JP7393770B2 - ゲノム編集による2つの最も高頻度に見られるush2a突然変異の修正 - Google Patents

ゲノム編集による2つの最も高頻度に見られるush2a突然変異の修正 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、ゲノム編集による治療処置の分野に関する。
特に、本発明は、患者の細胞のゲノム内の2つの最も高頻度に見られるUSH2A遺伝子の突然変異をインビトロで又はエクスビボで修正するための方法、並びに、遺伝性網膜ジストロフィーのための治療法としてのその使用に関する。具体的には、孤立性常染色体劣性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症を処置するため。
本発明はさらに、眼細胞のゲノム内のUSH2A遺伝子の突然変異をインビボで修正するためのシステム、及び、遺伝性網膜ジストロフィー、特に孤立性常染色体劣性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症の処置におけるその使用に関する。
発明の背景
遺伝性網膜ジストロフィー(IRD)は、神経変性障害の一群であり、これにより、不可逆的な盲目に至り、世界中でおよそ1/2000人の個体が罹患している(6及び35)。遺伝性網膜ジストロフィーは、孤立性網膜表現型を有する非症候群型、又は、眼の他の別の器官も罹患している症候群型に分類され得る。
症候群性網膜ジストロフィーの最も一般的な病型は、アッシャー症候群(USH)であり、これには難聴、網膜色素変性症(RP)及び場合によって前庭機能障害を伴う。アッシャー症候群は、臨床的かつ遺伝子的に不均質であり、遺伝性盲ろうの最も一般的な原因であり、有病率はおよそ1/6000人の個体である(16)。疾患の重症度及び進行に応じて、疾患の3つの臨床型が区別され得る:アッシャー症候群型1型(USH1)、アッシャー症候群2型(USH2)、及びアッシャー症候群3型(USH3)。
アッシャー症候群2型が最も一般的な病型であり、それは先天性の中等度から重度の難聴、及び思春期後の網膜色素変性症の発症によって特徴付けられる(23)。85%以下のアッシャー症候群2型患者は、USH2A遺伝子に突然変異を有する(38)。さらに、世界の有病率が1/4000人の個体である、常染色体劣性網膜色素変性症(arRP)症例の23%も、USH2Aの突然変異に起因し(22)、これによりUSH2Aは、孤立性及び症候群性の網膜色素変性症の両方の原因である主要な遺伝子となる(26及び5)。
USH2Aにおいて490個を超える突然変異が同定され、これらは遺伝子全体に分布している(12)。これらの突然変異の大半は散在している。しかしながら、2つの反復した突然変異、すなわちc.2276G>T(又はp.Cys759Phe)及びc.2299delG(又はp.Glu767Serfs*21)が存在し、これらはエキソン13内の互いに22bpの場所に位置している。これらの突然変異は、2つの最も高頻度に見られるUSH2A突然変異であり、それらは一緒に、アッシャー症候群2型及び常染色体劣性網膜色素変性症の症例のほぼ半分の主原因である。興味深いことに、c.2276G>T突然変異は、機能低下型対立遺伝子として記載されている。c.2276G>Tが、ホモ接合型又はヘテロ接合型の状態で存在する場合、それにより孤立性常染色体劣性網膜色素変性症に至る。これとは対照的に、c.2299delG突然変異がホモ接合型状態で、又はc.2276G>T以外の突然変異を有する複合ヘテロ接合型として存在する場合、それによりアッシャー症候群2型に至る。
現在、USH2A内に突然変異を有する患者には利用可能な処置はない。
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用した遺伝子増大療法は、ハプロ不全又は機能欠失型突然変異によって引き起こされる、単一遺伝子性の遺伝性網膜ジストロフィーのための有望な処置である(10、13、19及び30)。しかしながら、AAVベクターの主な限界は、大きな遺伝子の導入を妨げる、そのクローニング能(<4.7kb)である。この限界は、9kbのクローニング能を有するレンチウイルスベクターに基づいたウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)を使用することによって、アッシャー症候群1B型に関与するMYO7Aについては克服された(40)。
しかしながら、USH2Aのコード配列のサイズの大きさ(15,606bp;Genbank NM_206933)により、この遺伝子については、EIAVにより媒介される導入でさえも利用できない。
CRISPR/Cas9システムなどのゲノム編集戦略を使用した遺伝子修正は、遺伝性網膜ジストロフィーの処置のための有望な代替選択肢である。ゲノム編集により、遺伝子の置換の代わりに、疾患を引き起こす突然変異の標的化された修正が可能となる(4、7及び11)。
CRISPR/Cas9システムは、インビボ及びエクスビボでのゲノム編集治療に主に使用される(31、39及び41)、細菌の適応免疫系(8、14、及び20)である。該システムは、2つの主な成分を含む:Cas9ヌクレアーゼ及び単一のガイドRNA分子(gRNA)。Cas9は、gRNA配列及びプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)、すなわちgRNA配列の3’末端に見られる3ヌクレオチド配列(SpCas9の場合NGG)によって駆動される、DNA内の特定の遺伝子座における、二本鎖切断(DSB)を誘導するだろう(17)。DNAの切断後、標的遺伝子座は典型的には、DNA修復のための2つの主要な経路の1つを受けるだろう(25)。エラーしがちな非相同末端結合(NHEJ)経路では、二本鎖切断の2つの末端が無作為にライゲートされ、所望の領域に挿入欠失(インデル)が残る(3)。あるいは、ドナー鋳型を使用した相同組換え修復(HDR)を使用することにより、所望の領域においてゲノムを正確に編集することができる(8)。
患者特異的な人工多能性幹細胞(iPSC)技術とCRISPR/Cas9を一緒に連動させることにより、再生療法及び患者の個別化医療の窓を開拓した。患者自身の細胞の修正により、移植療法のための自己iPSCから誘導された網膜細胞を生成することができた。このように、患者は、移植片拒絶のリスクを伴うことなく、免疫抑制剤の処方計画を避けることができた(21)。
しかしながら、本発明者らの知る限りでは、USH2A遺伝子内のc.2276G>T及びc.2299delGの両方の突然変異の効率的な修正を実証した研究は全くない。
それ故、2つの前記のUSH2A突然変異の1つを呈している、アッシャー症候群2型又は常染色体劣性網膜色素変性症のいずれかを患っている患者を効率的に処置するための新規な遺伝子療法戦略を開発する必要性が依然としてある。
発明の要約
出願人は、前記の必要性に対処する方法を同定した。
したがって、本発明の第一の目的は、2つの最も高頻度に見られるUSH2A突然変異をインビトロで又はエクスビボで修正するための方法に関する。
特に、本発明の第一の目的は、したがって、
(i)(a)配列番号1、配列番号2、及び配列番号7からなる群より選択された少なくとも1つの核酸配列を含む少なくとも1つのガイド核酸(gRNA)を細胞に与えること;
(b)少なくとも1つのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連ヌクレアーゼ、特に少なくとも1つのCRISPR関連タンパク質9(Cas9)、特に少なくとも1つの高効率のCRISPR関連タンパク質9(eSpCas9(1.1))を該細胞に与えること;及び
(c)突然変異したUSH2A遺伝子の修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸、特に一本鎖オリゴデオキシ核酸(ssODN)の形態のものを該細胞にさらに与えること
による、部位特異的ゲノム編集システムを該細胞に与える工程;
(ii)工程(i)で得られた細胞を培養することにより、前記の少なくとも1つのドナー核酸が、細胞ゲノム内に組み込まれて、2つの最も高頻度に見られるUSH2Aの突然変異の中の少なくとも1つが修正される工程
を含む、個体の人工多能性幹細胞(iPSC)のゲノム内の、両方共にエキソン13にある、c.2276G>T及びc.2299delGの突然変異の中から選択される、少なくとも1つのUSH2A突然変異をインビトロで又はエクスビボで修正するための方法に関する。
特定の実施態様では、人工多能性幹細胞(iPSC)は、USH2A遺伝子の突然変異の一方又は両方を有するゲノムを有する個体から事前に回収された細胞のインビトロでの処理から誘導される。
特に、前記個体は、遺伝性網膜ジストロフィーを患っている、特に網膜色素変性症を患っている、より特定すると孤立性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症を患っている個体である。
本発明の別の目的は、上記に定義されているような本発明に記載の方法によって得ることのできる、遺伝子的に改変された人工多能性幹細胞(iPSC)、特にc.2276G>T又はc.2299delGの突然変異が修正されたiPSCに関する。
本発明の別の目的は、上記に定義されているような本発明に記載の方法によって得ることのできる、遺伝子的に改変された人工多能性幹細胞(iPSC)、特にc.2276G>Tの突然変異が修正されたiPSCに関する。
別の目的は、上記に定義されているような本発明に記載の方法によって得ることのできる、c.2276G>Tの突然変異及びc.2299delGの突然変異が修正された遺伝子的に改変された人工多能性幹細胞(iPSC)に関する。
本発明のさらなる目的は、本発明の遺伝子的に改変されたiPSCから分化した少なくとも1つの細胞を、薬学的に許容される媒体中に含んでいる、医薬組成物に関する。
本発明の別の目的は、医薬品としてのその使用のための、本発明に記載の遺伝子的に改変された細胞又は医薬組成物に関する。
本発明のさらなる目的は、遺伝性網膜ジストロフィー、特に網膜色素変性症、より特定すると、孤立性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症の処置に使用するための、本発明に記載の遺伝子的に改変された細胞又は医薬組成物に関する。
本発明の別の目的は、
(i)配列番号1、配列番号2、及び配列番号7からなる群より選択される少なくとも1つの核酸配列を含んでいる、少なくとも1つのガイド核酸;
(ii)少なくとも1つのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連ヌクレアーゼ、特に少なくともCRISPR関連タンパク質9(Cas9)、特に少なくとも1つの高効率のCRISPR関連タンパク質9(eSpCas9(1.1));
(iii)USH2A遺伝子の修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸、特に一本鎖オリゴデオキシ核酸(ssODN)の形態のもの、及び
(iv)場合により、少なくとも(i)、(ii)及び(iii)の成分を含んでいる、少なくとも1つの送達ビヒクル
を含んでいる、それを必要とする個体の、細胞のゲノム内の、例えば光受容体細胞のゲノム内の、1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異を修正するための、部位特異的遺伝子工学操作システムに関する。
特定の実施態様では、それを必要とする個体は、遺伝性網膜ジストロフィーを患っている、特に網膜色素変性症を患っている、より特定すると孤立性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症を患っている個体である。
エキソン13内の最も高頻度に見られるUSH2A突然変異を修正するためのCRISPR/Cas9戦略の設計。A.両方共にエキソン13内に存在し、互いから22bpに位置する、2つの最も高頻度に見られる突然変異(左から右に向かってそれぞれ第一及び第二の矢印であるc.2276G>T及びc.2299delG)を含んでいるUSH2A遺伝子のエキソン13の表示。この表示はさらに、eSpCas9の認識にとって必要条件である、正準なNGG PAM部位の存在に応じて本発明者らによって設計された、gRNA1、gRNA2、gRNA3及びgRNA4によって標的化される、USH2Aのエキソン13内の遺伝子座を示す。B.gRNA配列内に「余分のGを有する」各gRNAの標的遺伝子座を30サイクル増幅した後の、T7E1アッセイのアガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右へと)C-陰性対照(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA1(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA2(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA3(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、gRNA4(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、及び分子量ラダー(bp)(MW)。C.特異的なプライマーを用いて各gRNAの標的遺伝子を30サイクル増幅した後に、gRNA配列内に「余分のG」を伴うことなくアガロースゲル電気泳動を使用して分析された、T7E1アッセイのアガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右へと)C-陰性対照(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA1(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA2(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA3(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、gRNA4(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、Cas9野生型プラスミド(pX458)内に余分なGを有するgRNA1(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、余分なGを有するgRNA2(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、及び分子量ラダー(bp)(MW)。D.相同組換え修復(HDR)による2つの突然変異の修正のために設計された一本鎖オリゴヌクレオチドssODN1及びssODN2の表示。ssODNは、USH2Aの参照配列を使用して設計された。ssODNは、gRNAによって標的化されていない鎖に対して相補的である。PAM配列のサイレント変化を鋳型に取り込むことにより、相同組換え修復後にCas9が再切断されることを防いだ。ssODN1では、PAMサイレント突然変異は、USH2Aの参照配列に存在するNcoI部位を破壊する。ssODN2では、PAMサイレント突然変異は、MscI部位を取り込む。 エキソン13内の最も高頻度に見られるUSH2A突然変異を修正するためのCRISPR/Cas9戦略の設計。A.両方共にエキソン13内に存在し、互いから22bpに位置する、2つの最も高頻度に見られる突然変異(左から右に向かってそれぞれ第一及び第二の矢印であるc.2276G>T及びc.2299delG)を含んでいるUSH2A遺伝子のエキソン13の表示。この表示はさらに、eSpCas9の認識にとって必要条件である、正準なNGG PAM部位の存在に応じて本発明者らによって設計された、gRNA1、gRNA2、gRNA3及びgRNA4によって標的化される、USH2Aのエキソン13内の遺伝子座を示す。B.gRNA配列内に「余分のGを有する」各gRNAの標的遺伝子座を30サイクル増幅した後の、T7E1アッセイのアガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右へと)C-陰性対照(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA1(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA2(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA3(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、gRNA4(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、及び分子量ラダー(bp)(MW)。C.特異的なプライマーを用いて各gRNAの標的遺伝子を30サイクル増幅した後に、gRNA配列内に「余分のG」を伴うことなくアガロースゲル電気泳動を使用して分析された、T7E1アッセイのアガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右へと)C-陰性対照(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA1(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA2(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA3(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、gRNA4(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、Cas9野生型プラスミド(pX458)内に余分なGを有するgRNA1(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、余分なGを有するgRNA2(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、及び分子量ラダー(bp)(MW)。D.相同組換え修復(HDR)による2つの突然変異の修正のために設計された一本鎖オリゴヌクレオチドssODN1及びssODN2の表示。ssODNは、USH2Aの参照配列を使用して設計された。ssODNは、gRNAによって標的化されていない鎖に対して相補的である。PAM配列のサイレント変化を鋳型に取り込むことにより、相同組換え修復後にCas9が再切断されることを防いだ。ssODN1では、PAMサイレント突然変異は、USH2Aの参照配列に存在するNcoI部位を破壊する。ssODN2では、PAMサイレント突然変異は、MscI部位を取り込む。 エキソン13内の最も高頻度に見られるUSH2A突然変異を修正するためのCRISPR/Cas9戦略の設計。A.両方共にエキソン13内に存在し、互いから22bpに位置する、2つの最も高頻度に見られる突然変異(左から右に向かってそれぞれ第一及び第二の矢印であるc.2276G>T及びc.2299delG)を含んでいるUSH2A遺伝子のエキソン13の表示。