JP7382613B1 - 部分義歯 - Google Patents

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雅也 山上
明典 森澤
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【課題】把持機能及び維持機能を確保しつつ、クラスプの長さを短縮した部分義歯を実現する。【解決手段】部分義歯10は、奥歯の欠損部位に設置される人工歯11と、人工歯11に一体形成されて鉤歯5におけるアンダーカット部5aに引っ掛けられる複数のクラスプ12とを備えている。複数のクラスプ12は、前側クラスプ12aと、後側クラスプ12bとを有する。前側クラスプ12aの付け根側の内面16は、少なくとも高さ方向の歯根側が、アンダーカット部5aの前面に沿って、歯根に近づくに従って後ろ側に進出する形状を呈し、前側クラスプ12aの先端は、歯列方向における鉤歯5の中心位置Xよりも人工歯11側に位置している。【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用 有限会社ワイ・デンタル・ラボは、森澤明典が発明した部分義歯について、2022年8月~2023年5月に説明し、2022年9月~2023年6月に販売した。
本発明は、クラスプを有する部分義歯等に関する。
部分的に失われた歯を補う歯科用補綴物の1つとして、部分義歯が用いられる。部分義歯には、隣の歯(残存する天然歯)への固定手段として、クラスプを有するものがある。クラスプは、人工歯から突出しているため、部分義歯の中で他の部分よりも高い強度が求められ、また歯へ固定するために弾力性も求められる。
特許文献1には、局部床義歯のクラスプが記載されている。このクラスプでは、第1の鉤腕が支台歯の一方側を走行し、第2の鉤腕が支台歯の他方側を走行する。局部床義歯が装着された状態では、第1の鉤腕の鉤尖、及び、第2の鉤腕の鉤尖が、支台歯を付勢しないように支台歯に接触する。
特開2022-61608号公報
ところで、従来のクラスプは、前側クラスプの先端側と後側クラスプの先端側とが、鉤歯のアンダーカット部に接触して鉤歯を前後から抱え込むことで、把持機能及び維持機能を発揮するように設計されている。ここで、義歯を上下に脱着する際に、前側クラスプと後側クラスプを前後に開く必要があるが、クラスプの付け根側は、先端側に比べて、前後に開いた際の変位量が小さい。そのため、仮に前側クラスプの付け根側と後側クラスプの付け根側とが、高さ方向の歯根側で鉤歯のアンダーカット部に接触する場合は、前側クラスプと後側クラスプを前後に大きく開く必要があり、クラスプが付け根側で破損する虞がある。従来のクラスプは、義歯を上下に脱着する際にクラスプが付け根側で破損しないように、クラスプの付け根側は、高さ方向の歯根側で鉤歯のアンダーカット部から離間させている。
しかし、従来のクラスプでは、把持機能及び維持機能が発揮されるようにするために、クラスプの先端側の長さの確保が必要となる。そのため、クラスプ自体も長くなり、審美性が低下する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、把持機能及び維持機能を確保しつつ、クラスプの長さを短縮した部分義歯を実現することにある。
本願発明者は、撓みやすい義歯材料が登場してきたことに着目し、クラスプの付け根側が、高さ方向の歯根側で、鉤歯のアンダーカット部に接触して把持機能及び維持機能を発揮するようにクラスプを設計したとしても、部分義歯を上下に脱着する際に、クラスプが付け根側で破損しない部分義歯を実現できると考えた。
