以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「層」、「シート」及び「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。例えば「層」という用語は、シート或いはフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1は、本発明による一実施の形態の加飾シート付き表示装置1を概略的に示す分解斜視図である。図1に示されるように、加飾シート付き表示装置1は、表示面11を有する表示装置10と、表示面11に対面して配置された加飾シート20と、を有している。加飾シート付き表示装置1において、加飾シート20は、後述する遮光層27が設けられた側が表示装置10に対面するよう配置されている。なお、図示されている例では、加飾シート付き表示装置1は、平板状に示されているが、加飾シート付き表示装置1の各構成要素が湾曲することで、加飾シート付き表示装置1は、湾曲形状であってもよい。
表示装置10は、画像光を出射する装置であり、画像光を出射することができる表示面11を有している。表示装置10は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の任意の表示装置を用いることができる。このような表示装置10の表示面11は、一般的にはガラス面となっている。あるいは、表示装置10は、光を印刷が施された透明なフィルム等を透過させて画像を表示するものや、光の一部を遮光物によって明暗を表示するものであってもよい。この場合、表示装置10は、光を発する光源及び印刷が施された透明なフィルムや遮光物を含んでいる。
加飾シート20は、表示装置10の表示面11に対面して配置され、表示面11が外部から直接観察されないよう、少なくとも表示面11の全体を覆っている。加飾シート20は、表示装置10の表示面11の全体を覆うことができるよう、表示面11の寸法以上の寸法を有している。図1に示す例では、加飾シート20は、全体として表示装置10の表示面11と同一の方向に広がる平板状の部材である。加飾シート20の厚さは、例えば20μm以上550μm以下である。
加飾シート20は、意匠を表示して、加飾シート付き表示装置1に意匠性を付与する。加飾シート20は、基材フィルム21と、基材フィルム21上に設けられた吸収層25と、吸収層25の基材フィルム21とは逆側に設けられた意匠層30と、表示装置10に対面する側から意匠層30を覆う遮光層27と、意匠層30、吸収層25及び遮光層27の非形成部である透過部29と、を有している。すなわち、図2に示されているように、加飾シート20において、基材フィルム21、吸収層25、意匠層30、遮光層27がこの順に積層されている。加飾シート20は、表示装置10の画像非表示状態において意匠層30によって形成される意匠を表示するとともに、表示装置10の画像表示状態において表示装置10の表示面11からの画像光を透過部29において透過させる。
基材フィルム21は、基材フィルム21上に積層された意匠層30、吸収層25および遮光層27を適切に支持する。基材フィルム21は、透明なフィルム状の部材である。基材フィルム21としては、可視光を透過し、意匠層30、吸収層25及び遮光層27を適切に支持し得るものであればいかなる材料でもよいが、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)等を挙げることができる。また、基材フィルム21は、可視光透過性や、意匠層30、吸収層25及び遮光層27の適切な支持性等を考慮すると、10μm以上500μm以下の厚みを有していることが好ましい。
なお、透明とは、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される可視光透過率が、80%以上であることを意味する。
意匠層30は、加飾シート20が表示する意匠を形成する。意匠層30は、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクター、マーク、文字や数字などの絵柄を、意匠として形成することができる。特に、加飾シート付き表示装置1が設けられる周辺環境と調和させることができる意匠として、木目調や大理石調の絵柄や幾何学模様を例示することができる。意匠層30が形成する意匠は、複数の色によって表されていることが好ましい。また、意匠層30が形成する意匠は、光沢を有することが好ましい。
