JP7373684B1 - めっき装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】基板上に膜厚平坦性の高いめっきを形成するための適切な制御パラメータを決定する。【解決手段】めっき装置は、基板の外縁部を流れる電流密度を推定する推定部と、前記推定された電流密度と、前記めっき装置の動作態様を指定する制御パラメータとに基づいて、めっき液から前記基板に流れ込むめっき電流密度を算出する電流密度算出部であって、前記電流密度算出部は、前記めっき装置の異なる複数の動作態様のそれぞれについて前記めっき電流密度を算出する、電流密度算出部と、前記算出されためっき電流密度の各々に基づいて、前記複数の動作態様のそれぞれについて、前記基板上に形成されるめっきの膜厚を算出する膜厚算出部と、前記算出された前記めっき装置の動作態様ごとのめっき膜厚に基づいて、最適な動作態様に対応する制御パラメータを決定する制御パラメータ決定部と、を備える。【選択図】図8

Description

本発明は、めっき装置に関する。
めっき装置は、基板を保持する基板ホルダと、めっき液が収容されるめっき槽と、基板ホルダに保持された基板と対向するようにめっき槽内に配置されたアノードとを備える。めっき装置において、基板上に形成されるめっきの膜厚平坦性を向上させるための技術開発が行われている(例えば特許文献1参照)。
特許第7133699号公報
めっき装置には、基板上に形成されるめっきの膜厚分布に影響する様々な制御パラメータが存在する。めっき装置を用いてめっき処理を実施するにあたり、基板上に膜厚平坦性の高いめっきを形成するための適切な制御パラメータを決定することが望まれる。
[形態1]形態1によれば、基板をめっきするためのめっき装置であって、めっき液を収容するためのめっき槽と、前記基板を保持するための基板ホルダと、前記基板ホルダに保持された前記基板と対向するように前記めっき槽内に配置されたアノードと、前記基板ホルダに保持された前記基板の近傍に配置され、前記めっき液の電位を測定するように構成された電位センサと、前記電位センサによる前記めっき液の電位の測定値に基づいて、前記基板の外縁部を流れる電流密度を推定するように構成された推定部と、前記推定された電流密度と、前記めっき装置の動作態様を指定する制御パラメータとに基づいて、前記めっき液から前記基板に流れ込むめっき電流密度を算出するように構成された電流密度算出部であって、前記電流密度算出部は、前記めっき装置の異なる複数の動作態様のそれぞれについて前記めっき電流密度を算出する、電流密度算出部と、前記電流密度算出部によって算出された前記めっき電流密度の各々に基づいて、前記複数の動作態様のそれぞれについて、前記基板上に形成されるめっきの膜厚を算出するように構成された膜厚算出部と、前記膜厚算出部によって算出された前記めっき装置の動作態様ごとのめっき膜厚に基づいて、最適な動作態様に対応する制御パラメータを決定するように構成された制御パラメータ決定部と、を備え、前記制御パラメータ決定部によって決定された制御パラメータを用いて前記基板に対してめっき処理を実施する、めっき装置が提供される。
[形態2]形態2によれば、形態1のめっき装置において、前記めっき装置の前記動作態様は、複数種類の制御パラメータの組み合わせによって指定され、前記電流密度算出部は、前記複数種類の制御パラメータの組ごとに前記めっき電流密度を算出するように構成され、前記制御パラメータ決定部は、前記膜厚算出部によって算出された前記めっき装置の動作態様ごとのめっき膜厚に基づいて、最適な動作態様に対応する制御パラメータの組を決定するように構成される。
[形態3]形態3によれば、形態2のめっき装置において、前記制御パラメータは、i)前記基板の回転、ii)前記基板の部分的遮蔽、iii)前記めっき液の撹拌、iv)前記基板と前記アノード間に流す電流設定値、のうちの1または複数に関するパラメータ
である。
[形態4]形態4によれば、形態1のめっき装置において、前記制御パラメータ決定部は、算出されためっき膜厚の平坦性を基準として前記制御パラメータの決定を行うように構成される。
[形態5]形態5によれば、形態1から4のいずれか1のめっき装置において、前記推定部は、状態方程式および観測方程式を用いて前記電流密度を推定するように構成された状態空間モデルとして実装され、前記状態方程式は、前記基板の外縁部を流れる前記電流密度に関する時間発展を記述する方程式であり、前記観測方程式は、前記基板の外縁部を流れる前記電流密度と前記電位センサの位置における前記めっき液の電位との関係を記述する方程式である。
[形態6]形態6によれば、形態5のめっき装置において、前記めっき槽、前記基板ホルダ、前記アノード、および前記電位センサを少なくとも含むめっきモジュールを備え、
前記電流密度と前記めっき液の電位との前記関係は、前記めっきモジュールの3Dモデルを表す関数に基づく。
[形態7]形態7によれば、形態5のめっき装置において、前記状態空間モデルは、前記電位センサの前記測定値に基づいて、前記基板の外縁部を流れる前記電流密度の推定結果を補正するように構成されたカルマンフィルタをさらに備える。
[形態8]形態8によれば、形態1のめっき装置において、前記基板の前記外縁部は、前記基板の前記基板ホルダによって把持される部分である。
[形態9]形態9によれば、形態8のめっき装置において、前記電流密度算出部により算出される前記めっき電流密度は、前記基板の前記外縁部よりも内側の領域における電流密度である。
本実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。 本実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。 一実施形態におけるめっきモジュールの構成を概略的に示す縦断面図である。 めっきモジュールの導管周辺を拡大して示す模式図である。 遮蔽体と基板とを下方から見た模式図である。 一実施形態による制御モジュールの機能的構成を示すブロック図である。 基板の平面図である。 別の実施形態による制御モジュールの機能的構成を示すブロック図である。 別の実施形態によるめっきモジュールの構成を概略的に示す縦断面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。図1、2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュ
