JP7400684B2 - 車両用無線通信装置、通信制御方法 - Google Patents

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Description

本開示は、車載装置と外部装置との通信経路を制御する車両用無線通信装置、及び通信制御方法に関する。
特許文献1には、複数種類の通信メディアによる無線通信を実施可能な構成において、通信メディア毎の通信性能を、電波環境を示す複数種類の指標に基づいてスコア化し、データ通信に使用する通信メディアを選択する構成が開示されている。具体的には、マルチパス数、干渉度、ドップラーシフト量、実効スループットの推定値、及び移動環境情報に基づいて通信メディア毎の通信性能をスコア化し、スコアが最も高い通信メディアを選択する。
なお、特許文献1における移動環境情報とは、カーナビゲーションシステムから提供される、各通信方式に対応するセルラー基地局の位置情報、及び、障害物環境情報を指す。障害物環境とは、現在位置がビル街や山間部のように障害物の多い場所か、障害物の少ない場所かを示す情報である。
また、特許文献1で想定されている通信メディアとは、例えば、FSK方式のFM放送、CDMA方式の電話回線、OFDM方式の無線LAN、QPSK方式の路車間通信などである。FSKはFrequency shift keyingの略である。CDMAは、Code Division Multiple Accessの略である。OFDMは、Orthogonal Frequency Division Multiplexingの略である。QPSKはQuadrature Phase Shift Keyingの略である。
その他、3GPP(Third Generation Partnership Project)においては、移動通信端末の利用特性に応じてネットワーク処理を最適化する方法が提案されている(非特許文献1等)。
特許第4655955号公報
3GPP TS 36.304 V8.10.0 (2011-06) 3rd Generation Partnership Project, "Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); User Equipment (UE) procedures in idle mode (Release 8)"
特許文献1に開示の構成では、マルチパス数、干渉度、ドップラーシフト量、実効スループットの推定値、セルラー基地局の位置、及び障害物の多寡を用いて、ワイヤレスLANと電話回線などの複数の通信サービスの中からデータ通信に使用するサービスを1つ選択する方法については言及されている。
しかしながら特許文献1では上記以外の指標に基づいて通信サービスを選択する構成は開示されていない。通信サービスを選択する際の指標として他のパラメータを採用することで、車両用無線通信装置の作動を最適化できる余地が残っている。
さらに、通信サービスの中には、移動に対する通信効率の低下は起こりにくい一方、通信料金等のコストが発生する通信サービスもあれば、移動に伴う通信効率の低下が生じやすい一方、通信コストを抑制できる通信サービスもある。つまり、通信サービス毎に特性がある。
例えば、Wi-Fi(登録商標)等の狭域通信は、アクセスポイントの通信圏内に装置が入ったらすぐにデータ通信を開始できるわけではなく、通信接続のための手続きが完了するまでは、データ通信を実行することができない。通信接続のための手続きとは、例えばIPアドレスの割当や暗号通信のための設定などである。このような狭域通信は、通信料金を抑制できるといった利点を有する一方、通信接続時に遅延が生じうるといった欠点を有する。特に、車両の移動に伴って、アクセスポイントの通信圏における滞在時間が短い場合には、狭域通信可能な時間に対する通信接続時の遅延時間の比率が大きくなる。その結果、狭域通信に切り替えるよりも、セルラー通信を採用し続けたほうが総合的な通信効率は高くなるケースが存在しうる。
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、車両の移動に起因して通信効率が低下することを抑制しつつ、通信コストを抑制できる車両用通信装置、通信制御方法を提供することにある。
その目的を達成するための車両用無線通信装置は、少なくとも1つの車載装置が車両外部に設けられた他の通信装置である外部装置とデータ通信を実施するためのインターフェースとして車両で使用される車両用無線通信装置であって、車両外部に配置された無線ローカルエリアネットワークのアクセスポイントを介した無線通信である狭域通信を実施する狭域通信部(F22)と、セルラー基地局を介した無線通信であるセルラー通信を実施するセルラー通信部(F21)と、車両の移動状態を判定する移動状態判定部(F33)と、移動状態判定部が判定した移動状態に基づいて、車載装置が外部装置と通信するための通信経路を選択する通信経路選択部(F35)と、車載装置から、許容可能な通信遅延時間の長さを示す遅延許容量を取得する遅延許容量取得部(F34)と、を備え、通信経路選択部は、移動状態が所定の基準レベル以下であって、かつ、車載装置の遅延許容量が所定の狭域通信許容閾値以上である場合には、車載装置の通信経路として狭域通信をセルラー通信よりも優先的に採用する一方、遅延許容量が狭域通信許容閾値未満である場合には、車載装置の通信経路としてセルラー通信を採用するように構成されている
上記の車両用通信装置は、上記の課題に着眼して創出されたものであって、移動状態が所定の基準レベル以下である場合、すなわち、アクセスポイントが提供する通信圏内への滞在時間が相対的に長いことが期待できる場合には狭域通信に切り替えることを許容する。また、移動状態が基準レベルを超過してあって、アクセスポイントが提供する通信圏内への滞在時間が短いことが想定される場合には、狭域通信に切り替えることはしない。当該構成によれば、通信効率が低下することを抑制しつつ、通信料金等のコストを低減できる。
上記目的を達成するための通信制御方法は、少なくとも1つの車載装置が外部装置とデータ通信するための通信経路として、車両外部に配置された無線ローカルエリアネットワークのアクセスポイントを介した無線通信である狭域通信と、セルラー基地局を介した無線通信であるセルラー通信の何れを用いるかを制御するための、車両が備える少なくとも1つのプロセッサ(51)によって実行される通信制御方法であって、車両の移動状態を判定する移動状態判定ステップ(S2)と、移動状態判定ステップで判定された移動状態に基づいて、車載装置が外部装置と通信するための通信経路を選択する通信経路選択ステップ(S5)と、車載装置から、許容可能な通信遅延時間の長さを示す遅延許容量を取得する遅延許容量取得ステップ(S4)と、を含み、通信経路選択ステップは、移動状態が所定の基準レベル以下であって、かつ、車載装置の遅延許容量が所定の狭域通信許容閾値以上である場合には、車載装置の通信経路として狭域通信をセルラー通信よりも優先的に採用する一方、遅延許容量が狭域通信許容閾値未満である場合には、車載装置の通信経路としてセルラー通信を採用するように構成されている。
上記の方法によれば車両用無線通信装置と同様の作動原理により、同様の効果を奏する。
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
移動体通信システム100の全体像を説明するための図である。 車載通信システム1の構成の一例を示す図である。 無線通信装置5の構成を示すブロック図である。 車載装置6毎の通信経路を選択する処理の全体像を示すフローチャートである。 車載装置6毎の通信経路の割当処理を示すフローチャートである。 通信制御部F3の作動を説明するための図である。 無線通信装置5の構成を示すブロック図である。 アプリごとにAPNを割り当てる態様を示す図である。
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。図1は、本開示に係る移動体通信システム100の概略的な構成の一例を示す図である。移動体通信システム100は、例えばLTE(Long Term Evolution)に準拠した無線通信を提供する。実施形態で説明を省略している部分は、非特許文献1に開示の方法など、LTEの規格で定められている方法で行われるものとする。なお、移動体通信システム100は、4G規格や5G規格などに準拠した無線通信を提供するものであってもよい。以降ではLTE、4G、5GなどをまとめてLTE等とも記載する。以下の実施形態は、4Gや5Gなどに準拠するように適宜変更して実施可能である。
<全体構成>
図1に示すように移動体通信システム100は、車載通信システム1、セルラー基地局2、コアネットワーク3、自動運転管理センタ4A、及び、地図サーバ4Bを含む。自動運転管理センタ4A、及び、地図サーバ4Bは、車載通信システム1にとっての外部装置4の一例に相当する。外部装置4とは、例えばサーバやセンタなど、車両外部に設けられた他の通信装置を指す。
また、移動体通信システム100は、Wi-Fi(登録商標)に準拠した無線LAN(Local Area Network)を形成するための基地局であるWi-Fi基地局7を含みうる。Wi-Fiの規格としては、IEEE802.11nやIEEE802.11ac、IEEE802.11ax(いわゆるWi-Fi6)など、多様な規格を採用可能である。図1のWCRは、Wi-Fi基地局7の通信エリアを示している。Wi-Fi基地局7それ自体、及び、Wi-Fi基地局7が形成する通信エリアWCRは、アクセスポイントあるいはWi-Fiスポットと呼ぶことができる。Wi-Fi基地局7は、インフラ設備として、多様なサービス事業者によって任意の箇所に配置されている。図1ではWi-Fi基地局7を1つしか示していないが、Wi-Fi基地局7は複数存在しうる。
車載通信システム1は、車両に構築されている通信システムである。車載通信システム1は、四輪自動車のほか、二輪自動車、三輪自動車等、道路上を走行可能な多様な車両に搭載可能である。原動機付き自転車も二輪自動車に含めることができる。当該システムが適用される車両Hvは、個人によって所有されるオーナーカーであってもよいし、カーシェアリングサービスや車両貸し出しサービスに供される車両であってもよい。また、車両Hvは、サービスカーであってもよい。サービスカーには、タクシーや路線バス、乗り合いバスなどが含まれる。また、サービスカーは、運転手が搭乗していない、ロボットタクシーまたは無人運行バスなどであってもよい。サービスカーには、荷物を所定の目的地まで自動運搬する無人配送ロボットとしての車両を含めることができる。さらに、車両Hvは、車両外部に存在するオペレータによって遠隔操作される遠隔操作車両であってもよい。ここでのオペレータとは、車両Hvの外部から遠隔操作によって車両を制御する権限を有する人物を指す。
車載通信システム1は、セルラー基地局2及びコアネットワーク3を介して、例えば自動運転管理センタ4Aなどの外部装置4とデータ通信を実施する。また、車載通信システム1は、Wi-Fi基地局7の通信エリア内に存在する場合、Wi-Fi基地局7を介して外部装置4と通信可能に構成されている。以降では、便宜上、セルラー基地局2を介した通信、換言すればLTE/4G/5G規格に準拠した通信のことをセルラー通信とも記載する。また、Wi-Fiに準拠した通信のことWi-Fi通信とも記載する。Wi-Fi通信は、Wi-Fi基地局7の通信エリアWCR内に車両Hvが存在する場合に実施可能となる。
