以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明の潜在性硬化剤は式(1)で表されるシリルアミン化合物を含有するものである。すなわち、式(1)で表されるシリルアミン化合物は潜在性硬化剤としての使用が可能である。
式(1)中、R1~R12はそれぞれ独立して炭素数1~6のアルキル基である。炭素数1~6のアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状のものであってもよい。炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、より好ましくはメチル基、エチル基、特に好ましくはメチル基である。
R13は炭素数2~12のアルキレン基または炭素数6~12のアリーレン基であり、好ましくは炭素数2~12のアルキレン基である。
炭素数2~12のアルキレン基は直鎖状であっても分岐鎖状のものであってもよい。炭素数2~12のアルキレン基としてはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられ、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、より好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基である。
炭素数6~12のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
R14~R21はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、好ましくは水素原子である。炭素数1~6のアルキル基としては、上記と同様の基が挙げられる。
yおよびzはそれぞれ独立して1~11の整数であり、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1または2である。
nは1~22の整数であり、好ましくは1~18の整数、より好ましくは1~14の整数、さらにより好ましくは1~5の整数である。
式(1)で表されるシリルアミン化合物(以下、「シリルアミン化合物(1)」という。)としては、具体的には、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7,10,13-テトラオキサ-1,16-ヘキサデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7,10,13,16-ペンタオキサ-1,19-ノナデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6,9-トリオキサ-1,11-ウンデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6,9,12-テトラオキサ-1,14-テトラデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-1,17-ヘプタデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6-ジオキサ-1,9-ノナンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6,9-トリオキサ-1,12-ドデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6,9,12-テトラオキサ-1,15-ペンタデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-1,18-オクタデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,8-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,8-ジオキサ-1,11-ウンデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-ポリオキシエチレンビスアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-ポリオキシプロピレンビスアミン等が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミンが好ましい。
シリルアミン化合物(1)は、下記式(2)で表されるアミン化合物(以下、「アミン化合物(2)」という。)と下記式(3a)~(3d)で表されるシラン化合物(以下、「シラン化合物(3)」という。)を反応させることで製造できる。
式(2)中、R
13~R
21、y、z、およびnは、式(1)で示すR
13~R
21、y、z、およびnと同じである。
X-SiR1R2R3 (3a)
X-SiR4R5R6 (3b)
X-SiR7R8R9 (3c)
X-SiR10R11R12 (3d)
式(3a)~(3d)中、R1~R12は式(1)で示すR1~R12と同じである。また、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホニルオキシ基、パーフルオロアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、パーフルオロアリールスルホニルオキシ基、アラルキルスルホニルオキシ基、シリル硫酸基、ビスパーフルオロアルキルスルホニルイミド基からなる群より選択される基である。
アミン化合物(2)について説明する。
アミン化合物(2)としては、具体的には、4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン、4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、4,7,10,13-テトラオキサ-1,16-ヘキサデカンジアミン、4,7,10,13,16-ペンタオキサ-1,19-ノナデカンジアミン、3,6,9-トリオキサ-1,11-ウンデカンジアミン、3,6,9,12-テトラオキサ-1,14-テトラデカンジアミン、3,6,9,12,15-ペンタオキサ-1,17-ヘプタデカンジアミン、3,6-ジオキサ-1,9-ノナンジアミン、3,6,9-トリオキサ-1,12-ドデカンジアミン、3,6,9,12-テトラオキサ-1,15-ペンタデカンジアミン、3,6,9,12,15-ペンタオキサ-1,18-オクタデカンジアミン、3,8-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、3,8-ジオキサ-1,11-ウンデカンジアミン、ポリオキシエチレンビスアミン、ポリオキシプロピレンビスアミン等が挙げられる。これらのうち、4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミンが好ましい。
アミン化合物(2)は、一般に入手可能なものを使用できるが、適宜製造したものを使用してもよい。アミン化合物(2)の代表的な製造方法としては、以下の方法が挙げられる。下記式(4)で表されるジオール化合物とハロゲン化リンやトリフェニルホスフィン-四ハロゲン化炭素等を反応させ末端水酸基をハロゲン原子に変換した後、これに金属アジ化物を反応させてアジド基とし、さらに還元する方法。下記式(4)で表されるジオール化合物の末端水酸基をハロゲン原子にした後、これに金属シアン化物を反応させてシアノ基とし、さらに還元する方法。下記式(4)で表されるジオール化合物の末端水酸基をハロゲン原子に変換した後に、フタルイミド金属塩と反応させてさらにイミド基へと変換した後に脱保護する方法。下記工程1および2を含む製造方法。
下記工程1および2を含む製造方法によって製造されるアミン化合物(2)は、式(2a)で表されるアミン化合物、(以下、「アミン化合物(2a)」という。)である。
アミン化合物(2a)は、式(2)で表されるアミン化合物のうち、R
14~R
17、R
19、およびR
21が水素原子であり、yおよびzが2である化合物である。
・工程1
工程1は、下記式(4)で表されるジオール化合物(以下、「ジオール化合物(4)」という。)と下記式(5)で表されるシアン化オレフィン化合物(以下、「シアン化オレフィン化合物(5)」という。)を反応させ、下記式(6)で表されるニトリル化合物(以下、「ニトリル化合物(6)」という。)を得る工程である。
式(4)中、R
13およびnは前記式(1)で示すR
13およびnと同じである。ジオール化合物(4)としては、具体的には、1,4-ブタンジオール、1,6-へキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
式(5)中、R
aおよびR
bは、前記式(1)で示すR
18およびR
20に相当し、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~6のアルキル基である。
シアン化オレフィン化合物(5)としては、具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトニトリル、2-ペンテンニトリル等が挙げられる。
(式中、R
13およびnは前記式(1)で示すR
13およびnと同じであり、R
aおよびR
bは前記式(5)で示すR
aおよびR
bと同じである。)
工程1について説明する。
工程1のジオール化合物(4)とシアン化オレフィン化合物(5)との反応は、通常、塩基存在下で実施される。シアン化オレフィン化合物(5)の使用量は1molのジオール化合物(4)に対して、通常、2~4mol、好ましくは2~3molである。
塩基としては、溶媒やシアン化オレフィン化合物(5)と反応しない塩基であれば特に限定されない。用いられる塩基としては、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アミジン化合物、グアニジン化合物、アニリン化合物等が挙げられ、好ましくはアルカリ金属水酸化物である。
アルカリ金属水酸化物としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムである。アルカリ金属炭酸塩としては炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。アミジン化合物としては1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等が挙げられる。グアニジン化合物としては1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン等が挙げられる。アニリン化合物としては1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等が挙げられる。
工程1の反応は無溶媒でも実施できるが、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒を使用する場合、溶媒としては本反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されない。溶媒としては、例えば、エーテル溶媒、芳香族炭化水素溶媒等が挙げられ、好ましくはエーテル溶媒である。エーテル溶媒としてはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられ、好ましくはテトラヒドロフランである。芳香族炭化水素溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。また、塩基としてアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などを使用する場合には、これらを溶解させるために、水を加えてもよい。
