以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「層」、「シート」及び「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。例えば「層」という用語は、シート或いはフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1は、本発明による一実施の形態の加飾シート付き表示装置1を概略的に示す分解斜視図である。図1に示されるように、加飾シート付き表示装置1は、発光面11を有する面光源装置10と、発光面11に対面して配置された加飾シート20と、を有している。加飾シート付き表示装置1において、加飾シート20は、後述する遮光層24が設けられた側が面光源装置10に対面するよう配置されている。なお、図示されている例では、加飾シート付き表示装置1は、平板状に示されているが、加飾シート付き表示装置1の各構成要素が湾曲することで、加飾シート付き表示装置1が湾曲形状を有するようにしてもよい。
面光源装置10は、面状に光を発光する装置である。面光源装置10として、特に限定されることなく、種々の型式、例えばエッジライト型や直下型の装置を用いることができる。図示された面光源装置10は、加飾シート20に対面する前面に発光面11を有している。また、面光源装置10の加飾シート20に対面する前面のうち、発光面11を周囲から取り囲む領域は、枠体(ベゼル)によって構成された非発光面12となっている。すなわち、面光源装置10の加飾シート20に対面する前面は、発光面11と、発光面11の周囲に位置する非発光面12と、を含んでいる。
加飾シート20は、面光源装置10の発光面11に対面して配置され、発光面11が外部から直接観察されないよう、少なくとも発光面11の全体を覆っている。加飾シート20は、面光源装置10の発光面11の全体を覆うことができるよう、発光面11の寸法以上の寸法を有している。図示された加飾シート20は、発光面11と、発光面11の周囲に位置する非発光面12と、を含む面光源装置10の前面の全領域を覆う寸法を有している。すなわち、加飾シート20は、面光源装置10の全体を隠蔽している。図1に示す例において、加飾シート20は、全体として面光源装置10の発光面11と同一の方向に広がる平板状の部材となっている。加飾シート20の厚さは、例えば20μm以上550μm以下とすることができる。
加飾シート20は、意匠を表示して、加飾シート付き表示装置1に意匠性を付与する。本実施の形態において、加飾シート20は、ベース意匠層22と、ベース意匠層22の一部分上に設けられたパターン層23と、を有している。ベース意匠層22は、いわゆるベタ層として形成され、二次元的に広がる層、さらに言い換えると面状に広がる層として、形成されている。一方、パターン層23は、ベース意匠層22上の一部分に形成されている。例えば、パターン層23は、ベース意匠層22の一方の面上に所定のパターンで設けられている。
図2及び図3に示すように、加飾シート20は、第1領域A1及び第2領域A2を含んでいる。図示された加飾シート20は、第1領域A1と第2領域A2とに平面分割されている。そして、パターン層23は、第1領域A1に設けられ、第1領域A1外となる第2領域A2には設けられていない。図示された例において、第1領域A1は、図3に示すように、加飾シート20の中央に設けられ、アルファベットの「D」のパターンをなす領域となっている。
また、図示された加飾シート20は、図2に示すように、ベース意匠層22及びパターン層23に加え、基材フィルム21及び遮光層24を更に有している。図2に示された加飾シート20では、基材フィルム21の一方の面上のうちの第1領域A1に、パターン層23が設けられている。ベース意匠層22は、基材フィルム21の一方の面及びパターン層23の全域を覆うように形成されている。すなわち、図示されたベース意匠層22は、基材フィルム21の全域に広がっている。遮光層24は、ベース意匠層22のパターン層23とは反対側に積層されている。遮光層24は、ベース意匠層22の全域に広がっている。以下、加飾シート20に含まれる各構成要素について順に説明する。
基材フィルム21は、基材フィルム21上に積層されたベース意匠層22、パターン層23および遮光層24を支持する。基材フィルム21は、透明なフィルム状の部材である。基材フィルム21としては、可視光を透過し、ベース意匠層22、パターン層23及び遮光層24を適切に支持し得るものであればいかなる材料でもよいが、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)等を挙げることができる。また、基材フィルム21は、可視光透過性や、ベース意匠層22、パターン層23及び遮光層24の適切な支持性等を考慮すると、10μm以上500μm以下の厚さを有していることが好ましい。
なお、透明とは、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される可視光透過率が、80%以上であることを意味する。
ベース意匠層22は、パターン層23とともに加飾シート20が表示する意匠を形成する。ベース意匠層22は、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクター、マーク、文字や数字などの絵柄を、意匠として形成することができる。また、ベース意匠層22とは別途にパターン層23が設けられる本実施の形態において、ベース意匠層22は、パターン層23の背景として意匠表現を行うこともできる。例えば、加飾シート付き表示装置1が設けられる周辺環境と調和させることができる意匠として、木目調や大理石調の絵柄や幾何学模様を、ベース意匠層22が表示するようにしてもよい。ベース意匠層22が形成する意匠は、単一の色によって表されていてもよいし、複数の色によって表されていてもよい。また、ベース意匠層22は、外部の観察者に観察された際にパターン層23との混色によりパターン層23が形成する絵柄の意匠性を害さない色を有しており、例えば混色を避けやすい白色や銀色であることが好ましい。