意匠層30は、1以上の層を有している。本実施の形態において、意匠層30は、意匠として絵柄を形成する絵柄層31と、無機材料32bを含む無機層32と、を有している。絵柄層31は、無機層32より基材フィルム21側に位置している。すなわち、絵柄層31が、意匠層30において最も吸収層25に近い層となっている。しかしながら、この例に限らず、無機層32が最も吸収層25に近い層となっていてもよい。あるいは、意匠層30が絵柄層31及び無機層32以外の層をさらに有しており、その層が最も吸収層25に最も近い層になっていてもよい。意匠層30は、可視光反射率が5%以上の層を含んでいることが好ましい。意匠層30が可視光反射率が5%以上の層を含むことにより、意匠層30が金属調の光沢のある意匠や、パール調の光沢のある意匠を表示することが可能になり、意匠層30によって形成される意匠の意匠性を高めることができる。本実施の形態においては、後述するように、意匠層30の無機層32の可視光反射率が5%以上となっている。
絵柄層31の厚さが十分に厚くなっていると、絵柄層31によって形成される絵柄を濃く明確にすることができる。ここで、絵柄層31の厚さとは、意匠層30を支持する基材フィルム21の法線方向に沿った絵柄層31の長さのことである。具体的な例として、絵柄層31の厚さは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。
無機層32は、絵柄層31の意匠性が遮光層27によって害されることを避けるために設けられている。無機層32は、外部の観察者に観察された際に絵柄層31との混色により絵柄層31が形成する絵柄の意匠性を害さない色を有しており、例えば混色を避けやすい銀色または白色であることが好ましい。また、意匠層30が形成する意匠に光沢を持たせるため、無機層32の可視光反射率は、5%以上となっている。このような無機層32を形成するために、無機層32に含まれる無機材料32bは、アルミニウムまたは雲母を含んでいることが好ましい。このような無機材料32bは、最大長さが5μm以上であるフレーク状の材料である。加えて、光輝性のある意匠を表示する観点から、無機材料32bの最大長さは、例えば20μm以上であることが好ましい。また、耐サーキュレーション性の観点から無機材料32bの最大長さは、例えば60μm以下であることが好ましい。無機層32の厚さは、例えば0.5μm以上3μm以下である。
ここで、可視光反射率は、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光株式会社製「V-770」)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で積分球を用いて全反射率を測定することによって、特定する。
また、無機材料32bの最大長さとは、1つの無機材料32bのある方向に沿った長さのうち最大となる長さのことを意味する。無機材料32bの最大長さは、無機層32の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製 S-4500)を用いて加速電圧15kV、観察倍率2000倍の条件で観察し、観察された無機材料100個の最大長さの平均値として算出する。
図3に示すように、無機層32は、無機材料32b及びバインダー樹脂32cを含んでいる。バインダー樹脂32cは、無機材料32bの隙間を埋めるように設けられている。すなわち、無機層32は、粒子状またはフレーク状の無機材料32bをバインダー樹脂32c中に含むことで形成されている。
吸収層25は、赤外線を吸収することができる。後述するように、加飾シート20の製造工程において吸収層25を形成するようになる吸収膜25aは、意匠層30を形成するようになる意匠膜30aの最も吸収膜25aに近い膜で吸収されなかった赤外線のレーザー光を吸収する。このため、吸収層25は、意匠層30の最も吸収層25に近い層より赤外線を吸収しやすくなっていることが好ましい。言い換えると、吸収層25の赤外線の吸収率は、意匠層30の最も吸収層25に近い層の赤外線の吸収率より高くなっていることが好ましい。ここで、赤外線の吸収率とは、波長900nm以上1300nm以下の赤外線の吸収率を意味している。このような波長は、一般的に安価に入手可能で十分な出力の赤外線レーザー光源から照射されるレーザー光の波長であり、加飾シート20の製造工程において用いられるレーザー光の波長に対応している。また、赤外線の吸収率は、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光株式会社製「V-770」)を用いて特定する。
