JP7391440B1 - 樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】シランカップリング剤を含まず、強度に優れた成形品の製造を可能とする樹脂組成物を提供する。【解決手段】樹脂組成物は、ベース樹脂と無機化合物と添加剤とからなり、前記添加剤は、トリアジン骨格を有するエポキシ化合物及びエポキシ基含有アクリルポリマーの少なくとも一方からなるエポキシ成分であるか、又は、前記エポキシ成分と酸化防止剤及びエステルワックスの少なくとも一方との組み合わせであり、前記ベース樹脂の量を100質量部とした場合における前記無機化合物と前記添加剤との合計の量は1乃至235質量部の範囲内にあり、前記無機化合物の量を100質量部とした場合における前記添加剤の量は0.5乃至11質量部の範囲内にある。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物に関する。
樹脂組成物において、添加剤は様々な目的で使用される。例えば、特許文献1には、2種類のポリカーボネート樹脂を含んだ樹脂組成物に、難燃剤や離型剤等の添加剤を更に含有させることが記載されている。
特開2013-237786号公報
本発明は、シランカップリング剤を含まず、強度に優れた成形品の製造を可能とする樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明の一側面によると、ベース樹脂と無機化合物と添加剤とからなり、前記ベース樹脂は、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド及びポリアセタールからなる群より選択される1以上であり、前記添加剤は、トリアジン骨格を有するエポキシ化合物(多官能アリル化合物を除く)及びエポキシ基含有アクリルポリマーの少なくとも一方からなるエポキシ成分であるか、又は、前記エポキシ成分と酸化防止剤及びエステルワックスの少なくとも一方との組み合わせであり、前記ベース樹脂の量を100質量部とした場合における前記無機化合物と前記添加剤との合計の量は1乃至235質量部の範囲内にあり、前記無機化合物の量を100質量部とした場合における前記添加剤の量は0.5乃至11質量部の範囲内にある樹脂組成物が提供される。
本発明の他の側面によると、ベース樹脂と複合材とからなり、前記ベース樹脂は、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド及びポリアセタールからなる群より選択される1以上であり、前記複合材は、無機化合物と、前記無機化合物上に設けられた表面処理剤とを含み、前記表面処理剤は、トリアジン骨格を有するエポキシ化合物及びエポキシ基含有アクリルポリマーの少なくとも一方からなるエポキシ成分であるか、又は、前記エポキシ成分と酸化防止剤及びエステルワックスの少なくとも一方との組み合わせであり、前記ベース樹脂の量を100質量部とした場合における前記複合材の量は1乃至235質量部の範囲内にあり、前記無機化合物の量を100質量部とした場合における前記表面処理剤の量は0.5乃至11質量部の範囲内にある樹脂組成物が提供される。
本発明の更に他の側面によると、前記無機化合物の量を100質量部とした場合における前記エポキシ成分の量は0.1質量部以上である上記側面の何れかに係る樹脂組成物が提供される。
本発明の更に他の側面によると、前記無機化合物は、ワラストナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム及びガラスからなる群より選ばれる1以上である上記側面の何れかに係る樹脂組成物が提供される。
本発明によると、シランカップリング剤を含まず、強度に優れた成形品の製造を可能とする樹脂組成物が提供される。
以下に、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
<1>第1実施形態
本発明の第1実施形態に係る樹脂組成物は、成形品の製造に使用可能な熱可塑性樹脂組成物である。第1実施形態に係る樹脂組成物は、ベース樹脂と無機化合物と添加剤とからなる。
