JP7363639B2 - コアシェル型複合粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、膨潤性のコア部分を有するコアシェル型複合粒子に関し、詳細には、坑井掘削に用いられる掘削液に添加され得る、コアシェル型複合粒子に関する。
シェールガスなど地下資源の採取のために、水圧破砕法と称される坑井掘削法が採用されている。これは、坑井内を満たした掘削液を高圧で加圧することで、坑井近傍に亀裂を生じさせ、坑井への資源の流入断面を拡大して生産性を向上させる方法である。
水圧破砕法に用いる掘削液には加水分解性樹脂粒子が添加されており、この加水分解性樹脂粒子が亀裂のシール材となり、一時的に資源の流路を塞ぐ役割を果たしている。
このような加水分解性樹脂として特許文献1では、平均粒径(d50)が300μm~1000μmの範囲であり、0.8以上の真円度を有し、重量平均分子量が10000以上のポリ乳酸粒子を用いることが開示されている。
前記粒子は亀裂の一時的塞栓に有用であるが、硬質の粒子であるため必ず粒子間空隙が生じ、少量で亀裂を完全に塞栓することは困難であった。また加水分解温度が120℃と高いため、120℃を下回る浅い地層では分解が遅く工程に待ち時間が生じる課題があった。
これを解決するため本発明者らは、水中で吸水膨潤する樹脂と、アルコキシシラン及び/又はその低縮合物の加水分解重縮合物に由来する三次元シロキサン架橋構造を有する成分とを含む有機/無機複合体粒子を特許文献2に開示した。
前記複合体粒子は三次元シロキサン架橋構造有する成分を含むことにより、地上のスラリー調製時点では膨潤抑制され送液が容易となり、掘削坑内の亀裂部分に到達した後に膨潤変形することで亀裂を隙間なく塞栓し、少量で高い止水効果を得ることができる。一方、塞栓したい亀裂が地下深い高温地層にある場合、坑口から遠位にあり粒子到達まで時間がかかる地層にある場合、また微細な亀裂につき小粒子径の複合体粒子を使わざるを得ない場合などには時間や温度の影響で亀裂到達前に大きく膨潤してしまうことがあり、効果的な止水ができない課題があった。
このため、常温付近での膨潤がより抑制され、高温地層に到達したのち大きく膨潤する水膨潤性樹脂粒子が望まれていた。
特開2016-148193号公報 特開2019-90021号広報
本発明では、坑井掘削に用いられる掘削液に添加し得る、新たな複合粒子を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を進め、水膨潤性のポリビニルアルコール(PVA)系樹脂を、長繊維からなる層で被覆したコアシェル型複合粒子を用いることで、
常温ではコアの膨潤性物質の膨張が小さく、一方で温度が上昇することで大きく膨潤するという特性を有する、新たな複合粒子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下のものを含む。
[1]膨潤性物質からなるコア粒子と、
該コア粒子を被覆する、繊維径が1~10nm、アスペクト比が100以上の繊維状物質を含む繊維層と、
該繊維層を被覆する、ポリビニルアルコール系樹脂及びシリケート加水分解縮合物の複合樹脂を含む複合樹脂層と、
を有する、コアシェル型複合粒子。
[2]膨潤性物質からなるコア粒子と、
該コア粒子を被覆する、繊維径が1~10nm、アスペクト比が100以上の繊維状物質と、ポリビニルアルコール系樹脂及びシリケート加水分解縮合物の複合樹脂と、を含む繊維含有複合樹脂層を有する、コアシェル型複合粒子。
[3]前記繊維状物質が、アルミナ繊維である、[1]又は[2]に記載のコアシェル型複合粒子。
[4]前記コア粒子は、平均粒子径d50が1μm以上3000μm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のコアシェル型複合粒子。
[5]前記膨潤性物質が、カルボキシル基を有するポリビニルアルコール系樹脂の架橋物である、[1]~[4]のいずれかに記載のコアシェル型複合粒子。
[6]前記複合粒子は、25℃における膨潤試験の1時間後の嵩高さが10mm以下、かつ5時間後の嵩高さが20mm以下であり、60℃における膨潤試験の5時間後の嵩高さが25mm以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のコアシェル型複合粒子。
[7]膨潤性物質からなるコア粒子と、該コア粒子を被覆する、繊維径が1~10nm、アスペクト比が100以上のアルミナ繊維状物質を含む繊維層と、を有する、コアシェル型複合粒子。
本発明により、常温ではコアの膨潤性物質がほとんど膨張せず、一方で温度が上昇することで膨潤するという特性を有する、新たな複合粒子が得られる。
図1は、実施例における25℃膨潤試験の膨潤の度合いを説明する図である。本発明の一実施形態である水圧破砕法において用いられる水膨潤性樹脂粒子のスラリー調製時の膨潤度を想定した実験である。 図2は、実施例における40℃および60℃膨潤試験の膨潤の度合いを説明する図である。本発明の一実施形態である水圧破砕法において用いられる水膨潤性樹脂粒子が、地下においてシール材(クラック充填材)として稼働時の膨潤度を想定した実験である。 図3は、本発明のコアシェル型複合粒子を、水圧破砕法に適用した場合の、スラリー調製時と地下に投入され、亀裂へのシール材(クラック充填材)として動作する状態との挙動を示すイメージ図である。
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の一実施形態に係るコアシェル型複合粒子は、膨潤性物質からなるコア粒子と、該コア粒子を被覆する、繊維径が1~10nm、且つアスペクト比が100以上の繊維状
物質を含む繊維層と、該繊維層を被覆する、PVA系樹脂及びシリケート加水分解縮合物を含む複合樹脂層と、を有する。
膨潤性物質は、水膨潤性である物質であり、水膨潤性としては、物質の5倍以上の重量の水中に浸漬した場合に、ゲル状に膨張し体積が増えるものであればよく、好ましくはその後加水分解や生分解、水溶性によって水中に完全に溶解してしまうものである。