溶媒を使用する場合、溶媒の使用量は、適宜調節すればよく、例えば1質量部のジオール化合物(4)に対して一般に1~10質量部、好ましくは1~4質量部である。
反応圧力は、特に制限はなく、常圧で反応を実施してもよいし、加圧下で反応を行ってもよい。
反応温度は、特に限定されないが、通常0~100℃であり、好ましくは10~50℃であり、より好ましくは25~30℃である。
ジオール化合物(4)、シアン化オレフィン化合物(5)、溶媒、および塩基の混合順序は特に限定されず、例えば溶媒、ジオール化合物(4)、および塩基の混合物にシアン化オレフィン化合物(5)を滴下する方法が挙げられる。
反応終了後に、蒸留、濾過、抽出等、公知の精製操作を経て、目的とするニトリル化合物(6)を単離することができる。また、ニトリル化合物(6)の単離を行わずに、工程2に供してもよい。
・工程2
工程2は、ニトリル化合物(6)に金属水素化物(以下、金属水素化物(7)という。)を反応させて、アミン化合物(2a)を得る工程である。
工程2について説明する。
金属水素化物(7)としては、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、テトラヒドロボラン等が挙げられ、好ましくは水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、テトラヒドロボラン、より好ましくは水素化ホウ素ナトリウムである。
金属水素化物(7)の使用量は、適宜調節すればよく、1molのニトリル化合物(6)に対して、一般に9~30mol、好ましくは9~18molである。
工程2の反応は無触媒でも実施できるが、必要に応じて触媒を使用してもよい。触媒を使用する場合、触媒としては、塩化ニッケル六水和物、塩化コバルト等が挙げられ、好ましくは塩化ニッケル六水和物である。
触媒を使用する場合、触媒の使用量は、1molのニトリル化合物(6)に対して、通常、0.1~9mol、好ましくは0.1~0.5molである。
工程2の反応は通常、溶媒の存在下で実施される。溶媒としては本反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されない。用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等が挙げられる。好ましくはアルコール溶媒、より好ましくはメタノールである。
溶媒の使用量は、適宜調節すればよく、例えば1質量部のニトリル化合物(6)に対して一般に10~50質量部、好ましくは10~20質量部、より好ましくは12~15質量部である。
工程2の反応において、触媒の低減およびアミン化合物(2a)の2量化反応の抑制を目的として、さらに二炭酸ジ-t-ブチルを使用してもよい。二炭酸ジ-t-ブチルを使用する場合、二炭酸ジ-t-ブチルの使用量は、適宜調節すればよく、例えばニトリル化合物(6)1molに対して一般に2~8mol、好ましくは3~6mol、より好ましくは4~5molである。
反応終了後、脱保護、蒸留、濾過、抽出等、公知の操作を経て、アミン化合物(2a)を単離することができる。工程2の反応において二炭酸ジ-t-ブチルを使用した場合、アミン化合物(2a)の末端アミノ基がt-ブトキシカルボニル基で保護されている状態のため、酸などにより脱保護をすることでアミン化合物(2a)を取得できる。
シラン化合物(3)について説明する。
式(3a)~(3d)中のXであるアルキルスルホニルオキシ基としては、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、プロパンスルホニルオキシ基、ブタンスルホニルオキシ基、ペンタンスルホニルオキシ基、ヘキサンスルホニルオキシ基等が挙げられる。好ましくはメタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、プロパンスルホニルオキシ基、ブタンスルホニルオキシ基、より好ましくはメタンスルホニルオキシ基である。
式(3a)~(3d)中のXであるパーフルオロアルキルスルホニルオキシ基としては、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ペンタフルオロエタンスルホニルオキシ基、ヘプタフルオロプロパンスルホニル基、ノナフルオロブタンスルホニル基、ウンデカフルオロペンタンスルホニル基、トリデカフルオロヘキサンスルホニル基等が挙げられる。好ましくはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ペンタフルオロエタンスルホニルオキシ基、ヘプタフルオロプロパンスルホニル基、ノナフルオロブタンスルホニル基、より好ましくはトリフルオロメタンスルホニル基である。
式(3a)~(3d)中のXであるアリールスルホニルオキシ基としては、ベンゼンスルホニルオキシ基、2-クロロベンゼンスルホニルオキシ基、2-ブロモベンゼンスルホニルオキシ基、2-ヨードベンゼンスルホニルオキシ基、2-メチルベンゼンスルホニルオキシ基、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、3-クロロベンゼンスルホニルオキシ基、3-ブロモベンゼンスルホニルオキシ基、3-ヨードベンゼンスルホニルオキシ基、3-メチルベンゼンスルホニルオキシ基、3-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、4-クロロベンゼンスルホニルオキシ基、4-ブロモベンゼンスルホニルオキシ基、4-ヨードベンゼンスルホニルオキシ基、4-メチルベンゼンスルホニルオキシ基、4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、1-ナフタレンスルホニルオキシ基、2-ナフタレンスルホニルオキシ基等が挙げられる。好ましくはベンゼンスルホニルオキシ基、4-メチルベンゼンスルホニルオキシ基、より好ましくは4-メチルベンゼンスルホニルオキシ基である。
式(3a)~(3d)中のXであるパーフルオロアリールスルホニルオキシ基としては、ペンタフルオロベンゼンスルホニルオキシ基、ヘプタフルオロ-1-ナフタレンスルホニルオキシ基、ヘプタフルオロ-2-ナフタレンスルホニルオキシ基等が挙げられる。好ましくはペンタフルオロベンゼンスルホニルオキシ基、ヘプタフルオロ-1-ナフタレンスルホニルオキシ基、より好ましくはペンタフルオロベンゼンスルホニルオキシ基である。
式(3a)~(3d)中のXであるアラルキルスルホニルオキシ基としては、ベンジルスルホニルオキシ基、フェネチルスルホニルオキシ基、1-ナフチルスルホニルオキシ基、2-ナフチルスルホニルオキシ基等が挙げられる。好ましくはペンタフルオロベンゼンスルホニルオキシ基、ベンジルスルホニルオキシ基、フェネチルスルホニルオキシ基、より好ましくはペンタフルオロベンゼンスルホニルオキシ基である。
式(3a)~(3d)中のXであるシリル硫酸基としては、トリメチルシリル硫酸基、トリエチルシリル硫酸基、トリイソプロピル硫酸基、tert-ブチルジメチルシリル硫酸基等が挙げられる。好ましくはトリメチルシリル硫酸基、トリエチルシリル硫酸基、トリイソプロピル硫酸基、tert-ブチルジメチルシリル硫酸基、より好ましくはトリメチルシリル硫酸基である。
式(3a)~(3d)中のXであるビスパーフルオロアルキルスルホニルイミド基としては、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド基、ビスペンタフルオロエタンスルホニルイミド基、ビスヘプタフルオロプロパンスルホニルイミド基、ビスノナフルオロブタンスルホニルイミド基、ビスウンデカフルオロペンタンスルホニルイミド基、ビストリデカフルオロヘキサンスルホニルイミド基等が挙げられる。好ましくはビストリフルオロメタンスルホニルイミド基、ビスペンタフルオロエタンスルホニルイミド基、ビスヘプタフルオロプロパンスルホニルイミド基、ビスノナフルオロブタンスルホニルイミド基、より好ましくはビストリフルオロメタンスルホニルイミド基である。
式(3a)~(3d)中、Xは好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホニルオキシ基、パーフルオロアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ビスパーフルオロアルキルスルホニルイミド基であり、より好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、特に好ましくは塩素原子である。
シラン化合物(3)としては、例えば、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、硫酸ビス(トリメチルシリル)等のトリメチルシラン化合物;クロロトリエチルシラン、ブロモトリエチルシラン、ヨードトリエチルシラン、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル、硫酸ビス(トリエチルシリル)等のトリエチルシラン化合物;tert-ブチルジメチルクロロシラン、tert-ブチルジメチルブロモシラン、tert-ブチルジメチルヨードシラン、トリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリル等のtert-ブチルジメチルシリル化合物等が挙げられ、トリメチルシラン化合物が好ましく、特にクロロトリメチルシランが好ましい。
アミン化合物(2)とシラン化合物(3)の反応は、通常、反応で副生する酸を捕捉するため、塩基存在下で実施される。塩基としては、アミン化合物(2)およびシラン化合物(3)並びに本反応の生成物であるシリルアミン化合物(1)に影響を与えない塩基であれば特に限定されない。用いられる塩基としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等のアミジン化合物;1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン等のグアニジン化合物;1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等のアニリン化合物;tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン, N-tert-ブチル-N,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサメチルホスホルイミド酸トリアミド等のホスフィン化合物;トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等のアミン化合物等が挙げられる。中でも、アミジン化合物が好ましく、特に1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンが好ましい。また、アミン化合物(2)とシラン化合物(3)の反応において、塩基を、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
シラン化合物(3)の使用量は、1molのアミン化合物(2)に対して、一般に4~8mol、好ましくは4~6molである。
反応は通常、溶媒の存在下で実施され、その溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されない。用いられる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒等が挙げられる。中でも、ニトリル溶媒が好ましく、アセトニトリルがより好ましい。
溶媒の使用量は、適宜調節すればよく、例えばアミン化合物(2)1質量部に対して一般に1~100質量部、好ましくは3~6質量部である。
