JP7412630B2 - プラント運転支援システム - Google Patents

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Description

本願は、プラント運転支援システムに関するものである。
近年、電力分野などの大規模プラントの監視制御システムは、従来のハードウェア型のアナログ監視制御盤に変わり、ソフトウェア型のデジタル監視制御盤(デジタル盤)の導入が進んでいる。デジタル盤では、監視制御盤の機能が集約されたグラフィカル運転員インタフェース(GUI)を用いて作業を行うため、これにより装置の小型化、及びオペレータ(運転員)の操作負荷を軽減することができる。
プラント運転では、事象に対する作業手順、及び各操作の実行担当の運転員が事前に決められている。しかし、監視制御システムの高機能化、それに伴う運転員の削減により、通常運転時では最少人数での複数ユニット同時監視を行い、事象発生時に運転員の人数、あるいは体制を変更する運用が想定されている。事前に決められた作業割当てでは、想定外の組合せの事象が発生した場合に対応が間に合わず、シビアアクシデントにつながる可能性があるため、動的な作業割当てが求められている。
プラント運転において、各運転員が表示装置を有して自己の責任範囲内のプラント機器に対する操作・監視を実行し、前記表示装置には自己の責任範囲内のプラント機器に対する操作・監視状況が表示されるとともに、他の運転員の責任範囲内のプラント機器に対する操作・監視状況が、運転員相互の実行順序に沿って表示されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、プラント運転において、作業履歴情報から作業員毎の作業実施回数等を集計し、作業スキルテーブルのスキル実績値を更新する要員スキル更新処理と、作業マスタ情報を作業マスタテーブルに登録する作業登録処理と、作業分類IDをキーとして作業レベル毎の必要人数を取得し、抽出した作業レベルの優先順位に合致する作業レベルの必要人数を要員スキルテーブルから抽出し、該抽出した作業員を前記作業スキルテーブルに格納された作業実績等の条件に一致しない者を除いた作業員から、作業スキルテーブルに格納したスキルレベルに合致する作業員を検索して、作業毎に最適な作業員を抽出する要員割当処理と、作業マスタテーブルの作業割当情報を更新する作業実績登録処理とを実行するものがある(例えば、特許文献2参照)。
特開2012-103883号公報 特開2014-191390号公報
従来の技術は、運転員の役割、あるいは責任範囲に応じて、予め定められた運転員の作業割当てを表示して運転を支援しているが、プラント、あるいは運転員の詳細な状況、または複数ユニット同時運転を想定したリスク、対応時間、コストなどのプラント全体(以降、プラント統合体とも呼ぶ)への影響を考慮して各運転員への動的な作業割当てを実施していない、という問題点があった。また、事象発生時において現状で運転員が不足する場合の対処について考慮されていない、という問題点があった。
本願は上記のような課題を解決するためになされたものであり、個々のプラントおよび運転員ごとの詳細な状況に基づいて、事象発生時において、プラント全体への影響を及ぼすパラメータ(リスク、対応時間など)の内容を設定して、当該パラメータの内容に応じた運転員ごとのスケジュールの提示を行うとともに、運転員が不足する場合には最適な運転員を特定して補充することにより、プラント運転のリスク軽減、作業効率化、およびコスト削減が可能なシステムを提供することを目的とする。
本願に開示されるプラント運転支援システムは、
事象の影響度と発生確率、事象に対する対応時間を含むプラントの情報、および前記プラントの運転操作履歴を含む変動する情報を取得するプラント情報取得部と、
前記プラントの運転員の所有資格、熟練度、作業状態の情報を含む運転員情報を取得する運転員情報取得部と、
前記プラントの作業の内容、作業の手順、作業の難易度を含む作業情報を取得する作業情報取得部と、
前記プラント情報取得部で取得された情報から前記プラントに発生している事象を特定するプラント状況特定部と、
複数のプラントについて、事象発生時に各プラントの運転手順を決める対応優先度を決定する対応優先度決定部と、
決定された前記プラントの対応優先度から、プラントごとの作業手順のスケジューリングを行い、複数の作業手順スケジュールを出力するスケジューリング部と、
前記運転員情報と前記作業情報から運転員ごとの作業状態と身体状態を含む運転員状態を特定する運転員状態特定部と、
