JP7360900B2 - 電気化学デバイス用粉体の製造方法 - Google Patents
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Description
ZnxMnyCozO4 (1)
(式中、x、y、zは、0<x<3、0<y<3、0<z<3、x+y+z=3の数を示す。)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物を主成分とすることが好ましい。
なお、本明細書中、主成分とは、上記電気化学デバイス用粉体に80質量%以上含まれる成分を意味し、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上含まれる成分を意味する。
ZnxMnyCozO4 (1)
(式中、x、y、zは、0<x<3、0<y<3、0<z<3、x+y+z=3の数を示す。)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物の粉体であって、粉体全量に対して0.4~1.5質量%のAlを含み、
該粉体を加圧成型し、1000℃で加熱して得られる密度が4.0~4.5g/cm3の焼結体の断面を電子顕微鏡にて倍率5000倍で撮影した24μm×18μmの視野において、エネルギー分散型X線分析法によるAlの原子数濃度が20%以上であって、該視野全体の面積の0.039%以上を占める領域の個数が10個以下であることを特徴とする電気化学デバイス用粉体でもある。
本発明の電気化学デバイス用粉体の製造方法(以下、本発明の製造方法と記載する)は、Zn原料とMn原料とCo原料とを含む原料混合物とAl原料とを混合してAl含有原料混合物を得る第一工程、該Al含有原料混合物を焼成して、Al量が焼成物全量に対して0.4~1.5質量%である焼成物を得る第二工程、及び、該焼成物を粉砕して、粉体を得る第三工程を含む。
また、Mn原料とCo原料との混合割合は、Mn原料が含むMn元素1molに対して、Co原料が含むCo元素が0.90~1.10molとなる割合であることが好ましい。より好ましくは、0.95~1.05molとなる割合であり、更に好ましくは、0.98~1.02molとなる割合である。
上記第一工程において、原料混合物が所定量のAlを含有していることで、焼成時にAlがZnxMnyCozO4粒子内に均一に固溶し、過度な収縮を抑制しつつ、導電率が高い保護層を形成可能なZnxMnyCozO4粉末が得られる。
また混合には、遊星ボールミル、ビーズミル、振動ミル、メディアレス粉砕機等を用いることができる。遊星ボールミル、ビーズミル、振動ミルのいずれかを用いる場合に使用するメディアとしては、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ、窒化珪素ビーズ等が挙げられる。アルミナビーズを用いた場合、混合中に摩耗したビーズの一部がAl原料として原料混合物に添加される場合がある。
使用するメディアは、直径0.1~3mmのものが好ましい。メディアの直径がこの範囲外であると、粉砕効率の低下や、平均粒子径と比表面積のバランスが崩れる場合がある。
溶媒の使用量は、固形分濃度が20~60質量%となるように設定することが好ましい。
なお、本明細書における固形分とは、湿式混合に供する全成分から溶媒を除した成分をいい、固形分濃度とは、湿式混合に供する全成分に対する固形分の質量の割合をいう。
分散剤の使用量は、混合する原料成分の合計質量に対して、0.1~5質量%であることが好ましい。
加熱する場合の温度は、80~200℃が好ましい。より好ましくは、100~150℃である。
Al含有原料混合物の平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
Al含有原料混合物を焼成する温度は、750~1050℃であることが好ましい。より好ましくは、800~1000℃である。
また、Al含有原料混合物を焼成する時間は、0.5~24時間であることが好ましい。より好ましくは、1~12時間である。
また、焼成雰囲気は、大気、酸素等から適宜選択することができる。
なお、ここでいうアルミニウム量(Al量)とは、アルミニウム元素の質量を意味する。
また粉砕には、遊星ボールミル、ビーズミル、振動ミル、メディアレス粉砕機等を用いることができる。遊星ボールミル、ビーズミル、振動ミルのいずれかを用いる場合に使用するメディアとしては、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ、窒化珪素ビーズ等が挙げられる。アルミナビーズを用いた場合、混合中に摩耗したビーズの一部がAl原料として焼成物に添加される場合がある。
使用するメディアは、直径0.1~3mmのものが好ましい。メディアの直径がこの範囲外であると、粉砕効率の低下や、平均粒子径と比表面積のバランスが崩れる場合がある。
溶媒の使用量は、固形分濃度が20~60質量%となるように設定することが好ましい。
加熱する場合の温度は、80~200℃が好ましい。より好ましくは、100~150℃である。
粉体の平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
粉体のBET比表面積は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
ZnxMnyCozO4 (1)
(式中、x、y、zは、0<x<3、0<y<3、0<z<3、x+y+z=3の数を示す。)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物を主成分とするものであることが好ましい。粉体がこのような組成の金属酸化物を主成分とするものであると、電気化学デバイス用粉体としてより適したものとなる。式(1)中において、x、y、zは、0.5<x<1.5、0.5<y<1.5、0.5<z<1.5、x+y+z=3であることが好ましい。より好ましくは、0.8<x<1.2、0.8<y<1.2、0.8<z<1.2、x+y+z=3である。
本発明はまた、電気化学デバイス用粉体であって、
該粉体は、下記式(1);
ZnxMnyCozO4 (1)
(式中、x、y、zは、0<x<3、0<y<3、0<z<3、x+y+z=3の数を示す。)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物の粉体であって、粉体全量に対して0.4~1.5質量%のAlを含み、該粉体を加圧成型して1000℃で加熱して得られる密度が4.0~4.5g/cm3の焼結体の断面を電子顕微鏡にて倍率5000倍で撮影した24μm×18μmの視野において、エネルギー分散型X線分析法によるAlの原子数濃度が20%以上であって、該視野全体の面積の0.039%以上を占める領域の個数が10個以下であることを特徴とする電気化学デバイス用粉体でもある。