ベース意匠層22は、図2Aに示すように、無機材料を含んだ層とすることができる。図2Aに示されたベース意匠層22は、バインダー樹脂22aと、バインダー樹脂22a中に分散した無機材料22bと、を有している。ベース意匠層22に含まれる無機材料は、特に限定されないが、アルミニウム、酸化チタン、雲母のいずれかとすることができる。これらの無機材料を含むベース意匠層22は、例えば白色または銀色として、パターン層23の色味の変化を効果的に抑制することができる。アルミニウムや雲母からなる無機材料は、最大長さが5μm以上となるフレーク状の材料とすることができる。このような大型のフレーク状の無機材料によれば、ベース意匠層22によって積極的な意匠表現を行うことができる。
また、ベース意匠層22が形成する意匠を明るく表示するため、ベース意匠層22の可視光反射率は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。可視光反射率は、紫外・可視・近赤外分光光度計(島津製作所UV-3600)および積分球付属装置(ISR-3100)を用いて、入射角8°で可視領域380nm以上780nm以下での反射率(全反射率)を測定し、その平均反射率として、特定することができる。
さらに、ベース意匠層22による意匠表現をより有効とする観点から、ベース意匠層22の可視光吸収率は3%以下としてもよい。ベース意匠層22の可視光吸収率は3%以下となる場合、ベース意匠層22が白色または白に近い白色系の色を表示することが可能になり、ベース意匠層22によって形成される意匠の意匠性を高めることができる。可視光吸収率は、例えば紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光株式会社製「V-770」)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの各波長における吸収率の平均値として、特定することができる。
その一方で、可視光の波長と赤外線の波長とは近いことから、一般に、可視光吸収率が低い材料は、赤外線吸収率も低くなる。ベース意匠層22の可視光吸収率が低い場合、ベース意匠層22の赤外線吸収率も低くなる。具体的には、ベース意匠層22の赤外線吸収率は3%以下となる傾向が生じる。
パターン層23は、上述したように、加飾シート20の第1領域A1のみに設けられている。パターン層23は、ベース意匠層22の一部分上に設けられることで、パターンを形成している。パターン層23のパターンをなす第1領域A1の形状は、特に限定されることなく、適宜選択することができる。パターン層23は、そのパターン自体によって、図形、デザイン、色彩、絵、キャラクター、マーク、ピクトグラム、文字や数字などを表示するようにしてもよい。また、パターン層23は、当該パターン層23が設けられている第1領域A1内において、図形、デザイン、色彩、絵、キャラクター、マーク、ピクトグラム、文字や数字などの絵柄を表示するようにしてもよい。
図示された一具体例において、パターン層23は、図3に示すように、加飾シート20の中央に位置するアルファベットの「D」をなす領域に形成されている。図示されたパターン層23は、単色の層となっている。つまり、このパターン層23は、単一の色にてアルファベットの「D」を表示している。一方、図示されたベース意匠層22は、パターン層23とは異なる単色の層となっている。つまり、ベース意匠層22は、パターン層23とは異なる色で、アルファベットの「D」の背景を表示している。
また、パターン層23は、赤外線を吸収する特性を有している。後述するように、加飾シート20の製造工程においてパターン層23を形成するようになる第1膜31は、ベース意匠層22を形成するようになる第2膜32で吸収されなかった赤外線領域のレーザー光を吸収する。このため、パターン層23は、ベース意匠層22より赤外線を吸収しやすくなっている。言い換えると、パターン層23の赤外線の吸収率は、ベース意匠層22の赤外線の吸収率より高くなっている。また、ここで、赤外線の吸収率とは、波長900nm以上1300nm以下の赤外線の平均吸収率を意味している。このような波長は、一般的に安価に入手可能で十分な出力の赤外線レーザー光源から照射されるレーザー光の波長であり、加飾シート20の製造工程において用いられるレーザー光の波長に適している。また、赤外線の吸収率は、例えば日本分光株式会社製の紫外可視近赤外分光光度計V-770を用いて測定波長900nm~1300nmの範囲内で測定したときの各波長における吸収率の平均値として、特定することができる。
パターン層23が赤外線を吸収しやすいよう、パターン層23の吸収スペクトルは、赤外線領域(780nm以上15000nm以下の波長域)に吸収率のピークを有している。具体的には、パターン層23の吸収スペクトルは、780nm以上15000nm以下の波長に吸収率のピークを有していることが好ましく、800nm以上10000nm以下の波長に吸収率のピークを有していることがより好ましく、900nm以上1300nm以下の波長に吸収率のピークを有していることがさらに好ましい。また、パターン層23の吸収スペクトルの吸収率のピークは、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。ここで、吸収スペクトルとは、各波長〔nm〕における光の吸収率〔%〕の分布を意味している。また、パターン層23が赤外線を吸収しやすいよう、パターン層23の赤外線領域での吸収スペクトルのピークは、ベース意匠層22の赤外線領域での吸収スペクトルのピークよりも高くなっていることが好ましい。
ベース意匠層22及びパターン層23は、バインダー樹脂中に顔料等を含んだ層として形成することができる。また上述したように、ベース意匠層22及びパターン層23は、バインダー樹脂中に、アルミニウム、酸化チタン、雲母等の無機材料を含んだ層とすることもできる。
ベース意匠層22の厚さ及びパターン層23の厚さは、十分な意匠表現を行うことができる厚さ以上となっていることが好ましい。その一方で、ベース意匠層22の厚さ及びパターン層23の厚さは、後述するレーザー光による除去を可能にする厚さ以下となっていることが好ましい。具体的には、ベース意匠層22の厚さを1μm以上40μm以下とすることができる。パターン層23の厚さを1μm以上20μm以下とすることができる。なお、図示された例において、第2領域A2におけるベース意匠層22の厚さは、第1領域A1におけるベース意匠層22の厚さと第1領域A1におけるパターン層23の厚さとを足し合わせた厚さとなっている。
