JP7386540B2 - アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の試験方法及び診断用負荷試験剤 - Google Patents

アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の試験方法及び診断用負荷試験剤 Download PDF

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Description

本発明は、副腎皮質刺激ホルモンを有効成分とする、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の診断用負荷試験剤、及び副腎皮質刺激ホルモンを用いた、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の試験方法に関する。
日本の高血圧患者数は、約4300万人といわれており、高血圧は最も患者数の多い一般的な病気の1つである。近年、このような高血圧の症状を呈する患者のうち、原発性アルドステロン症の頻度が多いことが話題となっている。現実的には3%程度の患者が原発性アルドステロン症の可能性があると考えられる。
原発性アルドステロン症(PA)は、コルチコイドホルモンであるアルドステロンの過剰産生を特徴とする。アルドステロンによって腎臓におけるナトリウム及び水分保持及びカリウム排出の増大が引き起こされ、動脈性高血圧に繋がる。
原発性アルドステロン症の原因のほとんどがアルドステロン産生腺腫(APA)か特発性アルドステロン症(IHA)であり、副腎癌を含め他の原因はまれである。アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症とでは、治療方針が全く異なるため、その鑑別診断は非常に重要である。
しかしながら、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症を識別するための副腎静脈サンプリングは、難易度が高く、患者のみならず、医療関係者の負担が大きい。
Williams textbook of endocrinology. (11th ed.). Philadelphia: Saunders/Elsevier. 2008. ISBN 978-1-4160-2911-3.
本発明は、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の試験方法及び診断用負荷試験剤を提供することを目的とする。
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)負荷試験(ACTH負荷試験)は、原発性アルドステロン症診断の為の標準的な負荷試験ではないが、アルドステロン過剰分泌を調べる試験として、主に手術後の効果を評価することに有益な検査として用いられている。
本発明者らは、アルドステロン産生腺腫では、特発性アルドステロン症と比較して、ACTH負荷後にアルドステロン過剰分泌が長時間持続することを発見し、これに着目し、特にアルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の試験方法及び診断用負荷試験剤を確立すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]~[7]を提供する。
[項1]
副腎皮質刺激ホルモンを有効成分とする、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の診断用負荷試験剤であって、
前記負荷試験剤を、被検体に投与後、90~180分経過後に被検体から得られる試料において、アルドステロン量を検出することを特徴とする、診断用負荷試験剤。
[項2]
さらに、前記アルドステロン量の検出が、アルドステロン/基準ホルモン比によって表されることを特徴とする、項1記載の診断用負荷試験剤。
[項3]
上記基準ホルモンが、コルチゾールである、項2記載の診断用負荷試験剤。
[項4]
前記負荷試験剤を、被検体に投与後、90~180分経過後に被検体から得られる試料において、アルドステロン/コルチゾール比を検出し、該アルドステロン/コルチゾール比が1.20超過である場合に、該被検体をアルドステロン産生腺腫と判断する、項1~3のいずれか1項記載の診断用負荷試験剤。
[項5]
前記負荷試験剤を、被検体に投与後、90~180分経過後に被検体から得られる試料において、アルドステロン/コルチゾール比を検出し、該アルドステロン/コルチゾール比が1.20以下である場合に、該被検体を特発性アルドステロン症と判断する、項1~4のいずれか1項記載の診断用負荷試験剤。
[項6]
前記試料が、前記負荷試験剤を、被検体に投与後、110~155分後に得られるものである、項1~5のいずれか1項記載の診断用負荷試験剤。
[項7]
前記被検体から得られた試料が、肢静脈から得られた血液である、項1~6のいずれか1項記載の診断用負荷試験剤。
さらには、本発明では、以下の方法を提供する。
[項8]
アルドステロン産生腺腫と突発性アルドステロン症の識別を試験するための方法であって、
