JP7409569B1 - ステンレス継目無鋼管およびその製造方法 - Google Patents

ステンレス継目無鋼管およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

高強度と、優れた低温靭性および耐食性とを兼ね備えたステンレス継目無鋼管を提供する。所定の成分組成を有し、体積率で、マルテンサイト相が30%以上、フェライト相が50%以下、および残留オーステナイト相が40%以下、降伏強さが758MPa以上、-10℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE-10が40J以上である、ステンレス継目無鋼管。

Description

本発明は、油井およびガス井(以下、単に油井と称する)での利用に好適な、ステンレス継目無鋼管(stainless steel seamless pipe)に関する。本発明は、とくに炭酸ガス(CO)、塩素イオン(Cl)を含む高温の厳しい腐食環境下や、硫化水素(HS)を含む環境下等における耐食性を向上させたステンレス継目無鋼管に関する。
ステンレス継目無鋼管は、油井用鋼管などの用途に広く用いられている。油井用鋼管には、降伏強さに優れることに加え、近年の寒冷地における油田開発にともない低温靭性(low-temperature toughness)に優れることも求められている。
さらに、近い将来に予想されるエネルギー資源の枯渇という観点から、従来、省みられなかったような、高深度の油田や炭酸ガスを含む環境下、およびサワー環境と呼ばれる硫化水素を含む環境下など、厳しい腐食環境の油井の開発が盛んに行われている。そのため、油井用鋼管には、高い耐食性を有することも要求される。
従来、COおよびCl等を含む環境下にある油田およびガス田では、採掘に使用する油井用鋼管として13Crマルテンサイト系ステンレス鋼管が一般的に使用されてきた。しかし、最近では、さらなる高温(200℃までの高温)の油井の開発が進められており、13Crマルテンサイト系ステンレス鋼管では耐食性が不足する場合があった。そのため、このような環境下でも使用できる、さらに高い耐食性を有する油井用鋼管が要望されている。
このような要望に対し、例えば、特許文献1では、質量%で、C:0.05%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.01~1.0%、P:0.05%以下、S:0.002%未満、Cr:16~18%、Mo:1.8~3%、Cu:1.0~3.5%、Ni:3.0~5.5%、Co:0.01~1.0%、Al:0.001~0.1%、O:0.05%以下、及び、N:0.05%以下を含有し、Cr、Ni、Mo、Cuが特定の関係を満足する組成を有する油井用ステンレス鋼が提案されている。
また、特許文献2では、質量%で、C:0.005~0.05%、Si:0.05~0.50%、Mn:0.20~1.80%、P:0.030%以下、S:0.005%以下、Cr:12.0~17.0%、Ni:4.0~7.0%、Mo:0.5~3.0%、Al:0.005~0.10%、V:0.005~0.20%、Co:0.01~1.0%、N:0.005~0.15%、O:0.010%以下を含有し、Cr、Ni、Mo、Cu、C、Si、Mn、Nが特定の関係を満足する組成を有する油井用高強度ステンレス継目無鋼管が提案されている。
また、特許文献3では、質量%で、C:0.05%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.15~1.0%、P:0.030%以下、S:0.005%以下、Cr:14.5~17.5%、Ni:3.0~6.0%、Mo:2.7~5.0%、Cu:0.3~4.0%、W:0.1~2.5%、V:0.02~0.20%、Al:0.10%以下、N:0.15%以下、B:0.0005~0.0100%を含有し、C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Cu、N、Wが特定の関係を満足する組成を有し、さらに体積率で、主相としてマルテンサイト相を45%超、第二相としてフェライト相を10~45%、残留オーステナイト相を30%以下含有する組織を有する、油井用高強度ステンレス継目無鋼管が提案されている。これにより、降伏強さYS:862MPa以上の強度を備え、かつ、CO、Cl、HSを含む高温の厳しい腐食環境においても十分な耐食性を示す油井用高強度ステンレス継目無鋼管を得られるとしている。
また、特許文献4では、質量%で、C:0.06%以下、Si:1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Cr:15.7%超え18.0%以下、Mo:1.8%以上3.5%以下、Cu:1.5%以上3.5%以下、Ni:2.5%以上6.0%以下、Al:0.10%以下、N:0.10%以下、O:0.010%以下、W:0.5%以上2.0%以下、Co:0.01%以上1.5%以下を含有し、C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Cu、Nが特定の関係を満足する組成を有し、さらに体積率で、マルテンサイト相を25%以上、フェライト相を65%以下、残留オーステナイト相を40%以下含有する組織を有する、油井用高強度ステンレス継目無鋼管が提案されている。これにより、降伏強さYS:758MPa以上の強度を備え、かつ、CO、Cl、HSを含む高温の厳しい腐食環境においても十分な耐食性を示す油井用高強度ステンレス継目無鋼管を得られるとしている。
また、特許文献5では、質量%で、C:0.06%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.01%以上1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Cr:15.2%以上18.5%以下、Mo:1.5%以上4.3%以下、Cu:1.1%以上3.5%以下、Ni:3.0%以上6.5%以下、Al:0.10%以下、N:0.10%以下、O:0.010%以下、Sb:0.001%以上1.000%以下を含有し、C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Cu、Nが特定の関係を満足する組成を有し、さらに体積率で、マルテンサイト相を30%以上、フェライト相を65%以下、残留オーステナイト相を40%以下含有する組織を有する、油井用高強度ステンレス継目無鋼管が提案されている。これにより、降伏強さYS:758MPa以上の強度を備え、かつ、CO、Cl、HSを含む高温の厳しい腐食環境においても十分な耐食性を示す油井用高強度ステンレス継目無鋼管を得られるとしている。
