JP7397600B2 - 樹脂複合体、及び、樹脂複合体の製造方法 - Google Patents
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Description
この種の樹脂複合体は、軽量でありながら高い強度を有することが求められている(下記特許文献1参照)。
しかしながら、必要以上の量の樹脂を芯材に浸透させると樹脂複合体の軽量性を低下させる要因となる。
さらに、特許文献1に記載されている樹脂複合体では、本来、繊維強化樹脂層を構成すべきはずの樹脂が芯材に浸透してしまって繊維強化樹脂層に樹脂不足を招くおそれがある。
そのようなことから、従来の樹脂複合体は、優れた強度と優れた軽量性との両立を図ることが困難であるという問題を有する。
そこで本発明はこのような問題を解決すべくなされたもので、強度と軽量性とに優れた樹脂複合体を提供することを課題としている。
即ち、本発明によれば強度と軽量性とに優れた樹脂複合体が提供され得る。
まず、本実施形態に係る樹脂複合体について図を参照しつつ説明する。
即ち、サンドウィッチパネル100は、一方の表面100aを構成する第1の繊維強化樹脂層2aと、他方の表面100bを構成する第2の繊維強化樹脂層2bとを備えている。
また、本実施形態のサンドウィッチパネル100における前記芯材1は、一面側が第1の繊維強化樹脂層2aで覆われているとともに他面側が第2の繊維強化樹脂層2bで覆われている。
本実施形態においては、前記芯材1は、これらの繊維強化樹脂層2a,2bに直接的に接している。
本実施形態における第1の繊維強化樹脂層2a及び第2の繊維強化樹脂層2bは、図3、図4に示したように芯材1を構成している板状の樹脂発泡体1xの第1面1aと該第1面1aとは反対面となる第2面1bとにそれぞれ繊維強化樹脂材20が積層されることによって形成されている。
即ち、前記第1面1a及び前記第2面1bのそれぞれは、本実施形態においては、芯材1と繊維強化樹脂層2との界面XSを構成している。
本実施形態の前記繊維強化樹脂材20は、図4に示すように、繊維と樹脂とを含んでいる。
具体的には、本実施形態の前記繊維強化樹脂材20は、複数本の連続繊維が束ねられてなる糸を使って織製された基布21と該基布21に含浸担持された樹脂22とを有する。
しかも、芯材1に多量の樹脂22を浸透させると繊維強化樹脂層2に樹脂不足が起こって繊維強化樹脂層2の外観が損なわれるおそれや、強度が十分に発揮されなくなるおそれがあるが、本実施形態においては前記繊維強化樹脂材20の前記樹脂22の多くが芯材側に奪われてしまうことがないため繊維強化樹脂層2に優れた強度が発揮され得る。
繊維強化樹脂層は、このようなボイドがあると美観が損なわれるおそれがある。
また、このようなボイドは、繊維強化樹脂層の表面にクラックなどを発生させる原因ともなり得る。
そのため、本実施形態の樹脂複合体は、表面におけるボイドの面積割合(ボイド率)が1%以下であることが好ましい。
該ボイド率は、0.5%以下であることがより好ましい。
該ボイド率は、実施例において記載されている方法によって測定することができる。
樹脂22の浸透している領域(浸透領域11)の前記界面XSからの最大深さ(D)は、前記の通り100μm以下であり、該浸透領域よりも深い部分は樹脂22の浸透していない非浸透領域12となっている。
前記平均深さは、前記界面XSと直交する方向にサンドウィッチパネル100を切断することによって現れる断面において前記界面XSに沿った方向での一定長さ(L)の区間において前記樹脂が浸透している部分の断面積(Sa)を求め、この断面積(Sa)を長さ(L)で除して求めることができる。
したがって、前記芯材1の連続気泡率は、例えば、40%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましく、15%以下であることがとりわけ好ましい。
具体的には、試験片の外寸をミツトヨ社製「デジマチックキャリパ」を用いて、1/100mmまで測定して試験片の見掛けの体積(cm3)を求め、次に、空気比較式比重計1000型(東京サイエンス社製)を用いて、ASTM D2856-87の1-1/2-1気圧法により試験片の体積(cm3)を求め、下記式により連続気泡率(%)を計算により求めることができる。
尚、連続気泡率は、例えば、5つの試験片についての平均値として求められる。
連続気泡率(%)=100×(見かけ体積-空気比較式比重計測定体積)/見かけ体積
また、空気比較式比重計は、標準球(大28.96cc 小8.58cc)にて補正を行ったものを用いることとする。
(a)発泡体作製工程
(b)被覆工程
以下に、各工程について説明する。