副腎皮質刺激ホルモンを有効成分とする負荷試験剤を、被検体に投与後、90~180分経過後に被検体から得られる試料において、アルドステロン量と基準ホルモン量を測定する工程;
アルドステロン/基準ホルモン比を基準値と比較する工程を含み、これにより、該被検体のアルドステロン産生腺腫と突発性アルドステロン症の識別を試験する方法。
[項9]
上記基準ホルモンが、コルチゾールであることを特徴とする、項8記載の方法。
[項10]
前記アルドステロン/コルチゾール比が1.20超過である場合に、該被検体がアルドステロン産生腺腫と識別する項8又は9に記載の方法。
[項11]
前記アルドステロン/コルチゾール比が1.20以下である場合に、該被検体が突発性アルドステロン症と識別する項8又は9に記載の方法。
[項12]
前記試料が、前記負荷試験剤を、被検体に投与後、110~155分後に得られるものである、項8~11のいずれか1項記載の方法。
[項13]
前記被検体から得られた試料が、肢静脈から得られた血液である、項8~12のいずれか1項記載の方法。
本発明により、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症とを、体液を用いて、低侵襲の方法で識別することができる。
図1は、副腎皮質刺激ホルモン負荷試験の結果を示すグラフである。図1Aは、負荷後の経時的な血漿アルドステロン濃度を示す。図1Bは、負荷後の経時的なコルチゾール濃度を示す。図1Cは、負荷後の経時的な血漿アルドステロン濃度とコルチゾール濃度の比を示す。図1Dは、手術後に、すべての患者群で、アルドステロン過剰分泌が抑えられたことを示す図である。 副腎皮質刺激ホルモン負荷試験のマーカーの各ROC曲線を示すグラフである。 図3は、試験1において、副腎皮質刺激ホルモン負荷試験で120分におけるPAC/コルチゾール比1.20をカットオフ値として設定した状態での散布図を示すグラフである。図3Aは、すべての患者についての値を示すグラフである。図3Bは、PAC/コルチゾール比2までの拡大図である。 試験2において、副腎皮質刺激ホルモン負荷試験で120分におけるPAC/コルチゾール比1.20をカットオフ値として設定した状態での散布図を示すグラフである。 試験2において、副腎皮質刺激ホルモン負荷試験で150分におけるPAC/コルチゾール比1.20をカットオフ値として設定した状態での散布図を示すグラフである。
本発明は、副腎皮質刺激ホルモンを用いた、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の試験方法、又は診断の補助の為の方法に関する。さらに、本発明は、副腎皮質刺激ホルモンを有効成分とする、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の診断用負荷試験剤に関する。
(副腎皮質刺激ホルモン)
副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone、副腎皮質刺激ホルモン)は、下垂体前葉から分泌され、副腎皮質を刺激するホルモンのひとつである。副腎で発現するMC-2R副腎皮質刺激ホルモンレセプターに結合することで機能を発揮する。
副腎皮質刺激ホルモンは、様々な生体成長ステロイドおよび生理学的制御ステロイドの産生における介在物質であると考えられている。例えば、コルチゾール等のグルココルチコイドの分泌を刺激する。
本発明で用いられる副腎皮質刺激ホルモンは、例えば、テトラコサクチド酢酸塩などの合成副腎皮質刺激ホルモンであり得るが、これに限定されない。テトラコサクチド酢酸塩の市販品として、コートロシン(第一三共株式会社製)が例示される。
(アルドステロン)
アルドステロンは、副腎皮質ホルモンの1種であり、鉱質コルチコイド(ミネラルコルチコイド)である。アルドステロンは、副腎皮質の球状層から分泌され、血漿中のナトリウムや、血圧及び血液量の調節を行う。
(基準ホルモン)
本明細書で、「基準ホルモン」というときには、限定はされないが、副腎皮質刺激ホルモンを被検体に投与した場合に、被検体のそれぞれについて、時間経過に関係なく、あるいは、少なくとも副腎皮質刺激ホルモン投与後90~180分経過後の間に、被検体由来試料中で、ほぼ一定、又は一定の値を示し得るホルモンを示す。限定はされないが、コルチゾールなど、が基準ホルモンとなり得る。
(原発性アルドステロン症)
日本内分泌学会のガイドラインに従って、アルドステロン・レニン同時測定(血漿アルドステロン濃度(PAC)/血漿レニン活性(PRA)比)(ARR)で、この比が20(アルドステロンの単位ng/dL)または200(アルドステロンの単位pg/mL)以上の場合、原発性アルドステロン症と判断される。本発明では、限定はされないが、原発性アルドステロン症と診断をされた対象を主な被検体とすることができる。これまでは、原発性アルドステロン症と診断を受けた被検体は、腹部CTによる副腎腫瘍の確認を行い、さらに副腎静脈サンプリングにて手術療法の適否を判断していた。しかしながら、副腎静脈サンプリングは非常に難易度が高く、侵襲的であり、医療従事者にも、患者にも負担の大きい手法である。一方で、副腎腫瘍は、腹部CTによる検出では見出せない微小腫瘍による症例も多い為、副腎静脈サンプリングを行わずに、アルドステロン産生腺腫と手術の必要のない他の疾患とを鑑別することは、困難であった。すなわち、もし、アルドステロン産生腺腫であれば、手術等の処置が必要となるが、特発性アルドステロン症と判断される場合には、薬物療法が施され、その治療方針は全く異なる。
