JP7377842B2 - 胚培養用ディッシュ - Google Patents

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Description

本開示は、胚培養に用いられるディッシュおよびこのディッシュを用いた染色体解析用胚培養液の採取方法に関する。
不妊治療に対する社会的要請が高まっており、受精処置された処置卵や胚(以下、総称して胚という)を培養する技術およびこれに伴う検査などの手法が種々提案されている(例えば特許文献1)。特に近年、培養中の胚の染色体解析のニーズが高まっており、胚を培養している培養液中に存在する胚から遊離したDNAを解析し、胚の染色体異数性などを解析する手法も提案されてる。こうした検査には、所定量の培養液が必要となる。現状では、数μlから数十μl程度の培養液を吸い上げて検査に用いる。
特表2014-507664号公報
しかしながら、近年、胚培養装置で一度に培養する胚の数を増やしており、一つのディッシュに設けられた複数、例えば5×5=25個のマイクロウエルのそれぞれに胚を収容して、培養することが行なわれており、こうしたマイクロウエルでは検査に必要な量の培養液を吸い上げることができない。人の卵子の場合、その直径は150-200μm程度あるため、例えば直径が300μm程度のマイクロウエルでは、吸い上げ可能な培養液は僅かしかない。この状態で、必要量の培養液を吸い上げると胚の培養環境が大きく変化してしまう可能性があり、好ましくない。また、胚を収容するウエルの容量を単に大きくしたのでは、隣接するウエルとの距離が遠くなり、種々の課題を生じ得る。例えば、培養中の胚を撮影するタイムラプス機能を搭載した胚培養装置では、一度に撮像できるウエルの数が減り、撮影装置の構造が複雑化する懸念がある。また、ウエル間で胚の移し替えをする距離が大きくなり、移し替えの際のミスを誘発する可能性なども高まってしまう。
本開示は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。本開示の一つの態様は、胚を培養液と共に収容する複数個のウエルを備える胚培養用ディッシュとしての態様である。この胚培養用ディッシュは、前記複数個のウエルに、それぞれ前記胚を収容可能な単一のマイクロウエルを備え、前記複数個のウエルは、当該胚培養用ディッシュの底部に、隣接かつ独立して配置して配列され、前記複数個のウエルの各々に、前記ウエルと共に前記培養液を保持可能な凹部を対応付けて前記底部に形成し、前記ウエルと前記凹部との間に、前記培養液の流通は許可し、前記胚の移動は阻害する移動阻害部を設け、記移動阻害部と、前記ウエルに前記移動阻害部を介して接続された前記凹部とは、前記ウエルの配列方向と交差する方向に配列され、前記ウエルとともに、前記ウエル毎に独立した収容部を構成し、前記収容部は、当該胚培養用ディッシュを水平にした状態で、前記凹部内の前記培養液を全て吸い上げても、前記マイクロウエル内には、前記胚が浸かる高さまで前記培養液が残る形状とされた。
かかる胚培養用ディッシュによれば、複数のウエルが隣接しているので、これを胚培養装置などに使用すると、複数のウエル間の距離が短く、取り扱いが容易である上、胚の染色体の異数性検査のために培養液を吸い上げる処理を、培養中の胚への影響を抑制して、行なうことができる。複数のウエル間の距離が短ければ、ウエル内の胚の移動が容易となり、また移し替え時のミスを低減できる。更に、タイムラプス胚培養装置に使用すれば、複数のウエルを一度に撮像することが可能となる。このため、胚に対する非侵襲の染色体の異数性検査が容易となり、また検査対象の胚に影響を与えることもほとんどなく、異数性検査の結果を踏まえた胚移植の成功率(患者の妊娠率)を高めることも期待できる。
第1実施形態としての胚培養装置の平面図。 培養室内に配置された胚培養用ディッシュを例示する平面図。 図2におけるIII-III矢視図。 胚培養装置の電気的な構成を示す説明図。 胚培養用ディッシュにおける第1収容部第1収容部と第2収容部の配置の一例を示す平面図。 図5におけるVI-VI矢視図。 第1収容部第1収容部と第2収容部に培養液が満たされた状態を示す説明図。 第1収容部第1収容部と第2収容部の培養液を吸い出した状態を示す説明図。 染色体解析用胚培養液の採取・検査処理の内容を示す工程図。 染色体の異数性検出器の表示画面の一例を示す説明図。 第2実施形態の胚培養用ディッシュの形状を示す平面図。 第2実施形態の胚培養用ディッシュの変形例を示す平面図。 第1収容部第1収容部と第2収容部の他の実施形態を示す説明図。 胚の培養・保存・移植処理の概要を示す工程図。 胚培養用ディッシュを手で持つ場合の状態を示す説明図。
A.第1実施形態:
(A-1)ハードウェア構成:
図1は、胚培養装置(インキュベータとも呼ぶ)10の平面図、図2は、胚培養装置10の1つの培養室内に配置された胚培養用ディッシュを模式的に示す説明図、である。この胚培養装置10は、体外受精の処置がなされた卵子(以下、処置卵という)を一定期間、所定の培養環境、即ち恒温・恒湿度で培養するためのものである。処置卵は、必ずしも受精卵とは限らないため、胚培養装置10において所定の期間培養される。なお、体外受精の処置は顕微鏡下で行なわれる顕微授精の場合もあれば、卵子と精子を所定の容器内で一緒にして行なわれる通常の体外受精の場合も有り得る。培養する処置卵の受精の手法は問わない。