遮光層24は、面光源装置10に対面する側からベース意匠層22を覆うように設けられている。遮光層24は、面光源装置10からの可視光がベース意匠層22に入射しないよう、可視光遮光性を有している。したがって、遮光層24の可視光透過率は、ベース意匠層22の可視光透過率よりも低くなっていることが好ましい。遮光層24は、例えば光吸収粒子をバインダー樹脂中に含み得る。光吸収粒子としては、カーボンブラックやチタンブラック等の黒色顔料を例示することができる。十分な厚さの遮光層24がベース意匠層22を覆っていると、ベース意匠層22によって形成される意匠を濃く明確に形成することができる。具体的な例として、遮光層24の厚さを、1μm以上20μm以下とすることができる。
なお、上述したように、可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定することができる。
ところで、図2に示すように、加飾シート20は、パターン層23が設けられている領域、すなわち第1領域A1に、遮光層24及びベース意匠層22を貫通してパターン層23に到達する開口部Hが形成されている。このような開口部Hの形成によって、加飾シート20は、第1領域A1において光の透過を促進させることができる。可視光を透過させる観点から、開口部Hの深さDHは、加飾シート20の第1領域A1における基材フィルム21を除いた厚さT1の90%以上であることが好ましく、典型的には、開口部Hはパターン層23を貫通して基材フィルム21に達している(図5参照)。すなわち、典型的には、遮光層24、パターン層23及びベース意匠層22を貫通した開口部(貫通孔)Hが形成されている。この開口部Hは、面光源装置10によって背面から照明された際に、面光源装置10で発光された光の透過部28として機能する。図5に示すように、図示された例において、第1領域A1における開口部Hは、加飾シート20を貫通する貫通孔として形成されている。
貫通した開口部Hからなる透過部28は、図4に示すように、加飾シート20の正面からの観察において、ベース意匠層22、パターン層23及び遮光層24の非形成部となっている。面光源装置10で発光された光を十分に透過させるため、加飾シート20の第1領域A1の面積のうちの貫通した開口部Hが占める面積の割合、すなわち開口率は、10%以上となっていることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。その一方で、面光源装置10の消灯時におけるパターン層23の視認性を十分に確保するため、第1領域A1における開口率は、50%以下であることが好ましい。
なお、図4は、図3の領域Zを拡大して示している。
このように、加飾シート20の第1領域A1では、面光源装置10の点灯時に光の透過が促進される。一方、加飾シート20の第2領域A2では、面光源装置10の点灯時に光の透過が規制される。このため、貫通した開口部Hが占める面積の割合である開口率は、第1領域A1において、第2領域A2よりも大きくなる。結果として、パターン層23が設けられている第1領域A1での可視光透過率は、パターン層23が設けられていない第2領域A2での可視光透過率より高くなる。すなわち、貫通した開口部Hは、加飾シート20のうちの第1領域A1に集中的に形成されている。
図4及び図5に示された加飾シート20において、パターン層23が設けられていない領域、すなわち第2領域A2に、ベース意匠層22を貫通する開口部Hは形成されていない。図示された例において、加飾シート20の第2領域A2には、貫通孔が設けられていない。したがって、図示された加飾シート20の第2領域A2における開口率は0%となり、加飾シート20の第2領域A2における可視光の透過は有効に規制される。
なお、図5に示すように、加飾シート20の第2領域A2に、ベース意匠層22を貫通しない凹部(貫通しない開口部)Rが形成されていてもよい。後述するように、この凹部Rは、第1領域A1への開口部Hの作製にともなって、第2領域A2に形成される。面光源装置10によって背面から照明された際に、面光源装置10で発光された光の透過を有効に遮蔽する観点から、凹部Rの深さDRは、加飾シート20の第2領域A2における凹部Rが形成されていない位置での基材フィルム21を除いた厚さT2の80%以下であることが好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。第2領域A2に凹部Rを形成し且つその深さDRを調節することで、加飾シート20の点灯時における第2領域A2の明るさを制御することができる。これにより、第1領域A1及び第2領域A2の明るさバランスにより、パターン層23による表示コントラストを調節して多様な意匠表現を可能とすることができる。
図4に示された例において、第1領域A1に設けられた複数の開口部Hは互いに離間して配置されている。また、第1領域A1に設けられた複数の開口部Hは、規則的に配列されている。透過部28を形成する開口部Hが規則的に配列されることで、面光源装置10で発光された光が、概ね均一な明るさで、加飾シート20の第1領域A1を透過することができる。同様に、第2領域A2に設けられた複数の凹部Rは互いに離間して配置されている。また、第2領域A2に設けられた複数の凹部Rは、規則的に配列されている。凹部Rが規則的に配列されることで、面光源装置10が点灯して可視光を射出している際に、加飾シート20の第2領域A2を均一な明るさとすることができる。
さらに、加飾シート20において、開口部H及び凹部Rは、まとまて、規則的に配列されている。図示された例において、複数の開口部Hおよび複数の凹部Rは、それぞれ、正方配列にて配置されているが、これに限られず、ハニカム配列や千鳥配列で配列されてもよいし、或いは、不規則に配列されてもよい。複数の開口部Hの配列と複数の凹部Rの配列が異なっていてもよい。
また、図4に示された例において、第1領域A1に設けられた複数の開口部Hは互いに同一な平面視形状を有している。具体的には、各開口部Hは、平面視において円形形状を有している。透過部28を形成する複数の開口部Hが一定の形状を有することで、面光源装置10で発光された光が、概ね均一な明るさで、加飾シート20の第1領域A1を透過することができる。同様に、図4に示された例において、第2領域A2に設けられた複数の凹部Rは互いに同一の平面視形状を有している。具体的には、各凹部Rは、平面視において円形形状を有している。凹部Rが一定の形状を有することで、面光源装置10が点灯して可視光を射出している際に、加飾シート20の第2領域A2を均一な明るさとすることができる。