車載通信システム1は、上記の無線通信機能を提供する構成として無線通信装置5を備える。無線通信装置5は、コアネットワーク3にとってのユーザ装置(いわゆるUE:User Equipment)に相当する。無線通信装置5は、ユーザが取り外し可能に構成されていてもよい。また、無線通信装置5は、ユーザによって車室内に持ち込まれた、スマートフォン等の携帯端末であってもよい。無線通信装置5が車両用無線通信装置に相当する。
無線通信装置5は、セルラー通信及びWi-Fi通信といった、通信方式が異なる複数種類の無線通信サービスを利用可能に構成されている。また、無線通信装置5は、セルラー通信としても、それぞれAPN(Access Point Name)が異なる複数の無線通信サービスを利用可能に構成されている。無線通信装置5は、それらの複数の無線通信サービスを使い分けて、多様な外部装置4とデータ通信を実施する。APNは、1つの側面において通信サービスの識別子である。APNには、通信サービスを提供する通信事業者(いわゆるキャリア)が紐付いている。APNが異なれば、仮に通信相手となる外部装置4が同一であっても、当該外部装置4までデータが流れる経路は、実体的、又は、仮想的に相違する。複数の無線通信サービスは、それぞれ異なる通信経路を実現する。つまり、無線通信装置5は、複数の通信経路を用いて外部装置4とデータ通信可能に構成されている。なお、無線通信装置5が利用可能な無線通信サービスあるいは通信経路の概念には、各APNに対応するセルラー通信だけでなく、Wi-Fi通信を含めることができる。無線通信装置5を含む車載通信システム1については別途後述する。
セルラー基地局2は、車載通信システム1とLTE等の規格に準拠した無線信号を送受信する設備である。セルラー基地局2は、eNB(evolved NodeB)とも称される。セルラー基地局2は、5Gで使用されるgNB(next generation NodeB)であってもよい。セルラー基地局2は、所定のセル毎に配置されている。セルは、1つのセルラー基地局2がカバーする通信可能な範囲を指す。なお、セルラー基地局2そのものがセルと呼ばれる場合もある。
セルラー基地局2は、IP(Internet Protocol)ネットワーク等のアクセス回線を介してコアネットワーク3と接続されている。セルラー基地局2は、無線通信装置5とコアネットワーク3との間でトラフィックを中継する。セルラー基地局2は、例えば車載通信システム1からの要求に基づいて送信機会の割り当てなどを実施する。送信機会は、データ送信に使用可能な周波数帯や時間、変調方式などによって構成される。
セルラー基地局2は、定期的に又は所定のイベントが検出された場合に、無線通信装置5を含むUEが移動状態(mobilityState:以降、mSとも記載)を決定するための評価パラメータを配信する。評価パラメータには、例えば、第1上限回数NH、第2上限回数NM、第1観測時間TCR、及び第2観測時間TCRHなどが含まれる。これらの評価パラメータを用いて各UEで算出される移動状態は、第1観測時間TCR内に在圏セルの再選択を実行した回数の頻度を表す。ここでの在圏セルとは、無線アクセスしているセルラー基地局2そのもの、又は、当該セルラー基地局2が形成するセルを指す。上記の評価パラメータの技術意義、及び、移動状態の判定方法の詳細については別途後述する。
なお、ここではセルラー基地局2が、コアネットワーク3から提供された情報に沿って第1上限回数NHなどの評価パラメータを決定して無線通信装置5に通知するものとするが、これに限らない。例えばMME31などが、第1上限回数NHなどの評価パラメータを決定してもよい。また、各種評価パラメータは予め無線通信装置5に登録されていても良い。
その他、セルラー基地局2は、伝送路の状態を示す情報(CSI:Channel State Information)を把握するための参照信号(以降、CSI-RS:CSI-Reference Signal)を送信する。CSI-RSは、無線チャネルの状態を測定するための既知の制御信号である。また、セルラー基地局2は、セル選択用の制御信号として、CRS(Cell-specific RS)も送信する。CRSは、下りリンクの受信品質測定などに使用されるセル固有の参照信号である。CRS及びCSI-RSは、1つの側面において、無線通信装置5またはMME31が無線通信装置5の在圏セルを選択するための制御信号に相当する。CRSやCSI-RSのことを単に参照信号またはRSとも称する。RSの送信は定期的に実施されてもよいし、所定のイベントが生じたことを受けて実施されても良い。RSの送信は、例えばUEからの問い合わせを受けたことや、通信エラーの発生頻度が所定の閾値を超過したことなどをトリガとして実行されても良い。またセルラー基地局2は、各UEに向けて、RSの送信電力の設定値(以降、RSPw;RS Power)を定期的に又は所定のイベント発生時に配信する。例えば無線基地局2は、RSPwを含むシステム情報(SIB: System Information Block)や無線リソース制御(RRC:Radio Resource Control)メッセージを、各UEに逐次送信する。なお、RSPwの設定値は、数百msから数分程度の間隔で更新されうる。RSPwとしては、例えばPDSCH-ConfigCommonに含まれるreferenceSignalPowerを用いることができる。RSPwを含むシステム情報としては例えばSystemInformationBlockType2を用いることができる。RSPwを含むRRCメッセージとしては、RRCConnectionReconfigurationなどを採用することができる。
コアネットワーク3は、いわゆるEPC(Evolved Packet Core)である。コアネットワーク3では、ユーザの認証、契約分析、データパケットの転送経路の設定、QoS(Quality of Service)の制御などの機能を提供する。コアネットワーク3は、例えばIPネットワークや携帯電話網等の、通信事業者によって提供される公衆通信ネットワークを含みうる。コアネットワーク3が無線通信ネットワークに相当する。
コアネットワーク3は、例えば、MME31や、S-GW32、P-GW33、PCRF35などを含む。MME31は、Mobility Management Entityの略であって、セル内のUEの管理や、セルラー基地局2の制御を担当する。MME31は、例えばセルラー基地局2とS-GW32との間における制御信号のゲートウェイとしての役割を担う。S-GW32は、Serving Gatewayの略であって、UEからのデータのゲートウェイに相当する構成である。P-GW33は、Packet Data Network Gatewayの略であって、インターネットなどのPDN(Packet Data Network)35に接続するためのゲートウェイに相当する。P-GW33は、IPアドレスの割当などや、S-GWへのパケット転送を実施する。PCRF35は、Policy and Charging Rules Functionの略であって、ユーザデータの転送のQoS及び課金のための制御を行う論理ノードである。PCRF35は、ネットワークポリシーや課金のルールをもつデータベースを含む。
図1ではセルラー基地局2や、MME31、S-GW32、P-GW33、PCRF35を1つずつしか示していないがこれらはネットワーク全体として複数存在しうる。例えばPCRF35は、APN毎または電気通信事業者ごとに配置されうる。コアネットワーク3内においてデータの転送経路はAPN毎に異なるものとなる。なお、図1のコアネットワーク3内における要素間をつなぐ実線はユーザデータの転送経路を示しており、破線は制御信号のやり取りを示している。
その他、コアネットワーク3は、HLR(Home Location Register)/HSS(Home Subscriber Server)などを含んでいてもよい。コアネットワーク3を構成する装置の名称や組み合わせなどは、例えば5Gなど、移動体通信システム100が採用する通信規格に対応するように適宜変更可能である。また、コアネットワーク3における機能配置は適宜変更可能である。例えばPCRF35が提供する機能は別の装置が備えていても良い。
以降では例えばMME31やS-GW32などのコアネットワーク3を構成する各装置を区別しない場合には、単にコアネットワーク3とも記載する。MME31やS-GW32などのコアネットワーク3を構成する各装置が、ネットワーク側装置に相当する。セルラー基地局2もまた、ネットワーク側装置に含めることができる。セルラー基地局2は、コアネットワーク3が、無線通信装置5と通信するためのインターフェースとしての役割を担うためである。本開示における「ネットワーク側装置」との記載は、「セルラー基地局2及びコアネットワーク3の少なくとも何れか一方」と読み替えることができる。ネットワーク側装置には、無線通信装置5が外部装置4とデータ通信するための多様な設備を含めることができる。
自動運転管理センタ4Aは、自動運転で走行している車両の運行状態を管理するセンタであって、セルラー基地局2等を介して車載通信システム1とデータ通信可能に構成されている。自動運転管理センタ4Aは、例えば車載通信システム1からアップロードされてくる走行状態報告を受信し、異常の有無を判定する。走行状態報告は、自動運転時の車両内、及び、車室外の状況を示すデータセットである。自動運転管理センタ4Aは、各車両から送信されてくる走行状態報告を図示しない運行記録装置に保存するように構成されていても良い。その他、自動運転管理センタ4Aは、車両の走行経路の算出など、車両の中長期的な制御計画を作成して配信する機能などを備えていても良い。
地図サーバ4Bは、所定のデータベースに格納されている地図データを、車両からの要求に基づき配信するサーバであって、セルラー基地局2等を介して車載通信システム1とデータ通信可能に構成されている。地図サーバ4Bが配信する地図データは、高精度地図データでもよいし、ナビ地図データでもよい。高精度地図データは、道路構造、及び、道路沿いに配置されている地物についての位置座標等を、自動運転に利用可能な精度で示す地図データに相当する。ナビ地図データは、ナビゲーション用の地図データであって、高精度地図データよりも相対的に精度の劣る地図データに相当する。
なお、外部装置4としては、その他、多様なサーバ/センタを採用可能である。移動体通信システム100は、外部装置4として、車両に搭載された車両側遠隔制御装置と通信することで、車両を遠隔制御する遠隔制御センタを含んでいても良い。遠隔制御センタは、オペレータが車両を遠隔操作するための装置であるセンタ側遠隔制御装置を含む。センタ側遠隔制御装置は、例えば、車両周辺の景色を映すディスプレイ、及び、ハンドルやペダルなどの操作部材を含む、コックピットとして構成されている。なお、遠隔制御センタは、上述した自動運転管理センタ4Aと統合されていても良い。遠隔制御センタとしての自動運転管理センタ4Aは、例えば自動運転装置6Aからの要求に基づき、車両を遠隔制御するように構成されていても良い。
<車載通信システム1の構成について>
車載通信システム1は、例えば無線通信装置5、自動運転装置6A、ナビゲーション装置6B、及びプローブ装置6Cなどを含む。自動運転装置6A、ナビゲーション装置6B、及びプローブ装置6Cなどといった、種々の車載装置6は、車両内に構築された通信ネットワークである車両内ネットワークNwを介して無線通信装置5と接続されている。車両内ネットワークNwに接続された装置同士は相互に通信可能である。つまり、無線通信装置5は、自動運転装置6A、ナビゲーション装置6B、及びプローブ装置6Cのそれぞれと相互通信可能に構成されている。車両内ネットワークNwは、時分割方式(TDMA:Time Division Multiple Access)などを用いて多重通信可能に構成されている。なお、多重通信の方式としては、周波数分割方式(FDMA:Frequency Division Multiple Access)や、符号分割方式(CDMA:Code Division Multiple Access)、直交周波数分割多重方式(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)などを採用可能である。