この胚培養装置10は、図1に示したように、胚培養を行なう合計9個の培養ユニットを備え、下段に培養ユニット11~15の5つ、上段に培養ユニット21~24の4つ、配列している。以下、培養ユニットに関連する部材については、まとめて呼ぶ場合は、培養ユニット11~24のように表記する。もとより、培養ユニットの数は問わない。各培養ユニット11~24は、培養室R11~R24と、各培養室R11~R24のそれぞれを密閉する蓋部17と、スイッチSW11~SW24とを備える。スイッチSW11~SW24を操作することで、対応する培養ユニット11~24の蓋部17が、図示しない駆動機構によって開閉される。もとより、培養ユニット11~24は、手動で開け閉めする構造であっても差し支えない。蓋部17の培養室R11~R24側には、シリコンゴムのシール部が設けられており、蓋部17が閉まると、培養室R11~R24内は、このシール部により、気密状態に保たれる。
胚培養装置10には、外部のガスボンベから二酸化炭素ガス(CO)と窒素ガス(N)とが供給される。これらのガスが供給されガスポート18,19が、胚培養装置10の背面に設けられている。また、胚培養装置10の背面にはフィルタ27が取り付けられるフィルタポート28,29も設けられている。このフィルタ27は、図示しない内蔵ポンプにより取り込む外気中の塵などの異物を取り除くためのものである。胚培養装置10内では、ガスポート18、19から入力した二酸化炭素ガスCO、窒素ガスN、およびフィルタ27を介して入力した空気を、所定の割合に混合して混合気を生成する。混合気における各ガスの割合は、図示しないセンサにより測定され、常時おなじ割合に保たれる。
ケース本体20には、表面にディスプレイ70が設けられている。ディスプレイ70の表面はタッチパネルになっており、表示されたボタンなどをタップすることにより、種々の情報を表示させることができる。また、ケース本体20には、USB-Cやサンダーボルト(登録商標)などの汎用コネクタ26が設けられており、ここにキーボードなどの入力機器やマウスなどのポインティングデバイスなどを接続することにより、様々な情報を入力することも可能である。ディスプレイ70における表示例や汎用コネクタ26に他の機器を接続する場合については、後で説明する。
図2は、培養ユニット11において、蓋部17が開かれた状態を示している。各培養ユニット11~24には、培養室R11~R24が用意されている。各培養室R11~R24の構造は同一なので、以下、培養ユニット11の培養室R11を例に挙げて説明する。培養室R11には、ディッシュ191を載置する保持枠180が設けられている。培養室R11~24の底面には、供給口43と排気口44とが設けられている。供給口43は、混合気を培養室R11に供給するための開口である。また排気口44は、混合気を還流するための開口である。排気口44は、保持枠180に覆われる位置に設けられている。既述したように、培養室R11は、蓋部17が閉じられるとほぼ気密にされるので、内部のガス環境は一定に保たれるが、培養室R11内の温度分布を一様なものにするために、混合気は供給口43から供給され、排気口44から排気される。
培養室R11には、その側壁および底面に、図示しないパネルヒータが設けられている。パネルヒータにより、培養室R11内は一定の温度に保たれる。なお、説明は省略するが、培養室R11~R24には、ヒータの他、図示しない温度センサやガス濃度センサ、更には湿度センサなどが設けられており、培養室R11内の温度、ガス濃度、湿度を検出することができる。これらのセンサからの信号をフィードバックすることにより、結果的に、培養室R11内は、恒温・恒湿度に保たれ、かつそのガス濃度も一定に保たれる。なお、培養室R11内の温度等を検出する代わりに、供給口43から供給される混合気の温度、湿度、ガス濃度などを一定に保つことで、培養室R11内の環境を一定に保つものとしても良い。
培養室R11の保持枠180は、胚が収容されたディッシュ191が配置される。図2に示したディッシュ191は、外周壁194に取り囲まれた略長方形状をしており、更に底部196の中心部に、壁192で取り囲まれて、胚を収容する収容部200を5個×2列、合計10個備える。収容部200の詳細な構成は、後述する。ディッシュ191の外周壁194の一箇所には、凹所197が設けられており、この凹所197を保持枠180に設けられた凸部182に合わせて、ディッシュ191を保持枠180にセットすることで、ディッシュ191を正しい位置に配置できる。ここで、正しい位置とは、収容部200に設けられた後述するマイクロウエル195を撮像する適切な位置という意味である。
ディッシュ191を底部196の側から撮像する構成について、図2のIII-III矢視図である図3を用いて説明する。図において、符号H11は、培養室R11を形成している一続きの側壁および底部を示している。図示するように、ディッシュ191の直上には、蓋部17の内側に設けられた照明ユニット170が配置される。また、培養室R11の底部H11には、ディッシュ191の中心部に対応する位置の直下に、開口198が設けられ、ケース本体20に取り付けられたカメラモジュール51およびレンズモジュール52が配置される。ディッシュ191は、蓋部17に設けられた照明ユニット170により照光され、収容部200に収容された胚25は、カメラモジュール51により撮像される。なお、図示するように、収容部200には、培養液CSが満たされており、胚25は、この培養液CSに浸されている。更にこの状態で、壁192に囲まれた領域には、培養液CSの蒸発を防ぐためにミネラルオイルOLが流し込まれ、収容部200を覆っている。
次に、胚培養装置10において行なわれる処理について説明する。図4は、胚培養装置10の電気的な構成を示す説明図である。図示する様に、胚培養装置10には、制御部60が設けられている。制御部60は、周知のCPU61、ROM62、RAM63の他、メモリカード65とのデータのやり取りを行なうためのメモリインタフェース64、外部の機器との信号をやり取りする汎用I/Oインタフェース66、培養室R11~R24内の環境を制御するための信号をやり取りする培養室インタフェース67、カメラモジュール51との間で撮像指示や撮像された画像の取得などを行なうカメラインタフェース68,ディスプレイ70に画像を表示するビデオインタフェース(ビデオI/Fと略記)69等を備える。
