本発明の第1~第6の実施形態に係る図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。もっとも、第1~第6の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、回路素子や回路ブロックの構成や配置、或いは半導体チップ上でのレイアウト等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
尚、以下の第1~第6の実施形態の説明では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として説明するが、第1導電型がn型、第2導電型をp型としても、電気的な極性を反対にすれば同様な効果が得られることは容易に理解できるであろう。この場合、パルス波形のハイレベルとローレベルも、当業者の技術常識に応じて、適宜反転する必要が発生する場合もあることは勿論である。
例えば、以下の図1や図15では、説明の便宜上、複数の画素(測距素子)が画素アレイ部に2次元マトリクス状に配置された3D撮像装置を基礎とする測距装置を示すが、単なる例示に過ぎない。画素アレイ部に1次元的に測距素子が画素として配列されたラインセンサのレイアウトでも構わない。又、画素アレイ部に単一の測距素子のみが配置された単純な構造の距離センサであっても構わない。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る測距装置は、図1に示すように、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)と周辺回路部(71~76,94~96,NC1~NCm)とを同一の半導体チップ上に集積化した2次元イメージセンサ(3D撮像装置)を基礎とする。画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)には、2次元マトリクス状に多数の画素Xij(i=1~m;j=1~n:m,nはそれぞれ2以上の正の整数である。)が配列されており、方形状の撮像領域を構成している。
そして、この画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の上辺部には駆動回路94が、下辺部には水平シフトレジスタ96が、それぞれ画素行X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm方向に沿って設けられ、画素アレイ部の右辺部には画素列X11~Xn1;X12~Xn2;……;X1j~Xnj;……;X1m~Xnm方向に沿って垂直シフトレジスタ及び垂直走査回路95が設けられている。駆動回路94には各画素Xijが測距素子として距離測定を行うに必要な光を繰り返しパルス信号として投影する発光部91が接続されている。
この駆動回路94にはインターフェイス75を介して制御演算回路73aから駆動回路94を制御する制御信号が伝達される。制御演算回路73aには制御演算回路73aの動作を命令するプログラムを記憶したプログラム記憶装置76と、制御演算回路73aにおける論理演算に必要なデータやしきい値等を記憶するデータ記憶装置72が接続される。制御演算回路73aには更に、制御演算回路73aにおける論理演算の結果を出力する出力ユニット74が接続されている。データ記憶装置72には画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)からの出力信号を、出力バッファ97,98を介して入力し、距離画像の形成に必要な演算処理を実施する距離演算回路71が接続されている。尚、図1において、画素Xn1に内部構造をブロック図として模式的に例示したように、それぞれの画素Xijは、光電変換素子と信号電荷転送部を備える光電変換転送部81及びソースフォロア型の読出増幅回路82等を含む。
駆動回路94、水平シフトレジスタ96、垂直シフトレジスタ及び垂直走査回路95によって画素アレイ部内の画素Xijが順次走査され、画素信号の読み出しや電子シャッタ動作が実行される。即ち、本発明の第1の実施形態に係る測距装置では、画素アレイ部を各画素行X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm単位で垂直方向に走査することにより、各画素行X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnmの画素信号を各画素列X11~Xn1;X12~Xn2;……;X1j~Xnj;……;X1m~Xnm毎に設けられた垂直出力信号線によって画素信号を読み出す構成となっている。尚、図1では、距離演算回路71、インターフェイス75、制御演算回路73a、プログラム記憶装置76、データ記憶装置72及び出力ユニット74が同一半導体チップに集積された構造が示されているが、単なる例示に過ぎない。図1に示したトポロジやレイアウトに限定されず、距離演算回路71、インターフェイス75、制御演算回路73a、プログラム記憶装置76、データ記憶装置72及び出力ユニット74の少なくとも一部の回路等が別々のチップや基板に搭載される態様でも構わない。
測距素子としての各画素X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnmからの信号読み出しについては、おおむね通常のCMOSイメージセンサと同様である。但し、各画素X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnmのそれぞれのフォトダイオードからの信号電荷転送させるための転送信号TX1、TX2は、駆動回路94から全画素X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnmに同時に与えられ、しかも高い周波数の信号であるので、その期間には、スイッチングノイズが発生する。したがって画素部からの信号読み出しは、ノイズ処理回路NC1~NCmによる処理が終了した後に読み出し期間を設けて行う。
制御演算回路73aは図2に論理的なブロック図を示すように、時間設定論理回路731、設定値判定回路732、時間設定値出力制御回路733、距離画像出力制御回路734及びシーケンス制御回路735をハードウェア資源として備える。時間設定論理回路731は、後述する図5~図8に示す繰り返し周期時間Tc、光投影時間To、電荷蓄積時間Ta、及び電荷転送時間Ton等の値を設定し、或いは、設定値判定回路732の出力信号に応じて、時間設定論理回路731は、後述する図5~図8に示す繰り返し周期時間Tc、光投影時間To、電荷蓄積時間Ta、及び電荷転送時間Ton等の値を適宜変更する論理回路である。この際、時間設定論理回路731は、振分ゲート構造に印加する転送信号TX1、TX2が図5~図8に示すように、オフセット時間を挟んだ異なるタイミングとなるように時間設定をする。
設定値判定回路732は、距離演算回路71が算出した距離の検出値がデータ記憶装置72に予め格納されたしきい値を下回り、且つ繰り返し周期時間Tcが最小値ではないか否かを判定し、判定結果を時間設定論理回路731又は距離画像出力制御回路734に出力する論理回路である。時間設定値出力制御回路733は、時間設定論理回路731が設定若しくは変更した繰り返し周期時間Tc、光投影時間To、電荷蓄積時間Ta、及び電荷転送時間Ton等が、インターフェイス75を介して駆動回路94に制御信号として出力されるようにする論理回路である。転送信号TX1、TX2のパルス幅として定義される電荷転送時間Tonは、図5~図8に示すようにオフセット時間を挟んだ異なるタイミングに時間設定されている。距離画像出力制御回路734は、設定値判定回路732が距離の検出値がしきい値以上であると判定した場合、距離演算回路71が算出した距離の検出値を距離画像のデータとして合成し、出力ユニット74に出力する論理回路である。
図2に示したシーケンス制御回路735は時間設定論理回路731、設定値判定回路732、時間設定値出力制御回路733、距離画像出力制御回路734、インターフェイス75、プログラム記憶装置76及びデータ記憶装置72のそれぞれの動作をクロック信号に依拠して順次シーケンス制御する論理回路である。時間設定論理回路731、設定値判定回路732、時間設定値出力制御回路733、距離画像出力制御回路734及びシーケンス制御回路735のそれぞれはバス736を介して情報の送受信が可能である。
図1に示すコンピュータシステムにおいて、データ記憶装置72は、複数のレジスタ、複数のキャッシュメモリ、主記憶装置、補助記憶装置を含む一群の内から適宜選択された任意の組み合わせとすることも可能である。又、キャッシュメモリは1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリの組み合わせとしてもよく、更に3次キャッシュメモリを備えるヒエラルキーを有しても構わない。図示を省略しているが、データ記憶装置72に複数のレジスタが含まれる場合等においては、バス736はインターフェイス75、プログラム記憶装置76及びデータ記憶装置72等にまで延長されていても構わない。
図2に示した制御演算回路73aは、マイクロチップとして実装されたマイクロプロセッサ(MPU)等を使用してコンピュータシステムを構成することが可能である。又、コンピュータシステムを構成する制御演算回路73aとして、算術演算機能を強化し信号処理に特化したデジタルシグナルプロセッサ(DSP)や、メモリや周辺回路を搭載し組込み機器制御を目的としたマイクロコントローラ(マイコン)等を用いてもよい。或いは、現在の汎用コンピュータのメインCPUを制御演算回路73aに用いてもよい。
例えば、応用例として後述するカメラに、第1の実施形態に係る測距装置の主要部を構成する3D撮像装置45aを搭載する場合において、図1に示した制御演算回路73aや距離演算回路71等を、図31に示した3D撮像装置45aを搭載するチップ搭載基板(パッケージ基板)46に組み込んでも構わない。或いは、図1に示した制御演算回路73aや距離演算回路71等を、タイミングジェネレータ(TG)51、駆動部52、制御部53のいずれかの一部として組み込んでも構わない。この場合、図1に示した発光部91を図31に示したストロボ装置62が兼ねることが可能である。
更に、制御演算回路73aの一部の構成又はすべての構成をフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)のようなプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)で構成してもよい。PLDによって、制御演算回路73aの一部又はすべてを構成した場合は、データ記憶装置72は、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等のメモリ要素として構成することができる。更に、制御演算回路73aは、CPUコア風のアレイとPLD風のプログラム可能なコアを同じチップに搭載した構造でもよい。このCPUコア風のアレイは、予めPLD内部に搭載されたハードマクロCPUと、PLDの論理ブロックを用いて構成したソフトマクロCPUを含む。つまりPLDの内部においてソフトウェア処理とハードウェア処理を混在させた構成でもよい。
図2に示した第1の実施形態に係る測距装置の制御演算回路73aの動作の概略は図3に示すようなフローチャートの流れの手順で説明できる。図3のステップS11において、制御演算回路73aの時間設定論理回路731が光投影時間Toを最大値に設定する。引き続き、ステップS12において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを最大値に設定する。設定された光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcを、時間設定値出力制御回路733が図1に示したインターフェイス75を介して駆動回路94に制御信号として出力する。制御演算回路73aの時間設定値出力制御回路733から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて、発光部91から、パルス発光がなされる。パルス発光は、例えば、近赤外LD(レーザダイオード)や近赤外LEDが用いられる。対象物92を反射したパルス光が、レンズ93やBPF(バンドパスフィルタ)などを通して図1に示した画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に照射される。
図3のステップS13において、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijの動作は、駆動回路94によって制御される。即ち、ステップS13では、各画素Xijにおいて受光により生成された電子(光電子)は、制御演算回路73aの時間設定論理回路731から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて動作し、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)からの出力信号が出力バッファ97.98を介して距離演算回路71に送られる。この際、図5~図8に示すように、転送信号TX1、TX2がオフセット時間を挟んだ異なるタイミングで、それぞれ印加される。ステップS13では距離演算回路71が、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijから出力された信号に応じて、距離を算出する演算を行い、距離測定をする。ステップS13では、距離演算回路71が更に、距離算出の演算結果と付帯情報を、制御演算回路73aの時間設定論理回路731に送る。ここで、付帯情報とは、例えば、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bから得られた出力データや、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bの出力値の差分データである。
図3のステップS14において、制御演算回路73aの設定値判定回路732が、距離演算回路71から出力された距離算出の演算結果と付帯情報に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。S14において、設定値判定回路732がNGと判断した場合は、制御演算回路73aの時間設定論理回路731へデータを渡す。時間設定論理回路731は、図3のステップS15において、光投影時間Toを短縮する。引き続き、ステップS16において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを短縮する。光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcが短縮され、駆動方法が変更された制御信号が、図1に示した駆動回路94を介し、発光部91及び画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に渡され、図3のステップS13において距離が測定される。以下ステップS13、ステップS14、ステップS15、ステップS16を経てステップS13に戻るループ処理が、ステップS14で設定値判定回路732がOKと判断するまで、繰り返される。そして、設定値判定回路732がOKと判断すれば、ステップS17において制御演算回路73aの距離画像出力制御回路734が出力ユニット74へデータを渡し、出力ユニット74から出力信号が出力される。
平面図の図示を省略しているが、第1の実施形態に係る測距装置のそれぞれの画素X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm内の光電変換転送部81として機能する部分の断面構造の一例を、図4に示す。図4の中央に示す受光領域に、光電変換素子(測距素子)が形成され、受光領域の両側に、受光領域で光電変換された信号電荷を交互に振り分け転送する第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bが配置されている。図1の発光部91から繰り返しパルス信号として投影(照射)された光は、対象物92で反射され、図4の受光領域の周辺を覆う遮光膜41の開口部42を介して受光領域に入射する。即ち、光電変換素子の受光領域は、遮光膜41の開口部42を介して入射したパルス光を光信号として受光し、この光信号を信号電荷に変換する。
更に、第1転送ゲート電極16aにより転送された信号電荷を蓄積する第1電荷蓄積領域23aが図4の右側に浮遊ドレイン領域として配置されている。同様に、第2転送ゲート電極16bにより転送された信号電荷を蓄積する第2電荷蓄積領域23bが図4の左側に浮遊ドレイン領域として配置されている。図4の右側には、更に、第1電荷蓄積領域23aに隣接し、第1リセットゲート電極13aと、この第1リセットゲート電極13aを介して、第1電荷蓄積領域23aに対向する第1リセットドレイン領域24aが配置されている。
一方、図4の左側には第2電荷蓄積領域23bに隣接し、第2リセットゲート電極13bと、この第2リセットゲート電極13bを介して、第2電荷蓄積領域23bに対向する第2リセットドレイン領域24bが更に配置されている。第1電荷蓄積領域23a、第1リセットゲート電極13a及び第1リセットドレイン領域24aとで第1のリセットトランジスタとなるMOSトランジスタ(MOSFET)が形成され、第2電荷蓄積領域23b、第2リセットゲート電極13b及び第2リセットドレイン領域24bとで第2のリセットトランジスタとなるMOSトランジスタが形成されている。それぞれの第1リセットゲート電極13a及び第2リセットゲート電極13bに対し、制御信号Rをすべてハイ(H)レベルにして、第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bに蓄積された信号電荷を第1リセットドレイン領域24a及び第2リセットドレイン領域24bにそれぞれ吐き出し、第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bをリセットする。
図4に示されるように、第1の実施形態に係る画素(測距素子)においては、光電変換素子としての画素が生成した信号電荷が、互いに反対方向(左右方向)に転送されるように、平面パターン上、第1転送ゲート電極と第2転送ゲート電極のそれぞれの中心線(図示省略)が、同一直線上に配置されている。そして、信号電荷の転送方向に直交する方向(図4において、紙面の表裏方向)に測った第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bのそれぞれの幅が、直交する方向に測った受光領域の幅よりも狭くすることにより、受光領域の直下の受光部の面積を大きくしても、第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bによる信号電荷の完全転送が行えるようにしている。
図4に示す画素の断面構造では、第1導電型(p型)のシリコン(Si)からなる半導体基板19と、半導体基板19の上に配置されたp型の半導体層(エピタキシャル成長層)からなる機能基体層20と、機能基体層20の上に配置された第2導電型(n型)の表面埋込領域22と、表面埋込領域22の表面に接して設けられた、p+型のピニング層29が例示されている。中央部の受光領域に含まれる位置のゲート絶縁膜33と、表面埋込領域22と、機能基体層20と半導体基板19とで光電変換素子の物理的骨格構造の要部を構成している。受光領域に位置するp型の機能基体層20の一部が、光電変換素子の信号電荷生成領域として機能している。信号電荷生成領域で生成されたキャリア(電子)は、信号電荷生成領域の直上の表面埋込領域22の一部に注入される。図4に示した表面埋込領域22とピニング層29からなる受光部形成領域(29,22)が、図1に示した光電変換転送部81の主要部の中央に位置している。