シリルアミン化合物(1)およびシラン化合物(3)の加水分解を防ぐため、反応は無水条件下で実施されるのが好ましく、この場合、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
反応圧力は、特に制限はなく、常圧で反応を実施してもよいし、加圧下で反応を行ってもよい。
反応温度は、特に限定されないが、通常0~100℃であり、好ましくは0~50℃であり、より好ましくは5~30℃である。
アミン化合物(2)、シラン化合物、溶媒、および塩基の混合順序は特に限定されず、例えば溶媒、アミン化合物(2)、および塩基の混合物にシラン化合物を滴下する方法が挙げられる。
反応終了後、蒸留、濾過、抽出等の、公知の精製操作を経て、目的とするシリルアミン化合物(1)を単離することができる。
シリルアミン化合物(1)は、湿気等の水と反応して加水分解し、第1級または第2級アミノ基が生じることで、イソシアネート化合物等との反応を行なう際の潜在性硬化剤として機能する。本発明の潜在性硬化剤においては、シリルアミン化合物(1)を2種以上組み合わせて使用してもよい。
また、本発明の潜在性硬化剤は、必要に応じ、溶媒を含有していてもよい。溶媒を含有する場合、溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等が好適に使用できる。
さらに、本発明の潜在性硬化剤はイソシアネート化合物と組み合わせて硬化性組成物とすることができる。シリルアミン化合物(1)を含む潜在性硬化剤は、湿気等の水により加水分解してもアルデヒド化合物が生成せず、イソシアネート化合物との反応を行なう際、アルデヒド化合物の臭気が生じないため有用である。
硬化性組成物とする場合、シリルアミン化合物(1)の使用量は、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対し、シリルアミン化合物(1)が加水分解して生じるアミノ基のモル比で、通常0.4~1.3モル、好ましくは0.5~1.1モルである。
ここで、イソシアネート化合物としては、1つ以上、好ましくは2つ以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。イソシアネート化合物としては、低分子量イソシアネート化合物、高分子量イソシアネート化合物のいずれも使用することができる。
低分子量イソシアネート化合物としては、有機ポリイソシアネートおよび有機モノイソシアネートを挙げることができる。有機ポリイソシアネートは、その化合物中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。また、有機モノイソシアネートは、その化合物中に1個のイソシアネート基を有する化合物である。
有機ポリイソシアネートとしては、具体的には、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等のトルエンポリイソシアネート;4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンポリイソシアネート;1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4,6-トリメチルフェニル-1,3-ジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルフェニル-1,3-ジイソシアネート等のフェニレンポリイソシアネート;1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンポリイソシアネート;クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′-ジメチルジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、3,3′-ジメトキシジフェニル-4,4′-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート;1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。さらに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;クルードトルエンジイソシアネート等のポリメリックイソシアネートが挙げられる。またさらに、これらの有機ポリイソシアネートを変性して得られる、ウレトジオン結合、イソシアヌレート結合、アロファネート結合、ビュレット結合、ウレトンイミン結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合またはウレア結合を1個以上有する変性ポリイソシアネートが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機モノイソシアネートとしては、具体的には、n-ブチルモノイソシアネート、n-ヘキシルモノイソシアネート、n-ヘキサデシルモノイソシアネート、n-オクタデシルモノイソシアネート等の脂肪族モノイソシアネート;p-イソプロピルフェニルモノイソシアネート、p-ベンジルオキシフェニルモノイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-トリルイソシアネート、m-トリルイソシアネート、m-トリルイソシアネート、4-クロロフェニルイソシアネート、3,5-ジメチルフェニルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート等の芳香族モノイソシアネートが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。有機モノイソシアネートは、有機ポリイソシアネートと併用することが好ましい。
高分子量イソシアネート化合物としては、イソシアネート基含有樹脂が挙げられる。イソシアネート基含有樹脂は、その樹脂中に1個以上のイソシアネート基を有する樹脂であり、イソシアネート基が活性水素(基)と反応し、ウレタン結合、ウレア結合等を形成して架橋硬化する。イソシアネート基含有樹脂としては、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを好適に挙げることができる。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、有機ポリイソシアネート化合物と活性水素含有化合物とを、イソシアネート基/活性水素のモル比が1.2~10、好ましくは1.2~5となる範囲で一括あるいは逐次に反応させて、ウレタンプレポリマー中にイソシアネート基が残存するようにして製造することができる。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基含有量は、0.3~15質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの数平均分子量は、1,500以上が好ましく、1,500~20,000がより好ましく、1,500~15,000がさらに好ましく、1,500~10,000が特に好ましい。本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数値である。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造方法としては、従来公知の方法で行うことができる。具体的には、ガラス製やステンレス製等の反応容器に有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物を仕込み、必要に応じて反応触媒や有機溶剤を使用し、50~120℃で攪拌しながら反応させる方法が挙げられる。この際、イソシアネート基が湿気等の水と反応するとイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが増粘するため、事前に容器内を窒素ガスで置換することや窒素ガス気流下で反応を行うことが好ましい。
有機イソシアネート化合物としては、有機ポリイソシアネートを挙げることができる。有機ポリイソシアネートとしては、低分子量イソシアネート化合物で示したものと同様のものが挙げられる。有機ポリイソシアネートは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。有機ポリイソシアネートの中でも、硬化性組成物の耐候性に優れることから、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、およびこれらの有機ポリイソシアネートを変性して得られる変性ポリイソシアネートが好ましい。
また、有機ポリイソシアネートとともに、有機モノイソシアネートを使用することができる。すなわち、有機ポリイソシアネートと有機モノイソシアネートの混合物を、上述の有機イソシアネート化合物として使用することができる。有機モノイソシアネートとしては、低分子量イソシアネート化合物で示したものと同様のものが挙げられる。有機モノイソシアネートは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
活性水素含有化合物は、その化合物中に1個以上の活性水素(基)を有する化合物である。具体的には、高分子ポリオール、高分子ポリアミン、低分子ポリオール、低分子ポリアミン、高分子や低分子のモノオールが挙げられる。これらの活性水素含有化合物は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
高分子ポリオール、高分子ポリアミンの数平均分子量は、1,000~30,000が好ましく、1,000~20,000がより好ましく、特に1,000~10,000が好ましい。また、高分子モノオールの数平均分子量は5,000以下が好ましく、4,000以下がより好ましく、特に1,000~4,000が好ましい。
低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子モノオールの分子量は、1,000未満が好ましく、さらに50~900が好ましい。これらの分子量は、その構造から計算によって算出することができる。また、これらが重合物等で分子量分布を有している場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量として分子量を算出することができる。
高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、炭化水素系ポリオール、動植物系ポリオール、これらのコポリオールが挙げられる。本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸や、これらの無水物あるいはメチルエステルやエチルエステル等のアルキルエステルを含むカルボン酸類の1種以上と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種以上との反応によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、上述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール類とホスゲンとの脱塩酸反応、あるいは上述の低分子ポリオール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートとのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、上述のポリエステルポリオールの合成に用いられるのと同様の低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類;ソルビトール、マンニトール、ショ糖(スクロース)、グルコース等の糖類系低分子多価アルコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF等の低分子多価フェノール類の1種以上を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物の1種以上を開環付加重合あるいは共重合させた、ポリオキシエチレン系ポリオール、ポリオキシプロピレン系ポリオール、ポリオキシブチレン系ポリオール、ポリオキシテトラメチレン系ポリオール、ポリ-(オキシエチレン)-(オキシプロピレン)-ランダムあるいはブロック共重合系ポリオール、さらに、上述のポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートエーテルポリオール等が挙げられる。また、これらの各種ポリオールと有機イソシアネート化合物とを、イソシアネート基に対し水酸基過剰で反応させて、分子末端を水酸基としたポリオールも挙げられる。ポリオキシアルキレン系ポリオールの水酸基の数は、1分子中に平均して2個以上が好ましく、2~4個がより好ましく、特に2~3個が好ましい。
