<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る電源運用計画策定装置1の構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。電源運用計画策定装置1は、複数の電源を含む電源システム(不図示)についての電源運用計画を策定する装置である。ここで、複数の電源には、例えば、火力発電機および水力発電機などの発電機が含まれてもよく、蓄電池が含まれてもよい。
図1で示されるように、電源運用計画策定装置1は、データ入力処理部3、電源評価処理部8、計画策定処理部11およびデータ出力処理部12を含んでいる。
データ入力処理部3は、電源運用計画の策定に必要な設定データ2を読み込む。図1の例では、設定データ2はデータ格納部4に格納されており、需要データ5、電源データ6および調整力データ7を含んでいる。これらデータの具体例は後に詳述する。なお、設定データ2は後述のように、ユーザによりデータ入力処理部3に入力されてもよい。
電源評価処理部8は、データ入力処理部3によって読み込まれた設定データ2に基づいて各電源の能力を評価し、その評価結果を示す電源評価データ9を作成する。電源評価データ9の具体例も後に詳述する。
計画策定処理部11は、電源評価処理部8によって作成された電源評価データ9に基づいて電源運用計画データ10を作成する。電源運用計画データ10は、電源システムについての電源運用計画を示すデータである。計画策定処理部11は、電源評価データ9に基づいて電源運用計画データ10を作成するので、後に詳述するように、例えば、評価の高い電源を優先的に活用した電源運用計画データ10を作成することができる。
データ出力処理部12は、計画策定処理部11によって作成された電源運用計画データ10から、結果データ13を出力する。図1の例では、データ出力処理部12は結果データ13をデータ格納部4に書き込む。これにより、結果データ13がデータ格納部4に格納される。結果データ13は、電源運用計画データ10を構成する起動停止計画データ14、出力計画データ15および調整力提供計画データ16を少なくとも含んでいる。結果データ13は、これらのデータ以外のデータを含んでいてもよい。各データの具体例は後に詳述する。なお、データ出力処理部12は結果データ13を後述のようにディスプレイに出力し、ディスプレイに結果データ13を表示させてもよい。
図2は、一般的なハード装置の構成の一例を示す図である。コンピュータ22はデータ処理部(処理回路)23、主記憶装置24および補助記憶装置25を含む。データ処理部23は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサおよびDSP(Digital Signal Processor)などの処理回路である。主記憶装置24は例えばRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリであり、補助記憶装置25は、例えば、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)等、または、今後使用されるあらゆる記憶媒体であってもよい。データ処理部23は、例えば補助記憶装置25に記憶されたプログラムを主記憶装置24上に展開して実行することにより、プログラムに応じた種々の処理を行うことができる。
図2で示されるように、コンピュータ22は入力装置21および出力装置28と電気的に接続されている。入力装置21はユーザによる種々の情報の入力を受け付ける装置であり、例えばキーボードおよびマウスを含む。出力装置28はコンピュータ22からの出力結果をユーザに示す装置であり、例えば液晶ディスプレイ等のディスプレイを含む。また図2の例では、コンピュータ22はネットワーク26を介して外部記憶装置27に電気的に接続されている。
図1に示すデータ格納部4は、設定データ2および結果データ13を保管するためのものであり、例えば図2に示す主記憶装置24、補助記憶装置25および外部記憶装置27のいずれか、あるいは複数を組み合わせて実現できる。
電源評価処理部8および計画策定処理部11の機能は、コンピュータ22の内部演算処理部としてのデータ処理部23を用いて実現できる。例えば、これらの機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、例えば補助記憶装置25に格納される。データ処理部23はプログラムを主記憶装置24上に展開して実行する。データ処理部23はこのプログラムに従って、主記憶装置24のデータを読み込み、各処理を行い、その結果を主記憶装置24に格納する。このようなデータ処理部23の処理により、電源評価処理部8および計画策定処理部11の機能が実現される。補助記憶装置25などの記憶装置に記憶されるプログラムは、電源評価処理部8および計画策定処理部11の手順および方法をコンピュータ22に実行させるものであるとも言える。
データ入力処理部3は、データ格納部4から設定データ2を読み込む機能を有する。データ入力処理部3の機能は、例えば電源評価処理部8および計画策定処理部11と同様に、コンピュータ22の内部演算処理部としてのデータ処理部23により実現されてもよい。例えば、データ入力処理部3の処理を規定するプログラムが補助記憶装置25などに記憶される。データ処理部23が当該プログラムを主記憶装置24上に展開して実行することにより、データ入力処理部3の処理が実行される。
あるいは、設定データ2が入力装置21を介してユーザにより入力される場合、データ入力処理部3は入力装置21により実現できる。
データ出力処理部12は、例えば、計画策定処理部11によって作成された電源運用計画データ10をユーザが確認するため、結果データ13を図2に示すディスプレイ等の出力装置28に表示する機能を有する。また、データ出力処理部12は結果データ13を保管するため、結果データ13を補助記憶装置25に格納する機能を有する。あるいは、データ出力処理部12は結果データ13を保管するため、ネットワーク26を経由して、結果データ13を外部記憶装置27に格納してもよい。データ出力処理部12の機能もデータ入力処理部3と同様に、データ処理部23により実現できる。
なお、データ入力処理部3、電源評価処理部8、計画策定処理部11およびデータ出力処理部12の機能は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。具体的には、これらの機能は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものによって実現される。各部の機能それぞれを処理回路で実現してもよいし、各部の機能をまとめて処理回路で実現してもよい。
また、データ入力処理部3、電源評価処理部8、計画策定処理部11およびデータ出力処理部12の各機能の一部を専用のハードウェアで実現し、他の一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。
図3は、電源運用計画策定装置1によって実行される電源運用計画策定方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS1(データ入力処理)にて、データ入力処理部3は設定データ2を読み込む。例えばデータ入力処理部3は、入力装置21から入力された設定データ2を読み込む。あるいは、データ入力処理部3は、補助記憶装置25に保存されているデータ(例えばCSV形式で保存された電子ファイル)の中から入力装置21によって指定された設定データ2を読み込んでもよい。あるいは、データ入力処理部3は、外部記憶装置27に保存されているデータ(例えばCSV形式で保存された電子ファイル)の中から入力装置21によって指定された設定データ2をネットワーク26経由で読み込んでもよい。読み込まれた設定データ2は主記憶装置24上に展開される。
この設定データ2には需要データ5、電源データ6および調整力データ7が含まれている(図1も参照)。
需要データ5は、電源システムが供給すべき電力需要の予測値の情報を含む。例えば、需要データ5は電力需要の予測値を計画単位時間ごとに含む。計画単位時間とは、電源運用計画の期間(以下、計画対象期間と呼ぶ)を構成する単位時間である。例えば、計画対象期間は1週間または1か月などの期間であり、計画単位時間は、1時間、30分、15分または5分などの時間である。例えば、計画対象期間が1か月であり、計画単位時間が1時間である場合、需要データ5は、その1か月における1時間ごとの電力需要の予測値を含む。なお、計画対象期間および計画単位時間は動的に決定されてもよい。また、計画対象期間および計画単位時間の長さは特に制限されずに適宜に設定され得る。
