JP7394266B2 - 抗ウイルス性組成物及びその成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、抗ウイルス性組成物及びその成形体に関する。
近年の環境衛生に関する関心の高まりや、新型感染病の発症などから、様々な抗菌性材料や抗ウイルス性材料、それらを用いた抗菌性製品及び抗ウイルス性製品の開発が盛んに行われている。そうした材料の中でも、高分子材料は、高強度で耐腐食性等にも優れ、しかも所望の形状に成形し得ることから、抗菌性や抗ウイルス性の材料として有用である。例えば、抗菌剤や抗ウイルス剤を含有する樹脂組成物、特にポリオレフィン系樹脂組成物は、軽量で強度と柔軟性を兼ね備え、耐加水分解性等に優れる上、成形が容易であり、そのために様々な製品が提案されている。
抗菌剤としては、一般的な有機殺菌剤の他に、金属やその化合物等の無機系抗菌剤も多用されている。金属イオンが抗菌作用を有することは従来から知られており、これらを用いた無機系抗菌剤は、フェノールやハロゲンなどの官能基を有する有機系抗菌剤に比べて、揮発や分解などを起こしにくいため、安全性が高いだけでなく、抗菌作用の持続性、耐熱性に優れるといった特性を有する。このような無機系抗菌剤の利点から、例えば、不織布を構成する熱可塑性樹脂繊維に金属酸化物粒子を添加し均一に微分散させることによって、高い抗菌性能を有する抗菌性不織布(特許文献1参照)や、プラスチック製品の外部表面等に、抗菌剤の金属塩を組み込むことによって得られる抗菌剤含有プラスチック製品(特許文献2参照)が提案されている。
特開2021-116483号公報 特表2007-518704号公報
上記の特許文献1及び特許文献2に記載の提案のように、無機系又は有機系の抗菌剤を添加することで、ある程度の抗菌性能を付与することはできるものの、新型感染症などの抗ウイルス物品のニーズが高まる現状において、抗ウイルス性については何ら検討がなされていない。
そこで本発明は、十分に高い抗菌性を有するだけではなく、優れた抗ウイルス性も有する組成物及び成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、金属系材料、特に水の存在下で抗ウイルス機能を発揮する金属材料及び/又はその不溶性化合物からなる分散粒子と、有機材料、特に吸水性を有する有機材料からなる分散繊維とを併用した場合、ポリオレフィン系樹脂に高い抗菌性能を付与でき、さらに抗ウイルス性能も付与できるという知見を見出し、本発明を完成するに至った。
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
〔1〕ポリオレフィン系樹脂を含むベース材と、有機材料からなる分散繊維と、金属材料及び/又はその不溶性化合物からなる分散粒子とを含む、抗ウイルス性組成物。
〔2〕 前記有機材料が吸水性を有するものであり、前記金属材料が水の存在下で抗ウイルス機能を発揮するものであることを特徴とする、上記〔1〕に記載の抗ウイルス性組成物。
〔3〕 前記ベース材と前記分散繊維と前記分散粒子の存在割合が、質量百分率で、40~80%:5~55%:1~25%の範囲である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗ウイルス性組成物。
〔4〕 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及びエチレン酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される1種以上の樹脂である、上記〔1〕、〔2〕、又は〔3〕に記載の抗ウイルス性組成物。
〔5〕 前記分散繊維が、セルロース繊維、再生セルロース繊維、及びポリエステル繊維からなる群より選択される1種以上の繊維であることを特徴とする、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の抗ウイルス性組成物。
〔6〕 前記分散繊維が、セルロース繊維であることを特徴とする、上記〔5〕に記載の抗ウイルス性組成物。
〔7〕 前記セルロース繊維は、平均繊維長が10~3000μmの範囲、平均繊維径が1~50μmの範囲であることを特徴とする、上記〔6〕に記載の抗ウイルス性組成物。
〔8〕 前記分散粒子が、銅、銀、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、パラジウム、スズ及び鉄からなる群より選択される1種以上の金属及び/又はその不溶性化合物を含有する、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の抗ウイルス性組成物。
〔9〕 上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の抗ウイルス性組成物からなる成形体。
なお、本発明の説明において「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明によれば、十分に高い抗菌性を有するだけではなく、優れた抗ウイルス性も有する組成物、及びその成形体の提供が可能になった。本発明の抗ウイルス性組成物は、ポリオレフィン系樹脂をベース材としているため、軽量でありながら高強度で柔軟性も有し、耐加水分解性等の物性も優れる上、成形が容易で様々な形状に成形できる利点を有する。本発明の抗ウイルス性組成物はまた、抗菌及び抗ウイルス剤として金属系の材料を含有するため、抗菌作用及び抗ウイルス作用の持続性や耐熱性の点でも優れる。
本発明に係る一の実施形態の抗ウイルス性組成物を模式的に示した平面図であって、ベース材中に存在する分散繊維と分散粒子の分散状態を示す。 本発明の他の実施形態の成形体を模式的に示した断面図であって、ベース材中に存在する分散繊維と分散粒子の分散状態を示す。 本発明に従う実施例2のプレスシート試験片の表面の、電子顕微鏡写真図である。 本発明に従う実施例2のプレスシート試験片の断面の、電子顕微鏡写真図である。 比較例2のプレスシート試験片の表面の、電子顕微鏡写真図である。 比較例3のプレスシート試験片の表面の、電子顕微鏡写真図である。
以下、本発明の抗ウイルス性組成物について実施形態に基づき詳記するが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
〔抗ウイルス性組成物〕
本発明の抗ウイルス性組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含むベース材と、有機材料からなる分散繊維と、金属材料及び/又はその不溶性化合物からなる分散粒子とを含む。本発明の抗ウイルス性組成物は特に、ポリオレフィン系樹脂を含むベース材と、吸水性を有する有機材料からなる分散繊維と、水の存在下で抗ウイルス機能を発揮する金属材料及び/又はその不溶性化合物からなる分散粒子とを含む。
図1は、本発明に係る一の実施形態の抗ウイルス性組成物を模式的に示した平面図であって、ベース材中に存在する分散繊維と分散粒子の分散状態を示す。図2は、本発明の他の実施形態の成形体を模式的に示した断面図であって、ベース材中に存在する分散繊維と分散粒子の分散状態を示す。図1及び図2の実施形態に示されるように、本発明の抗ウイルス性組成物1においては、ポリオレフィン系樹脂を含むベース材2中の分散繊維3及び分散粒子4は、それぞれの少なくとも一部が、好ましくはベース材2から露出した状態で存在している。本発明の成形体11においても、ベース材12中の分散繊維13及び分散粒子14は、それぞれの少なくとも一部が、好ましくは成形体11の表面に露出した状態で存在している。