さらに、図4に示された例において、開口部Hと凹部Rとが、平面視において同一の形状を有している。しかしながら、図示された例に限られず、複数の開口部Hの間で、開口部Hの平面視形状が異なるようにしてもよい。また、複数の凹部Rの間で、凹部Rの平面視形状が異なるようにしてもよい。さらに、開口部Hの平面視形状が凹部Rの平面視形状と異なるようにしてもよい。
なお、加飾シート20の意匠性の観点から、個々の開口部Hは視認されないことが好ましい。同様に、個々の凹部Rも視認されないことが好ましい。この観点から、複数の開口部Hの配列ピッチPHを、60μm以上160μm以下とすることができる。各開口部Hの最大幅WHを、30μm以上130μm以下とすることができる。各開口部Hの面積を、900μm2以上16900μm2以下とすることができる。また、複数の凹部Rの配列ピッチPRを、60μm以上160μm以下とすることができる。各凹部Rの最大幅WRを、30μm以上130μm以下とすることができる。各凹部Rの面積を、900μm2以上16900μm2以下とすることができる。
次に、本実施の形態の加飾シート付き表示装置1の作用について説明する。
面光源装置10が消灯して発光面11から可視光が発光されていない状態では、図3に示すように、加飾シート20のベース意匠層22の色とパターン層23の色との相違により、パターン層23が形成された第1領域A1のパターンが視認される。すなわち、パターン層23のパターンが視認されるようになる。また、加飾シート20によって、面光源装置10を隠蔽することができる。さらに、ベース意匠層22自体の意匠性によって、加飾シート付き表示装置1が設置されている周囲環境と、加飾シート20との調和を図ることもできる。
一方、面光源装置10が点灯して発光面11から可視光が発光されている状態では、開口部Hが形成された第1領域A1の可視光透過率が、第2領域A2の可視光透過率よりも高くなる。結果として、面光源装置10の消灯時よりも、図6に示すようにパターン層23が形成された第1領域A1のパターンは明るく確認され得る。一方、第2領域A2には開口部Hが形成されていないので、面光源装置10で発光された可視光は、高い透過率で、第2領域A2において加飾シート20を透化することはない。このため、ベース意匠層22は、環境光の反射によって視認されるだけなので、パターン層23ほど明るくは観察されない。すなわち、パターン層23を高コントラストで明瞭に視認することができる。
なお、ベース意匠層22は、遮光層24によって面光源装置10の側から覆われている。したがって、遮光層24によって、面光源装置10で発光された可視光がベース意匠層22へ入射することを効果的に規制することができる。このため、第1領域A1において、ベース意匠層22及びパターン層23を可視光が透過して、ベース意匠層22とパターン層23との混色によって意図しない色味でパターン層23が視認されることを効果的に回避することができる。さらに、図示された例では、面光源装置10の発光面11と非発光面12との境界Bが、加飾シート20の第2領域A2内に位置するが、可視光が第2領域A2を積極的に透過しないので、この境界Bを不可視化することができる。
次に、加飾シート20の製造方法の一例について、説明する。
まず、図8に示すように、基材フィルム21の第1領域A1に、パターン層23を形成するようになる第1膜31を形成する。次に、図9に示すように、基材フィルム21及び第1膜31を覆うようにして、ベース意匠層22を形成するようになる第2膜32を形成する。その後、図10に示すように、第2膜32を覆うようにして、遮光層24を形成するようになる第3膜33を形成する。第1膜31、第2膜32及び第3膜33は、対応する各層に含まれるようになる無機材料や顔料等を含んだ樹脂組成物を塗布および乾燥することによって形成され得る。なお、樹脂組成物の塗布は公知のコーティング技術を用いることで実施することができる。この際、第1膜31をなす樹脂組成物を基材フィルム21上の第1領域A1のみに塗布することも公知技術を用いて、極めて容易、迅速、且つ、精度良く実施することができる。
このようにして形成された積層物34において、第1膜31の赤外線の吸収率は、第2膜32の赤外線の吸収率より高くなっていることが好ましい。第1膜31の吸収スペクトルのピークは、第2膜32の吸収スペクトルのピークよりも高くなっていることが好ましい。第1膜31の吸収スペクトルは、赤外線領域にピークを有することが好ましい。第1膜31の吸収スペクトルは、900nm以上1300nm以下の波長にピークを有するようにしてもよい。第1膜31の赤外線領域での吸収スペクトルのピークは、3%以上であるようにしてもよい。
次に、図11に示すように、開口部Hを形成すべき位置にレーザー装置40からレーザー光Lxを照射する。レーザー光は、基材フィルム21側とは逆側、すなわち第2膜32及び第3膜33の側から照射される。レーザー光Lxの波長は、赤外線領域の波長780nm以上1300nm以下であり、例えば900nm以上1300nm以下である。レーザー光Lxの具体的な例として、波長1064nmのNd:YAGレーザーのレーザー光を用いることができる。レーザー装置40から発振されるレーザー光Lxを赤外線とすることで、ベース意匠層22やパターン層23の色や柄の影響を弱めて、ベース意匠層22をなす第2膜32でのレーザー光Lxの吸収率よりもパターン層23をなす第1膜31でのレーザー光Lxの吸収率を高く設定し易くなる。
図11に示す例では、レーザー装置40の射出部を一定のピッチでずらしながら、レーザー光Lxを積層物34に第3膜33の側から照射する。このとき、積層物34の第3膜33上におけるレーザー光Lxの照射領域は、特に煩雑な制御を行うことなく、第3膜33のほぼ全域、或いは、第3膜33のうちの明らかに第1領域A1外となる周縁領域以外の領域に、レーザー光Lxを照射すればよい。すなわち、微細な開口部を形成することから極めて微細なスポット径を有するようになるレーザー光Lxの照射領域を高精度に制御することなく、例えば第1領域A1のみに限定されるように制御することなく、レーザー装置40のピッチおよび出力のみを制御して、レーザー装置40からレーザー光Lxを照射していく。第1領域A1を示す第1膜31は第3膜33で隠蔽されていることから、レーザー光Lxを第1領域A1のみに照射する位置決め制御は煩雑となることが想定されるが、このような煩雑な作業を省略し得ることで生産性を大幅に向上させることができる。