CPU61は、後述する画像に基づく受精判定などを高速に処理するDSPとしての機能や、ニューラルネットワーク等による判定処理を行なうためのベクトル演算機能などを内蔵する高速プロセッサを用いた。ROM62には、後述するタイムラプス制御処理を含む胚培養装置10における処理を実現するプログラムが格納されている。CPU61は、ROM62からこうしたプログラムを適宜読み出してRAM63に展開して実行することにより、必要な処理や制御を実現する。メモリカード65には、カメラモジュール51により撮像された画像の他、各培養室R11~R24の温度など、培養環境に関する情報が記録される。メモリカード65に代えて、ハードディスクなどの磁気記憶媒体やSSDなどの半導体記憶媒体などを用いてもよい。また、ネットワークを介して接続された、いわゆるクラウドに保存するものとしてもよい。
ディスプレイ70は、表面にタッチパネルが併設されており、ディスプレイ70に触れることで、ディスプレイ70に表示されたボタンなどを選択できる。ディスプレイ70は、本実施形態では、胚培養装置10と一体に設けられているが、胚培養装置10とは別体に設け、有線または無線により接続するものとしてもよい。あるいは、ネットワーク等を介して、胚培養装置10とコンピュータとを接続し、コンピュータのディスプレイをディスプレイ70として利用してもよい。あるいは、携帯電話やタブレットなどの携行性の高い端末をディスプレイ70として用いてもよい。
汎用I/Oインタフェース66は、胚培養装置10に設けられたスイッチSW11~SW24や、蓋部17の開閉を行なう駆動装置71、警告音を発生する警告装置72、混合気を調整する混合気調整装置73等に接続されている。混合気調整装置73は、ガスポート18,19に供給される二酸化炭素ガスや窒素ガスなどの圧力を調整する圧力調整弁や、フィルタ27を介して大気を取り込むためのポンプや、培養室R11~R24に混合気を送り込むポンプなどを含む。培養室インタフェース67には、各培養室R11~R24に設けられたパネルヒータや、混合気の供給量を制御する制御弁V11~V24などが接続されている。制御弁V11~V24は、混合気を供給する混合気供給配管84から培養室R11~R24に至る配管に設けられている。
汎用I/Oインタフェース66には、汎用コネクタ26を介してコンピュータ(以下、PCと略記する)90が接続されている。PC90は、ディスプレイ91や図示しないキーボードなどに加えて、回転型のコントロールデバイス95を備える。コントロールデバイス95は、略円形のベース部97上に、これにより小径のダイヤル96を備え、ダイヤル96を左右に回転することにより、ディスプレイ91に表示された多数のタイムラプス画像を時系列的に前後に移動して表示するといった使い方が可能である。こうしたデバイスは、回転型セレクタとも呼ばれる。ダイヤル96は、左右に回転するだけでなく、押し込むことができ、現在表示されている画像の1つを選択する際に、マウスボタンによる操作と同様に「決定」の操作を実現する。もとより、ベース部97に、専用のボタンを設けて、決定や選択の操作を割り当てるようにしてもよい。タイムラプス画像は、例えば10分おきに24時間撮像すれば、1つの胚毎に6×24=144枚になる。こうした多数枚の画像を素早く参照して、受精の判断の確認などを行なう際、こうした回転型のポインティングデバイスは有用である。
(A-2)ディッシュの詳細:
図5は、ディッシュ191のうち、壁192に囲まれた部位の拡大図であり、図6は、図5におけるVI-VI断面図である。図示するように、壁192に囲まれた略長方形状の範囲には、5個×2列の収容部200が、図示上下対称に配列されている。10個の収容部200の外側、壁192の近くには、洗浄用の培養液CSを配置するドロップ配置部186が複数設けられている。ドロップ配置部186は、底部196上は単に培養液CSのドロップを置くだけでもよいが、底部196に凹みを設けたり、親水性領域を設けたりして、培養液CSが配置されやすいようにしてもよい。
各収容部200は、図示するように、ほぼ円形の第1収容部210と、高さ方向に長い台形形状の第2収容部220とを、連接した形状に形成されている。この第1収容部210がウエルに相当し、第2収容部220が凹部に相当する。第1収容部210の中央には、胚25より大径のマイクロウエル195が更に形成されている。このため、10個のマイクロウエル195は、近接して配置されることになり、ディッシュ191の下方に配置されたカメラモジュール51の一撮像エリアPAに収まっている。つまり、1回の撮像で、全てのマイクロウエル195の存在領域を撮影することができ、マイクロウエル195に胚25が収容されていれば、その状態を一度に撮像できる。撮影した画像は、それぞれの胚25の画像に分割してメモリカード65などに保存される。
第1収容部210と第2収容部220とは、図6に示したように、接続部分を介して連接している。この部位が、通路部分である。その通路部分には、移動阻害部として、第2収容部220の底面より僅かに高い間仕切部230が形成されている。この間仕切部230は、連接部の幅方向両側から中心部に向けてせり出すように設けられ、両側からせり出した間仕切部230は、連接部の中央、つまりVI-VI切断線が通過している位置で、僅かの隙間を残して対向している。この隙間は、胚25の想定される最小径より小さく、本実施形態では、約50μmである。このため、マイクロウエル195に収容された胚25は、各収容部200に培養液CSを満たしても、培養液CSの動きなどにより、第2収容部220側に移動することがない。