原発性アルドステロン症は、副腎皮質過形成症及び副腎癌腫等を含む多くの原因がある。この疾患は、大きく、片側性病変と両側性病変の2つに分類する場合もあるが、実際には、原発性アルドステロン症の原因のほとんどがアルドステロン産生腺腫か特発性アルドステロン症であり、副腎癌を含め他の原因はまれである。
(アルドステロン産生腺腫)
アルドステロン産生腺腫(以下、APAともいう)は、副腎腫瘍の1つの病態である。アルドステロン産生腺腫とは、例えば、Endocrine Journal 58:711-721, 2011に記載の基準によって診断される病態をいう。アルドステロン産生腺腫は、腺腫の存在する副腎摘除で治癒が期待できる疾患であるが、診断されないまま本態性高血圧として降圧薬による治療を受けている場合もある。本発明の診断用負荷試験剤は、副腎皮質刺激ホルモンを被検体に投与し、血中のアルドステロン等の特定ホルモン濃度の分析に基づいて、簡易に侵襲性が低い態様で、アルドステロン産生腺腫を検出することができる。
(特発性アルドステロン症)
特発性アルドステロン症(以下、IHAともいう)は、例えば、Endocrine Journal 58:711-721, 2011に記載の基準によって診断される病態をいう。原発性アルドステロン症の中で、臨床上、特に良く見られる病態である。
[副腎皮質刺激ホルモンを用いた、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の試験方法、又は診断の補助の為の方法]
(負荷試験)
通常、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験(ACTH負荷試験)は、原発性アルドステロン症の確認試験には不十分であるとされている。本発明の方法においては、主に、原発性アルドステロン症とされた被験体に対して、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験(ACTH負荷試験)を行い、アルドステロン産生腺腫(APA)と特発性アルドステロン症の識別を簡易に効率的に行うことができる。測定に有用である確定診断のために、現在は、カプトプリル負荷試験(CCT)、フロセミド立位試験(FUT)、および生理食塩水負荷試験を含む3種類の確認試験のうち少なくとも2種類が推奨されている。
一方、本発明では、副腎皮質刺激ホルモンを、被検体に投与後、90~180分経過後に被検体から得られる試料において、アルドステロン産生腺腫の被検体由来試料では、アルドステロン値が高値になり、特発性アルドステロン症場合には、値が低下することを見出した。
従って、本願発明の方法を用いることによって、特に他の追加の負荷試験を行っても行わなくても、副腎皮質刺激ホルモンの投与から一定期間経過した後に、具体的には、90~180分経過後に、被検体から得られる試料のアルドステロン量を測定することによって、簡易に迅速に、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別が可能となる。
さらに、一方では、基準ホルモンは、被検体のそれぞれについて、時間経過に関係なく、一定の値を示すことを見出した。従って、例えば、投与から一定期間経過後に、アルドステロン/基準ホルモン比を検出することで、より明瞭にアルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症を識別することが可能となる。
(測定方法等)
本発明における、被検体からの被検体由来試料の採取は、限定はされないが、副腎皮質刺激ホルモンを、被検体に投与後、90~180分経過後に少なくとも1回行う。本発明における、被検体からの体液、代表的には、血液の採取は、限定はされないが、副腎皮質刺激ホルモンを、被検体に投与後、好ましくは、100~160分経過後、さらに好ましくは、110~155分経過後、さらにより好ましくは、120分±1分経過後、最も好ましくは、120分経過後に行う。場合によっては、150分±1分経過後まで行うことも好ましい。但し、さらに、例えば、副腎皮質刺激ホルモンを、被検体に投与後、30分後、及び/又は60分後などの他の時点でのサンプルとともに、異なるタイミングで少なくとも1回ずつの合計2回以上、好ましくは、異なるタイミングで少なくとも1回ずつの合計4回以上サンプリングを行い、それらの知見と併せて診断を補助することも好ましい。
ここで、副腎皮質刺激ホルモンの投与量は、0.1~1mg、好ましくは、0.25~0.5mgであり得る。
例えば、副腎皮質刺激ホルモンを、5%ブドウ糖注射液、生理食塩液、注射用水に溶解し、筋注又は静注することで行うことで、投与することができる。ここで、静注は、好ましくは、時間をかけない短時間投与であり、より好ましくは、投与開始から投与終了まで1分程度である。なお、被検体由来試料の採取で、90~180分経過後という時には、投与終了後を起点とした時間経過を指す。