分散繊維13及び分散粒子14の一部が表面に露出していることは、後記する実施例でも実証されている(図3及び図4は、本発明に従う実施例2の試験片の表面及び断面の顕微鏡写真図である。)。すなわち、本発明の好ましい実施形態においては、ベース材中の分散繊維及び分散粒子の少なくとも一部が、抗ウイルス性組成物1や成形体11の外界と直接接触している。なお、成形体をスライスしたり、表面ブラスト処理を行うことで、上記の露出した状態をより実現しやすくし、また分散繊維3及び分散粒子4の露出部の表面積をさらに拡げることが可能となる。
本発明は、特定の理論により限定されるものではないが、本発明が効果を奏する理由として、有機材料、特に吸水性を有する有機材料からなる分散繊維が、金属材料及び/又はその不溶性化合物からなる分散粒子に作用し、抗菌及び抗ウイルス機能を発現させていることが考えられる。金属粒子、例えば銅による抗菌性及び抗ウイルス性発現メカニズムの一つとして、以下の機構が提案されている。
1.水分中に銅イオンが溶出する。
2.銅イオンが酸素と反応して、活性酸素が発生する。
3.銅イオン、活性酸素が、細菌やウイルスを減少させる。
ここで、ベース材のポリオレフィン系樹脂は、耐加水分解性に優れる反面、親水性は低いため、金属系の分散粒子のみを含んでいても当該分散粒子は水分と接触する機会が少なく、十分な抗ウイルス性を発現し難い。一方で本発明に従い、有機材料からなる分散繊維を含む組成物では、例えばベース材と分散繊維との界面に沿って外部から水分を取り込むことが可能となり、分散粒子を構成する金属系材料の表面に水分が供給され得る。ここで、分散繊維が吸水性を有する有機材料からなる場合には、組成物に親水性が付されて、外部からの水分の取り込みがさらに容易となる。特に、抗ウイルス性組成物中の分散繊維及び分散粒子それぞれの少なくとも一部が、ベース材から露出した状態で存在する場合、組成物が水浸透性を帯びるので、金属系材料の表面には十分な量の水分が供給
される。そのために金属及び/又はその不溶性化合物のイオン化が促進されて、十分な抗ウイルス性が発現すると考えられる。
本発明の抗ウイルス性組成物においては、これらベース材と分散繊維と分散粒子の存在割合が、質量百分率で、40~80%:5~55%:1~25%の範囲であることが好ましい。また、分散繊維及び分散粒子は、それぞれの少なくとも一部が、ベース材から露出した状態で存在することが好ましい。以下では、本発明の抗ウイルス性組成物を構成する各成分について説明する。
<ベース材>
本発明の抗ウイルス性組成物は、ベース材としてポリオレフィン系樹脂を含む。本発明においてポリオレフィン系樹脂とは、エチレンやプロピレン等のオレフィンモノマー等に基づく単独重合体(ホモポリマー)及び共重合体(コポリマー)等を包含する。例としてポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂;エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィンモノマーと他のモノマーとの共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン等のハロゲン化ポリオレフィン;さらにはポリアクリロニトリル等の官能基を有するポリオレフィン及びそれらの共重合体、例えばアクリロニトリルスチレン共重合体(AS樹脂、ABS樹脂)等が挙げられるが、これらに限定されない。複数種のポリオレフィン系樹脂を、併用することもできる。
しかしながら本発明の抗ウイルス性組成物においては、ポリオレフィン系樹脂がハロゲンやニトリル基等の官能基を有しないことが好ましい。ハロゲン等不含の、例えば炭素、水素、及び任意的な酸素原子等のみから成るポリオレフィン系樹脂をベース材とすれば、抗ウイルス性組成物をより軽量化できる上、燃焼時に有害ガスが発生するおそれもないので、環境面でも有利である。
ベース材のポリオレフィン系樹脂は、より好ましくはポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及びエチレン酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される1種以上の樹脂である。ここで、共重合体におけるオレフィンモノマーの構成モル比は、60%以上、さらには80%以上、特に90%以上であることが好ましい。また、ベース材におけるオレフィンモノマーの構成モル比が高いと、抗ウイルス性組成物をより軽量で耐加水分解性等に優れるものとすることができる。例えば、酢酸ビニルモノマーの構成モル比が、40%以下、特に20%以下、例えば0.1~5モル%のエチレン酢酸ビニル共重合体を使用する。さらに好ましくは、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等の、実質的にオレフィンのみを成分とする樹脂をベース材とする。
(ポリプロピレン系樹脂)
本発明においてポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン単独重合体の他、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体、例えばプロピレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-エチレン-α-オレフィン共重合体等をも包含する。なお、本発明においては、エチレン成分とプロピレン成分の両成分を含む樹脂については、ポリプロピレン系樹脂に分類するものとする。
ポリプロピレン系樹脂は、軽量かつ高強度で、柔軟性や耐熱性にも優れるので、本発明の抗ウイルス性組成物におけるベース材として最適である。強度や耐熱性の観点からは、本発明の成形体中において、少なくとも一部が常温(25℃)で結晶構造を形成するポリプロピレン系樹脂が好ましい。このようなポリプロピレン系樹脂を含有する成形体について、示差走査熱量測定(DSC測定)を行うと、164±5℃にポリプロピレン結晶の融解に伴う融解ピークがみられる。
しかしながら本発明の抗ウイルス性組成物でベース材とするポリプロピレン系樹脂に特に制限はなく、例えばプロピレン単独重合体としてアイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチック等のどのような構造のものを用いることもでき、また、共重合体としてランダム共重合体、ブロック共重合体、あるいは交互共重合体のいずれをも使用することができる。分子量にも特に制限はなく、例えば質量平均分子量が1,000~1,000,000の、特に3,000~300,000のポリプロピレン系樹脂を用いることができる。ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)にも特に制限はなく、例えばASTM D1238に従う2.16kg、230℃でのMFRが0.1~90g/10分、典型的には0.5~50g/10分、特に1~30g/10分程度の範囲内の樹脂であっても良い。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上記プロピレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンが好ましく、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンがより好ましい。
プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-1-オクテンランダム共重合体などが挙げられる。
プロピレン-エチレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体などが挙げられる。
プロピレンブロック共重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体成分又は主にプロピレンからなる共重合体成分と、エチレン及びα-オレフィンから選択されるモノマーの少なくとも1種とプロピレンとを共重合して得られる共重合体成分と、からなる共重合体を用いることができる。例として、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)共重合体、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体、(プロピレン)-(プロピレン-1-ブテン)共重合体、(プロピレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)共重合体、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ブテン)共重合体、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン)共重合体、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)共重合体、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体などが挙げられる。
これらのポリプロピレン系樹脂のうち、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体又はプロピレンブロック共重合体が好ましい。
(ポリエチレン系樹脂)
本発明においてポリエチレン系樹脂とは、エチレン単独重合体の他、エチレンと他のα-オレフィンとの共重合体、例えばエチレン-α-オレフィン共重合体等をも包含する。ポリエチレン系樹脂は成形性に優れる上、安価で経済的であるので、本発明の抗ウイルス性組成物におけるベース材として好適である。成形性の観点からは、本発明の成形体中において、少なくとも一部が常温(25℃)で結晶構造を形成するポリエチレン系樹脂が好ましい。このようなポリエチレン系樹脂を含有する成形体について、示差走査熱量測定(DSC測定)を行うと、124±5℃にポリエチレン結晶の融解に伴う融解ピークがみられる。後述する酸変性ポリエチレン樹脂を用いた場合にも、124±5℃にポリエチレン結晶の融解に伴う融解ピークがみられる場合がある。
しかしながら本発明の抗ウイルス性組成物でベース材とするポリエチレン系樹脂に特に制限はなく、例えばエチレン単独重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体などが挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、α-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましい。
ポリエチレンは、密度もしくは性状等に応じて、高密度ポリエチレン(HDPE、密度約0.92~0.96)、低密度ポリエチレン(LDPE、密度約0.91~0.92)、超低密度ポリエチレン(VLDPE、密度約0.9以下)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、密度約0.94以下)、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE、質量平均分子量1,5000,000程度以上)等に分類されるが、本発明においてはこれらいずれのポリエチレン樹脂を用いてもよい。その分子量や分岐状態にも、特に制限はない。
エチレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体などが挙げられる。
(エチレン酢酸ビニル共重合体)
エチレン酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルの共重合体である。共重合比の異なる様々な品種が上市されているが、本発明においてはそのいずれをも使用することができる。例えば、酢酸ビニル量(共重合体中の酢酸ビニルモノマー成分の質量比)が4%程度以下の酢酸ビニル修飾ポリエチレン、酢酸ビニル量4~30%程度の汎用エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられるが、より酢酸ビニル量の高い、例えば酢酸ビニル量60%の共重合体を使用することもできる。エチレン酢酸ビニル共重合体は、ポリエチレン樹脂等に比べて柔軟で、光沢があり、高い接着性を示す特徴がある。また、酢酸ビニル量が高い共重合体ほど、柔軟性に優れる傾向にある。
(変性ポリオレフィン樹脂)
本発明の抗ウイルス性組成物は、ポリオレフィン系樹脂の一部として、変性ポリオレフィン樹脂を含有してもよい。例えば、ポリエチレン系樹脂として変性されたポリエチレン樹脂を使用してもよく、また、酸変性されていないポリエチレン樹脂とともに酸変性されたポリエチレン樹脂を含んでもよい。すなわち、本発明において「ポリオレフィン系樹脂」という場合、酸変性されたポリエチレン樹脂等の変性ポリオレフィン樹脂を含む意味である。変性ポリオレフィン樹脂を含有することにより、ベース材中への他成分、例えば後記するセルロース繊維や金属等の分散粒子の分散状態を向上させることが可能である。
変性ポリオレフィン樹脂に特に制限はないが、例えばポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂を不飽和カルボン酸、アルコキシシランもしくはその誘導体によりグラフト変性したものが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸誘導体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル等が挙げられる。不飽和カルボン酸誘導体としては不飽和カルボン酸無水物が好ましい。これらの不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のうち、特に無水マレイン酸が好ましい。
