JP7375765B2 - ポリマー及びその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリマー及びその利用に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子には、発光層や電荷注入層として、有機化合物からなる電荷輸送性薄膜が用いられる。特に、正孔注入層は、陽極と、正孔輸送層又は発光層との電荷の授受を担い、有機EL素子の低電圧駆動及び高輝度を達成するために重要な機能を果たす。
正孔注入層の形成方法は、蒸着法に代表されるドライプロセスとスピンコート法に代表されるウェットプロセスとに大別される。これらのプロセスを比べると、ウェットプロセスの方が大面積に平坦性の高い薄膜を効率的に製造できる。それゆえ、有機ELディスプレイの大面積化が進められている現在、ウェットプロセスで形成可能な正孔注入層が望まれている。
このような事情に鑑み、本発明者らは、各種ウェットプロセスに適用可能であるとともに、有機EL素子の正孔注入層に適用した場合に優れたEL素子特性を実現できる薄膜を与える電荷輸送性材料や、それに用いる有機溶媒に対する溶解性の良好な化合物を開発してきている(特許文献1~3参照)。
一方、これまで、有機EL素子を高性能化するために様々な取り込みがなされてきているが、光取出し効率を向上させる等の目的で、用いる機能膜の屈折率を調整する取り組みがなされている。具体的には、素子の全体構成や隣接する他の部材の屈折率を考慮して、相対的に高い、あるいは低い屈折率の正孔注入層や正孔輸送層を用いることで、素子の高効率化を図る試みがなされている(特許文献4、5)。このように、屈折率は有機EL素子の設計上重要な要素であり、有機EL素子用材料では屈折率も考慮すべき重要な物性値と考えられている。
国際公開第2008/129947号 国際公開第2015/050253号 国際公開第2017/217457号 特表2007-536718号公報 特表2017-501585号公報
本発明は、前記事情に鑑みなされたものであり、低温焼成にて電荷輸送性が良好で、高屈折率で高透明性の薄膜を与え、この薄膜を正孔注入層等に適用した場合に優れた特性を有する有機EL素子を実現できるポリマーを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、トリアリールアミン構造を有するカルバゾリル基を側鎖に含むビニル系ポリマーを含む電荷輸送性ワニスが、200℃以下という低温で焼成した場合であっても優れた電荷輸送性を示し、かつ高透明性及び高屈折率の薄膜を与え、この薄膜を正孔注入層等に適用した場合に優れた特性を有する有機EL素子を与えることを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明は、下記ポリマー及びその利用を提供する。
1.下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマー。
Figure 0007375765000001
(式中、RAは、水素原子又はメチル基である。Xは、単結合又はメチレン基である。R1~R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数2~20のヘテロアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリールオキシ基である。ArTは、ジ(炭素数6~20のアリール)アミノ基で置換されたフェニル基である。mは、0~2の整数である。)
2.Xが、単結合である1のポリマー。
3.R1~R11が、水素原子である1又は2のポリマー。
4.前記ArTが、p-(ジフェニルアミノ)フェニル基、p-(1-ナフチルフェニルアミノ)フェニル基、p-[ジ(1-ナフチル)アミノ]フェニル基、p-(1-ナフチル-2-ナフチルアミノ)フェニル基、p-[ジ(2-ナフチル)アミノ]フェニル基である1~3のいずれかのポリマー。
5.mが、0又は1である1~4のいずれかのポリマー。
6.(A)1~5のいずれかのポリマーを含む電荷輸送性物質、及び(B)有機溶媒を含む電荷輸送性ワニス。
7.更に、(C)ドーパントを含む6の電荷輸送性ワニス。
8.前記有機溶媒が、低極性有機溶媒を含む7の電荷輸送性ワニス。
9.6~8のいずれかの電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜。
10.9の電荷輸送性薄膜を備える有機エレクトロルミネッセンス素子。
11.前記電荷輸送性薄膜が、正孔注入層又は正孔輸送層である10の有機エレクトロルミネッセンス素子。
12.下記式(1')で表されるモノマー。
Figure 0007375765000002
(式中、RA、X、R1~R11、ArT及びmは、前記と同じ。)
本発明のポリマーは、その主鎖に共役構造を含まないことから、高い透明性を備え、その側鎖にカルバゾール部位があることから、高い屈折率を備え、その側鎖の末端にトリアリールアミノ骨格を有するとともに柔軟な主鎖を有することから、高い溶解性を備え、更に、カルバゾール部位とトリアリールアミン部位とを共に含む電荷輸送性に優れる側鎖を有する繰り返し単位を含むことから、優れた電荷輸送性を備える。
このようなポリマーを含む本発明の電荷輸送性ワニスを用いることで、高透明性及び高屈折率の薄膜を作製することができ、また、200℃以下という低温で焼成した場合でも電荷輸送性に優れる薄膜を作製することができる。本発明の電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜は、有機EL素子をはじめとする電子素子用薄膜として好適に用いることができ、有機EL素子の正孔注入層や正孔輸送層、特に正孔注入層として用いることで、特性に優れた有機EL素子が得られる。
[ポリマー]
本発明のポリマーは、下記式(1)で表される繰り返し単位を含むものである。
Figure 0007375765000003
式(1)中、RAは、水素原子又はメチル基であるが、水素原子が好ましい。
式(1)中、Xは、単結合又はメチレン基であるが、単結合が好ましい。
式(1)中、R1~R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数2~20のヘテロアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリールオキシ基である。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられるが、フッ素原子が好ましい。
前記炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコサニル基等の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等の炭素数3~20の環状アルキル基等が挙げられる。
前記炭素数1~20のアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐状アルコキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基、ビシクロブチルオキシ基、ビシクロペンチルオキシ基、ビシクロヘキシルオキシ基、ビシクロヘプチルオキシ基、ビシクロオクチルオキシ基、ビシクロノニルオキシ基、ビシクロデシルオキシ基等の炭素数3~20の環状アルコキシ基が挙げられる。
前記炭素数6~20のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基等が挙げられる。
前記炭素数6~20のアリールオキシ基の具体例としては、フェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントリルオキシ基、2-アントリルオキシ基、9-アントリルオキシ基、1-フェナントリルオキシ基、2-フェナントリルオキシ基、3-フェナントリルオキシ基、4-フェナントリルオキシ基、9-フェナントリルオキシ基等が挙げられる。
前記炭素数2~20のヘテロアリール基の具体例としては、2-チエニル基、3-チエニル基、2-フラニル基、3-フラニル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、4-イソオキサゾリル基、5-イソオキサゾリル基、2-チアゾリル基、4-チアゾリル基、5-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、4-イソチアゾリル基、5-イソチアゾリル基、2-イミダゾリル基、4-イミダゾリル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基等が挙げられる。