ゲート絶縁膜33は、受光領域の直下から左右の第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bの下まで延伸し、このゲート絶縁膜33の下には、受光領域の直下から第1転送ゲート電極16aの左側端部及び第2転送ゲート電極16bの右側端部の下まで左右に延伸するように表面埋込領域22が配置されている。即ち、受光領域に位置する表面埋込領域22の右側に隣接した機能基体層20の表面側の領域が第1転送チャネルとして機能している。一方、受光領域に位置する表面埋込領域22の左側に隣接した機能基体層20の表面側の領域が第2転送チャネルとして機能している。そして、第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bは、第1及び第2転送チャネルの電位を、この第1及び第2転送チャネルの上部にそれぞれ形成されたゲート絶縁膜33を介して静電的に制御する。この静電的な制御によって、信号電荷が、第1及び第2転送チャネルを介してn型の第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bに、交互に、それぞれ転送される。第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bは、それぞれ、表面埋込領域22より高不純物密度の半導体領域である。
第1電荷蓄積領域23aには、図4に示すように、ソースフォロア型の読出増幅回路82を構成する信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)MA1のゲート電極が接続され、第2電荷蓄積領域23bには、読出増幅回路82の信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)MA2のゲート電極が接続されている。信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)MA1のドレイン電極は電源VDDに接続され、ソース電極は画素選択用のスイッチングトランジスタMS1のドレイン電極に接続されている。画素選択用のスイッチングトランジスタMS1のソース電極は、第1の垂直出力信号線(右側垂直出力信号線)B12に接続され、ゲート電極には水平ラインの選択用制御信号Sが垂直シフトレジスタ及び垂直走査回路95から与えられる。
信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)MA2のドレイン電極は電源VDDに接続され、ソース電極は画素選択用のスイッチングトランジスタMS2のドレイン電極に接続されている。画素選択用のスイッチングトランジスタMS2のソース電極は、第2の垂直出力信号線(左側垂直出力信号線)B11に接続され、ゲート電極には水平ラインの選択用制御信号Sが垂直シフトレジスタ及び垂直走査回路95から与えられる。選択用制御信号Sをハイレベルにすることにより、スイッチングトランジスタMS1,MS2が導通し、信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)MA1,MA2で増幅された第1電荷蓄積領域23a,第2電荷蓄積領域23bの電位に対応する電位に第1の垂直出力信号線B12及び第2の垂直出力信号線B11がなる。
信号電荷生成領域となる機能基体層20の不純物密度は、半導体基板19の不純物密度よりも低い。即ち、半導体基板19は、不純物密度4×1017cm-3程度以上、1×1021cm-3程度以下、信号電荷生成領域となる機能基体層20が不純物密度6×1011cm-3程度以上、2×1015cm-3程度以下程度が好ましい。
特に、半導体基板19を不純物密度4×1017cm-3程度以上、1×1021cm-3程度以下のシリコン基板、機能基体層20を不純物密度6×1011cm-3程度以上、2×1015cm-3程度以下のシリコンエピタキシャル成長層とすれば、通常のCMOSプロセスが採用できる。ゲート絶縁膜33の周辺の領域には、素子分離に用いられるシリコン局部酸化(LOCOS)法やシャロウトレンチ分離(STI)法等により形成されたフィールド酸化膜31が利用可能である。工業的な意味からは、不純物密度8×1017cm-3程度以上、1×1020cm-3程度以下の半導体基板19、不純物密度6×1013cm-3程度以上、1.5×1015cm-3程度以下のシリコンエピタキシャル成長層とすれば、市場での入手も容易で好ましい。シリコンエピタキシャル成長層の厚さは4~20μm程度、発光部91が可視光を用いる場合は、6~10μm程度とすればよい。
一方、表面埋込領域22は、不純物密度5×1014cm-3程度以上、5×1016cm-3程度以下、代表的には、例えば1×1015cm-3程度の不純物密度の値が採用可能であり、その厚さは0.1~3μm程度、好ましくは0.5~1.5μm程度とすることが可能である。
ゲート絶縁膜33を熱酸化膜で形成する場合は、熱酸化膜の厚さは、1nm程度以上、30nm程度以下、好ましくは3nm程度以上、15nm程度以下とすればよい。ゲート絶縁膜33を熱酸化膜以外の誘電体膜とする場合は、熱酸化膜の比誘電率εr(1MHzでεr=3.8)で換算した等価な厚さとすればよい。例えば、比誘電率εr=4.4であるCVD酸化膜を用いるのであれば上記厚さを4.4/3.8=1.16倍した厚さを、比誘電率εr=7であるシリコン窒化物(Si3N4)膜を用いるのであれば上記厚さを7/3.8=1.84倍した厚さを採用すればよい。但し、標準的なCMOS技術で形成される酸化膜(SiO2膜)を用いるのが好ましい。
ゲート絶縁膜33上に形成した第1転送ゲート電極16aには、図5~図8の第1転送信号TX1を、第2転送ゲート電極16bには、図5~図8の第2転送信号TX2を与える。例えば第1転送信号TX1=3.3V(VDD)を第1転送ゲート電極16aに,第2転送信号TX2=0V(GND)を第2転送ゲート電極16bに与えたとき、表面埋込領域22中に形成される電位分布によって、光信号により生成された電子は、右側の電荷蓄積領域23aに転送される。逆に、第1転送信号TX1=0V(GND)を第1転送ゲート電極16aに,第2転送信号TX2=3.3V(VDD)を第2転送ゲート電極16bに与えると、光信号により生成された電子は、左側の電荷蓄積領域23bに転送される。
図5(a)の上段は第1転送ゲート電極16aに印加される第1転送信号TX1を、図5(a)の下段は第2転送ゲート電極16bに印加される第2転送信号TX2の理想的な波形を示す。第1の実施形態に係る測距用光電変換素子による推定距離Lは、式(1)で示されるように、右側の第1転送電極TX1を通り電荷蓄積領域23aに転送され蓄積された信号電荷Q1と、左側の第2転送電極TX2を通り電荷蓄積領域23bに転送され、蓄積された信号電荷Q2との配分比から与えられる:
L=(cTo/2)(Q2/(Q1+Q2)) ……(1)
ここで、cは光速、Toは、パルス光の光投影時間(パルス幅)である。
推定距離Lを測定するために必要な電荷蓄積時間Taは、第1転送信号TX1,第2転送信号TX2がハイレベルの時間ではなく、図5(a)の上段に示した前の第1転送信号TX1がローレベルに遷移した時刻tiから、図5(a)の下段に示した次の第2転送信号TX2がローレベルに遷移した時刻ti+1の時間で定義される。第1転送信号TX1,第2転送信号TX2がオン(ハイレベル)の電荷転送時間Tonは、第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bを信号電荷が通り過ぎるだけの時間以上あればよい。よって、第1転送ゲート電極16aに印加される第1転送信号TX1及び第2転送ゲート電極16bに印加される第2転送信号TX2がハイレベルとなる電荷転送時間Tonは、繰り返し周期時間Tcに関わらず、同じ時間あればよい。図5(a)の上段と下段を比較すれば分かるように、第1転送信号TX1と第2転送信号TX2の間にオフセット時間が存在するように、互いに異なるタイミングで、第1転送ゲート電極16aと第2転送ゲート電極16bにそれぞれ印加される。
図5(b)の上段は第1転送ゲート電極16aに印加される典型的な第1転送信号TX1のCR遅延がある実波形を、図5(b)の下段は第2転送ゲート電極16bに印加される典型的な第2転送信号TX2のCR遅延のある実波形を示す。図5(b)の第1転送信号TX1,第2転送信号TX2の遅れは、駆動回路94の能力と画素Xij及び画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の配線等の寄生容量C及び寄生抵抗Rで決まるため、毎回同じように遅れる。従って、これらのCR遅延が生じても、図5(b)の下段に示した前の第1転送信号TX1がCR遅延を経てローレベルに遷移した時刻ti+Δd1から、図5(b)の下段に示した次の第2転送信号TX2がCR遅延を経てローレベルに遷移した時刻ti+1+Δd1の時間で、電荷蓄積時間Taが定義される。図5(b)の波形によれば、典型的なCR遅延の遅れだけでなく、システマティックに毎回遅れる時間、即ち、第1転送信号TX1,第2転送信号TX2のCR遅延を経たローレベルへの遷移が確定するまでの時間だけ、第1転送信号TX1,第2転送信号TX2がともにオフとなるオフセット時間を設ければよいことが分かる。図5(b)から分かるように、第1転送信号TX1と第2転送信号TX2の間に、CR遅延が生じても、オフセット時間が存在するように、互いに異なるタイミングで、第1転送ゲート電極16aと第2転送ゲート電極16bにそれぞれ印加される。
図5(c)の上段は第1転送ゲート電極16aに印加される典型的な第1転送信号TX1のリンギングがある実波形を、図5(c)の下段は第2転送ゲート電極16bに印加される典型的な第2転送信号TX2のリンギングのある実波形を示す。これらのリンギングが生じても、図5(c)の上段に示した前の第1転送信号TX1がリンギングを経てローレベルに遷移した時刻ti+Δd2から、図5(c)の下段に示した次の第2転送信号TX2がリンギングを経てローレベルに遷移した時刻ti+1+Δd2の時間で、電荷蓄積時間Taが定義される。図5(c)の波形によれば、システマティックに第1転送信号TX1,第2転送信号TX2のリンギングを経たローレベルへの遷移が確定するまでの時間だけ、第1転送信号TX1,第2転送信号TX2がともにオフとなるオフセット時間を設ければよいことが分かる。図5(a)~(c)に示したように、第1の実施形態に係る測距装置によれば、第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bにそれぞれ印加される第1転送信号TX1と第2転送信号TX2との間にオフセット時間が設けられ、早い電圧スイッチング(オン/オフ切り替え)が緩和されるため、駆動回路94の動作マージンが広くなり、3D撮像装置の設計及び製造が容易になる。
以下においては、第1の実施形態に係る測距装置の調整動作を図6~図8を用いて説明する。図6は、図3に示したフローチャートの流れとなるプログラムの命令に従って、駆動方法が変化する駆動タイミング図を例示した図である。まず、図3に示したフローチャートのステップS11において図2の制御演算回路73aの時間設定論理回路731が光投影時間Toを最大値に設定する。引き続き、ステップS12において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを最大値に設定する。設定された光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcを、時間設定値出力制御回路733が図1に示したインターフェイス75を介して駆動回路94に制御信号として出力し、発光部91からパルス発光させて、第1の実施形態に係る測距装置を駆動させる。
図6に示した第1の実施形態に係る測距装置の調整時の動作を説明する駆動タイミング図は、図1に示した対象物92までの距離が近い場合であるため、受信光の遅延時間Tdが非常に小さい。図3のステップS13において、第1の実施形態に係る測距装置の駆動により、第1転送ゲート電極16a,第2転送ゲート電極16bの直下の転送チャネルを通る信号電荷の違いにより、距離演算回路71が式(1)を用いて距離を算出する演算を実行する。距離演算回路71の距離算出の演算結果は付帯情報と共に一旦、データ記憶装置72に格納される。ここで、付帯情報とは、例えば、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bから得られた出力データや、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bの出力値の差分データである。
図3のステップS14において、制御演算回路73aの設定値判定回路732はデータ記憶装置72から距離演算回路71の距離算出の演算結果、付帯情報をしきい値とともに読み出す。設定値判定回路732は、距離演算回路71から出力された距離算出の演算結果と付帯情報に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。図6(a)の条件では、駆動タイミング図より分かるように、距離演算はできるが、第1転送ゲート電極16aを通して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量の割合よりも第2転送ゲート電極16bを通して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合が非常に小さく、距離精度が低くなる。この信号電荷量の割合でしきい値を決定し、データ記憶装置72に格納しておけば、ステップS14において、図6(a)の条件の駆動は、適切な駆動条件ではないと判定される。或いは、例えば、演算された距離に対して、各々の駆動条件で、しきい値が決められている場合は、それらをデータ記憶装置72に格納しておけば、設定値判定回路732はデータ記憶装置72からそれらのしきい値を読み出して、光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcが適切であるかを判断してもよい。
ステップS14において、設定値判定回路732が、図6(a)の条件ではNG、即ち、図3に示したフローチャートで諾(Yes)と判定されると、データは出力ユニット74に出力されない。図3に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、図3のステップS15において、光投影時間To=Tomaxを短縮する。引き続き、ステップS16において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tc=Tcmaxを短縮する。光投影時間To=Tomax及び繰り返し周期時間Tc=Tcmaxが短縮され、駆動方法が変更された制御信号が、図1に示した駆動回路94を介し、発光部91及び画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に渡され、図3のステップS13において、図6(b)の条件で再び距離が測定される。
図6(b)の条件、繰り返し周期時間Tc(i)の半分が、光投影時間To(i)であり、電荷蓄積時間Ta(i)であるため、繰り返し周期時間Tc(i)に同期して変化する。一方、電荷転送時間Tonは、繰り返し周期時間Tc(i)とは同期せず、変化させない。図6(b)の条件でも、距離演算はできるが、第1転送ゲート電極16aの直下を通過して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量の割合よりも第2転送ゲート電極16bの直下を通過して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合が依然として小さく、距離精度が低くなる。このため、図3のステップS14では設定値判定回路732が、図6(b)の条件での駆動も、適切な駆動条件ではないと判定する。図6(b)の条件ではNG、即ち、図3に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、出力ユニット74にデータは出力されない。
ステップS14において、設定値判定回路732が、図6(b)の条件ではNGと判定された場合は、再び制御演算回路73aにデータが送られる。制御演算回路73aでは、ステップS15及びステップS16において、図6(c)の条件に示すように、更に光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcを短くする駆動に変更させ、その後、再びステップS13において距離を算出する演算を行い、距離測定をする。図6(c)の条件では、繰り返し周期時間Tc(i+1)の半分が、光投影時間To(i+1)であり、電荷蓄積時間Ta(i+1)であるため、繰り返し周期時間Tc(i+1)に同期して変化する。一方、電荷転送時間Tonは、繰り返し周期時間Tcとは同期せず、変化させない。又、ここでは、図6(c)の条件の条件が、設定できる最小の繰り返し周期時間Tcである。
図6(c)の条件では、駆動タイミング図から分かるように、距離演算ができ、第1転送ゲート電極16aの直下を通過して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量の割合と、第2転送ゲート電極16bの直下を通過して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合の違いが小さいため、距離精度が高くなる。このため、図3のステップS14において、設定値判定回路732は、図6(c)の条件の駆動は適切と判断し、距離画像出力制御回路734が距離算出の演算結果を出力ユニット74に出力する。このとき、付帯情報も同時に出力ユニット74に出力してもよい。
図7は、図3に示したフローチャートの流れとなるプログラムの命令に従って、駆動方法が変化する駆動タイミング図を例示した図である。まず、図3に示したフローチャートのステップS11において図2の制御演算回路73aの時間設定論理回路731が光投影時間Toを最大値に設定する。引き続き、ステップS12において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを最大値に設定する。設定された光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcを、時間設定値出力制御回路733が図1に示したインターフェイス75を介して駆動回路94に制御信号として出力し、発光部91からパルス発光させて、第1の実施形態に係る測距装置を駆動させる。
図7に示した第1の実施形態に係る測距装置の調整時の動作を説明する駆動タイミング図は、図1に示した対象物92までの距離が図6よりも遠い(中距離の)場合であるため、受信光の遅延時間Tdが、図6よりもやや大きい。図3のステップS13において、第1の実施形態に係る測距装置の駆動により、第1転送ゲート電極16a,第2転送ゲート電極16bの直下の転送チャネルを通る信号電荷の違いにより、距離演算回路71が式(1)を用いて距離を算出する演算を実行する。距離演算回路71の距離算出の演算結果は付帯情報と共に一旦、データ記憶装置72に格納される。ここで、付帯情報とは、例えば、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bから得られた出力データや、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bの出力値の差分データである。