ポリオキシアルキレン系ポリオールの分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、1.6以下が好ましく、さらに1.0~1.5が好ましい。本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数値である。
ポリオキシアルキレン系ポリオールを合成する際の触媒は、ナトリウム系触媒、カリウム系触媒等のアルカリ金属化合物触媒、カチオン重合触媒、亜鉛ヘキサシアノコバルテートのグライム錯体やジグライム錯体等の複合金属シアン化錯体触媒、ホスファゼン化合物触媒等が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属化合物触媒、複合金属シアン化錯体触媒が好ましい。また、複合シアン化錯体触媒を用いて合成したポリオキシアルキレン系ポリオールは、総不飽和度が低くポリオールの粘度が低いため好ましい。
また、ウレタンプレポリマーの変性用として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低分子モノアルコール類を開始剤として、上述のプロピレンオキシド等の環状エーテル化合物を開環付加重合させたポリオキシプロピレン系モノオール等のポリオキシアルキレン系モノオールを使用することもできる。
上述のポリオキシアルキレン系ポリオールあるいはポリオキシアルキレン系モノオールの「系」とは、分子1モル中の水酸基を除いた部分の50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上がポリオキシアルキレンで構成されていれば、残りの部分がエステル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン等で変性されていてもよいことを意味する。本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。
ポリ(メタ)アクリルポリオールは、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体とこれ以外のエチレン性不飽和化合物とを、溶剤の存在下、または不存在下に、バッチ式または連続重合等のラジカル重合の方法により共重合させて得られるものである。溶剤の不存在下に、150~350℃の高温で、より好ましくは210~250℃で連続塊状共重合反応させて得られるものが、反応生成物の分子量分布が狭く低粘度になるため好ましい。この共重合反応の際、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を、ポリ(メタ)アクリルポリオール1分子当たり平均水酸基官能数が1.2~4個含有するように使用するのが好ましい。ポリ(メタ)アクリルポリオールのガラス転移点(Tg)は、50℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましく、-70~-20℃がさらに好ましく、-70~-30℃が特に好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、分子内に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体である。具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート類または水酸基残存多価(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリルポリオールの粘度が低く、イソシアネート基との反応性が良好な点で、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が好ましく、さらにヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体以外のエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル系単量体とこれ以外のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。(メタ)アクリル系単量体以外のエチレン性化合物としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、クロロプレン、スチレン、クロルスチレン、2-メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のビニル化合物が挙げられる。(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリルポリオールの粘度が低い点で、(メタ)アクリル酸エステル系化合物のモノマーが好ましく、さらに(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸および/またはメタクリル酸」を意味する。
炭化水素系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール;水素添加ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等のポリアルキレンポリオール;塩素化ポリプロピレンポリオール、塩素化ポリエチレンポリオール等のハロゲン化ポリアルキレンポリオール等が挙げられる。
動植物系ポリオールとしては、ヒマシ油系ポリオール、絹フィブロイン等が挙げられる。
上述の高分子ポリオールは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、硬化性組成物の硬化後のゴム物性が良好な点で、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオールが好ましい。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーには、耐候性を付与する目的で光反応性不飽和結合を導入することもできる。光反応性不飽和結合を導入したウレタンプレポリマーは、本発明の硬化性組成物において硬化成分として働くとともに、硬化後の組成物に被着面との良好な接着性、優れた耐候性を付与する。上述の光反応性不飽和結合とは、光に暴露されることにより比較的短時間に重合等の化学変化を起こす不飽和結合である。具体的には、ビニル基、ビニレン基、(メタ)アクリロイル基に由来する不飽和結合が挙げられる。本発明において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基および/またはメタクリロイル基」を意味する。
光反応性不飽和結合を導入したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基は、活性水素含有化合物と反応して架橋硬化する。また、光反応性不飽和結合を導入したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの光反応性不飽和結合は、光に暴露されると重合反応し硬化性組成物の表面に耐候性に優れた硬化皮膜を形成する。この硬化皮膜が硬化性組成物に優れた耐候性を付与するものと考えられる。光反応性不飽和結合は、耐候性付与効果が高い点で(メタ)アクリロイル基に由来する不飽和結合が好ましい。
光反応性不飽和結合をイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに導入する方法としては、下記の方法が挙げられる。
(イ)有機イソシアネート化合物と、高分子の活性水素含有化合物(数平均分子量1,000以上)と、分子内に活性水素と光反応性不飽和結合とを有する低分子の活性水素含有化合物(数平均分子量1,000未満)とを、活性水素の合計量に対してイソシアネート基過剰の条件で反応させて得る方法;
(ロ)有機イソシアネート化合物と、分子内に活性水素と光反応性不飽和結合とを有する高分子(数平均分子量1,000以上)の活性水素含有化合物(例えば、ポリオキシアルキレントリオールのモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物、ポリブタジエンポリオール)とを活性水素の合計量に対してイソシアネート基過剰の条件で反応させて得る方法;および
(ハ)有機イソシアネート化合物と、分子内に光反応性不飽和結合とイソシアネート基とを有する低分子(数平均分子量1,000未満)の活性水素含有化合物(例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート)と、高分子(数平均分子量1,000以上)の活性水素含有化合物とを活性水素の合計量に対してイソシアネート基過剰の条件で反応させて得る方法;
これらの方法のうち、前記(イ)の方法が原料の入手しやすさと反応のしやすさの点で好ましい。
光反応性不飽和結合をイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに導入する反応は、原料を一括で仕込み反応させてもよいし、原料を逐次に仕込み反応させてもよい。有機イソシアネート化合物のイソシアネート基と、活性水素含有化合物(活性水素と光反応性不飽和結合とを有する化合物を含む)の活性水素とのモル比(イソシアネート基/活性水素)は、1.2~10が好ましく、さらに1.2~5が好ましい。光反応性不飽和結合を導入したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基含有量は0.3~15質量%が好ましく、さらに0.5~5質量%が好ましい。
光反応性不飽和結合を導入したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー中の光反応性不飽和結合の濃度は、0.01ミリモル/g以上が好ましく、0.03~1ミリモル/gがより好ましく、特に0.05~0.5ミリモル/gが好ましい。
上述の活性水素と光反応性不飽和結合とを有する(低分子および高分子の)活性水素含有化合物は、その化合物中に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の活性水素(基)と、ビニル基、ビニレン基、(メタ)アクリロイル基等の光反応性不飽和結合の両方を有する化合物である。反応のしやすさや耐候性付与効果の高い点で、その化合物中に水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有するものが好ましい。また、活性水素(基)と光反応性不飽和結合とを有する化合物の分子量は、反応しやすい点で数平均分子量1,000未満のものが好ましい。