なお、レーザー装置40から発振されるレーザー光Lxの出力は、第2領域A2において、第2膜32をすべて溶融除去しない程度とする。すなわち、レーザー装置40の出力を抑えて、第2領域A2では第3膜33及び第2膜32を貫通する開口部が形成されないようにする。図11に示された例では、第2領域A2において、第3膜33及び第2膜32の合計厚みの半分程度まで第3膜33及び第2膜32を除去している。この結果、第3膜33を貫通して第2膜32の途中まで延びる凹部Rが形成されている。
一方、第1領域A1においては、レーザー光Lxが照射された位置において、第3膜33、第2膜32及び第1膜31がすべて除去されて、基材フィルム21まで通じる貫通した開口部29が形成される。第1領域A1では、レーザー光Lxの入射側から最も離間した位置に配置された第1膜31が、レーザー装置40から投射される波長域のレーザー光Lxを高吸収率(例えば3%以上、さらに好ましくは5%以上の吸収率)で吸収することができる。したがって、第1膜31上の第2膜32が完全に除去され得ない程度の出力でレーザー光Lxが照射されている場合でも、図12に示すように、レーザー光Lxの一部が第1膜31に到達して第1膜31に効率良く吸収されることで、第1膜31が溶融する。これにともなって、まず、溶融した第1膜31に隣接する第2膜32も溶融する。更に、溶融した第1膜31の蒸発にともなって、溶融した第2膜32も蒸発する。
以上にようにして、レーザー光Lxの照射によって、積層物34の第2領域A2に凹部Rを形成し、第1膜31が設けられた積層物34の第1領域A1に開口部Hを形成することできる。この製造方法では、第1領域A1に照射する際のレーザー光Lxの照射条件と、第2領域A2に照射する際のレーザー光Lxの照射条件とを同一とすることができる。したがって、積層物34のうちの第1領域A1の領域を特定する必要がない。なお、第1膜31を隠蔽し得る第3膜33の側からレーザー光Lxを照射することから、第1膜31が設けられた第1領域A1を特定して第1領域A1のみにレーザー光Lxを照射すること煩雑である。この点において、上述した製造方法では、第1領域A1の特定を省略して、一定の照射条件で第3膜33の全域にレーザー光Lxを照射することで、第1領域A1に選択的に開口部Hを形成し、第2領域A2に選択的に凹部Rを形成することができる。したがって、優れた意匠性を奏する加飾シート20の製造を大幅に単純化することができる。
レーザー光Lxが照射されずに除去されなかった第3膜33、第2膜32及び第1膜31が、それぞれ、遮光層24、ベース意匠層22及びパターン層23を形成するようになる。以上の工程によって、加飾シート20が製造される。
ところで、パターン層23を含まない加飾シート120は、図15に示すように、基材フィルム121上に第2膜132及び第3膜133を積層し、透過部128を形成すべき位置に出力を調整したレーザー光Lyを照射することで製造され得る。このようにして加飾シート120が製造されると、図16に示すように、ベース意匠層122を形成するようになる第2膜132が十分に除去されずに、一部の透過部128内に第2膜132の残留物132rが残ることがある。このような残留物132rが残った透過部128と残留物132rが残っていない透過部128との間では意匠性に違いが生じ得る。具体的には、残留物132rによって表示すべき意匠より意匠が濃く表示されてしまうことがある。この意匠性の違いに起因して、加飾シート120が表示する意匠に濃淡の模様が生じてしまい、加飾シート120が表示すべき意匠が損なわれ、加飾シート120によって付与される意匠性が悪化し得る。
本件発明者らが鋭意検討した結果、このような残留物132rは、第2膜132がレーザー光Lyを十分に吸収しないことが原因となっていることが知見された。具体的には、第2膜132がレーザー光Lyを十分に吸収しないことに起因して、第2膜132が十分に溶融蒸発せず、一部の第2膜132が残留して透過部128に残ってしまう。レーザー光Lyを吸収する第2膜132とレーザー光Lyを十分に吸収しない第2膜132とは、例えば各位置における第2膜132によって形成されるようになるベース意匠層122の各位置の色や柄の違いに起因して生じ得ることも確認された。
一方、本実施の形態の加飾シート20は、開口部Hを形成すべき第1領域A1において、基材フィルム21とベース意匠層22との間に赤外線を吸収するパターン層23が配置されている。すなわち、加飾シート20の製造工程において、基材フィルム21と第2膜32との間に、パターン層23を形成するようになる第1膜31が配置されている。パターン層23の赤外線の吸収率は、ベース意匠層22の赤外線の吸収率より高くなっている。すなわち、加飾シート20の製造工程において、第1膜31の赤外線の吸収率は、第2膜32の赤外線の吸収率より高くなっている。このため、第2膜32において開口部Hを形成するレーザー光が十分に吸収されなくても、第1膜31においてレーザー光を十分に吸収することができる。レーザー光を吸収した第1膜31が溶融蒸発することで、第1膜31上に積層された第2膜32及び第3膜33を、残留物をほとんど残さずに除去することができる。すなわち、加飾シート20の第1領域A1において、開口部Hに残留物を残りにくくさせることができる。
また、パターン層23の吸収スペクトルは、赤外線領域に吸収率のピークを有している。すなわち、加飾シート20の製造工程において、第1膜31の吸収スペクトルは、赤外線領域に吸収率のピークを有している。このため、第1膜31は、ピークとなる波長の赤外線を効率よく吸収することができる。第1膜31のピークとなる波長が開口部Hを形成するレーザー光Lxの波長に近いと、第1膜31においてレーザー光が効率よく吸収される。レーザー光を吸収した第1膜31が溶融蒸発することで、第1膜31上に積層された第2膜32及び第3膜33を、残留物をほとんど残さずに除去して、加飾シート20の第1領域A1に形成される開口部Hの内部に残留物を残りにくくさせることができる。
さらに、パターン層23の赤外線領域での吸収スペクトルのピークは、ベース意匠層22の赤外線領域での吸収スペクトルのピークより高くなっている。すなわち、加飾シート20の製造工程において、第1膜31の赤外線領域での吸収スペクトルのピークは、第2膜32の赤外線領域での吸収スペクトルのピークよりも高くなっている。このため、第1膜31は、第2膜32よりも赤外線を効率よく吸収することができる。言い換えると、第1膜31は、第2膜32よりもレーザー光を効率よく吸収することができる。レーザー光を吸収した第1膜31が溶融蒸発することで、第1膜31上に積層された第2膜32及び第3膜33を、残留物をほとんど残さずに除去して、加飾シート20の第1領域A1に形成される開口部Hの内部に残留物を付着残りにくくさせることができる。