ール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、および、制御モジュール800を備える。
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収納された基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数および配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、および搬送装置700の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110および搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、図示していない仮置き台を介して基板の受け渡しを行うことができる。
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数および配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数および配置は任意である。
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸などの処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数および配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数および配置は任意である。
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数および配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤが上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤの数および配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収納された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板を搬送装置700へ受け渡す。
搬送装置700は、搬送ロボット110から受け取った基板をプリウェットモジュール200へ搬送する。プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送装置700は、乾燥処理が施された基板を搬送ロボット110へ受け渡す。搬送ロボット110は、搬送装置700から受け取った基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収納したカセットが搬出される。
なお、図1や図2で説明しためっき装置1000の構成は、一例に過ぎず、めっき装置1000の構成は、図1や図2の構成に限定されるものではない。
次に、めっきモジュール400の構成を説明する。本実施形態における24台のめっきモジュール400は同一の構成であるので、1台のめっきモジュール400のみを説明する。図3は、一実施形態によるめっきモジュール400の構成を概略的に示す縦断面図である。めっきモジュール400は、めっき液を収容するためのめっき槽を備える。めっき槽は、上面が開口した円筒形の内槽412と、内槽412の上縁からオーバーフローしためっき液を溜められるように内槽412の周囲に設けられた図示しない外槽と、を含んで構成される。
めっきモジュール400は、被めっき面Wf-aを下方に向けた状態で基板Wfを保持するための基板ホルダ440を備える。基板ホルダ440は、図示していない電源から基板Wfに給電するための給電接点を備える。めっきモジュール400はさらに、基板ホルダ440を昇降させるための昇降機構442を備える。また、一実施形態では、めっきモジュール400は、基板ホルダ440を鉛直軸まわりに回転させる回転機構448を備える。基板ホルダ440は、回転機構448により、正方向(例えば時計回り)および逆方向(例えば反時計回り)に回転させることができ、また回転速度を変更することも可能である。基板ホルダ440のこのような回転は、制御モジュール800によって制御される。なお、昇降機構442および回転機構448は、例えばモータなどの公知の機構によって実現することができる
めっきモジュール400は、内槽412の内部を上下方向に隔てるメンブレン420を備える。内槽412の内部はメンブレン420によってカソード領域422とアノード領域424に仕切られる。カソード領域422とアノード領域424にはそれぞれめっき液が充填される。なお、本実施形態ではメンブレン420が設けられる一例を示したが、メンブレン420は設けられなくてもよい。
アノード領域424の内槽412の底面にはアノード430が設けられる。また、アノード領域424には、アノード430と基板Wfとの間の電界を調整するためのアノードマスク426が配置される。アノードマスク426は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノード430の前面(図3においてアノード430の上方)に設けられる。アノードマスク426は、アノード430と基板Wfとの間に流れる電流が通過する開口を有する。アノードマスク426は、開口寸法を変更可能に構成され、制御モジュー
ル800によって開口寸法が調整されてもよい。開口寸法は、開口が円形である場合には直径を意味し、開口が多角形である場合には一辺の長さまたは最長となる開口幅を意味する。アノードマスク426における開口寸法の変更は、公知の機構を採用することができる。本実施形態ではアノードマスク426が設けられる一例を示したが、アノードマスク426は設けられなくてもよい。さらに、上記したメンブレン420は、アノードマスク426の開口に設けられてもよい。
カソード領域422には、メンブレン420に対向するように抵抗体450が配置される。抵抗体450は、基板Wfの被めっき面Wf-aにおけるめっき処理の均一化を図るための部材である。一実施形態では、抵抗体450は、駆動機構452により、めっき槽内で上下方向に移動可能に構成され、制御モジュール800によって抵抗体450の位置が調整される。ただし、めっきモジュール400は、抵抗体450を有しなくてもよい。抵抗体450の具体的な材質は特に限定されるものではないが、一例として、ポリエーテルエーテルケトン等の多孔質の樹脂を用いることができる。