図3のステップS14において、制御演算回路73aの設定値判定回路732はデータ記憶装置72から距離演算回路71の距離算出の演算結果、付帯情報をしきい値とともに読み出す。設定値判定回路732は、距離演算回路71から出力された距離算出の演算結果と付帯情報に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。図7(a)の条件では、駆動タイミング図より分かるように、距離演算はできるが、第1転送ゲート電極16aを通して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量の割合よりも第2転送ゲート電極16bを通して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合が比較的小さく、距離精度が低くなる。この信号電荷量の割合でしきい値を決定し、データ記憶装置72に格納しておけば、ステップS14において、図7(a)の条件の駆動は、適切な駆動条件ではないと判定される。或いは、例えば、演算された距離に対して、各々の駆動条件で、しきい値が決められている場合は、それらをデータ記憶装置72に格納しておけば、設定値判定回路732はデータ記憶装置72からそれらのしきい値を読み出して、光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcが適切であるかを判断してもよい。
ステップS14において、設定値判定回路732が、図7(a)の条件ではNG、即ち、図3に示したフローチャートで諾(Yes)と判定されると、データは出力ユニット74に出力されない。図3に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、図3のステップS15において、光投影時間To=Tomaxを短縮する。引き続き、ステップS16において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tc=Tcmaxを短縮する。光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcが短縮され、駆動方法が変更された制御信号が、図1に示した駆動回路94を介し、発光部91及び画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に渡され、図3のステップS13において、図7(b)の条件で再び距離が測定される。
図7(b)の条件、繰り返し周期時間Tc(j)の半分が、光投影時間To(j)であり、電荷蓄積時間Ta(j)であるため、繰り返し周期時間Tcに同期して変化する。一方、電荷転送時間Tonは、繰り返し周期時間Tc(j)とは同期せず、変化させない。図7(b)の条件の条件が、設定できる最小の繰り返し周期時間Tc(j)である。
図7(b)の条件の条件では、駆動タイミング図から分かるように、距離演算ができ、第1転送ゲート電極16aの直下を通過して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量、第2転送ゲート電極16bの直下を通過して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合の違いが小さいため、距離精度が高くなる。このため、図3のステップS14において、設定値判定回路732は、図7(b)の条件の駆動は適切と判断し、距離画像出力制御回路734が距離算出の演算結果を出力ユニット74に出力する。このとき、付帯情報も同時に出力ユニット74に出力してもよい。
図8は、図3に示したフローチャートの流れとなるプログラムの命令に従って、駆動方法が変化する駆動タイミング図を例示した図である。まず、図3に示したフローチャートのステップS11において図2の制御演算回路73aの時間設定論理回路731が光投影時間Toを最大値Tomaxに設定する。引き続き、ステップS12において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを最大値Tcmaxに設定する。設定された光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcを、時間設定値出力制御回路733が図1に示したインターフェイス75を介して駆動回路94に制御信号として出力し、発光部91からパルス発光させて、第1の実施形態に係る測距装置を駆動させる。
図8に示した第1の実施形態に係る測距装置の調整時の動作を説明する駆動タイミング図は、図1に示した対象物92までの距離が図7よりも遠い(長距離の)場合であるため、受信光の遅延時間Tdが、図7よりも大きい。図3のステップS13において、第1の実施形態に係る測距装置の駆動により、第1転送ゲート電極16a,第2転送ゲート電極16bの直下の転送チャネルを通る信号電荷の違いにより、距離演算回路71が式(1)を用いて距離を算出する演算を実行する。距離演算回路71の距離算出の演算結果は付帯情報と共に一旦、データ記憶装置72に格納される。ここで、付帯情報とは、例えば、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bから得られた出力データや、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bの出力値の差分データである。
図3のステップS14において、制御演算回路73aの設定値判定回路732はデータ記憶装置72から距離演算回路71の距離算出の演算結果、付帯情報をしきい値とともに読み出す。設定値判定回路732は、距離演算回路71から出力された距離算出の演算結果と付帯情報に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。
図8の条件では、駆動タイミング図から分かるように、距離演算ができ、第1転送ゲート電極16aの直下を通過して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量、第2転送ゲート電極16bの直下を通過して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合の違いが小さいため、距離精度が高くなる。このため、図3のステップS14において、設定値判定回路732は、図8の条件の駆動は適切と判断し、距離画像出力制御回路734が距離算出の演算結果を出力ユニット74に出力する。このとき、付帯情報も同時に出力ユニット74に出力してもよい。
以上のとおり、本発明の第1の実施形態に係る測距装置によれば、図3に示すフローチャートの手順に従い、繰り返し周期時間Tcを変更させたときに、オン時間Tonは、繰り返し周期時間Tcに関わらず変化させない駆動調整方法により、第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bによる正確な電荷振り分けを実現することができる。更に、本発明の第1の実施形態に係る測距装置によれば、駆動回路94の動作マージンをひろげることができ、ロックインピクセル型の3D撮像装置を高性能化ができる。本発明の第1の実施形態に係る測距装置によれば、電荷振り分けを実行する第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bでの、早い電圧スイッチング(オン/オフ切り替え)が緩和されるため、駆動回路94の動作マージンが広くなり、3D撮像装置の設計及び製造が容易になる。このため、例えば、3D撮像装置を構成している画素のグローバル配線を細くし、各画素の開口率を上げることができる。更に、例えば、駆動回路94のトランジスタの構造を微細にすることでチップ面積の縮小を図ることができる。
(第1の実施形態の変形例)
本発明の「振分ゲート構造」は、図4に示したようなMOS型の第1転送ゲート電極16aや第2転送ゲート電極16bに限定されるものではない。本発明の「振分ゲート構造」は図9に示すような横方向電界制御ゲート(LEFM)の構造でも構わない。断面図の図示を省略しているが、本発明の第1の実施形態の変形例に係る測距装置の各画素は、図4に示した断面構造と同様に、p型の半導体からなる機能基体層20、機能基体層20の上部の一部に設けられたn型の表面埋込領域22、及び表面埋込領域22の表面に接して設けられた、p+型のピニング層29を含む受光部形成領域(29,22)と、受光部形成領域(29,22)上に設けられたゲート絶縁膜33と、受光部形成領域(29,22)の中央部を受光領域としている。そして、図9の平面図に示すように、受光領域を囲むように受光領域の中心位置に関して対称となる4つの位置のそれぞれに互いに離間して設けられた、機能基体層20よりも高不純物密度でn+型の第1の電荷蓄積領域23a、第2の電荷蓄積領域23b、第3の電荷蓄積領域23c及び第4の電荷蓄積領域23dを備える。そして、更に受光領域を囲む位置において、ゲート絶縁膜33上に受光領域の中心位置から第1の電荷蓄積領域23a、第2の電荷蓄積領域23b、第3の電荷蓄積領域23c及び第4の電荷蓄積領域23dのそれぞれに向かって対角線方向に伸びる電荷移動経路の両側に対をなして配置された第1の電界制御電極対(31a,31b)、第2の電界制御電極対(32a,32b)、第3の電界制御電極対(33a,33b)及び第4の電界制御電極対(34a,34b)を備える。
各画素を構成している光電変換素子の第1の電界制御電極対(31a,31b)は、フック状(鉤型)の第1静電誘導電極31aと、フック状の第2静電誘導電極31bとを対角線方向に伸びる電荷移動経路を、互いに島状に挟んで互いに対峙させた電極ペアである。第1静電誘導電極31aに所定の駆動電圧を印加した状態においては、左上に向かう対角線方向に伸びる電荷移動経路の信号電荷に対する電位障壁の高さが低下し、電荷移動経路の導通状態を補助する横方向電界制御によるポテンシャルプロファイルが実現できる。第2静電誘導電極31bに所定の駆動電圧を印加した状態においても、対角線方向に伸びる電荷移動経路の信号電荷に対する電位障壁の高さが低下し、電荷移動経路の導通状態を補助するポテンシャルプロファイルが実現できる。
第2の電界制御電極対(32a,32b)は、フック状の第3静電誘導電極32aと、フック状の第4静電誘導電極32bとを左下に向かう対角線方向に伸びる電荷移動経路を、互いに島状に挟んで互いに対峙させた電極ペアである。第3の電界制御電極対(33a,33b)は、フック状の第5静電誘導電極33aと、フック状の第6静電誘導電極33bとを右上方向に向かう対角線方向に伸びる電荷移動経路を、互いに島状に挟んで互いに対峙させた電極ペアである。第4の電界制御電極対(34a,34b)は、フック状の第7静電誘導電極34aと、フック状の第8静電誘導電極34bとを右下に向かう対角線方向に伸びる電荷移動経路を、互いに島状に挟んで互いに対峙させた電極ペアである。
図9の平面図から分かるように、第1の電荷蓄積領域23a、第2の電荷蓄積領域23b、第3の電荷蓄積領域23c及び第4の電荷蓄積領域23dの配置トポロジは、受光領域の中心位置に関して4回回転対称である。図9に示すように、第1の実施形態の変形例に係る測距装置の画素は、更に、受光領域を囲む周辺部に、機能基体層20よりも高不純物密度でn型の電荷排出補助領域27a,27b,27c,27dが、互いに離間して設けられている。
第1静電誘導電極31aと第2静電誘導電極31bは、第1の電荷蓄積領域23aに向かう電荷移動経路の両側に、鏡像関係で対向配置されている。第3静電誘導電極32aと第4静電誘導電極32bは、第2の電荷蓄積領域23bに向かう電荷移動経路の両側に、鏡像関係で対向配置されている。第5静電誘導電極33aと第6静電誘導電極33bは、第3の電荷蓄積領域23cに向かう電荷移動経路の両側に、鏡像関係で対向配置されている。第7静電誘導電極34aと第8静電誘導電極34bは、第4の電荷蓄積領域23dに向かう電荷移動経路の両側に、鏡像関係で対向配置されている。
第1の実施形態の変形例に係る測距装置の画素は、図10(a)~(c)に示すように、第1の電界制御電極対(31a,31b)、第2の電界制御電極対(32a,32b)、第3の電界制御電極対(33a,33b)及び第4の電界制御電極対(34a,34b)に対し第1転送信号G1、第2転送信号G2、第3転送信号G3及び排出信号GDを電界制御パルスとして、周期的に印加し、表面埋込領域22の空乏化電位を交互に変化させることにより、電荷移動経路のいずれかに、電荷を輸送する方向に向かう電位勾配を交互に形成して、表面埋込領域22中で発生した信号電荷の移動先を第1の電荷蓄積領域23a、第2の電荷蓄積領域23b、第3の電荷蓄積領域23c及び第4の電荷蓄積領域23dのいずれかに順次設定するように制御する。又、図9に示すように周辺部に電荷排出補助領域27a,27b,27c,27dを設けてあるので、電荷移動経路を設定する際に用いる第1電位レベルの駆動電圧G1,G2,G3,GDより大きな第2電位レベルの電荷排出パルスを第1の電界制御電極対(31a,31b)に印加することにより、第1の電荷排出補助領域27a及び第4の電荷排出補助領域27dに、背景光等に起因した測距に対するノイズ電流成分となる電荷を排出することができる。
同様に、第2電位レベルの電荷排出パルスを第2の電界制御電極対(32a,32b)に印加することにより、第2の電荷排出補助領域27b及び第1の電荷排出補助領域27aに測距に対するノイズ電流成分となる電荷を排出することができ、第2電位レベルの電荷排出パルスを第3の電界制御電極対(33a,33b)に印加することにより、第3の電荷排出補助領域27c及び第4の電荷排出補助領域27dに測距に対するノイズ電流成分となる電荷を排出することができ、第2電位レベルの電荷排出パルスを第4の電界制御電極対(34a,34b)に印加することにより、第2の電荷排出補助領域27b及び第3の電荷排出補助領域27cに測距に対するノイズ電流成分となる電荷を排出することができる。例えば駆動電圧G1,G2,G3,GDの電圧を2.0Vとした場合に、電荷排出パルスとしての第2電位レベルの電圧を5V程度に設定すればよい。
第1の実施形態の変形例に係る測距装置の画素では、受光領域の中心で互いにクロスするX型を構成するように電荷移動経路が設定される。それぞれの電荷移動経路を横断する方向に、静電誘導効果で電界制御を行う第1の電界制御電極対(31a,31b)及び第2の電界制御電極対(32a,32b),第3の電界制御電極対(33a,33b),第4の電界制御電極対(34a,34b)によって、受光領域で発生した光電子を、X型を構成する電荷移動経路に沿って、X字の4つの方向に電界制御により高速に移動させて、電荷変調を行うことができる。
第1の実施形態の変形例に係る測距装置の画素において、受光領域で発生した電子を、X字をなす電荷移動経路に沿って、図9の左上方向に移動させ、第1の電界制御電極対(31a,31b)の間を通過させる場合は、第2の電界制御電極対(32a,32b)、第3の電界制御電極対(33a,33b)及び第4の電界制御電極対(34a,34b)を、それぞれゼロバイアス(接地電位GND)として、第1の電界制御電極対(31a,31b)に駆動電圧G1=2.0Vの第1電界制御パルスG1を与えれば、電荷蓄積領域23dから第1の電荷蓄積領域23aに向かう左上がりの対角方向に沿って電位勾配が形成される。逆に、受光領域で発生した電子を、X字をなす電荷移動経路沿って、図9の右下方向に移動させ、第4の電界制御電極対(34a,34b)の間を通過させる場合は、第1の電界制御電極対(31a,31b)、第2の電界制御電極対(32a,32b)及び第3の電界制御電極対(33a,33b)をゼロバイアス(接地電位GND)として、第4の電界制御電極対(34a,34b)に駆動電圧GD=2.0Vの第4電界制御パルスGDを与えれば右下方向に向かう電位勾配が形成される。
図10(a)~(c)は、第1の実施形態の変形例に係る測距装置の調整時の動作を説明する駆動タイミング図である。第1の電界制御電極対(31a,31b)に与える駆動パルスG1、第2の電界制御電極対(32a,32b)に与える駆動パルスG2、及び第3の電界制御電極対(33a,33b)に与える駆動パルスG3のオン/オフ周期は同じであり、各々蓄積時間Taずつずらしてある。第4の電界制御電極対(34a,34b)に与える駆動パルスGDのオン時間はG1、G2、G3よりも長く、GDが、オン/オフする期間が繰り返し周期(Tc)である。図に示すとおり投影光は、G2蓄積時間に同期しており、G2及びG3蓄積時間の間に受信光が得られる領域で距離測定ができる。G1は、背景光や暗電流等を排除(オフセット)するための蓄積時間で有り、GDは、G3蓄積時間以降の受信光が距離測定のノイズにならないように光電子を排出するための排出ゲートである。
第1の実施形態の変形例に係る測距用光電変換素子による推定距離Lは、式(1)を変形して、式(2)(3)で示されるように、第1の電界制御電極対(31a,31b)G1を通り電荷蓄積領域23aに転送され蓄積された信号電荷Q1、第2の電界制御電極対(32a,32b)G2を通り電荷蓄積領域23bに転送され蓄積された信号電荷Q2と、第3の電界制御電極対(33a,33b)G3を通り電荷蓄積領域23cに転送され蓄積された信号電荷Q3との配分比から与えられる:
Q2’= Q2-Q1、Q3’= Q3-Q1 ……(2)
L=(cTo/2)(Q3’/(Q2’+ Q3’)) ……(3)
ここで、cは光速、Toは、パルス光の光投影時間(パルス幅)である。
図10(a)~(c)に示した駆動タイミング図は、図1に示した対象物92までの距離が近い場合であるため、受信光の遅延時間Tdが非常に小さい。図3のステップS13において、第1の実施形態の変形例に係る測距装置の駆動により、第1の電界制御電極対(31a,31b)及び第2の電界制御電極対(32a,32b),第3の電界制御電極対(33a,33b),第4の電界制御電極対(34a,34b)間に定義される電荷移動経路を通る信号電荷の違いにより、距離演算回路71が式(2、3)を用いて距離を算出する演算を実行する。距離演算回路71の距離算出の演算結果は付帯情報と共に一旦、データ記憶装置72に格納される。
図3のステップS14において、制御演算回路73aの設定値判定回路732はデータ記憶装置72から距離演算回路71の距離算出の演算結果、付帯情報をしきい値とともに読み出す。設定値判定回路732は、距離演算回路71から出力された距離算出の演算結果と付帯情報に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。図10(a)は、図10(c)に対して、4つの第1の電界制御電極対(31a,31b)及び第2の電界制御電極対(32a,32b),第3の電界制御電極対(33a,33b),第4の電界制御電極対(34a,34b)のオン/オフで決まる繰り返し周期時間Tcが図10(c)の4倍のときの駆動タイミング図である。
図10(a)の条件では、駆動タイミング図より分かるように、距離演算はできるが、第2の電界制御電極対(32a,32b)の間の電荷移動経路を経由して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合よりも第3の電界制御電極対(32c,32c)の間の電荷移動経路を経由して第3電荷蓄積領域23cに蓄積される信号電荷量の割合が非常に小さく、距離精度が低くなる。この信号電荷量の割合でしきい値を決定し、データ記憶装置72に格納しておけば、ステップS14において、図10(a)の条件の駆動は、適切な駆動条件ではないと判定される。或いは、例えば、演算された距離に対して、各々の駆動条件で、しきい値が決められている場合は、それらをデータ記憶装置72に格納しておけば、設定値判定回路732はデータ記憶装置72からそれらのしきい値を読み出して、光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcが適切であるかを判断してもよい。
