JP7412703B2 - 熱流スイッチング素子 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 2019年7月2日韓国で開催の「38th Annual International Conference on Thermoelectrics and 4th Asian Conference on Thermoelectrics(ICT/ACT2019)」にて公開 2019年9月4日公益社団法人応用物理学会『第80回応用物理学会秋期学術講演会 講演予稿集』にて公開 2019年10月24日下記アドレスにて公開 http://www.thermoelectrics.jp/zata/matetra/paper/TSJ_matsunaga_20191024JA.pdf 2019年11月21日学校法人トヨタ学園豊田工業大学『スマートエネルギー技術研究センター第12回シンポジウム プログラム予稿集』にて公開 2019年12月1日一般社団法人日本MRS『MATERIALS RESEARCH MEETING 2019 講演予稿集』にて公開
本発明は、バイアス電圧で熱伝導を能動的に制御可能な熱流スイッチング素子に関する。
従来、熱伝導率を変化させる熱スイッチとして、例えば特許文献1には、熱膨張率の異なる2つの熱伝導体を軽く接触させて温度勾配の方向によって熱の流れ方が異なるサーマルダイオードが記載されている。また、特許文献2にも、熱膨張による物理的熱接触を使った熱スイッチである放熱装置が記載されている。
また、特許文献3には、化合物に電圧を印加させることで起こる可逆的な酸化還元反応により熱伝導率が変化する熱伝導可変デバイスが記載されている。
さらに、非特許文献1には、ポリイミドテープを2枚のAg0.6Se0.4で挟み込んで電場を印加することで熱伝導度を変化させる熱流スイッチング素子が提案されている。
特許第2781892号公報 特許第5402346号公報 特開2016-216688号公報
松永卓也、他4名、「バイアス電圧で動作する熱流スイッチング素子の作製」、第15回日本熱電学会学術講演会、2018年9月13日
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1及び2に記載の技術では、熱膨張による物理的熱接触を使うため、再現性が得られず、特に微小変化であるためサイズ設計が困難であると共に、機械接触圧による塑性変形を回避することができない。また、材料間の対流熱伝達の影響が大き過ぎる問題があった。
また、特許文献3に記載の技術では、化学反応である酸化還元反応を用いており、熱応答性に劣り、熱伝導が安定しないという不都合があった。
これらに対して非特許文献1に記載の技術では、電圧を印加することで、材料界面に熱伝導可能な電荷を生成し、その電荷によって熱を運ぶことができるため、熱伝導が変化した状態に直ちに移行でき、比較的良好な熱応答性を得ることができる。しかしながら、生成される電荷の量が少ないため、より生成される電荷の量を増大させ、熱伝導率の変化がさらに大きい熱流スイッチング素子が望まれている。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、熱伝導率の変化がより大きく、優れた熱応答性を有する熱流スイッチング素子を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る熱流スイッチング素子は、少なくとも上面が絶縁体で形成された基材と、前記基材上にパターン形成されたN型半導体膜とを備え、前記N型半導体膜と前記P型半導体膜とが、互いに間隔を空けて対向配置されていることを特徴とする。
この熱流スイッチング素子では、N型半導体膜とP型半導体膜とが、互いに間隔を空けて対向配置されているので、N型半導体膜とP型半導体膜とに電圧を印加すると、P型半導体膜及びN型半導体膜と基材上面との主に界面に電荷が誘起され、この電荷が熱を運ぶことで熱伝導率が変化する。特に、N型半導体膜と基材との界面及びその近傍と、P型半導体膜と基材との界面及びその近傍との両方で、外部電圧により誘起された電荷が生成されるため、生成される電荷量が多く、熱伝導率の大きな変化と高い熱応答性とを得ることができる。