その着想に基づき、第1の発明は、奥歯の欠損部位に設置される人工歯と、人工歯に一体形成されて、鉤歯におけるアンダーカット部に引っ掛けられる複数のクラスプとを備え、複数のクラスプは、歯の前側を通る前側クラスプと、歯の後側を通る後側クラスプとを有し、断面視における前側クラスプの付け根側の内面は、少なくとも高さ方向の歯根側が、アンダーカット部の前面に沿うように、歯根に近づくに従って後ろ側に進出する形状を呈し、前側クラスプの先端は、歯列方向における鉤歯の中心位置よりも人工歯側に位置している、部分義歯である。
第2の発明は、第1の発明において、前側クラスプの付け根側では、鉤歯において最大豊隆部よりも上側のアッパー部に載せられるレストが突出している。
第3の発明は、第2の発明において、レストの突出長は、該レストの先端が鉤歯の頂面に到達しないように設定されている。
第4の発明は、前歯の欠損部位に設置される人工歯と、人工歯に一体形成されて、鉤歯におけるアンダーカット部に引っ掛けられる複数のクラスプとを備え、複数のクラスプは、歯の前側を通る前側クラスプと、歯の後側を通る後側クラスプとを有し、断面視における前側クラスプの付け根側の内面は、少なくとも高さ方向の歯根側が、アンダーカット部の前面に沿うように、歯根に近づくに従って後ろ側に進出する形状を呈し、前側クラスプの先端は、歯列方向における鉤歯の人工歯側から3分の2の位置よりも人工歯側に位置している、部分義歯である。
本発明において、前側クラスプの付け根側の内面は、少なくとも高さ方向の歯根側が、鉤歯のアンダーカット部の表面に沿って、歯根に近づくに従って歯側へ進出する形状を呈する。そのため、前側クラスプが、付け根側で把持機能及び維持機能を発揮するように、部分義歯を設計可能である。これにより、クラスプの長さが短縮可能となるため、本発明では、前側クラスプの先端が、歯列方向における鉤歯の中心位置よりも人工歯側に位置するようにしている。本発明によれば、把持機能及び維持機能を確保しつつ、クラスプの長さを短縮した部分義歯を実現することができる。
図1(a)は、実施形態に係る部分義歯の斜視図であり、図1(b)は、歯列模型に部分義歯を装着した状態の斜視図である。 図2(a)は、実施形態に係る歯列模型に部分義歯を装着した状態の正面図であり、図2(b)は、部分義歯が取り外された歯列模型の正面図であり、図2(c)は、歯列模型に装着した状態の上面図である。 図3(a)は、図2(c)のA-A断面図であり、図3(b)は、図2(c)のB-B断面図である。 図4は、「本実施形態の効果」に記載した部分義歯について、歯列模型に装着した状態の上面図である。 図5(a)は、実施形態の第1変形例に係る部分義歯の正面図であり、図5(b)は、上側の少し前方から部分義歯を見た図であり、図5(c)は、上側の少し後方から部分義歯を見た図である。 図6は、実施形態の第1変形例に係る部分義歯について、側方のやや後側から見た図である。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態及び変形例は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本実施形態は、樹脂材料などの単一材料のみからなる部分義歯10である。以下では、奥歯の部分義歯10を例にして説明を行う。
[部分義歯の構成]
部分義歯10は、図1(a)に示すように、床(義歯床)がないタイプの部分義歯である。部分義歯10は、図1(b)に示すように、奥歯用の部分義歯であり、天然歯の奥歯が欠損した修復部位Rにおいて、2本の歯(天然歯)5の間に装着される。部分義歯10は、奥歯の欠損部位に設置される人工歯11と、人工歯11に一体形成された複数のクラスプ12a,12bとを備え、これらが一体形成されている。各クラスプ12a,12bは、後述する上側外形線31のうち少なくとも先端側がアンダーカット部5aの表面上にあり、鉤歯5のアンダーカット部5aに引っ掛けられる。なお、本実施形態の部分義歯10では、人工歯の部分が、1本の人工歯11により構成されているが、横方向に並ぶ複数本の人工歯11により構成されていてもよい。