前記運転員状態特定部が出力した運転員状態に基づいて、前記複数のプラントを統合したプラント統合体の運転に影響を及ぼす複数のパラメータを設定して、当該複数のパラメータにより前記プラント統合体の運転への影響度を算定するとともに、前記影響度を基に前記スケジューリング部が出力した前記作業手順スケジュールを評価するスケジュール評価部と、
前記スケジュール評価部で評価されたスケジュールの評価結果を出力装置に提示するスケジュール提示部と、
を備えたものである。
本願に開示されるプラント運転支援システムによれば、個々のプラントおよび運転員ごとの詳細な状況に基づいて、事象発生時において、プラント全体への影響を及ぼすパラメータ(リスク、対応時間など)の内容を設定して、当該パラメータの内容に応じた運転員ごとのスケジュールの提示を行うとともに、運転員が不足する場合には最適な運転員を特定して補充することにより、プラント運転のリスク軽減、作業効率化、およびコスト削減が可能なシステムを提供することができる。
実施の形態1に係るプラント運転支援システムの計算機のハードウェア構成図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムの機能ブロック図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムのフローチャート図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムのプラント情報の一例を示す図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムの運転員情報の一例を示す図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムの作業情報の一例を示す図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムのプラント状況の一例を示す図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムのリスク値とリスクの関係の一例を示す図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムの余裕時間と余裕度の関係の一例を示す図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムのリスクと余裕度と緊急度の関係を示す図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムのスケジュール結果の一例を示す図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムの運転員状態の一例を示す図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムの運転員状態のリスクへの影響の一例を示す図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムのスケジュール提示の一例を示す図である。 実施の形態1に係るプラント運転支援システムの追加要否判定規則の一例を示す図である。 実施の形態2に係るプラント運転支援システムの機能ブロック図である。 実施の形態2に係るプラント運転支援システムの評価判定規則の一例を示す図である。 実施の形態2に係るプラント運転支援システムのスケジュール提示の一例を示す図である。 実施の形態2に係るプラント運転支援システムのスケジュール結果周知の一例を示す図である。
実施の形態1.
以下、実施の形態1に係るプラント運転支援システムを図に基づいて説明する。
図1は、プラント運転支援システムのハードウェア構成図である。当該システムは、プロセッサ1、メモリ2、ハードディスク3、入力装置4、出力装置5、およびこれらを接続するシステムバス6とからなる。
図2は、実施の形態1に係るプラント運転支援システムを説明するための機能ブロック図である。図2に示すように、このプラント運転支援システムは以下に説明する複数の構成要素を備えている。