また、外部電圧の大きさに乗じて、界面に誘起される電荷量が変化するので、外部電圧を調整することで、熱伝導率を調整することが可能となるので、本素子を介して、熱流を能動的に制御可能となる。
なお、基材上面が絶縁体であり、電圧印加に伴う電流が発生しないため、ジュール熱は生じない。そのため、自己発熱することなく、熱流を能動的に制御可能となる。
第2の発明に係る熱流スイッチング素子は、第1の発明において、前記N型半導体膜と前記P型半導体膜とが、互いに対向方向に突出した複数の櫛部を有した櫛形とされ、前記N型半導体膜の櫛部と前記P型半導体膜の櫛部とが、交互に並んで配されていることを特徴とする。
すなわち、この熱流スイッチング素子では、N型半導体膜の櫛部とP型半導体膜の櫛部とが、交互に並んで配されているので、隣接する櫛部間で電圧が印加されることで、複数の櫛部と基材との界面及びその近傍で電荷が生成され、多くの電荷を得ることができる。
第3の発明に係る熱流スイッチング素子は、第2の発明において、前記基材と前記N型半導体膜と前記P型半導体膜とを備えた単位素子部を複数備え、複数の前記単位素子部が、互いに上下に積層されて接合され、互いの前記N型半導体膜が電気的に接続されていると共に、互いの前記P型半導体膜が電気的に接続されていることを特徴とする。
すなわち、この熱流スイッチング素子では、複数の単位素子部が、互いに上下に積層されて接合され、互いのN型半導体膜が電気的に接続されていると共に、互いのP型半導体膜が電気的に接続されているので、積層され接合された単位素子部同士の並列回路が構成されて、単位素子部の接合数に応じてさらに電荷の生成を増大させることができる。
第4の発明に係る熱流スイッチング素子は、第3の発明において、上下に直接接合された前記単位素子部のうち一方の前記N型半導体膜の前記櫛部が、他方の前記P型半導体膜の前記櫛部の直下又は直上に配されていると共に、上下に直接接合された前記単位素子部のうち一方の前記P型半導体膜の前記櫛部が、他方の前記N型半導体膜の前記櫛部の直下又は直上に配されていることを特徴とする。
すなわち、この熱流スイッチング素子では、上下に直接接合された単位素子部のうち一方のN型半導体膜の櫛部が、他方のP型半導体膜の櫛部の直下又は直上に配されていると共に、上下に直接接合された単位素子部のうち一方のP型半導体膜の櫛部が、他方のN型半導体膜の櫛部の直下又は直上に配されているので、直接接合された単位素子部の櫛部が上下方向で、絶縁体層(基材)を介したP型半導層とN型半導体層が構成されており、電荷の正負(P型N型)が反転している。このため、面内方向だけでなく接合方向にも電荷が生成されることで、より多くの電荷を得ることができる。なお、この接合方向における電荷生成効果は、基材を薄く設定するほど得ることができる。
第5の発明に係る熱流スイッチング素子は、第3又は第4の発明において、前記単位素子部が、前記N型半導体膜に接続されたN側電極と、前記P型半導体膜に接続されたP側電極とを前記基材上に備え、複数の前記単位素子部の前記N側電極が、互いに前記基材に形成されたN側スルーホールを介して接続され、複数の前記単位素子部の前記P側電極が、互いに前記基材に形成されたP側スルーホールを介して接続されていることを特徴とする。
すなわち、この熱流スイッチング素子では、複数の単位素子部のN側電極が、互いに基材に形成されたN側スルーホールを介して接続され、複数の単位素子部のP側電極が、互いに基材に形成されたP側スルーホールを介して接続されているので、積層され接合された単位素子部同士がN側スルーホール及びP側スルーホールを介して容易に並列回路を構成することができる。
第6の発明に係る熱流スイッチング素子は、第1から5の発明のいずれかにおいて、前記基材の両端部に、前記基材よりも熱伝導性の高い材料で形成した高熱伝導部が設けられていることを特徴とする。
すなわち、この熱流スイッチング素子では、基材の両端部に、基材よりも熱伝導性の高い材料で形成した高熱伝導部が設けられているので、熱流方向を両端部間の方向に設定することができる。
第7の発明に係る熱流スイッチング素子は、第1から6の発明のいずれかにおいて、前記基材の少なくとも上面が誘電体で形成されていることを特徴とする。