収容部200への培養液CSの充填と吸引について説明する。図7は、収容部200にピペット240を用いて培養液CSを充填する様子を示している。培養液CSは、収容部200の上限近くまで充填する。収容部200の容積は予め定められており、本実施形態では、後で説明する吸引する培養液の容量を30μlとしている関係で、収容部200の容積を約50μlとしているで、ピペット240に40μlの培養液CSを吸ってから、収容部200にこれを移せばよい。もとより、吸引する培養液の容量が更に小さくなれば、収容部200の容積もこれに合わせて設定すればよい。その後、ミネラルオイルOLにより培養液CSを覆ってから、ガラスキャピラリを、マイクロウエル195上部に配置し、マイクロウエル195内部に胚25を配置する。
本実施形態では、胚25の培養を継続した後、収容部200の培養液CSを吸引して、染色体の異数性検出を行なう。その場合には、図8に示すように、ピペット240を用いて、培養液CSを収容部200から吸い上げる。図8では、第2収容部220の底にまだ培養液CSが残っているが、実際には、間仕切部230の隙間を介して、第1収容部210と第2収容部220とは連通しているので、第2収容部220の培養液CSを全て吸い上げると、第1収容部210内の培養液CSの水位は、第2収容部220の底部と一致する。この状態でも、胚25は、培養液CSに浸かった状態となっている。また、第1収容部210内の培養液CSが、ピペット240の吸い上げに伴って、第2収容部220に移動しても、間仕切部230間の隙間は、胚25の径に対して十分に狭いので、培養液CSの流れによって、胚25がマイクロウエル195から第2収容部220へと流出することはない。
(A-3)胚の培養・検査:
次に、このディッシュ191を用いて培養する胚の検査について説明する。図9は、染色体解析用胚培養液の採取・検査処理ルーチンを示すフローチャートである。本実施形態では、受精処置した処置卵を、胚培養装置10により培養するが、培養の途中で、培養中の胚の染色体の異数性検査を行なう。この検査は、着床前染色体異数性検査(PGT-A)と呼ばれる。着床前染色体異数性検査は、培養中の胚盤胞などの胚生検、つまり胚盤胞の栄養外胚葉から6~10個程度の細胞を採取して行なわれることが多いが、本実施形態では、胚が浸されていた培養液を用いる。培養液には、培養中の胚から遊離したDNAが存在し、これを遺伝子シーケンサにかけることで、染色体の異数性検査を行なうことができる。
この処理を開始すると、まずディッシュ191に設けられた10個の収容部200の一つ一つに40μlの培養液を充填する(ステップS300)。培養液CSとしては、本実施形態では、フェノールレッドを添加したシングルメディウム(one-step型培養液)を用いた。収容部200は、容積が50μlとされているので40μlの培養液CSを充填しても、培養液CSが収容部200から溢れることはない。10個全ての収容部200に培養液CSを充填した後、ミネラルオイルOLを壁192の内側に充填し、培養液CSが充填された各収容部200をミネラルオイルOLで覆う(ステップS310)。
この状態で、次に、各収容部200のマイクロウエル195に胚25を収容する(ステップS320)。このとき、必要があれば、培養液CS内に存在する気泡を除去する処置を行なう。一つのマイクロウエル195に一つの胚25を収容し、これを全てのマイクロウエル195について完了するまで繰り返す(ステップS325)。
全てのマイクロウエル195に胚25を収容すると、次にこのディッシュ191を胚培養装置10の培養ユニット11~24の培養室R11~R24のいずれかにセットする(ステップS330)。具体的には、いずれかの培養室の蓋部17を開けて、保持枠180に合わせて、ディッシュ191を配置する。その上で、蓋部17を閉めて、培養を開始する。
胚培養装置10は、既に説明したように、培養室R11内の環境を、培養に適した状態に保ち、ディッシュ191を下から撮影するカメラモジュール51により、所定のインターバルでディッシュ191の各収容部200のマイクロウエル195に収容された胚25を撮像しながら、胚を培養するタイムラプス培養処理(ステップS340)を行なう。このタイムラプス培養処理は、所定時間として定めた培養開始から72時間経過後まで継続される(ステップS345)。
培養開始から72時間が経過すると、蓋部17を開けて、ディッシュ191を培養室R11から取り出し(ステップS350)、各収容部200から培養液CSを吸い上げる処理を行なう(ステップS360)。具体的には、図8に示したように、ピペット240の先端を、各収容部200が充填された第2収容部220に差し入れ、培養液CSを吸い上げる。このとき、第2収容部220内の培養液CSを全て吸い上げる。第2収容部220内の培養液CSを全て吸い上げると、これに連通する第1収容部210内の培養液CSも吸い出されるが、第1収容部210の底部のマイクロウエル195は第2収容部220の底部より深い位置に設けられているので、マイクロウエル195内の培養液CSは吸い出されない。このため、第2収容部220にピペット240を挿入して、第2収容部220内の培養液CSを全て吸い出しても、胚25は、なお培養液CSに浸された状態に維持される。なお、ピペット240により培養液CSを吸い出すとき、培養液CSの分量が30μlとなるように、計測しながら培養液CSを吸い出してもよい。吸い出した培養液CSは、個別に、後述する遺伝子シーケンサの解析用試料ケースに入れられる。
マイクロウエル195に残った胚25は、新たな培養液CSを第2収容部220から充填して、更に培養を継続してもよいし、一旦、マイクロウエル195から取り出し、移植に備えて冷凍保存してもよい。上記の例では、培養開始から72時間後に培養液CSを吸い上げたが、胚培養装置10がタイムラプス胚培養装置であることの利点を生かして、胚の観察を継続し、胚盤胞の完成を俟って、培養液CSを吸い上げるようにしてもよい。この場合、培養開始から約120時間前後になることが多い。なお、胚盤胞の完成は、撮影した画像を、予め教師付きの機械学習を行なったAIにより判断させればよい。