パターン層23の吸収スペクトルは、900nm以上1300nm以下の波長に吸収率のピークを有している。すなわち、加飾シート20の製造工程において、第1膜31の吸収スペクトルは、900nm以上1300nm以下の波長に吸収率のピークを有している。このため、第1膜31は、この波長の赤外線を効率よく吸収することができる。開口部Hを形成するレーザー光Lxが900nm以上1300nm以下となる波長であると、第1膜31においてレーザー光Lxがより効率よく吸収される。レーザー光Lxを吸収した第1膜31が溶融蒸発することで、第1膜31上に積層された第2膜32及び第3膜33を、残留物をほとんど残さずに除去して、加飾シート20の第1領域A1に形成される開口部Hに残留物を残りにくくさせることができる。
また、パターン層23の吸収スペクトルの吸収率のピークは、3%以上である。すなわち、加飾シート20の製造工程において、第1膜31の吸収スペクトルの吸収率のピークは、3%以上である。このため、第1膜31の吸収スペクトルの吸収率のピークにおける赤外線をより効率よく吸収することができる。開口部Hを形成するレーザー光が第1膜31のピークまたはその近傍となる波長であると、第1膜31においてレーザー光がより効率よく吸収される。レーザー光を吸収した第1膜31が溶融蒸発することで、第1膜31上に積層された第2膜32及び第3膜33を、残留物をほとんど残さずに除去して、加飾シート20の第1領域A1に形成される開口部Hに残留物を残りにくくさせることができる。
また、ベース意匠層22は、酸化チタン等の無機材料を含んでいる。無機材料は第2膜32においてレーザー光を十分に吸収しないと、残留物として残って開口部Hに残留しやすい。しかしながら、本実施の形態のように、基材フィルム21とベース意匠層22との間に赤外線を吸収するパターン層23が配置されていると、加飾シート20の製造工程において、パターン層23を形成するようになる第1膜31が赤外線を十分に吸収するため、第2膜32がこのような無機材料を含んでいたとしても、レーザー光Lxを吸収した第1膜31が溶融蒸発することで、残留物をほとんど残さずに第2膜32を除去することができる。すなわち、加飾シート20の第1領域A1に形成される開口部Hに残留物を残りにくくさせることができる。
とりわけ、無機材料は、アルミニウム、酸化チタン、雲母のいずれかを含んでいる。このような材料を含む場合、ベース意匠層22の可視光反射率は、5%以上になり得る。このようなベース意匠層22は赤外線も吸収しにくくなる傾向があり、レーザー光を照射しても除去されにくい。このため、第2膜32にレーザー光を照射することによって開口部Hを形成することは困難であった。一方、本実施の形態のように、基材フィルム21とベース意匠層22との間に赤外線を吸収するパターン層23が配置されていると、加飾シート20の製造工程において、パターン層23を形成するようになる第1膜31が赤外線Lxを十分に吸収するため、第2膜32が赤外線を吸収しにくくても、レーザー光を吸収した第1膜31が溶融蒸発することで、残留物をほとんど残さずに第2膜32を除去することができる。すなわち、加飾シート20の第1領域A1に形成される開口部Hに残留物を残りにくくさせることができる。
以上に説明してきた一実施の形態において、加飾シートの製造方法は、基材フィルム21上にパターン層23を形成するようになる第1膜31及びベース意匠層22を形成するようになる第2膜32を積層する工程と、第2膜32の側からレーザー光を照射することで、第1膜31及び第2膜32の一部を除去して、開口部Hを形成する工程と、を含んでいる。このような加飾シートの製造方法によれば、ベース意匠層22を形成するようになる第2膜32において開口部Hを形成するためのレーザー光Lxが十分に吸収されず、その一方で、パターン層23を形成するようになる第1膜31においてレーザー光Lxが十分に吸収されるようにすることができる。したがって、第1膜31が設けられている第1領域A1では、レーザー光Lxを吸収した第1膜31が溶融蒸発することで、第1膜31上に積層された第2膜32を除去して、可視光が十分に透過し得る開口部Hを形成することができる。一方、第1膜31が設けられていない第2領域A2では、レーザー光Lxが第2膜32に吸収されにくいことから、深さDRの浅い凹部Rが形成されるようにすることができる。すなわち、第2膜32の全域にレーザー光Lxを照射してとしても、パターン層23を形成する第1膜31が設けられている第1領域A1のみに、可視光が十分に透過し得る開口部Hが形成されるようにすることができる。つまり、本実施の形態によれば、第1膜31の形成領域を調節することによって、可視光が十分に透過し得る開口部Hの形成領域を制御することができる。第1膜31の形成領域の調節は、レーザー光Lxの照射領域を調節することと比較して格段に容易である。したがって、優れた意匠性を有する加飾シート20を容易且つ安価に作製することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、レーザー光Lxの波長における第1膜31の吸収率は、レーザー光Lxの波長における第2膜32の吸収率より高くしている。この例によれば、レーザー光Lxを吸収した第1膜31が溶融蒸発することで、第1膜31上に積層された第2膜32を安定して除去することができる。したがって、可視光の透過を十分に促進し得る開口部Hを第1領域A1に安定して形成することができる。その一方で、第1膜31が設けられていない第2領域A2では、可視光の透過を十分に促進し得る開口部Hに代えて、深さの浅い凹部Rを形成することができる。すなわち、開口部Hの形成領域を、第1膜31のパターンによって高精度に制御することが可能となる。
上述した一実施の形態の一具体例において、開口部H形成のために用いられるレーザー光Lxの波長における第1膜31の吸収率は、3%以上としている。このような例によれば、パターン層23を形成するようになる第1膜31においてレーザー光Lxを十分に吸収することができる。したがって、パターン層23が設けられている第1領域A1では、レーザー光Lxを吸収した第1膜31が溶融蒸発することで、第1膜31上に積層された第2膜32を安定して除去し、可視光の透過を十分に促進し得る開口部Hを第1領域A1に安定して形成することができる。すなわち、開口部Hの形成領域を、第1膜31のパターンによって高精度に制御することが可能となる。
