JP7366266B2 - 電子源、電子銃、及び荷電粒子線装置 - Google Patents

電子源、電子銃、及び荷電粒子線装置 Download PDF

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Description

本発明は試料に照射される電子線を供給する電子源、電子銃、及びそれを用いた荷電粒子線装置に関する。
荷電粒子線装置は、電子源及び電子銃から放出される電子線、電子線をX線源のターゲットに当てて放出されるX線、または、イオン源から放出されるイオン線を試料に照射し、試料に加工を行ったり、試料から放出される二次電子や透過電子、反射電子、X線などを利用して、観察画像を生成したりする装置である。荷電粒子線装置の例として、電子顕微鏡や電子線描画装置、X線顕微鏡、CT、イオン顕微鏡などがある。
これらの荷電粒子線装置において、生成される画像やその照射状態は、空間分解能が高く、繰り返し観察・照射した場合の再現性が良いこと等が求められる。
例えば、電子顕微鏡においては、高い空間分解能を実現するためには、試料に照射する電子線の輝度が高い必要がある。輝度の高い電子線を放出する電子源として、ショットキー電子源(Schottky Emitter:以下、SE電子源)や冷陰極電界放出電子源(Cold Field Emitter:以下、CFE電子源)が広く用いられている。特許文献1にはSE電子源の構造の一例が記載されている。
さらに、近年、半導体デバイスの微細化と複雑化が進み、その製造工程のプロセス管理に電子顕微鏡が多く用いられている。半導体の計測を担う電子顕微鏡には、上記の高分解能性能に加え、同じ試料を観察した場合にどの装置であっても同じ寸法の計測結果を得ること、すなわち、装置間の測定結果の機差が小さいことが求められる。
特開平8-171879号公報
特許文献1に記載のように、SE電子源は開口部をもつサプレッサ電極と、先端部から電子を放出する電子放出材である単結晶線(以下、チップと称する)を備え、サプレッサ電極の開口部からチップの先端部(電子放出部)が突き出た構造をもつ。さらに、SE電子源に引出電極等を付加して電子銃(SE電子銃)を構成する。SE電子銃では、チップを加熱するとともに引出電極による電界印加を行ってチップ先端から電子を放出させる。サプレッサ電極はチップ先端に対して負の電位を印加されて、チップ先端部以外から放出される不要な熱電子を抑制する機能を持つ。
この機能を果たすために、チップとサプレッサ電極の開口部の中心軸は高い精度で位置合せすることが求められる。そのためチップとサプレッサ電極の開口部とは機械的に同軸状となるように位置合わせして組立てられ、電子源として一体化される。この電子源が電子顕微鏡等の各装置に搭載され、電子線が放出され使用される。
ここで、発明者らの研究の結果、電子源の個体ごとに、チップの中心軸とサプレッサ電極の開口部の中心軸とは、例えばサプレッサ電極の開口径が400μm程度の場合に対して数μmから数十μmずれる場合があることがわかった。チップとサプレッサ電極の中心軸がずれると、サプレッサ電極が生成する電界がチップに対して軸のずれた分布となり、中心軸に対して垂直方向(横方向)の電界が、チップの前方の空間に発生する。チップ先端から放出した電子線は、この電界によって横方向に曲げられ、下流にあるレンズの軸外を通過する。この結果、レンズで軸外収差が発生し、試料に照射した電子線の集光径が大きくなることで分解能が悪化する。
チップとサプレッサ電極の軸ずれ量が大きくなるほど、横方向の電界は大きくなる。従って、電子線が大きく曲げられて軸外収差も大きくなる。チップとサプレッサ電極の軸ずれ量は、電子源の個体ごとに異なることから、電子源を搭載した装置ごとに軸外収差の大きさも変わり、分解能に差が生じる。この結果、電子顕微鏡等の装置間の機差が大きくなる課題が生じる。
その他に、チップとサプレッサ電極との軸ずれ量が特に大きい場合、電子線が大きく曲げられることで、下流に配置した絞りや電極の開口を通過できなくなる。この場合、電子線が試料に到達できなくなり、電子源、電子銃、または、電子顕微鏡の製造不良となる。これは、製造コストの増加や、リードタイムの増加などの課題となる。
本発明の目的は、機差を低減した電子源、電子銃、及びそれを用いた電子顕微鏡等の荷電粒子線装置を提供することである。
本発明の一実施の形態である電子源は、中心軸に沿った方向における一方の端部に開口部を持つサプレッサ電極と、開口部から先端が突き出した電子放出材とを有し、サプレッサ電極は、開口部よりも外周方向の位置に、中心軸に沿った方向においてサプレッサ電極の端部よりも電子放出材の先端から遠ざかる位置に後退した後退部をさらに備え、後退部の少なくとも一部は、開口部の中心から直径2810μm以内に配置されることを特徴とする電子源として構成する。
本発明によれば、機差を低減した電子源、電子銃、及びそれを用いた電子顕微鏡等の荷電粒子線装置を提供できる。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
実施例1に係る走査電子顕微鏡の概略を示す図である。 従来のSE電子源の構成を説明する図である。 従来のSE電子源において電子線が曲がる原理を説明する図である。 従来のSE電子源において電子線が曲がる原理を説明する図である。 実施例1に係るSE電子源の構成を説明する図である。 従来のSE電子源において電子線の軌道についての原理を説明する図である。 従来のSE電子源において電子線の軌道についての原理を説明する図である。 実施例1に係るSE電子源において電子線の軌道についての原理を説明する図である。 実施例1に係るSE電子源において電子線の軌道についての原理を説明する図である。 実施例1に係るSE電子源においてテーパー面の角度θが電子線に与える影響を示す図である。 実施例1に係るSE電子源においてテーパー面の角度θが電子線に与える影響を示す図である。 従来のSE電子源においてチップとサプレッサ電極との軸ずれ量が電子線に与える影響を示す図である。 実施例1に係るSE電子源においてチップとサプレッサ電極との軸ずれ量が電子線に与える影響を示す図である。 従来型と実施例1に係るSE電子源においてチップとサプレッサ電極との軸ずれ量が電子線に与える影響を示す図である。 実施例1に係るSE電子源において、Lとθと電子線への影響の関係を示す図である。 実施例1に係るSE電子源において、Lとθと電子線への影響の関係を示す図である。 実施例1に係るSE電子源において、必要となるサプレッサ電圧の例を示す図である。 従来のSE電子源において、チップの突き出し長さTを変えた場合の電子線への影響を示す図である。 実施例2に係るSE電子源において、Lとθと電子線への影響の関係を示す図である。 実施例2に係るSE電子源において、Lとθと電子線への影響の関係を示す図である。 実施例2に係るSE電子源において、Lとθと電子線への影響の関係を示す図である。 実施例2に係るSE電子源において、Lとθと電子線への影響の関係を示す図である。 実施例2に係るSE電子源において、TとLと電子線への影響の関係を示す図である。 実施例3に係るSE電子源の構成を説明する図である。 実施例4に係るSE電子源の構成を説明する図である。 実施例5に係るSE電子源の構成を説明する図である。 実施例6に係るSE電子源の構成を説明する図である。 実施例7に係るSE電子源の構成を説明する図である。
以下、本発明の電子源、電子銃、及び電子顕微鏡等の荷電粒子線装置の種々の実施例を、図面を用いて順次説明する。荷電粒子線装置として、電子線を試料に照射し、試料から放出される二次電子、反射電子、または透過電子等を検出することで試料の観察画像を生成する電子顕微鏡がある。以下、荷電粒子線装置の一例として、電子顕微鏡の中で走査電子顕微鏡について説明するが、本発明はそれに限定されず、他の電子顕微鏡、荷電粒子線装置にも適用できる。
図1に実施例1に係る走査電子顕微鏡の全体の概略構成を示す。走査電子顕微鏡は、電子源101から出射した電子線115を試料112に走査しながら照射し、試料112から放出される二次電子や反射電子等を検出器114で検出して試料112の観察画像を生成する。この観察画像は、微小スポットに集光した電子線115を試料112上に走査し、電子線115が照射された位置と二次電子等の検出量を関連付けて生成する。図の中で、電子線115の出射方向をZ軸、Z軸に直交する水平軸をX軸とする。
走査電子顕微鏡は、筒体125と試料室113を備え、筒体125の内部は、上から第一真空室126と第二真空室127、第三真空室128に分けられる。それぞれの真空室の境界部分には電子線115が通過する絞り(図示せず)があり、各真空室の内部は差動排気で真空に維持する。以下、各真空室について装置構成を説明する。
第一真空室126の内部に電子源101を配置する。電子源101にはSE電子源を使用する。SE電子源101は碍子116で保持され、筒体125と電気的に絶縁される。SE電子源101の下方(下流)には、引出電極102を対向させて配置する。引出電極102の下方には、加速電極103を対向させて配置する。SE電子源101、引出電極102、加速電極103により、電子銃104を構成する。SE電子源101から電子線115を放出し、最終的に試料112に照射することで観察画像を得る。SE電子源101の構成の詳細は後述する。第一真空室126は、イオンポンプ120と非蒸発ゲッターポンプ118で真空排気し、圧力を10-8Pa台の超高真空、より好的には10-9Pa以下の極高真空にする。
第二真空室127にはコンデンサレンズ110を配置する。第二真空室127はイオンポンプ121で排気する。
第三真空室128には、検出器114を配置する。第三真空室にもイオンポンプ(図示しない)を配置して真空排気する。
試料室113には、対物レンズ111と試料112を配置する。また、図示しないが、電子線115を走査するための走査偏向器等も配置する。試料室113はターボ分子ポンプ109で真空排気する。
ここからは、上記の各構成の作用と、SE電子源101から放出した電子線115が、観察画像を生成するまでの工程を説明する。
