以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。
一実施形態に係るシミュレーション方法について説明するに当たり、一実施形態に係るシミュレーション方法が適用されるロータリーキルンの構成について説明する。
<ロータリーキルン>
図1は、一実施形態に係るシミュレーション方法が適用されるロータリーキルンの概略構成を示す。図1に示すように、ロータリーキルン1は、回転自在で略円筒形状のキルン本体11と、キルン本体11の途中に設けられる燃焼用材料供給管12とを有する。
キルン本体11は、円筒形状の中空構造物からなる窯であり、キルン本体11は、厚さ15~30mmの炭素鋼からなる。キルン本体11は、その内周側の壁面に、耐熱性を高めるための耐火物を備えることが好ましい。
キルン本体11の大きさとしては、例えば、内径が4.5m~5.5m、長軸方向の長さ(全長)が100m~110mの大きさのものを用いることが好ましい。
キルン本体11は、その一端側(図1中の左側)の開口端部11aが、ロータリーキルン装入端(以下、単に「装入端」ともいう。)14Aに挿入して閉じられると共に、他端側(図1中の右側)の開口端部11bが、ロータリーキルン排出端(以下、「排出端」ともいう。)14Bに挿入して閉じられている。キルン本体11は、装入端14Aから排出端14Bに向かってわずかに傾斜した状態で配設されており、軸回りに回転自在に支持されている。
装入端14Aには、原料鉱石をキルン本体11内に導入する原料供給管15が貫設されている。排出端14Bには、開口端部11bを貫通してキルン本体11内に導入されるバーナー16が設けられる。
原料鉱石は、ニッケル酸化鉱石(酸化ニッケル鉱石)等を用いることができる。原料鉱石は、例えば、ニッケル酸化鉱石等をドライヤー(ロータリードライヤー)により予備乾燥して、付着水分の一部を除去した乾燥鉱石等を用いることができる。乾燥鉱石中の水分量としては、15質量%~25質量%程度である。
原料鉱石であるニッケル酸化鉱石としては、特に限定されないが、鉄とニッケルを主成分とする合金であるフェロニッケルの製錬においては、ガーニエライト鉱等が好ましく用いられる。ガーニエライト鉱の代表的な組成としては、乾燥鉱石での換算で、Ni品位が2.1質量%~2.5質量%、Fe品位が11質量%~23質量%、MgO品位が20質量%~28質量%、SiO2品位が29質量%~39質量%、CaO品位が0.5質量%未満、灼熱減量が10質量%~15質量%である。
バーナー16は、微粉炭専焼バーナー又は微粉炭と重油の混焼バーナー等を用いることができる。バーナー16は、微粉炭又は微粉炭及び重油等を含む燃料を燃焼して、ロータリーキルン1内に燃焼熱を発生させる。
燃焼用材料供給管12は、キルン本体11の外周面の途中に設けられ、キルン本体11内に燃焼用材料を供給する。燃焼用材料は、揮発分及び固定炭素の少なくとも一方を含み、例えば、石炭等の炭材を用いることができる。
揮発分は、炭化水素化合物、硫黄及びハロゲン等の揮発物質等である。
固定炭素は、石炭から水分・揮発分が抜けた後の、熱分解後残渣であるチャー粒子(主に固定炭素及び灰分)のうち、灰分を除いた主に炭素から構成される燃焼分である。
なお、図1では、燃焼用材料供給管12は、キルン本体11の外周面に1つだけ設けられているが、キルン本体11の外周面に、キルン本体11の軸方向又は軸回りに沿って複数設けてもよい。
燃焼用材料は、単一品種の炭材ではなく、複数の異なる品種の炭材等を混合して用いることが多く、さらに投入する炭材の粒子径の大きさも分布を持つことが多い。なお、粒子径とは、有効径による体積平均粒径をいい、粒子径は、例えば、レーザ回折・散乱法、動的光散乱法又は分級法等によって測定される。レーザ回折・散乱法を用いる場合、レーザ回折・散乱法により測定した体積基準の粒度分布において小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒子径(D50)を平均粒子径として用いることができる。
原料鉱石は、装入端14Aに設けた原料供給管13からキルン本体11内に装入され、燃焼用材料は燃焼用材料供給管12からキルン本体11内に投入される。排出端14B側からは、排出端14Bに設置したバーナー16により微粉炭や重油等を燃焼させることにより発生した高温の燃焼ガスが、排出端14B側から装入端14A側に向けて、すなわち原料鉱石の流れと反対の方向に吹き込まれる。
キルン本体11内では、原料鉱石は、装入端14Aから装入され、キルン本体11が所定の速度で回転することで、装入端14Aから原料供給管15を通してキルン本体11内に装入された原料鉱石を一端側である開口端部11a側から他端側である排出端14Bに向かって搬送する。このとき、原料鉱石は、キルン本体11内を移動しながら、排出端14Bから装入端14A側に向かって流れる燃焼ガスと向流接触し、バーナー16で微粉炭や重油等の燃料を燃焼させることにより発生させた高温の燃焼ガスの燃焼熱及び火炎によって加熱される。また、燃焼用材料供給管12からキルン本体11内に投入される燃焼用材料が、キルン本体11内の燃焼ガスにより燃焼する。原料鉱石は、燃焼用材料供給管12から投入された燃焼用材料の燃焼により生じさせた燃焼熱によっても加熱される。そのため、原料鉱石は、キルン本体11の回転に連れてキルン本体11の装入端14Aから排出端14Bに向けて移動しながら、バーナー16で燃料が燃焼することで生じた燃焼ガスの燃焼熱及び火炎と、燃焼用材料が燃焼することで生じた燃焼ガスの燃焼熱とにより加熱され、徐々に温度を上げて行く。
キルン本体11内では、原料鉱石と燃焼ガスとの間で、原料鉱石や燃焼用材料に含まれる水分の蒸発、燃焼用材料に含まれる揮発分の揮発と、バーナー燃料及び燃焼用材料に含まれる灰分の落下等により、物質の移動が生じる。ロータリーキルン1の途中から供給される燃焼用材料が熱分解することで生じる水分や揮発分は装入端14A側に燃焼ガスと共に移動し、チャー粒子は排出端14Bに原料鉱石と共に移動する。
キルン本体11内の原料鉱石が排出端14Bに到達するまでに、原料鉱石は、その原料鉱石中に含まれる水分がほぼ完全に除去されて焼成すると共に部分還元されて、焼鉱となる。
焼鉱は、例えば、温度800~900℃、粒子径が10mm~100mm程度の大きさからなる。焼鉱は、排出端14Bから排出される。
排出端14Bの排出口には、粒子径10mm~100mm程度の焼鉱と、ロータリーキルン1内に発生した焼結塊(粒子径100mm~500mm程度)とを分離するためのロストル(篩分装置)17が設けられている。ロストル17は、例えば、目開き100mm程度の鉄製の格子で構成されている。排出端14Bから排出された焼鉱は、ロストル17を通過した後、焼鉱排出用シュート18を通って、次工程に搬送される。
<シミュレーション装置>
次に、一実施形態に係るシミュレーション方法が適用される、一実施形態に係るシミュレーション装置について説明する。図2は、一実施形態に係るシミュレーション装置の機能を示すブロック図である。なお、図2では、シミュレーション装置が、ロータリーキルン1内を複数の領域に分割した時の、燃焼用材料供給管12から燃焼用材料が供給される領域Aにおける単位操作モデルとして説明する。また、図2では、領域Aのうち、燃焼ガスが吹き込まれる領域を領域A+1とし、原料鉱石が装入される領域を領域A-1とする。
なお、以下の説明において、領域Aに流入するガス相は、第1ガス相、第2ガス相、第3ガス相に分類して記載し、領域Aに流入する固相は、第1固相、第2固相、第3固相に分類して記載する。
以下の説明において、
「第1ガス相」とは、一方の隣接する領域(領域A+1)から領域Aに流入する燃焼ガスである。燃焼ガスは、揮発分の他に、酸素や二酸化炭素、一酸化炭素、水素など平衡反応に寄与するガス、さらに反応に寄与しない不活性な物質(例えば、窒素等)等を含んでもよい。
「第2ガス相」とは、燃焼用材料から分配された揮発分と第1ガス相とが合算されたガス相である。
