図42)では、ノイズ解析機能部1Yは、図31(実施の形態4)に示されたノイズ解析機能部1から、ノイズ伝達関数取得部4が除かれた構成を有する。これにより、図35及び図39~図41と同様に、ノイズ伝達関数(Gon,Goff,Gcmn)の乗算を含まない、位相変換された複数のノイズスペクトルを加算した合計スペクトルに相当する観測ノイズ計算結果RTNSを算出することができる。図39~図42の各々において、観測ノイズ計算部10は、図36~図38で説明したのと同様に構成することができる。
この様に、既に説明した実施の形態1~4の各々は、図35~図42を用いて説明したノイズ源をノイズ観測点とした観測ノイズを計算するノイズ解析装置についても開示している。ノイズ源をノイズ観測点とした場合においても、該ノイズ解析装置は、フーリエ変換の対象となる時間幅の増大によるフーリエ変換の所要時間の増大を抑制して、オン期間長及びオフ期間長が変化することで位相が変化する挙動を反映した合計ノイズスペクトルを、観測ノイズ計算結果RTNSとして出力することができる。これにより、ノイズ解析の長時間化を防止して、最終的な観測ノイズの計算結果を高速かつ正確に導出することが可能なノイズ解析技術を提供することが可能となる。
尚、以上で説明した複数の実施の形態について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不整合や矛盾が生じない範囲内で、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている点について、確認的に記載する。
又、以上の実施の形態では、ターンオンノイズ源及びターンオフノイズ源の両方からのノイズを解析する構成例、即ち、半導体素子のターンオン及びターンオフの両方が含まれる「スイッチング」によって生じるノイズについての観測ノイズを計算するノイズ解析技術を説明した。即ち、本実施の形態では、ターンオン時刻ton(i)及びターンオフ時刻toff(i)の両方を「複数の発生時刻」として、本開示に係るノイズ解析が実行される例を説明した。
一方で、半導体素子のターンオン起因ノイズとターンオフ起因ノイズとのいずれか一方が支配的に観測されるケースも想定される。この様なケースでは、支配的で無い方のノイズ源については考慮せずに、ノイズ解析を行うことも可能である。
例えば、ターンオン時のノイズが支配的である場合には、ターンオフノイズ源については考慮せずに、即ち、NSoffの項は削除して、観測ノイズ計算結果RTNSを算出することができる。この場合には、ノイズ解析機能部1から、ターンオフ過渡波形、又は、ターンオフノイズ源スペクトルを取得するための構成が削除されてもよい。この様に、本実施の形態に係るノイズ解析技術(ノイズ解析技術及びノイズ解析方法)は、半導体素子のターンオン及びターンオフの少なくとも一方である「スイッチング」によって生じるノイズについての観測ノイズの計算に適用することが可能である。この場合には、ターンオン時刻ton(i)及びターンオフ時刻toff(i)の一方のみが「複数の発生時刻」をとして、本開示に係るノイズ解析が実行されることになる。
又、図1では、情報処理装置51によって、本実施の形態に係るノイズ解析技術を実行するためのプログラム(ノイズ解析プログラム)が実行されることで、ノイズ解析装置が実現される構成例を説明したが、当該ノイズ解析プログラムは、図1中の情報処理装置53、又は、クラウド54で実行されてもよい。或いは、ノイズ解析装置として動作するノイズ解析プログラムの実行は、複数の装置間で分担されてもよい。即ち、情報処理装置51及び53、並びに、クラウド54の一部又は全部によって、ノイズ解析プログラムが分担実行されることで、ノイズ解析装置が構成されてもよい。
更に、ターンオン過渡波形及びターンオフ過渡波形のデータ(時間領域或いは周波数領域)、スイッチング制御信号のデータ、及び、ノイズ伝達関数のデータの保存場所は、情報処理装置51,53、及びクラウド54のいずれであってもよい。同様に、観測ノイズ計算結果RTNSの保存先についても、情報処理装置51に限らず、情報処理装置53及び/又はクラウド54であってもよい。
同様に、観測ノイズ計算結果RTNSの表示先についても、情報表示装置52に限らず、情報処理装置53の情報表示装置、及び、クラウド54の仮想的な情報表示環境のいずれであってもよい。仮想的な情報表示環境の内容は、例えば、情報処理装置51がクラウド54にアクセスすることで、情報表示装置52で表示することができる。
この様に、本実施の形態に係るノイズ解析技術に係る処理を複数の実行主体で分担することにより、情報処理装置51のデータ保存性能又は処理性能が高くなくとも、容易にノイズ解析を実施することが可能となる。特に、クラウド54を活用することにより、半導体素子のオン期間長及びオフ期間長が変化する場合であってもノイズを高速かつ正確に導出するノイズ解析技術(ノイズ解析プログラム)を、ノイズ解析サービスとして多くのユーザに簡便にネットワーク経由で提供することが可能となる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。