JP7372757B2 - 空気調和装置 - Google Patents

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Description

本開示は、空気調和装置に関する。
環境試験では、氷点下の温度域においても湿度制御が求められる場合がある。氷点下での湿度制御においては、微小水分量を制御する必要がある。例えば、-20℃(乾球温度(DB))での±5%(相対湿度(RH))に相当する微小水分量は、+20℃(DB)での±0.2%(RH)に相当する微小水分量に等しい。このため、氷点下で湿度制御を行うためには、高精度な湿度制御が可能な空気調和装置が必要になる。
特開2011-185559号公報
しかしながら、特許文献1に開示された従来の空気調和装置においては、処理される空気の全量が流れる風路に加湿部が設けられるため、加湿量(水分量)の調節範囲が制限され、湿度を適切に制御することが困難である。
例えば加湿部に加湿パンを用いた場合、氷点下での湿度制御においては微小水分量を制御する必要があるため、加湿パンの蒸発面積の制御動作を室温時と比べて遅くする必要がある。このため、湿度の変動を抑制するための修正動作が遅れる。その結果、例えばオーバーシュートが発生した場合、修正動作の遅れに起因して、湿度が100%(RH)に達してしまい、温湿度制御を行うためのセンサー部、空調部、試験室等で着氷が生じる恐れがある。特にセンサー部で着氷が進行すると、正確な温湿度検出が困難になり、温湿度制御の精度が劣化してしまう。このような傾向は、飽差の小さくなる極低温・高湿条件で、より顕著になる。
本開示の目的は、氷点下でも高精度な湿度制御を可能とする空気調和装置を提供することにある。
本開示の第1の態様は、空気の温度を調節する温度調節部(10)と、空気を加湿する加湿部(20)と、前記温度調節部(10)及び前記加湿部(20)を通過した空気の少なくとも湿度を測定するセンサー(42)と、前記加湿部(20)を制御する加湿制御部(54)とを備えた空気調和装置であって、前記加湿部(20)が配置された加湿風路(102)と、前記加湿部(20)をバイパスしたバイパス風路(103)と、前記加湿風路(102)へ流入する空気の流量と前記バイパス風路(103)へ流入する空気の流量との比率を調節する流量調節部(30)と、前記流量調節部(30)を制御する流量調節制御部(55)とをさらに備え、目標湿度と前記センサー(42)により測定された湿度とから定められる目標設定値に基づき、前記加湿制御部(54)が前記加湿部(20)を制御しながら、前記流量調節制御部(55)は、前記目標設定値を用いて前記流量調節部(30)を制御することを特徴とする空気調和装置である。
第1の態様では、目標湿度とセンサー(42)により測定された湿度とから定められる目標設定値に基づき、加湿制御部(54)が加湿部(20)を制御しながら、流量調節制御部(55)は、加湿制御部(54)の目標設定値を用いて流量調節部(30)の制御、つまり、加湿風路(102)の空気流量とバイパス風路(103)の空気流量との比率の調節を行う。このため、加湿部(20)による湿度制御と、流量調節部(30)による湿度制御とを組み合わせて、加湿量(水分量)の調節範囲を拡大できるので、氷点下でも高精度な湿度制御が可能となる。
本開示の第2の態様は、第1の態様において、目標湿度、及び、前記センサー(42)により測定された湿度に基づき、前記目標設定値を前記加湿制御部(54)へ出力する湿度指示調節計(53)をさらに備え、前記流量調節制御部(55)は、予め設定された目標加湿量、及び、前記湿度指示調節計(53)から出力された前記目標設定値に基づき、前記流量調節部(30)を制御することを特徴とする空気調和装置である。
第2の態様では、加湿部(20)を制御する加湿制御部(54)に対して湿度指示調節計(53)から出力された目標設定値を用いて、流量調節制御部(55)が流量調節部(30)を制御することができる。
本開示の第3の態様は、第2の態様において、前記流量調節制御部(55)の前記目標加湿量は、前記目標湿度から決まる加湿量よりも低く設定されることを特徴とする空気調和装置である。
第3の態様では、流量調節部(30)を制御する流量調節制御部(55)の目標加湿量は、目標湿度から決まる加湿量よりも低く設定される。このため、加湿部(20)による加湿制御でオーバーシュートが発生する場合には、加湿部(20)による加湿制御の修正動作が始まる前に、流量調節制御部(55)により流量調節部(30)を起動させ、例えば、バイパス風路(103)の空気流量を増大させることができる。従って、加湿量を低減してオーバーシュートを抑制できる。
本開示の第4の態様は、第3の態様において、前記流量調節制御部(55)の前記目標加湿量は、前記目標湿度から決まる加湿量の50%以上90%以下であることを特徴とする空気調和装置である。
第4の態様では、流量調節制御部(55)の目標加湿量は、目標湿度から決まる加湿量の50%以上90%以下である。このようにすると、オーバーシュート発生時に、流量調節制御部(55)によって流量調節部(30)を起動させやすくなると共に、湿度の小さな乱れに対しては流量調節部(30)を起動させないようにできる。
本開示の第5の態様は、第1乃至4の態様のいずれか1つにおいて、前記加湿部(20)は、貯留した水を蒸発させる加湿パン(21)を有し、前記加湿制御部(54)は、前記加湿パン(21)の蒸発面積を制御することを特徴とする空気調和装置である。
第5の態様では、加湿制御部(54)は、加湿パン(21)の蒸発面積の制御により加湿制御を行うことができる。
本開示の第6の態様は、第5の態様において、前記加湿パン(21)は、上方へ向かうに従い水平方向の断面積が増加する形状を持ち、前記加湿制御部(54)は、前記加湿パン(21)の水位を制御することを特徴とする空気調和装置である。
第6の態様では、加湿制御部(54)は、加湿パン(21)の水位の制御によって加湿制御を行うことができる。
本開示の第7の態様は、第1乃至6の態様のいずれか1つにおいて、前記流量調節部(30)は、前記加湿風路(102)に設けられた開度可変の加湿ダンパ(31)と、前記バイパス風路(103)に設けられた開度可変のバイパスダンパ(32)とを有し、前記流量調節制御部(55)は、前記加湿ダンパ(31)及び前記バイパスダンパ(32)の各開度を制御することを特徴とする空気調和装置である。
