JP7376787B2 - 溶鋼中りん濃度推定装置、統計モデル構築装置、溶鋼中りん濃度推定方法、統計モデル構築方法、およびプログラム - Google Patents

溶鋼中りん濃度推定装置、統計モデル構築装置、溶鋼中りん濃度推定方法、統計モデル構築方法、およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、溶鋼中りん濃度推定装置、統計モデル構築装置、溶鋼中りん濃度推定方法、統計モデル構築方法、およびプログラムに関する。
転炉吹錬において吹止め時の溶鋼中成分の制御、特に溶鋼中りん濃度の制御は、鋼の品質管理上、重要である。溶鋼中りん濃度の制御のために、例えば上吹きランス高さ、上吹き酸素流量、底吹きガス流量、ならびに生石灰またはスケールなどの副原料の投入量および投入タイミングなどが操作量として用いられている。これらの操作量は、目標りん濃度、溶銑データおよび過去の操業実績に基づいて作成された基準など、吹錬開始前に得られる情報に基づいて決定されることが多い。
しかしながら、吹錬開始前に得られる情報のみに基づいて操作量を決定した場合、同じような操業条件であっても実際の吹錬における脱りん挙動の再現性が低く、吹止め時の溶鋼中りん濃度のばらつきが大きくなるという問題があった。吹錬操業中の操業データを用いて精度よく溶鋼中りん濃度を逐次推定できれば、吹錬中に目標りん濃度に到達するための追加操作を行うことによって、りん濃度のばらつきを抑制することが可能になる。
吹錬操業中の操業データを用いて溶鋼中りん濃度を逐次推定する技術は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、吹錬に係る操業条件および排ガスに関する測定値を用いて脱りん速度定数を推定し、推定された脱りん速度定数を用いて吹錬時の溶鋼中りん濃度を推定する技術が記載されている。さらに、特許文献1には、推定された溶鋼中りん濃度と目標溶鋼中りん濃度とを比較し、その比較結果に基づいて吹錬に係る操業条件を変更することにより溶鋼中りん濃度を制御する技術も記載されている。
特開2013-23696号公報
近年、多機能転炉(MURC:MUlti Refining Converter)法と呼ばれる、一次精錬において溶銑予備処理と脱炭処理とを同一の転炉により一貫して行うことが可能な技術の開発が進められている。MURC法では、溶銑を転炉に装入する工程(第1工程)と、フラックスの添加および上吹きランスによる酸素の吹込みによる脱りん処理を含む溶銑予備処理工程(第2工程、Blow1)、第2工程で生じたスラグを排滓する中間排滓工程(第3工程)、その後同じ転炉で行われる脱炭処理工程(第4工程、Blow2)が実施される。MURC法は、従来のシンプル・リファイニング・プロセス(SRP:Simple Refining Process)のように脱りん処理と脱炭処理とを異なる転炉で行う操業法と比較して、熱損失が少なくリードタイムも短いため、製鋼プロセスにおける生産効率が高いという利点を有する。
上述のように、MURC法では、脱りん処理を含む溶銑予備処理工程(第2工程)において生じたスラグが中間排滓工程(第3工程)で排滓される。このとき、排滓されるスラグの量は、脱りん処理の状況によって操業ごとに異なる。中間排滓工程(第3工程)後の溶銑に含まれるりんは、脱炭処理工程(第4工程)において、下記の式で示す脱りん反応によって溶銑から脱離してスラグに取り込まれたり、逆にスラグから脱離して溶銑に再び取り込まれたりする。なお、下記の式において、()はスラグ内の物質を意味し、[]は溶銑内の物質を意味する。
3(CaO)+5(FeO)+2[P]=(3CaO・P)+5[Fe]
上記の式の反応が進む方向および速度は、脱炭処理工程(第4工程)において転炉内に残存するスラグの量に応じて変化する。ここで、転炉内に残存するスラグの量は、中間排滓工程(第3工程)で排滓されたスラグの量に応じて変化する。従って、MURC法による操業では、中間排滓工程(第3工程)で排滓されるスラグの量が、脱炭処理時における溶鋼中りん濃度に影響すると考えられる。しかしながら、上記の特許文献1では、溶鋼中りん濃度の推定にあたり、中間排滓工程で排滓されるスラグの量は考慮されていない。
そこで、本発明は、中間排滓工程で排滓されるスラグの量を考慮することによって、MURC法による操業で溶鋼中りん濃度を精度よく推定することが可能な、溶鋼中りん濃度推定装置、統計モデル構築装置、溶鋼中りん濃度推定方法、統計モデル構築方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
本発明のある観点によれば、転炉で吹錬処理される溶銑に関する溶銑データ、および吹錬処理中に取得される操業データから抽出されたデータを説明変数とする統計モデルを用いて溶銑の脱りん速度定数の推定値を算出する脱りん速度定数算出部と、溶銑の吹錬処理前のりん濃度および脱りん速度定数の推定値に基づいて吹錬処理中の溶鋼中りん濃度を推定するりん濃度推定部とを備え、吹錬処理は、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と、予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含み、説明変数は、中間排滓工程において転炉から排出されるスラグの量を表現する少なくとも1つのデータを含む、溶鋼中りん濃度推定装置が提供される。
本発明の別の観点によれば、過去の操業における、転炉で吹錬処理される溶銑に関する溶銑データ、吹錬処理中に取得される操業データ、および溶鋼中りん濃度の実績値を収集するデータ収集部と、溶銑データおよび操業データから抽出されたデータを説明変数とし、溶銑の脱りん速度定数を目的変数とする統計モデルを構築する統計モデル構築部とを備え、吹錬処理は、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と、予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含み、説明変数は、中間排滓工程において転炉から排出されるスラグの量を表現する少なくとも1つのデータを含む、統計モデル構築装置が提供される。
