JP7390514B1 - 河口近くの海底に土砂止め構造物を設置して砂浜や砂礫浜を回復させる工事方法 - Google Patents

河口近くの海底に土砂止め構造物を設置して砂浜や砂礫浜を回復させる工事方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 河川から排出されている土砂によって砂浜や砂礫浜が形成されている海岸では、河口近くの海底から海岸へと、そして続く岸辺へと順に移動していく土砂の量が減少しているので浸食が発生しています。それら土砂移動の最初の過程である河口近くの浅い海底の土砂量を増加させることによって、浸食された海岸を回復する工法です。【解決手段】 河川の河口の海側の海底に、堰堤状の土砂止め構造物を、河口を横断する方向にして設置固定し、河口近くの浅い海底に堆積する土砂の量を増加させます。これによって、河口近くの浅い海底から近くの浜辺、続く次の浜辺へと順に移動していく土砂の量を増加させ、砂浜や砂礫浜の回復を図ります。【選択図】図1

Description

本発明は、海岸の砂浜や砂礫浜が浸食される状況を防ぎ、それらの場所に堆積土砂を増加させ、砂浜や砂礫浜の回復を図る方法に関するものです。
近年、日本各地の海岸では、海岸線が浸食され従来の砂浜や砂礫浜などが失われている状況があります。それに対して、それらの浸食作用を防止し、かつて自然のままに存在していた砂浜や砂礫浜を回復させる工事が多く試みられて来ました。でも、残念なことに、適切な効果を生じさせている海岸はありません。それには理由があります。
それらの工法の多くは、海岸に砂浜や砂礫浜が形成され或いは浸食される過程を充分に理解しないまま、闇雲に対象療法的工事を重ねているだけだと考えられるのです。
特開 2022-146975 特表 2019-510907 特開 2009-195930
著者:東海大学海洋学部 海洋資源学科 佐藤 武 教授(当時) 刊行物名:地質ニュース508号、21~30頁 タイトル:「清水市三保における海岸浸食」-清水市折戸海岸の現況- 発行所:産総研地質調査総合センター 発行年月日:1996年12月 ページ:表紙、22頁、23頁 著者:第7回安倍川総合土砂管理計画 フォローアップ作業部会 刊行物名:「資料1」 5.新たな土砂管理指標(案)の検討 タイトル:(2)河口テラスの土砂管理指標:河口砂州・河口テラスの役割 発行所:国土交通省 静岡河川事務所 発行年月日:令和3年3月16日 ページ:表紙、53頁、54頁 URL:https://www.cbr.mlit.go.jp/shizukawa/river/dosyakanri/abe_flowup.html
上記の特許文献では、いずれも、海岸に堆積した土砂の流失を防ぐことを意図した工事方法を記載していますが、それだけでは海岸の浸食は防げません。砂浜や砂礫浜にある全ての土砂が、不定期に時間を掛けて堆積場所を移動している事の理解が欠けています。河口近くの海岸に砂浜や砂礫浜が形成されまた浸食されるのは、ただ単純に、波が海岸を形成或いは浸食しているのではなく、河川から排出された土砂が、海から陸地の浜辺を形成するまで移動する、連続した個別の現象が存在しているからです。
海岸にある全ての砂浜や砂礫浜が河川から排出された土砂によって形成されているのではありませんが、多くの場合で、近くの河川から排出された土砂によりそれらの海岸が形成されています。土砂を移動させているのは海岸に絶え間なく打ち寄せている波の力であり、それらの浜辺は波と土砂とが共に作り出している現象です。
以下、それらの現象と過程について、静岡の前浜と安倍川河口での長年の観察、及び研究者による発表を用いて説明します。
嵐や台風の時を別にして、海岸の波は岸辺近くの浅い場所に至った時に急に水中から盛り上がり立ち上がり、さらに岸辺に近付いて崩れます。ずっと遠方から空中に立ち上がったまま来るのではありません。岸辺から離れた場所から幾つも波が立ち上がっている遠浅の海岸は、それらの場所が浅いからです。