すなわち、この熱流スイッチング素子では、基材の少なくとも上面が誘電体で形成されているので、N型半導体膜及びP型半導体膜と基材との界面において誘電体である基材上面側にも電荷が生成され、より熱伝導率の大きな変化と高い熱応答性とを得ることができる。また、化学反応機構を用いない、物理的に熱伝導率を変化させる機構であるので、熱伝導が変化した状態に直ちに移行でき、良好な熱応答性を得ることができる。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る熱流スイッチング素子によれば、N型半導体膜とP型半導体膜とが、互いに間隔を空けて対向配置されているので、N型半導体膜と基材との界面及びその近傍と、P型半導体膜と基材との界面及びその近傍との両方で、外部電圧印加により電荷が生成されるため、生成される電荷量が多く、熱伝導率の大きな変化と高い熱応答性とを得ることができる。
本発明に係る熱流スイッチング素子の第1実施形態を示す斜視図である。 第1実施形態において、原理を説明するための概念図である。 本発明に係る熱流スイッチング素子の第2実施形態を示す分解斜視図である。 第2実施形態において、熱流スイッチング素子を示す斜視図である。 本発明に係る熱流スイッチング素子の第3実施形態を示す分解斜視図である。
以下、本発明に係る熱流スイッチング素子における第1実施形態を、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部を認識可能又は認識容易な大きさとするために必要に応じて縮尺を適宜変更している。
本実施形態の熱流スイッチング素子1は、図1及び図2に示すように、少なくとも上面が絶縁体で形成された基材2と、基材2上にパターン形成されたN型半導体膜3と、基材2上にパターン形成されたP型半導体膜5とを備え、N型半導体膜3とP型半導体膜5とが、互いに間隔を空けて対向配置されている。
成膜方法は、スパッタリング法、分子線エピタキシー法(MBE法)等、各種成膜手法が採用される。また、エッチングプロセス、メタルマスク等を用いて、基材2上に、N型半導体層3及びP型半導体層5がパターン形成されている。
さらに、本実施形態の熱流スイッチング素子1は、N型半導体層3に接続されたN側電極6と、P型半導体層5に接続されたP側電極7とを基材2上に備えている。
なお、N型半導体層3及びP型半導体層5に直接電圧を印加可能な場合は、N側電極6及びP側電極7が不要である。すなわち、N型半導体層3及びP型半導体層5に直接ワイヤーボンディングしたり、リード線を接続しても構わない。
上記基材2は、上面に絶縁体層4を有している。
また、基材2の少なくとも上面が誘電体で形成されていることが好ましい。すなわち、絶縁体層4が誘電体であることが好ましい。なお、基材2の全体が絶縁体層4と同じ材料で形成されていてもよく、その場合は、絶縁体層4は不要となる。
上記N型半導体膜3とP型半導体膜5とは、互いに対向方向に突出した複数の櫛部3a,5aを有した櫛形とされ、N型半導体膜3の櫛部3aとP型半導体膜の櫛部5aとが、交互に並んで配されている。
N型半導体膜3は、複数の櫛部3aの基端が接続されていると共に長方形板状の基材2の延在方向に延在した基端接続部3bを備え、P型半導体膜5は、複数の櫛部5aの基端が接続されていると共に長方形板状の基材2の延在方向に延在した基端接続部5bを備えている。
上記N側電極6及びP側電極7には、外部電源Vが接続され、電圧が印加される。
N型半導体膜3及びP型半導体膜5は、厚さ1μm未満の薄膜で形成されている。特に、基板2との界面及びその近傍に生成される電荷e(正電荷,負電荷)は、5~10nmの厚さ範囲で主に溜まるため、N型半導体膜3及びP型半導体膜5は、100nm以下の膜厚で形成されることがより好ましい。なお、N型半導体膜3及びP型半導体膜5は、5nm以上の膜厚が好ましい。
なお、図2中の、N型半導体層3と絶縁体層4との界面及びその近傍に生成される電荷eの種類は、電子であり、黒丸で表記されている。また、P型半導体層5と絶縁体層4との界面及びその近傍に生成される電荷eの種類は、正孔であり、白丸で表記されている。(正孔は、半導体の価電子帯の電子の不足によってできた孔であり、相対的に正の電荷を持っているように見える。)
なお、N型半導体膜3及びP型半導体膜5が、厚さ1μm未満の薄膜で形成されているので、厚さ1μm以上であっても機能的に電荷生成の効果は変わらないため、熱流スイッチングに寄与しない無駄な部分が低減され、製造コストの低減及び薄型化を図ることができる。