第7の態様では、流量調節制御部(55)は、加湿ダンパ(31)及びバイパスダンパ(32)の各開度の制御によって、加湿風路(102)の空気流量とバイパス風路(103)の空気流量との比率、つまり加湿量を調整できる。
本開示の第8の態様は、第1乃至7の態様のいずれか1つにおいて、前記流量調節制御部(55)は、前記センサー(42)により測定された湿度が、前記目標湿度を超えた場合、前記流量調節部(30)を制御することを特徴とする空気調和装置である。
第8の態様では、センサー(42)により測定された湿度が目標湿度を超えた場合、つまり、オーバーシュートが発生した場合、流量調節制御部(55)による流量調節部(30)の制御によって、オーバーシュートを抑制できる。
図1は、実施形態に係る空気調和装置の概略構成図である。 図2は、図1に示す空気調和装置の湿度指示調節計が正動作する場合の出力例を示す図である。 図3は、図1に示す空気調和装置の湿度指示調節計が逆動作する場合の出力例を示す図である。 図4は、図1に示す空気調和装置における加湿制御部及び流量調節制御部のそれぞれの出力例を示す図である。 図5は、図1に示す空気調和装置を用いた湿度制御のフロー図である。 図6は、湿度制御においてオーバーシュートが発生した様子を示す図である。 図7は、湿度制御においてオーバーシュートが収束した様子を示す図である。 図8は、実施例1に係る湿度制御における湿度の経時変化を示す図である。 図9は、比較例1に係る湿度制御のフロー図である。 図10は、比較例2に係る湿度制御のフロー図である。
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
〈空気調和装置の構成〉
図1は、実施形態に係る空気調和装置の概略構成図である。
図1に示すように、空気調和装置(100)は、主として、0℃以下を含む所定の範囲で空気の温度を調節する温度調節部(10)と、空気を加湿する加湿部(20)と、温度調節部(10)及び加湿部(20)を通過した空気の温度及び湿度を測定するセンサー(42)と、加湿部(20)を制御する加湿制御部(54)とを備える。空気調和装置(100)の適用が可能な湿度範囲は、例えば10~95%(RH)である。
空気調和装置(100)の各構成要素、及び、空気調和装置(100)によって処理された空気が導入される環境試験室(200)は、ダクト等により互いに接続され、風路(101)を構成する。尚、本開示において、「上流」及び「下流」とは、風路(101)における空気の流れの「上流」及び「下流」を意味する。
空気調和装置(100)は、空気を除湿する除湿機(62)をさらに備えてもよい。除湿機(62)は、例えば、環境試験室(200)と温度調節部(10)との間に混合ボックス(61)を介して配置されてもよい。
温度調節部(10)は、主として、吸込ファン(12)と、ブラインクーラ(13)と、電気ヒータ(14)とを備える。吸込ファン(12)は、温度調節部(10)に設けられた空気吸込口(11)の近傍に配置される。ブラインクーラ(13)は、図示しないチラー装置から供給されたブラインを空気と熱交換させる熱交換器である。電気ヒータ(14)は、ブラインクーラ(13)の下流側に配置される。温度調節部(10)は、電気ヒータ(14)の下流側に、空気の温度及び湿度を測定するセンサー(15)を備えてもよい。
温度調節部(10)の内部で、風路(101)は、加湿部(20)へ通じる加湿風路(102)と、加湿部(20)をバイパスするバイパス風路(103)とに分岐する。温度調節部(10)は、加湿風路(102)を流れる空気の速さを調整するファン(16)を備えてもよい。温度調節部(10)には、加湿側空気吹出口(17)及びバイパス側空気吹出口(18)が設けられる。
加湿部(20)は、加湿パン(21)を有する。加湿パン(21)は、貯留した水(22)を蒸発させる。加湿パン(21)は、例えば、上方へ向かうにつれて水平方向の断面積が増加する形状を持つ。加湿パン(21)には、貯留した水(22)の温度を調整するヒータ(23)が設けられる。
加湿パン(21)における水(22)が貯留される領域の上方には、上流側に位置する空気吸込口(24)と、下流側に位置する空気吹出口(25)とが設けられる。すなわち、加湿パン(21)における空気吸込口(24)と空気吹出口(25)との間の空間は、加湿風路(102)の一部を構成する。これにより、加湿パン(21)に貯留された水(22)が蒸発して、加湿風路(102)を通過する空気が加湿される。
加湿パン(21)には、貯留した水(22)の温度及び水位をそれぞれ測定する温度センサー(26)及び水位センサー(27)が設けられる。さらに、加湿パン(21)には、図示しない給水口及び排水口が設けられ、当該給水口には給水弁(28)が接続され、当該排水口には排水弁(29)が接続される。
空気調和装置(100)は、加湿風路(102)へ流入する空気の流量とバイパス風路(103)へ流入する空気の流量との比率を調節する流量調節部(30)と、流量調節部(30)を制御する流量調節制御部(55)とをさらに備える。これにより、センサー(42)により測定された湿度に基づき、加湿制御部(54)によって加湿部(20)を制御しながら、流量調節制御部(55)によって流量調節部(30)を制御することが可能となる。
流量調節部(30)は、温度調節部(10)の下流側に配置される。流量調節部(30)は、温度調節部(10)と加湿部(20)との間の加湿風路(102)に設けられた開度可変の加湿ダンパ(31)と、バイパス風路(103)に設けられた開度可変のバイパスダンパ(32)とを有する。
空気調和装置(100)は、加湿部(20)が設けられた加湿風路(102)を通過した空気と、バイパス風路(103)を通過した空気とを混合する混合ボックス(33)を有する。混合ボックス(33)は、加湿部(20)の下流側に配置される。混合ボックス(33)には、加湿風路(102)と接続する加湿側空気吸込口(34)と、バイパス風路(103)と接続するバイパス側空気吸込口(35)と、混合空気をセンサー(42)の方へ吹き出す混合空気吹出口(36)とが設けられる。
センサー(42)は、センサー取付チャンバー(41)内に配置される。センサー取付チャンバー(41)は、混合ボックス(33)と環境試験室(200)との間に配置される。
空気調和装置(100)において、加湿パン(21)に貯留された水(22)の温度を調整するヒータ(23)は、パン水温制御部(51)によって制御される。パン水温制御部(51)は、予め設定された目標温度、及び、温度センサー(26)によって測定された水(22)の温度に基づいて、ヒータ(23)の出力を制御する。
