JP7378157B2 - 負極活物質及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、負極活物質及びその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、ナトリウムイオン電池の負極活物質として有用なスピネル型ナトリウムチタン酸化物を高純度で含む負極活物質、及び負極活物質を効率的に得ることができる製造方法に関する。
現在、リチウムイオン電池は、最も普及した二次電池として知られている。しかしながら、リチウムイオン電池で電荷担体として利用されるリチウム元素がレアメタルであること、及び資源的に偏在していることから、その代替となる新たな二次電池の開発が望まれている。新たな二次電池の候補として、ナトリウムイオン電池が注目されている。ナトリウムイオン電池は、特に、電荷単体として豊富に存在するナトリウム元素を用いる点、及び鉄やマンガン等のベースメタルを含んだ正極材料の候補が多い点などから、資源的制約の少ない電池として魅力的である。
ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池に比べて正極材料の候補が多い一方で、負極活物質の候補は限られている。特に、リチウム電池で有効とされている炭素系材料がナトリウムイオン電池では十分に機能しない点で課題が大きい。このため、新たな負極活物質の探索が試みられてきた。
スピネル型構造を有するリチウムチタン酸化物(Li4Ti512)は、従来からリチウムイオン電池の負極活物質として利用されてきたが、近年になってナトリウムイオン電池の負極活物質としても機能することが報告された(非特許文献1)。このリチウムチタン酸化物は安定な酸化物であり、且つ比較的高いナトリウム吸蔵-脱離電位を有することから、金属ナトリウムのデンドライト生成が起こらない、安全な負極活物質として注目を集めている(非特許文献2)。
しかしながら、スピネル型構造を有するリチウムチタン酸化物(Li4Ti512)負極は、リチウム電池ですでに実用化されている一方で、ナトリウムイオン電池では未だ実用化に至っていない。その主な理由としては、以下に説明するように、ナトリウムの吸蔵-脱離の際に起こりうる、格子体積の大きな変化が挙げられる。これは、ナトリウムのイオン半径(RNa+=102pm)は、リチウムのイオン半径(RLi+=76pm)に比べて大きいことに起因する。
現在提案されているLi4Ti512負極のリチウムイオン電池及びナトリウムイオン電池における充電反応機構はそれぞれ下記(式a)及び(式b)に示す通りである。ナトリウムイオン電池の充電反応においては、ナトリウムは負極に均一にドープされず、その結果、リチウム濃縮相とナトリウム濃縮相とが生じる(非特許文献3、4)。
Figure 0007378157000001
ここで、リチウムイオン電池の充電前のLi4Ti512相および放電後に生じるリチウム吸蔵相(Li7Ti512相)の格子定数aはいずれもおよそ8.36Åである。つまり、リチウム吸蔵相は、リチウム吸蔵前に比べて格子定数aの変化はない。したがって、リチウムイオン電池の電池動作においては、リチウムの吸蔵及び脱離によっても負極の格子体積の膨張-収縮はほとんど起こらない(非特許文献5)。
一方で、ナトリウムイオン電池の充電後に生じるナトリウム濃縮相(Na6LiTi512相)の格子定数aは例えば8.72Åとされている。つまり、ナトリウム濃縮相は、ナトリウム吸蔵前に比べ、格子定数aにして4%以上の増大、体積にして14%以上という顕著な膨張を伴う。したがって、ナトリウムイオン電池の電池動作においては、ナトリウムの吸蔵及び脱離によって負極の格子体積の顕著な膨張-収縮を伴う。このため、ナトリウムイオン電池におけるLi4Ti512負極の動作は本質的に不安定で電極の劣化が早く、サイクル安定性及び充放電レート特性の点で実用化の妨げとなっている。
ナトリウムイオン電池のLi4Ti512負極に関する上述のような問題に対する取り組みとして、Li4Ti512格子へナトリウムを予めドープさせておくことが考えられている。この取り組みは、リチウムよりイオン半径の大きなナトリウムを格子内のリチウムと置き換えて、より格子定数の大きなナトリウム吸蔵相(NaxLi4-xTi512相)を予め生成しておくことで、ナトリウムの吸蔵及び脱離による格子体積の変化を軽減することを目的とする。
このようなナトリウム吸蔵相を生成するために様々な検討がなされており、これまでに、格子定数aが8.45~8.50Åのナトリウムドープ体が報告されている(非特許文献6~12)。
Chin. Phys, B 21 (2012) 028201. Electrochemistry 83 (2015) 989. Nat. Commun. 4 (2013) 1870. Phys Chem Chem Phys 18 (2016) 19888. J. Electrochem. Soc. 142 (1995) 1431. ACS Appl. Mater. Interfaces 8 (2016) 13721. Int. J. Hydrogen Energy 39 (2014) 16569. Solid State Sci. 44 (2015) 39. RSC Adv. 6 (2016) 90455. J. Power Sources 248 (2014) 323. J. Power Sources 246 (2014) 505. J. Electrochem. Soc. 163 (2016) A690.
より格子定数の大きなナトリウム吸蔵相(NaxLi4-xTi512相)を生成することは、リチウムよりはるかにイオン半径の大きなナトリウムを格子内に安定にドーピングさせることであり、本質的な困難性をはらんでいる。このため、非特許文献6~12で報告されているように、いくらかナトリウムをドープできたとしても、格子定数aとしてはせいぜい8.45~8.50Å、吸蔵量としては組成式NaxLi4-xTi512におけるxの値としてせいぜい0<x≦0.2であり、より大きな格子定数又はx値を有する化合物は報告されていない。また、報告されている上述の化合物はナトリウムドープ量が少ないため、その結晶構造解析において、ドープされたナトリウムが占有するサイトの正確な帰属すらいまだされていない。
そこで、本発明者は、上記(式b)で得られるLi7Ti512及びNa6LiTi512の二相共存状態から、リチウム脱離電位を超える放電電位でリチウムイオンを脱離する放電反応を行うことによって、ナトリウムイオンとともにリチウムイオンも同時に脱離させ、その結果、ナトリウムが16cサイトを占有するNa6LiTi512から、下記(式1)に示す新規物質、つまりナトリウムが8aサイトを占有するスピネル型ナトリウムチタン酸化物(式中、xは1.5~3.0を表す。)の相が得られることを見出した(後述の参考試験例1)。また、(式1)において、8a、16dおよび32eの上付き文字は、スピネル(Fd-3m)空間群のWyckoffサイトを表し、本明細書においてはこれらのサイトの表示を省略する場合もある。他の組成についても同様である。
Figure 0007378157000002
本発明者が新規に見出した(式1)の物質は、これまで報告されているNazLi4-zTi512におけるナトリウム吸蔵量(0<z≦0.2、(式1)の8aサイトのNa原子数比(3-x)では2.5≦x<3に相当)を凌駕しており、xが0に限りなく近い(XRDプロファイルから見積もったx値は約0.5である)スピネル型ナトリウムチタン酸化物として得ることが可能である。このため、以下において、(式1)の新規のスピネル型ナトリウムチタン酸化物の組成を、(Na38a(LiTi516d(O1232e又はNa3LiTi512と記載することがある。
Na3LiTi512は、下記(式c)に示すように、上記(式b)で得られるLi7Ti512及びNa6LiTi512の二相共存状態から、リチウムとナトリウムとが同時に脱離することで、Li4Ti512と共存した二相共存状態で得られる。
Figure 0007378157000003
この新規化合物Na3LiTi512は、上記(式c)で示す通りLi4Ti512相との混合状態で得られるものの、ナトリウム電池の負極として用いることで優れたレート特性を発揮することが確認できた。
しかしながら、上述の製造方法によると、ナトリウムを吸蔵する充電反応(式b)及びリチウム及びナトリウムを脱離する放電反応(式c)の両方の工程を電池反応によって行う必要があるため、(式b)-(式c)の一連の反応に非常に時間がかかり、工業的生産には不適であるという製造上の新たな課題に直面した。
また、Li4Ti512とNa3LiTi512との二相共存状態の結晶が、再び同様の充電反応及び放電反応の電池試験サイクルに供されれば、理論上は、Li4Ti512相がNa3LiTi512相の合成に消費され、その結果、Na3LiTi512相が精製されるはずである。この仮説に基づき、本発明者は、二相共存状態の結晶に対して、電池試験サイクルごとに電極の洗浄と電解質の更新とを行いながら、電池試験サイクルを繰り返した。しかしながら現実には、電池試験サイクルを3サイクルも繰り返すと、その精製度は仮説通りに上がらないだけでなく、Na3LiTi512の相分率の減少さえ起こることが分かった(後述試験例5のエントリ7及び8、並びに図7参照)。さらに、電池試験サイクルを繰り返すことで、Na3LiTi512の相分率の減少だけでなく、格子定数及び半値幅も悪化する傾向となることも分かった(後述試験例5のエントリ7及び8、並びに図8及び図9参照)。一方で、上記の電池試験以外で、Li4Ti512からNa3LiTi512を合成する手法は知られていない。このため、Na3LiTi512の純度の高い負極活物質を得ることができない課題にも直面した。つまり、負極活物質のNa3LiTi512含量不足という品質上の新たな課題にも直面した。
そこで、本発明は、製造効率に優れた負極活物質の製造方法を提供すること、及び、Na3LiTi512の純度が高い負極活物質を提供することを目的とする。
電池試験によって製造する方法の効率が低いのは、(式b)-(式c)の一連の工程を全て電極反応によって行っていることによると考えられる。このため、本発明者は、少なくともいずれかの工程に電極反応を用いない新たな手法を着想するに至った。
(式b)に示される充電反応及び(式c)に示される放電反応のうち、(式c)に示される放電反応は、リチウムとともにナトリウムも脱離させるものであるため、金属ナトリウムを対極に用いたハーフセルを用いて当該放電反応を行うと、金属ナトリウム対極にナトリウムイオンが戻ってくることとなる。ここで、製造効率向上を目的として電極を大型化すると、金属ナトリウム対極に戻ってくるナトリウムイオンによるデンドライトの大量発生及びそれによる短絡のリスクが考えられる。そうすると、このようなリスクを排除するには、(式b)及び(式c)の工程のうち、少なくとも(式c)の工程に電極反応を用いないことが好ましいと考えられる。
また、(式b)-(式c)の一連の工程を電池試験サイクルで繰り返しても精製度が上がらないのは、電池反応によって電解液中に溶出したリチウムが結晶中に逆戻りすることによるものと考えられる。そうすると、このようなリチウムイオンの逆戻りを抑制するにも、(式b)及び(式c)の工程のうち、少なくとも(式c)の工程に電極反応を用いないことが好ましいと考えられる。
ここで、電気化学分野の技術常識に基づくと、当該電極のように非水系電解液で動作させる電極を水に接触させることは禁忌である。また、仮にも水と反応させることは、水素ガスの発生に伴う電極膜の剥離の問題も招来しかねない。さらに、水を含めプロトン溶媒は、ナトリウムイオンとイオン交換しやすいため、ナトリウム置換相を得るためにプロトン性溶媒に加えることも通常考えられないところである。
しかしながら、本発明者が(式c)の工程の新たな手法を検討したところ、技術常識では通常考えられない、水と反応させるという大胆な手法を、Li4Ti512とNa3LiTi512との二相共存状態の結晶に対して試みたところ、非常に効率よくNa3LiTi512が得られることを見出した。さらに、この手法でサイクルを繰り返すことで、Na3LiTi512の純度の高い負極活物質となることも見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. X線回折プロファイルにおいてスピネル型結晶構造の(220)面の回折ピークを有するスピネル型ナトリウムチタン酸化物相を相分率75%超で含む負極活物質。
項2. 前記スピネル型ナトリウムチタン酸化物相及びLi4Ti512相それぞれの(111)面の回折ピークの積分強度の総和に対する前記スピネル型ナトリウムチタン酸化物相の(111)面の回折ピークの強度比率が、85%以上である、項1に記載の負極活物質。
項3. スピネル型ナトリウムチタン酸化物相の(111)面の回折ピークの半値幅が0.30未満である、項1又は2に記載の負極活物質。
項4. 格子定数が8.70Å以上且つ(Na616c(LiTi516d(O1232eの格子定数aNa6LTOÅ以下である、項1~3のいずれか1項に記載の負極活物質。
項5. 項1~4のいずれか1項に記載の負極活物質を含む、ナトリウムイオン電池用負極。
項6. 項5に記載のナトリウムイオン電池用負極を含む、ナトリウムイオン電池。
項7. Li4Ti512にナトリウムを吸蔵させ、前駆体を得る工程1と、
前記前駆体を、リチウム脱離電位を超える酸化電位を有する酸化剤を用いて酸化処理し、スピネル型結晶構造の(220)面の回折ピークを有するスピネル型ナトリウムチタン酸化物相を得る工程2と、を含む、負極活物質の製造方法。
項8. 前記工程2における前記酸化剤が液体である、項7に記載の負極活物質の製造方法。
項9. 前記工程2における前記液体が水を含む、項8に記載の負極活物質の製造方法。
項10. 前記工程2における前記液体がナトリウム塩を溶質として含む、項8又は9に記載の負極活物質の製造方法。