なお、車載通信システム1が備える特定の装置同士は、車両内ネットワークNwを介することなく直接的に通信可能に構成されていてもよい。図2において車両内ネットワークNwはバス型に構成されているが、これに限らない。ネットワークトポロジは、メッシュ型や、スター型、リング型などであってもよい。車両内ネットワークNwの規格としては、例えばController Area Network(CANは登録商標)や、イーサネット(登録商標)、FlexRay(登録商標)など、多様な規格を採用可能である。また、無線通信装置5と各車載装置6との接続形態は有線接続に限らず、無線接続であっても良い。車載装置6は、ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。
無線通信装置5は、少なくとも1つの加入者識別モジュール(以降、SIM:Subscriber Identity Module)55を備え、当該SIM55に対応する少なくとも1つのAPNを用いたデータ通信を実施可能に構成されている。換言すれば、無線通信装置5は、複数のAPNのそれぞれに対応する複数の無線通信サービスを用いて複数の外部装置4と無線通信可能に構成されている。或るSIM55に対応するAPNとは、当該SIM55の情報に基づき利用可能なAPNを指す。無線通信装置5は、各APNに対応する無線通信サービスを、通信の用途や通信状況に基づいて使い分ける。加えて、無線通信装置5は、Wi-Fi通信可能に構成されており、移動状態、及び、各車載装置6から通信トラフィックの発生状況に応じて、上述したAPN毎のセルラー通信とWi-Fi通信とを使い分ける。
このような無線通信装置5は、各車載装置6が所定の通信相手としての外部装置4と無線通信するためのインターフェースに相当する。なお、無線通信インターフェースとしての無線通信装置5とは、車載装置6から入力されるデータを外部装置4へ送信する処理、及び、外部装置4から受信したデータを車載装置6へ送出する処理の少なくとも何れか一方を実施する装置に相当する。車両は無線通信装置5の搭載により、インターネットに接続可能なコネクテッドカーとなる。
当該無線通信装置5は、処理部51、RAM52、ストレージ53、通信インターフェース54、SIM55、及びこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として構成されている。処理部51は、RAM52と結合された演算処理のためのハードウェアである。処理部51は、CPU(Central Processing Unit)等の演算コアを少なくとも一つ含む構成である。処理部51は、RAM52へのアクセスにより、種々の処理を実行する。
ストレージ53は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ53には、処理部51によって実行されるプログラムとして、通信制御プログラムが格納されている。処理部51が上記プログラムを実行することは、通信制御プログラムに対応する方法である通信制御方法を実行することに相当する。ストレージ53には、無線通信装置5が接続可能なAPNについての情報(例えばプロファイル等)が登録されている。APNについての情報は、無線通信装置5が電話回線を使ってデータ通信を行うために必要な情報を含む。例えばAPNについての情報には、電話回線からインターネットなどのネットワークへの接続窓口となるゲートウェイ(つまり接続先)を指定する情報を含む。
通信インターフェース54は、車両内ネットワークNwを介して車載装置6と通信するための回路モジュールである。通信インターフェース54は、アナログ回路素子やIC、車両内ネットワークNwの通信規格に準拠したPHYチップなどを用いて実現されている。通信インターフェース54には、例えば車載装置6から出力された送信用データのほか、車速センサが検出した車速データなど、多様なデータが入力される。ここでの送信用データとは、外部装置4向けの通信トラフィック(換言すればデータ)に相当する。
SIM55は、回線の契約者を識別するための情報が記録されたICモジュールであって、例えばICカードとして構成されている。例えばSIM55には、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)と呼ばれる固有番号が、契約者の電話番号と結びついて記録されている。また、SIM55には、利用可能な周波数や、在圏セルを決定するために観測する周波数の優先順位などといった、無線通信接続に係る設定データも登録されている。SIM55は、図示しないカードスロットに挿入されたものでもよいし、eSIM(Embedded SIM)であってもよい。ここでのSIM55の概念には、着脱可能なカードタイプのものと、組み込み型のもの(つまりeSIM)の両方が含まれる。
SIM55は、複数のAPNが利用可能に構成されている。便宜上、無線通信装置5がSIM55を用いて利用可能なAPNのうち、相対的にQoSが低いAPNのことを低QoS-APNと称するとともに、相対的にQoSが高いAPNのことを高QoS-APNと称する。QoSが低いAPNとは、例えば、コアネットワーク3内におけるデータ転送の優先順位が低い、あるいは、帯域保証がされないなどの通信設定(換言すればポリシー条件)に由来して、通信速度が遅い/通信遅延が起きやすいAPNに相当する。低QoS-APNは例えばプローブデータのアップロードなど、即時性があまり要求されないデータ通信に適したAPNと解する事ができる。一方、QoSが高いAPNとは、逆説的に通信遅延が起きにくいAPNである。高QoS-APNは、車両の遠隔制御等といった高い即時性が要求されるデータ通信に適したAPNと解することができる。
なお、ここでは一例としてSIM55はQoSが異なる複数のAPNを利用可能に設定されているものとするが、これに限らない。SIM55は、利用可能なAPNは1つだけであってもよい。ただし、車載装置6からの多様な通信要求に柔軟に対応するために、無線通信装置5は、複数のAPNを利用可能に構成されていることが好ましい。また、無線通信装置5は複数のSIM55を備えていても良い。
自動運転装置6Aは、車載カメラやミリ波レーダなどの周辺監視センサの検出結果などをもとに走行アクチュエータを制御することにより、運転操作の一部または全部をユーザの代わりに実行する装置である。走行アクチュエータには例えば制動装置としてのブレーキアクチュエータや、電子スロットル、操舵アクチュエータなどが含まれる。周辺監視センサは、自車の周辺に存在する物体等を検出するセンサである。周辺監視センサとしては、例えば、カメラ、ミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)、ソナー等を採用することができる。
自動運転装置6Aは、自動運転時の車両内、及び、車室外の状況を示すデータセットを走行状態報告として、無線通信装置5を介して自動運転管理センタ4Aに逐次送信する。自動運転時の車両内の状況には、自動運転装置6Aの作動状態や、乗員の状態を含めることができる。自動運転装置6Aの作動状態を示すデータには、自動運転装置6Aにおける周辺環境の認識結果や、走行計画、各走行アクチュエータの目標制御量などの算出結果も含まれる。自動運転装置6Aは、上述した自動運転に係る種々のデータを、定期的に又は所定の報告イベントが発生したことをトリガとして、無線通信装置5に向けて出力する。
また、自動運転装置6Aは、自動運転管理センタ4Aから、無線通信により、制御計画の作成の参考となるリアルタイムな情報(以降、制御支援情報)を受信するように構成されていても良い。制御支援情報とは、例えば、車両周辺に存在する他の移動体の現在位置や移動速度、進行方向などを示す情報などである。制御支援情報は、例えば通行規制がなされている区間や、渋滞の末尾位置、路上落下物の位置などといった、準動的な地図要素についての情報を含んでもよい。その場合、無線通信装置5は、自動運転管理センタ4Aから、制御支援情報としてのデータを受信して自動運転装置6Aに出力する役割を担う。制御支援情報としてのデータセットは、車両制御用のデータの一例に相当する。また、自動運転装置6Aが車両制御装置に相当する。
ナビゲーション装置6Bは、ディスプレイを含むHMI(Human Machine Interface)システムと連携し、乗員によって設定された目的地までの経路案内を実施する車載装置6である。ナビゲーション装置6Bは、例えば地図サーバ4Bからダウンロードした地図を用いて経路案内処理を実施する。無線通信装置5は、ナビゲーション装置6Bからの要求に基づき、地図サーバ4Bから車両の現在位置や走行予定経路に応じた地図データをダウンロードしてナビゲーション装置6Bに提供する。
プローブ装置6Cは、地図サーバ4Bが地図データを生成及び更新するためのデータであるプローブデータを、周辺監視センサの検出結果を元に生成し、無線通信装置5を介して、地図サーバ4Bにアップロードする装置である。プローブ装置6Cは、例えば周辺監視センサが特定した地物の観測位置を示すデータセットをプローブデータとして地図サーバ4Bに逐次送信する。プローブデータは、区画線や道路標識、信号機などのランドマーク等に対する一定時間(例えば400ミリ秒)以内の認識結果をパッケージ化したデータに相当する。プローブデータは、例えば、送信元情報や、走行軌道情報、走路情報、および地物情報を含んでもよい。走行軌道情報は、自車両が走行した軌道を示す情報である。地物情報は、ランドマーク等の地物の観測座標を示す。また、プローブデータには、車速や、舵角、ヨーレート、ウインカー作動情報、ワイパー作動情報などといった、車両挙動情報が含まれていてもよい。
なお、車載装置6に該当する装置は以上で例示したものに限定されない。多様な車載装置6が直接的又は間接的に無線通信装置5に接続されうる。例えば車載装置6には、運転支援装置やドライブレコーダ、緊急通報装置、自己診断装置(いわゆるOBD:On Board Diagnostics)などを含めることができる。
また、車両は、遠隔制御センタに存在するオペレータによって遠隔操作されるように構成されていても良い。例えば車載通信システム1は、車載装置6として、車両側遠隔制御装置を含んでいても良い。車両が遠隔操作される場合、無線通信装置5は、遠隔制御センタから送信された遠隔制御用のデータを速やかに受信して、車両側遠隔制御装置に提供する。車両側遠隔制御装置は、遠隔制御センタからの信号に基づき、各種走行アクチュエータに制御信号を出力することにより、車両の挙動を制御する。また、車両側遠隔制御装置は、車載カメラ画像などの画像や、車速センサなどの走行状態を示すセンサデータを遠隔制御センタに向けて送信すべく、無線通信装置5に出力する。なお、車両側遠隔制御装置は、自動運転装置6Aと統合されていても良い。車両制御用のデータには、遠隔制御センタからの送信される遠隔制御用のデータや、遠隔制御センタに送信する車載カメラ画像などが含まれる。各種車載装置6と無線通信装置5とは、種々のデータを所定の方式で多重化して送受信する。
<無線通信装置5の機能について>
