以下に、実施の形態にかかる制御パラメータ算出装置、電力変換システム、制御パラメータ算出方法、および制御パラメータ算出プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる電力供給システムの構成例を示す図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる電力供給システム100は、変電所31~3mと、き電線4と、高電圧き電線6と、電力変換システム50とを備える。mは、2以上の整数である。
電力変換システム50は、制御パラメータ算出装置1と、電力変換器制御装置2と、電力変換器71,72~7nとを備える。nは、3以上の整数である。以下、変電所31~3mの各々を個別に区別せずに示す場合、変電所3と記載する場合があり、電力変換器71,72~7nの各々を個別に区別せずに示す場合、電力変換器7と記載する場合がある。
制御パラメータ算出装置1は、電力変換器71,72~7nの制御パラメータPs1,Ps2~Psnの設定値である制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを算出する。以下、制御パラメータPs1,Ps2~Psnの各々を個別に区別せずに示す場合、制御パラメータPsと記載する場合がある。また、制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnの各々を個別に区別せずに示す場合、制御パラメータ設定値Pxと記載する場合がある。
制御パラメータPsは、例えば、電力変換器7の複数の特性のうち対応する特性を各々規定する複数の要素パラメータを含む。各要素パラメータで規定される電力変換器7の特性は、変換比、高電圧側の下限電圧、高電圧側の上限電圧、低電圧側の下限電圧、低電圧側の上限電圧、低電圧側の下限電流、低電圧側の上限電流、低電圧側の下限電力、低電圧側の上限電力、または制御用係数などである。
変換比は、昇圧比および降圧比のうち少なくとも1つを含む。昇圧比は、き電線4の電圧をどのくらい昇圧して高電圧き電線6へ出力するかの比率を示し、き電線4の電圧に対する高電圧き電線6の電圧の比である。降圧比は、高電圧き電線6の電圧をどのくらい降圧してき電線4へ出力するかの比率を示し、高電圧き電線6の電圧に対するき電線4の電圧の比である。
高電圧側の下限電圧は、電力変換器7から高電圧き電線6へ出力する電圧の下限値であり、高電圧側の上限電圧は、電力変換器7から高電圧き電線6へ出力する電圧の上限値である。低電圧側の下限電圧は、電力変換器7からき電線4へ出力する電圧の下限値であり、低電圧側の上限電圧は、電力変換器7からき電線4へ出力する電圧の上限値である。
また、低電圧側の下限電流は、電力変換器7からき電線4へ出力する電流の下限値であり、低電圧側の上限電流は、電力変換器7からき電線4へ出力する電流の上限値である。低電圧側の下限電力は、電力変換器7からき電線4へ出力する電力の下限値であり、低電圧側の上限電力は、電力変換器7からき電線4へ出力する電力の上限値である。
制御用係数は、変換比に加算する補正値を算出するための係数であり、例えば、低電圧側の電流値に乗算する係数または低電圧側の電圧値に乗算する係数である。例えば、低電圧側の電流値に乗算する係数を「k1」、低電圧側の電圧値に乗算する係数を「k2」、低電圧側の電流値を「I」とし、低電圧側の電圧値を「V」とし、要素パラメータで規定される基準の昇圧比を「Ra」とし、補正後の昇圧比を「R」とする。この場合、補正後の昇圧比Rは、例えば、下記式(1)で表すことができる。
R=Ra+k1×I+k2×V ・・・(1)
制御パラメータPsに含まれる各要素パラメータで規定される電力変換器7の特性は、上述した例に限定されず、上述した例の一部であってもよく、上述した例以外の特性であってもよい。
電力変換器制御装置2は、制御パラメータ算出装置1によって算出された制御パラメータPs1,Ps2~Psnの設定値である制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを電力変換器71,72~7nに設定する。具体的には、電力変換器制御装置2は、制御パラメータ設定値Px1を電力変換器71に設定し、制御パラメータ設定値Px2を電力変換器72に設定し、制御パラメータ設定値Pxnを電力変換器7nに設定する。
各電力変換器7は、直流直流変換回路と、直流直流変換回路を制御する制御部とを有しており、制御パラメータ算出装置1によって設定された制御パラメータPsの設定値に基づいて、き電線4と高電圧き電線6との間の電力変換を行う。高電圧き電線6に印加される電圧は、き電線4に印加される電圧よりも高い。
例えば、き電線4には、変電所3から1500V系の電圧が印加され、高電圧き電線6には、6000V系の電圧が印加される。この場合、各電力変換器7は、き電線4の1500V系の電圧を6000V系の電圧へ昇圧して高電圧き電線6へ出力し、高電圧き電線6の6000V系の電圧を1500V系の電圧へ降圧してき電線4へ出力する。
変電所3は、変電所電圧をき電線4へ印加する。変電所電圧は、電気鉄道の直流電化区間におけるき電線4へ変電所31~3mから印加される直流電圧であり、き電電圧とも呼ばれる。
直流電化区間を走行する鉄道車両51~5kは、き電線4から不図示の架線を介して供給される電力に基づき、力行運転を行う。kは、2以上の整数である。また、鉄道車両51~5kは、制動の際に回生ブレーキにより電力回生を行ってき電線4へ回生電力を供給することができる。以下、鉄道車両51~5kを総称して鉄道車両5と記載する場合がある。各鉄道車両5は、1つの車両または複数の車両を備えており、列車とも呼ばれる。
ここで、電力回生を行っている鉄道車両5を「回生車」と記載し、回生ブレーキで発生した回生電力であって回生電力絞り込み制御がなければ回生可能な最大電力を「回生可能電力」と記載する。また、回生電力絞り込み制御が行われた状態で架線へ回生できる電力を「回生電力」と記載し、回生電力絞り込み制御が行われた状態で架線へ供給される電流を「回生電流」と記載する。
また、回生車で発生した回生電力は、力行運転を行っている鉄道車両5に架線を通じて供給される。以下、力行運転を行っている鉄道車両5を「力行車」と記載し、力行車の走行に必要な電力を「力行電力」と記載する。
ここで、電力変換器7の動作について説明する。図2は、実施の形態1にかかる電力変換器の動作の一例を示す図である。図2に示す例では、鉄道車両51は、力行車であり、鉄道車両51へ供給される電力の経路が矢印で示されている。
鉄道車両51は、電力変換器71のき電線4への接続位置よりも、電力変換器72のき電線4への接続位置の方に近い位置に在線している。そして、変電所31から供給される電力は、電力変換器71で昇圧されて高電圧き電線6へ供給され、高電圧き電線6に供給された電力は、電力変換器72で降圧されてき電線4を介して鉄道車両51へ供給される。
鉄道車両51の位置は、電力変換器71のき電線4への接続位置よりも、電力変換器72のき電線4への接続位置の方に近いため、変電所31から電力変換器71,72を介さずに直接電力が鉄道車両51へ供給される場合に比べ、き電線4での電圧降下が少ない。そのため、電力供給システム100は、電力変換器71,72および高電圧き電線6がない場合に比べて、消費電力量を低減することができる。
図3は、実施の形態1にかかる電力変換器の動作の他の例を示す図であり、鉄道車両51は、力行車であり、鉄道車両5kは、回生車である。図3に示す例では、鉄道車両5kで生じた回生電力が鉄道車両51へ供給される電力の経路が矢印で示されており、鉄道車両5kの回生電力の少なくとも一部が鉄道車両51の力行電力として用いられている。
図3に示す例では、鉄道車両5kからき電線4を介して鉄道車両51電力変換器71,72を介さずに直接回生電力を供給する場合のき電線4による電力損失よりも、鉄道車両5kから、電力変換器72、高電圧き電線6、および電力変換器71を介して鉄道車両51へ回生電力を供給する場合の電力損失が少ない。そのため、電力供給システム100は、電力変換器71,72および高電圧き電線6がない場合に比べて、消費電力量を低減することができる。
図3に示す例において、回生電力に対して力行電力が少ないと、回生電力が過多となりき電線4の電圧が高くなりすぎる。鉄道車両5は、き電線4の電圧が高くなりすぎることを防止するため、回生ブレーキで発生した回生電力の一部または全部のき電線4への供給を抑制する回生絞り込み制御を行う。
回生絞り込み制御は、き電線4に接続された架線に鉄道車両5のパンタグラフが接する点の電圧であるパンタ点電圧に基づいて行われる。図4は、実施の形態1にかかる回生車における回生絞り込み制御の一例を示す図である。横軸はパンタ点電圧を示し、縦軸は回生電力を示す。回生電力はパンタ点電圧と回生電流との積である。
回生車が回生電流、すなわち回生電力を架線に供給すると、パンタ点電圧が上昇する。回生車は、パンタ点電圧が図中に示す回生絞り込み開始電圧値Vstart未満の領域では回生可能な最大電力である回生可能電力を架線へ供給するが、パンタ点電圧が回生絞り込み開始電圧値Vstart以上となる領域では架線へ回生する回生電力を減少させる制御である回生絞り込み制御を行う。
なお、一般に1500V系の直流電化区間では、回生絞り込み開始電圧値Vstartが例えば約1650Vから約1780V程度に設定され、回生絞り込み終了電圧値Vendが例えば約1700Vから約1800V程度に設定される。このような直流電化区間を走行する回生車では、回生絞り込み開始電圧値Vstartから回生絞り込み終了電圧値Vendまでの間でパンタ点電圧が高いほど回生絞り込み量を高めるように回生絞り込み制御が行われる。なお、回生絞り込み開始電圧値Vstartと回生絞り込み終了電圧値Vendとは、常にVstart≦Vendという関係が成り立つ。
かかる回生絞り込み制御が実施された場合、いわゆる回生失効により回生電力の一部が回生車で無駄に消費されるため、消費された回生電力を力行電力として有効に活用することができなくなる。そこで、電力供給システム100は、回生電力も有効に活用して直流電化区間における消費電力量の低減を図ることができるように、制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを算出し、算出した制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnに基づいて、電力変換器71,72~7nを制御する。これにより、直流電化区間における消費電力量の低減を図ることができるように、電力変換器71,72~7nが制御される。