電源データ6は、電源システムに属する複数の電源の諸情報(例えば仕様)を含む。図4は、電源データ6の具体的な一例を説明するための図である。電源データ6は電源基本データ6aおよび電源出力関連データ6bを含む。電源基本データ6aは、電源名、最大出力、最小出力、最小運転時間、最小停止時間、起動カーブ、停止カーブおよび起動費の情報を電源ごとに含んでいる。図4の例では、4台の電源についての電源データ6が示されている。
電源名は電源の名称を示す。最大出力は、電源が出力可能な電力の最大値を示し、最小出力は、電源が出力可能な電力の最小値を示す。各電源の出力電力は次の式(1)を満たす。
なお、式(1)では、tが時間(具体的には計画単位時間ごとの時間帯)を示す番号、iが電源の個別番号、Pminが最小出力、Pmaxが最大出力、Uが電源の起動停止状態(起動=1、停止=0)、Pが電源の出力電力をそれぞれ表している。
最小運転時間は、停止している電源が起動した後、運転し続けなければならない最小の時間を示す。最小停止時間は、運転している電源が停止した後、停止し続けなければならない最小の時間を示す。
起動カーブは、電源が停止状態から起動する際に出力電力を増加させるときの出力電力の固定パターンを示す。ここでいうパターンとは、出力電力の時間変化を示す波形である。この起動カーブは、電源が起動する際に出力電力が固定パターンをとる必要がある場合に設定される。逆に言えば、起動時に出力電力が固定パターンをとる必要がなければ、起動カーブを設定する必要はない。起動カーブが設定される場合、当該起動カーブは、電源の温度等の条件によって選択される複数の固定パターンを含んでいてもよい。
停止カーブは、電源が運転状態から停止する際に出力電力を低減させるときの出力電力の固定パターンを示す。この停止カーブは、電源が停止する際に出力電力が固定パターンをとる必要がある場合に設定される。逆に言えば、停止時に出力電力が固定パターンをとる必要がなければ、停止カーブを設定する必要はない。停止カーブが設定される場合、停止カーブは、電源の温度等の条件によって選択される複数の固定パターンを含んでいてもよい。
起動費は、電源が起動する際に必要となるコストを示す。起動費は固定の値でもよい。あるいは、起動費は多項式で表されてもよい。具体的な一例として、起動費は、起動前の連続停止時間の長さを変数とした次の二次式(起動費計算式)で表される。
なお、式(2)では、SCostが電源の起動費、Hが電源の起動前の連続停止時間、Sa,Sb,Scが電源の起動費計算式の係数をそれぞれ表している。
なお、電源基本データ6aは、起動費の情報を式で含んでいる必要はない。電源基本データ6aは、例えば電源の連続停止時間と起動費との関係を規定するルックアップテーブルを、起動費の情報として含んでいてもよい。また、起動費は電源の温度にも依存するので、電源基本データ6aは温度別の複数のルックアップテーブルを含んでいてもよい。もちろん、電源基本データ6aは電源の温度と起動費との関係を規定するルックアップテーブルを連続停止時間別に複数含んでいてもよい。
次に、電源出力関連データ6bについて説明する。ここでは、各電源は1つ以上の出力帯で電力を出力することが可能であり、電源出力関連データ6bは出力帯ごとのパラメータを含んでいる。電源出力関連データ6bは出力帯ごとに、出力上限、出力下限、出力変化速度および燃料消費特性を含んでいる。
出力上限は各出力帯の上限値を示し、出力下限は各出力帯の下限値を示す。
出力変化速度は、電源が単位時間当たりに出力電力を変化させることができる変化量(絶対値)の上限を示し、上げ方向と下げ方向とにそれぞれ存在する。図4の例では、上げ方向の出力変化速度を「出力変化速度UP」と表しており、下げ方向の出力変化速度を「出力変化速度DN」と表している。上げ方向と下げ方向の出力変化速度は互いに異なる値でもよく、互いに同じ値でもよい。また、各出力変化速度は、異なる出力帯の間において異なる値でもよく、同じ値でもよい。
燃料消費特性は、電源が発電に燃料を要する場合に消費する燃料の量を求めるための特性を示す。燃料消費特性は例えば次の式(3)のような二次式(燃料消費量計算式)で表される。
なお、式(3)では、FCostが燃料消費量、Fa,Fb,Fcが電源ごと且つ出力帯ごと且つ時間ごとの燃料消費量計算式の係数をそれぞれ表している。
例えば、Fa=0.002、Fb=1.5、Fc=3000、P=500で電源が運転している場合、FCost=0.002×500×500+1.5×500+3000=4250となる。また、出力電力がゼロで電源が停止している場合(つまり、P=U=0の場合)、FCost=0となる。
図4の例では、出力帯(n)(nは1からNまでの自然数)ごとに、「出力上限(n)」、「出力下限(n)」、「出力変化速度UP(n)」、「出力変化速度DN(n)」および「燃料消費特性(n)」が示されている。
また、図4の例では、電源出力関連データ6bは、切り替え時間も含んでいる。切り替え時間は、電源が出力帯を切り替える際に、例えば電源内の機器を調整するための特別の扱いに要する時間の長さを示している。当該の特別な扱いとは、例えば、出力電力を固定して一定時間変化させないこと、あるいは、指定の出力カーブに沿って出力電力を変化させること、を表している。切り替え時間は、出力電力をより大きな出力帯に切り替える際の上げ方向の切り替え時間と、出力電力をより小さな出力帯に切り替える際の下げ方向の切り替え時間とを含む。図4の例では、前者の切り替え時間を「切り替え時間UP」と表しており、後者の切り替え時間を「切り替え時間DN」と表している。また、図4の例では、時間帯(n)と時間帯(n+1)との間の切り替えに要する切り替え時間として、「切り替え時間UP(n-(n+1))」および「切り替え時間DN((n+1)-n)」が示されている。
以上のように、電源データ6は電源基本データ6aおよび電源出力関連データ6bを含んでおり、各電源の各種情報を含んでいる。
また、設定データ2には調整力データ7も含まれる(図1も参照)。調整力データ7は電源が提供すべき調整力(以下、要求調整力(調整力必要量)と呼ぶ)に関する情報を含む。調整力データ7は、例えば、要求調整力を計画単位時間ごとに含む。図5は、調整力データ7のうち要求調整力以外のデータの一例を示す図であり、図6は、調整力を説明するための図である。
ここでは、調整力とは、電力の需給バランスを調整するために提供される出力電力または電力需要の変化量を示す。例えば、調整力は、各電源が出力電力を計画出力から変化させたときの出力電力の変化量(図6参照)を含む。運用時の電力需要が計画時と比べて増加したときには、電源の出力電力を増加させて需給バランスを調整する。この出力電力の変化量が調整力に相当する。また、調整力は、デマンドレスポンス等の需要調整部による電力需要の変化量も含む。例えば運用時に出力電力が不足するときに、需要調整部により電力需要を低減させて、需給バランスを調整する。この電力需要の変化量が調整力に相当する。以下では、説明の簡単のために、需要調整部以外の電源が調整力を提供するものとする。
調整力データ7は、提供可能な調整力を求めるためのデータ諸元を含んでおり、具体的には、図5で示されるように、調整力名称、調整力応動時間、調整力継続時間および調整力供給下限量を、調整力名称ごとに含んでいる。
調整力名称は、複数種類の調整力が存在する場合に調整力を区別するために示すものであり、調整力は後述の調整力応動時間や調整力継続時間といった条件が異なる種類が存在することもある。調整力応動時間は、調整力提供の指示が与えられた時点から調整力を提供する準備にかけてよい時間の上限を示す。
調整力継続時間は、各提供元が調整力を提供し続けることが可能な時間を示す。調整力を提供する方法としては、決められた一定の時間帯で調整力を供給する方法と、調整力を供給し始めてから一定時間供給し続ける方法がある。例えば、調整力を、計画対象期間においてある決められた3時間の時間帯で提供してもよく、あるいは、ある1時間の時間帯で提供してもよく、提供開始後30分間にわたって提供してもよく、提供開始後5分間わたって提供してもよい。また、調整力継続時間は動的に変更してもよい。
調整力供給下限量は、各提供元が提供可能な調整力の下限量として設定される値を示す。調整力供給下限量は、例えば、1MWでもよく、1kWでもよい。また、調整力供給下限量が不要な場合には、調整力供給下限量は0kWでもよい。
以上のように、調整力データ7は、調整力に関する情報を含んでいる。なお、複数種類の調整力が存在する場合には、要求調整力の情報は種類ごとに定義される。つまり、要求調整力は種類ごと、かつ計画単位時間ごとの値を含む。