本発明のさらに別の観点によれば、転炉で吹錬処理される溶銑に関する溶銑データ、および吹錬処理中に取得される操業データから抽出されたデータを説明変数とする統計モデルを用いて溶銑の脱りん速度定数の推定値を算出する工程と、溶銑の吹錬処理前のりん濃度および脱りん速度定数の推定値に基づいて吹錬処理中の溶鋼中りん濃度を推定する工程とを含み、吹錬処理は、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と、予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含み、説明変数は、中間排滓工程において転炉から排出されるスラグの量を表現する少なくとも1つのデータを含む、溶鋼中りん濃度推定方法が提供される。
本発明のさらに別の観点によれば、過去の操業における、転炉で吹錬処理される溶銑に関する溶銑データ、吹錬処理中に取得される操業データ、および溶鋼中りん濃度の実績値を収集する工程と、溶銑データおよび操業データから抽出されたデータを説明変数とし、溶銑の脱りん速度定数を目的変数とする統計モデルを構築する工程とを含み、吹錬処理は、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と、予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含み、説明変数は、中間排滓工程において転炉から排出されるスラグの量を表現する少なくとも1つのデータを含む、統計モデル構築方法が提供される。
本発明のさらに別の観点によれば、転炉で吹錬処理される溶銑に関する溶銑データ、および吹錬処理中に取得される操業データから抽出されたデータを説明変数とする統計モデルを用いて溶銑の脱りん速度定数の推定値を算出する脱りん速度定数算出部と、溶銑の吹錬処理前のりん濃度および脱りん速度定数の推定値に基づいて吹錬処理中の溶鋼中りん濃度を推定するりん濃度推定部とを備え、吹錬処理は、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と、予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含み、説明変数は、中間排滓工程において転炉から排出されるスラグの量を表現する少なくとも1つのデータを含む、溶鋼中りん濃度推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムが提供される。
本発明のさらに別の観点によれば、過去の操業における、転炉で吹錬処理される溶銑に関する溶銑データ、吹錬処理中に取得される操業データ、および溶鋼中りん濃度の実績値を収集するデータ収集部と、溶銑データおよび操業データから抽出されたデータを説明変数とし、溶銑の脱りん速度定数を目的変数とする統計モデルを構築する統計モデル構築部とを備え、吹錬処理は、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と、予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含み、説明変数は、中間排滓工程において転炉から排出されるスラグの量を表現する少なくとも1つのデータを含む、統計モデル構築装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムが提供される。
上記の構成によれば、中間排滓工程で排滓されるスラグの量を考慮することによって、MURC法による操業で溶鋼中りん濃度を精度よく推定することができる。
本発明の一実施形態に係る溶鋼中りん濃度推定装置を含む精錬設備の概略的な構成を示す図である。 溶銑データおよび操業データのデータ構造の例を示す図である。 本発明の一実施形態に係る転炉吹錬制御方法の工程を概略的に示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る統計モデル構築装置を含む精錬設備の概略的な構成を示す図である。 本発明の一実施形態に係る統計モデル構築方法の工程を概略的に示すフローチャートである。 本発明の実施例および比較例を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
本実施形態では、溶鋼中りん濃度(以下、[P](%)とも表記する)の時間変化が、以下の式(1)の一次反応式で表されるものとする。なお、[P]ini(%)は[P]の初期値(溶銑中りん濃度)、k(sec-1)は脱りん速度定数を表す。式(1)より、吹錬処理の開始からt秒後の[P]は、以下の式(2)で表される。
Figure 0007376787000001
Figure 0007376787000002
従って、正確な脱りん速度定数kが得られれば、吹錬開始からt秒後における溶鋼中りん濃度を高精度に推定することができる。ただし、一般に実際の吹錬における脱りん速度定数kは一定ではなく、様々な操業条件の影響を受けて変動すると考えられる。そのため、例えば特開2013-23696号公報に開示されているように、吹錬開始時やサブランス測定時に得られる溶銑成分や溶銑温度のようなスタティックな情報だけではなく、吹錬中に測定される排ガスの流量および成分のようなダイナミックな情報を活用して、脱りん速度定数kを逐次的に推定する。以下、脱りん速度定数kの逐次的な推定方法について説明する。
まず、脱りん速度定数kを目的変数、種々の操業要因を説明変数として統計モデルを構築する。この統計モデルは、様々な統計的手法により適宜構築可能である。本実施形態では当該統計モデルとして、周知の重回帰式が用いられる。当該回帰式は、下記の式(3)のように構築される。吹錬時における操業要因Xを式(3)に代入することにより、脱りん速度定数kが推定され、当該脱りん速度定数kを上記の式(2)に適用することにより、溶鋼中りん濃度が推定される。
Figure 0007376787000003
上記の式(3)における操業要因Xとして、従来から表1に示すような要因が用いられている。
Figure 0007376787000004
しかしながら、MURC法の場合には、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と脱炭処理工程との間に中間排滓工程が実施され、この中間排滓工程で排出されるスラグの量が溶鋼中りん濃度に影響するため、従来用いられてきた操業要因Xでは溶鋼中りん濃度の推定精度が十分でないことは、既に述べたとおりである。