アルコキシシランとしては、例えば、グラフト化のための官能基を有するアルコキシシラン化合物が好ましい。シランカップリング剤としては、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下で、ポリオレフィン系樹脂にグラフト化反応しうる部位(基又は原子)と、アルコキシシリル基とを有するものを使用することができる。ポリオレフィン系樹脂にグラフト化反応しうる部位としては、エチレン性不飽和基を含有する基が挙げられる。エチレン性不飽和基を含有する基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基、p-スチリル基等が挙げられる。アルコキシシリル基としては、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、モノアルコキシシリル基のいずれの形態でもよく、トリアルコキシシラン化合物を用いることが好ましい。アルコキシシリル基のアルコキシ基は、炭素原子数1~6が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。シランカップリング剤は、エチレン性不飽和基を含有する基とアルコキシシリル基とを有するものが好ましい。シランカップリング剤は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン等のビニルシラン化合物、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(メチルジメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(メチルジエトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(メトキシジメチルシリル)プロピル等の(メタ)アクリルシラン化合物等が挙げられる。中でも、ビニルトリメトキシシラン及び/又は(メタ)アクリル酸(トリメトキシシリル)アルキルの使用が特に好ましい。(メタ)アクリル酸(トリメトキシシリル)アルキルのアルキル基は、炭素原子数1~10が好ましく、1~6がより好ましく、2~4がさらに好ましく、プロピル基が特に好ましい。成形体の引張強度を高める観点からは、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルを用いることが好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂における変性量は、特に制限はないが、(変性前の)ポリオレフィン樹脂100質量%に対して0.2~10質量%が好ましく、さらには1~5質量%が好ましい。また、本発明の抗ウイルス性組成物において変性ポリオレフィン樹脂を使用する場合、その含有量はポリオレフィン系樹脂100質量部に対して1~20質量部、特に5~15質量部程度とすることが好ましい。
(ベース材の含有量)
上記のように、本発明の抗ウイルス性組成物においては、ベース材と分散繊維と後記する分散粒子の存在割合が、質量百分率で、40~80%:5~55%:1~25%の範囲であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂を含むベース材、好ましくは実質的にポリオレフィン系樹脂からなるベース材の含有量が、抗ウイルス性組成物全体に対して40質量%以上であれば、良好な成形性が発現し易い利点がある。一方で、同量が80質量%以下、すなわち分散繊維及び金属系材料の分散粒子の含有量が20質量%以上であれば、良好な抗菌性及び抗ウイルス性が発現し易い。より好ましくは、抗ウイルス性組成物100質量%に占めるベース材の含有量を、48~78質量%、さらに好ましくは55~75質量%とする。
<分散繊維>
本発明の抗ウイルス性組成物においては、上記のようなベース材中に、有機材料、特に吸水性を有する有機材料からなる分散繊維が、金属材料及び/又はその不溶性化合物からなる分散粒子(金属系分散粒子)と共に存在している。これら分散繊維は、後記する金属系分散粒子の抗ウイルス性を補助する、抗ウイルス助剤として機能すると考えられる。
本発明における分散繊維は、有機材料からなる繊維(有機繊維)であればどのようなものであってもよく、その繊維長や繊維径等に特に制限はない。好ましくは、吸水性を有する有機材料(吸水性有機材料)からなる繊維(吸水性有機繊維)を使用する。吸水性有機繊維の共存により、分散粒子を構成する金属材料の表面に水分が供給され易くなるので、組成物の抗菌作用及び抗ウイルス作用がさらに良好となる。そうした有機繊維の例として、セルロース繊維や羊毛、絹糸を始めとする天然繊維や;再生セルロース繊維、ポリエステル繊維、例えばポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアミド繊維、例えばナイロン(登録商標)繊維、ポリイミド繊維などの合成繊維が挙げられる。なお、「有機繊維」とは有機材料から主としてなる繊維を指し、有機材料以外に、合成時の触媒残渣や加工用添加剤、原料由来の無機物等の不可避的混合物を含有していてもよい。
上記した繊維の中でも、コストや加工性、吸水率の観点から、セルロース繊維、再生セルロース繊維、及びポリエステル繊維からなる群より選択される1種以上の繊維がより好ましく、天然又は再生セルロース繊維が特に好ましい。すなわち、上記分散繊維はセルロース繊維を含むことが好ましく、セルロース繊維、特に天然セルロース繊維を主体とすることがより好ましい。例えば、分散繊維全体に占める天然又は再生セルロース繊維の比率を、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上とすることができ、特に分散繊維のほぼ全量をセルロース繊維とすることが好ましい。セルロース繊維は、ポリオレフィン系樹脂に比較して高強度、高剛性を有する。このため、セルロース繊維は、ベース材を補強し、抗ウイルス性組成物や成形体の剛性(曲げ弾性率)を高める効果も奏する。
(セルロース繊維)
セルロース繊維は、繊維状のセルロースであり、主成分は分子式(C10で表される多糖類の一種であるため、吸水性に優れる。本発明で使用するセルロース繊維に特に制限はないが、工業的な利用方法が確立されており、入手が容易な点から、植物由来の天然セルロース繊維が好ましく、特に、微細な植物由来のセルロース繊維、例えば粉状パルプが好ましい。なお、「セルロース繊維」とは、広義には再生セルロース繊維も包含し、本発明の抗ウイルス性組成物においても再生セルロースを天然セルロースと同様に配合することができる。しかし、天然セルロースと再生セルロースとでは、原料の供給元等が相違するため、以下では「セルロース」は特記しない限り天然セルロースを指すものとし、再生セルロースについては別途に説明することとする。
一般に、植物由来のセルロース繊維は、30~40分子のセルロースが束となって直径約3nm、長さ数百nmから数十μmの超極細幅で高結晶性のミクロフィブリルを形成し、これらが軟質な非結晶部を介しながらさらに束となった構造を形成している。上記の粉状パルプ(粉末状セルロース)は、この束状の集合体である。なお、本発明において、セルロース繊維という場合、上記のミクロフィブリルの束(未解繊の状態)の他に、解繊されて生じたミクロフィブリルの状態を含む意味で用いる。
植物由来のセルロース繊維は、特に限定されるものではないが、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物(例えば、麦や稲などの藁、とうもろこし、綿花などの茎、サトウキビ)などの植物から採取したもの、さらには布、再生パルプ、古紙、木粉等に由来するものが挙げられる。好ましくは、木材由来のセルロース繊維、特に木材パルプを使用する。木材パルプは他の植物由来のパルプに比べて季節による生産量の変動が小さく、安定供給される利点がある。なお、パルプは、紙の原料ともなるもので、植物から抽出される仮道管を、化学的に見るとセルロースを主成分とする。