この表示はさらに、eSpCas9の認識にとって必要条件である、正準なNGG PAM部位の存在に応じて本発明者らによって設計された、gRNA1、gRNA2、gRNA3及びgRNA4によって標的化される、USH2Aのエキソン13内の遺伝子座を示す。B.gRNA配列内に「余分のGを有する」各gRNAの標的遺伝子座を30サイクル増幅した後の、T7E1アッセイのアガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右へと)C-陰性対照(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA1(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA2(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA3(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、gRNA4(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、及び分子量ラダー(bp)(MW)。C.特異的なプライマーを用いて各gRNAの標的遺伝子を30サイクル増幅した後に、gRNA配列内に「余分のG」を伴うことなくアガロースゲル電気泳動を使用して分析された、T7E1アッセイのアガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右へと)C-陰性対照(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA1(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA2(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA3(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、gRNA4(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、Cas9野生型プラスミド(pX458)内に余分なGを有するgRNA1(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、余分なGを有するgRNA2(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、及び分子量ラダー(bp)(MW)。D.相同組換え修復(HDR)による2つの突然変異の修正のために設計された一本鎖オリゴヌクレオチドssODN1及びssODN2の表示。ssODNは、USH2Aの参照配列を使用して設計された。ssODNは、gRNAによって標的化されていない鎖に対して相補的である。PAM配列のサイレント変化を鋳型に取り込むことにより、相同組換え修復後にCas9が再切断されることを防いだ。ssODN1では、PAMサイレント突然変異は、USH2Aの参照配列に存在するNcoI部位を破壊する。ssODN2では、PAMサイレント突然変異は、MscI部位を取り込む。 エキソン13内の最も高頻度に見られるUSH2A突然変異を修正するためのCRISPR/Cas9戦略の設計。A.両方共にエキソン13内に存在し、互いから22bpに位置する、2つの最も高頻度に見られる突然変異(左から右に向かってそれぞれ第一及び第二の矢印であるc.2276G>T及びc.2299delG)を含んでいるUSH2A遺伝子のエキソン13の表示。この表示はさらに、eSpCas9の認識にとって必要条件である、正準なNGG PAM部位の存在に応じて本発明者らによって設計された、gRNA1、gRNA2、gRNA3及びgRNA4によって標的化される、USH2Aのエキソン13内の遺伝子座を示す。B.gRNA配列内に「余分のGを有する」各gRNAの標的遺伝子座を30サイクル増幅した後の、T7E1アッセイのアガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右へと)C-陰性対照(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA1(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA2(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA3(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、gRNA4(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、及び分子量ラダー(bp)(MW)。C.特異的なプライマーを用いて各gRNAの標的遺伝子を30サイクル増幅した後に、gRNA配列内に「余分のG」を伴うことなくアガロースゲル電気泳動を使用して分析された、T7E1アッセイのアガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右へと)C-陰性対照(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA1(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA2(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む);gRNA3(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、gRNA4(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、Cas9野生型プラスミド(pX458)内に余分なGを有するgRNA1(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、余分なGを有するgRNA2(-:T7E1を含まない、+:T7E1を含む)、及び分子量ラダー(bp)(MW)。D.相同組換え修復(HDR)による2つの突然変異の修正のために設計された一本鎖オリゴヌクレオチドssODN1及びssODN2の表示。ssODNは、USH2Aの参照配列を使用して設計された。ssODNは、gRNAによって標的化されていない鎖に対して相補的である。PAM配列のサイレント変化を鋳型に取り込むことにより、相同組換え修復後にCas9が再切断されることを防いだ。ssODN1では、PAMサイレント突然変異は、USH2Aの参照配列に存在するNcoI部位を破壊する。ssODN2では、PAMサイレント突然変異は、MscI部位を取り込む。 患者のiPSCにおける、CRISPR/Cas9により媒介されるc.2299delGの突然変異の修正。A.分析された5つの生き残ったクローンから抽出されたgRNAに由来する標的領域のPCRによる増幅及び制限酵素による消化後の、アガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右へと)C-陰性対照、B1F11クローン、B3B8クローン、B3B1クローン、B2H4クローン、B2A3クローン、及び分子量ラダー(bp)(MW)。B.分析された各クローンについての図2AのPCR産物のサンガーシークエンス及びクローニングによる相同組換え修復事象の確認。左のグラフ:クローンB1F11;右のグラフ:クローンB3B8、B3B1、及びB2H4。C.Cas9により誘導された挿入欠失が観察された一方の対立遺伝子(A2)(上記)とは反対の、他方の対立遺伝子(A1)におけるPAMサイレント突然変異の存在、及びc.2299delG突然変異の修正による、B1F11のヘテロ接合型修正。B3B8、B3B1及びB2H4のc.2299delG突然変異のホモ接合型修正、並びに、PAMサイレント突然変異のホモ接合型導入(下記)。D.修正されたクローンのgDNA内のUSH2Aのコピー数多型(CNV)を提示する、リアルタイム定量PCR(qPCR)アッセイの結果による、B3B8、B3B1及びB2H4のホモ接合型修正、及びB1F11のヘテロ接合型修正の確認。左のグラフ:結果は、ハウスキーピング遺伝子のTERTに対して正規化された;右のグラフ:結果は、ハウスキーピング遺伝子のTRMT10Cに対して正規化された。横座標:(各グラフについて左から右に)C-陰性対照、B1F11クローン、B3B8クローン、B3B1クローン、及びB2H4クローン。縦座標:TERT又はTRMT10Cに対するコピー数多型(CNV)の正規化。 患者のiPSCにおける、CRISPR/Cas9により媒介されるc.2299delGの突然変異の修正。A.分析された5つの生き残ったクローンから抽出されたgRNAに由来する標的領域のPCRによる増幅及び制限酵素による消化後の、アガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右へと)C-陰性対照、B1F11クローン、B3B8クローン、B3B1クローン、B2H4クローン、B2A3クローン、及び分子量ラダー(bp)(MW)。B.分析された各クローンについての図2AのPCR産物のサンガーシークエンス及びクローニングによる相同組換え修復事象の確認。左のグラフ:クローンB1F11;右のグラフ:クローンB3B8、B3B1、及びB2H4。C.Cas9により誘導された挿入欠失が観察された一方の対立遺伝子(A2)(上記)とは反対の、他方の対立遺伝子(A1)におけるPAMサイレント突然変異の存在、及びc.2299delG突然変異の修正による、B1F11のヘテロ接合型修正。B3B8、B3B1及びB2H4のc.2299delG突然変異のホモ接合型修正、並びに、PAMサイレント突然変異のホモ接合型導入(下記)。D.修正されたクローンのgDNA内のUSH2Aのコピー数多型(CNV)を提示する、リアルタイム定量PCR(qPCR)アッセイの結果による、B3B8、B3B1及びB2H4のホモ接合型修正、及びB1F11のヘテロ接合型修正の確認。左のグラフ:結果は、ハウスキーピング遺伝子のTERTに対して正規化された;右のグラフ:結果は、ハウスキーピング遺伝子のTRMT10Cに対して正規化された。横座標:(各グラフについて左から右に)C-陰性対照、B1F11クローン、B3B8クローン、B3B1クローン、及びB2H4クローン。縦座標:TERT又はTRMT10Cに対するコピー数多型(CNV)の正規化。 患者のiPSCにおける、CRISPR/Cas9により媒介されるc.2299delGの突然変異の修正。A.分析された5つの生き残ったクローンから抽出されたgRNAに由来する標的領域のPCRによる増幅及び制限酵素による消化後の、アガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右へと)C-陰性対照、B1F11クローン、B3B8クローン、B3B1クローン、B2H4クローン、B2A3クローン、及び分子量ラダー(bp)(MW)。B.分析された各クローンについての図2AのPCR産物のサンガーシークエンス及びクローニングによる相同組換え修復事象の確認。左のグラフ:クローンB1F11;右のグラフ:クローンB3B8、B3B1、及びB2H4。C.Cas9により誘導された挿入欠失が観察された一方の対立遺伝子(A2)(上記)とは反対の、他方の対立遺伝子(A1)におけるPAMサイレント突然変異の存在、及びc.2299delG突然変異の修正による、B1F11のヘテロ接合型修正。B3B8、B3B1及びB2H4のc.2299delG突然変異のホモ接合型修正、並びに、PAMサイレント突然変異のホモ接合型導入(下記)。D.修正されたクローンのgDNA内のUSH2Aのコピー数多型(CNV)を提示する、リアルタイム定量PCR(qPCR)アッセイの結果による、B3B8、B3B1及びB2H4のホモ接合型修正、及びB1F11のヘテロ接合型修正の確認。左のグラフ:結果は、ハウスキーピング遺伝子のTERTに対して正規化された;右のグラフ:結果は、ハウスキーピング遺伝子のTRMT10Cに対して正規化された。横座標:(各グラフについて左から右に)C-陰性対照、B1F11クローン、B3B8クローン、B3B1クローン、及びB2H4クローン。縦座標:TERT又はTRMT10Cに対するコピー数多型(CNV)の正規化。 患者のiPSCにおける、CRISPR/Cas9により媒介されるc.2299delGの突然変異の修正。A.分析された5つの生き残ったクローンから抽出されたgRNAに由来する標的領域のPCRによる増幅及び制限酵素による消化後の、アガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右へと)C-陰性対照、B1F11クローン、B3B8クローン、B3B1クローン、B2H4クローン、B2A3クローン、及び分子量ラダー(bp)(MW)。B.分析された各クローンについての図2AのPCR産物のサンガーシークエンス及びクローニングによる相同組換え修復事象の確認。左のグラフ:クローンB1F11;右のグラフ:クローンB3B8、B3B1、及びB2H4。C.Cas9により誘導された挿入欠失が観察された一方の対立遺伝子(A2)(上記)とは反対の、他方の対立遺伝子(A1)におけるPAMサイレント突然変異の存在、及びc.2299delG突然変異の修正による、B1F11のヘテロ接合型修正。B3B8、B3B1及びB2H4のc.2299delG突然変異のホモ接合型修正、並びに、PAMサイレント突然変異のホモ接合型導入(下記)。D.修正されたクローンのgDNA内のUSH2Aのコピー数多型(CNV)を提示する、リアルタイム定量PCR(qPCR)アッセイの結果による、B3B8、B3B1及びB2H4のホモ接合型修正、及びB1F11のヘテロ接合型修正の確認。左のグラフ:結果は、ハウスキーピング遺伝子のTERTに対して正規化された;右のグラフ:結果は、ハウスキーピング遺伝子のTRMT10Cに対して正規化された。横座標:(各グラフについて左から右に)C-陰性対照、B1F11クローン、B3B8クローン、B3B1クローン、及びB2H4クローン。縦座標:TERT又はTRMT10Cに対するコピー数多型(CNV)の正規化。 CRISPR/Cas9により媒介される患者のiPSCのc.2276G>T突然変異の修正。A.分析された14個の生き残ったクローンから抽出されたgDNAに由来する標的領域のPCR及びNcoIによる消化後の、アガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右に)C-陰性対照、M1B4クローン、M1C7クローン、M1E3クローン、M3H10クローン、M2E1クローン、M1C2クローン、M2F10クローン、M3D11クローン、M1F4クローン、M2D3クローン、M1F11クローン、M2H6クローン、M3G7クローン、M3G5クローン、及び分子量ラダー(bp)(MW)。B.14個のクローンのクローニング及びシークエンス後の、gRNA1を用いてCas9により誘導された改変。上から下に:対立遺伝子2(A2)の部分的編集(関与する68個のクローンのうち40個のクローン)、A2における挿入欠失の分布(関与する68個のクローンのうち22個のクローン)、及び対立遺伝子1(A1)がA2の修復に使用される(関与する68個のクローンのうち5個のクローン)。C.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)及び同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を含んでいる、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。D.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)を含み、そして同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を組み込み、よってエキソン13のミスセンス変異対立遺伝子A1を認識する、gRNA1及びgRNA1Sによって標的化される場所をさらに示している、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。E.ssODN1と共にeSpCas9(1.1)-gRNA1Sを、USH2A-USH-iPSC細胞株にヌクレオフェクトした後の、対立遺伝子1におけるCas9により誘導されたエキソン13の改変、及び対立遺伝子2における、又は対立遺伝子1と対立遺伝子2の両方における、Cas9により誘導されたエキソン13の改変の分布の結果。F.ヌクレオフェクトされたいくつかのクローンについてクローニング及びシークエンスした後、gRNA1Sを用いてCas9により誘導される改変の例。上から下に:対立遺伝子1及び対立遺伝子2における部分的修復(関与する36個のクローンのうち2個のクローン)、対立遺伝子1における部分的修復(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子2が対立遺伝子1の修復に使用された(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子1における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち10個のクローン)、対立遺伝子2における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち8個のクローン)、ミスセンス変異体の修正について陽性のMS3F7クローン(関与する36個のクローンのうち1個のクローン)。G.陽性クローンMS3F7についてのPCR産物のサンガーシークエンス及びクローニングによる相同組換え修復事象の確認、並びに、ミスセンス変異体の修正の確認。 CRISPR/Cas9により媒介される患者のiPSCのc.2276G>T突然変異の修正。A.分析された14個の生き残ったクローンから抽出されたgDNAに由来する標的領域のPCR及びNcoIによる消化後の、アガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右に)C-陰性対照、M1B4クローン、M1C7クローン、M1E3クローン、M3H10クローン、M2E1クローン、M1C2クローン、M2F10クローン、M3D11クローン、M1F4クローン、M2D3クローン、M1F11クローン、M2H6クローン、M3G7クローン、M3G5クローン、及び分子量ラダー(bp)(MW)。B.14個のクローンのクローニング及びシークエンス後の、gRNA1を用いてCas9により誘導された改変。上から下に:対立遺伝子2(A2)の部分的編集(関与する68個のクローンのうち40個のクローン)、A2における挿入欠失の分布(関与する68個のクローンのうち22個のクローン)、及び対立遺伝子1(A1)がA2の修復に使用される(関与する68個のクローンのうち5個のクローン)。C.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)及び同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を含んでいる、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。D.