ここで、「アンダーカット部5a」とは、歯5における最大豊隆部5bよりも下側の部分であり、真上から視認できない。最大豊隆部5bは、断面視の歯5において最も外側に膨出する部位である。図1(b)、図2(a)-(b)では、最大豊隆部5bを破線で表す。また、鉤歯5のうち最大豊隆部5bよりも上側の部分を「アッパー部5c」という。
クラスプ12a,12bは、2本の歯5の各々に対し、歯5を前後から挟むように2本ずつ設けられている。具体的に、各歯5に対し、歯5の前側を通る前側クラスプ(外側クラスプ)12aと、歯5の後側を通る後側クラスプ(内側クラスプ)12bとが設けられている。
なお、本明細書において、「前側」は、部分義歯10を装着した状態の唇側であり、「後側」は喉側である。また、上の歯か下の歯かに拘わらず、鉤歯5と部分義歯10について頂面5e側を「上側」、歯根側を「下側」という場合がある。
前側クラスプ12aは、部分義歯10が修復部位Rに装着された状態で、人工歯11の前部から側方に突出し、歯5の前面に沿って湾曲している。後側クラスプ12bは、部分義歯10が修復部位Rに装着された状態で、人工歯11の後部から側方に突出し、歯5の後面に沿って湾曲している。
[クラスプの構成]
クラスプ12a,12bは、図2(a)に示すように、把持機能及び維持機能を発揮するクラスプ本体21と、支持機能を発揮するレスト22とを備え、これらが一体形成されている。クラスプ本体21は、付け根から先端に向かって高さが徐々に小さくなっている。把持機能は、人工歯11に対し水平方向に作用する力に抗う機能である。維持機能は、部分義歯10を浮き上がらせようとする離脱力に抗う機能である。支持機能は、部分義歯10を沈下させる咬合力に抗う機能である。
図2(a)に示すように、前側クラスプ12aの付け根側では、鉤歯5のアッパー部5cに載せられるレスト22が、鉤歯5の頂面5e側に向かって斜めに突出している。後側クラスプ12bの付け根側でも、鉤歯5のアッパー部5cに載せられるレスト22が、鉤歯5の頂面5e側に向かって斜めに突出している。断面視における各レスト22の内面は、アッパー部5cの表面に沿うように、頂面5eに近づくに従って徐々に歯5側に進出する形状を呈する(図3(a)参照)。なお、「クラスプ12a,12bの付け根側」とは、クラスプ12a,12bの長さ方向の真ん中よりも付け根側をいう。
具体的に、クラスプ12a,12bの外周形状を構成する上側外形線31では、付け根側に山状部31aが形成され、山状部31aがレスト22の外周22aを構成する。そして、山状部31aの2つの裾部を結ぶ直線b(図2(a)の点線)と外周22aとにより囲まれた範囲が、レスト22に相当する。ここで、レスト22の高さh(直線bから山状部31aの山頂部までの距離)と、レスト22の幅(直線bの長さ)wの比(h/w)について、例えば0.15以上(好ましくは0.25以上)とすることができる。なお、「上側外形線」とは、正面視において物体の上側の外周形状を構成する線である。「下側外形線」とは、正面視において物体の下側の外周形状を構成する線である。
レスト22の外周22aは、山状部31aの裾部(クラスプ12a,12bの先端側の裾部)から山頂部に至るまでの区間で最大豊隆部5bを横切る。山状部31aの山頂部は、クラスプ12a,12bの付け根側の範囲にあり、鉤歯5上ではアッパー部5cに位置する。そして、外周22aは、山状部31aの山頂部から裾部(クラスプ12a,12bの付け根側の裾部)に至るまでの区間が、鉤歯5のアッパー部5cを通る。この区間は、鉤歯5の上側外形線6の近傍を通る。レスト22の外周22aの大部分は鉤歯5のアッパー部5cを通る。これにより、レスト22は支持機能を発揮する。また、レスト22の突出長(高さ)は、該レスト22の先端が鉤歯5の頂面5eに到達しないように設定されている。レスト22の先端部は、図2(c)に示すように、鉤歯5の頂面5eを覆わない。なお、クラスプ12a,12bの下側外形線32は、歯茎の上端近傍を通る。