膨潤性物質の具体例としては、(メタ)アクリル酸系樹脂、ビニル系樹脂、生分解性ポリエステル系樹脂、ポリカルボン酸架橋多糖類樹脂、アミノ酸や糖類により架橋されたポリアミノ酸樹脂などがあげられる。中でも掘削用の一時的塞栓材に用いる場合は環境親和性の観点から加水分解性及び生分解性を有する物質が好ましい。これらのうち適度な加水分解性及び生分解性を有し合成が容易である点から好ましくはPVA系樹脂であり、カルボキシル基を有するPVA系樹脂の架橋物がより好ましい。
また、膨潤性物質がPVA系樹脂である場合、そのケン化度は通常70モル%以上であり、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、通常100モル%以下であり、好ましくは99モル%以下であり、98モル%以下であることが好ましい。
カルボキシル基含有PVA系樹脂の架橋物について説明する。前記架橋物を形成する方法(架橋方法)としては、例えば、熱処理、架橋剤処理、紫外線照射処理、電子線照射処理等が用いられる。中でも好ましくは、熱処理により架橋された熱架橋物である。以下、架橋方法について説明する。
まず、熱処理による架橋方法について説明する。
熱処理の方法については、通常はカルボキシル基を有するPVA系樹脂を特定の熱処理に供する方法が挙げられる。熱処理条件として、熱処理温度は、通常、100~220℃であり、好ましくは120~200℃、より好ましくは130~150℃である。熱処理温度をこの下限以上とすることで、耐水性が向上し、この上限以下とすることでPVA系樹脂が分解する恐れなく処理することができる。
また、熱処理時間は、通常、10~600分であり、好ましくは20~400分、より好ましくは100~400分である。熱処理時間をこの下限以上とすることにより耐水性が向上し、上限以下とすることで、PVA系樹脂が分解する恐れなく処理できる。また、溶融押出等により、熱処理を施すことも可能である。
なお、本発明においては、カルボキシル基を有するPVA系樹脂の熱架橋物が、100
~220℃で、10~600分間加熱されてなるものであることが好ましい。
かかる熱処理により得られた熱架橋物の黄色度を表すイエローインデックス(YI)値
は、通常、20~100であり、好ましくは25~80、より好ましくは55~65である。YI値がこの下限以上にすることにより耐水性が向上し、上限値以下とすることによりPVA系樹脂の吸水性が向上する。
なお、YI値はJIS K 7373:2006の方法で求めることができる。
次に、架橋剤による架橋方法について説明する。
架橋剤処理で用いる架橋剤としては、カルボキシル基を有するPVA系樹脂の架橋剤と
して公知のものを用いることができる。例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のモノアルデヒド化合物;グリオキザール、グルタルアルデヒド、ジアルデヒド澱粉等の多価アルデヒド化合物などのアルデヒド化合物;メタキシレンジアミン、ノルボルナンジ アミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビスアミノプロピルピペラジン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミ
ノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノ-5,5’-ジエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフォン、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、3-メチル-1,2-フェニレンジアミン、4-メチル-1,2-フェニレンジアミン、2-メチル-1,3-フェニレンジアミン、4-メチル-1,3-フェニレンジアミン、2-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレンジアミン、2,4-ジエチル-6-メチル-1,3-フェニレンジアミン、2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジアミン、2-クロロ-1,4-フェニレンジアミン等のアミン系化合物;メチロール化尿素、メチロール化メラミンなどのメチロール化合物;ヘキサメチレンテトラミン等のアンモニアとホルムアルデヒドとの反応物;ホウ酸、ホウ砂などのホウ素化合物;塩基性塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム化合物;テトラメチルチタネートのようなチタンオルソエステル類;チタンエチルアセトアセトナートのようなチタンキレート類;ポリヒドロキシチタンステアレートのようなチタンアシレート類などのチタン化合物;アルミニウムアセチルアセトナートのようなアルミニウム有機酸キレート類などのアルミニウム化合物;シランカップリング剤などの有機反応性基を有するオルガノアルコキシシラン化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価エポキシ化合物;各種イソシアネート系化合物、ポリアミドポリアミン-エピクロロヒドリン系樹脂などのポリアミドポリアミン-エピハロヒドリン系樹脂;などが挙げられる。とりわけ、ポリアミドポリアミン-エピクロロヒドリン系樹脂が好ましい。
かかる架橋剤の含有量はカルボキシル基を有するPVA系樹脂100質量部に対して0.0 5~30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~20質量部、特に好ましくは1~10質量部である。架橋剤の含有量が少なすぎると、架橋剤による効果が乏しく なる傾向があり、また、上限値以下にすることにより吸水性を高い状態に保ちやすい。
カルボキシル基を有するPVA系樹脂と架橋剤の混合方法としては、例えば、(i)カルボキシル基を有するPVA系樹脂水溶液と架橋剤水溶液を混合する方法、(ii)固体状(粉末等)のカルボキシル基を有するPVA系樹脂に架橋剤水溶液を噴霧する方法、(iii)固体状の架橋剤にカルボキシル基を有するPVA系樹脂水溶液を噴霧する方法、などが用いられる。中でも、短い乾燥時間で固体状の架橋物が得られることから(ii)の方法が好ましい。