鉄道車両5は、CBTC(Communication Based Train Control)と呼ばれる無線鉄道車両制御システムの鉄道車両である。そのため、各鉄道車両5の位置および電力を示す鉄道車両情報を無線通信によってリアルタイムで収集し、収集した鉄道車両情報に基づいて、制御パラメータPs1,Ps2~Psnをリアルタイムに算出することも考えられる。
この場合、各鉄道車両5から鉄道車両情報を収集するための通信時間、および制御パラメータPs1,Ps2~Psnの最適な値であるPxnを算出するための算出時間が必要である。したがって、各鉄道車両5から収集された鉄道車両情報を用いてリアルタイムに電力変換器71,72~7nを制御しようとすると、通信時間および算出時間によって制御遅れが生じ、十分な省エネルギー効果が得られない可能性がある。また、通信時間および算出時間を考慮した推定演算によって制御パラメータPs1,Ps2~Psnを算出する場合でも、精度よく推定するのは難しく、推定誤差によって十分な省エネルギー効果が得られない可能性がある。
そこで、制御パラメータ算出装置1は、直流電化区間を過去に走行した複数の鉄道車両5の位置および電力の状態を示す走行履歴情報に基づいて、直流電化区間における消費電力量が予め設定された条件を満たすに制御パラメータPs1,Ps2~Psnを算出する。これにより、鉄道車両情報をリアルタイムで収集し電力変換器71,72~7nで制御する場合に比べ、制御遅れによる損失を防ぎ、省エネルギー効果の向上を図ることができる。
図1に示すように、制御パラメータ算出装置1は、記憶部10と、処理部20と、通信部30とを備える。記憶部10は、モデル情報と鉄道車両5の走行履歴情報とを記憶している。モデル情報は、鉄道車両5の回生絞り込み制御に用いられる情報を含む鉄道車両モデル情報と、変電所3の位置情報および電力変換器7の位置情報を含むき電網モデル情報と、電力変換器7の特性を示す情報を含む電力変換器モデル情報とを含む。
また、走行履歴情報は、過去に走行した鉄道車両5の位置および電力の状態を示す情報を含む。鉄道車両5の電力を示す情報は、例えば、鉄道車両5の力行電力、回生電力、および補機電力を示す情報を含む。
処理部20は、記憶部10に記憶されたモデル情報と走行履歴情報とに基づいて、直流電化区間における消費電力量が低減するように制御パラメータPs1,Ps2~Psnの値を変更しながら電力シミュレーションを繰り返し行う。
処理部20は、繰り返し行った電力シミュレーションで算出に用いられた制御パラメータPs1,Ps2~Psnの値のうち、変電所31~3mからき電線4へ供給される総消費電力量が最も小さくなる制御パラメータPs1,Ps2~Psnの値を制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnとして算出する。
処理部20は、鉄道車両5が走行する際の状況に適した制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを算出することができる。ここで、鉄道車両5が走行する際の状況とは、鉄道車両5が走行する時間帯、曜日、季節、および天気といった鉄道車両5の走行に影響を与える状況であり、社会的環境および自然的環境を含む。処理部20は、状況毎の制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを算出することができる。
処理部20は、算出した状況毎の制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを記憶部10に記憶する。処理部20は、記憶部10に記憶した状況毎の制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnのうち現在の状況と一致または類似する状況の制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを電力変換器制御装置2へ通信部30に送信させる。電力変換器制御装置2は、制御パラメータ算出装置1から送信された制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを受信し、受信した制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを電力変換器71,72~7nに設定する。これにより、現在の状況と一致または類似する状況の制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnが電力変換器71,72~7nに設定される。
このように、制御パラメータ算出装置1は、鉄道車両5が走行する際の状況に適した制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを予め算出する。そのため、鉄道車両5が走行する際の状況に合わせた適切な制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnで電力変換器71,72~7nの電力変換動作が行われ、省エネルギー効果の向上をさらに図ることができる。以下、制御パラメータ算出装置1の構成および動作についてさらに詳細に説明する。
図5は、実施の形態1にかかる制御パラメータ算出装置の構成例を示す図である。図5に示す制御パラメータ算出装置1は、上述したように、記憶部10と、処理部20と、通信部30とを備える。通信部30は、ネットワーク8を介して電力変換器制御装置2との間で情報の送受信を有線または無線によって行う。ネットワーク8は、例えば、LAN(Local Area Network)またはWAN(Wide Area Network)である。
通信部30は、鉄道車両5に搭載された無線通信部を備える不図示の車上装置との間で情報の送受信を行うことができる。また、電力変換器制御装置2は、ネットワーク9を介して電力変換器71,72~7nとの間で情報の送受信を有線または無線によって行う。ネットワーク9は、LANまたはWANである。なお、電力変換器71,72~7nは、ネットワーク8に接続されてもよい。この場合、電力変換器制御装置2は、ネットワーク8を介して電力変換器71,72~7nとの間で情報の送受信を行う。
記憶部10は、走行履歴情報記憶部11と、条件情報記憶部12と、モデル情報記憶部13と、制御パラメータ設定値記憶部14とを備える。走行履歴情報記憶部11は、前日以前の複数の鉄道車両51~5kの各々の走行履歴情報を含み、かかる鉄道車両51~5kの走行履歴情報は状況毎に複数の走行履歴情報テーブルに設定される。各鉄道車両5の走行履歴情報には、時刻毎の鉄道車両5の位置および電力を示す情報が含まれる。
図6は、実施の形態1にかかる走行履歴情報記憶部に記憶される走行履歴情報テーブルの一例を示す図である。かかる走行履歴情報テーブル61は条件毎に走行履歴情報記憶部11に記憶される。走行履歴情報テーブル61は、「日種別」、「季節種別」、および「時間帯」の3つの状況種別で分類分けされた走行履歴情報を含む。各状況種別は、鉄道車両5が走行した際の状況を互いに異なる観点から分類分けした状況の種別を示しており、状況パラメータとして設定される。
図6に示す走行履歴情報テーブル61においては、日種別が「平日」、季節種別が「夏」、および時間帯が「00:00~01:00」である3つの状況パラメータで分類分けされた走行履歴情報を含む。すなわち、図6に示す走行履歴情報テーブル61には、過去の夏の平日における0時から1時までの1時間における複数の鉄道車両5の走行履歴情報が含まれる。なお、図6では、鉄道車両5が走行した日時である走行日時の情報は図示されていないが、走行履歴情報テーブル61には、鉄道車両5の走行日時の情報が含まれている。
図6に示す走行履歴情報テーブル61に設定される走行履歴情報は、「時刻」、「鉄道車両ID(IDentifier)」、「方面」、「位置」、および「電力」が互いに関連付けられた情報である。「時刻」は、過去に鉄道車両5が走行した時刻を示す情報であり、「鉄道車両ID」は、鉄道車両5毎に固有に割り当てられた識別情報である。「方面」は、鉄道車両5の進行方向を示す情報であり、「上り」と「下り」のいずれかが設定される。
「位置」は、直流電化区間における鉄道車両5の位置を示す情報であり、例えば、直流電化区間の一端を始端とした鉄道車両5の位置を示す情報である。「電力」は、鉄道車両5の電力を示す情報であり、「電力」が正の場合には、鉄道車両5の電力が力行電力であることを示し、「電力」が負の場合には、鉄道車両5の電力が上述した回生可能電力であることを示している。なお、「電力」は、力行電力および回生可能電力の他、鉄道車両5の補機で消費される電力を含むこともできる。
図6に示す走行履歴情報テーブル61は、「日種別」、「季節種別」、および「時間帯」の3つの状況パラメータで分類分けされているが、走行履歴情報を分類分けする状況パラメータは、「日種別」、「季節種別」、および「時間帯」に限定されない。例えば、状況パラメータは、気温、湿度、天気、および災害といった状況種別の情報を含んでいてもよい。なお、天気の種別には、例えば、晴れ、曇り、雨、暴風、雷、および雪が含まれ、災害の種別には、例えば、地震、火災、および水害が含まれる。
また、複数の状況パラメータには、鉄道車両5が走行する路線区内でのイベントの開催の有無、開催されるイベントの種別、開催時間、および開催規模といった社会的環境の状況を分類分けした情報を含んでいてもよい。なお、イベントの種別には、コンサート、スポーツイベント、フリーマーケット、ファッションショー、マラソン大会、祭り、およびその他のイベントが含まれる。
また、図6に示す「日種別」は、平日か休日かを示す情報であるが、日種別は、曜日を示す情報であってもよい。また、状況パラメータは、「季節種別」ではなく、1月~12月のいずれであるかを示す「月種別」であってもよい。