電源運用計画策定装置1は上述の需要データ5、電源データ6および調整力データ7に基づいて電源運用計画データ10を作成する。具体的には、後述するように、電源運用計画策定装置1はまず電源データ6および調整力データ7に基づいて各電源を評価して、その評価結果を示す電源評価データ9を作成し、電源評価データ9、需要データ5および調整力データ7に基づいて電源運用計画データ10を作成する。
図3を再び参照して、次にステップS2(電力供給評価処理)にて、電源評価処理部8は、データ入力処理部3によって読み込まれた電源データ6に基づいて、各電源の電力供給能力を評価する。例えば、電源評価処理部8は電源の最大出力、最小出力、起動費および燃料消費特性の少なくともいずれかに基づいて電力供給能力を評価し、その評価結果を示す電力供給評価データ9aを作成する。電力供給評価データ9aは電源評価データ9の1種である。
ここで、電力供給能力を示す指標である電力評価値の算出例を説明する。電源評価処理部8は、例えば、出力電力の最大出力と最小出力との差(以下、出力幅の最大値と呼ぶ)を電力評価値として電源ごとに算出する。出力幅の最大値は次の式で表される。
なお、式(4)では、Prangeが出力幅の最大値を表している。例えば、Pmax=500、Pmin=200の場合、Prange=500-200=300となる。この出力幅の最大値が大きいほど、電源は電力需要の変動に対応した電力を出力できるので、電力供給能力は高いと言える。つまり、出力幅の最大値が大きいほど、電力評価値は高い。電源評価処理部8はこの出力幅の最大値を電力評価値として算出して、電力供給評価データ9aを作成する。この電力供給評価データ9aには、電源ごとの電力評価値の情報が含まれる。なお、最大出力Pmaxおよび最小出力Pminは、既述のように、時間tに応じて相違し得る。よって、電力供給能力を示す指標として、時間tごとの最大出力Pmaxおよび最小出力Pminを用いて、時間tごとの出力幅の最大値Prangeを算出してもよい。あるいは、より簡易的に評価を行うべく、各電源の最大出力Pmaxおよび最小出力Pminとして一定値を採用してもよい。この点は、以下で述べる他の指標についても同様である。
あるいは、電源評価処理部8は、電源が最大出力で電力を出力しているときの電力量当たりのコストである発電単価を、電力評価値として算出してもよい。具体的には、電源評価処理部8は少なくとも最大出力および燃料消費特性に基づいて発電単価を算出してもよい。例えば、発電単価は次の式で表される。
なお、式(5)では、Ptankaが発電単価を表している。例えば、Pmax=500、Pmin=200の場合、Ptanka=4250/500=8.5となる。この発電単価が小さいほど、電力供給能力は高いと言える。つまり、発電単価が小さいほど、電力評価値は高い。電源評価処理部8はこの発電単価を電力評価値として算出して、電力供給評価データ9aを作成する。この電力供給評価データ9aには、電源ごとの電力評価値の情報が含まれる。
発電単価が小さい電源に電力を供給させれば、効率的に電力を供給することができるので、電源運用計画において、発電単価が小さい電源を優先的に活用することが望ましい。あるいは、出力幅の最大値が大きい電源に電力を供給させれば、電力需要の変動に対応しやすいので、電源運用計画において、出力幅の最大値が大きい電源を優先的に活用することも望ましい。要するに、電源運用計画において、電力評価値が高い電源を優先的に活用することが望ましい。
次にステップS3(調整力提供評価処理)にて、電源評価処理部8は、データ入力処理部3によって読み込まれた電源データ6および調整力データ7に基づいて、各電源の調整力提供能力を評価し、その評価結果を示す調整力提供評価データ9bを作成する。調整力提供評価データ9bは電源評価データ9の1種である。
ここで、調整力提供能力を示す指標である調整力評価値の算出例を説明する。まず、電源評価処理部8は、電源が提供可能な調整力の大きさを電源ごとに算出する。以下、電源が提供可能な調整力の大きさを調整力提供可能量と呼ぶ。調整力提供可能量は図6に図示されている。具体的には、調整力提供可能量は、調整力応動時間において対象電源が出力電力を変化させることが可能な電力の変化量を示す。なお、図6の例では、電源の出力帯として出力帯(1)から出力帯(3)が示されており、計画出力は出力帯(2)に含まれている。
調整力提供可能量は、上げ方向の調整力(上げ調整力とも呼ばれる)の提供可能量と、下げ方向の調整力(下げ調整力とも呼ばれる)の提供可能量とで表される。上げ調整力の提供可能量は、電源データ6で規定された上げ方向の出力変化速度(ここでは出力帯(2の出力変化速度UP(2))と、調整力データ7で規定された調整力応動時間との積で表される。下げ調整力の提供可能量は、電源データ6に規定された下げ方向の出力変化速度(ここでは出力帯(2)の出力変化速度DN(2))と、調整力データ7で規定された調整力応動時間との積で表される。ただし、下げ調整力を反映した後の出力電力が出力帯の下限値を下回るときには、出力電力が当該下限値に一致するように、下げ調整力の提供可能量が制限される。
対象電源が上げ調整力を提供する場合、対象電源が上げ調整力を提供する余力を保持しておくため、通常の供給力として提供可能な出力電力の上限が、少なくとも上げ調整力の提供可能量の分だけ小さくなる。一般に供給力が小さい場合にはその電源の発電効率は低下する。そこで、電源評価処理部8は発電効率低下の影響を考慮して、例えば、調整力の確保に必要なコストの増分を調整力評価値として算出する。コストの増分は例えば、次の式(6)で表される。
なお、式(6)において、Padj0は上げ調整力の提供可能量を表している。式(6)は、最大出力時の燃料コストと、調整力提供時に低下する発電効率から想定される燃料コストの増加の差分を取り、最大出力で除することで、調整力提供による発電効率低下から生じる燃料コスト増分をPadj_tankaとして求めている。例えば、Padj0=100の場合、式(3)および式(5)の例を用いると、Padj_tanka=|(4250-3920×(500/(500-100)))|/500=1.3となる。この燃料コスト増分が小さいほど、調整力提供能力は高いと言える。つまり、燃料コスト増分が小さいほど、調整力評価値は高い。
電源評価処理部8は、例えば、燃料コスト増分を調整力評価値として算出して、調整力提供評価データ9bを作成する。この調整力提供評価データ9bには、例えば、電源ごと、かつ、出力帯ごとに、燃料コスト増分の情報が含まれる。なお、既述のように、調整力データ7に複数種類の調整力が存在する場合には、各種類の調整力について各電源の調整力提供能力を評価してもよい。この場合、調整力提供評価データ9bには、電源ごと、かつ、出力帯ごと、かつ、調整力の種類ごとの調整力評価値(例えば燃料コスト増分)の情報が含まれる。あるいは、複数種類の調整力を纏めた調整力に対して、各電源の調整力提供能力を評価してもよい。この場合、この調整力提供評価データ9bには、電源ごと、かつ、出力帯ごとに、調整力評価値(例えば燃料コスト増分)の情報が含まれる。
電源運用計画においては、調整力評価値が高い電源に優先的に調整力を提供させることが望ましい。
図3を再び参照して、次にステップS4(電源運用計画策定処理)にて、計画策定処理部11は、需要データ5および電源評価データ9に基づいて電源運用計画データ10を作成する。
図7は、電源運用計画策定処理の一例を示すフローチャートである。まずステップS11にて、計画策定処理部11は運用計画策定回数c(以下、単に回数cと呼ぶ)を「0」に設定する。この回数cは、後述の計画候補の検討が無限に繰り返されることを回避するため、繰り返し回数を制限する目的で設けられる。回数cの代わりに計算時間を採用してもよい。なお、検討回数の上限を必ずしも設定する必要はない。以下では、回数cによる上限が設けられた例について述べる。
次にステップS12にて、計画策定処理部11は、回数cが上限未満であるか否かを判断する。回数cが上限未満であるときには、計画策定処理部11は以降のステップS13からステップS19を実行する。
ステップS13(起動停止計画候補検討処理)にて、計画策定処理部11は新たな起動停止計画の候補を検討する。起動停止計画とは、各電源の起動停止状態(起動および停止の別)を計画単位時間ごとに示す計画である。
例えば、計画策定処理部11は、計画における電源の起動停止状態を変更して、制約充足性および経済性を向上させる新たな起動停止計画の候補があるか否かを検討する。制約とは、例えば、各電源の最大出力、最小出力、最小運転時間、最小停止時間、起動カーブ、停止カーブおよび出力変化速度等の運転制約、ならびに、電源運用時に燃料を必要とする場合はその燃料調達および消費、タンク貯蔵に関わる制約(燃料制約)などの制約を含む。