こうした処理を、一つのディッシュ191の全ての収容部200について繰り返し、収容部200の全てから、培養液CSを吸い出して、解析用試料ケースに移し替えると(ステップS365)、解析用試料ケースを遺伝子シーケンサにセットし、遺伝子シーケンサによる異数性検査を行なう(ステップS370)。本実施形態では、遺伝子シーケンサとして、Illumina, Inc社製、「MiSeq 」を用いた。以上で「END」に抜けて、本処理ルーチンを終了する。
解析用試料ケースに入れられた培養液CSには、培養中の胚から遊離したDNAの断片が含まれる。DNAの断片は、もともと23対の遺伝子から分離したものであり、元の遺伝子の情報を含んでいる。このため、解析用試料ケースに含まれる培養液を、ヒトの正常な遺伝子のサンプルを用いて調製したテンプレートを半導体チップにセットしたNGS法が利用できるシーケンサ(いわゆる次世代型シーケンサ)で分析すると、23対の遺伝子に対して、過不足分を容易に解説できる。こうした次世代型シーケンサとしては、例えばIiiumina, Inc 社製、「NextSeq550」やIon Torrent社製、「Ion GneStudio GX5 」等も利用可能である。
図10に、解析の結果の一例を示す。図示するように、解析器としての次世代型シーケンサ300には、解析用試料ケースを収容する収容部310や、テンプレート調製などの作業や解析の開始などを指示する操作部320、解析結果を表示する表示部330などが設けられている。テンプレート調製などの準備を済ませた次世代型シーケンサ300の収容部310に、各胚25を培養していた培養液CSをそれぞれ移した解析用試料ケースをセットして、解析の開始を指示すると、数時間から十数時間後には、図10に例示するように、培養液CSに含まれていた遺伝子の数が表示される。
図示した例では、10番目の遺伝子対が、2個ではなく、3個見つかっており、10番目の染色体が過剰であること、つまり解析対象となった胚には染色体異数性があることが分かる。この解析結果を利用して、胚培養装置10で培養中の胚のうち、異数性が見いだされなかった胚を、患者への移植に用いることで、不妊治療の治療、つまり妊娠率を高めることができる。染色体に異数性がある胚の場合、移植しても着床しないか、着床しても妊娠初期の流産の可能性が高いことが知られているからである。しかも、この方法では、胚25に対して非侵襲で検査を行なうことができる。胚盤胞から栄養外胚葉(Trophectderm: TE)の細胞を数個取り出して、染色体の異数性検査を行なう方法と比べて、胚への影響が小さく、しかも胚25は培養液CSに浸かった状態にまま、異数性解析ができるので、胚に対する影響を極力小さくできる。
以上説明したように、本実施形態のディッシュ191によれば、胚25を培養していた培養液CSを用いた異数性検査を行なう際、培養液CSを吸い上げても、胚25が収容されたマイクロウエル195内の培養液CSは確実に残るので、培養液CSの吸い上げによる影響を抑えることができる。また、本実施形態のディッシュ191は、5個×2列のマイクロウエル195を近接配置しているので、マイクロウエル195内の胚25の移動が容易となり、また移し替え時のミスを低減できる。本実施形態のディッシュ191は、タイムラプス胚培養装置に用いる際、各マイクロウエル195内の胚25の状態を一度に撮像できる。このため、一つのディッシュ191に複数のマイクロウエル195を設けながら、カメラモジュール51を移動することなく、タイムラプス胚培養における撮影回数を減らすことができる。
本実施形態では、第2収容部220の底部は、第1収容部210と同様、中心に向かって丸く形成されているので、培養液CSを吸い上げる際、第2収容部220内の培養液CSを、余すことなく、効率的に吸い上げることができる。しかも、第2収容部220の培養液CSをピペット240により全て吸い上げても、間仕切部230において底部が隆起しているので、第1収容部210内の培養液CSの液位は、この底部より下がることがない。従って、胚25が存在するマイクロウエル195内の培養液CSが誤って汲み出されてしまうと言うことがない。
B.第2実施形態:
(B-1)ディッシュの形状:
次に、ディッシュの第2実施形態について説明する。第2実施形態では、図11に示すように、ディッシュ191Aの形状が異なるが、これ以外、つまり染色体解析用胚培養液の採取・検査処理ルーチンなどは、第1実施形態と同様である。第2実施形態のディッシュ191Aは、第1実施形態と同様の形状の収容部200を用いる。その数や第1収容部210および第2収容部220の形状も同様である。但し、第2実施形態では、10個の収容部200の第1収容部210を、第1実施形態より近接配置している。第1収容部210を近接配置するために、各収容部200は、外側ほど、更に外方に開くように配置される。このため、各列の第1収容部210の列方向の間隔L1は、第1収容部210に対応して設けられた第2収容部220の列方向の間隔L2より狭い。間隔L2は、第2収容部220の面積中心間の距離である。この結果、第2実施形態のディッシュ191Aでは、10個の第1収容部210を一度に撮像するための撮像範囲PA2が、第1実施形態の撮像範囲PA1より、狭くできる。このため、カメラモジュール51によって撮像された各マイクロウエル195内の胚25の解像度を高めることも可能となる。なお、撮像範囲PA2の大きさを第1実施形態と同じ大きさとして、収容部200の数を、例えば6個×2列のように増やしてもよい。