「第3ガス相」とは、後述する、第2ガス相の混合計算モデルM6-1で生じるガス相である。
「第1固相」とは、一方の隣接する領域(領域A-1)から領域Aに流入する原料鉱石である。原料鉱石は、酸化ニッケルや酸化鉄等の鉱石中化合物や、固定炭素の他に、後述する平衡反応計算モデルM3において反応に寄与しない不活性な物質等を含んでもよい。
「第2固相」とは、燃焼用材料から分配された固定炭素と第1固相とが合算された固相である。
「第3固相」とは、後述する、第2固相の混合計算モデルM6-2で生じる固相である。
図2に示すように、シミュレーション装置20は、燃焼用材料の分配モデル(以下、単に分配モデルという)M1、第2ガス相の個別反応量(第2ガス相個別反応量)の計算モデルM2-1、第2固相の個別反応量(第2固相個別反応量)の計算モデルM2-2、揮発分の合算モデルM3-1、固定炭素の合算モデルM3-2、平衡反応計算モデルM4、揮発分の合算生成分(揮発分合算生成分)の分解モデルM5-1、固定炭素の合算生成分(固定炭素合算生成分)の分解モデルM5-2、第2ガス相の混合計算モデルM6-1、第2固相の混合計算モデルM6-2及び判定モデルM7を含む。
分配モデルM1は、燃焼用材料の種類や成分等を予め設置しておくことにより、燃焼用材料を、燃焼用材料に含まれる揮発分(ガス相の一成分)と固定炭素(固相の一成分)とに質量流量で分配する機能を有する。
第2ガス相個別反応量の計算モデルM2-1は、一方の隣接する領域(領域A+1)から流入する燃焼ガス(第1ガス相)G1と、分配モデルM1で分配された燃焼用材料の揮発分とを含む第2ガス相G2と、他方の隣接する領域(領域A-1)から流入する原料鉱石(第1固相S1)と、分配モデルM1で分配された固定炭素とを含む第2固相S2との平衡状態に達する量が、例えばアレニウス型の反応速度式に従う反応速度と、領域A内の第2ガス相G2の滞留時間から算出できるモデルを採用する。第2ガス相個別反応量の計算モデルM2-1は、この場合に、第2ガス相G2のうち、反応速度が異なる揮発分VM11~VM1M及び揮発分以外の第2ガス相G21~G2N(図4参照)ごとに、第2固相S2及び第2ガス相G2との平衡反応に寄与する、第2ガス相の個別反応量をそれぞれ計算する。
そして、第2ガス相個別反応量の計算モデルM2-1は、揮発分を含む第2ガス相の個別反応量に相当する第2ガス相の個別反応分(第2ガス相個別反応分)と、残りの未反応の質量流量に相当する第2ガス相の個別未反応分(第2ガス相個別未反応分)とに分割する。
第2ガス相個別反応分に影響を与える要素としては、例えば、実際のロータリーキルン内での第2ガス相G2の濃度分布や、第2ガス相G2の温度及び線速度(領域A内滞留時間)等が挙げられる。
なお、反応分とは、領域A内の第2ガス相G2又は第2固相S2が通過する滞留時間において、第2ガス相G2又は第2固相S2との接触により、反応に寄与する流量をいう。
ロータリーキルン1では、燃焼ガスと原料鉱石の流れが対向流となっている。燃焼ガスの流速は原料鉱石の流れよりも大きく、燃焼ガスと原料鉱石とは平衡状態に達していない。そこで、本実施形態では、第2ガス相個別反応量の計算モデルM2-1は、ロータリーキルン1内のある領域(領域A)の第2ガス相G2の一部のみが第2固相S2と平衡状態に達するとみなして、それに対応する第2ガス相個別反応量に応じて、第2ガス相G2を分割する。そして、第2ガス相個別反応量の計算モデルM2-1は、複数の反応速度が異なる第2ガス相G2ごとに第2ガス相個別反応量を計算し、第2ガス相個別反応量に相当する第2ガス相個別反応分を計算する。
第2固相個別反応量の計算モデルM2-2は、アレニウス型の反応速度式及び滞留時間により第2固相S2と第2ガス相G2とが平衡状態に達していると見積もった分量だけについて、第2固相S2のうち、反応速度が異なる第2固相S21~S2N(図5参照)ごとに、第2ガス相G2との反応に寄与する、第2固相S2の第2固相個別反応量をそれぞれ計算する。そして、第2固相個別反応量の計算モデルM2-2は、第2固相個別反応量に相当する第2固相の個別反応分(第2固相個別反応分)をそれぞれ求める。
第2固相個別反応分に影響を与える要素としては、例えば、鉱石や固定炭素の形状、粒子径、比表面積、及び表面積と、鉱石や固定炭素を構成する物質の種類等が挙げられる。
そして、第2固相個別反応量の計算モデルM2-2は、第2固相個別反応分と、残りの未反応の質量流量に相当する第2固相の個別未反応分(第2固相個別未反応分)とに分割する。
揮発分の合算モデルM3-1は、それぞれの第2ガス相個別反応分のうち、平衡反応計算モデルM4で同一の化合物として取り扱う揮発分を合算して、揮発分の合算反応分(揮発分合算反応分)を求める。
固定炭素の合算モデルM3-2は、それぞれの第2固相個別反応分のうち、平衡反応計算モデルM4で同一の化合物として取り扱う固定炭素を合算して、固定炭素の合算反応分(固定炭素合算反応分)を求める。
平衡反応計算モデルM4は、揮発分合算反応分を含む第2ガス相個別反応分と固定炭素合算反応分を含む第2固相個別反応分との反応により生成される可能性のある物質(生成物質)の種類、相及び流量等を予め設定しておくことにより、生成物質の自由エネルギーが最小となるように、平衡反応計算を行って、生成物質の種類、相及び流量等を決定する機能を有する。平衡反応計算モデルM4は、揮発分合算反応分を含む第2ガス相個別反応分と固定炭素合算反応分を含む第2固相個別反応分とが平衡状態に達したときの、それぞれの熱量の変化、流量、生成物質の種類、組成及び相等を計算して出力する。
平衡反応計算モデルM4は、揮発分合算反応分を含む第2ガス相個別反応分と固定炭素合算反応分を含む第2固相個別反応分とが反応することで生じる生成ガスと、揮発分合算反応分を含む第2ガス相個別反応分の未使用分とを、第2ガス相合算生成分として計算する。また、平衡反応計算モデルM4は、揮発分合算反応分を含む第2ガス相個別反応分と固定炭素合算反応分を含む第2固相個別反応分とが反応することで生じる生成物質と、固定炭素合算反応分を含む第2固相個別反応分の未使用分とを、第2固相合算生成分として計算する。
揮発分合算生成分の分解モデルM5-1は、平衡反応計算モデルM4で揮発分合算反応分を含む第2ガス相個別反応分と固定炭素合算反応分を含む第2固相個別反応分とが反応することで生じる、第2ガス相個別生成分のうち、揮発分の合算モデルM3-1にて合算していたものを、反応速度が異なる揮発分個別反応分の割合に分解し、揮発分の個別生成分(揮発分個別生成分)を含む第2ガス相の個別生成分(第2ガス相個別生成分)を得る。
固定炭素合算生成分の分解モデルM5-2は、平衡反応計算モデルM4で揮発分合算反応分を含む第2ガス相個別反応分と固定炭素合算反応分を含む第2固相個別反応分とが反応することで生じる、第2固相個別生成分のうち、固定炭素の合算モデルM3-2にて合算していたものを、反応速度が異なる、固定炭素の個別反応分(固定炭素個別反応分)の割合に分解し、固定炭素の個別生成分(固定炭素個別生成分)を含む第2固相の個別生成分(第2固相個別生成分)を得る。
第2ガス相の混合計算モデルM6-1は、複数の流れを混合する機能を有しており、平衡反応計算モデルM4で生じた個々の第2ガス相個別生成分と、第2ガス相個別反応量の計算モデルM2-1で分割された、個々のガス相個別未反応分とを、それぞれ混合した第3ガス相の流量や組成データ等を計算する。
第2固相の混合計算モデルM6-2は、複数の流れを混合する機能を有しており、第2固相個別反応量の計算モデルM2-2で分割された、個々の第2固相個別未反応分と、平衡反応計算モデルM4で生じた個々の固相個別生成分とを、それぞれ混合した第3固相S3の流量や組成データ等を計算すると共に、粒子径及び空隙率を計算する。
