[便潜血検査装置の構成]
以下、図面を参照して、本開示の一実施の形態である検査装置について、被検者の糞便中に血液が混ざっていないかを検査する便潜血検査装置を例に説明する。
図1に一例として示すように、便潜血検査装置1は、筐体100が下方部分のベース部101とベース部101の後方において上方に立ち上がる本体部102とを備えている。本体部102には、タッチパネル19が設けられている。タッチパネル19は、操作指示を入力するための操作画面および検査結果等を表示する表示部と、操作指示を入力する入力部として機能する。
ベース部101は、筐体100の前方に突き出している。検体容器22はベース部101にセットされる。ベース部101の上面は左右の2カ所がそれぞれ開閉可能な蓋になっており、蓋の内部には、後述する図3に示すように、検体容器設置部101aと検体容器設置部101bが設けられている。
図2に示すように、検体容器22は、検体である糞便を収容する容器本体23と、容器本体23に着脱自在に設けられたキャップ24と、を備える。容器本体23は、例えば透明または半透明である。検体容器22の内部には検体が懸濁される液体が収容されており、検体である糞便は液体内に分散された懸濁液の態様で収容される。
キャップ24には、検体である糞便を採取する採取棒24aが取り付けられている。被検者が検体を採取する際には、キャップ24を容器本体23から取り外し、採取棒24aの先端で検体である糞便の表面をなぞる等して糞便を採取棒24aに付着させる。そして、採取棒24aを容器本体23に挿入してキャップ24が閉じられる。検体容器22は、この状態で便潜血検査装置1にセットされる。
容器本体23の底面にはラミネートフィルム23aが貼付されている。便潜血検査装置1内においては、ラミネートフィルム23aを破断することにより、検体が採取される。
図3および図4に示すように、便潜血検査装置1内には、試薬テーブル10と、反応槽11と、検体容器移送機構12と、測定部13と、洗浄機構14と、試薬分注機構15と、検体分注機構16と、制御部17と、解析部18とを備える。
検体容器22は、図4にも示すとおり、細長のラック21に複数個収容された状態で、検体容器設置部101aにセットされる。検体容器移送機構12は、検体容器設置部101a内に設けられており、検体容器22を収容する複数のラック21は、検体容器移送機構12上に設置される。検体容器移送機構12は、例えば、ラック21を押し出す押し出し部を有しており、複数のラック21を1つずつ矢印Aの方向に沿って移送する。ラック21は、検体容器移送機構12によって検体容器22の配列ピッチ分ずつ矢印Aの方向に移送される。ラック21の移送が停止するごとに、検体分注機構16によってラック21の検体容器22から検体溶液が吸引される。
検体分注機構16は、図4にも示すとおり、水平方向に延びるアーム16aと、アーム16aの先端部分に取り付けられノズル16bと、を備える。ノズル16bは、検体容器22から検体を吸引し、吸引した検体を反応槽11内の後述する反応容器30に分注する。図3に示すように、アーム16aは、ノズル16bが、ラック21に収容された検体容器22と反応槽11とにアクセスできるように、水平面内を回動する。また、図4に示すように、アーム16aは、ノズル16bを、検体容器22および反応容器30に対して挿抜するために上下方向にも移動可能である。
図4に示すように、検体容器22は、ラミネートフィルム23aが上側になるようにラック21にセットされている。検体分注時に、検体分注機構16のノズル16bがラミネートフィルム23aを突き破り、容器本体23の内部に懸濁液の形態で収容された検体が吸引される。
検体容器移送機構12により、検体が分注された分注済みの検体容器22は、順次、検体容器設置部101bに移送される。
反応槽11は、複数の反応容器30が収容される槽であり、平面形状が円形である。反応槽11内において、複数の反応容器30は、周方向に沿って一定のピッチで配列される。本例においては、反応容器30は、ホルダ31に取り付けられており、反応容器30とホルダ31とが一体化した反応容器ユニット32の形態で反応槽11にセットされる。1つのホルダ31には複数個の反応容器30が取り付けられており、反応槽11には、このような反応容器ユニット32が複数個収容される。