すなわち、このプラント運転支援システムには、プラント情報を取得するプラント情報取得部101、運転員情報を取得する運転員情報取得部102、作業情報を取得する作業情報取得部103、上記プラント情報からプラント状況を特定するプラント状況特定部104、複数ユニットの対応優先度を決定する対応優先度決定部105、決定されたユニット対応優先度からスケジュールの候補を作成するスケジューリング部106、上記運転員情報と上記作業情報から運転員の状況を特定する運転員状態特定部107、特定された運転員状態からスケジュールの候補を評価するスケジュール評価部108、評価されたスケジュールの評価結果に従ってスケジュールを提示するスケジュール提示部109、運転員の追加要否の判定規則を格納した追加要否判定規則格納部に格納された運転員の追加要否判定規則に従い、運転員の追加の要否を判定する運転員追加要否判定部110、この運転員追加要否判定部の出力に従い、必要な運転員を呼び出す運転員呼び出し部111、が備えられている。
そして、上記の各構成要素である、プラント情報取得部101、運転員情報取得部102、作業情報取得部103、プラント状況特定部104、対応優先度決定部105、スケジューリング部106、運転員状態特定部107、スケジュール評価部108、スケジュール提示部109、運転員追加要否判定部110、および運転員呼び出し部111においては、図1に示したプロセッサ1が、メモリ2またはハードディスク3に記憶されたプログラムを実行することにより動作して、それぞれの機能を果たす。
なお、図2においては、プロセッサ1、メモリ2、ハードディスク3が、それぞれ1個で構成された場合を例に示したが、これに限らず、複数のプロセッサ1、複数のメモリ2、及び複数のハードディスク3が連携して上記機能を実現してもよい。
図3は、実施の形態1に係るプラント運転支援システムの動作を示すフローチャートである。図3から図15を用いて、プラント運転支援システムにおいて、プラント情報、運転員情報、作業情報からプラント状況及び運転員状態を特定して、実施に最適な運転員の対応手順を、特定したプラント状況及び運転員状態の状況に応じて動的に割当て、運転員の追加要否を判定して、モニタ、あるいはスピーカ等の外部出力装置にスケジュール結果を出力するとともに追加の運転員を呼び出すまでの動作について説明する。
本実施の形態では、複数プラントのプラント1からプラント4を対象として、複数の運転員が運転する場合の例で説明する。以降、プラント1をUNIT1、プラント2をUNIT2、プラント3をUNIT3、プラント4をUNIT4と記載する場合がある。
プラント情報取得部101は、プラント情報格納部120に格納されたプラント情報を取得する。プラント情報格納部に格納されたプラント情報には、事象情報(具体例を後述する)などの静的情報と、各プラント機器により取得されたプラントパラメータ、あるいは運転操作履歴などの動的情報がある。プラントパラメータには、各種プラント機器の警報を含む運転状態、あるいはプロセス値がある。ここで、プラント機器とはプラントを構成する機器であり、プラントの種類により異なるが、例えば、モータ、ポンプ、弁などがある。通常、プラント情報はプラント毎に用意されている。
図4は本実施の形態におけるプラント情報取得部が取得するプラント情報の一つである事象情報の例である。事象情報200には、事象毎の影響度201、発生確率202、作業手順203、対応時間204、残り時間205(事象の発生時点での残り時間)などが含まれる。
次に、運転員情報取得部102は、運転員情報格納部121に格納された運転員情報を取得する。運転員情報格納部121に格納された運転員情報は、運転員の資格、または性格などの静的情報と、運転員の状態、あるいは生体情報などの動的情報がある。
図5に、本実施の形態における運転員情報取得部が取得する運転員情報の一例を示す。運転員情報300には、運転員それぞれが持っている資格情報である所有資格301、および各運転員の熟練度302、運転中か待機中かなど、各運転員の作業の状態を表す作業状態303などがある。
次に、作業情報取得部103は、作業情報格納部122に格納された作業情報を取得する。作業情報格納部122に格納された作業情報には、作業の手順内容、あるいは作業の難しさなどが含まれる。
図6は本実施の形態における作業情報取得部が取得する作業情報の一例である。作業情報400には、作業毎の作業名称401、手順構成402、必要資格403が含まれる。
プラント状況特定部104は、プラント情報取得部101が取得したプラント情報から、各プラントのプラント状況を特定する(図3のステップS101参照)。
本実施の形態では、上述した警報情報他のプラントパラメータからプラント内での発生事象を特定するとともに、プラントの運転操作履歴から実施中の手順について特定する。発生事象の特定は、事象の発生要因と該当の事象が波及する関係などの、事象の特定に必要なデータを格納する知識ベースの情報を用いて行う。