カソード領域422の基板Wfの表面近傍には、めっき液を撹拌するためのパドル456が設けられている。パドル456は例えばチタン(Ti)または樹脂から構成されている。パドル456は、基板Wfの表面と平行に往復運動することで、基板Wfのめっき中に十分な金属イオンが基板Wfの表面に均一に供給されるようにめっき液を攪拌する。パドル456は、基板Wfの表面に垂直に移動するように構成されてもよい。パドル456の動きは、図示しない駆動機構により制御モジュール800によって制御される。なお、めっきモジュール400は、パドル456を有しなくてもよい。
また、カソード領域422には、導管462が設けられている。導管462は、中空管であり、一例として、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)といった樹脂で形成することができる。なお、カソード領域422に抵抗体450が備えられている場合、導管462は、基板Wfと抵抗体450との間に設けられるとよい。また、パドル456が備えられている場合、導管462は、パドル456と干渉しないように配置されるとよく、一例として、パドル456と同じ高さであってパドル456の外周側(図3において左右方向の外側)に配置されることが好ましい。
図4は、めっきモジュール400の導管462周辺を拡大して示す模式図である。図3及び図4に示すように、導管462は、基板Wfとアノード430との間の領域に配置された開口端464を有する。つまり、開口端464は、基板Wfの板面に垂直な方向において基板Wfとアノード430との間に位置し、基板Wfの板面に垂直な方向から見たときに基板Wfと重なる位置に配置される。開口端464は、被めっき面Wf-aに近づけて配置されることが好ましく、被めっき面Wf-aに面するように構成されることが好ましい。一例として、開口端464と被めっき面Wf-aとの距離は、数百マイクロメートルから数十ミリメートルの範囲であってよい。なお、開口端464は、基板Wfとアノード430とを結ぶ方向に垂直な方向(図3及び図4において左右方向)に開口してもよいし、基板Wfの被めっき面Wf-aに向いて傾斜して開口してもよい。また、導管462は、基板Wfとアノード430との間の領域から離れた領域まで延在する。したがって、導管462は、基板Wfとアノード430との間の領域に配置される第1部分462aと、基板Wfとアノード430との間の領域から離れた領域に配置される第2部分462bとを有する。導管462は、基板Wfとアノード430とを結ぶ方向(図3及び4における上下方向)に対して垂直な方向(図3及び図4における左右方向)に延在することが好ましい。一実施形態では、導管462は、めっき槽の外まで延在する。ただし、この例に限定されず、導管462は、任意の方向に延在してもよい。
導管462の内部は、カソード領域422と同様にめっき液で満たされる。導管462
には、導管462内をめっき液で満たすための充填機構468が設けられてもよい。充填機構468としては、公知の種々の機構を採用することができ、一例として、空気抜き弁、またはめっき液を供給するための機構などを採用することができる。充填機構468は、一例として、導管462の第2部分462bに設けられる。
なお、図3及び図4では、見易さのため、1つの導管462が示されているが、めっき槽には複数の導管462が設けられてもよい。複数の導管462を設ける場合、それぞれの導管462の開口端464が基板Wfの中心から異なる距離に配置されるものとしてもよい。また、複数の導管462を設ける場合、それぞれの導管462の開口端464は、基板Wfの被めっき面Wf-aからの距離が等しい位置に配置されることが好ましい。
導管462の第2部分462bには、電位センサ470が設けられる。なお電位センサ470は、図3及び図4ではめっき槽の外部に配置されているが、めっき槽内部に配置されてもよい。電位センサ470は、導管462内に満たされためっき液の電位を検出する。ここで、導管462内のめっき液は開口端464のめっき液と概ね同一の電位を有し、そのため、電位センサ470による検出電位は、開口端464におけるめっき液の電位と概ね等しい。よって、開口端464近傍は、電位センサ470による疑似的な電位検出位置とみなすことができる。したがって、導管462の第2部分462bに設けられた電位センサ470を用いて、被めっき面Wf-a近くの電位を測定することができる。電位センサ470による検出信号は、制御モジュール800に入力される。
一実施形態において、めっき槽内の比較的電位変化が小さい場所に、参照用の電位センサ(図示せず)が設けられてもよく、参照用の電位センサによる検出電位と、電位センサ470による検出電位との差が取得されることが好ましい。電位センサ470によって測定される電位の変化は非常に小さいものなので、ノイズの影響を受けやすい。ノイズを低減させるために、めっき液中に独立した電極を設置し、それを直接グラウンドに接続することが好ましい。
制御モジュール800は、電位センサ470による電位の検出値に基づいて、基板Wfに形成されためっきの膜厚を推定することができる。一例として、制御モジュール800は、電位センサ470からの検出信号に基づいて、めっき処理中の基板面内におけるめっき電流の分布を推定し、推定しためっき電流の分布に基づいて、基板上のめっき膜の膜厚分布を推定することができる。
また、制御モジュール800は、電位センサ470の検出値に基づいて、めっき処理の終点検出をしてもよいし、めっき処理の終点までの時間を予測してもよい。一例として、制御モジュール800は、電位センサ470の検出値に基づいて推定しためっき膜の膜厚が所望の厚さとなったときに、めっき処理を終了してもよい。また、一例として、制御モジュール800は、電位センサ470の検出値に基づいて推定しためっき膜の膜厚から膜厚増加速度を算出し、得られた膜厚増加速度に基づいて、めっき膜が所望の厚さとなるまでの時間、つまりめっき処理の終点までの時間を予測してもよい。