ここでは無線通信装置5の機能及び作動について説明する。無線通信装置5は、図3に示すように機能ブロックとして、多重分離部F1、無線通信部F2、及び通信制御部F3を備える。無線通信部F2は、セルラー通信部F21とWi-Fi通信部F22を備える。
多重分離部F1は、各車載装置6が出力した送信用データを受け取り、無線通信部F2へ出力するとともに、無線通信部F2が受信したデータを、転送すべき車載装置6に向けて出力する構成である。例えば多重分離部F1は、各車載装置6から多重化されて入力されたデータを、所定の方式で分離することで、本来のデータを取得する。なお、多重分離部F1は、各車載装置6から入力されたデータをセルラー基地局2又はWi-Fi基地局7に無線送信するまで一時的に保持する記憶領域であるバッファを含む。バッファは、RAM等の書き換え可能な記憶媒体を用いて実現されればよい。多重分離部F1は、バッファに滞留しているデータの量やそれらのデータのヘッダに格納された情報を監視する機能も備える。
バッファに入っているデータは、順次、無線通信部F2にて取り出され、データの入力元(つまり車載装置6)に応じた通信経路で宛先となる外部装置4に向けて送信される。ここでの通信経路は、個々のAPN及びWi-Fiに対応するものであって、通信経路は無線通信サービスと解することもできる。車載装置6毎の通信経路の割当状態は、通信制御部F3によって制御される。なお、ここでは、データの通信経路を車載装置6単位で制御するものとするがこれに限らない。無線通信装置5は、アプリケーションソフトウェア単位で通信経路が切り替えるように構成されていても良い。車載装置6毎の通信経路の割当方法については別途後述する。
セルラー通信部F21は、例えばLTE等の無線通信プロトコルにおける物理レイヤを担当する通信モジュールである。セルラー通信部F21は、LTEで用いられる周波数帯の電波を送受信可能なアンテナと、LTEの通信規格に準拠してベースバンド信号から高周波信号への変換およびその逆変換に相当する信号処理を行うトランシーバとを用いて構成されている。なお、アンテナは受信ダイバーシティ等のために複数設けられていても良い。
セルラー通信部F21は、多重分離部F1から入力されたデータに対して、符号化や、変調、デジタルアナログ変換等の処理を施すことで、入力されたデータに対応する搬送波信号を生成する。そして、生成した搬送波信号をアンテナに出力することで電波として放射させる。また、セルラー通信部F21は、アンテナにて受信した受信信号に対して、アナログデジタル変換処理や復調処理といった所定の処理を施すことでデジタル値によって表現された情報系列(つまりデジタルデータ)に変換する。そして、その受信信号に対応するデータを、多重分離部F1に出力する。
Wi-Fi通信部F22は、Wi-Fi基地局7を介してインターネットに接続し、外部装置4と通信するための通信モジュールである。Wi-Fi通信部F22は、例えば2.4GHz帯や5GHz帯など、Wi-Fi規格で使用される周波数帯の電波を送受信するためのアンテナと、変調回路、復調回路などを用いて構成されている。Wi-Fi通信部F22は、多重分離部F1又は通信制御部F3から入力されたデータに対応する無線信号を放射する。また、Wi-Fi通信部F22は、アンテナにて受信した受信信号に対応するデータを、多重分離部F1または通信制御部F3に出力する。Wi-Fi通信が狭域通信に相当する。また、Wi-Fi通信部F22が狭域通信部に相当する。
なお、Wi-Fi通信部F22は、Wi-Fi基地局7から発せられるビーコンを受信することによって、Wi-Fi基地局7の存在を認識する。Wi-Fi通信部F22とWi-Fi基地局7との通信接続は、通信制御部F3によって制御される。
通信制御部F3は、各APNに対応する無線通信サービスの通信状態を監視及び制御する。通信制御部F3は、例えば車両電源がオンとなったことを受けて、APNごとに、SIM情報を含むアタッチ要求をMME31に送信する。また、MME31からの要求に基づいてAPNを通知することで、APN毎のPDNコネクションが構築される。なお、MME31は、無線通信装置5から通知されたAPNに応じて、S-GW、P-GWと連携して無線ベアラを含むPDNコネクションを設定する。以降では便宜上、SIM55の情報に基づいて無線通信装置5が接続しているセルラー基地局2のことを接続局とも記載する。接続局は、換言すれば、在圏セルを形成するセルラー基地局2に相当する。ここでの車両電源は、アクセサリ電源であってもよいし、走行用電源であってもよい。走行用電源は、車両が走行するための電源であって、車両がガソリン車である場合にはイグニッション電源を指す。車両が電気自動車やハイブリッド車である場合、走行用電源とはシステムメインリレーを指す。
また、通信制御部F3は、Wi-Fi通信部F22の動作を制御する。通信制御部F3は、Wi-Fi通信部F22がビーコンを受信したことに基づいて、Wi-Fi基地局7との通信接続を開始する。Wi-Fi基地局7との通信接続の確立時には、IPアドレスの取得や、セキュリティ設定(暗号鍵の交換など)のための制御信号がやり取りされる。そのため、車両が高速移動中である場合など、通信エリアWCRへの滞在時間が相対的に短い場合には、総合的にみればセルラー通信のほうが通信速度は早くなりうる。セルラー通信では、在圏セルが遷移してもIPアドレスなどの通信設定は維持されるためである。
さらに、通信制御部F3は、機能部として、移動管理部F31、移動状態判定部F33、通信要求取得部F34、及び経路選択部F35を備える。また、通信制御部F3は、例えばRAM52などの書き換え可能な記憶媒体を用いて実現される経路特性保持部M1を備える。
移動管理部F31は、SIM55で指定されるAPNに対応する在圏セルを特定するとともに、セルの移動管理を実施する構成である。移動管理部F31は、在圏セルを選択するための指標として、セルごとのRSRPや、RSSI、RSRQを算出する。RSRPは、Reference Signal Received Powerの略である。RSSIはReceived Signal Strength Indicatorの略である。RSRQはReference Signal Received Qualityである。
RSRPは、単位リソースエレメント当たりのRSの平均受信電力である。平均受信電力は所定の期間内で観測された受信電力の平均値に相当する。具体的には、RSRPは、RSを運ぶリソースエレメントの受信電力(W)の線形平均として求められる。RSRPの算出は、無線通信部F2との協働により実施される。RSRPはCRSの平均受信電力であっても良いし、CSI-RSの平均受信電力(いわゆるCSI-RSRP)であっても良い。
RSSIは、RSを収容するOFDMシンボルにおいてLTEシステム帯域全体の電力を測定した値である。一般に、トラフィック量が増えるとリソース割り当てが増え、RSSIは大きくなる傾向を有する。RSRQは、RSの受信品質を表す指標であって、大きいほど受信品質が良いことを示す。RSRQは、セル固有の参照信号の受信電力と、受信帯域幅内の総電力との比を表す。具体的には、RSRPにリソースブロック数をかけた値をRSSIで除算することで求まる。RSRPや、RSSI、RSRQの具体的な算出方法については非特許文献1に開示の方法を援用することができる。
そして、移動管理部F31は、SIM55に対応するセル毎のRSRPなどの指標に基づき、必要に応じて在圏セルを切り替えるための処理を実施する。或るSIM55に対応するセルとは、当該SIM55の情報に基づき接続可能なセルラー基地局、及び、そのセルを指す。在圏セルの切り替えは無線通信装置5及びネットワーク側装置が協働して実行される。例えば無線通信装置5がアイドルモードである場合には、無線通信装置5が主導して在圏セルの切り替えを実施する。また、無線通信装置5がコネクティッドモードである場合には、ネットワーク側装置が主体となって在圏セルの切り替えを実施する。
在圏セルを切り替える処理は、ハンドオーバーとも呼ばれる。ハンドオーバーとしては、同一周波数内のハンドオーバー、異なる周波数間のハンドオーバー、LTEから他のシステムへのハンドオーバーなどがある。ハンドオーバーの詳細な部分については、適宜変更可能であるとともに、非特許文献1等に記載の方法を採用可能である。なお、ここでは一例として、アイドルモードにおけるセルの再選択もハンドオーバーの概念に含まれるものとする。換言すれば、以下におけるセルの再選択は、ハンドオーバーと読み替えることができる。移動管理部F31は、セルの再選択を行った場合には、その旨を移動状態判定部F33に通知する。在圏セルの選択履歴は、RAM52等に一定期間保持される。
経路特性保持部M1は、移動管理部F31によって取得される、各SIM55に対応するセル毎のRSPwや、RSRPなどの情報を一時的に保持する。経路特性保持部M1が保持する情報は移動管理部F31やAPN特性取得部F32によって随時更新される。
APN特性取得部F32は、SIM55を用いて利用可能なAPN毎の通信設定に係るパラメータをネットワーク側装置から取得する構成である。APN毎の通信設定パラメータとしては、割当周波数や、帯域保証の有無、パケット転送の優先順位、遅延特性設定値(delayThreshold:以降、dTとも記載)などが挙げられる。割当周波数や遅延特性設定値などは、APNによって定まる通信経路のQoSを直接的又は間接的に示す。APN特性取得部F32が取得した通信設定パラメータは、例えば経路特性保持部M1の保存される。
なお、遅延特性設定値は、通信制御に使用される1つのパラメータであって、例えばUEとしての無線通信装置5とコアネットワーク3との通信接続時に、PCRF35によって決定される。PCRF35が決定した遅延特性設定値は、例えばMME31及びセルラー基地局2の少なくとも何れか一方を介して、無線通信装置5に通知される。APNごとの遅延特性設定値は、例えば各APNに対応するPCRF35によって付与される。なお、遅延特性設定値を決定する主体はPCRF35に限定されない。遅延特性設定値は、コアネットワーク3から受領した情報に沿ってセルラー基地局2が決定してもよい。
遅延特性設定値は、通信パケットの送信遅延が想定外の程度で生じているか否か、換言すれば、通信遅延の観点からQoSが担保されているか否かを、UEが検証するためのパラメータである。遅延特性設定値は、1つの側面において、通信パケットの遅延時間の想定範囲の上限値に相当する。遅延特性設定値が大きいほど、想定される通信遅延時間が大きいことを意味する。遅延特性設定値が小さいAPNほど、許容する遅延量が小さい、すなわちリアルタイム性が高いAPNとなる。ここでのAPNは通信経路と読み替えて実施することができる。
また、APN特性取得部F32は、例えば割当周波数など、ネットワーク側装置から取得した通信設定パラメータに基づいて、各APNに対応する通信回線毎のQoSを評価する。その他、APN特性取得部F32は各APNに対応する通信回線毎の通信速度を測定するように構成されていてもよい。また、APN特性取得部F32は、通信速度の測定値に基づいて、各APNに対応する通信回線毎のQoSを評価してもよい。APN特性取得部F32は、ネットワーク側装置から取得した通信設定パラメータ及び通信速度の観測値の少なくとも何れか一方に基づいてAPN毎のQoSを評価するように構成されていてもよい。ここでの通信回線は、無線通信サービスに対応する。故に、APN特性取得部F32は、1つの側面において無線通信サービス毎のQoSを評価するサービス品質評価部と解することができる。APN特性取得部F32は、移動管理部F31と統合されていても良い。APN特性取得部F32が経路特性取得部に相当する。