そこで本発明の実施形態では、中間排滓工程において転炉から排出されるスラグの量を表現する少なくとも1つのデータを統計モデルの説明変数である操業要因Xとして用いることによって、MURC法による操業でも溶鋼中りん濃度を精度よく推定する。
(溶鋼中りん濃度の推定)
図1は、本発明の一実施形態に係る溶鋼中りん濃度推定装置を含む精錬設備の概略的な構成を示す図である。図1に示されるように、精錬設備1は、転炉設備10と、計測制御装置20と、溶鋼中りん濃度推定装置30とを含む。以下、各部についてさらに説明する。
転炉設備10は、転炉11と、上吹きランス12と、煙道13と、羽口14と、投入装置15とを含む。転炉設備10では、転炉11の炉口から挿入された上吹きランス12が、転炉11内の溶銑111に酸素ガス121を供給する。脱炭処理では、溶銑111内の炭素が酸素ガス121と反応することによってCOガスまたはCOガスになり、これらのガスは煙道13を経由して排出される。脱炭処理を経た溶銑111は、溶鋼112として次工程に送られる。また、脱炭処理では、溶銑111内のりんおよびケイ素も酸素ガス121、またはスラグ113に含まれる副原料と反応し、スラグ113中に取り込まれて安定化する。一方、羽口14からは窒素ガスやアルゴンガスなどの底吹きガス141が吹き込まれて溶銑111を攪拌し、上記の反応を促進する。投入装置15は、スラグ113を構成する生石灰または石灰石、および溶銑111に酸素を供給するための鉄鉱石などの酸素含有副原料を含む副原料151を転炉11内に投入する。なお、副原料151が粉体である場合は、上吹きランス12を用いて酸素ガス121とともに吹き込むことも可能である。
上述のように、本実施形態では、MURC法による操業が実施される。すなわち、本実施形態において、転炉設備10における吹錬処理は、溶銑111の脱りん処理を含む予備処理工程と、予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含む。
計測制御装置20は、転炉設備10における精錬処理に関する各種の計測、および精錬処理の制御を実行する。具体的には、計測制御装置20は、計測系として、サブランス21と、排ガス分析計22と、排ガス流量計23とを含む。サブランス21は、上吹きランス12とともに転炉11の炉口から挿入され、先端に設けられた測定装置を脱炭処理中の所定のタイミングで溶鋼112に浸漬させることによって、炭素濃度を含む溶鋼112の成分濃度(溶鋼中の炭素濃度を溶鋼炭素濃度と称する)、および溶鋼112の温度(溶鋼温度とも称する)などを測定する。このようなサブランス21を用いた測定を、以下の説明ではサブランス測定ともいう。排ガス分析計22は、煙道13を経由して排出されるガスの成分を分析する。具体的には、排ガス分析計22は、排ガスに含まれるCO、COおよびOの濃度(各成分の濃度を排ガス成分濃度と称する)を測定する。一方、排ガス流量計23は、煙道13を経由して排出されるガスの流量(排ガス流量と称する)を測定する。上記のサブランス測定の結果、および排ガス分析計22および排ガス流量計23の測定結果は、溶鋼中りん濃度推定装置30に送信される。
一方、計測制御装置20は、制御系として、ランス駆動装置24と、酸素供給装置25と、底吹きガス供給装置26と、投入制御装置27とを含む。ランス駆動装置24は、上吹きランス12を上下方向に駆動する。これによって、上吹きランス12の高さ、すなわち転炉11内で酸素ガス121が供給される位置の溶銑111からの距離を調節することができる。酸素供給装置25は、上吹きランス12に酸素ガス121を供給する。吹込み酸素流量、すなわち供給される酸素ガス121の時間あたりの流量は調節可能である。底吹きガス供給装置26は、羽口14に底吹きガス141を供給する。供給される底吹きガス141の流量も調節可能である。投入制御装置27は、投入装置15による副原料151の投入を制御する。具体的には、投入制御装置27は、副原料151の投入のタイミングおよび投入量を制御する。上記のランス駆動装置24、酸素供給装置25、底吹きガス供給装置26、および投入制御装置27の動作は、溶鋼中りん濃度推定装置30からの制御信号に従って制御可能であってもよい。スラグレベル計28は、転炉11内のスラグ113のレベルを、転炉11の外側から非接触式で測定する。
溶鋼中りん濃度推定装置30は、通信部31と、記憶部32と、演算部33と、入出力部34とを含む装置、例えばコンピュータによって実装される。通信部31は、計測制御装置20の各要素と有線または無線で通信する各種の通信装置であり、計測制御装置20において得られた測定結果を受信するとともに、計測制御装置20に制御信号を送信する。記憶部32は、各種のデータを格納することが可能なストレージである。記憶部32には、例えば転炉11で吹錬処理される溶銑111に関する溶銑データ321、吹錬処理中に取得される操業データ322、溶鋼中りん濃度の目標値などを含む目標データ323、および脱りん速度定数kの推定値を算出するための統計モデルのパラメータ324が格納される。溶銑データ321および操業データ322が、例えば図2に示すデータ構造のように、チャージ番号(CHNO)をキーとして当該チャージに関わるデータが1レコードになるようなデータベースとして格納される。このように、溶銑データ321および操業データ322は、過去の操業におけるデータを含んでもよい。図示されているように、本実施形態において、操業データ322は、中間排滓工程においてスラグ113の排出が開始された時の転炉11の傾動角度、および中間排滓工程の前後でのスラグレベル差のデータを含む。
演算部33は、プログラムに従って各種の演算を実行する演算装置である。演算装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)を含む。プログラムは、演算装置のROM、または記憶部32に格納される。演算部33は、プログラムに従って動作することによって、スラグレベル差算出部331、潜在変数算出部332、脱りん速度定数算出部333、およびりん濃度推定部334として機能する。なお、演算部33は、PLC(Programmable Logic Controller)であってもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアにより実現してもよい。以下、演算部33によって実現される各部の機能についてさらに説明する。