上述したように、走行履歴情報記憶部11には、1以上の状況パラメータを含む状況情報毎の走行履歴情報テーブル61が含まれるが、鉄道車両5毎に走行履歴情報と状況情報とを関連付けた走行履歴情報テーブル61を走行履歴情報記憶部11に記憶することもできる。図7は、実施の形態1にかかる走行履歴情報記憶部に記憶される走行履歴情報テーブルの他の例を示す図である。
図7に示す走行履歴情報テーブル61は、鉄道車両IDがT1001の鉄道車両5の走行履歴情報と状況情報とを含んでおり、「時刻」、「方面」、「位置」、「電力」、および「状況」が互いに関連付けられた情報である。図7に示す「時刻」、「方面」、「位置」、および「電力」は、図6に示す走行履歴情報テーブル61の「時刻」、「方面」、「位置」、および「電力」と同じである。図7に示す「状況」は、上述した1以上の状況種別を示す状況パラメータの情報を含む。
図5に戻って記憶部10の説明を続ける。記憶部10の条件情報記憶部12は、処理部20によって行われる電力シミュレーションの算出時に用いられる状況条件を示す条件情報を記憶する。図8は、実施の形態1にかかる条件情報記憶部に記憶される条件情報テーブルの一例を示す図である。
図8に示す条件情報テーブル62は、「日種別」と、「季節種別」と、「時間帯」とを関連付けた情報を含む。「日種別」は、平日と休日とを区別する情報であり、「季節」は、春、夏、秋、および冬を区別する情報である。「時間帯」は、時間帯を区別する情報であり、1時間単位の時間帯である。なお、「時間帯」は、p分単位の時間帯であってもよく、q時間単位の時間帯であってもよい。pおよびqは自然数である。
なお、条件情報テーブル62は、図8に示す3つの状況パラメータに限定されず、1以上の状況パラメータを含んでいればよい。図8に示す状況パラメータは、図6および図7に示す走行履歴情報テーブル61の状況パラメータと同様に、自然的環境の状況を分類分けした情報および社会的環境の状況を分類分けした情報を含んでいてもよい。
図5に戻って記憶部10の説明を続ける。記憶部10のモデル情報記憶部13は、モデル情報を記憶する。図9は、実施の形態1にかかるモデル情報記憶部に記憶されるモデル情報の一例を示す図である。図9に示すモデル情報70は、各鉄道車両5の鉄道車両モデル情報71、各変電所3の変電所モデル情報72、き電網モデル情報73、および電力変換器モデル情報74を記憶する。
鉄道車両モデル情報71は、直流電化区間を走行する各鉄道車両5における回生電力絞り込み量を制御するための情報であり、回生絞り込み開始電圧値Vstartの情報および回生絞り込み終了電圧値Vendの情報を含む。なお、直流電化区間を走行する複数の鉄道車両5には、無線通信部を備える車上装置を搭載していない鉄道車両5も含まれている。
変電所モデル情報72は、無負荷電圧および内部抵抗などの情報を含む。無負荷電圧は、架線から鉄道車両5への力行電力の供給および鉄道車両5から架線への回生電力の供給がいずれも行われていない状態である無負荷状態での変電所3の出力電圧である。
き電網モデル情報73は、各変電所3の位置、各電力変換器7の位置、変電所3とき電線4との接続関係、電力変換器7とき電線4との接続関係、電力変換器7と高電圧き電線6との接続関係、き電線4間の接続関係、高電圧き電線6間の接続関係、レール間の接続関係、き電線4の長さ、き電線4の抵抗率、高電圧き電線6の長さ、高電圧き電線6の抵抗率、レールの長さ、およびレールの抵抗率などの各々の情報を含む。
電力変換器モデル情報74は、電力変換器7の特性を示す情報を含む。電力変換器7の特性は、変換比の変更可能範囲、低電圧側および高電圧側の電圧上限値と電圧下限値の変更可能範囲、低電圧側の電流上限値と電流下限値の変更可能範囲、低電圧側の電力上限値と電力下限値の変更可能範囲、および電力変換効率などの各々の情報を含む。変換比は、昇圧比および降圧比の少なくとも1つを含む。
図5に戻って記憶部10の説明を続ける。記憶部10の制御パラメータ設定値記憶部14は、処理部20によって算出された制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを状況情報に関連付けて記憶する。図10は、実施の形態1にかかる制御パラメータ設定値記憶部に記憶される制御パラメータ設定値情報テーブルの一例を示す図である。
図10に示す制御パラメータ設定値情報テーブル63は、「日種別」と、「季節種別」と、「時間帯」と、「制御パラメータ設定値」とを関連付けた情報を含む。図10に示す制御パラメータ設定値情報テーブル63の「日種別」、「季節種別」、および「時間帯」は、図6に示す「日種別」、「季節種別」、および「時間帯」と同じである。また、「制御パラメータ設定値」は、制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを示す情報であり、制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnの各々は、複数の要素パラメータとして、昇圧比、低電圧側の電圧下限値、および低電圧側の電圧上限値を含む。以下、要素パラメータを「Ci,J」と記載する場合がある。iは、電力変換器7のIDであり、jは、要素パラメータのIDである。
制御パラメータ設定値Px1は、昇圧比C1,1、電圧下限値C1,2、および電圧上限値C1,3の各々を要素パラメータとして含む。同様に、制御パラメータ設定値Px2は、昇圧比C2,1、電圧下限値C2,2、および電圧上限値C2,3の各々を要素パラメータとして含む。制御パラメータ設定値Pxnは、昇圧比Cn,1、電圧下限値Cn,2、および電圧上限値Cn,3の各々を要素パラメータとして含む。
以下においては、制御パラメータ設定値Pxに含まれる要素パラメータは、昇圧比、電圧下限値、または電圧上限値であるものとして説明するが、要素パラメータは、昇圧比、電圧下限値、または電圧上限値に限定されない。例えば、制御パラメータ設定値Pxに含まれる要素パラメータは、昇圧比、電圧下限値、電圧上限値、電流下限値、電流上限値、電力下限値、電力上限値、および制御用係数のうち少なくとも1つであればよい。また、制御パラメータ設定値Pxに含まれる要素パラメータは、これら以外の情報であってもよい。
図10に示す例では、日種別が平日、季節種別が夏、かつ時間帯が0時~1時の状況に対して、昇圧比C1,1、電圧下限値C1,2、電圧上限値C1,3、昇圧比C2,1、電圧下限値C2,2、および電圧上限値C2,3が4.00,1200V,1700V,3.90,1190V,1690V,・・・であることを示す制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnが関連付けられている。
また、日種別が平日、季節種別が夏、かつ時間帯が23時~24時の状況に対して、昇圧比C1,1、電圧下限値C1,2、電圧上限値C1,3、昇圧比C2,1、電圧下限値C2,2、および電圧上限値C2,3が4.10,1210V,1710V,4.00,1200V,1700V,・・・であることを示す制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnが関連付けられている。
同様に、図10に示す制御パラメータ設定値情報テーブル63には、平日の冬の0時~1時である状況、平日の冬の23時~24時である状況、および休日の夏の0時~1時である状況などの各々に対して、制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnが関連付けられている。
図5に戻って、制御パラメータ算出装置1の処理部20の説明を行う。図5に示すように、処理部20は、情報取得部21と、制御パラメータ設定値算出部22と、制御パラメータ設定値出力部23とを備える。
情報取得部21は、ネットワーク8および通信部30を介して、鉄道車両5に搭載された無線通信部を備える不図示の車上装置との間で情報の送受信を行い、鉄道車両5の車上装置から鉄道車両情報を取得し、取得した鉄道車両情報を走行履歴情報として走行履歴情報テーブル61に設定する。
なお、情報取得部21は、鉄道車両情報を取得したときの状況を示す状況情報を鉄道車両5の走行履歴情報に関連付けて走行履歴情報テーブル61に設定することができる。鉄道車両情報を取得したときの状況を示す状況情報は、鉄道車両5が走行した際の状況を示す上述した状況情報を含む。
また、情報取得部21の処理は、鉄道車両5の車上装置から取得した鉄道車両情報をそのまま走行履歴情報として走行履歴情報テーブル61に設定することに限定されない。情報取得部21は、複数の鉄道車両5の鉄道車両情報を統計処理し、かかる統計処理の結果を走行履歴情報として走行履歴情報テーブル61に設定することもできる。情報取得部21は、例えば、複数の鉄道車両5が走行した際の状況が同一または類似である複数の鉄道車両情報を平均化した値を含む走行履歴情報を走行履歴情報テーブル61に設定することができる。
直流電化区間には、無線通信部を備える車上装置を搭載していない鉄道車両5が走行する場合がある。例えば、無線通信部を備える車上装置を搭載していない他社の鉄道車両5が直流電化区間に乗り入れることがある。以下、無線通信部を備える車上装置を搭載していない鉄道車両5を非無線鉄道車両5と記載する。
このように非無線鉄道車両5が直流電化区間に乗り入れる場合、情報取得部21は、非無線鉄道車両5の駅での発着時刻の実績を含む非無線鉄道車両情報を、不図示の運行管理システムからネットワーク8および通信部30を介して取得することができる。
情報取得部21は、非無線鉄道車両5の鉄道車両モデル情報を有している。非無線鉄道車両5の鉄道車両モデル情報は、第1モデル情報と、第2モデル情報とを含む。第1モデル情報は、走行シミュレーションによって非無線鉄道車両5の位置および電力を算出するための情報であり、例えば、非無線鉄道車両5の重量、モータ特性、および補機特性を示す情報を含む。第2モデル情報は、非無線鉄道車両5の回生絞り込み開始電圧値Vstartの情報および回生絞り込み終了電圧値Vendの情報を含む情報である。
情報取得部21は、非無線鉄道車両5の鉄道車両モデル情報と非無線鉄道車両情報に基づいて、非無線鉄道車両5の走行履歴情報を生成することができる。非無線鉄道車両5の走行履歴情報には、無線通信部を有する鉄道車両5の走行履歴情報の場合と同様に、非無線鉄道車両5の鉄道車両ID、方面、位置、および電力を示す情報が時刻毎に含まれる。
