JP7386801B2 - 熱電変換モジュール用中間体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱電変換モジュール用中間体の製造方法に関する。
従来から、エネルギーの有効利用手段の一つとして、ゼーベック効果やペルチェ効果などの熱電効果を有する熱電変換モジュールにより、熱エネルギーと電気エネルギーとを直接相互変換するようにした装置がある。
前記熱電変換モジュールとして、いわゆるインプレーン型の熱電変換素子の構成が知られている。インプレーン型は、通常、P型熱電素子とN型熱電素子とが支持基板の面内方向に交互に設けられ、例えば、両熱電素子間の接合部の下部同士、又は、上部同士が電極を介在し直列に接続することで構成されている。
このような中、熱電変換モジュールの屈曲性向上、薄型化、熱電性能の向上及び材料コストの削減等、実用化に際し様々な要求がある。これらの要求を満足するために、例えば、熱電変換モジュールに用いる支持基板として、ポリイミド等の樹脂基板が耐熱性及び屈曲性の観点から使用されている。また、N型の熱電半導体材料、P型の熱電半導体材料としては、熱電性能の観点から、ビスマステルライド系材料の薄膜が用いられ、前記電極としては、熱伝導率が高く、低抵抗のCu電極が用いられている。(特許文献1、2等)。
特開2010-192764公報 特開2012-204452公報
しかしながら、前述したように、熱電変換モジュールの屈曲性向上、薄型化及び熱電性能の向上等の要求の中で、熱電半導体組成物から形成される熱電変換材料に含まれる熱電半導体材料として、ビスマステルライド系の材料を用い、電極としてCu電極やNi電極、支持基板としてポリイミド等の樹脂を用いた場合、例えば、400℃等の高温度下で熱電変換モジュールをアニール処理する工程で、熱電変換材料に含まれる熱電半導体材料とCu電極やNi電極との接合部において、拡散により合金層が形成され、結果的に電極に割れや剥がれが生じ、熱電変換材料とCu電極間の電気抵抗値が増大してしまい、熱電性能が低下する等の新たな問題が発生する懸念があることが、本発明者らの検討により見出された。これに加え、支持基板としてポリイミド等の耐熱性樹脂を用いた基板を使用する場合であっても、用いるP型熱電素子層やN型熱電素子層に含有する熱電半導体材料に依存する、最適なアニール温度(すなわち、熱電性能を最大限に発揮し得るプロセス処理温度)まで耐熱性を維持することができない場合があり、この理由で前記熱電半導体材料に対し最適なアニール処理ができないことがあった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、支持基板が不要であり、電極との接合部を有さない形態で熱電半導体材料のアニール処理を可能にし、最適なアニール温度で熱電半導体材料のアニールが可能となる熱電変換モジュール用中間体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、基板上にP型熱電素子層及びN型熱電素子層の所定のパターン層を形成した後、それらを最適なアニール温度でアニールを行い、封止剤層を積層した後、得られたP型熱電素子層及びN型熱電素子層並びに封止剤層からなる積層体を、前記基板から剥離することで、従来の支持基板を不要とし、かつP型熱電素子層及びN型熱電素子層が電極との接合部を有さない形態でアニール処理された、熱電変換モジュール用中間体が得られる製造方法を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の(1)~(9)を提供するものである。
(1)熱電半導体組成物からなるP型熱電素子層及びN型熱電素子層を含む、熱電変換モジュール用中間体の製造方法であって、(A)基板上に前記P型熱電素子層及びN型熱電素子層を形成する工程、(B)前記(A)の工程で得られた前記P型熱電素子層及びN型熱電素子層をアニール処理する工程、(C)前記(B)の工程で得られたアニール処理後のP型熱電素子層及びN型熱電素子層上に硬化性樹脂、又はその硬化物を含む封止材層を形成する工程、及び(D)前記(B)及び(C)の工程で得られたP型熱電素子層及びN型熱電素子層、並びに前記封止材層を前記基板から剥離する工程、を含む、熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
(2)アニール処理された前記P型熱電素子層及びN型熱電素子層上に、さらに電極を形成する工程を含む、上記(1)の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
(3)前記硬化性樹脂が、熱硬化性樹脂、又はエネルギー線硬化性樹脂である、上記(1)又は(2)に記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
(4)前記硬化性樹脂が、エポキシ系樹脂である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
(5)前記基板が、ガラス基板である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
(6)前記熱電半導体組成物は熱電半導体材料を含んでおり、該熱電半導体材料がビスマス-テルル系熱電半導体材料、テルライド系熱電半導体材料、アンチモン-テルル系熱電半導体材料、又はビスマスセレナイド系熱電半導体材料である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
(7)前記熱電半導体組成物が、さらに、耐熱性樹脂、並びにイオン液体及び/又は無機イオン性化合物を含む、上記(1)~(6)のいずれかに記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
(8)前記耐熱性樹脂が、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はエポキシ樹脂である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
(9)前記アニール処理の温度が、250~600℃で行われる、上記(1)~(8)のいずれかに記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
本発明によれば、支持基板が不要であり、電極との接合部を有さない形態で熱電半導体材料のアニール処理を可能にし、最適なアニール温度で熱電半導体材料のアニールが可能となる熱電変換モジュール用中間体の製造方法を提供することができる。
本発明の、熱電半導体組成物からなるP型熱電素子層及びN型熱電素子層を含む熱電変換モジュール用中間体の製造方法に従った工程の一例を工程順に示す説明図である。 熱電変換モジュール用中間体を用いた熱電変換モジュールの実施態様を示す断面構成図である。
[熱電変換モジュール用中間体の製造方法]
本発明の熱電変換モジュール用中間体の製造方法は、熱電半導体組成物からなるP型熱電素子層及びN型熱電素子層を含む、熱電変換モジュール用中間体の製造方法であって、(A)基板上に前記P型熱電素子層及びN型熱電素子層を形成する工程、(B)前記(A)の工程で得られた前記P型熱電素子層及びN型熱電素子層をアニール処理する工程、(C)前記(B)の工程で得られたアニール処理後のP型熱電素子層及びN型熱電素子層上に硬化性樹脂、又はその硬化物を含む封止材層を形成する工程、及び(D)前記(B)及び(C)の工程で得られたP型熱電素子層及びN型熱電素子層、並びに前記封止材層を前記基板から剥離する工程、を含むことを特徴とする。
本発明の熱電変換モジュール用中間体の製造方法においては、例えば、ガラス等の高い耐熱温度を有する基板上にP型熱電素子層及びN型熱電素子層を形成後、P型熱電素子層及びN型熱電素子層のそれぞれの熱電素子層に対し独立に最適なアニール処理温度が適用できるため、それぞれの熱電素子層が本来有する熱電性能を最大限に発揮させることができる。
同時に、アニール処理後のP型熱電素子層及びN型熱電素子層上に硬化性樹脂を含む封止材層(以下、「熱硬化性封止シート」ということがある。)を形成し、これらを一体で、前記基板から剥離することで、アニール処理後のP型熱電素子層及びN型熱電素子層を前記封止材層に転写することができ、熱電変換モジュール用中間体、ひいては熱電変換モジュールを構成する部材であった支持基板としての基板が不要となり、薄型、軽量化、さらに製造にかかる材料コスト減に繋げることができる。
図1は、本発明の、熱電半導体組成物からなるP型熱電素子層及びN型熱電素子層を含む、熱電変換モジュール用中間体の製造方法に従った工程の一例を工程順に示す説明図であり、(a)は基板1上に犠牲層2を形成した後、N型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3bを形成した後の断面図であり、(b)は(a)で得られたN型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3bの面に硬化性樹脂を含む封止材層5Aを形成した後の断面図であり、(c)はN型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3bを犠牲層2を介在し基板1から剥離してN型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3bを封止材層5Aに転写し、熱電変換モジュール用中間体を形成した後の断面図(熱電変換モジュール用中間体の基本構成)である。
(c’)は(a)の構成において、さらにN型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3bの接合部に電極4を形成した工程を経た場合の、熱電変換モジュール用中間体の一例を示す断面図である。
(c’’)は(c)で得られた熱電変換モジュール用中間体のN型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3bの露出した接合部に電極4を形成した場合の、熱電変換モジュール用中間体の他の一例を示す断面図である。