反応槽11の周囲には、測定部13、洗浄機構14、試薬分注機構15、および検体分注機構16が配置されている。反応槽11は、不図示の駆動手段によって回転する。この回転により、反応槽11内において周方向に配列された各反応容器30を、測定部13、洗浄機構14、試薬分注機構15、および検体分注機構16のそれぞれの位置に搬送する。
反応容器30は、容量が数nL~数十μL程度の容器であり、測定部13から出射された測定光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス、または環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。
試薬分注機構15は、試薬テーブル10の試薬容器10aから試薬を反応容器30に分注する。試薬テーブル10は、複数の試薬容器10aを保持する。
試薬分注機構15は、アーム15aと、アーム15aの先端部分に取り付けられ、試薬を分注するノズル15bと、を備える。図3に示すように、アーム15aは、検体分注機構16と同様に、ノズル15bが、試薬テーブル10内の試薬容器10aと反応槽11とにアクセスできるように、水平面内を回動する。また、アーム15aは、検体分注機構16と同様に、ノズル15bを、試薬容器10aおよび反応容器30に対して挿抜するために上下方向にも移動可能である。
図5に示すように、測定部13は、反応容器30内において試薬と検体とが反応した液体を光学的に測定するための光学系であり、発光部13aと受光部13bとを備える。発光部13aから出射された測定光MLは、反応容器30の液体貯留部30c内の液体を透過し、受光部13bによって受光される。受光部13bは、受光した測定光MLの光量信号を制御部17へ出力する。
制御部17は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などによって構成され、図3に示すように、便潜血検査装置1の各部の動作を統括的に制御する。制御部17は、タッチパネル19から入力される検査開始指示に基づいて検査を実行する。
解析部18は、例えば、CPUなどによって構成され、発光部13aの出射光量と受光部13bが受光した光量に基づく反応容器30内の液体の吸光度に基づいて、検体中の血液の有無を解析する。
図3において、洗浄機構14は、測定が終了した反応容器30を洗浄する。洗浄機構14は、後述する吸引ノズル45(図8参照)によって反応容器30内の液体を吸引して排出する。洗浄機構14は、反応容器30内から液体を排出した後、吐出ノズル44(図8参照)から洗剤および洗浄水等の洗浄液を注入し、注入した洗浄液を吸引ノズル45から吸引する。洗浄機構14は、洗浄液の注入と吸引という洗浄動作を複数回繰り返すことにより、反応容器30内を洗浄する。その後、洗浄機構14は、乾燥ノズル46(図8参照)から空気を噴射し、反応容器30内を乾燥させる。反応容器30は、洗浄機構14によって洗浄された後に、再利用される。
[反応容器ユニット、反応槽、および洗浄機構の構成]
次に、反応容器ユニット32、反応槽11、および洗浄機構14について詳細に説明する。
図6に示すように、反応容器ユニット32は、1つのホルダ31を備えており、ホルダ31には、例えば11個の反応容器30が取り付けられる。反応容器30は、上面30aに開口30bを有し、液体を収容する水平断面が四角形の液体貯留部30cが形成された四角筒形状の容器である。
ホルダ31は、平面形状が約72°の中心角を持つ略扇形をしている。本例のホルダ31は中心角が360°の1/5であるため、円形の反応槽11には、5個のホルダ31がセットされる(図3参照)。ホルダ31の外周側上面31aには、円弧に沿って11個の反応容器取付孔31bが一定のピッチで形成されている。反応容器30は、反応容器取付孔31b内に挿入された状態で、ホルダ31に固定される。
また、ホルダ31の内周側上面31cには、反応容器ユニット32を反応槽11に固定するための固定ピンを挿入する固定ピン挿入孔31dが形成されている。内周側上面31cは、外周側上面31aよりも一段高く形成されている。
図7に示すように、反応槽11には、5つの反応容器ユニット32が収納される。各反応容器ユニット32は、固定ピン11aにより反応槽11内に固定される。これにより、反応槽11には、最大で55個(5×11個)の反応容器30が、円周方向に沿って一定のピッチで配置される。反応容器ユニット32は、反応槽11に対して交換可能に構成されている。本例の反応容器ユニット32は、反応容器30がホルダ31に固定されているため、汚濁等により交換が必要になった反応容器30が1つだけの場合でも、反応容器ユニット32の単位で交換される。