投与時に被検体は、限定はされないが、安静の状態であることが好ましい。例えば、仰臥位15分~60分程度、好ましくは、20分~40分程度安静にした状態の後、静脈注射を行い投与することができる。
本明細書において、被検体とは、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の対象となる哺乳動物を指し、限定はされないが、好ましくは、サル、イヌ、ネコ、マウス、あるいはヒトである。本発明においては、限定はされないが、原発性アルドステロン症と診断された被検体を検出対象とすることが好ましい。
被検体由来試料とは、被検体に由来する体液を指し、体液そのものの他、体液の濃縮液、希釈液、あるいはその他の適宜の処理済みの液体を指す。ここで、体液は、限定はされないが、例えば、血液(全血、血漿、血清)、尿、を指す。好ましくは、体液は、血液である。ここで、血液などの体液の採取量は、100μl~100ml、好ましくは、500μl~100ml、さらに好ましくは、1ml~50mlである。限定はされないが、血液は、肢静脈から得られることが好ましい。肢静脈は、足や腕の静脈であり、特には、腕静脈であることが簡易で好ましい。
従来の副腎静脈サンプリングにおいては、副腎静脈から血液を採取する必要があり、左右にある副腎のどちら側からアルドステロンが多量に含まれているかを調べることによって、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別していたが、本発明の方法によれば、このような左右の副腎からのアルドステロン量を区別することなく、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別が可能となる。
本発明においては、肢静脈以外からの採血を排除するものではないが、肢静脈からの採血は、本発明の方法を簡易に迅速に侵襲性が少なく行う為に、より有効である。
ここで、体液の処理は、より詳細には、濃縮、希釈、分画、脱塩等の前処理、グリセリン等の保存剤、プロテアーゼ阻害剤等の安定化剤、防腐剤を加えることなどを指す。冷蔵または冷凍処理した後に常温に戻すこと、冷蔵または冷凍処理前後のいずれかで適宜の処理を行うことなども含まれる。さらに、例えば体液が血液の場合には、適宜の処理として抗凝血剤処理を行うこともできる。これらの処理を組み合わせることも可能である。遠心分離操作などで、血漿を分別し、試験に供することもできる。
濃縮は、例えば、体液が血液の場合、試料中の最終的な総タンパク量が1g/dL~5g/dL、より好ましくは2g/dL~3g/dL程度となるように調製することが好ましい。この濃縮液をそのまま測定に供することも可能であるが、さらに総タンパク質量を希釈して調整して測定に供することもできる。
濃縮は、Vivaspin(登録商標、サルトリウス・ジャパン株式会社製)、アミコンウルトラ(メルクミリポア社製)などを使用して、製造者の指示に従って使用することもできる。
希釈は、蒸留水や緩衝液を用いて行うことができ、試料の調整にも利用することができる。
試料中のアルドステロン又はコルチゾールなどの基準ホルモンの量は、試料中に含まれる質量、容量、濃度などで表わすことができる。さらには、蛍光強度、吸光度等で表わすことも可能である。
本発明におけるアルドステロンの検出方法は、被検体由来試料中に含まれるホルモン量を検出する方法であれば特に制限されるものではないが、抗体を用いたラジオイムノアッセイまたはエンザイムイムノアッセイで検出する方法を挙げることができる。
ラジオイムノアッセイおよびエンザイムイムノアッセイによる方法としては、アルドステロン又はコルチゾールなどの基準ホルモンに特有の抗原を認識することができる抗体を用いることが望ましい。具体的には、これらの抗原決定基を特異的に認識する抗体が挙げられる。このような抗体は、対応するアルドステロン又はコルチゾールなどの基準ホルモンとキャリアータンパク質との複合体を抗原として、ニワトリ、ラット、マウス、ウサギ等に投与し、免疫することにより作製することができる。抗原をカラムに固定し、免疫動物より得られたポリクローナル抗体を精製した抗体を作製してもよい。モノクローナル抗体の作成方法も当業者に公知である。
エンザイムイムノアッセイとしては、ELISA法を用いることができる。ELISA法では、検体を96穴プレート中で、上述の一次抗体、及び、HRP標識二次抗体で処理することで、目的のアルドステロン又はコルチゾールなどのホルモンをHRPの酵素活性に由来する発色または化学発光で検出する。サンドイッチ法などを用いることも可能である。
被検体の代謝状態の変動による結果のばらつきを補正するため、被検体由来試料中のアルドステロン量は、ラジオイムノアッセイ、或いは、エンザイムイムノアッセイでその存在量を検出した後、同じく被検体由来試料中の基準のホルモンの存在量と比較することができる。基準ホルモンとしては、特に限定はされないが、コルチゾールが好ましく用いられ得る。
被検体由来試料中のアルドステロンと、コルチゾールなどの基準ホルモンの存在量を、相対比で表すことが特に好ましい。
そして、例えば、被検体由来試料におけるアルドステロンと基準ホルモンの量比を検出し、基準ホルモンに比べて、アルドステロンが有意に増加している場合には、被検体は、アルドステロン産生腺腫と判断することができる。