吸収層25が赤外線を吸収しやすいよう、吸収層25の吸収スペクトルは、赤外線領域に吸収率のピークを有している。具体的には、吸収層25の吸収スペクトルは、780nm以上15000nmの波長に吸収率のピークを有していることが好ましく、800nm以上10000nm以下の波長に吸収率のピークを有していることがより好ましく、900nm以上1300nm以下の波長に吸収率のピークを有していることがさらに好ましい。また、吸収層25の吸収スペクトルの吸収率のピークは、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。ここで、吸収スペクトルとは、各波長〔nm〕における光の吸収率〔%〕の分布を意味している。また、吸収層25が赤外線を吸収しやすいよう、吸収層25の赤外線の吸収率のピークは、意匠層30の最も吸収層25に近い層の赤外線の吸収率のピークよりも高くなっている。さらに、吸収層25が赤外線を吸収しやすいよう、吸収層25の厚さは、例えば0.5μm以上となっていることが好ましい。ただし、加飾シート20全体が厚くなりすぎないよう、吸収層25の厚さは、例えば3μm以下となっていることが好ましい。
また、図2に示されているように、吸収層25は、意匠層30より観察される側となる基材フィルム21側に配置されている。意匠層30によって表示される意匠が吸収層25によって害されないために、吸収層25は、可視光に対して透明であることが好ましい。具体的には、吸収層25の可視光透過率は、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましい。また、同様の理由から、吸収層25の可視光の吸収率は、吸収層25の赤外線の吸収率よりも低いことが好ましい。
なお、可視光の透過率及び吸収率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率及び吸収率の平均値として特定する。
図3に示されているように、吸収層25は、赤外線を吸収する複数の粒子25bと、バインダー樹脂25cと、を含んでいる。バインダー樹脂25cは、粒子25bの隙間を埋めるように設けられている。すなわち、吸収層25は、複数の粒子25bをバインダー樹脂25c中に含むことで形成されている。
吸収層25に含まれる粒子25bの最大長さは、無機層32に含まれる無機材料32bの最大長さより小さくなっている。とりわけ、吸収層25に含まれる粒子25bの最大長さは、無機層32に含まれる無機材料32bの最大長さの2分の1以下であることが好ましく、5分の1以下であることがより好ましい。ここで、粒子25bの最大長さとは、吸収層25の断面において、1つの粒子25bのある方向に沿った長さのうち最大となる長さのことを意味する。具体的には、吸収層25に含まれる粒子25bの最大長さは、5μm以下であり、好ましくは3μm以下であり、より好ましくは1μm以下である。また、粒子25bの最大長さは、例えば0.01μm以上である。粒子25bの最大長さは、吸収層25の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製 S-4500)を用いて加速電圧15kV、観察倍率2万倍の条件で観察し、粒子100個の最大長さの平均値として算出する。観察のために吸収層25の断面を露出させる際には吸収層25をミクロトームで切断してもよいし、液体窒素中で急速に凍結させた後にダイヤモンドナイフやイオンビームで切削してもよい。
このような粒子25bの材料としては、シアニン加工物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、六ホウ化ランタン、セシウムドープ酸化タングステン、ナフトキノン化合物、ジイモニウム化合物等を例示できる。