図3に戻り、一実施形態では、カソード領域422には、アノード430から基板Wfに流れる電流を部分的または局所的に遮蔽するための遮蔽体480が設けられる。遮蔽体480は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材である。図5は、本実施形態の遮蔽体480と基板Wfとを下方から見た模式図である。なお、図5では、基板Wfを保持する基板ホルダ440の図示を省略している。遮蔽体480は、基板Wfの被めっき面Wf-aとアノード430との間に介在する遮蔽位置(図3および図5中、破線で示す位置)と、被めっき面Wf-aとアノード430との間から退避した退避位置(図3および図5中、実線で示す位置)とに移動可能に構成される。言い換えると、遮蔽体480は、被めっ
き面Wf-aの下方である遮蔽位置と、被めっき面Wf-aの下方から離れた退避位置とに移動可能に構成される。遮蔽体480の位置は、図示しない駆動機構により制御モジュール800によって制御される。遮蔽体480の移動は、モータまたはソレノイドなどの公知の機構により実現できる。図3および図5に示す例では、遮蔽体480は、遮蔽位置において、基板Wfの被めっき面Wf-aの外周領域の周方向の一部を遮蔽する。また、図5に示す例では、遮蔽体480は、基板Wfの中央方向に向かって細くなるテーパ状に形成されている。しかしながら、こうした例に限定されず、遮蔽体480は、実験などにより予め定められた任意の形状のものを使用することができる。
めっきモジュール400におけるめっき処理について説明する。昇降機構442を用いて基板Wfをカソード領域422のめっき液に浸漬させることにより、基板Wfがめっき液に暴露される。めっきモジュール400は、この状態でアノード430と基板Wfとの間に電圧を印加することによって、基板Wfの被めっき面Wf-aにめっき処理を施すことができる。また、一実施形態では、回転機構448を用いて基板ホルダ440を回転させながらめっき処理が行われる。めっき処理により、基板Wfの被めっき面Wf-aに導電膜(めっき膜)が析出する。めっき処理中に、導管462に設けられた電位センサ470による電位の測定が行われる。基板ホルダ440(基板Wf)の回転を伴って電位センサ470による測定を行うことにより、電位センサ470の測定位置を変更可能であり、基板Wfの周方向における複数地点について、または周方向全体にわたって、電位を測定することができる。そして、制御モジュール800は、電位センサ470による電位の検出値に基づいて、めっき膜の膜厚を推定する。これにより、めっき処理において基板Wfの被めっき面Wf-aに形成されるめっき膜の膜厚変化を、リアルタイムに把握することができる。
図6は、めっき装置1000における、一実施形態による制御モジュール800の機能的構成を示すブロック図である。制御モジュール800は、状態空間モデル804を利用して、めっき処理中に基板Wfを流れる電流密度の分布を推定するように構成される。状態空間モデル804は、状態推定部806と、観測値算出部808と、カルマンフィルタ810とを含む。制御モジュール800は、状態空間モデル804に加えて、3Dモデル作成部802、電流密度算出部812、膜厚算出部814、および終点判定部816を備える。制御モジュール800は、入出力装置、演算装置、記憶装置などを備えるコンピュータとして構成することができる。例えば、制御モジュール800は、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムを演算装置(例えばプロセッサ)が読み出して実行することにより、各部802、806、808、810、812、814、816の機能を実現するように構成される。
3Dモデル作成部802は、めっきモジュール400の三次元(3D)モデルを作成する。めっきモジュール400の3Dモデルは、めっきモジュール400における種々の構成要素の形状、配置、物性値等をモデル化して記述したデータである。この3Dモデルには、少なくとも、めっきモジュール400のめっき槽(内槽412)の内部の電界に影響を与える構成要素が組み込まれる。そのような構成要素は、例えば、アノード430、アノードマスク426、メンブレン420、抵抗体450、基板Wf、基板Wf上に設けられたシード層、めっき槽に収容されためっき液、導管462、および電位センサ470を含む。めっきモジュール400の3Dモデルは、これらの各構成要素についての形状、配置、および物性値(例えば伝導率、誘電率等)の情報によって構成することができる。一例として、これらの情報は、めっき装置1000のオペレータによって、制御モジュール800の入出力インターフェースを介して制御モジュール800に入力されてよく、3Dモデル作成部802は、入力された情報に基づいて、めっきモジュール400の3Dモデルを作成するのであってよい。上記情報の一部、例えばいくつかの物性値は、制御モジュール800の記憶装置にあらかじめ記憶されていてもよく、オペレータがその中から適切
な値を選択するのであってもよい。
状態推定部806は、状態方程式を用いて、めっきモジュール400の「状態」を推定するように構成される。具体的に、状態推定部806は、めっきモジュール400の「状態」として、基板Wfの外縁部におけるめっき電流の電流密度を推定する。
図7は、基板Wfの平面図を示す。基板Wfの外縁部62は、基板ホルダ440によって基板Wfが把持される部分であり、めっき液には暴露されない部分である。図7に示されるように、基板Wfは、外縁部62に1または複数の電気接点441を有する。図7の例では、基板Wfは外縁部62に等間隔で6個の電気接点441を有している。電気接点441は、基板ホルダ440に内蔵された電気配線(不図示)を介して電源(不図示)の負端子に接続されており、電気接点441を通じて、基板Wfにめっき電流が流れる。
以下において、基板Wfの外縁部62におけるめっき電流の電流密度を「外縁部電流密度」と称し、時刻tにおける外縁部電流密度をj(θ)と記述する。但し、θは基板Wfの中心周りの角度(図7参照)で測った基板Wfの外縁部62内の位置を示す。ここで、外縁部電流密度j(θ)を次のようにフーリエ級数で表現する。
外縁部電流密度j(θ)の推定は、フーリエ係数ai,tおよびbi,tの推定に帰着する。一実施形態において、状態推定部806は、次式の状態方程式を用いて、時刻t-1における外縁部電流密度jt-1(θ)から時刻tにおける外縁部電流密度j(θ)を推定(予測)する。
但し、行列Fiは次式で与えられ、回転機構448を用いた基板Wfの回転を表す。またベクトルvはノイズである。このモデルでは、時刻tにおける外縁部電流密度が、時刻t-1における外縁部電流密度を基板Wfの回転に伴って回転させたものによって与えられるということを仮定している。なお、次式において、ωは基板Wfの回転の角速度、Δtは時間ステップ(すなわち時刻tと時刻t-1の時間差)である。