ベース樹脂は、例えば、エンジニアプラスチックである。ベース樹脂の具体例は、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド及びポリアセタールである。ベース樹脂は、1種の化合物からなるものであってもよく、複数種の化合物の混合物であってもよい。
無機化合物は、ベース樹脂中に分散している。無機化合物は、添加剤とともに、樹脂組成物からなる成形品の強度を高める役割を果たす。
無機化合物は、好ましくは、ワラストナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム及びガラスからなる群より選ばれる1以上である。無機化合物は、例えば、粒子又は繊維の形態で、樹脂組成物に含まれる。例えば、無機化合物は、ワラストナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、又は硫酸バリウムからなる場合、典型的には、粒子の形態で樹脂組成物に含まれる。また、無機化合物は、ガラスからなる場合、典型的には、繊維の形態で樹脂組成物に含まれる。
無機化合物は、粒子の形態にある場合、平均粒径が0.5乃至3000μmの範囲内にあることが好ましく、1乃至500μmの範囲内にあることがより好ましい。ここで、「平均粒径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって得られるメディアン径(D50)である。
無機化合物は、繊維の形態にある場合、平均繊維径が5乃至30μmの範囲内にあることが好ましく、10乃至20μmの範囲内にあることがより好ましい。また、無機化合物は、繊維の形態にある場合、平均繊維長が1乃至20mmの範囲内にあることが好ましく、3乃至10mmの範囲内にあることがより好ましい。ここで、「平均繊維径」は、例えばデジタルマイクロスコープによって得られる径である。また、「平均繊維長」は、例えばデジタルマイクロスコープによって得られる長さである。
ベース樹脂の量を100質量部とした場合における無機化合物と添加剤との合計の量は、1乃至235質量部の範囲内にあり、好ましくは5乃至100質量部の範囲内にあり、より好ましくは11乃至43質量部の範囲内にある。
添加剤は、無機化合物とともに、樹脂組成物からなる成形品の強度を高める役割を果たす。
無機化合物の量を100質量部とした場合における添加剤の量は、0.5乃至11質量部の範囲内にあり、好ましくは1乃至7.5質量部の範囲内にある。
添加剤は、一例によれば、トリアジン骨格を有するエポキシ化合物及びエポキシ基含有アクリルポリマーの少なくとも一方からなるエポキシ成分である。添加剤は、他の例によれば、上記のエポキシ成分と酸化防止剤及びエステルワックスの少なくとも一方との組み合わせである。
エポキシ成分は、トリアジン骨格を有するエポキシ化合物であってもよく、エポキシ基含有アクリルポリマーであってもよく、それらの組み合わせであってもよい。エポキシ成分が、トリアジン骨格を有するエポキシ化合物と、エポキシ基含有アクリルポリマーとの組み合わせである場合、それらの配合比は任意である。
エポキシ成分の少なくとも一部は、エポキシ成分と無機化合物とを混合してから成形を完了するまでの期間内に、無機化合物の表面に存在している官能基と結合する。これにより、エポキシ成分は、ベース樹脂中での無機化合物の分散性を高め、その二次凝集を抑制する。また、エポキシ成分は、成形品において、ベース樹脂に対する無機化合物の密着性を高める。更に、エポキシ成分は、成形品において、無機化合物がベース樹脂に接触することに起因したベース樹脂の劣化を抑制する。その結果、成形品の物性が向上する。例えば、凝集を起点とした成形品の破断が生じ難くなる。また、無機化合物が接触することに起因したベース樹脂の劣化が生じ難くなり、それ故、成形品の劣化が生じ難くなる。
トリアジン骨格を有するエポキシ化合物及びエポキシ基含有アクリルポリマーは、シランカップリング剤とは異なり、珪素原子を含んでいない。このような化合物は、シランカップリング剤と比較して安価である。
トリアジン骨格を有するエポキシ化合物は、例えば、トリアジンが含む窒素原子の1以上に、連結基を介してエポキシ基を結合させた構造を有する化合物である。連結基は、一例によればアルキレン基である。連結基は、他の例によれば、1以上のアルキレン基と、エステル結合及びエーテル結合の少なくとも一方との組み合わせである。