電子銃104の各電極には、図示していない電源を用いて電圧が印加される。引出電極102には、SE電子源101に対して正の引出電圧Vを印加し、SE電子源101から電子線115を放出させる。引出電圧Vの大きさは典型的には1kVから10kV程度、より好適には2kVから6kV程度とする。加速電極103には、SE電子源101に対して0.5kVから100kV程度の加速電圧Vを印加し、電子線115を加速する。引出電極102と加速電極103との間には、電圧差によって静電レンズが形成される。
電子銃104の下方にはコンデンサレンズ110を配置し、電子銃104を出射した電子線115を集光し、電子線115の電流量や開き角を調整する。なお、コンデンサレンズは複数設けても良く、その他の真空室に配置しても良い。また、電子源101からコンデンサレンズ110までを電子銃104としてもよい。
最後に、さらに下方の試料室113に配置した対物レンズ111で電子線115を微小スポットに集光し、図示しない走査偏向器により試料112上に走査しながら照射する。このとき、試料112からは、表面形状や材質を反映した二次電子や反射電子、X線が放出する。これらを検出器114で検出することで、試料の観察画像を得る。検出器114は複数設けても良く、試料室113等、その他の真空室に配置しても良い。
次に、図2に、一般の走査電子顕微鏡で使用するSE電子源として従来のSE電子源201の構成を示す。従来のSE電子源201は電子放出材である単結晶線(以下、チップと称する)202と、サプレッサ電極203を備えて構成される。
チップ202は、タングステン<100>方位の単結晶線であり、その直径は0.12mm程度である。チップ202の先端は先鋭化し、電子が放出する先端部分の曲率半径は1μm以下程度としている。チップ202の単結晶線の中腹等の一部分には酸化ジルコニウムを塗布する。チップ202は、フィラメント206に溶接する。フィラメント206の両端は、二つの端子207に接続する。二つの端子207は、碍子208に保持され、それぞれ電気的に絶縁される。二つの端子207はSEチップ202と同軸方向に伸び、図示していないフィードスルーを介して電流源に接続される。
このような構成において、端子207には定常的に電流を流し、フィラメント206を通電加熱することで、チップ202を1500Kから1900Kに加熱する。この温度では、チップ202に塗布した酸化ジルコニウムが表面を拡散移動し、電子源となるチップ202の先端中央にある(100)結晶面を被覆する。(100)面が酸化ジルコニウムで覆われると、その部分の仕事関数が低減する。さらに、サプレッサ電極203の下方に配置した引出電極102(図1に示す)には前述したように数kV程度の引出電圧Vを印加することで、先鋭化されたチップ202の先端には、中心軸Z方向に10V/m程度の強い引出電界が印加される。この結果、ショットキー効果が発生し、仕事関数がさらに低下する。これらの結果、加熱されたチップ202の先端の(100)面から熱電子が放出し、電子線115が得られる。
サプレッサ電極203は、典型的な形状として、底面(平面)205をもつカップ型の円筒金属等である。その底面(平面)205には開口部204が配置される。サプレッサ電極203と開口部204とは同軸加工され、中心軸が一致する。この中心軸は電子線115の出射方向と同じZ軸とする。チップ202は開口部204の内部に配置され、チップ202の先端は、この開口部204から一定の長さTだけ突き出して配置される。チップ202の先端以外の部分はサプレッサ電極203で覆われる。
サプレッサ電極203は、碍子208と嵌合で組み立てられ、保持される。サプレッサ電極203と端子207とは、碍子208によって電気的に絶縁されている。
平面205は、本例では中心軸Zに対して垂直な平面部分である。平面205の直径は典型的には4mmから10mm程度である。開口部204の直径dは、典型的には0.2mmから1.2mm程度、より好適には0.4mm程度である。サプレッサ電極203の側面は、典型的にはサプレッサ電極203の中心軸Zと平行な円筒面210をもち、平面205と円筒面210との接続部には面取り部209がある。
上記のように、チップ202の先端は開口部204から長さTだけ突き出して配置される。チップ202の先端の突き出し長さTは、典型的には0.15mmから0.35mm程度、より好適には0.25mm程度である。
サプレッサ電極203には、チップ202に対して典型的には-0.1kVから-1.2kV、より好適には-300Vから-600V程度の負のサプレッサ電圧Vを印加する。負のサプレッサ電圧Vが形成する電界により、チップ202の根元やフィラメント206等、チップ202の先端部以外の箇所から放出しようとする不要な熱電子は、放出が抑制される。その結果、不要な熱電子による電子ビーム115の高輝度性能、高分解能性能の劣化を防ぐことができる。
なお、チップ202の先端と、図1に示した引出電極102との距離は典型的には0.15mmから1.5mm程度である。チップ202の先端と図1に示した加速電極103との距離は典型的には1mmから50mm程度である。
ここで、サプレッサ電極203と碍子208とは嵌合で組み立てるため、基本的にはチップ202の中心軸とサプレッサ電極203の開口部204の中心軸は一致するように一体形成される。しかし、加工形成工程では、機械公差や、組み立て誤差、熱による歪みの影響でずれが生じる。このため、現実的には、チップ202の中心軸と、開口部204の中心軸とは、サプレッサ電極203の開口部204においてZ軸に直交する方向(X軸方向等)にずれることがあり、そのずれ量、すなわちチップ202の開口部204の面内における開口部204の中心とチップ202のずれ量(以下、軸ずれ量と称する)Δは現実的には数μmから数十μm程度となり、さらにこの軸ずれ量Δは電子源の個体ごとに異なる。なお、サプレッサ電極203の中心軸と開口部204の中心軸は上述のように同軸加工されるため、以下、チップ202と開口部204の軸ずれについて、チップ202とサプレッサ電極203との軸ずれと称することがあるが、同様の意味である。このような軸ずれΔが発生することにより、電子線115の軌道が曲げられるという影響があり、その結果、後述するように、下流にあるレンズの軸外を通過することによる軸外収差の発生等の問題が発生する。
次に、図3を用いて、チップ202とサプレッサ電極203の開口部204の軸がずれることで、電子線115が曲がる原理の概略を説明する。図3では、走査電子顕微鏡に搭載したSE電子源101において、チップ202の先端部分を拡大して図示している。なお、同一記号の構成は前述と同じ構成を意味し、以降の説明は省略する。
図3Aは、チップ202とサプレッサ電極203の軸が一致する理想的な場合の模式図である。中心軸が一致する場合、後述するようにチップ202の先端から放出した電子線115には同軸状のサプレッサ電極203が形成するZ軸に対称な電界分布のみが作用し、電子線115の進行方向であるZ方向のみの電界作用を受けてZ方向に直進し、曲げられることなく、中心軸上を進む。その後、電子線115は、引出電極102や加速電極103の開口の中心軸上を進むため、軸外収差は発生しない。
図3Bは、チップ202に対して、サプレッサ電極203が軸ずれした場合の模式図である。なお、サプレッサ電極203は、軸ずれベクトル302で示したようにサプレッサ電極203が図中で右方向にずれた場合を示している。また、破線で示したサプレッサ電極203は、軸ずれしていない場合の位置を示す。
チップ202とサプレッサ電極203の中心軸がずれた場合、チップ202の電子線115の放出方向の前方の空間に、後述するように中心軸とは垂直方向(横方向)(X方向)の電界301が発生する。チップ202から放出した電子線115は、この電界によってZ軸方向のみではなく横方向にも力を受け、曲げられる。その後、電子線115は、引出電極102と加速電極103とで形成される静電レンズの軸外を通過する。この結果、軸外収差で電子線115の軌道が乱され、試料112上に集光した際の集光径が大きくなることで、走査電子顕微鏡の分解能が悪化する。なお、加速電極103の下方にはコンデンサレンズ110や、対物レンズ111がある。電子線115が曲げられることで、これらのレンズでも軸外収差が発生し、分解能を悪化させる。
電子源101の軸ずれ量Δは個体ごとに異なるため、電子線115が曲がる大きさも個体ごとに異なる。従って、電子源を搭載した走査電子顕微鏡ごとに軸外収差と分解能が変わり、機差が生じる。走査電子顕微鏡に機差があると、例えば半導体パターンを試料としてパターンの寸法を計測するような場合に、同じ寸法のパターンについて複数の電子顕微鏡で計測した場合に、計測に用いた走査電子顕微鏡の機差に応じて異なる寸法の計測結果が得られることになってしまい、計測の信頼性、精度、再現性が低下してしまう。この機差の問題は、半導体パターンの微細化に伴ってより顕在化しやすい問題となる。
さらに、軸ずれΔが大きく、電子線115が曲がる大きさが特に大きいと、引出電極102や加速電極103の開口、または図示していないその他の絞りを通過できず、試料112に到達できない。この場合には、電子源、電子銃、または、走査電子顕微鏡の製造不良となり、製造コストやリードタイムを増加させる。
上記の問題を解決するため、実施例1では、サプレッサ電極305の形状を従来のサプレッサ電極203と異なる形状とした。
図4に、実施例1のSE電子源101及びサプレッサ電極305の構成を示す。図4に示すように、実施例1のサプレッサ電極305は、従来のサプレッサ電極203と異なり、その下面(底面)である平面205の中心軸Z近傍の位置に、テーパー面(テーパー部)306をもつ。このテーパー面306が作用することで、後述するようにチップ202とサプレッサ電極305とが軸ずれした場合にも、電子線115が曲げられなくなる。
テーパー面306は中心軸Zと垂直な面との間に角度(テーパー角度)θをなす。テーパー面306と、平面205(前方端部213)の接続部には、角部307が形成される。テーパー面306が始まる位置(角部307の位置に相当する)の中心軸から見た直径をLとする。直径Lは平面部205(前方端部213)の直径となっている。