図7は本実施の形態におけるプラント状況特定部104が特定したプラント状況の一例である。プラント状況500には、プラント毎の発生事象501、発生日時502、実施中手順503を含む。
本実施の形態では、プラント3で事象B、プラント4で事象Cが発生している状態から、2020年12月08日11時00分の時点に、プラント2で事象Aが発生した例で、以降、具体的に説明する。なお、現時点では、運転員Aと運転員Bの2名で事象対応の運転を実施している。
次に、対応優先度決定部105は、事象の内容、または進展状況を考慮して各プラントの対応優先度を決定する(図3のステップS102参照)。
本実施の形態では、評価情報格納部123に格納された評価情報に基づいて、各プラントに発生した事象のリスクと対応作業の余裕時間とを考慮した緊急度で対応優先度を決定する。評価情報格納部123には、対応優先度決定部105が各プラント対応の優先度を決定するための情報、あるいはスケジュール評価部108が評価に使用する情報が格納されている。
まず、事象のリスクについて説明する。事象のリスクは事象の影響度と発生確率との積で計算できる。図4のプラント情報からリスクを計算すると、プラント2の事象Aは3.0×E-2(E-2は10の-2乗を意味する。この場合は、影響度が3で発生確率が百分の1。以下同様)、プラント3の事象Bは2.0×E-4、プラント4の事象Cは2.0×E-5である。
次に、余裕時間について説明する。現在の対応作業の余裕時間は事象の事象対応の残り時間と対応時間との差で計算できる。本実施例では、作業手順の各手順(手順1-1など)に必要な実施時間を一律30分としている。図4の事象情報200と図7のプラント状況500から計算すると、プラント2の事象Aは、2020年12月08日11時00分の時点で手順1-1から手順1-4の4個の120分の手順が残っており、2020年12月08日11時00分発生で残り時間は240分のため、余裕時間として240分-120分=120分残っている。同様に、プラント3の事象Bは、2020年12月08日11時00分の時点で手順2-2から手順2-3の2個の60分の手順が残っており、2020年12月08日10時30分発生で残り時間は180(=210(発生時点での残り時間)-30(経過時間))分のため、余裕時間として180分-60分=120分残っている。同様に、プラント4の事象Cは、2020年12月08日11時00分の時点で手順3-3から手順3-5の3個の90分の手順が残っており、2020年12月08日10時00分発生で残り時間は180(=240(発生時点での残り時間)-60(経過時間))分のため、余裕時間として180分-90分=90分残っている(発生時点での残り時間については図4参照)。
図8は本実施の形態におけるリスク値とリスクの関係、図9は本実施の形態における余裕時間と余裕度の関係、図10は本実施の形態におけるリスクと余裕度と緊急度の関係である。これらの関係表は評価情報格納部123に格納されている。
図8、図9、図10から、プラント2の事象Aはリスク「高」、余裕度「中」の緊急度「高」、プラント3の事象Bはリスク「」、余裕度「中」の緊急度「」、プラント4の事象Cはリスク「」、余裕度「」の緊急度「」である。従って、対応優先度として、プラント2>プラント3>プラントと決定する。
なお、実際のプラントでは、システム構成などの相違により、事象のリスク、あるいは余裕時間はプラント毎に異なる場合があるが、本実施の形態では、事象のリスクと余裕時間(プラント情報)は各プラントで同じとしている。
次に、スケジューリング部106は、対応優先度決定部105が出力した各プラントの対応優先度に従って作業手順のスケジューリングを行い、いくつかの作業手順スケジュールの候補を出力する(図3のステップS103参照)。
本実施の形態では、緊急度の高いプラントについては早急に対応する必要があるため、可能な限り現在運転中の運転員(本実施の形態では運転員Aと運転員B)で対応するようにスケジューリングする。
まず、最も優先度の高い緊急度が「高」のプラント2の作業手順である手順1(手順1-1から手順1―4)を割り当てる。図6の作業情報に示す通り、手順1実施の必要資格は資格Aである。運転員Aと運転員Bの内、資格Aを有する運転員Aに手順1を割り当てる。
次に優先度の高い緊急度が「中」のプラント4の作業手順である手順3(2020年12月08日11時00分の時点では手順3-1、3-2は完了しているので、この場合には、手順3-3から手順3―5が該当する。)を割り当てる。残りの運転員である運転員Bは手順3に必要な資格Bを有するため、運転員Bに手順3を割り当てる。