トリアジン骨格を有するエポキシ化合物は、単官能であってもよく、多官能であってもよい。トリアジン骨格を有するエポキシ化合物は、多官能である場合、二官能であってもよく、三官能であってもよく、四官能以上であってもよい。なお、四官能以上である場合、連結基は分岐した構造を有する。
トリアジン骨格を有するエポキシ化合物は、例えば、1,3,5-トリス(オキシラン-2-イルメチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオンである。
添加剤は、トリアジン骨格を有するエポキシ化合物を1種のみ含んでいてもよく、複数種含んでいてもよい。
エポキシ基含有アクリルポリマーは、エポキシ基を含んだ側鎖を有するアクリル樹脂である。エポキシ基含有アクリルポリマーは、エポキシ基を含んでいない側鎖を更に有していてもよい。エポキシ基含有アクリルポリマーは、シランカップリング剤と比較して安価である。
エポキシ基含有アクリルポリマーは、重量平均分子量が、好ましくは5000乃至200000の範囲内にあり、より好ましくは10000乃至100000の範囲内にある。
エポキシ基含有アクリルポリマーは、エポキシ当量が、好ましくは100乃至5000の範囲内にあり、より好ましくは300乃至1000の範囲内にある。
添加剤に占めるエポキシ成分の割合は、1質量%以上であることが好ましい。添加剤に占めるエポキシ成分の割合は、100質量%であってもよい。
無機化合物の量を100質量部とした場合におけるエポキシ成分の量は、好ましくは0.1乃至11質量部の範囲内にあり、より好ましくは1.2乃至2.9質量部の範囲にある。なお、無機化合物の量を100質量部とした場合におけるエポキシ成分の量の上限値は、無機化合物の量を100質量部とした場合における添加剤の量の上限値である。
酸化防止剤は、無機化合物とベース樹脂との界面において生じ得るベース樹脂の劣化反応を抑制する役割を果たす。
酸化防止剤は、例えば、硫黄系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びフォスファイト系酸化防止剤の1以上である。
硫黄系酸化防止剤は、例えば、ジステアリルチオジプロピオネート及びジラウリルチオジプロピオネートの1以上である。
フェノール系酸化防止剤は、例えば、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]及び3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸-n-オクタデシルの1以上である。
フォスファイト系酸化防止剤は、例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイトである。
添加剤に占める酸化防止剤の割合は、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。添加剤に占める酸化防止剤の割合は、0質量%であってもよい。
エステルワックスは、溶融したワックス成分によりベース樹脂中での無機化合物の分散性を高めて、その二次凝集を抑制するとともに、潤滑作用により剪断発熱を抑えて、ベース樹脂の分解等を抑制する役割を果たす。
エステルワックスは、例えば、炭素原子数が12乃至22の範囲内にある長鎖脂肪酸と、価数が2乃至6の範囲内にある多価アルコールとをエステル結合させたものである。エステルワックスの融点は、例えば、50乃至100℃の範囲内にある。
エステルワックスの具体例としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリントリ12ヒドロキシステアレート及びペンタエリスリトールテトラステアレートが挙げられる。
添加剤に占めるエステルワックスの割合は、50質量%以下であることが好ましく、44質量%以下であることがより好ましい。添加剤に占めるエステルワックスの割合は、0質量%であってもよい。
この樹脂組成物は、例えば、無機化合物と添加剤とを混合し、この混合物とベース樹脂を混錬することにより得ることができる。
<2>第2実施形態
本発明の第2実施形態に係る樹脂組成物は、成形品の製造に使用可能な熱可塑性樹脂組成物である。第2実施形態に係る樹脂組成物は、ベース樹脂と複合材とからなる。ベース樹脂は、第1実施形態において説明したものと同様である。