サプレッサ電極305の構成を他の表現で言い換えると、次のようになる。サプレッサ電極305は、中心軸Zをもち、中心軸Zに沿った方向における両端部となる前方端部213(平面205)と後方端部214を備え、前方端部213(平面205)にサプレッサ電極305と同軸状に開口部204を備えてチップ202を配置する。ここで、チップ202の先端部が開口部204から突き出されて配置され電子線115が放出される方向を前方とし、その反対方向を後方とした。前方端部213(平面205)の開口部204よりも外周方向の位置に、Z方向において前方端部213(平面205)よりもチップ202の先端から遠ざかる方向に後退した面(後退部(面))212となるテーパー部306を備える構成である。
サプレッサ電極305は、従来のサプレッサ電極203と比較して、平面205の面内で中心軸Zの近傍部の面を後退させて後退部212(テーパー面306)を形成したものであり、平面部205の直径が従来よりも小さくなっている。
中心軸Zの近傍にテーパー面306が存在することで、チップ202とサプレッサ電極305とが軸ずれした場合でも、サプレッサ電極305が形成する電界分布にテーパー面306が作用して、後述するように電子線115が曲げられなくなる。サプレッサ電極の形状のパラメータである上記の直径Lと角度θとは、後述するように適切な設計範囲をもつ。
サプレッサ電極305は、従来のSE電子源201と同様に、碍子208と嵌合で組み立てられて保持される。
このような実施例1のサプレッサ電極の構造によって得られる効果を説明する。図5A~図5Dに、実施例1のSE電子源101において、チップ202とサプレッサ電極305とが軸ずれしても、電子線115が曲げられなくなる原理を説明する説明図を示す。図5A、図5Bは従来型のサプレッサ電極203を用いた場合、図5C、図5Dは実施例1のサプレッサ電極305を用いた場合の状態を示すものである。そして、図5Aと図5Cはチップ202と開口部204の軸ずれがない場合、図5Bと図5Dは軸ずれがある場合を示している。
まず 図5Aは、従来のSE電子源201において、軸ずれがない場合での電気力線を示した模式図である。電気力線は空間に発生する電界の方向を示す仮想的な線であり、電子が受ける力の向きを示す。
上述したように、サプレッサ電極203には、チップ202や引出電極102に対して、負の電圧が印加される。この結果、チップ202の表面には複数の正電荷401が生じ、サプレッサ電極203の表面には複数の負電荷402が生じる。このため、電荷401から負電荷402に向けて、電気力線403が生じる。図5Aの軸ずれがない状態では、チップ202とサプレッサ電極203は、中心軸に対して軸対称な構造をもつ。この場合、中心軸上を横切る電気力線はなく、チップ202の先端から放出する電子線115に対して横方向の力は加わらない。従って、電子線115が曲がることはない。
図5Bは、従来のSE電子源201において、軸ずれした場合に追加される電気力線を示した模式図である。チップ202に対して、サプレッサ電極203がずれることは、図5Aの状態に新たに電荷が加わることに相当する。
図5Aの状態から図5Bの状態へと、サプレッサ電極203が軸ずれベクトル302で示す方向、すなわち図中で右方向にわずかな量(軸ずれ量Δ)ずれたとする。なお、図5B中の破線は軸ずれする前のサプレッサ電極203の位置、実線は軸ずれした後のサプレッサ電極203の位置を示す。なお、軸ずれ量Δは、厳密には、開口部204の面内におけるサプレッサ電極の開口部204の中心軸とチップ202の中心軸とのずれとして定義したが、ほぼ同様の量として、図5等においては開口部204の開口端部が軸ずれ前の状態から軸ずれした状態に位置が変化(変位)した際の変位量として簡易的に図示している。
開口部204において、サプレッサ電極203がチップ202に近づく空間領域406に着目する。この空間領域にサプレッサ電極203が移動することは、軸ずれでこの空間に新たな負電荷405が加わることと等価である。また、空間領域406の図中左側の空間は、サプレッサ電極203の内部になるために電荷は発生しない。このため、軸ずれ前にあった負電荷402を打ち消す正電荷420も加わる。さらに、空間領域406では、サプレッサ電極203とチップ202との距離が近づく。このため、静電容量が大きくなり、軸ずれ前と比べて、この空間の負電荷の量が増す。すなわち、正電荷420と比べて、負電荷405の数が多くなる。
一方、開口部204において、サプレッサ電極203がチップ202から離れる空間領域407に着目する。この空間領域からサプレッサ電極203がなくなることは、この部分に新たな正電荷404を加え、軸ずれ前にあった負電荷421を打ち消すことと等価である。また、空間領域407の図中右側は、新たにサプレッサ電極203の表面になることから、ここに負電荷422が加わる。さらに、空間領域407では、サプレッサ電極203とチップ202との距離が離れる。このため、静電容量が減り、軸ずれ前と比べて、この空間の負電荷の量が減る。すなわち、負電荷422と比べて、正電荷404の数が多くなる。
このように、サプレッサ電極203が軸ずれすることは、図5Aに示した軸ずれがない状態での電荷分布に、図5Bに示した、負電荷405と正電荷420、及び、正電荷404と負電荷422を追加することと等価である。
ここで、図5Bにおいて、正電荷404と負電荷405が、サプレッサ電極203の真空側表面に露出し、かつ電荷量が多く、真空領域に最も強く電界を作る。この結果、チップ202の前方に、両電荷を繋げる新たな電気力線408が発生する。電気力線408は中心軸を横切るように横向き(図中のX方向)に発生し、チップ202から放出する電子線に力を加える。この結果、電子線は図中で右側に曲げられる。これが、サプレッサ電極203の軸ずれによって電子線が曲がる原理である。
図5Cは、実施例1のSE電子源101において、軸ずれがない場合での電気力線を示した模式図である。実施例1のSE電子源101は、サプレッサ電極305の下面の軸近傍にテーパー面306をもつ。軸ずれがない場合、図5Aと同様に、軸対称に正電荷401と負電荷402ができ、電気力線403が生じる。この場合も、中心軸を横切る電気力線が発生することはなく、電子線115が曲げられることはない。
図5Dは、実施例1のSE電子源101において、図中の右側へ軸ずれ量Δだけ軸ずれした場合に追加される電気力線を示した模式図である。実施例1のSE電子源101では、テーパー面306を設けることで、テーパー面にも電荷を発生させ、電気力線408とは逆向きの電気力線412を発生させる。この結果、電子線を曲げる力を緩和するとともに、さらには、電子線を曲げ戻す力を発生させる。なお、図中の破線は図5Cに示した場合と同様の軸ずれする前のサプレッサ電極305の位置、実線は軸ずれした後のサプレッサ電極305の位置を示す。
図5Dについて、より詳しく説明する。実施例1のSE電子源101においても、チップ202とサプレッサ電極305が軸ずれした場合、開口部204において、新たな正電荷404と負電荷422、及び、新たな負電荷405と正電荷420が発生し、電気力線408が生じる。
ここで、実施例1のSE電子源101では、テーパー面306にも軸ずれによって等価な電荷が発生する。テーパー面306がチップ202に近づく空間領域413に着目する。この空間にあったサプレッサ電極305がなくなることは、ここに新たな正電荷410を加え、軸ずれ前にあった負電荷402を打ち消すことと等価である。また、空間領域413の図中の右側の空間は、新たにテーパー面306の表面になることから、ここに負電荷423が加わる。さらに、空間領域413では、テーパー面306がチップ202に近づく。この結果、チップ202がテーパー面306に与える電界の影響が増し、(図示しない)引出電極102がテーパー面306に与える電界の影響が減る。チップ202と比べて、引出電極102に印可する電圧が高いことから、テーパー面306の電界は減ることになる。すなわち、負電荷423と比べて正電荷410の数が多くなる。
一方、テーパー面306がチップ202から離れる空間領域414に着目する。この空間にサプレッサ電極305が移動することは、ここに新たな負電荷411を加えることと等価である。また、空間領域414の左側は、サプレッサ電極305の内部になることから、軸ずれ前にあった負電荷を打ち消す正電荷424が加わる。さらに、空間領域414では、テーパー面306がチップ202から離れる。この結果、チップ202がテーパー面306に与える電界の影響が減り、図示しない引出電極102がテーパー面306に与える電界の影響が増す。チップ202と比べて、引出電極102に印可する電圧が高いことから、テーパー面306の電界が増える。すなわち、正電荷424と比べて、負電荷411の数が多くなる。
このように、テーパー面306の表面において、空間領域413では正電荷410が多く、空間領域414では負電荷411が多くなる。この結果、両者を繋げる新たな電気力線412が生じる。電気力線412は、開口部204が発生する電気力線408と逆向きとなる。これは、開口部204で発生する電界を弱めることになり、電気力線408の及ぼす力を低減し、電子線を曲がりにくくすることができる。
また、テーパー面306に発生する正電荷410と負電荷411の電荷量が大きいほど、または、正電荷410と負電荷411との距離が近いほど、両者が作る電界が強くなり、電気力線412が及ぼす力も強くなる。そこで、電荷量と距離を適切な量とすることで、電気力線408によって曲げられた電子線を、電気力線412で曲げ戻し、電子線を中心軸上に戻すこともできる。
一方、電荷量を過剰に大きくしすぎる、または距離を過剰に近くしすぎると、電気力線412の力が電気力線408の力よりも強くなりすぎ、電子線が図中の左に曲げられるようになる。電気力線412の力が過剰である場合、従来のサプレッサ電極203が軸ずれした場合と比べて、電子線が曲げられる程度が大きくなり、従来よりも軸ずれの影響が大きく、問題が却って悪化することになる。