また、情報取得部21は、無線通信部を有する鉄道車両5の走行履歴情報の場合と同様に、非無線鉄道車両5の走行履歴情報を、非無線鉄道車両5が走行した際の状況を示す状況情報に関連付けて走行履歴情報テーブル61に設定することができる。
制御パラメータ設定値算出部22は、走行履歴情報記憶部11に記憶された走行履歴情報とモデル情報記憶部13に記憶されたモデル情報70とに基づいて、制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnを算出する。かかる制御パラメータ設定値算出部22は、走行履歴情報抽出部31と、消費電力量算出部32と、候補パラメータ変更部33と、パラメータ設定値決定部34とを備える。
走行履歴情報抽出部31は、条件情報記憶部12に記憶された条件情報に基づき、走行履歴情報記憶部11から走行履歴情報を抽出する。条件情報は、制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnの算出対象の状況を示す情報である。走行履歴情報抽出部31は、制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnの算出対象の状況と一致または類似する状況を示す状況情報に関連付けられた走行履歴情報を走行履歴情報記憶部11から抽出する。以下、制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnの算出対象の状況を単に算出対象の状況と記載する場合がある。
ここで、走行履歴情報テーブル61が図6に示す状態であり、条件情報テーブル62が図8に示す状態であるとする。この場合、走行履歴情報抽出部31は、日種別が平日、季節種別が夏、かつ時間帯が0時~1時の状況を示す状況情報が関連付けられた複数の鉄道車両5の走行履歴情報として、図6に示す走行履歴情報テーブル61に設定された走行履歴情報を走行履歴情報記憶部11から抽出する。
同様に、走行履歴情報抽出部31は、日種別が平日、季節種別が夏、かつ時間帯が1時以降の1時間後単位の状況を示す状況情報が関連付けられた複数の鉄道車両5の走行履歴情報を走行履歴情報記憶部11から抽出する。
また、走行履歴情報テーブル61が図7に示す状態であり、条件情報テーブル62が図8に示す状態であるとする。この場合、走行履歴情報抽出部31は、走行履歴情報テーブル61において、平日および夏を示す状況情報に関連付けられた0時~1時までの「位置」および「電力」を含む各鉄道車両5の走行履歴情報を走行履歴情報記憶部11から抽出する。
ところで、制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnの算出対象の状況を規定する状況情報と一致する状況情報が関連付けられた走行履歴情報が走行履歴情報記憶部11に記憶されていない場合がある。例えば、曜日が木曜日、季節種別が夏、時間帯が22時、天気が雨、および音楽イベントが開催中であることを示す状況情報が関連付けられた走行履歴情報が走行履歴情報記憶部11に記憶されていない場合がある。
走行履歴情報抽出部31は、算出対象の状況を規定する状況情報と走行履歴情報に関連付けられた状況情報との一致度に基づいて、算出対象の状況と一致または類似する状況を示す状況情報に関連付けられた走行履歴情報を抽出することができる。
走行履歴情報抽出部31は、算出対象の状況を規定する状況情報と走行履歴情報に関連付けられた状況情報との一致度である状況一致度Daを、状況情報に含まれる複数の状況パラメータの一致数に基づいて判定することができる。走行履歴情報抽出部31は、算出対象の状況と一致度が高い走行履歴情報を抽出することができる。
例えば、算出対象の状況を規定する複数の状況パラメータが、日種別、季節種別、時間帯、イベント、および天気を各々示す複数のパラメータであり、かつ、日種別が「金曜日」、季節種別が「夏」、時間帯が「1時~2時」、イベントが「音楽イベント」、および天気が「雨」であるとする。
走行履歴情報抽出部31は、日種別が「金曜日」、季節種別が「夏」、時間帯が「1時~2時」、イベントが「音楽イベント」、および天気が「雨」である状況情報を有する走行履歴情報がある場合、状況一致度Daが100%であると判定する。また、走行履歴情報抽出部31は、日種別が「金曜日」、季節種別が「夏」、時間帯が「1時~2時」、イベントが「音楽イベント」、および天気が「雨」のうち4つを含む状況情報を有する走行履歴情報がある場合、状況一致度Daが80%であると判定する。
走行履歴情報抽出部31は、状況一致度Daが最も高い走行履歴情報が複数ある場合、算出対象の日に最も近い日の走行履歴情報を抽出することができる。なお、「算出対象の日」とは、実際に電力変換器71,72~7nで電力変換動作が行われる日を示す。
また、走行履歴情報抽出部31は、算出対象の状況と一致度が高く、かつ、算出対象の日に最も近い日の走行履歴情報を抽出することもできる。例えば、走行履歴情報抽出部31は、算出対象の日との近接度Dnと状況一致度Daとに基づいて、走行履歴情報を抽出することができる。近接度Dnは、走行履歴情報における鉄道車両5の走行日が算出対象の日に近いほど大きな値になる。
走行履歴情報抽出部31は、近接度Dnと状況一致度Daとの乗算値、近接度Dnと状況一致度Daとの積算値、または近接度Dnと状況一致度Daとを各々重み付けして加算または乗算した値が最も大きい走行履歴情報を抽出することができる。
また、走行履歴情報抽出部31は、状況パラメータのずれに基づいて、算出対象の状況と一致または類似する状況を示す状況情報に関連付けられた走行履歴情報を抽出することができる。かかる「状況パラメータのずれ」は、算出対象の状況を規定する状況パラメータの内容と走行履歴情報に関連付けられた状況パラメータの内容とのずれの程度を示しており、かかるずれの程度は、数値によって示される。
例えば、状況パラメータが日種別である場合、曜日が一致する場合に、状況パラメータのずれが「0」、曜日が1日違いである場合、状況パラメータのずれが「1」、曜日が2日違いである場合、状況パラメータのずれが「2」であるとすることができる。
また、状況パラメータが時間帯である場合、時間帯が一致する場合に、状況パラメータのずれが「0」、時間帯が1時間違いである場合、状況パラメータのずれが「1」、時間帯が2時間違いである場合、状況パラメータのずれが「2」であるとすることができる。
走行履歴情報抽出部31は、複数の状況パラメータのずれに重みづけして積算した値である積算値Diに基づき、制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnの算出対象の状況と一致または類似する状況を示す状況情報に関連付けられた走行履歴情報を抽出することができる。
状況パラメータが日種別、季節種別、時間帯、および天気を示すパラメータであり、これらの4つの状況パラメータのずれがDf1~Df4であるとする。この場合、走行履歴情報抽出部31は、例えば、下記式(2)の演算によって、積算値Diを算出することができる。
Di=k1×Df1+k2×Df2+k3×Df3+k4×Df4 ・・・(2)
上記式(2)において、k1~k4は、重み付け値を示す係数kであり、算出対象の状況との関連度が高い状況パラメータのずれほど、大きな係数kが設定される。例えば、曜日といった日種別を示す状況パラメータのずれに対する係数kと、時間帯を示す状況パラメータのずれに対する係数kは、他の係数kに対して大きな値にすることができる。
走行履歴情報抽出部31は、上記式(2)の演算によって算出される積算値Diが最も小さい走行履歴情報を走行履歴情報記憶部11から抽出することができる。これにより、消費電力量の算出への影響度を考慮して走行履歴情報を抽出することができる。
このように、走行履歴情報抽出部31は、制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnの算出対象の状況と一致または類似する状況を示す状況情報に関連付けられた走行履歴情報を抽出することができる。
次に、図5に示す消費電力量算出部32について説明する。消費電力量算出部32は、走行履歴情報抽出部31によって抽出された走行履歴情報と、モデル情報70と、候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnとに基づいて、直流電化区間における電力シミュレーションを行う。かかる電力シミュレーションによって、算出対象の時間帯における直流電化区間の総消費電力量の値である総消費電力量Pが算出される。
上述した候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnは、制御パラメータPs1,Ps2~Psnの候補値であり、後述するように候補パラメータ変更部33によって設定される値である。走行履歴情報抽出部31によって抽出される走行履歴情報は、条件情報に基づいて抽出される走行履歴情報であり、条件情報は、算出対象の状況として、算出対象の時間帯を含む。また、走行履歴情報抽出部31によって抽出される走行履歴情報は、算出対象の時間帯における各時刻の走行履歴情報を含む。
消費電力量算出部32は、算出対象の時間帯における各時刻の走行履歴情報と、モデル情報70と、候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnとに基づき、算出対象の時間帯における各時刻の電力シミュレーションの結果である直流電化区間の消費電力の値である総消費電力Ppを算出する。
消費電力量算出部32は、算出対象の時間帯における時刻毎の電力シミュレーションの結果である総消費電力Ppを積算することで、算出対象の時間帯における総消費電力量Pを算出する。
例えば、時刻毎の走行履歴情報が走行履歴情報記憶部11に記憶されている場合、消費電力量算出部32は、時刻毎の走行履歴情報に基づいて、総消費電力Ppを算出する。算出対象の時間帯が0時から1時までの1時間である場合、消費電力量算出部32は、1時間分の総消費電力Ppを積算することで、総消費電力量Pを算出する。
ここで、モデル情報70には、上述したように、各鉄道車両5の鉄道車両モデル情報71、各変電所3の変電所モデル情報72、き電網モデル情報73、および電力変換器モデル情報74が含まれる。消費電力量算出部32は、候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnとモデル情報70とに基づいて、算出対象の時間帯において直流電化区間を走行した回生車の回生電力および力行車の力行電力と、き電線4、架線、高電圧き電線6、および電力変換器7を含むき電網における消費電力と、各変電所3での消費電力とを求める。