(A)熱電素子層形成工程
本発明の熱電変換モジュール用中間体の製造方法においては、熱電素子層形成工程を含む。
熱電素子層形成工程は、基板上に熱電素子層を形成する工程であり、例えば、前述した図1(a)において、基板1上にN型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3bを形成する工程である。
本発明に用いる熱電素子層(以下、「熱電素子層の薄膜」ということがある。)は、熱電半導体材料を含む熱電半導体組成物からなる。熱電素子層の形状安定性の観点から、熱電半導体材料には耐熱性樹脂を含むことが好ましく、熱電性能の観点から、より好ましくは、熱電半導体材料(以下、「熱電半導体微粒子」ということがある。)、耐熱性樹脂、並びにイオン液体及び/又は無機イオン性化合物を含む熱電半導体組成物からなる。
(熱電半導体材料)
本発明に用いる熱電半導体材料、すなわち、P型熱電素子層、N型熱電素子層に含まれる熱電半導体材料としては、温度差を付与することにより、熱起電力を発生させることができる材料であれば特に制限されず、例えば、P型ビスマステルライド、N型ビスマステルライド等のビスマス-テルル系熱電半導体材料;GeTe、PbTe等のテルライド系熱電半導体材料;アンチモン-テルル系熱電半導体材料;ZnSb、ZnSb2、ZnSb等の亜鉛-アンチモン系熱電半導体材料;SiGe等のシリコン-ゲルマニウム系熱電半導体材料;BiSe等のビスマスセレナイド系熱電半導体材料;β―FeSi、CrSi、MnSi1.73、MgSi等のシリサイド系熱電半導体材料;酸化物系熱電半導体材料;FeVAl、FeVAlSi、FeVTiAl等のホイスラー材料、TiS等の硫化物系熱電半導体材料等が用いられる。
これらの中で、ビスマス-テルル系熱電半導体材料、テルライド系熱電半導体材料、アンチモン-テルル系熱電半導体材料、又はビスマスセレナイド系熱電半導体材料が好ましい。
さらに、熱電性能の観点から、P型ビスマステルライド又はN型ビスマステルライド等のビスマス-テルル系熱電半導体材料であることがより好ましい。
前記P型ビスマステルライドは、キャリアが正孔で、ゼーベック係数が正値であり、例えば、BiTeSb2-Xで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Xは、好ましくは0<X≦0.8であり、より好ましくは0.4≦X≦0.6である。Xが0より大きく0.8以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、P型熱電素子としての特性が維持されるので好ましい。
また、前記N型ビスマステルライドは、キャリアが電子で、ゼーベック係数が負値であり、例えば、BiTe3-YSeで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Yは、好ましくは0≦Y≦3(Y=0の時:BiTe)であり、より好ましくは0<Y≦2.7である。Yが0以上3以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、N型熱電素子としての特性が維持されるので好ましい。
熱電半導体組成物に用いる熱電半導体微粒子は、前述した熱電半導体材料を、微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕したものである。
熱電半導体微粒子の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは、30~99質量%である。より好ましくは、50~96質量%であり、さらに好ましくは、70~95質量%である。熱電半導体微粒子の配合量が、上記範囲内であれば、ゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が大きく、また電気伝導率の低下が抑制され、熱伝導率のみが低下するため高い熱電性能を示すとともに、十分な皮膜強度、屈曲性を有する膜が得られ好ましい。
熱電半導体微粒子の平均粒径は、好ましくは、10nm~200μm、より好ましくは、10nm~30μm、さらに好ましくは、50nm~10μm、特に好ましくは、1~6μmである。上記範囲内であれば、均一分散が容易になり、電気伝導率を高くすることができる。
前記熱電半導体材料を粉砕して熱電半導体微粒子を得る方法は特に限定されず、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、ローラーミル等の公知の微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕すればよい。
なお、熱電半導体微粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分析装置(Malvern社製、マスターサイザー3000)にて測定することにより得られ、粒径分布の中央値とした。
また、熱電半導体微粒子は、事前に熱処理されたものであることが好ましい(ここでいう「熱処理」とは本発明でいうアニール処理工程で行う「アニール処理」とは異なる)。熱処理を行うことにより、熱電半導体微粒子は、結晶性が向上し、さらに、熱電半導体微粒子の表面酸化膜が除去されるため、熱電変換材料のゼーベック係数又はペルチェ係数が増大し、熱電性能指数をさらに向上させることができる。熱処理は、特に限定されないが、熱電半導体組成物を調製する前に、熱電半導体微粒子に悪影響を及ぼすことがないように、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、同じく水素等の還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行うことが好ましく、不活性ガス及び還元ガスの混合ガス雰囲気下で行うことがより好ましい。具体的な温度条件は、用いる熱電半導体微粒子に依存するが、通常、微粒子の融点以下の温度で、かつ100~1500℃で、数分~数十時間行うことが好ましい。
(耐熱性樹脂)
本発明に用いる熱電半導体組成物には、熱電半導体材料を高温度でアニール処理を行う観点から、耐熱性樹脂が好ましく用いられる。熱電半導体材料(熱電半導体微粒子)間のバインダーとして働き、熱電変換モジュールの屈曲性を高めることができるとともに、塗布等による薄膜の形成が容易になる。該耐熱性樹脂は、特に制限されるものではないが、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理等により熱電半導体微粒子を結晶成長させる際に、樹脂としての機械的強度及び熱伝導率等の諸物性が損なわれず維持される耐熱性樹脂が好ましい。
前記耐熱性樹脂は、耐熱性がより高く、且つ薄膜中の熱電半導体微粒子の結晶成長に悪影響を及ぼさないという点から、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、屈曲性に優れるという点からポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂がより好ましい。後述する基板として、ポリイミドフィルムを用いた場合、該ポリイミドフィルムとの密着性などの点から、耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂がより好ましい。なお、本発明においてポリイミド樹脂とは、ポリイミド及びその前駆体を総称する。
前記耐熱性樹脂は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、屈曲性を維持することができる。
また、前記耐熱性樹脂は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、熱電素子層の屈曲性を維持することができる。
前記耐熱性樹脂の前記熱電半導体組成物中の配合量は、0.1~40質量%、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは、1~20質量%、さらに好ましくは2~15質量%である。前記耐熱性樹脂の配合量が、上記範囲内であると、熱電半導体材料のバインダーとし機能し、薄膜の形成がしやすくなり、しかも高い熱電性能と皮膜強度が両立した膜が得られる。
(イオン液体)
本発明で用いるイオン液体は、カチオンとアニオンとを組み合わせてなる溶融塩であり、-50~500℃の温度領域のいずれかの温度領域において、液体で存在し得る塩をいう。イオン液体は、蒸気圧が極めて低く不揮発性であること、優れた熱安定性及び電気化学安定性を有していること、粘度が低いこと、かつイオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。また、イオン液体は、非プロトン性のイオン構造に基づく高い極性を示し、耐熱性樹脂との相溶性に優れるため、熱電素子層の電気伝導率を均一にすることができる。
イオン液体は、公知または市販のものが使用できる。例えば、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、イミダゾリウム等の窒素含有環状カチオン化合物及びそれらの誘導体;テトラアルキルアンモニウムのアミン系カチオン及びそれらの誘導体;ホスホニウム、トリアルキルホスホニウム、テトラアルキルホスホニウム等のホスフィン系カチオン及びそれらの誘導体;リチウムカチオン及びその誘導体等のカチオン成分と、Cl、AlCl 、AlCl 、ClO 等の塩化物イオン、Br等の臭化物イオン、I等のヨウ化物イオン、BF 、PF 等のフッ化物イオン、F(HF) 等のハロゲン化物アニオン、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、F(HF)n、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
