JP7371932B2 - 測定装置および測定方法 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 (その1) ウェブサイトの掲載日 平成30年2月7日(GMT) ウェブサイトのアドレス https://arxiv.org/abs/1707.04702v3 (その2) 発行日 平成30年3月5日 刊行物等 2018年応用物理学会春期学術講演会 講演予稿集 (その3) 発行日 平成30年3月5日 刊行物等 2018年応用物理学会春期学術講演会 講演予稿集 (その4) 開催日 平成30年3月19日 集会名、開催場所 2018年応用物理学会春期学術講演会 早稲田大学西早稲田キャンパス(東京都新宿区大久保3丁目3-4-1) (その5) 開催日 平成30年3月19日 集会名、開催場所 2018年応用物理学会春期学術講演会 早稲田大学西早稲田キャンパス(東京都新宿区大久保3丁目3-4-1)
本発明は、色中心をセンサに用いるセンサ素子、測定装置および測定方法に関する。
ダイヤモンドの結晶構造において、窒素-空孔中心と呼ばれる複合欠陥が見られることがある。この窒素-空孔中心は、結晶格子の炭素原子の位置に置き換わる形で入った窒素原子と、その窒素原子の隣接位置に存在する(炭素原子が抜けている)空孔との対からなるもので、NV中心(Nitrogen Vacancy center)とも呼ばれている。ダイヤモンドの結晶構造には、NV中心以外にも、珪素-空孔中心(Silicon Vacancy center)と呼ばれる複合欠陥や、ゲルマニウム-空孔中心(Germanium Vacancy center)と呼ばれる複合欠陥が見られることがあり、NV中心を含むこれら複合欠陥は、色中心と呼ばれている。
NV中心は、空孔に電子が捕獲された状態(負電荷状態、以下「NV」と呼ぶ)においては、電子スピンと呼ばれる磁気的な性質を示す。このNVは、電子が捕獲されていない状態(中性状態、以下「NV」と呼ぶ)に比べて、長い横緩和時間(デコヒーレンス時間、以下「T」と呼ぶ)を示す。つまり、NVの電子スピン状態は、外部磁場の縦方向(以下、「量子化軸」と呼ぶ)に揃えた電子スピンの磁化を横方向に傾けた後、個々のスピンの歳差運動が原因となり個々の向きがずれていって、全体としての横磁化が消失するまでの時間が長い。また、NVは、室温(約300K)下であっても長いT値を示す。
NVの電子スピン状態は外部の磁場に反応して変化し、この電子スピン状態の測定も室温下で可能であるため、NV中心を含むダイヤモンドは、磁場センサ素子の材料として利用できる。
さらに、NVの電子スピン状態は、電磁波照射などの方法により、外部から人為的に操作する(特定の電子スピン状態に置く)こともできる。この操作も室温下で可能であるため、Tが長いことと合わせて、NV中心は、量子状態の書き込みおよび読み出しが安定して行える量子ビットとして利用可能なことが期待され、NV中心等の色中心を含むダイヤモンドは、量子情報素子や電子回路素子の材料としての利用が期待されている。
例えば特許文献1には、色中心を含むダイヤモンドを用いたセンサが開示されている。
特表2017-514130号公報
このような、ダイヤモンド中の色中心をセンサに用いる磁場等の測定において、測定感度をさらに向上することが求められている。
一例として、磁場を測定する場合について説明する。ダイヤモンド中の色中心を用いたセンサによる磁場測定の検出感度は、次の式で表される。
Figure 0007371932000001
ここで、Bminは、検出可能な磁場の最小強度であり、Nは量子ビット数である。デコヒーレンス時間Tが増大すると検出可能な磁場の最小強度Bminも減少することから、測定感度をさらに向上させるために、デコヒーレンス時間をさらに増大させることが求められている。
本発明は、色中心をセンサに用いる測定において、測定感度を向上させることを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、例えば以下に示す態様を含む。
(項1)
ダイヤモンドの結晶構造に色中心を有し、かつ色中心の電子スピン状態がドレスト状態であるセンサ素子。
(項2)
前記色中心は、1つの炭素原子を置換した窒素(N)と前記窒素に隣接する空孔(V)とを含んでいるダイモンドの複合体である、項1に記載のセンサ素子。
(項3)
測定対象との相互作用により変化する色中心の電子スピン状態にドレスト状態を生成するための駆動用のマイクロ波と、前記電子スピン状態を操作するための操作用の電磁波とを、前記色中心を有するセンサ素子に照射する照射部と、
前記測定対象との相互作用後の、前記ドレスト状態にある前記電子スピン状態に基づいて、前記測定対象の物理量を算出する物理量測定部と、
を備える、測定装置。
(項4)
前記物理量測定部は、
前記測定対象との相互作用後の、前記ドレスト状態にある前記電子スピン状態について、複数のエネルギー準位間の位相の情報を量子演算する量子回路部と、
前記量子演算後の前記位相の情報を読み出すための光を、前記センサ素子に照射する光照射部と、
前記光の照射によって前記センサ素子に生じる変化を検出する検出部と、
前記検出された変化から前記量子演算後の前記位相の情報を読み出し、読み出した前記位相の情報に基づいて前記物理量を算出するデータ処理部と、
を備える、項3に記載の測定装置。
(項5)
前記量子回路部は、
前記複数のエネルギー準位のそれぞれに作用する複数のアダマール作用部と、
複数の前記アダマール作用部の出力のそれぞれに作用し、量子的な補助状態に出力を加算する複数のユニタリ作用部と、