国際公開第2013/146046号 国際公開第2017/168874号 国際公開第2018/155041号 国際公開第2021/065263号 国際公開第2021/187331号
特許文献1~5で提案されている従来技術によれば、ステンレス鋼の耐食性を向上させることができる。しかし、その性能は依然として十分では無かった。
すなわち、上述したように、油井用鋼管には、降伏強さと低温靭性に優れることに加え、厳しい腐食環境下での使用に耐え得る高い耐食性を有することが求められている。
例えば、油井用鋼管には、炭酸ガス環境下における腐食への耐性(耐炭酸ガス腐食性、CO2 corrosion resistance)に優れることが求められており、とくに、高温環境下においても耐炭酸ガス腐食性に優れることが求められる。
また、油井用鋼管には、硫化水素環境下において硫化物応力割れ(Sulfide stress cracking:SSC)が生じない特性(耐SSC性、SSC resistance)が求められる。とくに海底油田の場合には、冷たい海水の比重が大きいため海底付近に滞留することから,その地域の大気温度よりも低い温度に油井管が晒される。そのため、油井用鋼管には低温環境下においても耐SSC性に優れることが求められる。
さらに、石油を採掘する際に、石油が貯まっている層(貯留層)の性状(主に浸透率)が悪く、十分な生産量が得られない場合や、貯留層内の目詰まりなどにより予期した生産量が得られない場合がある。そこで、生産性の向上を図る手法の一つとして、貯留層に塩酸などの酸を注入する酸処理(acidizing)が行われることがある。そのため、油井用鋼管には酸環境における耐食性に優れることも求められる。
しかし、従来の技術では、降伏強さ、低温靭性、高温での耐炭酸ガス腐食性、低温での耐SSC性、および酸環境における耐食性を十分な水準で兼ね備えた鋼管は得られていないのが実状であった。
特に、特許文献5に記載された技術は、高強度と高温での耐食性、および酸環境における耐食性が得られるとされているが、耐硫化物応力割れ性については必ずしも十分とは言えなかった。その要因は次のように考えられる。すなわち、鋼管製造時の相分率が適切でない場合、熱間加工性が不十分となり、亀裂や割れが鋼管内外面に生じる。このような鋼管が油井にて使用された場合には、腐食性イオンが傷内部に滞留さらには腐食の進行により濃縮した結果、十分な耐SSC性が発揮されない。
本発明は、このような従来技術の問題を解決し、降伏強さ:758MPa(110ksi)以上という高強度と、優れた低温靭性および耐食性とを兼ね備えたステンレス継目無鋼管を提供することを目的とする。
なお、本発明において「優れた耐食性」とは、「高温での耐炭酸ガス腐食性」、「低温での耐SSC性」、および「酸環境における耐食性」のすべてに優れることをいうものとする。
ここで、「高温での耐炭酸ガス腐食性」に優れるとは、オートクレーブ中に保持された試験液:20質量%NaCl水溶液(液温:200℃、30気圧のCOガス雰囲気)中に、試験片を浸漬し、浸漬時間を336時間として実施した際の腐食速度が0.127mm/y以下であることをいうものとする。
また、「低温での耐SSC性」に優れるとは、0.165質量%NaCl水溶液(液温:7℃、0.995気圧のCOガス、0.005気圧のHS雰囲気)に、酢酸+酢酸ナトリウムを加えてpH:3.0に調整した水溶液中に、NACE TM0177 Method Cに準拠したCの形をした試験片を浸漬し、浸漬時間を720時間とし、降伏応力の100%を負荷応力として負荷し、試験後の試験片に割れが発生しないことをいうものとする。
「酸環境における耐食性」に優れるとは、80℃に加熱した15質量%塩酸溶液中に試験片を浸漬し、浸漬時間を40分として実施した際の腐食速度が600mm/y以下であることをいうものとする。
「低温靭性」に優れるとは、-10℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE-10が40J以上であることをいうものとする。前記シャルピー吸収エネルギーvE-10は以下の手順で測定する。まず、ASTM E23の規定に準拠して、試験片長手方向が管軸に垂直な方向であり、かつノッチが管軸に垂直な面にあるVノッチ試験片(10mm厚)を一つのステンレス継目無鋼管につき3本採取する。次いで、これらの試験片を用いて、試験温度:-10℃でシャルピー衝撃試験を行ない、3本の試験片の吸収エネルギーの最低値を、-10℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE-10とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、ステンレス鋼の耐食性、特に耐SSC性および酸環境における耐食性に及ぼす各種要因について鋭意検討した。その結果、Cr、Mo、Sb、Co、Caを所定量以上含有させる、かつ鋼の相分率に影響するNi量を所定の範囲に制限することにより優れた耐食性を得られることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
1.質量%で、
C :0.06%以下、
Si:1.0%以下、
Mn:0.01%以上1.0%以下、
P :0.05%以下、
S :0.005%以下、
Cr:15.2%以上18.0%以下、
Mo:1.5%以上4.3%以下、
Cu:1.2%以上3.5%以下、
Ni:3.5%以上5.2%以下、
V :0.5%以下、
Al:0.10%以下、
N :0.10%以下、
O :0.010%以下、
Sb:0.001%以上1.000%以下
Co:0.01%以上1.00%以下、および
Ca:0.001%以上0.030%以下を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
体積率で、
マルテンサイト相が30%以上、
フェライト相が50%以下、および
残留オーステナイト相が40%以下であり、
降伏強さが758MPa以上、
-10℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE-10が40J以上である、ステンレス継目無鋼管。
2.前記成分組成が、質量%で、
Nb:0.07%以下、
Ti:0.2%以下、
W :0.9%以下、
B :0.01%以下、
Ta:0.3%以下、
Zr:0.3%以下、
REM:0.3%以下、
Mg:0.01%以下、および
Sn:1.0%以下
からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含有する、上記1に記載のステンレス継目無鋼管。
3.体積率で、
マルテンサイト相が50%以上、
フェライト相が50%以下、および
残留オーステナイト相が25%以下であり、
降伏強さが862MPa以上である、上記1または2に記載のステンレス継目無鋼管。