空気調和装置(100)において、温度調節部(10)の電気ヒータ(14)は、電気ヒータ制御部(52)によって制御される。電気ヒータ制御部(52)は、予め設定された目標温度、及び、センサー(42)によって測定された空気の温度に基づいて、電気ヒータ(14)の出力を制御する。
空気調和装置(100)において、加湿部(20)及び流量調節部(30)による加湿量制御は、湿度指示調節計(53)、加湿制御部(54)及び流量調節制御部(55)によって行われる。
湿度指示調節計(53)は、予め設定された目標湿度、及び、センサー(42)によって測定された空気の湿度に基づき、加湿制御部(54)の目標水位(目標設定値)を出力する。
図2は、湿度指示調節計(53)が正動作する場合の出力例を示し、図3は、湿度指示調節計(53)が逆動作する場合の出力例を示す。湿度指示調節計(53)は、排水弁(29)や加湿ダンパ(31)の制御に関しては、図2に示すように、測定された湿度(制御量)が高くなるに従い、高い目標水位(操作量)を出力する正動作を行う。また、湿度指示調節計(53)は、給水弁(28)やバイパスダンパ(32)の制御に関しては、図3に示すように、測定された湿度(制御量)が高くなるに従い、低い目標水位(操作量)を出力する逆動作を行う。但し、正動作及び逆動作のいずれも、所定の比例帯の範囲内で行われ、目標湿度(目標設定値)もこの比例帯の範囲内で設定される。
加湿制御部(54)は、湿度指示調節計(53)から出力された目標水位、及び、水位センサー(27)によって測定された水(22)の水位に基づいて、給水弁(28)及び排水弁(29)のそれぞれの開度を制御する。ここで、加湿パン(21)は、上方へ向かうにつれて水平方向の断面積が増加する形状を持つため、加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位が上昇すると、水(22)の蒸発面積つまり加湿量(蒸発量)が増大し、当該水位が下降すると、加湿量が減少する。
流量調節制御部(55)は、流量調節部(30)を制御する。具体的には、流量調節制御部(55)は、予め設定された目標加湿量、及び、湿度指示調節計(53)から出力された目標水位(加湿量に換算される)に基づいて、加湿風路(102)に設けられた加湿ダンパ(31)及びバイパス風路(103)に設けられたバイパスダンパ(32)のそれぞれの開度を制御する。
流量調節制御部(55)を用いて、加湿ダンパ(31)の開度を大きくすること、及び/又は、バイパスダンパ(32)の開度を小さくすることによって、バイパス風路(103)へ流入する空気の流量に対する加湿風路(102)へ流入する空気の流量の比率が増大して加湿量が増大する。一方、流量調節制御部(55)を用いて、加湿ダンパ(31)の開度を小さくすること、及び/又は、バイパスダンパ(32)の開度を大きくすることによって、バイパス風路(103)へ流入する空気の流量に対する加湿風路(102)へ流入する空気の流量の比率が減少して加湿量が減少する。
図4は、加湿制御部(54)及び流量調節制御部(55)のそれぞれの出力例を示す図である。加湿制御部(54)は、図4に示すように、給水弁(28)の制御に関しては、湿度指示調節計(53)から出力される目標水位(操作量)に対して、水位センサー(27)によって測定された水(22)の水位が低くなるに従い、高い開度を出力し(実線参照)、排水弁(29)の制御に関しては、湿度指示調節計(53)から出力される目標水位(操作量)に対して、水位センサー(27)によって測定された水(22)の水位が高くなるに従い、高い開度を出力する(破線参照)。また、流量調節制御部(55)は、図4に示すように、バイパスダンパ(32)の制御に関しては、目標加湿量に対して、湿度指示調節計(53)から出力される目標水位(操作量)が低くなるに従い、高い開度を出力し(実線参照)、加湿ダンパ(31)の制御に関しては、目標加湿量に対して、湿度指示調節計(53)から出力される目標水位(操作量)が高くなるに従い、高い開度を出力する(破線参照)。尚、加湿制御部(54)及び流量調節制御部(55)のいずれにおいても、目標水位(操作量)50%(最大水位を100%とする)を中心とする所定の範囲で2種類の出力(実線、破線)がオーバーラップする負の不感帯を有してもよい。
〈空気調和装置による湿度制御〉
図5は、図1に示す空気調和装置を用いた湿度制御のフロー図である。
空気調和装置(100)を用いた湿度制御においては、図5に示すように、まず、ステップS101において、湿度指示調節計(53)に対して目標湿度が設定される。続いて、ステップS102において、流量調節制御部(55)に対して目標加湿量が設定される。流量調節制御部(55)の目標加湿量は、湿度指示調節計(53)の目標湿度から理論的に算出される必要水位(加湿量)よりも低く設定される。例えば、流量調節制御部(55)の目標加湿量は、湿度指示調節計(53)の目標湿度から決まる加湿量の50%以上90%以下であってもよい。
次に、ステップS103において、センサー(42)によって空気の湿度(相対湿度)が測定される。続いて、ステップS104において、湿度指示調節計(53)によって湿度制御(PID演算)が行われる。具体的には、湿度指示調節計(53)は、予め設定された目標湿度、及び、センサー(42)によって測定された空気の湿度に基づきPID演算を行う。続いて、ステップS105において、湿度指示調節計(53)は、PID演算の結果として、加湿量制御を行う加湿制御部(54)の目標水位(目標設定値)を出力する。
次に、ステップS106において、湿度指示調節計(53)から出力された目標水位(目標設定値)が加湿制御部(54)に入力される。続いて、ステップS107において、加湿制御部(54)によって、加湿パン(21)に貯留された水(22)に対する水位制御(PID演算)が行われる。具体的には、加湿制御部(54)は、湿度指示調節計(53)から出力された目標水位(目標設定値)、及び、水位センサー(27)によって測定された水(22)の水位に基づいてPID演算を行う。
次に、加湿制御部(54)は、ステップS108において、PID演算の結果として、給水弁(28)の開度の制御出力を行い、それに基づき、ステップS109において、給水弁(28)の開度が制御される。その結果、ステップS110において、加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位上昇量が制御される。