海上の風によって生じると言われる波は、水面だけの現象ではなく水中にまで続いていますが、波の大きさにより水面から水中までの深さが異なります。小さな波は岸辺の浅い場所に至って、水中の波の部分が水底に接触する事により、水面の部分の波が抵抗の無い空中に伸び上がります。
大きな波の場合では波の深さが深いので、より深い水底の場所から空中に立ち上がり、岸辺が浅くなるにつれて高く伸び続けて岸に向かいます。この時、水面を飛び出した波は抵抗が少ないのでそのまま進み、水底に接触し続けている底辺部分は水底の土砂を少しずつ移動させながら進んで速度が遅くなり、やがて、速度差が生じた波の空中部分は前方に崩れます。崩れた波は進んで来た速度のまま陸地にまで打ち上げています。
より小さな波の場合では、波が岸辺に接近して来ても水中の部分が短く、水底に接触すること無く空中に伸び上がる事なく、前方に崩れる事もないまま岸に到達します。海面が穏やかな時の小さな波の様子がそれです。
河川から海へと排出される土砂は、その時々ごとに河川の水量が異なっているので、その土砂量も異なります。日本の多くの河川では、流域に降雨があり、ある程度以上に河川の流量が増加した時に限って河口から土砂が排出されるので、通常の水位や渇水時には土砂の排出はほとんどありません。増水の規模はその時々の気象により異なりますから、土砂の排出量もその時々によって異なります。排出された土砂は、河川の流れのままに河口近くの浅い海底に堆積し、或いは、より沖側の深い海底に沈降していくものもあります。
河川から排出された土砂の内で河口近くの浅い海底に堆積した土砂は、増水が減少し始めた後、海から陸地へ向かって絶え間なく発生している波によって、土砂を排出した河口や近くの浜辺に打ち寄せられ或いは打ち上げられます。当然、その土砂の量はその時々で異なっています。
河口近くの浅い海底に土砂が堆積した後、波によって海岸に戻される現象は、別紙(非特許文献2)53頁に「河口テラス」の現象として文章とイラストで説明されています。
上記の過程で河口や近くの岸辺に打ち寄せられ打ち上げられた土砂は、海岸を斜めに打ち寄せる波の力により岸辺にそって次第に移動していき、移動した先の渚近くの浅い海底や陸地側に堆積します。
この現象は、その浜辺の土砂堆積状況に拘わらず、時々の気象と海洋の条件によって発生していますので、移動する土砂の量もその距離もその時々によって異なっています。その渚に大量の土砂がある時は続く浜辺に土砂の堆積をもたらし、土砂が少ない時にはその浜辺を浸食して続く浜辺に土砂を運び去っています。移動の途中に突堤などがある場合は、土砂の移動はその場所で止まり、その向こう側は浸食されるだけになります。
この波は、岸辺に対して平行では無く斜めに発生していますから、立ち上がりまた崩れ落ちる位置が波の片側から反対方向に向かっています。その様子は、サーフィンの動画等でよく見る波の場合と同じです。この波は、離れた遠方で発生した波やうねりが海岸にまで伝わり、岸辺近くで空中に立ち上がる事が多いようで、各地の海岸ごとにその発生原因がそれぞれに異なり、それぞれの場所でも常に発生しているのでは無いようです。
静岡の前浜では、駿河湾の遠方から発生した波がそのおおもととなるようで、それらの研究は別紙(非特許文献1)22~23頁の「2.三保(御穂)砂嘴の形成(自然の法則)」に記載されています。また、(非特許文献2)53頁では「河口テラス」に堆積した土砂が「沿岸漂砂」として移動して行く旨の記述とイラストがあります。
上記(0009)の波により堆積した、渚近くの海底や陸地側の土砂量が多い場所では、陸地に向かう大きな波が生じた時に陸地の奥まで土砂を移動させ、少ない場所では、陸地側の奥の土砂までも海へと引き戻します。
これら(0007)から(0010)に説明した現象が海岸に砂浜や砂礫浜を形成し、或いは浸食する過程です。これらの現象は、各地の海岸ごと、それぞれの気候条件によって個別に発生し、その頻度やその程度がその都度に異なり、全ての過程が同時に発生する機会はほとんど無いと考えられます。