図7に示すように、洗浄機構14は、ノズルユニット40と、ノズルユニット40を上下方向に移動可能に保持する保持板60と、ノズルユニット40を上昇または下降させる回転カム68とを、備える。回転カム68は、ノズルユニット40を上昇または下降させる駆動カムの一例である。
図8に示すように、ノズルユニット40は、ノズル保持部41と、フレーム42と、ローラ43と、を備える。
ノズル保持部41は、吐出ノズル44と、吸引ノズル45と、乾燥ノズル46と、下限位置規制部材47と、を備える。吐出ノズル44と吸引ノズル45は、それぞれ3本有り、ノズル保持部41には、1本の吐出ノズル44と1本の吸引ノズル45を1組としたノズルセットが、合計3組設けられている。乾燥ノズル46は、1本だけ設けられている。吐出ノズル44は、不図示の配管を介して吐出用ポンプ70(図10参照)に接続されている。吸引ノズル45は、不図示の配管を介して吸引用ポンプ71(図10参照)に接続されている。乾燥ノズル46は、不図示の配管を介して送気用ポンプ72(図10参照)に接続されている。
吐出ノズル44および吸引ノズル45の1組のノズルセットは、1つの反応容器30に挿入される。乾燥ノズル46は、単独で1つの反応容器30に挿入される。3組のノズルセットと、1本の乾燥ノズル46は、反応槽11内における反応容器30の配列方向である円周方向の円弧状のラインに沿って配列されている。そのため、ノズルユニット40が下降すると、3組のノズルセットと、1本の乾燥ノズル46が、4つの反応容器30のそれぞれに向けて同時に下降する。そのため、ノズルユニット40が下降すると、3つの反応容器30には、それぞれノズルセットが1組ずつ挿入され、もう1つの4つ目の反応容器30には乾燥ノズル46が挿入される。なお、後述する図9などの図面においては、図面を簡略化するため、1組のノズルセットが1つの反応容器に挿入される状態のみを示している。
ノズル保持部41は、フレーム42を介して保持板60に取り付けられる。フレーム42は、水平方向に延びる板状の連結プレート48と、連結プレート48の下方で垂直方向に延びるレール係合部49と、を備える。図7に示すように、保持板60には、上下方向に沿って延びるレール61が設けられており、レール係合部49は、レール61と係合する。レール61およびレール係合部49の係合によってノズルユニット40の上下方向の移動、すなわち、昇降動作がガイドされる。
連結プレート48の上面にはノズル保持部41が例えばネジによって取り付けられ、下面にはレール係合部49が設けられている。
レール係合部49は、上端側に設けられたブロック状の本体部49aと、本体部49aから下方に向けて延びる板状の板状部49bとを有する。本体部49aの背面側には、レール61を跨ぐようにレール61と係合する上下方向に延びる係合溝(図示せず)が形成されている。また、レール係合部49の下方に延びる板状部49bの後面にはローラ43が回転自在に取り付けられている。ローラ43は、下端部が板状部49bの下端位置から下方に向けて突出しており、回転カム68と接触する。
レール係合部49の本体部49aの前面にはL字状の金具50が取り付けられている。金具50は、レール係合部49の前面において左右方向に延びる第1部分と、第1部分の一端で90°折り曲げられて、レール係合部49の後方に向かって延びる第2部分とを有する。金具50は、板状部材が90°折り曲げられた形状である。金具50の側面には、バネ取付部50aと、被検出部50bとが形成されている。被検出部50bは、ノズルユニット40の昇降範囲を規制するために、後述する位置センサによって検出される部位である。
下限位置規制部材47は、ノズルユニット40に設けられている。下限位置規制部材47は、後述するように、反応容器30を保持するホルダ31と接触することにより、ノズルユニット40の下限位置を規制する。下限位置規制部材47は、ノズルユニット40の移動方向である上下方向に沿って延びる棒状の部材である。
図9は洗浄機構14の正面図、図10は洗浄機構14の背面図、図11は洗浄機構14の側面図である。