項11. 前記工程1におけるLi4Ti512へのナトリウム吸蔵を、Li4Ti512相を電極に用いた充電反応によって行う、項7~10のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
項12. 前記工程1におけるLi4Ti512へのナトリウム吸蔵を、Li4Ti512粉体と金属ナトリウム粉体とを混合することによって行う、項7~10のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
項13. 前記工程1におけるLi4Ti512へのナトリウム吸蔵を、Li4Ti512粉体と有機ナトリウム化合物溶液とを混合することによって行う、項7~10のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
項14. 前記工程1及び工程2を2サイクル以上行う、項7~13のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
本発明によれば、Na3LiTi512の純度が高い負極活物質及びそのような負極活物質を製造する方法が提供される。
参考試験例1で得られた負極活物質のXRDスペクトルを示す。 試験例1で得られた負極活物質のXRDスペクトル(図中、「純水酸化」)を、前駆体電極のXRDスペクトル(図中、「前駆体」)と比較して示す。 試験例2で得られた負極活物質のXRDスペクトルを示す。 試験例3で試験した、リチウム及びナトリウムの脱離工程におけるリチウムイオン溶出量の時間変化を示す。 試験例4で得られた負極活物質のXRDスペクトルを示す。 試験例5で得られた負極活物質のXRDスペクトルを示す。 試験例5で得られた負極活物質の純度を示す。 試験例5で得られた負極活物質の格子定数を示す。 試験例5で得られた負極活物質の(111)ピーク半値幅を示す。 試験例6で得られた負極活物質のXRDスペクトルを示す。 試験例7で試験した、本発明の負極活物質の疑似的放電反応中のXRDスペクトルの推移を示す。 図11から得られた格子定数に基づく、疑似的放電反応中の結晶格子の体積変化の推移を示す。 試験例8で試験した、負極活物質のサイクルに伴う容量変化の、LTO電極と本発明の3回精製電極との比較結果である。 図13の結果を縦軸に充電容量の維持率、横軸にサイクル回数でプロットしたグラフである。 試験例9の電池試験による放電電圧プロファイルを示す。 図15の各放電条件で得た電極のXRDプロファイルを示す。 試験例10で得られた負極活物質のXRDプロファイルを示す。 図17に示した各プロファイルにおけるNTO相の相分率を示す。 試験例11で得られた負極活物質のXRDプロファイルを示す。 試験例12で得られた負極活物質のXRDプロファイル(有機ナトリウム化合物としてビフェニルナトリウムを用いた各精製段階での負極活物質の粉末スペクトル)を示す。 試験例12で得られた負極活物質のXRDプロファイル(有機ナトリウム化合物としてナフタレンナトリウムを用いた16回精製後の負極活物質の粉末スペクトル)を示す。 試験例13で試験した、試験例12で得られた負極活物質のNa吸蔵-放出に伴う構造安定性の評価を示す。(a)は、(b)に記載の充放電カーブにおける各充放電深度A~Dで測定したXRDスペクトルを表し、(b)は、XRD測定に対応する充放電カーブとXRDプロファイルから見積もった各測定点での格子体積変化の比率(%)とのプロットを示す。 試験例14で試験した、試験例12で使用したLT112(精製前の原料)と試験例12で得られた16回精製後のNTO112とのSEM二次電子観察像を示す。(a)は1000倍視野、(b)は500倍視野のSEM二次電子観察像である。 試験例14で50、100、150サイクル充放電により安定化させたLT112(LT112’)及びNTO112の充放電サイクルのプロファイルを示す。 試験例14で試験した、NTO112と安定化LT112(LT112’)との0.2C-rate充放電サイクル特性比較を示す。(a)は、100サイクルまでのNa吸蔵容量の比較を示し、(b)は、100サイクル目までのNa脱離平均電位の比較を示す。 試験例14で試験した、NTO112及びLT112電極のNa吸蔵電位プロファイルの電流密度依存性を示す。 試験例14で試験した、NTO112及びLT112の各電流密度に対するNa吸蔵容量の依存性をプロットして示す。
[1.負極活物質]
本発明の負極活物質は、X線回折プロファイルにおいてスピネル型結晶構造の(220)面の回折ピークを有するスピネル型ナトリウムチタン酸化物相を相分率75%超で含むことを特徴とする。以下、本発明の負極活物質について詳述する。なお、本明細書において、数値範囲等を「~」を用いて示す場合、その数値範囲等には両端の数値等も含む。例えば50~90%と記載する場合、50%以上90%以下であることを示す。
[1-1.スピネル型ナトリウムチタン酸化物]
本発明の負極活物質は、X線回折プロファイルにおいて、スピネル型ナトリウムチタン酸化物由来のスピネル型結晶構造を示す(220)面の回折ピークを有する。当該ピークを検出するX線回折の線源としては特に限定されないが、例えばCu-Kα1線(λ1=1.54059Å)を用いることができる。Cu-Kα1線を線源として用いた場合、本発明におけるスピネル型化合物の(220)面の回折ピークは、角度2θが28.8°以上29.1°以下の位置において検出される。本明細書においては、Cu-Kα1線を線源として用い、測定条件として、管電圧40kV、管電流15mA、走査範囲(2θ)15°~75°とし、走査条件として、ステップ走査、ステップ幅0.03°、走査速度1°/分として測定を行うものとする。
本発明におけるスピネル型ナトリウムチタン酸化物は、スピネル(Fd-3m)空間群のWyckoffサイトの1つである8aサイトがナトリウムで占有されている。スピネル型結晶構造の220回折線の起源は、8aサイトを占有する元素のみに由来する。例えば、リチウムが8aサイトを占有しているスピネル型リチウムチタン酸化物の場合、リチウムのX線散乱強度が小さいため、(220)面の回折ピークはほとんど検出されない。ここで、8aサイトにおいてリチウムがナトリウムに置換されている割合を、(111)面の回折ピークの検出強度(積分強度)に対する(220)面の回折ピークの検出強度(積分強度)として示すことができる。(111)面の回折ピークは、Cu-Kα1線(λ1=1.54059Å)を用いた場合、格子定数aが8.67Å以上の場合は角度2θが17.70°以下の位置、格子定数aが8.70Å以上の場合は角度2θが17.64°以下の位置において検出される。(111)面回折ピークの強度は主にチタン原子の並びで決まるため、8aサイトのナトリウム置換量に対してあまり変化しない。一方で、(220)面回折ピークは、8aサイトを置換するナトリウム原子の並びに依存する。このため、(111)面回折ピークの強度に対する(220)面回折ピークの相対強度は、8aサイトのナトリウム置換量が多くなるにつれて高くなる傾向を示す。具体的には、上述のリチウムが8aサイトを占有しているスピネル型リチウムチタン酸化物の(220)面の回折ピークの検出強度(積分強度)は、(111)面の回折ピークの積分強度の僅か0.7%程度である。
一方、本発明の負極活物質のX線回折プロファイルにおいては、スピネル型ナトリウムチタン酸化物の8aサイトを占有しているナトリウムのX線散乱強度が大きいため、これに由来する(220)面の回折ピークが明確に検出される。本発明の負極活物質の(220)面の回折ピークの積分強度I220は、(111)面の回折ピークの積分強度I111に対する比率I220/I111として例えば7%以上である。比率I220/I111が7%以上となる(220)面の回折ピーク強度を確保することで、8aサイトの多くがナトリウムで置換されたスピネル型ナトリウムチタン酸化物となり、負極として構成された場合の電極安定性、サイクル安定性、充放電レート特性の向上効果等を良好に得ることができる。ここで、8aサイトにおけるナトリウム置換量(モル基準)が50%である場合の理論的な比率I220/I111は7%である。従って、測定された比率I220/I111が7%以上の場合、8aサイトの約50%以上がナトリウムで置換されているといえる。なお、測定された比率I220/I111の上限値としては特に限定されないが、8aサイトにおけるナトリウム置換量(モル基準)が100%である場合の理論的な比率I220/I111が26.9%であることを考慮すると、約26.9%が事実上の上限となる。従って、具体的な比率I220/I111の範囲としては、例えば7~26.9%が挙げられる。なお、8aサイトにナトリウムがいくらか置換されていても、その置換量が僅かであれば、そのような相は単一の格子定数aを持たず、様々な格子定数aを有する固溶体様の相を形成する。この場合、(220)面の回折ピークは検出が困難となる。
本発明の負極活物質を構成するスピネル型ナトリウムチタン酸化物は、スピネル型の結晶構造を有し、ナトリウム、チタン及び酸素を必須元素として含み、且つ上述の(220)面の回折ピークを与える程度に8aサイトがナトリウムで占有されているため、具体的なスピネル型ナトリウムチタン酸化物の組成式は、既に述べたように(式1)で示される。
Figure 0007378157000004
また、上記(式1)において、xは0~1.0を表す。xの範囲が0~1.0であることは、8aサイトの200/3%~100%がナトリウムで置換されていることを示す。これによって、後述の本発明の効果(負極活物質として用いられた場合の安定性、サイクル安定性及び充放電レート特性の向上効果)を良好に得ることができる。なお、xが0を下回ると、結晶構造が不安定となり、スピネル型の結晶構造を維持することが困難となる。より具体的なxの範囲としては、0超1.0未満が挙げられ、更に好ましくは0超0.5以下が挙げられる。なお、(式1)においてxが0超である場合の本発明のスピネル型ナトリウムチタン酸化物は16dサイトのLiが欠損しており、x=0.5の場合に至っては16dサイトのLiが50%欠損することとなるが、本発明のスピネル型ナトリウムチタン酸化物は、このような16dサイトのLiの欠損にも関わらずスピネル型構造を維持し、安定な電池特性を得ることができる。このことは、より安価な金属資源を有効利用でき、資源的制約がより少なくなる点でも優れている。
[1-2.純度]
本発明の負極活物質において、スピネル型ナトリウムチタン酸化物の純度は、スピネル型ナトリウムチタン酸化物相分率が75%超であり、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、一層好ましくは95%以上、特に好ましくは96%以上、最も好ましくは98%以上である。本発明の負極活物質は、スピネル型ナトリウムチタン酸化物をこのように高純度で含んでおり、例えば99%以上の純度であれば、スピネル型ナトリウムチタン酸化物の単結晶に限りなく近い状態で提供されることもできる。スピネル型ナトリウムチタン酸化物相分率は高いほど好ましいため特に限定されないが、100%、又は99.9%が挙げられる。スピネル型ナトリウムチタン酸化物相分率の具体的な範囲としては、75%超~100%以下、75%超~99.9%以下、80~100%、80~99.9%、85~100%、85~99.9%、90~100%、90~99.9%、95~100%、95~99.9%、96~100%、96~99.9%、98~100%、98~99.9%が挙げられる。本発明の負極活物質に含まれうる、スピネル型ナトリウムチタン酸化物相以外の相は、実質的にLi4Ti512相からなる。負極活物質におけるスピネル型ナトリウムチタン酸化物の相分率は、粉末X線回折パターンから全粉末回折パターンフィッティング(WPPF;Whole Powder Pattern Fitting)法により算出される。
ここで、本発明におけるスピネル型ナトリウムチタン酸化物相とLi4Ti512相とは、酸素とチタンからなるスピネル型結晶構造の基本骨格を共通としているため、結晶中におけるそれらの原子の周期性が一致している。よってチタンと酸素の周期性を主な反射の起源とする(111)面回折ピークの強度比は、両相の存在比を反映できる。さらに、(111)面回折ピークはXRDプロファイル中で安定して強い強度で検出されるため、(111)面回折ピークの強度比は、両相の存在比を表す指標としての信頼性も高い。従って、本発明の負極活物質において、スピネル型ナトリウムチタン酸化物の純度としては、スピネル型ナトリウムチタン酸化物相の(111)面の回折ピークの強度の比率としても表すことができ、特に、スピネル型ナトリウムチタン酸化物の純度が高いほど、スピネル型ナトリウムチタン酸化物の(111)面の回折ピークの強度の比率が、当該純度をより信頼性高く反映することができる。このような観点から、本発明の好ましい負極活物質におけるスピネル型ナトリウムチタン酸化物の(111)面の回折ピークの強度の比率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、一層好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上が挙げられる。ここで、スピネル型ナトリウムチタン酸化物相の(111)面回折ピークの強度の比率は、スピネル型ナトリウムチタン酸化物相及びLi4Ti512相それぞれの(111)面回折ピークの積分強度の総和に対する、スピネル型ナトリウムチタン酸化物相の(111)面回折ピークの積分強度の割合をいう。
[1-3.格子定数]
本発明の負極活物質を構成するスピネル型ナトリウムチタン酸化物は、ナトリウムイオン電池の負極活物質として優れている。このスピネル型ナトリウムチタン酸化物(ここではNa3LiTi512と記述する。)を負極に用いたナトリウムイオン電池における充電反応は、以下の(式c)のように示される。
Figure 0007378157000005
ここで、本発明の負極活物質は、上述のとおりスピネル型ナトリウムチタン酸化物の8aサイトの多くがイオン半径の大きいナトリウムで占有されているため、従前よりナトリウムイオン電池の負極活物質として知られてきた、格子定数a=8.36ÅであるLi4Ti512(上記式(b)、非特許文献3、4)及び格子定数a=8.45~8.50ÅであるNaxLi4-xTi512(0<x≦0.2)(非特許文献6~12)よりも大きい格子定数aを有する。
