JP7367712B2 - 成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー定量方法、成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法、成型炭の製造方法、および成型炭 - Google Patents
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[1]バインダー成分としてデンプンを混合した成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー定量方法であって、
成型炭原料粉および/または成型炭から分析試料を採取する採取工程と、
採取した分析試料に溶媒を加え60℃以上95℃未満に保持しながら撹拌し、撹拌後の混合液をろ過してろ液にデンプンを抽出する抽出工程と、
前記ろ液にヨウ素液を加えて吸光度を測定し、得られた吸光度の結果に基づいて成型炭原料粉および/または成型炭中のデンプンを定量する定量工程と
を含む、成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー定量方法。
[2]前記溶媒は水である、[1]に記載の成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー定量方法。
[3]バインダー成分としてデンプンを混合した成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法であって、
成型炭原料粉および/または成型炭から分析試料を採取する採取工程と、
採取した分析試料に溶媒を加え60℃以上95℃未満に保持しながら撹拌し、撹拌後の混合液をろ過してろ液にデンプンを抽出する抽出工程と、
前記ろ液にヨウ素液を加えて吸光度を測定し、得られた吸光度の結果に基づいて成型炭原料粉または成型炭中のデンプンを定量する定量工程と、
前記定量工程で得られたデンプン量(定量値)と、予め設定したデンプン量(設計値)との関係に基づいて、バインダーの分散性を評価する評価工程と
を含む、成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法。
[4]前記溶媒は水である、[3]に記載の成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法。
[5]前記採取工程において、前記成型炭原料粉および/または成型炭の任意の複数箇所から採取した各分析試料について、前記定量工程により得られた各デンプンの定量値と前記デンプンの設計値との関係が以下の式(1)を満たすとき、前記評価工程においてバインダーの分散性が良好であると判定する、[3]または[4]に記載の成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法。
-10≦{(デンプンの設計値-各デンプンの定量値)/デンプンの設計値}×100≦10 (1)
[6]前記各デンプンの定量値の平均値と前記デンプンの設計値との関係が、以下の式(2)をさらに満たすとき、前記評価工程においてバインダーの分散性が良好であると判定する、[5]に記載の成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法。
-5≦{(デンプンの設計値-各デンプンの定量値の平均値)/デンプンの設計値}×100≦5 (2)
[7]石炭にバインダーとしてデンプンを加えて混合し、得られた混合物を成型する成型炭の製造方法において、
[3]~[6]のいずれかに記載の成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法を用いて前記混合物中のバインダーの分散性を評価し、分散性が良好であると判定されるまで混合と評価を繰返し、分散性が良好であると判定された後に成型する、成型炭の製造方法。
[8]バインダーとしてデンプンを使用する成型炭において、任意の位置における成型炭中のデンプン濃度と予め設定したデンプンの設計値との関係が以下の式(3)を満たす、成型炭。
-10≦{(デンプンの設計値-成型炭中のデンプン濃度)/デンプンの設計値}×100≦10 (3)