複合材は、無機化合物と表面処理剤とを含んでいる。
無機化合物は、第1実施形態において説明したものと同様である。また、ベース樹脂の量を100質量部とした場合における複合材の量も、第1実施形態において説明した、無機化合物と添加剤との合計の量と同様である。
表面処理剤は、無機化合物上に設けられている。表面処理剤は、第1実施形態において説明した添加剤である。
表面処理剤及びその成分の量等は、第1実施形態において説明した添加剤及びその成分の量等と同様である。即ち、無機化合物の量を100質量部とした場合における表面処理剤の量は、第1実施形態において説明した、無機化合物の量を100質量部とした場合における添加剤の量と同様である。また、表面処理剤に占める各成分の割合は、第1実施形態において説明した、添加剤に占める各成分の割合と同様である。更に、無機化合物の量を100質量部とした場合におけるエポキシ成分の量は、第1実施形態において説明した量と同様である。
この樹脂組成物は、例えば、無機化合物と表面処理剤とを加熱混合し、この混合物をベース樹脂へ添加して、混錬することにより得ることができる。
<3>効果
第1又は第2実施形態に係る樹脂組成物を使用すると、以下に説明するように、強度に優れた成形品を安価に製造することができる。
成形品の製造に使用する熱可塑性樹脂組成物において無機化合物を使用する場合、無機化合物をシランカップリング剤又はステアリン酸で表面処理することがある。しかしながら、シランカップリング剤は高価であるため、表面処理剤としてシランカップリング剤を使用した場合、樹脂組成物も高価になる。他方、ステアリン酸は安価であるが、特に高温で成形する場合、表面処理剤としてステアリン酸を使用した樹脂組成物から製造した成形品は、表面処理剤としてシランカップリング剤を使用した樹脂組成物から製造した成形品に比べて性能が劣る傾向にある。
上記のエポキシ成分は、シランカップリング剤と比較して安価である。そして、上記のエポキシ成分は、耐熱性に優れるとともに、無機化合物と結合し得る。それ故、第1又は第2実施形態に係る樹脂組成物を使用すると、以下に説明するように、強度に優れた成形品を安価に製造することができる。
また、上記の通り、エポキシ成分は、エポキシ成分と無機化合物とを混合してから成形を完了するまでの期間内に、無機化合物の表面に存在している官能基と結合し得る。それ故、エポキシ成分は、表面処理剤又はその一部として無機化合物へ適用してもよく、また、添加剤又はその一部として樹脂組成物中に含有させてもよい。
以下に、本発明に関連して行った試験について記載する。
(1)試験A
(1.1)樹脂組成物の製造
サンプル1乃至25に係る樹脂組成物を、表1乃至表3に示す配合で製造した。
具体的には、ベース樹脂として、ポリカーボネートを使用した。樹脂組成物に占めるベース樹脂の割合は85質量%とした。
無機化合物としては、平均粒径が3.3μmのワラストナイトを使用した。無機化合物と表面処理剤又は添加剤との合計が樹脂組成物に占める割合は15質量%とした。
サンプル1乃至25に係る樹脂組成物では、無機化合物を基準とした表面処理剤又は添加剤の量、及び、表面処理剤又は添加剤の組成を、表1乃至表3に示すように変更した。ここで、表1乃至表3において、「表面処理剤/添加剤(質量%)」と表記した欄の数値は、表面処理剤又は添加剤に占める各成分の割合を表している。
サンプル1は、ベース樹脂と無機化合物とを混錬することにより製造した。サンプル2乃至25の他の一部は、無機化合物と表面処理剤とを加熱混合して、無機化合物を表面処理剤で被覆した後、この複合体とベース樹脂とを混錬することにより製造した。サンプル2乃至25の残りは、無機化合物と添加剤とを混合し、この混合物とベース樹脂を混錬することにより製造した。表1乃至表3では、表面処理剤又は添加剤を使用したサンプルについては、「処理」の欄に「表面処理」又は「添加」と表記して、製造方法を示している。
(1.2)評価
(1.2.1)シャルピー衝撃試験
二軸押出機を用いて、サンプル1乃至25に係る樹脂組成物の各々からペレットを製造した。次に、射出成形機を用いて、ペレットから成形品を製造した。