上述のとおり、従前のナトリウムイオン電池の負極活物質を充電反応(式b)に供すると、ナトリウムの吸蔵によって格子定数aが増大した(例えば4%以上の増大)異なる相を生じるため、格子体積の顕著な膨脹(例えば14%以上の増大)を伴う。つまり、従前のナトリウムイオン電池の負極活物質は、ナトリウムの吸蔵及び脱離によって負極の格子体積の顕著な膨張-収縮を伴うため、負極の動作は本質的に不安定で電極の劣化が早く、サイクル安定性及び充放電レート特性の点で問題がある。
一方で、本発明の負極活物質は従前の負極活物質よりも大きな格子定数aを有するため、充電反応(式c)に供しても、ナトリウムの吸蔵による格子定数a及び格子体積の変化はより小さくなる。つまり、ナトリウムの吸蔵及び脱離による負極活物質の体積変化が低減(具体的には、後述試験例7でわずか3%程度の変化)され負極電極が安定であるため、サイクル安定性及び充放電レート特性が向上する。
本発明の負極活物質の格子定数aは、(Na616c(LiTi516d(O1232eの格子定数(「aNa6LTO」とも記載する。)に極めて近いため、負極活物質として用いられた場合の安定性、サイクル安定性及び充放電レート特性の向上効果を良好に得ることができる。例えば、本発明の負極活物質の格子定数aは、0.992×aNa6LTOÅ以上、好ましくは0.994×aNa6LTOÅ以上、より好ましくは0.995×aNa6LTOÅ以上、さらに好ましくは0.999×aNa6LTOÅ以上が挙げられる。格子定数aの範囲の上限は、aNa6LTOÅ以下、又はaNa6LTOÅ未満である。具体的な格子定数aの範囲としては、0.992×aNa6LTOÅ以上aNa6LTOÅ以下、0.992×aNa6LTOÅ以上aNa6LTOÅ未満、0.994×aNa6LTOÅ以上aNa6LTOÅ以下、0.994×aNa6LTOÅ以上aNa6LTOÅ未満、0.995×aNa6LTOÅ以上aNa6LTOÅ以下、0.995×aNa6LTOÅ以上aNa6LTOÅ未満、0.999×aNa6LTOÅ以上aNa6LTOÅ以下、0.999×aNa6LTOÅ以上aNa6LTOÅ未満が挙げられる。
本発明の負極活物質の格子定数aの具体的な数値としては、例えば8.67Å以上、好ましくは8.69Å以上、より好ましくは8.70Å以上、さらに好ましくは8.73Å以上が挙げられる。格子定数aの範囲の上限は、aNa6LTOÅ以下、又はaNa6LTOÅ未満である。より具体的な格子定数aの範囲としては、8.67Å以上aNa6LTOÅ以下、8.67Å以上aNa6LTOÅ未満、8.69Å以上aNa6LTOÅ以下、8.69Å以上aNa6LTOÅ未満、8.70Å以上aNa6LTOÅ以下、8.70Å以上aNa6LTOÅ未満、8.73Å以上aNa6LTOÅ以下、8.73Å以上aNa6LTOÅ未満が挙げられる。なお、aNa6LTO(Å)の値は公知であり、例えば8.74Åと報告されている。
[1-4.半値幅]
また、本発明の負極活物質はスピネル型ナトリウムチタン酸化物の純度が高く、他の結晶のミキシングが抑制されているため、結晶性に優れている。このため、本発明の負極活物質のX線回折線における半値幅は狭小である。当該半値幅の具体例としては、(111)面の回折ピークの半値幅として例えば0.30未満、好ましくは0.28以下、より好ましくは0.25以下が挙げられる。半値幅の範囲の下限としては特に限定されないが、例えば0.06が挙げられる。範囲幅の具体的な範囲としては、0.06以上0.30未満、0.06~0.28、0.06~0.25が挙げられる。なお、本発明において、半値幅とは、半値全幅(FWHM)をいう。
[2.負極活物質の製造方法]
本発明の負極活物質の製造方法は、(220)面の回折ピークを有するスピネル型ナトリウムチタン酸化物を合成することができる方法であり、上述の本発明の負極活物質の製造にも適用できる。通常、結晶中のリチウムをナトリウムに置換するためには、まず、最初にリチウムを脱離させることでリチウムサイトを空にして、その後、ナトリウムを吸蔵させる操作を行うことが考えられる。しかしながら、本発明の製造方法で原材料に用いるLi4Ti512は、チタンの価数が既に最高価数である4価に達しておりそれ以上の酸化が不可能であるため、リチウムを予め脱離させることができない。従って、本発明の負極活物質の製造方法では、Li4Ti512にナトリウムを吸蔵させた後に、リチウムとナトリウムとを両方脱離することによって上述のスピネル型ナトリウムチタン酸化物を生じさせる。
本発明の負極活物質の製造方法は、Li4Ti512にナトリウムを吸蔵させ、前駆体を得る工程1と;前記前駆体を、リチウム脱離電位以上の酸化電位を有する酸化剤を用いて酸化処理し、スピネル型結晶構造の(220)面の回折ピークを有するスピネル型ナトリウムチタン酸化物を得る工程2と、を含むことを特徴とする。以下、本発明の負極活物質の製造方法について詳述する。
[2-1.工程1]
工程1では、Li4Ti512((Li3)8a(LiTi5)16d(O12)32e)を原料とし、これにナトリウムを吸蔵させることで、(Li616c(LiTi516d(O1232e相及び(Na616c(LiTi516d(O1232e相を含むナトリウム吸蔵リチウムチタン酸化物を前駆体として得る。この前駆体を合成する具体的な手法としては、電極反応による手法と、化学反応による手法とが挙げられる。
電極反応により前駆体を合成する場合、前駆体は、Li4Ti512相を電極に用いた充電反応によって得ることができる。より具体的には、下記の充電反応(式b)によって得ることができる。(式b)の充電反応は公知であり、当該反応を生じさせる具体的な条件には特に制約は無く、ナトリウムイオン電池を組み立てることによって当業者が適宜決定することができる。たとえば、金属ナトリウムの析出及び/又は電解液の反応を回避する観点から、電圧としては例えば0.3V(vs. Na+/Na)以上であることが好ましい。当該電圧の範囲の上限としては特に限定されず、ナトリウム吸蔵電位である0.7V(vs. Na+/Na)を下回っていればよいが、過電圧の影響を好ましく抑制する観点から、例えば0.5V(vs. Na+/Na)以下が挙げられる。また、後述工程2の処理条件に供された場合に気泡発生による活物質の剥離を抑制する観点から、電極には、ポリイミド樹脂等の結着性の高いバインダを用いることが好ましい。このようなバインダを用いた電極を用いると、後述の工程2を行った後でも活物質の剥離が抑制されているため、電極をそのまま乾燥させるだけで再度工程1に供することができ、従って工程1及び工程2のサイクル繰り返しが極めて容易となる。なお、(式b)の内容についてはすでに言及しているが、ここではWyckoffサイトを明記した式を再度示す。
Figure 0007378157000006
上記(式b)の反応によって、原材料のLi4Ti512に局所的にナトリウムが吸蔵され、リチウム濃縮相(Li6)16c(LiTi5)16d(O12)32eとナトリウム濃縮相(Na6)16c(LiTi5)16d(O12)32eとの二相分離状態が生じる。この二相分離状態は、高分解能透過電子顕微鏡によって容易に観察することができる。この二相分離状態の前駆体が、後述の工程2に供される。
化学反応により前駆体を合成する場合、前駆体は、Li4Ti512粉体と、ナトリウムドナーとを混合することによって得ることができる。前駆体を化学反応によって合成することで、本発明の負極活物質の製造方法において電池試験サイクルを使用する必要が無くなる。従って、前駆体の大量合成が可能となり、結果的に、負極活物質の製造効率をさらに大幅に向上させることが可能になる。また、本工程を行うための手法が単純であることから、結果的に、負極活物質を非常に簡単に製造することが可能になる。
化学反応による前駆体の合成においては、Li4Ti512粉体にナトリウムドナーが接触することによって、Li4Ti512粉体微粒子それぞれにおいて、上記(式b)の反応が化学的に起こる。その結果、微粒子それぞれにおいて、リチウム濃縮相(Li6)16c(LiTi5)16d(O12)32eとナトリウム濃縮相(Na6)16c(LiTi5)16d(O12)32eとの二相分離状態が生じる。つまり、前駆体は、二相分離状態の微粒子が多数集合した粉体として得られる。
ナトリウムドナーとしては、Li4Ti512粉体との接触時にナトリウムイオンを生じる物質であれば特に限定されず、例えば、金属ナトリウム及び有機ナトリウム化合物が挙げられる。これらのナトリウムドナーの中でも、より反応効率が高く取り扱いが容易である点で、好ましくは有機ナトリウム化合物が挙げられる。
有機ナトリウム化合物は、有機化合物溶液に金属ナトリウムを溶解させて得られることが知られており、極めて強い還元性を有し他の物質を強くナトリウム化させる性質を有する。有機ナトリウム化合物は、安定な有機ハロゲン化物を還元分解し、且つハロゲン元素とナトリウム塩を作ることから、従来は有機物中のハロゲンの定量分析に用いられてきた化合物である。
有機ナトリウム化合物は、一般式R-Na(I)で表される。当該一般式において、Rは有機基を表す。Rは、好ましくは、直鎖状又は分岐状のアルキル基、若しくはアリール基を表す。
直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、炭素数1~12、好ましくは1~6、より好ましくは1~4の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
アリール基としては、単環アリール基及び多環アリール基が挙げられる。単環アリール基としては、フェニル基及びシクロペンタジエニル基が挙げられる。多環アリール基としては、縮合環アリール基及び多環非縮合環アリール基が挙げられる。縮合環アリール基としては、アントラセニル基等の炭素縮合三環基、ナフチル基等の炭素縮合二環基が挙げられる。多環非縮合環アリール基としては、ビアリール基が挙げられ、より好ましくは、ビナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。
これらの基の中でも、有機ナトリウム化合物の溶液中での安定性がより高く取り扱いが容易である観点から、好ましくはアリール基が挙げられ、好ましくは多環アリール基が挙げられる。
これらの有機ナトリウム化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ナトリウムドナーとして金属ナトリウムを用いる場合、金属ナトリウムは、粉末の形態で用いられる。Li4Ti512粉体と金属ナトリウム粉体とを混合する手法としては、固相混合法であれば特に限定されず、均一に混合可能な手段を当業者が適宜選択することができる。具体的には、機械的混合及び手混合が挙げられる。機械的混合を行う場合、好ましくはボールミルを用いることができる。Li4Ti512粉体と金属ナトリウム粉体とを均一に混合後、反応して前駆体が得られたことは、原料粉末の色調の変化(例えば白色から黒色への変化)を確認することで判断することができる。
ナトリウムドナーとして有機ナトリウム化合物を用いる場合、有機ナトリウム化合物は、溶液の形態で用いられる。有機ナトリウム化合物溶液の溶媒としては、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。
有機ナトリウム化合物溶液は、一般式R-H(II)(但し、Rは、一般式(I)におけるRと同じである。)で表される有機化合物を当該溶媒中に溶解させた溶液に、金属ナトリウムを溶解させることで調製されたものであってよい。有機ナトリウム化合物溶液の調製は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。Li4Ti512粉体と有機ナトリウム化合物溶液とを混合する手法としては、固液混合法であれば特に限定されず、撹拌などにより均一に混合すればよい。Li4Ti512粉体と有機ナトリウム化合物溶液とを均一に混合後、反応して前駆体が得られたことは、原料粉末の色調の変化(例えば白色から暗青色への変化)を確認することで判断することができる。反応後は、ろ過を行い、更に上記の溶媒で洗浄することで、前駆体を粉末として得ることができる。なお、ろ過後の有機ナトリウム化合物溶液には更に金属ナトリウムを追加して不活性ガス雰囲気下で保存することで、再利用することができる。
[2-2.工程2]
工程1で得られた前駆体、つまり、(Li616c(LiTi516d(O1232e相及び(Na616c(LiTi516d(O1232e相を含むナトリウム吸蔵リチウムチタン酸化物は、リチウム脱離電位以上の酸化電位を有する酸化剤を用いて酸化処理される。リチウム脱離電位を超える酸化電位を有する酸化剤の作用によって、酸化反応が、以下の(式d)に示す機構で進行することにより、スピネル型ナトリウムチタン酸化物(Na3)8a(LiTi5)16d(O12)32eが得られる。本工程は、電池を作動させることによる電極反応を用いない化学処理であるため、反応が速やかに進行する利点がある。また、製造スケールを大きくして本工程を行った場合であっても、電極反応の大スケール化(つまり電極の大型化)で懸念されるデンドライトの大量発生及び短絡のリスクが回避されるため、安全に製造スケールを大きくすることができる利点もある。このように、本発明の製造方法は製造効率に優れたものとなる。
Figure 0007378157000007
上記(式d)に示すように、酸化反応ではリチウムとナトリウムとの両方が脱離される必要がある。リチウム脱離電位は、ナトリウム脱離電位よりも高い。従って、リチウムとナトリウムとの両方を脱離させるために、リチウム脱離電位を超える酸化電位を有する酸化剤を用いる。