4.上記1または2に記載の成分組成を有する鋼素材から継目無鋼管を造管し、
前記継目無鋼管を850~1150℃の焼入温度に加熱し、
前記加熱後の前記継目無鋼管を、0.01℃/s以上の冷却速度で、50℃以下の冷却停止温度まで冷却し、
前記冷却後の前記継目無鋼管を、500~650℃の焼戻温度に加熱することにより、
体積率で、
マルテンサイト相が30%以上、
フェライト相が50%以下、および
残留オーステナイト相が40%以下であり、
降伏強さが758MPa以上、
-10℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE-10が40J以上であるステンレス継目無鋼管を製造する、ステンレス継目無鋼管の製造方法。
5.体積率で、
マルテンサイト相が50%以上、
フェライト相が50%以下、および
残留オーステナイト相が25%以下であり、
降伏強さが862MPa以上である、上記4に記載のステンレス継目無鋼管の製造方法。
本発明によれば、降伏強さ:758MPa(110ksi)以上という高強度と、優れた低温靭性および耐食性とを兼ね備えたステンレス継目無鋼管を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[成分組成]
本発明のステンレス継目無鋼管は、上記成分組成を有する。まず、前記成分組成の限定理由について説明する。以下、とくに断らない限り、「質量%」は単に「%」で記す。
C:0.06%以下
Cは、製鋼過程で不可避に含有される元素である。0.06%を超えてCを含有すると、耐食性が低下する。このため、C含有量は0.06%以下とする。C含有量は、好ましくは0.05%以下であり、より好ましくは0.04%以下であり、さらに好ましくは0.03%以下である。一方、耐食性の観点からはC含有量は低いほど好ましいため、C含有量の下限はとくに限定されない。しかし、脱炭コストの観点からは、C含有量は0.002%以上であることが好ましく、0.003%以上であることがより好ましく、0.005%以上であることがさらに好ましい。
Si:1.0%以下
Siは、脱酸剤として作用する元素である。しかし、1.0%を超えてSiを含有すると、熱間加工性および耐食性が低下する。このため、Si含有量は1.0%以下、好ましくは0.7%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.4%以下とする。一方、Si含有量の下限はとくに限定されないが、脱酸効果を高めるという観点からは、Si含有量は0.03%以上とすることが好ましく、0.05%以上とすることがより好ましく、0.1%以上とすることがさらに好ましい。
Mn:0.01~1.0%
Mnは、脱酸材および脱硫材として作用し、熱間加工性を向上させる元素である。脱酸素および脱硫材としての効果を得るとともに、強度を向上させるために、Mn含有量は0.01%以上、好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上とする。一方、1.0%を超えてMnを含有しても効果が飽和する。このため、Mn含有量は1.0%以下、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.6%以下、さらに好ましくは0.4%以下とする。
P:0.05%以下
Pは、耐炭酸ガス腐食性および耐SSC性を低下させる元素である。所望の耐食性を得るために、P含有量は0.05%以下、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下とする。一方、P含有量はできるだけ低減することが好ましいため、P含有量の下限はとくに限定されず、0%であってよい。しかし、過度の低減はコストの上昇を招くため、コストの観点からは、P含有量は0.005%以上であることが好ましく、0.010%以上であることがより好ましい。
S:0.005%以下
Sは、熱間加工性を著しく低下させ、熱間造管工程の安定操業を阻害する元素である。また、Sは、鋼中では硫化物系介在物として存在し、耐食性を低下させる。そのため、S含有量は、0.005%以下、好ましくは0.004%以下、より好ましくは0.003%以下、さらに好ましくは0.002%以下とする。一方、S含有量はできるだけ低減することが好ましいため、S含有量の下限はとくに限定されず、0%であってよい。しかし、過度の低減はコストの上昇を招くため、コストの観点からは、S含有量は0.0003%以上であることが好ましく、0.0005%以上であることがより好ましい。
Cr:15.2~18.0%
Crは、鋼管表面の保護皮膜を形成して耐食性向上に寄与する元素である。Cr含有量が15.2%未満では、所望の耐炭酸ガス腐食性および耐硫化物応力割れ性を確保することができない。このため、Cr含有量は15.2%以上、好ましくは15.5%以上、より好ましくは16.0%以上、さらに好ましくは16.30%以上とする。一方、Cr含有量が18.0%を超えると、フェライト分率が高くなりすぎて、所望の強度を確保できなくなる。このため、Cr含有量は18.0%以下、好ましくは17.5%以下、より好ましくは17.2%以下、さらに好ましくは17.0%以下とする。
Mo:1.5~4.3%
Moは、鋼管表面の保護皮膜を安定化させて、Clや低pHによる孔食に対する抵抗性を増加させ、これにより耐食性を高める。所望の耐食性を得るために、Mo含有量を1.5%以上、好ましくは1.8%以上、より好ましくは2.0%以上、さらに好ましくは2.3%以上とする。一方、Mo含有量が4.3%を超える場合、フェライト分率が高くなりすぎて、所望の強度を確保できなくなる。このため、Mo含有量は4.3%以下、好ましくは4.0%以下、より好ましくは3.5%以下、さらに好ましくは3.0%以下とする。
Cu:1.2~3.5%
Cuは、鋼管表面の保護皮膜を強固にし、耐炭酸ガス腐食性および耐硫化物応力割れ性を高める効果を有する。所望の強度および耐食性、特に耐炭酸ガス腐食性を得るために、Cu含有量を1.2%以上、好ましくは1.8%以上、より好ましくは2.0%以上、さらに好ましくは2.3%以上とする。一方、Cu含有量が多すぎると鋼の熱間加工性が低下して造管時に外面疵が発生し、所望の耐硫化物応力割れ性が得られなくなる。そのため、Cu含有量は3.5%以下、好ましくは3.2%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.7%以下とする。
Ni:3.5~5.2%