PVA系樹脂の粒子形状は特に限定されない。球状、針状、円柱状、ラグビーボール状、板状、破砕状、不定形状などを目的に応じて単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。
PVA系樹脂は、市場で入手できるものを用いてもよく、合成することで入手してもよい。合成する場合には、既知の方法により合成することができる。
膨潤性物質は、本実施形態に係る複合粒子のコアを形成する粒子であり、コア粒子の平均粒子径(d50)は、通常1μm以上であり、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、特に好ましくは300μm以上であり、また通常3mm以下であり、好ましくは2mm以下である。粒子径がこの範囲より大きすぎると目的の亀裂に充填することができなくなり、小さすぎると粉体の表面積が増え膨潤速度が抑制しにく
くなる。
コア粒子の25℃水中における自重に対する最大膨潤度は、50以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、200以上であることが特に好ましい。膨潤度は後述の重量法膨潤試験により測定できる。重量法膨潤度と体積法膨潤度の相関が既知の場合は、後述の体積法膨潤試験によっても間接的に重量法膨潤度を求めることができる。また、膨潤性物質は、スラリー調製から一定時間は亀裂の塞栓状態を維持することが必要なため、25℃1時間における溶解率が50%以下であることが好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。溶解率はコア粒子0.2gを200gの水中で25℃1時間膨潤させ、目開き125μmのナイロンメッシュで膨潤ゲル回収後、アルミカップ上で140℃で恒量まで乾燥し、仕込みコア粒子重量で除することでまず残存率を求め、(溶解率(%)=100-残存率(%))とすることで求めることができる。
本実施形態においてコア粒子は、繊維径が1nm以上、10nm以下が好ましく、且つアスペクト比が100以上の繊維状物質を含む繊維層に被覆され得る。繊維径がナノサイズとなることで分子が繊維長さ方向に配向するため、繊維の力学的強度が高くなる効果が得られる。繊維径は、断面の円相当径を意味する。繊維状物質としては有機繊維、無機繊維いずれでもよく、繊維径が1~10nmでアスペクト比が100以上であれば特段限定されないが、可撓性があり、水に難溶性の繊維であることが好ましい。可撓性がある繊維を用いることで長繊維でも折損することなくコア粒子表面に付着し、クラックや剥離の少ない繊維層を形成することができる。また水に難溶性の繊維であることで、耐水性のあるコート層形成することができる。具体的には有機繊維として、セルロース繊維、ポリエステル繊維など、無機繊維として炭素繊維やガラス繊維の他、シリカ繊維、アルミナ繊維、チタニア繊維、ムライト繊維,ジルコニア繊維,炭化ケイ素繊維などのセラミック繊維などが好ましい。中でも耐熱性,耐食性のほか力学特性にもすぐれているため無機繊維が好ましく、接着性、製膜性に優れることからアルミナ繊維であることが特に好ましい。アスペクト比は200以上であってよく、上限は特段限定されないが、通常10000以下であり、1000以下であってよい。なお、水に難溶性とは、105℃で恒量になるまで乾燥した繊維状物質の単独固形物を25℃1時間水に浸漬後、水から取り出して再び105℃で恒量になるまで乾燥した時に、90重量%以上残存する性質を有するものをいう。
別の実施形態においてコア粒子は、繊維径が1nm以上、10nm以下、且つアスペクト比が100以上のアルミナ繊維状物質を含む繊維層に被覆され得る。アルミナ繊維状物質のアスペクト比は、200以上であってよく、上限は特段限定されないが、通常10000以下であり、1000以下であってよい。
繊維層のコート量は特段限定されないが、コア粒子の乾燥重量に対する繊維層固形分の重量として、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましく、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましい。
繊維層の厚さは特段限定されないが、通常0.01μm以上であり、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限は特段設定されないが、通常0.3μm以下であり、0.25μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがより好ましい。この範囲より厚くなると水中でコア粒子の膨潤に長時間を要したり、膨潤開始に高い温度を要したりすることになる。またこの範囲より薄くなると、膨潤抑制効果が認められなくなる。
繊維層でコア粒子をコートする方法は特段限定されず、例えば水などの水溶性溶媒に、繊維状物質と、必要に応じ安定化剤を加えた繊維状物質ゾルを調製し、ここにコア粒子を
添加して攪拌後、乾燥させることで得られる。コア粒子が繊維状物質ゾルの持ち込み水分により膨潤してコートに支障をきたす場合は有機溶媒分散ゾルを用いることもできる。
繊維層により被覆されたコア粒子は、更に(1)ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、及び(2)シリケート加水分解縮合物、を含む複合樹脂層により被覆され得る。
(1)ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂
本実施形態で複合樹脂層に用いるPVA系樹脂は、ビニルアルコール構造単位を有する樹脂であれば、その具体的な構造は特に限定されず、典型的には酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステルモノマーを重合したポリカルボン酸ビニルエステルをケン化して得られるが、これに限られない。