テーパー面306に生じる正電荷410と負電荷411の電荷量、及び、両電荷の距離は、図4に示したテーパー面306の開始位置の直径Lと、テーパー面306の角度θによって決まる。直径Lは、テーパー面306に発生する正と負の電荷間の距離を決める。角度θは、テーパー面306とその角部307の電界集中の度合いを決め、テーパー面306と角部307に発生する電荷量を決める。従って、軸ずれしても電子線が曲がらないようにするためには、直径Lと角度θを適切な範囲で設計する必要がある。
ここで、面に生じる電荷が作る電界は、正と負の電荷間の距離、すなわち面の間の距離に反比例して弱くなる。従って、テーパー面306により中心軸上に十分な電界を発生させるためには、テーパー面306を中心軸近傍に配置する必要がある。すなわち、直径Lを一定の距離以下にする必要がある。なお、従来のサプレッサ電極203では、面取り部209が配置されてはいるものの、通常はサプレッサ電極305の角部の電界集中を避ける等の目的のものであり、面取り部209の開始位置の直径、すなわち平面205の直径Lについては考慮されておらず、典型的には4mm以上の大きい径をもつ。このように直径Lが大きい場合、平面205の外側にどのような構造を設けても、この構造が中心軸上に作る電界は極めて小さく、電子線115に影響を及ぼすことはない。このため、従来のサプレッサ電極203において面取り部209がどのような形状や角度であっても、その影響はない。平面205の直径が、このように大きい場合、開口部204が作る電界のみで横方向の電界と電子線115の曲がり方が決まる。
なお、上述した電子線115が曲げられなくなる原理は、中心軸近傍に図4と異なる形状を設けることでも実現できる。図5Dに示した構成は、本質的には、サプレッサ電極305の開口部204よりも外周方向で、サプレッサ電極の最下面205(前方端部213)よりも後方(図中上方)に向かう面(後退部(面)212)を中心軸近傍の位置に設けることで、軸ずれ時にここに電荷が発生し、反対方向の電界を発生させるものである。この結果、開口部204が形成する電界を打ち消し、さらには電子線を曲げ戻すことで、電子線115が曲げられなくなる。別の言い方をすると、チップ202から試料に向かう方向を前方、逆向きを後方として、サプレッサ電極305の開口部204よりも外周方向で、中心軸Z近傍の位置に、サプレッサ電極305の最前面(前方端部)213よりも後方に後退した面(後退面)(実施例1ではテーパー部306)、すなわちチップ202の先端から中心軸方向に前方端部213よりも離れた(遠ざかる)部分を後退部212の一部として設ける。この結果、軸ずれ時に開口部204が発生する電界と反対方向の電界を、この後退面212の中心軸近傍部分(実施例1ではテーパー部306)が発生させる。この結果、電子線が曲げられるのを防ぐことができる。
図4のテーパー306以外の後退面の例として、ステップ状の段(θ=90度(°)に相当)や、球や楕円などの曲面、複数のテーパーや段、曲面を組み合わせた面でも良い。なお、ステップ状の段はテーパー角度90°のテーパー部、球や楕円等の曲面は連続的に変化する無数の異なるテーパー角度の微小部分により形成される、一種のテーパー部と考えることもできる。これらのその他の形状は他の実施例として後述する。
ここからは、サプレッサ電極305の形状パラメータL、θ、及びサプレッサ電極305とチップ202の軸ずれ量Δと電子線115の軌道の曲がり量(図5におけるX方向の変位)との関係及びサプレッサ電極305の形状パラメータの適切な設計範囲について説明する。
まず、図6に、実施例1のSE電子源101においてテーパー面306の角度θが電子線115に与える横方向の曲がり(X方向の変位)への影響の一例を示す。
図6Aは、テーパー面306の角度θを0°から14°まで変えた場合に、中心軸Z上に発生する、中心軸とは垂直な方向(X方向、横方向)の電界Eを計算した結果である。ここで、チップ202の中心軸をZ軸、その垂直方向をX軸とし、チップ202の先端表面をZ=0、試料側をZ>0とした。計算条件の一例として、サプレッサ電極305の前方端部213(平面205)の直径L、チップ202の突き出し長さT、開口部204の直径d、チップ202とサプレッサ電極305との軸ずれ量ΔをそれぞれL=800μm、T=250μm、d=400μm、Δ=1μmとし、チップ202の電位を0V、引出電圧Vを2kVとした。また、サプレッサ電圧Vは、チップ202の先端に加わる中心軸方向(Z方向)の電界が、各形状で等しくなるように調整した。横方向の電界Eは、θ=0°のときの最大電界の絶対値を1として規格化した。なお、θ=0°は、テーパー面306がない条件であり、従来のサプレッサ電極203の形状である。また、上記の計算条件は、上述のように一例であり、各種のパラメータ(計算条件)が変化した場合についても後述するように電子線の曲がりを低減する効果の傾向を考察することができる。
θ=0°の場合、チップ202の先端付近でE=-1の最大電界が発生し、Zが大きくなるにつれて電界が低下した。Z=800μm付近でEはほぼ0となった。θを2°にすると、チップ202先端の電界が低下した。θを6°、10°、14°と大きくすると、チップ202先端の電界が徐々に弱まるのに加えて、Z=200μm付近を頂点にして+側の電界が発生した。電界の正負が逆転していることから、この+側の電界は、チップ近傍で一度曲げられた電子線を引き戻すように作用する。
図6Bは、テーパー面306の角度θを0°から14°まで変えた場合の、電子線の軌道の計算結果である。Z軸上の距離Zに対する電子線の軌道のX方向の位置(変位量あるいは離軸距離X)を示すものである。横軸Zに対する縦軸Xの変化率(dX/dZ)は電子線の軌道の傾きとなる。なお、図ではZは20mmまで表記し、下流にある加速電極103付近まで図示した。また、縦軸Xは、θ=0°の従来のサプレッサ電極において、Z=20mmでの電子線の離軸距離Xを1として規格化した。サプレッサ電極305の形状等のパラメータは図6Aと同様である。
θ=0°の従来のサプレッサ電極の場合、電子線は+側に曲がり、Zが大きくなるにつれて中心軸から離軸する。θを大きくするにつれて電子線の傾き(dX/dZ)は低減し、離軸量Xも低減する。Z=20mmにおける電子線の傾き(dX/dZ)を従来と比較すると、θ=2°、6°、10°の傾きはそれぞれ、80%、39%、0.1%である。すなわちθ=10°の場合、チップ202とサプレッサ電極305が軸ずれしても電子線がほぼ曲げられない状態となる。電子線が曲げられないことで、電子線は中心軸上を進み、静電レンズやその他のレンズで軸外収差が発生しなくなる。一方、θ=14°では、電子線を曲げ戻す力が強くなりすぎ、電子線は-側に傾いた。θをさらに大きくすると電子線はさらに-側に傾き、電子線の曲がり量は従来よりも悪化する場合がある。このように、従来よりも電子線の曲がりを低減するためには、θを一定の範囲内にする必要がある。
次に、図7を用いて、実施例1のSE電子源101において、チップ202とサプレッサ電極305との軸ずれ量Δが大きくなった場合の影響の一例を説明する。
図7Aに、従来のサプレッサ電極203を用いたSE電子源201において、軸ずれ量Δが1μmから20μmに増えた場合、中心軸Z上に生じる、中心軸とは垂直な方向(X方向、横方向)の電界Eを計算した結果を示す。なお、横方向の電界Eは、軸ずれΔ=1μmの場合の最大電界の絶対値を1として規格化した。
は軸ずれ量Δにほぼ比例して増加し、その分布は相似形となった。軸ずれ量Δ=1μm、5μm、10μm、20μmでのEの最大値の絶対値は1、5、10、20となった。従って、軸ずれ量Δに比例して横向きの電界Eが大きくなり、電子線が大きく曲げられる。
図7Bは、実施例1のサプレッサ電極305を用いたSE電子源101において、θ=10°の条件で軸ずれ量Δが増えた場合の横方向の電界Eの計算結果である。なお、その他の計算に用いた条件は図6で説明した条件と同じである。
実施例1のSE電子源101に関しても、軸ずれ量Δに比例してEが増加し、その分布は相似形となった。ただし、実施例1のSE電子源101においては、軸ずれ量Δに比例して、Z=200μm付近に頂点をもつ+側の電界も増加した。この結果、軸ずれ量Δが増えても、それに応じて電子線を曲げ戻す力も増し、電子線が曲がらない状態が維持される。
図7Cに、従来のSE電子源201と、実施例1のSE電子源101について、軸ずれ量Δを横軸とし、Z=20mmの位置における電子線の傾き(dX/dZ)を縦軸に示す。図7Cの実施例1のサプレッサ電極305の形状は図7Bと同様である。なお、縦軸の電子線の傾き(dX/dZ)は、従来のサプレッサ電極203を用いたSE電子源201において、軸ずれ量Δ=1μmでのZ=20mmにおける傾きを1として規格化した。
従来のサプレッサ電極203では、軸ずれ量△に比例して電子線の傾き(dX/dZ)が大きくなった。一方、実施例1のサプレッサ電極305では、軸ずれ量Δが増えても、電子線の傾きはほぼ0となった。このように、実施例1によるサプレッサ電極305が軸ずれしても、電子線115が曲がらない状態を実現できる。
さらに、従来はチップ202とサプレッサ電極203との軸ずれ量が一定以下になるように、電子源の組み立て工程において基準を設け、品質管理を行った。そして、製造された電子源のうち、軸ずれ量Δが一定以下にできなかった個体は製造不良となっていた。一方、実施例1のサプレッサ電極305を用いることで、軸ずれ量Δが大きくても電子線115が曲がることがないため、組み立て工程の基準を大幅に緩めることができる。これは、電子源の製造コストの低下や、歩留り向上、リードタイム低減などの効果がある。
以上の結果を踏まえ、実施例1のサプレッサ電極305の形状の適切な設計についてさらに検討する。