Niは、鋼の低温靭性を向上させる。また、Niは、オーステナイト分率の増加に寄与するため、熱間圧延時の熱間加工性に影響する。所望の靭性を得るために、Ni含有層を3.5%以上、好ましくは3.8%以上、より好ましくは4.0%以上、さらに好ましくは4.3%以上とする。一方、Ni含有量が5.2%を超える場合、オーステナイト分率が高くなりすぎ、鋼の熱間加工性が低下する。さらにその結果、熱間圧延時に疵を生じやすくなり、所望の耐硫化物応力割れ性が得られない場合がある。このため、Ni含有量は5.2%以下、好ましくは5.0%以下とする。
V:0.5%以下
Vは、炭窒化物を形成することで靭性を損なうことなく強度を増加させる元素である。また、Vは耐食性を向上させる作用も有している。これは、Vが優先的に炭窒化物を形成することにより、Crなどの耐食性元素が炭窒化物を形成して耐食性に効く有効量が減少することが防止されるためである。しかし、0.5%を超えてVを含有させても、その効果は飽和する。このため、V含有量は0.5%以下、好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下とする。一方、V含有量の下限はとくに限定されないが、0.01%以上とすることが好ましく、0.03%以上とすることがより好ましい。
Al:0.10%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素である。しかし、0.10%を超えてAlを含有すると、耐食性が低下する。このため、Al含有量は0.10%以下、好ましくは0.07%以下、より好ましくは0.05%以下とする。一方、Al含有量の下限はとくに限定されないが、脱酸効果を高めるという観点からは、Al含有量を0.005%以上とすることが好ましく、0.01%以上とすることがより好ましく、0.015%以上とすることがさらに好ましい。
N:0.10%以下
Nは製鋼過程で不可避に含有される元素であるが、鋼の強度を高める元素でもある。しかし、0.10%を超えてNを含有すると、窒化物の形成量が過剰となり耐食性が低下する。このため、N含有量は0.10%以下、好ましくは0.07%以下、より好ましくは0.05%以下、さらに好ましくは0.03%以下とする。一方、N含有量の下限はとくに限定されないが、極度のN含有量の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、N含有量は、0.002%以上とすることが好ましく、0.003%以上とすることがより好ましく、0.005%以上とすることがさらに好ましい。
O:0.010%以下
O(酸素)は、鋼中では酸化物として存在するため、各種特性に悪影響を及ぼす。このため、本発明では、O含有量をできるだけ低減することが望ましい。とくに、O含有量が0.010%を超えると熱間加工性および耐食性が低下する。このため、O含有量は0.010%以下とする。しかし、過度の低減はコストの上昇を招くため、コストの観点からは、O含有量は0.00005%以上であることが好ましく、0.001%以上であることがより好ましい。
Sb:0.001~1.000%
Sbは、酸環境における耐食性を向上させるために必要な元素である。所望の耐食性を得るために、Sb含有量を0.001%以上、好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.005%以上、さらに好ましくは0.010%以上とする。一方、Sbを1.000%超えて含有させても効果が飽和する。そのため、Sb含有量は1.000%以下、好ましくは0.500%以下、より好ましくは0.100%以下、さらに好ましくは0.050%以下とする。
Co:0.01~1.00%
Coは、耐食性を向上させる元素である。所望の耐食性を得るために、Co含有量を0.01%以上、好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上とする。一方、Coは1.00%超えて含有させても効果が飽和する。そのため、Co含有量は1.00%以下、好ましくは0.50%以下、より好ましくは0.30%以下、さらに好ましくは0.10%以下とする。
Ca:0.001~0.030%
Caは、硫化物の形態制御を介して熱間加工性を向上させる元素であり、造管時の疵発生を抑制することで、鋼管における耐SSC性の改善に寄与する。前記効果を得るために、Ca含有量を0.001%以上、好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010%超、さらに好ましくは0.012%以上、最も好ましくは0.014%以上とする。一方、0.030%を超えてCaを含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できない。そのため、Ca含有量は0.030%以下、好ましくは0.025%以下、より好ましくは0.020%以下である。
本発明の一実施形態におけるステンレス継目無鋼管は、以上の成分を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する。
本発明の他の実施形態においては、上記成分組成が、さらに任意にNb、Ti、W、B、Ta、Zr、REM、Mg、およびSnからなる群より選択される少なくとも1つを含有することができる。Nb、Ti、W、B、Ta、Zr、REM、Mg、およびSnは、任意選択的に含有できる鋼成分であり、これらの成分の含有量は0%であってもよい。
Nb:0.07%以下
Nbは、炭窒化物を形成し、強度および耐食性をさらに向上させる元素であり、必要に応じて含有することができる。しかし、Nbの炭窒化物は低温靭性を低下させやすいため、Nbを添加する場合、Nb含有量は0.07%以下、好ましくは0.03%以下、より好ましくは0.01%以下とする。一方、Nb含有量の下限は0%であってよいが、Nbの添加効果を高めるという観点からは、Nb含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Ti:0.2%以下
Tiは、強度および耐食性をさらに向上させる元素であり、必要に応じて含有することができる。しかし、Tiを0.2%超えて含有すると、低温靭性が低下する。このため、Tiを添加する場合、Ti含有量は0.2%以下、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.01%以下とする。一方、Ti含有量の下限は0%であってよいが、Tiの添加効果を高めるという観点からは、Ti含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
W:0.9%以下
Wは、鋼のさらなる強度向上に寄与するとともに、鋼管表面の保護皮膜を安定化させて耐食性をさらに高める元素である。しかし、0.9%を超えてWを含有すると、低温靭性が低下する。このため、Wを添加する場合、W含有量は0.9%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下とする。一方、W含有量の下限はとくに限定されず、0%であってよいが、0.05%以上とすることが好ましく、0.1%以上とすることがより好ましい。