また、加湿制御部(54)は、ステップS111において、PID演算の結果として、排水弁(29)の開度の制御出力を行い、それに基づき、ステップS112において、排水弁(29)の開度が制御される。その結果、ステップS113において、加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位下降量が制御される。
一方、ステップS114において、湿度指示調節計(53)から出力された加湿制御部(54)の目標水位(目標設定値)が、流量調節制御部(55)に現在値として入力される。続いて、ステップS115において、加湿風路(102)及びバイパス風路(103)の各空気流量の比率を調整するために、流量調節制御部(55)によって流量調節部(30)(加湿ダンパ(31)及びバイパスダンパ(32))に対する空気流量制御(PID演算)が行われる。具体的には、流量調節制御部(55)は、予め設定された目標加湿量、及び、湿度指示調節計(53)から出力された目標水位(加湿量に換算される)に基づいてPID演算を行う。
次に、流量調節制御部(55)は、ステップS116において、PID演算の結果として、加湿ダンパ(31)の開度の制御出力を行い、それに基づき、ステップS117において、加湿ダンパ(31)の開度が制御される。その結果、ステップS118において、加湿パン(21)が設けられた加湿風路(102)を流れる空気の流量が制御される。
また、流量調節制御部(55)は、ステップS119において、PID演算の結果として、バイパスダンパ(32)の開度の制御出力を行い、それに基づき、ステップS120において、バイパスダンパ(32)の開度が制御される。その結果、ステップS121において、加湿パン(21)をバイパスするバイパス風路(103)を流れる空気の流量が制御される。
-実施形態の効果-
本実施形態の空気調和装置(100)によると、目標湿度とセンサー(42)により測定された湿度とから定められる目標設定値(目標水位)に基づき、加湿制御部(54)が加湿部(20)を制御しながら、流量調節制御部(55)は、加湿制御部(54)の目標設定値を用いて流量調節部(30)の制御、つまり、加湿風路(102)の空気流量とバイパス風路(103)の空気流量との比率の調節を行う。このため、加湿部(20)による湿度制御と、流量調節部(30)による湿度制御とを組み合わせて、加湿量(水分量)の調節範囲を拡大できるので、氷点下でも高精度な湿度制御が可能となる。
具体的には、加湿制御部(54)による加湿部(20)の制御動作が遅れる場合には、流量調節制御部(55)による流量調節部(30)の制御、つまり、加湿風路(102)の空気流量とバイパス風路(103)の空気流量との比率の調整によって、加湿部(20)の制御動作の遅れを補償できる。また、加湿制御部(54)による加湿制御の修正動作が行われている間においても、流量調節制御部(55)が流量調節部(30)を制御して加湿量を調整することによって、加湿制御における湿度の偏差(変動幅)を小さく抑えることができる。従って、例えば-20℃(DB)/90%(RH)等の極低温・高湿条件でも湿度制御のオーバーシュートを抑制できるので、オーバーシュートによる100%(RH)への到達に起因する着氷の発生を抑制できる。
ところで、湿度条件や加湿部(20)の種類等の影響はあるものの、湿度制御全般において、加湿部(20)による湿度制御は、定常安定時には優れた制御精度を示す一方、設定値変更等によってオーバーシュート等の湿度偏差が生じる状態では、加湿部(20)による湿度制御の収束性は悪い。
しかし、本実施形態では、加湿部(20)による湿度制御と、流量調節部(30)による湿度制御とを組み合わせるため、状況に応じた最適な湿度制御、例えば、設定値変更後の湿度の定常安定状態への早期収束等が可能となる。また、設定値変更により湿度偏差が生じる場合のみならず、例えば、環境試験室(200)の内部負荷変動等により湿度の乱れが生じた場合にも、流量調節部(30)による湿度制御によって、湿度偏差を一定の範囲内に抑えることができる。すなわち、環境試験室(200)の内部負荷変動等に対しても、湿度の最大偏差幅を縮小できると共に、湿度の定常安定状態への早期収束を可能とする。
また、本実施形態の空気調和装置(100)によると、加湿部(20)を制御する加湿制御部(54)に対して湿度指示調節計(53)から出力された目標水位(目標設定値)を用いて、流量調節制御部(55)が流量調節部(30)を制御することができる。
また、本実施形態の空気調和装置(100)によると、流量調節部(30)を制御する流量調節制御部(55)の目標加湿量は、湿度指示調節計(53)の目標湿度から決まる加湿量よりも低く設定される。このため、加湿部(20)による加湿制御でオーバーシュートが発生する場合には、加湿部(20)による加湿制御の修正動作が始まる前に、流量調節制御部(55)により流量調節部(30)を起動させ、例えば、バイパス風路(103)の空気流量を増大させることができる。従って、加湿量を低減してオーバーシュートを抑制できる。尚、流量調節制御部(55)の目標加湿量が、湿度指示調節計(53)の目標湿度から決まる加湿量の50%以上90%以下であると、オーバーシュート発生時に、流量調節制御部(55)によって流量調節部(30)を起動させやすくなると共に、湿度の小さな乱れには流量調節部(30)を起動させないようにできる。
また、本実施形態の空気調和装置(100)によると、加湿部(20)が加湿パン(21)を有するため、加湿制御部(54)は、加湿パン(21)の蒸発面積の制御により加湿制御を行うことができる。また、加湿パン(21)が、上方へ向かうに従い水平方向の断面積が増加する形状を持つため、加湿制御部(54)は、加湿パン(21)の水位の制御によって加湿制御を行うことができる。
また、本実施形態の空気調和装置(100)によると、流量調節部(30)は、加湿風路(102)に設けられた開度可変の加湿ダンパ(31)と、バイパス風路(103)に設けられた開度可変のバイパスダンパ(32)とを有する。このため、流量調節制御部(55)は、加湿ダンパ(31)及びバイパスダンパ(32)の各開度の制御によって、加湿風路(102)の空気流量とバイパス風路(103)の空気流量との比率、つまり加湿量を調整できる。