植物由来のセルロース繊維は、セルロース以外の成分、例えばリグニンやヘミセルロースをしばしば含有する。本発明においては、こうしたセルロース以外の成分は、完全に除去する必要はないものの、少量であることが好ましい。例えば木粉そのものを配合する組成物のように、リグニンやヘミセルロースの量が多いと、所望の機械特性を付与することが難しくなる。本発明においては、セルロース繊維原料中のセルロースの含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。この種の特に好ましいセルロース繊維原料としては、例えばクラフトパルプが挙げられる。
クラフトパルプは、木材もしくは他の植物原料から、苛性ソーダなどの化学処理によって、リグニン及びヘミセルロースを除去し、純粋に近いセルロースを取り出したパルプの総称である。セルロース分子を主成分として、少量のヘミセルロース及びリグニンから構成される。
本発明の抗ウイルス性組成物に含まれるセルロース繊維はまた、セルロース分子中の水酸基の一部が、アセチル化やカルボキシ化されていてもよく、また、水酸基中の水素原子がナトリウムやカリウム等の金属イオン、もしくはアンモニウムイオン等で置換されていてもよい。
(再生セルロース繊維)
再生セルロース繊維は、セルロースを溶液から再沈殿して得られる繊維である。例えばセルロースを酸化銅アンモニア溶液(シュワイツァー溶液)や水酸化ナトリウム溶液に溶かすと、高粘液のビスコースが得られる。このビスコースを紡糸液として細孔から硫酸等の凝固浴に押し出すと、セルロースを再生することができる。再生セルロース繊維の多くは、こうしたビスコース法によって製造され、レーヨンと呼ばれる。ビスコースの種類や熟成の度合い、凝固浴、延伸や仕上げの条件によって、様々な品種の再生セルロース繊維を得ることができる。無水酢酸によるエステル化処理等が施されていてもよい。また、N-メチルホルホリンN-オキシド等の溶媒にセルロースを溶解して紡糸する溶媒紡糸レーヨンや、銅安法レーヨンも知られている。本発明においては、こうした種々の再生セルロース繊維のいずれをも使用することもできる。天然セルロース繊維と併用することも、可能である。
(ポリエステル繊維)
ポリエステル繊維は、モノマー単位同士が主としてエステル結合した、長鎖合成高分子からなる繊維である。汎用のポリエステル繊維の多くは、二価アルコールとテレフタル酸からなるポリマーを主体とする繊維であり、特にポリエチレンテレフタレート(PET)繊維が一般的である。他に、アルキレンパラオキシベンゾエート等を共重合させた、エーテル結合を有するポリエステル繊維も知られている。モノマー成分や重合度、合成法や延伸条件等によって、様々な品種のポリエステル繊維を製造することができる。本発明においては、こうした種々のポリエステル繊維のいずれをも使用することもできる。天然及び/又は再生セルロース繊維と併用することも、可能である。
分散繊維の平均繊維径及び平均繊維長は特に限定されず、用途等によって適宜選択することができる。しかしながら、抗ウイルス性組成物中での繊維の分散性、抗ウイルス性組成物の成形性や補強性の観点から、分散繊維、例えばセルロース繊維の平均繊維径は1~50μmが好ましく、5~40μmがより好ましく、10~30μmがさらに好ましく、15~25μmが特に好ましい。同じ理由から、分散繊維、例えばセルロース繊維の平均繊維長は10~3000μmが好ましく、20~2500μmがより好ましく、100~2000μmがさらに好ましく、400~1000μmが特に好ましい。なお、上記平均繊維径及び平均繊維長は、繊維分析計による繊維長及び繊維径測定や、光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察された分散繊維の長手方向のサイズを繊維長、短手方向のサイズを繊維径とし、各々を平均化し求めることができる。平均繊維径及び平均繊維長を顕微鏡観察により求める際の観察視野は、例えば960μm×1200μmである。
分散繊維の含有量に関しては特に限定されず、用途などによって適宜選択することができる。好ましくは、上記のベース材100質量部に対して7~110質量部、より好ましくは10~55質量部とする。分散繊維の含有量がこの範囲以内であれば、十分な抗ウイルス性を発現し、曲げ弾性率等の機械的強度及び外観等にも優れた組成物となる。一方で分散繊維の含有量が多くなると、成形性に劣り、シートフィルム形状に成形することが難しくなることがある。分散繊維の添加量が少ないと、組成物の抗菌又は抗ウイルス性が劣ることがある。
本発明の抗ウイルス性組成物においてはまた、上記したように抗ウイルス性組成物の成形性及び抗菌性及び抗ウイルス性の観点から、ベース材と分散繊維と後記する金属系分散粒子の存在割合が、質量%で、40~80%:5~55%:1~25%の範囲であることが好ましい。より好ましくは、抗ウイルス性組成物全100質量%に対する分散繊維の含有量を、8~51質量%、さらに好ましくは10~40質量%とする。
<分散粒子>
本発明の抗ウイルス性組成物は、上記成分に加え、金属材料、特に水の存在下で抗ウイルス機能を発揮する金属材料(抗ウイルス性金属材料)及び/又はその不溶性化合物からなる分散粒子、すなわち金属系分散粒子をさらに含む。
分散粒子としては、銅、銀、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、パラジウム、スズ及び鉄からなる群より選択される1種以上の金属及び/又はその不溶性化合物を含有するものが挙げられるが、これらに限定されない。ここで、これら金属の「不溶性化合物」とは、水に殆ど不溶な化合物であり、酸化物又は水酸化物であってもよい。例えば、上記抗ウイルス性金属材料の酸化物粒子又は水酸化物粒子、あるいは表面の一部又は全部が酸化物又は水酸化物で覆われた金属粒子であってもよい。金属材料及び/又はその不溶性化合物は、銅や銀等の上記金属を複数種含む、例えば合金や複合酸化物であってもよい。特に、銅又はその合金、例えば真鍮が好ましい。こうした金属材料は、特に水の存在下で高い抗ウイルス機能を発揮し、本発明の抗ウイルス性組成物において抗ウイルス剤として作用する。なお、「金属材料及び/又はその不溶性化合物からなる分散粒子」は、粒子の主体が金属材料及び/又はそれら金属材料の不溶性化合物で構成されている粒子を指し、原料等に由来する不可避的混合物や、分散性改善のための表面改質剤等を含んでいてもよい。
本発明の抗ウイルス性組成物は、抗ウイルス剤として金属塩ではなく、金属材料及び/又はその不溶性化合物からなる分散粒子を含むため、抗ウイルス剤が使用時に水等に抽出されることがない。また、有機系抗菌剤のように揮散又は分解するおそれもない。そのため、抗菌性や抗ウイルス性が経年使用によって低下することがなく、また、周辺機器に塩害をもたらすおそれもない。一方で本発明の抗ウイルス性組成物やその成形体が水分、例えば水槽の水や汚水、汗等の体液と接触すると、金属材料及び/又はその不溶性化合物からなる分散粒子に基づく抗ウイルス機能が発揮される。