スラグレベル差算出部331は、操業データ322に含まれるスラグレベル計28の出力値と吹込み酸素流量とに基づいて、中間排滓工程の前後でのスラグレベル差を算出する。具体的には、スラグレベル差算出部331は、脱りん処理を含む予備処理工程の終期において吹込み酸素流量が0(または、0とみなしうる値。以下同様)になった時点のスラグレベル計28の出力値と、脱炭工程の初期において吹込み酸素流量が0よりも大きい値になった時点のスラグレベル計28の出力値とに基づいてスラグレベル差を算出する。図2に示された例では、スラグレベル差の算出に用いられたスラグレベル計の出力値(Blow1終了時レベルおよびBlow2開始前レベル)、および算出された中間排滓工程の前後でのスラグレベル差が、操業データ322として記憶部32に格納される。
潜在変数算出部332は、操業データ322から中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の転炉11の傾動角度、および中間排滓工程の前後でのスラグレベル差のデータを抽出し、これらのデータから潜在変数を算出する。後述するように、傾動角度およびスラグレベル差はいずれも中間排滓工程において転炉11から排出されるスラグの量を表現するデータであるが、それぞれにノイズが含まれる。そこで、本実施形態では、操業データ322に含まれる傾動角度およびスラグレベル差から脱りん速度定数kを最もよく説明する潜在変数を算出することによって、それぞれのデータに含まれるノイズ成分の影響を低減する。潜在変数を算出するための係数は、過去の操業における傾動角度およびスラグレベル差を説明変数とし、脱りん速度定数kの実績値を目的変数として部分的最小二乗(PLS:Partial Least Squares)法を実行することによって、予め決定することができる。
なお、PLS法を用いた潜在変数の算出は一例であり、同様にノイズ成分の影響を低減することが可能であれば、他の方法が用いられてもよい。例えば、主成分分析を用いて、脱りん速度定数kの実績値を目的変数として考慮せず、過去の操業における傾動角度およびスラグレベル差の2変数によって表現される情報量が最大になるように、潜在変数を算出するための係数を決定してもよい。あるいは、自己符号化器(オートエンコーダー)によって上記の2変数を1変数(潜在変数)に次元圧縮する際に、元の2変数が最もよく再構築されるように次元圧縮のパラメータを決定してもよい。
脱りん速度定数算出部333は、溶銑データ321および操業データ322を説明変数とする、例えば上記で式(3)に示したような統計モデルを用いて、脱りん速度定数kの推定値を算出する。具体的には、脱りん速度定数算出部333は、統計モデルのパラメータ324を記憶部32から読み出し、さらに溶銑データ321および操業データ322から抽出した統計モデルの説明変数(操業要因X)を代入することによって、脱りん速度定数kの推定値を算出する。ここで、脱りん速度定数算出部333が用いる統計モデルの説明変数は、潜在変数算出部332が算出した潜在変数を含む。上述のように、潜在変数は中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の転炉11の傾動角度、および中間排滓工程の前後でのスラグレベル差のデータから算出され、中間排滓工程において転炉11から排出されるスラグの量を表現するデータの例である。
りん濃度推定部334は、溶銑データ321に含まれる吹錬処理前のりん濃度、および脱りん速度定数算出部333が算出した脱りん速度定数kの推定値に基づいて、吹錬処理中の任意の時点(例えば吹止め時)の溶鋼中りん濃度を推定する。例えば、脱りん速度定数算出部333が用いる統計モデルの説明変数が脱炭処理工程の途中で実施されるサブランス測定によって取得されるデータを含む場合、りん濃度推定部334はサブランス測定以降、吹止め時までの間に所定の周期で溶鋼中りん濃度を推定してもよい。推定結果は、例えば入出力部34に含まれるディスプレイやプリンタを介して出力されてもよい。
入出力部34は、例えばディスプレイまたはプリンタなどの出力装置と、キーボード、マウス、またはタッチパネルなどの入力装置とを含む。出力装置は、りん濃度推定部334によって算出された、吹錬処理中の任意の時点、例えば吹止め時における溶鋼中りん濃度の推定値を出力してもよい。入力装置は、例えば演算部33において実行される溶鋼中りん濃度推定の処理の設定を変更する操作入力を取得してもよいし、記憶部32に格納されるデータを追加または修正するための操作入力を取得してもよい。
図3は、本発明の一実施形態に係る転炉吹錬制御方法の工程を概略的に示すフローチャートである。まず、吹錬開始前に、溶銑データ321を取得する(ステップS101)。これらのデータは、例えば外部装置(図1には示していない)に格納された転炉吹錬データベースから取得される。吹錬開始以降、溶銑111の脱りん処理を含む予備処理工程の間、操業データ322を逐次取得する(ステップS102)。具体的には、例えば脱りん吹錬時の吹込み酸素流量実績、排ガス成分濃度および排ガス流量などを取得する。このとき、スラグレベル計28のデータも収集される。
予備処理工程が終了し、中間排滓工程が実施され、さらに脱炭処理工程が開始されるときに、中間排滓工程において転炉11から排出されるスラグの量に関するデータを取得する。具体的には、中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の転炉11の傾動角度データを取得し(ステップS103)、スラグレベル差算出部331が中間排滓工程の前後でのスラグレベル差を算出する(ステップS104)。上述のように、スラグレベル差は、吹錬開始以降データを収集し、脱炭処理開始後にデータ収集を終了するスラグレベル計28の出力値と、吹込み酸素流量実績とに基づいて算出される。さらに、潜在変数算出部332が、上記のステップS103で取得された傾動角度データ、およびステップS104で算出された中間排滓工程の前後でのスラグレベル差から潜在変数を算出する(ステップS105)。その一方で、脱炭処理の間も、上記のステップS103~S105の処理と並行して、操業データ322が逐次取得される(ステップS106)。