ステップS14において、設定値判定回路732が、図10(a)の条件ではNG、即ち、図3に示したフローチャートで諾(Yes)と判定されると、データは出力ユニット74に出力されない。図3に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、図3のステップS15において、光投影時間To=Tomaxを短縮する。引き続き、ステップS16において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tc=Tcmaxを短縮する。光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcが短縮され、駆動方法が変更された制御信号が、図1に示した駆動回路94を介し、発光部91及び画素アレイ部に渡され、図3のステップS13において、図10(b)の条件で再び距離が測定される。図10(b)は、繰り返し周期時間Tc=Tc(ib)が図10(c)の2倍のときの駆動タイミング図である。繰り返し周期時間Tcが2倍、4倍は例示に過ぎない。繰り返し周期時間Tcは任意に変化させて駆動タイミング図が説明できるという意味での例示的倍数である。
図10(b)の条件、繰り返し周期時間Tc=Tc(ib)の半分が、光投影時間To=To(ib)であり、電荷蓄積時間Taであるため、繰り返し周期時間Tcに同期して変化する。一方、電荷転送時間Tonは、繰り返し周期時間Tcとは同期せず、変化させない。図10(b)の条件でも、距離演算はできるが、第2の電界制御電極対(32a,32b)の間を通過して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合よりも第3の電界制御電極対(33a,33b)の間を通過して第3電荷蓄積領域23cに蓄積される信号電荷量の割合が依然として小さく、距離精度が低くなる。このため、図3のステップS14では設定値判定回路732が、図10(b)の条件での駆動も、適切な駆動条件ではないと判定する。図10(b)の条件ではNG、即ち、図3に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、出力ユニット74にデータは出力されない。
ステップS14において、設定値判定回路732が、図10(b)の条件ではNGと判定された場合は、再び制御演算回路73aにデータが送られる。制御演算回路73aでは、ステップS15及びステップS16において、図10(c)の条件に示すように、更に光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcを短くする駆動に変更させ、その後、再びステップS13において距離を算出する演算を行い、距離測定をする。図10(c)の条件では、繰り返し周期時間Tc=Tc(ib+1)の半分が、光投影時間To=To(ib+1)であり、電荷蓄積時間Taであるため、繰り返し周期時間Tcに同期して変化する。一方、電荷転送時間Tonは、繰り返し周期時間Tcとは同期せず、変化させない。光パルス同期型ロックインピクセルでは、多くの場合、電荷蓄積時間Ta=光投影時間Toである。又、図10(c)は、この例において、動作させうる最短の繰り返し周期時間Tcである。
図10(c)の条件では、駆動タイミング図から分かるように、距離演算ができ、第2の電界制御電極対(32a,32b)の間の電荷移動経路を経由して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合と第3の電界制御電極対(32c,32c)の間の電荷移動経路を経由して第3電荷蓄積領域23cに蓄積される信号電荷量の割合の違いが小さいため、距離精度が高くなる。このため、図3のステップS14において、設定値判定回路732は、図10(c)の条件の駆動は適切と判断し、距離画像出力制御回路734が距離算出の演算結果を出力ユニット74に出力する。このとき、付帯情報も同時に出力ユニット74に出力してもよい。
図5(a)~(c)で説明したように、電荷蓄積時間Taは、駆動電圧G1,G2,G3のハイレベルの時間ではない。図10(a)~(c)に示す、前の駆動電圧GDがローレベルになった時刻から次の駆動電圧G1がローレベルになった時刻間の時間であり、前の駆動電圧G1がローレベルになった時刻から次の駆動電圧G2がローレベルになった時刻間の時間であり、或いは前の駆動電圧G2がローレベルになった時刻から次の駆動電圧G3がローレベルになった時刻間の時間である。このため、駆動電圧G1,G2,G3のハイレベルとなる電荷転送時間Tonは、第1の電界制御電極対(31a,31b)及び第2の電界制御電極対(32a,32b),第3の電界制御電極対(33a,33b)を信号電荷が通り過ぎるだけの時間以上あればよい。
このことから、第1の実施形態の変形例に係る測距装置の駆動調整方法においては、図10(a)~(c)に示す様に、駆動電圧G1,G2,G3のハイレベルとなる電荷転送時間Tonは、繰り返し周期時間Tcに関わらず、同じ時間あればよい。第1の実施形態の変形例に係る測距装置の駆動調整方法によれば、従来駆動よりも精度が上げられ、特に距離センサ(測距素子)ならば距離精度が上げられる。
以上のように、第1の実施形態の変形例に係る測距装置によれば、それぞれの画素(光電変換素子)が従来のMOS構造を用いてゲート電極直下のポテンシャルを縦方向(垂直方向)に制御する場合に比し、横方向(電荷移動経路の方向に直交する)の静電誘導効果による電界制御を用いているので、電荷移動経路の長い距離にわたって電界がほぼ一定になるようにして、信号電荷が対称性を維持しながら高速に輸送される。このため、第1の実施形態の変形例に係る測距装置をTOF型距離センサ(測距素子)に応用すると、より正確な距離測定が可能となる。更に、電荷移動経路の対称性が優れている結果製造工程におけるマスク合わせのずれの影響も受けにくくなる。又、従来の埋込フォトダイオードを用いた距離画像センサに比しても、当然ながら、電荷移動経路のトポロジを対称性の高いX型にして、しかも、電荷移動経路の長さを長くとることができ、更に実質的な受光領域の面積が大きくなるので、高感度化が図れる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る測距装置は、図1及び図2に示した第1の実施形態に係る測距装置の構成とほぼ同様である。しかし、第2の実施形態に係る測距装置の制御演算回路73aの動作の概略は、図11に示すようなフローチャートに従った動作になるので、図3に示した第1の実施形態に係る測距装置の調整動作とは異なる。図11のステップS21において、制御演算回路73aの時間設定論理回路731が光投影時間Toを最大値に設定する。引き続き、ステップS22において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを最大値に設定する。
更に、ステップS23において、時間設定論理回路731が電荷転送時間Tonを最大値に設定する。設定された光投影時間To、繰り返し周期時間Tc及び電荷転送時間Tonを、時間設定値出力制御回路733が図1に示したインターフェイス75を介して駆動回路94に制御信号として出力する。制御演算回路73aの時間設定値出力制御回路733から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて、発光部91から、パルス発光がなされる。パルス発光は、例えば、近赤外LD(レーザダイオード)や近赤外LEDが用いられる。対象物92を反射したパルス光が、レンズ93やBPF(バンドパスフィルタ)などを通して図1に示した画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に照射される。
図11のステップS24において、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijの動作は、駆動回路94によって制御される。即ち、ステップS24では、各画素Xijにおいて受光により生成された電子(光電子)が、制御演算回路73aの時間設定論理回路731から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて動作するように制御される。この結果、ステップS24において、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)からの出力信号が、出力バッファ97.98を介して距離演算回路71に送られる。ステップS24では距離演算回路71が、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijから出力された信号に応じて、距離を算出する演算を行い、距離測定をする。ステップS24では、距離演算回路71が更に距離算出の演算結果と付帯情報を制御演算回路73aの時間設定論理回路731に送る。ここで、付帯情報とは、例えば、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bから得られた出力データや、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bの出力値の差分データである。
図11のステップS25において、制御演算回路73aの設定値判定回路732が、距離演算回路71から出力された距離算出の演算結果と付帯情報に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。ステップS25において、設定値判定回路732がNGと判断した場合は、制御演算回路73aの時間設定論理回路731へデータを渡す。時間設定論理回路731は、図11のステップS26において、光投影時間Toを短縮する。引き続き、ステップS27において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを短縮する。更にステップS28において、時間設定論理回路731が電荷転送時間Tonを短縮する。
光投影時間To、繰り返し周期時間Tc及び電荷転送時間Tonが短縮され、駆動方法が変更された制御信号が、図1に示した駆動回路94を介し、発光部91及び画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に渡され、図11のステップS24において距離が測定される。以下ステップS24、ステップS25、ステップS26、ステップS27、ステップS28を経てステップS24に戻るループ処理が、ステップS25で設定値判定回路732がOKと判断するまで、繰り返される。そして、設定値判定回路732がOKと判断すれば、ステップS29において制御演算回路73aの距離画像出力制御回路734が出力ユニット74へデータを渡し、出力ユニット74から出力信号が出力される。
図12は、図11に示したフローチャートの流れとなるプログラムの命令に従って、第2の実施形態に係る測距装置の駆動方法が変化する駆動タイミング図を例示した図である。まず、図11に示したフローチャートのステップS21において図2の制御演算回路73aの時間設定論理回路731が光投影時間Toを最大値に設定する。引き続き、ステップS22において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを最大値に設定する。設定された光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcを、時間設定値出力制御回路733が図1に示したインターフェイス75を介して駆動回路94に制御信号として出力し、発光部91からパルス発光させて、第2の実施形態に係る測距装置を駆動させる。
図12に示した第2の実施形態に係る測距装置の調整時の動作を説明する駆動タイミング図は、図1に示した対象物92までの距離が近い場合であるため、受信光の遅延時間Tdが非常に小さい。図11のステップS24において、第2の実施形態に係る測距装置の駆動により、振分ゲート構造である第1転送ゲート電極16a,第2転送ゲート電極16bの直下の転送チャネルを通る信号電荷の違いにより、距離演算回路71が式(1)を用いて距離を算出する演算を実行する。距離演算回路71の距離算出の演算結果は付帯情報と共に一旦、データ記憶装置72に格納される。ここで、付帯情報とは、例えば、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bから得られた出力データや、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bの出力値の差分データである。
図11のステップS25において、制御演算回路73aの設定値判定回路732はデータ記憶装置72から距離演算回路71の距離算出の演算結果、付帯情報をしきい値とともに読み出す。設定値判定回路732は、距離演算回路71から出力された距離算出の演算結果と付帯情報に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。図12(a)の条件では、駆動タイミング図より分かるように、距離演算はできるが、第1転送ゲート電極16aを通して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量の割合よりも第2転送ゲート電極16bを通して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合が非常に小さく、距離精度が低くなる。
この信号電荷量の割合でしきい値を決定し、データ記憶装置72に格納しておけば、ステップS25において、図12(a)の条件の駆動は、適切な駆動条件ではないと判定される。或いは、例えば、演算された距離に対して、各々の駆動条件で、しきい値が決められている場合は、それらをデータ記憶装置72に格納しておけば、設定値判定回路732はデータ記憶装置72からそれらのしきい値を読み出して、光投影時間To、繰り返し周期時間Tc及び電荷転送時間Tonが適切であるかを判断してもよい。
ステップS25において、設定値判定回路732が、図12(a)の条件ではNG、即ち、図11に示したフローチャートで諾(Yes)と判定されると、データは出力ユニット74に出力されない。図11に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、図11のステップS26において、光投影時間Toを短縮する。引き続き、ステップS27において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tc=Tcmaxを短縮し、電荷転送時間Ton=Tonmaxを短縮する。光投影時間To=Tomax及び繰り返し周期時間Tc及び電荷転送時間Tonが短縮され、駆動方法が変更された制御信号が、図1に示した駆動回路94を介し、発光部91及び画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に渡され、図11のステップS24において、図12(b)の条件で再び距離が測定される。
図12(b)の条件、繰り返し周期時間Tc=Tc(k)の半分が、光投影時間To=To(k)であり、電荷蓄積時間Taであるため、繰り返し周期時間Tcに同期して変化する。一方、電荷転送時間Tonは、繰り返し周期時間Tcとは同期せず、別の変化をさせる。第2の実施形態に係る測距装置では、繰り返し周期時間Tcは、例えば図12(a)から図12(b)の条件へと、1/2の割合で小さくさせているが、電荷転送時間Tonは、図12(a)から図12(b)の条件へ70%程度の割合で小さくさせている。図12(b)の条件でも、距離演算はできるが、第1転送ゲート電極16aの直下を通過して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量の割合よりも第2転送ゲート電極16bの直下を通過して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合が依然として小さく、距離精度が低くなる。このため、図11のステップS25では設定値判定回路732が、図12(b)の条件での駆動も、適切な駆動条件ではないと判定する。図12(b)の条件ではNG、即ち、図11に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、出力ユニット74にデータは出力されない。
ステップS25において、設定値判定回路732が、図12(b)の条件ではNGと判定された場合は、再び制御演算回路73aにデータが送られる。制御演算回路73aでは、ステップS26及びステップS27、ステップS28において、図12(c)の条件に示すように、更に光投影時間To=To(k)及び繰り返し周期時間Tc=Tc(k)、電荷転送時間Ton(k)を短くする駆動に変更させ、その後、再びステップS24において距離を算出する演算を行い、距離測定をする。図12(c)の条件では、繰り返し周期時間Tc=Tc(k+1)の半分が、光投影時間To=To(k+1)であり、電荷蓄積時間Taであるため、繰り返し周期時間Tcに同期して変化する。一方、電荷転送時間Tonは、繰り返し周期時間Tcとは同期せず、別の変化をさせる。
第2の実施形態に係る測距装置では、繰り返し周期時間Tcは、例えば図12(b)条件から図12(c)の条件へと、1/2の割合で小さくさせているが、電荷転送時間Tonは、図12(a)から図12(c)の条件で1/2の割合としており、図12(b)から図12(c)の条件へは、70%程度の割合で小さくさせている。そして、最小の繰り返し周期時間となる図12(c)の条件のとき、電荷転送時間Tonも、その素子で動作させうる最小の電荷転送時間Tonに設定している。
図12(c)の条件の条件では、駆動タイミング図から分かるように、距離演算ができ、第1転送ゲート電極16aの直下を通過して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量の割合と、第2転送ゲート電極16bの直下を通過して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合の違いが小さいため、距離精度が高くなる。このため、図11のステップS25において、設定値判定回路732は、図12(c)の条件の駆動は適切と判断し、距離画像出力制御回路734が距離算出の演算結果を出力ユニット74に出力する。このとき、付帯情報も同時に出力ユニット74に出力してもよい。
以上のとおり、本発明の第2の実施形態に係る測距装置によれば、図11に示すフローチャートの手順に従い、振分ゲート構造である第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bのオン/オフ期間の内、オン時間Tonを意図的に短くできる。本発明の第2の実施形態に係る測距装置によれば、電荷振り分けを実行する第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bでの、早い電圧スイッチング(オン/オフ切り替え)が緩和されるため、駆動回路94の動作マージンが広くなり、3D撮像装置の設計及び製造が容易になる。本発明の第2の実施形態に係る測距装置によれば、例えば、3D撮像装置を構成している画素のグローバル配線を細くし、各画素の開口率を上げることができる。更に、例えば、駆動回路94のトランジスタの構造を微細にすることでチップ面積の縮小を図ることができる。
(第2の実施形態の変形例)
本発明の第2の実施形態の変形例に係る測距装置の各画素は、図示を省略しているが、図9の平面図に示したのと同様に、受光領域を囲むように受光領域の中心位置に関して対称となる4つの位置のそれぞれに互いに離間して設けられた、X字の対角線方向に伸びる電荷移動経路の両側に対をなして配置された第1の電界制御電極対(31a,31b)、第2の電界制御電極対(32a,32b)、第3の電界制御電極対(33a,33b)及び第4の電界制御電極対(34a,34b)を備える。