図8を用いて、実施例1のサプレッサ電極305を用いたSE電子源101において、適切なLとθの関係を説明する。図8Aに、実施例1のサプレッサ電極305において、Lとθを変えた場合に得られるZ=20mmにおける電子線115の傾き(dX/dZ)を計算した結果を示す。横軸をL、縦軸をθとして同じ電子線の傾きとなる点を結んだ等高線を表示している。なお、電子線の傾きは、従来のサプレッサ電極203を用いた従来のSE電子源201の電子線の傾きと比較したパーセンテージで示した。図中の90%、50%、0%、-50%、-90%の線は、従来のSE電子源201と比べて、電子線の傾きが90%、50%、0%、-50%、-90%になることを示す。-が示す意味は、従来と比べて電子線の傾きが逆転することを示す。計算に用いたその他の条件は図6と同じである。
実施例1のSE電子源101は、原理的に、Lを短くするほど、または、θを大きくするほど、テーパー面306が作る電界が強くなる。逆に、過剰にLが大きい、または、過剰にθが小さい場合、テーパー面306が作る電界は非常に弱くなり、従来と比べて電子線の傾きを低減する効果は無視できるほど小さくなる。一方、過剰にLが小さい、または、過剰にθが大きい場合、テーパー面306が作る電界は非常に大きくなり、従来と比べて電子線の傾きは逆向きに非常に大きくなる。この場合、従来のSE電子源201と比べて、電子線が逆方向に大きく曲がることになる。したがって、直径Lと角度θは適切な範囲内で設計する必要がある。
実施例1のサプレッサ電極305を用いたSE電子源101の効果として、電子線115の傾きの絶対値が従来よりも10%以上低減すること、すなわち、傾きの絶対値が従来の90%以下になることを閾値とすると、Lとθは、図8Aで示した90%から-90%の線で囲まれた範囲内で設計することが望ましい。
より好適には、電子線115の傾きの絶対値が従来よりも50%以上低減すること、すなわち、傾きの絶対値が従来の50%以下になることを閾値とすると、Lとθは図8Aに示した50%から-50%の線で囲まれた範囲内で設計することが望ましい。
さらに好適には、電子線115の傾きが従来の0%になること、すなわち、電子線が全く曲がらなくなるようにするためには、図8Aで示した0%の線上の条件で設計することが望ましい。
テーパー面306の角度θは、好適には90°が最大である。θ=90°のとき、テーパー面306の形状は、テーパーではなくステップ状の段とみなせる。図8Aに示したように、θ=90°の条件において、電子線の傾きを従来の90%にするLは約2540μmである。その他のθでは、テーパー面306が作る電界が弱くなることから、90%の傾きを得るためにはLをこの値よりも小さくする必要がある。従って、いずれの角度であっても、90%以下の電子線の傾きを得るためには、Lを2540μm以下にする必要がある。これがテーパー面306を軸近傍に配置する際の一つの基準となる。
同様に、θ=90°の条件において、電子線の傾きを従来の50%にするLは約1940μmである。従って、いずれの角度であっても、50%以下の電子線の傾きを得るためには、Lを1940μm以下にする必要がある。
同様に、θ=90°の条件において、電子線の傾きを0%にするLは1650μmである。従って、いずれの角度であっても、0%の電子線の傾きを得るためには、Lを1650μm以下にする必要がある。
図8Bは、図8Aの縦軸をlogθとした図である。なお、θの単位は度(°)、Lの単位はμmである。90%、50%、0%、-50%、-90%の線は、縦軸をlogθとすることにより以下のそれぞれの二次関数で近似される。
90%、50%、0%、-50%、-90%の線は、順に、以下のように表される。
logθ=2.40×10-7×L+3.18×10-4×L-4.08×10-1
logθ=3.80×10-7×L+6.77×10-5×L+3.92×10-1
logθ=4.96×10-7×L-8.31×10-5×L+7.43×10-1
logθ=5.86×10-7×L-1.81×10-4×L+9.49×10-1
logθ=6.68×10-7×L-2.68×10-4×L+1.08
したがって、実施例1のSE電子源101は、上記式で囲まれた範囲内のLとθを用いて設計するのがその他の一つの基準となる。例えば、電子線の傾きを従来の90%から-90%に低減する場合には、上記の90%と-90%の場合の式を用いて、2.40×10-7×L+3.18×10-4×L-4.08×10-1≦logθ≦6.68×10-7×L-2.68×10-4×L+1.08の関係を満たすように設計すればいい。
ここで、図8Aと図8Bに示した適切な範囲は、チップの突き出し長さTや、開口部204の直径、チップや引出電極の形状、サプレッサ電圧、引出電圧などのその他の条件によって、+-20%程度変化する。また、これら諸条件ごとに場合分けをして基準を設けることは難しい。このため、上記の範囲は厳密ではなく、一定の尤度をもち、変化する場合があることを留意するべきである。
一例として、本計算は、チップ202の突き出し長さT=250μmの結果であるが、突き出し長さに反比例して、横方向の電界301の影響は増減する。この結果、電子線が曲げられる程度が変化し、適切なLとθの範囲も変化する。Tが200μmから300μm程度の、250μmに近い値であれば、およそ図8に示したLとθの範囲内で設計することで、従来よりも電子線の傾きを低減できる。しかし、突き出し長さTがこの範囲から外れた場合、適切なLとθは図8の範囲では不十分となる。これらの突き出し長さが異なる場合については後述する。
本計算は、開口部204の直径が400μmの結果であるが、その他の一例として、開口部204の直径をより大きくした場合、引出電極102が、開口部204に与える電界の影響が強くなり、正電荷404と負電荷405の電荷量が増す。この結果、電子線115がより大きく曲げられるようになる。このとき、電子線115が曲がるのを防止するためには、図8に示した範囲よりも角度θを大きく、直径Lを小さくする必要がある。前述と同様の計算を行うことにより、例えば、開口部204の直径が600μmの場合、直径Lは約20%小さくする必要があることがわかった。
次に、実施例1のサプレッサ電極305を用いたSE電子源101に必要なサプレッサ電圧について説明する。図9にθ=10°の条件で直径Lを変えた場合において、チップ202の先端にかかる中心軸方向(Z方向)の電界を、従来と同じにするために必要なサプレッサ電圧を計算した結果を示す。その他の計算条件は図6と同じである。なお、縦軸は、従来のサプレッサ電極203を用いたSE電子源201に印可するサプレッサ電圧を1として正規化した。
実施例1のサプレッサ電極305は、テーパー面306のような後退面212を中心軸の近傍にもつことで、サプレッサ電極305の本来の目的であるチップ202の先端に加わる中心軸方向(Z方向)の電界を抑制する効果は弱くなってしまう。すなわち、チップ202の先端にかかる中心軸方向の引出・加速電界が強くなる。この場合、サプレッサ電極の機能である不要な電子を抑制する効果が低下し、従来よりも過剰に不要な電子が放出される問題が生じる。この対策のため、実施例1では、従来よりもサプレッサ電圧Vを高くして、チップ202の先端の中心軸方向の電界を従来と同じにする必要がある。
図9で示したL=400μmの計算結果は、テーパー面306の開始位置を開口部204の下面と一致させた条件であり、平面205がない形状を意味する。この場合、必要なサプレッサ電圧は1.54となり、従来よりも54%電圧を上げなければならない。これは電源コストの増加や、碍子208沿面での放電の危険性が増す課題が生じる。また、開口部204とテーパー面306の開始位置が一致することから、この点に電界が集中し、引出電極102との間で空間放電する危険性が増す。これらの放電が起こった場合、チップ202の先端が溶損し、電子源は使用できなくなる。また、通常、チップの突き出し長さTは平面205を基準面として、実体顕微鏡下で調整して組み立てるが、平面205がなくなることで、この突き出し長さの調整が難しくなり、歩留りの悪化や、製造コストが増加する問題が生じる。
図9で示したように、直径Lを400μmよりも大きくする、すなわち平面205の直径を大きくすることで必要なサプレッサ電圧が低減する。また、上記の平面205がない場合の問題を解消できる。特に図9に示したグラフは下に凸となっており、わずかにLを大きくすることで必要なサプレッサ電圧を大きく低減できる利点がある。
Lの大きさの一つの基準として、L=400μmの場合に必要なサプレッサ電圧の増加量54%の半分の27%以下にする、すなわち、図9の縦軸で1.27以下にすることを閾値とすると、これを実現するLは720μm以上である。従って、Lを720μm以上にすることで、平面205がない場合と比べて、必要なサプレッサ電圧の増加を半分以下にできる。このように、開口部204の直径dが400μm程度の典型的なサプレッサ電極において、Lを720μm以上とすることが一つの指針として得られた。
より好適には、L=400μmの場合に必要なサプレッサ電圧の増加量54%を三分の一の18%以下(縦軸で1.18以下)にすることを閾値とする。これを実現するLは910μm以上である。従って、Lを910μm以上にすることで、平面205がない場合と比べて必要なサプレッサ電圧の増加を三分の一以下にできる。
Lを2000μm以上にすると、必要となるサプレッサ電圧は1.01以下となり、従来とほぼ変わらなくなる。ただし、上述のようにテーパー面306が発生させる電界はLに反比例して小さくなる。このため、Lを大きくして必要なサプレッサ電圧を下げることと、電子線の曲げを防ぐこととは、トレードオフの関係となる。設計者は、全体の装置設計を鑑みて、電子線の曲がり量の許容値とサプレッサ電圧の増加の許容値を定め、これを元に、適切なLを決定する。その後、θを決定し、所望の範囲内に電子線の曲がりを低減する。または、チップ202とサプレッサ電極305との中心軸の組立誤差の調整基準を緩和する。
本計算はθ=10°について行ったが、その他の角度θについても同様の計算を行った結果、図9と相似な計算結果となった。従って、その他のθにおいても、上述のLを720μm以上にすることで、そのθでの平面205がない場合と比べて、必要なサプレッサ電圧の増加は半分以下にできる。また、Lを910μm以上にすることで、そのθでの平面205がない場合と比べて、必要なサプレッサ電圧の増加を三分の一以下にできる。