B:0.01%以下
Bは、熱間加工性の改善に寄与するとともに、造管過程において亀裂や割れの発生を抑制する効果も有する元素である。しかし、0.01%を超えてBを含有すると、低温靭性が低下する。このため、Bを添加する場合、B含有量は0.01%以下、好ましくは0.007%以下、より好ましくは0.005%以下とする。一方、B含有量の下限はとくに限定されず、0%であってよいが、0.0005%以上とすることが好ましく、0.001%以上とすることがより好ましい。
Ta:0.3%以下
Taは、強度をさらに向上させるとともに、耐食性をさらに向上させる効果を有する元素であり、必要に応じて含有することができる。しかし、0.3%を超えて含有させても効果が飽和する。このため、Taを添加する場合、Ta含有量を0.3%以下とする。一方、Ta含有量の下限はとくに限定されず、0%であってよいが、0.001%以上とすることが好ましい。
Zr:0.3%以下
Zrは、強度をさらに向上させる元素であり、必要に応じて含有することができる。また、Zrは耐SSC性をさらに改善する効果も有する。しかし、0.3%を超えてZrを含有しても効果が飽和する。このため、Zrを添加する場合、Zr含有量を0.3%以下とする。一方、Zr含有量の下限はとくに限定されず、0%であってよいが、0.0005%以上とすることが好ましい。
REM:0.3%以下
REM(希土類金属)は、硫化物の形態制御を介して耐硫化物応力割れ性のさらなる改善に寄与する元素であり、必要に応じて含有できる。しかし、0.3%超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなる。このため、REMを添加する場合、REM含有量を0.3%以下とする。一方、REM含有量の下限はとくに限定されず、0%であってよいが、0.0005%以上とすることが好ましい。なお、本発明でいうREMとは、原子番号21番のスカンジウム(Sc)と原子番号39番のイットリウム(Y)及び、原子番号57番のランタン(La)から71番のルテチウム(Lu)までのランタノイドである。本発明のステンレス継目無鋼管の成分組成は、上記REMの少なくとも1つを任意に含有することができる。本発明におけるREM含有量とは、前記元素の総含有量である。
Mg:0.01%以下
Mgは、耐食性をさらに向上させる元素であり、必要に応じて含有できる。しかし、0.01%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果を期待できない。このため、Mgを添加する場合、Mg含有量を0.01%以下とする。一方、Mg含有量の下限はとくに限定されず、0%であってよいが、0.0005%以上とすることが好ましい。
Sn:1.0%以下
Snは、耐食性をさらに向上させる元素であり、必要に応じて含有できる。しかし、1.0%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できない。このため、Snを含有する場合、Sn含有量を1.0%以下とする。一方、Sn含有量の下限はとくに限定されず、0%であってよいが、0.001%以上とすることが好ましい。
[組織]
次に、本発明のステンレス継目無鋼管の組織の限定理由について説明する。
本発明の一実施形態におけるステンレス継目無鋼管は、体積率で、マルテンサイト相が30%以上、フェライト相が50%以下、および残留オーステナイト相が40%以下である。
マルテンサイト相:30%以上
マルテンサイト相の体積率が30%未満であると、所望の強度を確保することができない。そのため、マルテンサイト相の体積率は、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上とする。一方、マルテンサイト相の体積率の上限はとくに限定されないが、90%以下とすることが好ましく、85%以下とすることがより好ましい。
フェライト相:50%以下
フェライト相を含有することにより、硫化物応力腐食割れおよび硫化物応力割れの進展を抑制することができ、優れた耐食性が得られる。しかし、フェライト相の体積率が50%を超えると、所望の強度を確保できない。そのため、フェライト相の体積率を50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下とする。一方、フェライト相の体積率の下限はとくに限定されないが、10%以上とすることが好ましく、15%以上とすることがより好ましく、20%以上とすることがさらに好ましい。
残留オーステナイト相:40%以下
残留オーステナイト相の存在により、延性および低温靭性が向上する。しかし、体積率で40%を超える多量のオーステナイト相が析出すると、所望の強度を確保できない。このため、残留オーステナイト相は体積率で40%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下とする。一方、残留オーステナイト相の体積率の下限はとくに限定されないが、3%以上とすることが好ましく、5%以上とすることがより好ましい。
ここで、上記各相の体積率の測定は、次の方法で行うことができる。まず、ステンレス継目無鋼管より採取した組織観察用試験片をビレラ試薬(ピクリン酸、塩酸およびエタノールをそれぞれ2g、10mlおよび100mlの割合で混合した試薬)で腐食する。次いで、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて前記組織観察用試験片の組織を倍率1000倍で撮像し、SEM画像を得る。得られたSEM画像を画像解析ソフトウェア(ImageJ 1.52p,National Institute of Health)を用いて解析し、フェライト相の組織分率(面積率(%))を算出する。前記解析においては、SEM画像を2値化し、輝度が小さい領域をフェライト相と見なす。以上の手順で得た面積率をフェライト相の体積率(%)と定義する。
次に、ステンレス継目無鋼管より採取したX線回折用試験片を、管軸方向に直交する断面(C断面)が測定面となるように、研削および研磨し、X線回折法を用いて残留オーステナイト(γ)相の組織分率を測定する。具体的には、残留オーステナイト相の体積率は、オーステナイトの(220)面およびフェライトの(211)面の積分強度から、次式を用いて算出する。
Vγ(%)=100/(1+(IαRγ/IγRα))
ここで、
Vγ:残留オーステナイト相の体積率、
Iα:フェライトの(211)面の積分強度、
Iγ:オーステナイトの(220)面の積分強度、
Rα:αの結晶学的理論計算値(34.15)、
Rγ:γの結晶学的理論計算値(22.33)である。