第2の実施形態の変形例に係る測距装置の画素は、図13(a)~(c)に示すように、第1の電界制御電極対(31a,31b)、第2の電界制御電極対(32a,32b)、第3の電界制御電極対(33a,33b)及び第4の電界制御電極対(34a,34b)に対し第1転送信号G1、第2転送信号G2、第3転送信号G3及び排出信号GDを電界制御パルスとして、周期的に印加し、表面埋込領域22の空乏化電位を交互に変化させることにより、電荷移動経路のいずれかに、電荷を輸送する方向に向かう電位勾配を交互に形成して、表面埋込領域22中で発生した信号電荷の移動先を第1の電荷蓄積領域23a、第2の電荷蓄積領域23b、第3の電荷蓄積領域23c及び第4の電荷蓄積領域23dのいずれかに順次設定するように制御する。
図13(a)~(c)に示した駆動タイミング図は、図1に示した対象物92までの距離が近い場合であるため、受信光の遅延時間Tdが非常に小さい。図11のステップS21において、制御演算回路73aの時間設定論理回路731が光投影時間Toを最大値に設定する。引き続き、ステップS22において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを最大値に設定する。更に、ステップS23において、時間設定論理回路731が電荷転送時間Tonを最大値に設定する。設定された光投影時間To、繰り返し周期時間Tc及び電荷転送時間Tonを、時間設定値出力制御回路733が図1に示したインターフェイス75を介して駆動回路94に制御信号として出力する。制御演算回路73aの時間設定値出力制御回路733から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて、発光部91から、パルス発光がなされる。
図11のステップS24において、画素アレイ部の各画素Xijの動作は、駆動回路94によって制御される。即ち、ステップS24では、各画素Xijにおいて受光により生成された電子(光電子)が、制御演算回路73aの時間設定論理回路731から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて動作するように制御される。この結果、ステップS24において、画素アレイ部からの出力信号が、出力バッファ97.98を介して距離演算回路71に送られる。ステップS24では距離演算回路71が、画素アレイ部の各画素Xijから出力された信号に応じて、距離を算出する演算を行い、距離測定をする。ステップS24では、距離演算回路71が更に距離算出の演算結果と付帯情報を制御演算回路73aの時間設定論理回路731に送る。ここで、付帯情報とは、例えば、各画素Xijの第1の電荷蓄積領域23a、第2の電荷蓄積領域23b、第3の電荷蓄積領域23c及び第4の電荷蓄積領域23dから得られた出力データや、各画素Xijの第1の電荷蓄積領域23a、第2の電荷蓄積領域23b、第3の電荷蓄積領域23c及び第4の電荷蓄積領域23dの出力値の差分データである。
図11のステップS25において、制御演算回路73aの設定値判定回路732はデータ記憶装置72から距離演算回路71の距離算出の演算結果、付帯情報をしきい値とともに読み出す。設定値判定回路732は、距離演算回路71から出力された距離算出の演算結果と付帯情報に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。図13(a)の条件では、駆動タイミング図より分かるように、距離演算はできるが、振分ゲート構造である第2の電界制御電極対(32a,32b)の間の電荷移動経路を経由して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合よりも第3の電界制御電極対(32c,32c)の間の電荷移動経路を経由して第3電荷蓄積領域23cに蓄積される信号電荷量の割合が非常に小さく、距離精度が低くなる。この信号電荷量の割合でしきい値を決定し、データ記憶装置72に格納しておけば、ステップS24において、図13(a)の条件の駆動は、適切な駆動条件ではないと判定される。或いは、例えば、演算された距離に対して、各々の駆動条件で、しきい値が決められている場合は、それらをデータ記憶装置72に格納しておけば、設定値判定回路732はデータ記憶装置72からそれらのしきい値を読み出して、光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcが適切であるかを判断してもよい。
ステップS25において、設定値判定回路732が、図13(a)の条件ではNG、即ち、図11に示したフローチャートで諾(Yes)と判定されると、データは出力ユニット74に出力されない。図11に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、図11のステップS26において、光投影時間To=Tomaxを短縮する。引き続き、ステップS27において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tc=Tcmaxを短縮し、ステップS28において、時間設定論理回路731が電荷転送時間Ton=Tonmaxを短縮する。第2の実施形態の変形例に係る測距装置では、繰り返し周期時間Tcは、例えば図13(b)条件から図13(c)の条件へと、1/2の割合で小さくさせている。光投影時間To、繰り返し周期時間Tc及び電荷転送時間Tonが短縮され、駆動方法が変更された制御信号が、図1に示した駆動回路94を介し、発光部91及び画素アレイ部に渡され、図11のステップS23において、図13(b)の条件で再び距離が測定される。図13(b)は、繰り返し周期時間Tc=Tc(kb)が図13(c)のTc(kb+1)2倍のときの駆動タイミング図である。繰り返し周期時間Tcが2倍、4倍は例示に過ぎない。繰り返し周期時間Tcは任意に変化させて駆動タイミング図が説明できるという意味での例示的倍数である。
図13(b)の条件の条件でも、距離演算はできるが、第2の電界制御電極対(32a,32b)の間の電荷移動経路を通過して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合よりも第3の電界制御電極対(33a,33b)の間の電荷移動経路を通過して第3電荷蓄積領域23cに蓄積される信号電荷量の割合が依然として小さく、距離精度が低くなる。このため、図11のステップS24では設定値判定回路732が、図13(b)の条件での駆動も、適切な駆動条件ではないと判定する。図13(b)の条件ではNG、即ち、図11に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、出力ユニット74にデータは出力されない。
ステップS24において、設定値判定回路732が、図13(b)の条件ではNGと判定された場合は、再び制御演算回路73aにデータが送られる。制御演算回路73aでは、ステップS25及びステップS26において、図13(c)の条件に示すように、更に光投影時間To=To(kb)及び繰り返し周期時間Tc=Tc(kb)を短くする駆動に変更させる。更に、ステップS28において、時間設定論理回路731が電荷転送時間Ton=Ton(kb)を短縮する。電荷転送時間Tonは、図13(a)から図13(c)の条件で1/2の割合としており、図13(b)から図13(c)の条件へは、70%程度の割合で小さくさせている。そして、最小の繰り返し周期時間となる図13(c)の条件のとき、電荷転送時間Ton=Ton(kb+1)も、その素子で動作させうる最小の電荷転送時間Ton=Tonminに設定している。
その後、再びステップS24において距離を算出する演算を行い、距離測定をする。図13(c)の条件の条件では、駆動タイミング図から分かるように、距離演算ができ、第2の電界制御電極対(32a,32b)の間の電荷移動経路を経由して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合と、第3の電界制御電極対(32c,32c)の間の電荷移動経路を経由して第3電荷蓄積領域23cに蓄積される信号電荷量の割合の違いが小さいため、距離精度が高くなる。このため、図11のステップS24において、設定値判定回路732は、図13(c)の条件の駆動は適切と判断し、距離画像出力制御回路734が距離算出の演算結果を出力ユニット74に出力する。このとき、付帯情報も同時に出力ユニット74に出力してもよい。
以上のように、第2の実施形態の変形例に係る測距装置によれば、それぞれの画素(光電変換素子)が従来のMOS構造を用いてゲート電極直下のポテンシャルを縦方向(垂直方向)に制御する場合に比し、横方向(電荷移動経路の方向に直交する)の静電誘導効果による電界制御を用いているので、電荷移動経路の長い距離にわたって電界がほぼ一定になるようにして、信号電荷が対称性を維持しながら高速に輸送される。このため、第2の実施形態の変形例に係る測距装置をTOF型距離センサ(測距素子)に応用すると、より正確な距離測定が可能となる。更に、電荷移動経路の対称性が優れている結果製造工程におけるマスク合わせのずれの影響も受けにくくなる。又、従来の埋込フォトダイオードを用いた距離画像センサに比しても、当然ながら、電荷移動経路のトポロジを対称性の高いX型にして、しかも、電荷移動経路の長さを長くとることができ、更に実質的な受光領域の面積が大きくなるので、高感度化が図れる。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る測距装置は、図1及び図2に示した本発明の第1の実施形態に係る測距装置の構成とほぼ同様である。しかし、第3の実施形態に係る測距装置の制御演算回路73aの動作の概略は、図11に示すようなフローチャートに従った動作になるので、図3に示した第1の実施形態に係る測距装置の調整動作とは異なる。図11のステップS21において、制御演算回路73aの時間設定論理回路731が光投影時間Toを最大値に設定する。引き続き、ステップS22において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを最大値に設定する。
更に、ステップS23において電荷転送時間Tonを最大値に設定する。設定された光投影時間To=Tomax、繰り返し周期時間Tc=Tcmax、電荷蓄積時間Ta、及び電荷転送時間Tonを、時間設定値出力制御回路733が図1に示したインターフェイス75を介して駆動回路94に制御信号として出力する。制御演算回路73aの時間設定値出力制御回路733から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて、発光部91から、パルス発光がなされる。パルス発光は、例えば、近赤外LD(レーザダイオード)や近赤外LEDが用いられる。対象物92を反射したパルス光が、レンズ93やBPF(バンドパスフィルタ)などを通して図1に示した画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に照射される。
図11のステップS24において、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijの動作は、駆動回路94によって制御される。即ち、ステップS24では、各画素Xijにおいて受光により生成された電子(光電子)が、制御演算回路73aの時間設定論理回路731から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて動作するように制御される。この結果、ステップS24において、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)からの出力信号が出力バッファ97.98を介して距離演算回路71に送られる。ステップS35では距離演算回路71が、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijから出力された信号に応じて、距離を算出する演算を行い、距離測定をする。ステップS24では、距離演算回路71が更に距離算出の演算結果と付帯情報を制御演算回路73aの時間設定論理回路731に送る。ここで、付帯情報とは、例えば、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bから得られた出力データや、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bの出力値の差分データである。
図11のステップS25において、制御演算回路73aの設定値判定回路732が、距離演算回路71から出力された距離算出の演算結果と付帯情報に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。ステップS25において、設定値判定回路732がNGと判断した場合は、制御演算回路73aの時間設定論理回路731へデータを渡す。時間設定論理回路731は、図11のステップS26において、光投影時間Toを短縮する。引き続き、ステップS27において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを短縮する。
更にステップS28において、時間設定論理回路731が電荷転送時間Tonを短縮する。光投影時間To、繰り返し周期時間Tc、電荷蓄積時間Ta、及び電荷転送時間Tonが短縮され、駆動方法が変更された制御信号が、図1に示した駆動回路94を介し、発光部91及び画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に渡され、図11のステップS24において距離が測定される。以下ステップS24、ステップS25、ステップS26、ステップS27、ステップS28を経てステップS24に戻るループ処理が、ステップS25で設定値判定回路732がOKと判断するまで、繰り返される。そして、設定値判定回路732がOKと判断すれば、ステップS29において制御演算回路73aの距離画像出力制御回路734が出力ユニット74へデータを渡し、出力ユニット74から出力信号が出力される。
図14は、図11に示したフローチャートの流れとなるプログラムの命令に従って、第3の実施形態に係る測距装置の駆動方法が変化する駆動タイミング図を例示した図である。まず、図11に示したフローチャートのステップS21において図2の制御演算回路73aの時間設定論理回路731が光投影時間Toを最大値に設定する。引き続き、ステップS22において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを最大値に設定する。設定された光投影時間To、電荷蓄積時間Ta及び繰り返し周期時間Tcを、時間設定値出力制御回路733が図1に示したインターフェイス75を介して駆動回路94に制御信号として出力し、発光部91からパルス発光させて、第3の実施形態に係る測距装置を駆動させる。
図14に示した第3の実施形態に係る測距装置の調整時の動作を説明する駆動タイミング図は、図1に示した対象物92までの距離が近い場合であるため、受信光の遅延時間Tdが非常に小さい。図11のステップS24において、第3の実施形態に係る測距装置の駆動により、振分ゲート構造である第1転送ゲート電極16a,第2転送ゲート電極16bの直下の転送チャネルを通る信号電荷の違いにより、距離演算回路71が式(1)を用いて距離を算出する演算を実行する。距離演算回路71の距離算出の演算結果は付帯情報と共に一旦、データ記憶装置72に格納される。ここで、付帯情報とは、例えば、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bから得られた出力データや、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bの出力値の差分データである。
図11のステップS25において、制御演算回路73aの設定値判定回路732はデータ記憶装置72から距離演算回路71の距離算出の演算結果、付帯情報をしきい値とともに読み出す。設定値判定回路732は、距離演算回路71から出力された距離算出の演算結果と付帯情報に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。図14(a)の条件では、駆動タイミング図より分かるように、距離演算はできるが、第1転送ゲート電極16aを通して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量の割合よりも第2転送ゲート電極16bを通して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合が非常に小さく、距離精度が低くなる。
この信号電荷量の割合でしきい値を決定し、データ記憶装置72に格納しておけば、ステップS25において、図14(a)の条件の駆動は、適切な駆動条件ではないと判定される。或いは、例えば、演算された距離に対して、各々の駆動条件で、しきい値が決められている場合は、それらをデータ記憶装置72に格納しておけば、設定値判定回路732はデータ記憶装置72からそれらのしきい値を読み出して、光投影時間To、繰り返し周期時間Tc、電荷蓄積時間Ta、及び電荷転送時間Tonが適切であるかを判断してもよい。
ステップS25において、設定値判定回路732が、図14(a)の条件ではNG、即ち、図11に示したフローチャートで諾(Yes)と判定されると、データは出力ユニット74に出力されない。図11に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、図11のステップS26において、光投影時間To=Tomaxを短縮する。引き続き、ステップS27において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tc=Tcmaxを短縮する。光投影時間To及び繰り返し周期時間Tc、電荷蓄積時間Ta、及び電荷転送時間Tonが短縮され、駆動方法が変更された制御信号が、図1に示した駆動回路94を介し、発光部91及び画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に渡され、図11のステップS25において、図14(b)の条件で再び距離が測定される。
図14(b)の条件、繰り返し周期時間Tc=Tc(n)の半分が、光投影時間To=To(n)であり、電荷蓄積時間Ta=Ta(n)であるため、繰り返し周期時間Tcに同期して変化する。一方、電荷転送時間Tonは、繰り返し周期時間Tcとは同期せず、別の変化をさせる。第3の実施形態に係る測距装置では、繰り返し周期時間Tcは、例えば図14(a)から図14(b)の条件へと、1/2の割合で小さくさせているが、電荷転送時間Tonは、図14(a)から図14(b)の条件へToff時間が変化しないように増加させている。
図14(b)の条件でも、距離演算はできるが、第1転送ゲート電極16aの直下を通過して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量の割合よりも第2転送ゲート電極16bの直下を通過して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合が依然として小さく、距離精度が低くなる。このため、図14のステップS36では設定値判定回路732が、図14(b)の条件での駆動も、適切な駆動条件ではないと判定する。図14(b)の条件ではNG、即ち、図14に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、出力ユニット74にデータは出力されない。