なお、外縁部電流密度を推定するために、上式とは異なる状態方程式が用いられてもよ
い。
観測値算出部808は、観測方程式を用いて、めっきモジュール400の「状態」から「観測値」を推定するように構成される。具体的に、観測値算出部808は、めっきモジュール400における「観測値」として、電位センサ470によって測定されると期待されるめっき槽中のめっき液の電位の値を外縁部電流密度j(θ)から推定(算出)する。以下において、この観測値算出部808により算出される値を「電位推定値」と称し、時刻tにおける電位推定値をφと記述する。
前述したように、電位センサ470によって測定される電位は、めっき処理を施されている基板Wfの被めっき面Wf-a近傍における電位である。この電位は、めっき槽中のめっき液から基板Wfに流れるめっき電流の分布によって決まる。そして、このめっき電流の分布は、めっきモジュール400の物理的な構造に依存している。したがって、電位推定値φは、3Dモデル作成部802において作成されためっきモジュール400の3Dモデルを利用して計算することが可能である。つまり、電位推定値φは次式のように表現することができる。
ここで、Fはめっきモジュール400の3Dモデルを表す関数であり、ai,t、bi,t等は上述した外縁部電流密度j(θ)のフーリエ係数である。なお、関数Fは、3Dモデル作成部802から取得される3Dモデルに基づいて数値的に決定することができる。上式の関数Fを、さらに次のように、ai,t=0およびbi,t=0の周りでテイラー展開する。なお、次式は1次の項までの近似式であるが、2次以上の項を考慮してもよい。
一実施形態において、観測値算出部808は、次式の観測方程式を用いて、時刻tにおける外縁部電流密度j(θ)から時刻tにおける電位推定値φを算出する。但しwはノイズである。
この観測方程式は、上で示した、めっきモジュール400の3Dモデルを表す関数Fのテイラー展開の式に基づいている。なお、電位推定値φを得るために、これとは異なる観測方程式が用いられてもよい。
カルマンフィルタ810は、状態推定部806によって推定されためっきモジュール400の「状態」を、めっきモジュール400における実際の測定結果を用いて補正するように構成される。具体的に、カルマンフィルタ810は、電位センサ470から得られる実際の電位の測定値を補正に用いる。一実施形態において、カルマンフィルタ810は、電位センサ470から得られた電位の測定値と、観測値算出部808によって算出された電位推定値φとの差分に応じて、状態推定部806によって推定された外縁部電流密度j(θ)(すなわちフーリエ係数ai,tおよびbi,t)を補正する。
なお、前述したように基板Wfは回転機構448によって回転するので、電位センサ470からは、基板Wfの周方向に沿った多数の測定点における電位の測定値が得られることになる。したがって、これら複数の測定点における測定値によって補正がなされることで、正確な外縁部電流密度を求めることができる。
このようにして状態空間モデル804を用いて推定および補正された外縁部電流密度j(θ)は、電流密度算出部812へ出力される。電流密度算出部812は、状態空間モデル804から得られた外縁部電流密度に基づいて、基板Wfの外縁部62よりも内側の領域64(図7参照)におけるめっき電流の電流密度を算出する。領域64は、基板Wfの外縁部62と異なり、基板ホルダ440によって把持されておらず、めっき液に暴露されている。領域64へはめっき槽中のめっき液から電流が流れ込む。すなわち、電流密度算出部812は、めっき槽中のめっき液からめっき液と基板Wfとの界面を介して基板Wfに流れ込む電流の電流密度を算出する。基板Wf上に形成されるめっきの膜厚は、この電流密度に依存する。以下において、この電流密度を単に「めっき電流密度」と称し、基板Wf(領域64)上の位置k、時刻tにおけるめっき電流密度をjk,tと記述する。
めっき電流密度jk,tは、外縁部電流密度j(θ)と特定の関係で結び付いている。具体的には、めっき電流密度は、外縁部電流密度と、めっきモジュール400の物理的な構造とによって決まる。したがって、めっき電流密度jk,tは、前述の電位推定値φと同様に、めっきモジュール400の3Dモデルを用いて次式のように表現することができる。
ここで、Gはめっきモジュール400の3Dモデルを表す関数であり、ai,t、bi,t等は外縁部電流密度j(θ)のフーリエ係数である。関数Gは、3Dモデル作成部802から取得されるめっきモジュール400の3Dモデルに基づいて数値的に決定することができる。上式の関数Gを、さらに次のように、ai,t=0およびbi,t=0の周りでテイラー展開する。なお、次式は1次の項までの近似式であるが、2次以上の項を考慮してもよい。
一実施形態において、電流密度算出部812は、上式を用いてめっき電流密度jk,tを算出することができる。
膜厚算出部814は、電流密度算出部812から得られるめっき電流密度jk,tに基づいて、基板Wf上に形成されるめっきの膜厚を算出するように構成される。一実施形態において、膜厚算出部814は、次式を用いて、基板Wf上の位置k、時刻tにおけるめっきの成膜速度vk,tおよび膜厚wk,tを算出する。
但し、Mおよびρは基板Wf上に析出するめっきの分子量と密度、zはめっき反応の価数、Fはファラデー定数である。膜厚算出部814は、上で説明した状態方程式を用いて将来のめっき電流密度および成膜速度を予測することにより、現在の膜厚wk,tではなくめっき処理の終了時点(時刻t=T)における膜厚wk,Tを算出してもよい。
終点判定部816は、膜厚算出部814によって得られためっき膜厚に基づいて、基板Wfに対するめっき処理の終点を判定する。例えば、終点判定部816は、推定された現在の膜厚wk,tが所望の厚さとなったときにめっき処理を終了してもよいし、あるいは、推定された現在の膜厚wk,tと予測された将来の成膜速度vk,s(s=t,…,T)に基づいて、めっき処理の終点までの時間を予測してもよい。
以上のように、本実施形態のめっき装置1000によれば、状態空間モデルを用いることにより、電位センサ470の測定値に基づいてめっき膜の膜厚を推定することができる。これにより、めっき処理において基板Wfの被めっき面Wf-aに形成されるめっき膜の膜厚変化をリアルタイムに把握することができる。