最後に、最も優先度の低い緊急度が「低」のプラント3の作業手順である手順2(手順2-2から手順2―3(2020年12月08日11時00分の時点では手順2-1は完了しているので、この場合には、手順2-1は該当しない。))を割り当てる。図6の作業情報400に示す通り、手順2実施の必要資格は資格Bである。作業可能な運転員の内、資格Bを有する運転員は、運転員A、運転員B、運転員C、運転員Eの4名である(なお、運転員Gは資格Bを有するが、「休暇中」で作業に就くことはできない。)。各運転員が最短で作業を実施できるように割り当て、4個のスケジュールを出力する。
図11は、本実施の形態におけるスケジューリング部の出力であるスケジュールA900、スケジュールB901、スケジュールC902、スケジュールD903の計4種類のスケジュールを示している。一つの作業を示す一つの箱が30分である。運転員Cと運転員Eは、移動を含む準備時間に必要となる60分と90分を追加する形で示している。
次に、運転員状態特定部107は、運転員情報、または作業情報に基づいて、現在の運転員状態を特定する(図3のステップS104参照)。本実施の形態では、運転員の疲労度、あるいは作業負荷などの運転員情報に基づいて、運転員状態を特定する。
図12に本実施の形態における運転員状態特定部が特定した運転員状態の一例を示す。運転員状態1000には、運転員毎の状態1001、熟練度1002、疲労度1003、覚醒度1004、作業負荷1005がある。疲労度、覚醒度、および作業負荷は、例えば、血圧、心拍数、呼吸数、まばたき、脳波などの生体情報から測定する。
次に、スケジュール評価部108は、運転員状態特定部が出力した現在の運転員状態に基づいて、スケジューリング部が出力した複数のスケジュールを評価する(図3のステップS105参照)。本実施の形態では、リスクと対応時間(対応時間は、運転員が事象を収束させるまでに必要な時間の意味)についてスケジュール評価を行う。
スケジューリング部が出力したスケジュールA~スケジュールDを基に、運転員状態に応じたリスクへの影響評価を行う。
図13に、本実施の形態における運転員状態とリスクへの影響の関係を示す。この関係表1100は、評価情報格納部123に格納されている。運転員状態1101に応じたリスクへの影響1102に従い、標準リスクを補正する。
プラント2の運転員である運転員Aは、図12の運転員状態を見ると熟練度「高」、疲労度「中」、覚醒度「高」、作業負荷「中」なので、プラント2のリスクは3.0×E-2×2.0×2.0=1.2×E-1となる。プラント4の運転員である運転員Bは、図12の運転員状態を見ると熟練度「中」、疲労度「中」、覚醒度「中」、作業負荷「低」なので、プラント4のリスクは2.0×E-5×2.0×2.0×2.0=1.6×E-4となる。
プラント3のリスクは、スケジュール毎に対応する運転員あるいは手順が異なるため、スケジュールA~スケジュールDの場合のリスクをそれぞれ計算する。スケジュールAのプラント3の運転員である運転員Bは、図12の運転員状態1000より、熟練度「中」、疲労度「中」、覚醒度「中」、作業負荷「低」なので、プラント3のリスクは2.0×E-4×2.0×2.0×2.0=1.6×E-3と計算できる。
同様に、スケジュールBの運転員である運転員Aは熟練度「高」、疲労度「中」、覚醒度「高」、作業負荷「中」なので、プラント3のリスクは2.0×E-4×2.0×2.0=8.0×E-4、スケジュールCの運転員である運転員Cは熟練度「中」、疲労度「低」、覚醒度「高」、作業負荷「低」なので、プラント3のリスクは2.0×E-4×2.0=4.0×E-4、スケジュールDの運転員である運転員Eは熟練度「高」、疲労度「低」、覚醒度「高」、作業負荷「低」なので、プラント3のリスクは2.0×E-4である。
本実施の形態では、各スケジュールのリスクとして、リスクを有するプラント2、プラント3、プラント4のリスクの総和を用いる。ここで、各スケジュールともに、プラント2とプラント4は共通に存在していることから(図11参照)、スケジュールのリスク上の評価順位は、プラント3のリスクの値で決まることになる。上記の説明から、スケジュールAのリスクの値は、1.6×E-3、スケジュールBのリスクの値は、8.0×E-4、スケジュールCのリスクの値は4.0×E-4、スケジュールDのリスクの値は、2.0×E-4であった。
よって、スケジュールのリスク上の評価順位は、スケジュールD>スケジュールC>スケジュールB>スケジュールAとなる。