を備える、項4に記載の測定装置。
(項6)
前記色中心は、炭素原子を置換した窒素(N)と前記窒素に隣接する空孔(V)との複合体である、項3から5のいずれか1項に記載の測定装置。
(項7)
前記物理量測定部は、電子スピンとの相互作用に関連する前記物理量として、磁場、電場、温度および力学量のうち、少なくとも一つを算出する、項3から6のいずれか1項に記載の測定装置。
(項8)
色中心を有するセンサ素子に、測定対象との相互作用により変化する前記色中心の電子スピン状態にドレスト状態を生成するための駆動用のマイクロ波を照射するステップと、
前記電子スピン状態を操作するための操作用の電磁波を、前記センサ素子に照射するステップと、
前記測定対象との相互作用後の、前記ドレスト状態にある前記電子スピン状態に基づいて、前記測定対象の物理量を算出するステップと、
を含む、測定方法。
(項9)
前記物理量を算出するステップは、
前記ドレスト状態にある前記電子スピン状態について、複数のエネルギー準位間の位相の情報を量子演算するステップと、
前記量子演算後の前記位相の情報を読み出すための光を、前記センサ素子に照射するステップと、
前記光の照射によって前記センサ素子に生じる変化を検出するステップと、
前記検出された変化から前記量子演算後の前記位相の情報を読み出し、読み出した前記位相の情報に基づいて前記物理量を算出するステップと、
を含む、項8に記載の測定方法。
(項10)
前記量子演算を行うステップは、
前記複数のエネルギー準位のそれぞれにアダマールゲートを作用させるステップと、
複数の前記アダマールゲートの出力のそれぞれにユニタリ作用素を作用させ、複数の前記ユニタリ作用素の出力のそれぞれを、量子的な補助状態に加算するステップと、
を含む、項9に記載の測定方法。
(項11)
前記操作用の電磁波を照射するステップは、
π/2パルスを照射することにより、量子化軸に沿った電子スピンを、前記量子化軸に垂直な平面に傾ける操作を行うステップと、
πパルスを照射することにより、前記測定対象との相互作用により位相緩和された前記電子スピンを、前記平面内において反転させる操作を行うステップと、
π/2パルスを照射することにより、位相緩和された前記電子スピンを、前記量子化軸に射影する操作を行うステップと、
を含む、項8から10のいずれか1項に記載の測定方法。
(項12)
前記操作用の電磁波を照射するステップは、
π/2パルスを照射することにより、量子化軸に沿った電子スピンを、前記量子化軸に垂直な平面に傾ける操作を行うステップと、
π/2パルスを照射することにより、前記測定対象との相互作用により位相緩和された前記電子スピンを、前記量子化軸に射影する操作を行うステップと、
を含む、項8から10のいずれか1項に記載の測定方法。
本発明によると、色中心をセンサに用いる測定において、測定感度を向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る測定装置の概略的な構成を模式的に示す図である。 一連の測定手順を行う間の、NV中心における電子スピンのエネルギー準位の変化を模式的に示す図である。 ドレスト状態を生成する前および後の、NV中心における電子スピンのエネルギー準位を模式的に示す図である。 ドレスト状態に対する量子演算を行う量子回路部を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る測定方法の手順を示すフローチャートである。 交流磁場をセンシングする場合の詳細な手順を示すフローチャートである。 交流磁場をセンシングする場合のパルスシーケンスである。 図7のパルスシーケンスに対応する電子スピンの挙動を模式的に示す図である。 量子演算の詳細な手順を示すフローチャートである。 静磁場をセンシングする場合の詳細な手順を示すフローチャートである。 静磁場をセンシングする場合のパルスシーケンスである。 図11のパルスシーケンスに対応する電子スピンの挙動を模式的に示す図である。 実施例1におけるデコヒーレンス時間Tの測定結果を示すグラフである。 実施例2におけるドレスト状態にある電子スピンについてのデコヒーレンス時間T の測定結果を示すグラフである。 実施例2におけるベア状態にある電子スピンについてのデコヒーレンス時間T の測定結果を示すグラフである。 実施例3における磁気共鳴信号の強度と測定対象の静磁場との対応関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する重複した説明を省略する。
なお、本明細書において、物理量(physical quantity)とは、物理学における一定の体系の下で次元が確定し、定められた物理単位の倍数として表すことができる量を意味する。物理量の一例としては、例えば、磁場、電場、温度および力学量(力学的なストレス、圧力等)が挙げられる。磁場、電場および力学量は、時間と共に変化しない物理量と、時間と共に方向が変化を繰り返す物理量とを含む。すなわち、磁場は、静磁場および交流磁場を含み、電場は、静電場および交流電場を含み、力学量は、静的な力学量および交流力学量を含む。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態では、測定対象の物理量の一例として、測定対象から発生している交流磁場(alternating magnetic field)の強度を測定する場合について説明する。