<第2実施形態>
図8は、別の実施形態による制御モジュール800の機能的構成を示すブロック図である。本実施形態において、電流密度算出部812は、状態空間モデル804から得られた外縁部電流密度に加えて、めっきモジュール400の動作態様を指定する制御パラメータにも基づいて、めっき電流密度jk,t(すなわちめっき液から基板Wfに流れ込む電流の電流密度)を算出する。例えば、外縁部電流密度が同じであっても、遮蔽体480が遮蔽位置にあるか退避位置にあるかによってめっき電流密度jk,tは変わり得る。また、回転機構448を用いて基板ホルダ440を回転させながらめっき処理を行う場合、その回転方向によって、あるいは回転を正方向と逆方向で切り替えるタイミングによっても、めっき電流密度jk,tは変わり得る。さらには、めっき処理中にパドル456を駆動させてめっき液の撹拌を行うか否かや、電源から出力するめっき電流の設定値によってもめっき電流密度jk,tは変わり得る。電流密度算出部812は、めっきモジュール400の動作態様に関するこれらの制御パラメータを、めっき電流密度jk,tの算出に用いる。
より具体的に、電流密度算出部812は、制御パラメータにしたがって、めっきモジュール400の異なる複数の動作態様のそれぞれについて、めっき電流密度jk,tを算出する。例えば、遮蔽体480の位置に関する制御パラメータは「on(遮蔽位置)」と「off(退避位置)」であってよく、電流密度算出部812は、「on」に対応するめっき電流密度jk,t(すなわち、遮蔽体480が遮蔽位置にある場合におけるめっき電流密度)と、「off」に対応するめっき電流密度jk,t(すなわち、遮蔽体480が退避位置にある場合におけるめっき電流密度)とを算出する。また、基板ホルダ440の回転に関する制御パラメータは「f(正方向回転;forward)」と「r(逆方向回転;reverse)」であってよく、電流密度算出部812は、「f」に対応するめっき電流密度jk,t(すなわち、基板ホルダ440を正方向に回転させながらめっき処理を行った場合のめっき電流密度)と、「r」に対応するめっき電流密度jk,t(すなわち、基板ホルダ440を逆方向に回転させながらめっき処理を行った場合のめっき電流密度)とを算出する。制御パラメータは、「on」と「off」、「f」と「r」のような2段階に限らず、多段階であってもよい。例えば、遮蔽体480の位置に関する制御パラメータは、「on」と「off」に加えて「中間位置」を含んでよく、基板ホルダ440の回転に関する制御パラメータは、「速い正方向回転」、「遅い正方向回転」、「速い逆方向回転」、および「遅い逆方向回転」の4つからなるのであってよい。電流密度算出部812は、めっきモジュール400のこのような複数の動作態様のそれぞれについて、めっき電流密度jk,tを算出する。
めっきモジュール400の複数の動作態様は、制御パラメータの組み合わせによって表すこともできる。例えば、上記の例を続けると、遮蔽体480の位置と基板ホルダ440の回転の組み合わせによる制御パラメータは、「on、f」(遮蔽体480が遮蔽位置かつ基板ホルダ440が正方向回転)、「on、r」(遮蔽体480が遮蔽位置かつ基板ホルダ440が逆正方向回転)、「off、f」(遮蔽体480が退避位置かつ基板ホルダ440が正方向回転)、および「off、r」(遮蔽体480が退避位置かつ基板ホルダ440が逆方向回転)とすることができる。電流密度算出部812は、このような制御パラメータの組み合わせに基づいて、めっきモジュール400の各動作態様に対するめっき電流密度jk,tを算出する。この例では、制御パラメータ「on、f」に対応するめっき電流密度jk,t(on,f)、制御パラメータ「on、r」に対応するめっき電流密度jk,t(on,r)、制御パラメータ「off、f」に対応するめっき電流密度jk,t(off,f)、および制御パラメータ「off、r」に対応するめっき電流密度jk,t(off,r)が算出される。なお、前述したように制御パラメータは3段階以上に分かれていてもよく、制御パラメータの組み合わせの数に応じた数のめっき電流密度j
k,tが算出される。また、制御パラメータには、遮蔽体480の位置と基板ホルダ440の回転に加えて、例えばパドル456によるめっき液の撹拌の有無を組み合わせてもよい。遮蔽体480の位置が「on」と「off」の2段階、基板ホルダ440の回転が「f」と「r」の2段階、パドル456による撹拌が「撹拌有り」と「撹拌無し」の2段階とすると、これらの制御パラメータの組み合わせに応じた2=8種類の動作態様に対するめっき電流密度jk,tが算出される。ここに例示したものに限らず、任意の制御パラメータの組み合わせが可能である。
膜厚算出部814は、上記のようにして計算されためっきモジュール400の各動作態様に対応するめっき電流密度jk,tを用いて、めっきモジュール400の動作態様ごとに、基板Wf上に形成されるめっき膜厚wk,tを算出する。例えば、膜厚算出部814は、めっき電流密度jk,t(on,f)を用いて、制御パラメータ「on、f」(遮蔽体480が遮蔽位置かつ基板ホルダ440が正方向回転である動作態様)に対応するめっき膜厚wk,t(on,f)を算出し、めっき電流密度jk,t(on,r)を用いて、制御パラメータ「on、r」(遮蔽体480が遮蔽位置かつ基板ホルダ440が逆方向回転である動作態様)に対応するめっき膜厚wk,t(on,r)を算出し、めっき電流密度jk,t(off,f)を用いて、制御パラメータ「off、f」(遮蔽体480が退避位置かつ基板ホルダ440が正方向回転である動作態様)に対応するめっき膜厚wk,t(off,f)を算出し、めっき電流密度jk,t(off,r)を用いて、制御パラメータ「off、r」(遮蔽体480が退避位置かつ基板ホルダ440が逆方向回転である動作態様)に対応するめっき膜厚wk,t(off,r)を算出する。膜厚算出部814は、電流密度算出部812において算出された全てのめっき電流密度jk,tに対して、このようにめっき膜厚wk,tを算出する。