また、絶縁体層4は、40nm以上の膜厚が好ましく、絶縁破壊が生じない厚さに設定される。
N型半導体膜3及びP型半導体膜5は、低い格子熱伝導を持つ縮退半導体材料が好ましく、例えばSiGe等の熱電材料、CrN等の窒化物半導体、VO等の酸化物半導体などが採用可能である。なお、N型,P型の導電性は、半導体材料にN型,P型のドーパントを添加すること等で設定している。
上記絶縁体層4は、例えばSi基板の基材2上に形成された酸化膜のSiOを採用しても構わない。
なお、絶縁体層4は、熱伝導率が小さい絶縁性材料であることが好ましく、上記SiO等の絶縁体、HfO,BiFeO等の誘電体、ポリイミド(PI)等の有機材料などが採用可能である。特に、誘電率の高い誘電体材料が好ましい。
なお、上記基材2は、例えば全体が絶縁体のガラス基板なども採用可能であり、この場合、絶縁体層4は不要である。
上記N側電極6及びP側電極7は、例えばMo,Al等の金属で形成される。
基端接続部3bと基端接続部5bとは、それぞれ長方形板状の基材2の一端部まで延在してパターン形成されている。そして、N側電極6は、基端接続部3bの端部上に接続され、P側電極7は、基端接続部5bの端部上に接続されている。
本実施形態の熱流スイッチング素子1は、図2に示すように、電場(電圧)印加により、N型半導体膜3と基材2との界面及びその近傍に熱伝導可能な電荷eを生成することで、生成した電荷eが熱を運んで熱伝導率が変化する。
なお、熱伝導率は以下の式で得られる。
熱伝導率=格子熱伝導率+電子熱伝導率
この2種類の熱伝導率のうち、電場(電圧)印加により生成した電荷量に応じて変化するのは、電子熱伝導率である。したがって、本実施形態において、より大きな熱伝導率変化を得るには、格子熱伝導率が小さい材料が適している。したがって、N型半導体層3,P型半導体層5及び基材2のいずれにおいても、格子熱伝導率が小さい、すなわち熱伝導率が小さい材料が選択される。
本実施形態の各膜を構成する材料の熱伝導率は、5W/mK以下、より好ましくは1W/mK以下の低いものであることが良く、上述した材料が採用可能である。
また、上記電子熱伝導率は、印加する外部電場(電圧)に応じて生成される電荷eの量に応じて増大する。
なお、N型半導体膜3及びP型半導体膜5と基材2との界面で電荷eが生成されることから、界面の総面積を増やすことで、生成する電荷eの量も増やすことができる。
上記熱伝導率の測定方法は、例えば基板上に形成された薄膜試料をパルスレーザーで瞬間的に加熱し、薄膜内部への熱拡散による表面温度の低下速度あるいは表面温度の上昇速度を測定することにより、薄膜の膜圧方向の熱拡散率又は熱浸透率を求める方法であるパルス光加熱サーモリフレクタンス法により行う。なお、上記パルス光加熱サーモリフレクタンス法のうち、熱拡散を直接測定する方法(裏面加熱/表面測温(RF)方式)では、パルスレーザーが透過可能な透明基板を用いる必要があるため、透明基板でない場合は、熱浸透率を測定し、熱伝導率に換算する方式である表面加熱/測温(FF)方式で熱伝導率を測定する。なお、この測定には、金属膜が必要であり、Mo,Al等が採用される。
このように本実施形態の熱流スイッチング素子1では、N型半導体膜3とP型半導体膜5とが、互いに間隔を空けて対向配置されているので、P型半導体膜5とN型半導体膜3とに電圧を印加すると、P型半導体膜5及びN型半導体膜3と基材2上面との主に界面に電荷eが誘起され、この電荷eが熱を運ぶことで熱伝導率が変化する。特に、N型半導体膜3と基材2との界面及びその近傍と、P型半導体膜5と基材2との界面及びその近傍との両方で外部電圧により電荷eが生成されるため、生成される電荷量が多く、熱伝導率の大きな変化と高い熱応答性とを得ることができる。なお、化学反応機構を用いない、物理的に熱伝導率を変化させる機構であるので、熱伝導が変化した状態に直ちに移行でき、良好な熱応答性を得ることができる。
また、外部電圧の大きさに乗じて、界面に誘起される電荷量が変化するので、外部電圧を調整することで、熱伝導率を調整することが可能となり、本素子を介して、熱流を能動的に制御可能となる。
なお、基材2上面が絶縁体層4であり、電圧印加に伴う電流が発生しないため、ジュール熱は生じない。そのため、自己発熱することなく、熱流を能動的に制御可能となる。