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)を含み、そして同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を組み込み、よってエキソン13のミスセンス変異対立遺伝子A1を認識する、gRNA1及びgRNA1Sによって標的化される場所をさらに示している、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。E.ssODN1と共にeSpCas9(1.1)-gRNA1Sを、USH2A-USH-iPSC細胞株にヌクレオフェクトした後の、対立遺伝子1におけるCas9により誘導されたエキソン13の改変、及び対立遺伝子2における、又は対立遺伝子1と対立遺伝子2の両方における、Cas9により誘導されたエキソン13の改変の分布の結果。F.ヌクレオフェクトされたいくつかのクローンについてクローニング及びシークエンスした後、gRNA1Sを用いてCas9により誘導される改変の例。上から下に:対立遺伝子1及び対立遺伝子2における部分的修復(関与する36個のクローンのうち2個のクローン)、対立遺伝子1における部分的修復(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子2が対立遺伝子1の修復に使用された(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子1における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち10個のクローン)、対立遺伝子2における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち8個のクローン)、ミスセンス変異体の修正について陽性のMS3F7クローン(関与する36個のクローンのうち1個のクローン)。G.陽性クローンMS3F7についてのPCR産物のサンガーシークエンス及びクローニングによる相同組換え修復事象の確認、並びに、ミスセンス変異体の修正の確認。 CRISPR/Cas9により媒介される患者のiPSCのc.2276G>T突然変異の修正。A.分析された14個の生き残ったクローンから抽出されたgDNAに由来する標的領域のPCR及びNcoIによる消化後の、アガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右に)C-陰性対照、M1B4クローン、M1C7クローン、M1E3クローン、M3H10クローン、M2E1クローン、M1C2クローン、M2F10クローン、M3D11クローン、M1F4クローン、M2D3クローン、M1F11クローン、M2H6クローン、M3G7クローン、M3G5クローン、及び分子量ラダー(bp)(MW)。B.14個のクローンのクローニング及びシークエンス後の、gRNA1を用いてCas9により誘導された改変。上から下に:対立遺伝子2(A2)の部分的編集(関与する68個のクローンのうち40個のクローン)、A2における挿入欠失の分布(関与する68個のクローンのうち22個のクローン)、及び対立遺伝子1(A1)がA2の修復に使用される(関与する68個のクローンのうち5個のクローン)。C.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)及び同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を含んでいる、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。D.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)を含み、そして同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を組み込み、よってエキソン13のミスセンス変異対立遺伝子A1を認識する、gRNA1及びgRNA1Sによって標的化される場所をさらに示している、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。E.ssODN1と共にeSpCas9(1.1)-gRNA1Sを、USH2A-USH-iPSC細胞株にヌクレオフェクトした後の、対立遺伝子1におけるCas9により誘導されたエキソン13の改変、及び対立遺伝子2における、又は対立遺伝子1と対立遺伝子2の両方における、Cas9により誘導されたエキソン13の改変の分布の結果。F.ヌクレオフェクトされたいくつかのクローンについてクローニング及びシークエンスした後、gRNA1Sを用いてCas9により誘導される改変の例。上から下に:対立遺伝子1及び対立遺伝子2における部分的修復(関与する36個のクローンのうち2個のクローン)、対立遺伝子1における部分的修復(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子2が対立遺伝子1の修復に使用された(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子1における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち10個のクローン)、対立遺伝子2における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち8個のクローン)、ミスセンス変異体の修正について陽性のMS3F7クローン(関与する36個のクローンのうち1個のクローン)。G.陽性クローンMS3F7についてのPCR産物のサンガーシークエンス及びクローニングによる相同組換え修復事象の確認、並びに、ミスセンス変異体の修正の確認。 CRISPR/Cas9により媒介される患者のiPSCのc.2276G>T突然変異の修正。A.分析された14個の生き残ったクローンから抽出されたgDNAに由来する標的領域のPCR及びNcoIによる消化後の、アガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右に)C-陰性対照、M1B4クローン、M1C7クローン、M1E3クローン、M3H10クローン、M2E1クローン、M1C2クローン、M2F10クローン、M3D11クローン、M1F4クローン、M2D3クローン、M1F11クローン、M2H6クローン、M3G7クローン、M3G5クローン、及び分子量ラダー(bp)(MW)。B.14個のクローンのクローニング及びシークエンス後の、gRNA1を用いてCas9により誘導された改変。上から下に:対立遺伝子2(A2)の部分的編集(関与する68個のクローンのうち40個のクローン)、A2における挿入欠失の分布(関与する68個のクローンのうち22個のクローン)、及び対立遺伝子1(A1)がA2の修復に使用される(関与する68個のクローンのうち5個のクローン)。C.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)及び同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を含んでいる、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。D.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)を含み、そして同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を組み込み、よってエキソン13のミスセンス変異対立遺伝子A1を認識する、gRNA1及びgRNA1Sによって標的化される場所をさらに示している、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。E.ssODN1と共にeSpCas9(1.1)-gRNA1Sを、USH2A-USH-iPSC細胞株にヌクレオフェクトした後の、対立遺伝子1におけるCas9により誘導されたエキソン13の改変、及び対立遺伝子2における、又は対立遺伝子1と対立遺伝子2の両方における、Cas9により誘導されたエキソン13の改変の分布の結果。F.ヌクレオフェクトされたいくつかのクローンについてクローニング及びシークエンスした後、gRNA1Sを用いてCas9により誘導される改変の例。上から下に:対立遺伝子1及び対立遺伝子2における部分的修復(関与する36個のクローンのうち2個のクローン)、対立遺伝子1における部分的修復(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子2が対立遺伝子1の修復に使用された(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子1における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち10個のクローン)、対立遺伝子2における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち8個のクローン)、ミスセンス変異体の修正について陽性のMS3F7クローン(関与する36個のクローンのうち1個のクローン)。G.陽性クローンMS3F7についてのPCR産物のサンガーシークエンス及びクローニングによる相同組換え修復事象の確認、並びに、ミスセンス変異体の修正の確認。 CRISPR/Cas9により媒介される患者のiPSCのc.2276G>T突然変異の修正。A.分析された14個の生き残ったクローンから抽出されたgDNAに由来する標的領域のPCR及びNcoIによる消化後の、アガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右に)C-陰性対照、M1B4クローン、M1C7クローン、M1E3クローン、M3H10クローン、M2E1クローン、M1C2クローン、M2F10クローン、M3D11クローン、M1F4クローン、M2D3クローン、M1F11クローン、M2H6クローン、M3G7クローン、M3G5クローン、及び分子量ラダー(bp)(MW)。B.14個のクローンのクローニング及びシークエンス後の、gRNA1を用いてCas9により誘導された改変。上から下に:対立遺伝子2(A2)の部分的編集(関与する68個のクローンのうち40個のクローン)、A2における挿入欠失の分布(関与する68個のクローンのうち22個のクローン)、及び対立遺伝子1(A1)がA2の修復に使用される(関与する68個のクローンのうち5個のクローン)。C.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)及び同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を含んでいる、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。D.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)を含み、そして同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を組み込み、よってエキソン13のミスセンス変異対立遺伝子A1を認識する、gRNA1及びgRNA1Sによって標的化される場所をさらに示している、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。E.ssODN1と共にeSpCas9(1.1)-gRNA1Sを、USH2A-USH-iPSC細胞株にヌクレオフェクトした後の、対立遺伝子1におけるCas9により誘導されたエキソン13の改変、及び対立遺伝子2における、又は対立遺伝子1と対立遺伝子2の両方における、Cas9により誘導されたエキソン13の改変の分布の結果。F.ヌクレオフェクトされたいくつかのクローンについてクローニング及びシークエンスした後、gRNA1Sを用いてCas9により誘導される改変の例。上から下に:対立遺伝子1及び対立遺伝子2における部分的修復(関与する36個のクローンのうち2個のクローン)、対立遺伝子1における部分的修復(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子2が対立遺伝子1の修復に使用された(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子1における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち10個のクローン)、対立遺伝子2における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち8個のクローン)、ミスセンス変異体の修正について陽性のMS3F7クローン(関与する36個のクローンのうち1個のクローン)。G.陽性クローンMS3F7についてのPCR産物のサンガーシークエンス及びクローニングによる相同組換え修復事象の確認、並びに、ミスセンス変異体の修正の確認。 CRISPR/Cas9により媒介される患者のiPSCのc.2276G>T突然変異の修正。A.分析された14個の生き残ったクローンから抽出されたgDNAに由来する標的領域のPCR及びNcoIによる消化後の、アガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右に)C-陰性対照、M1B4クローン、M1C7クローン、M1E3クローン、M3H10クローン、M2E1クローン、M1C2クローン、M2F10クローン、M3D11クローン、M1F4クローン、M2D3クローン、M1F11クローン、M2H6クローン、M3G7クローン、M3G5クローン、及び分子量ラダー(bp)(MW)。B.14個のクローンのクローニング及びシークエンス後の、gRNA1を用いてCas9により誘導された改変。上から下に:対立遺伝子2(A2)の部分的編集(関与する68個のクローンのうち40個のクローン)、A2における挿入欠失の分布(関与する68個のクローンのうち22個のクローン)、及び対立遺伝子1(A1)がA2の修復に使用される(関与する68個のクローンのうち5個のクローン)。C.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)及び同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を含んでいる、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。D.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)を含み、そして同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を組み込み、よってエキソン13のミスセンス変異対立遺伝子A1を認識する、gRNA1及びgRNA1Sによって標的化される場所をさらに示している、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。E.ssODN1と共にeSpCas9(1.1)-gRNA1Sを、USH2A-USH-iPSC細胞株にヌクレオフェクトした後の、対立遺伝子1におけるCas9により誘導されたエキソン13の改変、及び対立遺伝子2における、又は対立遺伝子1と対立遺伝子2の両方における、Cas9により誘導されたエキソン13の改変の分布の結果。F.ヌクレオフェクトされたいくつかのクローンについてクローニング及びシークエンスした後、gRNA1Sを用いてCas9により誘導される改変の例。上から下に:対立遺伝子1及び対立遺伝子2における部分的修復(関与する36個のクローンのうち2個のクローン)、対立遺伝子1における部分的修復(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子2が対立遺伝子1の修復に使用された(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子1における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち10個のクローン)、対立遺伝子2における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち8個のクローン)、ミスセンス変異体の修正について陽性のMS3F7クローン(関与する36個のクローンのうち1個のクローン)。G.陽性クローンMS3F7についてのPCR産物のサンガーシークエンス及びクローニングによる相同組換え修復事象の確認、並びに、ミスセンス変異体の修正の確認。 CRISPR/Cas9により媒介される患者のiPSCのc.2276G>T突然変異の修正。A.分析された14個の生き残ったクローンから抽出されたgDNAに由来する標的領域のPCR及びNcoIによる消化後の、アガロースゲル電気泳動の結果。レーン:(左から右に)C-陰性対照、M1B4クローン、M1C7クローン、M1E3クローン、M3H10クローン、M2E1クローン、M1C2クローン、M2F10クローン、M3D11クローン、M1F4クローン、M2D3クローン、M1F11クローン、M2H6クローン、M3G7クローン、M3G5クローン、及び分子量ラダー(bp)(MW)。B.14個のクローンのクローニング及びシークエンス後の、gRNA1を用いてCas9により誘導された改変。上から下に:対立遺伝子2(A2)の部分的編集(関与する68個のクローンのうち40個のクローン)、A2における挿入欠失の分布(関与する68個のクローンのうち22個のクローン)、及び対立遺伝子1(A1)がA2の修復に使用される(関与する68個のクローンのうち5個のクローン)。C.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)及び同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を含んでいる、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。D.2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG、それぞれ、左から右に向かって2番目及び3番目の矢印)を含み、そして同定されたSNP(rs111033281、左から1番目の矢印)を組み込み、よってエキソン13のミスセンス変異対立遺伝子A1を認識する、gRNA1及びgRNA1Sによって標的化される場所をさらに示している、USH2A遺伝子のエキソン13の両方の対立遺伝子の表示。E.ssODN1と共にeSpCas9(1.1)-gRNA1Sを、USH2A-USH-iPSC細胞株にヌクレオフェクトした後の、対立遺伝子1におけるCas9により誘導されたエキソン13の改変、及び対立遺伝子2における、又は対立遺伝子1と対立遺伝子2の両方における、Cas9により誘導されたエキソン13の改変の分布の結果。F.ヌクレオフェクトされたいくつかのクローンについてクローニング及びシークエンスした後、gRNA1Sを用いてCas9により誘導される改変の例。