エネルギー分散型X線分析法によるAlの原子数濃度が20%以上であって、該視野全体の面積の0.039%以上である領域とは、Alが偏在している領域であり、焼結体の断面を電子顕微鏡にて倍率5000倍で撮影した24μm×18μmの視野において、このような領域の数が10個以下であるような粉体をセル間接続部材の保護層の材料として用いることで、導電率の高いセル間接続部材を得ることができる。
上記Alが偏在している領域の数は、10個以下であることが好ましい。より好ましくは、8個以下である。
上記Alが偏在している領域の数は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、ここでいうAl量とは、Al元素の質量を意味する。
比表面積測定装置((株)マウンテック製、Macsorb HM-1220)を用いて、BET流動法により測定した。純窒素ガス気流下にて、230℃で30分間保持することにより脱気し、吸着ガスとして窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合気体を用いて測定した。
レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株)製、MT-3300EXII)を用いて、下記条件で測定した。
計測モード:MT-3300
粒子屈折率:2.40
溶媒屈折率:1.333
(c)X線回折パターン
X線回折装置((株)リガク製、RINT TTRIII、線源CuKα、モノクロメータ使用、管電圧50kV、電流300mA、長尺スリットPSA200(全長200mm、設計開口角度0.057度))を用いて、下記条件で回折パターンを取得した。
測定方法:平行法(連続)
スキャンスピード:2.5度/分
サンプリング幅:0.04度
2θ:20~60度
(d)元素の定量分析
JIS K 0116に準じて、ICP発光分光分析装置((株)日立ハイテクサイエンス製、SPS3100-24HV)を用いて、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP発光分光分析法)により、実施例及び比較例で得られた焼成物の各元素の質量%をそれぞれ求め、それらの値に基づいて、各元素のモル比をそれぞれ計算した。Alの含有量は、Zn、Mn、Co、OおよびAlの合計の原子数に占める、Alの原子数の割合として求めた。
電気化学デバイス用粉体を加圧成型し、成形体の断面を走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDS)により、Alの特性X線(Kα線)を用いて倍率5000倍で観察し、24μm×18μmの領域を128×96画素の解像度で表示したEDSマッピング像を得た。得られたEDSマッピング像において、検出されたAlのKα線の絶対強度が画素ごとに数値化され、数値の大小に応じて明暗を区別した状態で表示される。具体的には、絶対強度が大きい画素は明るく、絶対強度が小さい画素は黒色で表示される。絶対強度が大きい画素においては、Alの含有量が多く、絶対強度が小さい画素においては、Alの含有量が少ないことを表している。また、EDSマッピング像において、Alの絶対強度の大きい画素が集合している領域がある場合、当該領域において、Alが偏在していることを表している。また、得られたEDSマッピング像を元に、Alが偏在している箇所、およびAlが偏在していない箇所をスポット分析したところ、Alの原子数濃度はそれぞれ20~43%、0.2~3%であることを特定した。この像の中で、Kα線の絶対強度が5以上の画素がAlの原子数濃度20%以上に対応しており、該画素が5個以上、辺を共有して集まっている領域を、Alの原子数濃度20%以上であって、該視野全体の面積の0.039%以上を占める領域と認定してその数を確認した。
具体的な測定方法を以下に示す。
成型体をクロスセクションポリッシャ(日本電子(株)製、SM-09010)にて、電圧5.0kVで20時間、Arイオンエッチング加工して、試料の断面を露出させた。
露出した断面をSEMを用いて倍率5000倍で観察して、24μm×18μmの観察視野を決定した。実施例1で製造したZnMnCoO4のSEM画像を図2に、比較例1で製造したZnMnCoO4のSEM画像を図3に示す。この観察視野において、エネルギー分散型X線検出器(オックスフォード社製、INCA X-sight)を用いて、以下に示す条件で、Al-Kαの特性X線の強度に基づいて明暗が強調されたマッピング画像を取得した。実施例1で製造したZnMnCoO4のマッピング画像を図4に、比較例1で製造したZnMnCoO4のマッピング画像を図5に示す。
<測定条件>
加速電圧:15kV
プロセスタイム:5
デッドタイム:30~40%
解像度:128×96画素
スキャン回数:10回
酸化亜鉛(ZnO、キシダ化学(株)製)51.5g、四酸化三マンガン(Mn3O4、キシダ化学(株)製)48.2g、四酸化三コバルト(Co3O4、キシダ化学(株)製)50.4g、酸化アルミニウム(Al2O3、キシダ化学(株)製)2.88gを、500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度99.99%、直径0.5mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mL、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム溶液70~110、富士フイルム和光純薬(株)製)7.6gを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで180分間、湿式混合した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱して水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、原料混合物を得た。上記原料混合物の粒度分布をレーザー回折散乱法により測定したところ、平均粒子径は0.50μmであった。
上記原料混合物を酸化アルミニウム製の坩堝に入れ、この坩堝を電気炉内に置き、大気雰囲気下、950℃で2時間加熱した後、メノウ乳鉢で解砕することにより焼成物を得た。上記焼成物をX線回折装置を用いて分析したところ、MnCo2O4の回折線のみが観察された。ZnMnCoO4はMnCo2O4と同様のスピネル型構造を有することから、組成式:ZnMnCoO4で表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記焼成物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は1.00質量%であった。第一工程において、ZnMnCoO4に対して酸化アルミニウムをAlとして0.90質量%添加しているので、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.10質量%であることを確認した。