この第2実施形態のディッシュ191Aよれば、複数個の各マイクロウエル195の撮像範囲を狭くでき、しかも染色体の異数性検査のための培養液CSを貯留する収容部200の大きさを十分に確保できる。その他の作用効果は、第1実施形態と同様である。
(B-2)変形例1:
第2実施形態のディッシュ191Aの変形例であるディッシュ191Bを、図12に示した。この例では、第1収容部210を近接配置したことにより生じた第1収容部210の並びの方向両側の空間に、培養液CSの追注用平衡化ドロップ251、252を配置する補充液収容部を設けている。このドロップは、補充用培養液であって、培養液CSを収容部200から吸い上げたとき、更に培養を継続するために培養液CSを追加で収容部200に注入するために準備される。培養中、ディッシュ191B上にミネラルオイルOLに覆われた状態で置かれているため、蒸発することがなく、また収容部200内の培養液CSと同じ環境(温度・湿度など)に置かれていたので、吸い上げた培養液CSの代わりに追注しても、追加された培養液CSは、それまで胚25が接していた培養液と何ら変わるところがなく、好適である。
上記の第1,第2実施形態では、収容部200の容積を50μlとし、40μlの培養液を充填し、検査のために30μlの培養液を吸い出すものとして説明したが、ここに示した容積、容量は、一例に過ぎない。染色体の異数性検査に必要な培養液の容量が小さくなって、吸い出す培養液CSの容量が、例えば10μl程度になれば、収容部200の容積を20μl程度とし、充填する培養液CSを15μl程度としても差し支えない。一般に、収容部200の容積を、V200 、充填する培養液CSの容量をVcs、検査用に吸い出す培養液CSの容量をVout とすれば、
Vout <Vcs≦V200
との関係を満たせばよい。また、マイクロウエル195の容積をVmwとして、
Vout +Vmw≦Vcs
とすれば、培養液CSを吸い出した場合に、マイクロウエル195内に培養液が残ることになり、好適である。
(B-3)変形例2:
収容部200の配置の他の例を、図13に示した。この例では、収容部200の第1収容部210を更に多数近接配置している。この例では、収容部200は、円周上に配置され、各マイクロウエル195を備えた第1収容部210を内周側に8個、外周側に8個、計16個設けている。この場合でも、第2実施形態と同様の作用効果を奏する上、多数のマイクロウエル195を撮像するために必要な撮像範囲PA3を小さくできる。
C.胚の培養・保存・移植の処置:
上述した実施形態では、培養液CSを吸い上げたあとの胚の取り扱いについては、特に説明しなかったが、移植に向けた胚の取り扱いについて、一例を説明する。図14は、胚の培養・保存・移植の処置について説明する工程図である。図9に示した処理ルーチンの終了後、まず各収容部200に培養液CSを追注する処理を行なう(ステップS400)。全ての収容部200に追注が完了するまで行なう(ステップS405)。
全ての収容部200への追注が完了すると、ディッシュ191を、胚培養装置10の培養室R11に戻す処理を行なう(ステップS410)。培養室R11の蓋部17を閉めると、培養が再開され、胚の培養が継続される(ステップS420)。培養が再開され、約40時間が経過するまで待ち(ステップS425)、40時間が経過すると、染色体の異数性検査の結果を、次世代型シーケンサの結果から読み取る(ステップS430)。その結果を見て、染色体の異数性の検査を行なった対象の複数の胚の中から、正常胚を選択する(ステップS440)。
検査した胚の中に染色体の異数性が確認された胚があれば、これを正常胚でないとし、正常でないと判断された胚以外の胚(以下、正常胚という)を冷凍保存し、患者が移植に適した状態となるのを俟って、冷凍保存した胚を解凍し、これを患者に移植する(ステップS450)。以上で、胚の培養・保存・移植処置を終了する。
こうしたディッシュ191の培養室R11からの取り出しや(図9、ステップS330、S350)、培養室R11への戻し(図14、ステップS410)の際に、使用者は、その手指HDでディッシュ191を直接把持し、操作する。この様子を、図15に例示した。上述した各実施形態で用いるディッシュ191は略長方形状をしており、これを親指とこれに対抗する中指等の対抗指で挟んで保持する。ディッシュ191の外周壁194には、把持補助構造としての窪み400が設けられている。このため、手指HDでディッシュ191を把持すると、外周壁194の窪み400に指がフィットし、ディッシュ191をしっかりと保持できる。なお、窪み400は、略長方形状のディッシュ191の4辺のうち、少なくとも1辺に設けられている。親指と対抗指とが接する2箇所に窪み400を設けてもよい。窪み400に代えて、外周壁194の外側表面に細かい凹凸を設けてもよい。この場合は、窪み400の場所のみ凹凸を設けてもよいが、外周壁194の外側を広く凹凸面としてもよい。凹凸は、ディッシュ191の形成時に、成形用型の表面を凸凹にすることで、形成しもよく、後からサンドブラストなどの手法で表面を荒らすことで形成してもよい。なお、図では、凹所197の図示を省略した。
D.他の形態:
(1)本開示の胚培養用ディッシュは、胚を培養液と共に収容する複数個のウエルを備える胚培養用ディッシュとして実施可能である。この胚培養用ディッシュは、前記複数のウエルを、当該胚培養用ディッシュの底部に、独立かつ隣接して配置し、前記ウエル毎に、前記ウエルと共に前記培養液を保持可能な凹部を、他の凹部とは独立に、前記底部に形成し、前記ウエルと前記凹部との間に、前記培養液の流通は許可し、前記胚の移動は阻害する移動阻害部を設け、前記凹部の容積を、前記ウエルで培養される胚の染色体の異数性検査のために吸い上げる培養液の容量以上としてよい。