新たな起動停止計画の候補の検討方法として、例えば、数理計画法の一つである動的計画法の利用が考えられる。この起動停止計画の候補の検討には、例えば、国際公開第2011/142296号に記載された技術を流用することができる。ただし、電力評価値の高い電源を優先的に起動させるように、起動停止計画の候補を作成するとよい。より具体的な一例として、電力評価値の小さい電源を優先的に停止状態としてもよい。つまり、電力評価値の小さい電源を停止状態として、各制約を充足できる場合には、当該電源を起動状態とした計画を検討しなくてもよい。
次にステップS14にて、計画策定処理部11は、ステップS13の検討の結果、新しい起動停止計画の候補が見つかったか否かを判断する。新しい起動停止計画の候補が見つかったときには、ステップS15(出力配分処理)にて、計画策定処理部11は各電源の出力配分を計算して、出力計画の候補データおよび調整力提供計画の候補データを作成する。出力計画とは、各電源の出力電力に関する計画であり、例えば、各電源が出力する出力電力を計画単位時間ごとに示した計画である。調整力提供計画とは、各電源の調整力に関する計画であり、例えば、各電源が提供する調整力を計画単位時間ごとに示した計画である。
例えば、計画策定処理部11は、事前に定める評価関数の最小化あるいは最大化を目的に計算を行う。具体的には計画策定処理部11は、例えば、燃料消費量から求まるコスト(燃料コスト)が最小となるように、運転する各電源の出力電力を決定する。評価関数は、燃料コストに限ったものではない。例えば、燃料以外に必要となる経費を加味した評価関数を採用してもよく、計算時に適用する運転制約および燃料制約等の違反に対するペナルティ等を加味した評価関数を採用してもよい。出力配分の計算方法として、例えば、数理計画法の一つである二次計画法の利用が考えられる。
なお、計画策定処理部11は、複数の電源によって供給される出力電力の総和が電力需要の予測値と一致し、かつ、複数の電源によって提供される調整力の総和が要求調整力以上となるように、出力計画および調整力提供計画の候補データを作成する。これらの条件は、例えば、上述の制約として採用される。
この出力計画および調整力提供計画の候補の検討にも、例えば、国際公開第2011/142296号に記載された技術を流用することができる。ただし、計画策定処理部11は、例えば、調整力評価値が高い電源が優先的に調整力を提供するように、出力計画および調整力提供計画の候補データを作成するとよい。より具体的な一例として、計画策定処理部11は、調整力評価値の小さい電源を調整力検討の対象外として数理計画法を行って、出力計画および調整力提供計画の候補データを作成してもよい。
次にステップS16にて、計画策定処理部11は、電源の起動費、燃料コストおよび制約違反に対するペナルティ等から計画全体としての全体評価値を求め、当該全体評価値が計画変更前の全体評価値よりも改善しているか否かを判断する。全体評価値が計画変更前の評価値より改善していた場合、ステップS17にて、計画策定処理部11は起動停止計画の候補データ、出力計画の候補データおよび調整力提供計画の候補データを反映し、各計画データを変更する。
全体評価値が改善しなかった場合、ステップS18にて、計画策定処理部11は各計画の候補データを破棄し、破棄した計画を記憶する。
次にステップS19にて、計画策定処理部11は回数cに「1」を加算し、再びステップS12の判断を行う。加算後の回数cが上限未満であれば、計画策定処理部11は、再度、起動停止計画の候補の検討(ステップS13)を実施する。その際、破棄した計画の候補は検討対象とならないように検討作業を行う。
ステップS12で回数cが上限に達した場合、あるいはステップS14で起動停止計画の候補が見つからなかった場合、計画策定処理部11は検討作業を終了し、ステップS20にて、全体評価値が最も高い計画を電源運用計画データ10として出力し、電源運用計画策定処理を終了する。
図3を再び参照して、次にステップS5(データ出力処理)にて、データ出力処理部12は、計画策定処理部11によって作成された電源運用計画データ10に基づいて、少なくとも、各電源の起動停止計画データ14、出力計画データ15、調整力提供計画データ16を含む結果データ13を出力する。
図8は、結果データ13の一例を示す図である。例えば、結果データ13は電源ごとに起動停止計画データ14、出力計画データ15および調整力提供計画データ16を含む。起動停止計画データ14においては、計画単位時間ごとの電源の起動停止状態が規定される。電源の状態として、起動状態および停止状態をそれぞれ「1」および「0」の2値で表してもよく、電源の状態をより詳細な状態に分類して表してもよい。出力計画データ15においては、各電源の出力電力の値が計画単位時間ごとに規定される。調整力提供計画データ16においては、各電源が提供する調整力の値が計画単位時間ごとに規定される。起動停止計画データ14、出力計画データ15および調整力提供計画データ16は例えばCSV形式の電子ファイルである。
データ出力処理部12が作成する結果データ13には、例えば、各電源の燃料消費量、燃料コストおよび起動費の情報が含まれていてもよい。また、結果データ13には、計画対象期間での各電源の起動回数、運転時間および利用率(例えば計画対象期間に対する運転時間の割合)などの情報が含まれていてもよい。
データ出力処理部12は出力装置28(例えばディスプレイ)を用いて、各計画をユーザに対して表示する。あるいは、データ出力処理部12は各計画を例えばCSV形式で保存された電子ファイルとして、ネットワーク26経由で外部記憶装置27に保存してもよい。
以上のように、本実施の形態1では、電力供給能力および調整力提供能力を事前に評価し、その評価結果を用いて電源運用計画を策定する。具体的には、電源の出力変化速度および出力調整幅の大きさ(つまり、調整力提供可能量)といった能力を事前に評価し、作成したこれらの評価データを用いる。これにより、要求された調整力を例えば低コストで供出することが可能な運用計画を策定することができる。
また、計画策定処理部11は、例えば評価値の高い電源を優先的に活用した電源運用計画データ10を作成することで、より効率的な電源運用計画データ10を作成することができる。
また、計画策定処理部11は、計画の検討中において、評価値の小さい電源を検討対象外とすることで、不要な計画の検討を回避することができる。これによれば、効率的に計画を策定することができ、より短い計算時間で計画を策定することができる。
また、本実施の形態では、電源運用計画策定装置1は、各電源に対する事前評価と、運用計画策定処理とを分けて行っており、上述のように、運用計画策定に許容する計算時間を短縮することができる。言い換えれば、運用計画策定処理の繰り返し回数(つまり回数c)が小さくても、評価関数をより改善した適切な解を導くことができる。
<実施の形態2>
実施の形態2では、どの電源に調整力を提供させるのかの具体的な決定方法の一例について述べる。図9は、実施の形態2に係る電源運用計画策定装置1Aの構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。電源運用計画策定装置1Aは電源運用計画策定装置1に比して、調整力検討処理部81をさらに含んでいる。
電源運用計画策定装置1Aを実現するために必要な装置は、例えば図2に示す構成と同様である。調整力検討処理部81も、例えば、データ処理部23によって実現される。
調整力検討処理部81は、電源評価処理部8によって作成された調整力提供評価データ9bに基づいて、調整力提供方針データ91を作成する。調整力提供方針データ91は、調整力を提供させる電源を示す情報を計画単位時間ごとに含む。
図10は、電源運用計画策定装置1Aの動作の一例を示すフローチャートである。実施の形態1と同様に、ステップS1にて、データ入力処理部3が設定データ2を読み込み、ステップS2にて、電源評価処理部8は電力供給評価データ9aを作成し、ステップS3にて、電源評価処理部8は調整力提供評価データ9bを作成する。
次にステップS31(調整力提供方針検討処理)にて、調整力検討処理部81は調整力提供評価データ9bに基づいて、調整力提供方針データ91を作成する。ここでは、例えば、上げ調整力を対象とする場合を説明する。
図11は、調整力提供方針検討処理の一例を示すフローチャートである。まずステップS41にて、調整力検討処理部81は、時間tを「0」に設定する。時間tは、計画対象期間を構成する計画単位時間ごとの時間帯を示す番号である。時間tは、計画対象期間の全ての時間帯において、後述のステップS43からステップS51で規定される調整力提供方針の検討を行うために設けられる。以下では、時間tで示される時間帯を時間帯[t]とも呼ぶ。