前側クラスプ12aの内面16、人工歯11の側面15及び後側クラスプ12bの内面17が繋がった湾曲内面15~17の断面形状は、全長に亘って、高さ方向の歯根側が、鉤歯5のアンダーカット部5aの表面に沿うように、歯根に近づくに従って歯5側へ徐々に進出する形状(以下、「下側進出形状」と言う場合がある。)を呈する。ここで、断面視における歯5のアンダーカット部5aの表面は、全周に亘って、歯根に近づくに従って徐々に後退する形状を呈する(図3(a)、図3(b)参照)。なお、「高さ方向の歯根側」とは、対象面における真ん中よりも歯根側をいう。
具体的に、図3(a)に示すように、断面視における前側クラスプ12aの付け根側の内面16は、高さ方向の少なくとも歯根側が、アンダーカット部5aの前面に沿うように、歯根に近づくに従って徐々に後側に進出する形状を呈する。断面視における前側クラスプ12aの先端側の内面16は、高さ方向に亘って、アンダーカット部5aの前面に沿うように、歯根に近づくに従って徐々に後側に形状を呈する。
また、断面視における後側クラスプ12bの付け根側の内面17は、高さ方向の少なくとも歯根側が、アンダーカット部5aの後面に沿うように、歯根に近づくに従って徐々に前側に進出する形状を呈する。断面視における後側クラスプ12bの先端側の内面17は、高さ方向に亘って、アンダーカット部5aの後面に沿うように、歯根に近づくに従って徐々に前側に進出する形状を呈する。
また、図3(b)に示すように、断面視における人工歯11の側面15は、高さ方向の少なくとも歯根側が、アンダーカット部5aの側面に沿うように、歯根に近づくに従って徐々に歯5側に進出する形状を呈する。上述の湾曲内面15~17の歯根側は、急勾配の滑り台状に形成されている。
本実施形態では、前側クラスプ12a及び後側クラスプ12bの各先端側の内面16,17が、高さ方向に亘って、鉤歯5のアンダーカット部5aに接触してアンダーカット部5aを抱え込む。また、前側クラスプ12a及び後側クラスプ12bの各付け根側の内面16,17は、少なくとも高さ方向の歯根側が、鉤歯5のアンダーカット部5aに接触してアンダーカット部5aを抱え込む。そのため、前側クラスプ12a及び後側クラスプ12bは、先端側でも付け根側でも、把持機能及び維持機能を発揮する。
他方、部分義歯10では、上述の湾曲内面15~17の下端の隙間が狭くなる。そのため、部分義歯10を上下方向に脱着する際に、前側クラスプ12a及び後側クラスプ12bを前後に大きく開く必要がある。本実施形態では、前側クラスプ12a及び後側クラスプ12bを前後に大きく開いてもクラスプ12a,12bが付け根側で破損しないように、部分義歯10の材料として、大きな撓み量に耐えられる樹脂材料(例えばポリアミド系樹脂)を用いている。
また、本実施形態は、前側クラスプ12a及び後側クラスプ12bが、付け根側でも把持機能及び維持機能を発揮するため、クラスプ12a,12bの長さを短縮可能である。前側クラスプ12aの先端は、歯列方向(歯が並ぶ方向)における鉤歯5の中心位置Xよりも人工歯11側に位置している。後側クラスプ12bの先端も、歯列方向における鉤歯5の中心位置Xよりも人工歯11側に位置している。
ここで、歯列方向は、上面視において歯5,11の頂部において前後方向の中心を概ね通るように描いた仮想線Dに沿う方向である(図2(c)参照)。具体的に、中心位置Xは、仮想線Dのうち、鉤歯5の歯茎上の露出部位を通る範囲Rの長さの中心位置で、仮想線Dに直交する線Xの位置である。
また、クラスプ12a,12bの先端は、平面視において、歯5のアンダーカット部5aのうち最も外側に膨出する部位よりも人工歯11側に位置する。クラスプ12a,12bは、平面視において、内面が内側に屈曲し始める屈曲部を有しない。なお、従来のクラスプは、中心位置Xを超えて延びており、先端が歯茎の上端に沿って斜め上を向くが、本実施形態のクラスプ12a,12bは、先端が斜め下を向く。