上から下に:対立遺伝子1及び対立遺伝子2における部分的修復(関与する36個のクローンのうち2個のクローン)、対立遺伝子1における部分的修復(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子2が対立遺伝子1の修復に使用された(関与する36個のクローンのうち5個のクローン)、対立遺伝子1における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち10個のクローン)、対立遺伝子2における挿入欠失の分布(関与する36個のクローンのうち8個のクローン)、ミスセンス変異体の修正について陽性のMS3F7クローン(関与する36個のクローンのうち1個のクローン)。G.陽性クローンMS3F7についてのPCR産物のサンガーシークエンス及びクローニングによる相同組換え修復事象の確認、並びに、ミスセンス変異体の修正の確認。 CRISPR/Cas9により修正されたiPSCの特徴付け。A.遺伝子標的化プロセスが、その親株の多能性特徴に影響を及ぼさなかったことを実証する、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)の顕微鏡による観察。B.ヒト多能性幹細胞における90%を超える反復異常を検出する、iCS-デジタルTM Pluri試験によって評価されるような、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)のゲノム完全性。横座標:各染色体のコピー数。縦座標:それらの通常の呼称によって同定される染色体。C.典型的な多能性マーカーであるOCT3/4、SOX2及びNANOG(左から右)の発現を保持するその能力の観察による、CRISPRiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)の免疫蛍光分析。D.(左から右に)内胚葉については肝細胞核因子4(HNF4α)、中胚葉については平滑筋アクチン(SMA)、及び外胚葉についてはグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の免疫染色によって評価されるような、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)の、3つの胚葉への分化能を決定するための、胚様体(EB)アッセイの顕微鏡による観察。 CRISPR/Cas9により修正されたiPSCの特徴付け。A.遺伝子標的化プロセスが、その親株の多能性特徴に影響を及ぼさなかったことを実証する、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)の顕微鏡による観察。B.ヒト多能性幹細胞における90%を超える反復異常を検出する、iCS-デジタルTM Pluri試験によって評価されるような、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)のゲノム完全性。横座標:各染色体のコピー数。縦座標:それらの通常の呼称によって同定される染色体。C.典型的な多能性マーカーであるOCT3/4、SOX2及びNANOG(左から右)の発現を保持するその能力の観察による、CRISPRiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)の免疫蛍光分析。D.(左から右に)内胚葉については肝細胞核因子4(HNF4α)、中胚葉については平滑筋アクチン(SMA)、及び外胚葉についてはグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の免疫染色によって評価されるような、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)の、3つの胚葉への分化能を決定するための、胚様体(EB)アッセイの顕微鏡による観察。 CRISPR/Cas9により修正されたiPSCの特徴付け。A.遺伝子標的化プロセスが、その親株の多能性特徴に影響を及ぼさなかったことを実証する、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)の顕微鏡による観察。B.ヒト多能性幹細胞における90%を超える反復異常を検出する、iCS-デジタルTM Pluri試験によって評価されるような、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)のゲノム完全性。横座標:各染色体のコピー数。縦座標:それらの通常の呼称によって同定される染色体。C.典型的な多能性マーカーであるOCT3/4、SOX2及びNANOG(左から右)の発現を保持するその能力の観察による、CRISPRiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)の免疫蛍光分析。D.(左から右に)内胚葉については肝細胞核因子4(HNF4α)、中胚葉については平滑筋アクチン(SMA)、及び外胚葉についてはグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の免疫染色によって評価されるような、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)の、3つの胚葉への分化能を決定するための、胚様体(EB)アッセイの顕微鏡による観察。 CRISPR/Cas9により修正されたiPSCの特徴付け。A.遺伝子標的化プロセスが、その親株の多能性特徴に影響を及ぼさなかったことを実証する、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)の顕微鏡による観察。B.ヒト多能性幹細胞における90%を超える反復異常を検出する、iCS-デジタルTM Pluri試験によって評価されるような、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)のゲノム完全性。横座標:各染色体のコピー数。縦座標:それらの通常の呼称によって同定される染色体。C.典型的な多能性マーカーであるOCT3/4、SOX2及びNANOG(左から右)の発現を保持するその能力の観察による、CRISPRiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)の免疫蛍光分析。D.(左から右に)内胚葉については肝細胞核因子4(HNF4α)、中胚葉については平滑筋アクチン(SMA)、及び外胚葉についてはグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の免疫染色によって評価されるような、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)(上記)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)(下記)の、3つの胚葉への分化能を決定するための、胚様体(EB)アッセイの顕微鏡による観察。 CRISPRにより修正されたiPSCにおけるUSH2AのmRNA発現レベルの評価。A.野生型iPSC、及びヌクレオフェクトされていないUSH2A iPSCにおけるmRNAレベルと比較した、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)の、エキソン39(左)及びエキソン13(左)において、回復したUSH2AのmRNAレベルの定量PCRによる評価。横座標:(左から右に)野生型iPSC、USH2A-USH-iPSC及びUSH2A-USH-iPSCクローンB3B1。縦座標:mRNAの相対的発現レベル。B.野生型iPSC、及びヌクレオフェクトされていないUSH2A iPSCにおけるmRNAレベルと比較した、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)の、エキソン39(左)及びエキソン13(左)において、回復したUSH2AのmRNAレベルの定量PCRによる評価。横座標:(左から右に)野生型iPSC、USH2A-USH-iPSC及びUSH2A-USH-iPSCクローンMS3F7。縦座標:mRNAの相対的発現レベル。 CRISPRにより修正されたiPSCにおけるUSH2AのmRNA発現レベルの評価。A.野生型iPSC、及びヌクレオフェクトされていないUSH2A iPSCにおけるmRNAレベルと比較した、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)の、エキソン39(左)及びエキソン13(左)において、回復したUSH2AのmRNAレベルの定量PCRによる評価。横座標:(左から右に)野生型iPSC、USH2A-USH-iPSC及びUSH2A-USH-iPSCクローンB3B1。縦座標:mRNAの相対的発現レベル。B.野生型iPSC、及びヌクレオフェクトされていないUSH2A iPSCにおけるmRNAレベルと比較した、CRISPRにより修正されたiPSCクローンUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘテロ接合型修正)の、エキソン39(左)及びエキソン13(左)において、回復したUSH2AのmRNAレベルの定量PCRによる評価。横座標:(左から右に)野生型iPSC、USH2A-USH-iPSC及びUSH2A-USH-iPSCクローンMS3F7。縦座標:mRNAの相対的発現レベル。 USH2A網膜オルガノイドにおけるc.2299delGの修正の顕微鏡による観察。この図は、c.2299delG突然変異及びアッシャー症候群2型に関連した異常を研究及び特徴付けるための、網膜オルガノイドの顕微鏡による観察を示す(上の図)。オルガノイドの外側部分の特定の帯域、すなわち刷子縁の拡大表示がさらに提示されている(下の図)。左から右に:野生型iPSCから誘導されるオルガノイド、USH2A-USH-iPSCから誘導されたオルガノイド、及びCRISPR/Cas9により修正されたUSH2A-USH-iPSCから誘導されたオルガノイド。画像の取得のために使用される顕微鏡は、オリンパスCKX53であった。上の図では、野生型iPSCから誘導されるオルガノイドの画像は、4倍の対物レンズを用いて取得された。USH2A-USH-iPSC株のオルガノイドは、4倍の対物レンズを用いて取得された。CRISPR/Cas9により修正されたUSH2A-USH-iPSCから誘導されたオルガノイドは、10倍の対物レンズを用いて取得された。パネル内の尺度バーは、それぞれ、400μm、400μm、及び200μmを示す。下の図では、野生型iPSCから誘導されるオルガノイドの画像は、20倍の対物レンズを用いて取得された。USH2A-USH-iPSCから誘導されたオルガノイドは、10倍の対物レンズを用いて取得された。CRISPR/Cas9により修正されたUSH2A-USH-iPSCから誘導されたオルガノイドは、10倍の対物レンズを用いて取得された。 USH2A網膜オルガノイドにおけるc.2276G<Tの修正の顕微鏡による観察。図は、c.2276G<T突然変異及び網膜色素変性症(RP)に関連した起こり得る異常を研究及び特徴付けるための、網膜オルガノイドの顕微鏡による観察である(上の図)。オルガノイドの外側部分の特定の帯域、すなわち刷子縁の拡大表示がさらに提示されている(下の図)。左から右に:野生型iPSCから誘導されるオルガノイド、USH2A-RP-iPSCから誘導されたオルガノイド、及びCRISPR/Cas9により修正されたUSH2A-RP-iPSCから誘導されたオルガノイド。画像の取得のために使用された顕微鏡は、オリンパスCKX53であった。上の図では、野生型iPSCから誘導されるオルガノイドの画像は、10倍の対物レンズを用いて取得された。USH2A-RP-iPSCから誘導されたオルガノイドは、10倍の対物レンズを用いて取得された。CRISPR/Cas9により修正されたUSH2A-RP-iPSCから誘導されたオルガノイドは、10倍の対物レンズを用いて取得された。全てのパネル内の尺度バーは、150μmを示す。下の図では、野生型iPSCから誘導されるオルガノイドの画像は、20倍の対物レンズを用いて取得された。USH2A-RP-iPSCから誘導されたオルガノイドは、20倍の対物レンズを用いて取得された。CRISPR/Cas9により修正されたUSH2A-RP-iPSCから誘導されたオルガノイドは、20倍の対物レンズを用いて取得された。全てのパネル内の尺度バーは50μmを示す。
発明の詳細な説明
本発明者らは、細胞のゲノム内の、特に人工多能性幹細胞(iPSC)のゲノム内の、より特定すると2つの異なる個体に由来するiPSCのゲノム内の、2つの最も高頻度に見られるUSH2A突然変異を成功裡に修正しようとした。上記のように、2つの最も高頻度に見られるUSH2A遺伝子の突然変異であるc.2276G>T(又はp.Cys759Phe)及びc.2299delG(又はp.Glu767Serfs*21)。
アッシャー症候群2型を呈する第一の患者(ホモ接合型突然変異c.2299delG)及び常染色体劣性網膜色素変性症を呈する第二の患者(c.2276G>T及びc.2299delGについて複合ヘテロ接合型)。
以下の実験部に実証されているように、本発明者らは、USH2症候群を呈する患者に由来するiPSC細胞株において、USH2Aについての最も高頻度に見られる突然変異(c.2299delG)の高効率の修正を成し遂げ、常染色体劣性網膜色素変性症を呈する別の患者のiPSCにおける、c.2276G>T突然変異を修正することができた。
さらに、作製されたUSH2A遺伝子の修正されたiPSCは、典型的なiPSCの特徴を示した。
最後に、本発明者らは、c.2276G>T及びc.2299delGの突然変異の両方について、本発明に従って修正されたiPSC細胞の、網膜オルガノイドへの分化が、オルガノイドに、境界のきちんと定められた層状構造、及び健康な網膜オルガノイドに類似した刷子縁を与えることを実証した。修正されていない網膜オルガノイドは、刷子縁がより短いか又は存在しない、あまり境界のきちんと定められていない層状構造を有していた。
本発明に記載のiPSCの投与に基づいた処置は、症候群性網膜色素変性症(アッシャー症候群2型)及び/又は孤立性常染色体劣性網膜色素変性症(現在、利用可能な処置はない)を呈する多くの患者に適用可能な細胞療法及び遺伝子療法のための新規ツールを提供する。
1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異をエクスビボで又はインビトロで修正するための方法
上記に示されているように、本発明の第一の目的は、2つの最も高頻度で見られるUSH2A突然変異のうち少なくとも1つをインビトロで又はエクスビボで修正するための方法に関する。
特に、本発明の第一の目的は、
(i)(a)配列番号1、配列番号2、及び配列番号7からなる群より選択された少なくとも1つの核酸配列を含む少なくとも1つのガイド核酸(gRNA)を細胞に与えること;
(b)少なくとも1つのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連ヌクレアーゼ、特に少なくとも1つのCRISPR関連タンパク質9(Cas9)、特に少なくとも1つの高効率のCRISPR関連タンパク質9(eSpCas9(1.1))を該細胞に与えること;及び
(c)突然変異したUSH2A遺伝子の修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸、特に一本鎖オリゴデオキシ核酸(ssODN)の形態のものを該細胞にさらに与えること
による、部位特異的遺伝子工学操作システムを該細胞に与える工程;
(ii)工程(i)で得られた細胞を培養することにより、前記の少なくとも1つのドナー核酸が、細胞ゲノム内に組み込まれて、1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異が修正される工程
を含む、個体の人工多能性幹細胞(iPSC)のゲノム内の、両方共にエキソン13にある、c.2276G>T及びc.2299delGの突然変異の中から選択される、2つのUSH2A突然変異のうち少なくとも1つをインビトロで又はエクスビボで修正するための方法に関する。
人工多能性幹細胞(iPSC)は、胚性幹細胞(ESC)に類似した多能性幹細胞様状態を示す、遺伝子的に初期化された成体細胞である。それらは、ヒト体内に存在することは知られていないが、胚性幹細胞と類似した品質を示す、人工的に作製された幹細胞である。このような細胞の作製は、Ying WANG et al.(47)並びにLapillonne H. et al.(48)及びJ. DIAS et al.(49)に考察されているように、当技術分野において周知である。
iPSCは典型的には、多能性に関連した特定のセットの遺伝子産物「すなわち初期化因子群」を、所与の細胞型に導入することによって誘導され、これは当業者には周知でありる。
例えば、iPSCは、ヒト線維芽細胞から作製されてもよい。
iPSCの作製は、誘導に使用される転写因子に決定的に依存している。
iPSCは成体組織から直接誘導され得るので、それらは胚の必要性を迂回するだけでなく、患者に適合した様式で作製されることができ、このことは、各個体が、その個体自身の多能性幹細胞株を有することができることを意味する。
したがって、特定の実施態様では、本発明に記載のiPSCは、2つの最も高頻度に見られるUSH2A遺伝子の突然変異の一方又は両方を有するゲノムを有する個体から事前に回収された細胞のインビトロでの処理から誘導される。
特定の実施態様では、1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異を有するゲノムを有する個体は、孤立性網膜ジストロフィーを患っている、特に網膜色素変性症を患っている、より特定すると孤立性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症を患っている個体である。
本明細書に記載のようなiPSCは好ましくは精製されている。試料は、以下に定義されているような眼の細胞に適用される。
iPSCを精製するための多くの方法が、当技術分野において公知である。
本明細書において使用する「精製されたiPSC」又は「精製された眼細胞」は、列挙された細胞が、精製された試料中の細胞の少なくとも50%;より好ましくは精製された試料中の細胞の少なくとも51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上を構成することを意味する。
細胞の選択及び/又は細胞の精製は、実質的に純粋な細胞集団を得るために、陽性及び陰性の両方の選択法を使用することによって実施され得る。
1つの態様では、蛍光活性化細胞選別法(FACS)は、フローサイトメトリーとも呼ばれるが、これを使用して、様々な細胞集団を選別及び分析することができる。iPSCに特異的な細胞マーカーを有する細胞に、細胞マーカーに結合する抗体又は典型的には抗体混合物を用いてタグを付ける。様々なマーカーに指向される各抗体を、検出可能な分子、特に他の抗体に結合した他の蛍光色素から識別することのできる蛍光色素にコンジュゲートさせる。染色された細胞流を、蛍光色素を励起する光源に通し、細胞からの発光スペクトルは、特定の標識された抗体の存在を検出する。様々な蛍光色素の同時検出によって、異なる細胞マーカーのセットを示す細胞が同定され、集団中の他の細胞から単離される。側方散乱(SSC)、前方散乱(FSC)及び生体色素染色(例えば、ヨウ化プロピジウムを用いた)などであるがこれらに限定されない、他のFACSパラメーターも、サイズ及び生存率に基づいた細胞の選択を可能とする。