判定モデルM7は、固定炭素個別生成分FC2M(Mは、1以上の整数である)の粒子径を、固定炭素個別生成分FC2Mよりも粒子径が小さい他の固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径と比較する機能と、固定炭素個別生成分FC2Mの空隙率を閾値と比較する機能を有する。判定モデルM7は、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径又は空隙率の比較結果に基づいて、固定炭素個別生成分FC2Mが含まれるグループを決定する。
判定モデルM7は、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径が他の固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径よりも小さい場合には、固定炭素個別生成分FC2Mを、他の固定炭素個別生成分FC2Mに合算する。判定モデルM7は、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径が他の固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径以上であり、固定炭素個別生成分FC2Mの空隙率が閾値以上である場合には、固定炭素個別生成分FC2Mを粒子径の最も小さい固定炭素個別生成分FC2Nに合算する。
<シミュレーション方法>
次に、一実施形態に係るシミュレーション装置を用いて、一実施形態に係るシミュレーション方法について説明する。一実施形態に係るシミュレーション方法は、図1に示すような構成を有するロータリーキルン1において、ロータリーキルン1の装入端14A側から供給した原料鉱石を排出端14B側に向かって移動させながら、移動の途中から燃焼用材料を投入し、原料鉱石を排出端14B側に設けられるバーナー16から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う場合のシミュレーション方法である。
図3は、一実施形態に係るシミュレーション方法を説明するフローチャートである。図3に示すように、シミュレーション装置20は、ロータリーキルン1内に燃焼用材料を投下しているか否かを確認する(確認工程:ステップS11)。
ロータリーキルン1内に燃焼用材料が投下されている場合(ステップS11:Yes)、シミュレーション装置20は、揮発分を想定した炭化水素化合物等と、固定炭素を想定した物質を入力物質として与え、分配モデルM1を用いて、ロータリーキルン1内に添加される燃焼用材料を揮発分と固定炭素とに質量流量で分配する(分配工程:ステップS12)。
次に、シミュレーション装置20は、一方の隣接する領域(領域A+1)から領域Aに流入する燃焼ガスである第1ガス相G1と、他方の隣接する領域(領域A-1)から領域Aに流入する原料鉱石である第1固相S1と、分配モデルM1で分配された燃焼用材料の揮発分及び固定炭素とを入力物質として与える。シミュレーション装置20は、第2ガス相個別反応量の計算モデルM2-1を用いて、反応速度の異なる第2ガス相ごとに、原料鉱石(第1固相S1)及び分配モデルM1で分配された固定炭素とを含む第2固相S2との平衡状態に寄与する、(M+N)種類の第2ガス相個別反応量をそれぞれ計算して、反応速度が異なる第2ガス相ごとに、平衡反応に寄与する第2ガス相個別反応分をそれぞれ求める(第2ガス相個別反応量の計算工程:ステップS13)。
すなわち、シミュレーション装置20は、第2ガス相G2と第2固相S2とが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、反応速度が異なる第2ガス相G2が第2固相S2及び第2ガス相G2同士で反応して、原料鉱石及び他ガスとの平衡状態に達する時の反応に寄与する第2ガス相個別反応量を、第2ガス相ごとにそれぞれ計算し、第2ガス相個別反応分を求める。
例えば、図4に示すように、第2ガス相G2は、反応速度が異なるM種類(Mは、1以上の整数)の揮発分VM11、VM12・・・VM1Mと、反応速度が異なるN(Nは、1以上の整数)種類の、揮発分以外の第2ガス相G21、G22・・・G2Nとを含み、(M+N)種の成分を含むとする。
N種類の、揮発分以外の第2ガス相G21、G22・・・G2Nの、それぞれの第2ガス相G21、G22・・・G2Nの質量流量が、mG21、mG22・・・mG2Nであり、揮発分以外の第2ガス相G21、G22・・・G2Nの反応速度が、kG21、kG22、・・・kG2Nであり、揮発分以外の第2ガス相G2が領域Aを通る通過時間がΔtG2であるとする。このとき、第2ガス相個別反応量ΔmG2Nは、揮発分以外の第2ガス相G2Nの反応速度kG2Nと、揮発分以外の第2ガス相G2Nの通過時間ΔtG2と、揮発分以外の第2ガス相G2Nの反応分の質量流量mG2Nとを乗じる(ΔmG2N=kG2N×ΔtG2×mG2N)ことで求められる。
また、図4に示すように、第2ガス相G2中に含まれるM種の揮発分VM11、VM12・・・VM1Mの質量流量が、mVM11、mVM12・・・mVM1Mであり、揮発分VM11、VM12・・・VM1Mの反応速度が、kVM11、kVM12、・・・kVM1Mであり、揮発分VM1が領域Aを通る通過時間がΔtVM1であるとする。このとき、揮発分個別反応量ΔmVM1Mは、揮発分VM1Mの反応速度kVM1Mと、揮発分VM1Mの通過時間ΔtVM1と、揮発分VM1Mの反応分の質量流量mVM1Mとを乗じる(ΔmVM1M=kVM1M×ΔtVM1×mVM1M)ことで求められる。
一方、(M+N)種類の第2ガス相のうち、M種類の揮発分VM11・・・VM1Mの未反応分は、それぞれ、vm11・・・vm1Mとし、残りのN種類の、その他のガス種である、揮発分以外の第2ガス相G21・・・G2Nの未反応分は、それぞれ、g21・・・g2Nとする。
そして、シミュレーション装置20は、M種類の揮発分VM11・・・VM1Mの第2ガス相個別反応量の計算結果に基づいて、図2に示すように、M種類の揮発分VM11・・・VM1Mから、第2ガス相個別反応量ΔmVM1M(図4参照)に相当する第2ガス相個別反応分VM1Mと、残りの第2ガス相個別未反応分量に相当する第2ガス相個別未反応分vm1Mとを得る。さらに、N種類の揮発分以外の第2ガス相G21・・・G2Nの第2ガス相個別反応量の計算結果に基づいて、図2に示すように、N種類の第2ガス相G21・・・G2Nから、第2ガス相個別反応量ΔmG2N(図4参照)に相当する第2ガス相個別反応分G2Nと、残りの第2ガス相個別未反応分量に相当する第2ガス相個別未反応分g2Nとを得る。
次に、シミュレーション装置20は、揮発分の合算モデルM3-1を用いて、第2ガス相個別反応分のうち、平衡反応計算モデルM4で同一の化合物として取り扱う揮発分を合算して、揮発分合算反応分を求める(揮発分個別反応量の合算工程:ステップS14)。
揮発分合算反応分VM1Mtotalは、揮発分個別反応量を計算して得られる揮発分個別反応分VM11、VM12・・・VM1Mの和であり、VM1Mtotal=VM11+VM12+・・・VM1Mと表せる。
なお、シミュレーション装置20は、揮発分以外の、その他のガス種(例えば、窒素や酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素等)は合算しない。
次に、シミュレーション装置20は、第1ガス相G1と、分配モデルM1で分配された燃焼用材料の揮発分と、第1固相S1と、分配モデルM1で分配された固定炭素とを入力物質として与える。シミュレーション装置20は、第2固相個別反応量の計算モデルM2-2を用いて、第2固相のうち、反応速度が異なる第2固相ごとに、第2ガス相G2及び第2固相S2同士での反応に寄与する第2固相個別反応量をそれぞれ計算して、第2固相個別反応分をそれぞれ求める(第2固相個別反応量の計算工程:ステップS15)。
すなわち、シミュレーション装置20は、第2ガス相G2と第2固相S2とが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、反応速度が異なる第2固相S2が第2ガス相G2及び第2固相S2同士で反応して平衡状態に達する時の反応に寄与する第2固相個別反応量を、第2固相ごとにそれぞれ計算し、固定炭素個別反応分FC11、FC12・・・FC1M及び第2固相個別反応分S11、S12・・・S1Nを求める。