遮光層27は、表示装置10に対面する側から意匠層30を覆うように設けられている。遮光層27は、表示装置10からの可視光からなる画像光が意匠層30に入射しないよう、可視光からなる画像光を吸収する機能を有している。遮光層27は、例えば光吸収粒子をバインダー樹脂中に含み得る。光吸収粒子としては、カーボンブラックやチタンブラック等の黒色顔料を例示することができる。表示装置10の表示面11から出射された画像光が透過部29を透過することが遮光層27によって阻害されないよう、遮光層27は、意匠層30に対面する位置にのみ設けられていることが好ましい。また、十分な厚さの遮光層27が意匠層30を覆っていると、意匠層30によって形成される意匠を濃く明確に形成することができる。具体的な例として、遮光層27の厚さは、1μm以上20μm以下である。
なお、図2に示すような加飾シート20のシート面に直交する方向の断面における意匠層30の絵柄層31及び無機層32、吸収層25及び遮光層27の断面形状は、矩形となっているが、これに限らず、台形形状等であってもよい。
透過部29は、表示装置10からの画像光を透過させるために設けられている。透過部29は、図2及び図4に示すように、加飾シート20の正面からの観察において、意匠層30、吸収層25及び遮光層27の非形成部である。表示装置10からの画像光を十分に透過させるために、加飾シート20において、透過部29が占める面積は、10%以上となっていることが好ましい。
図4に示された例では、複数の透過部29が互いに離間して配置されている。各透過部29の間には、意匠層30が形成されている。図示された例では、各透過部29は、正面視において円形となっており、複数の透過部29は、正方格子状に配置されている。各透過部29が円形となっている場合、透過部29を透過する画像光の拡散を抑制することができる。また、透過部29が格子状、特に正方格子状に配置されている場合、表示装置10からの画像光を均一に透過させることができるため、画像光にムラが生じにくくなる。しかしながら、透過部29は、図示された例に限らず、任意の形状となっていてもよいし、任意の位置に配置されていてもよい。各透過部29の直径は、例えば30μm以上150μm以下である。
なお、透過部29は、図2に示された例のように、穴であってもよいが、例えば穴を透明な樹脂によって埋めることで形成されてもよい。さらに、透明な樹脂は、透過部29だけでなく、基材フィルム21が設けられている側とは逆側から意匠層30、吸収層25及び遮光層27を覆うように形成されていてもよい。このような透明な樹脂は、透過部29を形成するとともに、意匠層30、吸収層25及び遮光層27を保護する透明な保護膜として機能することができる。
次に、本実施の形態の加飾シート付き表示装置1の作用について説明する。
表示装置10の表示面11に画像を表示しない状態では、図5に示すように、加飾シート20の意匠層30によって形成される意匠が表示される。すなわち、加飾シート付き表示装置1は、観察されることが意図された意匠を表示することができる。表示された意匠によって、表示装置10の表示面11が外部の観察者から観察されなくなり、意匠性において加飾シート付き表示装置1を周辺環境と調和させることができる。特に、遮光層27が意匠層30に対面する位置にのみ設けられている場合、遮光層27が観察者に観察されず、遮光層27によって加飾シート20の意匠性が害されることを防止することができる。
一方、表示装置10が表示面11に画像を表示した状態では、図6に示すように、画像光は、加飾シート20の基材フィルム21及び透過部29を透過する。これにより、観察者は画像を観察することができる。すなわち、加飾シート付き表示装置1は、観察されることが意図された画像を表示することができ、外部の観察者は、画像を観察することができる。
また、意匠層30は、遮光層27によって表示装置10の側から覆われている。したがって、遮光層27によって、画像光が意匠層30へ入射することが妨げられる。このため、意匠層30を画像光が透過して、意匠層30によって表される意匠と画像光とが混合して観察されることを防止することができる。すなわち、意匠層30で特定波長域の可視光が吸収されることに起因して画像の色再現性が劣化することを効果的に防止することができる。さらに、遮光層27が意匠層30に対面する領域にのみ設けられている場合、遮光層27によって透過部29を透過する画像光が妨げられることが防止される。すなわち、画像光を効率的に利用して、画像を明るく表示することができる。