別の態様では、免疫磁気標識を使用して、様々な細胞集団を選別することができる。この方法は、抗体又はレクチンを介した、細胞に対する小さな磁性粒子の付着に基づく。細胞混合集団を磁場に置くと、ビーズの付着した細胞は、磁石によって誘引され、よって、未標識の細胞から分離され得る。
特定の実施態様では、事前に回収されiPSCが誘導される細胞は、自己細胞であり得、すなわち、USH2A遺伝子内に1つ以上の突然変異を有し、かつ本明細書に開示された方法によって修正された細胞のその後の投与が企画される、個体から回収された細胞であり得る。
「自己」は、同じ患者又は個体に由来するか又は派生することを指す。「自己移植片」は、被験者自身の細胞又は器官の収集及び再注入又は移植を指す。排他的又は補助的な自己細胞の使用は、宿主に戻される細胞の投与の多くの有害な作用、特に宿主反応を排除又は低減することができる。
この場合、特定の実施態様では、iPSCが誘導される最初の細胞は、1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異を有するゲノムを有する個体から、特に遺伝性網膜ジストロフィーを患っている、特に網膜色素変性症を患っている、より特定すると孤立性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症を患っている個体から事前に回収される。
別の実施態様では、iPSCの最初の集団は、同種異系ドナーから、又は複数の同種異系ドナーから誘導され得る。ドナーは、互いに関連していても関連していなくてもよく、移植の状況では、レシピエント(又は個体)に関連していても関連していなくてもよい。
本明細書においてすでに明記されているように、本明細書に記載のような本発明による細胞のゲノム、特にiPSCのゲノムは、1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異、すなわちc.2276G>T及びc.2299delGの突然変異について遺伝子的に修正されている。
USH2A遺伝子は、1番染色体に位置し、72個のエキソンを含んでいる、常染色体劣性遺伝子である。
USH2A遺伝子は、アシェリン(usherin)と呼ばれるタンパク質をコードしている。アシェリンは、基底膜の重要な成分であり、これは多くの組織内の細胞を分離かつ支持している薄いシート様の構造である。アシェリンは、内耳の感覚育毛細胞に、及び眼底を裏打ちする組織である網膜の感光性光受容体に見られる。アシェリンの機能は十分に確立されていないが、研究は、それが、内耳及び網膜における細胞の発生及び維持に重要な役割を果たしている一群のタンパク質(タンパク質複合体)の一部であることを示唆する。
上記されているように、USH2Aは、特に網膜色素変性症を患っている、より特定すると孤立性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症を患っている個体における、遺伝性網膜ジストロフィーの原因である主な遺伝子である。エキソン13内で互いに22bpの位置にある、USH2Aにおいて同定された2つの最も高頻度に見られる突然変異は、c.2276G>T(又はp.Cys759Phe)及びc.2299delG(又はp.Glu767Serfs*21)である。
USH2を患っている個体は、c.2299delGの少なくとも1つのコピーを含有し得る。
常染色体劣性網膜色素変性症を患っている個体は、c.2276G>Tの少なくとも1つのコピーを含有し得る。
突然変異がUSH2A遺伝子の両方の対立遺伝子上に存在する場合、該突然変異は、ホモ接合型としての特性があるとする。
例えば、USH2A遺伝子のホモ接合型c.2299delG突然変異は、USH2A遺伝子の両方の対立遺伝子が、c.2299delGの突然変異を含有していることを意味する。
逆に、突然変異が対立遺伝子毎に異なる場合、該突然変異はヘテロ接合型としての特性があるとする。
例えば、USH2A遺伝子のヘテロ接合型c.2299delG突然変異は、一方の対立遺伝子がc.2299delGの突然変異を含有し、他方の対立遺伝子は含有していないことを意味する。
常染色体劣性網膜色素変性症を患っている個体は、USH2A遺伝子のヘテロ接合型c.2299delG及びc.2276G>Tの突然変異を含有し得る。
本明細書に記載のような細胞のゲノム内の1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異をインビトロで又はエクスビボで修正するための方法の工程(i)(a)は、該細胞に、配列番号1、配列番号2及び配列番号7からなる群より選択された少なくとも1つの核酸配列を含んでいる少なくとも1つのガイド核酸(gRNA)を与えることとして定義される。
gRNAは、標的特異的な短い一本鎖RNA配列である。gRNAと一般的に称されるが、それは、2つのRNA分子の融合物である:すなわち、CRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化RNA(tracrRNA)(これらは、標的DNAに結合する際に等しく効果的である)。
gRNAは通常、80ヌクレオチドの定常領域と、ワトソンクリック塩基対形成を介して、DNA標的に結合する短い20ヌクレオチドの標的特異的な配列(gRNA配列の5’にある)を含む。
gRNAは人工的であり、天然には存在しない。
上記に示されているようなgRNAの配列は、それらの標的化DNA配列に対して相補的であるRNA配列である。
配列番号7の少なくとも1つの核酸配列を含んでいるgRNAが、c.2276G>T突然変異を含んでいる対立遺伝子において同定されたSNP(一塩基多型)に対して相補的である配列を組み込むように、本発明者らによって設計され、クローニングされた。同定されたSNPは、対立遺伝子1におけるc.2276G>Tに対してシスにあるc.2256T>Cである。このgRNAは、ミスセンス変異対立遺伝子を認識することができる。
このSNPは、USH2A遺伝子のc.2276G>T突然変異を有する患者の75%のゲノムに存在している。それ故、c.2276G>T対立遺伝子を有する患者の大半は、同じ対立遺伝子内にSNPも有する。
この同定されたSNPに対して相補的な配列を含んでいるgRNAの設計は、標的化された対立遺伝子の認識を大いに改善した。
特定の実施態様では、少なくとも1つのgRNAは、配列番号1、配列番号2及び配列番号7からなる群より選択された少なくとも1つの核酸配列からなる。
上記に定義されているように、本明細書に記載のような方法の工程(i)(b)は、少なくとも1つのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連ヌクレアーゼ、特に少なくとも1つのCRISPR関連タンパク質9(Cas9)、特に少なくとも1つの高効率のCRISPR関連タンパク質9(eSpCas9(1.1))を該細胞に与えることとして定義される。
本発明に記載のCRISPR関連ヌクレアーゼは、標的部位特異性に欠けている、すなわち、該ヌクレアーゼは、単独では、本明細書に記載の細胞のゲノム内の特定の標的部位を認識することができない。
特定の標的部位内のDNAを特異的に切断するために、このようなヌクレアーゼは、選択された標的部位に結合し、二本鎖切断(DSB)を誘導する、上記のようなガイド核酸(gRNA)に会合していることが必要である。
本発明によると、上記されているように、選択された標的部位は、該細胞のゲノム内に含まれるUSH2A遺伝子のエキソン13に位置する。
ガイド核酸(gRNA)によって標的部位に誘導される場合、本明細書に記載のようなヌクレアーゼは、該標的部位内に二本鎖切断を導入することができる。
特定の実施態様では、少なくとも1つのCRISPR関連ヌクレアーゼは、少なくとも1つのCRISPR関連タンパク質9(Cas9)、特に少なくとも1つの高効率のCRISPR関連タンパク質9(eSpCas9(1.1))である。
上記に定義されているように、本明細書に記載のような方法の工程(i)(c)は、突然変異したUSH2A遺伝子の修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸、特に一本鎖オリゴデオキシ核酸(ssODN)の形態のものを該細胞に与えることとして定義される。
実際に、本発明に記載の方法の目的は、細胞のゲノム内の2つの最も高頻度に見られるUSH2A遺伝子の突然変異の少なくとも1つを修正することである。
一旦、CRISPR関連Cas9ヌクレアーゼ、特にeSpCas9(1.1)が、工程(i)(b)の終了時にUSH2A遺伝子のDNA鎖を切断したら、該細胞は、該細胞の天然的な自己修復能を使用するだろう。
修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸の存在は、細胞を代替的な修復経路の方向に、すなわち、相同組換え修復(HDR)の方向に向けることである。
これを達成するために、特にssODNの形態の、修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸は、細胞のゲノム内に導入されなければならない、所望の配列を有する。今回の場合、修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸は、突然変異していないUSH2A遺伝子を有する。
特定の数の細胞が、この鋳型を、壊れた配列を相同的組換えを介して修復するために使用し、これにより、所望の修正がゲノム内に取り込まれるだろう。
修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸は、細胞の他方の対立遺伝子内の姉妹染色分体、外因性プラスミド/ベクター、又は一本鎖オリゴヌクレオチド(ssODN)からなる群より選択され得る。特定の実施態様では、修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸は、一本鎖オリゴヌクレオチド(ssODN)である。
ssODNは、ゲノム内の二本鎖を切断する時に相同組換え修復(HDR)を指令するための有効かつ強力な鋳型であることが示されている(Strouse, Bialk, Niamat, Rivera-torres, & Kmiec, 2014)(36)。以前の研究は、標的化されていない鎖に対して相補的である非対称なssODNが、相同組換え修復を増強することを実証した。
特定の実施態様では、修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸、特にssODNは、gRNAによって標的化されない鎖に対して相補的である。
特定の実施態様では、修復鋳型としての役目を果たすドナー核酸、特にssODNは非対称である。
非対称又は対称に設計されたドナー核酸は、CRISPR関連Cas9ヌクレアーゼのヌクレアーゼ標的部位のいずれかの側上に、異なる数のヌクレオチドを含む核酸である。
特に、本発明に適した非対称なssODNは、71ヌクレオチドを含有している近位配列(それは、ヌクレアーゼ標的部位の前の配列である)と49ヌクレオチドを含有している遠位配列(それは、ヌクレアーゼ標的部位の後の配列である)とを含んでいる非対称なssODN、21ヌクレオチドを含有している近位配列と36ヌクレオチドを含有している遠位配列とを含んでいる非対称なssODN、21ヌクレオチドを含有している近位配列と49ヌクレオチドを含有している遠位配列とを含んでいる非対称なssODN、21ヌクレオチドを含有している近位配列と89ヌクレオチドを含有している遠位配列とを含んでいる非対称なssODN、71ヌクレオチドを含有している近位配列と26ヌクレオチドを含有している遠位配列とを含んでいる非対称なssODN、71ヌクレオチドを含有している近位配列と16ヌクレオチドを含有している遠位配列とを含んでいる非対称なssODN、71ヌクレオチドを含有している近位配列と36ヌクレオチドを含有している遠位配列とを含んでいる非対称なssODN、91ヌクレオチドを含有している近位配列と36ヌクレオチドを含有している遠位配列とを含んでいる非対称なssODN、又は、114ヌクレオチドを含有している近位配列と83ヌクレオチドを含有している遠位配列とを含んでいる非対称なssODNから選択され得る。
特定の実施態様では、本発明の非対称なssODNは、91ヌクレオチドを含有している近位配列と36ヌクレオチドを含有している遠位配列とを含む。
例えば、以下の実験部に定義されるssODN(実施例1参照)は、非対称的に設計され、PAM近位領域に91ヌクレオチドを含有し、PAM遠位領域に36ヌクレオチドを含有している。
特定の実施態様では、修復鋳型としての役目を果たすドナー核酸、特にssODNは、一端に、好ましくは両端に(すなわち5'及び3'に)、少なくとも1つの修飾された末端塩基を含む。特に、修復鋳型としての役目を果たすドナー核酸、特にssODNは、両端のそれぞれに2つの修飾された末端塩基を含む。
好ましくは、修復鋳型としての役目を果たすドナー核酸、特にssODNは、一端に、好ましくは両端に、少なくとも1つのホスホロチオエートで修飾された末端塩基を含む。特に、修復鋳型としての役目を果たすドナー核酸、特にssODNは、両末端のそれぞれに2つのホスホロチオエートで修飾された末端塩基を含む。
これらの修飾された末端塩基は、ドナー核酸(群)の安定性の増強を可能とする。
好ましくは、修飾は、修復鋳型としての役目を果たすドナー核酸、特にssODNの配列の最初の2つのヌクレオチドに、及び該配列の最後の2つのヌクレオチドに存在する。
好ましい実施態様では、少なくとも1つのドナー核酸は、非対称であり、一端に、好ましくは両端に、少なくとも1つの修飾された末端塩基を含んでいる、特に少なくとも1つ、好ましくは2つのホスホロチオエートで修飾された末端塩基を、両端のそれぞれに含んでいる、gRNAによって標的化されない鎖に対して相補的である、少なくとも1つのssODNである。
この特定の設計のssODNの使用は、相同組換え修復によって媒介される突然変異の修正を増加させることが示されている。さらに、ssODNの両端に付加された修飾は、相同組換え修復事象を遂行するssODNの安定化を助ける。
特定の実施態様では、突然変異したUSH2A遺伝子のための修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸は、USH2Aの参照配列(15,606bp;Genbank NM_206933)を使用して設計される。
特定の実施態様では、修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸は、USH2A遺伝子のエキソン13の一部を含む。
特に、修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸は、1つ又は2つの突然変異部位を含む、USH2A遺伝子のエキソン13の配列の少なくとも一部を含む。
特定の実施態様では、修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸は、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択される少なくとも1つの核酸配列を含む。特定の実施態様では、修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸は、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択される少なくとも1つの核酸配列からなる。
本明細書に記載のような方法の工程(i)(a)、(i)(b)及び(i)(c)は、独立して同時に実現されても、又は互いに別々に実現されてもよい。好ましい実施態様では、工程(i)(a)の少なくとも1つのガイド核酸(gRNA)、工程(i)(b)の少なくとも1つのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連ヌクレアーゼ、特にeSpCas9(1.1)、及び工程(i)(c)の突然変異したUSH2A遺伝子のための修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸は、該細胞に同時に与えられる。
タンパク質及び核酸分子を細胞内にインビトロで、エクスビボで、又はインビボで導入する方法は、当技術分野において周知である。通常はベクター内に存在する核酸、又はタンパク質を細胞内に導入する伝統的な方法としては、マイクロインジェクション法、電気穿孔法、及び超音波法が挙げられる。物理的、力学的、及び生化学的アプローチに基づいた他の技術、例えばマグネトフェクション、光学的注入、オプトポレーション、光学的トランスフェクション、及びレーザーフェクションなども記述され得る(42)。
本明細書に記載のような、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連タンパク質(Cas)は、特にCRISPR関連タンパク質9(Cas9)である。
特定の実施態様では、少なくとも1つのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連ヌクレアーゼは、高効率のCRISPR関連タンパク質9(Cas9)、特にeSpCas9(1.1)である。
eSpCas9(1.1)は、K848A/K1003A/R1060A突然変異を有し、かつ標的ではないDNA鎖に対するタンパク質の親和性を低下させ、これにより、ミスマッチを含有しているらせんの安定性は低下するように作製された、特異性の増強されたCas9ヌクレアーゼである(43)。それは、オフターゲットにおいては有意に減少するが、頑強なオンターゲット活性を維持している、ヒト細胞内のDNA切断を評価することが示された。
ゲノム編集のためのCRISPR-Casシステムは特に、標的化のためにタンパク質-DNAの相互作用を使用する他のシステムの代わりに、工学操作されたRNAと標的DNA部位との間の単純な塩基対形成の原則を使用したシステムである。
CRISPR-Cas RNA誘導ヌクレアーゼは、侵入するプラスミド及びウイルスから防御するために細菌において進化した適応免疫系に由来する。
1つの実施態様によると、それは、侵入する短い核酸配列がCRISPR遺伝子座に取り込まれる機序からなる。それらはその後、転写され、CRISPR RNA(crRNA)にプロセシングされ、これはトランス活性化crRNA(tracrRNA)と一緒に、CRISPR関連(Cas)タンパク質と複合体を形成し、核酸間のワトソンクリック塩基対形成を通したCasヌクレアーゼによるDNAの切断の特異性を指令する。crRNAは、「プロトスペーサー」配列として知られる可変配列を有する。crRNAのプロトスペーサーをコードする部分は、相補的な標的DNA配列が「プロトスペーサー隣接モチーフ」(PAM)として知られる短い配列に隣接している場合、その相補的な標的DNA配列を切断するようにCas9に指令する。CRISPRに取り込まれたプロトスペーサー配列は切断されない。なぜなら、それらは、PAM配列の隣に存在しないからである(44及び45参照)。
この実施態様によると、本明細書に記載のようなガイドRNA(gRNA)は、crRNAとtracrRNAの融合物に相当し、これはgRNAとして知られる。本文書において使用されるガイドRNAすなわちgRNAという用語は、この具体的な形態を示す。