制御パラメータ決定部818は、膜厚算出部814により算出されためっきモジュール400の動作態様ごとのめっき膜厚wk,tに基づいて、めっきモジュール400の最適な動作態様(すなわち最適な制御パラメータ、または最適な制御パラメータの組)を決定する。この決定は、例えば、算出されためっき膜厚wk,tの平坦性を基準として行うことができる。上記の例を続けると、例えば、制御パラメータ決定部818は、めっきモジュール400の4つの動作態様に関して算出されためっき膜厚wk,t(on,f)、wk,t(on,r)、wk,t(off,f)、およびwk,t(off,r)のそれぞれの平坦性を比較し、これらの中から最も平坦性の高いものを選択する。なお、添え字kは基板Wf上の位置を表しており(前述のめっき電流密度jk,tの定義を参照)、めっき膜厚wk,t(on,f)等は基板Wf上のめっき膜厚分布を表していることに留意されたい。制御パラメータ決定部818は、最も平坦性の高い膜厚分布に対応するめっきモジュール400の動作態様(すなわち制御パラメータまたは制御パラメータの組)を、最適なものとして決定することができる。
めっき処理制御部820は、制御パラメータ決定部818により決定された最適な制御パラメータまたは最適な制御パラメータの組にしたがって、めっきモジュール400を制御する。例えば、めっき膜厚wk,t(on,f)が最も平坦性が高いと判定された場合、めっき処理制御部820は、遮蔽体480を遮蔽位置に移動させるとともに、基板ホルダ440を正方向に回転させながらめっき処理を行うよう、めっきモジュール400を制御する。めっき処理制御部820は、この制御を、時間ステップΔtごとに実施する(なおその前提として、電流密度算出部812、膜厚算出部814、および制御パラメータ決定部818も同様に、それぞれ上述した動作を実施している)。これにより、時間ステップΔtごとに、遮蔽体480の位置や基板ホルダ440の回転(さらにはパドル456によるめっき液の撹拌等)が最適な状態に制御される。その結果として、基板Wf上に膜厚平坦性の高いめっきを形成することができる。
なお、制御パラメータの組み合わせ「on、f」、「on、r」、「off、f」、および「off、r」を用いる上述の例において、電流密度算出部812は、例えば次のような式を用いて、めっきモジュール400の各動作態様に対するめっき電流密度jk,tを算出することができる。まず、時刻tにおける外縁部電流密度はj(θ,ψ)と記述できる。ここで、θは基板Wf上の角度位置(基板座標系で見た角度位置)であり、ψは基板ホルダ440による基板Wfの回転角度である。なおθは前述の式(1)におけるものと同じものである。
基板Wfの回転角度ψは、制御パラメータ「f」および「r」に関係する。例えば、回転角度の時間プロファイルψ(t)によって、基板ホルダ440の正方向回転と逆方向回転(あるいは正方向回転と逆方向回転の交互の切り替え)を表すことができる。電流密度算出部812は、式(13)の外縁部電流密度から、次式にしたがって基板Wf上のめっき電流密度jk,tを計算することができる。
ここで、第1実施形態の式(9)と同様、GonおよびGoffはめっきモジュール400の3Dモデルを表す関数であり、3Dモデル作成部802から取得されるめっきモジュール400の3Dモデルに基づいて数値的に決定される。関数Gonは、遮蔽体480が遮蔽位置にある場合のめっきモジュール400の3Dモデルに対応し、関数Goffは、遮蔽体480が退避位置にある場合のめっきモジュール400の3Dモデルに対応する。遮蔽体480が遮蔽位置にあるか退避位置にあるかによってめっきモジュール400の物理的な構造が変わるので、関数Gonは関数Goffと異なっている。
式(14)の係数αは、遮蔽体480が遮蔽位置にあるときα=1をとり、遮蔽体480が退避位置にあるときα=0をとる。すなわち、係数αは制御パラメータ「on」および「off」に対応している。係数αの時間プロファイルα(t)によって、遮蔽体480の位置の移動を表すことができる。0と1の間の中間の値のαによって、遮蔽体480が遮蔽位置と退避位置の中間位置にあることを表すこととしてもよい。
このようにして、電流密度算出部812は、基板Wfの回転角度ψおよびめっきモジュール400の3Dモデルに関する係数αを指定することにより(あるいは時間プロファイルψ(t)およびα(t)を指定することにより)、制御パラメータ「on、f」、「on、r」、「off、f」、および「off、r」のそれぞれに対するめっき電流密度を算出することができる。なお、式(14)の右辺の各項は、例えば、第1実施形態の近似式(10)を用いて計算することも可能である。
<第3実施形態>
図9は、別の実施形態によるめっきモジュール400Aの構成を概略的に示す縦断面図である。この実施形態では、基板Wfは鉛直に配置される。つまり基板Wfは、その板面が水平方向を向くように保持される。図9に示すように、めっきモジュール400Aは、
内部にめっき液を保持するめっき槽410Aと、めっき槽410A内に配置されたアノード430Aと、基板ホルダ440Aとを備えている。基板Wfは、角形基板、円形基板のいずれであってもよい。
アノード430Aは、めっき槽内で基板Wfの板面と対向するように配置される。アノード430Aは電源90の正極に接続され、基板Wfは基板ホルダ440Aを介して電源90の負極に接続される。アノード430Aと基板Wfとの間に電圧を印加すると、基板Wfに電流が流れ、めっき液の存在下で基板Wfの表面に金属膜が形成される。
めっき槽410Aは、基板Wfおよびアノード430Aが内部に配置される内槽412Aと、内槽412Aに隣接するオーバーフロー槽414Aとを備えている。内槽412A内のめっき液は内槽412Aの側壁を越流してオーバーフロー槽414A内に流入するようになっている。
オーバーフロー槽414Aの底部には、めっき液循環ライン58aの一端が接続され、めっき液循環ライン58aの他端は内槽412Aの底部に接続されている。めっき液循環ライン58aには、循環ポンプ58b、恒温ユニット58c、及びフィルタ58dが取り付けられている。めっき液は、内槽412Aの側壁をオーバーフローしてオーバーフロー槽414Aに流入し、さらにオーバーフロー槽414Aからめっき液循環ライン58aを通って内槽412Aに戻される。このように、めっき液は、めっき液循環ライン58aを通じて内槽412Aとオーバーフロー槽414Aとの間を循環する。
めっきモジュール400Aは、基板Wf上の電位分布を調整する調整板(レギュレーションプレート)454をさらに備えている。調整板454は、基板Wfとアノード430Aとの間に配置されており、めっき液中の電場を制限するための開口454aを有している。