次に、スケジューリング部が出力したスケジュールA~スケジュールDについて、運転員状態に応じた対応時間への影響評価を行う。対応時間については、図11は移動を含む準備時間に必要となる60分と90分を追加する形で示しているため、すべての作業が完了する時間がそのまま対応時間の評価になる。従って、スケジュールの対応時間上の評価順位は、スケジュールC>スケジュールA、スケジュールD>スケジュールBとなる。
スケジュール提示部109は、スケジュール評価部の評価結果に基づいてスケジュールをモニタなどの出力装置に提示する(図3のステップS106参照)。
図14は本実施の形態におけるスケジュール提示部の提示の例1200である。推薦可能なスケジュールとして、追加人員無しでリスクの値が最小のスケジュールB、追加人員有りでリスクの値が最小のスケジュールD、追加人員無しで対応時間の一番短いスケジュールA、追加人員有りで対応時間の一番短いスケジュールCの4個の条件に応じたスケジュールを表示している。
なお、リスク評価、または対応時間の順に表示するように切り替えたり、運転員の追加の有無を切り替えたりできるように変更可能な実装にしても良い。
次に、運転員追加要否判定部110は、スケジュール評価部の評価結果に基づいて、運転員過不足判定規則に従って、運転員の追加の要否を判定する(図3のステップS107参照)。
図15は本実施の形態における追加要否判定の一例を示すフローチャートである。この追加要否判定に用いられる追加要否判定規則は、追加要否判定規則格納部124に格納されている。
上記追加要否判定の一例を示すフローチャートにおいて、最初の処理ステップであるステップS201の「運転員を追加する場合、追加しない場合よりもリスク評価が向上するリスケジュールはあるか?」において、運転員を追加するスケジュールCとスケジュールDは、運転員を追加しないスケジュールAとスケジュールBよりもリスク評価が向上するため、スケジュールCとスケジュールDは共に該当する。
次に、2番目の処理ステップであるステップS202の「運転員を追加する場合、追加しない場合よりも対応時間が向上するスケジュールはあるか?」において、スケジュールCは、スケジュールAとスケジュールBよりも対応時間は改善されるが、スケジュールDは、スケジュールAに比較して対応時間は改善されないため、スケジュールCのみ該当する。
最後に、最終の処理ステップであるステップS203の「複数のスケジュールが該当する場合、最もリスク評価が向上するスケジュールに決定」において、該当するスケジュールはスケジュールCのみであるため、運転員Cの追加が必要であると決定する。
運転員呼び出し部111は運転員追加要否判定部の判定結果に従い、運転員を呼び出す(図3のステップS108参照)。本実施の形態では、追加の運転員である運転員Cが所有するタブレット端末に、アラームを通知して呼び出す。
本実施の形態では、プラント状況特定部、および、運転員状態特定部は現在のプラント、あるいは運転員の状況を特定しているが、例えば、シミュレータなどにより将来を予測することにより、今後の状況を特定して判断することも可能である。
本実施の形態では、評価の対象をリスクと対応時間としたが、コストなどを評価しても良い。また、それらの評価値を総合的に評価しても良い。例えば、各要素を数値化して合計の数値で判定するような方法、あるいは各要素を重み付けして合計値を算出する方法が考えられる。さらに、動的に重み付けを変更するような方法も可能である。
本実施の形態では、簡単化のため、すべての手順の所要時間を同じと想定し、手順を終了した直後に次の手順を開始するパターンで説明しているが、この限りではなく、手順ごとに異なる所要時間を設定する、あるいは、一の手順の終了前に他の手順を開始するなどの、複雑な手順に対応することも可能である。
実施の形態1のプラント運転支援システムによれば、プラント状況からユニット(各プラント)の対応優先度を決定し、ユニット(各プラント)の対応優先度に基づいてスケジューリングを行い、プラント、あるいは運転員の状況に基づいてスケジュールを評価することにより、プラント全体の影響(リスク、対応時間など)を最小化するような、各運転員へ動的な作業分担が可能となり、プラント運転のリスク軽減、作業効率化、およびコスト削減が可能となる。
また、実施の形態1のプラント運転支援システムによれば、運転員の追加の要否を判定して、運転員の追加が必要な場合は最適な運転員を特定して呼び出すことにより、プラント運転のさらなるリスク軽減が可能となる。
実施の形態2.