ここで、基準ホルモンとしては、例えばコルチゾールを用いることができる。従って、アルドステロンとコルチゾールの量比を検出し、コルチゾールに比べて、アルドステロンが有意に増加している場合には、被検体は、アルドステロン産生腺腫と判断することができる。例えば、アルドステロン/コルチゾール相対比で、1.20以下である場合には、アルドステロン産生腺腫ではないと判断し得る。すなわち、例えば、ここで、この値が1.20以下である場合には、特発性アルドステロン症の可能性が高いと判断できる。アルドステロン/コルチゾール相対比で、1.20超過、好ましくは、アルドステロン/コルチゾール相対比で、1.21以上である場合には、被検体をアルドステロン産生腺腫と判断し得る。ここで、それぞれのホルモンの測定方法は、実施例に詳述した方法を用いる。
[診断用負荷試験剤]
本発明の診断用負荷試験剤は、副腎皮質刺激ホルモンを有効成分とする、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の診断用負荷試験剤であり、上記のようなアルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の試験方法、又は診断の補助の為の方法に用い得る。
本発明の診断用負荷試験剤には、有効成分として、副腎皮質刺激ホルモンを含む。さらに、添加剤として、マンニトール等の糖アルコールを含むこともできる。
本発明の診断用負荷試験剤の使用方法としては、前述のアルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の試験方法、又は診断の補助の為の方法に記載した内容に準ずる。
[副腎皮質刺激ホルモンを用いた、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の試験用キット]
本発明のキットは、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の試験用又は診断用のキットであり、副腎皮質刺激ホルモンを含むことを特徴とする。本発明のキットには、限定はされないが、副腎皮質刺激ホルモン以外に、用時調製用溶解液、針、指示書等を含むことが好ましい。
本発明においては、以下の態様があり得る。
[項1]
副腎皮質刺激ホルモンを有効成分とする、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の診断用負荷試験剤であって、
前記負荷試験剤を、被検体に投与後、90~180分経過後に被検体から得られる試料において、アルドステロン量を検出することを特徴とする、診断用負荷試験剤。
[項2]
さらに、前記アルドステロン量の検出が、アルドステロン/基準ホルモン比によって表されることを特徴とする、項1記載の診断用負荷試験剤。
[項3]
上記基準が、コルチゾールである、項2記載の診断用負荷試験剤。
[項4]
前記負荷試験剤を、被検体に投与後、90~180分経過後に被検体から得られる試料において、アルドステロン/コルチゾール比を検出し、該アルドステロン/コルチゾール比が1.20超過である場合に、該被検体をアルドステロン産生腺腫と判断する、項1~3のいずれか1項記載の診断用負荷試験剤。
[項5]
前記負荷試験剤を、被検体に投与後、90~180分経過後に被検体から得られる試料において、アルドステロン/コルチゾール比を検出し、該アルドステロン/コルチゾール比が1.20以下である場合に、該被検体を特発性アルドステロン症と判断する、項1~4のいずれか1項記載の診断用負荷試験剤。
[項6]
前記試料が、前記負荷試験剤を、被検体に投与後、110分~155分後に得られるものである、項1~5のいずれか1項記載の診断用負荷試験剤。
[項7]
前記被検体から得られた試料が、肢静脈から得られた血液である、項1~6のいずれか1項記載の診断用負荷試験剤。
さらには、本発明では、以下の方法を提供する。
[項8]
アルドステロン産生腺腫と突発性アルドステロン症の識別を試験するための方法であって、
副腎皮質刺激ホルモンを有効成分とする負荷試験剤を、被検体に投与後、90~180分経過後に被検体から得られる試料において、アルドステロン量と基準ホルモン量を測定する工程;
アルドステロン/基準ホルモン比を基準値と比較する工程を含み、これにより、該被検体のアルドステロン産生腺腫と突発性アルドステロン症の識別を試験する方法。
[項9]
上記基準ホルモンが、コルチゾールであることを特徴とする、項8記載の方法。
[項10]
前記アルドステロン/コルチゾール比が1.20超過である場合に、該被検体がアルドステロン産生腺腫と識別する項7又は8に記載の方法。
[項11]
前記アルドステロン/コルチゾール比が1.20以下である場合に、該被検体が突発性アルドステロン症と識別する項8又は9に記載の方法。
[項12]
前記試料が、前記負荷試験剤を、被検体に投与後、110~155分後に得られるものである、項8~11のいずれか1項記載の方法。
[項13]
前記被検体から得られた試料が、肢静脈から得られた血液である、項8~12のいずれか1項記載の方法。