水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する活性水素含有化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルである、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシネオペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上アルキレンポリオールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルあるいはジエステル、トリエステル等のポリエステルである、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のモノヒドロキポリ(メタ)アクリレート類、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート等のポリヒドロキモノ(メタ)アクリレート類、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のポリヒドロキポリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。また、これら以外に、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ビスフェノールAやビスフェノールFにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したポリオール等のモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート類、ポリヒドロキシモノ(メタ)アクリレート類、ポリヒドロキシポリ(メタ)アクリレート類や(メタ)アクリル酸やヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの活性水素にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加した化合物で水酸基を有するもの、ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン変性物等で水酸基を有している化合物等も挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、ウレタンプレポリマーの粘度を低く抑えることができ、かつ耐候性付与効果を高めることができる点で、モノヒドロキシポリ(メタ)アクリレート類およびジヒドロキシポリ(メタ)アクリレート類が好ましい。
前記硬化性組成物は、さらに酸性化合物を含んでいてもよい。酸性化合物は、シリルアミン化合物の加水分解を促進させ、硬化性組成物の硬化を速める目的で使用する。酸性化合物としては、リン酸エステル化合物、有機カルボン酸化合物、有機無水カルボン酸化合物、有機スルホン酸イソシアネート化合物、有機スルホン酸化合物、有機スルホンイミド化合物等を挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
リン酸エステル化合物としては、正リン酸エステル化合物、亜リン酸エステル化合物が挙げられる。これらのうち、正リン酸エステル化合物が好ましい。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
正リン酸エステル化合物としては、正リン酸のトリアルキルエステル化合物、正リン酸のジアルキルエステル化合物、正リン酸のモノアルキルエステル化合物が挙げられる。
正リン酸のトリアルキルエステル化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート等が挙げられる。
正リン酸のモノアルキルエステル化合物およびジアルキルエステル化合物(酸性リン酸エステル化合物)としては、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、アルキル(C12,C14,C16,C18)アシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート等が挙げられる。モノアルキルエステル化合物としては、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノブトキシエチルホスフェート、モノn-オクチルホスフェート、モノ2-エチルヘキシルホスフェート、モノラウリルホスフェート、モノ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)ホスフェート等が挙げられる。ジアルキルエステル化合物としては、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジブチルピロホスフェート、ジブトキシエチルホスフェート、ジn-オクチルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジイソトリデシルホスフェート、ジオレイルホスフェート等が挙げられる。これらの正リン酸エステル化合物は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
亜リン酸エステル化合物としては、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト等の亜リン酸トリエステル化合物;ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト等の亜リン酸ジエステル化合物が挙げられる。これらの亜リン酸エステル化合物は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機カルボン酸化合物としては、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、アクリル酸、メタクリル酸、乳酸、1-メチル酪酸、イソ酪酸、2-エチル酪酸、イソ吉草酸、ツベルクロステアリン酸、ピバル酸、ネオデカン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スペリン酸、セバシン酸、エチルマロン酸、グルタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、オキシ二酢酸、マレイン酸、フマル酸、アセチレンジカルボン酸、イタコン酸、安息香酸、9-アントラセンカルボン酸、アニス酸、イソプロピル安息香酸、トルイル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、カルボキシフェニル酢酸、ピロメリット酸、サリチル酸が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機無水カルボン酸化合物としては、具体的には、無水マレイン酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、アルケニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物を挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機スルホン酸イソシアネート化合物としては、具体的には、p-トルエンスルホニルイソシアネートを挙げることができる。
有機スルホン酸化合物としては、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、(+)-10-カンファースルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸無水物、p-キシレン-2-スルホン酸無水物を挙げることができる。
有機スルホンイミド化合物としては、具体的には、サッカリン、N-(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミドを挙げることができる。
硬化性組成物中の酸性化合物の量は、イソシアネート化合物およびシリルアミン化合物(1)の合計量100質量部に対し0.05~5質量部が好ましく、さらに0.1~3質量部が好ましい。
硬化性組成物は、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、具体的には、硬化促進触媒、可塑剤、耐候安定剤、充填剤、揺変性付与剤、接着性向上剤、貯蔵安定性向上剤(脱水剤)、着色剤および有機溶剤等を挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機溶剤を使用する場合、有機溶剤としては、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。なお、実施例中、1H-NMRはブルカー・バイオスピン株式会社製のAV400を使用し、400MHzで測定した。1H-NMRのケミカルシフトは、重ベンゼン中のベンゼンのピークのケミカルシフト(7.20ppm)を基準とした。
本明細書中、特に断らない限り重合度は数平均重合度であり、シリルアミン化合物E~Jの重合度nは、1H-NMR分析におけるエーテル性酸素原子隣接位と窒素原子隣接位の積分比より求めた。
また、実施例中、「分子中酸素原子数」とは、シリルアミン化合物中のエーテル性酸素原子の数を示す。シリルアミン化合物E~Jの「分子中酸素原子数」は、各化合物の重合度nに、繰り返し単位に含まれていない酸素原子の数1を加えて算出した。
製造例1 シリルアミン化合物Aの合成
窒素置換した3L四つ口フラスコに4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン160.0g(783mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン477.2g(3135mmol)、アセトニトリル810mLを仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、クロロトリメチルシラン343.1g(3158mmol)を滴下後、得られた反応混合物を25℃で24時間撹拌した。反応混合物に対してヘプタン150mLによる抽出操作を3回行った。ヘプタン層を減圧下濃縮後、窒素下にて濾過し、上記式で表されるシリルアミン化合物Aを339.1g得た(収率87.9%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.28-3.25(m,4H)、3.23-3.21(m,4H)、2.98-2.94(m,4H)、1.68-1.65(m,8H)、0.17(s,36H)
製造例2 シリルアミン化合物Bの合成
窒素置換した500mL四つ口フラスコに3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン20.3g(137mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン83.6g(549mmol)、アセトニトリル155mLを仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、クロロトリメチルシラン58.9g(548mmol)を滴下後、反応混合物を25℃で21時間撹拌した。反応混合物に対してヘプタン50mLによる抽出操作を4回行った。ヘプタン層を減圧下濃縮後、窒素下にて濾過し、上記式で表されるシリルアミン化合物Bを52.8g得た(収率88.3%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.43(s,4H)、3.29(t,J=7.0Hz,4H)、2.98-2.94(m,4H)、0.15(s,36H)
製造例3 シリルアミン化合物Cの合成