また、N型半導体膜3の櫛部3aとP型半導体膜5の櫛部5aとが、交互に並んで配されているので、隣接する櫛部3a,5a間で電圧が印加されることで、複数の櫛部3a,5aと基材2との界面及びその近傍で電荷eが生成され、多くの電荷eを得ることができる。
さらに、基材2の少なくとも上面が誘電体(絶縁体層4)で形成されているので、N型半導体膜3及びP型半導体膜5と基材2との界面において誘電体である基材上面(絶縁体層4)側にも電荷eが生成され、より熱伝導率の大きな変化と高い熱応答性とを得ることができる。
次に、本発明に係る熱流スイッチング素子の第2及び第3実施形態について、図3から図5を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、基材2,N型半導体膜3及びP型半導体膜5が各1つずつで構成されているのに対し、第2実施形態の熱流スイッチング素子21では、図3及び図4に示すように、基材2とN型半導体膜3とP型半導体膜5とN側電極6とP側電極7とを備えた単位素子部20を複数備え、複数の単位素子部20が、互いに上下に積層されて接合されている点である。
また、第2実施形態では、複数の単位素子部20のN側電極6が、互いに基材2に形成されたN側スルーホールH1を介して接続され、複数の単位素子部20のP側電極7が、互いに基材に形成されたP側スルーホールH2を介して接続されている。
上記単位素子部20は、接着剤等により互いに積層、接合されている。なお、上記単位素子部20の上に絶縁膜を塗布することで、その上に積層される単位素子部の基材2としてもよい。
上記N側スルーホールH1及びP側スルーホールH2は、基材2を貫通しており、内面に金属等の導電体が形成されて上下の単位素子部20同士で互いに導通されている。
上記基材2は、絶縁性を有する材料で構成されており、長方形状のガラス基板、ポリイミド等の樹脂基板、熱酸化膜付Si基板等であり、基材2の両端部には、基材2よりも熱伝導性の高い材料で形成した高熱伝導部29が設けられている。すなわち、単位素子部20を積層、接合させた際の熱流スイッチング素子21の両端面には、高熱伝導樹脂部29が設けられている。この高熱伝導部29は、例えばシリコーン樹脂等の材料で形成されている。
このように第2実施形態の熱流スイッチング素子21では、複数の単位素子部20が、互いに上下に積層されて接合され、互いのN型半導体膜3が電気的に接続されていると共に、互いのP型半導体膜5が電気的に接続されているので、積層され接合された単位素子部20同士の並列回路が構成されて、単位素子部20の接合数に応じてさらに電荷の生成を増大させることができる。
特に、複数の単位素子部20のN側電極6が、互いに基材2に形成されたN側スルーホールH1を介して接続され、複数の単位素子部20のP側電極7が、互いに基材に形成されたP側スルーホールH2を介して接続されているので、積層され接合された単位素子部20同士がN側スルーホールH1及びP側スルーホールH2を介して容易に並列回路を構成することができる。
また、基材2の両端部に、基材2よりも熱伝導性の高い材料で形成した高熱伝導部29が設けられているので、熱流方向を両端部間の方向に設定することができる。
次に、第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、櫛部3a,5aの配置が同じ単位素子部20を積層、接合させているのに対し、第3実施形態の熱流スイッチング素子31では、図5に示すように、上下で直接積層、接合される単位素子部20,30において櫛部3a,5aの配置が異なっている点である。
すなわち、第3実施形態では、上下に直接接合された単位素子部20,30のうち一方のN型半導体膜3の櫛部3aが、他方のP型半導体膜5の櫛部5aの直下又は直上に配されていると共に、上下に直接接合された単位素子部20,30のうち一方のP型半導体膜5の櫛部5aが、他方のN型半導体膜3の櫛部3aの直下又は直上に配されている。
第3実施形態では、図5に示すように、最下部の単位素子部20上に単位素子部30が積層、接合され、さらにその上に単位素子部20が積層、接合されている。