例えば、図5に示すように、第2固相S2は、反応速度が異なるM種類(Mは、1以上の整数)の固定炭素FC11、FC12・・・FC1Mと、反応速度が異なるN(Nは、1以上の整数)種類の、固定炭素以外の第2固相S21、S22・・・S2Nとを含み、(M+N)種の成分を含むとする。
反応速度が異なる、N種類の、固定炭素以外の第2固相S21、S22・・・S2Nについて、N種類の、固定炭素以外の第2固相個別反応分S21、S22・・・S2Nを求める。第2固相の質量が、mS21、mS22・・・mS2Nであり、第2固相の反応速度が、kS21、kS22、・・・kS2Nであり、領域Aを通る通過時間がΔtS2であるとする。このとき、S21、S22・・・S2Nの第2固相個別反応量ΔmS2Nは、第2固相の反応速度kS2Nと、第2固相の通過時間ΔtS2と、第2固相の反応分の質量流量mS2Nとを乗じる(ΔmS2N=kS2N×ΔtS2×mS2N)ことで求められる。
また、図5に示すように、第2固相中に含まれるM種類の固定炭素の質量が、mFC11、mFC12・・・mFC1Mであり、固定炭素の反応速度が、kFC11、kFC12、・・・kFC1Mであり、固定炭素が領域Aを通る通過時間がΔtFC1であるとする。また、固定炭素の空隙率及び粒子径が、εFC11、εFC12・・・εFC1Mであり、固定炭素の粒子径が、dpFC1N、dpFC12・・・dpFC1Mであるとする。このとき、固定炭素個別反応分FC11、FC12・・・FC1Mの固定炭素個別反応量ΔmFC1Mは、固定炭素の反応速度kFC1Mと、固定炭素の通過時間ΔtFC1と、固定炭素の反応分の質量流量mFC1Mとを乗じる(ΔmFC1M=kFC1M×ΔtFC1×mFC1M)ことで求められる。
一方、(M+N)種類の第2固相のうち、M種類の固定炭素の固定炭素個別未反応量に相当する固定炭素個別未反応分は、それぞれ、fc11・・・fc1Mとする。N種類の第2固相S21・・・S2Nの未反応分は、それぞれ、s21・・・s2Nとする。
次に、シミュレーション装置20は、固定炭素の合算モデルM3-2を用いて、それぞれの第2固相個別反応分のうち、平衡反応計算モデルM4で同一の化合物として取り扱う固定炭素を合算して、固定炭素合算反応分を求める(固定炭素個別反応量の合算工程:ステップS16)。
固定炭素合算反応分FC1Mtotalは、固定炭素合算反応量を計算して得られる固定炭素個別反応分FC11、FC12・・・FC1Mの和であり、FC1Mtotal=FC11+FC12+・・・FC1Mと表せる。
次に、シミュレーション装置20は、揮発分個別反応量の合算工程(ステップS14)で得られた揮発分合算反応分を含む第2ガス相個別反応分と、固定炭素個別反応量の合算工程(ステップS16)で得られた固定炭素合算反応分を含む第2固相個別反応分とを入力物質として与え、平衡反応計算モデルM4を用いて、揮発分合算反応分と、揮発分以外のガスとを含む第2ガス相個別反応分と、固定炭素合算反応分と、固定炭素以外の固相とを含む第2固相個別反応分とが平衡状態に達した時の、それぞれの熱量の変化、流量、生成物質の種類、組成及び相等を計算する(平衡反応計算工程:ステップS17)。
シミュレーション装置20は、平衡反応計算モデルM4を用いて、揮発分合算反応分を含むガス相個別反応分と固定炭素合算反応分を含む固相個別反応分とが反応することで生じる生成ガスと、第2ガス相個別反応分の未使用分との和を、ガス相個別生成分として計算する。また、シミュレーション装置20は、揮発分合算反応分を含む第2ガス相個別反応分と固定炭素合算反応分を含む第2固相個別反応分とが反応することで生じる生成物と、第2固相個別反応分の未使用分との和を、第2固相個別生成分として計算する。
次に、シミュレーション装置20は、揮発分合算生成分の分解モデルM5-1を用いて、平衡反応計算工程(ステップS17)で得られる揮発分合算生成分VM2Mtotalのうち、揮発分の合算モデルM3-1にて合算していた物質を、反応速度の異なる揮発分個別反応分の揮発分個別反応量の割合に分解し、揮発分個別生成分VM2Mを得る(揮発分合算生成分の分解工程:ステップS18)。
すなわち、図4に示すように、揮発分合算生成分VM2Ntotalのうち、揮発分の合算モデルM3-1において合算した、M種類の揮発分個別反応分VM2Mに起因する揮発分の生成分を、M種類の揮発分個別反応分VM2Mの割合に分解して、揮発分個別生成分VM2Mとする。
次に、シミュレーション装置20は、図2に示すように、固定炭素合算生成分の分解モデルM5-2を用いて、平衡反応計算(ステップS17)で揮発分合算反応分VM1Mtotalを含む第2ガス相個別反応分と固定炭素合算反応分FC1Mtotalを含む第2固相個別反応分とが反応することで生じる固定炭素合算生成分FC2Mtotalのうち、固定炭素の合算モデルM3-2にて合算していた物質を、反応速度が異なる固定炭素の固定炭素個別反応量の割合(固定炭素個別反応分FC11、FC12、・・・FC1Mの割合)に分解し、固定炭素個別生成分FC2Mを得る(固定炭素合算生成分の分解工程:ステップS19)。
すなわち、図5に示すように、固定炭素合算生成分FC2Mtotalのうち、固定炭素の合算モデルM3-2において合算した、M種類の固定炭素個別反応分FC1Mに起因する固定炭素の生成分を、M種類の固定炭素個別反応分FC1Mの割合に分解して、固定炭素個別生成分FC2Mとする。
次に、シミュレーション装置20は、第2ガス相個別反応量の計算工程(ステップS13)で得られた第2ガス相個別未反応分と、揮発分合算生成分VM2Mtotalの分解工程(ステップS18)で得られた揮発分個別生成分を含む第2ガス相個別生成分とを入力物質として与え、第2ガス相の混合計算モデルM6-1を用いて、個々のガス相個別未反応分と個々のガス相個別生成分とを含む第3ガス相G3の流量及び組成データを計算する(ガス相個別生成分の混合計算工程:ステップS20)。
ガス相個別反応量の計算工程(ステップS13)で計算したガス相個別反応分は、揮発分を含む第2ガス相と固定炭素を含む第2固相とが平衡状態に達したと仮定した時の反応量である。そのため、第2ガス相個別反応分は、通常、全て使用されるが、第2ガス相個別反応分には、反応の量論比以上に存在する物質や、反応に寄与しない不活性な物質が存在している場合がある。不活性な物質は、例えば、窒素等である。ガス相個別生成分の混合工程(ステップS20)では、反応の量論比以上に存在し結果として平衡反応後に残る、反応の量論比以上に存在する物質や反応に寄与しない不活性な物質は、平衡反応計算モデルM4で使用されずに残った未使用分として計算する。
シミュレーション装置20は、第3ガス相G3を領域Aよりも装入端14A側の領域(領域A-1)に移動する。
次に、シミュレーション装置20は、固定炭素合算生成分FC2Mtotalの分解工程(ステップS19)で得られた個々の固定炭素個別生成分FC2Mに基づいて、個々の固定炭素個別生成分FC2Mの流量及び組成データを計算すると共に、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径及び空隙率を計算する(固定炭素個別生成分の計算工程:ステップS21)。
第2固相個別反応分には、反応の量論比以上に存在する物質や反応に寄与しない不活性な部分が存在している場合がある。第2固相個別生成分の計算工程(ステップS21)では、第2固相個別反応分のうち、反応の量論比以上に存在し結果として反応で使用されなかった部分及び不活性な部分は、平衡反応計算モデルM4で使用されずに残った未使用分として計算する。