実施の形態2のハードウェア構成図は実施の形態1のハードウェア構成図と同様である。図16は実施の形態2に係るプラント運転支援システムの実施の形態2を示す機能ブロック図である。実施の形態1の機能ブロックに対して、評価判定規則格納部125、決定スケジュール入力部112、評価判定規則更新部113、スケジュール結果周知部114が追加されている。
以降、図16から図19を用いて、実施の形態2に係るプラント運転支援システムを、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。なお、運転員状態特定部107が、運転状況を特定するまでは実施の形態1と同様である。
評価判定規則格納部125には、スケジュールの評価を行うための評価判定規則が格納されている。図17はこのスケジュールの評価判定に用いられるフローチャートの一例を示したものである。ここでの評価判定には、評価判定規則格納部に格納されている評価判定規則データが用いられる。本実施の形態2では、スケジュール評価部108は、図17の評価判定規則に従って、スケジュールの評価を行い、スケジュールの順位を決定する。
まず、評価判定の処理ステップであるステップS301において、リスク上の評価を行う。実施の形態1と同様なリスク上の評価結果「スケジュールD>スケジュールC>スケジュールB>スケジュールA」に従って、スケジュールAは「1点」、スケジュールBは「2点」、スケジュールCは「3点」、スケジュールDは「4点」となる。
次に、評価判定の処理ステップであるステップS302において、対応時間上の評価を行う。実施の形態1と同様な対応時間上の評価結果「スケジュールC>スケジュールA、スケジュールD>スケジュールB」に従って、スケジュールA「3.75点」、スケジュールB「1.5点」、スケジュールC「6点」、スケジュールD「3.75点」となる。スケジュールAとスケジュールDは、対応時間上は同点であり下から二番目であるため、下から二番目「3点」と下から三番目「4.5点」の平均点である「3.75点」を用いている。
次に、評価判定の処理ステップであるステップS303において、運転員追加有無の評価を行う。追加運転員無しであるスケジュールAとスケジュールBは「+4点」となる。最後に、評価判定の処理ステップであるステップS304において、これまでに評価した点数を加算して合計点を算出し、合計点に応じてスケジュールの順位を決定する。スケジュールの順位は「スケジュールC(3+6=9点)>スケジュールA(1+3.75+4=8.75点)>スケジュールD(4+3.75=7.75点)>スケジュールB(2+1.5+4=7.5点)」になる。
スケジュール提示部109は、スケジュール評価部の評価結果に基づいてスケジュールをモニタなどの出力装置に提示する。図18は本実施の形態2におけるスケジュール提示部の提示の例1300である。スケジュール評価部108が評価した評価順位に従って上位3位までの「スケジュールC」、「スケジュールA」、「スケジュールD」を表示している。評価順位と共に、対応時間上の順位と評価点、リスク上の順位と評価点、運転員追加の有無と評価点を合わせて表示している。
決定スケジュール入力部112は、ユーザーによるスケジュールの決定を入力する。本実施の形態2では、決定スケジュール入力部は、図18のスケジュール提示の例に表示された通り、スケジュールと決定理由とを、チェックボックスで選択できるように表示しており、ユーザーがチェックボックスの入力により選択する。ユーザー、即ち、本実施の形態では運転員のリーダーが、2位の「スケジュールA」、主な決定理由「運転員追加の有無」をチェックボックスで選択したとして、以降の説明を行う。
評価判定規則更新部113は、決定スケジュール入力部112の入力内容に従って、評価判定規則を更新する。本実施の形態の例では、スケジュールAがスケジュールCを合計点で上回るように、選択した主な決定理由「運転員追加の有無」に従って、「運転員追加の有無」に関する処理ステップS303を修正する。具体的には、「運転員追加有無の評価を行う。追加運転員無し:+4点」を「運転員追加有無の評価を行う。追加運転員無し:+4.5点」に更新する。以降、スケジュール評価部108は、更新された評価判定規則に従ってスケジュールの評価を行う。
スケジュール結果周知部114は、決定スケジュール入力部112の入力内容に従って、スケジュールの結果を各運転員に周知する。本実施の形態では、各運転員が保有するタブレット端末に、アラームを通知して周知する。