前記炭素数2~20のヘテロアリールオキシ基の具体例としては、2-チエニルオキシ基、3-チエニルオキシ基、2-フラニルオキシ基、3-フラニルオキシ基、2-オキサゾリルオキシ基、4-オキサゾリルオキシ基、5-オキサゾリルオキシ基、3-イソオキサゾリルオキシ基、4-イソオキサゾリルオキシ基、5-イソオキサゾリルオキシ基、2-チアゾリルオキシ基、4-チアゾリルオキシ基、5-チアゾリルオキシ基、3-イソチアゾリルオキシ基、4-イソチアゾリルオキシ基、5-イソチアゾリルオキシ基、2-イミダゾリルオキシ基、4-イミダゾリルオキシ基、2-ピリジルオキシ基、3-ピリジルオキシ基、4-ピリジルオキシ基等が挙げられる。
これらのうち、R1~R11としては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子がより好ましく、水素原子が最適である。
式(1)中、ArTは、ジ(炭素数6~20のアリール)アミノ基で置換されたフェニル基であり、当該ジアリールアミノ基における炭素数6~20のアリール基の具体例としては、前述したものと同様のものが挙げられる。これら2つの炭素数6~20のアリール基は、同一であることが好ましい。ジ(炭素数6~20のアリール)アミノ基としては、ジフェニルアミノ基、1-ナフチルフェニルアミノ基、ジ(1-ナフチル)アミノ基、1-ナフチル-2-ナフチルアミノ基、ジ(2-ナフチル)アミノ基等が挙げられる。また、ジ(炭素数6~20のアリール)アミノ基は、フェニル基の4位又は3位に結合していることが好ましく、4位に結合していることが最適である。
ArTとしては、p-(ジフェニルアミノ)フェニル基、p-(1-ナフチルフェニルアミノ)フェニル基、p-[ジ(1-ナフチル)アミノ]フェニル基、p-(1-ナフチル-2-ナフチルアミノ)フェニル基、p-[ジ(2-ナフチル)アミノ]フェニル基が好ましく、p-(ジフェニルアミノ)フェニル基がより好ましい。
式(1)中、mは、0~2の整数であるが、0又は1がより好ましい。
本発明のポリマーは、式(1)で表される繰り返し単位を1種のみ含むものでもよく、式(1)で表される繰り返し単位を2種以上含むものでもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでもよい。なお、複数の繰り返し単位を含む場合、本発明のポリマーは、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよい。
本発明において、式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、ポリマーに含まれる全繰り返し単位中、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がより一層好ましく、95モル%以上が更に好ましく、100モル%が最も好ましい。
本発明のポリマーの重量平均分子量(Mw)は、通常1,000~200,000であるが、ポリマーの溶解性を向上させ、均一性に優れるワニスを再現性よく得る観点から、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下である。なお、本発明においてMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。Mw及び数平均分子量(Mn)は、例えば、(株)島津製作所製(カラム:Shodex GPC KF-805L+KF-804L、カラム温度;40℃、検出器:UV検出器(254nm)、溶離液:テトラヒドロフラン、カラム流速:1.0mL/min)の装置を用いて測定できる。
[ポリマーの製造方法]
式(1)で表されるポリマーは、下記式(1')で表されるモノマーを1種又は2種以上重合させることによって製造することができる。
Figure 0007375765000004
(式中、RA、X、R1~R11、m及びArTは、前記と同じ。)
重合反応は、特に限定されず、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を採用し得る。これらのうち、特にラジカル重合が好ましく、具体的には、溶媒中、前記モノマーを重合開始剤の存在下で加熱し、重合させればよい。
前記重合開始剤としては、従来公知のものから適宜選択して用いることができる。例えば、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
重合開始剤の使用量は、前記モノマー1molに対し、0.01~0.05mol程度が好ましい。反応温度は、0℃から使用する溶媒の沸点までで適宜設定すればよいが、20~100℃程度が好ましい。反応時間は、0.1~30時間程度が好ましい。
重合反応に用いられる溶媒は、この種の反応で一般的に使用されている各種溶媒から適宜選択すればよい。具体的には、水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、イソペンタノール、t-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール等の脂肪族又は芳香族炭化水素類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸類;ニトロプロパン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
なお、本発明のポリマーが式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含む場合、その合成方法としては、重合の際に、式(1')で表されるモノマーと他の繰り返し単位を与えるモノマーとを共存させて重合すればよい。
式(1')で表されるモノマーは、各種カップリング反応を組み合わせることで合成することができる。例えば、下記スキームに表されるように、化合物(1A)と化合物(1B)とをカップリング反応させ、式(1C)で表される化合物を合成した(第1工程)後、これとグリニャール試薬(1D)とを反応させる(第2工程)ことで合成することができる。なお、下記スキームにおいては、R1~R11が水素原子であり、mが1である場合の製造方法について示しているが、これに限定されない。
Figure 0007375765000005
(式中、ArT及びXは前記と同じ。XA及びXBは、それぞれ独立に、ハロゲン原子又は擬ハロゲン基である。XCは、カップリング反応に使用される任意の基である。)
A及びXBで表されるハロゲン原子としては、式(1)中のR1~R11の説明において例示したものと同じものが挙げられるが、臭素原子又はヨウ素原子が好ましい。
A及びXBで表される擬ハロゲン基としては、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ノナフルオロブタンスルホニルオキシ基等のフルオロアルキルスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等の芳香族スルホニルオキシ基等が挙げられる。
第1工程において用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素(ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、n-デカン、デカリン等)、ハロゲン化脂肪族炭化水素(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン等)、アミド(N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ラクタム及びラクトン(N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン等)、尿素誘導体(N,N-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルウレア等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド、スルホラン等)、ニトリル(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)等が挙げられる。これらのうち、目的物を効率よく得る観点から、好ましい溶媒は、脂肪族炭化水素(ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、n-デカン、デカリン等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、ニトロベンン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、THF、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン等)であり、より好ましくは芳香族炭化水素(ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、THF、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン等)である。