[装置構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る測定装置10の概略的な構成を模式的に示す図である。
測定装置10は、センサ素子1と、照射部2と、物理量測定部3と、を備える。一例として、本実施形態では、共焦点レーザ顕微鏡を測定装置10の構成に用いることができる。
本実施形態では、センサ素子1は、色中心を有しているダイヤモンドの結晶であり、色中心としてNV中心を用いる。NV中心は、炭素原子を置換した窒素(N)と、窒素に隣接する空孔(V)との複合体(複合欠陥)である。センサ素子1は、本実施形態では、測定装置10のプローブ11先端に取り付けられている。
センサ素子1が有する色中心の電子スピン状態は、測定対象9との相互作用8により変化を受ける。本実施形態では、相互作用8は交流磁場による相互作用である。相互作用8が交流磁場による場合には、センサ素子1の色中心の電子スピン状態は、測定対象9から発生している交流磁場の強度に応じた状態となる。
照射部2は、駆動用マイクロ波照射部21と、操作用電磁波照射部22とを備える。駆動用マイクロ波照射部21は、色中心の電子スピン状態にドレスト状態(dressed states)を生成するための駆動用のマイクロ波を、センサ素子1に照射する。ドレスト状態の詳細については後述する。操作用電磁波照射部22は、色中心の電子スピン状態を操作するための操作用の電磁波を、センサ素子1に照射する。本実施形態では、駆動用のマイクロ波は、連続波(continuous wave)の形式で、もしくはパルス化された形式でセンサ素子1に照射され、操作用の電磁波は、パルス化された形式でセンサ素子1に照射される。駆動用マイクロ波照射部21および操作用電磁波照射部22には、公知のマイクロ波(microwave, MW)発振器を用いることができる。
物理量測定部3は、測定対象9との相互作用後の、色中心のドレスト状態にある電子スピン状態に基づいて、測定対象9の物理量を算出する。本実施形態では、物理量測定部3は、測定対象9から発生している交流磁場の強度を算出する。物理量測定部3は、量子回路部31と、光照射部32と、検出部33と、データ処理部34とを備える。
量子回路部31は、測定対象9との相互作用後の、ドレスト状態にある電子スピン状態について、複数のエネルギー準位間の位相情報を量子演算する。一例として、量子回路部31は、例えば電磁波パルスによる量子ゲートを用いた磁気共鳴による手法により実現される。量子演算の詳細については後述する。量子回路部31は、公知のマイクロ波発振器(パルスジェネレータ)とマイクロ波スイッチとを用いて構成することができる。量子回路部31の構成に用いるマイクロ波発振器と照射部2の構成に用いるマイクロ波発振器とは、それぞれ別個の機器であってもよいし、一体化して構成されてもよい。
光照射部32は、量子演算後の位相情報を読み出すための光を、センサ素子1に照射する。また、光照射部32は、色中心の電子スピン状態を初期化するための光をセンサ素子1に照射する。光照射部32には、例えば種々の公知のレーザ発生装置を用いることができる。任意の構成として、光照射部32は、音響光学変調素子(Acoustic Optical Modulator: AOM)を備えることができる。音響光学変調素子は、入力されるレーザ光をパルス化して出力することができる。
検出部33は、センサ素子1に生じる変化を検出する。本実施形態では、検出部33は、センサ素子1から放出される光を検出することにより、公知の光検出磁気共鳴(Optically Detected Magnetic Resonance: ODMR)法により、磁気共鳴の信号を発光強度の変化として検出する。この場合、検出部33には、例えば公知のフォトダイオードを用いることができる。フォトダイオードには、例えばアバランシェフォトダイオードを用いることができる。
なお、本実施形態では、照射部2において操作用の電磁波をパルス化した形式で照射している。よって、本実施形態では、具体的にはPulsed Optically Detected Magnetic Resonance(pODMR)法による検出を行う。
データ処理部34は、検出部33と接続され、検出部33にて検出された変化から量子演算後の位相情報を読み出し、読み出した位相情報に基づいて測定対象9の物理量を算出する。本実施形態では、データ処理部34は、測定対象9から発生している交流磁場の強度を算出する。データ処理部34には、例えば公知の汎用コンピュータや、スマートフォン等の種々の情報端末装置を用いることができる。これら情報端末装置は、データを処理するプロセッサを備えている。データ処理部34は、プロセッサに代えて電子回路で構成されてもよい。
データ処理部34は、測定装置10と一体化されて構成されていてもよいし、または図示するように、測定装置10の外部に設けられて、ネットワーク99を介して測定装置10と接続されていてもよい。
[測定原理]
図2は、一連の測定手順を行う間の、NV中心における電子スピンのエネルギー準位の変化を模式的に示す図である。図中、NV中心の量子状態を|m,m>で表す。mはNV中心の電子スピンであり、mは窒素(14N)の核スピンである。