図9および図11に示すように、保持板60は、前面60aに、上述したレール61と、回転規制部材62と、バネ取付部63と、を備える。保持板60には、前面60aから後面60bに貫通するスリット67が形成されている。ノズルユニット40の被検出部50bは、スリット67を貫通して保持板60の後面60b側に突出している。
図10および図11に示すように、保持板60は、後面60bに、上側位置センサ64と、下側位置センサ65と、モータ66と、を備える。
上側位置センサ64および下側位置センサ65は、例えばフォトインタラプタであり、ノズルユニット40に取り付けられた被検出部50bを検出することにより、ノズルユニット40の位置を検出する。上側位置センサ64および下側位置センサ65は、例えば、被検出部50bを検出した場合に検出信号を制御部17へ出力する。
上側位置センサ64は、ノズルユニット40が上限位置(図9参照)にあることを検出するための位置センサである。上側位置センサ64は、保持板60の後面60bにおいて、ノズルユニット40が上限位置にある場合における被検出部50bの位置と対向する位置に設けられている。
下側位置センサ65は、ノズルユニット40が下限位置(図12および図13参照)にあることを検出するための位置センサである。下側位置センサ65は、保持板60の後面60bにおいて、ノズルユニット40が下限位置にある場合における被検出部50bと対向する位置に対応する位置に設けられている。下側位置センサ65は、本開示の技術における検出センサの一例である。
図9に示すように、回転カム68は、本例では、平面形状が円形をしたローラ形状である。回転カム68は、ノズルユニット40のローラ43の下方において、ローラ43と対向する位置に配置されている。そのため、ノズルユニット40は重力の作用によりレール61に沿って鉛直方向の下方に向けて下降しようとするため、ノズルユニット40のローラ43の側面である外周43aは、回転カム68の側面である外周68aと当接する。
回転カム68には、回転カム68を回転させるモータ66(図11参照)の回転軸66aが、回転カム68の平面形状の円の中心に対して偏心した位置に取り付けられている。回転カム68は、回転軸66aを回転中心として回転する。回転カム68は、回転軸66aが偏心しているため、外周68aの周方向における各位置と回転軸66aとの間の距離が変化する。回転カム68が回転すると、回転カム68の外周68aにおいて、回転カム68の上方に配置されるローラ43との当接位置が変化する。このように、回転カム68の回転位置に応じて、外周68aにおけるローラ43との当接位置が変化するため、各当接位置と回転軸66aとの間の距離が変化する。この距離の変化に応じて、回転カム68は、回転により、ノズルユニット40を上昇または下降させる。
すなわち、図9に示すように、外周68aにおけるローラ43との当接位置が、回転軸66aからの距離が最大となる位置の場合は、回転カム68によってノズルユニット40を最上点に押し上げる位置となる。回転カム68の回転位置において、ノズルユニット40を最上点に押し上げる位置を回転カム68の上死点位置という。回転カム68によってノズルユニット40が押し上げられる最上点は、ノズルユニット40の上限位置と一致する。
図9に示す上死点位置から回転カム68が時計方向に回転すると、外周68aにおけるローラ43との当接位置と、回転軸66aとの距離が徐々に短くなっていくため、ノズルユニット40は重力の作用によって下降を開始する。ノズルユニット40は、時計方向に回転する回転カム68の外周68aとローラ43とが接触状態を保ちながら、下降する。
そして、図12に示すように、下限位置規制部材47が、反応容器30を保持するホルダ31と接触することにより、回転カム68の回転によって下降するノズルユニット40の下限位置を規制する。すなわち、下限位置規制部材47がホルダ31と接触することにより、ノズルユニット40がそれ以上に下降することが阻止される。これにより、ノズルユニット40が下限位置で停止する。本例において、下限位置規制部材47の下端47aは、反応容器30を保持するホルダ31の内周側上面31cと接触する(図12および図13参照)。
また、回転カム68とノズルユニット40とは、ノズルユニット40の下降時においては、回転カム68とローラ43とが離間可能に設けられている。そのため、ノズルユニット40が下限位置で停止した後、回転カム68は、ノズルユニット40のローラ43と離間して、時計方向の回転を継続することが可能となる。逆に言えば、回転カム68とノズルユニット40のローラ43とが離間可能であるため、回転カム68が下死点位置に向けて時計方向への回転を継続するにも関わらず、下限位置規制部材47の作用によってノズルユニット40は下降を停止することが可能となる。