該発泡体作製工程は、芯材となる樹脂発泡体を作製する工程である。
樹脂発泡体は、押出発泡法によって形成されたシート(押出発泡シート)やロッド(押出発泡ロッド)などとすることができる。
また、樹脂発泡体は、発泡性を有する発泡性樹脂ビーズや樹脂ブロックを成形型内で発泡させた成形品(型内成形品)であってもよい。
なかでも、樹脂発泡体は、押出発泡シートであることが好ましく、厚さが0.5mm以上4mm以下であることが好ましい。
尚、この工程では、繊維強化樹脂層2が形成される表面全体に表皮が備わった状態となるように樹脂発泡体を作製することが好ましい。
即ち、この工程では、最表層を構成する複数の気泡が互いの気泡膜どうしを連続させて表皮を構成している状態となるように樹脂発泡体を作製することが好ましい。
該被覆工程は、発泡体作製工程で作製した樹脂発泡体1xの表面を前記繊維強化樹脂材20で覆って該繊維強化樹脂材20によって前記繊維強化樹脂層2を形成させる工程である。
該被覆工程は、樹脂発泡体1xと繊維強化樹脂材20とを加熱条件下で加圧する方法によって実施することができ、具体的には熱プレス装置を用いて樹脂発泡体と繊維強化樹脂材とを接着・一体化させる方法などによって実施することができる。
但し、前記繊維強化樹脂材20の樹脂22が前記樹脂発泡体1xに過度に浸透してしまわないようにするためには、この時の圧力や温度を一般的な条件に比べて緩和させることが好ましい。
なかでも、前記繊維強化樹脂材の前記樹脂は、樹脂発泡体の素材に関係なく優れた接着性を発揮することができるエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
即ち、本実施形態の前記基布21は、ガラスクロスやカーボンクロスとすることができる。
尚、本実施形態の繊維強化樹脂材は、布帛の状態で繊維を含有しているが、前記繊維を短繊維などの状態で含有してもよい。
本実施形態の繊維強化樹脂材は、一方向に引き揃えられた炭素繊維で構成されている繊維シート(以下「カーボンUD」ともいう)の状態で繊維を含有してもよい。
また、本実施形態の樹脂発泡体(芯材)は、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体(SMM樹脂)を主成分として含有するものであってもよい。
なかでも、樹脂発泡体に含有される樹脂は、前記被覆工程での加熱条件や加圧条件において一定以上の強度を発揮して繊維強化樹脂材の樹脂が浸透することを抑制できるものが好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂のような耐熱性・密着性に優れているものが最も好ましい。
前記見掛け密度は、100kg/m3以上600kg/m3以下であることが好ましく、200kg/m3以上500kg/m3以下であることがより好ましい。
即ち、見掛け密度は、原則的には次のようにして求めることができる。
(見掛け密度測定方法)
100cm3以上の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出することができる。
見掛け密度(g/cm3)=試験片質量(g)/試験片体積(cm3)
尚、測定用試験片は、成形が施された後、72時間以上経過した試料から切り取り、温度23±2℃、湿度50±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものとする。
また、本実施形態では樹脂複合体がサンドウィッチパネルである場合を例にしているが本発明での樹脂複合体の形態はこれらに限定されない。
即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではない。
(樹脂複合体の成形)
ポリエチレンテレフタレートを主成分とするシート状の発泡体(発泡シート)から厚さ約3mm、大きさ150mm×150mmのサンプルを切り出して芯材とした。
同じく150mm×150mmにカットしたカーボンFRPプリプレグ(以下、「CFRP1」という)を20枚及びガラスFRPプリプレグ(以下、「GFRP1」という)を2枚用意し、芯材の上面側に外周縁が揃うように、10枚のCRFP1を重ねた後、最も外側のCRFP1の表面に1枚のGFRP1を重ねた。
尚、上記のCFRP1は、一方向に引き揃えられた炭素繊維で構成されているカーボンUDであり、芯材に重ねるのに際しては、上下に隣り合うCRFPの繊維の方向が直交するようにした。
同じように芯材の下面側に、10枚のCRFP1を重ねた後、最も外側のCRFP1の表面に1枚のGFRP1を重ねて、予備成形体を作製した。
なお、各プリプレグは、樹脂としてエポキシ樹脂を含むものであった。