窒素置換した400mL四つ口フラスコに4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン15.3g(87mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン52.4g(344mmol)、アセトニトリル155mLを仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、クロロトリメチルシラン37.4g(344mmol)を滴下後、反応混合物を25℃で14時間撹拌した。反応混合物に対してヘプタン50mLによる抽出操作を4回行った。ヘプタン層を減圧下濃縮後、窒素下にて濾過し、上記式で表されるシリルアミン化合物Cを36.4g得た(収率90.1%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.42(s,4H)、3.29-3.26(m,4H)、2.98-2.94(m,4H)、1.72-1.65(m,4H)、0.15(s,36H)
製造例4 シリルアミン化合物Dの合成
窒素置換した500mL四つ口フラスコに4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン15.0g(68mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン41.5g(273mmol)、アセトニトリル190mLを仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、クロロトリメチルシラン30.0g(276mmol)を滴下後、反応混合物を25℃で23時間撹拌した。反応混合物に対してヘプタン50mLによる抽出操作を5回行った。ヘプタン層を減圧下濃縮後、窒素下にて濾過し、上記式で表されるシリルアミン化合物Dを29.5g得た(収率85.2%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.54-3.52(m,4H),3.44-3.42(m,4H),3.27-3.24(m,4H),2.97-2.93(m,4H),1.70-1.66(m,4H),0.19(s,36H)
製造例5 シリルアミン化合物Eの合成
(i)PEG300-EtCNの合成
窒素置換した200mL3つ口フラスコに20.1g(67mmol)のポリエチレングリコール300(富士フイルム和光純薬株式会社製)、水5.0mL、48%水酸化ナトリウム水溶液0.1g(1mmol)を仕込み、反応液の温度を25~30℃に保ちながらアクリロニトリル10.6g(200mmol)を滴下した。得られた反応混合物を25℃で2時間撹拌した後、トリフルオロ酢酸0.5g(2mmol)を加えて反応を停止した。混合物を減圧下濃縮し、上記式で表されるPEG300-EtCNを27.5g得た(収率99.7%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.66-3.22(m,76H),2.73-2.69(m,4H),1.86-1.78(m,4H)
(ii)シリルアミン化合物Eの合成
窒素置換した500mL四つ口フラスコにPEG300-EtCN20.0g(49mmol)、メタノール368mL、二炭酸ジ-tert-ブチル43.1g(198mmol)、塩化ニッケル六水和物2.3g(10mmol)を仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、窒素気流下にて水素化ホウ素ナトリウム25.1g(318mmol)を2時間かけて加えた。得られた反応混合物を25℃で5時間撹拌後、飽和炭酸ナトリウム水溶液50mLを加え、酢酸エチル100mLによる抽出操作を3度行った。酢酸エチル層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、減圧下濃縮した。濃縮物に対して水100mL、濃塩酸20mLを加え、25℃で13時間撹拌後、さらに濃塩酸20mLを加え60℃で2時間攪拌した。反応混合物に48%水酸化ナトリウム水溶液30mLを加え、得られた混合物を減圧下濃縮した。得られた残渣にテトラヒドロフラン200mLを加え、濾過をした。
濾液を減圧下濃縮し、残渣20.0gに対してクロロトリメチルシラン42.1g(389mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン61.1g(401mmol)、トルエン101mLを加えた。得られた反応混合物を25℃で72時間撹拌し、ジエチルアミン14.6g(153mmol)を滴下した。反応混合物を濾過し、濾液を減圧下濃縮することで、上記式で表されるシリルアミン化合物Eを23.6g得た(収率69.5%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。また、
1H-NMR分析結果より、シリルアミン化合物Eの重合度nは11.0、分子中酸素原子数は12.0であった。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.66-3.16(m,48H),2.95-2.91(m,4H),1.70-1.63(m,4H)、0.17(s,36H)
製造例6 シリルアミン化合物Fの合成
(i)PEG400-EtCNの合成
窒素置換した200mL3つ口フラスコに20.0g(50mmol)のポリエチレングリコール400(富士フイルム和光純薬株式会社製)、水5.3mL、48%水酸化ナトリウム水溶液0.1g(1mmol)を仕込み、反応液の温度を25~30℃に保ちながらアクリロニトリル8.0g(150mmol)を滴下した。得られた反応混合物を25℃で6時間撹拌した後、トリフルオロ酢酸0.5g(2mmol)を加えて反応を停止した。混合物を減圧下濃縮し、上記式で表されるPEG400-EtCNを25.6g得た(収率99.2%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.59-3.02(m,171H),2.76-2.73(m,4H),1.69-1.66(m,4H)
(ii)シリルアミン化合物Fの合成
窒素置換した500mL四つ口フラスコにPEG400-EtCN20.0g(34mmol)、メタノール293mL、二炭酸ジ-tert-ブチル35.2g(161mmol)、塩化ニッケル六水和物1.9g(8mmol)を仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、窒素気流下にて水素化ホウ素ナトリウム27.0g(343mmol)を2時間かけて加えた。得られた反応混合物を25℃で5時間撹拌後、飽和炭酸ナトリウム水溶液50mLを加え、酢酸エチル55mLによる抽出操作を3度行った。酢酸エチル層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、減圧下濃縮した。濃縮物に対してメタノール63mL、濃塩酸10mLを加え、25℃で13時間撹拌後、さらに濃塩酸20mLを加え50℃で3時間攪拌した。反応混合物に48%水酸化ナトリウム水溶液30mLを加え、得られた混合物を減圧下濃縮し、得られた残渣にテトラヒドロフラン200mLを加え、濾過をした。
濾液を減圧下濃縮し、残渣18.4gに対してクロロトリメチルシラン33.1g(305mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン44.1g(290mmol)、トルエン94mLを加えた。得られた反応混合物を25℃で72時間撹拌し、ジエチルアミン11.2g(153mmol)を滴下した。反応混合物を濾過し、濾液を減圧下濃縮することで、上記式で表されるシリルアミン化合物Fを7.73g得た(収率28.4%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。また、
1H-NMR分析結果より、上記式中、重合度nは13.9、分子中酸素原子数は14.9であった。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.66-3.22(m,60H),2.95-2.91(m,4H),1.69-1.62(m,4H)、0.16(s,36H)
製造例7 シリルアミン化合物Gの合成
(i)PEG600-EtCNの合成
窒素置換した200mL3つ口フラスコに20.3g(33mmol)のポリエチレングリコール600(キシダ化学株式会社製)、水5mL、48%水酸化ナトリウム水溶液0.1g(1mmol)を仕込み、反応液の温度を25~30℃に保ちながらアクリロニトリル5.3g(100mmol)を滴下した。得られた反応混合物を25℃で22時間撹拌した後、トリフルオロ酢酸0.5g(2mmol)を加えて反応を停止した。混合物を減圧下濃縮し、上記式で表されるPEG600-EtCNを31.7g得た(収率98.3%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C
6D
6)δ(ppm):3.59-3.02(m,109H),2.61-2.58(m,4H),1.52-1.49(m,4H)
(ii)PEGPA-600の合成
窒素置換した500mL四つ口フラスコにPEG600-EtCN10.0g(8mmol)、メタノール106mL、二炭酸ジ-tert-ブチル12.4g(57mmol)、塩化ニッケル六水和物0.7g(3mmol)を仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、窒素気流下にて水素化ホウ素ナトリウム9.71gを30分かけて加えた。得られた反応混合物を25℃で4.5時間撹拌し、飽和炭酸ナトリウム水溶液50mLを加え反応を停止した。反応混合物に対して、酢酸エチル50gによる抽出操作を3度行った。酢酸エチル層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、減圧下濃縮した。濃縮物に対してメタノール63mL、濃塩酸3mLを加え、25℃で5日間撹拌後、水酸化ナトリウムを加えpH11以上とした。混合物を減圧下濃縮後、テトラヒドロフラン150mLを加え、濾過をした。濾液を減圧下濃縮し、上記式で表されるPEGPA-600を7.66g得た(収率91.4%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.68-3.29(m,70H),2.67-2.60(m,4H),1.57-1.52(m,4H)
(iii)シリルアミン化合物Gの合成
窒素置換した500mLナス型フラスコにPEGPA-600を6.9g(8mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン4.9g(32mmol)、トルエン35mLを仕込み、得られた反応混合物に対してクロロトリメチルシラン3.5g(32mmol)を滴下後、25℃で25時間撹拌した。反応混合物に対してクロロトリメチルシラン10.0g(92mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン3.0g(20mmol)をさらに加え25℃で20時間撹拌し、反応混合物に対してジエチルアミン30.5g(417mmol)を滴下した。反応混合物を濾過して得られた濾液を減圧下濃縮することで、上記式で表されるシリルアミン化合物Gを8.41g得た(収率77.1%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR分析結果より、上記式中、重合度nは16.5、分子中酸素原子数は17.5であった。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.69-3.18(m,78H),3.01-2.93(m,4H),1.72-1.65(m,4H)、0.19(s,36H)
製造例8 シリルアミン化合物Hの合成