かかる胚培養用ディッシュによれば、複数のウエルが隣接しているので、これを胚培養装置などに使用すると、複数のウエル間の距離が短く、取り扱いが容易である上、胚の染色体の異数性検査のために培養液を吸い上げる処理を、培養中の胚への影響を抑制して、行なうことができる。しかも、ウエルと凹部との間には移動阻害部が設けられているので、ウエル内で培養される胚をウエル内に留め置いたまま、胚の周りの培養液も吸い上げることができる。また、複数のウエル間の距離が短ければ、ウエル内の胚の移動が容易となり、また移し替え時のミスを低減できる。更に、タイムラプス胚培養装置に使用すれば、複数のウエルを一度に撮像することが可能となる。このため、胚に対する非侵襲の染色体の異数性検査が容易となり、また検査対象の胚に影響を与えることもほとんどなく、異数性検査の結果を踏まえた胚移植の成功率(患者の妊娠率)を高めることも期待できる。
胚培養用ディッシュ当たりのウエルの数は、複数個とであればよく、最小で2個、ウエルを隣接させて収容部を配設できれば、何個でもよい。ウエルは、収容される胚の形状に合わせて、半球形状してもよいし、平面視長円形状でもよく、鉛直方向断面が放物線形状などであっても差し支えない。また、複数のウエルは必ずしも同一形状である必要はなく、個々に異なる形状であってもよい。こうすれば、顕微鏡視野でどのウエルの胚を操作しようとしているか、視覚的に認識することも可能となる。
(2)こうした構成において、前記複数個のウエルの少なくとも一部は、2列に並べて配置され、一方の列に配置されたウエルに対応して設けられる前記凹部の各々は、他方の列のウエルに対応して設けられる前記凹部とは、前記ウエルを挟んで反対側に設けられ、対応する前記ウエルから外側に向けて所定の長さに亘る形状を有するものとしてよい。こうすれば、複数後のウエルを隣接させ、かつ十分な大きさの収容部を配置するのが容易となる。収容部の大きさ、特に収容する培養液の液量に合わせて、所定の長さを調整すればよい。収容部は、長方形状としてもよく、ウエルから遠ざかるにつれて横方向の長さが長くなる台形形状としてもよい。もとより、平面視楕円形や長円形状としてもよい。また、深さ方向には、収容部全体で、その深さを均一としてもよいし、ウエルと同様、中心部ほど深くなる曲面形状としてもよい。後者の場合は、培養液を吸い上げるとき、培養液が最深部に集まるので、収容部内の培養液を効率的に吸い上げることができる。
(3)こうした構成において、前記各列のウエルの列方向の間隔は、前記ウエルに対応して設けられた前記凹部の前記列方向の間隔より狭いものとしてよい。こうすれば、更に効率的にウエルを配置でき、胚培養用ディッシュに設けるウエルの数を増やすことができる。このため、この胚培養用ディッシュをタイムラプス胚培養装置等に用いれば、一度に撮像できるウエルの数を増やすこともできる。
(4)こうした構成において、当該胚培養用ディッシュにおける全ての前記ウエルは、当該胚培養用ディッシュが収容されるタイムラプス胚培養装置に設けられたカメラが当該胚培養用ディッシュに対して相対的に移動することなく撮像可能な範囲に配置されているものとしてよい。こうすれば、タイムラプス胚培養装置に設けられたカメラで、一度に全てのウエルを撮像することができ、胚培養用ディッシュに対してカメラを移動する必要がない。もとより、一つの胚培養用ディッシュに、複数のウエルと凹部とからなるセットを複数設け、カメラを移動して順次撮像するようにしても差し支えない。
(5)こうした構成において、記移動阻害部は、前記ウエルと前記凹部とを接続する通路部分であって、前記ウエルの深さより浅い通路部分を備えるものとしてよい。こうすれば、凹部の培養液をピペット等で全て吸い上げても、移動阻害部の深さがウエルの深さより浅いので、ウエル内の培養液の液位は、この通路部分より下がることがない。従って、培養される胚が存在するウエルの培養液が誤って汲み出されてしまうと言うことがない。もとより、移動阻害部は、胚がウエルから移動することを阻害できればよく、移動阻害部の深さがウエルの深さと同程度としても差し支えない。この場合は、ウエル内の培養液を残らず吸い上げることも可能だが、胚の回りの培養液を残す必要があれば、吸い上げ量を調整すればよい。例えば、培養液を吸い上げる際に用いるピペットの先端に、凹部の底部から所定距離だけ離間させるアダプタを設ければよい。こうすれば、ピペットで培養液を吸い上げると、凹部の底部から所定の高さの培養液を残すことができる。
(6)こうした構成において、前記移動阻害部は、前記ウエルと前記凹部との接続部分に設けられて、前記培養液が流通する隙間を有する通路部分を備え、前記通路部分の前記隙間が、前記ウエルに収容される前記胚の最小径より狭いものとしてよい。こうすれば、ウエル内の胚の移動を容易に阻害できる。通路は、単に胚の大きさより狭い隙間として形成されてもよい。この場合、通路の幅それ自体を狭くしてもよいし、幅の広い通路に柵やメッシュを設けて、胚の移動を阻害するようにしてもよい。
(7)こうした構成において、前記ウエルは、前記ウエルの底部に、前記ウエルの外形より小さく、前記収容する胚の外形より大きなマイクロウエルを備えるものとしてよい。こうすれば、胚の位置をマイクロウエル内にでき、撮像される胚の位置を限定できる。また、培養中の胚の移動を制限でき、胚の培養にとっても望ましい。もとより、マイクロウエルはなくてもよい。ウエルの底部に、例えば胚の直径より若干小さい径のリング状の隆起部を設けるといった構造により、ウエル内の胚の移動を制限することも可能である。
(8)こうした構成において、前記凹部に前記培養液を補充するための補充用培養液が収容される補充液収容部を、当該胚培養用ディッシュの底面に備えるものとしてよい。こうすれば、培養中の環境に慣らした平衡化培養液を容易に補充できる。