本発明では、NV中心における電子スピン状態にドレスト状態|φ>,|φ>を生成し、生成した複数のドレスト状態|φ>,|φ>の位相を、量子演算により足し合わせて検出する。さらにNV中心における電子スピン状態にドレスト状態を生成することにより、電子スピンのデコヒーレンス時間が増大する。デコヒーレンス時間が増大する理由はマイクロ波モードが外部ノイズに強いからである。つまり、マイクロ波モードとNV中心が結合することによって、NV中心も含めてノイズに強くなることから減衰しにくくなり、その結果デコヒーレンス時間が増大する。つまり、量子演算による足し合わせとデコヒーレンス時間の増大により検出可能な磁場の最小強度Bminが減少し、磁場の測定感度が向上する。本発明では、物理量の測定において、色中心の電子スピン状態がドレスト状態であるこのようなセンサ素子1を用いることにより、測定感度を向上させている。
マイクロ波によるドレスト状態とは、対象の系(system)と対象に照射するマイクロ波のモードとが結合することにより生成される新たな量子状態である。ドレスト状態とは、電子スピンがマイクロ波の衣をまとった状態のことである。本発明におけるマイクロ波ドレスト状態の生成は、Autler-Townes splitting (ATS)法に基づいている。センサ素子1に照射する駆動用のマイクロ波の強度および周波数等は、ATS法に基づいて適宜決定することができる。
図2(a)は、ドレスト状態生成前の状態を示している。NV中心の基底状態はスピン三重項状態であり、光の吸収により、基底状態のスピン三重項状態は励起される。室温における定常状態では、基底状態において全ての準位は等しく分布している。この状態において、レーザ光を用いてNV中心を光励起すると、各準位の分布確率が偏在し、NV中心の基底状態は偏極状態となる。レーザ光照射後の、NV中心の基底状態は、|0,0>、|0,1>および|0,-1>と表される。
図3は、ドレスト状態を生成する前および後の、NV中心における電子スピンのエネルギー準位を模式的に示す図である。ドレスト状態生成前の状態を(a)に示し、ドレスト状態生成後の状態を(b)に示す。図2(b)は、ドレスト状態生成後に磁場センシングを行う状態を示している。
NV中心の基底状態|0,-1>と励起状態|-1,-1>との間の共鳴周波数ωdriveで相当する駆動用のマイクロ波をその強度ΩdriveでNV中心に照射すると、NV中心の電子スピン状態には、2つのドレスト状態|φ>、|φ>が生成される。具体的には、|-1,-1>および|0,-1>の2つの準位に関してドレスト状態を生成すると、|-1,-1>|n>、|0,-1>|n+1>、|-1,-1>|n-1>、および|0,-1>|n>の4準位が生成される。ここで、|n-1>、|n>、|n+1>は駆動用のマイクロ波のモードであり、nは0を含む正の整数(0,1,2,・・・)である。このとき、|-1,-1>|n-1>と|0,-1>|n>との間の分裂幅、および|-1,-1>|n>と|0,-1>|n+1>との間の分裂幅Ωは、駆動用のマイクロ波の強度Ωdriveと等しい。すなわち、Ωdriveと等しい周波数のマイクロ波によって、2つの準位間を同時に操作することが可能である。これは、1回の磁場センシングにより、ドレスト状態にある2つの準位を同時に測定していることを意味している。磁場センシングの詳細な手順については後述する。
図2(c)は、量子演算後の位相情報を読み出す状態を示している。
磁場センシングを行った後、生成した2つのドレスト状態|φ>,|φ>の位相情報を、量子演算により足し合わせて検出する。量子演算による足し合わせには、後述する量子回路部を用いる。量子演算時に演算の補助として用いる補助状態(ancilla state)には、本実施形態では、例えば|-1,0>を用いる。その後、量子演算による足し合わせ後の状態について、光検出磁気共鳴(ODMR)法により、NV中心の基底状態|0,-1>と励起状態|-1,-1>との間の磁気共鳴の信号を、発光強度の変化として検出する。発光強度の変化には、量子演算後の位相情報が含まれている。
図4は、ドレスト状態に対する量子演算を行う量子回路部を模式的に示す図である。
量子回路部31は、第1のアダマール作用部51と、第2のアダマール作用部52と、第1のユニタリ作用部53と、第2のユニタリ作用部54と、を備える。本実施形態では、量子回路部31は、状態|-1,0>を、演算を補助するための補助状態に用いる。補助状態には、第1のユニタリ作用部53による作用後の出力と第2のユニタリ作用部54による作用後の出力とが加算される。
第1のアダマール作用部51は、ドレスト状態1|φ>に作用する。第1のユニタリ作用部53は、第1のアダマール作用部51の出力に作用して、出力を補助状態|-1,0>に加算する。第2のアダマール作用部52は、ドレスト状態2|φ>に作用する。第2のユニタリ作用部54は、第2のアダマール作用部52の出力に作用して、出力を補助状態|-1,0>に加算する。例えば量子ゲートにて実装される量子回路において、第1のアダマールゲート作用部51および第2のアダマールゲート作用部52は、アダマールゲートとして機能し、第1のユニタリ作用部53および第2のユニタリ作用部54は、ユニタリ作用素(ユニタリゲート)として機能する。
補助状態に加算した位相情報は、光検出磁気共鳴(ODMR)法により、発光強度の変化として検出する。検出した位相情報は、測定対象の物理量に応じた状態となっている。よって、検出した相互作用後の電子スピン状態の位相情報を、適切にデータ処理することにより、測定対象の物理量を算出することができる。測定対象の物理量は、電子スピンのハミルトニアンに基づいて算出することができる。
電子スピンのハミルトニアンHgsは、以下の式で表される。
Figure 0007371932000002