上記のイオン液体の中で、高温安定性、熱電半導体微粒子及び樹脂との相溶性、熱電半導体微粒子間隙の電気伝導率の低下抑制等の観点から、イオン液体のカチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。イオン液体のアニオン成分が、ハロゲン化物アニオンを含むことが好ましく、Cl、Br及びIから選ばれる少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
カチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体の具体的な例として、4-メチル-ブチルピリジニウムクロライド、3-メチル-ブチルピリジニウムクロライド、4-メチル-ヘキシルピリジニウムクロライド、3-メチル-ヘキシルピリジニウムクロライド、4-メチル-オクチルピリジニウムクロライド、3-メチル-オクチルピリジニウムクロライド、3、4-ジメチル-ブチルピリジニウムクロライド、3、5-ジメチル-ブチルピリジニウムクロライド、4-メチル-ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、4-メチル-ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヨージド等が挙げられる。この中で、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヨージドが好ましい。
また、カチオン成分が、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体の具体的な例として、[1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]、[1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレイト]、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-メチル-3-ブチルイミダゾリウムメチルスルフェート、1、3-ジブチルイミダゾリウムメチルスルフェート等が挙げられる。この中で、[1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]、[1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレイト]が好ましい。
上記のイオン液体は、電気伝導率が10-7S/cm以上であることが好ましく、10-6S/cm以上であることがより好ましい。電気伝導率が上記の範囲であれば、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。
また、上記のイオン液体は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
また、上記のイオン液体は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
前記イオン液体の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1.0~20質量%である。前記イオン液体の配合量が、上記の範囲内であれば、電気伝導率の低下が効果的に抑制され、高い熱電性能を有する膜が得られる。
(無機イオン性化合物)
本発明で用いる無機イオン性化合物は、少なくともカチオンとアニオンから構成される化合物である。無機イオン性化合物は室温において固体であり、400~900℃の温度領域のいずれかの温度に融点を有し、イオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を抑制することができる。
カチオンとしては、金属カチオンを用いる。
金属カチオンとしては、例えば、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、典型金属カチオン及び遷移金属カチオンが挙げられ、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンがより好ましい。
アルカリ金属カチオンとしては、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs及びFr等が挙げられる。
アルカリ土類金属カチオンとしては、例えば、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+等が挙げられる。
アニオンとしては、例えば、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO 、NO 、ClO、ClO 、ClO 、ClO 、CrO 2-、HSO 、SCN、BF 、PF 等が挙げられる。
無機イオン性化合物は、公知または市販のものが使用できる。例えば、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、又はリチウムカチオン等のカチオン成分と、Cl、AlCl 、AlCl 、ClO 等の塩化物イオン、Br等の臭化物イオン、I等のヨウ化物イオン、BF 、PF 等のフッ化物イオン、F(HF) 等のハロゲン化物アニオン、NO 、OH、CN等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
上記の無機イオン性化合物の中で、高温安定性、熱電半導体微粒子及び樹脂との相溶性、熱電半導体微粒子間隙の電気伝導率の低下抑制等の観点から、無機イオン性化合物のカチオン成分が、カリウム、ナトリウム、及びリチウムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。また、無機イオン性化合物のアニオン成分が、ハロゲン化物アニオンを含むことが好ましく、Cl、Br、及びIから選ばれる少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
カチオン成分が、カリウムカチオンを含む無機イオン性化合物の具体的な例として、KBr、KI、KCl、KF、KOH、KCO等が挙げられる。この中で、KBr、KIが好ましい。
カチオン成分が、ナトリウムカチオンを含む無機イオン性化合物の具体的な例として、NaBr、NaI、NaOH、NaF、NaCO等が挙げられる。この中で、NaBr、NaIが好ましい。
カチオン成分が、リチウムカチオンを含む無機イオン性化合物の具体的な例として、LiF、LiOH、LiNO等が挙げられる。この中で、LiF、LiOHが好ましい。
上記の無機イオン性化合物は、電気伝導率が10-7S/cm以上であることが好ましく、10-6S/cm以上であることがより好ましい。電気伝導率が上記範囲であれば、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。
また、上記の無機イオン性化合物は、分解温度が400℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
また、上記の無機イオン性化合物は、熱重量測定(TG)による400℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
前記無機イオン性化合物の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1.0~10質量%である。前記無機イオン性化合物の配合量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下を効果的に抑制でき、結果として熱電性能が向上した膜が得られる。
なお、無機イオン性化合物とイオン液体とを併用する場合においては、前記熱電半導体組成物中における、無機イオン性化合物及びイオン液体の含有量の総量は、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1.0~10質量%である。
(その他の添加剤)
本発明で用いる熱電半導体組成物には、上記以外の成分以外に、必要に応じて、さらに分散剤、造膜助剤、光安定剤、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤、樹脂安定剤、充てん剤、顔料、導電性フィラー、導電性高分子、硬化剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(熱電半導体組成物の調製方法)
本発明で用いるP型及びN型の熱電半導体組成物のそれぞれの調製方法は、特に制限はなく、超音波ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリッドミキサー等の公知の方法により、前記熱電半導体微粒子、前記耐熱性樹脂、前記イオン液体及び無機イオン性化合物の一方又は双方、必要に応じて前記その他の添加剤、さらに溶媒を加えて、混合分散させ、当該熱電半導体組成物を調製すればよい。
前記溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アルコール、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン、エチルセロソルブ等の溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。熱電半導体組成物の固形分濃度としては、該組成物が塗工に適した粘度であればよく、特に制限はない。
前記熱電半導体組成物からなる薄膜は、本発明に用いた基板上に、又は後述する犠牲層上に、前記熱電半導体組成物を塗布し、乾燥することで形成することができる。このように形成することで、簡便に低コストで大面積の熱電素子層を得ることができる。
P型及びN型の熱電半導体組成物を、基板上に順次塗布する方法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、バーコート法、ドクターブレード法等の公知の方法が挙げられ、特に制限されない。塗膜をパターン状に形成する場合は、所望のパターンを有するスクリーン版を用いて簡便にパターン形成が可能なスクリーン印刷、ステンシル印刷、スロットダイコート等が好ましく用いられる。