上記焼成物100gを500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度99.99%、直径0.5mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで200分間、湿式粉砕した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱し、水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、粉砕物を得た。上記粉砕物のBET比表面積は11.9m2/gであり、レーザー回折散乱法による平均粒子径は0.41μmであった。上記粉砕物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoO4で表されるスピネル型構造単相であることを確認した。図1は、実施例1で得られた粉砕物のX線回折チャートである。得られた粉砕物のピークの位置と、同等の結晶構造を有するMnCo2O4のみで構成される金属複合酸化物のピーク位置が一致していることが確認できる。また、上記粉砕物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は1.10質量%であった。第三工程では酸化アルミニウムを添加しておらず、焼成物のAl量は1.00質量%であることから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.10質量%であることを確認した。
酸化亜鉛(ZnO、キシダ化学(株)製)51.5g、四酸化三マンガン(Mn3O4、キシダ化学(株)製)48.2g、四酸化三コバルト(Co3O4、キシダ化学(株)製)50.4g、酸化アルミニウム(Al2O3、キシダ化学(株)製)2.40gを、500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度95%、直径1mmのジルコニアビーズ150mL、およびイオン交換水150mL、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム溶液70~110、富士フイルム和光純薬(株)製)7.6gを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで30分間、湿式混合した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱して水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、原料混合物を得た。上記原料混合物の粒度分布をレーザー回折散乱法により測定したところ、平均粒子径は1.0μmであった。
上記原料混合物を酸化アルミニウム製の坩堝に入れ、この坩堝を電気炉内に置き、大気雰囲気下、950℃で2時間加熱した後、メノウ乳鉢で解砕することにより焼成物を得た。上記焼成物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoO4で表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記焼成物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.75質量%であった。第一工程において、ZnMnCoO4に対して酸化アルミニウムをAlとして0.75質量%添加しており、ジルコニアビーズを使用していることから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0質量%であることを確認した。
上記焼成物100gを500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度95%、直径1mmのジルコニアビーズ150mL、およびイオン交換水150mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで110分間、湿式粉砕した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱し、水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、粉砕物を得た。上記粉砕物のBET比表面積は11.9m2/gであり、レーザー回折散乱法による平均粒子径は0.46μmであった。上記粉砕物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoO4で表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記粉砕物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.75質量%であった。第三工程では酸化アルミニウムを添加しておらず、ジルコニアビーズを使用していることから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0質量%であることを確認した。
酸化亜鉛(ZnO、キシダ化学(株)製)51.5g、四酸化三マンガン(Mn3O4、キシダ化学(株)製)48.2g、四酸化三コバルト(Co3O4、キシダ化学(株)製)50.4gを、500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度93%、直径1mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mL、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム溶液70~110、富士フイルム和光純薬(株)製)7.6gを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで120分間、湿式混合した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱して水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、原料混合物を得た。上記原料混合物の粒度分布をレーザー回折散乱法により測定したところ、平均粒子径は0.54μmであった。