ここで、上記項1~13のいずれにおいても、アルドステロンの量は、血漿中アルドステロン濃度であり得る。血漿中アルドステロン濃度は、スパック-Sアルドステロンキット(富士レビオ株式会社製)を用いたラジオイムノアッセイによる測定方法により、製造者の使用指示(2014年11月改定第5版)に忠実に従い行う測定方法に従って求められる測定値であり得る。
ここで、上記項1~13のいずれにおいても、コルチゾールの量は、血漿中コルチゾールの濃度であり得る。血漿中コルチゾール濃度は、ケミルミコルチゾールII(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社)及びケミルミ ADVIA Centaur XPTケミルミアナライザー全自動化学発光免疫測定装置(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社)を用いて、化学発光イムノアッセイにより、製造者の使用指示(2016年6月改定第8版)と機器の取扱い説明書に忠実に従って求められる測定値であり得る。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[ホルモンの血漿中濃度測定]
以下の実施例において、アルドステロン及びコルチゾール血液中(血漿中)濃度を、以下のように測定して求めた。
(血漿中アルドステロンの測定)
血漿中アルドステロン濃度の測定は、市販のキット(スパック-Sアルドステロンキット;富士レビオ株式会社製)を用いて、ラジオイムノアッセイにより、製造者の使用指示(2014年11月改定第5版)に忠実に従い、行った。
まず、被検体から得た血液を、ただちにEDTA-2Na入りチューブに移し、遠心分離を行い、測定時まで-20℃で保存した。測定は、血液採取から、1週間以内に行った。測定に際し、試料の希釈は行わなかった。
次に、キットに含まれるアルドステロン抗体チューブに、標準アルドステロン溶液、又は室温に戻した被検体の血漿を100μlとった。ここで、標準アルドステロン溶液は標準曲線用抗体チューブに、被検体の血漿は未知検体用抗体チューブに入れた。次に、それぞれのチューブに、ヨウ化アルドステロン試薬500μlを加え、室温(25℃)で3時間振盪した。振盪後、上清を吸引した後、抗体チューブの放射能をγ-カウンター(ARC950:株式会社日立製作所製)で測定した。得られた標準曲線と被検体の血漿から得られた値を照合することで、アルドステロン濃度を求めた。
(血漿中コルチゾールの測定)
血漿中コルチゾール濃度の測定は、市販のキット(ケミルミコルチゾールII:シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社)及びケミルミ ADVIA Centaur XPTケミルミアナライザー全自動化学発光免疫測定装置(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社)を用いて、化学発光イムノアッセイにより、製造者の使用指示(2016年6月改定第8版)と機器の取扱い説明書に忠実に従い、行った。
まず、被検体から得た血液を、ただちにEDTA-2Na入りチューブに移し、遠心分離を行い、測定時まで-20℃で保存した。測定は、血液採取から、1週間以内に行った。
次に、機器にキット中の試薬を充填し、次に被検体の血漿20μlを充填し、コルチゾール濃度を求めた。
[原発性アルドステロン症における診断の手順]
血漿アルドステロン濃度(PAC)/血漿レニン活性(PRA)比が20以上で手術予定の患者が対象である。検査前に降圧薬としてCaチャネル拮抗および/またはα遮断薬を投与した。必要に応じて経口カリウム補給を行った。患者は病院で塩化ナトリウム10g/日を摂取していた。確認試験のための基礎血液採取はすべて、一夜絶食後の8:00~8:30AMに行った。
[カプトプリル負荷試験]
患者は仰臥位で60分間安静にした後、カプトプリル25mgを服用した。カプトプリル服用前後に血液検体を採取した。カプトプリル投与60分後の血漿アルドステロン濃度(PAC)/血漿レニン活性(PRA)比20以上を陽性とした。CCTにおけるPACおよびPRAの基礎サンプリングを当該患者の基礎値としてこの分析に用いた。
[フロセミド立位負荷試験:FUT]
仰臥位で30分間安静にした後、患者に1mg/kgのフロセミド(60mgまで)を静脈内注射し、2時間立位で維持した。フロセミド負荷後120分で2.0ng/ml/hr以下のPRA値を陽性とした。
[副腎皮質刺激ホルモン刺激試験]
仰臥位で30分間安静にした後、患者は250μgの合成副腎皮質刺激ホルモン(コートロシン;第一三共株式会社製)を静脈内注射により投与された。血液サンプルを、通常の採血と同様に腕から、負荷前および負荷後30分後、60分後、および120分後に採取した。さらに、追加で、一部の患者に対して150分後まで採取した。副腎皮質刺激ホルモン注射後のアルドステロンのピーク濃度の時点で、0.85以上のPACとコルチゾールの比(PACmax/コルチゾール)を陽性とした。すなわち、原発性アルドステロン症の可能性が高いと判断された。
[参考試験]
(副腎静脈サンプリング)