次に、加飾シート20の製造方法の一例について、説明する。
まず、基材フィルム21上に、吸収層25を形成するようになる吸収膜25a、意匠層30を形成するようになる意匠膜30a、遮光層27を形成するようになる遮光膜27aを、この順に積層する。意匠膜30aは、1以上の膜を有している。この例では、意匠膜30aは、吸収膜25aの側に絵柄層31を形成するようになる絵柄膜31aを有しており、遮光膜27aの側に無機層32を形成するようになる無機膜32aを有している。吸収膜25aは、赤外線を吸収する複数の粒子25b及びバインダー樹脂25cを含んでいる。無機膜32aは、無機材料32b及びバインダー樹脂32cを含んでいる。吸収膜25a、絵柄膜31a、無機膜32a及び遮光膜27aは、例えば印刷によって形成される。
次に、図7に示すように、透過部29を形成する位置にレーザー光L1を照射する。レーザー光L1の波長は、赤外線領域の波長であり、例えば900nm以上1300nm以下である。レーザー光L1の具体的な例として、波長1064nmのNd:YAGレーザーのレーザー光を用いることができる。
照射されたレーザー光L1は、遮光膜27a、意匠膜30a及び吸収膜25aに吸収され得る。とりわけ、吸収膜25aは、レーザー光L1を高い吸収率で吸収することができる。レーザー光L1の波長における吸収膜25aの吸収率は、意匠膜30aの最も吸収膜25aに近い膜の吸収率より高く、例えば3%以上、好ましくは5%以上である。このため、遮光膜27a及び意匠膜30aでレーザー光L1が十分に吸収されなくても、吸収膜25aにおいてレーザー光L1を十分に吸収することができる。
レーザー光L1が遮光膜27a、意匠膜30a及び吸収膜25aに十分に吸収されることで、図8に示すように、レーザー光L1が照射された位置の遮光膜27a、意匠膜30a及び吸収膜25aが除去される。特に、吸収膜25aにレーザー光L1が十分に吸収されることで、吸収膜25aは蒸発する。吸収膜25aが蒸発する際に、レーザー光L1を吸収した当該吸収膜25aに重なる位置の遮光膜27a及び意匠膜30aが巻き込まれて、吸収膜25aとともにレーザー光L1が照射された位置の遮光膜27a及び意匠膜30aが除去される。
遮光膜27a、意匠膜30a及び吸収膜25aが除去された跡の開口部が、透過部29となる。すなわち、レーザー光L1が照射された位置の遮光膜27a、意匠膜30a及び吸収膜25aが除去されることで、透過部29が形成される。一方、レーザー光L1が照射されずに除去されなかった遮光膜27a、意匠膜30a及び吸収膜25aが、それぞれ遮光層27、意匠層30及び吸収層25となる。意匠膜30aの絵柄膜31aは絵柄層31となり、無機膜32aは無機層32となる。以上の工程によって、加飾シート20が製造される。
ところで、従来の加飾シート120は、図9に示すように、基材フィルム121上に絵柄膜131a、無機膜132a及び遮光膜127aを積層し、透過部129を形成する位置にレーザー光L2を照射することで製造されている。このように加飾シート120が製造されると、図10に示すように、意匠層130を形成するようになる意匠膜130aが十分に除去されずに、一部の透過部129において意匠膜130aの残留物130rが残ることがある。このような残留物130rが残った透過部129と残留物130rが残っていない透過部129との間では意匠性に違いが生じ得る。具体的には、残留物130rによって表示すべき意匠より意匠が濃く表示されてしまうことがある。この意匠性の違いに起因して、加飾シート120が表示する意匠に濃淡の模様が生じてしまい、加飾シート120が表示すべき意匠が損なわれ、加飾シート120によって付与される意匠性が悪化し得る。
本件発明者らが鋭意検討した結果、このような残留物130rは、意匠膜130aがレーザー光L2を十分に吸収しないことが原因となっていることが知見された。具体的には、意匠膜130aが有する一部の絵柄膜131a及び無機膜132aがレーザー光L2を十分に吸収しないため、一部の絵柄膜131a及び無機膜132aが十分に蒸発せず、一部の意匠膜130aが残留して透過部129に残ってしまう。レーザー光L2を吸収する意匠膜130aとレーザー光L2を十分に吸収しない意匠膜130aとは、例えば各位置における絵柄膜131aの色や柄の違いに起因して生じ得る。