次に、シミュレーション装置20は、固定炭素合算生成分FC2Mtotalの分解工程(ステップS19)で得られた個々の固定炭素個別生成分FC2M、領域Aにおける反応温度TA、固定炭素上におけるガス相の境膜物質移動速度kd及び反応速度(化学反応速度)kcを入力物質として与える。そして、シミュレーション装置20は、判定モデルM7を用いて、反応速度が異なる固定炭素個別生成分FC2Mごとに、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2M及び空隙率εFC2Mを算出して、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFCM及び空隙率εFC2Mの比較結果に基づいて、固定炭素個別生成分FC2Mが含まれるグループを決定する(判定工程:ステップS22)。
なお、境膜物質移動速度とは、ガス相中に含まれる固定炭素と反応する気体の、それぞれの固定炭素個別生成分FC2Mの境膜における気体の拡散速度をいう。
すなわち、判定工程(ステップS22)では、シミュレーション装置20は、固定炭素個別生成分FC2M(M=1以上の整数)の粒子径dpFC1M及び空隙率εFCMから固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径及び空隙率を再計算して、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2M及び空隙率εFC2Mを計算する。そして、この粒子径dpFC2Mを、その粒子径よりも小さい他の固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2Mと比較し、固定炭素個別生成分FC2Mの空隙率εFC2Mを閾値と比較して、固定炭素個別生成分FC2Mのグループを修正する。
判定工程(ステップS22)を説明するフローチャートの一例を図6に示す。図6に示すように、それぞれの固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2M及び空隙率εFC2Mを計算する(粒子径及び空隙率の計算工程:ステップS221)。
平衡反応計算工程(ステップS17)において、固定炭素合算反応分FC1Mtotalがガスと反応する際、固定炭素合算反応分FC1Mtotalを構成する固定炭素個別反応分FC1Mの粒子表面におけるガス相の境膜物質移動速度kdが反応速度kcよりも小さいと、固定炭素合算反応分FC1Mtotalの粒子表面から反応が進行するので、例えば、図8に示すように、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2Mは平衡反応が生じる前の固定炭素個別反応分FC1Mの粒子径dpFC1Mよりも小さくなる可能性がある。
一方、固定炭素合算反応分FC1Mtotalを構成する固定炭素個別反応分FC1Mの粒子表面におけるガスの境膜物質移動速度kdが反応速度kc以上の場合、例えば、図9に示すように、固定炭素個別反応分FC1Mの粒子内部で反応が進行しやすくなるので、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子内部の空隙が増大し、空隙率が高くなる。
そこで、平衡反応計算工程(ステップS17)後の固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2Mを算出する。
粒子径及び空隙率の計算工程(ステップS221)の詳細について説明する。粒子径及び空隙率の計算工程(ステップS221)を説明するフローチャートの一例を図7に示す。図7に示すように、まず、領域Aにおける反応温度を反応温度TAとして、反応温度TAから、固定炭素合算反応分FC1Mtotalに含まれる固定炭素個別反応分FC1Mの境膜物質移動速度kd及び反応速度kcを算出する(ステップS2211)。
次に、jの値を1に設定する(ステップS2212)。
次に、jの値が、整数N未満か否か判定する(ステップS2213)。
jの値が、整数N未満である場合(ステップS2213:Yes)、境膜物質移動速度kdが反応速度kc未満か否か判定する(ステップS2214)。
境膜物質移動速度kdが反応速度kc未満である場合(ステップS2214:Yes)、ガスの境膜物質移動速度kdが小さい(ガスの拡散律速)といえる。この場合には、シミュレーション装置20は、固定炭素個別生成分FC2Mの固定炭素個別反応量ΔmFC2Mから、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2Mを算出する(ステップS2215)。これにより、粒子径dpFC2Mから粒子径dpFC2Mへの大きさの変化率が算出できる。
境膜物質移動速度kdが反応速度kc以上である場合(ステップS2214:No)、固定炭素個別生成分FCMの反応速度kcが小さい(固定炭素合算反応分FC1Mtotalの反応律速)といえる。この場合には、シミュレーション装置20は、固定炭素個別生成分FC2Mから、固定炭素個別生成分FC2Mの空隙率εFC2Mを算出する(ステップS2216)。これにより、空隙率εFC1Mから空隙率εFC2Mへの変化率が算出できる。
次に、jの値が、整数(M-1)か判定する(ステップS2217)。
jの値が整数(M-1)である場合(ステップS2217:Yes)、jの値が整数1~(M-1)までの値について、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2M及び空隙率εFC2Mが全て計算されたと判断し、終了する。
一方、ステップS2213において、jの値が整数M未満でない場合(ステップS2212:No)、jの値は整数Mとなるので、終了する。
ステップS2217において、jの値が整数(M-1)でない場合(ステップS2216:No)、jの値が整数1~(M-1)までの値について、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2M及び空隙率εFC2Mが全て計算されていないと判断できる。この場合、jの値に整数1を加算(ステップS2218)して、ステップS2213に移行する。
図6に示す判定工程(ステップS221)において、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2M及び空隙率εFC2Mが全て計算された後、図6に示すように、固定炭素個別生成分FC2M(M=1以上の整数)のiの値を整数1に設定する(ステップS222)。
次に、図6に示すように、固定炭素個別生成分FC2iの粒子径dpFCiを、固定炭素個別生成分FC2iよりも粒子径の小さい固定炭素個別生成分FC2(i+1)の粒子径dpFC2(i+1)と比較して、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2iが、固定炭素個別生成分FC2(i+1)の粒子径dpFC2(i+1)以上か判定する(ステップS223)。
粒子径dpFC2iが粒子径dpFC2(i+1)以上である場合(ステップS223:Yes)、固定炭素個別生成分FC2Mの空隙率εFC2iが、所定の閾値以下か判定し、固定炭素個別生成分FC2iの内部の空隙率の変化率を計算する(ステップS224)。
固定炭素個別生成分FC2iの粒子表面における固定炭素個別生成分FC2itotalの境膜物質移動速度kdが反応速度kcよりも大きいため、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子内部で反応が進行し、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子内部の空隙が増大している可能性がある。そこで、固定炭素個別生成分FC2Mの空隙率ε2Mが、所定の閾値以下か確認する。
閾値とは、固定炭素個別生成分FC2Mが分解する空隙率(限界空隙率)をいう。
固定炭素個別生成分FC2Mの空隙率εFC2Mが、所定の閾値以下である場合(ステップS224:Yes)、固定炭素個別生成分FC2Mは、平衡反応計算工程(ステップS17)前の固定炭素合算反応分FC1Mtotalに含まれる固定炭素個別反応分FC1Mと略同じ粒子径を維持していると判断でき、固定炭素個別生成分FC2Mは、そのまま固定炭素個別生成分FC2Mに該当すると判断する(ステップS225)。