副腎静脈サンプリング(AVS)は、専門の放射線科医によって実施された。マイクロカテーテル先端の右副腎静脈への正確な局在を確認するため、全患者において手術中にCT撮影を実施した。両側副腎静脈からの基礎サンプル採取後、250μgの副腎皮質刺激ホルモンを静脈内注射により投与し、30分間待った後、副腎静脈から2回目のサンプル採取を行った。JESのガイドラインによると、副腎皮質刺激ホルモン刺激後の200μg/dL以上の副腎静脈コルチゾール濃度は、AVSに対する適切なカテーテル留置の証拠と考えられた。副腎皮質刺激ホルモン刺激後の1400ng/dL以上の副腎静脈アルドステロン濃度は、アルドステロン過剰分泌の証拠と考えられた。副腎静脈のアルドステロン過剰分泌の局在は、病型、すなわちアルドステロン産生腺腫又は特発性アルドステロン症の診断のための主要な基準とした。さらに、特発性アルドステロン症の診断には、lateralized ratio(副腎静脈の両側におけるアルドステロン/コルチゾール比の比較;高値側/低値側2.6未満)およびcontralateral ratio(低値側副腎静脈/下大静脈の上側におけるアルドステロン/コルチゾール比の比較;1.0以上)を用いた。
(試験1)
[対象患者]
2011年7月から2018年3月までに、副腎静脈サンプリングによる局在診断までを行い、確認検査をした上で、原発性アルドステロン症と診断された患者の医療記録を対象として選び、分析した。条件を満たす40名の対象者を本試験に組み入れた。本研究は、既に確定診断を行った対象についての研究であり、宮崎大学倫理委員会によって承認されたものである。全対象者に造影CT画像検査を実施した。片側性PAと診断された患者は全て腹腔鏡下副腎摘出術を受け、病理学的診断により最終的にアルドステロン産生腺腫と診断された。また、術後に副腎皮質刺激ホルモン負荷試験にて再検査を行い、アルドステロン分泌の正常化を確認している。
[統計解析]
SPSS Statistics version 22(IBM Japan、Tokyo、Japan)を用いて統計解析を行った。すべての変数について正規分布を確認した後、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の差の有意性を、対応のないt検定またはカイ二乗検定によって評価した。変数間の関係は単純な相関解析を用いて解析した。受信者動作特性(ROC)曲線を作成し、曲線下面積(AUC)を計算して、サブタイプを検出するための最良のマーカーを決定した。平均値±標準偏差で表し、統計的有意性の基準はP<0.05とした。
この結果として、患者のベースライン特性および確認試験の要約を表1に示す。
術後アルドステロン産生腺腫と確認された患者は、特発性アルドステロン症患者よりも重度の低カリウム血症を伴い、血漿アルドステロン濃度(PAC)、PAC/血漿レニン活性(PRA)比および副腎腫瘍の発生率はAPA群で有意に高く、FUT負荷後のPRAはAPA群で有意に低かった。副腎皮質刺激ホルモン負荷試験の結果を図1に示した。PACおよびPAC/コルチゾール比は、APA群の副腎皮質刺激ホルモン負荷試験の各ポイントで有意に高かった。PACmax/コルチゾール比はAPA群で有意に高かった(表1)。アルドステロン産生腺腫を検出するための最良の予測因子を決定するために、ROC曲線分析を行い、AUCを比較した(表2)。血清カリウム、副腎腫瘍、およびCCTやFUTなどの推奨される確認検査は、PAのサブタイプを区別する能力が低かった。対照的に、本発明の副腎皮質刺激ホルモン負荷試験はPAのサブタイプを識別するより高い能力を示した。
既に知られているマーカーを含むいくつかのマーカーを表2にまとめた。特に120分でのPAC/コルチゾール比は標識の中で非常に高いAUC(0.956)を示した。副腎皮質刺激ホルモン負荷試験のマーカーの各ROC曲線を図2に示し、120分後のPAC/コルチゾール比のROC曲線はすべての点で他のマーカーを上回った。
ROC曲線分析を用いて、副腎皮質刺激ホルモン負荷試験で120分における1.20PAC/コルチゾール比のカットオフ値を設定した。アルドステロン産生腺腫患者では、22例中21例が1.20超過(感度95.5%)、特発性アルドステロン症患者では、18例中16例が1.20以下(特異度88.9%)であった(図3)。
Figure 0007386540000001
Figure 0007386540000002
このように、実施例において、従来技術より有用なマーカーおよびカットオフ値、すなわち、ASTにおける120分でのPAC/コルチゾール比1.20を、APAの測定に十分に高い感度(95.5%)で同定した。
ASTは便利で安全な検査であり、AVS前にASTを使用するAPA患者の事前選択は、臨床現場で汎用性があり、有益である。APAはIHAよりもACTH刺激に対して高い反応を示すことが知られているが、実際に、本実施例においても、APA群はIHA群よりも有意に高い反応を示した(図1)。
さらに、APA群はACTH刺激に対して長期間反応し、120分で高レベルのPACを維持した(0分と120分の間の平均差は22.0ng/mLであった)。対照的に、IHA群は120分後にほぼ基礎レベルに戻った(0分と120分の間の平均差は8.5ng/mLであった)。コルチゾールの血清濃度は120分で最高値を示し、それらはAPA群よりもIHA群でわずかに高かった(28.3対25.8g/Dl、P=0.076,120分)。