以上に説明してきた一実施の形態において、面光源装置10に対面して配置される加飾シート20は、ベース意匠層22と、ベース意匠層22の一部分上に設けられたパターン層23と、を有している。パターン層23が設けられている第1領域A1では、ベース意匠層22を貫通してパターン層23まで到達した開口部Hが設けられている。そして、パターン層23が設けられている第1領域A1での可視光透過率は、パターン層23が設けられていない第1領域A1での可視光透過率より高くなっている。ここで、パターン層23の赤外線の吸収率はベース意匠層22の赤外線の吸収率より高くなっている、パターン層23の吸収スペクトルは赤外線領域にピークを有している、或いは、パターン層23の赤外線領域での吸収スペクトルのピークはベース意匠層22の赤外線領域での吸収スペクトルのピークよりも高くなっている。このような加飾シート20では、レーザー光の照射により形成された開口部Hは、パターン層23が設けられている第1領域A1において、より高い透過率で可視光を透過させ得るようになる。言い換えるとパターン層23が設けられている第1領域A1にレーザー光Lxの照射により形成された開口部Hは、パターン層23が設けられていない第2領域A2にレーザー光Lxの照射により形成された凹部Rと比較して、加飾シート20の可視光透過率向上に寄与することができる。したがって、加飾シート20を背面から照明した際に、パターン層23が設けられている第1領域A1を、パターン層23が設けられていない第2領域A2よりも明るく表示することができる。したがって、パターン層23とベース意匠層22との組み合わせにより、意匠性を効果的に改善して、意匠性に優れた表示を行うことができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、パターン層23が設けられている第1領域A1での開口率は、パターン層23が設けられていない第2領域A2での開口率より高くなっている。これにより、パターン層23が設けられている第1領域A1での可視光透過率を、パターン層23が設けられていない第2領域A2の透過率より安定して高くすることができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、パターン層23は有色の層となっている。この例によれば、加飾シート20を背面から照明していない場合に、パターン層23の色によって、パターンを表示することができる。さらに、加飾シート20を背面から照明することで、パターン層23によって表示されていたパターンを、可視光を用いて明るく表示することができる。これにより、パターンの表示に変化を付けることが可能となり、意匠性を向上させることができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、ベース意匠層22のうちのパターン層23が設けられていない第2領域A2に、パターン層23が設けられている側とは反対側から、凹部Rが設けられている。凹部Rの深さDRは、第2領域A2内の凹部Rが設けられていない位置における、基材フィルム21を除いた加飾シート20の厚さの80%以下となっている。この例によれば、背面から照射された可視光の一部が、有底孔としての凹部Rが形成されている部分において、加飾シート20の第2領域A2を透過することができる。すなわち、貫通していない凹部Rの深さDRによって、パターン層23が設けられていない第2領域A2の明るさを調整することができる。これにより、意匠性をさらに向上させることが可能となる。
上述した一実施の形態の一具体例において、ベース意匠層22は無機材料を含んでいる。この例によれば、ベース意匠層22が無機材料を含むことで、さらに豊かな意匠表現を行うことができる。その一方で、無機材料を含むベース意匠層22には、レーザー光の照射によって貫通した開口部Hを安定して形成することが難しくなる。したがって、パターン層23を設けて孔形状を安定化させることができる本実施の形態は、無機材料を含むベース意匠層22を有した加飾シート20に好適と言える。
上述した一実施の形態の一具体例において、無機材料は、酸化チタンを含んでいる。酸化チタンを無機材料として用いることで、パターン層との組み合わせにおいて、加飾シート20の意匠性を大幅に向上させることができる。その一方で、このような酸化チタンを含むベース意匠層22の可視光吸収率は3%以下程度まで低下し、併せて、酸化チタンを含むベース意匠層22の赤外線吸収率も3%以下程度まで低下してしまう。結果として、このようなベース意匠層22には、レーザー光の照射によって貫通した開口部Hを安定して形成することは難しくなる。このため、パターン層23を設けて孔形状を安定化させることができる本実施の形態は、酸化チタンを無機材料として含むベース意匠層22を有した加飾シート20に好適と言える。
上述した一実施の形態の一具体例において、ベース意匠層22の可視光反射率は、5%以上となっている。高反射率のベース意匠層22は豊かな意匠表現が可能である一方、このようなベース意匠層22には貫通した開口部Hを安定して形成することが難しい。したがって、パターン層23を設けて孔形状を安定化させることができる本実施の形態は、無機材料を含むベース意匠層22を有した加飾シート20に好適と言える。
一実施の形態を具体例に基づいて説明してきたが、上述の具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加を行うことができる。
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
上述した一具体例において、パターン層23を有色の層としたが、この例に限られず、パターン層23を無色透明の層としてもよい。例えば、パターン層23の可視光透過率を80%以上とし、更には85%以上とすることができる。この例によれば、面光源装置10が消灯して可視光を射出していない状態において、図12及び図13に示すように、パターン層23が視認されない。したがって、加飾シート20の第1領域A1及び第2領域A2を区分けすることができず、ベース意匠層22のみが視認される。ここで図13は、図4に対応する図であって、図12中の領域Zを拡大して示している。その一方で、面光源装置10が点灯して可視光を射出している状態では、図6に示すように、パターン層23のパターンを明るく明瞭に表示することが可能となる。このような例によれば、加飾シート20は、背面から照明されることで、それまで視認されていなかったパターンを表示することができる。すなわち、意外性のある表示を行うことができ、これにより、意匠性を向上させることができる。