消費電力量算出部32は、回生車の回生電力と、力行車の力行電力と、き電網における消費電力と、電力変換器7での消費電力とを積算することで、時刻毎の総消費電力Ppを算出する。回生車の回生電力は負の値であり、力行車の力行電力、き電網における消費電力、および電力変換器7での消費電力は正の値である。
なお、回生車の回生可能電力と回生電力とは、図4に示す関係にある。したがって、消費電力量算出部32は、回生車の位置におけるパンタ点電圧と、回生車の回生絞り込み開始電圧値Vstartと、回生車の回生絞り込み終了電圧値Vendと、回生車の回生可能電力とから、回生車の回生電力を算出することができる。
また、消費電力量算出部32は、き電網に流れる電流と電圧の状態に基づいて、き電網における消費電力を求めることができる。消費電力量算出部32は、例えば、回生車の位置と回生電力と、力行車の位置と力行電力と、回生車、力行車、変電所3、および電力変換器7との位置関係と、変電所3、き電線4、高電圧き電線6、電力変換器7、およびレールの接続状態と、き電線4、高電圧き電線6、およびレールの抵抗率と、候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnと、電力変換器7の特性とに基づいて、き電網に流れる電流と電圧の状態を推定することができる。消費電力量算出部32は、推定したき電網に流れる電流と電圧の状態に基づいて、き電網における消費電力を求めることができる。
また、消費電力量算出部32は、変電所モデル情報72に基づいて、各変電所3における消費電力を求めることができる。消費電力量算出部32は、候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcn、回生車の回生電力、力行車の力行電力、およびき電網における消費電力に基づいて、各変電所3からき電網に供給される電流を推定する。消費電力量算出部32は、推定した各変電所3の電流と、各変電所3における無負荷電圧および内部抵抗とに基づいて、各変電所3における消費電力を求めることができる。
このように、消費電力量算出部32は、走行履歴情報と、候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnと、モデル情報70とに基づいて、候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnに対応する算出対象の時間帯での総消費電力量Pを算出することができる。なお、総消費電力量Pの算出方法は、種々の算出方法を用いることができ、上述した例に限定されない。
候補パラメータ変更部33は、消費電力量算出部32に設定する候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnを変更する。候補パラメータ変更部33は、第1の変更モード、第2の変更モード、および第3の変更モードのうち、設定されたいずれか1つの変更モードによって、消費電力量算出部32に設定する候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnを変更する。以下、候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnの各々を個別に区別せずに示す場合、候補パラメータ値Pcと記載する場合がある。以下においては、候補パラメータ値Pcには、昇圧比、電圧下限値、および電圧上限値が要素パラメータとして含まれるものとして説明するが、候補パラメータ値Pcには、電流下限値、電流上限値、電力下限値、電力上限値、および制御用係数などが要素パラメータとして含まれてもよい。
まず、第1の変更モードについて説明する。候補パラメータ変更部33は、刻み幅W1,W2,W3を予め記憶している。刻み幅W1,W2,W3は、最も値が近い2つの要素パラメータの間の差を規定する。刻み幅W1は、昇圧比の刻み幅であり、刻み幅W2は、電圧下限値の刻み幅であり、刻み幅W3は、電圧上限値の刻み幅である。
候補パラメータ変更部33は、設定された変更モードが第1の変更モードである場合、変電所モデル情報72に基づいて、制御パラメータPs1,Ps2~Psnの昇圧比、電圧下限値、および電圧上限値の変更可能範囲を刻み幅W1,W2,W3で刻んだ複数の値を順次候補パラメータ値Pcとする。以下、昇圧比の変更可能範囲を変更可能範囲R01と記載し、電圧下限値の変更可能範囲を変更可能範囲R02と記載し、電圧上限値の変更可能範囲を変更可能範囲R03と記載する。
ここで、刻み幅W1が0.05であり、刻み幅W2が10Vであり、刻み幅W3が10Vであるとする。また、昇圧比の変更可能範囲R01が3.70~4.30であり、電圧下限値の変更可能範囲R02が1150V~1250Vであり、電圧上限値の変更可能範囲R03を1650V~1750Vであるとする。また、昇圧比の候補を昇圧比候補Cc1とし、電圧下限値の候補を電圧下限値候補Cc2とし、電圧上限値の候補を電圧上限値候補Cc3とする。以下、昇圧比候補Cc1、電圧下限値候補Cc2、および電圧上限値候補Cc3の各々を個別に区別せずに示す場合、候補値Ccと記載する場合がある。
また、電力変換器71の昇圧比候補Cc1を昇圧比候補Cc1,1とし、電力変換器71の電圧下限値候補Cc2を電圧下限値候補Cc1,2とし、電力変換器71の電圧上限値候補Cc3を電圧上限値候補Cc1,3とし、電力変換器72の昇圧比候補Cc1を昇圧比候補Cc1,2とし、電力変換器72の電圧下限値候補Cc22を電圧下限値候補Cc2,2とし、電力変換器72の電圧上限値候補Cc3を電圧上限値候補Cc2,3とする。
この場合、昇圧比の変更可能範囲R01を刻み幅W1で刻んだ値は、3.70,3.75,・・・,4.25,4.30であり、昇圧比候補Cc1の数は、13である。また、電圧下限値の変更可能範囲R02を刻み幅W2で刻んだ値は、1150V,1160V,・・・,1240V,1250Vであり、電圧下限値候補Cc2の数は、11である。また、電圧上限値の変更可能範囲R03を刻み幅W3で刻んだ値は、1650V,1660V,・・・,1740V,1750Vであり、電圧上限値候補Cc3の数は、11である。
電力変換器7が電力変換器71,72の2つであると仮定すると、「Cc1,1,Cc1,2,Cc1,3,Cc2,1,Cc2,2,Cc2,3」∈{「3.70,1150,1650,3.70,1150,1650」,「3.75,1150,1650,3.70,1150,1650」,・・・,「4.30,1250,1750,4.30,1250,1750」}となる。
すなわち、「Cc1,1,Cc1,2,Cc1,3,Cc2,1,Cc2,2,Cc2,3」は、刻み幅W1,W2,W3の刻みで値の組み合わせが異なるように変更され、消費電力量算出部32に設定される。そのため、この場合、消費電力量算出部32は、値の組み合わせが異なる複数の「Cc1,1,Cc1,2,Cc1,3,Cc2,1,Cc2,2,Cc2,3」で総消費電力量Pを各々算出する。
次に、第2の変更モードについて説明する。候補パラメータ変更部33は、設定された変更モードが第2の変更モードである場合、電力変換器モデル情報74に基づいて、昇圧比、電圧下限値、および電圧上限値の各々の変更可能範囲R01,R02,R03内の乱数を予め設定された個数x分だけ生成し、生成したx×3個の乱数を順次候補パラメータ値Pcとする。かかる第2の変更モードは、乱数モードと呼ぶこともできる。なお、xは、自然数であり、例えば、x=100である。
ここで、x=100であり、昇圧比、電圧下限値、および電圧上限値の各々の変更可能範囲R01,R02,R03が上述した範囲であり、電力変換器7が電力変換器71,72の2つであると仮定する。この場合、候補パラメータ変更部33は、生成した乱数が「4.02,1148,1712,3.98,1228,1687」である場合、Cc1,1=4.02とし、Cc1,2=1148Vとし、Cc1,3=1712Vとし、Cc2,1=3.98とし、Cc2,2=1228Vとし、Cc2,3=1687Vとする。
なお、乱数の個数xは、100個未満であってもよく、100個を超える数であってもよい。また、上述した乱数は、昇圧比、電圧下限値、および電圧上限値の各々の変更可能範囲R01,R02,R03内での値であるが、候補パラメータ変更部33は、上述した刻み幅W1,W2,W3を乱数で決定することもできる。この場合、乱数で決定した刻み幅W1,W2,W3で昇圧比、電圧下限値、および電圧上限値の変更可能範囲R01,R02,R03を刻んだ複数の値を順次候補パラメータ値Pcとすることができる。
次に、第3の変更モードについて説明する。候補パラメータ変更部33は、電力変換器モデル情報74に基づいて、制御パラメータPsを構成する複数の要素パラメータのうち、1つの要素パラメータの値を予め設定された間隔毎に変更し、残りの要素パラメータの値を変更しないで得られる制御パラメータPsを順次制御パラメータPsの候補値とする処理を、値を変更する要素パラメータ毎に行う。
候補パラメータ変更部33は、例えば、制御パラメータPsの刻み幅W1,W2,W3と初期値Pf1,Pf2,Pf3とを予め記憶している。初期値Pf1,Pf2,Pf3は、変更可能範囲R01,R02,R03内の値である。初期値Pf1は、昇圧比の初期値であり、初期値Pf2は、電圧下限値の初期値であり、初期値Pf3は、電圧上限値の初期値である。
以下、刻み幅W1,W2,W3の各々を個別に区別せずに示す場合、刻み幅Wと記載する場合があり、初期値Pf1,Pf2,Pf3の各々を個別に区別せずに示す場合、初期値Pfと記載する場合があり、変更可能範囲R01,R02,R03の各々を個別に区別せずに示す場合、変更可能範囲R0と記載する場合がある。
候補パラメータ変更部33は、設定された変更モードが第3の変更モードである場合、電力変換器モデル情報74に含まれる変更可能範囲R0と、制御パラメータPsの刻み幅Wと初期値Pfとに基づいて、各要素パラメータに関する候補パラメータ値Pcを消費電力量算出部32に設定する処理を行う。各要素パラメータに関する候補パラメータ値Pcは、要素パラメータの変更可能範囲R0内で要素パラメータの初期値Pfから刻み幅Wで変更して得られる候補パラメータ値Pcである。