1つの実施態様によると、本発明の方法は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号7からなる群より選択され、好ましくは配列番号7である、少なくとも1つの核酸配列を含んでいる少なくとも1つのガイド核酸(gRNA)、少なくとも1つの高効率のCRISPR関連タンパク質9、好ましくはeSpCas9(1.1)、及び、好ましくは一端に、好ましくは両端に、少なくとも1つ、好ましくは2つの修飾された末端塩基を含んでいる、非対称で一本鎖のオリゴデオキシ核酸(ssODN)を含んでいる、少なくとも1つのガイド核酸(gRNA)を具備し得る。
上記に定義されているように、本明細書に記載のような方法の工程(ii)は、工程(i)で得られた細胞を培養することにより、前記の少なくとも1つのドナー核酸が、細胞ゲノム内に組み込まれて、1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異が修正される工程として定義される。
したがって、工程(ii)の終了時に、細胞のゲノムは、修正されたUSH2A遺伝子を含有し、このことは、USH2A遺伝子が、機能的なmRNAに転写され得、さらに機能的なタンパク質へと翻訳され得ることを意味する。
機能的なmRNAは、その活性が、突然変異を全く含有していないUSH2A遺伝子から転写されたmRNAの活性と少なくとも同等である、mRNAである。
機能的なタンパク質は、その活性が、突然変異を全く含有していないUSH2A遺伝子から転写されたmRNAから翻訳されたタンパク質の活性と少なくとも同等である、タンパク質である。
遺伝子的に改変された人工多能性幹細胞
本発明はまた、上記に定義されているような本発明に記載の方法によって得ることのできる、遺伝子的に改変された人工多能性幹細胞(iPSC)に関する。
特に、本発明は、上記に定義されているような本発明に記載の方法によって得ることのできる、c.2276G>T突然変異及び/又はc.2299delG突然変異が修正されている、遺伝子的に改変された人工多能性幹細胞(iPSC)に関する。
特に、本発明は、上記に定義されているような本発明に記載の方法によって得ることのできる、c.2276G>T突然変異が修正されている、遺伝子的に改変された人工多能性幹細胞(iPSC)に関する。
特に、本発明は、上記に定義されているような本発明に記載の方法によって得ることのできる、c.2276G>T突然変異及びc.2299delG突然変異が修正されている、遺伝子的に改変された人工多能性幹細胞(iPSC)に関する。
いくつかの実施態様では、(i)1つ以上のガイド核酸(gRNA)、(ii)少なくとも1つのCRISPR関連ヌクレアーゼ、特に少なくともCRISPR関連タンパク質9(Cas9)、特に少なくとも1つの高効率のCRISPR関連タンパク質9であるeSpCas9(1.1)、(iii)少なくとも1つのドナー核酸、特にssODNの形態のもの、及び(iv)場合により(i)、(ii)、及び(iii)の成分を含んでいる少なくとも1つの送達ビヒクルを含んでいる、本明細書に開示されているような、USH2A遺伝子の1つ以上の突然変異を修正するためのシステムは、それを必要とする個体への、すなわち、USH2A遺伝子に1つ以上の突然変異を有するゲノムを有する個体への、局所投与に適切であり得る。該システムのそれを必要とする該個体への局所投与により、該システムは、それを必要とする該個体の1つ以上の細胞に投与されるだろう。
本発明に従って得ることのできるiPSCから分化した細胞の投与に基づいた処置は、遺伝性網膜ジストロフィーを患っている、特に網膜色素変性症を患っている、より特定すると孤立性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症を患っている多くの患者の処置のための細胞療法に使用され得る。
医薬組成物
本発明はまた、上記に定義されているような本発明に従って遺伝子的に改変されたiPSCから分化させた少なくとも1つの細胞を、薬学的に許容される媒体中に含んでいる医薬組成物にも関する。
本明細書に記載のような薬学的に許容される媒体は特に、哺乳動物個体への投与に適している。
「薬学的に許容される媒体」は、医薬組成物の製剤化において、特に眼に投与される予定の医薬組成物の製剤化において当業者には公知である、標準的な薬学的に許容される媒体のいずれかを含む。
本発明によると、本発明に従って遺伝子的に改変されたiPSCから分化させた少なくとも1つの細胞は、本発明に記載のように調製された遺伝子的に改変されたiPSCを、それが特定の細胞に分化するまで培養した後に得られる細胞である。培養及び細胞分化は、適切な条件下で行なわれ、1つ以上の系統特異的な分化因子を含む。
これらの分化因子は当業者には周知であり、必要とされる最終的な細胞に従って選択される。
特に、本発明に従って遺伝子的に改変されたiPSCから分化させた少なくとも1つの細胞は、少なくとも1つの光受容体細胞又は光受容体前駆体である。
光受容体細胞は、感光性の眼細胞である。
哺乳動物の眼には、現在知られている3種類の光受容体細胞が存在する:杆体、錐体、及び内因的に感光性の網膜神経節細胞。2つの古典的な光受容体細胞は、杆体及び錐体であり、各々が、視覚世界の表現を形成する視覚系によって使用される情報すなわち視界に寄与する。杆体は、錐体より狭く、網膜のいたる所に違ったふうに分布しているが、光情報伝達を支持する各々における化学プロセスは、類似している。第三のクラスの哺乳動物光受容体細胞である内因的に感光性の網膜神経節細胞は、1990年代の間に発見された
特定の実施態様では、本発明に記載の遺伝子的に改変されたiPSCから分化した少なくとも1つの細胞は、杆体前駆細胞である。
1つの実施態様では、本明細書に記載のような細胞は、上記に定義されているような、しかし本明細書に記載のように改変されていない、他の細胞と組み合わせて組成物中に使用されてもよい。
1つの実施態様では、本明細書に記載のような細胞は、投与された細胞の治療効果を増強する他の薬剤及び化合物と組み合わせて組成物中に使用されてもよい。
別の実施態様では、本明細書に記載のような細胞は、本明細書に記載のような細胞の分化を増強する治療用化合物と共に組成物で投与されてもよい。これらの治療用化合物は、内因性である細胞、及び/又は、治療法の一部としての個体に投与される細胞の、分化及び動員を誘導する効果を有する。
医薬品としてのそれらの使用のための遺伝子的に改変された人工多能性幹細胞(iPSC)
本発明の別の目的は、医薬品としてのその使用のための、本発明に記載の遺伝子的に改変された細胞、又は本発明に記載の医薬組成物である。
医薬品として使用されるために、本発明に記載の遺伝子的に改変された人工多能性幹細胞(iPSC)は、特定の分化した細胞となるように培養されるべきである。
本発明に記載の医薬品に使用され得る分化した細胞を得るために、遺伝子的に改変された人工多能性幹細胞(iPSC)は適切な条件下で培養されるべきである。培養培地は、1つ以上の系統特異的な分化因子を含むべきである。これらの分化因子は、当業者には周知であり、必要とされる最終的な細胞に応じて選択される。
特に、本発明に記載の遺伝子的に改変されたiPSCから得られた分化した細胞は、少なくとも1つの光受容体細胞又は光受容体前駆体である。
本発明に記載の細胞は、周知の方法によって投与され得る。本明細書に記載のような細胞は、局所投与に、特に網膜下投与に最善に適している。
治療効果を達成するために必要とされる細胞数は、特定の目的のための慣用的な手順に従って経験的に決定されるだろう。
一般的には、治療目的のために細胞を投与するために、細胞は、薬理学的に有効な用量で投与される。
「薬理学的に有効な量」又は「薬理学的に有効な用量」によって、特に、障害若しくは疾患の1つ以上の症状若しくは徴候を低減若しくは排除することを含む、障害若しくは疾患の容態を処置するために、所望の生理学的な効果を生じるに十分な量、又は、所望の結果を達成することのできる量を意味する。
例示的には、アッシャー症候群を患っている患者への細胞の投与は、投与前の患者におけるアシェリンタンパク質の量と比較して、患者におけるUSH2A遺伝子によってコードされるアシェリンタンパク質の量が増加している場合、治療利点を与える。
注入される細胞数は、性別、年齢、体重、疾患又は障害の種類、障害のステージ、細胞集団中の所望の細胞の比率(例えば細胞集団の純度)、及び治療利点を生じるのに必要とされる細胞数などの因子が考慮されるだろう。
以前に記述されているような、本明細書に記載のような医薬組成物は、本明細書に記載のような細胞の、それを必要とする個体への投与のために使用され得る。
細胞の投与は、1回の投与又は連続投与を通してであり得る。連続投与を伴う場合、様々な細胞数及び/又は様々な細胞集団が各投与に使用され得る。
例示的には、初回投与は、即座の治療利点並びにより延長された効果をもたらす、本明細書に記載のような細胞又は細胞集団であり得るが、2回目の投与は、初回投与の治療効果を延ばす延長効果を与える、本明細書に記載のような細胞を含む。
本発明のさらなる目的は、遺伝性網膜ジストロフィー、特に網膜色素変性症、より特定すると孤立性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症の処置に使用するための、本発明に記載の遺伝子的に改変された細胞、又は本発明に記載の医薬組成物に関する。
本明細書に記載のように、本発明に記載の遺伝子的に改変された細胞及び/又は本発明に記載の医薬組成物の、それを必要とする個体への投与を含む、遺伝性網膜ジストロフィー、特に網膜色素変性症、より特定すると孤立性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症の処置のための方法も記載され得る。
遺伝性網膜ジストロフィー、特に網膜色素変性症、より特定すると孤立性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症の処置のための医薬品の製造のための、本明細書に記載のような本発明に従って遺伝子的に改変された細胞の、それを必要とする個体における使用も記載され得る。
1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異を修正するための部位特異的な遺伝子工学操作システム
本発明はまた、2つの最も高頻度に見られるUSH2A遺伝子の突然変異のうち少なくとも1つを修正するための部位特異的な遺伝子工学操作システムに関する。
特に、本発明はまた、
(i)配列番号1、配列番号2、及び配列番号7からなる群より選択される少なくとも1つの核酸配列を含んでいる、少なくとも1つのガイド核酸(gRNA);
(ii)少なくとも1つのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連ヌクレアーゼ、特に少なくとも1つのCRISPR関連タンパク質9(Cas9)、特に少なくとも1つの高効率のCRISPR関連タンパク質9(eSpCas9(1.1));
(iii)USH2A遺伝子のための修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸、特に一本鎖オリゴデオキシ核酸(ssODN)の形態のもの、及び
(iv)場合により、少なくとも(i)、(ii)及び(iii)の成分を含んでいる、少なくとも1つの送達ビヒクル
を含んでいる、それを必要とする個体の、細胞のゲノム内の、例えば光受容体細胞のゲノム内の、c.2276G>T及びc.2299delGの突然変異の中から選択される2つのUSH2A遺伝子の突然変異のうち少なくとも1つを修正するための、部位特異的な遺伝子工学操作システムに関する。
本発明による及び本明細書に記載のシステムの投与に基づいた処置は、遺伝性網膜ジストロフィーを患っている、特に網膜色素変性症を患っている、より特定すると孤立性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症(現在、利用可能な処置はない)を患っている多数の患者を処置するための遺伝子療法に使用され得る。
本発明に記載のシステムを構成する(i)、(ii)及び(iii)の成分は、本文書に以前に詳述されている通りであり得る。
上記されているように、USH2A遺伝子の突然変異によって引き起こされる遺伝性網膜ジストロフィー(IRD)は、眼及びその個々の細胞に深刻な影響を及ぼし得る。
したがって、1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異を修正するためのシステムは、特に、眼細胞、特に光受容体細胞のゲノムに向けられる。
特定の実施態様では、細胞、特に光受容体細胞のゲノム内の1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異を修正するためのシステムはさらに場合により、少なくとも(i)、(ii)及び(iii)の成分を含んでいる少なくとも1つの送達ビヒクルを含み得る。
本発明に記載のシステムが、遺伝子療法の処置の一部として使用される場合、送達ビヒクルは、処置される予定の個体に、該システムの様々な成分を投与するために使用され得る。
特定の実施態様では、少なくとも1つの送達ビヒクルは、ウイルスベクター及び非ウイルスベクターからなる群より選択される。
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス(2型及び5型)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヒト泡沫状ウイルス(HFV)、及びレンチウイルスなどの、成功を収めた遺伝子療法システムである。全てのウイルスベクターゲノムは、それらのゲノムのいくつかの領域を欠失させることにより改変され、これにより、それらの複製に異常をきたすようになり、それにより、患者への投与がより安全となる。過去数年間の間に、それらの天然の標的細胞ではない、いくつかの他の特定の細胞に導入遺伝子を導入することができる、特異的な受容体を有するいくつかのウイルスベクターが設計されている(再標的化)。
いくつかの実施態様では、当業者は、(i)、(ii)及び/又は(iii)の成分のための送達ビヒクルとして1つを超えるウイルスベクターを使用することを好むだろう。これらのウイルスベクターは、同一であっても異なっていてもよい。
特定の実施態様では、少なくとも1つの送達ビヒクルは、少なくとも1つのウイルスベクターである。特に、少なくとも1つのウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、及びエプシュタインバーウイルスベクターからなる群より選択され、特にアデノ随伴ウイルスベクターから選択される。
非ウイルスベクターは主に、ウイルス起源ではない化学的システムを含み、これは一般的には、陽イオンリポソーム及びポリマーなどの化学的方法を含む。これらのベクターの効率は時に、遺伝子導入においてウイルスシステムよりも低い場合があるが、ウイルスシステムと比較してそれらのコスト効率、入手し易さ、及びより重要なことには免疫系の誘導がより少ないこと、及びトランスジェニックDNAのサイズに制限がないことにより、それらは、遺伝子送達にとってより有効なものとなる。
本発明に従って使用され得るウイルス及び非ウイルスベクターは、当業者には周知であり、例えば、Nayerossadat et al.(50)に記載されている。
あるいは、別の実施態様では、本発明に記載の(i)、(ii)及び(iii)の成分は、送達ビヒクルを必要とすることなく、他の手段を通して、処置される予定の個体に投与されてもよい。
本発明のさらなる目的は、遺伝性網膜ジストロフィーの処置に、特に遺伝性網膜ジストロフィーの処置に、特に網膜色素変性症、より特定すると孤立性網膜色素変性症、又はアッシャー症候群2型の一部としての難聴を伴う網膜色素変性症の処置に使用するための、本発明による及び本明細書に記載のシステムに関する。
本発明に記載のシステムが、遺伝性網膜ジストロフィーの処置に使用される場合、それは特に、薬学的に許容される媒体をさらに含んでいる医薬組成物の形態で投与され得る。
本発明に記載の細胞の、特に光受容体細胞のゲノム内の、2つの最も頻繁に見られるUSH2A遺伝子の突然変異、すなわちc.2276G>T及びc.2299delGのうち少なくとも1つを修正するためのシステムと薬学的に許容される媒体とを含んでいる医薬組成物は、本文書で以前に詳述されている通りであり得る。
したがって、当業者は、本発明に記載の2つの最も頻繁に見られるUSH2A遺伝子の突然変異のうち少なくとも1つを修正するためのシステムは、医薬組成物の調製に直接使用することはできないが、このような組成物を調製するプラットフォームとしての役目を果たすであろうことを理解している。
実際に、医薬組成物を調製する役目を果たすであろうのは、そのゲノムが修復されている、本発明に記載のシステムを使用して得られた、遺伝子的に改変された細胞、特に遺伝子的に改変された光受容体細胞前駆体である。
特定の実施態様では、医薬組成物は、処置される予定の個体への局所投与に適し、したがって、処置される予定の個体の眼に投与するのに適している。
眼への薬物送達は、その独特な解剖学的構造及び生理機能に因り、薬理学者及び薬物送達科学者にとっての大きな課題であった。立体障壁(角膜、強膜、及び網膜(血液房水関門及び血液網膜関門を含む)という様々な層)、動的障壁(脈絡膜及び結膜の血流、リンパ液による排除、及び涙液による希釈)、及び排出ポンプは併せて、単独の薬物の又は剤形の形の薬物の、特に眼球後区への送達にかなりの課題を課す。
眼への医薬組成物の3つの主な送達法は、局所的、眼に局所的に(すなわち、結膜下、硝子体内、眼球後、前房内)、及び全身性である。これらの方法のそれぞれが、その利点及びその課題を有する。したがって、本発明に記載のシステムを含んでいる医薬組成物は、これらの送達法に適応させるべきである。
最も適切な投与法は、処置される予定の眼の領域に依存する。したがって、本発明に記載の投与剤形及び薬学的に許容される媒体も、処置される予定の眼の領域に投与するのに適している必要がある。
例えば、本発明に記載の光受容体細胞のゲノム内の1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異を修正するためのシステムは、網膜下投与に適し得る。現在までに、網膜下送達は、網膜色素変性症などの疾患における、幹細胞を含む、遺伝子療法及び細胞療法のための眼への薬物送達のより正確かつ効率的な経路として、科学者及び臨床医によって広く適用されている。
特に、網膜下注射は、網膜下空間内の標的化細胞に対してより直接的な効果を及ぼす。
これらの眼内投与剤形は当業者には周知であり、例えば、Peng et al.(51)に記載されている。
本発明は、本明細書の実施例によってさらに説明されるが、いずれにしてもこれらに限定されない。
実施例
実施例1:エキソン13内の最も頻繁に見られるUSH2A突然変異を修正するためのCRISPR/Cas9戦略の設計
本研究では、本発明者らは、両方共にエキソン13内に存在し、互いから22bpに位置する、USH2Aにおける2つの最も高頻度に見られる突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG)を修正することを目指した。
両方の突然変異を囲む4つの異なるgRNA(gRNA1~4)を、SpCas9の認識のための必要条件である、正準なNGG PAM部位の存在に従って設計した:gRNA1(配列番号1)、gRNA2(配列番号2)、gRNA3(配列番号3)及びgRNA4(配列番号4)(図1A)。