採取工程では、成型炭原料粉および/または成型炭から分析試料を採取する。成型炭の原料は、粉砕した原料炭(成型炭原料粉)にバインダーを所定量混合し、石炭-デンプン混合槽(以下、単に混合槽と称する)で撹拌混合した混合物である。混合槽の任意の箇所から、評価用のサンプル(分析試料)を採取する。分析対象が成型炭の場合は、成型機で成型された複数の成型炭から任意の成型炭を採取し、粉砕機で粉砕した後、分析試料とする。採取する量は、1回の分析に必要な0.5g以上とすることが好ましく、位置精度と溶出時間の短縮化の観点から3.0g以下とすることが好ましい。また、採取するサンプルの数(採取箇所)は、1箇所でもよいが、2箇所以上から採取することが好ましい。
次に、採取したサンプルに溶媒を加えて60℃以上95℃未満に保持しながら撹拌し、撹拌後の混合液をろ過してろ液にデンプンを抽出する。溶媒の量は、採取したサンプル量に対して50~80倍の溶媒量とすることが好ましい。50倍未満では、デンプンが溶出されない可能性がある。一方で、80倍超えでは、溶出したデンプンが希薄すぎて、ヨウ素液による呈色の変化を追えない場合がある。溶媒の種類としては、石炭を溶かすことなくデンプンのみが溶出するものであれば特に限定はなく、安価で入手しやすいという点から、水が好ましい。さらに、蒸留水、イオン交換水、超純水など不純物の少ない水がより好ましい。次に、採取したサンプルに溶媒を加えて混合液とし、スターラー等で撹拌する。ヨウ素デンプン反応の発色は、ヨウ素成分がデンプン分子中のらせん構造に入り込み包接化合物となることで発現するため、抽出工程ではデンプンのらせん構造を保持した状態で水へ溶解させることが必要である。これを実現するためには混合液を撹拌する際の温度が重要であり、具体的には、撹拌中の混合液の温度は60℃以上95℃未満とする。混合液の温度が60℃未満の場合、デンプンの溶解度が小さいことから溶け残りが発生する。したがって、混合液の温度は60℃以上とする。一方、混合液の温度が95℃以上の場合、デンプンの分子構造の変質等が起こり、溶出が困難となるだけでなく、正しく定量できなくなる。したがって、混合液の温度は95℃未満、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは85℃以下とする。撹拌温度を85℃以下とすることにより、デンプン自身の変質による発色の低下がより起こりにくくなり、定量精度がより向上する。撹拌(溶出)時間は1~5分とすることが好ましい。また、撹拌後の混合液は、室温まで空冷する。水冷等による急激な冷却はデンプンの変質を招く恐れがあるため、定量誤差の原因となり好ましくない。次いで、デンプンが溶出した混合液をろ過して石炭を除去し、デンプンを抽出する。ろ過は自然ろ過でもよいが、作業時間を短縮する目的で、吸引ろ過、加圧ろ過のほか、遠心分離を用いることが好ましい。ここで、ろ過フィルターは、メンブレンフィルター、ガラス繊維フィルターなどを用いることができる。フィルターの孔径は、粉状の石炭が除去できればよいので、0.1μm程度が好ましい。
次に、抽出工程で得られたろ液にヨウ素液を加えて吸光度を測定し、得られた吸光度の結果に基づいて成型炭原料粉または成型炭中のデンプンを定量する。本発明では、デンプンを抽出したろ液中のデンプンを定量する方法として、ヨウ素デンプン反応を用いる。この反応は、ヨウ素ないしヨウ化物イオンがデンプンと接触すると、デンプン分子内のらせん構造にヨウ素ないしヨウ化物イオンが固定化され、青紫~赤紫色を呈色する反応である。すなわち、ろ液にヨウ素液を添加し撹拌すると、ろ液はデンプン濃度に応じて青紫~赤紫色に着色する。本発明では、このヨウ素液を加えたろ液の吸光度を測定する。なお、吸光度は、吸光光度計または分光光度計を用いて測定すればよい。
ヨウ素デンプン反応による呈色の色味は、デンプンの種類(分子構造)によって異なるため、初めて分析する成型炭原料粉または成型炭について、分析試料の測定前に、まず成型炭原料粉中または成型炭中のデンプン単身の吸光スペクトルを測定し、デンプン由来の吸収ピークとなる波長を求めておく。本発明では、ここで求めた波長における吸収ピークの高さを吸光度とする。
次に、予め吸光度を測定したデンプンをバインダーとして含有し、デンプン量(バインダー量)の異なる成型炭原料粉(または成型炭)を検量線用のサンプルとして各吸光度を測定し、デンプン量と吸光度との関係をプロットした検量線を作成する。検量線は、原点以外に2点以上のプロットから作成することが好ましい。