ここで、μはボーア磁子であり、gは電子のg因子であり、hはプランク定数である。ベクトルSは電子スピンである。ベクトルBは印加磁場である。Dgsは零磁場分裂定数である。S,S,Sはそれぞれ、電子スピンSのx,y,z方向成分である。dgs は、電気双極子モーメントである。E,Eはそれぞれ、電場のx,y方向成分である。
1番目の項
Figure 0007371932000003
は、ゼーマン効果による項であり、電子スピンが磁場センサとして機能することを意味している。
2番目の項および3番目の項は、双極子相互作用(すなわち、スピン間相互作用)による項である。2番目の項
Figure 0007371932000004
は、電子スピンが温度センサおよび力学量(圧力)センサとして機能することを意味している。3番目の項
Figure 0007371932000005
は、電子スピンが電場センサとして機能することを意味している。
よって、磁場の強度は、1番目の項に基づいて算出することができる。温度および力学量の強度は、2番目の項に基づいて算出することができる。電場の強度は、3番目の項に基づいて算出することができる。
[測定手順]
図5は、本発明の一実施形態に係る測定方法の手順を示すフローチャートである。
ステップS1において、センサ素子1にレーザ光を照射することにより、センサ素子1の色中心(NV中心)の電子スピンを初期化する。その後、初期化されたNV中心の電子スピンを、測定対象9の交流磁場と相互作用させる。十分な時間の間、相互作用をさせると、NV中心の電子スピン状態は、交流磁場の強度に応じた状態となる。
ステップS2において、センサ素子1に駆動用のマイクロ波を照射することにより、NV中心の電子スピン状態にドレスト状態を生成する。これにより、センサ素子1のNV中心の電子スピン状態はドレスト状態となる。
ステップS3において、センサ素子1にスピン操作用の電磁波を照射することにより、磁場センシングを行う。本実施形態では、図6のステップS31A~S33Aに示す手順により、交流磁場のセンシングを行う。
<交流磁場のセンシング>
図6は、交流磁場をセンシングする場合の詳細な手順を示すフローチャートである。図7は、交流磁場をセンシングする場合のパルスシーケンスである。図8は、図7のパルスシーケンスに対応する電子スピンの挙動を模式的に示す図である。図8中、上側にはドレスト状態1|φ>の電子スピンを示し、下側にはドレスト状態2|φ>の電子スピンを示している。
状態Iは、ステップS1の状態に対応しており、レーザ光の照射により電子スピンを初期化した状態を表している。電子スピン7は、量子化軸であるz軸に沿った方向に揃っている。状態IIは、ステップS2の状態に対応しており、2つのドレスト状態を生成した状態を表している。
次いで、ステップS31Aにおいて、π/2パルスを照射することにより、量子化軸に沿った電子スピンを、量子化軸に垂直な平面に傾ける操作を行う。状態IIに示すように、電子スピン7はxy平面に倒される。その後、状態IIIに示すように、xy平面に倒された電子スピン7は、所定の時間τの間に、交流磁場および静磁場との相互作用によって位相緩和する。時間τは、測定対象交流磁場の半波長に対応する時間である。
所定の時間τが経過した後、ステップS32Aにおいて、πパルスを照射することにより、測定対象との相互作用により位相緩和された電子スピンを、平面内において反転させる操作を行う。状態IIIから状態IVに示すように、電子スピン7は、xy平面においてその先端の位置が回転している。この際、状態Vに示すように、電子スピン7が再収束することにより、静磁場成分は打ち消されるが、交流磁場成分は、状態IIIのときと強度が反転しているため打ち消されない。
所定の時間τがさらに経過した後、ステップS33Aにおいて、π/2パルスを照射することにより、位相緩和された電子スピンを、量子化軸に射影する操作を行う。状態VIに示すように、xy平面内に位置していた電子スピン7は、量子化軸であるz軸に射影され、z軸に沿った方向に揃えられる。
なお、状態VIIは後述するステップS4の状態に対応しており、状態VIIIは後述するステップS5の状態に対応している。
図5および図4を再び参照する。ステップS4において量子演算を行うことにより、ドレスト状態にある電子スピン状態について、複数のエネルギー準位間の位相情報を量子演算する。
図9は、量子演算の詳細な手順を示すフローチャートである。
ステップS41において、複数のエネルギー準位のそれぞれにアダマールゲートを作用させる。ドレスト状態1|φ>には第1のアダマール作用部51を作用させ、ドレスト状態2|φ>には第2のアダマール作用部52を作用させる。
Figure 0007371932000006
ステップS42において、複数のアダマールゲートの出力のそれぞれにユニタリ作用素を作用させる。第1のアダマール作用部51の出力には第1のユニタリ作用部53を作用させ、第2のアダマール作用部52の出力には第2のユニタリ作用部54を作用させる。
次いで、ステップS43において、複数のユニタリ作用素の出力のそれぞれを、量子的な補助状態に加算する。本実施形態では、2つのユニタリ作用部53,54からの出力である位相情報が補助状態|-1,0>に加算され、その結果、位相情報が2倍される。
Figure 0007371932000007
図5および図2を再び参照する。ステップS5において、センサ素子1にレーザ光を照射して、センサ素子1に生じる変化を検出することにより、量子演算後の位相情報の読み出しを行う。本実施形態では、センサ素子1から放出される光を検出することにより、相互作用後の電子スピン状態の、量子演算後の位相情報の読み出しを行う。