計画対象期間が計画単位時間ごとのtN個の時間帯で構成されているとすると、時間tは「0」から「tN」までの整数をとり得る。調整力検討処理部81は、後述の一連のステップS42からステップS51を行うたびに、ステップS52にて時間tに「1」を加算する。ステップS42では、調整力検討処理部81は、時間tが「tN」よりも大きくなっているか否かを判断し、時間tが「tN」以下であるときに、一連のステップS43からステップS51を行う。つまり、調整力検討処理部81は全ての時間帯で一連のステップS43からステップS51を行う。
ステップS43では、調整力検討処理部81は上げ調整力の調整力提供量Padj2[t]に「0」設定する。調整力提供量Padj2[t]は、時間帯[t]において、電源の調整力提供可能量Padj1[t]の積算値を示す。
次にステップS44にて、調整力検討処理部81は全電源を未選択の状態に戻す。これにより、全電源を調整力提供方針の検討対象とする。
次にステップS45にて、調整力検討処理部81は全電源のフラグFpadj[u][t]に「0」を設定する。uは、電源を識別する番号を示す。フラグFpadj[u][t]は、各電源が各時間帯において調整力を提供する否かを示すフラグであり、「0」は、電源[u]が時間帯[t]において調整力を提供しないことを示し、「1」は、電源[u]が時間帯[t]において調整力を提供することを示す。
つまり、調整力検討処理部81はステップS45において、時間帯[t]での全ての電源についてのフラグFpadj[u][t]を初期化する。以下では、調整力を提供する電源を調整力提供対象と呼び、調整力を提供しない電源を調整力提供非対象と呼ぶ。
次にステップS46にて、調整力検討処理部81は調整力提供評価データ9bに基づいて電源を並び替え、選択する順番を入れ替える。例えば、調整力検討処理部81は調整力評価値が高い順に電源を並び替える。具体的な一例として、調整力検討処理部81は、式(6)の燃料コスト増分Padj_tankaが小さい順に電源を並び替える。
次にステップS47において、調整力検討処理部81は未選択の電源があるか否かを判断する。未選択の電源がある場合には、ステップS48にて、調整力検討処理部81はソート順に応じて未選択の電源の一つを調整力提供対象として選択する。以上のように、未選択の電源のうち調整力評価値が高い順に電源が選択される。
次にステップS49にて、調整力検討処理部81は、選択された電源の調整力提供可能量Padj1[u][t]を調整力提供量Padj2[t]に加算して、調整力提供量Padj2[t]を更新する。調整力提供可能量Padj1[u][t]は図6の上げ調整力の「調整力提供可能量」である。調整力提供量Padj2[t]は、選択された電源の調整力提供可能量Padj1[t]の総和であると言える。
次にステップS50にて、調整力検討処理部81はフラグFpadj[u][t]に「1」を設定する。これにより、時間帯[t]において電源[u]が調整力を提供する電源として設定される。
次にステップS51にて、調整力検討処理部81は、調整力提供量Padj2[t]が必要量以上であるか否かを判断する。必要量とは、例えば、調整力データ7に規定された時間帯[t]における上げ調整力の要求調整力である。
調整力提供量Padj2[t]が必要量未満である場合には、その時間帯[t]において新たな電源を追加するために、再びステップS47を実行する。これにより、調整力提供量Padj2[t]が必要量以上となるか、あるいは、全電源が選択されるまで、ステップS48からステップS50が繰り返される。これにより、時間帯[t]において調整力を提供する電源が設定される。具体的には、フラグFpadj[u][t]が「1」に設定された電源が、その時間帯[t]における調整力提供対象として設定される。
調整力提供量Padj2[t]が必要量以上であるとき、または、全電源が選択されたときに、次の時間帯[t+1]での検討を行うために、ステップS52にて、調整力検討処理部81は、時間tに「1」を加算して時間tを更新し、再びステップS42を実行する。これにより、次の時間帯での調整力提供方針の検討が行われる。つまり、次の時間帯で調整力を提供する電源が設定される。
以上のように、各時間帯において、調整力提供量Padj2[t]が必要量以上となるか、あるいは、全電源が調整力提供対象として設定されるまで、調整力評価値の高い順に電源が調整力提供対象として順次に設定される。
そして、ステップS42において、時間tが「tN」よりも大きくなると、つまり、全ての時間帯[t]において調整力提供対象が設定されると、ステップS53にて、調整力検討処理部81はフラグFpadj[u][t]のデータを調整力提供方針データ91として出力し、調整力提供方針検討処理を終了する。ここまで、上げ調整力を対象に説明してきたが、下げ調整力を対象にしてもよく、上げ調整力および下げ調整力の両方を対象にしてもよい。
図10を再び参照し、ステップS4にて、計画策定処理部11は需要データ5、電力供給評価データ9aおよび調整力提供方針データ91に基づいて電源運用計画データ10を作成する。例えば、計画策定処理部11は、調整力提供方針データ91で示された各時間帯の調整力提供対象のみを用いて、調整力提供計画データ16を作成する。これによれば、例えば、数理計画法を用いた調整力提供計画データ16の作成において、各時間帯で検討する電源台数を少なくすることができ、より短時間で調整力提供計画データ16を作成することができる。
次にステップS5にて、実施の形態1と同様に、データ出力処理部12は結果データ13を出力する。
以上のように、本実施の形態2では、電源の出力変化速度および出力調整幅の大きさ(つまり、調整力提供可能量)といった能力を事前に評価し、さらに電源の調整力提供能力を評価した調整力提供評価データ9bを用いて調整力提供方針データ91を作成する。そして、計画策定処理部11はこの調整力提供方針データ91を用いて電源運用計画を策定する。よって、電源の調整力提供能力を考慮した電源運用が可能である。
具体的には、調整力検討処理部81は、調整力提供能力が高い電源を順に選択し(ステップS48)、その都度、選択された電源の調整力提供可能量Padj1[u][t]の総和(調整力提供量Padj2[t])が、時間帯[t]における必要量以上であるか否かを判断し(ステップS51)、調整力提供量Padj2[t]が必要量以上となるまでに選択された電源を時間帯[t]における調整力提供対象に設定して(ステップS49)、調整力提供方針データ91を作成する。
このように事前に各時間帯における調整力提供対象が決定されるので、続く運用計画策定処理をより短時間で行うことが可能であり、従来技術のような電源の集約および近似を用いることなく、電源台数が増大して問題規模が大きくなった場合でも、効率的に電源運用計画を策定可能である。
<実施の形態3>
図12は、実施の形態3に係る電源運用計画策定装置1Bの構成の一例を示す機能ブロック図である。電源運用計画策定装置1Bは電源運用計画策定装置1に比して、統合評価処理部82をさらに含んでいる。
電源運用計画策定装置1Bを実現するために必要な装置は、例えば図2に示す構成と同様である。統合評価処理部82は、例えば、データ処理部23によって実現される。
統合評価処理部82は電源評価データ9(電力供給評価データ9aおよび調整力提供評価データ9b)に基づいて、各電源の電力供給能力および調整力提供能力を総合的に評価する統合評価を行って、統合評価データ92を作成する。
計画策定処理部11は需要データ5および統合評価データ92に基づいて電源運用計画データ10を作成する。計画策定処理部11は、例えば、統合評価の高い電源を優先的に活用した電源運用計画データ10を作成する。
図13は、電源運用計画策定装置1Bの動作の一例を示すフローチャートである。実施の形態1と同様に、ステップS1にて、データ入力処理部3が設定データ2を読み込み、ステップS2にて、電源評価処理部8は電力供給評価データ9aを作成し、ステップS3にて、電源評価処理部8は調整力提供評価データ9bを作成する。
次にステップS61(統合評価処理)にて、統合評価処理部82は電力供給評価データ9aおよび調整力提供評価データ9bに基づいて、各電源の電力供給能力と調整力提供能力を合わせて評価し、統合評価データ92を作成する。
例えば、統合評価処理部82は各電源の電力評価値および調整力評価値に重みを付けて加算することで統合評価値を計算する。統合評価値は次の式で表される。
なお、式(7)において、αは電力評価値(例えば発電単価Ptanka)に対する重み付け係数を表し、βは調整力評価値(例えば燃料コスト増分Padj_tanka)に対する重み付け係数を表している。Ptotal_tankaは統合評価値を表している。発電単価Ptankaが小さいほど電力評価値は高く、燃料コスト増分Padj_tankaが小さいほど調整力評価値は高いので、式(7)のPtotal_tankaが小さいほど統合評価値は高い。統合評価データ92はこの統合評価値を電源ごとに含む。