その後、各成形品から試験片を取得し、JIS K 7111:2012に準じて、シャルピー衝撃強度を測定した。試験条件は、JIS K7111-1/1eAとした。ハンマー秤量は2Jであった。
サンプル1乃至25について得られたシャルピー衝撃値を、以下の基準に従って評価した。
1:シャルピー衝撃値が1kJ/m以下。
2:シャルピー衝撃値が1.1乃至2kJ/m
3:シャルピー衝撃値が2.1乃至3kJ/m
4:シャルピー衝撃値が3.1乃至4kJ/m
5:シャルピー衝撃値が4.1kJ/m以上。
(1.2.2)曲げ試験
二軸押出機を用いて、サンプル1乃至25に係る樹脂組成物の各々からペレットを製造した。次に、射出成形機を用いて、ペレットから成形品を製造した。
その後、各成形品から試験片を取得し、JIS K 7171:2022に準じて、曲げ強度を測定した。試験片は、JIS K 7139:2009に規定されるタイプB1とした。試験速度は10mm/minとした。
サンプル1乃至25について得られた最大応力を、以下の基準に従って評価した。
1:最大応力が30MPa以下。
2:最大応力が30.1乃至60MPa。
3:最大応力が60.1乃至90MPa。
4:最大応力が90.1乃至120MPa。
5:最大応力が120.1MPa以上。
また、10個の試験片に占める、破壊を生じることなく降伏点に到達したものの割合を以下の基準へ参照して、曲げ及び引張による破壊の生じ難さの指標である降伏点到達を評価した。
1:割合が0/10乃至2/10。
2:割合が3/10乃至4/10。
3:割合が5/10乃至6/10。
4:割合が7/10乃至8/10。
5:割合が9/10乃至10/10。
(1.2.3)引張試験
二軸押出機を用いて、サンプル1乃至25に係る樹脂組成物の各々からペレットを製造した。次に、射出成形機を用いて、ペレットから成形品を製造した。
その後、各成形品から試験片を取得し、JIS K7161-1:2014に準じて、引張強度及び伸びを測定した。試験片は、JIS K7161-2:2014に規定される1A形とした。試験速度は20mm/minとした。
サンプル1乃至25について得られた最大応力を、以下の基準に従って評価した。
1:最大応力が15MPa以下。
2:最大応力が15.1乃至30MPa。
3:最大応力が30.1乃至45MPa。
4:最大応力が45.1乃至60MPa。
5:最大応力が60.1MPa以上。
また、サンプル1乃至25について得られた伸び率を以下の基準に従って評価した。
1:伸び率が3%以下。
2:伸び率が3.1乃至6%。
3:伸び率が6.1乃至9%。
4:伸び率が9.1乃至12%。
5:伸び率が12.1%以上。
(1.2.4)MVR(メルトボリュームフローレイト)試験
サンプル1乃至25に係る樹脂組成物の各々について、JIS K 7210-1:2014に準じて、MVR値を測定した。試験温度は250℃とし、試験荷重は30kgf/cmとした。このようにして得られたMVR値を以下の基準へ参照して、樹脂の劣化を評価した。
1:MVR値が300.1cm/10分以上。
2:MVR値が225.1乃至300cm/10分。
3:MVR値が150.1乃至225cm/10分。
4:MVR値が75.1乃至150cm/10分。
5:MVR値が75cm/10分以下。
(1.2.5)総合判定
各サンプルについて上記評点の合計値を算出し、この合計値を以下の基準へ参照して、総合判定を行った。
1:合計値が11以下。
2:合計値が12乃至17。
3:合計値が18乃至23。
4:合計値が24乃至29。
5:合計値が30以上。
以上の結果を、表1乃至表3に記載する。
サンプル1に係る樹脂組成物は、表面処理剤又は添加剤を使用せずに製造したものである。また、サンプル4及び16乃至25に係る樹脂組成物は、表面処理剤又は添加剤が、シランカップリング剤及びエポキシ成分を含んでいないか、又は、シランカップリング剤、エポキシ成分、酸化防止剤及びエステルワックス以外の成分を含んでいる。サンプル1、4及び16乃至25に係る樹脂組成物は、表1乃至表3に示すように、総合判定において3以下の評価を達成した。
これに対し、サンプル5乃至15に係る樹脂組成物は、表面処理剤又は添加剤が、エポキシ成分からなるか、又は、エポキシ成分と酸化防止剤及びエステルワックスの少なくとも一方とからなる。サンプル5乃至15に係る樹脂組成物は、表1乃至表3に示すように、シランカップリング剤を含んだサンプル2及び3に係る樹脂組成物と同様に、総合判定において4以上の評価を達成した。