4つ全てのgRNAを、「増強された特異性」のCas9プラスミド(eSpCas9(1.1)、アドジーン社71814番)にクローニングした。このプラスミドは、gRNAと、2AペプチドによってeSpCas9(1.1)のC末端に連結されている高感度緑色蛍光タンパク質を含むeSpCas9(1.1)とを共発現している。野生型Cas9のこの変異体は、ヒト細胞内のDNAの切断を誘導することが示され、頑強なオンターゲットに対する活性を維持しつつ、オフターゲットにおいては有意に減少した(34)。eSpCas9(1.1)プラスミド内のgRNAの発現は、転写を開始する際にGを「好む」ヒトU6プロモーターによって駆動されるので、4つ全てのgRNAは、gRNA配列の5’末端に余分の「G」を含めて設計されクローニングされた。
選択されたgRNAの切断効率を決定するために、gRNAを含有しているeSpCas9(1.1)プラスミドを個々に、リポフェクタミン3000を使用してHEK293細胞にトランスフェクトした。
HEK293細胞を、10%ウシ血清アルブミン(FBS)(ギブコ社)と1%のペニシリン-ストレプトマイシン(PS)(ギブコ社)の補充されたDMEM/F12(ギブコ社)中に維持した。
gRNAの検証のために、3×10個のHEK293細胞に、製造業者の推奨に従って、リポフェクタミン3000(インビトロジェン社)を使用して各々1.5μgのプラスミド構築物を別々にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、細胞をゲノムDNAの抽出のために収集した。
4つのgRNAが標的部位において切断を誘導する能力は、T7-エンドヌクレアーゼ1(T7E1)アッセイによって評価された。標的遺伝子座を、高い忠実度のLA TALARAポリメラーゼを使用して、USH2Aの特定の標的化エキソン13を用いて30サイクル増幅した。その後、PCR産物を、95℃で5分間加熱することによって変性させ、以下の計画によって再度アニーリングした:-2℃/秒で85℃まで下降させ、-0.1℃/秒で25℃まで下降させる。その後、0.5μlのT7エンドヌクレアーゼ1(ニューイングランドバイオラボ社)を混合液に加え、37℃で15分間インキュベートした。1μlのプロテイナーゼKの添加、及び混合液を37℃で5分間インキュベートすることによって、反応を停止した。消化された生成物を、アガロースゲル電気泳動を使用して分析した。
T7E1アッセイの結果は、たった1つのgRNA(gRNA2)が、DNA内に二本鎖切断を誘導することができたことを実証した(図1B)。
近年の研究は、「増強された特異性」のCas9を使用した場合、gRNA内の余分の「G」の存在が、Cas9のオンターゲット活性を妨害する可能性があることを示唆した(Kato-inui, Takahashi, Hsu, & Miyaoka, 2018)(15)。この理由から、4つ全てのgRNAを、余分な「G」を用いずに再度設計し、eSpCas9(1.1)プラスミドにクローニングした。余分な「G」を含まないgRNAを含有している新規プラスミドを、HEK293細胞にトランスフェクトし、T7E1アッセイを実施して、それらの活性を評価した。
T7E1アッセイは、gRNA1において及びここでもgRNA2においても切断活性を実証したが、gRNA3及びgRNA4では活性は全く検出できなかった(図1C)。
gRNA1の切断活性は、eSpCas9(1.1)プラスミド内の余分な「G」の有無に起因したかどうかを確認するために、本発明者らは、余分な「G」を有するgRNA1を、野生型Cas9プラスミド(pX458、アドジーン社106097番)にクローニングし、トランスフェクトされたHEK293細胞に対してT7E1アッセイを再度実施した。
結果を鑑みて、両方共に余分な「G」を含まないgRNA1及びgRNA2が、それぞれ、ミスセンス変異体であるc.2276G>T及びc.2299delGの突然変異の修正のために選択された。
これらの結果は、gRNA1及び2が、gRNA3及び4よりも高い認識効率を提示し、したがって、本発明により適していることを実証する。
HEK293細胞内の2つのgRNAの活性の検証後、一本鎖オリゴヌクレオチド(ssODN)の形態の修復鋳型を、相同組換え修復による2つの突然変異の修正のために設計した。
以前の研究は、標的化されていない鎖に対して相補的である非対称なssODNが、相同組換え修復を増強することを実証し(29)、それ故、ssODNは、この基準に従って、USH2Aの参照配列(15,606bp;Genbank NM_206933)を使用して設計された。
(29)に従って、PAM近位領域内に91ヌクレオチドを含有し、PAM遠位領域内に36ヌクレオチドを含有しているssODNが、非対称に設計された。さらに、ssODNは、gRNAによって標的化されない鎖に対して相補的であるように設計された。PAM配列のサイレント変化を鋳型に組み込むことにより、Cas9が相同組換え修復後に再度切断することを防いだ。相同組換え修復を増強するためのホスホロチオエートで修飾されたssODNは、GENEWIZ社から購入した(29)。
この方法に従って、2つのssODNが設計された:gRNA1用のssODN1(配列番号5)(ここではc.2276G>T突然変異の修正のための変化が導入された)、及びc.2299delG突然変異を修正するためのgRNA2用のssODN2(配列番号6)。
さらに、相同組換え修復後にCas9による標的DNAの再切断を回避するために、
PAMサイレント突然変異が、両方のssODN配列に導入された(24)。ssODN1についてのPAMサイレント突然変異は、USH2A参照配列内に存在するNcoI制限酵素部位を破壊した。逆に、ssODN2についてのPAMサイレント突然変異は、標的化配列にMscI部位を導入した。これらの2つのPAMサイレント突然変異は、相同組換え修復事象の遺伝子型判定を容易にした。ssODNの安定性を増強するために、ホスホロチオエートにより修飾された末端塩基がssODNの両末端に付加された。
実施例2:CRISPR/Cas9により媒介される患者のiPSC内のc.2299delG突然変異の修正
患者のiPSC内の最も高頻度に見られるUSH2A突然変異を修正することを目指して、ホモ接合型突然変異c.2299delGに起因するUSH2症候群を呈する患者に由来するiPSC細胞株(USH2A-USH-iPSC)を、この目的に使用した(32)。
まず、患者の皮膚生検が、インフォームドコンセントの後に、無菌条件下で、遺伝性感覚障害リファレンスセンター(Centre of Reference for Genetic Sensory Disorders)(CHRUモンペリエ)において実施された。地域及び国の倫理委員会は、承認番号2014-A00549-38の下で生物医学的研究の承認を与えた。ヒト線維芽細胞を、10%の補充されていないウシ胎児血清(ロンザ社、ベルビエ、ベルギー)、1%グルタマックス(ギブコ社、サーモフィッシャーサイエンティフィック社、ヴィルボン・シュル・イヴェット、フランス)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン-アムホテリシンB(ロンザ社)及び2%のAmnioMax-C100サプリメント(ギブコ社)の補充されたAmnioMAX C100基礎培地中で37℃で5%CO下で培養した。
次に、組み込まれていないiPSCを作製するために、対応する患者に由来する線維芽細胞に、製造業者の推奨に従って、KLF4、OCT4、SOX2、及び/又はc-MYCを発現している3つのセンダイウイルスに基づいた初期化ベクター(CytoTune2.0-KOS、-hc-MYC、-hKLF4)を含有している、CytoTune-iPS2.0センダイ初期化キット(ライフテクノロジーズ社)を形質導入した。以下の培地:グルタマックス(ギブコ社)を含有し、10%ウシ胎児血清(ギブコ社)、1%非必須アミノ酸(ギブコ社)及び55mMのβ-メルカプトエタノール(ギブコ社)の補充された高グルコースDMEMを、1日1回7日間リフレッシュした。7日目に、形質導入された線維芽細胞を、マトリゲルでコーティングされた培養皿に置いた。8日目に、培地を、TeSR-E7基礎培地(ステムセルテクノロジーズ社、グルノーブル、フランス)へと変更した。15日目から、出現しているiPSCコロニーを、メスを使用して機械で継代させ、エッセンシャル8(E8)培地(ギブコ社)中で5%COの下で37℃で培養した。培養培地は毎日リフレッシュし、細胞を、バーゼン液(ギブコ社)を使用して週2回継代した。
得られたUSH2A-USH-iPSC細胞株に、ssODN2と組み合わせて、eSpCas9(1.1)-gRNA2プラスミドをヌクレオフェクトした。ヌクレオフェクションから48時間後、iPSCを、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって緑色蛍光タンパク質(GFP)-単一細胞を選別し、96ウェルプレートに再度播種した。その後、生き残ったiPSCコロニー(288個中5個)をさらなる培養、特徴付け、及び相同組換え修復事象のスクリーニングのために増幅した。
MscI部位を作出する、ssODN2に導入されたPAMサイレント突然変異に因り、本発明者らはまず、抽出されたDNA内の標的領域のPCRによる増幅及び制限酵素による消化によって、相同組換え修復事象についてクローンをスクリーニングした。MscIによるPCR産物の消化は、5個の生き残ったクローンのうち4個が、Cas9により誘導された二本鎖切断を修復するためにssODN2を使用したことを示した(図2A)。
相同組換え修復事象の確認は、PCR産物のサンガーシークエンス及びクローニングによって成し遂げられた(図2B)。
分析された4つの陽性クローンの中で、1つのクローン(B1F11)が、Cas9により誘導された挿入欠失が観察された第二の対立遺伝子(A2)と比べて、一方の対立遺伝子(A1)におけるPAMサイレント突然変異及び修正されたc.2299delG突然変異の存在によって決定されるような、ヘテロ接合型修正を示した(図2C)。残りの3つの陽性クローン(B3B8、B3B1、及びB2H4)は、c.2299delG突然変異のホモ接合型修正、並びに、PAMサイレント突然変異のホモ接合型導入を実証した(図2C)。
両方の対立遺伝子のPCR増幅を妨げる、USH2Aのエキソン13内のあらゆる大きなCas9により誘導される欠失(1)を除外するために、本発明者らは、修復されたクローンのgDNA内のUSH2Aのコピー数多型(CNV)を推定するために、リアルタイム定量PCR(qPCR)アッセイを設計した(D’haene, Vandesompele, & Hellemans, 2010)(9)。
RNAは、QiaShredder及びRNeasyミニキット(キアゲン社)を使用して、製造業者の説明書に従って単離された。単離されたRNAは、リボヌクレアーゼ非含有デオキシリボヌクレアーゼ(キアゲン社)で処理され、0.5μgが、Superscript III逆転写酵素キット(ライフテクノロジーズ社)を使用して逆転写された。コピー数多型の研究のために、250ngのgDNAを実験のために使用し、結果は、TERT又はTRMT10Cに対して正規化された。USH2Aの発現の研究のために、1回の反応あたり5ngのcDNAを使用し、結果は、GAPDHに対して正規化された。反応は、ライトサイクラー(登録商標)480IIサーマルサイクラー(ロシュ社)でライトサイクラー(登録商標)480サイバーグリーンIマスターミックスを使用して行なわれた。結果は、ライトサイクラーV480ソフトウェア及びマイクロソフト社のエクセルプログラムを使用して分析された。
c.2299delG突然変異部位を囲むプライマーセットが設計された。正方向プライマーは、B1F11クローンが対立遺伝子2において挿入欠失を呈した領域内にハイブリダイズするように直接設計された。
qPCRの結果は、全てのホモ接合型クローン(B3B8、B3B1、及びB2H4)が、陰性対照(C-、CRISPR/Cas9により誘導されるゲノム編集を伴わない、USH2A-USH-iPSCクローン)と比較して、USH2Aのコピー数多型に類似した相対値を提示したことを示した。これとは対照的に、ヘテロ接合型の修正されたB1F11クローンは、USH2Aのコピー数多型の半分の相対値を提示した(図2D)。
これらの全ての結果をまとめると、本発明者らは、USH2症候群を呈する患者に由来するiPSC細胞株において、USH2Aの最も高頻度に見られる突然変異の高い効率(5個の生き残ったクローンのうち4個)の修正を達成した。
実施例3:患者のiPSCにおける、CRISPR/Cas9により媒介されるc.2276G>T突然変異の修正
常染色体劣性網膜色素変性症(arRP)におけるUSH2Aの最も高頻度に見られる突然変異を修正するために、本発明者らは、複合型ヘテロ接合型突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG)に起因する、非症候群型網膜色素変性症を呈する患者に由来するiPSC細胞株(USH2A-RP-iPSC)を使用した(31)。
この細胞株は、実施例2に記載のものと同じプロトコールに従って、すなわち、患者の皮膚生検を実施し、続いて線維芽細胞を培養し、組み込まれていないiPSCを作製することによって調製された。
この細胞株では、本発明者らは、すでに検証されたgRNA1をssODN1と組み合わせて使用することによって、機能低下型c.2276G>Tミスセンス変異体を修正することを目指した。この目的のために、USH2A-RP-iPSC細胞株に、eSpCas9(1.1)-gRNA1及びssODN1をヌクレオフェクトし、GFP-単一細胞の選別を、ヌクレオフェクションから48時間後に実施した。
USH2A-USH-iPSC細胞株とは対照的に、USH2A-RP-iPSC細胞株に由来する68個のクローン(288個のうち)が生き残った。その後、生き残ったクローンを増幅し、PCRにより増幅された標的領域のNcoIによる消化によって、相同組換え修復事象について最初にスクリーニングした。NcoIにより消化された14個のクローンの代表的なゲルが図3Aに示されている。励みになることには、1つ(M3D11)を除く全てのクローンが、宿主DNAにssODN1を組み込んだようであった。なぜなら、それらはNcoIによって切断できなかったからである。
有望な結果に鑑みて、本発明者らは、68個全ての生き残ったクローンをシークエンスした。驚くべきことには、シークエンス結果は、制限酵素による消化の結果とは一致しなかった。初回のシークエンス分析は、68個全てのクローンについて、標的ではない対立遺伝子、すなわち対立遺伝子2(A2)のみが改変されたことを示唆した。これらの結果は、標的領域のサブクローニング及び再シークエンスによってさらに確認された(図3B)。
クローンの59%(68個中40個)において、PAMサイレント突然変異は、対立遺伝子2にのみ導入された。クローンの32%(68個中22個)において、本発明者らは、対立遺伝子2のみにCas9により誘導された挿入欠失を検出した。クローンの7%(68個中5個)において、本発明者らは、対立遺伝子1が、対立遺伝子2を修復するために使用されたと判定した。なぜなら、i)いずれの対立遺伝子にもPAMサイレント突然変異の兆候は全くなかった、ii)c.2276G>T突然変異が、両方の対立遺伝子に存在していた、及びiii)c.2299delG突然変異は、どちらの対立遺伝子にも存在してなかったからである。最後に、1.5%(68個中1個)のクローンが、DNA内にCRISPR/Cas9により誘導された改変を全く示さなかった。
68個のクローンのクローニング及びシークエンスは、本発明者らが修正を目指したc.2276G>Tミスセンス変異体に対してシスにある、対立遺伝子1における一塩基多型(rs111033281;c.2256T>C)の存在を明らかとした。
一塩基多型が、CRISPR/Cas9による改変前にも存在していたかどうかを調べるために、本発明者らは、USH2A-RP-iPSC親株の標的領域を増幅し、サブクローニングし、シークエンスし、そして、対立遺伝子1におけるc.2276G>Tに対してシスにある、c.2256T>Cを検出した(図3C)。
対立遺伝子1における一塩基多型の存在は、本発明者らが、NcoIによるPCR産物の消化後に疑陽性を得た理由を説明した。なぜなら、一塩基多型は、対立遺伝子1においてNcoI部位の位置にあり、対立遺伝子2は、Cas9により改変されて、NcoIの認識部位を妨害していたからである。
これらの結果は、gRNA配列と標的遺伝子座との間の1つのミスマッチにより、遺伝子座が認識されなくなる可能性があり、よって、全く修正されない可能性があることを実証する。
対立遺伝子1における一塩基多型の存在に因り、本発明者らは、gRNA1が、ミスセンス変異体の対立遺伝子1を認識するように、配列(gRNA1S)(配列番号7)内に一塩基多型を組み込むように、gRNA1を再設計し、クローニングした(図3D)。
本発明者らは、ssODN1と一緒に、eSpCas9(1.1)-gRNA1Sプラスミドを、USH2A-USH-iPSC株にヌクレオフェクトし、EGFP陽性細胞を単一細胞選別した。生き残ったクローン(288個中36個)を増幅させ、相同組換え修復事象についてスクリーニングした。シークエンスの結果は、gRNA1とは対照的に、gRNA1Sは、一塩基多型配列を含有している標的化されている対立遺伝子1だけでなく、対立遺伝子2も認識し切断を誘導することができたことを示した(図3E)。
クローニング及びシークエンス後のgRNA1Sを用いてのCas9により誘導される改変の例は、図3Fに見られる。
クローンの5%(36個中2個)及び14%(36個中5個)において、本発明者らは、それぞれ、対立遺伝子1と対立遺伝子2、又は対立遺伝子1のみへの、PAMサイレント突然変異の排他的導入による部分的な修復を検出した(図4C)。クローンの14%(36個中5個)において、i)一塩基多型が存在しないこと、ii)PAMサイレント突然変異が存在しないこと、iii)対立遺伝子1におけるc.2276G>T突然変異の修正、及びiv)対立遺伝子1及び対立遺伝子2の両方における、c.2299delG突然変異の存在によって示唆されるように、対立遺伝子2は、Cas9により誘導される対立遺伝子1の切断を修復するために使用された。クローンの28%(36個中10個)及び19%(36個中7個)において、本発明者らは、それぞれ、標的化された対立遺伝子1、又は標的化されていない対立遺伝子2において、挿入欠失を認めた。クローンの17%(36個中6個)において、Cas9により誘導される改変は検出できなかった。最後に、クローンの3%(36個中1個)において、本発明者らは、対立遺伝子1におけるミスセンスc.2276G>T変異体の修正、及び対立遺伝子2にのみにおけるc.2299delGの存在を検出した(図3G)。しかしながら、本発明者らは、gRNA1Sもまた、このクローンの両方の対立遺伝子を認識したと考える。なぜならPAMサイレント突然変異もホモ接合型であったからである。
要するに、本発明者らは、常染色体劣性網膜色素変性症を呈する患者のiPSC内の機能低下型c.2276G>T突然変異の修正を成功裡に達成した。
実施例4:CRISPR/Cas9により修復されたiPSCの特徴付け
本発明者らは次いで、作製されたCRISPRにより修正されたiPSCクローンが、遺伝子標的化プロセスによって影響を受けなかった、それらの親のiPSC株(31)の多能性特徴を維持しているかどうかを調べた。