上記4つの連続的な過程のうちのどれかが損なわれ或いは遮断されれば、河川から始まる土砂移動の連続性が失われ、海岸は浸食されます。ですから、海岸浸食の原因は幾つか考えられます。しかし、最大の原因は(0007)で説明した過程にあり、河口近くの海底に堆積する土砂量が減少した事であると考えられます。つまり、海岸浸食の原因は浜辺を形成する土砂の全体量が減少したことです。
上記4つの過程は、安倍川河口とそれに続く海岸を継続的に観察する事によって理解出来た事ですが、安倍川河口で生じていた幾つかの現象は興味深いものでした。
安倍川は、南アルプスから約50km南下して駿河湾の西岸に注いでいますが、その流れが急流である事だけでなく排出土砂量が多い事も特徴です。安倍川からの土砂が東約20km先の三保までの砂礫浜海岸を形成しているのです。
その河口では左右の堤防の間隔が約700mもあり、流下する水量に比して極めて広い河川敷が特徴です。河川敷は、最大で人の頭大の大きさの石やそれより小さな数多くの石や砂利や砂で覆われています。河川敷の全てが水に満たされるのは十数年に一度などの大増水の機会に限られ、普段は砂礫や砂の河川敷を100mに満たない幅で分流して流れ、冬の渇水期であれば、流れの幅は10m程でしかありません。また、通常時であれば、河口を横断して長い砂州が形成されている事が普通です。
安倍川で増水があると、河口を横断する砂州が破壊されて水流は真っすぐ海に向かい、増水が終了する頃になると100m以上先の沖側から幾重にも波が立ち上がります。そうなると、何人ものサーファーがやって来て、陸地に向かって長く続く波を楽しみます。その波は南側から立ち上がり北側へ順に崩れていく波である事が多いのです。この時でも、河口から離れた浜辺では、空中に立ち上がる波は岸辺近くでの一回しか生じません。つまり、この時、河口近くの海底には大量の土砂が堆積して遠浅な海底が形成されているのです。水深が深い駿河湾では岸辺に連続した波が生じる場所は限られていますから、サーファーの皆さんには、安倍川の増水は貴重な機会です。このような増水の機会は年間を通して幾度もあります。
でも河口近くの海底が遠浅状態であり続けるのは短い期間で終了します。長くて1週間程ではないでしょうか。これは、増水の規模やその期間に依ります。
増水が減少し始めると、河口を横断する砂州が形成され始めます。砂州は、右岸の南端から形成され始める事がほとんどで、時々は左岸側から形成される事もあります。砂州はその始めに急速にその距離を伸ばし、ある程度その距離が伸びてからはその形成の速度は遅くなります。海に向かう水流が、砂州によって妨げられて東に向かい、砂州が河口左岸より東に延びる事もあります。また、頻度は少ないのですが、河口を横断して形成中の砂州を破った水流が、沖に向かって、幾つか枝を伸ばした鳥趾状砂州を形成する事もあり、河口に形成される砂州はその時々によりその形状が異なっています。
増水が減少し始めると砂州の形成が始まるだけでなく、左岸の南端にも土砂が積積して沖に向かい広がり拡張します。小高い砂礫浜が形成される事もあります。しかし、左岸南端の拡大は長くは続きません。それらの土砂は、片側から崩れる波によって続く次の浜辺へ移動して行き、やがてそれらの岸辺も元の浜辺に戻ります。
河口を横断する砂州が伸びて左岸の岸辺が普通に戻った後の河口では、沖側から高い波が幾重にも生じる遠浅状態は無くなっていますが、河口を離れた浜辺に比べて浅い状態が保たれていることがあります。伸びた砂州に立って見ると、手前の岸辺で一回だけ大きく立ち上がる波のそれほど遠くない場所から、少しだけ立ちあがった小さな波が幾重にか生じている事があります。この光景は他の浜辺では見る事がありません。
以上は実際に河口を観察して知った安倍川河口の増水とその後の状況ですが、これらの過程の実際を計測して数値的に明らかにした調査があります。