まず、加算して補助状態|-1,0>に保持されている位相情報を、πパルスを用いることにより状態|-1,-1>に移動させる。次に、移動させた後の、状態|-1,-1>に保持されている位相情報を、光検出磁気共鳴(ODMR)法により、発光強度の変化として検出部33を用いて検出する。
なお、ステップS1からステップS5に示す手順を繰り返し実行することにより、信号強度を積算してS/Nを向上させることができる。
ステップS6において、測定対象の磁場の強度を算出する。検出部33にて検出した相互作用後の電子スピン状態の位相情報は、測定対象9の交流磁場に応じた状態となっている。よって、検出した相互作用後の電子スピン状態の位相情報を適切にデータ処理することにより、交流磁場の強度を算出することができる。例えば、相互作用後の電子スピン状態が基底状態となる確率を求めることにより、測定対象9の交流磁場の強度を算出することができる。強度の算出は、電子スピンのハミルトニアンHgsの、ゼーマン効果による項に基づいて行う。
以上、本発明の第1の実施形態によると、色中心における電子スピン状態にドレスト状態を生成することにより、デコヒーレンス時間Tを増大させることができる。これにより、検出可能な交流磁場の最小強度Bminを減少させることができ、色中心をセンサに用いる測定において、交流磁場の測定感度を向上させることができる。
また、本発明の一実施形態に係る測定装置10は、冷却機構を用いることなく室温(約300K)下にて動作することができる。先進的な高感度の磁場センサの一例として知られている超伝導量子干渉計(superconducting quantum interference device, SQUID)は、超伝導状態を維持するために、例えば液体窒素等による冷却機構を必要としている。これに対し、本発明の一実施形態に係る測定装置10は、冷却機構を備える必要が無いため、装置の小型化や、他の装置への搭載(例えば、自動車等の輸送機器への搭載)が容易である点において、他の先進的な磁場センサと比較して有利である。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態では、測定対象の物理量の一例として、測定対象から発生している静磁場(static magnetic field)の強度を測定する場合について説明する。
第2の実施形態では、ステップS3における磁場センシングの詳細な手順が、第1の実施形態における手順と異なる。これ以外の手順については、第1の実施形態における手順と同様である。
<静磁場のセンシング>
図10は、静磁場をセンシングする場合の詳細な手順を示すフローチャートである。図11は、静磁場をセンシングする場合のパルスシーケンスである。図12は、図11のパルスシーケンスに対応する電子スピンの挙動を模式的に示す図である。図12中、上側にはドレスト状態1|φ>の電子スピンを示し、下側にはドレスト状態2|φ>の電子スピンを示している。
状態Iは、図5のフローチャートに示すステップS1の状態に対応しており、レーザ光の照射により電子スピンを初期化した状態を表している。電子スピン7は、量子化軸であるz軸に沿った方向に揃っている。状態IIは、図5のフローチャートに示すステップS2の状態に対応しており、2つのドレスト状態を生成した状態を表している。
次いで、ステップS31Bにおいて、π/2パルスを照射することにより、量子化軸に沿った電子スピンを、量子化軸に垂直な平面に傾ける操作を行う。状態IIに示すように、電子スピン7はxy平面に倒される。その後、状態IIIに示すように、xy平面に倒された電子スピン7は、所定の時間τの間に、静磁場との相互作用によって位相緩和する。
所定の時間τがさらに経過した後、ステップS32Bにおいて、π/2パルスを照射することにより、位相緩和された電子スピンを、量子化軸に射影する操作を行う。状態IVに示すように、xy平面内に位置していた電子スピン7は、量子化軸であるz軸に射影され、z軸に沿った方向に揃えられる。
なお、状態VはステップS4の状態に対応しており、状態VIはステップS5の状態に対応している。
以上、本発明の第2の実施形態によると、色中心をセンサに用いる測定において、静磁場の測定感度を向上させることができる。
[その他の形態]
以上、本発明を特定の実施形態によって説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
上記した実施形態では、2つのドレスト状態|φ>, |φ>を生成しているが、生成するドレスト状態の数は2つに限らず、複数のドレスト状態を生成することができる。例えば3つのドレスト状態|φ>, |φ>, |φ>を生成する場合には、量子回路部31は、3つのアダマール作用部と3つのユニタリ作用部とを備え、3つのドレスト状態|φ>, |φ>, |φ>を足し合わせると良い。
上記した実施形態では、測定対象の物理量は磁場(交流磁場または静磁場)であるが、磁場に限らず、電場、温度および力学量(力学的なストレス、圧力等)を測定対象の物理量とすることができる。これら物理量は、電子スピンとの相互作用に関連する物理量であり、電子スピンのハミルトニアンに基づいて算出することができる。
上記した実施形態では、センサ素子1のダイヤモンドの色中心としてNV中心を用いているが、用いる色中心はNV中心に限定されない。NV中心に代えて、珪素-空孔中心またはゲルマニウム-空孔中心を、センサ素子1のダイヤモンドの色中心に用いてもよい。また、色中心もダイヤモンド結晶の色中心に限定されず、色中心の電子スピン状態にドレスト状態を生成することができる限り、種々の結晶の色中心をセンサ素子1に用いることができる。