リチウム脱離電位を超える酸化電位を有する酸化剤は公知であり、当業者が適宜選択することができる。例えば、様々な化合物について、標準水素電極(NHE)に対する酸化電位が知られており、リチウム脱離電位である-1.48V(vs.NHE)を超える酸化電位を有する任意の化合物を用いることができる。好ましくは、酸化剤が有する酸化電位は、リチウム脱離電位より優位に高いことが好ましく、例えば、標準水素電極(NHE)に対する酸化電位として-1.25V以上、好ましくは-1.20V以上、より好ましくは-0.75V以上、さらに好ましくは-0.25V以上が挙げられる。酸化剤が有する酸化電位の上限は特に限定されないが、ナトリウムの過度の脱離を好ましく抑制する観点から、例えば、標準水素電極(NHE)に対する酸化電位として1.7V以下、好ましくは1.6V以下、より好ましくは1.5V以下、さらに好ましくは1.4V以下、一層好ましくは1.3V以下が挙げられる。具体的な標準水素電極(NHE)に対する酸化電位の範囲としては、-1.48V~1.7V、-1.48V~1.6V、-1.48V~1.5V、-1.48V~1.4V、-1.48V~1.3V、-1.25V~1.7V、-1.25V~1.6V、-1.25V~1.5V、-1.25V~1.4V、-1.25V~1.3V、-1.20V~1.7V、-1.20V~1.6V、-1.20V~1.5V、-1.20V~1.4V、-1.20V~1.3V、-0.75V~1.7V、-0.75V~1.6V、-0.75V~1.5V、-0.75V~1.4V、-0.75V~1.3V、-0.25V~1.7V、-0.25V~1.6V、-0.25V~1.5V、-0.25V~1.4V、-0.25V~1.3Vが挙げられる。
リチウム脱離電位を超える酸化電位を有する酸化剤は数多存在するが、具体例としては、水、エタノール、ヨウ素等が挙げられる。これらの酸化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、リチウム脱離電位を超える酸化電位を有する酸化剤は、気体、液体、及び固体のいずれであってもよいが、液相酸化反応が、反応速度が速くかつ反応が均一であることから、液体であることが好ましい。また、当該液体としては、水性液体(水を含む液体)及び非水性液体(水を含まない液体)を問わない。水性液体の酸化剤の具体例としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等、好ましくはエタノール)水溶液等が挙げられ、非水性液体の酸化剤の具体例としては、アルコール、水以外の酸化剤(例えばヨウ素等)を溶質とするアルコール溶液等が挙げられる。さらに、これらの酸化剤の中でも、入手容易性、除去容易性、反応速度、及び反応均一性の観点から、水性液体が好ましく、特に水が好ましい。なお、水の標準水素電極(NHE)に対する酸化電位は、pH1の場合で0V、pH7の場合で-0.413V、pH14の場合で-0.862Vであり、いずれの液性であっても酸化剤として使用することができる。なお、水としては、水道水、純水(脱イオン水、蒸留水、精製水)、超純水等が挙げられるが、本発明において水を用いる場合は、イオンが厳密に除外されている必要はない。入手容易性の点からは、水道水を用いてもよい。
リチウム脱離電位を超える酸化電位を有する酸化剤として液体(具体的には水性液体)を用いる場合、吸蔵させたナトリウムの脱離を抑制する目的で、酸化剤である液体中には、ナトリウム塩を溶質として含ませることができる。この場合、酸化剤である液体中のナトリウム塩は、酸化反応時の温度における飽和濃度で含ませることができる。ナトリウム塩としては、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらのナトリウム塩の中でも、温度変化に対して飽和濃度がほとんど変化しない塩化ナトリウムを用いることが好ましい。
このような酸化剤を用いることで、ナトリウム吸蔵リチウムチタン酸化物のリチウム濃縮相(Li6)16c(LiTi5)16d(O12)32eからリチウムが脱離され、ナトリウム濃縮相(Na6)16c(LiTi5)16d(O12)32eからナトリウムが脱離され、結果として、(Li3)8a(LiTi5)16d(O12)32eと新たなナトリウム置換相(スピネル型ナトリウムチタン酸化物相(Na3)8a(LiTi5)16d(O12)32e)とが二相分離状態で得られる。
[2-3.工程1及び工程2のサイクル]
本発明の負極活物質の製造方法では、工程1(ナトリウム吸蔵による前駆体合成)及び工程2(ナトリウム及びリチウムの脱離による負極活物質合成)からなるサイクルを1回行うことで、スピネル型ナトリウムチタン酸化物の相を含む材料を得ることができる。さらに、上述の工程1及び工程2のサイクルを複数行うことで、得られる材料におけるスピネル型ナトリウムチタン酸化物の割合を増やし、純度を高めることができる。本発明の製造方法においては、工程2で電池による電極反応を用いないため、2サイクル目以上においても、電極反応を用いた場合にみられるような、脱離したリチウムイオンの結晶中への逆戻りを抑制することができる。このため、優れた精製効率を達成することができる。本発明の製造方法においては、工程1及び工程2の具体的なサイクル数は2サイクル以上であればよく、好ましくは3サイクル以上である。
なお、材料中でスピネル型ナトリウムチタン酸化物に変換される量を理論値として見積もると、スピネル型ナトリウムチタン酸化物相分率は、1サイクルで50%、2サイクルで75%、3サイクルで87.5%であり、7サイクルで99%を超える計算となる。しかしながら、本発明の負極活物質の製造方法によると、後述試験例5のエントリ2及びエントリ5で実証されるように、2サイクルで理論値を超える純度の負極活物質を得ることが可能であり、後述試験例5のエントリ3及びエントリ6で実証されるように、3サイクルで単一相に限りなく近い状態の負極活物質を得ることも可能である。このように、本発明の負極活物質の製造方法は、サイクルによる精製効率が非常に高いため、工程1及び工程2のサイクル数は、例えば8サイクル以下、好ましくは7サイクル以下、より好ましくは6サイクル以下、さらに好ましくは5サイクル以下、一層好ましくは4サイクル以下であってよい。より具体的には、工程2を電極反応によって行う場合は、反応の均一性により優れていることから、工程1及び工程2のサイクル数は、例えば6サイクル以下、好ましくは5サイクル以下、より好ましくは4サイクル以下であってよく、工程2を化学反応によって行う場合は、工程1及び工程2のサイクル数は、例えば8サイクル以下、好ましくは7サイクル以下、より好ましくは6サイクル以下、さらに好ましくは5サイクル以下であってよい。
具体的なサイクル数の範囲としては、1~8サイクル、1~7サイクル、1~6サイクル、1~5サイクル、1~4サイクル、2~8サイクル、2~7サイクル、2~6サイクル、2~5サイクル、2~4サイクル、3~8サイクル、3~7サイクル、3~6サイクル、3~5サイクル、3~4サイクルが挙げられる。
サイクル繰り返しにおいて、工程2を行った後に工程1に戻る際には、得られた負極物質を水洗いし、乾燥させた後、再び工程1に供すればよい。この場合、再度の工程1におけるナトリウム吸蔵対象となるLi4Ti512相は、Na6LiTi512相と共に材料中に共存しており、サイクルを繰り返すごとに、Li4Ti512相の割合は減少していく。
工程1で電極反応を用いる場合、再度の工程1では、水洗いした電極(負極物質)をそのまま工程1の電極として用いることができる。もし、先立つ工程2の処理によって電極表面の活物質の剥離が起こっている場合は、活物質を回収及び濾過し、再度電極化して、再度の工程1に供する。工程1で使用される電極が、上述のようにポリイミド樹脂等の結着性の高いバインダを用いて構成されている場合は、工程2の処理に供されても電極表面の活物質の剥離が抑制されるため、再度の電極化を行わなくとも工程1を行うことができる。このため、工程1及び工程2のサイクルを、充電(工程1)と液相への浸漬(工程2)との繰り返しのみの非常に簡便な手順で行うことができる。
一方、工程1で化学反応を用いる場合は、工程1及び工程2のサイクルを、粉体と金属ナトリウムとの混合(工程1)と液相との混合(工程2)との繰り返しのみの非常に簡便な手順で行うことができる。なお、2サイクル以降の工程1では、効率的精製のため、前サイクルで得られた負極活物質(未反応LTOを含む)の粉体に対して金属ナトリウムのみを再添加することが好ましい。また、前サイクルで得られた負極活物質における未反応LTO部分に金属ナトリウムが効率的に接触するように、粉体と金属ナトリウムとの重量混合比率は、1サイクル目の工程1で用いた粉体と金属ナトリウムとの重量混合比率と同程度とし、全サイクルを通じて工程1における当該重量混合比率を一定としてもよい。
[3.ナトリウムイオン電池用負極]
上述の本発明の負極活物質は、ナトリウムイオン電池用負極に有用である。従って、本発明は、ナトリウムイオン電池用負極も提供する。本発明のナトリウムイオン電池用負極は、上述の負極活物質を含む限り特に限定されるものではないが、通常、負極活物質、導電剤、結着剤等を含む負極活物質層を集電体表面に設けたものである。
本発明のナトリウムイオン電池用負極に含まれる負極活物質は、上述の負極活物質を含むものであれば、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の公知の負極活物質を含むものであってもよい。例えばナトリウムイオンを吸蔵・脱離することのできる天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、ハードカーボン、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体等の炭素材料から選択される1種又は複数種が挙げられる。炭素材料の形状としては、例えば天然黒鉛のような薄片状、メソカーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、又は微粉末の凝集体等のいずれでもよい。ここで炭素材料は、導電剤としての役割を果たす場合もある。負極活物質層中の本発明の負極活物質の含有量は特に限定されないが、負極活物質層の安定性、サイクル安定性及び充放電レート特性の向上効果を良好に得る観点から、80質量%以上、好ましくは90質量%以上、具体的には、80~100質量%、好ましくは90~100質量%が挙げられる。導電助剤の添加は任意であり、導電助剤フリーの電極でもかまわない。
導電剤としては、上述の炭素材料の他、KB、AB、VGCF、Cu粉、Al粉、Ni粉等の一般によく利用されている導電剤から選択される1種または複数種が挙げられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体、ポリイミド等から選択される1種または複数種が挙げられる。
集電体としては、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Fe及びこれらの合金等の導電性の材料を用いた、箔、メッシュ、エキスパンドグリッド(エキスパンドメタル)、パンチドメタル等の形態のものが挙げられる。箔の厚み、メッシュの目開き、線径、メッシュ数、及び集電体の大きさは、当業者が適宜決定することができる。
負極を製造する方法としては例えば次の方法が挙げられる。本発明の負極活物質を含む負極活物質と導電剤と結着剤と有機溶媒とを混合させて負極活物質スラリーを調製する。ここで使用可能な有機溶剤としては、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルトリアミン等のアミン系;エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル系;メチルエチルケトン等のケトン系;酢酸メチル等のエステル系、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
次いで、上記負極活物質スラリーを負極集電体上に塗工し、乾燥後プレスする等して固着する。ここで、負極活物質スラリーを負極集電体上に塗工する方法としては、例えばスリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等が挙げられる。
なお、負極を製造する別の方法として、リチウムチタン酸化物Li4Ti512を含む電極を用いて、ナトリウムイオン電池を組んだ後、充電反応(式b)及び本発明の製造方法で示した放電反応(式d)に供することもできる。
[4.ナトリウムイオン電池]
本発明は、上述のナトリウムイオン電池用負極を用いたナトリウムイオン電池用負極も提供する。本発明のナトリウムイオン電池は、上述のナトリウムイオン電池用負極を含む限り特に限定されない。通常、本発明のナトリウムイオン電池は、上述のナトリウムイオン電池用負極のほか、ナトリウムイオンを吸蔵及び脱離することができる正極と、電解質とを含む。
正極は、集電体と、その集電体の表面に設けられた正極活物質層とを含む。正極活物質層は、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含む。
正極活物質としては、ナトリウムイオン電池に使用できるものであれば特に限定されない。例えば、層状活物質、スピネル型活物質、オキソ酸塩活物質等が挙げられる。具体的には、NaFeO2、NaNiO2、NaCoO2、NaMnO2、NaVO2、Na(NiyMn1-y)O2(0<y<1)、Na(FezMn1-z)O2(0<z<1)、NaVPO4F、Na2FePO4F、Na32(PO43、及びこれらの固溶体、等が挙げられる。さらに、正極活物質として適用可能である限り、これら化合物の任意の元素置換体も挙げられる。正極における導電剤、結着剤等の種類、並びに正極活物質層を集電体上に形成する方法は、負極における各成分及び方法と同様である。