次いで、得られた塗膜を乾燥することにより、薄膜が形成されるが、乾燥方法としては、熱風乾燥法、熱ロール乾燥法、赤外線照射法等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80~150℃であり、加熱時間は、加熱方法により異なるが、通常、数秒~数十分である。
また、熱電半導体組成物の調製において溶媒を使用した場合、加熱温度は、使用した溶媒を乾燥できる温度範囲であれば、特に制限はない。
前記熱電半導体組成物からなる薄膜の厚さは、特に制限はないが、熱電性能と皮膜強度の点から、好ましくは100nm~1000μm、より好ましくは300nm~600μm、さらに好ましくは5~400μmである。
(基板)
本発明に用いる基板としては、ガラス、シリコン、セラミック、金属、又はプラスチック等が挙げられる。アニール処理を高温度下で行う観点から、ガラス、シリコン、セラミック、金属が好ましく、犠牲層との密着性、材料コスト、熱処理後の寸法安定性の観点から、ガラス、シリコン、セラミックを用いることがより好ましい。
前記基板の厚さは、プロセス及び寸法安定性の観点から、100~1200μmが好ましく、200~800μmがより好ましく、400~700μmがさらに好ましい。
〈犠牲層形成工程〉
本発明の熱電変換モジュール用中間体の製造方法においては、犠牲層形成工程を含むことが好ましい。
犠牲層形成工程は基板上に犠牲層を形成する工程であり、例えば、図1(a)においては、基板1上に樹脂、又は離型剤を塗布し、犠牲層2を形成する工程である。
(犠牲層)
本発明の熱電変換モジュール用中間体の製造方法においては、犠牲層を用いることが好ましい。
犠牲層は、熱電素子層を自立膜として形成するために用いられるものであり、基板と熱電素子層の間に設けられ、後述するアニール処理後又はさらに封止剤層形成後に、熱電素子層を剥離する機能を有する。
犠牲層を構成する材料としては、アニール処理後に、消失していても、残存していてもよく、結果的に熱電素子層の特性に何ら影響を及ぼすことなく、熱電素子層を剥離できる機能を有していればよく、いずれの機能を兼ね備えている、樹脂、離型剤、が好ましい。
(樹脂)
本発明に用いる犠牲層を構成する樹脂としては、特に制限されないが、熱可塑性樹脂や硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース等を挙げることができる。なお、ポリ(メタ)アクリル酸メチルとはポリアクリル酸メチル又はポリメタクリル酸メチルを意味するものとし、その他、(メタ)は同じ意味である。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。光硬化性樹脂としては、光硬化性アクリル樹脂、光硬化性ウレタン樹脂、光硬化性エポキシ樹脂等が挙げられる。
この中で、犠牲層上に熱電素子層が形成でき、高温度下でのアニール処理後においても、熱電素子層を自立膜として容易に剥離可能とする観点から、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロースが好ましく、材料コスト、剥離性、熱電素子層の特性維持の観点から、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンがさらに好ましい。
また、前記樹脂は、熱重量測定(TG)による後述するアニール処理温度における質量減少率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電素子層をアニール処理した場合でも、熱電素子層を剥離できる機能が失われることがない。
(離型剤)
本発明に用いる犠牲層を構成する離型剤としては、特に制限されないが、フッ素系離型剤(フッ素原子含有化合物;例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)、シリコーン系離型剤(シリコーン化合物;例えば、シリコーン樹脂、ポリオキシアルキレン単位を有するポリオルガノシロキサン等)、高級脂肪酸又はその塩(例えば、金属塩等)、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
この中で、犠牲層上に熱電素子層が形成でき、高温度下でのアニール処理後においても、熱電変換材料のチップを自立膜として容易に剥離(離型)可能とする観点から、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤、好ましく、材料コスト、剥離性、熱電変換材料の特性の維持の観点から、フッ素系離型剤がさらに好ましい。
犠牲層の厚さは、好ましくは10nm~10μmであり、より好ましくは50nm~5μm、さらに好ましくは200nm~2μmである。犠牲層の厚さがこの範囲にあると、アニール処理後の剥離が容易になり、かつ剥離後の熱電素子層の熱電性能を維持しやすい。
特に、樹脂を用いた場合の犠牲層の厚さは、好ましくは50nm~10μmであり、より好ましくは100nm~5μm、さらに好ましくは200nm~2μm、である。樹脂を用いた場合の犠牲層の厚さがこの範囲にあると、アニール処理後の剥離が容易になり、かつ剥離後の熱電素子層の熱電性能を維持しやすい。さらに、犠牲層上にさらに他の層を積層した場合においても、自立膜を維持しやすくなる。
同様に、離型剤を用いた場合の犠牲層の厚さは、好ましくは10nm~5μmであり、より好ましくは50nm~1μm、さらに好ましくは100nm~0.5μm、特に好ましくは200nm~0.1μmである。離型剤を用いた場合の犠牲層の厚さがこの範囲にあると、アニール処理後の剥離が容易になり、かつ剥離後の熱電素子層の熱電性能を維持しやすい。
犠牲層の形成は、前述した樹脂、又は離型剤を用いて行う。
犠牲層を形成する方法としては、基板上にディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティング法が挙げられる。用いる樹脂、離型剤の物性等に応じて適宜選択される。
(B)アニール処理工程
本発明の熱電変換モジュール中間体の製造方法においては、アニール処理工程を含む。
アニール処理工程は、基板上の犠牲層上に熱電素子層を形成した後、該熱電素子層を、所定の温度で熱処理する工程であり、例えば、図1(a)においては、犠牲層2上のN型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3bをアニール処理する工程である。
本発明では、アニール処理を行うことで、熱電性能を安定化させるとともに、熱電素子層中の熱電半導体材料(微粒子)を結晶成長させることができ、熱電性能をさらに向上させることができる。
アニール処理は、通常、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行われ、用いる耐熱性樹脂、イオン液体、無機イオン性化合物、犠牲層として用いた樹脂、離型剤の耐熱温度等に依存するが、アニール処理の温度は、通常100~600℃で、数分~数十時間、好ましくは150~600℃で、数分~数十時間、より好ましくは250~600℃で、数分~数十時間、さらに好ましくは300~550℃で、数分~数十時間行う。
使用する熱電半導体材料により、最適なアニール温度、処理時間が異なることがあり、このような場合、形成したP型熱電素子層及びN型熱電素子層ごとにそれぞれ最適なアニール処理を行ってもよい。これにより、熱電素子層が有する本来の熱電性能を十分発揮させることができるためより好ましい。但し、熱電素子層の形成及びアニール処理は、最適なアニール処理温度の高い熱電半導体材料の順に行う。
〈電極形成工程〉
本発明の熱電変換モジュール用中間体の製造方法においては、P型熱電素子層とN型熱電素子層とを良好な電気的接合をとるために電極を形成する工程を含むことが好ましい。
電極形成工程は、好ましくはアニール処理されたP型熱電素子層とN型熱電素子層とからなる接合部の下部、又は、上部に所定の電極を形成する工程である。
(電極)
本発明に用いる熱電変換モジュールの電極の金属材料としては、銅、金、ニッケル、アルミニウム、ロジウム、白金、クロム、パラジウム、ステンレス鋼、モリブデン又はこれらのいずれかの金属を含む合金等が挙げられる。
前記電極の層の厚さは、好ましくは10nm~200μm、より好ましくは30nm~150μm、さらに好ましくは50nm~120μmである。電極の層の厚さが、上記範囲内であれば、電気伝導率が高く低抵抗となり、電極として十分な強度が得られる。
電極の形成は、前述した金属材料を用いて行う。
電極を形成する方法としては、樹脂フィルム上にパターンが形成されていない電極を設けた後、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法、または、スクリーン印刷法、インクジェット法等により直接電極のパターンを形成する方法等が挙げられる。
パターンが形成されていない電極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理気相成長法)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相成長法)等のドライプロセス、又はディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティングや電着法等のウェットプロセス、銀塩法、電解めっき法、無電解めっき法、金属箔の積層等が挙げられ、電極の材料に応じて適宜選択される。
本発明に用いる電極には、熱電性能を維持する観点から、高い導電性、高い熱伝導性が求められるため、めっき法や真空成膜法で成膜した電極を用いることが好ましい。高い導電性、高い熱伝導性を容易に実現できることから、真空蒸着法、スパッタリング法等の真空成膜法、および電解めっき法、無電解めっき法が好ましい。形成パターンの寸法、寸法精度の要求にもよるが、メタルマスク等のハードマスクを介在し、容易にパターンを形成することもできる。