ノズルユニット40の下限位置は、吐出ノズル44、吸引ノズル45、および乾燥ノズル46の各々の先端が、反応容器30の液体貯留部30c内に進入し、かつ、液体貯留部30cの底面に接触しない範囲で、できるだけ底面に近接した位置に設定される。ノズルユニット40の下限位置は、具体的には、下限位置規制部材47の下端47aから各ノズルの先端までの長さと、反応容器30の液体貯留部30cの深さなどの反応容器ユニット32の仕様によって定まる長さとを次のような関係とすることにより、設定される。
すなわち、図9および図12に示すように、下限位置規制部材47の下端47aから各ノズルの先端までの長さをL1、反応容器ユニット32のホルダ31の内周側上面31cから反応容器30の液体貯留部30cの底面までの長さをL2とした場合、L1よりもL2を長く、すなわち、L1<L2の関係を満足するように、各部の寸法を決定する。例えば、各ノズルの長さと、液体貯留部30cの深さなどの反応容器ユニット32の寸法とが所与の場合には、L1<L2の関係を満足するように、下限位置規制部材47の長さおよびノズルユニット40に対する取付位置を調節する。こうした調節により、ノズルユニット40の下限位置が設定される。
また、回転カム68は、本例において図13に示す位置で回転を停止する。図13に示す回転カム68の回転位置は、図9に示す位置から回転カム68が180°回転した回転位置であり、回転カム68の下死点位置である。下死点位置とは、下限位置規制部材47が無い場合において、ノズルユニット40を最下点に誘導する回転カム68の回転位置をいう。すなわち、下限位置規制部材47が無い場合を考えると、回転カム68の外周68aにおけるローラ43との当接位置が、回転軸66aからの距離が最小となる下死点位置になった場合に、ノズルユニット40が最下点に到達する。
しかし、本例においては、上述のとおり、ノズルユニット40に下限位置規制部材47が設けられており、下限位置規制部材47は、回転カム68が図13に示す下死点位置に到達する前に、ノズルユニット40の下降を停止させる(図12参照)。そのため、下限位置規制部材47が無い場合において回転カム68によって誘導されるノズルユニット40の最下点と、下限位置規制部材47によって規制されるノズルユニット40の下限位置は一致しない。そのため、回転カム68が下死点位置に到達した場合には、図13に示すように、ノズルユニット40のローラ43と回転カム68との間には、隙間Gが生じる。
図9および図11に戻って、保持板60にはバネ取付部63が設けられており、一方、ノズルユニット40にはバネ取付部50aが設けられている。保持板60のバネ取付部63とノズルユニット40のバネ取付部50aとの間に、バネ69が架け渡されている。バネ69は、本開示の技術における付勢部材の一例である。ノズルユニット40は、重力の作用に加えて、バネ69によっても回転カム68の外周68aに向けて付勢される。重力の作用に加えて、バネ69の作用によってもローラ43が回転カム68の外周68aに押し当てられることにより、例えば、回転カム68の回転により外周68aに対してローラ43が跳ね上がることが抑制されるなど、ローラ43と回転カム68との接触状態が安定する。
図9に示すように、回転規制部材62は、回転カム68の外周68aと接触し、回転カム68の回転を規制する板状の部材である。より詳細には、回転規制部材62は、回転カム68が、図9に示す上死点位置からさらに反時計方向に回転した場合に、図14に示すように、回転カム68の外周68aと接触し、それ以上の回転カム68の反時計方向の回転を規制する。すなわち、回転規制部材62は、ノズルユニット40を上方に移動させる際の回転カム68の回転方向(本例では反時計方向)において、回転カム68の上死点位置(図9参照)よりも先の位置で、回転カム68と接触することにより回転カム68の回転を規制する。回転カム68と回転規制部材62とが接触した図14に示す状態が、ノズルユニット40の待機状態となっている。例えば、便潜血検査装置1の電源OFF時には、ノズルユニット40は図14に示す待機状態にセットされる。