図示された例では、サブランス測定(ステップS107)によって統計モデルの説明変数である操業要因Xのデータが揃い、統計モデルを用いた脱りん速度定数kの推定、および溶鋼中りん濃度の推定が可能になる。この場合、脱りん速度定数算出部333が、ステップS105で算出された潜在変数を含む操業要因Xのデータを溶銑データ321および操業データ322から抽出し、統計モデルを用いて脱りん速度定数kを推定する(ステップS108)。さらに、りん濃度推定部334が、推定された脱りん速度定数kを上記の式(2)に代入して溶鋼中りん濃度を推定する(ステップS109)。溶鋼中りん濃度の推定結果は、例えば入出力部34に含まれるディスプレイやプリンタを介して出力されてもよい。りん濃度推定部334は、脱炭処理工程の間に所定のタイミングで1回だけ溶鋼中りん濃度を推定してもよいし、所定の周期で溶鋼中りん濃度の推定を繰り返してもよい(ステップS110)。
以上で説明したような本発明の一実施形態によれば、MURC法による操業で溶鋼中りん濃度を精度よく推定することができる。例えば、上記の例のようにサブランス測定以降に吹止め時の溶鋼中りん濃度を精度よく推定することができれば、溶鋼中りん濃度の推定値と目標データ323によって示される溶鋼中りん濃度の目標値との間に差がある場合に、副原料151の投入のタイミングおよび投入量を変更するように投入制御装置27を制御することができる。このような制御は、例えば入出力部34を介したオペレーターの操作に従って実行されてもよいし、演算部33に別途実装される機能によって自動的に実行されてもよい。
(統計モデルの構築)
図4は、本発明の一実施形態に係る統計モデル構築装置を含む精錬設備の概略的な構成を示す図である。図4に示されるように、精錬設備1Aは、転炉設備10と、計測制御装置20と、統計モデル構築装置40とを含む。なお、転炉設備10および計測制御装置20については、上述した精錬設備1と同様であるため重複した説明は省略する。以下、統計モデル構築装置40の各部についてさらに説明する。
統計モデル構築装置40は、通信部31と、記憶部42と、演算部43と、入出力部34とを含む装置、例えばコンピュータによって実装される。通信部31および入出力部34については、上述した溶鋼中りん濃度推定装置30と同様であるため重複した説明は省略する。記憶部42は、各種のデータを格納することが可能なストレージであり、溶銑データ421、吹錬処理中に取得される操業データ422、溶鋼中りん濃度の実績値423、および脱りん速度定数kの推定値を算出するための統計モデルのパラメータ324が格納される。溶銑データ421および操業データ422は、例えば溶鋼中りん濃度推定装置30において記憶部32に格納された溶銑データ321および操業データ322と同様のデータであるが、統計モデルの構築のために十分な数の、過去の操業におけるデータを含む。操業データ422は、中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の転炉11の傾動角度、および中間排滓工程の前後でのスラグレベル差のデータを含む。
演算部43は、プログラムに従って各種の演算を実行する演算装置である。演算装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)を含む。プログラムは、演算装置のROM、または記憶部42に格納される。演算部43は、プログラムに従って動作することによって、データ収集部431、スラグレベル差算出部432、潜在変数算出部433、および統計モデル構築部434として機能する。なお、演算部43は、PLC(Programmable Logic Controller)であってもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアにより実現してもよい。以下、演算部43によって実現される各部の機能についてさらに説明する。
データ収集部431は、記憶部42から、過去の操業における溶銑データ321および操業データ422、ならびに溶鋼中りん濃度の実績値423を収集する。収集された操業データ422において、中間排滓工程の前後でのスラグレベル差が算出されていない場合、スラグレベル差算出部432が上記の溶鋼中りん濃度推定装置30におけるスラグレベル差算出部331と同様にしてスラグレベル差を算出する。また、潜在変数算出部433は、上記の溶鋼中りん濃度推定装置30における潜在変数算出部332と同様にしてスラグレベル差および傾動角度から潜在変数を算出する。潜在変数を算出するための係数は、基になる過去の操業のデータによって変化するため、潜在変数算出部433は、収集された操業データ422において潜在変数が算出されているか否かに関わらず、過去の操業のそれぞれについて潜在変数を算出してもよい。
統計モデル構築部434は、データ収集部431が収集した過去の操業における溶銑データ421および操業データ422、ならびに溶鋼中りん濃度の実績値423に基づいて統計モデルを構築する。構築される統計モデルは、溶銑データ421および操業データ422から抽出されるデータを説明変数とし、溶銑111の脱りん速度定数kを目的変数とする。統計モデル構築部434は、例えば、溶銑データ421に含まれる吹錬処理前のりん濃度、および吹止め時の溶鋼中りん濃度の実績値423から、脱りん速度定数kの実績値を算出することができる。構築された統計モデルは、パラメータ324として記憶部42に格納される。図5は、上述したような統計モデル構築装置40の処理の例を示すフローチャートである。
上記のような統計モデル構築装置40の機能によって、上述した溶鋼中りん濃度推定装置30において利用可能な統計モデルが構築される。なお、統計モデル構築装置40は、溶鋼中りん濃度推定装置30と同一の装置であってもよいし、異なる装置であってもよい。これらの装置が異なる場合、例えば、パラメータ324をリムーバブルメディアに格納して読み込ませたり、通信回線を介してパラメータ324を送信したりすることによって、統計モデルを構築した装置とは異なる装置において統計モデルを利用した溶鋼中りん濃度の推定が可能になる。