前記金属材料の層の厚さは、好ましくは10nm~200μm、より好ましくは30nm~150μm、さらに好ましくは50nm~120μmである。金属材料の層の厚さが、上記範囲内であれば、電気伝導率が高く低抵抗となり、電極として十分な強度が得られる。
(C)封止材層形成工程
本発明の熱電変換モジュール用中間体の製造方法においては、封止材層形成工程を含む。
本発明の一態様において、封止材層をアニール処理後の熱電素子層の面に形成する工程であり、例えば、図1(a)において、N型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3b上に封止材層5Aを形成する工程である。
封止材層は、熱電素子層上に直接、または他の層を介在して積層されていてもよいし、後述するガスバリア層、又は後述する熱電変換モジュールを構成する高熱伝導層と熱電素子層との絶縁に用いられる絶縁層等を介在し積層されていてもよい。
封止材層の形成は、公知の方法で行うことができ、熱電素子層上に直接形成する以外に予め剥離シート上に形成した封止材層を、前記熱電素子層に貼り合わせて、封止材層を熱電素子層に転写させて形成してもよい。また、予め封止材層からなるシートとして、又は予め後述する熱電変換モジュールを構成する高熱伝導層を有する封止材層からなるシートとして、それらを熱電素子層の面に貼り合わせ、熱ラミネート法等により形成してもよい。
(封止材層)
本発明に用いる封止材層は、硬化性樹脂、又はその硬化物を含む封止材組成物から形成される。
封止材層は、熱電素子層を支持し、さらに大気中の水蒸気の透過を効果的に抑制し、熱電素子層の劣化を抑制することができる。
〈硬化性樹脂〉
本発明に用いる硬化性樹脂は、特に限定されないが、電子部品分野等で使用されているものの中から任意の樹脂を適宜選択することができ、好ましくは、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂である。
本発明において、封止材剤組成物が、熱硬化性樹脂又はエネルギー線硬化性樹脂を含有することにより、水蒸気透過率が抑制されるとともに熱電素子層を強固に封止することが可能となる。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノキシ樹脂、酸無水物化合物、アミン系化合物などが挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、イミダゾール系硬化触媒を使用した硬化に好適であるという観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、酸無水物化合物およびアミン系化合物を使用することが好ましく、特に、優れた接着性を示すという観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、それらの混合物、またはエポキシ樹脂と、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アミン系化合物および酸無水物系化合物からなる群から選択される少なくとも1種との混合物を使用することが好ましい。
エポキシ樹脂は、通常、加熱を受けると三次元網状化し、強固な硬化物を形成する性質を有する。このようなエポキシ樹脂としては、公知の種々のエポキシ樹脂が用いることができ、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェニルノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエーテル;アニリンイソシアヌレート等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジル型もしくはアルキルグリシジル型のエポキシ樹脂;ビニルシクロヘキサンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-ジシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等のように、分子内の炭素-炭素二重結合を例えば酸化することによりエポキシが導入された、いわゆる脂環型エポキシドを挙げることができる。その他、ビフェニル骨格、トリフェニルメタン骨格、ジシクロヘキサジエン骨格、ナフタレン骨格等を有するエポキシ樹脂を用いることもできる。これらエポキシ樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述したエポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールAのグリシジルエーテル(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(ビフェニル型エポキシ樹脂)、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(ナフタレン型エポキシ樹脂)またはこれらの組み合わせを使用することが好ましい。
フェノール樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ビフェノール、ビスフェノールF、ジアリルビスフェノールF、トリフェニルメタン型フェノール、テトラキスフェノール、ノボラック型フェノール、クレゾールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール(ビフェニル型フェノール)等が挙げられ、これらの中でも、ビフェニル型フェノールを使用することが好ましい。これらのフェノール樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂との反応性等の観点から、フェノール樹脂を併用することが好ましい。
エネルギー線硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1つ又は2つ以上の重合性不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。1つの重合性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。また、2つ以上の重合性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能化合物や、その変成物、及び、これらの多官能化合物と(メタ)アクリレート等との反応生成物(例えば、多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)、等を挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、メタクリレート及びアクリレートを意味するものである。
前記化合物のほかに、重合性不飽和結合を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリブタジエン樹脂等も前記エネルギー線硬化性樹脂として使用することができる。
これらの中で、耐熱性に優れ、高い接着力を有し、水分透過率が小さいという観点からポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はアクリル系樹脂が好ましい。
前記エネルギー線硬化性樹脂には、光重合開始剤を併用することが好ましい。本発明に用いる光重合開始剤は、前記エネルギー線硬化性樹脂を含む封止材組成物に含まれるものであり、紫外線下で前記エネルギー線硬化性樹脂を硬化させることができる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミン安息香酸エステルなどを用いることができる。
光重合開始剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、前記エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、通常0.2~10質量部の範囲で選ばれる。
硬化性樹脂を含む封止材組成物には、必要に応じて適宜な範囲内で、例えば、架橋剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料や染料等の着色剤、粘着付与剤、帯電防止剤、カップリング剤等の添加剤が含まれていてもよい
封止材層は、1層であっても2層以上積層されていてもよい。また、2層以上積層される場合は、それらが同じであっても異なっていてもよい。
封止材層の厚さは、好ましくは0.5~100μm、より好ましくは3~50μm、さらに好ましくは5~30μmである。この範囲であれば、前記熱電変換モジュール用中間体の熱電素子層の面上に積層した場合、水蒸気透過率を抑制することができ、熱電変換モジュール用中間体及び該熱電変換モジュール用中間体を用いた後述する熱電変換モジュールの耐久性が向上する。
さらに、前述したように、熱電素子層と、封止材層とが直接接することが好ましい。熱電素子層と、封止材層とが直接接することにより、熱電素子層と封止材層との間に大気中の水蒸気が直接存在することがないため、熱電素子層への水蒸気の侵入が抑制され、封止材層の封止性が向上する。
封止剤組成物中における硬化性樹脂の含有量は、好ましくは10~90質量%、さらに好ましくは20~80質量%である。当該含有量が10質量%以上であることで、封止材層の硬化がより十分なものとなり、水蒸気透過率が抑制されるとともに熱電素子層を強固に封止することができる。また、当該含有量が90質量%以下であることで、封止材層の保存安定性がより優れたものとなる。
封止材組成物は、熱可塑性樹脂を含有していてもよい。
封止材組成物は、熱可塑性樹脂を含有することで、成形性の向上や、封止材層に含まれる硬化性樹脂の硬化収縮による変形を抑制することができる。