第1工程において用いる触媒としては、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド(PdCl2(dppf))、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(Pd(PPh3)2Cl2)、ビス(ベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2)、トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)、ビス(トリt-ブチルホスフィン)パラジウム(Pd(P-t-Bu3)2)、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2)等のパラジウム触媒等が挙げられる。これらの触媒は、公知の適切な配位子とともに使用してもよい。
触媒の使用量は、化合物(1A)に対し、モル比で0.001~0.5とすることができるが、0.005~0.1程度が好適である。また、配位子を用いる場合、その使用量は、使用する金属錯体に対し、1~10当量とすることができるが、1~4当量が好適である。
また、カップリング反応においては塩基を使用してもよい。前記塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属;t-ブトキシリチウム、t-ブトキシナトリウム、t-ブトキシカリウム等のアルコキシアルカリ金属;、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素アルカリ金属;炭酸カルシウム等の炭酸アルカリ土類金属;n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等の有機リチウム;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン等のアミン類等が挙げられるが、この種の反応に用いられるものであれば特に限定されない。特に、取り扱いが容易であることから、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好適である。前記塩基の使用量は、化合物(1A)に対し、モル比で通常1~20程度であり、好ましくは4~8である。
第1工程において、化合物(1A)と化合物(1B)との仕込み比は、化合物(1A)に対し、化合物(1B)が、モル比で1~2が好ましく、1~1.2がより好ましい。
第1工程において、反応温度は、用いる原料化合物や触媒の種類や量を考慮しつつ、溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定されるが、通常0~200℃程度であり、好ましくは20~80℃である。また、反応時間は、用いる原料化合物や反応温度等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常1~24時間程度である。
第2工程において用いる溶媒及び触媒としては、第1工程に用いる溶媒及び触媒として例示したものと同様のものが挙げられる。
第2工程において、化合物(1C)と化合物(1D)との仕込み比は、化合物(1C)に対し、化合物(1D)が、モル比で1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
第2工程において、反応温度は、用いる原料化合物や触媒の種類や量を考慮しつつ、溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定されるが、通常0~200℃程度であり、好ましくは20~80℃である。また、反応時間は、用いる原料化合物や反応温度等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常1~24時間程度である。
反応終了後は、常法に従って後処理をし、目的とするモノマーを得ることができる。
[電荷輸送性ワニス]
本発明の電荷輸送性ワニスは、(A)式(1)で表されるポリマーを含む電荷輸送性物質、及び(B)有機溶媒を含むものである。なお、本発明において、電荷輸送性とは、導電性と同義であり、正孔輸送性と同義である。
(A)成分の式(1)で表されるポリマーは、単独で又はドーパントと組み合わせた場合に電荷輸送性物質として機能する。なお、電荷輸送性物質は、いずれも前記溶媒に完全に溶解しているか、均一に分散している状態となっていることが好ましく、完全に溶解していることがより好ましい。
[(B)有機溶媒]
(B)成分の有機溶媒としては、前記ポリマーを良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。前記ポリマーを溶解させ、かつ非晶質な塗膜を得るためには、低極性溶媒を用いることが好ましい。また、必要に応じて低極性溶媒と高極性溶媒とを併用してもよい。なお、本発明において、低極性溶媒とは周波数100kHzでの比誘電率が7未満のものを、高極性溶媒とは周波数100kHzでの比誘電率が7以上のものと定義する。
低極性溶媒としては、例えば、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系溶媒;トルエン、キシレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、デシルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール等の脂肪族アルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、4-メトキシトルエン、3-フェノキシトルエン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸イソアミル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、マレイン酸ジブチル、シュウ酸ジブチル、酢酸ヘキシル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒等が挙げられる。
また、高極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;エチルメチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のシアノ系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等の多価アルコール系溶媒;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、3-フェノキシベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等の脂肪族アルコール以外の1価アルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒等が挙げられる。
[(C)ドーパント(電荷受容性ドーパント)]
本発明の電荷輸送性ワニスは、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜の電荷輸送性を向上させる等の目的で、ドーパントを含んでもよい。なお、本発明においては、ドーパントには、例えば加熱のような外部刺激によってドーパントとしての機能が向上し又は発現するようになる物質も含み、その具体例としては、アリールスルホン酸エステル化合物が挙げられる。
前記ドーパントとしては、従来公知のものを使用することができるが、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜の透明性の点から、下記式(2)で表されるイオン化合物が好ましい。
Figure 0007375765000006
式(2)中、Eは、長周期型周期表の第13族元素であり、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に、炭素数6~20のアリール基又は炭素数2~20のヘテロアリール基であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アセチル基等の炭素数2~12のアシル基、又はトリフルオロメチル基等の炭素数1~10のハロゲン化アルキル基で置換されていてもよい。
前記第13族元素としては、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましく、ホウ素原子がより好ましい。炭素数6~20のアリール基及び炭素数2~20のヘテロアリール基としては、式(1)中のR1~R11の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