(スラグ排出量を表現するデータについて)
上記で説明したように、本発明の実施形態では、溶鋼中りん濃度の推定にあたり、中間排滓工程において転炉から排出されるスラグの量を表現する少なくとも1つのデータ、具体的にはスラグレベル差および転炉の傾動角度から算出される潜在変数を説明変数に含む統計モデルが用いられる。既に説明したように、MURC法による操業で溶鋼中りん濃度を精度よく推定するために、中間排滓工程において転炉から排出されるスラグの量(以下、中間排滓量ともいう)を考慮することは有効である。しかしながら、中間排滓量を直接的に測定することは、高温・粉塵環境下での重量物の測定になることから困難である。
そこで、中間排滓量を間接的に表現するために、スラグのフォーミング状況を説明変数に追加することも考えられる。目標のスラグ高さへ至るまでのスラグのフォーミング状況は、スラグレベル計の出力値の推移から把握可能であるものの、スラグフォーミング状況だけではその後の中間排滓で実際に排出されたスラグ量を説明することは難しい。ただし、通常の操業では溶銑の装入量がほぼ一定であるため、スラグレベル計の出力値の推移は転炉内のスラグ量を間接的に表現していると考えられる。そこで、本発明の実施形態では、予備処理工程の終了時のスラグレベル計の出力値と脱炭処理工程の開始時のスラグレベル計の出力値から算出されるスラグレベル差を直接的に、または間接的に説明変数として利用する。なお、従来、スラグレベル計は予備処理工程の間のスラグフォーミング状況を把握することを目的としたものであり、予備処理工程の終了時に測定を終了していた。本発明の実施形態では、上記のようなスラグレベル差の算出を可能にするために、スラグレベル計が予備処理工程の終了後、脱炭処理工程の開始時まで測定を継続する。
また、中間排滓量を間接的に説明するために、中間排滓時の転炉の傾動角度推移を説明変数に追加することも考えられる。しかしながら、傾動角度推移のみではスラグの排出開始時の角度や排出終了時の角度は分らないため、傾動角度推移のみから中間排滓量を説明することは難しい。一方、中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の転炉の傾動角度からは、中間排滓量をある程度説明できると考えられる。具体的には、スラグの排出が開始された時の傾動角度が小さい、すなわち転炉をあまり傾動させなくてもスラグが排出され始めた場合、排出されやすいスラグ性状であり、結果的に中間排滓量が多かったことが推定される。一方、中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の傾動角度が大きい、すなわち転炉を大きく傾けなければスラグが排出され始めなかった場合、排出されにくいスラグ性状であり、結果的に中間排滓量が少なかったことが推定される。そこで、本発明の実施形態では、中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の転炉の傾動角度を直接的に、または間接的に説明変数として利用する。なお、従来、スラグが排出され始めた時の転炉の傾動角度は帳票に手書きで記録されていたが、本発明の実施形態では、溶鋼中りん濃度を推定するための統計モデルの説明変数として利用するために、スラグが排出され始めた時の転炉の傾動角度を入出力部34を介して電子データとして入力する。
上述のように、スラグレベル差やスラグが排出され始めた時の転炉の傾動角度は、中間排滓量を表現するデータとして有効に利用できると考えられる。しかしながら、予備処理工程における吹錬中はスラグフォーミングが激しいため、スラグレベル差を算出するためのスラグレベル計の出力値には測定ノイズが含まれる可能性が高い。一方、転炉の傾動角度についても、スラグの排出が開始されたか否かがオペレーターによって判断されるため、判断のばらつきによるノイズ成分を含んでいることが考えられる。つまり、これらのデータは、目的変数である脱りん速度定数kを説明するばらつき(kに対する情報量)と、脱りん速度定数kを説明しないばらつき(kに対するノイズ成分)とが含まれる。そこで、上述した本発明の実施形態では、例えばPLS法を用いた潜在変数の算出によって、ノイズ成分の影響を低減する。PLS法では、説明変数の線形結合で表される潜在変数を構築し、潜在変数の線形結合として目的変数を表現する。潜在変数は、潜在変数と目的変数の内積が最大となるように決定されるため、目的変数を最もよく説明する潜在変数、すなわち目的変数を説明しないノイズ成分が低減された変数の構築が可能である。なお、PLS法以外の方法によってノイズ成分の影響を低減することも可能であることは、既に説明したとおりである。
図6は、本発明の実施例および比較例を示すグラフである。グラフでは、サンプルとして427チャージ分の溶銑データ、操業データ、および吹止め時の溶鋼中りん濃度の実績値を用いて、統計モデルの説明変数を変えた4つの例で脱りん速度定数kを推定した場合の、推定値と実測値との誤差の標準偏差が示されている。Baseは、中間排滓工程において転炉から排出されるスラグの量を表現する説明変数がない場合の比較例であり、例えば上記で表1に示したような説明変数が用いられる。Case1~Case4は、例えば以下で表2~表5に示すような説明変数を用いた本発明の実施例である。
Figure 0007376787000005
Figure 0007376787000006
Figure 0007376787000007
Figure 0007376787000008
上記の表に示されるように、Case1は、比較例の説明変数に中間排滓工程の前後でのスラグレベル差(m)のみを加えた例である。Case2は、比較例の説明変数にスラグが排出され始めた時の転炉の傾動角度(°)のみを加えた例である。Case3は、比較例の説明変数に中間排滓工程の前後でのスラグレベル差(m)およびスラグが排出され始めた時の転炉の傾動角度(°)の両方を加えた例である。なお、Case1~Case3において、追加された説明変数は取得されたデータをそのまま用いたものであり、潜在変数の算出はされていない。Case4は、比較例の説明変数に、中間排滓工程の前後でのスラグレベル差(m)およびスラグが排出され始めた時の転炉の傾動角度(°)から算出された潜在変数を加えた例である。