この目的のために、本発明者らは、詳細な分析のために、修正されたクローンUSH2A-USH-iPSC-B3B1(c.2299delGのホモ接合型修正)及びUSH2A-RP-iPSC-MS3F7(c.2276G>Tのヘミ接合型修正)を選択した。
修正された両方の細胞株が、明確な境界によって囲まれた緻密に充填された細胞を含んでいる、iPSCクローンの典型的な形態を示した(図4A)。ヌクレオフェクションによって又は単一細胞培養によって誘導される可能性のあるあらゆる主要な染色体再編成を除外するために、本発明者らは、iCS-デジタルTM Pluri試験(Assou, Bouckenheimer, & Vos, 2018))によってそれらのゲノム完全性を評価した(2)。結果は、両方の修正された株が、正常なゲノム安定性を保持していたことを示した(図4B)。
iPSCの多能性の研究のために、及びインビトロでの識別のための染色のために、細胞を、4%パラホルムアルデヒドを使用して固定し、0.1%トリトンX-100(シグマアルドリッチ社)で透過性処理した。非特異的結合は、1%ウシ血清アルブミンおよび10%ロバ血清(ミリポア社)で遮断された。NANOG、OCT3/4、及びSOX2(多能性について)、並びに、SMA、AFP、及びネスチン(3つの胚葉の特徴付けについて)に対する一次抗体を、1:200の希釈率で使用し、4℃で一晩インキュベートした。蛍光にコンジュゲートさせた二次抗体(ジャクソンイムノリサーチ社)を室温で1時間インキュベートした。核を、0.2μg/mlのビスベンズイミド(シグマアルドリッチ社)で染色した。細胞を、ツァイス社のアポトーム2正立広視野顕微鏡を使用して観察した。
免疫蛍光分析は、CRISPR/Cas9により修正されたクローンが、OCT3/4、SOX2及びNANOGなどの典型的な多能性マーカーの発現を保持していたことを明らかとした(図4C)。
さらに、これらの細胞株が3つの胚葉を生じる能力は、胚様体(EB)アッセイによって決定された。
どちらの細胞株も、内胚葉についてはHNF4α、中胚葉については平滑筋アクチン(SMA)、外胚葉についてはグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の免疫染色によって評価されるように、3つの胚葉へと分化することができた(図4D)。
iPSCから3つの胚葉への分化については、iPSCをアキュターゼ(ステムセルテクノロジーズ社)を用いて解離し、超低接着皿上の、Y27632StemMACSを含有しているエッセンシャル8培地中に2日間かけて播種した。3日目に、培地を、20%ノックアウト血清代替物(ギブコ社)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン(ギブコ社)、1%のグルタマックス、55mMのβ-メルカプトエタノール、及び1%の非必須アミノ酸の補充された、DMEM/F12(ギブコ社)に交換した。7日目に、胚様体を、マトリゲルでコーティングされたウェル上に播種し、さらに10日間培養し、その後、免疫蛍光染色を行なった。
要するに、本発明者らは、典型的なiPSCの特徴を示す、USH2A遺伝子の修正されたiPSCを成功裡に作製した。
実施例5:CRISPRにより修正されたiPSCにおけるUSH2AのmRNA発現レベルの評価
突然変異iPSC細胞株と、遺伝子の修正された細胞において、USH2A発現に関する差があるかどうかを決定するために、本発明者らは、mRNAレベルでUSH2Aの発現を評価した。
USH2Aは、2つのアイソフォーム、すなわち21個のエキソンを有する短いアイソフォームと、72個のエキソンを有する長いアイソフォームを有することが知られている(37)。どちらのアイソフォームも、網膜内に存在するが、長いアイソフォームが、光受容体において優勢な形態である(18)。この理由のために、本発明者らは、長いアイソフォームを排他的に認識するであろうエキソン39、並びに、長いアイソフォームと短いアイソフォームを認識するであろうエキソン13を標的化するプライマーを設計し、以前に記載されたプロトコールに従って、qPCRによってUSH2AのmRNAレベルを評価した。
まず、ホモ接合型状態でc.2299delGを有するUSH2患者のiPSCは、野生型USH2Aのレベルの6倍である、長いアイソフォームの発現レベルを示す(図5A)。さらに、USH2A-USH-iPSC-B3B1株におけるc.2299delG突然変異のホモ接合型修正は、USH2AのmRNA発現レベルを、野生型のレベルに戻るまで回復させた。この同じプロファイルが、長いアイソフォームと短いアイソフォームの両方の無差別な増幅後に観察され(図5B)、これにより、これらの現象が確認された。
これらの結果は、c.2299delG突然変異が、USH2AのmRNAレベルの蓄積に対して特別な効果を及ぼすことを示唆した。第二に、c.2276G>Tミスセンス突然変異及びc.2299delG突然変異において複合ヘテロ接合型である、常染色体劣性網膜色素変性患者のiPSCは、野生型細胞のレベルと同等である、長いアイソフォームのUSH2AのmRNAレベルを示した(図5C)。
さらに、c.2277G>T突然変異を修正し、c.2299delG突然変異をヘミ接合型状態に残したことにより、野生型又は修正されていないiPSCと比較して、USH2AのmRNAレベルは3倍増加する。この同じプロファイルが、長いアイソフォームと短いアイソフォームの両方の無差別な増幅後に観察され(図5D)、これにより、USH2AのmRNAレベルに対するc.2299delG突然変異の特別な効果が確認された。
実施例6:CRISPR/Cas9により媒介されるc.2299delGの突然変異の修正後の、患者のiPSCから派生した網膜オルガノイドの構造の評価
本発明者らは、実施例2と同じ方法で得られた、ホモ接合型突然変異c.2299delGに因りUSH2症候群を呈する患者に由来するiPSC細胞株(USH2A-USH-iPSC)を使用した。
USH2A-USH-iPSC細胞株に、実施例2に記載のように、eSpCas9(1.1)-gRNA2プラスミドを、ssODN2と組み合わせてヌクレオフェクトした。ヌクレオフェクションから48時間後、iPSCを、蛍光活性化細胞選別(FACS)によってGFP-単一細胞を選別し、96ウェルプレートに再播種した。
生き残ったiPSCコロニーを成熟させ、網膜オルガノイドへと分化させた。
iPSCを、以下のプロトコールを使用して網膜オルガノイドへと分化させた。iPSCを、エッセンシャル8培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)中で培養した。細胞が60~80%の集密度となった場合、培地をエッセンシャル6培地(E6)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)に変更し、これを0日目と考えた。1日目に、E6培地をリフレッシュした。2日目に、E6培地を、N-2サプリメントの補充されたE6(E6-N2)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)に変更した。E6-N2培地を28日間、週3回リフレッシュした。28日目に、未熟な網膜オルガノイドをメスを用いて手作業で解体し、塩基性線維芽細胞増殖因子(β-FGF)及びB-27サプリメントの補充された、BVA培地(DMEM-F12、非必須アミノ酸及び0.1%のペニシリン-ストレプトマイシン(サーモフィッシャーサイエンティフィック社))中で1週間培養した。培地を週3回リフレッシュした。35日目に、B-27の補充されたBVA+ウシ胎児血清+グルタマックス(10%ウシ胎児血清(FCS)とグルタマックスを含むBVA培地)に変更された。この培地を、週3回リフレッシュした。培養85日目に、網膜オルガノイドを、ビタミンA(VitA)を含まないB-27で補充されたBVA+FCS+グルタマックス培地中で培養した。培地は、処理されるまで、週3回リフレッシュした。
同じ増殖法及び分化法を、c.2299delG突然変異を提示しない、野生型(WT)iPSC株(46に記載のように作製)、及び本発明に従ってヌクレオフェクトされていない、すなわち、c.2299delG突然変異について修正されていない、USH2A-USH-iPSC株において使用した。
3つの異なる種類の網膜オルガノイドが、培養200日後に得られた:野生型オルガノイド(陽性対照)、USH2A-USH-iPSCに由来するオルガノイド(又はUSH2A-USH-オルガノイド)(修正されていない)及びCRISPR/Cas9により修正されたUSH2A-USH-iPSCに由来するオルガノイド(又はCIRSPR/Cas9により修正されたUSH2A-USH-オルガノイド)。これにより、本発明者らは、c.2299delG突然変異及びアッシャー症候群2型に関連した可能性ある異常を研究及び特徴付けすることが可能となった。
3つの細胞株は、網膜オルガノイドへと分化した。それにも関わらず、成熟し構造化したオルガノイドの周知の特色である、オルガノイドの積層及びオルガノイドを囲む刷子縁のサイズには差があった。野生型及びCRISPR/Cas9により修正されたUSH2A-USH-オルガノイドは、修正されていないUSH2A-USH-オルガノイドにおける明確な境界のない積層及び50μmの刷子縁と比較して、境界の明確な積層及び100μmの刷子縁を呈した(図6)。
要するに、これらの結果は、網膜オルガノイドにおけるCRISPR/Cas9によるc.2299delG突然変異の修正が、USH2A-USH-オルガノイドにおいて観察された光受容体の積層及び成熟において観察された異常を修正することを示す。
実施例7:CRISPR/Cas9により媒介されるc.2276G>T突然変異の修正後の、患者のiPSCから派生した網膜オルガノイドの構造の評価
ここで、本発明者らは、実施例3と同じような方法で得られた、複合型ヘテロ接合型突然変異(c.2276G>T及びc.2299delG)に起因する非症候群型網膜色素変性症を呈する患者に由来するiPSC細胞株(USH2A-RP-iPSC)を使用した。
USH2A-RP-iPSC細胞株に、実施例3に記載のように、eSpCas9(1.1)-gRNA1SプラスミドをssODN1と組み合わせてヌクレオフェクトした。ヌクレオフェクションから48時間後、iPSCを、GFP蛍光活性化細胞選別(FACS)によって単一細胞を選別し、96ウェルプレートに再度播種した。
生き残ったiPSCコロニーを成熟させ、網膜オルガノイドへと分化させた。
iPSCを、実施例6に上記されているように、僅かな改変を加えて、網膜オルガノイドへと分化させた。42日目に、BVA+ウシ胎児血清+グルタマックス培地にタウリンを補充した。65日目に、BVA+ウシ胎児血清+グルタマックス(+タウリン)培地に、ビタミンA及びレチノイン酸(RA)を含まないB-27を補充した。85日目に、網膜オルガノイドを、N-2の補充されたBVA+ウシ胎児血清+グルタマックス(-ビタミンA、+タウリン、+レチノイン酸)中で培養した。120日目に、オルガノイドを、BVA+ウシ胎児血清+グルタマックス(-ビタミンA、+タウリン、+N-2、-レチノイン酸)中で培養した。培地は、処理するまで週3回リフレッシュした。
同じ増殖法及び分化法を、突然変異を全く有さない、野生型(WT)iPSC株(46に記載のように作製)、及び本発明に従ってヌクレオフェクトされていない、すなわち、突然変異について修正されていない、USH2A-USH-iPSC株において使用した。
3つの異なる種類の網膜オルガノイドが、150日間培養した後に得られた:野生型オルガノイド(陽性対照)、USH2A-RP-iPSCに由来するオルガノイド(又はUSH2A-RP-オルガノイド)(修正されていない)、及びCRISPR/Cas9により修正されたUSH2A-RP-iPSCに由来するオルガノイド(又はCIRSPR/Cas9により修正されたUSH2A-RP-オルガノイド)。これにより、本発明者らは、c.2276G>T突然変異及び網膜色素変性症(RP)に関連した可能性ある異常を研究及び特徴付けることが可能となった。
3つの細胞株は、網膜オルガノイドへと分化した。それにも関わらず、成熟し構造化したオルガノイドの周知の特色である、オルガノイドの積層には、及びオルガノイドを囲む刷子縁の有無には差があった。野生型及びCRISPR/Cas9により修正されたUSH2A-RP-オルガノイドは、明確な境界の積層構造、及びオルガノイドの全表面を囲む刷子縁を呈した。これとは対照的に、USH2A-RP-オルガノイドは、あまり境界が明確ではない積層を示し、オルガノイドを囲む刷子縁を呈さなかった(図7)。
要するに、これらの結果は、CRISPR/Cas9による修正によって元に戻る、USH2A-RP-オルガノイドの場合、成熟した網膜に特徴的な積層構造及び刷子縁の形成は遅くなることを示す。
配列表
Figure 0007393770000001
参考文献
Figure 0007393770000002

Figure 0007393770000003

Figure 0007393770000004

Figure 0007393770000005

Figure 0007393770000006

Figure 0007393770000007

Claims (18)

  1. (i)(a)配列番号1、配列番号2、及び配列番号7からなる群より選択された少なくとも1つの核酸配列を含む少なくとも1つのガイド核酸(gRNA)を細胞に与えること;
    (b)少なくとも1つのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連ヌクレアーゼを該細胞に与えること;及び
    (c)突然変異したUSH2A遺伝子の修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸を該細胞にさらに与えること
    による、部位特異的遺伝子工学操作システムを該細胞に与える工程;
    (ii)工程(i)で得られた細胞を培養することにより、前記の少なくとも1つのドナー核酸が、細胞ゲノム内に組み込まれて、1つ以上のUSH2A遺伝子の突然変異が修正される工程
    を含む、個体の人工多能性幹細胞(iPSC)のゲノム内の、両方共にエキソン13にある、c.2276G>T及びc.2299delGの突然変異の中から選択される、少なくとも1つのUSH2A突然変異をインビトロで又はエクスビボで修正するための方法。
  2. iPSCが、USH2A遺伝子の突然変異の一方又は両方を有するゲノムを有する個体から事前に回収された細胞のインビトロでの処理から誘導される、請求項1記載の方法。
  3. USH2A遺伝子の突然変異の一方又は両方を有するゲノムを有する個体が、孤立性網膜ジストロフィーを患っている個体である、請求項2記載の方法。
  4. 少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)が、配列番号1、配列番号2、及び配列番号7からなる群より選択される少なくとも1つの核酸配列からなる、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
  5. 修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸が、gRNAによって標的化されない鎖に対して相補的である、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
  6. 修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸が、非対称である、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
  7. 修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸が、一端に、少なくとも1つの修飾された末端塩基を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
  8. 修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸が、gRNAによって標的化されない鎖に対して相補的であり、非対称であり、両端に2つのホスホロチオエートにより修飾された末端塩基を含む、一本鎖オリゴデオキシ核酸である、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
  9. 修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸が、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択された少なくとも1つの核酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
  10. (i)配列番号1、配列番号2、及び配列番号7からなる群より選択される少なくとも1つの核酸配列を含んでいる、少なくとも1つのガイド核酸;
    (ii)少なくとも1つのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連ヌクレアーゼ;及び
    (iii)USH2A遺伝子の修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核
    含んでいる、それを必要とする個体の、細胞のゲノム内の、c.2276G>T及びc.2279delGの突然変異の中から選択される少なくとも1つのUSH2A遺伝子の突然変異を修正するための、部位特異的な遺伝子工学操作システム。
  11. 少なくとも(i)、(ii)及び(iii)の成分を含んでいる、少なくとも1つの送達ビヒクルをさらに含んでいる、請求項10記載のシステム。
  12. それを必要とする個体が、遺伝性網膜ジストロフィーを患っている個体である、請求項10又は11記載のシステム。
  13. 少なくとも1つのガイド核酸が、配列番号1、配列番号2、及び配列番号7からなる群より選択される少なくとも1つの核酸配列からなる、請求項10~12のいずれか一項記載のシステム。
  14. 修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸が、gRNAによって標的化されない鎖に対して相補的であり、非対称であり、一端に、少なくとも1つのホスホロチオエートにより修飾された末端塩基を含む、一本鎖オリゴデオキシ核酸である、請求項1013のいずれか一項記載のシステム。
  15. 修復鋳型としての役目を果たす少なくとも1つのドナー核酸が、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択される少なくとも1つの核酸配列を含む、請求項1014のいずれか一項記載のシステム。
  16. 少なくとも1つの送達ビヒクルが、ウイルスベクター及び非ウイルスベクターからなる群より選択される、請求項1015のいずれか一項記載のシステム。
  17. ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、及びエプシュタインバーウイルスベクターからなる群より選択される、請求項16記載のシステム。
  18. 遺伝性網膜ジストロフィーの処置に使用するための、請求項1017のいずれか一項記載のシステム。
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