上記した実施形態では、相互作用後の電子スピン状態に関する磁気共鳴の信号を、光検出磁気共鳴(ODMR)法により発光強度の変化として検出しているが、磁気共鳴信号を測定する方法はこれに限定されない。例えば、磁気共鳴信号は、公知の電気検出磁気共鳴(Electrically Detected Magnetic Resonance: EDMR)法により測定することができる。電気検出磁気共鳴(EDMR)法では、ダイヤモンドの色中心等のセンサ素子1の光励起により、スピン状態に依存した光電流が生成される。この光電流は、スピン状態に依存した励起状態の寿命の違いにより生成されている。検出部33は、センサ素子1の電気抵抗(またはセンサ素子1に生じる光電流)を検出することにより、磁気共鳴の信号を電気抵抗率の変化(または光照射による光電流の変化)として検出する。すなわち、検出部33は電気的検出部として機能する。検出部33には、例えば公知の電流計を用いることができる。
また、静磁場をセンシングする場合の図11に示すパルスシーケンスにおいて、直流磁場は、少なくとも状態IIIに対応する区間においてセンサ素子1に印加されていればよい。
以下に本発明の実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
<実施例1>
実施例1では、第1の実施形態に係る測定方法に基づいて、交流磁場を測定する場合のパルスシーケンスを用いて、NVのドレスト状態にある電子スピンについて磁気共鳴信号の強度を測定した。また、測定により得られた信号強度から、ドレスト状態にある電子スピンのデコヒーレンス時間Tを求めた。
図13は、実施例1におけるデコヒーレンス時間Tの測定結果を示すグラフである。グラフの縦軸は、磁気共鳴信号の強度(エコー強度)に対応する。グラフには比較のため、NVのベア状態にある(すなわち、ドレスト状態にない)電子スピンのデコヒーレンス時間Tの測定結果も示す。グラフ中、ドレスト状態にある電子スピンについての磁気共鳴信号の強度の測定値をスクエア記号で示し、これら測定値のフィッティングラインを符号61で示す。同様に、ベア状態にある電子スピンからの磁気共鳴信号の強度の測定値をサークル記号で示し、これら測定値のフィッティングラインを符号62で示す。
測定の結果、ドレスト状態にある電子スピンのデコヒーレンス時間Tは約1.5msであり、ベア状態にある電子スピンのデコヒーレンス時間Tは約4.2μsであった。この実施例1における測定結果によると、NVの電子スピンにドレスト状態を生成することにより、デコヒーレンス時間Tは100倍以上(約350倍)に増大した。
デコヒーレンス時間Tが増大すると、検出可能な磁場の最小強度Bminは減少し、検出感度は向上する。よって、交流磁場を測定する場合において、NVの電子スピンにドレスト状態を生成することにより、検出可能な磁場の最小強度Bminが減少し、ダイヤモンド中の色中心を用いたセンサによる磁場測定において、検出感度が向上することが示された。
<実施例2>
実施例2では、第2の実施形態に係る測定方法に基づいて、静磁場を測定する場合のパルスシーケンスを用いて、NVのドレスト状態にある電子スピンについて磁気共鳴信号の強度を測定した。エコー法から求められたデコヒーレンス時間Tに対し、この場合のデコヒーレンス時間をT と呼ぶ。測定により得られた信号強度から、ドレスト状態にある電子スピンのデコヒーレンス時間T を求めた。測定に用いたレーザ光の出力は約100μWであり、レーザ光のパルス幅は約10μsであり、πパルスのパルス幅は約42nsであった。
図14は、実施例2におけるドレスト状態にある電子スピンについてのデコヒーレンス時間T の測定結果を示すグラフである。グラフ中、磁気共鳴信号の強度の測定値をスクエア記号で示し、これら測定値のフィッティングラインを実線で示す。測定の結果、ドレスト状態にある電子スピンのデコヒーレンス時間T は、15.4±5.3μsであった。
また、比較のため、NVのベア状態にある電子スピンについて磁気共鳴信号の強度を測定した。測定により得られた信号強度から、ベア状態にある電子スピンのデコヒーレンス時間T を求めた。測定に用いたレーザ光の出力は約100μWであり、レーザ光のパルス幅は約10μsであり、πパルスのパルス幅は約44nsであった。
図15は、実施例2におけるベア状態にある電子スピンについてのデコヒーレンス時間T の測定結果を示すグラフである。グラフ中、磁気共鳴信号の強度の測定値をスクエア記号で示し、これら測定値のフィッティングラインを実線で示す。測定の結果、ベア状態にある電子スピンのデコヒーレンス時間T は、0.95±0.27μsであった。
図14および図15の各測定結果に示すように、NVの電子スピンにドレスト状態を生成することにより、デコヒーレンス時間T は約15倍に増大した。よって、静磁場を測定する場合において、NVの電子スピンにドレスト状態を生成することにより、検出感度が向上することが示された。
<実施例3>
実施例3では、静磁場を測定する場合について、電子スピンにドレスト状態を生成する場合と電子スピンにドレスト状態を生成しない(ベア状態にある)場合とで検出感度の比較を行った。磁気共鳴信号の強度の測定は、実施例2と同様の条件で行った。パルスシーケンスにおけるπ/2パルス間の時間τは25μsであった。