電解質としては特に限定されず、ナトリウム二次電池に一般的に使用される塩を用いることができる。例えば、NaPF6、NaBF4、NaClO4、NaTiF4、NaVF5、NaAsF、NaSbF6、NaCF3SO3、Na(C25SO22N、NaB(C242、NaB10Cl10、NaB12Cl12、NaCF3COO、Na224、NaNO3、Na2SO4、NaPF3(C253、NaB(C654、及びNa(CF3SO23C等が挙げられる。これらの塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。中でも、放電容量及びサイクル寿命の観点から、電解質としてはNaPF6が好ましい。電解液中の電解質の濃度(溶媒中の塩の濃度)は、特に限定されないが、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは0.5mol/L以上が挙げられ、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2mol/L以下が挙げられる。具体的な電解液中の電解質の濃度の範囲としては、0.1~3mol/L、0.1~23mol/L、0.5~3mol/L、0.5~2mol/Lが挙げられる。
電解質は、液体及び固体のいずれの形態で用いられてもよい。上述のとおり、本発明の負極物質は格子定数aがNa6LiTi512の格子定数aNa6LTOに極めて近いため、ナトリウム吸蔵-放出の過程における格子定数変化が極めて小さい特性を有するため、特に、電解質が固体の形態で用いられる場合に有用となる。
電解質が液体の形態で用いられる場合、電解質を溶解する溶媒は特に限定されないが、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネートのような環状カーボネート系、テトラヒドロフランなどのエーテル系、ヘキサンなどの炭化水素系、γ-ブチルラクトンなどのラクトン系、などを用いることができる。中でも、サイクル寿命の観点から、電解液溶媒としてはECを含有する溶媒が好ましい。通常、ECは常温では固体であるため、EC単独では電解液としての機能を果たさない。しかし、PC、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などとの混合溶媒とすることで、常温でも使用可能な電解液として機能する。
電解質が固体の形態で用いられる場合、固体電解質としては特に限定されず、例えば、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等無機系固体電解質;高分子系固体電解質等の有機系固体電解質が挙げられる。
本発明のナトリウムイオン電池によれば、例えば以下の式に示す充放電反応により、二次電池として機能する。以下の例においては、正極としてNaFeO2を用いた例を一例として挙げているのみであり、正極としてはナトリウムイオン電池に適用可能である限り制限はない。以下において、nの範囲は0<n≦1であり、好ましくは0<n≦0.3である。
Figure 0007378157000008
本発明のナトリウム二次電池の構造としては特に限定されず、形態・構造の観点からは、積層型(扁平型)電池、捲回型(円筒型)電池等、従来公知のいずれの形態・構造にも適用することができる。また、ナトリウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電池構造)の観点からは、(内部並列接続タイプ)電池及び双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用することができる。尚、上述のとおり電解質として液体及び固体のいずれを用いても良いため、本発明のナトリウム二次電池は、液体電池及び全固体電池のいずれの形態で構成されてもよく、好ましくは全固体電池として構成されることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[参考試験例1]
本参考試験例では、Li4Ti512へのナトリウム吸蔵による前駆体の合成及びナトリウム及びリチウムの脱離による負極活物質の合成の両方を電極反応によって行った。つまり、ナトリウム吸蔵を充電反応によって行い、ナトリウム及びリチウムの脱離を放電反応によって行った。これによって、スピネル型ナトリウムチタン酸化物を合成した。スピネル型ナトリウムチタン酸化物の合成方法の概要を表1に示す。
Figure 0007378157000009
(1)電池の作製
電極材料であるLi4Ti512(LTO)としては、石原産業株式会社より購入したENERMIGHT(登録商標)LT-106を用いた。当該活物質LTO、アセチレンブラック(AB)およびポリビニリデンジフロライド(PVDF)を90:5:5の重量比で混合し、N-メチル-ピロリドン溶媒に分散させ、電極スラリーを形成した。このスラリーをアルミホイルに載せ、乾燥空気充填ボックス(-80℃ d.p.)で3日間乾燥させた。このLTO電極シートをφ16mmのディスク状に打ち抜いた。ナトリウムイオン電池(SIB)を、LTO電極シートを正極とし、ナトリウム金属箔を負極とする試験型電池(HSセル、宝泉株式会社製)として組み立てた。電解液としては、混合炭酸塩溶媒[エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1]に溶解した1MのNaPF6液を用いた。電極は、微多孔性のポリプロピレンフィルムとガラスフィルターとによって分離した。電池組み立てにおけるすべての工程は、乾燥空気雰囲気(-80℃ d.p.)下で行った。
(2)電極反応による前駆体の合成
組み立てた電池を、0.1Cの定電流(CC)で0.3V(vs. Na+/Na)まで充電(ナトリウム吸蔵)し、充電容量が150mAhg-1以上に達するまで0.3V(vs. Na+/Na)の定電圧(CV)で保持し、セル電流の値が10μA以下になるまで充電することで、ナトリウム吸蔵を完了させた。これによって、前駆体(Li7Ti512+Na6LiTi512)を得た。
(3)電極反応による負極活物質の合成
得られた前駆体を、2.0V(vs. Na+/Na)まで10Cレートで放電した後、放電容量150mAhg-1以上に達するまで2.0V(vs. Na+/Na)を保持し、セル電流が10μA以下になるまで放電した。なお、放電終了まで約6時間を要した。
(4)負極活物質の解析
負極活物質を合成した電池を乾燥空気雰囲気中で解体し、LTO電極をジメチルカーボネート(DMC)溶媒で洗浄して電解質成分を除去した。次に、LTO電極をよく乾燥させ、XRD測定の試料ホルダーに貼り付けた。XRD実験は、デスクトップ型X線回折装置(MiniFlex 600R、Rigaku製)を用い、0.03°の走査ステップでCu-Kα線源(λ1=1.54059Åおよびλ2=1.54432Å)を用い、管電圧40kV、管電流15mAで行った。出力は600Wであった。測定は、空気雰囲気中で、15°~75°の走査範囲を走査速度1°/分で20サイクル行った。XRDデータは、20サイクル走査を平均したものとして得た。また、格子定数については、(111)、(400)、及び(440)回折線から、それぞれ、格子面間隔値d(hkl)(=λ/2sinθ)を算出して、公式a=d(hkl)√(h2+k2+l2)を用いて格子面間隔値d(hkl)から格子定数aを導出し、(111)、(400)、及び(440)回折線から得たそれぞれの格子定数aの平均値を、スピネル型ナトリウムチタン酸化物の格子定数として得た。(以下、全ての試験例において同様。)
図1に、得られた負極活物質のCuKα1線による回折パターンを示すXRDスペクトルを、原料のLi4Ti512のシミュレーションスペクトル及び目的の(Na38a(LiTi516d(O1232eのシミュレーションスペクトルとともに示す。シミュレーションスペクトルは、いずれも、VESTAプログラム(J. Appl. Cryst. 44 (2011) 1272-1276.)を用いた粉末回折シミュレーションによって得られたものである。すべてのスペクトルは、Al-220回折ピーク(a=4.049Å)の角度2θの位置を基準としてピークシフトを校正した。
図1に示されるように、参考試験例1において、一般的なLTO相(つまりLi4Ti512相)を示す鋭いピークが同様の回折角で観察された。つまり、参考試験例1で得られた負極活物質において、格子定数a(8.36Å)を有するLi4Ti512相が含まれていた。参考試験例1におけるLi4Ti512相を示すピークの位置は、Li4Ti512シミュレーションスペクトルにおけるピークの位置と良好な一致を示している。
加えて、参考試験例1で得られた負極活物質では、Li4Ti512相の各ピークの低角側に明確なピーク(図中、矢印で示す。)も併せて観察された。矢印で示したこれらの明確なピークは、Li4Ti512より大きな格子定数を有するスピネル型結晶構造相に由来し、それらのピーク位置をスピネルFd-3mパターンフィッティングに供した結果、格子定数aが8.69Åとして正確に計算された。このように、明らかに大きく且つ一定の格子定数の値を有していることは、参考試験例1によって得られた相が、固定された組成を有する多くの量のナトリウムを含有した相であることを示している。
さらに、参考試験例1で得られた負極活物質では、(220)面の回折ピークが明確に観察されている。Li4Ti512のスペクトルでは、(220)面の回折ピークはほとんど観察できない。スピネル構造の220回折は、8aサイトを占有する元素のみに由来する。したがって、参考試験例1によるXRDスペクトルにおいて(220)面の回折ピークが新たに観察されたことは、参考試験例1で得られた新たな相において、スピネル8aサイトが、リチウムに代わり、より大きなX線散乱強度を有する元素によって占有されたことを示す。ここで、一般にチタン原子は8aサイトを占有しない。したがって、参考試験例1において得られた新たな相のスピネル8aサイトはナトリウムによって占有されており、当該の新たな相は、(Na38a(LiTi516d(O1232eであることが結論付けられた。参考試験例1における新たな相(Na38a(LiTi516d(O1232eを示すピークの位置が、Na3LiTi512シミュレーションスペクトルにおけるピークの位置と良好な一致を示していることも、当該の新たな相が(Na38a(LiTi516d(O1232eとして実際に形成されていることを証明している。
なお、参考試験例1において検出された(220)面の回折ピークの積分強度I220は、(111)面の回折ピークの積分強度I111に対する比率I220/I111として19%であった。つまり、8aサイトの86%程度がナトリウムで置換されていることが分かった。参考試験例1で得られたスピネル型ナトリウムチタン酸化物を(NaxLi3-x8a(LiTi516d(O1232eの組成式で表すと、(220)面の回折ピークの積分強度I220より、xは厳密には2.5~2.6程度となる。このように、(220)面の回折ピークを有するスピネル型ナトリウムチタン酸化物は8aサイトの大半がナトリウムで置換されており、xがほぼ3であるため、便宜上、その組成は(Na38a(LiTi516d(O1232e又はNa3LiTi512と記載する。
負極活物質の解析は、以下の試験例においても同様に行った。
[試験例1]
本試験例では、本発明の負極活物質の製造方法における工程1(ナトリウム吸蔵による前駆体の合成)及び工程2(ナトリウム及びリチウムの脱離による負極活物質の合成)の実施において、工程1を電極反応によって行った。工程1及び工程2のサイクルは、1回のみ行った。スピネル型ナトリウムチタン酸化物の合成方法の概要を表2に示す。
Figure 0007378157000010
(1)電池の作製
ポリイミド(PI)バインダを用いた以下の電極を作製し、以下の電池を組んだ。
電極
LT-106(石原産業製Li4Ti512):導電性炭素(AB):PI
=80:5:15 on Al箔
Li4Ti512重量 2.6mg
電池
金属Na|1M NaPF6(EC/DEC=1)|LT-106 電極
(EC:エチレンカーボネート、DEC:ジエチルカーボネート)
(2)電極反応を用いたナトリウム吸蔵による前駆体の合成
上記の電池を、参考試験例1と同様に、0.1Cレートで0.3V(vs. Na+/Na)まで充電し、その後48時間以上0.3V(vs. Na+/Na)で電位固定した。これによって、ナトリウムを吸蔵した黒色の前駆体(前駆体電極)を得た。
(3)酸化処理を用いたリチウム及びナトリウム脱離による負極活物質の合成
次に、前駆体電極を乾燥雰囲気下で取り出し(つまりドライボックス内で電池を解体し)、すばやく5mLの純水(蒸留水)に浸した。pH7付近の純水は、その酸化電位(-0.413V vs.NHE)がリチウム脱離電位(-1.48V vs.NHE)を優に超える酸化剤である。気泡が発生し、電極の色が黒色からやや明るい灰色に変化したのを確認し、その状態で放置した。純水に浸漬して1時間後に電極を取り出し、良く乾燥させ、負極活物質(純水酸化電極)を得た。
(4)負極活物質の解析
得られた負極活物質のXRD測定を行った。XRD測定は、MiniFlex600(Rigaku)を用い、40kV,15mA,600W,1deg/min 20cycle,step 0.01deg.の条件で行った。
図2に、得られた負極活物質のXRDスペクトル(図中、「純水酸化」)を、前駆体電極のXRDスペクトル(図中、「前駆体」)と比較して示す。図中、三角印で示したピークが前駆体中に含まれるNa6LiTi512相に相当し、四角で示したピークがNa3LiTi512相に相当する。なお、得られた負極活物質(「純水酸化」)のXRDスペクトルは20サイクル走査を平均した結果を示し、前駆体電極(「前駆体」)のXRDスペクトルは、1サイクル走査による結果を示している。
得られたXRDスペクトルを、参考試験例1と同様に解析した。図2の「前駆体」電極では、格子定数a=8.72Åで見積もられるNa6LiTi512相が観察されたことから、前駆体が十分にナトリウムを吸蔵したものであることが確認できた。図3の「純水酸化」電極では、「前駆体」電極で観察されなかった(220)面の回折ピークが明確に観察されたことから、8aサイトがナトリウムで置換されたNa3LiTi512相であることが示された。また、このNa3LiTi512相の格子定数は8.63Åで見積もられた。さらに、(111)面の回折ピークの積分強度I111に対する(220)面の回折ピークの積分強度I220の比率(I220/I111)は、10.8%であった。