したがって、IHA群のPAC/コルチゾール比は120分で最も低い値を示し、分散が最も低かった(図1)。これによって、PAのサブタイプのマーカーとして、120分でPAC/コルチゾール比を選択することができることがわかった。すなわち、PAC/コルチゾール値が1.20以下のPA患者は、特発性アルドステロン症である可能性が極めて高いため、AVSから除外できる。
(試験2)
[対象患者]
2018年8月から2019年5月までに、副腎静脈サンプリングによる局在診断までを行い、確認検査をした上で、原発性アルドステロン症と診断された患者の医療記録を対象として選び、前述したASTにおける120分のPAC/コルチゾール比1.20の有効性を検証した。条件を満たす14名の対象者を本試験に組み入れた。全対象者に造影CT画像検査を実施した。片側性PAと診断された患者は全て腹腔鏡下副腎摘出術を受け、病理学的診断により最終的に3例がアルドステロン産生腺腫、1例が片側性過形成と診断された。また、術後に副腎皮質刺激ホルモン負荷試験にて再検査を行い、アルドステロン分泌の正常化を確認している。
前述した試験結果に従って、副腎皮質刺激ホルモン負荷試験で120分における1.20PAC/コルチゾール比のカットオフ値を使用した。片側性病変では3例がアルドステロン産生腺腫であったが、3例中3例が1.20超過(感度100%)であった。1例は片側性過形成であったため、本検討から除外した。特発性アルドステロン症では、10例中8例が1.20以下(特異度80%)であった。
同様に、副腎皮質刺激ホルモン負荷試験で120分における1.20PAC/コルチゾール比のカットオフ値が150分でも有効かどうかを検討した。14名中9名には150分での採取を実施した。アルドステロン産生腺腫では、2例中2例が1.20超過(感度100%)、特発性アルドステロン症では、6例中6例が1.20以下(特異度80%)であった。特記すべきは、120分において1.20を超過していた2例が1.20以下となった(図5)。
試験1及び試験2の内容をまとめると、アルドステロン産生腺腫患者では、25例中24例が1.20超過(感度96.0%)、特発性アルドステロン症患者では、28例中24例が1.20以下(特異度85.7%)であった。
試験1及び試験2を総合すると、従来技術より有用なマーカーおよびカットオフ値、すなわち、ASTにおける120分でのPAC/コルチゾール比1.20を、APAの測定に十分に高い感度(96.0%)で同定した。
ASTは便利で安全な検査であり、AVS前にASTを使用するAPA患者の事前選択は、臨床現場で汎用性があり、有益である。APAはIHAよりもACTH刺激に対して高い反応を示すことが知られているが、実際に、本実施例においても、APA群はIHA群よりも有意に高い反応を示した。
さらに、APA群はACTH刺激に対して長期間反応し、120分で高レベルのPACを維持した(0分と120分の間の平均差は22.0ng/mLであった)。対照的に、IHA群は120分後にほぼ基礎レベルに戻った(0分と120分の間の平均差は8.5ng/mLであった)。コルチゾールの血清濃度は120分で最高値を示し、それらはAPA群よりもIHA群でわずかに高かった(28.3対25.8g/Dl、P=0.076、120分)。
したがって、IHA群のPAC/コルチゾール比は120分で最も低い値を示し、分散が最も低かった。これによって、PAのサブタイプのマーカーとして、120分でPAC/コルチゾール比を選択することができることがわかった。すなわち、PAC/コルチゾール値が1.20以下のPA患者は、特発性アルドステロン症である可能性が極めて高いため、AVSから除外できる。

Claims (4)

  1. 副腎皮質刺激ホルモンを有効成分とする、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の、診断用負荷試験剤であって、
    前記負荷試験剤を、被検体に投与後、90~180分経過後に被検体から得られる血液において、アルドステロン/コルチゾール比を検出し、該アルドステロン/コルチゾール比が1.20超過である場合に、該被検体をアルドステロン産生腺腫と判断する、診断用負荷試験剤。
  2. 副腎皮質刺激ホルモンを有効成分とする、アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症の識別の為の、診断用負荷試験剤であって、
    前記負荷試験剤を、被検体に投与後、90~180分経過後に被検体から得られる血液において、アルドステロン/コルチゾール比を検出し、該アルドステロン/コルチゾール比が1.20以下である場合に、該被検体を特発性アルドステロン症と判断する、診断用負荷試験剤。
  3. 前記血液が、前記負荷試験剤を、被検体に投与後、110~155分後に得られるものである、請求項1又は2のいずれか1項記載の診断用負荷試験剤。
  4. 前記被検体から得られた血液が、肢静脈から得られた血液である、請求項1~3のいずれか1項記載の診断用負荷試験剤。
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