また、上記測定方法により求めたフェライト相および残留γ相以外の残部を、マルテンサイト相の分率とする。なお、上記の各組織の観察方法は、後述の実施例でも詳述している。
なお、本発明のステンレス継目無鋼管の組織は、実質的にマルテンサイト相、フェライト相、および残留オーステナイト相からなる。すなわち、前記組織は本発明の作用効果を損なわない範囲で、他の組織を含有していてもよい。前記他の組織としては、例えば、金属間化合物および介在物が挙げられる。
言い換えると、本発明の一実施形態におけるステンレス継目無鋼管は、体積率で、
50%以下のフェライト相、および
40%以下の残留オーステナイト相を含み、残部が実質的にマルテンサイト相からなり、かつ、
前記マルテンサイト相の体積率が30%以上である組織を備えるものであってもよい。
また、本発明の他の実施形態におけるステンレス継目無鋼管は、体積率で、
30%以上のマルテンサイト相、
50%以下のフェライト相、および
40%以下の残留オーステナイト相からなる組織を備えるものであってもよい。
ただし、いずれの場合であっても、上記組織には、不可避的に存在する不純物相が含まれることが許容される。
降伏強さ:758MPa以上
本発明のステンレス継目無鋼管は、758MPa以上の降伏強さを有する。前記降伏強さの上限はとくに限定されないが、1034MPa以下であることが好ましい。前記降伏強さは引張試験により測定することができる。より具体的には、実施例に記載した方法で測定することができる。
vE-10:40J以上
本発明のステンレス継目無鋼管は、-10℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE-10が40J以上である。前記シャルピー吸収エネルギーvE-10は高いほどよいため、上限はとくに限定されないが、例えば、300J以下であってよく、250J以下であってもよい。前記シャルピー吸収エネルギーはシャルピー衝撃試験により測定することができる。より具体的には、実施例に記載した方法で測定することができる。
本発明のステンレス継目無鋼管は、とくに限定されることなく任意の用途に用いることができるが、中でも油井用として極めて好適に用いることができる。すなわち、本発明の一実施形態におけるステンレス継目無鋼管は、油井用ステンレス継目無鋼管(油井用高強度ステンレス継目無鋼管)である。
[製造方法]
次に、本発明のステンレス継目無鋼管の好適な製造方法について説明する。
本発明のステンレス継目無鋼管は、鋼素材から継目無鋼管を造管し、前記継目無鋼管に特定の条件で焼入れ-焼戻処理を施すことにより製造することができる。
上記鋼素材としては、とくに限定されることなく任意の素材を用いることができる。前記鋼素材としては、典型的にはビレットを用いられる。前記鋼素材としては、上述した成分組成を有する素材を用いることができる。
前記鋼素材の製造方法はとくに限定されず、任意の方法で製造することができる。例えば、上述した成分組成を有する溶鋼を、転炉等を用いた常用の溶製方法で溶製し、次いで、連続鋳造法、造塊-分塊圧延法等の方法でビレット等の鋼素材とすることができる。
[造管]
上記鋼素材を造管して継目無鋼管とする。前記造管の方法はとくに限定されず、任意の方法で行うことができる。前記造管は、熱間加工により行うことが好ましい。熱間加工により造管を行う場合は、鋼素材を加熱した後、熱間加工により継目無鋼管とすればよい。前記加熱における加熱温度はとくに限定されないが、造管の際の熱間加工性と最終製品の低温靭性とを高い水準で両立させるという観点からは、1100~1350℃とすることが好ましい。
鋼素材を加工して継目無鋼管とする方法としては、とくに限定されず任意の方法を用いることができる。例えば、マンネスマン-プラグミル法およびマンネスマン-マンドレルミル法のいずれかの方法により継目無鋼管を得ることができる。
熱間加工により造管を行った場合には、造管後に冷却処理を行ってもよい。前記冷却処理は、とくに限定されることなく任意の条件で行うことができる。例えば、熱間加工後、室温まで冷却することが好ましい。前記冷却における冷却速度はとくに限定されず、任意の速度で冷却することができる。例えば、空冷程度の冷却速度で冷却してもよい。
[焼入れ-焼戻処理]
次いで、得られた継目無鋼管に対して、特定の条件で、焼入れ処理と焼戻処理とからなる熱処理(焼入れ-焼戻処理)を施す。以下、焼入れ-焼戻処理の条件について説明する。
・焼入れ処理
まず、継目無鋼管を850~1150℃の焼入温度に加熱し、加熱された前記継目無鋼管を、0.01℃/s以上の冷却速度で、50℃以下の冷却停止温度まで冷却する。
焼入温度:850~1150℃
焼入れ処理における加熱温度(焼入温度)が850℃未満では、マルテンサイトからオーステナイトへの逆変態が起こらず、また冷却時にオーステナイトからマルテンサイトへの変態が起こらず、所望の強度を確保できない。そのため、焼入温度は850℃以上、好ましくは900℃以上とする。一方、焼入温度が1150℃より高いと、結晶粒が粗大化し、その結果、低温靭性が劣化する。そのため、焼入温度は1150℃以下、好ましくは1100℃以下とする。
上記焼入れ処理においては、継目無鋼管を前記焼入温度まで加熱した後、該焼入温度に保持する均熱処理を行ってもよい。均熱処理を行うことにより、継目無鋼管の肉厚方向における温度を均一化し、材質のバラツキを低減することができる。焼入温度に保持する時間(均熱時間)はとくに限定されないが、5~30分とすることが好ましい。
冷却速度:0.01℃/s以上
焼入れ処理における冷却速度が0.01℃/s未満であると、所望の組織を得ることができない。そのため、冷却速度は0.01℃/s以上、好ましくは1.0℃/s以上、より好ましくは5.0℃/s以上、さらに好ましくは10.0℃/s以上とする。一方、前記冷却速度の上限についてはとくに限定されないが、100℃/s以下とすることが好ましく、50℃/s以下とすることがより好ましく,30℃/s以下とすることがさらに好ましい。
上記冷却は、特に限定されることなく、任意の方法で行うことができる。例えば、前記冷却は、空冷および水冷の少なくとも一方の方法で行うことが好ましく、水冷で行うことがより好ましい。
冷却停止温度:50℃以下
冷却停止温度が50℃より高いと、所望の組織を得ることができない。すなわち、冷却停止温度が高いと、オーステナイトからマルテンサイトへの変態が十分に起こらず、残留オーステナイト分率が過剰となる。そのため、上記焼入れ処理における冷却停止温度は、50℃以下とする。一方、前記冷却停止温度の下限はとくに限定されないが、例えば、0℃以上であってよい。なお、ここで前記冷却停止温度は、継目無鋼管の表面温度とする。
・焼戻処理
次いで、上記焼入れ処理後の継目無鋼管を、500~650℃の焼戻温度に加熱する焼戻し処理を行う。
焼戻温度:500~650℃