ステップS25において、設定値判定回路732が、図14(b)の条件ではNGと判定された場合は、再び制御演算回路73aにデータが送られる。制御演算回路73aでは、ステップS26及びステップS27において、図14(c)の条件に示すように、更に光投影時間To、電荷蓄積時間Ta及び繰り返し周期時間Tcを短くする駆動に変更させ、その後、再びステップS24において距離を算出する演算を行い、距離測定をする。図14(c)の条件では、繰り返し周期時間Tc=Tc(n+1)の半分が、光投影時間Toであり、電荷蓄積時間Ta=Ta(n+1)であるため、繰り返し周期時間Tcに同期して変化する。一方、電荷転送時間Tonは、繰り返し周期時間Tcとは同期せず、別の変化をさせる。
第3の実施形態に係る測距装置では、繰り返し周期時間Tcは、例えば図14(b)条件から図14(c)の条件へと、1/2の割合で小さくさせているが、電荷転送時間Tonは、Toff時間が変化しないように増加させている。そして、最小の繰り返し周期時間となる図14(c)の条件のとき、電荷転送時間Tonも、その素子で動作させうる最小の電荷転送時間Tonに設定している。
図14(c)の条件の条件では、駆動タイミング図から分かるように、距離演算ができ、第1転送ゲート電極16aの直下を通過して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量の割合と、第2転送ゲート電極16bの直下を通過して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合の違いが小さいため、距離精度が高くなる。このため、図14のステップS36において、設定値判定回路732は、図14(c)の条件の駆動は適切と判断し、距離画像出力制御回路734が距離算出の演算結果を出力ユニット74に出力する。このとき、付帯情報も同時に出力ユニット74に出力してもよい。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る検査調整装置は、測距装置の主要部をなす3D撮像装置の出荷前検査や、出荷後のキャリブレーション時の調整を実施し、製造工程のバラツキ等に依拠した3D撮像装置の駆動条件を改善し、3D撮像装置の特性の調整、その設定を行うものである。図15に示すように、3D撮像装置は、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)と周辺回路部(94~96,99,NC1~NCm)とを同一の半導体チップ6の上に集積化した構造である。
検査又は調整の対象となる3D撮像装置の画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に図15に示すように、2次元マトリクス状に多数の画素Xij(i=1~m;j=1~n:m,nはそれぞれ2以上の正の整数である。)が配列されており、方形状の撮像領域を構成している点は、図1に示した構造と概略として同様である。そして、この画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の上辺部には駆動回路94が、下辺部には水平シフトレジスタ96が、それぞれ画素行X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm方向に沿って設けられ、画素アレイ部の右辺部には画素列X11~Xn1;X12~Xn2;……;X1j~Xnj;……;X1m~Xnm方向に沿って垂直シフトレジスタ及び垂直走査回路95が設けられている。駆動回路94には各画素Xijが距離測定を行うに必要な光を発光部91が接続されている。検査又は調整の対象となる半導体チップ6の上の駆動回路94には、検査調整装置7から送信された調整データを保存する調整データ記憶装置99が接続されている。
半導体チップ6の上に集積化された調整データ記憶装置99にはインターフェイス75を介して、検査調整装置7の制御演算回路73bから駆動回路94を制御する制御信号が伝達される。制御演算回路73bには制御演算回路73bの動作を命令するプログラムを記憶したプログラム記憶装置76と、制御演算回路73bにおける論理演算に必要なデータやしきい値等を記憶するデータ記憶装置72が接続される。データ記憶装置72には、バス736を介して出力差演算回路738が接続されている。出力差演算回路738は、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)からの出力信号が、出力バッファ97,98を介して入力されるように制御する。振分ゲート構造である第1転送ゲート電極16a側の出力値と,第2転送ゲート電極16b側の出力値との出力差の演算に必要な演算処理を実施する出力差演算回路738がバス736を介して接続されている。尚、図15において、画素Xnjに内部構造をブロック図として模式的に例示したように、それぞれの画素Xijは、光電変換素子と信号電荷転送部を備える光電変換転送部81及びソースフォロア型の読出増幅回路82等を含む。
駆動回路94、水平シフトレジスタ96、垂直シフトレジスタ及び垂直走査回路95によって画素アレイ部内の画素Xijが順次走査され、画素信号の読み出しや電子シャッタ動作が実行される点では通常の3D撮像装置と同様である。即ち、本発明の第4の実施形態に係る検査調整装置の検査又は調整の対称となる3D撮像装置では、画素アレイ部を各画素行X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm単位で垂直方向に走査することにより、各画素行X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnmの画素信号を各画素列X11~Xn1;X12~Xn2;……;X1j~Xnj;……;X1m~Xnm毎に設けられた垂直出力信号線によって画素信号を読み出す構成となっている。
尚、図15に示した検査調整装置7を構成する出力差演算回路738、インターフェイス75及び77、制御演算回路73b、プログラム記憶装置76及びデータ記憶装置72は、同一半導体チップにモノリシックに集積された構造であっても、複数のチップに分割して集積化であっても構わない。更に、異なる基板に搭載されるハイブリッド集積回路やモジュール等の構成でも構わない。モノリシックに集積化するか、ハイブリッドな構成にするかは設計仕様による、単なる設計的事項であるが、装置の小型化にはモノリシックな集積化構造が好ましい。
例えば、後述するカメラに、第4の実施形態で検査又は調整の対象として説明する3D撮像装置45aを搭載する場合において、図15に示した制御演算回路73bを、図31に示した3D撮像装置45aを搭載するチップ搭載基板(パッケージ基板)46に組み込んで、カメラの操作の一部として調整できるようにしても構わない。カメラの操作の一部として3D撮像装置45aの特性を調整できるようにするためには、図15に示した制御演算回路73bを、図31に示したタイミングジェネレータ(TG)51、駆動部52、制御部53のいずれかの一部として組み込んでも構わない。カメラに適用した場合、図15に示した発光部91の機能を、図31に示したストロボ装置62に持たせて、ストロボ装置62から測距用の発光を行わせることにより、3D撮像装置45aの特性を調整するようにしてもよい。
第4の実施形態に係る検査調整装置による測距装置の主要部をなす3D撮像装置の出荷前検査や、出荷後のキャリブレーション時の調整に際しては、検査調整装置7をインターフェイス75及び77を介して半導体チップ6に接続する。半導体チップ6上に集積化された各画素X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnmのそれぞれのフォトダイオードからの信号電荷転送させるための転送信号TX1、TX2は、検査調整装置7からの駆動信号によって、駆動回路94から全画素X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnmに同時に与えられる。駆動回路94からの駆動信号は、高い周波数の信号であるので、その期間には、スイッチングノイズが発生する。したがって画素部からの信号読み出しは、ノイズ処理回路NC1~NCmによる処理が終了した後に読み出し期間を設けて行う。
制御演算回路73bは図16に論理的なブロック図を示すように、時間設定論理回路731、出力差判定回路737、時間設定値出力制御回路733、出力差演算回路738及びシーケンス制御回路735をハードウェア資源として備える。時間設定論理回路731は、繰り返し周期時間Tc、光投影時間To、電荷蓄積時間Ta、及び電荷転送時間Ton等の値を設定し、或いは、出力差判定回路737の出力信号に応じて、時間設定論理回路731は、繰り返し周期時間Tc、光投影時間To、電荷蓄積時間Ta、及び電荷転送時間Ton等の値を適宜変更する論理回路である。
出力差判定回路737は、第1転送ゲート電極16a側の出力値と,第2転送ゲート電極16b側の出力値との出力差演算回路738が算出した出力差がデータ記憶装置72に予め格納されたしきい値を上回るか否かを判定し、判定結果を時間設定論理回路731に出力する論理回路である。時間設定値出力制御回路733は、時間設定論理回路731が設定若しくは変更した繰り返し周期時間Tc、光投影時間To、電荷蓄積時間Ta及び電荷転送時間Ton等が、インターフェイス75を介して調整データ記憶装置99に制御信号として出力されるようにする論理回路である。
図16に示したシーケンス制御回路735は時間設定論理回路731、出力差判定回路737、時間設定値出力制御回路733、出力差演算回路738、インターフェイス75、プログラム記憶装置76及びデータ記憶装置72のそれぞれの動作をクロック信号に依拠して順次シーケンス制御する論理回路である。時間設定論理回路731、出力差判定回路737、時間設定値出力制御回路733、出力差演算回路738及びシーケンス制御回路735のそれぞれはバス736bを介して情報の送受信が可能である。図15に示す検査調整装置7を構成するコンピュータシステムにおいて、データ記憶装置72は、複数のレジスタ、複数のキャッシュメモリ、主記憶装置、補助記憶装置を含む一群の内から適宜選択された任意の組み合わせとすることも可能である。図示を省略しているが、データ記憶装置72に複数のレジスタが含まれる場合等においては、バス736bはインターフェイス75、プログラム記憶装置76及びデータ記憶装置72等にまで延長されていても構わない。
図16に示した制御演算回路73bは、マイクロチップとして実装されたMPU等を使用してコンピュータシステムを構成することが可能である。又、コンピュータシステムを構成する制御演算回路73bとして、算術演算機能を強化し信号処理に特化したDSPや、メモリや周辺回路を搭載し組込み機器制御を目的としたマイクロコントローラ(マイコン)等を用いてもよい。或いは、現在の汎用コンピュータのメインCPUを制御演算回路73bに用いてもよい。更に、制御演算回路73bの一部の構成又はすべての構成をFPGAのようなPLDで構成してもよい。
PLDによって、制御演算回路73bの一部又はすべてを構成した場合は、データ記憶装置72は、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等のメモリ要素として構成することができる。更に、制御演算回路73bは、CPUコア風のアレイとPLD風のプログラム可能なコアを同じチップに搭載した構造でもよい。このCPUコア風のアレイは、予めPLD内部に搭載されたハードマクロCPUと、PLDの論理ブロックを用いて構成したソフトマクロCPUを含む。つまりPLDの内部においてソフトウェア処理とハードウェア処理を混在させた構成でもよい。
第4の実施形態に係る検査調整装置の動作の概略は、図19に示すようなフローチャートの流れの手順で説明できる。図19のステップS51において、検査調整装置7を構成している制御演算回路73bの時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを所定の検査調整値に設定し、ステップS52において電荷蓄積時間Taを所定の検査調整値に設定する。更にステップS53において、第1転送ゲート電極16aの電荷転送時間Ton1及び第2転送ゲート電極16bの電荷転送時間Ton2を同じに設定する。設定された電荷蓄積時間Ta、繰り返し周期時間Tc及び電荷転送時間Ton1=Ton2=Tonを、時間設定値出力制御回路733が図15に示したインターフェイス75及び調整データ記憶装置99を介して駆動回路94に制御信号として出力する。
制御演算回路73bの時間設定値出力制御回路733から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて、発光部91から、図20の上段に示したような一定光(連続光)が投影される。対象物92を反射した一定光が、レンズ93やBPF(バンドパスフィルタ)などを通して図15に示した被検査対象の画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に照射される。尚、発光部91からの投影光はパルス光でもよいが、以下の説明では、一定光として説明する。又、発光部91から発光させず、輝度箱等の均一光を画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)が受光してもよい。
図19のステップS54において、被検査対象の画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijの動作は、駆動回路94によって制御される。即ち、ステップS54では、各画素Xijにおいて受光により生成された電子(光電子)が、制御演算回路73bの時間設定論理回路731から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて動作するように制御される。この結果、ステップS54において、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)からの出力信号が出力バッファ97.98を介して出力差演算回路738に送られる。ステップS54では出力差演算回路738が、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijから出力された信号に応じて、第1転送ゲート電極16a側の出力値と,第2転送ゲート電極16b側の出力値との出力差を求める演算を行う。ステップS54では、出力差演算回路738が、第1転送ゲート電極16a側の出力値と,第2転送ゲート電極16b側の出力値との差分を求める演算結果を制御演算回路73bの時間設定論理回路731に送る。
図19のステップS55において、制御演算回路73bの出力差判定回路737が、出力差演算回路738から送信された出力差の演算結果に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。ステップS55において、出力差判定回路737がNGと判断した場合は、制御演算回路73bの時間設定論理回路731へデータを渡す。時間設定論理回路731は、図19のステップS56において、時間設定論理回路731が第1転送ゲート電極16aの電荷転送時間Ton1のみを初期設定の電荷転送時間Tonよりも長くなるように設定する。変更された電荷転送時間Ton1>Ton2=Tonを用いて駆動方法が変更された制御信号が、調整データ記憶装置99を介して駆動回路94に送信される。
変更された制御信号によって、図19のステップS54において画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の第1転送ゲート電極16a側の出力値と,第2転送ゲート電極16b側の出力値との出力差が測定される。以下ステップS54、ステップS55、ステップS56を経てステップS54に戻るループ処理が、ステップS55で出力差判定回路737がOKと判断するまで、繰り返される。そして、出力差判定回路737がOKと判断すれば図19に示したフローチャートの処理が終了する。こうして検査/調整対象としての測距装置の主要部をなす3D撮像装置の出荷前検査や、出荷後のキャリブレーション時の調整が実現できる。変更された駆動回路94の制御信号は調整データ記憶装置99に格納される。
第4の実施形態に係る検査調整装置の検査/調整対象となる測距装置の主要部をなす3D撮像装置の画素Xijとして機能する測距素子の断面構造の一例を図17に示す。図17の中央に示す受光領域の両側に、受光領域いで光電変換された信号電荷を交互に振り分け転送する第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bが配置されている。この第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bの配置は、フォトリソグラフィー工程におけるマスク合わせのずれ等による製造工程のバラツキによって非対称の断面構造になる危険性がある。図17は、そのような非対称な構造を例示している。
図17に示す断面構造では、p型の半導体基板19と、半導体基板19の上に配置されたp型の半導体層からなる機能基体層20と、機能基体層20の上に配置されたn型の表面埋込領域22が例示されている。中央部の受光領域に含まれる位置のゲート絶縁膜33と、表面埋込領域22と、機能基体層20と半導体基板19とで光電変換素子の物理的骨格構造を構成している。受光領域に位置するp型の機能基体層20の一部が、光電変換素子の信号電荷生成領域として機能している。信号電荷生成領域で生成されたキャリア(電子)は、信号電荷生成領域の直上の表面埋込領域22の一部に注入される。
ゲート絶縁膜33は、受光領域の直下から左右の第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bの下まで延伸し、このゲート絶縁膜33の下には、受光領域の直下から第1転送ゲート電極16aの左側端部及び第2転送ゲート電極16bの右側端部の下まで左右に延伸するように表面埋込領域22が配置されている。そして、第1転送ゲート電極16aにより転送された信号電荷を蓄積する第1電荷蓄積領域23aが図17の右側に浮遊ドレイン領域として配置されている。同様に、第2転送ゲート電極16bにより転送された信号電荷を蓄積する第2電荷蓄積領域23bが図17の左側に浮遊ドレイン領域として配置されている。
図17に示す断面構造では受光領域に位置する表面埋込領域22の右側に隣接した機能基体層20の表面側の領域が、転送長l1の第1転送チャネルとして機能している。この第1転送チャネルとの転送長l1よりも、受光領域に位置する表面埋込領域22の左側に隣接した機能基体層20の表面側の領域が第2転送チャネルの転送長l2の方が短い(l1>l2)。そして、第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bは、第1及び第2転送チャネルの電位を、この第1及び第2転送チャネルの上部にそれぞれ形成されたゲート絶縁膜33を介して静電的に制御する。この静電的な制御によって、信号電荷が、第1及び第2転送チャネルを介してn型の第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bに、交互に、それぞれ転送される。第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bは、それぞれ、表面埋込領域22より高不純物密度の半導体領域である。
ゲート絶縁膜33上に形成した第1転送ゲート電極16aには、図19の第1転送信号TX1を、第2転送ゲート電極16bには第2転送信号TX2を与える。例えば第1転送信号TX1=3.3V(VDD)を第1転送ゲート電極16aに,第2転送信号TX2=0V(GND)を第2転送ゲート電極16bに与えたとき、表面埋込領域22中に形成される電位分布によって、光信号により生成された電子は、右側の電荷蓄積領域23aに転送される。逆に、第1転送信号TX1=0V(GND)を第1転送ゲート電極16aに,第2転送信号TX2=3.3V(VDD)を第2転送ゲート電極16bに与えると、光信号により生成された電子は、左側の電荷蓄積領域23bに転送される。