[試験例2]
本試験例では、本発明の負極活物質の製造方法における工程1(ナトリウム吸蔵による前駆体の合成)及び工程2(ナトリウム及びリチウムの脱離による負極活物質の合成)の実施において、工程1を、金属ナトリウムを用いる化学反応によって行った。工程1及び工程2のサイクルは、1回のみ行った。スピネル型ナトリウムチタン酸化物の合成方法の概要を表3に示す。
Figure 0007378157000011
(1)化学反応を用いたナトリウム吸蔵による前駆体の合成
グローブボックス中でNa(高純度化学、99%)0.41gとLTO(宝泉株式会社より購入)1.0gをジルコニア乳鉢で混合し(LTO:Na=1:8モル比)淡い青色の粉末を得た。得られた粉をフリッチェ製ジルコニアボール20mmΦ、5個とともにジルコニアポット(50ml)にいれ、Ar封入し100rpmで3時間、さらに200rpmで30分混合した。これによって、ナトリウムを吸蔵した黒色の前駆体(前駆体粉末)を得た。
(2)酸化処理を用いたリチウム及びナトリウム脱離による負極活物質の合成
得られた前駆体粉末0.25gを純水50ml中に分散させ、一晩撹拌することで酸化処理を行った。酸化処理後の粉末を水洗濾過し、乾燥させて負極活物質(純水酸化粉末)を0.21g得た。
(3)負極活物質の解析
試験例1と同様にしてXRD測定を行った。図3に、得られた負極活物質のXRDスペクトルを示す。25~30deg付近に、原料であるLi4Ti512由来の不純物に起因する幾つかのピークが確認されたものの、試験例1の「純水酸化」と同じ位置に(220)面の回折ピークが観察されたことから、8aサイトがナトリウムで置換されたNa3LiTi512相が合成できたことが示された。さらに、(111)面の回折ピークの積分強度I111に対する(220)面の回折ピークの積分強度I220の比率(I220/I111)は、10.4%であった。
[試験例3]
本試験例では、前駆体の純水酸化によって前駆体からリチウムイオンが脱離することを、以下の手順で確認した。
(1)化学反応を用いたナトリウム吸蔵による前駆体の合成
試験例2と同様にして、化学反応による前駆体粉末(Li7Ti512+Na6LiTi512)の合成を行った。
(2)酸化処理を用いたリチウム及びナトリウム脱離による負極活物質の合成
前駆体粉末を0.2421g秤量し、200.6mLの純水に加えて攪拌した。攪拌開始時刻を酸化反応の開始時刻とした。
(3)リチウム溶出量の定量
撹拌した分散液を1mL採取し、さらに100mLの純水に加えて撹拌した。濾過後、濾液中のリチウムイオンをイオンクロマトグラフ(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製ICS-1000)で定量測定した。
リチウムイオンのイオンクロマトグラフによる定量測定を、酸化反応の開始時刻から10分、1時間、3時間、6時間、及び23時間経過時に行った。図4に、イオンクロマトグラフによるリチウムイオン溶出量の時間変化を示す。
図4に示されるように、酸化反応の開始時刻から10分の段階で、大部分のリチウムイオンが純水中に溶出していた。これによって、純水酸化によって、リチウムイオンを引き抜くことができたことが示された。リチウムイオンの溶出量は、酸化反応の開始時刻から3時間経過時で46.4μMに達し、その後、ほぼ横ばい状態となった。これによって、リチウムイオン脱離による酸化反応は、3時間程度で完了したことが示された。
ここで、本試験例において理論上到達しうるリチウムイオンの最大到達濃度は68.2μMと算出される。リチウムイオンの最大到達濃度68.2μMに対し本試験例では1時間でリチウム溶出濃度が44.1μMに達した。すなわち理論溶出濃度の64%ものリチウムイオンを1時間で脱離できたことが確認できた。純水酸化の過程ではナトリウムイオンの溶出も起こりうるため、電気量保存の法則を考えると100%のリチウムイオン溶出は起こりえないが、理論最大到達濃度の64%程度のリチウムイオン脱離をわずか1時間程度で実現できる点は、上述の参考試験例1でリチウムイオン脱離(放電反応)が約6時間かかったことに鑑みると驚くべきスループット性が達成されたといえる。
[試験例4]
本試験例では、前駆体の酸化処理に用いる酸化剤に3種類のナトリウム塩をそれぞれ含む水溶液を用い、負極活物質の合成を行った。スピネル型ナトリウムチタン酸化物の合成方法の概要を表4に示す。
Figure 0007378157000012
(1)電池反応を用いたナトリウム吸蔵による前駆体の合成
試験例1と同様にして、電池反応による前駆体電極(Li7Ti512+Na6LiTi512)の合成を行った。
(2)酸化処理を用いたリチウム及びナトリウム脱離による負極活物質の合成
硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムをそれぞれ水に溶解し、28℃における飽和濃度を有する3種の飽和溶液を調製した。前駆体電極を乾燥雰囲気下で取り出し(つまり、ドライボックス内で電池セルを解体し)、すばやく5mLの飽和溶液に浸して放置した。3種類それぞれの飽和水溶液に浸漬して3時間後に電極を取り出し、水洗して良く乾燥させ、負極活物質(純水酸化電極)を得た。
(3)負極活物質の解析
得られた3種類の負極活物質について、試験例1と同様にしてXRD測定を行った。図5に、本試験例で得られた負極活物質のXRDスペクトルを、試験例1で得られた負極活物質(酸化処理に純水を使用)のXRDスペクトルとともに示す。
図5に示されるように、いずれの負極活物質も、試験例1で得られた負極活物質と同様に(220)面の回折ピークが観察されたことから、8aサイトがナトリウムで置換されたNa3LiTi512相が合成できたことが示された。さらに、(440)面の回折ピークの位置から格子定数を算出したところ、硝酸ナトリウム飽和水溶液を用いた酸化処理で得られた負極活物質で8.68Å、塩化ナトリウム飽和水溶液を用いた酸化処理で得られた負極活物質で8.675Å、硫酸ナトリウム飽和水溶液を用いた酸化処理で得られた負極活物質で8.675Åであり、いずれも、純水を用いた酸化処理で得られた負極活物質(試験例1)に比べて格子定数が増大したことが確認された。つまり、酸化剤としてナトリウム塩を飽和させた液体を用いることで、吸蔵させたナトリウムの脱離を抑制できると考えられる。
[試験例5]
本試験例では、本発明の負極活物質の製造方法における工程1(ナトリウム吸蔵による前駆体合成)及び工程2(リチウム及びナトリウムの脱離による負極活物質合成)を複数回繰り返し行うことで負極活物質を合成し、負極活物質中のNa3LiTi512の純度、並びに負極活物質の格子定数及び(111)面の解析ピークの半値幅を調べた(エントリ1~6)。また、比較用に、工程1及び工程2をいずれも電極反応を行った例についても同様に、純度、格子定数及び半値幅を調べた(エントリ7~8)。
電極反応の条件は、以下の条件で行った。
電極: LTO-PI on Al箔
セル: LTO-PI|1MNaPF6(EC/DEC=1)|金属Na
充電: 0.3V vs.Na+/Naまで定電流、
その後40時間以上0.3Vで電位固定
放電: 2.0V vs.Na+/Naまで10C定電流、
その後24時間以上2.0Vで電位固定
酸化処理(液相酸化)は、充電後のセルから電極を取り出し、直ちに飽和水溶液に3時間浸漬することによって行った。なお、各飽和水溶液は、28℃における飽和濃度を有する水溶液である。
具体的には、各エントリを以下の手順で行った。
(エントリ1)
充電後の電極をNaCl飽和水溶液に3時間浸漬させ、水洗い後良く乾燥させた。
(エントリ2)
エントリ1で得られた電極を再度充電し、再びNaCl飽和水溶液に3時間浸漬させた後、良く乾燥させた。
(エントリ3)
エントリ2で得られた電極を再度充電し、再びNaCl飽和水溶液に3時間浸漬させた後、良く乾燥させた。
(エントリ4)
充電後の電極をNaNO3飽和水溶液に3時間浸漬させ、水洗い後良く乾燥させた。
(エントリ5)
エントリ4で得られた電極を再度充電し、再びNaNO3飽和水溶液に浸漬させた後、
良く乾燥させた。
(エントリ6)
エントリ5で得られた電極を再度充電し、再びNaNO3飽和水溶液に浸漬させた後、
良く乾燥させた。
(エントリ7)
電池セルで充電-放電を行い、電解液を交換後、同じ充電-放電をもう1回繰り返した。つまり、充電-放電サイクルを合計2回行った。
(エントリ8)
エントリ7で得られた電池セルの電解液を交換後、同じ充電-放電をもう1回繰り返した。つまり、得られた電池セルが受けた充電-放電サイクル数は合計3回である。
得られた電極(負極活物質)について、試験例1と同様にしてXRD測定を行い、Na3LiTi512の相分率、並びに負極活物質の格子定数及び(111)面の解析ピークの半値幅を導出した。その結果を、表5及び図6~8に示す。スピネル型ナトリウムチタン酸化物の合成方法の概要を表5に示す。
Figure 0007378157000013
図6に示すように、工程1(ナトリウム吸蔵)と工程2(リチウム及びナトリウム脱離)との両方を電極反応によって行ったエントリ7~8に比べ、工程2(リチウム及びナトリウム脱離)を酸化処理(液相酸化)によって行ったエントリ1~6のほうで、(220)面の回折ピークがより明瞭に検出されたことが示された。
図7に、図6のXRDプロファイルに示された各電極中におけるNa3LiTi512相(以下、NTO相とも記載する)の相分率を示した。なお、相分率の定量は、XRD解析装置(MiniFlex 600R、Rigaku製)に付属の解析ソフトウェアによって行った。具体的には、実測したXRDプロファイルに対して、Li4Ti512相(a=8.36A)とNa3LiTi512相(a=8.70A)との二相共存を仮定し、全粉末回折パターンフィッティング(WPPF;Whole Powder Pattern Fitting)法による定量解析を行った。本手法は、仮定した二つの結晶相の存在比(スケール因子)をコンピューター上で様々に変化させ、実験値を再現する値を最小二乗法によって検索する手法である。仮定した二相の結晶構造や単位胞密度が大きく変化しない場合、算出された値はそのまま重量比として換算することが出来る。ここで、Li4Ti512相とNa3LiTi512相は共にスピネル型の結晶構造を有しており、その単位胞密度は3.48g/cm3(Li4Ti512)と3.41g/cm3(Na3LiTi512)で大差ないため、本明細書中では算出された相分率の値は両相の重量分率として解釈することが出来る。
図7に示されるように、工程1と工程2との両方を電極反応によって行ったエントリ7~8では、各工程を3サイクル行ってもNa3LiTi512の純度の向上が見られなかったことに対し、工程2を酸化処理(液相酸化)によって行ったエントリ1~6ではわずか2サイクルでNa3LiTi512相分率97%に達し、3サイクルではNa3LiTi512相分率99%、つまりほぼ単相状態で得ることができた。
なお、NTO相の(111)面回折ピークの強度の比率、つまり、NTO相及びLTO(Li4Ti512)相それぞれの(111)面回折ピークの積分強度の総和に対する、NTO相の(111)面回折ピークの積分強度の割合([NTO相の積分強度/(NTO相の積分強度+LTO相の積分強度)]×100)は、エントリ1で54%、エントリ2で91%、エントリ3で98%、エントリ4で56%、エントリ5で90%、エントリ6で99%であった。
なお、この実験データは、以下に詳述するとおり、NTO相の完全精製が原理的に可能であることを示している。
本発明の製造方法の1回目の工程1(前駆体の合成)は、以下の式で表される。
Li3LTO + 3Na++ 3e-→ 0.5Na6LTO + 0.5Li6LTO
また、1回目の工程2(酸化処理)は以下の式で表される。
0.5Na6LTO + 0.5Li6LTO → 0.5Na3LTO + 0.5Li3LTO + 1.5Li++ 1.5Na++ 3e-
つまり、1サイクル終了時点で電極にはNTO相とLTO相とが50%ずつ共存する。
さらに、この電極を用いた2回目の工程1(前駆体の合成)は、以下の式で表される。
0.5Na3LTO + 0.5Li3LTO + 3Na++ 3e-→ 0.75Na6LTO + 0.25Li6LTO
ここから2回目の工程2(酸化処理)を行う場合、理論的には、各々の濃縮相がそのまま酸化相に戻る理論モデルAと、1.5Na+と1.5Li+とが脱離する理論モデルBとが考えられる。
まず、理論モデルAを仮定すると2回目の工程2は以下の式で表される。
0.75Na6LTO + 0.25Li6LTO → 0.75Na3LTO + 0.25Li3LTO + 0.75Li++ 2.25Na++ 3e-
理論モデルAの場合、理論通りに反応が進んだとしても、1サイクル終了時点で電極にはNTO相が75%、LTO相が25%共存することになる。酸化の工程で取り出せるリチウムの量は回数を重ねるごとに減っていくため、精製効率は回数と共に減少することになる。具体的には1回のサイクル当たりLTO相は1/2の倍数で減少していくことになるため、LTO相分率1%以下(NTO相分率99%以上)の精製度まで達するのにかかるサイクル数(n回)は、(1/2)n<0.01 ⇔ n>6.64、つまり少なくとも7サイクルが必要となる。さらに(1/2)nは数学的に0になりえないため、理論モデルAによって精製が進む場合はLTO相が0とならず、すなわちNTO相の完全精製は原理的に不可能となる。
一方、理論モデルBを仮定すると2回目の工程2は以下の式で表される。
0.75Na6LTO + 0.25Li6LTO → Na3LTO + 1.5Li++ 1.5Na++ 3e-
理論モデルBの場合、酸化の過程でリチウムとナトリウムとが等量ずつ脱離する。つまり各サイクルでリチウムとナトリウムとが等量交換する。具体的には1回のサイクル当たりLTO相は1/2の減算で減少していくことになるため、原理的に2回のサイクルで精製が完了することになる。また、減算であるため数学的にLTO相が0になりえるため、実験的に2回のサイクルで精製が完了しなくともサイクルを重ねることで、NTO単一相が原理的に得られることになる。