(非特許文献2)は、令和3年3月16日静岡河川事務所発表「第7回安倍川総合土砂管理計画フォローアップ作業部会」「資料1」の53~54頁です。「安倍川総合土砂管理計画」は、安倍川上流から三保半島にまで至る土砂移動の実際を研究把握して、その管理を正しくして安倍川の治水と三保に至る静岡海岸の保全を図るプロジェクトで、「フォローアップ作業部会」はその実践部門です。
(a)53頁は、上述(0008)と(0009)で既に説明しています。
(b)54頁の図「河口部の測量断面の重ね合わせ」は、河口砂州と、河口テラス(遠浅の海底)の形成を7年間に亘り計測した成果で、安倍川から排出された土砂が河口近くの海底にどのように堆積し、どのように岸辺に戻されているかを数値をもって明らかにしています。この図では海方向への距離の起点は砂州より内側です。
この図で重要な事は三点です。第一、7年間の計測はいずれも11月であった事。第二、水深8mから+1mまでの水深を現す線が、砂州の内側と海底の深い場所でほぼ同様の傾斜と位置を示していること。第三、水深5.5mから水深0mまでの間では、年ごとに、砂州の高さと河口テラスの深さの変動が大きいこと。
太平洋岸のこの地域では冬の間の降雨量は少なく、3月から11月までは降雨量が多いのですが、最も多くなるのは5月から10月までの低気圧や台風の季節です。その期間中には大雨と増水が幾度もあり河口砂州の消滅や形成が何度も繰り返されます。11月の河口の計測は、変動が少ない時期であったと考えられます。
砂州の場所を除いて、水深8mから+1mまでの水底を平均すると、ほぼ同様の傾斜と位置になると想定される事からは、その傾斜がこの海岸の通常時の平均的な勾配を示していると考えられます。水深5.5mから水深3mまでの場所では水底の位置が年ごとに変動しているので、河口からの土砂の流入と波によって土砂が移動している事の影響を受けていると考えられます。
想定される平均的な線より上部に線がある年(H26、H29、H30)は、河口から排出された土砂が河口近くの海底に残っている状態を示し、増水の直後ならその線はより高い位置にあった事が考えられます。平均的な線より下部に線がある年(H27、H30)は、それらの線の深さにあった土砂が移動した事を示し、それだけの深さに及ぶ波が発生した事を現わしていると考えられ、その線より上にあった堆積土砂が岸辺に向かって移動したのです。
H27では線が最も深く、砂州の土砂量も最大である事にも注目です。
この図は、河口の砂州が、河口近くの海底から岸辺に戻された土砂によって形成された事を明確に現わしています。同様に(0013)に記述した河口左岸南端に集積した土砂も、河口近くの海底から岸辺に戻された土砂によって集積した事も示していると考えます。
なお、R1年の線が河口を横断する砂州の状態を示すことなく、沖側よりも岸辺近くで深くなっている事は、この時期に、鳥趾状の砂州が枝分かれして形成され、その一部を横断して計測した結果を示していると考えられます。
「河口部の測量断面の重ね合わせ」図で、水深6mより深い場所の水深を示す傾斜線がほぼ同じであることは、河口から排出された土砂がこれより深い場所には堆積を重ねない事と、河口近くの海底から生じる波がこれよりも深い場所に影響を与えない事も意味していると考えます。つまり、これよりも深い場所に達した土砂は、その場に堆積することなく海岸に戻される事もなく、駿河湾の深い水底に沈降して行ったのです。それらの場所は、海底にある崖の状態ではないでしょうか。
この図では、H27の11月の計測以前に発生した最大の波は水深5.5m程から発生したと判断できますが、その他の線の状況やその他の時期の気候などを考えると、安倍川河口近くの海底の土砂を岸辺に向けて運ぶ波は、その最大時において水深約6m付近から立ち上がり始めている事が考えられます。