本件発明者らが残留物130rについて調査した結果、残留物130rは、無機膜132aに含まれるバインダー樹脂を多く含んでいることが知見された。以下において、無機膜132aに含まれるバインダー樹脂が残留物となる理由の推察及びバインダー樹脂が残留物とならないための工夫について説明する。ただし、本発明は、以下の推察に限定されない。
図9に示した従来の加飾シート120の製造工程において、意匠膜130aの無機膜132aは、無機材料及びバインダー樹脂を含んでいる。無機材料が赤外線を吸収しやすい材料であるとしても、バインダー樹脂はほとんど赤外線を吸収しない。赤外線を吸収した無機材料の温度が上昇する際に、バインダー樹脂にも無機材料から熱が伝わって温度が上昇し、無機材料と合わせてバインダー樹脂も蒸発することが期待された。しかしながら、本件発明者らが観察したところ、無機材料のみが蒸発し、バインダー樹脂は残留物として残ってしまっていた。これは、無機材料の最大長さが長すぎるため、すなわち無機材料が大きすぎるため、無機材料の隙間を埋めるように設けられたバインダー樹脂の全体に十分に熱が伝わらず、バインダー樹脂が蒸発しないことが原因であると推察された。
このように、レーザー光を照射された材料の蒸発のしやすさは、レーザー光の吸収率だけでなく、材料の大きさにも依存すると推察された。ところで、無機材料の最大長さは、無機材料として用いられる材料によって決まる。上述したように、無機材料は、可視光反射率の高い無機層を形成して意匠層によって形成される意匠に光沢を持たせるために、無機層に含まれる材料である。無機材料が小さくなるほど、光を正反射する面積が小さくなり、かつ無機材料の端部での散乱反射の割合が増加するので、光輝性の低い光沢となってしまう。逆に、無機材料が大きくなると、光を正反射する面積が大きくなり、かつ無機材料の端部での散乱反射の割合が減少するので、光輝性の高い光沢となる。そこで、無機材料を大きくして光輝性の高い光沢を持たせながら、バインダー樹脂を残留物として残さないために、無機膜よりも基材フィルムに近い側に赤外線を吸収する吸収膜を設け、吸収膜が蒸発する際に無機膜に含まれるバインダー樹脂を巻き込んで除去することが考えられた。
本実施の形態の加飾シート20は、基材フィルム21上に赤外線を吸収する吸収層25が設けられ、吸収層25の基材フィルム21とは逆側に無機材料32bを含む無機層32を有する意匠層30が設けられている。すなわち、加飾シート20の製造工程において、基材フィルム21と無機膜32aを含む意匠膜30aとの間に、吸収層25を形成するようになる吸収膜25aが配置されている。レーザー光を吸収した吸収膜25aが蒸発することで、吸収膜25a上に積層された意匠膜30a及び遮光膜27aを、残留物をほとんど残さずに除去することができる。とりわけ、吸収膜25aが蒸発する際に、無機膜32aに含まれる無機材料32b及びバインダー樹脂32cを巻き込んで除去することができる。そして、吸収層25に含まれる粒子25bの最大長さは、無機層32に含まれる無機材料32bの最大長さより小さくなっており、好ましくは無機層32に含まれる無機材料32bの最大長さの2分の1以下、より好ましくは5分の1以下となっている。言い換えると、加飾シート20の製造工程において、吸収膜25aに含まれる粒子25bの最大長さは、無機膜32aに含まれる無機材料32bの最大長さより十分に小さくなっている。このため、吸収膜25aに含まれる粒子25bが赤外線を吸収して、粒子25bの隙間を埋めるように設けられたバインダー樹脂25cの全体に粒子25bから十分に熱が伝わり、バインダー樹脂25cが蒸発して除去されやすい。とりわけ、バインダー樹脂25cは、粒子25bの最大長さが無機材料32bの最大長さの2分の1以下となっているとより除去されやすく、5分の1以下となっているとさらに除去されやすい。すなわち、吸収膜25aに含まれるバインダー樹脂25cは、残留物となりにくい。このように、無機膜32aに含まれる無機材料32b及びバインダー樹脂32c、及び吸収膜25aに含まれるバインダー樹脂25cは、残留物となりにくくすることができる。すなわち、加飾シート20の透過部29に残留物を残りにくくすることができる。