尚、本実施形態の空気調和装置(100)において、流量調節制御部(55)は、センサー(42)により測定された湿度が、湿度指示調節計(53)の目標湿度を超えた場合、流量調節部(30)を制御するようにしてもよい。このようにすると、センサー(42)により測定された湿度が目標湿度を超えた場合、つまり、オーバーシュートが発生した場合、流量調節制御部(55)による流量調節部(30)の制御によって、オーバーシュートを抑制できる。
〈実施例1〉
以下、実施例1として、空気調和装置(100)を用いて、-15℃(DB)の温度下で目標湿度を68%(RH)から90%(RH)に変更した場合の湿度制御について、前述の図5の湿度制御フローを参照しながら説明する。
この場合、ステップS101では、湿度指示調節計(53)に対して目標湿度として90%(RH)が新たに設定される。また、ステップS102では、流量調節制御部(55)に対して目標加湿量として、目標湿度(90%(RH))から決まる加湿量の例えば75%に相当する値が設定される。
以上の目標湿度設定の変更によって、図6に示すように、例えば目標湿度を10%(RH)以上上回るオーバーシュートが発生した場合、ステップS105で湿度指示調節計(53)から加湿制御部(54)に対して出力される目標水位(目標設定値)は加湿量に換算すると、流量調節制御部(55)の目標加湿量を下回ることになる。
本実施例では、加湿部(20)による湿度制御が定常安定時に優れた制御精度を発揮するように、加湿制御部(54)における目標水位(目標設定値)の変化速度は遅く設定される。例えば、水位上昇勾配は最大15mm/min、水位下降勾配は最大30mm/minである。このため、オーバーシュート発生に対応する新たな目標水位(目標設定値)が湿度指示調節計(53)から出力されたとしても、加湿制御部(54)による加湿部(20)の制御動作には遅れが生じる。
しかし、本実施例では、加湿制御部(54)による湿度制御(ステップS106~S113)とは別に、流量調節制御部(55)による湿度制御(ステップS114~S121)を行うことにより、湿度設定値変更後の湿度の定常安定状態への早期収束が可能となる。
具体的には、加湿制御部(54)に対して出力される目標水位(目標設定値)の加湿量換算値が、流量調節制御部(55)の目標加湿量を下回ると、ステップS115において、流量調節制御部(55)は、加湿量を抑制するために、バイパスダンパ(32)の開度制御を開始する。すなわち、ステップS119において、流量調節制御部(55)は、バイパスダンパ(32)を開くか、又は、バイパスダンパ(32)の開度を大きくする制御出力を行い、それに基づき、ステップS120において、バイパスダンパ(32)が開かれるか、又は、バイパスダンパ(32)の開度が大きくなる。その結果、ステップS121において、加湿部(20)をバイパスするバイパス風路(103)を流れる空気が、加湿部(20)が設けられた加湿風路(102)を流れる空気と混合されるか、又は、加湿風路(102)を流れる空気に対するバイパス風路(103)を流れる空気の比率が大きくなる。これにより、センサー(42)によって湿度が測定される空気に非加湿空気が混合されるか、又は、湿度が測定される空気における非加湿空気の割合が大きくなる。従って、加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位(蒸発面積)が同じままであっても加湿量を低減できるので、オーバーシュートを抑制できる。
以上の流量調節制御部(55)による湿度制御によって、図7に示すように、オーバーシュートが抑制され、湿度が目標湿度の例えば±5%(RH)以内に収束安定すると、ステップS105で湿度指示調節計(53)から加湿制御部(54)に対して出力される目標水位(目標設定値)は加湿量に換算して、流量調節制御部(55)の目標加湿量を上回るようになる。
そうすると、ステップS119において、流量調節制御部(55)は、バイパスダンパ(32)を閉じるか、又は、バイパスダンパ(32)の開度を小さくする制御出力を行い、それに基づき、ステップS120において、バイパスダンパ(32)が閉じられるか、又は、バイパスダンパ(32)の開度が小さくなる。その結果、ステップS121において、加湿部(20)をバイパスするバイパス風路(103)を流れる空気が、加湿部(20)が設けられた加湿風路(102)を流れる空気と混合されなくなるか、又は、加湿風路(102)を流れる空気に対するバイパス風路(103)を流れる空気の比率が小さくなる。これにより、センサー(42)によって湿度が測定される空気に非加湿空気が混合されなくなるか、又は、湿度が測定される空気における非加湿空気の割合が小さくなる。従って、加湿パン(21)に貯留された水(22)に対する水位(蒸発面積)制御のみによって、又は、水位制御を主体として、湿度制御が行われるので、定常安定時における加湿部(20)の優れた湿度制御精度が発揮される。
図8は、本実施例の湿度制御における湿度の経時変化を示す図である。尚、図8において、実線は湿度の経時変化を表し、破線は水位(加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位。以下、単に「水位」という。)の経時変化を表す。
図8に示すように、目標湿度が68%(RH)から90%(RH)に設定変更されると、水位の上昇に伴って湿度も上昇する。湿度が90%(RH)を超えると、湿度指示調節計(53)は、制御出力(加湿制御部(54)の目標水位)を下げ始める。しかし、加湿制御部(54)における目標水位の変化速度は遅く設定されているため、湿度指示調節計(53)が制御出力を下げても、水位は急には下がらず、しばらく水位上昇が続く。
しかし、流量調節制御部(55)による流量調節部(30)の制御によって、加湿制御部(54)による加湿部(20)の制御動作の遅れは補償される。すなわち、加湿制御部(54)による水位制御の修正動作が行われている間に、流量調節制御部(55)が流量調節部(30)を制御して加湿量を抑制するため、オーバーシュート時の湿度偏差(変動幅)を縮小できると共に、湿度の定常安定状態への早期収束が可能となる。また、オーバーシュートが収束安定する間に水位が安定し、流量調節制御部(55)による流量調節部(30)の制御も休止し、加湿制御はもっぱら加湿制御部(54)による水位制御によって行われるようになる。
〈実施例2〉