第1の実施形態の図4に示したように、第1転送ゲート電極16a,第2転送ゲート電極16bが正確に対称構造をなし、第1転送ゲート電極16a,第2転送ゲート電極16bの直下の転送チャネルを通る信号電荷の違いはなく、第1転送ゲート電極16a側の出力値と,第2転送ゲート電極16b側の出力値との出力差はない状態が理想的である。ところが、実際の製造工程の現場では、図17に示す様に、例えば、製造プロセスのバラツキにより、第1転送ゲート電極16a,第2転送ゲート電極16bが正確に対称構造をなさない場合が発生する。
この場合は、図18(a)に示すように、第1転送ゲート電極16aの直下の第1転送チャネルの転送長l1に対応した実効的なポテンシャル障壁の厚さが、第2転送ゲート電極16bの直下の第2転送チャネルの転送長l2に対応した実効的なポテンシャル障壁の厚さよりも厚くなる。この結果、図18(b)に示す第1転送ゲート電極16aの直下の第1転送チャネルが導通状態となった右下がりのポテンシャルの傾きよりも、図18(c)に示す第2転送ゲート電極16bの直下の第2転送チャネルが導通状態となった左下がりのポテンシャルの傾きの方が急峻になる。このため第1転送チャネル中を転送される信号電荷の転送速度が、第2転送チャネルの転送速度より遅くなる。
しかも、第1転送チャネルの転送長l1が第2転送チャネルの転送長l2より長い(l1>l2)ので、第1転送チャネル中を転送される信号電荷の転送時間が、第2転送チャネル中を転送される信号電荷の転送時間よりも長くなる。このようにして、製造プロセスのバラツキによって、第1転送ゲート電極16a,第2転送ゲート電極16bの直下の転送チャネルを通る信号電荷の量に差が発生するので、第1転送ゲート電極16a側の出力値と,第2転送ゲート電極16b側の出力値との出力差が大きくなる。
図20は、図19に示したフローチャートの流れとなるプログラムの命令に従って、駆動方法が変化する駆動タイミング図を例示した図である。まず、図19に示したフローチャートのステップS51において図16の制御演算回路73bの時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcをデフォルト値として選択された所定の検査調整値に設定する。引き続き、ステップS52において、時間設定論理回路731が電荷蓄積時間Taを所定の検査調整値に設定する。更にステップS53において、第1転送ゲート電極16aの電荷転送時間Ton1及び第2転送ゲート電極16bの電荷転送時間Ton2を同じに設定する。設定された電荷蓄積時間Ta、繰り返し周期時間Tc及び電荷転送時間Ton1=Ton2=Tonを、時間設定値出力制御回路733が図15に示したインターフェイス75及び調整データ記憶装置99を介して駆動回路94に制御信号として出力する。駆動回路94は、発光部91から図20の上段に示すように、一定光を発光させて、第4の実施形態に係る検査調整装置を駆動させる。
図19のステップS54において、第4の実施形態に係る検査調整装置の駆動により、第1転送ゲート電極16a,第2転送ゲート電極16bの直下の転送チャネルを通る信号電荷の違いにより、第1転送ゲート電極16a側の出力値と,第2転送ゲート電極16b側の出力値との出力差演算回路738が第1転送ゲート電極16a側の出力値と,第2転送ゲート電極16b側の出力値との差分を求める演算を実行する。出力差演算回路738が演算した出力値の差分データは一旦、データ記憶装置72に格納される。
次に、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23aの出力値と第2電荷蓄積領域23bの出力値の差分データについて、ステップS55において出力差判定回路737で判定する。即ち、ステップS55において、制御演算回路73bの出力差判定回路737はデータ記憶装置72から出力値の差分データをしきい値とともに読み出す。出力差判定回路737は、出力差演算回路738が演算した出力値の差分データに対して、最初に設定したデフォルトの駆動設定が適切かどうかの判定を行う。ステップS55では、各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bの出力値の差分データが、設定したしきい値より大きければ諾(Yes)と判定し、小さければ否(NO)と判定する。
図20(a)の駆動タイミング図が示す条件が、ステップS55の判断で諾(Yes)と判定された場合、シーケンス制御回路735は、図20のステップS56に進ませる。ステップS56では時間設定論理回路731が片方、例えば、図20(b)の駆動タイミング図が示すように、第1転送ゲート電極16a側の電荷転送時間Ton1を少し長くする駆動に変更させる。変更された電荷転送時間Ton1(m),Ton2(m)を時間設定値出力制御回路733が図15に示したインターフェイス75及び調整データ記憶装置99を介して駆動回路94に制御信号として出力し再びステップS54に戻る。ステップS54では、出力差演算回路738が再び、第1転送ゲート電極16a側の出力値と,第2転送ゲート電極16b側の出力値との出力差の測定を行う。尚、長くする片方は、第1転送ゲート電極16a,第2転送ゲート電極16bの直下の転送チャネルを通る信号電荷の内で主に出力が小さい側を選ぶが、逆であっても構わない。
出力差演算回路738が演算した出力値の差分データは一旦、データ記憶装置72に格納される。ステップS55において、制御演算回路73bの出力差判定回路737はデータ記憶装置72から出力値の差分データをしきい値とともに読み出す。出力差判定回路737は、出力差演算回路738が演算した出力値の差分データに対して、ステップS56で時間設定論理回路731が変更した、図20(b)の駆動タイミング図が示す駆動設定が適切かどうかの判定を行う。各画素Xijの第1電荷蓄積領域23a及び第2電荷蓄積領域23bの出力値の差分データが、設定したしきい値より大きければ諾(Yes)とし、小さければ否(NO)と、ステップS55で判定する。
図20(b)の駆動タイミング図が示す駆動設定が、ステップS55の判断で諾(Yes)と判定された場合、シーケンス制御回路735は、ステップS56に進ませる。ステップS56では時間設定論理回路731が片方、例えば、図20(c)の駆動タイミング図が示すように、第1転送ゲート電極16a側の電荷転送時間Ton1を少し長くする駆動に変更させる。変更された電荷転送時間Ton1(m+1),Ton2(m+1)を時間設定値出力制御回路733が図15に示したインターフェイス75及び調整データ記憶装置99を介して駆動回路94に制御信号として出力し再びステップS54に戻る。ステップS54では、出力差演算回路738が再び、第1転送ゲート電極16a側の出力値と,第2転送ゲート電極16b側の出力値との出力差の測定を行う。出力差演算回路738が演算した出力値の差分データは一旦、データ記憶装置72に格納される。
ステップS55において、制御演算回路73bの出力差判定回路737はデータ記憶装置72から出力値の差分データをしきい値とともに読み出す。出力差判定回路737は、出力差演算回路738が演算した出力値の差分データに対して、ステップS56で時間設定論理回路731が変更した、図20(c)の駆動タイミング図が示す駆動設定が適切かどうかの判定を行う。図20(c)の駆動タイミング図が示す駆動設定でOK、即ち、ステップS55で否(NO)と判定された場合、電荷転送時間Tonの設定が完了し、調整データ記憶装置99に格納されたデータが保存される。これにより、3D撮像装置の出荷前検査や、出荷後のキャリブレーション時の調整が完了する。
第4の実施形態に係る検査調整装置によれば、従来の3D撮像装置の駆動方法よりも精度が上げられ、特に距離センサ(測距素子)の距離精度が上げられる。そして、3D撮像装置の製造バラツキ等があっても、3D撮像装置の高精度な動作が可能になり、3D撮像装置の製造マージンが大きくなることも同時に実現できる。尚、図17では、2つの転送ゲート電極を有する3D撮像装置を検査/調整対象とする例を説明したが、3つの転送ゲート電極を有する3D撮像装置を検査/調整対象とする場合も同様に実施できる。より一般的には、Nを2以上の正の整数として、N個の転送ゲート電極を有する3D撮像装置を検査/調整対象とする場合にも、同様に実施できる。
(第4の実施形態の第1変形例)
図21(a)~(c)は、本発明の第4の実施形態の第1変形例に係る測距装置の調整時の動作を説明する図で、第4の実施形態で電荷転送時間Tonの設定がされた後の第4の実施形態に係る測距装置を、更に調整する場合である。図21(c)の駆動タイミング図は、第4の実施形態の図20(c)に示した3D撮像装置を検査及び調整したときの駆動タイミング図と同じである。図21(a)は、繰り返し周期時間Tcが図21(c)の4倍のときの駆動タイミング図である。図21(a)は、図1又は図15に示した対象物92までの距離が近い場合であるため、受信光の遅延時間Tdが非常に小さい。第1の実施形態に係る測距装置で説明した図3のフローチャートのステップS11において図2の制御演算回路73aの時間設定論理回路731が光投影時間Toを最大値に設定する。光パルス同期型ロックインピクセルでは、多くの場合、電荷蓄積時間Ta=光投影時間Toであるので、電荷蓄積時間Taも同様に最大値に設定する。
引き続き、ステップS12において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを最大値に設定する。設定された光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcを、時間設定値出力制御回路733が図1に示したインターフェイス75を介して駆動回路94に制御信号として出力し、発光部91からパルス発光させて、第1の実施形態に係る測距装置を駆動させる。第1の実施形態に係る測距装置の調整動作で説明した図3のステップS13において、振分ゲート構造である第1転送ゲート電極16a,第2転送ゲート電極16bの直下の転送チャネルを通る信号電荷の違いにより、距離演算回路71が式(1)を用いて距離を算出する演算を実行する。距離演算回路71の距離算出の演算結果は一旦、データ記憶装置72に格納される。
図3のステップS14において、制御演算回路73aの設定値判定回路732はデータ記憶装置72から距離演算回路71の距離算出の演算結果をしきい値とともに読み出す。設定値判定回路732は、距離演算回路71から出力された距離算出の演算結果に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。図21(a)の条件では、駆動タイミング図より分かるように、距離演算はできるが、第1転送ゲート電極16aを通して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量の割合よりも第2転送ゲート電極16bを通して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合が非常に小さく、距離精度が低くなる。この信号電荷量の割合でしきい値を決定し、データ記憶装置72に格納しておけば、ステップS14において、図21(a)の条件の駆動は、適切な駆動条件ではないと判定される。
ステップS14において、設定値判定回路732が、図21(a)の条件ではNG、即ち、図3に示したフローチャートで諾(Yes)と判定されると、データは出力ユニット74に出力されない。図3に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、図3のステップS15において、光投影時間Toを短縮する。引き続き、ステップS16において、時間設定論理回路731が繰り返し周期時間Tcを短縮する。光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcが短縮され、駆動方法が変更された制御信号が、図1に示した駆動回路94を介し、発光部91及び画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)に渡され、図3のステップS13において、図21(b)の条件で再び距離が測定される。
図21(b)は、繰り返し周期時間Tcが図21(c)の2倍のときの駆動タイミング図である。即ち、図21(b)の条件、繰り返し周期時間Tcの半分が、光投影時間Toであり、電荷蓄積時間Taであるため、繰り返し周期時間Tcに同期して変化する。一方、電荷転送時間Tonは、既に第4の実施形態で、3D撮像装置の製造バラツキに依拠するパターンレイアウトの非対称の補正をした後であるので、繰り返し周期時間Tcとは同期させず、変化させない。図21(b)の条件でも、距離演算はできるが、第1転送ゲート電極16aの直下を通過して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量の割合よりも第2転送ゲート電極16bの直下を通過して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合が依然として小さく、距離精度が低くなる。このため、図3のステップS14では設定値判定回路732が、図21(b)の条件での駆動も、適切な駆動条件ではないと判定する。図21(b)の条件ではNG、即ち、図3に示したフローチャートで諾(Yes)と判定された場合は、出力ユニット74にデータは出力されない。
ステップS14において、設定値判定回路732が、図21(b)の条件ではNGと判定された場合は、再び制御演算回路73aにデータが送られる。制御演算回路73aでは、ステップS15及びステップS16において、図21(c)の条件に示すように、更に光投影時間To及び繰り返し周期時間Tcを短くする駆動に変更させ、その後、再びステップS13において距離を算出する演算を行い、距離測定をする。図21(c)の条件では、繰り返し周期時間Tcの半分が、光投影時間Toであり、電荷蓄積時間Taであるため、繰り返し周期時間Tcに同期して変化する。一方、電荷転送時間Tonは、既に第4の実施形態における検査/調整において非対称の補正をした後であるので繰り返し周期時間Tcとは同期して変化させない。又、ここでは、図21(c)の条件の条件が、設定できる最小の繰り返し周期時間Tcである。
図21(c)の条件の条件では、駆動タイミング図から分かるように、距離演算ができ、第1転送ゲート電極16aの直下を通過して第1電荷蓄積領域23aに蓄積される信号電荷量、第2転送ゲート電極16bの直下を通過して第2電荷蓄積領域23bに蓄積される信号電荷量の割合の違いが小さいため、距離精度が高くなる。このため、図3のステップS14において、設定値判定回路732は、図21(c)の条件の駆動は適切と判断し、距離画像出力制御回路734が距離算出の演算結果を出力ユニット74に出力する。尚、図21の駆動タイミング図に示したような、繰り返し周期時間Tcを2倍、4倍と変更する手順や構成は、例示に過ぎない。繰り返し周期時間Tcを変化させたときの駆動タイミング図という意味であり、2倍や4倍に限定されるものではない。
又、図21(c)は第4の実施形態の第1変形例においては、動作させうる最短の繰り返し周期時間Tcである。TOF型距離センサ(測距素子)では、繰り返し周期時間Tcを伸ばすことで、より長い距離の測定が可能になる。そのため、受信光の遅延時間Tdは、図21(c)から図21(b)更に図21(a)に行くほど、順に大きく示してある。電荷転送時間Tonは、第4の実施形態に係る検査調整装置と同様な手法で調整され設定されている。第4の実施形態の第1変形例に係る測距装置においても、繰り返し周期時間Tcに関わらず、同じ時間あればよいため、図21(c)~図21(a)では、設定済みの電荷転送時間Ton1(m+1),Ton2(m+1)として、それぞれ一定の値であると仮定している。
第4の実施形態の第1変形例に係る測距装置によれば、従来駆動よりも3D撮像装置の精度を上げられ、特に距離センサ(測距素子)ならば距離精度を上げられる。更に、第4の実施形態で説明した手順で、電荷転送時間Ton1(m+1)及び電荷転送時間Ton2(m+1)をそれぞれ別々の時間に設定することで、3D撮像装置の製造マージンが大きくなることも同時に実現できる。
(第4の実施形態の第2変形例)
図22(a)~(c)は、本発明の第4の実施形態の第2変形例に係る測距装置の調整時の動作を説明する駆動タイミング図である。図22(c)は、第4の実施形態で検査/調整の完了した状態を示す図20(c)の駆動タイミング図と同じである。図22(a)は繰り返し周期時間Tcが図22(c)の4倍のときの駆動タイミング図である。図22(b)は繰り返し周期時間Tcが図22(c)の2倍のときの駆動タイミング図である。繰り返し周期時間Tcが2倍、4倍は、例示に過ぎない。繰り返し周期時間Tcが任意に変更できるという意味であり、2倍や4倍に限定されるものではない。ここで、光パルス同期型ロックインピクセルでは、多くの場合、電荷蓄積時間Ta=光投影時間Toである。又、図22(c)は、第4の実施形態の第2変形例に係る測距装置において、動作させうる最短の繰り返し周期時間Tcである。
TOF型距離センサ(測距素子)では、繰り返し周期時間Tcを伸ばすことで、より長い距離の測定が可能になる。そのため、第4の実施形態の第2変形例に係る測距装置においては、受信光の遅延時間Tdは、図22(c)から図22(b)更に図22(a)に行くほど、順に大きく示してある。図21(a)~(c)に示した第4の実施形態の第1変形例に係る測距装置の調整動作との違いは、第1転送信号TX1及び第2転送信号TX2のハイレベル時間Tonは、繰り返し周期時間Tcに関わらず、同じではなく、繰り返し周期時間Tcの大きさに合わせて、少しずつ大きくなっている点である。例えば繰り返し周期時間Tcを長くすると、露光量が増え、受光領域に蓄積され、振分ゲート構造である第1転送ゲート電極16a及び第2転送ゲート電極16bの直下の転送チャネルが導通状態に変わるのを待つ電荷量が増える場合が多い。それに対応するためには、電荷転送時間Tonを少しだけ長くしてやればよい。
尚、図22(a)及び(b)では、繰り返し周期時間Tcに対して略比例するように電荷転送時間Tonを変化させているが、例えば、繰り返し周期時間Tcが4倍になるごとに、第1転送信号TX1及び第2転送信号TX2のハイレベル時間Tonを2倍に増やすという階段的な増加方法や、その他、様々な方法で増加させればよい。又、図22(a)及び(b)での、第1転送信号TX1及び第2転送信号TX2のハイレベル時間Tonの長さの上限は、繰り返し周期時間Tcを変化させても、第1転送信号TX1及び第2転送信号TX2が互いにオフセット時間Toffを、同じに設定することである。
第4の実施形態の第2変形例に係る測距装置の調整動作によれば、従来の3D撮像装置の駆動よりも精度が上げられ、特に距離センサ(測距素子)の場合は距離精度が上げられるだけでなく、第1転送信号TX1及び第2転送信号TX2のハイレベルの期間を、各々別々の時間に設定することで、製造マージンが大きくなることも同時に実現できる。
(第4の実施形態の第3変形例)
図23(a)~(c)は、本発明の第4の実施形態の第3変形例に係る測距装置の調整動作を示す駆動タイミング図である。図23(c)は、図21(a)~(c)で説明した第4の実施形態の第1変形例を3タップの構造に適用したものである。図23(a)は、繰り返し周期時間Tcが図23(c)の4倍のときの駆動タイミング図である。図23(b)は、繰り返し周期時間Tcが図23(c)の2倍のときの駆動タイミング図である。繰り返し周期時間Tcが2倍、4倍は、例示に過ぎない。繰り返し周期時間Tcが任意に変更できるという意味であり、2倍や4倍に限定されるものではない。ここで、光パルス同期型ロックインピクセルでは、多くの場合、電荷蓄積時間Ta=光投影時間Toである。図23(c)は、この例において、動作させうる最短の繰り返し周期時間Tcである。