式(2)中、M+は、オニウムイオンである。前記オニウムイオンとしては、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン等が挙げられるが、特に、下記式(3)で表されるヨードニウムイオンが好ましい。
Figure 0007375765000007
式(3)中、R101及びR102は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数2~20のヘテロアリール基であり、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数2~20のヘテロアリール基で置換されていてもよい。
また、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜の透明性の点から、アリールスルホン酸化合物、アリールスルホン酸エステル化合物等のスルホン酸化合物もドーパントとして好ましい。
前記アリールスルホン酸化合物としては、下記式(4)又は(5)で表されるものが好ましい。
Figure 0007375765000008
式(4)中、A1は、-O-又は-S-であるが、-O-が好ましい。A2は、ナフタレン環又はアントラセン環であるが、ナフタレン環が好ましい。A3は、2~4価のパーフルオロビフェニル基である。p1は、A1とA3との結合数であり、2≦p1≦4を満たす整数であるが、A3が2価のパーフルオロビフェニル基であり、かつ、p1が2であることが好ましい。p2は、A2に結合するスルホン酸基数であり、1≦p2≦4を満たす整数であるが、2が好適である。
式(5)中、A4~A8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基又は炭素数2~20のハロゲン化アルケニル基であるが、A4~A8のうち少なくとも3つはハロゲン原子である。qは、ナフタレン環に結合するスルホン酸基数であり、1≦q≦4を満たす整数であるが、2~4が好ましく、2がより好ましい。
4~A8で表される炭素数1~20のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、パーフルオロブチル基等が挙げられる。A4~A8で表される炭素数2~20のハロゲン化アルケニル基としては、パーフルオロエテニル基、1-パーフルオロプロペニル基、パーフルオロアリル基、パーフルオロブテニル基等が挙げられる。
4~A8で表されるハロゲン原子及び炭素数1~20のアルキル基としては、式(1)中のR1~R11の説明において例示したものと同様のものが挙げられるが、ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
これらのうち、A4~A8は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基であり、かつA4~A8のうち少なくとも3つはフッ素原子であることが好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のフッ化アルキル基又は炭素数2~5のフッ化アルケニル基であり、かつA4~A8のうち少なくとも3つはフッ原子であることがより好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基又は炭素数1~5のパーフルオロアルケニル基であり、かつA4、A5及びA8がフッ素原子であることがより一層好ましい。
なお、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基であり、パーフルオロアルケニル基とは、アルケニル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基である。
好適なアリールスルホン酸化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
Figure 0007375765000009
前記アリールスルホン酸エステル化合物としては、国際公開第2017/217455号に開示されたアリールスルホン酸エステル化合物、国際公開第2017/217457号に開示されたアリールスルホン酸エステル化合物、特願2017-243631に記載のアリールスルホン酸エステル化合物等が挙げられる。
具体的には、前記アリールスルホン酸エステル化合物としては、下記式(6)~(8)で表されるものが好ましい。
Figure 0007375765000010
式(6)~(8)中、mは、1≦m≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。nは、1≦n≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。
式(6)中、A11は、パーフルオロビフェニルから誘導されるm価の基(すなわち、パーフルオロビフェニルからm個のフッ素原子を取り除いて得られる基)である。A12は、-O-又は-S-であるが、-O-が好ましい。A13は、ナフタレン又はアントラセンから誘導される(n+1)価の基(すなわち、ナフタレン又はアントラセンからn+1個の水素原子を取り除いて得られる基)であるが、ナフタレンから誘導される基が好ましい。Rs1~Rs4は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基であり、Rs5は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。
s1~Rs4で表される直鎖状又は分岐状の炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。特に、Rs1~Rs4のうち、Rs1又はRs3が炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、残りが水素原子であるか、Rs1が炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、Rs2~Rs4が水素原子であることが好ましい。この場合、炭素数1~3の直鎖アルキル基としては、メチル基が好ましい。
s5で表される炭素数2~20の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等のアルキル基;フェニル、ナフチル、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。これらのうち、Rs5としては、炭素数2~4の直鎖アルキル基又はフェニル基が好ましい。
式(7)中、A14は、置換されていてもよい、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基であり、この炭化水素基は、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20の炭化水素化合物からm個の水素原子を取り除いて得られる基である。前記炭化水素化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等が挙げられる。これらのうち、A14としては、ベンゼン、ビフェニル等から誘導される基が好ましい。
なお、前記炭化水素基は、その水素原子の一部又は全部が、更に置換基で置換されていてもよく、このような置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシ基、リン酸基、1価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホ基等が挙げられる。
式(7)中、A15は、-O-又は-S-であるが、-O-が好ましい。
式(7)中、A16は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族炭化水素基であり、この芳香族炭化水素基は、炭素数6~20の芳香族炭化水素化合物の芳香環上から(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。前記芳香族炭化化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。これらのうち、A16としては、ナフタレン又はアントラセンから誘導される基が好ましく、ナフタレンから誘導される基がより好ましい。
式(7)中、Rs6及びRs7は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の1価脂肪族炭化水素基であり、Rs8は、直鎖状又は分岐状の1価脂肪族炭化水素基である。ただし、Rs6、Rs7及びRs8の炭素数の合計は6以上である。Rs6、Rs7及びRs8の炭素数の合計の上限は、特に限定されないが、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