CRFP1及びGFRP1の構成は以下の表1に示した通りである。
この予備成形体を加熱状態下において、雌雄金型にてプレスして、芯材の上下面に10枚のCFRP1及び1枚のGFRP1からなる繊維強化樹脂層が形成された樹脂複合体を作製した。
具体的には、雌雄金型内において、予備成形体をプレスしつつ、温度120~130℃にて10分間加熱して、CFRP1中のエポキシ樹脂及びGFRP1中のエポキシ樹脂を完全に硬化させる(硬化工程)ことにより、樹脂複合体を作製した。
樹脂複合体の厚さを測定した結果、元の芯材の厚さと比べ、樹脂複合体作製後の芯材の厚さ残存率は62.1%であった。
なお、樹脂複合体の厚さは両面を200mm×200mmの平滑な金属板で挟み、金属板同士の隙間を測定することで、樹脂複合体の厚さとした。
金属板同士の隙間は、ミツトヨ社製「デジマチックキャリパ」を用いて、樹脂複合体4辺中央部を1/100mmの精度で測定し、4辺隙間の算術平均を複合体の厚さとした。
更に繊維強化樹脂層の厚さを1.00mmとして、樹脂複合体の厚さより差し引いた値を樹脂複合体作製後の芯材の厚さとし、芯材の元の厚さで除することで芯材の厚さ残存率とした。
表面と直交する平面に沿って樹脂複合体を切断し、繊維強化樹脂層の断面をマイクロスコープ(KEYENCE,VHX-1000)で50倍にて観察した。
繊維強化樹脂層と芯材の界面を観察し、繊維強化樹脂層から滲出した樹脂が芯材に最も深く浸透している箇所を特定し、界面から浸透している樹脂の先端までの長さを測定し最大樹脂深度として算出した。
各実施例、比較例の樹脂複合体については、以下のようにして「表面品質」を測定した。
樹脂複合体の表面に真球状微粒子ポリマーであるテクポリマー(積水化成品工業、MBX-8、粒径:8μm)をまぶし、ボイド部に粒子が押し込まれるようにウエス等でなじませた。
ボイド部に残存する粒子以外はウエス等で除去した。
マイクロスコープ(KEYENCE,VHX-1000)にて20倍で樹脂複合体の表面を観察し、色抽出によりボイド部を判別し、ボイド数を自動計測した。(ボイド部には白色粒子があり、ボイド部以外は黒色であるため色差により判別)
ポリエチレンテレフタレートを主成分とする発泡シートに代えてポリアミドを主成分とする発泡シート(厚さ約3mm、大きさ150mm×150mm)を芯材として用いたこと以外は実施例1と同様に樹脂複合体を作製し、実施例1と同様に樹脂複合体の評価を実施した。
芯材として用いる発泡シートの表面にサンドペーパーでの擦過処理を施し、表面の気泡膜に穴が開いた状態となるように調製したこと以外は実施例1と同様に樹脂複合体を作製し、実施例1と同様に樹脂複合体の評価を実施した。
厚さ約3mmのシート状の発泡体に代えて、厚さ約14mmのボード状の発泡体(ビーズ発泡成形体)を芯材として用いたこと以外は実施例1と同様に樹脂複合体を作製し、実施例1と同様に樹脂複合体の評価を実施した。
なお、ビーズ発泡成形体の表面には、比較例1と同様にサンドペーパーでの擦過処理を施した。
また、表1における「TAW」は、単位面積当たりのトータル質量を意味している。
Claims (3)
- 樹脂発泡体で構成された芯材と、樹脂及び繊維を含む繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層とを備え、該繊維強化樹脂層によって前記芯材が覆われている樹脂複合体であって、
前記樹脂発泡体における気泡の樹脂膜により構成された表皮と、前記繊維強化樹脂材に含まれる前記樹脂とが直接的に接着され、前記樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材とが一体化しており、
前記繊維強化樹脂層との界面を構成している前記芯材の表層部は、前記繊維強化樹脂層から滲出した樹脂が浸透している浸透領域が全く形成されていないか、又は、最大深さが100μm以下となるように前記浸透領域が形成されているかの何れかである樹脂複合体。 - 前記繊維強化樹脂材がエポキシ樹脂を含み、前記樹脂発泡体がポリエチレンテレフタレート樹脂を含む請求項1記載の樹脂複合体。
- 請求項1又は2に記載された樹脂複合体の製造方法であって、
前記樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材とを直接的に接触させて加熱条件下で加圧することにより、前記樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材とを直接的に接着させる被覆工程を含む、樹脂複合体の製造方法。
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