実施例1では、チップ202の突き出し長さTが200μmから300μm程度の条件において、サプレッサ電極305にテーパー面306を設けることで、軸ずれ時に電子線が曲げられるのを防ぐ構成を示した。実施例2では、実施例1と同じ構造のサプレッサ電極305及びSE電子源101を用い、チップ202の突き出し長さTが実施例1で記載した上述の範囲以外の場合の構成について説明する。
図10に、従来のサプレッサ電極203を用いたSE電子源201において、チップ202の突き出し長さTを変えた場合の横方向の電界Eを示す。図10は、T=150μm、250μm、350μmと変えた場合の計算結果である。T=250μmの結果は、実施例1の図6Aで示したθ=0°の結果に相当する。また、Z=0は、T=250μmでのチップ202の先端表面の位置とした。このため、T=150μmでのチップ202の先端表面はZ=-100μm、T=350μmでのチップ202の先端表面はZ=100μmとなる。計算条件は、開口部204の直径dを400μm、引出電圧Vを2kVとした。また、サプレッサ電圧Vはチップ202の先端に加わる中心軸方向(Z方向)の電界が、各形状で等しくなるように調整した。チップ202とサプレッサ電極203との軸ずれ量Δは1μmとした。縦軸である横方向の電界Eは、T=250μmのときの最大電界の絶対値を1として規格化した。
Tを変えた場合、開口部204が作る横方向の電界は大きく変わった。T=250μmでの電界のピークの値は-1であったのに対し、T=150μmでは-3.4、T=350μmでは-0.33となった。この原因は、チップ202の突き出し長さTによって、図5Bで示した電気力線408を遮蔽する領域が変わるためである。
チップ202の突き出し長さTを250μmよりも短くした場合、チップ202がなくなった領域にも電界が侵入し、電子線がより曲げられることになる。このため、電子線の曲げを防止するためには、図5Dに示した、逆向きの電界412を強くする必要がある。これを実現するためには、テーパー面306の直径Lをより短く、または、角度θをより大きくする必要がある。
チップ202の突き出し長さTを250μmよりも長くした場合、チップ202が移動した領域の電界は遮蔽され、電子線はより曲げられにくくなる。このため、実施例1で示したLとθでは過剰に電子線を曲げ戻し、電子線の傾きは従来よりも悪化する可能性がある。そこで、テーパー面306のLはより長く、または、θをより小さくする必要がある。
図11を用いて、実施例2のサプレッサ電極305を用いたSE電子源101において、突き出し長さTを150μmにした場合の適切なLとθの関係を説明する。図11Aに、実施例2のSE電子源101において、T=150μmの条件において、Lとθを変えた場合に得られる電子線の傾きを計算した結果を示す。なお、電子線115の傾きは、従来のSE電子源201で、T=150μmとした場合の電子線115の傾きと比較し、パーセンテージで示した。その他の計算に用いた条件は図10と同じである。
図11Aに示した90%、50%、0%、-50%、-90%の各線は、図8のそれらと比べて、Lがより短く、θがより大きくなった。
θ=90°の条件において、電子線115の傾きを従来の90%となるLは約2110μmである。その他のθでは、テーパー面306が作る電界は弱くなるため、90%の傾きを得るためには、Lをこの値よりも小さくする必要がある。従って、いずれの角度であっても、90%以下の電子線の傾きを得るためには、Lを2110μm以下にする必要がある。
同様に、θ=90°の条件において、電子線115の傾きを従来の50%にするLは約1450μmである。従って、いずれの角度であっても、50%以下の電子線の傾きを得るためには、Lを1450μm以下にする必要がある。
同様に、θ=90°の条件において、電子線115の傾きを0%にするLは1130μmである。従って、いずれの角度であっても、0%の電子線の傾きを得るためには、Lを1130μm以下にする必要がある。
図11Bは、図11Aの縦軸をlogθとした図である。θの単位は度(°)、Lの単位はμmであり、90%、50%、0%、-50%、-90%の線は、縦軸をlogθとすることにより以下のそれぞれの二次関数で近似される。
90%、50%、0%、-50%、-90%の線は、順に、以下のように表される。
logθ=2.69×10-7×L+3.64×10-4×L-2.21×10-2
logθ=4.62×10-7×L+1.70×10-4×L+0.74
logθ=6.92×10-7×L-6.94×10-6×L+1.08
logθ=9.88×10-7×L-2.25×10-4×L+1.31
logθ=1.27×10-6×L-4.18×10-4×L+1.45
したがって、実施例2のサプレッサ電極305を用いたSE電子源101において、突き出し長さTが150μmの場合は、上記式で囲まれた範囲内のLとθを用いて設計するのが一つの指針となる。例えば、電子線の傾きを従来の90%から-90%に低減する場合には、上記の90%と-90%の場合の式を用いて、2.69×10-7×L+3.64×10-4×L-2.21×10-2≦logθ≦1.27×10-6×L-4.18×10-4×L+1.45の関係を満たすように設計すればいい。
また、後述するように突き出し長さTと許容されるLとの範囲は比例関係がある。このため、Tが150μmから250μmまでの間のLとθの適切な範囲は、図8と図11で示した範囲の中間の領域にある。実施例2では、一つの閾値として、Tが200μmよりも小さい場合、図11で示した範囲内のLとθを用いる。この範囲であれば、Tが200μmよりも小さい場合であっても、およそ従来よりも電子線の傾きを低減できる。
次に、図12を用いて、実施例2のSE電子源101において、突き出し長さTを350μmにした場合の適切なLとθの関係を説明する。図12Aに、実施例2のサプレッサ電極305を用いたSE電子源101において、T=350μmの条件において、Lとθを変えた場合に得られる電子線の傾きを計算した結果を示す。なお、電子線115の傾きは、従来のSE電子源201において、T=350μmにした場合の電子線115の傾きと比較し、パーセンテージで示した。その他の計算に用いた条件は図10と同じである。
図12Aに示した90%、50%、0%、-50%、-90%の各線は、図8のそれらと比べて、Lがより長く、θがより小さくなった。
θ=90°の条件において、電子線115の傾きを従来の90%にするLは約2810μmである。その他のθでは、テーパー面306が作る電界が弱くなるため、90%の傾きを得るためには、Lをこの値よりも小さくする必要がある。従って、いずれの角度であっても、90%以下の電子線の傾きを得るためには、Lを2810μm以下にする必要がある。
同様に、θ=90°の条件において、電子線115の傾きを従来の50%にするLは約2270μmである。従って、いずれの角度であっても、50%以下の電子線の傾きを得るためには、Lを2270μm以下にする必要がある。
同様に、θ=90°の条件において、電子線115の傾きを0%にするLは1990μmである。従って、いずれの角度であっても、0%の電子線の傾きを得るためには、Lを1990μm以下にする必要がある。
図12Bは、図12Aの縦軸をlogθとした図である。θの単位は度(°)、Lの単位はμmであり、90%、50%、0%、-50%、-90%の線は、縦軸をlogθとすることにより以下のそれぞれの二次関数で近似される。
90%、50%、0%、-50%、-90%の線は、順に、以下のように表される。
logθ=2.59×10-7×L+1.82×10-4×L-6.04×10-1
logθ=3.32×10-7×L+5.07×10-5×L+1.26×10-1
logθ=4.12×10-7×L-8.01×10-5×L+4.75×10-1
logθ=4.62×10-7×L-1.49×10-4×L+6.76×10-1
logθ=5.15×10-7×L-2.29×10-4×L+8.10×10-1
したがって、実施例2のSE電子源101において、突き出し長さTが350μmの場合は、上記式で囲まれた範囲内のLとθを用いて設計するのが一つの指針となる。例えば、電子線の傾きを従来の90%から-90%に低減する場合には、上記の90%と-90%の場合の式を用いて、2.59×10-7×L+1.82×10-4×L-6.04×10-1≦logθ≦5.15×10-7×L-2.29×10-4×L+8.10×10-1の関係を満たすように設計すればいい。
Tが250μmから350μmまでの間のLとθの適切な範囲は、図8と図12で示した範囲の中間の領域にある。実施例2では、一つの閾値として、Tが300μmよりも大きい場合、図12で示した範囲内のLとθを用いる。この範囲であれば、Tが300μmよりも大きい場合であっても、およそ従来よりも電子線の傾きを低減できる。
以上のような計算を行い、実施例2のサプレッサ電極305を用いたSE電子源101において、突き出し長さTを変えた場合に電子線115の傾きの量が許容されるためのLの最大値を求めると以下のようになる。図13に、突き出し長さT=150μmから350μmにおいて、θ=90°の条件で、従来と比べて、電子線の傾きを90%、50%、0%にするためのLの値を示す。
θ=90°以外のその他のθでは、テーパー面306が作る電界は弱くなり、Lをさらに短くする必要がある。従って、図13に示したLは各パーセンテージの電子線115の傾きを得るために許される最大限のLとなる。いずれのパーセンテージの線であっても、LとTとは直線的な関係となり、Tに比例してLも大きくなる。このため、上記で計算した以外の突き出し長さであっても、適切な範囲を知ることができる。