また、無機材料32bは、フレーク状である。このような無機材料32bの最大長さは、5μm以上である。このような大きさの無機材料32bが赤外線を吸収したとしても、無機材料32bの隙間を埋めるように設けられたバインダー樹脂32cの全体に無機材料32bから十分に熱が伝わらず、バインダー樹脂32cが蒸発しない。このため、バインダー樹脂32cが残留物となりやすい。しかしながら、本実施の形態のように、吸収層25に含まれる粒子25bの最大長さが無機層32に含まれる無機材料32bの最大長さより小さくなっていると、このような大きさの無機材料32bを含む無機層32であっても、蒸発する吸収膜25aに巻き込まれて除去されるため、残留物を残しにくい。言い換えると、無機材料32bがフレーク状であり、無機材料32bの最大長さが5μm以上であっても、残留物を残りにくくすることができる。
さらに、無機材料32bは、アルミニウムまたは雲母を含んでいる。アルミニウムまたは雲母は、赤外線の吸収率の高い材料である。このような材料では、無機材料32bと合わせてバインダー樹脂32cも蒸発することが期待された。しかしながら、無機材料32bがこのような材料であると、無機材料32bの最大長さが大きくなりやすく、バインダー樹脂32cが残留物として残ってしまう。本実施の形態のように、吸収層25に含まれる粒子25bの最大長さが無機層32に含まれる無機材料32bの最大長さより小さくなっていると、このような材料の無機材料32bを含む無機層32であっても、残留物を残しにくい。言い換えると、無機材料32bがアルミニウムまたは雲母であっても、残留物を残りにくくすることができる。
また、吸収層25に含まれる粒子25bの最大長さは、5μm以下である。このように、吸収層25に含まれる粒子25bの最大長さは、十分に小さくなっている。このため、吸収膜25aに含まれるバインダー樹脂25cは、粒子25bが蒸発する際に巻き込まれて除去されやすい。すなわち、吸収膜25aに含まれるバインダー樹脂25cは、残留物となりにくい。このように、吸収膜25aに含まれるバインダー樹脂25cは、残留物となりにくくすることができる。
さらに、吸収層25の赤外線の吸収率は、意匠層30の最も吸収層25に近い層の赤外線の吸収率より高くなっている。すなわち、加飾シート20の製造工程において、吸収膜25aの赤外線の吸収率は、意匠膜30aの最も吸収膜25aに近い膜の赤外線の吸収率より高くなっている。このため、意匠膜30aにおいて透過部29を形成するレーザー光が十分に吸収されなくても、吸収膜25aにおいてレーザー光を十分に吸収することができる。レーザー光を吸収した吸収膜25aが蒸発することで、吸収膜25a上に積層された意匠膜30a及び遮光膜27aを、残留物をほとんど残さずに除去することができる。すなわち、加飾シート20の透過部29に残留物を残りにくくすることができる。
また、吸収層25の吸収スペクトルは、赤外線領域に吸収率のピークを有している。すなわち、加飾シート20の製造工程において、吸収膜25aの吸収スペクトルは、赤外線領域に吸収率のピークを有している。このため、吸収膜25aは、ピークとなる波長の赤外線を効率よく吸収することができる。吸収膜25aのピークとなる波長が透過部29を形成するレーザー光に近いと、吸収膜25aにおいてレーザー光が効率よく吸収される。レーザー光を吸収した吸収膜25aが蒸発することで、吸収膜25a上に積層された意匠膜30a及び遮光膜27aを、残留物をほとんど残さずに除去して、加飾シート20の透過部29に残留物を残りにくくすることができる。
さらに、吸収層25の赤外線の吸収率のピークは、意匠層30の最も吸収層25に近い層の赤外線の吸収率のピークよりも高くなっている。すなわち、加飾シート20の製造工程において、吸収膜25aの赤外線の吸収率のピークは、意匠膜30aの最も吸収膜25aに近い層の赤外線の吸収率のピークよりも高くなっている。このため、吸収膜25aは、意匠膜30aの最も吸収膜25aに近い層よりも赤外線を効率よく吸収することができる。言い換えると、吸収膜25aは、意匠膜30aの最も吸収膜25aに近い層よりもレーザー光を効率よく吸収することができる。レーザー光を吸収した吸収膜25aが蒸発することで、吸収膜25a上に積層された意匠膜30a及び遮光膜27aを、残留物をほとんど残さずに除去して、加飾シート20の透過部29に残留物を残りにくくすることができる。