(2)試験B
(2.1)樹脂組成物の製造
サンプル26乃至37に係る樹脂組成物を、表4及び表5に示す配合で製造した。
具体的には、ベース樹脂として、ポリカーボネートを使用した。樹脂組成物に占めるベース樹脂の割合は85質量%とした。
無機化合物としては、平均粒径が3.3μmのワラストナイトを使用した。無機化合物と表面処理剤又は添加剤との合計が樹脂組成物に占める割合は15質量%とした。
サンプル26乃至37に係る樹脂組成物では、無機化合物を基準とした表面処理剤又は添加剤の量を、表4及び表5に示すように変更した。
サンプル26乃至37の一部は、無機化合物と表面処理剤とを加熱混合して、無機化合物を表面処理剤で被覆した後、この複合体とベース樹脂とを混錬することにより製造した。サンプル26乃至37の残りは、無機化合物と添加剤とを混合し、この混合物とベース樹脂を混錬することにより製造した。表4及び表5では、表面処理剤又は添加剤を使用したサンプルについては、「処理」の欄に「表面処理」又は「添加」と表記して、製造方法を示している。
(2.2)評価
サンプル26乃至37に係る樹脂組成物の各々について、試験Aと同様の評価を行った。結果を、表4及び表5に記載する。なお、表4及び表5には、それぞれ、サンプル5及び6に係る樹脂組成物について得られた結果も併せて記載する。
サンプル5、6及び26乃至37に係る樹脂組成物は、表面処理剤又は添加剤が、エポキシ成分と酸化防止剤とエステルワックスとからなる。無機化合物を基準とした表面処理剤又は添加剤の量が0.5乃至10質量%の範囲内にある場合、即ち、100質量部の無機化合物に対して表面処理剤又は添加剤の量を0.5乃至11質量部の範囲内とした場合、総合判定において4以上の評価を達成した。これに対し、無機化合物を基準とした表面処理剤又は添加剤の量をより少なくしたか又はより多くした場合、総合判定における評価は3であった。
(3)試験C
(3.1)樹脂組成物の製造
サンプル38乃至49係る樹脂組成物を、表6及び表7に示す配合で製造した。
具体的には、ベース樹脂として、ポリカーボネートを使用した。樹脂組成物に占めるベース樹脂の割合は85質量%とした。
無機化合物としては、マイカ、タルク、炭酸カルシウム又はガラスファイバーを使用した。マイカの平均粒径は27μmであった。タルクの平均粒径は、4.0μmであった。炭酸カルシウムの平均粒径は1.8μmであった。ガラスファイバーは、平均繊維径が10μmであり、平均繊維長が4.5mmであった。無機化合物と表面処理剤又は添加剤との合計が樹脂組成物に占める割合は15質量%とした。
サンプル38乃至49に係る樹脂組成物では、無機化合物を基準とした表面処理剤又は添加剤の量、及び、表面処理剤又は添加剤の組成を、表6及び表7に示すように変更した。
サンプル38乃至49の一部は、ベース樹脂と無機化合物とを混錬することにより製造した。サンプル38乃至49の他の一部は、無機化合物と表面処理剤とを加熱混合して、無機化合物を表面処理剤で被覆した後、この複合体とベース樹脂とを混錬することにより製造した。サンプル38乃至49の残りは、無機化合物と添加剤とを混合し、この混合物とベース樹脂を混錬することにより製造した。表6及び表7では、表面処理剤又は添加剤を使用したサンプルについては、「処理」の欄に「表面処理」又は「添加」と表記して、製造方法を示している。
(3.2)評価
サンプル38乃至49に係る樹脂組成物の各々について、試験Aと同様の評価を行った。結果を、表6及び表7に記載する。
表6及び表7に示すように、無機化合物として、マイカ、タルク、炭酸カルシウム又はガラスファイバーを使用した場合、無機化合物としてワラストナイトを使用した場合と同様に、所定の組成を有する表面処理剤又は添加剤を使用することにより、総合判定において高い評価を達成できた。
以下に、当初の課題を解決するための手段に記載していた発明を付記する。
[1]
ベース樹脂と無機化合物と添加剤とからなり、
前記添加剤は、トリアジン骨格を有するエポキシ化合物及びエポキシ基含有アクリルポリマーの少なくとも一方からなるエポキシ成分であるか、又は、前記エポキシ成分と酸化防止剤及びエステルワックスの少なくとも一方との組み合わせであり、