前記PVA系樹脂としては、未変性PVA、変性PVA系樹脂が挙げられる。
変性PVA系樹脂としては、PVA構造単位を供与するビニルエステル系モノマー以外のモノマーを共重合することにより合成される共重合変性PVA系樹脂であってもよいし、未変性PVAを合成した後に主鎖または側鎖を適宜化合物で変性した後変性PVA系樹脂であってもよい。
共重合変性PVA系樹脂に用いることができる共重合モノマー(不飽和単量体)としては、例えば、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類またはその塩;モノエステル、もしくはジアルキルエステル;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩;ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジエチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩;酢酸イソプロペニル、1-メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類;ポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル、等のポリ(オキシアルキレン)基を有するアリルエーテル;等が挙げられる。
また、共重合変性PVA系樹脂として、側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂が挙げられる。かかるPVA系樹脂としては、例えば3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、ビニルエチレンカーボネート、グリセリンモノアリルエーテル等を共重合して得られる側鎖1,2-ジオール変性PVA系樹脂;1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチロニルオキシ-2-メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート;等を共重合し、ケン化して得られる側鎖にヒドロキシメチル基を有するPVA系樹脂が挙げられる。
後変性PVA系樹脂の後変性の方法としては、未変性PVAあるいは上記変性PVA系樹脂をアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
本実施形態では上記の未変性PVA、変性PVA系樹脂いずれも使用できるが、シリケート加水分解物との相溶性を確保するために、未変性PVAの場合は部分ケン化品、変性PVA系樹脂の場合は側鎖に親水性に優れた官能基、例えばカルボン酸基やスルホン酸基などを有するアニオン変性基含有PVA系樹脂、ヒドロキシアルキル基やオキシエチレン基などを有するノニオン変性基含有PVA系樹脂が好ましい。
変性PVA系樹脂の場合は特に後述する三次元シロキサン架橋構造の形成への影響が小さいことからノニオン変性基含有PVA系樹脂が好ましく、中でもPVAの特徴である分子間水素結合力を維持したまま結晶性を乱すことで親水性を高めることが可能な、側鎖にヒドロキシアルキル基、特に1級水酸基を有する変性PVA系樹脂が好ましく用いられる。
中でも以下の一般式(1)で表される側鎖に1,2-ジオール構造単位を有する変性PVA系樹脂であることが、水分散後の溶解性に優れること、高い水素結合力により複合体粒子表面及び/又は内部に形成された三次元シロキサン架橋構造を有する成分との親和性に優れ、初期溶解性・膨潤性の抑制効果が得られやすいことの観点から好ましい。
Figure 0007363639000001
上記(1)で表される構造単位を有する場合、PVA系樹脂中の上記(1)で表される構造単位の含有量は特に限定されないが、通常0.01モル%以上、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、また通常20モル%以下、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。かかる含有量が少なすぎるとシリケート加水分解物との相溶性が低下しすぎる傾向があり、多すぎると得られる複合膜の溶解性が高くなり耐水性に劣る傾向がある。
PVA系樹脂を水に溶解する場合はケン化度、重合度によって水への溶解性が相違する。PVA系樹脂のケン化度は特段限定されないが、未変性PVAである場合、通常ケン化度70モル%以上、好ましくは70~95モル%、特に好ましくは70~90モル%である。
上記(1)で表される構造単位を有するPVA系樹脂の場合は通常、ケン化度は85モル%以上であり、90モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましい。また上限は通常100モル%以下であり、好ましくは99.8モル%以下である。ケン化度は、JIS K6726の滴定法で測定した値である。
複合膜のコート液をメタノールやエタノールなどの有機溶媒を多く含む系として調液する場合、未変性PVAであればケン化度70~80モル%が好ましく、水溶性を補うためにポリオキシアルキレン基などの親水性基で変性されたPVA系樹脂を用いる場合はケン化度40~70モル%のものも使用できる。
PVA系樹脂の平均重合度は特段限定されないが、未変性PVAである場合、通常200~3000、好ましくは250~2800、特に好ましくは300~2600である。
上記(1)で表される構造単位を有するPVA系樹脂の場合、平均重合度は通常100以上であり、200以上であることが好ましく、250以上であることがより好ましい。この範囲にすることで、溶解性が高くなりすぎることを防ぎやすくなる。また通常4000以下であり、3500以下であることが好ましく、2800以下であることがより好ましい。この範囲にすることにより、溶解性が低くなりすぎることを防ぎやすくなる。かかる平均重合度は水溶液粘度測定法(JIS K 6726)で測定した値である。