次に、iの値が、整数(M-1)か判定する(ステップS226)。
iの値が整数(M-1)である場合(ステップS226:Yes)、iの値が整数1~(M-1)までの値について、固定炭素個別生成分FC2Mを、その粒子径dpFC2M及び空隙率εFC2Mに応じて振り分けられたと判断し、終了する。
一方、ステップS223において、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2Mが固定炭素個別生成分FC2(M+1)の粒子径dpFC2(M+1)を超える場合(ステップS223:No)、固定炭素個別生成分FC2Mは、その粒子径dpFC2Mの大きさに応じた固定炭素個別生成分FC2(M+1)に該当すると判断し、略同等の大きさの粒子径を有する固定炭素個別生成分FC2(M+1)に合算する(ステップS227)。
すなわち、平衡反応計算工程(ステップS17)において、固定炭素合算反応分FC1Mtotalがガス相と反応する際、固定炭素合算反応分FC1Mtotalを構成する固定炭素個別反応分FC1Mの粒子表面におけるガスの境膜物質移動速度kdが反応速度kc未満であると、固定炭素個別反応分FC1Mの粒子表面から反応するので、例えば、図8に示すように、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2Mが反応前よりも小さくなる。そのため、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径dpFC2M が固定炭素個別生成分FC2(M+1)の粒子径dpFC2(M+1)未満である場合には、固定炭素個別生成分FC2Mは、実際には、略同等の大きさの粒子径を有する固定炭素個別生成分FC2(M+1)に相当するといえる。よって、固定炭素個別生成分FC2Mは、略同等の大きさの粒子径を有する固定炭素個別生成分FC2(M+1)に合算する。
図6に示すように、ステップS224において、固定炭素個別生成分FC2Mの空隙率εFC2Mが、所定の閾値を超える場合(ステップS224:No)、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子内部の空隙が増大し、分解している可能性が高くなっている可能性が高い。そのため、固定炭素個別生成分FC2Mは、粒子径が一番小さい固定炭素個別生成分FC2i(i=M)に合算する(ステップS228)。
ステップS226において、iの値が整数(M-1)でない場合(ステップS226:No)、iの値が整数1~(M-1)までの値について、固定炭素個別生成分FC2Mが、それぞれの粒子径dpFC2M及び空隙率εFC2Mに応じて振り分けられていないと判断できる。この場合、iの値に整数1を加算(ステップS229)して、ステップS223に移行する。
シミュレーション装置20は、固定炭素個別生成分FC2Mを領域Aよりも排出端14B側の領域(領域A+1)に移動する。
図3に示すように、シミュレーション装置20は、判定工程(ステップS22)で決定した固定炭素個別生成分FC2Mが含まれるグループと、第2固相個別反応量の計算工程(ステップS15)で得られた固定炭素個別未反応分とを入力物質として与え、第2ガス相の混合計算モデルM6-2を用いて、個々の固定炭素個別生成分FC2Mが含まれるグループと個々の固定炭素個別未反応分とを含む第3ガス相G3の流量及び組成データを計算し、終了する(第2固相の混合工程:ステップS23)。
なお、シミュレーション装置20は、第2ガス相個別反応量の計算工程(ステップS13)と第2固相個別反応量の計算工程(ステップS15)とを並行して行ってもよいし、第2ガス相個別反応量の計算工程(ステップS13)を第2固相個別反応量の計算工程(ステップS15)の後に行ってもよい。
また、シミュレーション装置20は、第2ガス相個別生成分の混合工程(ステップS20)と第2固相個別生成分の計算工程(ステップS21)とを並行して行ってもよいし、ガス相個別生成分の混合工程(ステップS20)を第2固相個別生成分の計算工程(ステップS21)の後に行ってもよい。
また、シミュレーション装置20は、揮発分合算生成分の分解工程(ステップS18)を、第2ガス相の混合工程(ステップS20)と並行して行ってもよいし、第2ガス相の混合工程(ステップS20)の前に行ってもよい。
また、シミュレーション装置20は、第2固相の混合工程(ステップS23)を、固定炭素合算生成分の分解工程(ステップS19)と並行して行ってもよいし、固定炭素合算生成分の分解工程(ステップS19)の後に行ってもよい。
また、シミュレーション装置20は、熱伝導に関しては、必要に応じて、放射、伝導及び対流等のモデルで計算するようにしてもよい。
<シミュレーション装置のハードウェア構成>
次に、シミュレーション装置のハードウェア構成の一例について説明する。図10は、シミュレーション装置のハードウェア構成図である。図10に示すように、シミュレーション装置20は、例えば、情報処理装置(コンピュータ)で構成され、物理的には、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit:プロセッサ)21と、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)22及びROM(Read Only Memory)23と、補助記憶装置24と、入出力インタフェース25と、出力装置である表示装置26等を含むコンピュータシステムとして構成することができる。これらは、バス27で相互に接続されている。なお、補助記憶装置24及び表示装置26は、外部に設けられていてもよい。
CPU21は、シミュレーション装置20の全体の動作を制御し、各種の情報処理を行う。CPU21は、ROM23または補助記憶装置24に格納された原料鉱石の反応計算プログラムを実行して、測定収録画面と解析画面の表示動作を制御する。
RAM22は、CPU21のワークエリアとして用いられ、主要な制御パラメータや情報を記憶する不揮発RAMを含んでもよい。
ROM23は、基本入出力プログラム等を記憶する。原料鉱石の反応計算プログラムはROM23に保存されてもよい。
補助記憶装置24は、SSD(Solid State Drive)、及びHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置であり、例えば、原料鉱石の反応計算プログラムやシミュレーション装置20の動作に必要な各種のデータ、ファイル等を格納する。
入出力インタフェース25は、タッチパネル、キーボード、表示画面、操作ボタン等のユーザインタフェースと、外部のデータ収録サーバ等からの情報を取り込み、他の電子機器に解析情報を出力する通信インタフェースとの双方を含む。
表示装置26は、モニタディスプレイ等である。表示装置26では、測定収録画面と解析画面が表示され、入出力インタフェース25を介した入出力操作に応じて画面が更新される。
図10に示すシミュレーション装置20の各機能は、RAM22やROM23等の主記憶装置又は補助記憶装置24にシミュレーションソフトウェア(シミュレーションプログラムを含む)等を読み込ませ、RAM22、ROM23又は補助記憶装置24に格納された原料鉱石の反応計算プログラム等をCPU21により実行することにより、RAM22等におけるデータの読み出し及び書き込みを行うと共に、入出力インタフェース25及び表示装置26を動作させることで実現される。
シミュレーションプログラムは、以下の構成のプログラムを用いることができる。
すなわち、シミュレーションプログラムは、
反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、移動の途中で揮発分及び固定炭素の少なくとも一方を含む燃焼用材料を投入し、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行うシミュレーションをコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記燃焼用材料を前記揮発分と分配された前記固定炭素とに分配する分配モデルと、