上記原料混合物を酸化アルミニウム製の坩堝に入れ、この坩堝を電気炉内に置き、大気雰囲気下、950℃で2時間加熱した後、メノウ乳鉢で解砕することにより焼成物を得た。上記焼成物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoO4で表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記焼成物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.44質量%であった。第一工程において、酸化アルミニウムを添加していないことから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.44質量%であることを確認した。
上記焼成物100gを500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度93%、直径1mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで160分間、湿式粉砕した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱し、水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、粉砕物を得た。上記粉砕物のBET比表面積は11.7m2/gであり、レーザー回折散乱法による平均粒子径は0.40μmであった。上記粉砕物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoO4で表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記粉砕物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.92質量%であった。第三工程では酸化アルミニウムを添加しておらず、焼成物のAl量は0.44質量%であることから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.48質量%であることを確認した。
酸化亜鉛(ZnO、キシダ化学(株)製)51.5g、四酸化三マンガン(Mn3O4、キシダ化学(株)製)48.2g、四酸化三コバルト(Co3O4、キシダ化学(株)製)50.4gを、500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度99.9%、直径1mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mL、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム溶液70~110、富士フイルム和光純薬(株)製)7.6gを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで30分間、湿式混合した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱して水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、原料混合物を得た。上記原料混合物の粒度分布をレーザー回折散乱法により測定したところ、平均粒子径は1.7μmであった。
上記原料混合物を酸化アルミニウム製の坩堝に入れ、この坩堝を電気炉内に置き、大気雰囲気下、950℃で2時間加熱した後、メノウ乳鉢で解砕することにより焼成物を得た。上記焼成物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoO4で表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記焼成物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.02質量%であった。第一工程において、酸化アルミニウムを添加していないことから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.02質量%であることを確認した。
上記焼成物100g、および酸化アルミニウム1.92gを500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度99.9%、直径1mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで160分間、湿式粉砕した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱し、水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、粉砕物を得た。上記粉砕物のBET比表面積は11.4m2/gであり、レーザー回折散乱法による平均粒子径は0.47μmであった。上記粉砕物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoO4で表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記粉砕物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.36質量%であった。第三工程では酸化アルミニウムを添加しておらず、焼成物のAl量は0.02質量%であることから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.34質量%であることを確認した。
酸化亜鉛(ZnO、キシダ化学(株)製)51.5g、四酸化三マンガン(Mn3O4、キシダ化学(株)製)48.2g、四酸化三コバルト(Co3O4、キシダ化学(株)製)50.4gを、500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度99.99%、直径0.5mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mL、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム溶液70~110、富士フイルム和光純薬(株)製)7.6gを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで180分間、湿式混合した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱して水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、原料混合物を得た。上記原料混合物の粒度分布をレーザー回折散乱法により測定したところ、平均粒子径は0.51μmであった。