移動状態判定部F33は、ネットワーク側装置から通知される第1上限回数NHと、第2上限回数NMとに基づいて、SIM55で指定される無線通信サービスに対する移動状態を判定する。移動状態は前述の通り、所定の時間内に在圏セルの再選択を実行した回数の頻度を表すパラメータである。移動状態は、上記の2つの閾値を用いて、例えば通常レベル(Normal)、中レベル(Middle)、高レベル(High)の3段階で表現されうる。なお、第1上限回数NHは第2上限回数NMよりも大きい値に設定されている。通常レベルがノーマルレベルに相当し、中レベルがミドルレベルに相当し、高レベルがハイレベルに相当する。また、通常レベルが基準レベルに相当する。高レベルが最も移動状態が高い状態を意味し、通常レベルが最も移動状態が低い状態を意味する。つまり、移動状態の判定値は通常レベル<中レベル<高レベルの関係を有する。
具体的には、移動状態判定部F33は、ネットワーク側装置から通知された第1観測時間TCR内にセル再選択を実行した回数であるセル再選択回数が、第1上限回数NHを超過している場合に、移動状態は高レベルであると判定する。また、第1観測時間TCR内におけるセル再選択回数が第2上限回数NMを超過しており且つ第1上限回数NH未満である場合には、移動状態は中レベルと判定する。
さらに、移動状態判定部F33は、第2観測時間TCRH以内に、移動状態が中又は高レベルと判定されたことがなければ、移動状態は通常レベルと判定する。つまり、移動状態判定部F33は、第2観測時間TCRH以内におけるセル再選択回数が第2上限回数NM以下であり続けた場合に、移動状態を通常レベルと判定する。移動状態の判定結果は、少なくとも第2観測時間TCRHよりも長い間、RAM52などで保持される。
なお、第1上限回数NHとしては、ネットワーク側装置から配信されるシステム情報に含まれるパラメータであるNCR_Hを採用可能である。また、第2上限回数NMとしては、上記システム情報として通知されるNCR_Mを採用可能である。第1観測時間TCRとしては、上記システム情報に含まれるパラメータであるTCRmaxを採用可能である。第2観測時間TCRHとしては、上記システム情報に含まれるTCRmaxHystを採用することができる。
なお、セルの再選択の実行頻度が多いということは、間接的に、車両Hvの移動速度が大きいことを示す。つまり、移動状態の判定値は、車両Hvの移動速度を間接的に示す指標と解することができる。また、移動状態が高いほど、個々のセルの滞在時間が短いことを示唆する。加えて、移動状態が高いということは、Wi-Fi基地局7が形成する通信エリアWCRへの滞在時間が短く、Wi-Fi通信の環境としても過酷であることを示唆する。換言すれば、移動状態が低いということは、Wi-Fi基地局7が形成する通信エリアWCRへの滞在時間が長いことが期待できる。
無線通信装置5における移動状態の判定は、定期的に実行されても良いし、ネットワーク側装置からの問い合わせを受けたことをトリガとして実行されても良い。移動状態の判定等の無線通信装置5による内部演算処理は、無線通信装置5内で所定のイベントが生じたことをトリガとして実行されても良い。
無線通信装置5が判定した移動状態はネットワーク側装置へと報告される。ネットワーク側装置は、無線通信装置5から報告された移動状態に基づいて、接続セルや無線通信リソースの割当状態等を決定しうる。また、移動状態判定部F33が判定した移動状態は、移動管理部F31や経路選択部F35にも参照される。移動状態判定部F33の判定結果は、例えば移動管理部F31によるセルの再選択処理等にも利用されうる。
通信要求取得部F34は、各車載装置6から、データの送信遅延に係る要求品質である遅延要求を取得する。遅延要求は、例えば車載装置6として許容可能な遅延時間を示す数値(以降、遅延許容値)で表現される。遅延許容値は、例えば、100ミリ秒などの時間の長さを示す数値とすることができる。遅延許容値が小さいほど、即時性が要求されていることを示す。通信要求取得部F34が、遅延許容量取得部に相当する。遅延許容値が遅延許容量に相当する。
なお、許容可能な遅延時間の長さは、レベルで表現されてもよい。例えば許容可能な遅延の長さを表す遅延許容レベルは、レベル1~4の4段階で表現されてもよい。許容可能な遅延時間の長さをレベルで表現する場合もまた、レベル数が小さいほど、許容可能な遅延時間が短いことを表す。レベル1は例えば遅延時間を100ミリ秒未満とする遅延要求に相当し、レベル2は遅延時間が300ミリ秒以下とする遅延要求に相当する。また、レベル3は遅延時間を1000ミリ秒未満とする遅延要求に相当し、レベル4は1000ミリ秒以上の遅延を許容する遅延要求に相当する。
各車載装置6の遅延要求は、例えば車載装置6から所定の制御信号として入力される。例えば、遅延要求は、車両電源のオンに伴って車載装置6と無線通信装置5とが通信接続したタイミングで、車載装置6から無線通信装置5に向けて通知されてもよい。また、車載装置6において外部装置4向けの通信トラフィック(換言すれば送信用データ)が発生したことに基づいて、車載装置6から無線通信装置5に通知されても良い。遅延要求は通信トラフィック毎に指定されても良い。なお、遅延要求は、所定のタイミング又は定期的に無線通信装置5が各車載装置6に対して遅延要求を問い合わせることで取得しても良い。その他、遅延要求は、各車載装置6から無線通信装置5に向けて送信されたデータのヘッダなどに記述されていても良い。なお、遅延要求は、車載装置6が実行しているアプリケーションソフトウェアごとに設定されても良い。
その他、通信要求取得部F34は、各車載装置6から、外部装置4との通信態様に係る、遅延許容値以外のパラメータを取得する。例えば通信要求取得部F34は、許容するパケット誤り率の上限値や、帯域保証に関するリソースタイプなどを取得する。帯域保証に関するリソースタイプには、例えば帯域保証されるか否かが含まれる。なお、パケット誤り率の上限値やリソースタイプといったパラメータは、コアネットワーク3から取得しても良い。加えて、パケット誤り率及び帯域保証に関するリソースタイプは、通信要求取得部F34が、車載装置6から入力されるデータの種別等に基づいて判断してもよい。
経路選択部F35は、移動状態判定部F33の判定結果及び各車載装置6が要求する通信のリアルタイム性に基づいて、各車載装置6のデータ通信に用いる通信経路を選択する構成である。経路選択部F35が通信経路選択部に相当する。通信制御部F3の作動の詳細は別途後述する。
<無線通信経路の割当処理について>
ここでは図4に示すフローチャートを用いて無線通信装置5が実施する経路選択処理について説明する。なお、図4のフローチャートは例えば4秒や10秒毎など、所定間隔で逐次実行される。その他、図4のフローチャートは、例えば車両Hvが停車した場合や、ハンドオーバーが実施された場合など、所定のイベントが発生したことを受けて実行されてもよい。また、車載装置6から送信用データが入力されたことをトリガとして実行されても良い。さらに、車両がWi-Fi基地局7の通信エリアWCR内に入ったことをトリガとして実行されてもよい。換言すれば、Wi-Fi通信部F22がWi-Fi基地局7から、所定のSSIDを含むビーコンを受信したことを受けて、本フローを開始しても良い。
ここでは説明の簡易化のため、上述の通り、無線通信装置5がSIM55を用いてAPN_1と、APN_2の、2つのAPNを利用可能に構成されている場合を例に挙げて説明を行う。
まずステップS1では移動管理部F31が、在圏セルの再選択に係る処理である移動管理処理を実行する。例えば移動管理部F31は、SIM55に対応するセルごとのRSRPや、RSRQ、割当周波数の優先度などに基づいて、セルの再選択の要否を判断する。セルごとのRSRPやRSRQに基づいて、現在の在圏セルよりも通信品質が良好であることが期待できるセルが有る場合には、ネットワーク側装置と協働してセルの再選択を行う。在圏セルよりも優先度が高い周波数が割り当てられているセルが存在する場合も同様にセルの再選択を実施しうる。つまり、移動管理部F31は、在圏セル及び周辺セルの通信品質等を比較し、特定の条件を充足するセルが存在する場合にセルの再選択を実施する。なお、移動管理処理には、セルを再選択するためのRRCメッセージをネットワーク側装置へ向けて送信する処理なども含めることができる。ステップS1が移動管理ステップに相当する。
ステップS2では移動状態判定部F33が、移動管理部F31から提供される、セルの再選択の履歴を示す情報に基づいて、SIM55に対応するセルラー回線の移動状態を判定してステップS3に移る。なお、判定された移動状態の情報は、例えばRRC接続状態になった場合など、所定のタイミングでRRCメッセージとしてネットワーク側装置に報告される。ステップS2は移動状態判定ステップに相当する。
ステップS3ではAPN特性取得部F32が、APN毎の通信設定パラメータをネットワーク側装置から取得し、各APNに対応する無線通信サービス毎のQoSを評価する。例えば遅延特性設定値が所定の低遅延閾値未満に設定されているAPNは、高QoS-APNに設定する。また、遅延特性設定値が所定の低遅延閾値以上に設定されているAPNは、低QoS-APNに設定する。低遅延閾値としては例えば150ミリ秒や200ミリ秒、300ミリ秒などを採用可能である。ここでは一例として、APN_1が低QoS-APNに該当し、APN_2が高QoS-APNに該当するものとする。
なお、APN毎のQoSの判定粒度は、高レベルと低レベルの2段階に限定されない。QoSの高さは、高、中、低の3段階で表現されても良い。また、QoSは1~4などのレベルで表現されても良い。その場合、レベル値が高いほどQoSが高いことを意味するものとする。また、ここでは一例として遅延特性設定値に基づいてQoSを評価する態様を例示するが、これに限らない。APN特性取得部F32は、パケット転送の優先度や帯域保証の有無、割当周波数に基づいて、各APNのQoSを評価しても良い。APN特性取得部F32は、複数種類の項目を組み合わせることによって、各APNに対応する無線通信サービス毎のQoSの高さを評価しても良い。或るAPNに対応する無線通信サービスのQoSを評価することは、当該無線通信サービスの通信速度の期待値を評価することに相当する。本開示のQoSは、通信速度と置き換えて実施可能である。
なお、通信回線確立時等においてAPN毎の通信設定パラメータを取得済みであって、かつ、当該パラメータが経時的に変動しない場合には、通信設定パラメータの取得処理は省略されてもよい。また、動的に変化するパラメータについては、定期的に又は所定のイベント発生時に取得して更新するように構成されていても良い。
また、ステップS3では通信制御部F3がWi-Fi通信部F22と協働して、Wi-Fi通信を実施可能か否かを判定する。ステップS3が経路特性取得ステップに相当する。ステップS3での処理が完了するとステップS4に移る。
ステップS4では、通信要求取得部F34が、各車載装置6から、遅延許容値を取得してステップS5に移る。便宜上、自動運転装置6Aの遅延許容値をDA_A、ナビゲーション装置6Bの遅延許容値をDA_B、プローブ装置6Cの遅延許容値をDA_Cと記載する。一例として、各車載装置6の遅延要求としての遅延許容値は、DA_A<DA_B<DA_Cの関係を有する値に設定されている。例えば自動運転装置6Aの遅延許容値DA_Aは100ミリ秒などに設定されうる。ナビゲーション装置6Bの遅延許容値DA_Bは、例えば500ミリ秒など、自動運転装置6Aの遅延許容値DA_Aよりも相対的に大きい値に設定されうる。プローブ装置6Cの遅延許容値DA_Cは、例えば2000ミリ秒とすることができる。なお、以上で挙げた数値は一例であって適宜変更可能である。ステップS4が遅延許容量取得ステップに相当する。