単位素子部20と単位素子部30とは、互いに直下又は直上の櫛部同士が、電荷の正負が逆の半導体膜となっており、N型半導体膜3の櫛部3aの直下又は直上にP型半導体膜5の櫛部5aが配置されていると共にP型半導体膜5の櫛部5aの直下又は直上にN型半導体膜3の櫛部3aが配置されている。
このように第3実施形態の熱流スイッチング素子31では、上下に直接接合された単位素子部20,30のうち一方のN型半導体膜3の櫛部3aが、他方のP型半導体膜5の櫛部5aの直下又は直上に配されていると共に、上下に直接接合された単位素子部20,30のうち一方のP型半導体膜5の櫛部5aが、他方のN型半導体膜3の櫛部3aの直下又は直上に配されているので、直接接合された単位素子部20,30の櫛部3a,5aが上下で電荷の正負(P型N型)が反転している。このため、面内方向だけでなく接合方向にも電荷eが生成されることで、より多くの電荷eを得ることができる。なお、この接合方向における電荷生成効果は、基材2を薄く設定するほど得ることができる。
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
1,21,31…熱流スイッチング素子、3…N型半導体膜、3a…N型半導体膜の櫛部、4…絶縁体層、5…P型半導体膜、5a…P型半導体膜の櫛部、6…N側電極、7…P側電極、29…高熱伝導部、H1…N側スルーホール、H2…P側スルーホール

Claims (7)

  1. 少なくとも上面が絶縁体で形成された基材と、
    前記基材上にパターン形成されたN型半導体膜と、
    前記基材上にパターン形成されたP型半導体膜と
    前記N型半導体層に接続されたN側電極と、
    前記P型半導体層に接続されたP側電極とを備え、
    前記N型半導体膜と前記P型半導体膜とが、互いに間隔を空けて対向配置されて絶縁状態であり、
    前記N側電極と前記P側電極とに外部電圧を印加することにより熱伝導率が変化することを特徴とする熱流スイッチング素子。
  2. 請求項1に記載の熱流スイッチング素子において、
    前記N型半導体膜と前記P型半導体膜とが、互いに対向方向に突出した複数の櫛部を有した櫛形とされ、
    前記N型半導体膜の櫛部と前記P型半導体膜の櫛部とが、交互に並んで配されていることを特徴とする熱流スイッチング素子。
  3. 請求項2に記載の熱流スイッチング素子において、
    前記基材と前記N型半導体膜と前記P型半導体膜とを備えた単位素子部を複数備え、
    複数の前記単位素子部が、互いに上下に積層されて接合され、互いの前記N型半導体膜が電気的に接続されていると共に、互いの前記P型半導体膜が電気的に接続されていることを特徴とする熱流スイッチング素子。
  4. 請求項3に記載の熱流スイッチング素子において、
    上下に直接接合された前記単位素子部のうち一方の前記N型半導体膜の前記櫛部が、他方の前記P型半導体膜の前記櫛部の直下又は直上に配されていると共に、上下に直接接合された前記単位素子部のうち一方の前記P型半導体膜の前記櫛部が、他方の前記N型半導体膜の前記櫛部の直下又は直上に配されていることを特徴とする熱流スイッチング素子。
  5. 請求項3又は4に記載の熱流スイッチング素子において、
    前記単位素子部が、前記N型半導体膜に接続されたN側電極と、
    前記P型半導体膜に接続されたP側電極とを前記基材上に備え、
    複数の前記単位素子部の前記N側電極が、互いに前記基材に形成されたN側スルーホールを介して接続され、
    複数の前記単位素子部の前記P側電極が、互いに前記基材に形成されたP側スルーホールを介して接続されていることを特徴とする熱流スイッチング素子。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の熱流スイッチング素子において、
    前記基材の両端部に、前記基材よりも熱伝導性の高い材料で形成した高熱伝導部が設けられていることを特徴とする熱流スイッチング素子。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載の熱流スイッチング素子において、
    前記基材の少なくとも上面が誘電体で形成されていることを特徴とする熱流スイッチング素子。
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