以下、実施例2として、空気調和装置(100)を用いて、-15℃(DB)の温度下で目標湿度を70%(RH)で定常安定状態に保持する場合の湿度制御について、前述の図5の湿度制御フローを参照しながら説明する。
この場合、ステップS101では、湿度指示調節計(53)に対して目標湿度として70%(RH)が設定される。また、ステップS102では、流量調節制御部(55)に対して目標加湿量として、目標湿度(70%(RH))から決まる加湿量の例えば75%に相当する値が設定される。
定常安定状態では湿度偏差が小さいので、ステップS105で湿度指示調節計(53)から加湿制御部(54)に対して出力される目標水位(目標設定値)は加湿量に換算して、流量調節制御部(55)の目標加湿量を下回ることはない。
そうすると、ステップS115において、流量調節制御部(55)は、バイパスダンパ(32)の開度制御を行うことはない。従って、バイパスダンパ(32)は閉じたままか、或いは、開度が小さい状態のままとなる。
従って、加湿パン(21)に貯留された水(22)に対する水位(蒸発面積)制御のみによって、又は、水位制御を主体として、湿度制御が行われるので、定常安定時における加湿部(20)の優れた湿度制御精度が発揮される。
〈実施例3〉
以下、実施例3として、空気調和装置(100)を用いて、-15℃(DB)の温度下で目標湿度を50%(RH)の低湿状態にする場合の湿度制御について、前述の図5の湿度制御フローを参照しながら説明する。
この場合、ステップS101では、湿度指示調節計(53)に対して目標湿度として50%(RH)が設定される。また、ステップS102では、流量調節制御部(55)に対して目標加湿量として、水位制御を良好な精度で維持可能な設定水位の下限に相当する10~25%(RH)程度、例えば20%(RH)の値が設定される。
加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位(蒸発面積)を下限まで下げたとしても、50%(RH)という低湿状態への移行は難しく、そのため、ステップS105で湿度指示調節計(53)から加湿制御部(54)に対して出力される目標水位(目標設定値)は加湿量に換算すると、流量調節制御部(55)の目標加湿量を下回ることになる。
しかし、本実施例では、加湿制御部(54)による湿度制御(ステップS106~S113)とは別に、流量調節制御部(55)による湿度制御(ステップS114~S121)を行うことにより、低湿状態への移行が可能となる。
具体的には、加湿制御部(54)に対して出力される目標水位(目標設定値)の加湿量換算値が、流量調節制御部(55)の目標加湿量を下回ると、ステップS115において、流量調節制御部(55)は、加湿量を抑制するために、バイパスダンパ(32)の開度制御を開始する。すなわち、ステップS119において、流量調節制御部(55)は、バイパスダンパ(32)を開くか、又は、バイパスダンパ(32)の開度を大きくする制御出力を行い、それに基づき、ステップS120において、バイパスダンパ(32)が開かれるか、又は、バイパスダンパ(32)の開度が大きくなる。その結果、ステップS121において、加湿部(20)をバイパスするバイパス風路(103)を流れる空気が、加湿部(20)が設けられた加湿風路(102)を流れる空気と混合されるか、又は、加湿風路(102)を流れる空気に対するバイパス風路(103)を流れる空気の比率が大きくなる。これにより、センサー(42)によって湿度が測定される空気に非加湿空気が混合されるか、又は、湿度が測定される空気における非加湿空気の割合が大きくなる。従って、加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位(蒸発面積)が同じままであっても加湿量を低減できるので、低湿状態への移行が可能となる。
〈比較例1〉
以下、比較例1として、図1に示す空気調和装置(100)において加湿制御部(54)による水位制御のみを用いた場合の湿度制御について、図面を参照しながら説明する。
図9は、比較例1に係る湿度制御のフロー図である。
比較例1に係る湿度制御においては、図9に示すように、まず、ステップS201において、湿度指示調節計(53)に対して目標湿度が設定される。続いて、ステップS202において、センサー(42)によって空気の湿度(相対湿度)が測定される。
次に、ステップS203において、湿度指示調節計(53)によって湿度制御(PID演算)が行われる。具体的には、湿度指示調節計(53)は、予め設定された目標湿度、及び、センサー(42)によって測定された空気の湿度に基づきPID演算を行う。続いて、ステップS204において、湿度指示調節計(53)は、PID演算の結果として、加湿量制御を行う加湿制御部(54)の目標水位(目標設定値)を出力する。
次に、ステップS205において、湿度指示調節計(53)から出力された目標水位(目標設定値)が加湿制御部(54)に入力される。続いて、ステップS206において、加湿制御部(54)によって、加湿パン(21)に貯留された水(22)に対する水位制御(PID演算)が行われる。具体的には、加湿制御部(54)は、湿度指示調節計(53)から出力された目標水位(目標設定値)、及び、水位センサー(27)によって測定された水(22)の水位に基づいてPID演算を行う。
次に、加湿制御部(54)は、ステップS207において、PID演算の結果として、給水弁(28)の開度の制御出力を行い、それに基づき、ステップS208において、給水弁(28)の開度が制御される。その結果、ステップS209において、加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位上昇量が制御される。
また、加湿制御部(54)は、ステップS210において、PID演算の結果として、排水弁(29)の開度の制御出力を行い、それに基づき、ステップS211において、排水弁(29)の開度が制御される。その結果、ステップS212において、加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位下降量が制御される。
以上に説明した本比較例を、例えば、-15℃(DB)の温度下で目標湿度を68%(RH)から90%(RH)に変更した場合の湿度制御に適用した場合、以下のような問題が生じる。