s6、Rs7及びRs8で表される直鎖状又は分岐状の1価脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基等が挙げられる。これらのうち、Rs6としては水素原子が好ましく、Rs7及びRs8としては、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
式(8)中、Rs9~Rs13は、それぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基である。
s9~Rs13で表される炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
s9~Rs13で表される炭素数1~10のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1~10のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であれば、特に限定されない。その具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
s9~Rs13で表される炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であれば特に限定されず、その具体例としては、パーフルオロビニル基、パーフルオロ-1-プロペニル基、パーフルオロ-2-プロペニル基、パーフルオロ-1-ブテニル基、パーフルオロ-2-ブテニル基、パーフルオロ-3-ブテニル基等が挙げられる。
これらのうち、Rs9としては、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基が好ましく、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、炭素数2~4のハロゲン化アルケニル基がより好ましく、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロペニル基がより一層好ましい。Rs10~Rs13としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
式(8)中、A17は、-O-、-S-又は-NH-であるが、-O-が好ましい。
式(8)中、A18は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族炭化水素基であり、この芳香族炭化水素基は、炭素数6~20の芳香族炭化水素化合物の芳香環上から(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。このような芳香族炭化水素化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。これらのうち、A18としては、ナフタレン又はアントラセンから誘導される基が好ましく、ナフタレンから誘導される基がより好ましい。
式(8)中、Rs14~Rs17は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基である。Rs14~Rs17で表される1価脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより一層好ましい。
式(8)中、Rs18は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、又は-ORs19である。Rs19は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。
s18で表される直鎖状又は分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基としては、Rs14~Rs17の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。Rs18が1価脂肪族炭化水素基である場合、Rs18は、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより一層好ましい。
s19で表される炭素数2~20の1価炭化水素基としては、Rs14~Rs17で表される1価脂肪族炭化水素基として例示したもののうちメチル基以外のもののほか、フェニル、ナフチル、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。これらのうち、Rs19としては、炭素数2~4の直鎖アルキル基又はフェニル基が好ましい。
なお、前記1価炭化水素基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、炭素数1~4のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
好適なアリールスルホン酸エステル化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
Figure 0007375765000011
本発明の電荷輸送性ワニスがドーパントを含む場合、その含有量は、ドーパントの種類、所望の電荷輸送性等に応じて異なるため一概に規定できないが、電荷輸送性物質1に対して、質量比で、通常0.01~10の範囲内である。
本発明の電荷輸送性ワニスは、得られる電荷輸送性薄膜の膜物性の調整等の目的で、更に有機シラン化合物を含んでもよい。前記有機シラン化合物としては、ジアルコキシシラン化合物、トリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物が挙げられる。とりわけ、有機シラン化合物としては、ジアルコキシシラン化合物又はトリアルコキシシラン化合物が好ましく、トリアルコキシシラン化合物がより好ましい。有機シラン化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機シラン化合物の含有量は、電荷輸送性物質及びドーパントの総質量に対し、通常0.1~50質量%程度であるが、得られる薄膜の電荷輸送性の低下を抑制し、かつ、本発明の電荷輸送性薄膜からなる正孔注入層に接するように陽極とは反対側に積層される層(例えば、正孔輸送層や発光層)への正孔注入能を高めることを考慮すると、好ましくは0.5~40質量%程度、より好ましくは0.8~30質量%程度、より一層好ましくは1~20質量%程度である。
電荷輸送性ワニスの調製方法は、特に限定されないが、例えば、(A)成分及び(C)成分等を任意の順で又は同時に溶媒に加える方法が挙げられる。また、有機溶媒が複数ある場合は、まず(A)成分、(C)成分等を1種の溶媒に溶解させ、そこへ他の溶媒を加えてもよく、複数の有機溶媒の混合溶媒に、(A)成分、(C)成分等を順次又は同時に溶解させてもよい。
本発明の電荷輸送性ワニスは、より平坦性の高い薄膜を再現性よく得る観点から、(A)成分、(C)成分等を有機溶媒に溶解させた後、サブマイクロメートルオーダーのフィルター等を用いてろ過することが望ましい。
本発明の電荷輸送性ワニス中の固形分濃度は、電荷輸送性物質の析出を抑制しつつ十分な膜厚を確保する観点から、通常0.1~20質量%程度、好ましくは0.5~10質量%である。なお、固形分とは、ワニスに含まれる成分のうち溶媒以外の成分を意味する。
本発明の電荷輸送性ワニスの粘度は、通常、25℃で1~50mPa・sである。また、本発明の電荷輸送性ワニスの表面張力は、通常、25℃で20~50mN/mである。なお、粘度は、東機産業(株)製TVE-25形粘度計で測定した値である。表面張力は、協和界面科学(株)製自動表面張力計CBVP-Z型で測定した値である。ワニスの粘度と表面張力は、所望の膜厚等の各種要素を考慮して、前述した溶媒の種類やそれらの比率、固形分濃度等を変更することで調整可能である。
[電荷輸送性薄膜]
本発明の電荷輸送性薄膜は、本発明の電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、焼成することで形成することができる。
ワニスの塗布方法としては、特に限定されないが、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられる。塗布方法に応じて、ワニスの粘度及び表面張力を調節することが好ましい。
また、塗布後の電荷輸送性ワニスの焼成雰囲気も特に限定されず、大気雰囲気だけでなく、窒素等の不活性ガスや真空中でも均一な成膜面及び高い電荷輸送性を有する薄膜を得ることができる。ともに用いるドーパントの種類によっては、ワニスを大気雰囲気下で焼成することで、電荷輸送性を有する薄膜が再現性よく得られる場合がある。