[部分義歯の製造方法]
部分義歯10の製造方法は、部分義歯10の三次元形状を表す加工用データに基づいて切削加工機による切削加工により、樹脂材料から、加工用データに対応した三次元形状の部分義歯10を削り出すステップを行うものである。部分義歯10は、樹脂材料からの削り出しにより製造される。
当該製造方法では、まず部分義歯10の三次元形状を表す加工用データを準備する準備ステップを行う。具体的に、準備ステップでは、口腔内スキャナーにより、患者の口腔内のスキャニング(光学撮影)を行い、修復部位R及びその周辺の三次元形状を表すスキャンデータが取得される。スキャンデータには、部分義歯10と噛み合う歯の三次元形状も含まれる。スキャンデータは、CAD/CAMシステムに取り込まれる。
続いて、CAD/CAMシステムでは、スキャンデータを基づいて部分義歯10のモデリングを行い、上述の加工用データを作成する。このモデリングにおいては、湾曲内面15~17における高さ方向の歯根側が、全長に亘って下側進出形状を呈し、且つ、各クラスプ12a,12bにレスト22が形成されるように、部分義歯10の形状が設計される。
続いて、加工用データに基づいて、切削加工機による切削加工により、円板状のレジンディスクから、加工用データに対応した三次元形状の部分義歯10を削り出す切削ステップが行われる。そして、部分義歯10を研磨する研磨ステップ、及び、部分義歯10にコーティングを施すステップが行われた後、歯医者に提供する部分義歯10が完成する。
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば、把持機能及び維持機能を確保しつつ、クラスプ12a,12bの長さを短縮した部分義歯10を実現することができる。
ここで、本願発明者は、クラスプ12a,12bが短くなることで、クラスプ12a,12bの付け根側の高さを小さくすることができ、それに伴って、クラスプ12a,12bの付け根側で、上側外形線31と鉤歯5の頂面5eとの間にスペースができ、このスペースをレスト22に利用することを思いついた。本実施形態では、クラスプ12a,12bに、鉤歯5の頂面5eに到達しないようにレスト22が設けられている。ここで、従来の部分義歯のレストは、人工歯の側面の上端から歯側へ突出している。歯では、上面を削ることにより、レストが嵌り込む凹部が形成される。それに対し、本実施形態では、人工歯11の側面の上端から歯5側へ突出するレストを省略可能である。そのため、歯5を削る必要がなく、患者にとって負担が小さい部分義歯10を実現することができる。
なお、本実施形態においても、人工歯11の側面の上端から歯5側へ突出するレスト23を設けてもよい。奥歯の部分義歯10の場合、奥歯側の歯5の方がレスト22の面積を確保しやすく、支持機能を得やすい。そのため、図4に示すように、前歯側の歯5側だけにレスト23を設けてもよい。
[本実施形態の第1変形例]
本変形例は、人工歯11が前歯の欠損部位に設置される部分義歯(前歯用の部分義歯)10である。本変形例の部分義歯10では、図5に示すように、人工歯の部分が、2本の人工歯11により構成されているが、1本の人工歯11又は3本以上の人工歯11により構成されていてもよい。
各クラスプ12a,12bは、図5(a)に示すように、上述の実施形態と同様に、把持機能及び維持機能を発揮するクラスプ本体21と、支持機能を発揮するレスト22とを備えている。各クラスプ12a,12bの付け根側では、鉤歯5において最大豊隆部よりも上側のアッパー部5cに載せられるレスト22が、鉤歯5の頂部5e側に向かって斜めに突出している。なお、部分義歯10では、図5(b)に示すように、人工歯11の側部の上端部11aが、鉤歯5の頂部5eを上側から覆う。