加湿部(20)による湿度制御が定常安定時に優れた制御精度を発揮するように、加湿制御部(54)における目標水位(目標設定値)の変化速度は遅く設定されている。このため、目標湿度設定の変更によってオーバーシュートが発生しても、加湿制御部(54)による修正動作がすぐには始まらないので、加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位上昇がしばらく続いてしまう。その結果、湿度が100%(RH)に達してしまい、温湿度制御を行うためのセンサー部等で着氷が生じ、正確な温湿度検出が困難になり、温湿度制御の精度が劣化するという問題が生じる。また、加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位(蒸発面積)の下限によって、例えば50%(RH)といった低湿状態への湿度制御が制限されてしまうという問題も生じる。
〈比較例2〉
以下、比較例2として、図1に示す空気調和装置(100)において流量調節制御部(55)が「加湿制御部(54)の目標設定値」に代えて「センサー(42)により測定された湿度」をそのまま用いた場合の湿度制御について、図面を参照しながら説明する。
図10は、比較例2に係る湿度制御のフロー図である。
比較例2に係る湿度制御においては、図10に示すように、まず、ステップS301において、湿度指示調節計(53)に対して目標湿度が設定される。続いて、ステップS302において、流量調節制御部(55)に対して目標湿度が設定される。本比較例では、流量調節制御部(55)の目標湿度は、湿度指示調節計(53)の目標湿度と同じに設定される。続いて、ステップS303において、センサー(42)によって空気の湿度(相対湿度)が測定される。
次に、ステップS304において、湿度指示調節計(53)によって湿度制御(PID演算)が行われる。具体的には、湿度指示調節計(53)は、予め設定された目標湿度、及び、センサー(42)によって測定された空気の湿度に基づきPID演算を行う。続いて、ステップS305において、湿度指示調節計(53)は、PID演算の結果として、加湿量制御を行う加湿制御部(54)の目標水位(目標設定値)を出力する。
次に、ステップS306において、湿度指示調節計(53)から出力された目標水位(目標設定値)が加湿制御部(54)に入力される。続いて、ステップS307において、加湿制御部(54)によって、加湿パン(21)に貯留された水(22)に対する水位制御(PID演算)が行われる。具体的には、加湿制御部(54)は、湿度指示調節計(53)から出力された目標水位(目標設定値)、及び、水位センサー(27)によって測定された水(22)の水位に基づいてPID演算を行う。
次に、加湿制御部(54)は、ステップS308において、PID演算の結果として、給水弁(28)の開度の制御出力を行い、それに基づき、ステップS309において、給水弁(28)の開度が制御される。その結果、ステップS310において、加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位上昇量が制御される。
また、加湿制御部(54)は、ステップS311において、PID演算の結果として、排水弁(29)の開度の制御出力を行い、それに基づき、ステップS312において、排水弁(29)の開度が制御される。その結果、ステップS313において、加湿パン(21)に貯留された水(22)の水位下降量が制御される。
一方、ステップS314において、流量調節制御部(55)は、予め設定された目標湿度、及び、センサー(42)によって測定された空気の湿度に基づき、流量調節部(30)(加湿ダンパ(31)及びバイパスダンパ(32))に対する空気流量制御(PID演算)を行う。
次に、流量調節制御部(55)は、ステップS315において、PID演算の結果として、加湿ダンパ(31)の開度の制御出力を行い、それに基づき、ステップS316において、加湿ダンパ(31)の開度が制御される。その結果、ステップS317において、加湿パン(21)が設けられた加湿風路(102)を流れる空気の流量が制御される。
また、流量調節制御部(55)は、ステップS318において、PID演算の結果として、バイパスダンパ(32)の開度の制御出力を行い、それに基づき、ステップS319において、バイパスダンパ(32)の開度が制御される。その結果、ステップS320において、加湿パン(21)をバイパスするバイパス風路(103)を流れる空気の流量が制御される。
以上に説明した本比較例は、前述の実施形態(各実施例を含む。以下同じ。)と比較して、以下のような問題点を有する。
すなわち、前述の実施形態では、定常安定時における加湿部(20)の優れた湿度制御精度が発揮されるように、定常安定状態では流量調節制御部(55)が流量調節部(30)を作動させないようにした。具体的には、流量調節制御部(55)は、予め設定された目標加湿量、及び、加湿制御部(54)の目標設定値に基づき、流量調節部(30)を制御した。
それに対して、本比較例では、流量調節制御部(55)は、予め設定された目標湿度、及び、センサー(42)によって測定された空気の湿度に基づき、流量調節部(30)を制御する。このため、定常安定時の湿度の微小な乱れに対しても流量調節制御部(55)が流量調節部(30)を作動させてしまうので、定常安定時における加湿部(20)の優れた湿度制御精度が発揮されないという問題が生じる。
《その他の実施形態》
空気調和装置(100)において、温度調節部(10)や加湿部(20)等の構成は特に制限されない。例えば、温度調節部(10)において、前段の吸込ファン(12)に代えて、後段に吹出ファンを設けてもよい。また、温度調節部(10)において、加湿風路(102)を流れる空気の速さを調整するファン(16)を設けなくてもよい。また、加湿部(20)において、上方へ向かうにつれて水平方向の断面積が増加する形状を持つ加湿パン(21)を用いたが、これに代えて、他の形状を持つ加湿パンを用いてもよい。或いは、加湿部(20)において、加湿パン(21)に代えて、例えば、水を霧状にして空気に吹き込み、これを蒸発させて加湿する水噴霧加湿装置、水蒸気を吹き込んで加湿する蒸気加湿装置、又は、空気の露点温度以上の大量の水を噴霧して加湿するエアウオッシャ装置等を用いてもよい。尚、加湿制御部(54)の目標設定値は、加湿パン(21)では目標水位であったが、加湿部(20)の構成に応じて適宜設定される。