安倍川の河口では、増水時に水深6mより浅い海底に堆積する土砂の量が、以前より減少しています。それは、河川の流れの状況が、40~50年前とは大きく異なって来たからです。自然のままで砂浜や砂礫浜があった時代に比べて、増水時の河川水量が急激に増加し急激に減少するようになり、その期間も短縮しました。それは、上流中流での河川工事の拡大により河川の水流の様相が変化したからです。
河川工事は、数多くの石や岩が自然に形成していた秩序を破壊しました。例えば、数多くの砂防堰堤が、上流側からの大きな石や岩の流下を無くしたので、それらの石や岩が急激な水流の発生を防いでいた自然の仕組みを失わせました。多くの岸辺に連続したコンクリート護岸を設置したので、とどまるはずの岸辺の石や岩が増水の度に流下して、水流を遅くし水量の変化を穏やかにする効果を失わせました。また、多くの淵が小砂利や砂に埋もれて小さく浅くなり、流れを遅延させる効果を失いました。それらの工事は、自然がもともと保持していた治水的機能を失わせて、急激な増水と急激な減水の河川に変えました。
それらは安倍川に限った状況ではなく、全国の河川で共通しています。ダムの場合では、流下する土砂量自体が減少するだけでなく、ダムからの放流によって自然ではあり得ないほどの急激な増水と急激な減水が発生しています。
日本各地で海岸が浸食されている最大の原因は、不定期に移動して砂浜や砂礫浜を形成していた土砂の全体量が減少したからであり、海岸形成の最初の過程で、河口の浅い海底に堆積する土砂量が以前より減少したことにあると考えます。
貯水式ダムが無い安倍川の場合では、上流中流に数多くの河川工事が行われ、河川の流れを急激な増水と急激な減水に変え、増水の期間も短くしました。大陸に比べ河川の距離が短い日本では、上流中流の影響は直ちに河口にまで及び、水流と共に流下する土砂の状況も変えました。
河川の急激な増水と急激な減水によって、河口近くの浅い海底への土砂の堆積量が減少した事は、むずかしく考える必要が無い出来事です。例えば、庭にホースで水を撒く時の事を考えて見ます。水道の蛇口をひねれば水が出てきますが、その時には水の勢いが少ないので水はすぐ近くに落ちます。さらに蛇口をひねれば水は勢いを得て遠くにまで届きます。ホースの出口を抑えたりして絞り込めば、より勢いを得た水がもっと遠くにまで届きます。同じことが河川とその河口で生じています。
河口近くの海底に堆積する土砂は河川の水流によって運ばれています。河川の水流が弱ければ海岸近くに堆積しますが、水流が強ければ遠くの海底深くにまで届き、増水の期間が短くなればその傾向は強くなります。現在の日本のほとんどの河川では、昔に比べ、降雨量がそれほど多く無くても水流が急激に増加し、急激に減少するようになりました。流下する水量の全体量が同じであっても、急激に流下すればより遠くに至るようになります。
上述までの現象を総合すると、河口近くの浅い海底に堆積した土砂だけが陸地に向かって移動するのであり、それを可能にするのは、水底に接触する波だけであり、大きく高い波である程に多くの土砂を移動させる事になります。
問題は河口近くの浅い海底に堆積する土砂の量が減少している事にあります。河口の沖側から岸辺に向かう波の大きさには限度があります。ほとんどの海岸でそれぞれの場所で通常発生する波の大きさ高さには限度があり、安倍川河口付近の場合では年間を通しての最大の波の高さは6m前後であると言われています。そして、上述(0014)(0015)では、その波が立ち上がり始める海底の深さが水深6m程度である事が明らかになっています。
安倍川河口やそれに続く前浜海岸では、それ以上の高さの波は津波などの場合を除けば発生しないようです。これらの状況は、日本各地の海岸で海底の地形やそれらが面する海洋の条件によって異なっています。外洋に面した海岸の波は大きく、小さな湾などに面した海岸の波は大きくはありません。
河口の浅い海底に堆積した土砂を岸辺に戻す波には他にも問題があります。上記した最大の高さの波だけが土砂を移動させるのではありません。それよりも小さな波であっても土砂を岸辺に戻しています。でも、そのためには浅い状態の土砂堆積がより多く必要です。また、浅い海底に堆積した土砂を岸辺に戻してしまえば、その後にいくら同様の波が発生しても、再び増水が発生して土砂を堆積させない限り、岸辺に土砂を戻す事は出来ません。