図16は、実施例3における磁気共鳴信号の強度と測定対象の静磁場との対応関係を示すグラフである。図16に示すグラフは、測定対象の静磁場の大きさを変化させることにより得られた。グラフ中、磁気共鳴信号の強度の測定値をスクエア記号で示し、これら測定値のフィッティングラインを実線で示す。この図16に示すグラフのフィッティングラインの傾きと、グラフの縦軸に示す磁気共鳴信号の強度の測定値の標準偏差σとに基づいて、検出感度を算出した。また、電子スピンにドレスト状態を生成しない場合についても図16と同様のグラフを作成し、作成したグラフから検出感度を算出した。検出感度の算出結果を表1に示す。
Figure 0007371932000008
表1の算出結果に示すように、NVの電子スピンにドレスト状態を生成することにより、検出感度は約3.1倍に増大した。よって、静磁場を測定する場合において、NVの電子スピンにドレスト状態を生成することにより、検出感度が向上することが確認された。
1 センサ素子
2 照射部
3 物理量測定部
7 電子スピン
8 相互作用
9 測定対象
10 測定装置
11 プローブ
21 駆動用マイクロ波照射部
22 操作用電磁波照射部
31 量子回路部
32 光照射部
33 検出部
34 データ処理部
51,52 アダマール作用部
53,54 ユニタリ作用部
99 ネットワーク

Claims (8)

  1. 測定対象との相互作用により変化する色中心の電子スピン状態にドレスト状態を生成するための駆動用のマイクロ波と、前記電子スピン状態を操作するための操作用の電磁波とを、前記色中心を有するセンサ素子に照射する照射部と、
    前記測定対象との相互作用後の、前記ドレスト状態にある前記電子スピン状態に基づいて、前記測定対象の物理量を算出する物理量測定部と、
    を備え
    前記物理量測定部は、
    前記測定対象との相互作用後の、前記ドレスト状態にある前記電子スピン状態について、複数のエネルギー準位間の位相の情報を量子演算する量子回路部と、
    前記量子演算後の前記位相の情報を読み出すための光を、前記センサ素子に照射する光照射部と、
    前記光の照射によって前記センサ素子に生じる変化を検出する検出部と、
    前記検出された変化から前記量子演算後の前記位相の情報を読み出し、読み出した前記位相の情報に基づいて前記物理量を算出するデータ処理部と、
    を備える、測定装置。
  2. 前記量子回路部は、
    前記複数のエネルギー準位のそれぞれに作用する複数のアダマール作用部と、
    複数の前記アダマール作用部の出力のそれぞれに作用し、量子的な補助状態に出力を加算する複数のユニタリ作用部と、
    を備える、請求項に記載の測定装置。
  3. 前記色中心は、炭素原子を置換した窒素(N)と前記窒素に隣接する空孔(V)との複合体である、請求項1または2に記載の測定装置。
  4. 前記物理量測定部は、電子スピンとの相互作用に関連する前記物理量として、磁場、電場、温度および力学量のうち、少なくとも一つを算出する、請求項からのいずれか1項に記載の測定装置。
  5. 色中心を有するセンサ素子に、測定対象との相互作用により変化する前記色中心の電子スピン状態にドレスト状態を生成するための駆動用のマイクロ波を照射するステップと、
    前記電子スピン状態を操作するための操作用の電磁波を、前記センサ素子に照射するステップと、
    前記測定対象との相互作用後の、前記ドレスト状態にある前記電子スピン状態に基づいて、前記測定対象の物理量を算出するステップと、
    を含み、
    前記物理量を算出するステップは、
    前記ドレスト状態にある前記電子スピン状態について、複数のエネルギー準位間の位相の情報を量子演算するステップと、
    前記量子演算後の前記位相の情報を読み出すための光を、前記センサ素子に照射するステップと、
    前記光の照射によって前記センサ素子に生じる変化を検出するステップと、
    前記検出された変化から前記量子演算後の前記位相の情報を読み出し、読み出した前記位相の情報に基づいて前記物理量を算出するステップと、
    を含む、測定方法。
  6. 前記量子演算を行うステップは、
    前記複数のエネルギー準位のそれぞれにアダマールゲートを作用させるステップと、
    複数の前記アダマールゲートの出力のそれぞれにユニタリ作用素を作用させ、複数の前記ユニタリ作用素の出力のそれぞれを、量子的な補助状態に加算するステップと、
    を含む、請求項に記載の測定方法。
  7. 前記操作用の電磁波を照射するステップは、
    π/2パルスを照射することにより、量子化軸に沿った電子スピンを、前記量子化軸に垂直な平面に傾ける操作を行うステップと、
    πパルスを照射することにより、前記測定対象との相互作用により位相緩和された前記電子スピンを、前記平面内において反転させる操作を行うステップと、
    π/2パルスを照射することにより、位相緩和された前記電子スピンを、前記量子化軸に射影する操作を行うステップと、
    を含む、請求項5または6に記載の測定方法。
  8. 前記操作用の電磁波を照射するステップは、
    π/2パルスを照射することにより、量子化軸に沿った電子スピンを、前記量子化軸に垂直な平面に傾ける操作を行うステップと、
    π/2パルスを照射することにより、前記測定対象との相互作用により位相緩和された前記電子スピンを、前記量子化軸に射影する操作を行うステップと、
    を含む、請求項5または6に記載の測定方法。
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