次に、分析試料について、抽出工程で得られたろ液にヨウ素液を加えて吸光度を測定する。そして、予め求めておいたデンプン量と吸光度との関係(検量線)に、測定した吸光度をあてはめることにより、成型炭原料炭中または成型炭中のデンプンを定量することができる。
ろ液に加えるヨウ素液は、ヨウ素をヨウ化カリウム水溶液に溶解させた溶液であり、さらに水ないしエタノールで希釈したものを用いることができる。ヨウ素液の濃度については、特段制限されず、ヨウ素デンプン反応による呈色が確認できる程度にヨウ素液の濃度を適宜調節すればよいが、一連の分析において、ろ液の量と添加するヨウ素液の濃度は、検量線用および実際に測定する分析試料のいずれも同一とすることが好ましい。なお、ろ液に添加するヨウ素液の量は、1vol%程度とすることが好ましい。
以上の工程により、本発明ではバインダー成分としてデンプンを混合した成型炭原料粉および/または成型炭のバインダーを定量することができる。例えば、デンプン濃度が未知のサンプルの場合、予めデンプン量と吸光度との関係を示す検量線を求めておき、上記と工程から得られた吸光度からデンプン濃度を算出することが出来る。
本発明の評価工程は、定量工程で得られたデンプン量(定量値)と、予め設定したデンプン量(設計値)との関係に基づいて、バインダーの分散性を評価する。
-10≦{(デンプンの設計値-各デンプンの定量値)/デンプンの設計値}×100≦10 (1)
さらに、各デンプンの定量値の平均値とデンプンの設計値との関係が以下の式(2)を満たすとき、バインダーの分散性が良好であると判定することが好ましい。
-5≦{(デンプンの設計値-各デンプンの定量値の平均値)/デンプンの設計値}×100≦5 (2)
なお、分散性評価の精度の観点からは、分析試料の採取について、2箇所以上から採取することが好ましく、4箇所以上であることがさらに好ましい。
-10≦{(デンプンの設計値-成型炭中のデンプン濃度)/デンプンの設計値}×100≦10 (3)
なお、式(3)中の成型炭中のデンプン濃度と予め設定したデンプンの設計値との関係については、本発明のバインダー分散性評価方法を用いて求めればよい。
<ヨウ素デンプン反応による呈色の確認>
デンプンとして、タピオカβスターチ(山陽通商社製)単身を10mg取り、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃および95℃の蒸留水を30ml加えた混合液について、それぞれの温度に保持したまま5分間撹拌し、室温となるまで空冷した。次いで、孔径0.45μmのメンブレンフィルターとシリンジを用いて濾過した。各々のろ液各1mLについて、紫外可視分光光度計(日本分光社製:型式V-650)の石英セルに入れ、さらにヨウ素液(3%ヨウ素ヨウ化カリウム溶液を蒸留水で100倍に薄めたもの)を0.1mL加えて呈色させた。30秒静置後、可視光領域の吸光スペクトルを測定した。図1に、撹拌温度70℃で混合させたデンプン水溶液(前述のろ液)について、ヨウ素液添加前と添加後の吸収スペクトルを示す。ヨウ素液を添加(ヨウ素液有り)することにより、波長630nm付近をピークトップとする吸収スペクトルが観測された。よって、波長630nmを上記デンプンの吸収極大波長とした。他の撹拌温度にて得られた混合液についても同様の方法で、波長630nmにおける吸光度(ピーク高さ)を測定した。その結果、撹拌温度が60℃以上95℃未満℃の範囲では混合液の吸光度が観察され、この温度範囲であればデンプンの抽出が可能であることがわかった。一方、撹拌温度が40℃および50℃では、吸光度に変化は見られず、デンプンに由来する吸収ピークは検出されなかった。撹拌温度が95℃では、複数回の繰返し測定で吸光度変化が大きく、抽出には適さないと判断した。
篩掛けにより2mm以下とした石炭(原料粉)と上記と同じデンプンとを配合し、混合槽にて3分間混合した。デンプンの配合量は、デンプンの質量分率が、0.1mass%、0.2mass%、0.4mass%、1.0mass%、2.0mass%、4.0mass%となるようにそれぞれ配合し、6水準の混合物を用意した。各混合物をサンプルとして0.5gずつ秤量し、70℃の蒸留水を30ml加え、70℃に保持したままそれぞれ5分間撹拌し混合液を得た。次いで、孔径0.45μmのメンブレンフィルターとシリンジを用いて固形分の石炭を分離し、ろ液が室温となるまで空冷した。得られたろ液に対して、上述と同じヨウ素液を添加し、波長630nmにおける吸光度を測定し、デンプンの配合量(デンプン量)と吸光度の関係を示す検量線を作成した(発明例)。図2は、撹拌温度70℃を条件として作成した検量線である。撹拌温度が70℃では、吸光度とデンプン量に相関が認められた。