以降では便宜上、遅延許容値が所定の狭域通信許容閾値以上に設定されているデータ通信のことを遅延許容通信と称するとともに、上記の狭域通信許容閾値以上の遅延を許容する車載装置6のことを遅延許容装置とも称する。狭域通信許容閾値は例えば1000ミリ秒とする。故に、上記の例においては、プローブ装置6Cが遅延許容装置に該当しうる。もちろん狭域通信許容閾値は500ミリ秒や、2000ミリ秒などであってもよい。なお、本開示における遅延許容通信とは、別途後述するように、Wi-Fi通信を適用可能なデータ通信に相当する。故に、遅延許容通信はWi-Fi適用可能通信と読み替える事ができる。同様に、遅延許容装置はWi-Fi適用可能装置と読み替えることができる。
ステップS5では経路選択部F35が、ステップS2で判定されている移動状態に基づいて、車載装置6毎の通信経路を選択する処理である割当処理を実行する。割当処理の実行手順の一例を図5に示すフローチャートを用いて説明する。本開示では一例として経路割当処理はステップS51~S55を含む。図5に示す割当処理は図4のステップS5として実行される。各ステップの実行主体は経路選択部F35とすることができる。もちろん、割当処理が備えるステップ数や、処理順序、実行主体等は適宜変更可能である。ステップS5が通信経路選択ステップに相当する。
まずステップS51では移動状態判定部F33によって移動状態が通常レベルと判定されているか否かを判定する。移動状態が通常レベルと判定されている場合にはステップS51を肯定判定してステップS52に移る。一方、移動状態が中レベル又は高レベルと判定されている場合にはステップS51を否定判定してステップS55に移る。
ステップS52ではWi-Fi通信を利用可能か否かを判定する。Wi-Fi通信を利用可能である場合にはステップS52を肯定判定してステップS53に移る。一方、Wi-Fi通信が利用不可である場合にはステップS55に移る。
ステップS53では、遅延許容通信を行う車載装置6に対してWi-Fi通信を割り当てる。例えば上記の例ではプローブ装置6Cに対してWi-Fi通信を割り当てる。なお、遅延許容装置が複数存在する場合には、それらの何れにも、通信経路としてのWi-Fi通信を割り当てることができる。ステップS53が完了するとステップS54に移る。
ステップS54では、遅延許容装置以外の車載装置6に対して、遅延許容値に応じたAPNを割り当てる。例えば残る車載装置6としての、自動運転装置6Aとナビゲーション装置6Bのうち、相対的に遅延許容値が小さい自動運転装置6Aに高QoS-APNであるAPN_2を割り当てる。また、相対的に遅延許容値が大きいナビゲーション装置6Bに低QoS-APNであるAPN_1を割り当てる。つまり、遅延許容装置以外の車載装置6においては、遅延許容値が小さい車載装置6に対して優先的にQoSが高いAPNを割り当てる。
なお、或る装置に或るAPNを割り当てるということは、当該装置の通信経路として、当該APNに対応する無線通信サービスを割り当てることに相当する。また、自動運転装置6AにAPN_2を割り当てた状態においても、通信速度の観点においてAPN_2に余裕がある場合には、ナビゲーション装置6BにもAPN_2を割り当ててもよい。通信速度が許容される範囲において、1つのAPNに対して複数の車載装置6が割り当てられていても良い。ステップS54が完了すると図4のステップS6に移る。
ステップS55では、各車載装置6に対し、遅延許容値に応じたAPNを割り当てる。つまり、遅延許容値が小さい車載装置6に対して優先的にQoSが高いAPNを割り当てる。例えば自動運転装置6Aに高QoS-APNであるAPN_2を割り当てる。また、プローブ装置6Cに低QoS-APNであるAPN_1を割り当てる。ナビゲーション装置6Bに割り当てる通信経路は、APN_1とAPN_2のどちらでも良い。前述の通り、自動運転装置6AにAPN_2を割り当てた状態においても、通信速度の観点においてAPN_2に余裕がある場合には、ナビゲーション装置6BにもAPN_2を割り当てることが好ましい。ステップS55が完了すると図4のステップS6に移る。
ステップS6では通信制御部F3が、ステップS5で決定した車載装置6毎の通信経路を無線通信部F2に通知し、車載装置6毎の通信経路として適用させる。これにより、各車載装置6から入力されたデータが、その入力元に割り当てられている通信経路で送信されるようになる。なお、ここでは一例としてステップS5で決定した車載装置6毎の通信経路は即時に適用されるものとするが、これに限らない。例えば、ステップS6における通信経路の実態的な変更は、車両が停止したり、自動運転装置6Aと自動運転管理センタ4Aとの通信が完了するまで保留されてもよい。
図6は、以上の処理によって定まる、移動状態及びWi-Fi通信の可否に応じた車載装置6毎の通信経路の割当態様をまとめた図である。図6に示すように、移動状態が通常レベル(Normal)であって且つWi-Fi利用可能な環境下では、遅延許容装置であるプローブ装置6Cの通信経路としてWi-Fi通信を採用する。一方、移動状態が高又は中レベル(High/Middle)である場合には、Wi-Fiの可否によらずに、遅延許容装置であるプローブ装置6Cの通信経路としてセルラー通信、より好ましくは低QoS-APNを用いたセルラー通信を採用する。
また、移動状態が通常レベル(Normal)であって且つWi-Fi利用不可な環境下では、遅延許容装置であるプローブ装置6Cの通信経路として低QoS-APNを用いたセルラー通信を採用する。遅延許容装置以外の自動運転装置6A及びナビゲーション装置6Bについては、遅延許容値が小さいほど優先的にQoSが高いAPNに対応するセルラー通信が割り当てられる。つまり、遅延許容装置には、通信経路の選択肢としてWi-Fi通信が含まれる一方、遅延許容装置以外の車載装置には通信経路の選択肢としてWi-Fi通信は含まれないように制御される。
<上記構成の効果について>
以上で述べた構成は、車両全体として複数のAPNのそれぞれに対応するセルラー通信及びWi-Fi通信を並列的に使う構成であって、移動状態に応じて車載装置6毎の通信経路の割当を決定する。具体的には、経路選択部F35は、移動状態が通常レベルであって、且つ、Wi-Fi通信が利用可能である場合には、遅延許容装置の通信経路としてWi-Fi通信を適用する。また、移動状態が高レベルである場合には、仮にWi-Fi通信を利用可能な状況であっても、遅延許容装置の通信経路として、APNを用いたセルラー通信を適用する。
移動状態が高レベルである場合とは、基本的に車両Hvが高速移動している場合に相当する。そのため、仮にWi-Fiが利用可能であっても、Wi-Fiの通信エリア内に滞在する時間は相対的に短く、むしろセキュリティ設定等、通信接続のための処理時間の分だけ通信効率が低下しうる。一方、APNを用いたセルラー通信においては、移動に伴うハンドオーバーが生じた場合であっても、IPアドレス等は維持される。そのため、移動状態が高レベルである場合におけるセルラー通信の効率はWi-Fiよりも高くなりうる。つまり、セルラー通信のほうがWi-Fi通信よりも、移動に伴う通信効率の低下が起こりにくい通信経路、あるいは、移動に対してロバストな通信経路と解することができる。
本開示は以上のような通信経路毎の特性に着眼して創出されたものであって、上記の構成によれば、移動に伴う通信効率の低下が起こりにくい環境においては、遅延許容装置に対して通信コストのかからないWi-Fi通信を割り当てる。また、移動に伴う通信効率の低下を生じうる環境においては、遅延許容装置に対して、通信コストを伴うが移動に対しロバストなセルラー通信を割り当てる。これにより、移動に伴って通信効率が劣化することを抑制しつつ、通信コストを抑制できる。
また、本実施形態のように、複数のAPNを利用可能な構成においては、移動状態が中又は高レベルである場合には、遅延許容装置には相対的にQoSが低いAPNを優先的に割り当てる。これにより、残りの車載装置6に対して相対的にQoSが高いAPNを割り当てる事が可能となる。また、その結果として、車載装置6毎の遅延に関する要求品質を満たせない通信が生じる恐れを低減できる。つまり、複数のAPNを並列的に使用する構成において、車載装置6毎の遅延要求に応じた通信経路を割り当てることにより、複数の車載装置6を含むシステム全体として、各車載装置6の許容範囲を超える遅延時間の合計値を抑制することができる。換言すれば、通信の遅延時間等にかかる要求が異なる複数種類のデータ通信を並列的に実行する必要が有る場合において、各データ通信のタイプに応じた複数の通信サービスを併用することで、全体として通信効率を高めることができる。
ところで、Wi-Fi通信とセルラー通信を選択的に使用可能な他の構成である比較構成としては、Wi-Fi通信可能な場合には、通信コストを低減するために、遅延許容値が小さい車載装置6のデータ通信もWi-Fi通信で実施する構成が想定される。しかしながら、上述の通り、移動状態が高レベル又は中レベルである場合には、Wi-Fi通信可能な状態が継続する時間は短いため、Wi-Fi通信で期待できるほどのデータを送受信できるとは限らない。つまり、通信コスト低減の観点において、期待されるほどの効果が得られるとは限らない。また、セルラー通信からWi-Fi通信に切り替えることによって、通信遅延が問題となりうる。特に、自動運転や車両の遠隔制御などといった、車両制御に係るデータ通信などにおいては、非常に高いリアルタイム性が要求されるため、Wi-Fi接続時の遅延はより一層顕著な課題となる。
本実施形態の経路割当処理は、上記の課題に着眼して創出されたものであって、Wi-Fi通信可能な状況であっても、すべてのデータ通信をWi-Fiで行うのではなく、遅延許容値が所定値以上に設定されているデータ通信に限定する。換言すれば、自動運転のためのデータ通信や車両遠隔制御のためのデータ通信といった、遅延許容値が所定値未満となるデータ通信については、Wi-Fiに切り替えずに、セルラー通信を維持する。このような構成によれば、緊急性が高いデータ通信において、通信媒体の切り替えに伴う通信遅延が生じる恐れを低減できる。
なお、緊急性が高いデータ通信には、即時性(いわゆるリアルタイム性)が高いデータ通信が含まれる。緊急性が高いデータ通信とは、例えば、最大遅延時間が100ミリ秒以下となることが要求されるデータ通信である。具体的には、自動運転や運転支援、遠隔制御などといった車両制御用のデータ通信や、自動運転車両の運行管理に係るデータ通信などが、緊急性の高いデータ通信に該当する。つまり、自動運転装置6Aや運転支援装置、車両側遠隔制御装置から入力されたデータは、通信の遅延を抑制する必要性が大きいデータに該当する。自動運転装置6Aや運転支援装置、車両側遠隔制御装置など、外部装置4からの信号に基づいて車両制御を実行する車載装置6が、車両制御装置に相当する。
また、逆説的に、緊急性が低いデータ通信とは、例えば、地図データの送受信に係る通信や、プローブデータを地図サーバ4Bにアップロードするための通信、ソフトウェアの更新プログラムの送受信などである。車両に搭載されているオーディオ機器が、クラウドサーバから音楽データを取得して再生する構成においては、音楽データをダウンロードするための通信もまた、緊急性が低いデータ通信といえる。ただし、音楽データや動画データなどのマルチメディアに係るデータ通信であっても、音楽や動画の再生が途中で止まってしまうと、ユーザの利便性を損なわれうる。故に、マルチメディアに係るデータ通信は、プローブデータや地図データの送受信のための通信よりは即時性が要求されるデータ通信に相当する。