図6のグラフを参照すると、説明変数に中間排滓工程の前後でのスラグレベル差、またはスラグが排出され始めた時の転炉の傾動角度のいずれか一方のみを加えたCase1およびCase2の実施例でも、比較例に比べて推定値と実測値との誤差の標準偏差が低下している。この結果から、本発明の実施形態として、中間排滓工程において転炉から排出されるスラグの量を表現するデータとして中間排滓工程の前後でのスラグレベル差、またはスラグが排出され始めた時の転炉の傾動角度のいずれか一方のみを用いる場合も、従来技術に対して推定精度が向上することがわかる。また、説明変数に中間排滓工程の前後でのスラグレベル差およびスラグが排出され始めた時の転炉の傾動角度の両方を加えたCase3の実施例では、Case1およびCase2の実施例に比べてさらに誤差の標準偏差が低下する。この結果から、中間排滓工程において転炉から排出されるスラグの量を表現するデータとして中間排滓工程の前後でのスラグレベル差、およびスラグが排出され始めた時の転炉の傾動角度の両方を用いることによって推定精度がさらに向上すること、また、本発明の実施形態において潜在変数の算出が必須ではないことがわかる。さらに、説明変数に潜在変数を加えたCase4の実施例では、Case3に比べてさらに誤差の標準偏差が低下する。この結果から、本発明の実施形態において、潜在変数を算出することによってデータに含まれるノイズ成分の影響が低減されており、推定精度をさらに向上させることが可能であることがわかる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1,1A…精錬設備、10…転炉設備、11…転炉、12…上吹きランス、13…煙道、14…羽口、15…投入装置、20…計測制御装置、21…サブランス、22…排ガス分析計、23…排ガス流量計、24…ランス駆動装置、25…酸素供給装置、26…底吹きガス供給装置、27…投入制御装置、28…スラグレベル計、30…濃度推定装置、31…通信部、32…記憶部、33…演算部、34…入出力部、40…統計モデル構築装置、42…記憶部、43…演算部、111…溶銑、112…溶鋼、113…スラグ、121…酸素ガス、141…底吹きガス、151…副原料、321…溶銑データ、322…操業データ、323…目標データ、324…パラメータ、331…スラグレベル差算出部、332…潜在変数算出部、333…脱りん速度定数算出部、334…りん濃度推定部、421…溶銑データ、422…操業データ、423…実績値、431…データ収集部、432…スラグレベル差算出部、433…潜在変数算出部、434…統計モデル構築部。

Claims (7)

  1. 転炉で、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と、前記予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、前記中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含む吹錬処理を行う際に、前記吹錬処理中の溶鋼中りん濃度を推定する、溶鋼中りん濃度推定装置であって、
    操業データから抽出した、前記中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の前記転炉の傾動角度と、前記転炉に設置されたスラグレベル計を用いて測定された前記中間排滓工程の前後でのスラグレベル差とから、前記中間排滓工程において前記転炉から排出されるスラグの量を表現するデータである潜在変数を算出する潜在変数算出部と、
    前記吹錬処理される溶銑に関する溶銑データ、および前記吹錬処理中に取得される操業データから抽出されたデータと、前記潜在変数とを説明変数とする統計モデルを用いて前記溶銑の脱りん速度定数の推定値を算出する脱りん速度定数算出部と、
    記吹錬処理前のりん濃度および前記脱りん速度定数の推定値に基づいて前記吹錬処理中の任意の時点の溶鋼中りん濃度を推定するりん濃度推定部とを備え、
    前記潜在変数算出部は、前記転炉の傾動角度と前記スラグレベル差の2変数を、1変数に次元圧縮し、前記潜在変数を決定する、溶鋼中りん濃度推定装置。
  2. 前記操業データは、前記転炉への吹込み酸素流量を含み、
    前記予備処理工程の終期において前記吹込み酸素流量が0になった時点の前記スラグレベル計の出力値と、前記脱炭処理工程の初期において前記吹込み酸素流量が0よりも大きい値になった時点の前記スラグレベル計の出力値とに基づいて前記スラグレベル差を算出するスラグレベル差算出部をさらに備える、請求項に記載の溶鋼中りん濃度推定装置。
  3. 転炉で、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と、前記予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、前記中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含む吹錬処理を行う際の、過去の操業における前記吹錬処理される溶銑に関する溶銑データ、および、前記吹錬処理中に取得される操業データから抽出されるデータを説明変数とし、前記溶銑の脱りん速度定数を目的変数とする統計モデルを構築する、統計モデル構築装置であって、
    前記溶銑データおよび記操業データと、溶鋼中りん濃度の実績値を収集するデータ収集部と、
    前記操業データから抽出した、前記中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の前記転炉の傾動角度と、前記転炉に設置されたスラグレベル計を用いて測定された前記中間排滓工程の前後でのスラグレベル差とから算出される、前記中間排滓工程において前記転炉から排出されるスラグの量を表現するデータである潜在変数と、前記溶銑データおよび前記操業データから抽出されたデータと、前記溶鋼中りん濃度の実績値と、を説明変数とし、前記統計モデルを構築する統計モデル構築部とを備え、
    前記潜在変数は、前記転炉の傾動角度と前記スラグレベル差の2変数を、1変数に次元圧縮し、決定される、統計モデル構築装置。