図11に示すように、モータ66は保持板60の後面60bに取り付けられている。モータ66の回転軸66aは、保持板60の前面60aに突出しており、前面60aに突出した一端が回転カム68に取り付けられている。回転軸66aが回転すると、回転カム68が回転する。
以下、図15に示すフローチャートを参照しながら、便潜血検査装置1の上記構成による作用を説明する。
便潜血検査装置1の電源がOFFされた状態では、ノズルユニット40は、図14に示す待機状態にセットされる。図14に示す待機状態では、回転カム68が回転規制部材62によって反時計方向の回転が規制されている。また、待機状態において、回転規制部材62は、ノズルユニット40を上昇させる際の回転カム68の回転方向(本例では反時計方向)において、回転カム68の上死点位置よりも先の位置で、回転カム68と接触することにより回転カム68の回転を規制する。この待機状態においても、回転カム68に対しては、重力の作用によりノズルユニット40のローラ43からの押圧力が加わる。回転カム68の回転位置は上死点位置を超えているため、ローラ43からの押圧力は、回転カム68を回転規制部材62に押し当てる方向に働く。このように、回転カム68は、回転規制部材62とローラ43とによって両側から押圧された状態になるため、待機状態においては、回転カム68の不用意な回転が規制される。待機状態における回転カム68の回転規制は、機械的な構造によるものであり、ソレノイドなどの電力が必要なアクチュエータを用いないため、電源がOFFされた状態でも、安定的に回転カム68の回転規制を行うことができる。電源をONした後も、反応容器30の洗浄処理が開始されるまでの間は、ノズルユニット40は待機状態を継続する。
検査を行う際には、まず、便潜血検査装置1に検体容器22がセットされる。そして、検査開始指示が入力されると、制御部17は、検体分注機構16を制御することにより、検体容器22から検体を取り出し、取り出した検体を反応槽11にセットされた反応容器30に分注する一連の作業を実行する。また、制御部17は、試薬分注機構15を制御することにより、試薬を反応容器30に分注する。そして、測定部13によって検体の測定が行われる。便潜血検査装置1は、こうした測定をセットされた検体容器22の数だけ行う。
測定が終了すると、制御部17は、洗浄機構14によって反応容器30の洗浄処理を開始する。洗浄処理では、反応容器30に対するノズルユニット40の昇降動作を繰り返すことにより、反応容器30内の測定済みの液体の吸引、反応容器30内への洗浄液の吐出、および反応容器30内の乾燥という一連の処理が行われる。
図15に示すフローチャートは、洗浄処理において、ノズルユニット40を反応容器30に対して下降させる動作の制御を示す。
制御部17は、モータ66を駆動し、待機状態から回転カム68を時計方向に回転させる。回転カム68が時計方向に回転すると、回転カム68の回転位置は図9に示す上死点位置に移動する(ステップS1)。この状態が、ノズルユニット40の上限位置である。
次に、制御部17は、上側位置センサ64により、ノズルユニット40に取り付けられた被検出部50bが検出されたか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2において、モータ66を回転させても、上側位置センサ64によって被検出部50bが検出されない場合(ステップS2でNo)、制御部17は、トラブルとみなして処理を終了させる。
ステップS2において、被検出部50bが検出された場合(ステップS2でYes)、制御部17は、モータ66の時計方向への回転を継続する(ステップS3)。モータ66が図9に示す上死点位置を超えて時計方向へ回転すると、ノズルユニット40が反応容器30に向けて下降を開始する。
次に、制御部17は、下側位置センサ65によって、ノズルユニット40に取り付けられた被検出部50bが検出されることを待機する(ステップS4)。ステップS4において、被検出部50bが検出されるまでの間(ステップS4でNo)、制御部17は、回転カム68の回転を継続する。
回転カム68が時計方向への回転を継続すると、ノズルユニット40が下降を継続するため、やがて、下限位置規制部材47が反応容器ユニット32のホルダ31と接触する。図12に示すように、下限位置規制部材47とホルダ31との接触によって、ノズルユニット40の下降は停止され、ノズルユニット40は下限位置に規制される。