PVA系樹脂は、1種の樹脂のみを用いてもよく、2種以上の樹脂をブレンドして用いてもよい。この場合、構造単位が異なるものであってよく、ケン化度が異なるものであってよく、平均重合度が異なるものであってもよい。ブレンドして用いる場合のケン化度、平均重合度などは、全てのPVA系樹脂の平均値が上記の範囲内であればよい。
シリケート(ケイ酸塩)としては特段限定されず、アルコキシシラン及び/又はその低縮合物として公知のものを用いることができる。
アルコキシシランは、アルコキシ基を有するシランであれば特段限定されず、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~10の脂肪族アルコキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基等の炭素数6~15の芳香族アルコキシ基があげられる。加水分解反応制御がしやすい点から、炭素数1~4の脂肪族アルコキシ基が好ましい。
アルコキシシランとしては、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランがあげられる。
より具体的には、ビニルジメチルエトキシシランなどのモノアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシランなどのジアルキルジアルコキシシラン;ジアリールジアルコキシシラン;3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ジアルコキシシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基含有ジアルコキシシラン;3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有ジアルコキシシラン;ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のアルケニル基含有ジアルコキシシラン;3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルエチルジエトキシシランなどのエポキシ基含有ジアルコキシシラン類などのジアルコキシシランが挙げられる。
また、トリメトキシシランのようなヒドロシリル基を有するトリアルコキシシラン類;メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン類、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアリールトリアルコキシシラン類;2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-[N-(2-アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン等のアミノ基含有トリアルコキシシラン;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有トリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン等のアルケニル基含有トリアルコキシシラン;2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有トリアルコキシシラン;(グリシジルオキシアルキル)トリアルコキシシラン(例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有トリアルコキシシラン;γ-イソシアノプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアノプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するトリアルコキシシラン;等のトリアルコキシシランが挙げられる。
さらに、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシランが挙げられる。
これらの中でもPVA系樹脂との複合体とした場合にケイ素に結合した疎水基の導入量少ないため得られたコアシェル型粒子が水に浮くことが無く、かつアルコキシシランの加
水分解縮合により生成したシロキサン架橋構造が高架橋となり得られる複合樹脂膜の耐水性が良好となる点から、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシランが好ましく、テトラアルコキシシランがより好ましい。
アルコキシシラン及び/又その低縮合物は、溶媒中で加水分解させるとコーティング可能な加水分解重縮合物となる。ここでいう低縮合物とは、アルコキシシランの2~10量体程度のオリゴマーを意味し、2~8量体程度のオリゴマーであってよく、2~5量体程度のオリゴマーであってよい。溶媒としては、通常メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1~4の低級アルコールや、これらと水との混合物などが用いられる。
複合樹脂層におけるシリケート含有量は特段限定されないが、好ましくはSiO換算で15重量%以上、より好ましくは20重量%以上、特に好ましくは30重量%以上である。また好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下である。
複合樹脂層によるコート量は特段限定されないが、コア粒子の乾燥重量に対する複合樹脂層固形分の重量として、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましく、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましい。
複合樹脂層でコア粒子をコートする方法は特段限定されず、例えば、アルコールなどの水溶性溶媒中で水とシリケートを反応させて加水分解液とし、その後PVAの水またはアルコール溶液を加えて攪拌して複合樹脂コート溶液を調製し、ここに繊維層で被覆されたコア粒子を添加して攪拌後、乾燥させることで得られる。