焼成温度は、得られる薄膜の用途、得られる薄膜に付与する電荷輸送性の程度、溶媒の種類や沸点等を勘案して、100~260℃程度の範囲内で適宜設定され、得られる薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる場合、140~250℃程度が好ましく、145~240℃程度がより好ましいが、本発明の電荷輸送性ワニスでは、200℃以下という低温焼成でも、良好な電荷輸送性を有する薄膜を得ることができる。なお、焼成の際、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよく、加熱は、例えば、ホットプレートやオーブン等、適当な機器を用いて行えばよい。
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層又は正孔注入輸送層として用いる場合、5~300nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の液量を変化させたりする等の方法がある。
以上説明した本発明の電荷輸送性薄膜は、400nn~800nmの波長領域の平均値で、1.6以上の屈折率(n)と0.020以下の消衰係数(k)を示すが、ある態様においては1.65以上の屈折率を、その他のある態様においては1.70以上の屈折率を示し、また、ある態様においては0.010以下の消衰係数(k)を、その他のある態様においては0.005以下の消衰係数(k)を示す。
[有機EL素子]
本発明の有機EL素子は、一対の電極を有し、これら電極の間に、本発明の電荷輸送性薄膜からなる機能層を有するものである。
有機EL素子の代表的な構成としては、以下の(a)~(f)が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記構成において、必要に応じて、発光層と陽極の間に電子ブロック層等を、発光層と陰極の間にホール(正孔)ブロック層等を設けることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層が電子ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよく、電子注入層、電子輸送層又は電子注入輸送層がホールブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよい。更に、必要に応じて各層の間に任意の機能層を設けることも可能である。
(a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(c)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(d)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(f)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
「正孔注入層」、「正孔輸送層」及び「正孔注入輸送層」とは、発光層と陽極との間に形成される層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「正孔注入輸送層」であり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陽極に近い層が「正孔注入層」であり、それ以外の層が「正孔輸送層」である。特に、正孔注入(輸送)層は、陽極からの正孔受容性だけでなく、正孔輸送(発光)層への正孔注入性にも優れる薄膜が用いられる。
「電子注入層」、「電子輸送層」及び「電子注入輸送層」とは、発光層と陰極との間に形成される層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「電子注入輸送層」であり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陰極に近い層が「電子注入層」であり、それ以外の層が「電子輸送層」である。
「発光層」とは、発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料とを含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
本発明の電荷輸送性薄膜は、有機EL素子において、陽極と発光層との間に設けられる機能層として好適に用いることができ、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入輸送層としてより好適に用いることができ、正孔注入層としてより一層好適に用いることができる。
本発明の電荷輸送性ワニスを用いて有機EL素子を作製する場合の使用材料や、作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜からなる正孔注入層を有する有機EL素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。なお、電極は、電極に悪影響を与えない範囲で、アルコール、純水等による洗浄や、UVオゾン処理、酸素-プラズマ処理等による表面処理を予め行うことが好ましい。
陽極基板上に、前記方法により、本発明の電荷輸送性ワニスを用いて正孔注入層を形成する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/ホールブロック層、電子注入層、陰極金属を順次蒸着する。あるいは、当該方法において蒸着で正孔輸送層と発光層を形成するかわりに、正孔輸送性高分子を含む正孔輸送層形成用組成物と発光性高分子を含む発光層形成用組成物を用いてウェットプロセスによってこれらの層を形成する。なお、必要に応じて、発光層と正孔輸送層との間に電子ブロック層を設けてよい。
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属又は合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、金、銀、銅、インジウムやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N'-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン(α-NPD)、4,4',4''-トリス[3-メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4',4''-トリス[1-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1-TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5''-ビス-{4-[ビス(4-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-2,2':5',2''-ターチオフェン(BMA-3T)等のオリゴチオフェン類等が挙げられる。
発光層を形成する材料としては、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、ビススチリルベンゼン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの金属錯体、シロール誘導体等の低分子発光材料;ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリビニルカルバゾール等の高分子化合物に発光材料と電子移動材料を混合した系等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、蒸着で発光層を形成する場合、発光性ドーパントと共蒸着してもよく、発光性ドーパントとしては、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)等の金属錯体や、ルブレン等のナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン等の縮合多環芳香族環等が挙げられるが、これらに限定されない。
電子輸送層/ホールブロック層を形成する材料としては、オキシジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、フェニルキノキサリン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ピリミジン誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al23)等の金属酸化物、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)の金属フッ化物などが挙げられるが、これらに限定されない。