ここで、刻み幅W1が0.05であり、刻み幅W2が5Vであり、刻み幅W3が5Vであるとし、初期値Pf1が4.00であり、初期値Pf2が1200Vであり、初期値Pf3が1700Vであるとし、電力変換器7が電力変換器71,72の2つであると仮定する。また、昇圧比の変更可能範囲R01が3.70~4.30であり、電圧下限値の変更可能範囲R02が1150V~1250Vであり、電圧上限値の変更可能範囲R03を1650V~1750Vであるとする。
また、電力変換器71の昇圧比の候補を昇圧比候補Cc1,1とし、電力変換器71の電圧下限値の候補を電圧下限値候補Cc1,2とし、電力変換器71の電圧上限値の候補を電圧上限値候補Cc1,3とする。電力変換器72の昇圧比の候補を昇圧比候補Cc2,1とし、電力変換器72の電圧下限値の候補を電圧下限値候補Cc2,2とし、電力変換器72の電圧上限値の候補を電圧上限値候補Cc2,3とする。
この場合、候補パラメータ変更部33は、例えば、昇圧比候補Cc1,1、電圧下限値候補Cc1,2、電圧上限値候補Cc1,3、昇圧比候補Cc2,1、電圧下限値候補Cc2,2、および電圧上限値候補Cc2,3の順に初期値Pfから刻み幅Wで刻んだ値を順次候補パラメータ値Pcとする。
例えば、候補パラメータ変更部33は、昇圧比候補Cc1,1を初期値Pf1から刻み幅W1で刻んだ値と、電圧下限値候補Cc1,2の初期値Pf2と、昇圧比候補Cc1,3の初期値Pf3と、昇圧比候補Cc2,1の初期値Pf1と、電圧下限値候補Cc2,2の初期値Pf2と、電圧上限値候補Cc2,3の初期値Pf3との組み合わせを昇圧比候補Cc1,1に関する候補パラメータ値Pcとする。
具体的には、昇圧比候補Cc1,1を初期値Pf1から刻み幅W1で刻んで得られる複数の候補パラメータ値Pcは、「Cc1,1,Cc1,2,Cc1,3,Cc2,1,Cc2,2,Cc2,3」∈{「4.00,1200,1700,4.00,1200,1700」,「4.05,1200,1700,4.00,1200,1700」,・・・,「4.30,1200,1700,4.00,1200,1700」,・・・,「3.70,1200,1700,4.00,1200,1700」}となる。
同様に、候補パラメータ変更部33は、電圧下限値候補Cc1,2を初期値Pf2から刻み幅W2で刻んだ値と、昇圧比候補Cc1,1の初期値Pf1と、昇圧比候補Cc1,3の初期値Pf3と、昇圧比候補Cc2,1の初期値Pf1と、電圧下限値候補Cc2,2の初期値Pf2と、電圧上限値候補Cc2,3の初期値Pf3との組み合わせを電圧下限値候補Cc1,2に関する候補パラメータ値Pcとする。
具体的には、電圧下限値候補Cc1,2を初期値Pf2から刻み幅W2で刻んで得られる複数の候補パラメータ値Pcは、「Cc1,1,Cc1,2,Cc1,3,Cc2,1,Cc2,2,Cc2,3」∈{「4.00,1200,1700,4.00,1200,1700」,「4.00,1205,1700,4.00,1200,1700」,・・・,「4.00,1250,1700,4.00,1200,1700」,・・・,「4.00,1150,1700,4.00,1200,1700」}となる。
同様に、候補パラメータ変更部33は、昇圧比候補Cc1,3を初期値Pf3から刻み幅W3で刻んで得られる複数の値を昇圧比候補Cc1,3に関する複数の候補パラメータ値Pcとする。また、候補パラメータ変更部33は、昇圧比候補Cc2,1を初期値Pf1から刻み幅W1で刻んで得られる複数の値を昇圧比候補Cc2,1に関する複数の候補パラメータ値Pcとする。
また、候補パラメータ変更部33は、電圧下限値候補Cc2,2を初期値Pf2から刻み幅W2で刻んで得られる複数の値を電圧下限値候補Cc2,2に関する複数の候補パラメータ値Pcとする。また、候補パラメータ変更部33は、電圧上限値候補Cc2,3を初期値Pf3から刻み幅W3で刻んで得られる複数の値を電圧上限値候補Cc2,3に関する複数の候補パラメータ値Pcとする。
なお、候補パラメータ変更部33は、後述するように、設定された変更モードが第3の変更モードである場合、パラメータ設定値決定部34からの要求に応じて、変更可能範囲R0内で初期値Pfから刻み幅Wで順次候補パラメータ値Pcを変更する処理を行うこともできる。
次に、パラメータ設定値決定部34について説明する。パラメータ設定値決定部34は、候補パラメータ変更部33によって変更された複数の候補パラメータ値Pcを用いて算出された複数の総消費電力量Pのうち予め設定された電力条件を満たす総消費電力量Pの算出に用いられた候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnを電力変換器71,72~7nに設定される制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnとして決定する。
総消費電力量Pのうち最も小さい総消費電力量Pであることを電力条件とすることで、直流電化区間を走行する回生車における回生電力を高めることができ、直流電化区間における消費電力量の低減を図ることができる。
例えば、パラメータ設定値決定部34は、消費電力量算出部32で算出された複数の総消費電力量Pのうち最も小さい総消費電力量Pの算出に用いられた候補パラメータ値Pcを各電力変換器7の制御パラメータ設定値Pxとして決定することができる。
また、パラメータ設定値決定部34は、候補パラメータ変更部33に設定された変更モードが第3の変更モードである場合、各候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnに含まれる複数の設定値候補の各々について最も小さい総消費電力量Pの算出に用いられた設定値候補を、各電力変換器7の制御パラメータ設定値Pxに含まれる値として決定する。
例えば、パラメータ設定値決定部34は、昇圧比候補Cc1,1に関する複数の候補パラメータ値Pcのうち消費電力量算出部32で算出された総消費電力量Pが最も小さい候補パラメータ値Pcに含まれる昇圧比候補Cc1,1を、制御パラメータ設定値Px1の昇圧比C1,1として決定する。例えば、パラメータ設定値決定部34は、Cc1,1=3.95を含む候補パラメータ値Pcが、総消費電力量Pが最も小さい候補パラメータ値Pcである場合、制御パラメータ設定値Px1の昇圧比C1,1を3.95に決定する。
同様に、パラメータ設定値決定部34は、電圧下限値候補Cc1,2に関する複数の候補パラメータ値Pcのうち消費電力量算出部32で算出された総消費電力量Pが最も小さい候補パラメータ値Pcに含まれる電圧下限値候補Cc1,2を、制御パラメータ設定値Px1の電圧下限値C1,2として決定する。例えば、パラメータ設定値決定部34は、Cc1,2=1205を含む候補パラメータ値Pcが、総消費電力量Pが最も小さい候補パラメータ値Pcである場合、制御パラメータ設定値Px1の電圧下限値C1,2を1205に決定する。
また、パラメータ設定値決定部34は、電圧上限値候補Cc3,1に関する複数の候補パラメータ値Pcのうち消費電力量算出部32で算出された総消費電力量Pが最も小さい候補パラメータ値Pcに含まれる電圧上限値候補Cc3,1を、制御パラメータ設定値Px1の電圧上限値C1,3として決定する。パラメータ設定値決定部34は、制御パラメータ設定値Px2~Pxnについても同様に決定する。
また、パラメータ設定値決定部34は、候補パラメータ変更部33に第3の変更モードが設定されている場合、候補パラメータ変更部33に対する要求により、変更可能範囲R0内で初期値Pfまたは後述する仮設定値Cxを基準として刻み幅Wで候補パラメータ値Pcを変更させることができる。
例えば、パラメータ設定値決定部34は、複数の候補値Ccの各々の候補値Ccに関する複数の候補パラメータ値Pcのうち最も小さい候補パラメータ値Pcに含まれる候補値Ccであって対応する候補値Ccを仮設定値Cxとして決定する。そして、パラメータ設定値決定部34は、仮設定値Cxを基準として、各候補値Ccに関する複数の候補パラメータ値Pcを候補パラメータ変更部33に生成させる。
この場合、候補パラメータ変更部33によって生成される複数の候補パラメータ値Pcに含まれる候補値Ccには、初期値Pfに代えて、仮設定値Cxが含まれる。例えば、候補パラメータ変更部33によって生成される昇圧比候補Cc1,1の複数の候補パラメータ値Pcにおいて、昇圧比候補Cc1,1以外の候補値Ccは、仮設定値Cxである。
パラメータ設定値決定部34は、かかる処理を予め設定された回数繰り返すことで得られる各仮設定値Cxを含む制御パラメータPs1,Ps2,~Psnを制御パラメータ設定値Px1,Px2,~Pxnに決定する。
なお、上述した電力条件は、総消費電力量Pが最小値であることに限定されない。例えば、パラメータ設定値決定部34は、複数の総消費電力量Pのうち変動が最も少ないことを電力条件とすることができる。「変動が最も少ない」とは、総消費電力量Pを算出する際に用いられた総消費電力Ppの時間的変動率またはばらつきが小さいことを意味する。
また、パラメータ設定値決定部34は、総消費電力量Pが最小値であり且つ変動が最も少ないことを電力条件とすることができる。パラメータ設定値決定部34は、消費電力量算出部32で算出された複数の総消費電力量Pのうち最も小さい総消費電力量Pが複数ある場合、最も小さい総消費電力量Pのうち変動が最も少ない総消費電力量Pの算出に用いられた候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnを電力変換器71,72~7nへ出力する制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnとして決定することができる。
パラメータ設定値決定部34は、各電力変換器7の制御パラメータ設定値Pxを決定すると、決定した各電力変換器7の制御パラメータ設定値Pxと状況情報とを関連付けた制御パラメータ設定値情報を制御パラメータ設定値記憶部14に記憶する。パラメータ設定値決定部34は、制御パラメータ設定値記憶部14に記憶された制御パラメータ設定値情報テーブル63に制御パラメータ設定値情報を設定することで、制御パラメータ設定値情報を制御パラメータ設定値記憶部14に記憶する。パラメータ設定値決定部34は、例えば、電力変換器7が制御される日の前日までまたは電力変換器7が制御される時間までに制御パラメータ設定値情報を生成して制御パラメータ設定値記憶部14に記憶することができる。