上記方法により得られた、本実施形態にかかる複合粒子は、25℃における本明細書規定の膨潤試験の1時間後の嵩高さが10mm以下かつ、25℃5時間後の嵩高さが20mm以下であり、60℃における膨潤試験の5時間後の嵩高さが25mm以上であることが好ましい。すなわち、常温においてほとんど膨潤しないが、40℃~60℃になると膨潤するという、温度スイッチ機能を有し得る。このような温度スイッチ機能を有する本実施形態の複合粒子は、水圧破砕法に用いる掘削液に添加し得る膨潤性物質として有用である。
上記25℃または60℃の膨潤試験は、複合粒子0.2gを、底面が平坦な胴径55mmのガラス製バイアル瓶に入れ、そこに25℃または60℃の脱塩水200mlを加える。そして、25℃または60℃に設定した恒温環境試験機内で複合粒子を膨潤させて、経時ごとに複合粒子の嵩高さを測定することで行う(体積法)。
膨潤試験は重量法により行うこともできる。上記膨潤試験は複合粒子0.2gを秤量し、底面が平坦ならで胴径55mmガラス製バイアル瓶に入れ、そこに所定の温度の脱塩水200mlを加える。そして、所定の温度に設定した恒温環境試験機内で粒子を膨潤させる。膨潤させた粒子を、目開き125μmのナイロンメッシュを敷いたふるい上で回収する。静置した状態で5分間水切りを行い、アルミカップに膨潤粒子を入れて重量を測定し、膨潤試験開始時に仕込んだ重量で除して膨潤度を求める(重量法)。
体積法の層高と重量法の膨潤度の相関が既知である場合は、体積法の層高を用いて、重量法の膨潤度を簡易的に求めることもできる。
上記重量法により得られた、本実施形態にかかる複合粒子は、25℃1時間における膨潤度が40倍以下かつ25℃5時間における膨潤度が80倍以下であり、60℃5時間における膨潤度が100倍以上であることが好ましい。
また、得られた複合粒子の平均粒子径d50は、通常10μm以上であり、好ましくは50μm以上であり、また通常3mm以下であり、好ましくは2mm以下である。
本発明の別の実施形態に係るコアシェル型複合粒子は、コア粒子を被覆する、繊維径が1~10nm、アスペクト比が100以上の繊維状物質と、ポリビニルアルコール系樹脂及びシリケート加水分解縮合物の複合樹脂と、を含む繊維含有複合樹脂層を有する、コアシェル型複合粒子に関して説明する。
使用するコア粒子、繊維状物質、ポリビニルアルコール系樹脂及びシリケート加水分解縮合物の複合樹脂、その他の好ましい要件に関しては、既述の膨潤性物質からなるコア粒子と、該コア粒子を被覆する、繊維径が1~10nm、アスペクト比が100以上の繊維状物質を含む繊維層と、該繊維層を被覆する、ポリビニルアルコール系樹脂及びシリケート加水分解縮合物の複合樹脂を含む複合樹脂層と、を有する、コアシェル型複合粒子の場合と同じ態様が好ましい。
そして繊維含有複合樹脂層に含まれる繊維の含有量は、その上限は特に限定されないが、スイッチング能力の発揮しやすさや製造しやすさの点から50重量%以下であることが好ましい。また、下限としては、5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。
以下、実験例を示し、本発明をより詳細に説明するが、実験例の具体的な説明により本発明が限定さることはない。
<シリケート加水分解液の調製>
三菱ケミカル株式会社製メチルシリケートMS51 30.8重量部にメタノール62.24重量部を添加し、次いでマレイン酸0.31重量部を加えた。これに脱塩水6.5重量部を加え、室温で均一になるまで撹拌し、室温下で1晩静置することで加水分解縮合を進め、シリケート加水分解液100重量部を得た。
<PVA溶液の調製>
別容器にて脱塩水60gを強撹拌しながら、平均重合度650、ケン化度72モル%のPVA粉末20gを継粉にならないよう徐々に添加して室温で分散させ、70℃まで昇温し、完全に溶解するまで撹拌を継続した。その後、溶液を室温まで冷却したのち、メタノールを20g追添加して撹拌し、均一化させて淡黄色透明のPVA溶液を得た。
<HB(ハイブリッド)コーティング液の調製>
上記調製したシリケート加水分解液2.03gに、上記調製したPVA溶液1.63g及び脱塩水1.26gを混合し、均一になるまで撹拌し、無色透明のPVA-シリケートHBコーティング液を得た。
<アルミナ含有HB(ハイブリッド)コーティング液の調製>
以下の表1に示す長繊維アルミナゾル0.38gを撹拌しながら、上記調製したシリケート加水分解液1.88g、上記調製したPVA溶液1.50g、及び脱塩水1.24gを混合し、均一になるまで撹拌し、無色透明のアルミナ含有HBコーティング液を得た。
Figure 0007363639000002
<アルミナゾル単独コート用コーティング液>
上記表1に示すアルミナゾル液をそのままコーティング液として使用した。
<水膨潤性粒子(コア粒子)>
水膨潤性粒子として、カルボキシル基を有するPVA系樹脂の熱架橋物(マレイン酸変性PVA系樹脂の熱架橋物)を準備した。該カルボキシル基を有するPVA系樹脂の熱架橋物の諸特性を表2に示す。この粒子は乾燥状態の粒子0.2gを80℃の水500gに30分浸漬した時に、含水ゲル重量で約280倍に膨潤する特性を持つ。
なお、以降は該カルボキシル基を有するPVA系樹脂の熱架橋物を架橋PVA粒子と呼称する。
Figure 0007363639000003
以下に架橋PVA粒子のコート方法を示す。本文中のコート量(%)は、コート前架橋PVA粒子の乾燥重量に対するコート液固形分の重量(%)のことである。
<実施例1:長繊維アルミナコート複合粒子>
架橋PVA粒子をガラス瓶に5g入れ、表1に示す長繊維アルミナゾル3.06gを加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で5時間乾燥し、実施例1の複合粒子を得た。
<実施例2:長繊維アルミナコート1%+HBコート1%+PVAコート>