図19は本実施の形態2におけるスケジュール結果周知部の結果周知の例1400である。この結果周知の例1400は、運転員Aに対して運転手順の変更を通知している。変更前の手順1402が、変更後の手順1401に変更されたことを示している。手順が変更された箇所は、赤字で示している。
なお、本実施の形態では、評価判定規則更新部は、簡単な方法を用いて、評価判定規則を更新する方法を説明したが、それだけに限定されるものではなく、深層学習を含む機械学習などの人工知能を利用してもよい。
実施の形態2のプラント運転支援システムによれば、決定したスケジュールの結果をフィードバックして評価判定規則を更新することにより、使用回数が増えるほどスケジュール評価の精度を高めることが可能となる。
また、実施の形態2のプラント運転支援システムによれば、決定したスケジュールの結果を各運転員に周知することにより、プラント運転のさらなるリスク軽減が可能となる。
なお、本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
1 プロセッサ、2 メモリ、3 ハードディスク、4 入力装置、5 出力装置、6 システムバス、101 プラント情報取得部、102 運転員情報取得部、103 作業情報取得部、104 プラント状況特定部、105 対応優先度決定部、106 スケジューリング部、107 運転員状態特定部、108 スケジュール評価部、109 スケジュール提示部、110 運転員追加要否判定部、111 運転員呼び出し部、112 決定スケジュール入力部、113 評価判定規則更新部、114 スケジュール結果周知部、120 プラント情報格納部、121 運転員情報格納部、122 作業情報格納部、123 評価情報格納部、124 追加要否判定規則格納部、125 評価判定規則格納部

Claims (5)

  1. 事象の影響度と発生確率、事象に対する対応時間を含むプラントの情報、および前記プラントの運転操作履歴を含む変動する情報を取得するプラント情報取得部と、
    前記プラントの運転員の所有資格、熟練度、作業状態の情報を含む運転員情報を取得する運転員情報取得部と、
    前記プラントの作業の内容、作業の手順、作業の難易度を含む作業情報を取得する作業情報取得部と、
    前記プラント情報取得部で取得された情報から前記プラントに発生している事象を特定するプラント状況特定部と、
    複数のプラントについて、事象発生時に各プラントの運転手順を決める対応優先度を決定する対応優先度決定部と、
    決定された前記プラントの対応優先度から、プラントごとの作業手順のスケジューリングを行い、複数の作業手順スケジュールを出力するスケジューリング部と、
    前記運転員情報と前記作業情報から運転員ごとの作業状態と身体状態を含む運転員状態を特定する運転員状態特定部と、
    前記運転員状態特定部が出力した運転員状態に基づいて、前記複数のプラントを統合したプラント統合体の運転に影響を及ぼす複数のパラメータを設定して、当該複数のパラメータにより前記プラント統合体の運転への影響度を算定するとともに、前記影響度を基に前記スケジューリング部が出力した前記作業手順スケジュールを評価するスケジュール評価部と、
    前記スケジュール評価部で評価されたスケジュールの評価結果を出力装置に提示するスケジュール提示部と、
    を備えたことを特徴とするプラント運転支援システム。
  2. 事象発生に際して、前記パラメータの変数および値に応じて表示位置を区分して、前記スケジュールの評価結果を提示することを特徴とする請求項1に記載のプラント運転支援システム。
  3. 前記プラントの運転員の追加要否判定規則を格納した追加要否判定規則格納部と、前記追加要否判定規則に従い、運転員の追加の要否を判定する運転員追加要否判定部と、運転員追加要否判定部の出力に従い、必要な運転員を呼び出す運転員呼び出し部とを備えた請求項1または請求項2に記載のプラント運転支援システム。
  4. 前記プラントごとの作業手順のスケジュールの評価判定規則を格納した評価判定規則格納部と、ユーザーによって決定されたスケジュールを入力する決定スケジュール入力部と、決定スケジュール入力部の入力内容に従って、前記評価判定規則を更新する評価判定規則更新部とを備えた請求項1または請求項2に記載のプラント運転支援システム。
  5. ユーザーによって決定されたスケジュールを入力する決定スケジュール入力部と、決定スケジュール入力部の入力内容に従い、スケジュールの結果を各運転員に周知するスケジュール結果周知部を備えた請求項1から4のいずれか1項に記載のプラント運転支援システム。
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