前記ベース樹脂の量を100質量部とした場合における前記無機化合物と前記添加剤との合計の量は1乃至235質量部の範囲内にあり、
前記無機化合物の量を100質量部とした場合における前記添加剤の量は0.5乃至11質量部の範囲内にある樹脂組成物。
[2]
ベース樹脂と複合材とからなり、
前記複合材は、無機化合物と、前記無機化合物上に設けられた表面処理剤とを含み、
前記表面処理剤は、トリアジン骨格を有するエポキシ化合物及びエポキシ基含有アクリルポリマーの少なくとも一方からなるエポキシ成分であるか、又は、前記エポキシ成分と酸化防止剤及びエステルワックスの少なくとも一方との組み合わせであり、
前記ベース樹脂の量を100質量部とした場合における前記複合材の量は1乃至235質量部の範囲内にあり、
前記無機化合物の量を100質量部とした場合における前記表面処理剤の量は0.5乃至11質量部の範囲内にある樹脂組成物。
[3]
前記無機化合物の量を100質量部とした場合における前記エポキシ成分の量は0.1質量部以上である[1]又は[2]に係る樹脂組成物。
[4]
前記無機化合物は、ワラストナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム及びガラスからなる群より選ばれる1以上である[1]乃至[3]の何れかに係る樹脂組成物。

Claims (4)

  1. ベース樹脂と無機化合物と添加剤とからなり、
    前記ベース樹脂は、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド及びポリアセタールからなる群より選択される1以上であり、
    前記添加剤は、トリアジン骨格を有するエポキシ化合物(多官能アリル化合物を除く)及びエポキシ基含有アクリルポリマーの少なくとも一方からなるエポキシ成分であるか、又は、前記エポキシ成分と酸化防止剤及びエステルワックスの少なくとも一方との組み合わせであり、
    前記ベース樹脂の量を100質量部とした場合における前記無機化合物と前記添加剤との合計の量は1乃至235質量部の範囲内にあり、
    前記無機化合物の量を100質量部とした場合における前記添加剤の量は0.5乃至11質量部の範囲内にある樹脂組成物。
  2. ベース樹脂と複合材とからなり、
    前記ベース樹脂は、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド及びポリアセタールからなる群より選択される1以上であり、
    前記複合材は、無機化合物と、前記無機化合物上に設けられた表面処理剤とを含み、
    前記表面処理剤は、トリアジン骨格を有するエポキシ化合物及びエポキシ基含有アクリルポリマーの少なくとも一方からなるエポキシ成分であるか、又は、前記エポキシ成分と酸化防止剤及びエステルワックスの少なくとも一方との組み合わせであり、
    前記ベース樹脂の量を100質量部とした場合における前記複合材の量は1乃至235質量部の範囲内にあり、
    前記無機化合物の量を100質量部とした場合における前記表面処理剤の量は0.5乃至11質量部の範囲内にある樹脂組成物。
  3. 前記無機化合物の量を100質量部とした場合における前記エポキシ成分の量は0.1質量部以上である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記無機化合物は、ワラストナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム及びガラスからなる群より選ばれる1以上である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006104222A (ja) * 2004-09-30 2006-04-20 Toray Ind Inc ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物
WO2010084845A1 (ja) * 2009-01-20 2010-07-29 ユニチカ株式会社 樹脂組成物およびそれからなる成形体

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