架橋PVA粒子をガラス瓶に5g入れ、表1に示す長繊維アルミナゾル1.02gを加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で1時間仮乾燥した。乾燥機から取り出し、室温に降温するまで静置し、上記調製したHBコーティング液を0.38g加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で1時間仮乾燥した。乾燥機から取り出し、室温に降温するまで静置し、さらに上記調製したPVA溶液を0.38g加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で5時間乾燥し、実施例2の複合粒子を得た。
<実施例3:長繊維アルミナコート1%+HBコート1%>
架橋PVA粒子をガラス瓶に5g入れ、表1に示す長繊維アルミナゾル1.02gを加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で1時間仮乾燥した。乾燥機から取り出し、室温に降温するまで静置し、上記調製したHBコーティング液を0.38g加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で5時間乾燥し、実施例3の複合粒子を得た。
<実施例4:長繊維アルミナコート2%+HBコート1%>
架橋PVA粒子をガラス瓶に5g入れ、表1に示す長繊維アルミナゾル2.04gを加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で1時間仮乾燥した。乾燥機から取り出し、室温に降温するまで静置し、上記調製したHBコーティング液を0.38g加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で5時間乾燥し、実施例4の複合粒子を得た。
<実施例5:長繊維アルミナコート0.1%+HBコート2%>
架橋PVA粒子をガラス瓶に5g入れ、表1に示す長繊維アルミナゾル0.1gを加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で1時間仮乾燥した。乾燥機から取り出し、室温に降温するまで静置し、上記調製したHBコーティング液を0.77g加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で5時間乾燥し、実施例5の複合粒子を得た。
<実施例6:アルミナ含有HBコート3%>
架橋PVA粒子をガラス瓶に5g入れ、上記調製したアルミナ含有HBコーティング液を1.15g加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で5時間乾燥し、実施例6の複合粒子を得た。
<比較例1:HBコート3%>
架橋PVA粒子をガラス瓶に5g入れ、上記調製したHBコーティング液を1.15g加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で5時間乾燥し、比較例1の複合粒子を得た。
<比較例2:短繊維アルミナコート3%>
架橋PVA粒子をガラス瓶に5g入れ、表1に示す短繊維アルミナゾル1.50gを加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で5時間乾燥し、比較例2の複合粒子を得た。
<比較例3:短繊維アルミナコート2%+HBコート1%>
架橋PVA粒子をガラス瓶に5g入れ、表1に示す短繊維アルミナゾル1.0gを加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で1時間仮乾燥した。乾燥機から取り出し、室温に降温するまで静置し、上記調製したHBコーティング液を1.0g加え薬さじで混合し、105℃の熱風乾燥機で5時間乾燥し、比較例3の複合粒子を得た。
<比較例4:未コート>
架橋PVA粒子をガラス瓶に5g入れ、105℃の熱風乾燥機で5時間乾燥し、比較例4のPVA粒子を得た。
<膨潤試験1(体積法)>
上記実施例1~6及び比較例1~4の粒子を0.2g秤量し、底面が平坦な胴径55mmガラス製バイアル瓶に入れ、そこに25℃の脱塩水200mlを加えた。そして、25℃、40℃、60℃に設定した恒温環境試験機内で粒子を膨潤させて、経時ごとに複合粒子の嵩高さを測定した。結果を表3に示す。
<膨潤試験2(重量法)>
比較例4の粒子を0.2g秤量し、底面が平坦な胴径55mmガラス製バイアル瓶に入れ、そこに25℃の脱塩水200mlを加えた。そして、25℃に設定した恒温環境試験機内で粒子を膨潤させた。膨潤させた粒子を、目開きが125μmのナイロンメッシュを引いたふるい上で回収した。静置した状態で5分間水切りを行い、アルミカップに膨潤粒子を入れて重量を測定し膨潤試験時に仕込んだ重量で除して膨潤度を求めた。
1時間、3時間、5時間について膨潤度を求め、上記体積法の膨潤試験結果を横軸に、重量法の膨潤試験結果を縦軸にして検量線を作成した。
実施例1~6及び比較例1~3の粒子について膨潤試験1(体積法)の結果を検量線を用いて重量法に換算し、重量法換算の膨潤度を計算により求めた。結果を表3に示す。
Figure 0007363639000004
結果の表に示す通り、長繊維アルミナを含むコート層有する実施例の複合粒子は、いずれも25℃1時間の初期膨潤度が35倍以下と長繊維アルミナを使用しない比較例より小さい。このように、長繊維アルミナを含む層でコートすることにより膜平面方向の強度が高いコート層とすることができ、徐々に吸水しながらも内圧に耐え、常温では膨潤しにくい複合粒子を得ることができる。
実施例1の長繊維アルミナ単独コート品は、25℃1~5時間で膨潤度20倍以下であるが、60℃5時間で121倍と大きく膨潤するため、高温地層用のシール材として好適に用いることができる。
長繊維アルミナ層の上にHBコート層を設けた実施例2では、25℃1時間で膨潤度が20倍であるが、40℃5時間で174倍と大きく膨潤し、実施例1の粒子より地熱が低い地層の塞栓材として好適に用いることができる。同様に実施例3~5のように長繊維アルミナ層とHBコート層の比を変更することで、膨潤プロファイルを目的に応じ様々に設計することができる。HBコート層はち密で耐水性高いが、脆いため内圧かかるとクラックが起きやすい。長繊維アルミナ層は多孔質で徐々に水を通すが平面方向の強度が高いため薄膜でも膨張を抑制しやすい。これらを組み合わせることで粒子が徐々に膨潤し始め、粒子を覆うシェル層に任意の内圧がかかった時に粒子を覆うシェル層に亀裂が入り、粒子がより多くの水と接触することによって急速に粒子の膨潤が開始するように設計すること