次にステップS4にて、計画策定処理部11は需要データ5および統合評価データ92に基づいて電源運用計画データ10を作成する。例えば、計画策定処理部11は、図7に示されるステップS13(起動停止計画候補検討処理)において統合評価データ92を用いる。例えば、計画策定処理部11は、統合評価値の高い電源が優先的に活用されるように、起動停止計画の候補を検討する。これにより、電力の供給力および調整力の両方を確保しやすい電源を優先的に活用した起動停止計画の候補を検討することが可能となる。起動停止計画の検討方法として、例えば、実施の形態1と同様に、数理計画法の一つである動的計画法の利用が考えられ、統合評価値の小さい電源を当該数理計画法の検討対象外としてもよい。
あるいは、ステップS15(出力配分処理)において、計画策定処理部11は、調整力を提供する電源として、統合評価値の高い電源が優先的に活用されるように、調整力提供計画の候補を検討してもよい。例えば、統合評価値の小さい電源を数理計画法の検討対象外としてもよい。
これにより、計画策定処理部11は、統合評価値の高い電源を優先的に活用した電源運用計画データ10を作成することができる。
図13を再び参照して、次にステップS5にて、実施の形態1と同様に、データ出力処理部12は結果データ13を出力する。
以上のように、本実施の形態3では、実施の形態1に加えて、電源の電力供給能力と調整力提供能力を統合的に評価した統合評価データ92を用いる。したがって、電源運用計画策定時に、各電源の統合評価に基づいて電源運用計画を策定することができる。また、統合評価データ92の作成方法(評価方法)を変更することで、電力供給能力と調整力提供能力の優先度を変更し、異なる目的に沿った電源運用計画を作成できる。例えば、重み付け係数αおよび重み付け係数βを適宜に変更するとよい。
<実施の形態4>
図14は、実施の形態4に係る電源運用計画策定装置1Cの構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。電源運用計画策定装置1Cは電源運用計画策定装置1に比して、再評価判定処理部83をさらに含んでいる。
電源運用計画策定装置1Eを実現するために必要な装置は、例えば図2に示す構成と同様である。再評価判定処理部83は、例えば、データ処理部23によって実現される。
再評価判定処理部83は、計画策定処理部11が電源運用計画データ10を作成したときに、その電源運用計画データ10とは異なる電源運用計画データ10の作成が必要か否かを判断する。つまり、再評価判定処理部83は電源運用計画データ10の再作成(作成し直し)が必要か否かを判断する。例えば、再評価判定処理部83はユーザの入力に基づいて、当該作成の要否を判断してもよい。具体的には、ユーザは出力装置28に表示された結果データ13を視認し、その電源運用計画の適否を判断する。ユーザは電源運用計画が不適当であると判断すると、その旨を入力装置21に入力する。再評価判定処理部83は、当該入力に応答して、異なる電源運用計画データ10の作成が必要であると判断する。
あるいは、再評価判定処理部83は、電源運用計画データ10を評価する指標を算出し、当該指標が基準値を満たさないときに、異なる電源運用計画データ10の作成が必要であると判断してもよい。当該指標としては、例えば、電源が必要とする燃料消費量を採用してもよく、電源が消費した燃料により発生する二酸化炭素の量を採用してもよく、電源の起動停止回数を採用してもよい。
異なる電源運用計画データ10の作成が必要であると再評価判定処理部83が判断したときに、電源評価処理部8は、前回の評価方法とは異なる評価方法で各電源を再評価して電源評価データ9を再作成する。
例えば、電源評価処理部8が前回の評価において発電単価Ptankaを電力評価値として算出していた場合、再評価においては、最大出力と最小出力との差(つまり出力幅の最大値)を電力評価値として算出してもよい。この場合、再作成された電力供給評価データ9aには、電源ごとの出力幅の最大値が含まれる。
また、例えば、電源評価処理部8が前回の評価において燃料コスト増分Padj_tankaを調整力評価値として算出していた場合、再評価においては、調整力提供可能量を調整力評価値として算出してもよい。調整力提供可能量が高いほど、調整力提供能力は高いと言えるので、調整力評価値は高い。この場合、再作成された調整力提供評価データ9bには、電源ごとの調整力提供可能量が含まれる。
このように評価方法が前回と異なるので、各電源の評価値(電力評価値および調整力評価値の少なくともいずれか一方)は前回の評価値と相違する。これによれば、前回に評価値が高かった電源の評価値が今回の評価では小さくなり得る。逆に、前回に評価値が低かった電源の評価値が今回の評価では高くなり得る。
計画策定処理部11は、再作成された最新の電源評価データ9に基づいて電源運用計画データ10を再作成する。具体的には、計画策定処理部11は、最新の電源評価データ9において評価値が高い電源を優先的に活用するように、電源運用計画データ10を再作成する。
図15は、電源運用計画策定装置1Cの動作の一例を示すフローチャートである。実施の形態1と同様に、ステップS1にて、データ入力処理部3が設定データ2を読み込み、ステップS2にて、電源評価処理部8は電力供給評価データ9aを作成し、ステップS3にて、電源評価処理部8は調整力提供評価データ9bを作成し、ステップS4にて、計画策定処理部11は電源運用計画データ10を作成する。
次にステップS71(再評価要否判定処理)にて、再評価判定処理部83は、異なる電源運用計画データ10の作成の要否を判断する。つまり、再評価判定処理部83は電源運用計画データ10の再作成が必要であるか否かを判断する。
異なる電源運用計画データ10の作成が必要であると判断したときには、ステップS2にて、電源評価処理部8は、前回とは異なる評価方法で各電源の電力供給能力を再評価して、電力供給評価データ9aを再作成する。例えば、電源評価処理部8が前回の評価において発電単価Ptankaを電力評価値として算出していた場合、再評価においては、最大出力と最小出力との差を電力評価値として算出してもよい。
次にステップS3にて、電源評価処理部8は、前回とは異なる評価方法で各電源の調整力提供能力を再評価して、調整力提供評価データ9bを再作成する。例えば、電源評価処理部8が前回の評価において燃料コスト増分Padj_tankaを調整力評価値として算出していた場合、再評価においては、調整力提供可能量を調整力評価値として算出してもよい。調整力提供可能量が高いほど、調整力評価値は高い。
なお、評価方法は適宜に変更すればよく、例えば、上述の供給力や、燃料コスト、出力変化速度といった扱う情報の有無やその計算式を変更することにより、評価方法を適宜に変更することができる。
次にステップS4にて、計画策定処理部11は需要データ5、最新の電力供給評価データ9aおよび最新の調整力提供評価データ9bに基づいて電源運用計画データ10を再作成する。例えば、電源運用計画データ10の作成アルゴリズムは前回と同じアルゴリズムを採用する。しかるに、前回とは異なる電力供給評価データ9aおよび前回とは異なる調整力提供評価データ9bが用いられるので、計画策定処理部11は前回とは異なる電源運用計画データ10を作成することができる。
次にステップS71にて、再評価判定処理部83は、最新の電源運用計画データ10とは異なる電源運用計画データ10の作成の要否を判断する。作成が必要であると判断されると、再びステップS2からステップS4が行われる。この場合、電源評価処理部8は、ステップS2およびステップS3の各々において、以前に用いた評価方法のいずれとも異なる評価方法を用いる。つまり、ユーザが満足する電源運用計画データ10が作成されるまで、電源の再評価と、その評価結果を用いた電源運用計画の策定が行われる。
なお、ステップS2からステップS4の一連の動作の回数の上限を事前に定めておいてもよい。
ステップS71において、作成が不要と判断した場合、ステップS5にて、実施の形態1と同様に、データ出力処理部12が結果データ13を出力する。
以上のように、本実施の形態4では、実施の形態1に加えて、電源運用計画データ10の内容を変更させるための再評価要否判定処理を行う。よって、特定の評価方法で評価された評価結果のみを用いて電源運用計画を策定するのではなく、必要に応じて、異なる評価方法で評価された評価結果を用いて電源運用計画を策定することができる。したがって、より評価が高く且つユーザが満足する電源運用計画を作成することができる。