本発明の抗ウイルス性組成物におけるこうした分散粒子は、どのような形状であってもよく、球状、繊維状の粉体、鱗片状などの形状のうちの少なくとも1種類を選択することができる。複数の形状が入り混じった粒子であってもよい。中でも、組成物の成形性を担保する観点から、分散粒子は球状であることが好ましい。
金属系分散粒子の粒径については特に制限されるものではないが、平均粒子径が0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上50μm以下であることがより好ましく、1μm以上40μm以下であることが特に好ましい。金属系粒子の径は、一般に小さい方が抗ウイルス性を発現する傾向があるが、小さ過ぎると粒子の融点が下がり、樹脂との混錬工程において不具合を生じることがある。粒子径が大きいと、金属系分散粒子の凹凸により成形体の表面性が劣ることがある。平均粒子径は、動的光散乱法やレーザー回析法などで求めることができる。
本発明の抗ウイルス性組成物においては、上記したように抗ウイルス性組成物の成形性及び抗菌性や抗ウイルス性の観点から、ベース材と分散繊維と金属系分散粒子の存在割合が、質量%で、40~80%:5~55%:1~25%の範囲であることが好ましい。より好ましくは、抗ウイルス性組成物全100質量%に対する金属系分散粒子の含有量を、1~20質量%、さらに好ましくは1~15質量%とする。すなわち、本発明の抗ウイルス性組成物におけるベース材と分散繊維と分散粒子の存在割合は、より好ましくは48~78質量%:8~51質量%:1~20質量%、さらに好ましくは48~75質量%:10~51質量%:1~15質量%である。
(他の成分)
本発明の抗ウイルス性組成物は、上記のベース材(ポリオレフィン系樹脂)、分散繊維、及び(金属系)分散粒子以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂、各種慣用添加物等を含んでいてもよい。
添加物としては例えば、酸化防止剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、着色剤(染料、有機顔料、無機顔料)、充填剤、滑剤、可塑剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、発泡剤、パラフィンワックス等の潤滑剤、表面処理剤、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等が挙げられるが、これらに限定されない。こうした他の成分は、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば抗ウイルス性組成物全100質量%に対して0.1~10質量%、特に0.5~5質量%程度の量で、適宜含有させることができる。
〔抗ウイルス性組成物の製造方法〕
本発明の抗ウイルス性組成物は、少なくともベース材(ポリオレフィン系樹脂)と分散繊維と(金属系)分散粒子とを、例えば溶融混合(混練)して、ポリオレフィン系樹脂中に分散繊維と(金属系)分散粒子とを分散させることにより製造することができる。本発明はまた、ベース材、分散繊維、及び分散粒子を溶融混合する工程を含む、抗ウイルス性組成物の製造方法をも包含する。
本発明において「溶融混合」とは、ポリオレフィン系樹脂を溶融させた状態で、分散繊維及び(金属系)分散粒子等の成分と混合することを意味する。また、「混合」とは、溶融したポリオレフィン系樹脂を溶融させた状態で、分散繊維及び(金属系)分散粒子等の成分とが混在した状態を作り出せる限り、均一であっても不均一であってもよい。溶融混合は例えば、ポリオレフィン系樹脂を溶融させた状態で、分散繊維及び(金属系)分散粒子等の成分とを、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いて混合したりすることにより調製することができる。特に、二軸押出機の使用が好ましい。
各成分の混合順序にも、特に制限はない。しかしながら本発明においては、ポリオレフィン系樹脂と(金属系)分散粒子との溶融混合物A及びポリオレフィン系樹脂と分散繊維との溶融混合物Bをそれぞれ調製しておき、これらを溶融混合した後、成形する方法が、分散繊維及び(金属系)分散粒子のポリオレフィン系樹脂中への分散をそれぞれ良好なものとする観点から好ましい。また、上記のようにして調製した溶融混合物Bに、(金属系)分散粒子を混合してもよい。ポリオレフィン系樹脂と(金属系)分散粒子との溶融混合物A及びポリオレフィン系樹脂と分散繊維との溶融混合物Bは、成形工程における取扱性の観点から、両者を混合する前に、後述するようにペレット状に加工することが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂と分散繊維との溶融混合工程においては、ベース樹脂としてのポリオレフィン系樹脂中における分散繊維の分散状態を向上させる観点から、溶融混合前にアルコキシシラン変性ポリオレフィン系樹脂と分散繊維とをアルコキシシラン変性ポリオレフィン系樹脂の融点未満の温度で前混合したり、分散繊維用の分散助剤の存在下で溶融混合したりしてもよい。
分散繊維用の分散助剤の存在下で溶融混合する場合には、混合装置(例えば、押出機)中に、分散繊維用の分散助剤を添加して、ベントにより回収することができる。分散繊維用の分散助剤としては、分離又は回収等の環境負荷が少なく、残留しても分散繊維への悪影響が少ない観点から、水等を用いることが好ましい。
〔成形体〕
本発明はまた、上記の抗ウイルス性組成物からなる成形体をも包含する。成形体の形状に特に制限はなく、シート状、管状、その他複雑な形状等、目的及び用途に則して種々の所望の形状とすることができる。本発明の成形体は、発泡体であってもよい。なお、本発明の成形体においては、分散繊維及び分散粒子は、それぞれの少なくとも一部が、ベース材から露出した状態で、成形体の表面に存在していることが好ましい。分散繊維及び分散粒子の一部がベース材から露出していると、特に高い抗ウイルス性が発現し得る。
本発明の成形品の製造方法としては、目的形状に成形できるものであれば特に限定されず、従来公知の押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、カレンダー成形等の何れの方法も可能である。成形体の形状によっては、例えば押出成形機を使用し、前記の溶融混合と成形体の成形とを、一工程で行うこともできる。また、製造した抗ウイルス性組成物を一旦ペレット化し、射出成形等により成形体としてもよい。ペレット化の方法にも特に制限はなく、汎用のペレタイザー等を使用することができる。発泡体を製造する場合も、例えば、射出発泡、押出発泡、発泡ブロー等の液相発泡法、あるいは、ビーズ発泡、バッチ発泡、プレス発泡、常圧二次発泡等の固相発泡法等、公知のどのような方法を用いることも可能である。
なお、射出成形、押出成形等における成形温度としては、その成形方法や使用するポリオレフィン系樹脂の種類等によってもある程度異なるため、一概には規定できるものではないが、好ましくはベース材の融点+5~100℃程度、特に+10~50℃程度の温度、例えば、180~260℃、より好ましくは190~230℃とすることができる。こうした温度であれば、本発明に係る抗ウイルス性組成物が、良好なドローダウン特性、延展性を持って、かつ局部的にも変性を生じることなく所定形状に成形できる。