Claims (8)
- バインダー成分としてデンプンを混合したコークス製造用の成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー定量方法であって、
成型炭原料粉および/または成型炭から分析試料を採取する採取工程と、
採取した分析試料に溶媒を加え60℃以上95℃未満に保持しながら撹拌し、撹拌後の混合液をろ過してろ液にデンプンを抽出する抽出工程と、
前記ろ液にヨウ素液を加えて吸光度を測定し、得られた吸光度の結果に基づいて成型炭原料粉および/または成型炭中のデンプンを定量する定量工程と
を含む、成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー定量方法。 - 前記溶媒は水である、請求項1に記載の成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー定量方法。
- バインダー成分としてデンプンを混合した成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法であって、
成型炭原料粉および/または成型炭から分析試料を採取する採取工程と、
採取した分析試料に溶媒を加え60℃以上95℃未満に保持しながら撹拌し、撹拌後の混合液をろ過してろ液にデンプンを抽出する抽出工程と、
前記ろ液にヨウ素液を加えて吸光度を測定し、得られた吸光度の結果に基づいて成型炭原料粉および/または成型炭中のデンプンを定量する定量工程と、
前記定量工程で得られたデンプン量(定量値)と、予め設定したデンプン量(設計値)との関係に基づいて、バインダーの分散性を評価する評価工程と
を含む、成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法。 - 前記溶媒は水である、請求項3に記載の成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法。
- 前記採取工程において、前記成型炭原料粉および/または成型炭の任意の複数箇所から採取した各分析試料について、前記定量工程により得られた各デンプンの定量値と前記デンプンの設計値との関係が以下の式(1)を満たすとき、前記評価工程においてバインダーの分散性が良好であると判定する、請求項3または4に記載の成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法。
-10≦{(デンプンの設計値-各デンプンの定量値)/デンプンの設計値}×100≦10 (1) - 前記各デンプンの定量値の平均値と前記デンプンの設計値との関係が、以下の式(2)をさらに満たすとき、前記評価工程においてバインダーの分散性が良好であると判定する、請求項5に記載の成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法。
-5≦{(デンプンの設計値-各デンプンの定量値の平均値)/デンプンの設計値}×100≦5 (2) - 石炭にバインダーとしてデンプンを加えて混合し、得られた混合物を成型する成型炭の製造方法において、
請求項3~6のいずれかに記載の成型炭原料粉および/または成型炭のバインダー分散性評価方法を用いて前記混合物中のバインダーの分散性を評価し、分散性が良好であると判定されるまで混合と評価を繰返し、分散性が良好であると判定された後に成型する、成型炭の製造方法。 - バインダーとしてデンプンを使用する成型炭において、任意の位置における成型炭中のデンプン濃度と予め設定したデンプンの設計値との関係が以下の式(3)を満たす、成型炭。
-10≦{(デンプンの設計値-成型炭中のデンプン濃度)/デンプンの設計値}×100≦10 (3)
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