前記原料鉱石を含む第1固相と分配された前記固定炭素とを含む第2固相のうち、応速度が異なる第2固相ごとに、前記燃焼ガスと分配された前記揮発分とを含む第2ガス相との平衡反応に寄与する前記第2固相の個別反応量をそれぞれ計算して、前記第2固相のうち前記平衡反応に寄与する第2固相個別反応分をそれぞれ求める第2固相個別反応量の計算モデルと、
それぞれの前記第2固相個別反応分のうち固定炭素個別反応分を合算して、固定炭素合算反応分を求める固定炭素個別反応量の合算モデルと、
前記燃焼ガスを含む第1ガス相と分配された前記揮発分とを含む第2ガス相のうちの前記平衡反応に寄与する、揮発分合算反応分を含む第2ガス相個別反応分と、前記固定炭素合算反応分を含む前記第2固相個別反応分とが平衡状態に達した時の、それぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する平衡反応計算モデルと、
前記平衡反応計算モデルで前記揮発分合算反応分を含む前記第2ガス相個別反応分と前記第2固相個別反応分とが反応することで生じる第2固相合算生成分に含まれる固定炭素合算生成分を、前記反応速度が異なる第2固相の固定炭素個別反応量の割合に分解し、固定炭素個別生成分を得る固定炭素合算生成分の分解モデルと、
前記固定炭素個別生成分の粒子径を前記固定炭素個別生成分よりも粒子径が小さい他の前記固定炭素個別生成分の粒子径と比較して、前記固定炭素個別生成分が含まれるグループを決定する判定モデルと、
を少なくともコンピュータに実行させるプログラムを用いることができる。
シミュレーションプログラムは、例えば、RAM22やROM23の主記憶装置又は補助記憶装置24等のコンピュータが備える記憶装置内に格納される。なお、原料鉱石の反応計算プログラムは、その一部又は全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、コンピュータが備える通信モジュール等により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。また、原料鉱石の反応計算プログラムは、その一部又は全部が、CD-ROM、DVD-ROM、フラッシュメモリ等の携帯可能な記憶媒体に格納された状態から、コンピュータ内に記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
以上の通り、一実施形態に係るシミュレーション方法は、分配工程(ステップS12)、2固定炭素個別反応量の計算工程(ステップS15)、揮発分の合算工程(ステップS16)、平衡反応計算工程(ステップS17)、固定炭素合算生成分の分解工程(ステップS19)、判定工程(ステップS22)、及び第2固相の混合工程(ステップS23)を含む。
一実施形態に係るシミュレーション方法は、固定炭素合算生成分の分解工程(ステップS19)で、平衡反応計算工程(ステップS17)で得られた固定炭素合算生成分FC2Mtotalを、固定炭素個別反応分の合算時の比率で分解して、固定炭素個別生成分FC2Mを得ることができる。そして、固定炭素個別生成分の計算工程(ステップS21)で、固定炭素個別生成分FC2Mを、反応速度が異なる固定炭素個別生成分FC2Mごとに、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径及び空隙率の少なくとも粒子径を計算する。判定工程(ステップS22)で、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径をその粒子径よりも小さい粒子径を有する、他の固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径と比較して、固定炭素個別生成分FC2Mが含まれるグループを決定する。これにより、同じ粒子径を有する固定炭素個別生成分FC2M同士を合算することができるので、同じ粒子径を有する固定炭素個別生成分FC2Mが領域Aから隣接する領域A+1に移動する移動量を計算できる。
そのため、ロータリーキルン1内に装入される第1固相S1及び燃焼用材料中の固定炭素を含む第2固相S2の反応の進行に伴い、固定炭素個別反応分FC1Mの粒子径の減少や空隙率の増加に伴う比表面積の増加を考慮することができ、領域Aでの平衡反応後の固定炭素個別反応分FC1Mの比表面積の変化に伴う実質的な反応速度の変化を表現できる。
よって、一実施形態に係るシミュレーション方法は、燃焼用材料を構成する揮発分及び固体炭素のそれぞれの移動量をそれぞれの種類や大きさ等を考慮しつつ導き出せるため、平衡反応をより正確に解析することができる。したがって、一実施形態に係るシミュレーション方法は、ロータリーキルン1の途中から燃焼用材料を投入する場合に、原料鉱石である第1固相S1に含まれる固定炭素及び燃焼用材料に含まれる固定炭素を含む第2固相S2の反応速度の変化を考慮して、ロータリーキルン1内の物質の挙動をより高精度に解析することができる。
実際のロータリーキルンの操業では、原料鉱石の流れの途中で供給する燃焼用材料(例えば、石炭や炭材等)の種類や大きさは単一品種の炭材ではなく、複数の異なる炭材等を混合して操業することが多い。これらの炭材は、反応速度が異なるので、ロータリーキルン内での反応プロセスに影響を与えやすい。また、原料鉱石の流れの途中で投入する燃焼用材料は、その粒子径が大きいため、反応速度が大きく変化する傾向がある。一実施形態に係るシミュレーション方法は、燃焼用材料の挙動や炭材の種類や大きさ等を考慮して解析することができる。
一実施形態に係るシミュレーション方法は、固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径が、他の固定炭素個別生成分FC2Mの粒子径未満の場合には、判定工程(ステップS22)は、固定炭素個別生成分FC2Mの空隙率を所定の閾値と比較して、固定炭素個別生成分FC2Mが含まれるグループを決定することができる。これにより、平衡反応後に存在する固定炭素個別生成分FC2Mを、同じ粒子径の大きさを有する固定炭素個別生成分FC2Mに合算することができるので、燃焼用材料を構成する揮発分及び固体炭素のそれぞれの移動量をより高い精度で解析することができる。
一実施形態に係るシミュレーション方法は、第2ガス相個別反応量の計算工程(ステップS13)、及び揮発分個別反応量の合算工程(ステップS14)を含むことができる。第2ガス相個別反応量の計算工程(ステップS13)で求めた第2ガス相個別反応分のうち、揮発分個別反応分を揮発分の合算工程(ステップS14)で合算し、揮発分合算反応分を求めることで、平衡反応計算工程(ステップS17)で得られた揮発分合算反応分を含むガス相個別反応分及び固定炭素合算反応分を含む固相個別反応分を用いて平衡反応を計算できる。
一実施形態に係るシミュレーション方法は、混合工程(ステップS21)を含むことができる。これにより、平衡反応後に存在する固定炭素個別生成分FC2Mに、同じ粒子径の大きさを有する固定炭素個別未反応分fc2Mを合算することができるので、同じ大きさの粒子径を有する第3固相を得ることができる。
一実施形態に係るシミュレーション方法は、第2固相個別生成分の計算工程(ステップS21)で、平衡反応に寄与する第2固相個別反応分の和以外の未反応分を第2固相個別未反応分とし、第2固相個別未反応分と第2固相個別生成分とを混合した第3固相の粒子径及び空隙率の少なくとも粒子径を計算してもよい。これにより、判定工程(ステップS22)は、第3固相S3の粒子径を第3固相S3よりも粒子径が小さい他の第3固相S3の粒子径と比較して、第3固相S3が含まれるグループを決定することができる。