焼戻温度が500℃未満であると、十分な焼戻効果を得ることができず、その結果、低温靭性が劣化する。そのため、焼戻温度は500℃以上、好ましくは520℃以上とする。一方、焼戻温度が650℃より高いと、金属間化合物が多く析出し、優れた低温靭性が得られない。そのため、焼戻温度は650℃以下、好ましくは630℃以下とする。
上記焼戻し処理においては、継目無鋼管を前記焼戻温度まで加熱した後、該焼戻温度に保持することができる。前記焼戻温度に保持する時間(保持時間)はとくに限定されないが、肉厚方向における温度を均一化し、材質の変動を防止するという観点からは、5分以上とすることが好ましい。一方、前記保持時間の上限についてもとくに限定されないが、90分以下とすることが好ましい。
上記焼戻し処理を行った後は、放冷することができる。
上記焼入れ-焼戻処理を施すことにより、所望の強度を有するとともに、優れた低温靭性および耐食性とを兼ね備えたステンレス継目無鋼管を得ることができる。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
まず、以下の手順で表1~3に示す成分組成を有する鋼素材から継目無鋼管を造管した。
表1~3に示す成分組成を有する溶鋼を用いて鋼素材を鋳造した。その後、前記鋼素材を加熱し、モデルシームレス圧延機を用いる熱間加工により造管して、外径177.8mm×肉厚16.0mmの継目無鋼管とし、空冷した。このとき、熱間加工前の鋼素材の加熱温度は1250℃とした。
次いで、得られた継目無鋼管に、以下の条件で焼入れ-焼戻処理を施して、ステンレス継目無鋼管を得た。
・焼入れ
得られた継目無鋼管に対して、表4~6に示す条件で焼入れ処理を施した。すなわち、前記継目無鋼管を表4~6に示す焼入温度まで加熱し、表4~6に示した均熱時間の間、該焼入温度に保持した。次いで、表4~6に示した冷却速度で、5℃の冷却停止温度まで冷却した。前記冷却は水冷で行った。
・焼戻し
その後、前記冷却後の継目無鋼管を、表4~6に示した焼戻温度まで加熱し、表4~6に示した保持時間の間、該焼戻温度に保持した。その後、前記継目無鋼管を空冷(放冷)した。前記空冷における冷却速度は0.04℃/sであった。
得られたステンレス継目無鋼管から試験片を採取し、組織観察、引張試験、シャルピー衝撃試験、および耐食性試験を実施した。試験方法は次の通りとした。
(1)組織観察
得られたステンレス継目無鋼管から、管軸方向と肉厚方向を含む断面が観察面となるように組織観察用試験片を採取した。得られた組織観察用試験片をビレラ試薬(ピクリン酸、塩酸およびエタノールをそれぞれ2g、10mlおよび100mlの割合で混合した試薬)で腐食して走査型電子顕微鏡(SEM)で組織を倍率1000倍で撮像し、SEM画像を得た。得られたSEM画像を画像解析ソフトウェア(ImageJ 1.52p,National Institute of Health)を用いて解析し、フェライト相の組織分率(面積率(%))を算出した。前記解析においては、SEM画像を2値化し、輝度が小さい領域をフェライト相と見なした。以上の手順で得た面積率をフェライト相の体積率(%)とした。
また、得られたステンレス継目無鋼管から、X線回折用試験片を採取し、管軸方向に直交する断面(C断面)が測定面となるように、研削および研磨し、X線回折法を用いて残留オーステナイト(γ)相の組織分率を測定した。具体的には、残留オーステナイト相の体積率は、オーステナイトの(220)面およびフェライトの(211)面の積分強度から、次式を用いて算出した。
Vγ(%)=100/(1+(IαRγ/IγRα))
ここで、
Vγ:残留オーステナイト相の体積率、
Iα:フェライトの(211)面の積分強度、
Iγ:オーステナイトの(220)面の積分強度、
Rα:αの結晶学的理論計算値(34.15)、
Rγ:γの結晶学的理論計算値(22.33)である。
以上の手順で得た各相の体積率を表4~6に示す。なお、表4~6に記載した組織の記号M、F、およびγは、それぞれ以下の相を表す。
M:マルテンサイト相
F:フェライト相
γ:残留オーステナイト相
(2)引張試験
得られたステンレス継目無鋼管から、管軸方向が引張方向となるように、API(American Petroleum Institute)-5CTの規定に準拠して弧状引張試験片を採取し、引張試験を実施し、降伏強さ(YS)を求めた。ここでは、降伏強さYSが758MPa以上のものを高強度であるとして合格とし、758MPa未満のものは不合格とした。
(3)シャルピー衝撃試験
低温靭性を評価するために、以下の手順でシャルピー衝撃試験を実施した。
まず、得られたステンレス継目無鋼管から、ASTM E23の規定に準拠して、試験片長手方向が管軸に垂直な方向であり,かつノッチが管軸に垂直な面にあるVノッチ試験片(10mm厚)を採取した。前記試験片を用い、試験温度:-10℃においてシャルピー衝撃試験を実施した。上記試験においては、一つのステンレス継目無鋼管につき3本の試験片を採取し、それぞれの試験片について吸収エネルギーを測定した。3本の試験片の吸収エネルギーの最低値を、-10℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE-10とした。vE-10が40J以上である場合を合格とした。
(4)耐炭酸ガス腐食性試験
高温での耐炭酸ガス腐食性を評価するために、以下の試験を行った。
得られたステンレス継目無鋼管から、厚さ3mm×幅30mm×長さ40mmの腐食試験片を機械加工によって作製した。前記腐食試験片を用いて腐食試験を実施し、耐炭酸ガス腐食性の指標としての腐食速度を測定した。前記腐食試験は、オートクレーブ中に保持された試験液:20質量%NaCl水溶液(液温:200℃、30気圧のCOガス雰囲気)中に、上記腐食試験片を浸漬し、浸漬期間を14日間(336時間)として実施した。前記腐食試験後の腐食試験片の重量を測定し、予め測定しておいた腐食試験前の前記試験片の重量を差し引くことにより、腐食試験による重量減少量を求めた。次に、前記重量減少量を、使用した試験片の表面積と前記浸漬期間で割ることにより、単位時間・単位面積あたりの重量減少量を得た。そして、前記単位時間・単位面積あたりの重量減少量を鋼の密度で割ることにより、単位時間・単位面積あたりの腐食厚さに換算した。このようにして得られた単位時間・単位面積あたりの腐食厚さ(mm/y)を炭酸ガス中の腐食速度とした。ここでは、前記腐食速度が0.127mm/y以下のものを合格とし、0.127mm/y超えのものを不合格とした。
(5)耐SSC試験
低温での耐SSC性を評価するために、以下の試験を行った。
得られたステンレス継目無鋼管から、NACE TM0177 Method Cに準拠して、Cの形をした試験片を機械加工によって作製し、耐SSC試験を実施した。なお、鋼管内外面に相当する曲面に対しては研削や研磨は行っていない。