ステップS4において、ノズルユニット40が下限位置に到達すると、下側位置センサ65によって被検出部50bが検出される(ステップS4でYes)。制御部17は、下側位置センサ65からの検出信号に基づいて、ノズルユニット40が下限位置に到達したことを検知する。制御部17は、下側位置センサ65が被検出部50bを検出した後、モータ66の回転を継続し、図13に示すように、回転カム68の回転位置が下死点位置に到達する位置で、モータ66の回転を停止する。ノズルユニット40と回転カム68とは離間可能に設けられているため、ノズルユニット40が下限位置で停止した後、回転カム68はノズルユニット40のローラ43から離間した状態で、回転を継続する。これにより、回転カム68が、図13に示す下死点位置に移動する(ステップS5)。
制御部17は、下側位置センサ65によってノズルユニット40が下限位置に到達したことを検知すると、ノズルユニット40に取り付けられた吐出ノズル44、吸引ノズル45、および乾燥ノズル46のいずれかの動作を開始する制御を行う(ステップS6)。
洗浄処理が終了した後は、制御部17は、ノズルユニット40を図14に示す待機状態にして停止する。
[作用効果]
本実施形態の便潜血検査装置1は、反応容器30内の液体の吸引および反応容器30内への液体の吐出の少なくともいずれかを行うノズルを有するノズルユニット40と、反応容器30に対してノズルユニット40を昇降させる駆動カムの一例としての回転カム68であり、ノズルユニット40の下降時にノズルユニット40と離間可能に設けられた回転カム68と、ノズルユニット40に設けられ、反応容器30を保持するホルダ31と接触することにより、回転カム68の回転(変位の一例)によって下降するノズルユニット40の下限位置を規制する下限位置規制部材47と、を備える。
従来のようにノズルの下限位置をモータ66の回転量で制御する場合は、初期状態におけるノズルと反応容器30の相対位置が一定であることを前提として、モータ66の回転量が決定される。そのため、反応容器30の取付精度および便潜血検査装置1の経年劣化等によって、初期状態におけるノズルと反応容器30との相対位置が変化した場合は、決められたモータ66の回転量に基づいてモータ66を動かした場合に、ノズルと反応容器30とが接触してしまうおそれがあった。
しかしながら、本実施形態の便潜血検査装置1は、モータ66の回転量とは無関係に、下限位置規制部材47によってノズルユニット40の下限位置を決定する。そのため、上記のような構成を備えている本実施形態の便潜血検査装置1は、回転カム68を駆動するモータ66の回転量とは関係なく、下限位置規制部材47とホルダ31との寸法を合わせておくだけで、ノズルユニット40の下限位置を決定することができる。初期状態におけるノズルユニット40のノズルと反応容器30との相対位置が変化した場合には、例えば、ノズルユニット40のノズルと反応容器30との相対的な距離が変化する。この場合において、モータ66の回転量で制御する従来と比べて、下限位置規制部材47によって下限位置を規制するため、こうした距離の変化の影響を受けにくい。そのため、従来と比べて、ノズルと反応容器30との接触を回避しやすい。
例えば、図12において、反応容器30の取付位置が出荷時点の初期状態よりも僅かに上にずれた場合を考える。この場合において、さらにノズルユニット40の取り付け位置が出荷時点の初期状態よりも僅かに下に下がった場合を考える。この場合でも、ノズルユニット40の下限位置は、下限位置規制部材47によって規制される。そして、L1<L2の関係を満足するように下限位置規制部材47等の寸法は決められているため、下限位置規制部材47で下限位置を規制しておけば、ノズルユニット40の各ノズルの先端が反応容器30の液体貯留部30cの底面と接触することもない。
また、下限位置規制部材47でノズルユニット40の下限位置を規制することで、例えば、反応容器ユニット32の種類が変わった場合でも、下限位置規制部材47の長さを変えるだけで、反応容器ユニット32の種類に合わせて簡単に調整することが可能である。
さらに、本例においては、図13に示すように、下限位置規制部材47によってノズルユニット40が下限位置に規制された後、回転カム68は下死点位置まで回転して停止する。こうすることで、初期状態においては、下限位置にあるノズルユニット40のローラ43と回転カム68との間には隙間Gが生じる。そのため、初期状態のノズルユニット40の下限位置が、反応容器30の取付位置の変化によって下にずれた場合でも、隙間Gの範囲内で下限位置のずれを許容することができる。