また、めっきモジュール400Aは、めっき槽410A内に導管462Aが設けられている。導管462Aは、一例として、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)といった樹脂で形成することができる。導管462Aは、上記した実施形態の導管462と同様に、基板Wfとアノード430Aとの間の領域に配置された開口端464Aを含む第1部分462Aaと、基板Wfとアノード430Aとの間の領域から離れた領域に配置された第2部分462Abと、を有する。また、導管462Aの第2部分462Abには、電位センサ470Aが設けられる。電位センサ470Aによる検出信号は、制御モジュール800に入力される。この制御モジュール800は、図6または図8を参照して前述したのと同じものである。
本実施形態におけるめっきモジュール400Aでは、図3に示した実施形態のめっきモジュール400と同様に、めっき処理中に電位センサ470Aによる検出を行うことができる。そして、制御モジュール800は、第1実施形態または第2実施形態と同様に動作する。これにより、第1実施形態で説明したのと同様に、めっき処理において基板Wfの被めっき面に形成されるめっき膜の膜厚変化をリアルタイムに測定することができる。また、第2実施形態で説明したのと同様に、基板Wf上に膜厚平坦性の高いめっきを形成することができる。
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の
範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
1000 めっき装置
100 ロードポート
110 搬送ロボット
120 アライナ
200 プリウェットモジュール
300 プリソークモジュール
400 めっきモジュール
500 洗浄モジュール
600 スピンリンスドライヤ
700 搬送装置
800 制御モジュール
412 内槽
420 メンブレン
422 カソード領域
424 アノード領域
426 アノードマスク
430 アノード
440 基板ホルダ
441 電気接点
442 昇降機構
448 回転機構
450 抵抗体
452 駆動機構
456 パドル
462 導管
464 開口端
468 充填機構
470 電位センサ
480 遮蔽体
802 3Dモデル作成部
804 状態空間モデル
806 状態推定部
808 観測値算出部
810 カルマンフィルタ
812 電流密度算出部
814 膜厚算出部
816 終点判定部
818 制御パラメータ決定部
820 めっき処理制御部
62 外縁部
90 電源

Claims (8)

  1. 基板をめっきするためのめっき装置であって、
    めっき液を収容するためのめっき槽と、
    前記基板を保持するための基板ホルダと、
    前記基板ホルダに保持された前記基板と対向するように前記めっき槽内に配置されたアノードと、
    前記基板ホルダに保持された前記基板の近傍に配置され、前記めっき液の電位を測定するように構成された電位センサと、
    前記電位センサによる前記めっき液の電位の測定値に基づいて、前記基板の外縁部を流れる電流密度を推定するように構成された推定部と、
    めっき処理中に、前記推定された電流密度と、前記めっき装置の動作態様を指定する制御パラメータとに基づいて、前記めっき液から前記基板に流れ込むめっき電流密度を算出するように構成された電流密度算出部であって、前記制御パラメータは、i)前記基板の回転、ii)前記基板の部分的遮蔽、iii)前記めっき液の撹拌、iv)前記基板と前記アノード間に流す電流設定値、のうちの1または複数に関するパラメータであり、前記電流密度算出部は、前記めっき装置の異なる複数の動作態様のそれぞれについて前記めっき電流密度を算出する、電流密度算出部と、
    めっき処理中に、前記電流密度算出部によって算出された前記めっき電流密度の各々に基づいて、前記複数の動作態様のそれぞれについて、前記基板上に形成されるめっきの膜厚分布を算出するように構成された膜厚算出部と、
    めっき処理中に、前記膜厚算出部によって算出された前記めっき装置の動作態様ごとのめっき膜厚分布を互いに比較し、その中から最も所定の基準に合致するものを選択することにより、最適な動作態様に対応する制御パラメータを決定するように構成された制御パラメータ決定部と、
    を備え、前記制御パラメータ決定部によって決定された制御パラメータを用いて前記基板に対するめっき処理を制御する、
    めっき装置。
  2. 前記めっき装置の前記動作態様は、複数種類の制御パラメータの組み合わせによって指定され、
    前記電流密度算出部は、前記複数種類の制御パラメータの組ごとに前記めっき電流密度を算出するように構成され、
    前記制御パラメータ決定部は、前記膜厚算出部によって算出された前記めっき装置の動作態様ごとのめっき膜厚分布に基づいて、最適な動作態様に対応する制御パラメータの組を決定するように構成される、
    請求項1に記載のめっき装置。
  3. 前記制御パラメータ決定部は、算出されためっき膜厚分布の平坦性を基準として前記制御パラメータの決定を行うように構成される、請求項1に記載のめっき装置。
  4. 前記推定部は、状態方程式および観測方程式を用いて前記電流密度を推定するように構成された状態空間モデルとして実装され、前記状態方程式は、前記基板の外縁部を流れる前記電流密度に関する時間発展を記述する方程式であり、前記観測方程式は、前記基板の外縁部を流れる前記電流密度と前記電位センサの位置における前記めっき液の電位との関係を記述する方程式である、請求項1から3のいずれか1項に記載のめっき装置。
  5. 前記めっき槽、前記基板ホルダ、前記アノード、および前記電位センサを少なくとも含むめっきモジュールを備え、
    前記電流密度と前記めっき液の電位との前記関係は、前記めっきモジュールの3Dモデルを表す関数に基づく、請求項4に記載のめっき装置。
  6. 前記状態空間モデルは、前記電位センサの前記測定値に基づいて、前記基板の外縁部を流れる前記電流密度の推定結果を補正するように構成されたカルマンフィルタをさらに備える、請求項4に記載のめっき装置。
  7. 前記基板の前記外縁部は、前記基板の前記基板ホルダによって把持される部分である、請求項1に記載のめっき装置。
  8. 前記電流密度算出部により算出される前記めっき電流密度は、前記基板の前記外縁部よりも内側の領域における電流密度である、請求項7に記載のめっき装置。
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