(9)こうした構成において、外周を区画する外周壁を備え、前記外周壁の外側表面は、当該胚培養用ディッシュを把持する際に使用者の手指による把持を補助する把持補助構造を備えるものとしてよい。こうすれば、胚培養用ディッシュの取り扱いを容易にできる。
(10)こうした構成において、上記の胚培養用ディッシュの前記ウエルと前記凹部に前記培養液を充填し、前記培養液が充填された前記ウエルに、培養する胚を収容し、前記培養液を充填した前記ウエルと前記凹部とを、前記培養液の蒸発を抑制するオイルで覆い、前記ウエルに前記胚を収容してから所定時間後に、前記凹部から、予め定めた容量の前記培養液を吸い上げ、前記吸い上げた培養液を、前記培養液に含まれるDNAを用いて染色体異数性解析可能な解析器の解析に供するものとしてもよい。こうすれば、胚に対する染色体の異数性検査を非侵襲性にでき、検査対象の胚に影響を与えることがほとんどない。従って、異数性検査の結果を踏まえた胚移植の成功率(患者の妊娠率)を高めることも期待できる。
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。例えば、上記実施形態においてハードウェアにより実現した構成の一部は、ソフトウェアにより実現することができる。
10…胚培養装置、11~24…培養ユニット、17…蓋部、18…ガスポート、20…ケース本体、25…胚、26…汎用コネクタ、27…フィルタ、28…フィルタポート、43…供給口、44…排気口、51…カメラモジュール、52…レンズモジュール、60…制御部、61…CPU、62…ROM、63…RAM、64…メモリインタフェース、65…メモリカード、66…汎用I/Oインタフェース、67…培養室インタフェース、68…カメラインタフェース、70…ディスプレイ、71…駆動装置、72…警告装置、73…混合気調整装置、84…混合気供給配管、91…ディスプレイ、95…コントロールデバイス、96…ダイヤル、97…ベース部、170…照明ユニット、180…保持枠、182…凸部、186…ドロップ配置部、191,191A,191B…ディッシュ、192…壁、194…外周壁、195…マイクロウエル、196…底部、197…凹所、198…開口、200…収容部、210…第1収容部、220…第2収容部、230…間仕切部、240…ピペット、251…追注用平衡化ドロップ、300…次世代型シーケンサ、310…収容部、320…操作部、330…表示部、HD…手指

Claims (8)

  1. 胚を培養液と共に収容する複数個のウエルを備える胚培養用ディッシュであって、
    前記複数個のウエルは、それぞれ前記胚を収容可能な単一のマイクロウエルを備え、
    前記複数個のウエルは、当該胚培養用ディッシュの底部に、隣接かつ独立して配置して配列され
    前記複数個のウエルの各々に、前記ウエルと共に前記培養液を保持可能な凹部を対応付けて前記底部に形成し、
    前記ウエルと前記凹部との間に、前記培養液の流通は許可し、前記胚の移動は阻害する移動阻害部を設け、
    記移動阻害部と、前記ウエルに前記移動阻害部を介して接続された前記凹部とは、前記ウエルの配列方向と交差する方向に配列され、前記ウエルとともに、前記ウエル毎に独立した収容部を構成し、
    前記収容部は、当該胚培養用ディッシュを水平にした状態で、前記凹部内の前記培養液を全て吸い上げても、前記マイクロウエル内には、前記胚が浸かる高さまで前記培養液が残る形状とされた、
    胚培養用ディッシュ。
  2. 前記複数個のウエルの少なくとも一部は、2列に並べて配置され、一方の列に配置されたウエルに対応して設けられる前記凹部の各々は、他方の列のウエルに対応して設けられる前記凹部とは、前記ウエルを挟んで反対側に設けられ、対応する前記ウエルから外側に向けて所定の長さに亘る形状を有する、請求項1に記載の胚培養用ディッシュ。
  3. 前記各列のウエルの列方向の間隔は、前記ウエルに対応して設けられた前記凹部の前記列方向の間隔より狭い、請求項2記載の胚培養用ディッシュ。
  4. 当該胚培養用ディッシュにおける全ての前記ウエルは、当該胚培養用ディッシュが収容されるタイムラプス胚培養装置に設けられたカメラが当該胚培養用ディッシュに対して相対的に移動することなく撮像可能な範囲に配置されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の胚培養用ディッシュ。
  5. 前記移動阻害部は、前記ウエルと前記凹部とを接続する通路部分であって、前記ウエルの深さより浅い通路部分を備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の胚培養用ディッシュ。
  6. 前記移動阻害部は、前記ウエルと前記凹部との接続部分に設けられ、前記培養液が流通する隙間を有する通路部分を備え、
    前記通路部分の前記隙間が、前記ウエルに収容される前記胚の最小径より狭い、
    請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の胚培養用ディッシュ。
  7. 前記凹部に前記培養液を補充するための補充用培養液が収容される補充液収容部を、当該胚培養用ディッシュの底面に備える、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の胚培養用ディッシュ。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の胚培養用ディッシュであって、
    外周を区画する外周壁を備え、
    前記外周壁の外側表面は、当該胚培養用ディッシュを把持する際に使用者の手指による把持を補助する把持補助構造を備える、胚培養用ディッシュ。
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