なお、電力供給能力の評価方法および調整力提供能力の評価方法の両方を前回と異ならせる必要はなく、いずれか一つを異ならせればよい。
<実施の形態5>
図16は、実施の形態5に係る電源運用計画策定装置1Dの構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。電源運用計画策定装置1Dは電源運用計画策定装置1Aに比して、再評価判定処理部83をさらに含んでいる。
電源運用計画策定装置1Dを実現するために必要な装置は、例えば図2に示す構成と同様である。再評価判定処理部83は、例えば、データ処理部23によって実現される。
再評価判定処理部83は、実施の形態4と同様に、異なる電源運用計画データ10の作成が必要か否かを判断する。
電源評価処理部8は、実施の形態4と同様に、異なる電源運用計画データ10の作成が必要であるときに、前回と異なる評価方法で各電源を再評価して電源評価データ9(電力供給評価データ9aおよび調整力提供評価データ9b)を再作成する。
調整力検討処理部81は最新の調整力提供評価データ9bに基づいて調整力提供方針データ91を再作成する。
計画策定処理部11は需要データ5および最新の調整力提供方針データ91に基づいて電源運用計画データ10を再作成する。
図17は、電源運用計画策定装置1Dの動作の一例を示すフローチャートである。実施の形態1と同様に、ステップS1にて、データ入力処理部3が設定データ2を読み込み、ステップS2にて、電源評価処理部8は電力供給評価データ9aを作成し、ステップS3にて、電源評価処理部8は調整力提供評価データ9bを作成する。
次に実施の形態2と同様に、ステップS31にて、調整力検討処理部81は調整力提供評価データ9bに基づいて調整力提供方針データ91を作成し、ステップS4にて、計画策定処理部11は需要データ5、電力供給評価データ9aおよび調整力提供方針データ91に基づいて、電源運用計画データ10を作成する。
次に実施の形態4と同様に、ステップS71にて、再評価判定処理部83は、異なる電源運用計画データ10の作成の要否を判断する。
異なる電源運用計画データ10の作成が必要であるときには、実施の形態4と同様に、ステップS2にて、電源評価処理部8は、前回とは異なる評価方法で各電源の電力供給能力を再評価して、電力供給評価データ9aを作成し、ステップS3にて、電源評価処理部8は、前回とは異なる評価方法で各電源の調整力提供能力を再評価して、調整力提供評価データ9bを再作成する。
次にステップS31にて、調整力検討処理部81は最新の調整力提供評価データ9bに基づいて調整力提供方針データ91を再作成する。調整力提供方針データ91の作成アルゴリズムとしては前回と同じアルゴリズムを採用してもよい。この場合でも、前回とは異なる調整力提供評価データ9bが用いられるので、調整力検討処理部81は、前回とは異なる調整力提供方針データ91を作成する。
次にステップS4にて、計画策定処理部11は需要データ5および最新の電力供給評価データ9aおよび最新の調整力提供方針データ91に基づいて電源運用計画データ10を再作成する。電源運用計画データ10の作成アルゴリズムとしては前回と同じアルゴリズムを採用する。しかるに、前回と異なる調整力提供方針データ91が用いられるので、計画策定処理部11は、前回と異なる電源運用計画データ10を作成する。
次に実施の形態4と同様に、ステップS71にて、再評価判定処理部83は、最新の電源運用計画データ10とは異なる電源運用計画データ10の作成の要否を判断する。作成が必要であると判断されると、実施の形態4と同様に、再びステップS2からステップS4が行われる。つまり、ユーザが満足する電源運用計画データ10が作成されるまで、電源の再評価と、その評価結果を用いた電源運用計画の策定が行われる。
ステップS71において、作成が不要と判断した場合、ステップS5にて、実施の形態1と同様に、データ出力処理部12が結果データ13を出力する。
以上のように、本実施の形態5では、実施の形態2に加えて、電源運用計画データ10の内容を変更させるための再評価要否判定処理を行う。よって、特定の評価方法で評価された評価結果のみを用いて電源運用計画を策定するのではなく、必要に応じて、異なる評価方法で評価された評価結果を用いて電源運用計画を策定することができる。したがって、より評価が高く且つユーザが満足する電源運用計画を作成することができる。
なお、電力供給能力の評価方法、調整力提供能力の評価方法および統合評価の評価方法の全てを前回と異ならせる必要はなく、いずれか一つを異ならせればよい。
<実施の形態6>
図18は、実施の形態6に係る電源運用計画策定装置1Eの構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。電源運用計画策定装置1Eは電源運用計画策定装置1Bに比して、再評価判定処理部83をさらに含んでいる。
電源運用計画策定装置1Eを実現するために必要な装置は、例えば図2に示す構成と同様である。再評価判定処理部83は、例えば、データ処理部23によって実現される。
再評価判定処理部83は、実施の形態4と同様に、異なる電源運用計画データ10の作成が必要か否かを判断する。
電源評価処理部8は、実施の形態4と同様に、異なる電源運用計画データ10の作成が必要であるときに、前回と異なる評価方法で各電源を再評価して電源評価データ9を再作成する。
また、統合評価処理部82は、異なる電源運用計画データ10の作成が必要であるときに、前回と異なる評価方法で電力評価値および調整力評価値を総合的に再評価して、統合評価データ92を再作成する。例えば、重み付け係数αおよび重み付け係数βの少なくともいずれか一方の値を前回から変化させてもよい。
計画策定処理部11は需要データ5および最新の統合評価データ92に基づいて電源運用計画データ10を再作成する。前回と異なる統合評価データ92を用いるので、計画策定処理部11は前回と異なる電源運用計画データ10を作成することができる。
図19は、電源運用計画策定装置1Eの動作の一例を示すフローチャートである。実施の形態1と同様に、ステップS1にて、データ入力処理部3が設定データ2を読み込み、ステップS2にて、電源評価処理部8は電力供給評価データ9aを作成し、ステップS3にて、電源評価処理部8は調整力提供評価データ9bを作成する。
次に実施の形態3と同様に、ステップS61にて、統合評価処理部82は電力供給評価データ9aおよび調整力提供評価データ9bに基づいて統合評価データ92を作成し、ステップS4にて、計画策定処理部11は需要データ5および統合評価データ92を用いて電源運用計画データ10を作成する。
次に実施の形態4と同様に、ステップS71にて、再評価判定処理部83は、異なる電源運用計画データ10の作成の要否を判断する。
異なる電源運用計画データ10の作成が必要であると判断したときには、実施の形態4と同様に、ステップS2にて、電源評価処理部8は、前回とは異なる評価方法で電力供給評価データ9aを再作成し、ステップS3にて、電源評価処理部8は、前回とは異なる評価方法で調整力提供評価データ9bを再作成する。
次にステップS61にて、統合評価処理部82は、前回とは異なる評価方法で、各電源の電力供給能力および調整力提供能力を総合的に再評価し、統合評価データ92を再作成する。例えば、統合評価処理部82は前回の重み付け係数αおよび重み付け係数βの値とは異なる値をそれぞれ有する重み付け係数αおよび重み付け係数βを用いる。
次にステップS4にて、計画策定処理部11は需要データ5および最新の統合評価データ92に基づいて電源運用計画データ10を再作成する。電源運用計画データ10の作成アルゴリズムとしては前回と同じアルゴリズムを採用する。しかるに、前回と異なる統合評価データ92が用いられるので、計画策定処理部11は、前回と異なる電源運用計画データ10を作成する。
次にステップS71にて、再評価判定処理部83は、実施の形態4と同様に、最新の電源運用計画データ10とは異なる電源運用計画データ10の作成の要否を判断する。作成が必要であると判断されると、再びステップS2からステップS4が行われる。つまり、ユーザが満足する電源運用計画データ10が作成されるまで、電源の再評価と、その評価結果を用いた電源運用計画の策定が行われる。
ステップS71において、作成が不要と判断した場合、ステップS5にて、実施の形態1と同様に、データ出力処理部12が結果データ13を出力する。
以上のように、本実施の形態6では、実施の形態3に加えて、電源運用計画データ10の内容を変更させるための再評価要否判定処理を行う。よって、特定の評価方法で評価された評価結果のみを用いて電源運用計画を策定するのではなく、必要に応じて、異なる評価方法で評価された評価結果を用いて電源運用計画を策定することができる。したがって、より評価が高く且つユーザが満足する電源運用計画を作成することができる。