突出し長さ350μmにおいて、従来の90%以下の傾きにするためには、図12で示したように、少なくともLを2810μm以下にする必要がある。また、このLの値以下であれば突き出し長さが350μmより短い場合であっても、電子線の傾きを90%以下にすることができる。また、図13に示したTとLはほぼ直線の関係で近似できることから、その他の言い方をすれば、電子線の傾きが90%になる直線の近似式であるL≦3.53T+1607を満たすLとTの関係であれば、電子線の傾きを90%以下にすることができる。ここで、LとTの単位はμmである。
同様に、突出し長さ350μmにおいて、従来の50%以下の傾きにするためには、図12で示したように少なくともLを2270μm以下にする必要がある。また、このLの値以下であれば突き出し長さが350μmより短い場合であっても、電子線の傾きを50%以下にすることができる。その他の言い方をすれば、電子線の傾きが50%になる直線の近似式であるL≦4.10T+861を満たすLとTの関係であれば、電子線の傾きを50%以下にすることができる。
さらに同様に、突出し長さ350μmにおいて、従来の0%の傾きにするためには、図12で示したように少なくともLを1990μm以下にする必要がある。また、このLの値以下であれば突き出し長さが350μmより短い場合であっても、電子線の傾きを0%にすることができる。その他の言い方をすれば、電子線の傾きが0%になる直線の近似式であるL≦4.29T+522を満たすLとTの関係であれば、電子線の傾きを0%にすることができる。
以上の結果をまとめると、電子線の傾きの量を少なくとも10%低減させる、すなわち90%以下の量に低減させるためには突き出し長さT=350μmの場合に直径Lを2810μm以下にする必要があることがわかった。そして、このLの値以下であれば突き出し長さが350μmより短い場合であっても、電子線の傾きを90%以下にすることができることがわかった。また、上述のように、チップ202の突き出し長さTは、典型的には150~350μm程度で用いられることが多い。そこで、平面205(前方端部213)の直径Lを2810μm以下とすることを一つの指針として得ることができた。
実施例2では、チップ202の突き出し長さTが異なる条件において、サプレッサ電極305にテーパー面306を設けることで、軸ずれ時に電子線が曲げられるのを防ぐ構成を示した。実施例3では、その他の後退面の一例として、ステップ状の段を用いた構成とする。
図14に、実施例3のSE電子源501の構成を示す。実施例3ではサプレッサ電極305の下面にステップ状の段502を設けた。すなわち、前方端部213(平面205)の直径をLとして、中心軸Zの近傍に、角部503においてθ=90°となるステップ状の段502を設け、角部503、段502、平面部504で後退部212を形成した。ステップ状の段502は実施例1と実施例2において、テーパー部306のテーパー角度θをθ=90°にした状態に相当する。上述したように、軸ずれ時に後退部212の後退面すなわちテーパー部306が作る電界は、θを大きくするほど強くなる。従って、テーパー面306と比べて、ステップ状の段502を用いることでLを大きくできる利点がある。なお、実施例3のサプレッサ電極は、テーパー角度90°の面(段)502とテーパー角度0°の平面504をもつテーパー形状と考えることもできる。
また、ステップ状の段502のうち、平面205と接続する角部503には、引出電圧によって電界が集中し、放電する可能性がある。このため、角部503は面取りやコーナーR加工をしても良い。
実施例3では、サプレッサ電極305に設けるその他の後退面の一例として、ステップ状の段を用いた構成を説明した。実施例4では、その他の後退面の一例として、楔型形状の面を用いた構成とする。
図15に、実施例4のSE電子源505の構成を示す。実施例4ではサプレッサ電極305の下面に楔型形状の面506を設けた。楔型形状の面506は、実施例1と実施例2において、テーパー部306のテーパー角度θをθ>90°にした状態に相当する。本構成でも、軸ずれ時に逆向きの電界を発生させて、電子線の曲がりを抑制することができる。特に、楔型形状の面506の頂点507に電界が集中することで、ここに多くの電荷が発生し、電子線115の曲がりを効果的に抑制することができる。しかし、その反面、頂点507には、実施例3で示した角部503よりもさらに大きな電界が印加され、放電する可能性がさらに大きくなる。このため、好適にはθ≦90°であることが望ましい。
実施例4では、サプレッサ電極305に設けるその他の後退面の一例として、楔型形状の面を用いた構成を説明した。実施例5では、サプレッサ電極305に設けるその他の後退面の一例として、曲面を用いた構成とする。
図16に実施例5のSE電子源510の構成を示す。実施例5ではサプレッサ電極305の下面に曲面511を設けた。すなわち、サプレッサ電極305の中心軸Zを通る断面(図16の斜線部)において、曲線部分511を持つ構造とした。以下、この断面上の曲線部を単に曲線部、または曲面と称する。この曲面511は、他の表現によれば、中心軸に垂直な面となす角(テーパー角)が連続的に変化する曲面部分と表現できる。後退面が曲線部(曲面)であっても、サプレッサ電極の前方端部213(平面205)よりもチップ202の先端からZ方向に遠ざかる面であり、後退している。この結果、軸ずれ時は、図5Dで示した正電荷410と負電荷411が、曲面511に発生し、同様の原理で電子線の曲がりを防止できる。実施例5の場合の平面205の直径Lは、曲線部(曲面)511が開始する位置での直径となる。
曲線部(曲面)511は、球や楕円、または任意の非球面であっても良い。上記のように曲線部(曲面)511は連続する微小な角度の変化をもつテーパー部分を無数に組み合わせた面とみなせる。このため、曲線部(曲面)511上のいずれかの位置における直径を新たにL’とみなし、その位置での傾きの角度を新たなθ’とみなした場合、少なくとも一点以上のL’とθ’を図8、ないしは、図11、図12のどれかに示した範囲内に含めることで、所望の電子線115が曲がるのを防止する効果が得られる。曲線部(曲面)511は角部をもたないことから、電界集中が緩和され、放電する危険性が少なくなる利点がある。
実施例5では、サプレッサ電極305に設けるその他の後退面の一例として、断面上の曲線部(曲面)を用いた構成を説明した。実施例6では、サプレッサ電極305に設けるその他の後退面の一例として、複数のテーパー面や段を組み合わせた構成とする。
図17に、実施例6のSE電子源515の構成を示す。実施例6ではサプレッサ電極305の下面にテーパー面516とテーパー面517、及びステップ状の段518を設け、複数の異なるテーパー角を持つ部分を備える構成とした。複数のテーパー面や段、曲面を組み合わせても、軸ずれ時にこれらの面が逆向きの電界を作ることで、電子線115の曲がりを防止できる。逆向きの電界は、テーパー面516とテーパー面517、及びステップ状の段518が作る電界の和となる。それぞれの面の開始位置をL1、L2、L3、傾きの角度をθ1、θ2、θ3とすると、L1とθ1、L2とθ2、L3とθ3の組み合わせの少なくとも一つ以上が、図8、ないしは、図11、図12に示したLとθの範囲内に含まれることで、所望の電子線が曲がるのを防止する効果が得られる。なお、テーパー面や段の組み合わせは、さらに数を増やしても良く、テーパー面や段は、曲面や楔型形状の面におきかえても良い。
実施例6では、サプレッサ電極305に設けるその他の後退面の一例として、複数のテーパー面や段を組み合わせた構成を説明した。実施例7では、サプレッサ電極305に設けるその他の後退面の一例として、単一のテーパー面の構成を採用する。
図18に実施例7のSE電子源520の構造を示す。実施例7ではサプレッサ電極305の下面に単一のテーパー面306を設けた。この実施例7の構成では、図4に示した平面205はない。これは、実施例1と実施例2において、L=d=400μmにした状態に相当する。この条件において、Lとθの関係、LとTの関係を実施例1、実施例2に記載した関係を満たすように設計することで、電子線115の曲がりを効果的に抑制するサプレッサ電極305を得ることができる。
本構成は、サプレッサ電極305の下面の加工が単純となるため、製造コストを低減できる利点がある。しかし、上述したように、テーパー面306の先端521に電界が集中し、放電する危険性がある。また、前述したように組み立て時にチップ202の突き出し長さTの調整が難しくなる。その他に、図9に示したように、必要なサプレッサ電圧が上昇する。このため、その他の設計事項が許す限りは、実施例1のように平面205を設ける形状の方が望ましい。
以上、本発明における実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能なものである。例えば、図6から図13に示した計算結果についても、計算条件は一例でありこれに限るものではない。また、本発明はサプレッサ電極305の形状が電子線115に作用することで効果を発現する。従って、本発明の実施例における電子源101やチップ202は、実施例で記載したSE電子源のものに限定するものではなく、CFE電子源や、熱電子源、光励起電子源などの、異なる方式の電子源やチップ、イオン源であってもよい。これらの電子源やチップ、イオン源であっても、本発明の実施例と同様のサプレッサ電極を搭載することで同様の作用、効果を得ることができる。また、チップ202の材料はタングステンに限らず、LaB,CeB、カーボン系材料など、その他の材料でもよい。また、本発明の実施例に記載した電子源をX線源のターゲットに照射してX線を放出させるX線源として使用することも可能である。その他、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために一例について詳細に説明したものであり、説明した構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、電子顕微鏡の例として走査電子顕微鏡(SEM)の例について説明したが、これに限定せず、透過電子顕微鏡(TEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)などの他の各種電子顕微鏡、荷電粒子線装置に適用できる。試料から発生する信号についても、電子(二次電子、反射電子等)の場合に限らず、特性X線を検出するものであってもよい。また、荷電粒子線装置としては、電子顕微鏡のみではなく電子線を用いた電子線描画装置やX線顕微鏡、CT、またはイオン顕微鏡等にも適用できる。さらにまた、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えたり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えたりすることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