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム-銀合金、アルミニウム-リチウム合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられるが、これに限定されない。
正孔輸送性高分子としては、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N'-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N'-ビス{p-ブチルフェニル}-1,1'-ビフェニレン-4,4-ジアミン)]、ポリ[(9,9-ビス{1'-ペンテン-5'-イル}フルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N'-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N'-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン]-エンドキャップド ウィズ ポリシルセスキオキサン、ポリ[(9,9-ジジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4'-(N-(p-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]等が挙げられる。
発光性高分子としては、ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2-メトキシ-5-(2'-エチルヘキソキシ)-1,4-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3-アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
陽極と陰極及びこれらの間に形成される層を構成する材料は、ボトムエミッション構造、トップエミッション構造のいずれを備える素子を製造するかで異なるため、その点を考慮して、適宜材料を選択する。
通常、ボトムエミッション構造の素子では、基板側に透明陽極が用いられ、基板側から光が取り出されるのに対し、トップエミッション構造の素子では、金属からなる反射陽極が用いられ、基板と反対方向にある透明電極(陰極)側から光が取り出される。そのため、例えば陽極材料について言えば、ボトムエミッション構造の素子を製造する際はITO等の透明陽極を、トップエミッション構造の素子を製造する際はAl/Nd等の反射陽極を、それぞれ用いる。
本発明の有機EL素子は、特性悪化を防ぐため、定法に従い、必要に応じて捕水剤等と共に封止してもよい。
本発明の電荷輸送性ワニスは、前述したとおり、有機EL素子の機能層の形成に好適に用いられるが、その他にも有機光電変換素子、有機薄膜太陽電池、有機ぺロブスカイト光電変換素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子、発光電子化学電池、量子ドット発光ダイオード、量子レーザー、有機レーザーダイオード及び有機プラスモン発光素子等の電子素子における機能層の形成にも利用することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)1H-NMR、19F-NMR:JEOL(株)製、核磁気共鳴装置AL-300
(2)基板洗浄:長州産業(株)製、基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(3)ワニスの塗布:ミカサ(株)製、スピンコーターMS-A100
(4)膜厚測定:(株)小坂研究所製、微細形状測定機サーフコーダET-4000
(5)膜の表面観察:レーザーテック社製、共焦点レーザー顕微鏡、リアルタイム走査型レーザー顕微鏡1LM21D
(6)EL素子の作製:長州産業(株)製、多機能蒸着装置システムC-E2L1G1-N
(7)EL素子の輝度等の測定:(株)イーエッチシー製、多チャンネルIVL測定装置
(8)EL素子の寿命測定(輝度半減期測定):(株)イーエッチシー製、有機EL輝度寿命評価システムPEL-105S
(9)LDI-MS:Bruker社製AutoFlex
(10)屈折率及び消衰係数の測定:ジェー・エー・ウーラムジャパン製、多入社角分光エリプソメーターVASE
(11)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)測定:(株)島津製作所製(カラム:Shodex GPC KF-805L+KF-804L、カラム温度;40℃、検出器:UV検出器(254nm)、溶離液:THF、カラム流速:1.0mL/min)
[実施例1]ポリマーP-1の合成
(1)4'-(3-ブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N-ジフェニル-[1,1'-ビフェニル]-4-アミンの合成
Figure 0007375765000012
3-ブロモ-9-(4-ヨードフェニル)-9H-カルバゾール4.0g、N,N-ジフェニル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)アニリン3.5g、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.21g、N-メチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウムクロリド1.1g、テトラヒドロフラン40mL及び2mol/L炭酸カリウム水溶液34mLを反応容器に入れ、窒素置換をした後、60℃で8時間攪拌した。室温にした後、トルエン及びイオン交換水を加えて分液を行った。有機相を硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を減圧留去し得られた残渣に1,4-ジオキサン40gを加えて80℃に加熱した後、室温まで放冷した。メタノール40mLを加え、更に室温で3時間攪拌し、ろ過、乾燥を行い、目的とする4'-(3-ブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N-ジフェニル-[1,1'-ビフェニル]-4-アミンを3.6g得た(収率:71%)。
1H-NMR (500MHz, CDCl3) δ[ppm]: 8.25(d, J=1.5Hz, 1H),8.09(d, J=8.0Hz, 1H), 7.78(dd, J=8.0, 1.5Hz, 2H), 7.54-7.57(m, 4H), 7.49(dd, J=8.5, 2.0Hz, 1H), 7.44(d, J=3.5Hz, 2H), 7.28-7.33(m, 6H), 7.15-7.19(m, 6H), 7.06(t, J=7.5, 2H).
(2)N,N-ジフェニル-4'-(3-ビニル-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1'-ビフェニル]-4-アミンの合成
Figure 0007375765000013
4'-(3-ブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N-ジフェニル-[1,1'-ビフェニル]-4-アミン3.2g及び[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリド0.23gを反応容器に入れた後、窒素置換を行った。テトラヒドロフラン50mLを入れ、ビニルマグネシウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液(濃度1.45mol/L)を加え、60℃で4時間加熱攪拌を行った。反応液を室温にした後、飽和食塩水、クロロホルムを加えて分液を行った。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた濃縮残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/n-ヘキサン=80/20)で精製し、目的とするN,N-ジフェニル-4'-(3-ビニル-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1'-ビフェニル]-4-アミン2.6gを得た(収率:89%)。
1H-NMR(500MHz, CDCl3) δ[ppm]: 8.14(s, 1H), 8.12(d, J=7.5Hz, 1H), 7.71(d, J=8.5, 2H), 7.47-7.53(m, 5H), 7.35-7.42(m, 3H), 7.24-7.27(m, 4H), 7.13-7.17(m, 7H), 7.03(t, J=7.5, 2H), 6.89(dd, J=17.5, 11Hz, 1H), 5.76(d, J=17.5Hz, 1H), 5.19(d, J=11Hz, 1H).