一実施形態に係るシミュレーション方法は、揮発分合算生成分の分解工程(ステップS18)、及び第2ガス相個別生成分の混合工程(ステップS20)を含むことができる。揮発分の合算生成分の分解工程(ステップS18)で得られた揮発分合算生成分を、揮発分個別反応分を合算した時の割合で分解して、揮発分の個別生成分を得る。これにより、得られた個々の揮発分の個別生成分を、それぞれの揮発分の個別生成分ごとに、第2ガス相個別生成分の混合工程(ステップS20)で揮発分個別未反応分と共に領域Aから隣接する領域A-1に移動する移動量を計算できる。よって、同じ反応速度の揮発分を含む第2ガス相の個別未反応分と、揮発分を含む第2ガス相個別生成分とを混合した第3ガス相G3の流量を計算できる。したがって、一実施形態に係るシミュレーション方法は、ロータリーキルン1の途中から供給される燃焼用材料の熱分解によって生じる揮発分の装入端14Aへの移動量を計算できる。
一実施形態に係るシミュレーション方法は、ロータリーキルン1の燃焼用材料供給管12から燃焼用材料が投下される領域Aを含む範囲内の物質の挙動をより高精度に解析することができる。そのため、一実施形態に係るシミュレーション方法を、ロータリーキルン1内の全領域に適用することで、ロータリーキルン1内の反応プロセスをより高精度に解析することができる。一実施形態に係るシミュレーション方法をロータリーキルン1の全体に適用する場合について説明する。
一実施形態に係るシミュレーション方法は、例えば、図11に示すように、ロータリーキルン1内を複数の領域に分割した時の1つの領域Aにおける反応プロセスを単位操作モデルと仮定した時、単位操作モデルの組合せによってロータリーキルン1内の反応プロセスをモデル化できる。そして、一実施形態に係るシミュレーション方法を、ロータリーキルン1内の複数の領域に、原料鉱石の流れ又は燃焼ガスの流れ(仮定した流れを含む。)に沿って繰り返し行う(図11中の矢印参照)。そして、所定の領域における計算値とその領域における前回の計算値との差が所定の範囲内に収まるまで繰り返し行う。
一実施形態に係るシミュレーション方法をロータリーキルン1の全体に適用する場合のフローチャートを図12に示す。図12に示すように、シミュレーション装置20は、ロータリーキルン1で起こる反応プロセスを複数の単位操作モデルの組合せによってモデル化する(モデル化工程:ステップS31)。
単位操作モデルには、上記の図2に示すシミュレーション装置20が適用される。それぞれの単位操作モデル毎に、単位操作モデルを構成する、分配モデルM1、第2ガス相個別反応量の計算モデルM2-1、第2固相個別反応量の計算モデルM2-2、揮発分の合算モデルM3-1固定炭素の合算モデルM3-2、平衡反応計算モデルM4、揮発分合算生成分の分解モデルM5-1、固定炭素合算生成分の分解モデルM5-2、第2ガス相の混合計算モデルM6-1、第2固相の混合計算モデルM6-2、及び判定モデルM7等が予め用意される。
各単位操作モデルは、原料鉱石や燃焼ガスの流れ(仮定した流れを含む。)に沿って相互に接続される。
次に、シミュレーション装置20は、ステップS31においてモデル化された単位操作モデルの計算を行う(計算工程:ステップS32)。単位操作モデルには、流れの情報が入力される。
流れの情報は、原料鉱石、燃焼ガス、及び燃焼用材料の成分、流量、温度、回転数等のデータである。流れの情報が入力されると、単位操作モデルは所定の計算を行い、その計算値(原料鉱石、燃焼ガス、及び燃焼用材料の成分、流量、温度等)が出力される。これらの計算結果から、図2に示すシミュレーション装置20の各構成に用いる値が計算される。シミュレーション装置20の各モデルに用いる値としては、第1ガス相G1の流量、分配モデルM1で分配される揮発分及び固定炭素の量、第2ガス相G2の流量、第3ガス相G3の流量、揮発分個別反応分の流量、揮発分個別未反応分の流量、第1固相S1の流量、第2固相S2の流量、固定炭素個別反応分の流量、固定炭素の個別未反応分の流量、及び第3固相S3の流量等である。
本実施形態では、単位操作モデルの計算は、最も装入端14A側に位置する単位操作モデルから行う。
次に、シミュレーション装置20は、最終の単位操作モデルまで計算したか否か判断する(ステップS33)。
最終の単位操作モデルまで計算した場合(ステップ33:Yes)は、シミュレーション装置20は、単位操作モデルの前回の計算値があるか否か判断する(ステップS34)。
前回の計算値がある場合(ステップS34:Yes)には、シミュレーション装置20は、計算工程(ステップS32)において計算された計算値と、前回の計算値とを比較する(ステップS35)。
次に、シミュレーション装置20は、計算値と前回の計算値との差が収束条件を満たすか否か判断する(比較工程:ステップS36)。
収束条件としては、例えば、計算値と前回の計算値との差が数℃(例えば、1℃)以下の範囲内である。
計算値と前回の計算値との差が収束条件を満たす場合(ステップS36:Yes)には、シミュレーション装置20は、計算を終了する。これにより、ロータリーキルン1のキルン本体11内の全体で起こる反応プロセスが解析される。
一方、ステップS33において、最終の単位操作モデルまで計算していない場合(ステップS33:No)は、シミュレーション装置20は、隣接する他の単位操作モデルである領域A+1又は領域A-1に位置する単位操作モデルに移行する(ステップS37)。そして、シミュレーション装置20は、領域A+1又は領域A―1に位置する単位操作モデルの計算を行う(ステップS32)。
ステップS34において、前回の計算値がない場合(ステップS34:No)、又はステップS36において、計算値と前回の計算値との差が収束条件を満たさない場合(ステップS36:No)には、シミュレーション装置20は、先頭の単位操作モデルに移行する(ステップS38)。
よって、一実施形態に係るシミュレーション方法は、ロータリーキルン1で起こる反応プロセスを複数の単位操作モデルの組合せによってモデル化し、単位操作モデルの接続順序に沿って、単位操作モデルの各々に設定された値に基づいて計算を行う。本実施形態では、それぞれの単位操作モデルの計算をロータリーキルン1の装入端14A側から排出端14B側に向かって順じ行った後、排出端14B側から装入端14A側に向かって行う(図11参照)。そして、一連の操作を、所定の領域Aにおける計算値が所定の収束条件が満たされるまで繰り返す。その結果、ロータリーキルン1内のそれぞれの領域における、燃焼ガスと原料鉱石の流量等の計算結果が導き出される。これにより、ロータリーキルン1のキルン本体11内の全体での燃焼ガス及び原料鉱石を構成する各物質の挙動をより正確に解析することが可能となる。
このように、一実施形態に係るシミュレーション方法によれば、ロータリーキルン1内の全体の反応プロセスをより高精度に解析することができるため、ロータリーキルン1の運転条件(例えば、ロータリーキルン1の大きさや回転数、原料鉱石の供給量)等を変えながら、ロータリーキルン1内の各物質の挙動をより正確に解析することができる。よって、一実施形態に係る原料鉱石の製錬方法は、ロータリーキルン1の操業改善や設備改善の事前検討、操業条件、原料鉱石の変更等による影響調査等に有効に活用できる。
なお、本実施形態では、ロータリーキルン1内に供給される原料は、原料鉱石以外の原料でもよい。
本実施形態では、図1に示すロータリーキルン1の途中から投下される燃焼用材料は、揮発分及び固定炭素の両方を必ずしも含んでいなくてもよいし、揮発分及び固定炭素以外に、灰分等の他の物質を含んでいてもよい。
本実施形態では、図1に示すロータリーキルン1以外に、原料鉱石を装入端14A側から排出端14B側に向かって移動させながら加熱する反応炉であればよい。
本実施形態では、図2に示すシミュレーション装置20は、揮発分の合算モデルM3-1及び揮発分合算生成分の分解モデルM5-1の何れか一方又は両方を備えず、揮発分を複数のM種類に分割しなくてもよい。
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。