ができるのである。
実施例6は実施例2とほぼ同じ量のHB膜素材、長繊維アルミナ素材を重ね塗りではなく均一層として塗布したものである。この例では長繊維アルミナ素材を使用することにより、比較例よりも25℃1時間の膨潤度を抑制しているが、複層コートとした実施例2より各温度・時間での膨潤抑制の程度は低かった。これは実施例2ではアルミナ繊維同士が表面水酸基の水素結合及び脱水縮合により強固に結合してフィルム状となり、高い膜強度を発現するのに対して、実施例6では長繊維アルミナがHBコート成分で希釈され、繊維同士結合する点が少なくなり膜強度が低下したためと考えられる。
比較例1のHB膜単独コート品(特許文献2に相当)は25℃1時間で膨潤度45倍と初期膨潤抑制しているが実施例の長繊維アルミナ使用品より劣り、25℃5時間で170倍超、高温ではさらに膨潤が早まるため、短時間での使用に限られる。
比較例2は短繊維アルミナゾルを単独コートしたものであるが、実施例1の長繊維アルミナゾルコート品と比較して大きく膨潤し、比較例4の未コート品と比較しても全く膨潤抑制効果は見られなかった。
比較例3は短繊維アルミナコートとHBコートの複層コートであるが、長繊維アルミナを使った同様の実施例4と比較して大きく膨潤し、比較例2のハイブリッドコートのみに近い結果であった。
短繊維アルミナゾルを底面の直径5cmのアルミカップに2ml滴下し105℃乾燥したところ、乾燥膜は収縮応力によりカップから剥離し、反ったり割れたりして、乳白色の細かい破片となった。一方長繊維アルミナゾルをアルミカップに滴下し同様に乾燥した場合、所々微小なクラックが入ったものの、カップに密着したまま透明なフィルム状となった。このように短繊維アルミナの密着性・製膜性が長繊維アルミナと比較して劣ることから、短繊維アルミナゾルは単独層としてコートしても粒子同士が点接触となり、粒子間の接着強度や膜強度が低くなるものと考えられる。このためPVA粒子上で短繊維アルミナ層が十分な強度の膜をつくらずクラック・剥離が発生して膜の一部が脱落し、膨潤抑制発現できなかったものと考えられる。
比較例4の未コート品は25℃1時間で100倍超に膨潤したことから、実際にクラックに充填することを考えた場合、水スラリーを調液して地中の亀裂へ充填するまでの間に粒子径が大きくなりすぎるため、地中への水スラリーの圧入が困難になる傾向があると考えられる。
本実施形態にかかる複合粒子は、膨潤性であるコア粒子の基本性能を維持しつつ、コア粒子表面にアルミナなどの長繊維を含むシェル層を設けることによってその膨潤速度を広く制御することができる。特にシリケートとPVA系樹脂のHBコート層と前記長繊維層を組み合わせて複層構造のシェル層にすることにより、コア粒子の最大膨潤度はそのままに、常温ではほとんど膨潤せず、40-60℃になると急に膨潤する温度スイッチ機能を持たせることができる。
図1、図2に実施例1、2及び未コート品である比較例4の温度違いの膨潤挙動グラフを示す。また、図3として、本実施形態のコアシェル型複合粒子の、スラリー調製時とクラック充填時(亀裂への充填剤として動作)の水圧破砕法に適用した場合の、実使用時の膨潤度の好ましい態様のイメージを示す。
本実施形態にかかる複合粒子をシェールガス掘削用に用いると、水中に分散させたときには膨潤せず、スラリー移送、長時間のスラリー保存などを容易とし、地下深くに入ってから膨潤して割れ目等を塞栓し内部に圧力をかけることができ、ある程度以上時間がたつと水に溶けて消失する特性を与えることができる。
PVA系樹脂は生分解性樹脂としても有用であるが、本実施形態にかかる複合粒子とするために持ち込まれるアルミナやシリカ成分もまた、環境負荷の少ない成分である。
本実施形態の複合粒子のこのような特性によって、PVA系樹脂粒子を溶解、膨潤させる従来公知の用途においてハンドリング性の向上が期待される。
さらには農業用土壌改良剤、土木建築、トンネル掘削や石油・天然ガス・シェールガス坑井掘削用途(逸泥防止剤、ダイバーティングエージェント)などに、生分解性・水溶解性の保水材、止水材、充填材として活用する新たな用途への展開が期待される。

Claims (7)

  1. 膨潤性物質からなるコア粒子と、
    該コア粒子を被覆する、繊維径が1~10nm、アスペクト比が100以上の繊維状物質を含む繊維層と、
    該繊維層を被覆する、ポリビニルアルコール系樹脂及びシリケート加水分解縮合物の複合樹脂を含む複合樹脂層と、
    を有する、コアシェル型複合粒子。
  2. 膨潤性物質からなるコア粒子と、
    該コア粒子を被覆する、繊維径が1~10nm、アスペクト比が100以上の繊維状物質と、ポリビニルアルコール系樹脂及びシリケート加水分解縮合物の複合樹脂と、を含む繊維含有複合樹脂層を有する、コアシェル型複合粒子。
  3. 前記繊維状物質が、アルミナ繊維である、請求項1又は2に記載のコアシェル型複合粒子。
  4. 前記コア粒子は、平均粒子径d50が1μm以上3000μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のコアシェル型複合粒子。
  5. 前記膨潤性物質が、カルボキシル基を有するポリビニルアルコール系樹脂の架橋物である、請求項1~4のいずれか1項に記載のコアシェル型複合粒子。
  6. 前記複合粒子は、25℃における膨潤試験の1時間後の嵩高さが10mm以下、かつ5時間後の嵩高さが20mm以下であり、60℃における膨潤試験の5時間後の嵩高さが25mm以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のコアシェル型複合粒子。
  7. 膨潤性物質からなるコア粒子と、該コア粒子を被覆する、繊維径が1~10nm、アスペクト比が100以上のアルミナ繊維状物質を含む繊維層と、を有する、コアシェル型複合粒子。
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