  4. 転炉で、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と、前記予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、前記中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含む吹錬処理を行う際に、前記吹錬処理中の溶鋼中りん濃度を推定する、溶鋼中りん濃度推定方法であって、
    操業データから抽出した、前記中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の前記転炉の傾動角度と、前記転炉に設置されたスラグレベル計を用いて測定された前記中間排滓工程の前後でのスラグレベル差とから、前記中間排滓工程において前記転炉から排出されるスラグの量を表現するデータである潜在変数を算出する潜在変数算出工程と、
    前記吹錬処理される溶銑に関する溶銑データおよび前記吹錬処理中に取得される操業データから抽出されたデータと、前記潜在変数とを説明変数とする統計モデルを用いて前記溶銑の脱りん速度定数の推定値を算出する脱りん速度定数算出工程と、
    記吹錬処理前のりん濃度および前記脱りん速度定数の推定値に基づいて前記吹錬処理中の任意の時点の溶鋼中りん濃度を推定するりん濃度推定工程とを含み、
    前記潜在変数算出工程は、前記転炉の傾動角度と前記スラグレベル差の2変数を、1変数に次元圧縮し、前記潜在変数を決定する、溶鋼中りん濃度推定方法。
  5. 転炉で、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と、前記予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、前記中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含む吹錬処理を行う際の、過去の操業における前記吹錬処理される溶銑に関する溶銑データ、および、前記吹錬処理中に取得される操業データから抽出されるデータを説明変数とし、前記溶銑の脱りん速度定数を目的変数とする統計モデルを構築する、統計モデル構築方法であって、
    前記溶銑データおよび記操業データと、溶鋼中りん濃度の実績値を収集するデータ収集工程と、
    前記操業データから抽出した、前記中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の前記転炉の傾動角度と、前記転炉に設置されたスラグレベル計を用いて測定された前記中間排滓工程の前後でのスラグレベル差とから算出される、前記中間排滓工程において前記転炉から排出されるスラグの量を表現するデータである潜在変数と、前記溶銑データおよび前記操業データから抽出されたデータと、前記溶鋼中りん濃度の実績値と、を説明変数とし、前記統計モデルを構築する統計モデル構築工程とを含み、
    前記潜在変数は、前記転炉の傾動角度と前記スラグレベル差の2変数を、1変数に次元圧縮し、決定される、統計モデル構築方法。
  6. 転炉で、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と、前記予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、前記中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含む吹錬処理を行う際に、前記吹錬処理中の溶鋼中りん濃度を推定する、溶鋼中りん濃度推定装置として、コンピュータを機能させるためのプログラムであって、
    操業データから抽出した、前記中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の前記転炉の傾動角度と、前記転炉に設置されたスラグレベル計を用いて測定された前記中間排滓工程の前後でのスラグレベル差とから、前記中間排滓工程において前記転炉から排出されるスラグの量を表現するデータである潜在変数を算出する潜在変数算出部と、
    前記吹錬処理される溶銑に関する溶銑データ、および前記吹錬処理中に取得される操業データから抽出されたデータと、前記潜在変数とを説明変数とする統計モデルを用いて前記溶銑の脱りん速度定数の推定値を算出する脱りん速度定数算出部と、
    記吹錬処理前のりん濃度および前記脱りん速度定数の推定値に基づいて前記吹錬処理中の任意の時点の溶鋼中りん濃度を推定するりん濃度推定部とを備え、
    前記潜在変数算出部は、前記転炉の傾動角度と前記スラグレベル差の2変数を、1変数に次元圧縮し、前記潜在変数を決定する溶鋼中りん濃度推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
  7. 転炉で、溶銑の脱りん処理を含む予備処理工程と、前記予備処理工程後に実施される中間排滓工程と、前記中間排滓工程後に実施される脱炭処理工程とを含む吹錬処理を行う際の、過去の操業における前記吹錬処理される溶銑に関する溶銑データ、および、前記吹錬処理中に取得される操業データから抽出されるデータを説明変数とし、前記溶銑の脱りん速度定数を目的変数とする統計モデルを構築する、統計モデル構築装置として、コンピュータを機能させるためのプログラムであって、
    前記溶銑データおよび記操業データと、溶鋼中りん濃度の実績値を収集するデータ収集部と、
    前記操業データから抽出した、前記中間排滓工程においてスラグの排出が開始された時の前記転炉の傾動角度と、前記転炉に設置されたスラグレベル計を用いて測定された前記中間排滓工程の前後でのスラグレベル差とから算出される、前記中間排滓工程において前記転炉から排出されるスラグの量を表現するデータである潜在変数と、前記溶銑データおよび前記操業データから抽出されたデータと、前記溶鋼中りん濃度の実績値と、を説明変数とし、前記統計モデルを構築する統計モデル構築部とを備え、
    前記潜在変数は、前記転炉の傾動角度と前記スラグレベル差の2変数を、1変数に次元圧縮し、決定される統計モデル構築装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
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