また、上述した一具体例において、加飾シート20が、ベース意匠層22を一層だけ含む例を示したが、これに限られない。図14に示すように、加飾シート20が、ベース意匠層22に加えて、一以上の更なるベース意匠層を含むようにしてもよい。更なるベース意匠層は、上述したベース意匠層22と同様に構成され得る。更なるベース意匠層は、ベース意匠層22と同様にベタ層として、加飾シート20の全域に広がっていてもよい。
図14に示された例において、加飾シート20は、ベース意匠層22の基材フィルム21とは反対側に設けられた第2ベース意匠層22Bを有している。図14に示された例において、ベース意匠層22は、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクター、マーク、文字や数字などの絵柄、とりわけ木目調や大理石調の絵柄や幾何学模様を表示する絵柄層として形成される。第2ベース意匠層22Bは、ベース意匠層22の絵柄を引き立たせるための無機材料を含んだ層や金属を含んだメタリック層として形成される。第2ベース意匠層22Bを設けることでベース意匠層22の意匠性を引き立たせることができる。このような加飾シート20は、第2ベース意匠層22Bを形成するようになる第4膜を、ベース意匠層22を形成するようになる第2膜32と遮光層33を形成するようになる第3膜33との間に有した積層物34を準備し、この積層物34にレーザー光を照射することで作製され得る。
更なるベース意匠層22Bを有する加飾シート20においても、パターン層23の赤外線の吸収率が、パターン層に隣接するベース意匠層22の赤外線の吸収率より高くなっている、或いは、パターン層23の赤外線領域での吸収スペクトルのピークが、パターン層に隣接するベース意匠層22の赤外線領域での吸収スペクトルのピークよりも高くなっていることで、上述した作用効果を奏することができる。すなわち、このような加飾シート20よれば、レーザー光の照射により形成された開口部Hは、パターン層23が設けられている第1領域A1において、より高い透過率で可視光を透過させ得るようになる。言い換えるとパターン層23が設けられている第1領域A1にレーザー光Lxの照射により形成された開口部Hは、パターン層23が設けられていない第2領域A2にレーザー光Lxの照射により形成された凹部Rと比較して、加飾シート20の可視光透過率向上に寄与することができる。したがって、加飾シート20を背面から照明した際に、パターン層23が設けられている第1領域A1を、パターン層23が設けられていない第2領域A2よりも明るく表示することができる。そして、パターン層23とベース意匠層22との組み合わせにより、意匠性を効果的に改善して、意匠性に優れた表示を行うことができる。
さらに、更なるベース意匠層22Bを有する加飾シート20においては、パターン層23の赤外線の吸収率が、更なるベース意匠層(第2ベース意匠層22B)の赤外線の吸収率より高くなっている、或いは、パターン層23の赤外線領域での吸収スペクトルのピークが、更なるベース意匠層(第2ベース意匠層22B)の赤外線領域での吸収スペクトルのピークよりも高くなっていることで、上述した作用効果をより顕著に奏することができる。
また、上述した一具体例において、ベース意匠層22に含まれる無機材料はフレーク状(薄片状)であってもよい。フレーク状の無機材料は高い反射率を有するため、ベース意匠層22によって光沢の高い意匠を表現することができる。フレーク状の無機材料としては、アルミニウム、雲母等が挙げられる。フレーク状の無機材料の最大長さは5μm以上であってもよい。光輝性のある意匠を表示する観点から、無機材料の最大長さは、例えば20μm以上であることが好ましい。また、耐サーキュレーション性の観点から無機材料の最大長さは、例えば60μm以下であることが好ましい。
この変形例において、図2Bに示すように、パターン層23をバインダー樹脂23a中に粒子23bを含んだ層として形成するとともに、パターン層23に含まれる粒子23bの最大長さが、ベース意匠層22のバインダー樹脂22a中に含まれるフレーク状の無機材料22bの最大長さよりも小さくなるようにしてもよい。とりわけ、パターン層23に含まれる粒子の最大長さは、ベース意匠層22に含まれる無機材料の最大長さの2分の1以下であることが好ましく、5分の1以下であることがより好ましい。具体的には、パターン層23に含まれる粒子の最大長さは5μm以下であってもよい。最大長さの長いフレーク状の無機材料を含むベース意匠層22はレーザー光を照射してもバインダー樹脂の全体に熱が伝わらず蒸発しにくい。一方で最大長さの短い粒子が用いられたパターン層23はバインダー樹脂全体に熱が伝わりやすく蒸発しやすくなっており、蒸発時にベース意匠層22を巻き込んで開口部Hを形成することができる。これにより、パターン層23が形成された領域に選択的に開口部Hを形成し、パターン層23による意匠と、背面から照明されることで開口部Hを通して表示される意匠を対応させることができる。パターン層22に含まれる粒子の材料としては、シアニン加工物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、六ホウ化ランタン、セシウムドープ酸化タングステン、ナフトキノン化合物、ジイモニウム化合物等を例示できる。
なお、ベース意匠層22に含まれるフレーク状の無機顔料、及びパターン層23に含まれる粒子の最大長さは、例えば、各層の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製 S-4500)を用いて加速電圧15kV、観察倍率2万倍の条件で観察し、無機顔料または粒子の100個の最大長さの平均値として算出することができる。観察のために各層の断面を露出させる際には、ミクロトームで切断してもよいし、液体窒素中で急速に凍結させた後にダイヤモンドナイフやイオンビームで切削してもよい。
また、上述した一具体例において、面光源装置10は矩形形状の発光面11を有していたが、この例に限られず、面光源装置10の発光面11が矩形形状以外の形状を有するようにしてもよいし。また、加飾シート付き表示装置1が、パターン遮光フィルムを更に備え、パターン遮光フィルムが、面光源装置10の発光面11から射出した光の一部を遮光することで、加飾シート20を所定のパターンを照明するようにしてもよい。