本願発明はこれらの問題の解決を図る発明です。そして、急激な増水と急激な減水が生じている河川であっても、近くの海岸の回復を可能にする方法です。
波の力によって岸辺に戻されるはずの、河口近くの浅い海底に堆積する土砂の量を自然の力で増加させる事は容易ではありません。先ず、近年、河川で生じている急激な増水や急激な減水を改善する必要があり、上流中流で実施されているほとんどの河川工事を改善しなければなりません。それにはそれらを設置したのに近しい年月が必要になる事でしょう。
また、それらを改善したとしても、実際の河川の状況が変化するためにはさらに年月が必要になります。以前に竣工した河川工事は、工事の後に直ぐに急激な増水と急激な減水を生じさせたのではありません。それらは年月を掛けてかつての自然の河川を変え、不都合を増大して来たのです。同様に、新たな工事を追加しても直ぐに急激な増水と急激な減水が改善される可能性は少ないと言えます。
本願発明は、上記の課題を河口近くの海底において解決する事を意図しています。問題は河口近くの浅い海底への堆積土砂量が少ない事にあります。ですからそれを増加させれば良い事になります。発生する波の高さを変えたり、その回数を増やしたりする事は出来ません。増水の期間を延ばす事も出来ません。そして、上述したように、河口近くの浅い海底には今まで知られることが無かった状況がありますから、それにも対応させる必要があります。
河口から排出されて深い海底に流れ出し沈降していく土砂を浅い海底にとどめるために、堰堤状の土砂止め構造物を、河口を横断する方向にして河口近くの海底に設置し固定します。その位置は、その付近で通常時に発生する最も大きな波が立ち上がり始める場所よりも沖側の深い位置にします。そして、土砂止め構造物の上端を、その付近で通常時に発生する最も大きな波が立ち上がり始める場所の深さと同じまで土砂を堆積させる高さ、あるいは、それより低い高さにします。
つまり、土砂止め構造物によって、河口の浅い海底の土砂堆積面積を拡大させ、同時に、最も大きな波の発生も妨げない状況を実現します。その後に増水が発生すれば、これまで海底深くに沈降していた土砂も浅い海底にとどまり続け、その後は前述した幾つかの過程が自然に砂浜や砂礫浜を形成します。
設置する構造物の設置条件は単純で、簡単な構造であると言えますが、その位置と高さが重要です。それには事前の充分な調査が必要で、安倍川河口の場合のように継続的調査による海底の状態の把握が重要です。
土砂堆積量をより多く増加させようとして構造物の位置を余りに離れた場所に設置すれば、海底からより高い高さが必要になり費用の増大化を招きます。また構造物の高さを上記の高さよりも高くすれば、最大時の波による土砂移動を妨げ、また、堰堤状構造物を乗り越えて沈降して行く土砂量が減少する可能性も生じますから、構造物の基礎が脅かされます。
上流中流の河川工事を改善しないままでも、海岸の砂浜や砂礫浜の浸食を防ぎ、以前の浜辺を取り戻す事が可能になります。上流中流の河川工事の改善の場合では海岸が回復するまでに長い年月が必要になりますが、この工事では工事完了後の増水によって直ちに海岸の回復が始まる事が期待できます。
本願発明の堰堤状土砂止め構造物を河口近くの海底に設置した例の簡易的平面図です。 本願発明の堰堤状土砂止め構造物を河口近くの海底に設置した場合の簡易的断面図です。この図は、土砂止め構造物の設置場所とその高さについて理解を得るための概念図で、岸辺からの距離や水深の縮尺は実際とは異なります。
本発明の方法による土砂止め構造物を河口海側の海底に設置した例として、(非特許文献2)の54頁の図を元にして作成した(図2)の簡易的断面図を説明します。安倍川の場合では河口からの排出土砂量が膨大であるため河口を横断して砂州が形成されていますが、同様の砂州が形成されないその他の河川の場合でも、河口の砂州の箇所を除いてほぼ同じ考え方が適応できると考えます。