上記原料混合物を酸化アルミニウム製の坩堝に入れ、この坩堝を電気炉内に置き、大気雰囲気下、950℃で2時間加熱した後、メノウ乳鉢で解砕することにより焼成物を得た。上記焼成物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoO4で表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記焼成物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.02質量%であった。第一工程において、酸化アルミニウムを添加していないことから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.02質量%であることを確認した。
上記焼成物100g、および酸化アルミニウム1.92gを500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度99.99%、直径0.5mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで245分間、湿式粉砕した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱し、水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、粉砕物を得た。上記粉砕物のBET比表面積は12.1m2/gであり、レーザー回折散乱法による平均粒子径は0.40μmであった。上記粉砕物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoO4で表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記粉砕物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は1.09質量%であった。第三工程において、ZnMnCoO4に対して酸化アルミニウムをAlとして0.90質量%添加しており、焼成物のAl量は0.02質量%であることから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.17質量%であることを確認した。
上記の様にして得られた粉砕物19.8gと、ポリビニルアルコール(富士フイルム和光純薬(株)製、けん化度78-82mol%)0.2gを乳鉢で混合し、造粒物を得た。上記造粒物を、高さが6mmとなるように幅6mm×長さ45mmの金型に充填し、一軸プレス機にて100MPaで1分間加圧することにより、成型密度が2.8~3.2g/cm3である棒状の成型体を得た。
上記成型体をジルコニア製の多孔質板に乗せて電気炉内に置き、1000℃で2時間焼成し、棒状の焼結体を得た。上記成型体と焼結体の長さをノギスで測定し、焼結体の長さと成型体の長さの割合から収縮率を算出した。また、上記焼結体の開気孔率を、JIS R 1634に準じてアルキメデス法により測定した。また、上記焼結体に白金線を巻きつけた後、JIS R 1661に準じて大気中、800℃で四端子法により導電率を測定した。更に上記焼結体の断面をSEM-EDSで観察してAl偏在領域の数を測定した。これらの結果を表1に示す。
また、第三工程でAl2O3を粉末として添加した比較例2で得られたZnMnCoO4は、焼結体の収縮率は実施例と同等であったが、導電率は低いことが分かる。開気孔率については、第一工程、第三工程によらず、Al量が多いほど高くなり、収縮抑制効果が向上するものと考えられる。一方で導電率については、実施例1~3にて第一工程で原料混合物がAlを含有していることで、焼成時にAlがZnMnCoO4粒子内に均一に固溶して過度な収縮を抑制しつつ高い導電性を発揮できるのに対し、第三工程でAl2O3を粉末として添加している比較例2では、焼成物のAl量が実施例に比べ大幅に低く、AlはZnMnCoO4に均一に固溶せず、独立して存在しているため、導電率の向上に寄与しなかったと考えられる。
図4および図5は、それぞれ実施例1および比較例1で得られた粉体について、Al偏在領域の数の測定方法に従って作製した成型体の断面の、エネルギー分散型X線検出器を用い、Al-Kαの特性X線の強度に基づいて明暗が強調されたマッピング画像を示した図である。図5において、Alが検出されていない画素が多く見られる一方で、図4においては、Alが全体にわたって均一に検出されていることが確認できる。
また、実施例1~3では、比較例2に比べてAl偏在領域の数が有意に少なく、このことも実施例1~3が比較例2に比べて導電率が高い要因になっていると考えられる。なお、比較例1でAl偏在領域の数は少ないのは、Alの添加量が少ないためである。
これらより、本発明の製造方法で製造された電気化学デバイス用粉体を塗布し、加熱して保護層を形成することで、加熱時の収縮を緩和して開気孔率、導電性の高い保護層を形成できることが確認された。
Claims (3)
- 電気化学デバイス用粉体の製造方法であって、
該製造方法は、Zn原料とMn原料とCo原料とを含む原料混合物とAl原料とを混合してAl含有原料混合物を得る第一工程と、
該Al含有原料混合物を焼成して、Al量が焼成物全量に対して0.4~1.5質量%である焼成物を得る第二工程と、
該焼成物を粉砕して、粉体を得る第三工程とを含み、
該電気化学デバイス用粉体は、下記式(1);
Zn x Mn y Co z O 4 (1)
(式中、x、y、zは、0<x<3、0<y<3、0<z<3、x+y+z=3の数を示す。)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物を主成分とする
ことを特徴とする電気化学デバイス用粉体の製造方法。 - 電気化学デバイス用粉体であって、
該粉体は、下記式(1);
ZnxMnyCozO4 (1)
(式中、x、y、zは、0<x<3、0<y<3、0<z<3、x+y+z=3の数を示す。)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物の粉体であって、粉体全量に対して0.4~1.5質量%のAlを含み、
該粉体を加圧成型し、1000℃で加熱して得られる密度が4.0~4.5g/cm3の焼結体の断面を電子顕微鏡にて倍率5000倍で撮影した24μm×18μmの視野において、エネルギー分散型X線分析法によるAlの原子数濃度が20%以上であって、該視野全体の面積の0.039%以上を占める領域の個数が10個以下である
ことを特徴とする電気化学デバイス用粉体。 - 前記粉体を加圧成型して得られる密度が2.8~3.2g/cm3の成型体を1000℃で加熱した場合における収縮率が10~14%であることを特徴とする請求項2に記載の電気化学デバイス用粉体。
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