101…SE電子源、102…引出電極、103…加速電極、104…電子銃、109…ターボ分子ポンプ、110…コンデンサレンズ、111…対物レンズ、112…試料、113…試料室、114…検出器、115…電子線、116…碍子、118…非蒸発ゲッターポンプ、120…イオンポンプ、121…イオンポンプ、122…イオンポンプ、125…筒体、126…第一真空室、127…第二真空室、128…第三真空室、201…従来のSE電子源、202…チップ(電子放出材である単結晶線)、203…従来のサプレッサ電極、204…開口部、205…平面(底面)、206…フィラメント、207…端子、208…碍子、209…面取り部、210…円筒面、212…後退部(面)、213…前方端部、214…後方端部、301…電界、302…軸ずれベクトル、305…サプレッサ電極、306…テーパー面(部)、307…角部、401…正電荷、402…負電荷、403…電気力線、404…正電荷、405…負電荷、406…空間領域、407…空間領域、408…電気力線、410…正電荷、411…負電荷、412…電気力線、413…空間領域、414…空間領域、420…正電荷、421…負電荷、422…負電荷、423…負電荷、424…正電荷、501…SE電子源、502…段、503…角部、504…平面、505…SE電子源、506…楔型形状の面、507…頂点、510…SE電子源、511…曲面、515…SE電子源、516…テーパー面、517…テーパー面、518…段、520…SE電子源、521…先端

Claims (12)

  1. 中心軸に沿った方向における一方の端部に開口部を持つサプレッサ電極と、
    前記開口部から先端が突き出した電子放出材とを有し、
    前記サプレッサ電極は、
    前記開口部よりも外周方向の位置に、前記中心軸に沿った方向において前記サプレッサ電極の前記端部よりも前記電子放出材の前記先端から遠ざかる位置に後退した後退部をさらに備え、
    前記後退部の少なくとも一部は、前記開口部の中心から直径2810μm以内に配置され
    前記後退部は、前記中心軸に垂直な面となす角度が少なくとも二つ以上の異なる角度をもつテーパー部を備えることを特徴とする電子源。
  2. 中心軸に沿った方向における一方の端部に開口部を持つサプレッサ電極と、
    前記開口部から先端が突き出した電子放出材とを有し、
    前記サプレッサ電極は、
    前記開口部よりも外周方向の位置に、前記中心軸に沿った方向において前記サプレッサ電極の前記端部よりも前記電子放出材の前記先端から遠ざかる位置に後退した後退部をさらに備え、
    前記後退部の少なくとも一部は、前記開口部の中心から直径2810μm以内に配置され、
    前記後退部は前記中心軸に垂直な面と角度θをなすテーパー部を備え、
    前記テーパー部の少なくとも一部は、前記開口部の前記中心から直径L以内に配置され、
    前記直径Lと前記角度θは、
    前記直径Lは単位をμmとし、前記角度θは単位を度(°)として、
    2.40×10-7×L+3.18×10-4×L-4.08×10-1≦logθ≦6.68×10-7×L-2.68×10-4×L+1.08の関係を満たすことを特徴とする電子源。
  3. 中心軸に沿った方向における一方の端部に開口部を持つサプレッサ電極と、
    前記開口部から先端が突き出した電子放出材とを有し、
    前記サプレッサ電極は、
    前記開口部よりも外周方向の位置に、前記中心軸に沿った方向において前記サプレッサ電極の前記端部よりも前記電子放出材の前記先端から遠ざかる位置に後退した後退部をさらに備え、
    前記後退部の少なくとも一部は、前記開口部の中心から直径2810μm以内に配置され、
    前記後退部の少なくとも一部は、前記開口部の前記中心から直径L以内に配置され、
    前記電子放出材は、前記開口部から長さT突き出され、
    前記直径Lと前記長さTは、前記直径L及び前記長さTの単位をいずれもμmとして、
    L=3.53T+1607の関係を満たすことを特徴とする電子源。
  4. 中心軸に沿った方向における一方の端部に開口部を持つサプレッサ電極と、
    前記開口部から先端が突き出した電子放出材とを有し、
    前記サプレッサ電極は、
    前記開口部よりも外周方向の位置に、前記中心軸に沿った方向において前記サプレッサ電極の前記端部よりも前記電子放出材の前記先端から遠ざかる位置に後退した後退部をさらに備え、
    前記後退部の少なくとも一部は、前記開口部の中心から直径2810μm以内に配置され、
    前記後退部は前記中心軸に垂直な面と角度θをなすテーパー部を備え、
    前記テーパー部の少なくとも一部は、前記開口部の前記中心から直径L以内に配置され、
    前記電子放出材は、前記開口部から突き出した長さが200μmよりも小さく、
    前記直径Lと前記角度θは、
    前記直径Lは単位をμmとし、前記角度θは単位を度(°)として、
    2.69×10-7×L+3.64×10-4×L-2.21×10-2≦logθ≦1.27×10-6×L-4.18×10-4×L+1.45の関係を満たすことを特徴とする電子源。
  5. 中心軸に沿った方向における一方の端部に開口部を持つサプレッサ電極と、
    前記開口部から先端が突き出した電子放出材とを有し、
    前記サプレッサ電極は、
    前記開口部よりも外周方向の位置に、前記中心軸に沿った方向において前記サプレッサ電極の前記端部よりも前記電子放出材の前記先端から遠ざかる位置に後退した後退部をさらに備え、
    前記後退部の少なくとも一部は、前記開口部の中心から直径2810μm以内に配置され、
    前記後退部は前記中心軸に垂直な面と角度θをなすテーパー部を備え、
    前記テーパー部の少なくとも一部は、前記開口部の前記中心から直径L以内に配置され、
    前記電子放出材は、前記開口部から突き出した長さが300μmよりも大きく、
    前記直径Lと前記角度θは、
    前記直径Lは単位をμmとし、前記角度θは単位を度(°)として、
    2.59×10-7×L+1.82×10-4×L-6.04×10-1≦logθ≦5.15×10-7×L-2.29×10-4×L+8.10×10-1の関係を満たすことを特徴とする電子源。
  6. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電子源を備えることを特徴とする電子銃。
  7. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電子源または請求項に記載の電子銃を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
  8. 中心軸に沿った方向における一方の端部に開口部を持つサプレッサ電極と、
    前記開口部から先端が突き出した電子放出材とを有し、
    前記サプレッサ電極は、
    前記開口部よりも外周方向の位置に、前記中心軸に沿った方向において前記サプレッサ電極の前記端部よりも前記電子放出材の前記先端から遠ざかる位置に後退した後退部をさらに備え、
    前記後退部は、前記中心軸に垂直な面となす角度が少なくとも二つ以上の異なる角度をもつテーパー部を備えることを特徴とする電子源。
  9. 中心軸に沿った方向における一方の端部に開口部を持つサプレッサ電極と、
    前記開口部から先端が突き出した電子放出材とを有し、
    前記サプレッサ電極は、
    前記開口部よりも外周方向の位置に、前記中心軸に沿った方向において前記サプレッサ電極の前記端部よりも前記電子放出材の前記先端から遠ざかる位置に後退した後退部をさらに備え、
    前記後退部は前記中心軸に垂直な面と角度θをなすテーパー部を備え、
    前記テーパー部の少なくとも一部は、前記開口部の中心から直径L以内に配置され、
    前記直径Lと前記角度θは、
    前記直径Lは単位をμmとし、前記角度θは単位を度(°)として、
    2.40×10-7×L+3.18×10-4×L-4.08×10-1≦logθ≦6.68×10-7×L-2.68×10-4×L+1.08の関係を満たすことを特徴とする電子源。
  10. 中心軸に沿った方向における一方の端部に開口部を持つサプレッサ電極と、
    前記開口部から先端が突き出した電子放出材とを有し、
    前記サプレッサ電極は、
    前記開口部よりも外周方向の位置に、前記中心軸に沿った方向において前記サプレッサ電極の前記端部よりも前記電子放出材の前記先端から遠ざかる位置に後退した後退部をさらに備え、
    前記後退部の少なくとも一部は、前記開口部の中心から直径L以内に配置され、
    前記電子放出材は、前記開口部から長さT突き出され、
    前記直径Lと前記長さTは、前記直径L及び前記長さTの単位をいずれもμmとして、
    L=3.53T+1607の関係を満たすことを特徴とする電子源。
  11. 請求項から10のいずれか一項に記載の電子源を備えることを特徴とする電子銃。
  12. 請求項から10のいずれか一項に記載の電子源または請求項11に記載の電子銃を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
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