具体的には、吸収層25の吸収スペクトルは、900nm以上1300nm以下の波長に吸収率のピークを有している。すなわち、加飾シート20の製造工程において、吸収膜25aの吸収スペクトルは、900nm以上1300nm以下の波長に吸収率のピークを有している。このため、吸収膜25aは、この波長の赤外線を効率よく吸収することができる。透過部29を形成するレーザー光が吸収膜25aのピークとなる波長であると、すなわちレーザー光の波長が900nm以上1300nm以下であると、吸収膜25aにおいてレーザー光がより効率よく吸収される。レーザー光を吸収した吸収膜25aが蒸発することで、吸収膜25a上に積層された意匠膜30a及び遮光膜27aを、残留物をほとんど残さずに除去して、加飾シート20の透過部29に残留物を残りにくくすることができる。
また、吸収層25の吸収スペクトルの吸収率のピークは、3%以上である。すなわち、加飾シート20の製造工程において、吸収膜25aの吸収スペクトルの吸収率のピークは、3%以上である。このため、吸収膜25aの吸収スペクトルの吸収率のピークにおける赤外線をより効率よく吸収することができる。透過部29を形成するレーザー光が吸収膜25aのピークとなる波長であると、すなわち吸収膜25aのレーザー光の波長での吸収率が3%以上であると、吸収膜25aにおいてレーザー光がより効率よく吸収される。レーザー光を吸収した吸収膜25aが蒸発することで、吸収膜25a上に積層された意匠膜30a及び遮光膜27aを、残留物をほとんど残さずに除去して、加飾シート20の透過部29に残留物を残りにくくすることができる。
加飾シート付き表示装置1において、加飾シート20の吸収層25は、意匠層30より観察される側に配置されている。このため、観察者が意匠層30によって表示される意匠を観察する際には、吸収層25を介して意匠を観察することになる。本実施の形態のように、吸収層25の可視光透過率が70%以上であることで、意匠層30によって表示される意匠は、吸収層25によって害されることなく観察されることができる。
以上のように、本実施の形態の加飾シート20は、表示装置10に対面して配置される加飾シートであって、透明な基材フィルム21と、基材フィルム21上に設けられ、赤外線を吸収する吸収層25と、吸収層25の基材フィルム21とは逆側に設けられ、無機材料32b及びバインダー樹脂32cを含む無機層32を有する意匠層30と、意匠層30及び吸収層25の非形成部である透過部29と、を備え、吸収層25に含まれる粒子25bの最大長さは、無機層32に含まれる無機材料32bの最大長さより小さくなっている。このような加飾シート20によれば、吸収膜25aが蒸発する際に、無機層32を形成するようになる無機膜32aに含まれる無機材料32b及びバインダー樹脂32cを巻き込んで除去することができる。また、吸収層25を形成するようになる吸収膜25aに含まれるバインダー樹脂25cは、粒子25bが蒸発する際に巻き込まれて除去されやすい。このように、無機膜32aに含まれる無機材料32b及びバインダー樹脂32c、及び吸収膜25aに含まれるバインダー樹脂25cは、残留物となりにくくすることができる。したがって、加飾シート20の透過部29に残留物を残りにくくして、加飾シート20の意匠性の悪化を抑制することができる。
上述した加飾シート20及び加飾シート20を有する加飾シート付き表示装置1は、例えば自動車や鉄道等の車両、航空機、船舶及び宇宙船等の移動体の内装部材または外装部材に用いられる。具体的な適用例として、加飾シート20及び加飾シート20を有する加飾シート付き表示装置1は、自動車のセンターコンソールや、ドアトリムに用いられる。あるいは、加飾シート20及び加飾シート20を有する加飾シート付き表示装置1は、建物の内装部材または外装部材、電子機器、家具や電化製品に組み込まれて用いられてもよい。
本発明の態様は、上述した個々の実施の形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
例えば、上述した実施の形態において、意匠層30において、絵柄層31は、無機層32より基材フィルム21側に位置している。すなわち、意匠層30において、吸収層25の側に絵柄層31が設けられており、遮光層27の側に無機層32が設けられている。しかしながら、吸収層25の側に無機層32が設けられており、遮光層27の側に絵柄層31が設けられていてもよい。
また、意匠層30は、絵柄層31及び無機層32を複数有していてもよい。さらには、意匠層30は、絵柄層31を有していなくてもよい。この場合、無機層32によって、意匠層30が表示する意匠を形成する。