熱可塑性樹脂の例としては、フェノキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、スチレン系樹脂、シラン系樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられ、これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
封止剤組成物中における熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは10~90質量%、さらに好ましくは20~80質量%である。当該含有量が10質量%以上であることで、封止材層の成形性を向上させることができる。また、当該含有量が90質量%以下であることで、硬化収縮による変形を抑制することができる。
封止材組成物は、シランカップリング剤を含有していてもよい。
封止材組成物は、シランカップリング剤を含有することで、常温及び高温環境下における接着強度により優れたものとなる。
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3-クロロプロピルトリメトキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン;等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
封止材組成物がシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、通常0.01~3質量%である。
封止材組成物は、フィラーを含有していてもよい。
封止材組成物が、フィラーを含有することで、封止材組成物に高い耐熱性や高い熱伝導率等の機能を付与することができる。
かかるフィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、ムライト、コージェライト等の複合酸化物、モンモリロナイト、スメクタイト等を材料とするフィラーを例示することができ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、フィラーの表面は、表面処理されていてもよい。
フィラーの形状は、球状、粒状、針状、板状、不定型等の何れでもよい。
フィラーの平均粒径は、通常0.01~20μm程度である。
〈ガスバリア層〉
本発明においては、前記封止剤層以外に、さらにガスバリア層を含んでいてもよい。ガスバリア層は、大気中の水蒸気の透過をより効果的に抑制することができる。
ガスバリア層は、熱電素子層上に直接積層されていてもよいし、基材上に後述する主成分を含む層から構成され、そのいずれかの面が熱電素子層上に直接積層されてもよいし、封止材層、後述する導電性を有する熱電変換モジュールを構成する高熱伝導層等の絶縁に用いられる絶縁層等を介在し積層されていてもよい。
本発明に用いるガスバリア層は、金属、無機化合物、及び高分子化合物からなる群から選ばれる一種以上を主成分とする。
前記基材としては、屈曲性を有するものが用いられ、特に制限されないが、樹脂フィルム等が挙げられる。
樹脂フィルムに使用される樹脂としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ナイロン、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等が挙げられる。
これらの中で、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート等が挙げられる。シクロオレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。
樹脂フィルムに使用される樹脂の中で、コスト、耐熱性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロンが好ましい。
金属としては、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、金、銀、銅及び錫等が挙げられ、これらを蒸着膜として用いることが好ましい。これらの中で、生産性、コスト、ガスバリア性の観点から、アルミニウム、ニッケルが好ましい。また、これらは1種単独で、あるいは合金を含め、2種以上を組み合わせて用いることができる。前記蒸着膜は、通常、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の蒸着法を用いてもよいし、蒸着法以外のDCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法等のスパッタリング法、またプラズマCVD法等の他の乾式法で成膜してもよい。なお、金属の蒸着膜等は、通常、導電性を有するため、前記基材等を介在して熱電素子層に積層される。
無機化合物としては、無機酸化物(MO)、無機窒化物(MN)、無機炭化物(MC)、無機酸化炭化物(MO)、無機窒化炭化物(MN)、無機酸化窒化物(MO)、及び無機酸化窒化炭化物(MO)等が挙げられる。ここで、x、y、zは、各化合物の組成比を表す。前記Mとしては、珪素、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、カルシウム、ジルコニウム、チタン、ホウ素、ハフニウム、又はバリウム等の金属元素が挙げられる。Mは1種単独でもよいし2種以上の元素であってもよい。各無機化合物は、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム等の窒化物;炭化珪素等の炭化物;硫化物;等を挙げることができる。また、これらの無機化合物から選ばれた2種以上の複合体(酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物)であってもよい。また、SiOZnのように金属元素を2種以上含む複合体(酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物も含む)であってもよい。これらは、蒸着膜として用いることが好ましいが、蒸着膜として成膜できない場合は、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、プラズマCVD法等の方法で成膜したものでもよい。
Mとしては、珪素、アルミニウム、チタン等の金属元素が好ましい。特にMが珪素の酸化珪素からなる無機層は、高いガスバリア性を有し、また、窒化珪素からなる無機層はさらに高いガスバリア性を有する。特に酸化珪素と窒化珪素の複合体(無機酸化窒化物(MO))であることが好ましく、窒化珪素の含有量が多いとガスバリア性が向上する。
なお、無機化合物の蒸着膜は、通常、絶縁性を有する場合が多いが、酸化亜鉛、酸化インジウム等、導電性を有するものも含まれる。この場合、これらの無機化合物を熱電素子層に積層する場合、前述した基材を介在して積層するか、熱電変換モジュール用中間体の性能に影響を与えない範囲で使用することになる。
高分子化合物としては、ポリオルガノシロキサン、ポリシラザン系化合物等の珪素含有高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。これらの高分子化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
これらの中でも、ガスバリア性を有する高分子化合物としては、珪素含有高分子化合物が好ましい。珪素含有高分子化合物としては、ポリシラザン系化合物、ポリカルボシラン系化合物、ポリシラン系化合物、及びポリオルガノシロキサン系化合物等が好ましい。これらの中でも、優れたガスバリア性を有するバリア層を形成できる観点から、ポリシラザン系化合物がより好ましい。
また、無機化合物の蒸着膜、またはポリシラザン系化合物を含む層に改質処理を施して形成された酸素、窒素、珪素を主構成原子として有する層からなる酸窒化珪素層が、層間密着性、ガスバリア性、及び屈曲性を有する観点から、好ましく用いられる。
ガスバリア層は、例えば、ポリシラザン化合物含有層に、プラズマイオン注入処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、熱処理等を施すことにより形成できる。プラズマイオン注入処理により注入されるイオンとしては、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトン等が挙げられる。
プラズマイオン注入処理の具体的な処理方法としては、外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ポリシラザン化合物含有層に対して注入する方法、または、外部電界を用いることなく、ガスバリア層形成用材料からなる層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ポリシラザン化合物含有層に注入する方法が挙げられる。
プラズマ処理は、ポリシラザン化合物含有層をプラズマ中に晒して、含ケイ素ポリマーを含有する層を改質する方法である。例えば、特開2012-106421号公報に記載の方法に従って、プラズマ処理を行うことができる。紫外線照射処理は、ポリシラザン化合物含有層に紫外線を照射して含ケイ素ポリマーを含有する層を改質する方法である。例えば、特開2013-226757号公報に記載の方法に従って、紫外線改質処理を行うことができる。
これらの中でも、ポリシラザン化合物含有層の表面を荒らすことなく、その内部まで効率よく改質し、よりガスバリア性に優れるガスバリア層を形成できることから、イオン注入処理が好ましい。
金属、無機化合物及び高分子化合物を含む層の厚さは、用いる化合物等で異なるが、通常、0.01~50μm、好ましくは0.03~10μm、より好ましくは0.05~0.8μm、さらに好ましくは0.10~0.6μmである。金属、無機化合物及び樹脂を含む厚さが、この範囲であれば、水蒸気透過率を効果的に抑制できる。
前記金属、無機化合物及び高分子化合物の、基材を有するガスバリア層の厚さは、10~80μmであることが好ましく、より好ましくは、15~50μm、さらに好ましくは20~40μmである。ガスバリア層の厚さがこの範囲にあると、優れたガスバリア性が得られるとともに、屈曲性と、被膜強度とを両立させることができる。