また、空気調和装置(100)において、温度調節部(10)の下流に加湿部(20)を配置したが、この順番を入れ替えて、加湿部(20)の下流に温度調節部(10)を配置してもよい。この場合、加湿部(20)の上流で風路(101)を加湿風路(102)とバイパス風路(103)とに分岐し、加湿部(20)と温度調節部(10)との間で、加湿風路(102)とバイパス風路(103)とを合流させればよい。
また、空気調和装置(100)において、流量調節部(30)は、加湿ダンパ(31)とバイパスダンパ(32)とを有していたが、これに代えて、加湿ダンパ(31)又はバイパスダンパ(32)のいずれか一方のみを有していてもよい。
また、空気調和装置(100)において、センサー(42)は、空気の温度及び湿度の両方を測定したが、これに代えて、センサー(42)は、湿度のみを測定してもよい。また、湿度を測定できれば、センサー(42)の種類は特に制限されない。例えば、センサー(42)による湿度測定の対象を相対湿度としたが、これに代えて、絶対湿度としてもよい。
また、空気調和装置(100)において、環境試験室(200)の上流に設けたセンサー取付チャンバー(41)内にセンサー(42)を配置した。しかし、センサー(42)の配置場所は、温度調節部(10)及び加湿部(20)を通過した空気と接触可能な場所であれば、特に制限されない。例えば、環境試験室(200)内における空気吸込口近傍等にセンサー(42)を配置してもよい。
また、空気調和装置(100)において、湿度指示調節計(53)から出力された目標設定値を加湿制御部(54)及び流量調節制御部(55)のそれぞれに入力する構成としたが、流量調節制御部(55)において加湿制御部(54)の目標設定値を用いることができれば、制御部構成は特に制限されない。例えば、湿度指示調節計(53)の機能を加湿制御部(54)に統合し、加湿制御部(54)から出力された目標設定値を流量調節制御部(55)に入力する構成としてもよい。
また、空気調和装置(100)において、湿度指示調節計(53)や加湿制御部(54)のPID演算には、温度-湿度マッピングによるマルチPIDを用いてもよい。このようにすると、加湿部(20)において、例えば上方へ向かうに従い水平方向の断面積が増加する形状を持つ加湿パン(21)を用いる場合、単位加湿量を増大させるために水温や風速の制御が必要な低温領域(例えば-5℃~0℃)や、水位制御のみで高精度の湿度制御が行われる極低温領域(-15℃以下)などの各温度領域に応じた湿度制御が可能になる。
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
本開示は、空気調和装置について有用である。
10 温度調節部
11 空気吸込口
12 吸込ファン
13 ブラインクーラ
14 電気ヒータ
15 センサー
16 ファン
17 加湿側空気吹出口
18 バイパス側空気吹出口
20 加湿部
21 加湿パン
22 水
23 ヒータ
24 空気吸込口
25 空気吹出口
26 温度センサー
27 水位センサー
28 給水弁
29 排水弁
30 流量調節部
31 加湿ダンパ
32 バイパスダンパ
33 混合ボックス
34 加湿側空気吸込口
35 バイパス側空気吸込口
36 混合空気吹出口
41 センサー取付チャンバー
42 センサー
51 パン水温制御部
52 電気ヒータ制御部
53 湿度指示調節計
54 加湿制御部
55 流量調節制御部
61 混合ボックス
62 除湿機
100 空気調和装置
101 風路
102 加湿風路
103 バイパス風路
200 環境試験室

Claims (6)

  1. 空気の温度を調節する温度調節部(10)と、空気を加湿する加湿部(20)と、前記温度調節部(10)及び前記加湿部(20)を通過した空気の少なくとも湿度を測定するセンサー(42)と、前記加湿部(20)を制御する加湿制御部(54)とを備えた空気調和装置であって、
    前記加湿部(20)が配置された加湿風路(102)と、前記加湿部(20)をバイパスしたバイパス風路(103)と、前記加湿風路(102)へ流入する空気の流量と前記バイパス風路(103)へ流入する空気の流量との比率を調節する流量調節部(30)と、前記流量調節部(30)を制御する流量調節制御部(55)とをさらに備え、
    目標湿度と前記センサー(42)により測定された湿度とから定められる目標設定値に基づき、前記加湿制御部(54)が前記加湿部(20)を制御しながら、前記流量調節制御部(55)は、前記目標設定値を用いて前記流量調節部(30)を制御し、
    前記目標湿度、及び、前記センサー(42)により測定された湿度に基づき、前記目標設定値を前記加湿制御部(54)へ出力する湿度指示調節計(53)をさらに備え、
    前記流量調節制御部(55)は、予め設定された目標加湿量、及び、前記湿度指示調節計(53)から出力された前記目標設定値に基づき、前記流量調節部(30)を制御し、
    前記流量調節制御部(55)の前記目標加湿量は、前記目標湿度から決まる加湿量よりも低く設定されることを特徴とする空気調和装置。
  2. 請求項において、
    前記流量調節制御部(55)の前記目標加湿量は、前記目標湿度から決まる加湿量の50%以上90%以下であることを特徴とする空気調和装置。
  3. 請求項1又は2において、
    前記加湿部(20)は、貯留した水を蒸発させる加湿パン(21)を有し、
    前記加湿制御部(54)は、前記加湿パン(21)の蒸発面積を制御することを特徴とする空気調和装置。
  4. 請求項において、
    前記加湿パン(21)は、上方へ向かうに従い水平方向の断面積が増加する形状を持ち、
    前記加湿制御部(54)は、前記加湿パン(21)の水位を制御することを特徴とする空気調和装置。
  5. 請求項1乃至のいずれか1つにおいて、
    前記流量調節部(30)は、前記加湿風路(102)に設けられた開度可変の加湿ダンパ(31)と、前記バイパス風路(103)に設けられた開度可変のバイパスダンパ(32)とを有し、
    前記流量調節制御部(55)は、前記加湿ダンパ(31)及び前記バイパスダンパ(32)の各開度を制御することを特徴とする空気調和装置。
  6. 請求項1乃至のいずれか1つにおいて、
    前記流量調節制御部(55)は、前記センサー(42)により測定された湿度が、前記目標湿度を超えた場合、前記流量調節部(30)を制御することを特徴とする空気調和装置。
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