なお、電力供給能力の評価方法、調整力提供能力の評価方法および統合評価の評価方法の全てを前回と異ならせる必要はなく、少なくともいずれか一つを異ならせればよい。
<実施の形態7>
図20は、実施の形態7に係る電源運用計画策定装置1Fの構成の一例を示す機能ブロック図である。電源運用計画策定装置1Fは電源運用計画策定装置1に比して、電源集約処理部84をさらに含んでいる。
電源運用計画策定装置1Fを実現するために必要な装置は、例えば図2に示す構成と同様である。電源集約処理部84は、例えば、データ処理部23によって実現される。
電源集約処理部84は、1以上の電源を1つの電源(以下、集約電源と呼ぶ)に仮想的に集約する。具体的には、電源集約処理部84は、特性が互いに類似する複数の電源を集約電源に仮想的に集約する。
計画策定処理部11は、電源に対する電源運用計画データ10の作成に先立って、まず集約電源に対する集約電源運用計画データを作成する。つまり、計画策定処理部11は複数の電源を一つの集約電源として把握し、その集約電源に対する集約電源運用計画を一旦策定する。そして、計画策定処理部11はこの集約電源運用計画に基づいて、電源に対する電源運用計画を策定する。
電源集約処理部84は、例えば、電源評価処理部8によって作成された電源評価データ9に基づいて、特性が互いに類似する複数の電源を特定し、当該複数の電源を1つの集約電源に仮想的に集約する。なお、特性が類似しない電源は単独で集約電源を構成する。電源集約処理部84はこの集約処理を全ての電源に対して行って、電源集約データ94を作成する。電源集約データ94は、少なくとも、集約電源と、当該集約電源を構成する電源との対応関係を示す情報を含む。
計画策定処理部11は需要データ5、電力供給評価データ9a、調整力提供評価データ9bおよび電源集約データ94に基づいて、集約電源に対する集約電源運用計画データを作成する。集約電源運用計画データの作成方法は、例えば、実施の形態1で説明した電源運用計画データ10と同様である。
計画策定処理部11は集約電源運用計画データに基づいて、各電源に対する電源運用計画データ10を作成する。例えば、計画策定処理部11は、同一の集約電源に含まれる複数の電源の起動停止計画データ14を、当該集約電源に対する起動停止計画データと同一にしてもよい。あるいは、計画策定処理部11は、計画の評価を改善するため、各電源に対して設定された最小運転時間などの運用条件を逸脱しない範囲で、各起動停止計画データ14において、電源起動時刻または電源停止時刻を時間的に前後にずらしても構わない。また、計画策定処理部11は、電源についての出力計画データ15および調整力提供計画データ16も、集約電源についての出力計画データおよび調整力提供計画データに基づいて作成する。例えば、計画策定処理部11は、集約電源の計画データにおける出力電力および調整力を供給でき、かつ、所定の評価関数が最大化または最小化するように、当該集約電源に属する複数の電源の出力計画データ15および調整力提供計画データ16を計算する。
図21は、電源運用計画策定装置1Fの動作の一例を示すフローチャートである。実施の形態1と同様に、ステップS1にて、データ入力処理部3が設定データ2を読み込み、ステップS2にて、電源評価処理部8は電力供給評価データ9aを作成し、ステップS3にて、電源評価処理部8は調整力提供評価データ9bを作成する。
次にステップS81(電源集約処理)にて、電源集約処理部84は電力供給評価データ9aおよび調整力提供評価データ9bに基づいて、電源集約データ94を作成する。具体的には、電源集約処理部84は電力供給評価データ9aおよび調整力提供評価データ9bを用いて、定められた基準に従って1つ以上の電源を仮想的に集約する。集約に用いる基準は、例えば、調整力提供能力が類似していることである。例えば、電源集約処理部84は、調整力提供評価データ9bに含まれる各電源の調整力評価値の差が所定の差基準値以下である電源群を、1つの集約電源に仮想的に集約してもよい。あるいは、電源集約処理部84は、電源データ6に含まれる各電源の出力変化速度の差が所定の差基準値よりも小さい電源群を1つの集約電源に仮想的に集約してもよい。
なお、電源集約処理部84は、例えば予め決められた台数の電源を1台の集約電源に集約してもよく、あるいは全体で指定の台数になるように電源を集約してもよい。具体的には出力変化速度の値が近い2台の電源を1台に集約してもよく、あるいは全体で10台になるように変化速度の大きい電源から順に集約してもよい。
次にステップS4(電源運用計画策定処理)にて、計画策定処理部11は需要データ5、電力供給評価データ9a、調整力提供評価データ9bおよび電源集約データ94に基づいて電源運用計画データ10を作成する。
図22は、実施の形態7に係る電源運用計画策定処理の一例を示すフローチャートである。実施の形態7に係る電源運用計画策定処理では、まず、集約電源についての集約電源運用計画を策定し(ステップS11~S19)、その後、ステップS91にて、集約電源運用計画から各電源の電源運用計画を策定する。以下、具体的に説明する。
まず、実施の形態1と同様に、計画策定処理部11は、ステップS11にて回数cを「0」に設定し、ステップS12にて回数cが上限未満であるか否かを判断する。回数cが上限未満であるときには、ステップS13からステップS19にて、計画策定処理部11は、電力供給評価データ9aおよび調整力提供評価データ9bに加え、電源集約データ94に基づいて、集約電源に対する集約電源運用計画の候補を作成する。つまり、計画策定処理部11は、ステップS12からS19による繰り返しによる計画の候補の検討を、実施の形態1における電源の代わりに集約電源を用いて実施する。
ステップS12またはステップS14において否定的な判断がなされると、ステップS91にて、計画策定処理部11は、集約電源に対する集約電源運用計画データを個別展開して、各電源に対する電源運用計画データ10を作成する。例えば計画策定処理部11は、集約電源についての起動停止計画データに基づいて、電源についての起動停止計画データ14を作成する。例えば、計画策定処理部11は同一の電源集約に含まれる電源の起動停止計画データ14として、当該集約電源の起動停止計画データをそのまま採用してもよい。あるいは、計画策定処理部11は、計画の評価を改善するため、各電源に設定された最小運転時間などの運用条件を逸脱しない範囲で、起動停止データにおける電源起動時刻および停止時刻の少なくともいずれか一方を時間的に前後に調整して、各電源の起動停止計画データ14を作成してもよい。
また、計画策定処理部11は集約電源の出力計画データおよび調整力提供計画データに基づいて、各電源の出力計画データ15および調整力提供計画データ16を作成する。例えば、計画策定処理部11は、ある集約電源の出力電力および調整力を供給でき、かつ、所定の評価関数が最大化または最小化するように、当該集約電源に属する複数の電源の出力計画データ15および調整力提供計画データ16を計算してもよい。
次にステップS20にて、計画策定処理部11は電源運用計画データ10を出力し、電源運用計画策定処理を終了する。
図21を再び参照して、実施の形態1と同様に、ステップS5にて、データ出力処理部12は結果データ13を出力する。
以上のように、本実施の形態7では、実施の形態1に加えて、調整力提供に関わる電源データ6、電力供給評価データ9aおよび調整力提供評価データ9bを指標に電源を仮想的に集約する。そして、集約電源に対する集約電源運用計画を策定し、この集約電源運用計画に基づいて電源に対する電源運用計画を策定する。したがって、電源台数が増大した場合にも効率的に電源運用計画を策定することができ、計算時間の増大を抑えることができる。
<変形例>
上述の例では、計画策定処理部11は、電源が調整力を提供するものとして調整力提供計画データ16を作成している。しかしながら、調整力の提供元として、デマンドレスポンス等の需要調整部も採用してもよい。この場合には、調整力データ7には、需要調整部の調整力に関する情報も含まれる。電源評価処理部8は電源および需要調整部の調整力提供能力を評価して、調整力提供評価データ9bを生成し、計画策定処理部11は需要データ5、電力供給評価データ9aおよび調整力提供評価データ9bに基づいて電源運用計画データ10を生成してもよい。これによれば、例えば、調整力提供計画データ16において、調整提供能力の高い電源および需要調整部を優先的に活用することができる。
なお、各実施の形態および各変形例を自由に組み合わせたり、各実施の形態および各変形例を適宜、変形、省略したりすることが可能である。