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
例えば以上では、遅延許容装置に該当しない車載装置6が複数存在する場合には、遅延許容値が小さい車載装置6に対して優先的にQoSが高いAPNを割り当てるものとしたがこれに限らない。QoS以外のパラメータを用いて車載装置6毎のAPNを割り当てても良い。例えば、遅延許容装置に該当しない車載装置6が複数存在する場合には、遅延許容値が小さい車載装置6に対して優先的に割当周波数が低いAPNを割り当てるように構成されていても良い。
また、以上ではWi-Fi通信を通信経路として選択可能とする基準レベルとして通常レベルを採用した構成を例示したが、基準レベルは中レベルであっても良い。基準レベルとして中レベルを採用した構成においては、移動状態が中レベル又は通常レベルであることを条件として、遅延許容通信をWi-Fi通信で実行されることとなる。
その他、無線通信装置5は、図7に示すように、車両Hvの移動速度を取得する移動速度取得部F4を備え、当該移動速度取得部F4が取得した移動速度に応じて作動態様を変更するように構成されていてもよい。移動速度取得部F4は、車速センサや自動運転装置6Aなどから移動速度を取得してもよいし、セルラー基地局2からの信号のドップラーシフト量に基づいて移動速度を推定しても良い。
例えばAPN特性取得部F32は、移動速度取得部F4が取得した移動速度に応じて、APN毎のQoSを評価する際の割当周波数に対する評価方針を逆転させても良い。具体的には、停車中または徐行中においては周波数が高いほどQoSが高いと判断する一方、通常走行中においては割当周波数が低いほどQoSは高いと判断しても良い。
ここでの徐行中とは、例えば移動速度が例えば10km/hなど、所定の徐行相当速度以下である状態を指す。徐行中には、駐車のための自律走行中も含めることができる。また、ここでの通常走行中とは、移動速度が徐行相当速度を超過している状態であって、高速走行中も含まれる。なお、高速走行中とは、例えば、60km/hや、80km/hなどといった所定の速度閾値を超過している状態を指す。
通常走行中の場合には割当周波数が低いほどQoSが高いとみなす理由は次の通りである。一般的に、通信環境が安定している場合には、周波数が高いほど通信速度は高くなりうる。しかしながら、車両は、歩行者等に比べて比較的高速で移動するため、セルラー基地局2との相対位置の変化度合いが大きい。そして、周波数が高いほど通信環境の変動の影響を受けやすい。そのため、車両と外部装置の無線通信という技術分野においては、周波数が高いほど、総合的な通信速度が低下しうる。ただし、常に周波数が高いほど通信速度が低下するわけではなく、停車中などにおいては、セルラー基地局2に対する車両Hvの相対位置の変化度合いが小さいため、割当周波数が高いほど通信速度が高くなりうる。
上記の制御態様は、上記の課題に着眼して創出されたものであって、通常走行中である場合には、割当周波数が低いほどQoSを高く評価する一方、徐行中及び停車中においては、割当周波数が高いほどQoSが高いと評価する。当該構成によれば、セルラー基地局2との位置関係が変化しやすい車両において、APN毎のQoS、換言すれば通信速度、を適正に評価できる。また、その結果として、車載装置6毎の通信経路をより適正に割り当て可能となる。
同様の技術思想に基づき、APN特性取得部F32は、移動状態判定部F33が判定した移動状態(mobilityState)が通常/中/高レベルの何れに該当するかに応じて、APN毎のQoSを評価する際の割当周波数に対する評価方針を逆転させても良い。具体的には、移動状態が通常レベルである場合においては周波数が高いほどQoSが高いと判断する一方、中レベル又は高レベルである場合においては割当周波数が低いほどQoSは高いと判断しても良い。
また、Wi-Fi通信が可能な状態であって、且つ停車中及び徐行中の場合には、車両HvがWi-Fi基地局7の通信エリアWCRの滞在時間、換言すればWi-Fi通信可能な時間が長くなることが期待できる。故に、停車中及び徐行中は、Wi-Fi通信を適用可能なデータ通信の範囲を拡張しても良い。例えば通常走行中は遅延許容通信を規定する狭域通信許容閾値を1000ミリ秒とする一方、停車中及び徐行中は狭域通信許容閾値を500ミリ秒としてもよい。
その他、通信制御部F3は、Wi-Fi通信が可能な状態となった場合には、所定のアプリケーションソフトを用いてWi-Fi通信の通信速度を測定するように構成されていても良い。その場合、経路選択部F35は、Wi-Fi通信の通信速度が所定の閾値以上であることを条件として、遅延許容装置の通信経路に設定するように構成されていても良い。Wi-Fi通信の通信速度としては、ダウンロード速度、アップロード速度を取得してもよい。経路選択部F35は、遅延許容通信が、下り通信と上り通信のどちらがメインかなどといった通信特性に応じて、Wi-Fi通信へ切り替えるか否かを判断してもよい。
ところで、或る車載装置6に割り当てるAPNを変更する際には、瞬間的に通信が中断され得る。或る車載装置6と或る外部装置4との通信に使用するAPNを変更すると、車載装置6から外部装置4まで、その新たなAPNを用いた通信経路の探索及び設定が行われるためである。通信経路の再設定は、コアネットワーク3が無線通信装置と制御信号をやり取りすることで実現される。具体的には、経路選択に伴い、データ通信に適用されるIPアドレスやポート番号が変わるため、ネットワーク側と無線通信装置5とでIPアドレス等の通信設定の整合を取るための制御信号をやりとりする。
そのような課題に着眼すると、車両制御のためのデータ通信が実施されている間、又は、車両が走行している間は、自動運転装置6Aなど車両制御装置に対するAPNの割当を変更する処理である経路変更処理の実施は保留とすることが好ましい。例えば、自動運転装置6Aに対する経路変更処理は、自動運転装置6Aが自動運転管理センタ4Aとのデータ通信が行われていないことや、車両が停止していることなどを条件に実施することが好ましい。当該構成によれば、緊急性が高いデータ通信を実施中に、当該通信が一時停止する恐れを低減できる。なお、自動運転装置6Aに対する経路変更処理は、例えば現行のAPNよりもRSPwが大きいAPNが出現した場合や、在圏セルの変動が生じた場合など、所定の経路変更条件が充足していることに基づいて実施されれば良い。経路変更条件としては、図4に示す経路割当処理により現行のAPNとは別のAPNが割り当てられた場合を含めることができる。
また、無線通信装置5は、自動運転装置用のAPNとして、無線通信装置5が利用可能な何れのAPNを選択しても、自動運転装置6Aが要求する通信速度が得られない場合には、所定のエラー信号を自動運転装置6Aに出力してもよい。エラー信号は、要求された通信速度、換言すれば通信のリアルタイム性が担保できないことを示す信号とすることができる。当該構成によれば、自動運転装置6Aは、無線通信装置5からのエラー信号を受信したことに基づいて、例えば車両の走行速度を所定量抑制したり、運転席乗員に権限移譲したりするなど、安全のための車両制御を実行しても良い。
また、無線通信装置5は、自動運転装置6Aと自動運転管理センタ4Aとの通信状況を示す通信速度報告信号を、自動運転装置6Aに逐次出力してもよい。通信速度報告信号は、例えば遅延時間の平均値や、パケット誤り率、遅延特性設定値など、通信の遅延度合いを直接的または間接的に示す信号とすることができる。ここでの通信速度は、上り通信の速度だけであっても良いし、下り通信の速度だけであってもよい。当該構成によれば、自動運転装置6Aは、無線通信装置5からの通信速度報告信号に基づいて、車両の挙動(換言すればシステム応答)を変更可能となる。例えば自動運転装置6Aは、自動運転管理センタ4Aとの通信速度が遅いことに基づいて、走行速度の抑制や、ハンドオーバーリクエストなどを計画及び実行しても良い。
さらに、無線通信装置5は、通信状況を示すデータを通信ログとして、図示しない記録装置に保存するように構成されていても良い。当該構成によれば自動運転時の通信状況を記録することができる。また通信エラーが生じたことを示すデータを残すことが可能となる。それらのデータは例えば自動運転中の事故が生じた場合の原因解析に利用可能である。自動運転時の外部装置との通信状況をログとして残すことで、事故が生じた際の原因を解析しやすくなる。
以上で述べた無線通信装置5は、運行設計領域(ODD:Operational Design Domain)として、自動運転管理センタ4Aとの通信遅延時間が所定の閾値未満であることが規定されている車両で使用される構成として好適である。上記の無線通信装置5によれば、自動運転に係るデータ通信が、所定の許容時間を逸脱する恐れを低減できる。また、上記の無線通信装置5は1つの態様として、通信の遅延度合いを示す情報を逐次、自動運転装置6Aに通知するため、自動運転装置6Aは通信の状況に応じてシステム応答を変更可能となる。その結果、通信遅延の観点からODDが充足されていないにも関わらず、自動運転が継続されるおそれを低減可能となる。なお、ODDは、自動運転を実行可能な条件/環境を規定するものである。
<その他の変形例>
以上では、データの通信経路を、車載装置6単位で制御するものとするが、これに限らない。無線通信装置5は、アプリ単位で通信経路が切り替えるように構成されていても良い。また、例えば図8に示すよう1つの車載装置6が複数のアプリを実行する場合には、1つの車載装置6に対して、各アプリに対応する複数のAPNを割り当てても良い。車載装置6毎、アプリごとにAPNが設定されても良い。図8に示す装置A~Cは、例えば、順番に、自動運転装置6A、ナビゲーション装置6B、プローブ装置6Cとすることができる。アプリA-1は、例えば、走行支援情報を取得して制御計画を作成するアプリとすることができる。また、アプリA-2は、例えば、車両にローカル保存されている自動運転装置6Aの作動状態を示すデータを、自動運転管理センタ4Aにアップロードするアプリとすることができる。アプリB-1は例えばナビゲーションアプリであり、アプリC-1は、プローブデータを生成して地図サーバ4Bにアップロードするアプリとすることができる。
なお、ここでのアプリとはアプリケーションソフトウェアを指す。1つのAPNに対して複数のアプリが割り当てられていても良い。本開示における車載装置6毎に無線通信サービスを割り当てる、という技術思想には、アプリ毎に無線通信サービスを割り当てる構成も含まれる。また、或る車載装置6/アプリに或る無線通信サービスを割り当てるという技術思想には、当該車載装置6/アプリが実施するデータ通信に当該無線通信サービスを割り当てるという技術思想も含まれる。
また、以上では一例として、各車載装置の遅延要求を、遅延許容値のように数値が低いほど、即時性を要求しないことを表すパラメータを用いて表現するが、これに限らない。遅延要求は、数値が大きいほど高い即時性を要求することを表すパラメータを用いて表現されても良い。遅延要求は、即時性の要求度合いを示す即時性レベルで表現されてもよい。即時性レベルが高いほど、短い遅延時間を要求していることを示す。
以上では、遅延許容装置のみにWi-Fi通信を選択可能とする構成を開示したがこれに限らない。停車中や徐行中など車両の移動速度によっては、遅延許容装置以外の車載装置6にも通信経路としてWi-Fi通信を設定しても良い。停車中や徐行中においては、車両の単位時間あたりの移動量が小さいため、通常走行時よりも通信遅延が許容されうるためである。