(i)PEGPA-1000の合成
窒素置換した3Lナス型フラスコに1477.6g(1478mmol)のポリエチレングリコール1,000(富士フイルム和光純薬株式会社製)、水367mLを仕込み、得られた混合物を加熱した。混合物の温度が47℃になった時点で、48%水酸化ナトリウム水溶液1.2g、水1.8gを混合物に加えた。混合物の温度を47℃に保ち、1時間攪拌した後、25℃へ冷却した。アクリロニトリル235.2g(4433mmol)を2時間かけて混合物へ滴下し、25℃で3時間攪拌した。攪拌後、リン酸1.5g、水1mLを加えて反応を停止し、反応液2078.1gを得た。得られた反応液に水126mLを加え、吸引濾過し、濾液2195.2gを得た。得られた濾液のうち2176.6gを5L四つ口フラスコへ移し、減圧下濃縮し、無色透明溶液2050.2gを得た。得られた無色透明溶液をトルエン292mLに加え減圧下にて濃縮し、さらにトルエン116mLを加え減圧下共沸脱水を行い、固体を1671.5g得た。得られた固体を372.1g採取し、残存した固体1299.4gにトルエン1268.2mLを加え、反応混合物2397.9gを得た。得られた反応混合物の全量を5Lオートクレーブに仕込み、NDT-65(川研ファインケミカル株式会社製)316.4g、トルエン231mLをさらに加え、5Lオートクレーブ内を窒素置換した。窒素置換後、室温下アンモニアガスを導入し5Lオートクレーブ内の圧力を0.5MPaとし、さらに水素を導入して圧力を3.0MPaとした。続いて昇温し、反応液温度80℃、反応器内部圧力4.4MPaの条件で3時間反応を行った。反応後、反応液を室温まで冷却し、反応器内部圧力を常圧まで低下させた。得られた反応液にトルエン141mLと水を加え、反応液を抜き出した。抜き出した反応液にさらにトルエン649mL、パーライト35.0gを加え濾過をし、得られた濾液を減圧下濃縮し、無色透明液体1218.7gを得た。無色透明液体に水600mLを加えて得られた混合物を減圧下濃縮し、上記式で表されるPEGPA-1000を1201.3g得た。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.49‐3.29(m,90H),2.66-2.60(m,4H),1.57-1.54(m,4H)
(ii)シリルアミン化合物Hの合成
窒素置換した400mL四つ口フラスコに31.7g(29mmol)のPEGPA-1000、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン17.1g(112mmol)、トルエン140mLを仕込み、得られた反応混合物に対してクロロトリメチルシラン12.1g(112mmol)を滴下後、25℃で48時間撹拌した。反応混合物に対してテトラヒドロフラン25ml、塩化メチレン28mlを加え、24時間攪拌した。得られた反応混合物にクロロトリメチルシラン12.7g(117mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン17.2g(113mmol)をさらに加え25℃で24時間撹拌し、反応混合物に対してプロピルアミン16.7g(282mmol)を滴下し反応を停止した。反応混合物を濾過して得られた濾液を減圧下濃縮することで、上記式で表されるシリルアミン化合物Hを31.6g得た(収率78.6%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR分析結果より、上記式中、重合度nは22.1、分子中酸素原子数は23.1であった。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.52-3.41(m,88H),3.25-3.22(m,4H),2.94-2.90(m,4H),1.69-1.62(m,4H)、0.16(s,36H)
製造例9 シリルアミン化合物Iの合成
(i)PEGPA-1500の合成
窒素置換した2L四つ口フラスコに480.2g(320mmol)のポリエチレングリコール1500(シグマアルドリッチ社製)、水241mLを仕込み、得られた混合物を加熱した。混合物の温度が50℃になった時点で、48%水酸化ナトリウム水溶液0.5g、水4.5g混合物に加えた。混合物の温度を50℃に保ち、1時間攪拌した後、27℃へ冷却した。アクリロニトリル51.2g(965mmol)を2時間かけて混合物へ滴下し、25℃で16時間攪拌した。攪拌後、リン酸を0.7g、水5mLを加えて反応を停止し、25℃で1.5時間攪拌した。得られた反応混合物に水78mLを加え、減圧下濃縮した。得られた混合物にトルエン101mLを加え、減圧下共沸脱水し、さらにトルエン102mLを加え、再び減圧下共沸脱水した。得られた混合物にさらにトルエン101mLを加え、減圧下共沸脱水し得られた混合物532.8gにトルエン541mLを加え、濃縮液Aを1001.6g得た。
濃縮液Aを470.2g、NDT-65(川研ファインケミカル株式会社製)を50.5g、トルエン35mLを1Lオートクレーブに加え、1Lオートクレーブ内を窒素置換した。窒素置換後、室温下アンモニアガスを導入し1Lオートクレーブ内の圧力を0.5MPaとした後、水素を導入して圧力を3.0MPaとした。その後、反応器を加熱し、反応液温度80℃、1Lオートクレーブ内の圧力4.4MPaの条件で3時間反応を行った。反応後、反応液を室温まで冷却し、1Lオートクレーブ内の圧力を常圧まで低下させた。反応液にトルエン58mLを加え、反応液Aを599.2g得た。同様の方法で、470.2gの濃縮液Aから、反応液Bを607.0g得た。
599.2gの反応液A、607.0gの反応液Bをトルエン476mLに加え、得られた混合物を加圧濾過し、1647.8gの濾液を得た。得られた濾液に水230mLを加え、減圧下濃縮し、上記式で表されるPEGPA-1500を478.7g得た(収率92.6%)。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.49-3.34(m,134H),2.66-2.63(m,4H),1.57-1.54(m,4H)
(ii)シリルアミン化合物Iの合成
窒素置換した500mL四つ口フラスコに30.2g(19mmol)のPEGPA-1500、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン17.5g(112mmol)、テトラヒドロフラン134mLを仕込み、得られた反応混合物に対してクロロトリメチルシラン13.0g(120mmol)を滴下後、25℃で24時間撹拌した。得られた反応混合物に1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン4.2g(28mmol)、クロロトリメチルシラン3.1g(29mmol)を加え25℃で6時間攪拌後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン8.8g(58mmol)、クロロトリメチルシラン6.0g(55mmol)を加え、25℃で16時間攪拌した。得られた反応混合物に対してプロピルアミン4.1g(70mmol)を滴下し反応を停止した。反応混合物を濾過して得られた濾液を減圧下濃縮することで、上記式で表されるシリルアミン化合物Iを33.1g得た(収率93.2%)。
1H-NMR分析結果より、上記式中、重合度nは30.7、分子中酸素原子数は31.7であった。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.53-3.16(m,127H),2.97-2.93(m,4H),1.72-1.65(m,4H)、0.18(s,36H)
製造例10 シリルアミン化合物Jの合成
(i)PEG2000-EtCNの合成
窒素置換した3L四つ口フラスコに1493.3g(747mmol)のポリエチレングリコール2,000(富士フイルム和光純薬株式会社製)、水747mLを仕込み、得られた混合物を加熱した。混合物の温度が43℃になった時点で、48%水酸化ナトリウム水溶液1.3g、水1.3gを混合物に加えた。混合物の温度を45℃に保ち、1時間攪拌した後、20℃へ冷却した。アクリロニトリル118.9g(2241mmol)を2時間かけて混合物へ滴下し、23℃で17時間攪拌した。リン酸を1.5g、水2mLを加え、25℃で0.5時間攪拌して反応を停止した。得られた反応混合物にトルエン146mLを加え減圧下濃縮した後、トルエン146mLを加え減圧下濃縮し得られた濃縮液に再度トルエン146mLを加え減圧下濃縮し、PEG2000-EtCNを1669.5g得た。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.69-3.24(m,179H),3.09-3.06(m,4H),1.84-1.81(m,4H)
(ii)PEGPA-2000の合成
得られた1302.5gのPEG2000-EtCN、トルエン1500mL、NDT-65(川研ファインケミカル株式会社製)260.0gを5Lオートクレーブに加え、5Lオートクレーブ内を窒素置換した。窒素置換後、室温下アンモニアガスを導入し5Lオートクレーブ内圧力を0.5MPaとしたのち、さらに水素を導入して圧力を3.0MPaとした。続いて昇温し、反応液温度80℃、反応器内部圧力4.5MPaの条件で3時間反応を行った。反応後、反応液を室温まで冷却し、反応器内部圧力を常圧まで低下させた。得られた反応混合物にトルエン878mLを加えて得られる反応混合物を加圧濾過し、濾液3177.5gを得た。得られた濾液に水599mLを加え減圧下濃縮し、上記式で表されるPEGPA-2000を1219.6g得た(収率99.0%)。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.66-3.35(m,179H),2.66-2.63(m,4H),1.57-1.54(m,4H)
(iii)シリルアミン化合物Jの合成
窒素置換した500mL四つ口フラスコにPEGPA-2000を30.0g(14mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン14.0g(92mmol)、トルエン139mLを仕込み、得られた反応混合物に対してクロロトリメチルシラン10.0g(92mmol)を滴下後、25℃で24時間撹拌した。得られた反応混合物に塩化メチレン21mLを加え、25℃で24時間撹拌し、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン7.1g(47mmol)、クロロトリメチルシラン4.9g(46mmol)を加え、さらに25℃で96時間攪拌した。得られた反応混合物に対してプロピルアミン10.0g(169mmol)を滴下し反応を停止した。反応混合物を濾過して得られた濾液を減圧下濃縮することで、上記式で表されるシリルアミン化合物Jを27.1g得た(収率79.6%)。
1H-NMR分析結果より、上記式中、重合度nは42.5、分子中酸素原子数は43.5であった。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.65-3.42(m,174H),2.95-2.91(m,4H),1.68-1.64(m,4H)
製造例11 シリルアミン化合物Kの合成
窒素置換した500mL四つ口フラスコに4-オキサ-1,7-ヘプタンジアミン9.8g(74mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン47.0g(309mmol)、アセトニトリル127mLを仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、クロロトリメチルシラン33.g(309mmol)を滴下後、反応混合物を25℃で23時間撹拌した。反応混合物に対してヘプタン50mLによる抽出操作を4回行った。ヘプタン層を減圧下濃縮後、窒素下にて濾過し、上記式で表されるシリルアミン化合物Kを22.4g得た(収率71.0%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.20-3.17(m,4H),3.01-2.97(m,4H),1.71-1.67(m,4H),0.20(s,36H)