前記耐SSC試験は、0.165質量%NaCl水溶液(液温:7℃、0.995気圧のCOガス、0.005気圧のHS雰囲気)に、酢酸+酢酸ナトリウムを加えてpH:3.0に調整した水溶液中に、NACE TM0177 Method Cに準拠したCの形をした試験片を浸漬し、浸漬時間を720時間とし、降伏応力の100%を負荷応力として負荷して実施した。ここでは、割れ無のものを合格、割れ有のものを不合格とし、表4~6においては合格を「1」、不合格を「2」で示した。
(6)酸環境での腐食試験
酸環境における耐食性を評価するために、以下の試験を行った。
まず、得られたステンレス継目無鋼管から、直方体形状の試験片を機械加工により作成した。前記試験片の寸法は、鋼管の長手方向長さが50mm、鋼管の肉厚方向の厚さが3mm、幅が25mmとした。前記試験片の重量を測定した後、80℃に加熱した15質量%塩酸溶液中に前記試験片を40分間浸漬して腐食試験を実施した。前記腐食試験後の試験片の重量を測定し、腐食試験前の前記試験片の重量を差し引くことにより、腐食試験による重量減少量を求めた。次に、前記重量減少量を、使用した試験片の表面積と前記腐食試験における浸漬時間で割ることにより、単位時間・単位面積あたりの重量減少量を得た。そして、前記単位時間・単位面積あたりの重量減少量を鋼の密度で割ることにより、単位時間・単位面積あたりの腐食厚さに換算した。このようにして得られた単位時間・単位面積あたりの腐食厚さ(mm/y)を酸環境中の腐食速度とした。ここでは、前記腐食速度が600mm/y以下であるものを合格とし、600mm/y超えのものを不合格とした。
(7)熱間加工性
さらに、得られたステンレス継目無鋼管の熱間加工性を評価するために、以下の評価を行った。上記耐SSC試験の試験片の鋼管外面側にあたる面における疵深さを、超音波探傷により測定した。測定された疵深さの最大値に基づいて、以下の3水準で熱間加工性を評価した。
1:最大疵深さが0.1mm以下
2:最大疵深さが0.1mm超、0.2mm以下
3:最大疵深さが0.2mm超
得られた結果を表4~6に示す。表4~6に示した結果から分かるように、本発明の条件を満たすステンレス継目無鋼管は、いずれも、降伏強さ:758MPa(110ksi)以上という高強度と、優れた低温靭性および耐食性とを兼ね備えていた。特に耐食性については、「高温での耐炭酸ガス腐食性」、「低温での耐SSC性」、および「酸環境における耐食性」のすべてに優れていた。したがって、本発明のステンレス継目無鋼管は、油井用鋼管を初めとする様々な用途に極めて好適に用いることができる。
さらに、Ca含有量が0.010%超である発明例では、疵深さの最大値が0.1mm以下であった。この結果は、特にCa含有量が0.010%超である場合に、熱間加工性が著しく優れることを表している。したがって、Ca含有量が0.010%超であれば、低温での耐SSC性に一層優れるといえる。
Figure 0007409569000001
Figure 0007409569000002
Figure 0007409569000003
Figure 0007409569000004
Figure 0007409569000005
Figure 0007409569000006

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C :0.06%以下、
    Si:1.0%以下、
    Mn:0.01%以上1.0%以下、
    P :0.05%以下、
    S :0.005%以下、
    Cr:15.2%以上18.0%以下、
    Mo:1.5%以上4.3%以下、
    Cu:1.2%以上3.5%以下、
    Ni:3.5%以上5.2%以下、
    V :0.03%以上0.5%以下、
    Al:0.10%以下、
    N :0.10%以下、
    O :0.010%以下、
    Sb:0.001%以上1.000%以下
    Co:0.01%以上1.00%以下、および
    Ca:0.001%以上0.030%以下を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    体積率で、
    マルテンサイト相が30%以上、
    フェライト相が50%以下、および
    残留オーステナイト相が40%以下であり、
    降伏強さが758MPa以上、
    -10℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE-10が40J以上である、ステンレス継目無鋼管。
  2. 前記成分組成が、質量%で、
    Nb:0.07%以下、
    Ti:0.2%以下、
    W :0.9%以下、
    B :0.01%以下、
    Ta:0.3%以下、
    Zr:0.3%以下、
    REM:0.3%以下、
    Mg:0.01%以下、および
    Sn:1.0%以下
    からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含有する、請求項1に記載のステンレス継目無鋼管。
  3. 体積率で、
    マルテンサイト相が50%以上、
    フェライト相が50%以下、および
    残留オーステナイト相が25%以下であり、
    降伏強さが862MPa以上である、請求項1または2に記載のステンレス継目無鋼管。
  4. 請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材から継目無鋼管を造管し、
    前記継目無鋼管を850~1150℃の焼入温度に加熱し、
    前記加熱後の前記継目無鋼管を、0.01℃/s以上の冷却速度で、50℃以下の冷却停止温度まで冷却し、
    前記冷却後の前記継目無鋼管を、500~650℃の焼戻温度に加熱することにより、
    体積率で、
    マルテンサイト相が30%以上、
    フェライト相が50%以下、および
    残留オーステナイト相が40%以下であり、
    降伏強さが758MPa以上、
    -10℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE-10が40J以上であるステンレス継目無鋼管を製造する、ステンレス継目無鋼管の製造方法。
  5. 体積率で、
    マルテンサイト相が50%以上、
    フェライト相が50%以下、および
    残留オーステナイト相が25%以下であり、
    降伏強さが862MPa以上である、請求項4に記載のステンレス継目無鋼管の製造方法。
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