TOF型距離センサ(測距素子)では、繰り返し周期時間Tcを伸ばすことで、より長い距離の測定が可能になる。そのため、受信光の遅延時間Tdは、図23(c)から図23(b)、更には図23(a)に行くほど、大きく示してある。電荷転送時間Tonは、繰り返し周期時間Tcに関わらず、同じ時間あればよいため、図23(a)~(c)では、第1転送信号TX1、第2転送信号TX2及び第3転送信号TX3のハイレベル時間は、同じにしてある。
第4の実施形態の第3変形例に係る測距装置の調整動作によれば、従来の3D撮像装置の駆動よりも精度が上げられ、特に距離センサ(測距素子)の場合は距離精度が上げられるだけでなく、第1転送信号TX1、第2転送信号TX2及び第3転送信号TX3のハイレベルの期間を、各々別々の時間に設定することで、製造マージンが大きくなることも同時に実現できる。
(第4の実施形態の第4変形例)
図24(a)~(c)は、本発明の第4の実施形態の第4変形例に係る測距装置の調整動作を示す駆動タイミング図である。図24(c)は、図22(a)及び(b)で説明した第4の実施形態の第2変形例を3タップの構造に適用したものである。図24(a)は、繰り返し周期時間Tcが図24(c)の4倍のときの駆動タイミング図である。図24(b)は、繰り返し周期時間Tcが図24(c)の2倍のときの駆動タイミング図である。繰り返し周期時間Tcが2倍、4倍は、例示に過ぎない。繰り返し周期時間Tcが任意に変更できるという意味であり、2倍や4倍に限定されるものではない。
光パルス同期型ロックインピクセルでは、多くの場合、電荷蓄積時間Ta=光投影時間Toである。図24(c)は、第4の実施形態の第4変形例に係る測距装置の調整動作において、動作させうる最短の繰り返し周期時間Tcである。TOF型距離センサ(測距素子)では、繰り返し周期時間Tcを伸ばすことで、より長い距離の測定が可能になる。そのため、受信光の遅延時間Tdは、図24(c)から図24(b)、更には図24(a)に行くほど、大きく示してある。
図23(a)~(c)との違いは、第1転送信号TX1、第2転送信号TX2及び第3転送信号TX3のハイレベル時間は、繰り返し周期時間Tcに関わらず、同じではなく、繰り返し周期時間Tcの大きさに合わせて、少しずつ変化している点である。例えば繰り返し周期時間Tcを長くすると、露光量が増え、受光領域に蓄積され、第1転送信号TX1、第2転送信号TX2及び第3転送信号TX3のハイレベルに変わるのを待つ電荷量が増える場合が多い。それに対応するためには、第1転送信号TX1、第2転送信号TX2及び第3転送信号TX3のハイレベル時間を少しだけ長くしてやればよい。
尚、図24では、繰り返し周期時間Tcに対して略比例するように電荷転送時間Tonを変化させているが、例えば、繰り返し周期時間Tcが4倍になるごとに、第1転送信号TX1、第2転送信号TX2及び第3転送信号TX3のハイレベル期間Tonを2倍に増やすという階段的な増加方法や、その他、様々な方法で増加させればよい。又、図24での、第1転送信号TX1、第2転送信号TX2及び第3転送信号TX3のハイレベル期間Tonの長さの上限は、繰り返し周期時間Tcを変化させても、第1転送信号TX1、第2転送信号TX2及び第3転送信号TX3のハイレベル期間Tonが互いにオフセット時間Toffを、同じに設定することである。
第4の実施形態の第4変形例に係る測距装置の調整動作によれば、従来の3D撮像装置の駆動よりも精度が上げられ、特に距離センサ(測距素子)の場合は距離精度が上げられるだけでなく、第1転送信号TX1、第2転送信号TX2及び第3転送信号TX3のハイレベルの期間を、各々別々の時間に設定することで、製造マージンが大きくなることも同時に実現できる。尚、第4の実施形態及び第4の実施形態の第1~第4変形例において、振分ゲート構造として、2つの転送ゲート電極の例、3つの転送ゲート電極と1つの電荷排出ゲートの例を説明してきたが、後述するN個の転送ゲート電極の場合にも、同様に実施できる。
(第5の実施形態)
図25及び図26は、連続波(CW)変調型のロックインピクセルの従来駆動方法を示している。図26に示したように、CW型のロックインピクセルの従来駆動方法も、光パルス同期型のロックインピクセルの従来駆動方法と同じように、複数の電荷転送ゲートのオン/オフ期間の切り替えを、殆ど同時に行っており、切り替えの瞬間に、一瞬、電荷の向かう方向が不定となり、所望のゲートを電荷が通らないことがあり、精度が低下することがある、という課題がある。
図27(a)及び(b)は、本発明の第5の実施形態に係る測距装置の調整動作を示す駆動タイミング図である。図25及び図26に示した課題を無くすためには、図27(a)及び(b)に示すように、4つのゲートのオン/オフ期間の同時切り替えを明確に無くし、且つ、4つのゲートのオン/オフで決まる繰り返し周期時間Tcを、例えば、2倍、4倍と増やした場合でも、4つの振分ゲート構造である転送ゲート電極のオン期間を、変化させないようにすればよい。
尚、図27(a)及び(b)では、繰り返し周期時間Tcを、例えば、2倍、4倍と増やした場合でも、4つの転送ゲート電極のオン期間を、変化させない図を示しているが、前述してきたように、繰り返し周期時間Tcの大きさに合わせて、オン期間を少しずつ大きくさせてもよく、そのときの第1転送信号TW1、第2転送信号TW2、第3転送信号TW3及び第4転送信号TW4のハイレベル時間の長さの上限は、繰り返し周期時間Tcを変化させても、第1転送信号TW1、第2転送信号TW2、第3転送信号TW3及び第4転送信号TW4が互いにオフセット時間Toffを、同じ設定にすることである。又、図27(a)及び(b)では、第1転送信号TW1、第2転送信号TW2、第3転送信号TW3及び第4転送信号TW4のハイレベル期間を同じにしているが、各々のゲートで変化させてもよい。
(第6の実施形態)
図28は、本発明の第6の実施形態に係る測距装置の画素の構造を説明する模式的な平面図である。第1~第5の実施形態に係る測距装置では、振分ゲート構造である転送ゲート電極が2つの場合又は3つの場合を、排出ゲート電極が1つある場合を含めて説明してきた。転送ゲート電極及び排出ゲート電極の配置できる数は、現実には、画素サイズやレイアウト上の制限等を受け、無限にはできないが、原理上は、無限に増やしてもよい。即ち、Nを2以上の正の整数(自然数),Mを1以上の正の整数として、N個の転送ゲート電極と、M個の排出ゲート電極を有する画素構造とすることが可能である。
図28では、図示を省略した遮光膜で遮光された穴あき型の8角形の受光領域(フォトダイオード)26の外周の各辺に7つのMOS型の転送ゲート電極33p,33q,33r,……33vと1つのMOS型の排出ゲート電極33wが、互いに隣接して連続して配置されている。平面パターン上の配置としては、7つの振分ゲート構造である転送ゲート電極33p,33q,33r,……33vのそれぞれの放射状の外側端部には、電荷蓄積領域23p,23q,23r,……23vが配置され、排出ゲート電極33wの外側端部には排出ドレイン領域23dが配置された構造に見なせる。図示を省略しているが、7つの電荷蓄積領域23p,23q,23r,……23vのそれぞれには、キャパシタ及びソースフォロア型の読出増幅回路が配線等を介して電気的に接続されている。
図29(a)及び(b)は、第6の実施形態に係る測距装置を示す駆動タイミング図である。図29(a)は、繰り返し周期時間Tcが図29(b)の2倍のときの駆動タイミング図である。繰り返し周期時間Tcが2倍は、例示に過ぎない。繰り返し周期時間Tcが任意に変更できるという意味であり、2倍や4倍に限定されるものではない。前述してきたとおり、この場合も、第1転送信号G1、第2転送信号G2、第3転送信号G3、……第7転送信号G7がハイレベルとなる時間は、繰り返し周期時間Tcに関わらず、同じ時間あればよい。又、図29(a)及び(b)では、第1転送信号G1、第2転送信号G2、第3転送信号G3、……第7転送信号G7がハイレベルの時間を同じにしているが、第1転送ゲート電極33p、第2転送ゲート電極33q、第3転送ゲート電極33r、……第7転送ゲート電極33vで変化させてもよい。
7つの転送ゲート電極33p,33q,33r,……33vのそれぞれには第1転送信号G1、第2転送信号G2、第3転送信号G3、……第7転送信号G7が、図29(a)及び(b)に示したように順に印加される。又、排出ゲート電極33wには排出信号GDが印加される。図28に示した第6の実施形態に係る測距装置の画素構造の場合にも、図29(a)及び(b)の駆動タイミング図に示す様に、複数の第1転送信号G1、第2転送信号G2、第3転送信号G3、……第7転送信号G7及び排出信号GDのオン/オフ期間の同時切り替えを、オフセット時間を間に挟むことで、明確に無くせばよい。より具体的には、第1転送信号G1、第2転送信号G2、第3転送信号G3、……第7転送信号G7及び排出信号GDのオン期間を、その間にオフセット時間を設けて明確にわければよい。
穴あき型の受光領域に収集された信号電荷は、受光領域を囲むように、受光領域の周辺に隣接した7つの転送ゲート電極33p,33q,33r,……33vの内の1つ、例えば第1転送ゲート電極33pに、ハイレベルの第1転送信号G1を与えると、受光領域から、その外側の第1電荷蓄積領域23pに信号電荷が放射状方向に移動する。同様に 第2転送ゲート電極33qに、ハイレベルの第2転送信号G2を与えると受光領域から、その外側の第2電荷蓄積領域23qに信号電荷が放射状方向に移動し、第3転送ゲート電極33rに、ハイレベルの第3転送信号G3を与えると受光領域から,第3電荷蓄積領域23rに信号電荷が放射状方向に移動する。そして、第4転送ゲート電極33s,第5転送ゲート電極33t,第6転送ゲート電極33u,第7転送ゲート電極33vに、それぞれハイレベルの第4転送信号G4,第5転送信号G5,第6転送信号G6,第7転送信号G7を順に与えると受光領域から、その外側の第4電荷蓄積領域23s,第5電荷蓄積領域23t,第6電荷蓄積領域23u,第7電荷蓄積領域23vに、それぞれ信号電荷が放射状方向に移動する。
信号電荷の移動により、7つの電荷蓄積領域23p,23q,23r,……23v、及び電荷蓄積領域23p,23q,23r,……23vにそれぞれ電気的に接続された配線と、これらの配線に接続された読出増幅回路を構成する信号読み出しトランジスタ(図4参照。)のゲート電極の電位が変化する。即ち、7つの電荷蓄積領域23p,23q,23r,……23vに蓄積された電荷に応じて、図示を省略した第1~第7の垂直出力信号線の電位が各々変化する。
図1に例示したのと同様に、第6の実施形態に係る測距装置とほぼ同じ位置から、発光部91からパルス光を出射(投射光)し、対象物92からの反射光を第6の実施形態に係る測距装置の各画素で受光する。発光部91から投射するパルス光は、例えば、発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)を用い、例えば、ナノ秒(ns)レベルからフェムト秒(FS)レベルの極短時間なパルス光を投影させる。第6の実施形態に係る測距装置の各画素が受光した受信光は、対象物92の位置に応じて、投射光よりもわずかに遅れる。例えば、対象物92が比較的近い場合には、遅延時間Tdnだけ遅れ、比較的遠い場合には、遅延時間Tdfだけ遅れる。
投射光の光投影時間Toと、第1転送ゲート電極33p、第2転送ゲート電極33q、第3転送ゲート電極33r、……第7転送ゲート電極33vに応じたオン/オフ電圧パルスを同期させれば、対象物92が比較的近い場合には、第2転送ゲート電極33qのパルスに合わせて第2の垂直出力信号線(図示省略。)へ、第3転送ゲート電極33rのパルスに合わせて第3の垂直出力信号線(図示省略。)へと、受信光の遅れ(遅延時間Tdn)、即ち対象物92までの距離に応じて、各々のゲートに対応した出力レベルに違いが生じ、対象物92までの距離が求められる。
同様に、対象物92が比較的遠い場合には、第5転送ゲート電極33tのパルスに合わせて第5の垂直出力信号線(図示省略。)へ、第6転送ゲート電極33uのパルスに合わせて第6の垂直出力信号線(図示省略。)へと、受信光の遅れ(遅延時間Tdf)、即ち対象物92までの距離に応じて、各々のゲートに対応した出力レベルに違いが生じ、対象物92までの距離が求められる。このとき、第1転送ゲート電極33pは受信光が当たらないように設定しているので、第1転送ゲート電極33pを通した第1の垂直出力信号線の出力(図示省略。)には、ノイズを含む受信光以外の電荷のみの出力が得られる。
即ち、測定環境の出力が得られる。したがって、対象物92が比較的近い場合には、第1の垂直出力信号線の出力を第2の垂直出力信号線の出力及び第3の垂直出力信号線の出力から減算してやれば、測定環境が明るい場合でも、受信光のみの信号が得られ、明るい場合の対象物92までの距離を正確に得ることができ、対象物92が比較的遠い場合には、第1の垂直出力信号線の出力を第5の垂直出力信号線の出力及び第6の垂直出力信号線の出力から減算してやれば、測定環境が明るい場合でも、受信光のみの信号が得られ、明るい場合の対象物92までの距離を正確に得ることができる。
更に、排出ゲート電極33wは、受信光を撮像している第1転送ゲート電極33p、第2転送ゲート電極33q、第3転送ゲート電極33r、……第7転送ゲート電極33vがオン/オフする7Ta時間以外の時間に、受光領域に収集された電荷を排出ドレイン領域23dに排出する。第6の実施形態に係る測距装置によれば、受信光以外の光電子を信号とする割合が更に減らせるため、より明るい環境でも対象物92までの距離が正確に求められるようになる。第6の実施形態に係る測距装置のように、転送ゲート電極数を増加させると、電荷蓄積時間Taが同じ周期であれば、転送ゲート電極数が多くなった分、長い距離の測定が可能になり、同じ距離を測ろうとすれば、転送ゲート電極数が多くなった分、測定距離の分解能を上げることができる。
(第6の実施形態の第1変形例)
図30(a)及び(b)は本発明の第6の実施形態の第1変形例に係る測距装置を示す駆動タイミング図である。図30(b)は、第6の実施形態で説明した図29(b)の駆動タイミング図と同じものである。図30(a)は、繰り返し周期時間Tcが図30(b)2倍のときの駆動タイミング図である。繰り返し周期時間Tcが2倍は、例示に過ぎない。繰り返し周期時間Tcが任意に変更できるという意味であり、2倍や4倍に限定されるものではない。第2及び第3の実施形態に係る測距装置等で既に説明してきたとおり、繰り返し周期時間Tcを増やした場合、第1転送信号G1、第2転送信号G2、第3転送信号G3、……第7転送信号G7のオン期間を大きくしてもよい。そして、このとき第1転送信号G1、第2転送信号G2、第3転送信号G3、……第7転送信号G7のそれぞれのオン期間の長さの上限は、繰り返し周期時間Tcを変化させても、Gが互いにオフセット時間Toffを、同じ設定にすることである。
又、図30(a)及び(b)では第1転送信号G1、第2転送信号G2、第3転送信号G3、……第7転送信号G7のそれぞれのオン期間を同じにしているが、各々のゲートで変化させてもよい。
このように、第6の実施形態の第1変形例に係る測距装置によれば、振分ゲート構造である転送ゲート電極の数を増加させると、電荷蓄積時間Taが同じ周期であれば、転送ゲート電極の数が多くなった分、長い距離の測定が可能になり、同じ距離を測ろうとすれば、転送ゲート電極の数が多くなった分、測定距離の分解能を上げることができる。
(第6の実施形態の第2変形例)
測定環境の影響を取り除く距離測定は、原理的には2つの連続した転送ゲート電極と、測定環境のみの出力を得られる1つの転送ゲート電極の3つが振分ゲート構造としてあればよい。換言すれば、3つの転送ゲート電極構造の場合、測定環境のみの出力を得る1つのゲートは、1つめ(最初)か3つめ(最後)を用いればよい。しかし、現実的には、出射光の発光時間遅れや、受信光を光電変換したのちの光電子が受光領域に蓄積されるまでの移動時間等の遅れが生じるため、3つの転送ゲート電極構造の場合、測定環境のみの出力を得る1つのゲートは、1つめ(最初)とするのがよい。一方、4つ以上の転送ゲート電極になれば、測定環境のみの出力を得る1つのゲートは、1つめ(最初)か4つめ(最後)を用いれば良くなる。
したがって、駆動タイミング図の図示を省略しているが、本発明の第6の実施形態の第2変形例に係る測距装置の駆動調整方法として、第1転送ゲート電極33pに印加する第1転送信号G1に同期させて投射光を発光させてもよい。これにより、同じ構成のまま、距離測定に使える転送ゲート電極数を1つ増やすことができる。例えば、対象物92が比較的近い場合には、第1の垂直出力信号線と第2の垂直出力信号線に、受信光の出力があるため、上記説明したように、1つ飛ばして、第4の垂直出力信号線を測定環境のみの出力と見なせばよい。同様に、対象物92が比較的遠い場合には、第4の垂直出力信号線と第5の垂直出力信号線に、受信光の出力があるため、上記説明したように、1つ飛ばして、第7の垂直出力信号線を測定環境のみの出力と見なせばよい。
そして、対象物92が比較的近い場合には、第4の垂直出力信号線を第1の垂直出力信号線の出力及び第2の垂直出力信号線の出力から減算してやれば、測定環境が明るい場合でも、受信光のみの信号が得られ、明るい場合の対象物92までの距離を正確に得ることができ、対象物92が比較的遠い場合には、第7の垂直出力信号線を第4の垂直出力信号線及び第5の垂直出力信号線の出力から減算してやれば、測定環境が明るい場合でも、受信光のみの信号が得られ、明るい場合の対象物92までの距離を正確に得ることができる。
他にも、多数の転送ゲート電極を振分ゲート構造として有する場合、例えば、第1~第7の垂直出力信号線の出力の出力を比較し、単純に最も小さい出力を測定環境の出力と見なすなど、測定環境の出力を求めるには、様々な方法が可能となる。更に、排出ゲート電極33wは、受信光を撮像している第1転送ゲート電極33p、第2転送ゲート電極33q、第3転送ゲート電極33r、……第7転送ゲート電極33vがオン/オフする7Ta時間以外の時間に、受光領域に収集された電荷を排出ドレイン領域23dに排出する。第6の実施形態の第2変形例に係る測距装置によれば、受信光以外の光電子を信号とする割合が更に減らせるため、より明るい環境でも対象物92までの距離が正確に求められるようになる。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1~第6の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、既に述べた第1~第6の実施形態の説明では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として説明したが、第1導電型をn型、第2導電型をp型としても、電気的な極性を反対にすれば同様な効果が得られることは容易に理解できるであろう。
本発明の第1の実施形態の変形例に係る測距装置の説明では、図9を用いて本発明の「振分ゲート構造」が横方向電界制御ゲート(LEFM)で構成される例を示した。そして、本発明の第1~第6の実施形態に係る測距装置の説明の多くは、振分ゲート構造がMOS型若しくはMIS型のゲート電極構造の場合を例示した。しかし、振分ゲート構造や電荷排出電極は、MOS型やMIS型のゲート電極構造に限定されるものではなく、例えば、LEFMでもよいし、その他、同様な信号電荷を輸送や転送ができる機能を備える構成であればよい。第1~第6の実施形態の記載では、光電変換部は、pn接合型のフォトダイオードを構成する受光領域を用いて説明してきた。しかし、光電変換部も、pn接合型のフォトダイオードに限定されるものではなく、例えば、透明電極をゲート電極としたMOS構造を用いた光電変換部を有する所謂「フォトゲート(PG)」の構造を備えるものでもよいし、その他、同様な光電変換機能を備える構成でも構わない。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。