成形品の形態としては、本発明の抗ウイルス性組成物のみからなる成形品でなくてもよく、例えば、本発明の抗ウイルス性組成物とそれ以外の樹脂組成物を含む2層以上の積層構造からなるものであってもよい。
〔用途〕
本発明の成形体は、優れた抗菌性及び抗ウイルス性を示すため、各種医療及び衛生用途の製品を始め、自動車部品等の輸送機器用材料、インテリア、エクステリア等、多数の使用者が接する可能性のある製品の材料として有用である。特に、分散繊維としてセルロース繊維、中でも天然セルロース繊維を含む成形体は、セルロース繊維強化樹脂材料が本来有する軽量性と高い比強度といった特性を有し、抗菌性及び抗ウイルス性だけでなく剛性や耐衝撃性が求められる部材ないし材料等の種々の用途に用いることができる。
本発明の成形体は、具体的には、以下のような製品、又はそれらの部品及び/又は部材等として用いることができる。例として輸送機器(自動車、二輪車、列車、及び航空機など)、ロボットアームの構造部材、アミューズメント用ロボット部品、義肢部材、家電材料、OA機器筐体、情報処理機器、携帯端末、建材、ハウス用フィルム、排水設備、トイレタリー製品材料、各種タンク、コンテナー、シート、包装材、玩具、文具、食品容器、ボビン、チューブ、ケーブルトラフ、樹脂側溝、家具材料(壁材、手すりなど)、靴、及びスポーツ用品などが挙げられる。本発明の成形体は、輸送機器、例えば自動車部品の材料等として好適である。
輸送機器用材料としては、具体的には車両用材料、例えば、ダッシュボードトリム、ドアートリム、ピラートリム等のトリム類、メーターパネル、メーターハウジング、グローブボックス、パッケージトレイ、ルーフヘッドライニング、コンソール、インストルメントパネル、アームレスト、シート、シートバック、トランクリッド、トランクリッドロアー、ドアーインナーパネル、ピラー、スペアタイヤカバー、ドアノブ、ライトハウジング、バックトレー等の内装部品、バンパー、ボンネット、スポイラー、ラジエーターグリル、フェンダー、フェンダーライナー、ロッカーパネル、サイドステップ、ドア・アウターパネル、サイドドア、バックドア、ルーフ、ルーフキャリア、ホイールキャップ・カバー、ドアミラーカバー、アンダーカバー等の外装部品、その他、バッテリーケース、エンジンカバー、燃料タンク、燃料チューブ、給油口ボックス、エアインテークダクト、エアクリーナーハウジング、エアコンハウジング、クーラントリザーブタンク、ラジエターリザーブタンク、ウインドウ・ウオッシャータンク、インテークマニホールド、ファン及びプーリーなどの回転部材、ワイヤーハーネスプロテクター等の部品、接続箱又はコネクタ、また、フロントエンドモジュール、フロント・エンドパネル等の一体成形部品等が挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は上記で規定すること以外は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例・比較例)
各種の組成物及び成形体を調製し、抗菌性及び抗ウイルス性及び吸水量を評価した。
-使用材料-
以下に、使用した材料を示す。
<ベース材>
ポリプロピレン樹脂:J106MG(商品名)、株式会社プライムポリマー社製のアイソタクチックポリプロピレン樹脂、MFR:10g/10min
<分散繊維>
セルロース繊維-1:ARBOCEL B400(商品名)、RETTENMAIER社製のセルロース繊維、平均繊維長450μm、平均繊維径15μm
セルロース繊維-2:パルプシート粉砕品、Harmac Pacific社製のパルプシートHarmac R(商品名)を粉砕機を用いて粉砕した繊維;平均繊維長900μm、平均繊維径25μm
<分散粒子>
銅粉-1:LPW-CU-AAJK(商品名)、LPW TECHNOLOGY LTD製の銅粉、形状:球状、平均粒子径30μm
銅粉-2:Cu―HWQ(商品名)、福田金属箔粉工業株式会社製の銅粉、形状:球状、平均粒子径1.5μm
-抗菌性評価-
抗菌性評価は、JIS Z 2801:201に則り行った。以下の試験菌を用いて、温度:35℃、作用時間:24時間、接種菌液濃度:5.4×105cfu/ml、接種量:0.4ml/sampleにて抗菌活性値を求めた。
・黄色ブドウ球菌(NBRC12732)
・大腸菌(NBRC3972)
なお、抗菌活性値は以下の式より算出した。
抗菌活性値=LogA-LogB
A:標準試料(ポリプロピレン樹脂単体)の単位面積あたり生菌数
B:試験試料の単位面積あたり生菌数
得られた値は、小数点第2位を四捨五入し、活性値が1.0未満である場合を抗菌性が劣るとして「×」、活性値が1.0以上2.0未満である場合を抗菌性が良好であるとして「○」、そして、活性値が2.0以上である場合を抗菌性が優れているとして「◎」として評価した。
-抗ウイルス性評価-
抗ウイルス性評価は、JIS R 1756:2020(可視光応答型光触媒、抗ウイルス、フィルム密着法)の規定に従って行った。以下の試験ファージ等を用いて、温度:25℃±3℃、作用時間:4時間、接種ファージ液濃度:7.6×106pfu/ml、接種量:0.4ml/sampleにて抗ウイルス活性値を求めた。
・バクテリオファージQβ(NBRC20012)[宿主大腸菌(NBRC106373)]
・バクテリオファージΦ6(NBRC 105899)[宿主Pseudomonas syringae(NBRC 14084)]
なお、抗ウイルス活性値は以下の式より算出した。
抗ウイルス活性値(暗所)=LogC-LogD
C:標準試料(ポリプロピレン樹脂単体)の感染価
D:試験試料の感染価
得られた値は、小数点第2位を四捨五入し、活性値が1.0未満である場合を抗ウイルス性が劣るとして「×」、活性値が1.0以上2.0未満である場合を抗ウイルス性が良好であるとしてを「○」、そして、活性値が2.0以上である場合を抗ウイルス性が優れているとして「◎」として評価した。
-吸水量評価-
吸水量は、温度25℃、湿度50%の雰囲気下に24時間以上保持した各試料を80℃で24時間真空乾燥し、乾燥前後の重量変化から以下の式に基づき算出した。
吸水量(質量%)=(乾燥前質量-乾燥後質量)/乾燥後質量×100
(実施例1)
-セルロース繊維マスターバッチの作製-
ポリプロピレン樹脂とセルロース繊維-1を充分乾燥した後、スクリュー径15mm、L/D=45の同方向二軸スクリュー押出機(商品名:KZW15TW-45MG-NH、株式会社テクノベル製)に2つのホッパーからそれぞれ投入し、ダイ190℃の設定にてストランド状に押出した。上記混合は、ポリプロピレン樹脂とセルロース繊維-1の合計100質量部に対して25質量部のセルロース繊維-1が混合されるように調整して行った。冷却およびカッティングを経て、ペレット状のセルロース繊維マスターバッチを得た。
-セルロース繊維マスターバッチへの銅粉の添加-
セルロース繊維マスターバッチを充分乾燥した後、同二軸スクリュー押出機に2つのホッパーからセルロース繊維マスターバッチと銅粉-1とをそれぞれ投入し、ダイ190℃の設定にてストランド状に押出した。上記混合は、セルロース繊維マスターバッチと銅粉の合計100質量部に対して5質量部の銅粉-1が混合されるように調整して行った。冷却およびカッティングを経て、直径約2mm×高さ約3mmの樹脂ペレットを得た。なお、樹脂ペレット100質量部におけるポリプロピレン樹脂:セルロース繊維-1:銅粉-1の質量比は、71.25:23.75:5.00である。
-抗菌/抗ウイルス試験片の作製-