また、断面視における前側クラスプ12a及び後側クラスプ12bの各付け根側の内面16,17は、上述の実施形態と同様に、少なくとも高さ方向の歯根側が、鉤歯5のアンダーカット部5aの表面に沿うように、歯根に近づくに従って歯5側へ進出する形状を呈する(図6参照)。本変形例では、前側クラスプ12a及び後側クラスプ12bは、先端側でも付け根側でも、把持機能及び維持機能を発揮するため、クラスプ12a,12bの長さを短縮可能である。
前側クラスプ12aの先端は、歯列方向における鉤歯5の人工歯11側から3分の2の位置Yよりも人工歯11側に位置している。歯列方向は、上面視において歯5,11の頂部を概ね通るように描いた仮想線Eに沿う方向である(図5(b)参照)。具体的に、位置Yは、仮想線Eのうち、鉤歯5の歯茎上の露出部位を通る範囲Rにおいて、人工歯11側から3分の2の長さの位置で仮想線Eに直交する線Yの位置である。なお、前側クラスプ12aの先端は、歯列方向における鉤歯5の中心位置よりも人工歯11側に位置するようにしてもよい。
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、部分義歯10は、床(義歯床)を有するタイプであってもよい。
上述の実施形態において、前側クラスプ12a及び後側クラスプ12bの一方又は両方からレスト22を省略してもよい。
本発明は、クラスプを有する部分義歯等に適用可能である。

5a アンダーカット部
5b 最大豊隆部
5c アッパー部
10 部分義歯
11 人工歯
12a クラスプ、前側クラスプ
12b クラスプ、後側クラスプ
16 前側クラスプの内面
17 後側クラスプの内面
21 クラスプ本体
22 レスト

Claims (4)

  1. 奥歯の欠損部位に設置される人工歯と、
    前記人工歯に一体形成されて、鉤歯におけるアンダーカット部に引っ掛けられる複数のクラスプとを備え、
    前記複数のクラスプは、前記歯の前側を通る前側クラスプと、前記歯の後側を通る後側クラスプとを有し、
    断面視における前記前側クラスプの付け根側の内面は、少なくとも高さ方向の歯根側が、前記アンダーカット部の前面に沿うように、歯根に近づくに従って後ろ側に進出する形状を呈し、
    前記前側クラスプの先端は、歯列方向における鉤歯の中心位置よりも前記人工歯側に位置し、
    前記前側クラスプは、前記鉤歯のアンダーカット部に引っ掛けられるクラスプ本体と、前記クラスプ本体の付け根側から、前記人工歯から離れる側に斜めに突出するように設けられて前記鉤歯において最大豊隆部よりも上側のアッパー部に載せられるレストとを有する、部分義歯。
  2. 前記レストの突出長は、該レストの先端が前記鉤歯の頂面に到達しないように設定されている、請求項に記載の部分義歯。
  3. 前歯の欠損部位に設置される人工歯と、
    前記人工歯に一体形成されて、鉤歯におけるアンダーカット部に引っ掛けられる複数のクラスプとを備え、
    前記複数のクラスプは、前記歯の前側を通る前側クラスプと、前記歯の後側を通る後側クラスプとを有し、
    断面視における前記前側クラスプの付け根側の内面は、少なくとも高さ方向の歯根側が、前記アンダーカット部の前面に沿うように、歯根に近づくに従って後ろ側に進出する形状を呈し、
    前記前側クラスプの先端は、歯列方向における前記鉤歯の前記人工歯側から3分の2の位置よりも人工歯側に位置し、
    前記前側クラスプは、前記鉤歯のアンダーカット部に引っ掛けられるクラスプ本体と、前記クラスプ本体の付け根側から、前記人工歯から離れる側に斜めに突出するように設けられて前記鉤歯において最大豊隆部よりも上側のアッパー部に載せられるレストとを有する、部分義歯。
  4. 前記複数のクラスプの各々は、前記人工歯と同一材料からなる、請求項1又は3に記載の部分義歯。
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