製造例12 シリルアミン化合物Lの合成
窒素置換した400mL四つ口フラスコにヘキサメチレンジアミン10.0g(86mmol)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン42.7g、アセトニトリル39mLを仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、クロロトリメチルシラン37.2g(342mmol)を滴下後、反応混合物を25℃で17時間撹拌した。反応混合物に対してヘプタン50mLによる抽出操作を3回行った。ヘプタン層を減圧下濃縮後、上記式で表されるシリルアミン化合物Lを28.6g得た(収率82.1%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):2.80-2.75(m,4H),1.33-1.17(m,8H),0.19(s,36H)
製造例13 オキサゾリジン系潜在性硬化剤の合成
攪拌機、温度計、窒素シール管、エステル管および加熱・冷却装置のついた反応容器に、窒素ガスを流しながら、ジエタノールアミン(分子量105)を420g、トルエンを177gおよびイソブチルアルデヒド(分子量72.1)を317g仕込み、攪拌しながら加温し、副生する水(71.9g)を系外に除去しながら、110~150℃で還流脱水反応を行った。水の留出が認められなくなった後、さらに減圧下(50~70hPa)で加熱し、トルエンと未反応のイソブチルアルデヒドを除去し、中間の反応生成物であるN-ヒドロキシエチル-2-イソプロピルオキサゾリジンを得た。次いで、得られたN-ヒドロキシエチル-2-イソプロピルオキサゾリジン636gに、ヘキサメチレンジイソシアネート(分子量168)を336g加え、80℃で8時間加熱し、滴定による実測NCO含有量が0.0質量%になった時点で反応終了とし、1分子中にオキサゾリジン環を2個有するオキサゾリジン系潜在性硬化剤を得た。この得られたオキサゾリジン系潜在性硬化剤は、常温で液体であった。
製造例14 イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成
撹拌機、温度計、窒素シール管、加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながら、ポリオキシプロピレンジオール(商品名:サンニックスPP-4000、三洋化成工業株式会社製、数平均分子量5,570、分散度Mw/Mn1.02)を421.5g、ポリオキシプロピレントリオール(商品名:エクセノール5030F、AGC株式会社製、数平均分子量5,140、分散度Mw/Mn1.02)を421.5g、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(商品名:JP-508、城北化学工業株式会社製)を0.05g仕込んだ。さらに、攪拌しながらイソホロンジイソシアネート(分子量222.3、エボニックジャパン社製)を156.7g、2-エチルへキサン酸ジルコニル(商品名:ニッカオクチックスジルコニウム12%、日本化学産業株式会社製)を0.3g添加し、加温して80~85℃で2時間反応させた。イソシアネート基含有量が理論値(4.0質量%)以下になった時点で反応を終了させ、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成した。
実施例1 保存安定性試験
窒素雰囲気下にて潜在性硬化剤としてシリルアミン化合物Aまたはシリルアミン化合物L、並びにイソホロンジイソシアネートおよびトリフルオロ酢酸を表1に示す組成で試験管に入れ、均一になるまで攪拌混合して硬化性組成物を調製した。
窒素雰囲気下、25℃で硬化性組成物を密閉保存し、保存開始から0日、1日、4日、6日、12日経過時点で、硬化性組成物が入った試験管を転倒させ、サンプルの流動性を目視で観察することで以下に示す評価基準で評価した。結果を表1に示す。
A:試験管を転倒させて15秒以内に1cm流動した
B:試験管を転倒させて1分以内に1cm流動した
C:試験管を転倒させて1分を超えても流動しなかった
表1に示すように、シリルアミン化合物Aを含有する硬化性組成物は保存開始後、12日経過時点においても硬化性組成物の流動性は良好であり、優れた保存安定性を示した。
実施例2 硬化性能評価試験
実施例1でシリルアミン化合物Aを用いて調製した硬化性組成物を、窒素雰囲気下、25℃で1日間、硬化性組成物を密閉保存した。保存後の硬化性組成物を空気下に開放し、温度16℃、湿度40%RHにおいて指触乾燥時間(タックフリータイム)を測定した。その結果、指触乾燥時間は6時間であった。
実施例3~10、比較例1 硬化試験
試験管に製造例14で製造したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、表2に示す潜在性硬化剤およびブトキシエチルアシッドホスフェート(商品名:JP-506H、城北化学工業株式会社製)を表2に示す組成で配合し、均一になるまで攪拌混合して硬化性組成物を製造した。硬化性組成物を空気下で開放し、温度16℃、湿度40%RHにおいて指触乾燥時間(タックフリータイム)を測定した。結果を表2に示す。なお、比較例1のタックフリータイムが96.0以上となっているのは、96.0時間経過しても硬化しなかったことを示す。
*mol比:イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基1molに対する潜在性硬化剤が加水分解して生じるアミノ基のmol比
実施例11~17および比較例2~3 保存安定性試験
試験管に製造例14で製造したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、表3に示す潜在性硬化剤およびブトキシエチルアシッドホスフェート(商品名:JP-506H、城北化学工業株式会社製)を表3に示す組成で配合し、均一になるまで攪拌混合して硬化性組成物を製造した。硬化性組成物を50℃の密閉系で5日間保存後、粘度を測定し、測定値より下記3段階の評価基準で保存安定性を評価した。粘度測定は京都電子工業株式会社製のEMS-1000を用いて25℃で実施した。結果を表3に示す。
A:保存後5日で粘度15000mPa・s未満
B:保存後5日で粘度35000mPa・s未満
C:保存後5日で粘度35000mPa・s以上
D:硬化性組成物に固体が存在するため粘度測定不可(シリルアミン化合物が溶解せず)。
臭気判定試験
保存安定性試験終了後、硬化性組成物の入っている試験管の上部を手で仰ぎ、実験者の嗅覚により臭気を確認し、下記3段階の評価基準で評価した。結果を表3に示す。
A:開放された試験管を持った際に、アルデヒド臭を感じない
B:開放された試験管を持った際に、アルデヒド臭を感じる
C:開放された試験管を持った際に、強くアルデヒド臭を感じる
*mol比:イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基1molに対する潜在性硬化剤が加水分解して生じるアミノ基のmol比
比較例4 臭気判定試験
試験管に製造例14で製造したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー5.000g、製造例13で製造したオキサゾリジン系潜在性硬化剤0.9641gおよびブトキシエチルアシッドホスフェート(商品名:JP-506H、城北化学工業株式会社製)0.013gを配合し、均一になるまで攪拌混合して硬化性組成物を製造した。製造した硬化性組成物の臭気について、実施例11~17および比較例2~3における臭気判定試験と同様に評価した。その結果、硬化性組成物の判定試験の結果はCであった。
比較例5
試験管に製造例14で製造したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを5.000g、シリルアミン化合物Lを0.952gおよびブトキシエチルアシッドホスフェート(商品名:JP-506H、城北化学工業株式会社製)を0.013g配合し、均一になるまで攪拌混合して硬化性組成物を製造した。硬化性組成物を50℃の密閉系で5時間保存後、粘度を測定した。粘度測定は京都電子工業株式会社製のEMS-1000を用いて25℃で実施した。製造直後の硬化性組成物の粘度は31700mPa・s、5時間保存後の硬化性組成物の粘度は66300mPa・sであった。
実施例18~25、比較例6~10 相溶性試験
試験管に製造例14で製造したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー2.0g、表4に示す潜在性硬化剤を1.0g配合し、均一になるまで攪拌混合して硬化性組成物を製造した。得られた硬化性組成物を25℃で転倒混和(60回/分)し、経過時間ごとにおける相溶性を目視により以下の評価基準で評価した。
A:完全に混和
B:界面不明瞭だが、完全には相溶していない
C:はっきりと分液している
D:硬化性組成物に固体が存在する(シリルアミン化合物が溶解しない)。
*オキサゾリジン系潜在性硬化剤:製造例13で製造したオキサゾリジン系潜在性硬化剤
実施例2の結果から、本発明の潜在性硬化剤とイソシアネートモノマーより製造した組成物が硬化性能を示すことが分かった。また、表2に示される結果より、本発明の潜在性硬化剤とイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーより製造した組成物が硬化性能を示すことが分かった。
表3に示される結果から、本発明の硬化性組成物は保存安定性に優れ、かつアルデヒド臭を発しないことが分かった。一方、比較例4の結果からオキサゾリジン系硬化剤はアルデヒド臭を発することが分かった。さらに、表4に示される結果から、本発明の潜在性硬化剤は、イソシアネート化合物(イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー)との相溶性に優れることが分かった。一方、比較例5および比較例10の結果から、分子内にエーテル性酸素原子を含まないシリルアミン化合物Lを用いた硬化性組成物は初期粘度が高く、また、保存安定性が悪く、さらに、イソシアネート化合物(イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー)との相溶性に劣ることが分かった。また、比較例8の結果から、オキサゾリジン系潜在性硬化剤は相溶性に劣ることが分かった。比較例9の結果から、分子中酸素原子数が1であるシリルアミン化合物Kはイソシアネート化合物(イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー)との相溶性が不十分であることが分かった。また、比較例6、7の結果から、分子中酸素原子数が31.7もしくは43.5であるシリルアミン化合物I、Jは、イソシアネート化合物(イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー)にシリルアミン化合物が溶解しないことが分かった。
表1~4の結果から、本発明の潜在性硬化剤は、イソシアネート化合物を含む硬化性組成物の潜在性硬化剤として有用であることが分かった。また、本発明の潜在性硬化剤は、式(1)で表されるシリルアミン化合物の構造からも明らかなように湿気等の水により加水分解してもアルデヒド化合物が生成せず、イソシアネート化合物との反応を行う際、アルデヒド化合物の臭気が生じないため有用である。