ガスバリア層は、1層であっても2層以上積層されていてもよい。また、2層以上積層される場合は、それらが同じであっても異なっていてもよい。
(D)熱電素子層転写工程
本発明の熱電変換モジュール用中間体の製造方法においては、基板から熱電素子層を剥離し該熱電素子層を封止剤層に転写する工程を含む。
熱電素子層転写工程は、熱電素子層をアニール処理した後、基板、又は犠牲層上の熱電素子層を、封止材層上に転写する工程であり、例えば、図1(c)において、犠牲層2を介在し基板1上からN型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3bを剥離し、N型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3bを、封止材層5A上に転写する工程である。
また、犠牲層からの剥離方法としては、アニール処理後の熱電素子層が、形状及び特性を維持した状態で犠牲層から剥離されれば、特に制限はなく、公知の手法で行われる。
[熱電変換モジュールの製造方法]
熱電変換モジュールの製造方法は、本発明の熱電変換モジュール用中間体を用い製造する方法であり、封止剤層形成工程、高熱伝導層形成工程を含むことが好ましい。
図2は、熱電変換モジュール用中間体を用いた熱電変換モジュールの実施態様を示す断面構成図であり、(a)は、図1の(c’)の熱電変換モジュール用中間体の電極4が配置された側の面とは反対側のN型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3bの露出面に、硬化性樹脂を含む封止材層5Bをさらに形成した後の熱電変換モジュールの断面図であり、(b)は(a)で得られた熱電変換モジュールの両面に高熱伝導層6A及び高熱伝導層6Bを設けた後の熱電変換モジュールの断面図である。
〈封止材層形成工程〉
本発明の熱電変換モジュール用中間体の製造方法で得られた熱電変換モジュール用中間体を用いた熱電変換モジュールの製造方法においては、封止剤層形成工程を含むことが好ましい。封止剤層形成工程は、例えば、前述した図2(a)において、熱電変換モジュール用中間体の電極4が配置された側の面とは反対側のN型熱電素子層3a及びP型熱電素子層3bの露出面に硬化性樹脂を含む封止材層5Bをさらに形成する工程である。
封止材層形成方法、用いる材料、厚さ等は、熱電変換モジュール用中間体の製造方法で記載したのと同様である。封止材層は、熱電変換モジュール用中間体の熱電素子層上に直接、または他の層を介在して積層されていてもよいし、前述したガスバリア層、又は後述する高熱伝導層と熱電素子層との絶縁に用いられる絶縁層等を介在し積層されていてもよい。
〈高熱伝導層形成工程〉
本発明の熱電変換モジュール用中間体の製造方法で得られた熱電変換モジュール用中間体を用いた熱電変換モジュールの製造方法においては、高熱伝導層形成工程を含むことが好ましい。高熱伝導層形成工程は、例えば、前述した図2(b)において、封止材層5A及び封止材層5B上に、この順に、高熱伝導層6A及び高熱伝導層6Bを形成する工程である。
高熱伝導層は熱電変換モジュールの片面、又は両面に設け、放熱層として機能する。熱電性能の観点から、高熱伝導層は両面に設けることが好ましい。本発明においては、例えば、高熱伝導層を用いることにより、熱電変換モジュールの内部の熱電素子層に対し、効率良く面内方向に十分な温度差を付与することができる。
(高熱伝導層)
高熱伝導層は、高熱伝導性材料から形成される。高熱伝導層に用いる高熱伝導材料としては銅、銀、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム等の単金属、ステンレス、真鍮(黄銅)等の合金が挙げられる。この中で、好ましくは、銅(無酸素銅含む)、ステンレス、アルミニウムであり、熱伝導率が高く、加工性が容易であることから、さらに好ましくは、銅である。
ここで、本発明に用いられる高熱伝導材料の代表的なものを以下に示す。
・無酸素銅
無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)とは、一般的に酸化物を含まない99.95%(3N)以上の高純度銅のことを指す。日本工業規格では、無酸素銅(JIS H 3100, C1020)および電子管用無酸素銅(JIS H 3510, C1011)が規定されている。
・ステンレス(JIS)
SUS304:18Cr-8Ni(18%のCrと8%のNiを含む)
SUS316:18Cr-12Ni(18%のCrと12%のNi、モリブデン(Mo)を含む)ステンレス鋼)
高熱伝導層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット法等により直接高熱伝導層のパターンを形成する方法等が挙げられる。
また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理気相成長法)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相成長法)等のドライプロセス、又はディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティング法や電着法等のウェットプロセス、銀塩法、電解めっき法、無電解めっき法等により得られた、さらには圧延金属箔又は電解金属箔等、パターンが形成されていない高熱伝導性材料からなる高熱伝導層を、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法が挙げられる。
本発明に用いる高熱伝導材料からなる高熱伝導層の熱伝導率は、好ましくは5~500W/(m・K)、より好ましくは8~500W/(m・K)、さらに好ましくは10~450W/(m・K)、特に好ましくは12~420W/(m・K)、最も好ましくは15~400W/(m・K)である。熱伝導率が上記の範囲にあると、熱電素子層の面内方向に、効率よく温度差を付与することができる。
高熱伝導層の厚さは、40~550μmが好ましく、60~530μmがより好ましく、80~510μmがさらに好ましい。高熱伝導層の厚さがこの範囲であれば、熱を特定の方向に選択的に放熱することができ、P型熱電素子層とN型熱電素子層とを電極を介在し交互にかつ電気的に直列接続した熱電素子層の面内方向に、効率よく温度差を付与することができる。
高熱伝導層の配置及びそれらの形状は、特に限定されず、用いる熱電変換モジュールの熱電素子層、すなわち、P型熱電素子層とN型熱電素子層の配置及びそれらの形状により、適宜調整する必要がある。
前記高熱伝導層が位置する割合が、1対のP型熱電素子層とN型熱電素子層とからなる直列方向の全幅に対し、それぞれ独立に、0.30~0.70であることが好ましく、0.40~0.60がより好ましく、0.48~0.52がさらに好ましく、特に好ましくは、0.50である。この範囲にあると、熱を特定の方向に選択的に放熱することができ、面内方向に効率よく温度差を付与できる。さらに、上記を満たし、かつ直列方向の1対のP型熱電素子層とN型熱電素子層とからなる接合部に対称に配置することが好ましい。このように、各高熱伝導層を互いに配置することにより、面内の直列方向の1対のP型熱電素子層とN型熱電素子層とからなる接合部と隣接する1対のN型熱電素子層とP型熱電素子層とからなる接合部間により高い温度差を付与できる。
本発明の熱電変換モジュール用中間体の製造方法によれば、簡便な方法で熱電素子層に最適なアニール処理が施された熱電変換モジュール用中間体が製造できる。このため、該熱電変換モジュール用中間体を用いることにより熱電性能が向上した熱電変換モジュールを製造することができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例、比較例で作製した熱電変換モジュールの電気抵抗値の評価、出力評価及び熱電素子層/電極界面における金属拡散量の評価は、以下の方法で行った。
(a)電気抵抗値評価
得られた熱電変換モジュールの熱電素子層の取り出し電極部間の電気抵抗値を、ディジタルハイテスタ(日置電機社製、型名:3801-50)により、25℃×50%RHの環境下で測定した。
(b)出力評価
得られた熱電変換モジュールの一方の面を、ホットプレートで50℃の温度に加熱した状態で保持し、他方の面を水冷ヒートシンクで20℃の温度に冷却することで、熱電変換モジュールに30℃の温度差を付与し、ディジタルハイテスタ(日置電機社製、型名:3801-50)を用いて、熱電変換モジュールの出力取り出し電極間の電圧値(起電力)を測定した。
(c)金属拡散評価
得られた熱電変換モジュールを研磨装置(リファインテック社製、型名:リファイン・ポリッシャーHV)によって断面出しを行い、FE-SEM/EDX(FE-SEM:日立ハイテクノロジーズ社製、型名:S-4700、EDX:オックスフォード・インストゥルメンツ社製、型名:INCA x-stream)を用いて、電極近傍の熱電素子層中の電極構成元素の拡散を評価した。
(実施例1)
<熱電変換モジュールの作製>
厚さ0.7mmのガラス基板(河村久蔵商店社製、商品名:青板ガラス)上に犠牲層として、ポリメチルメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)(シグマアルドリッチ社製、商品名:ポリメタクリル酸メチル)をトルエンに溶解した、固形分10%のポリメチルメタクリル酸メチル樹脂溶液をスピンコート法により、乾燥後の厚さが1.0μmとなるように成膜した。
次いで、メタルマスクを介在して、犠牲層上に後述する塗工液(P)及び塗工液(N)を、P型熱電素子層とN型熱電素子層とを交互に隣接して配置(1mm×0.5mmのP型熱電素子層及びN型熱電素子層を392対)するように、スクリーン印刷法により塗布し、温度120℃で、10分間アルゴン雰囲気下で乾燥し、厚さが30μmの薄膜を形成した。