制御パラメータ設定値出力部23は、制御パラメータ設定値記憶部14に記憶された制御パラメータ設定値情報を電力変換器制御装置2へ出力する。電力変換器制御装置2は、制御パラメータ算出装置1から受信した制御パラメータ設定値情報を電力変換器71,72~7nに設定する。例えば、制御パラメータ設定値出力部23は、制御パラメータ設定値記憶部14に記憶された制御パラメータ設定値情報の中から、算出対象の状況に対応する制御パラメータ設定値情報を抽出して電力変換器制御装置2へ出力することができる。
ここで、制御パラメータ設定値情報テーブル63が図10に示す状態であり、かつ、算出対象の状況が、日種別が平日で季節種別が夏で時間帯が0時~1時であるとする。この場合、制御パラメータ設定値出力部23は、「Cc1,1,Cc1,2,Cc1,3,Cc2,1,Cc2,2,Cc2,3,・・・」として、「4.00,1200V,1700V,3.90,1190V,1690V,・・・」を含む制御パラメータ設定値情報を制御パラメータ設定値記憶部14から抽出して電力変換器制御装置2へ出力する。
また、算出対象の状況が、日種別が平日で季節種別が冬で時間帯が23時~24時であるとする。この場合、制御パラメータ設定値出力部23は、「Cc1,1,Cc1,2,Cc1,3,Cc2,1,Cc2,2,Cc2,3,・・・」として、「4.15,1215V,1715V,4.05,1205V,1705V,・・・」を含む制御パラメータ設定値情報を制御パラメータ設定値記憶部14から抽出して電力変換器制御装置2へ出力する。
なお、制御パラメータ設定値出力部23は、算出対象の状況になる直前に、算出対象の状況の制御パラメータ設定値情報を制御パラメータ設定値記憶部14から抽出して電力変換器制御装置2へ出力する。電力変換器制御装置2は、算出対象の状況になる直前に、制御パラメータ算出装置1から受信した制御パラメータ設定値情報を電力変換器71,72~7nに設定する。これにより、制御パラメータ算出装置1は、算出対象の状況に対応する制御パラメータ設定値情報に基づいて電力変換器71,72~7nを制御することができる。
例えば、制御パラメータ設定値出力部23は、算出対象の状況における時間帯が0時~1時である場合、0時になる前に、時間帯が0時~1時である状況の制御パラメータ設定値情報を制御パラメータ設定値記憶部14から抽出して電力変換器制御装置2へ出力する。
上述した例では、制御パラメータ設定値算出部22が状況毎の制御パラメータ設定値情報を予め生成して制御パラメータ設定値記憶部14に記憶するが、かかる例に限定されない。制御パラメータ設定値算出部22は、記憶部10に記憶された情報に基づいて、算出対象の状況に対応する制御パラメータ設定値情報を、算出対象の状況になる直前に生成することもできる。
なお、候補パラメータ変更部33は、第1の変更モード、第2の変更モード、および第3の変更モードに加え、第4の変更モードによって、消費電力量算出部32に設定する候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnを変更することもできる。
候補パラメータ変更部33は、設定された変更モードが第4の変更モードである場合、電力変換器モデル情報74に基づいて、昇圧比、電圧下限値、および電圧上限値の各々の変更可能範囲R01,R02,R03を刻み幅W1,W2,W3で刻んだ複数の値を順次候補パラメータ値Pcとする。候補パラメータ変更部33は、刻み幅W1,W2,W3を小さくしながら順次候補パラメータ値Pcを変更する。
具体的には、候補パラメータ変更部33は、昇圧比、電圧下限値、および電圧上限値の各々の変更可能範囲R01,R02,R03を設定された刻み幅W1,W2,W3で刻んだ複数の値を順次候補パラメータ値Pcとして消費電力量算出部32に設定する。
そして、候補パラメータ変更部33は、昇圧比、電圧下限値、および電圧上限値の各々の変更可能範囲R01,R02,R03を刻み幅W1,W2,W3で刻んで生成された複数の候補パラメータ値Pcを用いて消費電力量算出部32によって算出された総消費電力量Pのうち最も低い値が算出されたときに用いた候補パラメータ値Pcを含む刻み範囲R11,R12,R13を決定する。
刻み範囲R11は、変更可能範囲R01内の範囲であって変更可能範囲R01よりも狭い範囲であり、刻み範囲R12は、変更可能範囲R02内の範囲であって変更可能範囲R02よりも狭い範囲であり、刻み範囲R13は、変更可能範囲R03内の範囲であって変更可能範囲R03よりも狭い範囲である。
候補パラメータ変更部33は、刻み範囲R11を刻み幅W1よりも小さい刻み幅で刻んだ複数の値を順次昇圧比候補Cc1とし、刻み範囲R12を刻み幅W2よりも小さい刻み幅で刻んだ複数の値を順次電圧下限値候補Cc2とし、刻み範囲R13を刻み幅W3よりも小さい刻み幅で刻んだ複数の値を順次昇圧比候補Cc3とする。そして、候補パラメータ変更部33は、値の組み合わせが互いに異なる「Cc1,1,Cc1,2,Cc1,3,Cc2,1,Cc2,2,Cc2,3,・・・」を各々含む複数の候補パラメータ値Pcを消費電力量算出部32に順次設定する。候補パラメータ変更部33は、値の組み合わせが互いに異なる複数の候補パラメータ値Pcを用いて消費電力量算出部32によって算出された総消費電力量Pのうち最も低い値が算出されたときに用いた候補パラメータ値Pcを含む範囲R21,R22,R23を決定する。
このように、候補パラメータ変更部33は、消費電力量算出部32によって算出された総消費電力量Pに基づいて、刻み幅および刻み範囲を小さくしていくことで、消費電力量算出部32によって算出される総消費電力量Pが小さい候補パラメータ値Pcを絞り込むようにしている。そのため、刻み幅Wを最初から小さくしておく場合に比べ、総消費電力量Pが小さい候補パラメータ値Pcを迅速に検出することができる。
なお、上述した例では、候補パラメータ変更部33は、予め設定された変更モードによって消費電力量算出部32に設定する候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnを変更するが、変更モードは、自動的に変更することもできる。候補パラメータ変更部33は、走行履歴情報記憶部11によって抽出される走行履歴情報に関連付けられた状況情報と制御パラメータ設定値Px1,Px2~Pxnの算出対象の状況を示す状況情報との一致度合い、例えば積算値Diに基づいて、変更モードを決定することができる。
つづいて、制御パラメータ算出装置1における処理部20の動作を、フローチャートを用いて説明する。図11は、実施の形態1にかかる処理部による制御パラメータ算出処理の一例を示すフローチャートである。
図11に示すように、処理部20は、制御パラメータ設定値情報の生成タイミングか否かを判定する(ステップS10)。かかる生成タイミングは、電力変換器71,72~7nで電力変換動作が行われる前のタイミングである。
処理部20は、制御パラメータ設定値情報の生成タイミングであると判定した場合(ステップS10:Yes)、制御パラメータ設定値情報の生成処理を実行する(ステップS11)。かかる制御パラメータ設定値情報の生成処理は、図12に示すステップS20~S30に示す処理であり、後で詳述する。
ステップS11の処理が終了した場合、または制御パラメータ設定値情報の生成タイミングでないと判定した場合(ステップS10:No)、処理部20は、制御パラメータ設定値情報の出力タイミングか否かを判定する(ステップS12)。
処理部20は、制御パラメータ設定値情報の出力タイミングであると判定した場合(ステップS12:Yes)、制御パラメータ設定値情報の出力処理を実行する(ステップS13)。ステップS13において、処理部20の制御パラメータ設定値出力部23は、記憶部10に記憶された制御パラメータ設定値情報を電力変換器制御装置2へ出力する。
ステップS13の処理が終了した場合、または制御パラメータ設定値情報の出力タイミングでないと判定した場合(ステップS12:No)、処理部20は、図11に示す処理を終了する。
図12は、実施の形態1にかかる処理部による制御パラメータ設定値情報の生成処理の一例を示すフローチャートである。処理部20の走行履歴情報抽出部31は、条件情報記憶部12に記憶された条件情報を取得する(ステップS20)。走行履歴情報抽出部31は、ステップS20で取得した条件情報に基づき、算出対象の状況と一致または類似する状況を示す状況情報に関連付けられた走行履歴情報を走行履歴情報記憶部11から取得する(ステップS21)。
処理部20の候補パラメータ変更部33は、各電力変換器7の電力変換器モデル情報74をモデル情報記憶部13から取得する(ステップS22)。候補パラメータ変更部33は、各電力変換器7の電力変換器モデル情報74に基づいて、制御パラメータPs1,Ps2~Psnの変更可能範囲で変更した候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnを消費電力量算出部32に設定する(ステップS23)。
消費電力量算出部32は、モデル情報記憶部13からモデル情報70を取得する(ステップS24)。消費電力量算出部32は、ステップS21で取得された走行履歴情報と、ステップS23で設定された候補パラメータ値Pc1,Pc2~Pcnと、ステップS24で取得されたモデル情報70とに基づいて、算出対象の時間帯における各時刻の総消費電力Ppを算出する(ステップS25)。
消費電力量算出部32は、時刻毎の総消費電力Ppを積算することで、算出対象の時間帯における総消費電力量Pを算出する(ステップS26)。パラメータ設定値決定部34は、消費電力量算出部32において、候補パラメータ変更部33において全ての候補パラメータ値Pcが設定されたか否かを判定する(ステップS27)。
パラメータ設定値決定部34は、全ての候補パラメータ値Pcが設定されていないと判定した場合(ステップS27:No)、処理をステップS23に移行する。また、パラメータ設定値決定部34は、全ての候補パラメータ値Pcが設定されたと判定した場合(ステップS27:Yes)、消費電力量算出部32によって算出された複数の総消費電力量Pのうち最も小さい総消費電力量Pを判定する(ステップS28)。