13で太く示した「この海岸の通常の平均的な勾配を示していると考えられる傾斜面」の線は、河口からの土砂排出による堆積が無く、波による土砂の移動も無かった場合に形成されると考えられる斜面であり、砂だけが堆積している海岸の場合ではもっと穏やかな傾斜になる事が考えられます。
14aは、河口の沖側から生じる最大の波によって土砂が移動した後の海底の位置を示し、14bは、土砂止め構造設置の後に、最大の波によって土砂が移動した後の海底の位置を示しています。14a、14bの連続線は、生じる波の大きさによりその位置が変わり、波が小さな場合では砂州の海側に続く線に沿って線の全体が左上方に平行移動します。
15は、土砂止め構造設置以前に、河口から排出された土砂が堆積している海底の位置を示し、16は、土砂止め構造物設置の後に土砂が堆積した新たな海底の位置を示しています。新たな堆積土砂は、16の線より上方に覆い被さって堆積する可能性があると考えられますが、実際の計測はありませんので土砂堆積量を控え目にしました。
31は、その付近での最大の波が発生し始める海底の箇所であり、安倍川河口ではその実際が数値として明確になっています。32は、31の沖側であり、堰堤状土砂止め構造物とその設置場所です。
土砂止め構造物設置以前に岸辺に移動する土砂の最大量は(21+22)であり、それに対して、砂止め構造設置以後では(23a)の土砂量が増加する事が考えられます。
河口近くの浅い海底に、何時でも最大の波が発生するとは限りませんが、最大の波より小さな波の時であっても岸辺に戻す土砂量は間違いなく増加します。したがって、土砂止め構造物設置後であれば浅い海底に堆積する土砂量が年間を通して常に増加する事になり、海岸に供給される土砂の量も間違いなく増加します。
図1の4、及び図2の32で記載した堰堤状土砂止め構造物は、作図の都合上、コンクリートなどによる連続的構造物を想定していますが、実際には全くの連続である必要は無く、コンクリートである必要もありません。その場を移動する事無く、目的を果たす構造物であれば良いのです。
1 水流と土砂が排出される方向
2 陸地
3 河口テラス(遠浅の海底)
4 設置した堰堤状の土砂止め構造物
11 海水面
12 河口を横断して形成される砂州
13 この海岸の通常の平均的な勾配を示していると考えられる傾斜面
14a最大の波によって土砂が移動した後の海底の位置
14b土砂止め構造設置の後、最大の波によって土砂が移動した後の海底の位置
15 構造物設置前に河川から排出され堆積した土砂による海底の位置
16 土砂止め構造物設置の後に堆積した新たな海底の位置
21 最大の波によって移動した土砂
22 構造物設置前に河川から排出され堆積した土砂
23a土砂止め構造設置の後、堆積した土砂のうちで岸へ移動する土砂
23b土砂止め構造設置の後、堆積した土砂のうちで移動しないで残る土砂
31 その付近での最大の波が発生する海底の箇所
32 堰堤状の土砂止め構造物
33 その付近での最大の波が発生し始める水面の位置

Claims (1)

  1. 砂や砂礫が海に排出される河川の河口近くの海底で、年間を通して最大の高さの波が発生し立ち上がり海底の土砂を移動させ始める地点より沖側の離れた場所に、上記の波が立ち上がり始める地点の深さと等しい、またはそれより深い、深さの上端を持つ堰堤状の土砂止め構造物を、河口を横断する方向にして設置固定し、より深くへ落下する土砂を押し止め、波によって岸辺に至る土砂量を増大させ、もって岸辺の砂浜や砂礫浜の形成を回復させる工事方法。
JP2023071876A 2023-04-07 2023-04-07 河口近くの海底に土砂止め構造物を設置して砂浜や砂礫浜を回復させる工事方法 Active JP7390514B1 (ja)

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