本試験例によると、2サイクル完了時点ですでに理論モデルAによる理論値(NTO相が75%、LTO相が25%)よりも高い精製度が達成されていることから、NTOの完全精製が可能な理論モデルBに従って精製が進行したものと考えられる。
また、図8に示すように、格子定数に関しては、工程1と工程2との両方を電極反応によって行ったエントリ7~8では各工程のサイクル数を増やしても格子定数が有効に向上しなかったことに対し、工程2を酸化処理(液相酸化)によって行ったエントリ1~6ではサイクルごとに格子定数が増大し、3サイクル目では8.705(エントリ3)及び8.733(エントリ6)に達し、Na6LiTi512の格子定数(aNa6LTO)として報告されている8.74Åに極めて近い格子定数が得られた。
図9に示すように、(111)面の回折ピークの半値幅に関しては、工程1と工程2との両方を電極反応によって行ったエントリ7~8では各工程のサイクル数を増やしても半値幅は有効に減少しなかったことに対し、工程2を酸化処理(液相酸化)によって行ったエントリ1~6では半値幅は有意に減少し、結晶性が有効に向上していることが示された。
[試験例6]
本試験例では、本発明の製造方法の工程2で使用する酸化剤としてヨウ素エタノール溶液を用い、負極活物質を合成した。スピネル型ナトリウムチタン酸化物の合成方法の概要を表6に示す。
Figure 0007378157000014
ヨウ素は、その酸化電位(0.53V vs.NHE)がリチウム脱離電位(-1.48V vs.NHE)を優に超える酸化剤である。充電容量がx(mAh)となるように充電した電極の反応に必要な最低限のヨウ素の物質量は、理論量で、1.87・10-5・x(モル)と見積もられる。
(1)電池反応を用いたナトリウム吸蔵による前駆体の合成
試験例1と同様にして、電池反応による前駆体電極(Li7Ti512+Na6LiTi512)の合成を行った。最終的な充電容量は0.9mAh程度となった。
(2)酸化処理を用いたリチウム及びナトリウム脱離による負極活物質の合成
充電した電極をドライチャンバー内で電池セルから取り出し、直ちに、ヨードチンキ(0.03g/mLヨウ素(I2)エタノール溶液)のエタノール10倍(v/v)希釈液3mLに浸漬させた。2時間後、電極を取り出し、水洗後、ドライチャンバー内で1時間程度乾燥させた。なお、ヨードチンキを構成するヨウ素とエタノールは、いずれもリチウム脱離電位より高く、いずれも単独で酸化剤として作用しうる成分であるが、ヨウ素エタノール溶液の形態では、ヨウ素が酸化剤として作用したと考えられる。これは、速度論的にエタノールよりもヨウ素のほうが極めて反応が速く、生成したヨウ化リチウムは容易にエタノールに溶解するためである。実際に、反応の進行と共にヨウ素に由来する褐色が薄くなり、本工程の反応終了時点では溶液は薄黄色となった。
(3)負極活物質の解析
得られた負極活物質について、試験例1と同様にしてXRD測定を行った。得られたXRDスペクトルを図10に示す。図10に示されるように、ブロードではあるが、Li4Ti512相のピークの低角側に、上記試験例で得られたNa3LiTi512相のピークパターンと同様のピークパターンが確認された。また、(220)面の回折ピークもブロードながら確認できた。
[試験例7]
試験例5のエントリ3で得られた負極活物質(Na3LiTi512の相を、飽和食塩水を用いた処理を3サイクル行うことで精製した電極)を用い、試験例5で用いたものと同じ電解液及び金属ナトリウム電極と共に電池を組み、ナトリウムを吸蔵させた。ナトリウムの吸蔵においては、0.3Vで終止電流2μAまで電位固定して充電反応を行った。その後、大気中で、ナトリウム吸蔵させた電極を連続的にXRD測定した。なお、ナトリウム吸蔵後の電極は大気中で速やかに酸化され、ナトリウムイオンNa+を放出する。これは擬似的に電池の放電を再現していることと同じであるため、電池の放電反応と同視することができる(疑似的放電反応)。XRD測定は、15deg-75degの範囲を1deg/minの速度で20回行った。すなわち一つのXRDプロファイルを1時間かけて得ているため、測定結果は大気中での1時間ごとのNa+放出挙動を観察していることになる。測定結果を図11に示す。図11に示す通り、プロファイルの下(疑似的放電反応の初期)から上(疑似的放電反応の後期)にかけて、回折線のピークシフトが殆どないことが分かる。すなわち、Na+放出の際に格子定数の変化が殆どないことが確認できた。
図12に、図11の各XRDプロファイルから得られた格子定数から体積変化率を見積もった結果を示す。体積変化率は、初回(図11の最も下)のXRDプロファイルの格子体積を基準(V1)とし、測定番号ごとの体積をVnとして、Vnの体積変化率つまり[(Vn-V1)/V1]×100として見積もった。図12に示すとおり、ナトリウムイオンNa+の放出に伴って格子体積は僅かに減少するものの、体積変化率は5回目のスキャン以降殆ど変化がなく、-3%程度にとどまった。従前のナトリウムイオン電池の負極活物質であるLi4Ti512電極を用いていた場合の体積変化率が-14%程度(図中、破線で示したレベル)であることに鑑みると、10%程度もの体積変化率の抑制という劇的な改善が達成できたと言える。
[試験例8]
試験例5のエントリ3で得られた負極活物質(Na3LiTi512の相を、飽和食塩水を用いた処理を3サイクル行うことで精製した電極。以下、「3回精製電極」とも記載する)と純粋なLi4Ti512(以下「LTO電極」とも記載する)とでナトリウムイオン電池におけるサイクル特性を比較した。その結果を図13に示す。精製処理の過程で電極の脱落が多少起こりうるため、絶対的な充電容量は3回精製電極の方が少ないが、サイクルに伴う容量劣化の度合いは3回精製電極の方で顕著に低く抑えられていることが分かる。
また、図13の結果を、縦軸に充電容量の維持率、横軸にサイクル回数でプロットしたグラフを図14に示す。図14では、LTO電極及び3回精製電極のそれぞれサイクル過程での最大充電容量を100%として、各サイクルの容量を規格化して示している。図14に示すように、LTO電極は初回から急激に容量低下が起こったが、これはLTO電極の体積膨張変化により、集電体からの電極層の剥離が起こったためであると考えられる。一方、3回精製電極では試験例7(図12)で示したとおり、ナトリウムイオン電池のサイクルにおける体積変化が抑制されるため、電極自体が安定になる。したがって、純粋なLTO電極に比べて、容量劣化が格段に抑制されたものと考えられる。
[試験例9]
Li4Ti512相からNa3LiTi512の相(以下、「NTO相とも記載する」)を生じさせる酸化剤に必要な酸化電位の検討のため、電池試験を用い、放電固定電位を様々に変化させて放電反応(リチウム及びナトリウムの脱離)を行い、得られた電極のXRD測定を行った。図15に、放電電圧プロファイルを示す。図15のグラフにおいて、左縦軸はNa基準で表記した電位、右縦軸は対応する電位を水素電極基準に換算した電位を示す。また、図15中の破線は中性の水(H2O,pH7)の酸化電位を示す。なお、リチウムの脱離電位は、-1.48V(vs.NHE)又は1.2V(vs.Na+/Na)である。
図16に、図15の各放電条件で得た電極のXRDプロファイルを示す。リチウムの脱離電位以下の電位で放電した場合(図中(i))はNTO相の生成は確認できなかったが、リチウムの脱離電位を超える電位で放電した場合(図中(ii)~(v))はNTO相の生成が確認できた。中でも、-0.71V、0.29V、1.29V(vs.NHE)の電位で放電した場合(図中(iii)~(v))では、何れも明瞭なNTO相の生成が確認できた。その中でも特に、0.29V、1.29V(vs.NHE)の電位で放電した場合(図中(iv)、(v))でより明瞭なNTO相の生成が確認できた。また、中性の水(pH7)の酸化電位が-0.413V(vs.NHE)であるため、水を用いたNTOの生成が可能であることが電気化学的にも確認できる。
[試験例10]
試験例1と同様の、LTO-PI電極の充電(0.3V vs. Na+/Na) で終止電流10μA以下となるまで充電)及びpH7の純水を用いた液相酸化のサイクルを、1回(1st)、2回(2nd)及び3回(3rd)行い、それぞれのサイクル終了時点で試験例1と同様にXRD測定を行った。スピネル型ナトリウムチタン酸化物の合成方法の概要を表7に示す。
Figure 0007378157000015
図17にXRDプロファイルを示す。図17では、各プロファイルのNTO(111)面の回折ピークの半値幅を、サイクル回数の下に括弧書きで示した。サイクルを重ねるにつれてNTO相の結晶性が向上している様子が確認できた。また、後述図18に示すとおり3サイクルで98%に達していることから、4サイクルで単一相化を達成できるといえる。後述試験例11(工程1を化学反応によって行った)の結果に鑑みると、本試験例(工程1を電極反応によって行った)は反応均一性に優れているため精製効率に特に優れていることが分かった。
図18に、図17で示した各プロファイルにおけるNTO相の相分率を示す。図18中、縦軸はNTO相及びLTO(Li4Ti512)相それぞれの(111)面回折ピークの積分強度の総和に対する、NTO相の(111)面回折ピークの積分強度の割合([NTO相の積分強度/(NTO相の積分強度+LTO相の積分強度)]×100)を示す。図18に示されるように、サイクルを重ねるにつれてNTO相の割合が増大したことが確認できた。なお、各プロファイルの格子定数に関しても、サイクルを重ねるにつれて格子定数が増大したことが確認でき、具体的にはエントリ1で8.666Å、エントリ2及びエントリ3では8.73Åを超える格子定数が達成された。
なお、2サイクル以上で得られる本発明の負極活物質はNTOの純度が非常に高いため、WPPF法でNTO相分率を算出しようとすると、本来NTOでフィッティングすべきピークをLTOのピークとしてフィッティングするエラーによって、NTO相分率が過小評価される場合がある。本試験例が、フィッティングエラーによりNTO相分率が過小評価された場合に該当するものであった。具体的には、本試験例において得られたWPPF法によって算出されるNTO相分率は、エントリ1で43%、エントリ2で76%、エントリ3で92%であった。しかしながら、フィッティングエラーによるNTO相分率の過小評価リスクを加重したとしても、算出されるNTO相分率は、2サイクル完了時には上記試験例5で議論した理論モデルAによる理論量の75%を超える値に達していた。なお、本試験例において、両相の存在比をより信頼性高く反映するNTO相の(111)面回折ピーク強度の比率で純度を算出すると、図18に示すとおりWPPF法による相分率よりも高い純度が算出された。これらの結果から、本試験例でも、上記試験例5で議論したようにNTOの完全精製が可能な理論モデルBに従って精製が進行したものと考えられる。ナトリウム塩の飽和水溶液を用いて工程2(酸化処理)を行った試験例5と、純水を用いて工程2(酸化処理)を行った本試験例とでは、いずれもNTOの完全精製が可能な理論モデルBに従って精製が進行するため、工業的生産を考慮すると、工程2の酸化処理にはより簡便には純水を用いることが有利であると考えられる。
[試験例11]
試験例2と同様の、工程1のLTOと金属Naとの固相混合によるNa吸蔵前駆体の合成及び工程2の当該前駆体の純水による液相酸化を行い(1サイクル(1st))、更に金属Na添加と固相混合工程および液相酸化工程をセットとして繰り返し行って、3サイクル(3rd)、5サイクル(5th)、8サイクル(8th)のサイクル終了時点で試験例1と同様にXRD測定を行った。なお、サイクルを複数行うにあたり、nサイクル目の液相酸化で得られた生成物の全量を(n+1)サイクル目の固相混合に用い、(n+1)サイクル目では、混合される粉末と金属ナトリウムとの重量比率がnサイクル目と同じとなるように、金属ナトリウムのみを再添加し、LTOの新たな添加は行わなかった。スピネル型ナトリウムチタン酸化物の合成方法の概要を表8に示す。
Figure 0007378157000016
図19にXRDプロファイルを示す。図19に示されるように、5サイクルでかなりの精製が達成できており、8サイクルまで繰り返しても精製度合いがほぼ飽和していることが分かった。
[試験例12]
本試験例では、本発明の負極活物質の製造方法における工程1(ナトリウム吸蔵による前駆体の合成)及び工程2(ナトリウム及びリチウムの脱離による負極活物質の合成)の実施において、工程1を、有機ナトリウム化合物を用いる化学反応によって行った。スピネル型ナトリウムチタン酸化物の合成方法の概要を表9に示す。
Figure 0007378157000017
(1)有機ナトリウム化合物の合成
有機ナトリウム化合物の合成にかかる作業は、有機ラジカルアニオンが酸素で失活しやすいことを考慮し、すべてグローブボックス(アルゴン雰囲気)内で行った。グローブボックス中で、1,2-ジメトキシエタン溶媒にナフタレン又はビフェニルの粉末を溶解し、過剰量の金属ナトリウムを加えて攪拌した。この時、金属ナトリウムから供与された電子がナフタレンやビフェニルの芳香族環上に局在化し、ラジカルアニオンが生成する。これによって、有機ナトリウム化合物(ビフェニルナトリウム又はナフタレンナトリウム)の1,2-ジメトキシエタン溶液を得た。
(2)化学反応を用いたナトリウム吸蔵による前駆体の合成
(1)で得られた有機ナトリウム化合物溶液中に、原料粉末LTO(チタン酸リチウムLT-112、石原産業)を加え、よく攪拌させた後、一晩静置した。原料粉末の色は反応によって、初期の白色から暗青色に変化した。反応後、グローブボックス内でろ過を行い、余剰の溶液及びナトリウムを除去した。さらに1,2-ジメトキシエタン溶媒で洗浄し、ナトリウムを吸蔵した前駆体(前駆体粉末)を得た。
(3)酸化処理を用いたリチウム及びナトリウム脱離による負極活物質の合成