その後、得られた薄膜に対し、水素とアルゴンの混合ガス(水素:アルゴン=3体積%:97体積%)雰囲気下で、加温速度5K/minで昇温し、400℃で30分間保持し、前記薄膜をアニール処理し、熱電半導体材料の微粒子を結晶成長させ、それぞれの厚さが30μmのP型熱電素子層及びN型熱電素子層を形成した。
次いで、隣接するP型熱電素子層及びN型熱電素子層との接続をまたぐ接合部にナノ銀ペースト(三ツ星ベルト社製、品名:MDotEC264)を、スクリーン印刷法により塗布し、120℃で10分間、加熱乾燥することで、厚さが30μmの電極を形成した。
次いで、下記に示した方法で形成した熱硬化性封止シート(封止材層;厚さ:62μm)を、P型熱電素子層及びN型熱電素子層の上部に、下記の仕様及び方法で形成した高熱伝導層と共に真空ラミネート処理で貼り合せ、150℃で30分間、加熱処理をすることで熱硬化性封止材を硬化させ(高熱伝導層が同時に熱硬化性封止材層に接着)、印刷された前記ナノ銀ペーストから形成された銀電極層、並びにP型熱電素子層及びN型熱電素子層を前記犠牲層から剥離し、封止材層に転写させた。
その後、剥離した熱電素子層が露出した面に対し、同様に、同一仕様の別の熱硬化性封止シート(封止材層;厚さ:60μm)を、同一仕様の別の高熱伝導層と共に真空ラミネート処理で貼り合せ、150℃で30分間、加熱処理をすることで熱硬化性封止材を硬化させることにより(高熱伝導層が同時に熱硬化性封止材層に接着)、熱電素子層にかかる支持基材を有さない熱電変換モジュールを作製した。
(熱電半導体微粒子の作製方法)
ビスマス-テルル系熱電半導体材料であるP型ビスマステルライドBi0.4TeSb1.6(高純度化学研究所製、粒径:180μm)を、遊星型ボールミル(フリッチュジャパン社製、Premium line P-7)を使用し、窒素ガス雰囲気下で粉砕することで、平均粒径2.0μmの熱電半導体微粒子T1を作製した。粉砕して得られた熱電半導体微粒子に関して、レーザー回折式粒度分析装置(Malvern社製、マスターサイザー3000)により粒度分布測定を行った。
また、ビスマス-テルル系熱電半導体材料であるN型ビスマステルライドBiTe(高純度化学研究所製、粒径:180μm)を上記と同様に粉砕し、平均粒径2.5μmの熱電半導体微粒子T2を作製した。
(熱電半導体組成物の作製)
塗工液(P)
得られたP型ビスマス-テルル系熱電半導体材料の微粒子T1を95質量部、耐熱性樹脂としてポリイミド前駆体であるポリアミック酸(シグマアルドリッチ社製、ポリ(ピロメリト酸二無水物-co-4,4´-オキシジアニリン)アミド酸溶液、溶媒:N-メチルピロリドン、固形分濃度:15質量%)2.5質量部、及びイオン液体として、N-ブチルピリジニウムブロミド2.5質量部を混合分散した熱電半導体組成物からなる塗工液(P)を調製した。
塗工液(N)
得られたN型ビスマス-テルル系熱電半導体材料の微粒子T2を95質量部、耐熱性樹脂としてポリイミド前駆体であるポリアミック酸(シグマアルドリッチ社製、ポリ(ピロメリト酸二無水物-co-4,4´-オキシジアニリン)アミド酸溶液、溶媒:N-メチルピロリドン、固形分濃度:15質量%)2.5質量部、及びイオン液体として、N-ブチルピリジニウムブロミド2.5質量部を混合分散した熱電半導体組成物からなる塗工液(N)を調製した。
(熱硬化性封止シートの形成)
絶縁層(PET、厚さ:12μm)の両面に熱可塑性樹脂とエポキシ樹脂を含む組成物からなるエポキシ接着シート(ソマール社製、EP-0002EF-01MB、厚さ:24μm)をラミネート処理によって貼り合せることによって熱硬化性封止シートを形成した。
(高熱伝導層の実装)
高熱伝導層(無酸素銅 JIS H 3100、C1020、厚さ:100μm、幅:1mm、長さ:100mm、間隔:1mm、熱伝導率:398(W/m・K))は、図2(b)と同様に、封止材層5A及び封止材層5Bの面上に、同一仕様のストライプ状の高熱伝導層6Aと高熱伝導層6Bとが、P型熱電素子層3bとN型熱電素子層3aとが隣接する接合部の図2(b)で示す上部及び下部に互い違いに、かつ高熱伝導層6A及び高熱伝導層6Bのそれぞれが接合部と対称になるように配置することで熱電変換モジュールを作製した(図2(b)と同一構成)。次いで、該熱電変換モジュールに対し、加熱を高熱伝導層6A側から、冷却を高熱伝導層6B側から行う構成とした。
(比較例1)
以下の手順に従って、比較例1となる構成を備える熱電変換モジュールを作製した。まず、100mm×100mmの四角形状のポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン200H、膜厚50μm、熱伝導率0.16W/(m・K))に、銅-ニッケル-金がこの順に積層された電極パターン(銅9μm、ニッケル9μm、金0.04μm、熱伝導率148W/(m・K))が設けられた電極付きフィルム基板上に、P型熱電変換材料(前述したP型のビスマス-テルル系熱電半導体材料)とN型熱電変換材料(前述したN型のビスマス-テルル系熱電半導体材料)を交互に隣接して配置することで1mm×0.5mmの両熱電変換材料を、14対を一列として折り返し、28列形成することで、392対設けた熱電変換モジュールを作製した。熱電素子層の熱伝導率は0.25W/(m・K)であった。得られた熱電変換モジュールに対し、水素とアルゴンの混合ガス(水素:アルゴン=3体積%:97体積%)雰囲気下で、加温速度5K/minで昇温し、400℃で30分間保持し、前記薄膜をアニール処理し、熱電半導体材料の微粒子を結晶成長させ、それぞれの厚さが30μmのP型熱電素子層及びN型熱電素子層を形成した。
実施例1及び比較例1で作製した熱電変換モジュールの熱電素子層への金属拡散、電気抵抗値の評価、及び出力評価を行った。評価結果を表1に示す。
Figure 0007386801000001
電極との接合部を有する形態で、熱電素子層を最適なアニール温度でアニール処理した比較例1では、熱電素子層に電極を構成するNi元素の拡散が確認される他、ポリイミドの支持基材が高温で収縮し、熱電素子層が剥離し断線するため、モジュールの評価が不能になるのに対し、電極との接合部を有さない形態で、熱電素子層を最適なアニール温度でアニール処理した実施例1では、問題なく、電気特性及び出力評価が行われていることがわかる。
本発明の熱電変換モジュール用中間体の製造方法によれば、従来の支持基板を不要とするとともに、電極との接合部を有さない形態で熱電半導体材料のアニール処理を可能にし、最適なアニール温度で熱電半導体材料のアニールが可能な熱電変換モジュール用中間体が製造できる。さらに、該熱電変換モジュール用中間体を用いることにより熱電性能が高い熱電変換モジュールを製造できる。このため、従来型に比べ、発電効率又は冷却効率が向上し、ダウンサイジング及びコストダウンにも繋がることが期待される。また同時に、本発明の熱電変換モジュールを用いることにより、平坦でない面を有する廃熱源や放熱源へ設置する等、設置場所を制限されることもなく使用できる。
1:基板
2:犠牲層
3a:N型熱電素子層
3b:P型熱電素子層
4:電極
5A:封止剤層
5B:封止剤層
6A:高熱伝導層
6B:高熱伝導層

Claims (9)

  1. 熱電半導体組成物からなるP型熱電素子層及びN型熱電素子層を含む、熱電変換モジュール用中間体の製造方法であって、
    (A)基板上に前記P型熱電素子層及びN型熱電素子層を形成する工程、
    (B)前記(A)の工程で得られた前記P型熱電素子層及びN型熱電素子層をアニール処理する工程、
    (C)前記(B)の工程で得られたアニール処理後のP型熱電素子層及びN型熱電素子層上に硬化性樹脂、又はその硬化物を含む封止材層を形成する工程、及び、(D)前記(B)及び(C)の工程で得られたP型熱電素子層及びN型熱電素子層、並びに前記封止材層を前記基板から剥離する工程、
    を含む、熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
  2. アニール処理された前記P型熱電素子層及びN型熱電素子層上に、さらに電極を形成する工程を含む、請求項1の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
  3. 前記硬化性樹脂が、熱硬化性樹脂、又はエネルギー線硬化性樹脂である、請求項1又は2に記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
  4. 前記硬化性樹脂が、エポキシ系樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
  5. 前記基板が、ガラス基板である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
  6. 前記熱電半導体組成物は熱電半導体材料を含んでおり、該熱電半導体材料がビスマス-テルル系熱電半導体材料、テルライド系熱電半導体材料、アンチモン-テルル系熱電半導体材料、又はビスマスセレナイド系熱電半導体材料である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
  7. 前記熱電半導体組成物が、さらに、耐熱性樹脂、並びにイオン液体及び/又は無機イオン性化合物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
  8. 前記耐熱性樹脂が、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はエポキシ樹脂である、請求項7に記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
  9. 前記アニール処理の温度が、250~600℃で行われる、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱電変換モジュール用中間体の製造方法。
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