以上では、非特許文献1で規定されているmobilityState、すなわち所定時間以内におけるセルの再選択回数を用いて移動状態を判定する構成を開示したが、これに限らない。移動状態判定部F33は、車両の移動速度に基づいて移動状態を判定するように構成されていても良い。つまり、移動状態を表す指標としては、mobilityStateの代わりに、移動速度を採用可能である。その場合、移動状態判定部F33は、例えば移動速度が所定の第1閾値未満である場合に移動状態を低速レベルと判定し、移動速度が第1速度閾値以上、第2速度閾値未満である場合に、移動状態を中速レベルと判定する。また、移動速度が第2速度閾値以上である場合に移動状態を高速レベルと判定することができる。無線通信装置5は、低速レベルを基準レベルとして採用可能である。つまり、上述した実施形態は、通常レベルを低速レベルと置き換えて実施されてもよい。
低速レベルを規定する第1速度閾値は例えば10km/hなどの徐行相当速度であってもよいし、20km/hや30km/hなどであってもよい。第1速度閾値は、例えば、Wi-Fi通信エリアWCR内の滞在時間が10秒以上となることが期待できる値に設定することができる。Wi-Fi通信エリアWCR内の滞在時間は、Wi-Fi基地局7が形成されるWi-Fi通信可能な区間の長さの想定値(例えば平均値)を、移動速度で除算することで算出されうる。また、第2速度閾値は、第1速度閾値よりも大きければよく、例えば60km/hなどとすることができる。第1速度閾値や第2速度閾値は、無線通信装置5に予めパラメータとして登録されていてもよいし、ネットワーク側装置から配信されてもよい。そのような構成によっても上述した実施形態と同様の効果を奏する。
なお、移動状態の判定粒度は3段階に限定されない。2段階や4段階以上であっても良い。また、移動状態は連続値で表現されてもよい。その場合、Wi-Fi通信エリアWCRへの滞在時間が所定の閾値以上となることが期待できる範囲の限界値が、基準レベルとなりうる。その他、移動状態を表す指標としてはドップラーシフト量を用いても良い。移動状態判定部F33は、ドップラーシフト量に対する閾値を用いて、移動状態のレベルを判定するように構成されていてもよい。
また、以上では、狭域通信の方式としてWi-Fiを採用した構成について例示したが、狭域通信の方式はこれに限定されない。狭域通信としては、IEEE802.11の諸規格で規定されている多様な通信方式を採用可能である。また、狭域通信規格としては、IEEE1509にて開示されているWAVE(Wireless Access in Vehicular Environment)規格や、DSRC(Dedicated Short Range Communications)規格など、任意のものを採用可能である。WAVE等を適用する場合、通信相手としての路側機が無線ローカルエリアネットワークを形成するアクセスポイントに相当する。なお、無線通信装置が路側機を介して外部装置とデータ通信可能なように、路側機は光回線等でPDN35に接続されているものとする。無線ローカルエリアネットワークを形成するアクセスポイントの概念には、PDN35に接続されており、且つ、セルラー通信に比べて相対的に狭域な通信エリアを形成する多様な通信設備を含めることができる。
<付言>
本開示に記載の装置、並びにそれの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。つまり、無線通信装置5等が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供できる。例えば無線通信装置5が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。無線通信装置5は、CPUの代わりに、MPUやGPU、DFP(Data Flow Processor)を用いて実現されていてもよい。無線通信装置5は、CPUや、MPU、GPUなど、複数種類の演算処理装置を組み合せて実現されていてもよい。無線通信装置5は、システムオンチップ(SoC:System-on-Chip)を用いて実現されていても良い。さらに、各種処理部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を用いて実現されていても良い。各種プログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。プログラムの保存媒体としては、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、SDカード等、多様な記憶媒体を採用可能である。
100 移動体通信システム、1 車載通信システム、2 セルラー基地局(ネットワーク側装置)、3 コアネットワーク(無線通信ネットワーク)、31 MME(ネットワーク側装置)、32 S-GW(ネットワーク側装置)、33 P-GW(ネットワーク側装置)、34 PCRF(ネットワーク側装置)、4 外部装置、4A 自動運転管理センタ、4B 地図サーバ、5 無線通信装置、51 処理部(プロセッサ)、55 SIM、6 車載装置、6A 自動運転装置(車両制御装置)、6B ナビゲーション装置、6C プローブ装置、F1 多重分離部、F2 無線通信部、F21 セルラー通信部、F22 Wi-Fi通信部(狭域通信部)、F3 通信制御部、F4 移動速度取得部、F31 移動管理部、F32 APN特性取得部(経路特性取得部)、F33 移動状態判定部、F34 通信要求取得部(遅延許容量取得部)、F35 経路選択部、M1 経路特性保持部、S2 移動状態判定ステップ、S3 遅延許容量取得ステップ、S5 通信経路選択ステップ

Claims (8)

  1. 少なくとも1つの車載装置が車両外部に設けられた他の通信装置である外部装置とデータ通信を実施するためのインターフェースとして車両で使用される車両用無線通信装置であって、
    前記車両外部に配置された無線ローカルエリアネットワークのアクセスポイントを介した無線通信である狭域通信を実施する狭域通信部(F22)と、
    セルラー基地局を介した無線通信であるセルラー通信を実施するセルラー通信部(F21)と、
    前記車両の移動状態を判定する移動状態判定部(F33)と、
    前記移動状態判定部が判定した前記移動状態に基づいて、前記車載装置が前記外部装置と通信するための通信経路を選択する通信経路選択部(F35)と、
    前記車載装置から、許容可能な通信遅延時間の長さを示す遅延許容量を取得する遅延許容量取得部(F34)と、を備え、
    前記通信経路選択部は、
    前記移動状態が所定の基準レベル以下であって、かつ、前記車載装置の前記遅延許容量が所定の狭域通信許容閾値以上である場合には、前記車載装置の通信経路として前記狭域通信を前記セルラー通信よりも優先的に採用する一方、前記遅延許容量が前記狭域通信許容閾値未満である場合には、前記車載装置の通信経路として前記セルラー通信を採用するように構成されている車両用無線通信装置。
  2. 請求項に記載の、複数の前記車載装置と接続されて使用される車両用無線通信装置であって、
    前記遅延許容量取得部は、複数の前記車載装置のそれぞれから前記遅延許容量を取得し、
    前記通信経路選択部は、前記移動状態判定部が判定した前記移動状態と、前記車載装置毎の前記遅延許容量に基づいて、前記車載装置毎の通信経路を選択するものであって、
    前記通信経路選択部は、前記移動状態が前記基準レベル以下である状況においては、前記移動状態が前記遅延許容量が前記狭域通信許容閾値以上である前記車載装置には通信経路として前記狭域通信を前記セルラー通信よりも優先的に割り当てる一方、前記遅延許容量が前記狭域通信許容閾値未満である前記車載装置には通信経路として前記セルラー通信を割り当てるように構成されている車両用無線通信装置。
  3. 前記セルラー通信として、サービス品質が異なる複数の無線通信サービスを利用可能に構成されている請求項に記載の車両用無線通信装置であって、
    前記通信経路選択部は、前記移動状態が前記基準レベルを超過している場合には、前記狭域通信が利用可能であるか否かに関わらずに、前記遅延許容量が前記狭域通信許容閾値以上である前記車載装置には、複数の前記無線通信サービスのなかで前記サービス品質が低い前記無線通信サービスを前記サービス品質が高い前記無線通信サービスよりも優先的に割り当てるように構成されている車両用無線通信装置。
  4. 前記セルラー通信として、サービス品質が異なる複数の無線通信サービスを利用可能に構成されている請求項又はに記載の車両用無線通信装置であって、
    前記通信経路選択部は、前記遅延許容量が前記狭域通信許容閾値未満である前記車載装置が複数存在する場合には、より前記遅延許容量が小さい前記車載装置に対して優先的に前記サービス品質が高い前記無線通信サービスを割り当てるように構成されている車両用無線通信装置。
  5. 前記セルラー通信として、サービス品質が異なる複数の無線通信サービスを利用可能に構成されている請求項又はに記載の車両用無線通信装置であって、
    前記無線通信サービス毎の割当周波数を取得する経路特性取得部(F32)を備え、
    前記通信経路選択部は、前記遅延許容量が前記狭域通信許容閾値未満である前記車載装置が複数存在する場合には、より前記遅延許容量が小さい前記車載装置に対して優先的に前記割当周波数が低い前記無線通信サービスを割り当てるように構成されている車両用無線通信装置。
  6. 請求項1からの何れか1項に記載の車両用無線通信装置であって、
    前記セルラー通信における在圏セルの選択制御を行う移動管理部(F31)を備え、
    前記移動状態判定部は、前記セルラー通信を提供するネットワーク側装置(2、31、32、33、34)から通知された観測時間以内における、前記移動管理部による前記在圏セルの再選択回数に基づいて、前記移動状態がノーマル、ミドル、及びハイの何れに該当するかを判定するように構成されており、
    前記基準レベルは前記ノーマル又は前記ミドルである車両用無線通信装置。
  7. 請求項1からの何れか1項に記載の車両用無線通信装置であって、
    前記車両の移動速度が所定の閾値未満である状態が、前記基準レベルに設定されており、
    前記移動状態判定部は、前記車両の移動速度に基づいて前記移動状態が前記基準レベルに該当するかを判定するように構成されている車両用無線通信装置。
  8. 少なくとも1つの車載装置が外部装置とデータ通信するための通信経路として、車両外部に配置された無線ローカルエリアネットワークのアクセスポイントを介した無線通信である狭域通信と、セルラー基地局を介した無線通信であるセルラー通信の何れを用いるかを制御するための、車両が備える少なくとも1つのプロセッサ(51)によって実行される通信制御方法であって、
    前記車両の移動状態を判定する移動状態判定ステップ(S2)と、
    前記移動状態判定ステップで判定された前記移動状態に基づいて、前記車載装置が前記外部装置と通信するための通信経路を選択する通信経路選択ステップ(S5)と、
    前記車載装置から、許容可能な通信遅延時間の長さを示す遅延許容量を取得する遅延許容量取得ステップ(S4)と、を含み、
    前記通信経路選択ステップは、
    前記移動状態が所定の基準レベル以下であって、かつ、前記車載装置の前記遅延許容量が所定の狭域通信許容閾値以上である場合には、前記車載装置の通信経路として前記狭域通信を前記セルラー通信よりも優先的に採用する一方、前記遅延許容量が前記狭域通信許容閾値未満である場合には、前記車載装置の通信経路として前記セルラー通信を採用するように構成されている通信制御方法。
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