作製した樹脂ペレットをモールド内に投入し、小型熱プレス成形機(商品名:MP-WCH 株式会社東洋精機製作所製)を用いて、190℃、20MPaにて寸法約100mm×100mm×1mmのプレスシートを作製した。これを50mm×50mmに打ち抜き、抗菌/抗ウイルス試験片を得た。この試験片の断面を走査型電子顕微鏡(SEM 装置名:JSM-6390LV、日本電子株式会社製)の組成像で観察したところ、図2に示すように表面に金属系分散粒子が露出している状態であった。得られた試験片について上記のような抗菌/抗ウイルス試験を行った結果を、試験片の組成と共に、表1に示す。
(実施例2)
セルロース繊維マスターバッチと銅粉の混合割合を、セルロース繊維マスターバッチと銅粉の合計100質量部に対して銅粉10質量部とした以外は、実施例1と同様の方法により抗菌/抗ウイルス試験片を得た。なお、試験片100質量部におけるポリプロピレン樹脂:セルロース繊維-1:銅粉-1の質量比は、67.50:22.50:10.00である。この試験片の表面及び断面の電子顕微鏡(SEM)写真図を、図3及び4に示す。実施例2の試験片においては、図2に模式的に示した分散状態が発現し、セルロース繊維(分散繊維13)及び銅粉(分散粒子14)はベース材で完全には覆われておらず、それらの一部が試験片表面に露出した状態で存在していることが明らかとなった。
(実施例3)
実施例2で用いた銅粉(銅粉-1、平均粒子径30μm)を平均粒子径1.5μmのもの(銅粉-2)に代えた以外は、実施例2と同様の方法により抗菌/抗ウイルス試験片を得た。試験片100質量部におけるポリプロピレン樹脂:セルロース繊維-1:銅粉-2の質量比は、67.50:22.50:10.00である。
(実施例4)
銅粉の混合割合を、セルロース繊維マスターバッチと銅粉の合計100質量部に対して銅粉1質量部に代えた以外は、実施例3と同様の方法により抗菌/抗ウイルス試験片を得た。試験片100質量部におけるポリプロピレン樹脂:セルロース繊維-1:銅粉-2の質量比は、74.25:24.75:1.00である。
(実施例5)
セルロース繊維の混合割合を、セルロース繊維マスターバッチと銅粉の合計100質量部に対してセルロース繊維50.5質量部(ポリプロピレン樹脂とセルロース繊維の合計100質量部に対して51質量部)に代えた以外は、実施例4と同様の方法により抗菌/抗ウイルス試験片を得た。試験片100質量部におけるポリプロピレン樹脂:セルロース繊維-1:銅粉-2の質量比は、48.50:50.50:1.00である。
(実施例6)
実施例2で用いたセルロース繊維(セルロース繊維-1、平均繊維径15μm、平均繊維長450μm)を平均繊維径25μm、平均繊維長900μmのもの(セルロース繊維-2)に代えた以外は、実施例2と同様の方法により抗菌/抗ウイルス試験片を得た。試験片100質量部におけるポリプロピレン樹脂:セルロース繊維-2:銅粉-1の質量比は、67.50:22.50:10.00である。
(比較例1)
セルロース繊維マスターバッチの代わりにポリプロピレン樹脂を用い、ポリプロピレン樹脂と銅粉の合計100質量部に対して銅粉-1の量を5質量部とした以外は、実施例1と同様の方法により抗菌/抗ウイルス試験片を得た。試験片100質量部におけるポリプロピレン樹脂:銅粉-1の質量比は、95.00:5.00である。
(比較例2)
セルロース繊維マスターバッチの代わりにポリプロピレン樹脂を用い、ポリプロピレン樹脂と銅粉の合計100質量部に対して銅粉-1の量を10質量部とした以外は、実施例1と同様の方法により抗菌/抗ウイルス試験片を得た。試験片100質量部におけるポリプロピレン樹脂:銅粉-1の質量比は、90.00:10.00である。また、この試験片表面の電子顕微鏡写真図を、図5に示す。
(比較例3)
セルロース繊維マスターバッチに銅粉を添加しなかった以外は実施例1と同様の方法により、抗菌/抗ウイルス試験片を得た。試験片100質量部におけるポリプロピレン樹脂:セルロース繊維-1の質量比は、75.00:25.00である。また、この試験片表面の電子顕微鏡写真図を、図6に示す。
各実施例及び比較例で得られた抗菌/抗ウイルス試験片についての、組成及び抗菌/抗ウイルス試験の評価結果を、表1に示す。
Figure 0007394266000001
表1の結果から、以下のことが示された。
・比較例1,2はポリプロピレン樹脂に銅粉のみを添加した組成、比較例3はポリプロピレン樹脂にセルロース繊維のみを添加した組成である。比較例1,2の組成物は黄色ブドウ球菌に対して抗菌性を示したものの、抗ウイルス活性値は比較例1~3のいずれにおいても低い結果であり、銅単独、セルロース繊維単独では、オレフィン系樹脂に抗ウイルス性を付与できないことが明らかとなった。
・これに対して、ポリプロピレン樹脂からなるベース材と、分散繊維(セルロース繊維)と、分散粒子(銅粉)を含む抗ウイルス性組成物は、抗菌性と共に抗ウイルス性も併せて有することが示された。中でも、実施例3~5の粒子径の小さい銅粉を用いた組成物や、実施例6のセルロース長繊維を用いた組成物においては、いずれの菌種、ファージ種に対しても高い抗菌及び抗ウイルス活性値が達成された。
・セルロース繊維を含有する、実施例1~6並びに比較例3の試験片は、いずれも吸水性を有していた。一方で、比較例1及び2の試験片では、吸水量は0であった。
この結果は、セルロース繊維の少なくとも一部が表面に露出した状態で存在していたことを裏付け、図3~6の顕微鏡写真とも合致する。抗ウイルス性は、比較例2の試料のように一部の金属系分散粒子が表面に露出しているだけでは発現せず、分散繊維が(又は分散繊維とベース材との界面を通じて)外部から水分を取り込んで組成物や成形体内部の金属系分散粒子を水分と接触させることによって、発現することが示唆される。
1 抗ウイルス性組成物
2 ベース材
3 分散繊維
4 分散粒子
11 成形体
12 ベース材
13 分散繊維
14 分散粒子

Claims (4)

  1. ポリオレフィン系樹脂を含むベース材と、
    有機材料からなる分散繊維と、
    金属材料及び/又はその不溶性化合物からなる分散粒子と
    を含む、抗ウイルス性組成物であって、
    前記分散繊維は、平均繊維長が10~3000μmの範囲、平均繊維径が1~50μmの範囲のセルロース繊維であり、
    前記金属材料は、銅又はその合金であり、
    前記分散粒子の平均粒子径が0.01μm以上100μm以下であり、
    前記ベース材と前記分散繊維と前記分散粒子の存在割合が、質量百分率で、40~80%:5~55%:1~25%の範囲である、抗ウイルス性組成物。
  2. 前記有機材料が吸水性を有するものであり、前記金属材料が水の存在下で抗ウイルス機能を発揮するものであることを特徴とする、請求項1に記載の抗ウイルス性組成物。
  3. 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及びエチレン酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される1種以上の樹脂である、請求項1に記載の抗ウイルス性組成物。
  4. 請求項1~3のいずれか1項記載の抗ウイルス性組成物からなる成形体。
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