(2)で得られた前駆体粉末を密閉容器に移し、グローブボックスから搬出した。さらに、多量の純水中に速やかに投入し、攪拌した。数時間攪拌後、懸濁液をろ過し、よく乾燥させて負極活物質(純水酸化粉末)を得た。
上記(1)~(3)の一連の工程をNTO精製の1サイクルとし、当該一連の工程を繰り返した。すなわち、精製サイクル(n-1)回品を原料として精製サイクルをn回行った。なお、2回目以降のサイクルにおける(1)工程は、n-1回目の(2)で得られたろ過後の有機ナトリウム化合物溶液に金属ナトリウムを追加し、グローブボックス中で保存する工程に代えた。すなわち、2回目以降のサイクルにおいては、有機ナトリウム化合物溶液を再利用した。このようにして、最終的に生成サイクル16回品を得た。
(4)負極活物質の解析
有機ナトリウム化合物としてビフェニルナトリウムを用いた場合の1、3、5、7、9、11回品の放射光X線(波長Å)でのXRD測定を行った。図20に、得られた負極活物質のXRDスペクトルを示す。
図20においては、各精製段階における試料の粉末X線回折スペクトルに、精製サイクル前のLT112(Li4Ti512)原料のスペクトルをn=0として併記した。図20から明らかなとおり、精製工程を進めるごとに、LT112由来のピークが減少し、NTO由来のピークが増大した。精製はn=5以降でほぼ完了し、n=9,11ではほぼ単相のNTOが得られた。
また、有機ナトリウム化合物としてナフタレンナトリウムを用いた場合の16回品の放射光X線(波長Å)でのXRD測定を行った。図21に、得られた負極活物質のXRDスペクトルを示す。
図21においては、16回精製後の試料の粉末X線回折スペクトルに、精製サイクル前のLT112(Li4Ti512)原料のスペクトルをn=0として併記した。図21から明らかなとおり、16回の精製サイクルを繰り返すことで、ほぼ単相のNTOが得られていることが確認できた。16回精製試料のリートベルト解析の結果からはNTOの格子定数がa=8.745Å、相分率はNTO:LT=97.6%:2.4%であることが確認できた。スピネル型構造の8a-siteのNa占有率は82.3%と推測された。
以上の結果から、有機ナトリウム化合物を用いた化学的Na吸蔵によって得た前駆体を用い、水溶液酸化のプロセスを経ることで、NTOが合成可能であることが確認できた。有機ナトリウム化合物はグローブボックス内で長期保存が可能であり、ろ液の再利用が可能なため、電解液を用いる方法に比べてコスト性、及び取り扱いの容易性でより一層好ましい。
更に、有機ナトリウム化合物としてナフタレンナトリウムを用いた16回品であるNTO(NTO112)について、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法を用いて原料(LT112)を標準試料とする元素分析を行った。元素分析の結果得られた、LT112及びNTO112における各元素の原子数比を下記表に示す。
Figure 0007378157000018
結果、LT112は原料であるチタン酸リチウム(Li38a(LiTi516d(O1232eの理想組成比に近いLi:Ti比が再現されている一方、NTO112は、想定されている化学式(Na38a(LiTi516d(O1232eに比べると、Li量が半分であり、その他の元素に比べて大幅に少ない。上記の放射光XRD測定のリートベルト解析の結果においてNTO中の8a-siteのNa占有率が82.3%であった事から、8a-siteを占有しているNaの個数は2.5(≒3×0.823)であると推測される。一方、Naの原子数比が3.01であるため、0.5(≒3.01-2.469)個のNaが8a-site以外のサイトを占有していることが考えられる。従って、16回品であるNTO(NTO112)の組成式は、(式1)におけるxが2.5である(Na2.58a(Na0.5Li0.5Ti516d(O11.7532eであると推測される。つまり、NTOは、Liの原子数比が想定よりも0.5程度少ない状態でも、所定の格子定数及び構造を満たしている。この事実は、本発明のスピネル型チタン酸ナトリウムの製造において、Liを、より資源的制約の少ないNaに置き換えることができると言う観点で望ましい。
[試験例13]
本試験例では、試験例12で得られた負極活物質(NTO112有機ナトリウム化合物としてナフタレンナトリウムを用いた16回品)を電極とした電池を作製し、そのXRDスペクトルを各種充放電深度に対して測定することで、Na吸蔵-放出に伴う構造安定性の評価を行った。結果を図22に示す。図22においては、NTO112の各充放電深さにおける結晶構造の変化を示しており、(a)は、(b)に記載の充放電カーブにおける各充放電深度A~Dで測定したXRDスペクトルを表し、(b)は、XRD測定に対応する充放電カーブ、及びXRDプロファイルから見積もった(回折線の移動値から見積もった格子定数とその値を元に見積もった)各測定点での格子体積変化の比率(%)のプロットを示す。
図22(a)に示されているように、Na吸蔵前の点Aにおいて明瞭に観察されていた220回折ピークが、Na吸蔵後の点Cでは確認できない。これは、Na吸蔵によってNTO112中のNaが8a-siteから別のサイトへシフトすることを示唆している。一方、220回折線の消失はNa吸蔵途中の点Bでも確認できたことから、8a-siteのNaはNa吸蔵深さに伴って連続的に移動していくのではなく、特定の充電深さで既に移動しきっていると考えられる。一方で、400回折線又は440回折線の低角側へのシフトがNa吸蔵深さに伴って連続的に起こっていることから、結晶構造変化の機構とNa吸蔵の機構は独立している可能性が有ると考えられる。さらに220回折線は点D,Eで元通りに確認できることから、サイト移動したNaはNa脱離後には元の8a-siteに戻ってきていることが確認できる。すなわち、NTO112の充放電プロセスは可逆的であると結論付けられた。
また、図22(b)に示されているように、初期の点Aでa=8.742Åであった格子定数が、Na吸蔵後の点Cではa=8.827Åまで増大し、さらにNa脱離後の点Eでは元の値に近いa=8.745Åに回帰することが確認できた。これら格子定数の変化はNa吸蔵深さに対してほぼ直線的に変化することから、二相共存反応ではなく固溶体反応が生じている可能性が示唆された。格子定数から見積もった変化率は0.97%、体積変化率では約3%であり、Na吸蔵材料としては比較的小さな格子体積変化で可逆的に充放電することが確認できた。
Na吸蔵深さに対するXRD測定の結果から、NTOは可逆的に構造変化し、且つ格子体積変化が比較的小さいことが確認できた。これらの特性は構造的な可逆性を要するナトリウム二次電池の電極材料にとって望ましいと考えられる。
[試験例14]
本試験例では、試験例12で得られた負極活物質(NTO112有機ナトリウム化合物としてナフタレンナトリウムを用いた16回品)を用いて電池を組み立て、電池特性を評価した。
電極構成
NTO112:AB:AQ=90:5:5(重量比)
AB:アセチレンブラック(導電助剤)
AQ:アクアチャージバインダー(結着剤)
電極
12mmφAl塗工電極(活物質重量6~6.5mg/12mmφ)
電池構成
NTO112 | 1M NaPF6 EC/DEC = 1 | 金属 Na
コインセル
理論容量
LT112(Li4Ti512)175mAhg-1
NTO112(Na3LiTi512を仮定)158mAhg-1
実効容量(実際に取り出すことが期待できる容量;理論容量の90~95%として設定)
LT112(Li4Ti512)160mAhg-1
NTO112(Na3LiTi512を仮定)150mAhg-1
試験例12で使用したLT112(精製前の原料)と試験例12で得られた16回精製後のNTO112とのSEM二次電子観察像(いずれも同じ倍率)を図23に示す。材料の電池特性は、粒子形態に大きな影響を受ける。図23から明らかなとおり、精製工程の前後で粒子自体に欠陥や割れ等の変形は見受けられず、粒子自体に対する機械的なダメージが殆どないことが確認できた。また、一次粒子サイズに関しては両者で大差はなく、200~300nm程度であることが確認できた。一般的に、材料を電池の活物質として用いるためには材料の合成だけでなく、その後の様々な粉体制御が必要になる。本試験例で確認されたように、市販の活物質LTOの粉体形態を変化させずに物質のみをNTOに変換できる本発明の手法は、電池技術との親和性が高い点で優れている。
図24には、安定化させたLT112電極(以下において「LT112’」と記載する)及びNTO112電極の50, 100,150サイクル目の電位プロファイルを示す。なお、LT112’電極とはLT112電極をナトリウムイオン電池で30サイクルほど強制的にサイクルさせることで、充放電挙動を安定化させたものであり、NTOとは異なる物質である。サイクル過程における不可逆的なナトリウム吸蔵挙動から、部分的にナトリウムを有しているものと考えられるが、具体的な組成は不明である。充放電レートは0.2C-rate=30mAhg-1で行った。LT112とNTO112との理論容量の差に基づき、LT112’の方がNTO112に比べて絶対容量は大きいがその容量維持率は低いことが分かる。また、Na脱離電位はNTO112の方が優位に低い。
図25に、NTO112と安定化LT112(LT112’)との0.2C-rate充放電サイクル特性比較を示す。図25(a)は、150サイクルまでのNa吸蔵容量の比較を示し、図25(b)は、150サイクル目までのNa脱離平均電位の比較を示す。図25(a)に示すように、NTO112は150サイクル目までLT112’に比べて優位に高い最大容量の99.8%の容量を維持した一方、LT112’は絶対容量は大きいものの最大容量の56.2%の容量まで劣化した。また、図25(b)に示すように、NTO112はLT112’に比べて0.2V程度電位が低い。すなわちNTO112を負極として用いる場合、LT112’に比べてフルセルの出力電圧が0.2V程度高くなる。平均作動電圧は0.9V vs Na+/Naであるため、3V vs. Na+/Na程度の作動電位を有する正極と組み合わせた場合、2Vクラスのナトリウムイオン電池が合理的に構築可能になると考えられる。
図26に、NTO112及びLT112電極のNa吸蔵電位プロファイルの電流密度依存性を示す。図26に示されるように、高いレート(C/2以上)の電流密度範囲ではNTO112が優れていることが確認できる。特に1C~2C-rateでの容量維持が顕著であるが、これらのレート範囲は実用上も重要なことからNTO112における特性改善が重要であると理解できた。
図27に、NTO112及びLT112の各電流密度に対するNa吸蔵容量の依存性をプロットして示す。図27に示すように、C/2以上の電流密度においてNTO112の容量維持率が顕著であることが理解できる。LT112は何れのレート特性も極めて不良である。これは粒径200~300nmのLi4Ti512粒子が本質的にNaの吸蔵に適してないことを示している。

Claims (14)

  1. X線回折プロファイルにおいてスピネル型結晶構造の(220)面の回折ピークを有するスピネル型ナトリウムチタン酸化物相を相分率75%超で含む負極活物質。
  2. 前記スピネル型ナトリウムチタン酸化物相及びLi4Ti512相それぞれの(111)面の回折ピークの積分強度の総和に対する前記スピネル型ナトリウムチタン酸化物相の(111)面の回折ピークの強度比率が、85%以上である、請求項1に記載の負極活物質。
  3. スピネル型ナトリウムチタン酸化物相の(111)面の回折ピークの半値幅が0.30未満である、請求項1又は2に記載の負極活物質。
  4. 格子定数が8.70Å以上且つ(Na616c(LiTi516d(O1232eの格子定数aNa6LTOÅ以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の負極活物質。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の負極活物質を含む、ナトリウムイオン電池用負極。
  6. 請求項5に記載のナトリウムイオン電池用負極を含む、ナトリウムイオン電池。
  7. Li4Ti512にナトリウムを吸蔵させ、前駆体を得る工程1と、
    前記前駆体を、リチウム脱離電位を超える酸化電位を有する酸化剤を用いて酸化処理し、スピネル型結晶構造の(220)面の回折ピークを有するスピネル型ナトリウムチタン酸化物相を得る工程2と、
    を含む、負極活物質の製造方法。
  8. 前記工程2における前記酸化剤が液体である、請求項7に記載の負極活物質の製造方法。
  9. 前記工程2における前記液体が水を含む、請求項8に記載の負極活物質の製造方法。
  10. 前記工程2における前記液体がナトリウム塩を溶質として含む、請求項8又は9に記載の負極活物質の製造方法。
  11. 前記工程1におけるLi4Ti512へのナトリウム吸蔵を、Li4Ti512相を電極に用いた充電反応によって行う、請求項7~10のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
  12. 前記工程1におけるLi4Ti512へのナトリウム吸蔵を、Li4Ti512粉体と金属ナトリウム粉体とを混合することによって行う、請求項7~10のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
  13. 前記工程1におけるLi4Ti512へのナトリウム吸蔵を、Li4Ti512粉体と有機ナトリウム化合物溶液とを混合することによって行う、請求項7~10のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
  14. 前記工程1及び工程2を2サイクル以上行う、請求項7~13のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
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