これにより、反応容器30を保持するホルダ31とノズルユニット40との相対位置の変化の影響を受けず、常にノズル先端を反応容器30内の一定の位置まで下降させることができるため、ノズルと反応容器30との接触を回避することができる。
また、本実施形態の便潜血検査装置1は、反応容器30を保持するホルダ31とノズルユニット40との相対位置の変化の影響を受けず、反応容器30、ホルダ31、およびノズルユニット40の寸法公差のみが誤差要因となる。従って、ノズルユニット40をベルトドライブにより上下方向に駆動し、フォトインタラプタを用いて送り量を制御する従来の検査装置と比較して、圧倒的に誤差要因が少なくなる。そのため、ノズルユニット40を下降させた際の、反応容器30の液体貯留部30cの底面とノズル先端との間隔を少なく設定できる。
また、反応容器30は、反応容器ユニット32単位で交換可能である。反応容器30を繰り返し使用して反応容器30が汚濁すると、光学的測定の精度が低下するが、反応容器30を反応容器ユニット32単位で交換できるため、便潜血検査装置1全体を交換するよりも低コストで、測定精度低下の問題を解消できる。
また、ノズルユニット40は、バネ69(付勢部材の一例)により回転カム68に向けて付勢されている。そのため、回転カム68によるノズルユニット40の上昇動作および下降動作を安定的に行うことが可能である。
また、ノズルユニット40を上昇または下降させる駆動カムは、回転カム68である。平行移動によりノズルユニット40を上昇または下降させるカムを用いる場合と比較して、回転カム68を用いた方が、カム機構部分の小型化に有利となる。
便潜血検査装置1の電源OFF時にモータ66への電力供給が停止すると、モータ66に静止トルクが発生しなくなるため、回転カム68が自由に回転できる状態となる。
しかしながら、本実施形態の便潜血検査装置1は、ノズルユニット40を上昇させる際の回転カム68の回転方向において、回転カム68の上死点位置よりも先の位置で、回転カム68と接触し、回転カム68の回転を規制する回転規制部材62を備え、回転カム68と回転規制部材62とが接触した状態を、ノズルユニット40の待機状態としている。
待機状態において、回転カム68は、ノズルユニット40と回転規制部材62とに挟まれ、さらにノズルユニット40の荷重により、上死点位置を超えることができなくなる。そのため、便潜血検査装置1の電源OFF時でも、ノズルユニット40が待機位置から下方に予期せず落下することがなくなるため、ノズルの破損を防ぐことができる。また、ノズルユニット40をベルトドライブにより上下方向に駆動する従来の検査装置と比較して、安全性を向上させることができる。
また、ノズルの先端が、反応容器30内に位置することを検出する下側位置センサ65を備える。これにより、ノズルの先端が反応容器30内に位置するときのみ液体を吐出することが可能になるため、ノズルの先端が反応容器30から外れた位置で液体を吐出して便潜血検査装置1の内部の想定外の位置に液体が流出するのを防ぐことができる。
反応容器30は、便潜血検査の検体溶液を貯留する容器である。これにより、便潜血検査を行う便潜血検査装置1に適用することが可能となる。
「変形例」
本開示の技術は、上述の実施形態と種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。
例えば、図16に示すように、ノズルユニット40に取り付けられた下限位置規制部材147の下端147aが、反応容器ユニット32の反応容器30の上面30aと接触することにより、ノズルユニット40の下降を停止させてもよい。
また、反応容器ユニット32において、反応容器30とホルダ31とは分離可能に構成されていてもよい。
また、便潜血検査装置1に対して、反応容器30とホルダ31とが個別に交換可能に構成されていてもよい。
また、図17に示すように、便潜血検査装置1に対してホルダ31が固定され、反応容器30のみが交換可能に構成されていてもよい。
また、便潜血検査装置1に対して、反応容器30とホルダ31とが固定され、交換不可能に構成されていてもよい。
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。