パラメータ設定値決定部34は、ステップS28で判定された最も小さい総消費電力量Pの算出に用いられた候補パラメータ値Pcを電力変換器7の制御パラメータ設定値Pxとして決定する(ステップS29)。パラメータ設定値決定部34は、ステップS29で決定した制御パラメータ設定値Pxを含む制御パラメータ設定値情報を制御パラメータ設定値記憶部14に記憶し(ステップS30)、図12に示す処理を終了する。
図13は、実施の形態1にかかる制御パラメータ算出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図13に示すように、制御パラメータ算出装置1は、プロセッサ101と、メモリ102と、インタフェース回路103と、バス104とを備えるコンピュータを含む。
プロセッサ101、メモリ102およびインタフェース回路103は、バス104によって互いにデータの送受信が可能である。制御パラメータ算出装置1において、走行履歴情報記憶部11、条件情報記憶部12、モデル情報記憶部13、および制御パラメータ設定値記憶部14はメモリ102によって実現される。通信部30は、インタフェース回路103によって実現される。メモリ102は、コンピュータが読み取り可能なプログラムとして制御パラメータ算出プログラムが記録された記録媒体を含む。
プロセッサ101は、メモリ102に記憶された制御パラメータ算出プログラムを読み出して実行することによって、情報取得部21、制御パラメータ設定値算出部22、および制御パラメータ設定値出力部23の機能を実行する。プロセッサ101は、処理回路の一例であり、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、およびシステムLSI(Large Scale Integration)のうち一つ以上を含む。かかる記録媒体は、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルメモリ、光ディスク、コンパクトディスク、およびDVD(Digital Versatile Disc)のうち一つ以上を含む。
メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクまたはDVD(Digital Versatile Disc)などである。なお、制御パラメータ算出装置1は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を含んでいてもよい。
制御パラメータ算出装置1は、一体的な構成の装置に限定されず、互いに別体の2以上の装置で構成されてもよい。制御パラメータ算出装置1が2以上の装置で構成される場合、2以上の装置の各々は、例えば、図13に示すハードウェア構成を有する。なお、2以上の装置間の通信は、インタフェース回路103を介して行われる。また、制御パラメータ算出装置1は、2以上のサーバ装置で構成されてもよい。例えば、制御パラメータ算出装置1は、処理サーバと、データサーバとで構成されてもよい。また、制御パラメータ算出装置1は、電力変換器制御装置2の機能を含む構成であってよい。
以上のように、実施の形態1にかかる制御パラメータ算出装置1は、電気鉄道の直流電化区間におけるき電線4の電圧よりも電圧が高い高電圧き電線6とき電線4との間の電力変換を行う電力変換器7の制御パラメータPsを算出する。制御パラメータ算出装置1は、モデル情報記憶部13と、走行履歴情報記憶部11と、制御パラメータ設定値算出部22とを備える。モデル情報記憶部13は、直流電化区間を走行する鉄道車両5における回生電力絞り込み量を制御する情報を含む鉄道車両モデル情報71と、き電線4に電圧を印加する変電所3の位置情報および電力変換器7の位置情報を含むき電網モデル情報73と、電力変換器7の特性を示す情報を含む電力変換器モデル情報74とを含むモデル情報70を記憶する。走行履歴情報記憶部11は、直流電化区間を過去に走行した鉄道車両5の位置および電力の状態を示す走行履歴情報を記憶する。制御パラメータ設定値算出部22は、モデル情報70と走行履歴情報とに基づいて、直流電化区間における消費電力量が予め設定された条件を満たすように制御パラメータPsを算出する。これにより、制御パラメータ算出装置1は、高電圧き電線を有する直流電化区間における消費電力量を低減することができる電力変換器7の制御パラメータ設定値Pxを算出することができる。
また、走行履歴情報記憶部11は、走行履歴情報に関連付けられ、且つ鉄道車両5が走行した際の状況を示す状況情報を含む。制御パラメータ設定値算出部22は、制御パラメータPsの算出対象の状況と一致または類似する状況を示す状況情報に関連付けられた走行履歴情報を走行履歴情報記憶部11から抽出し、抽出した走行履歴情報とモデル情報70とに基づいて、制御パラメータPsを算出する。これにより、制御パラメータ算出装置1は、鉄道車両5が走行する際の状況に合わせた適切な制御パラメータ設定値Pxを算出することができ、省エネルギー効果の向上をさらに図ることができる。
また、制御パラメータ算出装置1は、制御パラメータPsの算出対象の状況を規定する条件情報を記憶する条件情報記憶部12を備える。制御パラメータ設定値算出部22は、条件情報記憶部12に記憶された条件情報と一致または類似する状況情報に関連付けられた走行履歴情報を抽出する。このように、制御パラメータ算出装置1は、予め条件情報を記憶していることから、鉄道車両5が走行する際の状況に応じた走行履歴情報を容易に抽出することができる。
条件情報は、制御パラメータPsの算出対象の状況を規定する状況パラメータを複数含む。状況情報は、鉄道車両5が走行した際の状況を示す状況パラメータを複数含む。制御パラメータ設定値算出部22は、条件情報の状況パラメータと状況情報の状況パラメータとの間のずれを重みづけして積算した結果に基づき、制御パラメータPsの算出対象の状況と一致または類似する状況を示す状況情報に関連付けられた走行履歴情報を抽出する。これにより、制御パラメータ算出装置1は、制御パラメータPsの算出対象の状況に対して適切な走行履歴情報を取得することができ、消費電力量を低減することができる制御パラメータ設定値Pxを精度よく算出することができる。
また、制御パラメータ設定値算出部22は、消費電力量算出部32と、候補パラメータ変更部33と、パラメータ設定値決定部34とを備える。消費電力量算出部32は、走行履歴情報とモデル情報70と制御パラメータPsの候補値である候補パラメータ値Pcとに基づいて、直流電化区間における消費電力量の値である総消費電力量Pを算出する。候補パラメータ変更部33は、消費電力量算出部32で総消費電力量Pの算出に用いる候補パラメータ値Pcを変更する。パラメータ設定値決定部34は、候補パラメータ変更部33によって変更された複数の候補パラメータ値Pcを用いて算出された複数の総消費電力量Pのうち電力条件を満たす総消費電力量Pの算出に用いられた候補パラメータ値Pcを電力変換器7に設定される制御パラメータPsである制御パラメータ設定値Pxとして決定する。これにより、候補パラメータ値Pcを変更することで、適切な制御パラメータPsを算出することができる。
また、候補パラメータ変更部33は、電力変換器モデル情報74に基づいて、制御パラメータPsの変更可能範囲内で予め設定された間隔である刻み幅W毎の値を順次制御パラメータPsの候補値である候補パラメータ値Pcとする。このように、制御パラメータ算出装置1は、刻み幅Wを適切に設定することで、制御パラメータ設定値Pxを精度よく決定しつつも、設定する制御パラメータPsの数を増減させることで総消費電力量Pの算出時間を適切に設定することができる。
また、候補パラメータ変更部33は、電力変換器モデル情報74に基づいて、制御パラメータPsの変更可能範囲Ro内の乱数を複数生成し、生成した複数の乱数を順次候補パラメータ値Pcとする。これにより、制御パラメータ算出装置1は、乱数の数を適切に増減させることで、少ない電力シミュレーション回数で制御パラメータ設定値Pxを精度よく決定することができる。
また、制御パラメータPsは、複数の要素パラメータを含む。制御パラメータPsの候補値は、複数の要素パラメータの各々の候補値を含む。候補パラメータ変更部33は、電力変換器モデル情報74に基づいて、複数の要素パラメータのうち1つの要素パラメータの候補値Ccを予め設定された間隔である刻み幅W毎に変更した値を順次制御パラメータPsの候補値とする処理を候補値の変更対象になる要素パラメータ毎に行う。これにより、少ない電力シミュレーション回数で制御パラメータ設定値Pxを精度よく決定することができる。
また、消費電力量算出部32は、走行履歴情報とモデル情報70と候補パラメータ値Pcとに基づいて、直流電化区間における各時刻の総消費電力Ppを積算することで直流電化区間における時間帯単位の総消費電力量Pを算出する。これにより、制御パラメータ算出装置1は、時間帯単位における制御パラメータ設定値Pxを算出することができ、制御パラメータ設定値Pxの算出間隔を時間帯単位にすることができる。そのため、制御パラメータ算出装置1は、制御パラメータ設定値Pxの算出による処理部20の処理負荷を低減することができる。
また、制御パラメータ算出装置1は、制御パラメータ設定値記憶部14と、制御パラメータ設定値出力部23とを備える。制御パラメータ設定値記憶部14は、制御パラメータ設定値算出部22によって算出された制御パラメータ設定値Pxを記憶する。制御パラメータ設定値出力部23は、制御パラメータ設定値記憶部14に記憶された制御パラメータ設定値Pxを出力する。これにより、制御パラメータ算出装置1は、例えば、制御パラメータ設定値Pxを制御パラメータ設定値記憶部14から迅速に出力することができる。
また、電力変換システム50は、制御パラメータ算出装置1と、電力変換器7とを備える。電力変換器7は、制御パラメータ算出装置1によって算出された制御パラメータPsに基づいて、き電線4と高電圧き電線6との間で電力変換を行う。これにより、電力変換システム50は、高電圧き電線を有する直流電化区間における消費電力量を低減することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。