(3)ポリマーP-1の合成
Figure 0007375765000014
N,N-ジフェニル-4'-(3-ビニル-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1'-ビフェニル]-4-アミン2.5g、AIBN0.041g及びトルエン15mLを反応容器に入れ、窒素置換を行った後、100℃で20時間攪拌した。室温まで放冷した後、反応液にトルエン15mLを加え、得られた溶液をメタノール200mL中に滴下した。室温で攪拌した後、ろ過、乾燥を行い、目的とするポリマーP-1を2.3g得た(収率:93%)。GPC測定の結果、Mn=6,700、Mw=30,900であった。
[実施例2]電荷輸送性ワニスの調製
ポリマーP-1 219mg及び4-イソプロピル-4'-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(東京化成工業(株)製)44mgの混合物に、3-フェノキシトルエン2.5g及び4-メトキシトルエン2.5gを加えて、室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を、孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して電荷輸送性ワニスを得た。
[実施例3]屈折率(n)及び消衰係数(k)の評価
実施例2で得られたワニスをスピンコーターを用いて石英基板に塗布した後、大気雰囲気下、150℃で10分間焼成し、石英基板上に70nmの均一な薄膜を形成した。この薄膜付きの石英基板を用いて、多入社角分光エリプソメーターにてn値及びk値の測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 0007375765000015
表1に示したように、本発明の電荷輸送性薄膜は、屈折率が1.6以上と高い価であり、消衰係数が0.020と低い値であった。
[実施例4]有機EL素子の作製及び特性評価
実施例2で得られたワニスをスピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気雰囲気下、150℃で10分間焼成し、ITO基板上に膜厚70nmの薄膜を形成した。ITO基板としては、ITOが表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去した。
次いで、薄膜を形成したITO基板に対し、蒸着装置(真空度1.0×10-5Pa)を用いてα-NPDを0.2nm/秒にて95nm成膜した。次に、関東化学(株)製の電子ブロック材料HTEB-01を10nm成膜した。次いで、新日鉄住金化学(株)製の発光層ホスト材料NS60と発光層ドーパント材料Ir(ppy)3を共蒸着した。共蒸着は、Ir(ppy)3の濃度が6%になるように蒸着レートをコントロールし、40nm積層させた。次いで、Alq3、フッ化リチウム及びアルミニウムの薄膜を順次積層して有機EL素子を得た。この際、蒸着レートは、Alq3及びアルミニウムについては0.2nm/秒、フッ化リチウムについては0.02nm/秒の条件でそれぞれ行い、膜厚は、それぞれ20nm、0.5nm及び80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、有機EL素子は封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。酸素濃度2ppm以下、露点-76℃以下の窒素雰囲気中で、有機EL素子を封止基板の間に収め、封止基板を接着剤((株)MORESCO製、モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製HD-071010W-40)を有機EL素子と共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長:365nm、照射量:6,000mJ/cm2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着剤を硬化させた。
得られた有機EL素子について、5,000cd/m2で発光させた場合における駆動電圧、電流密度、電流効率、発光効率、外部発光量子収率(EQE)、及び輝度の半減期(初期輝度5,000cd/m2が半分に達するのに要する時間)を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0007375765000016
表2に示したように、本発明の電荷輸送性薄膜を備えるEL素子は好適に駆動した。

Claims (11)

  1. 下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマー(ただし、下記式(1')で表される金属錯体を部分構造として有するものを除く。)
    Figure 0007375765000017
    (式中、RAは、水素原子又はメチル基である。Xは、単結合又はメチレン基である。R1~R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数2~20のヘテロアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリールオキシ基である。ArTは、ジ(炭素数6~20のアリール)アミノ基で置換されたフェニル基である。mは、0~2の整数である。)
    Figure 0007375765000018
    〔式中、R 1 '、R 2 '、R 3 '、R 4 'は、各々水素原子または置換基を表す。n1は1~4の整数を表す。但し、R 1 '、R 2 'のうち少なくとも1つは下記一般式(2')で表される置換基を表す。X 1 -L1-X 2 は2座の配位子を表し、X 1 、X 2 は、各々独立に炭素原子、窒素原子または酸素原子を表す。L1はX 1 、X 2 と共に2座の配位子を形成する原子群を表す。m1は1、2または3の整数を表し、m2は0、1または2の整数を表すが、m1+m2は2または3である。M 1 は元素周期表における8族~10族の遷移金属元素を表す。〕
    Figure 0007375765000019
    〔式中、Z1は、5員または6員の炭化水素環基または5員~6員の複素環基を形成するのに必要な原子群を表す。Aは炭素原子または窒素原子を表す。R 11 'は置換基を表す。R 12 'は水素原子または置換基を表し、n12は1から4の整数を表す。但し、複数のR 12 'が存在する場合、各々のR 12 'は同一でもよく、また異なっていてもよい。*は結合位置を表す。〕
  2. Xが、単結合である請求項1記載のポリマー。
  3. 1~R11が、水素原子である請求項1又は2記載のポリマー。
  4. 前記ArTが、p-(ジフェニルアミノ)フェニル基、p-(1-ナフチルフェニルアミノ)フェニル基、p-[ジ(1-ナフチル)アミノ]フェニル基、p-(1-ナフチル-2-ナフチルアミノ)フェニル基、p-[ジ(2-ナフチル)アミノ]フェニル基である請求項1~3のいずれか1項記載のポリマー。
  5. mが、0又は1である請求項1~4のいずれか1項記載のポリマー。
  6. (A)請求項1~5のいずれか1項記載のポリマーを含む電荷輸送性物質、及び(B)有機溶媒を含む電荷輸送性ワニス。
  7. 更に、(C)ドーパントを含む請求項6記載の電荷輸送性ワニス。
  8. 前記有機溶媒が、低極性有機溶媒を含む請求項7記載の電荷輸送性ワニス。
  9. 請求項6~8のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜。
  10. 請求項9記載の電荷輸送性薄膜を備える有機エレクトロルミネッセンス素子。
  11. 前記電荷輸送性薄膜が、正孔注入層又は正孔輸送層である請求項10記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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